説明

パイロット式開閉弁

【課題】背圧室がダイヤフラム弁の上方に位置する姿勢とされても、背圧室内へのエアの残留を防止して止水不良を防止することができるパイロット式開閉弁を提供する。
【解決手段】流入室6と、流出通路7と、流出通路7に連通する弁座5を開閉するダイヤフラム弁8と、ダイヤフラム弁8の背面側に形成された背圧室10と、流入室6を背圧室10に連通させるオリフィス穴13と、背圧室10を流出通路7に連通させる連通穴11と、連通穴に介設されたパイロット穴24を開閉するパイロット電磁弁12とを備える。連通穴11は背圧室10におけるダイヤフラム弁8の側方位置で一端が開口する。背圧室10がダイヤフラム弁8の上方位置となる姿勢としたとき、背圧室10のダイヤフラム弁8に対向する内壁面を、連通穴11の開口11a側に向かって次第に上昇する方向に傾斜する傾斜面9aとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯装置等に内蔵されて給水路の開閉を行うダイヤフラム弁を備えたパイロット式開閉弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流出通路に連通する弁座と、該弁座を囲繞する流入室と、該弁座の軸線方向に対向させた状態で流入室を覆うように取付けられて該弁座を開閉するダイヤフラム弁と、ダイヤフラム弁の背面側に設けられた背圧室と、前記流入室を該背圧室に連通させるオリフィス穴と、該背圧室を前記流出通路に連通させる連通穴と、該連通穴に介設されたパイロット穴を開閉するパイロット電磁弁とを備えるパイロット式開閉弁が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種のパイロット式開閉弁は、例えば、給湯装置の給水路等に設けられ、パイロット電磁弁によりパイロット穴を閉じて連通穴が閉鎖された状態で流入室に水道水が流入すると、流入室からオリフィス穴を経て背圧室に水道水が流入して、背圧室内の圧力と流入室の圧力とが互いに等しくなる。これにより、ダイヤフラム弁の閉弁状態(止水状態)が維持される。
【0004】
この状態から、パイロット電磁弁によりパイロット穴を開弁し連通穴を導通させると、背圧室内の水が流出通路に抜け出すと同時に背圧室の圧力が開放される。これにより、ダイヤフラム弁が開弁して流入室の水が直ちに流出通路へと流出する(通水状態)。
【0005】
そしてまた、パイロット電磁弁によりパイロット穴を閉じて背圧室の流出通路への連通を閉鎖すると、背圧室には再びオリフィス穴を通って流入室の圧力が伝搬し、ダイヤフラム弁が弁座に押し当てられて閉弁状態(止水状態)となる。
【0006】
ところで、このような構成のパイロット式開閉弁においては、例えば、給湯装置の設置形態(壁掛け式或いは床置き式等)により給湯装置への取付け姿勢が異なり、特に、床置き式の給湯装置においては、背圧室がダイヤフラム弁の上方に位置する姿勢で取付けられる場合がある。この場合には、初回通水時の残留エアや水に混在するエアが背圧室内に溜まりやすく、特に、連通穴から離れた位置で背圧室内にエア溜まりが生じると、連通穴を通して背圧室内に水流が形成されていても、連通穴からエアが抜けることはなく、背圧室内にエアが残留する。そして、背圧室内に残留したエアがクッションの作用をして圧縮、膨張することにより、ダイヤフラム弁に継続する振動が発生し、その結果、止水不良となる不都合があった。
【特許文献1】特開2004−138211号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる背景に鑑み、背圧室がダイヤフラム弁の上方に位置する姿勢とされても、背圧室内へのエアの残留を防止して止水不良を防止することができるパイロット式開閉弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明は、流出通路に連通する弁座と、該弁座を囲繞する流入室と、該弁座の軸線方向に対向させた状態で流入室を覆うように取付けられて該弁座を開閉するダイヤフラム弁と、ダイヤフラム弁の背面側に設けられた背圧室と、前記流入室を該背圧室に連通させるオリフィス穴と、該背圧室を前記流出通路に連通させる連通穴と、該連通穴に介設されたパイロット穴を開閉するパイロット電磁弁とを備え、前記背圧室におけるダイヤフラム弁の側方位置で前記連通穴の一端が開口するパイロット式開閉弁において、前記背圧室がダイヤフラム弁の上方位置となる姿勢としたとき、前記背圧室のダイヤフラム弁に対向する内壁面が、前記連通穴の開口側に向かって次第に上昇する方向に傾斜する傾斜面とされていることを特徴とする。
【0009】
本発明のパイロット式開閉弁によれば、前記背圧室のダイヤフラム弁に対向する内壁面が前記傾斜面とされていることにより、給湯装置等において前記背圧室が前記ダイヤフラム弁の上方位置となる姿勢に本発明のパイロット式開閉弁を取付けたとき、背圧室内に残ったエアは、前記傾斜面に案内されて連通穴の開口側に向かって移動する。これにより、パイロット電磁弁によるパイロット穴の開弁により連通穴が導通し、連通穴を通して背圧室内に水流が形成された際に、連通穴の開口側に溜まる背圧室内のエアは、連通穴から流出通路に抜け出て行く。
【0010】
このように、本発明によれば、背圧室がダイヤフラム弁の上方に位置する姿勢とされても、背圧室内へのエアの残留が防止でき、給水中にダイヤフラム弁を閉じて止水したときにダイヤフラム弁の振動が継続することはなく、確実に止水することができる。
【0011】
また、本発明においては、前記連通穴の開口は、前記傾斜面の上昇側端部の直下位置に設けられていることが好ましい。これによれば、傾斜面の上昇側端部に移動して溜まったエアに、その直下位置で連通穴の開口が近接しているので、傾斜面の上昇側端部に移動したエアを迅速に連通穴から流出通路に抜け出させることができ、一層確実に止水不良を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態のパイロット式開閉弁1は、図示しない床置き式の給湯装置の給水弁として用いられる。図1において、2はパイロット式開閉弁1の一部を構成するバルブブロックである。バルブブロック2には、流入口3と流出口4とが形成されており、更に、筒状の主弁座5(弁座)と、主弁座5を囲繞する流入室6と、流出口4に連通する流出通路7とが形成されている。流入室6は流入口3に連なって形成されており、流出通路7は主弁座5の内周空間に連なって形成されている。
【0013】
流入室6が開口するバルブブロック2の側面には、主弁座5に対向させた状態で流入室6を覆うダイヤフラム弁8が装着され、ダイヤフラム弁8の周縁部は、その背面側からダイヤフラムカバー9により押え付けられている。
【0014】
ダイヤフラム弁8とダイヤフラムカバー9との間には背圧室10が画成されている。バルブブロック2には、背圧室10内の流体を流出通路7にリークする連通穴11が形成されており、連通穴11には、パイロット電磁弁12が介設されている。連通穴11の背圧室10側の開口11aはダイヤフラム弁8の側方に位置されている。そして、バルブブロック2には、連通穴11の一部に連通して、流入室6の流体を背圧室10に導入するオリフィス穴13が形成されている。
【0015】
また、ダイヤフラムカバー9のダイヤフラム弁8に対向する内壁面は、傾斜面9aとされている。この傾斜面9aは、本実施形態のパイロット式開閉弁1を、ダイヤフラム弁8の上方に背圧室10が位置する姿勢としたとき(図1に示した姿勢)、背圧室10における連通穴11の開口11a側に向かって次第に上昇する方向に所定角度(本実施形態では約5度の角度)をもって傾斜している。即ち、連通穴11の開口11aは、傾斜面9aの直下位置に設けられている。
【0016】
なお、ダイヤフラム弁8には、図1及び図2に示すように、背面側に硬質ディスク14が結着されており、硬質ディスク14には、ダイヤフラム弁8の前面側に突出して主弁座5に挿入可能なガイド突起15と、ダイヤフラムカバー9の内側に突設したピン部16を受け入れるガイド孔17とが形成されている。ガイド突起15及びガイド孔17は、ダイヤフラム弁8に傾き等が生じることを防止しており、これによってダイヤフラム弁8が主弁座5の軸線方向に変位されるようにしている。
【0017】
パイロット電磁弁12は、図1に示すように、ソレノイド18と、ソレノイド18の内周から先方に突出する樹脂製のガイドスリーブ19とを備えている。ガイドスリーブ19には、弁体20が摺動自在に保持されており、ガイドスリーブ19の後端部の固定鉄心21との間に介設されたばね22により弁体20が先方に付勢されている。ソレノイド18に通電したときには、弁体20が固定鉄心21により後方(固定鉄心21側)に磁気吸引される。また、ガイドスリーブ19の先端側には、弁体20がばね22の付勢力で着座する弁座23が設けられている。弁座23は、前記連通穴11の一部を構成するパイロット穴24を備え、該パイロット穴24がパイロット電磁弁12の弁体20により閉弁されているとき、連通穴11が閉鎖状態となる。
【0018】
本実施形態においては、図示しないが、流入口3は水道管に接続され、流出口4は給湯装置の熱交換器側の配管に接続される。そして、以上の構成によれば、パイロット電磁弁12の閉弁時(非通電時)は、流入口3から流入室6へ流入した水道水(以下、単に水という)が、オリフィス穴13から連通穴11の一部(パイロット電磁弁12によって閉弁されたパイロット穴24より背圧室10側の部分)を通って背圧室10に入った状態となる。これにより、ダイヤフラム弁8が背圧室10内の水圧に押され、主弁座5に着座して止水状態となる。パイロット電磁弁12に通電して開弁すると、連通穴11により背圧室10内の水が流出通路7に放出され、背圧室10内の水圧が低下してダイヤフラム弁8が主弁座5から離反して開弁状態となる。これにより、開放された主弁座5を介して流入室6から流出通路7へ水が流れ、通水状態となる。
【0019】
ここで、本実施形態において、パイロット式開閉弁1は、床置き式の給湯装置に取付けられるものとして、図1に示すように、流入口3が水平方向に向けられ、流出口4が下方に向けられて、背圧室10がダイヤフラム弁8の上方に位置する姿勢で取付けられている。このため、背圧室10内に水に混じってエアが侵入すると、エアは背圧室10の上側の内壁面(背圧室10のダイヤフラム弁8に対向する内壁面)に溜まる。このとき、前述したように、背圧室10のダイヤフラム弁8に対向する内壁面が傾斜面9aとされていることにより、図2に示すように、背圧室10内のエア(気泡x)は傾斜面9aに案内されて傾斜面9aの上昇端部に向かって移動する。そして、連通穴11の開口11a側に移動した気泡xは、連通穴11の開口11aに近接する開口11aの直上位置に集まり(空気溜x´)、この空気溜x´がパイロット電磁弁12が開弁することにより生じる水流yにより、連通穴11の開口11aに迅速且つ円滑に吸引され、背圧室10から円滑に抜け出して流出通路7に放出される。これによって、背圧室10内へのエアの残留を防止することができ、閉弁時のダイヤフラム弁8に継続する振動が発生することもないので、止水不良を確実に防止することができる。
【0020】
更に、本実施形態においてはダイヤフラム弁8に対向する内壁面が前述のように約5度の角度で傾斜する傾斜面9aとされていることにより、パイロット式開閉弁1の給湯装置内部への取付け等でダイヤフラム弁8が傾斜面9aの傾斜方向と反対側に傾いて取付けられても、その取り付け傾き角度が5度未満であれば、背圧室10内のエアを傾斜面9aに沿って連通穴11の開口11a側に移動させることができるので、取り付け精度に余裕ができる。また、例えば、パイロット式開閉弁1の給湯装置内部への取付けにおいて流入口3を精度良く水平方向に向けた姿勢で取り付けられても、給湯装置が傾いて設置された場合には、ダイヤフラム弁8が傾斜面9aの傾斜方向と反対側に傾くことが考えられるが、この場合にも、その設置状態の傾き角度が5度未満であれば、背圧室10内のエアを傾斜面9aに沿って連通穴11の開口11a側に移動させることができるので、給湯装置の設置状態の傾きにも余裕を持つことができる。
【0021】
なお、本実施形態においては、パイロット式開閉弁1を床置き式の給湯装置の給水弁として採用した場合について説明したが、パイロット式開閉弁1を採用することができるものは床置き式の給湯装置に限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態のパイロット式開閉弁を示す断面図。
【図2】本実施形態のパイロット式開閉弁の要部を示す説明図。
【符号の説明】
【0023】
1…パイロット式開閉弁、5…主弁座(弁座)、6…流入室、7…流出通路、8…ダイヤフラム弁、9a…傾斜面、10…背圧室、11…連通穴、11a…開口、12…パイロット電磁弁、13…オリフィス穴、24…パイロット穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流出通路に連通する弁座と、該弁座を囲繞する流入室と、該弁座の軸線方向に対向させた状態で流入室を覆うように取付けられて該弁座を開閉するダイヤフラム弁と、ダイヤフラム弁の背面側に設けられた背圧室と、前記流入室を該背圧室に連通させるオリフィス穴と、該背圧室を前記流出通路に連通させる連通穴と、該連通穴に介設されたパイロット穴を開閉するパイロット電磁弁とを備え、前記背圧室におけるダイヤフラム弁の側方位置で前記連通穴の一端が開口するパイロット式開閉弁において、
前記背圧室がダイヤフラム弁の上方位置となる姿勢としたとき、前記背圧室のダイヤフラム弁に対向する内壁面が、前記連通穴の開口側に向かって次第に上昇する方向に傾斜する傾斜面とされていることを特徴とするパイロット式開閉弁。
【請求項2】
前記連通穴の開口は、前記傾斜面の上昇側端部の直下位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載のパイロット式開閉弁。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−196669(P2008−196669A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35350(P2007−35350)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】