説明

パケット処理装置

【課題】一連番号付与手段や順序補正手段等の特別な手段を設けることなく並列パケット処理を実現するパケット処理装置を得ること。
【解決手段】パケット情報抽出部2は入力されるパケット流の転送過程で各可変長パケットからパケット処理を実施するために必要とされるパケット情報を抽出する。固定長セル化部5は抽出されたパケット情報を固定長のセルに変成する。ディストリビュータ6は固定長セルを並列に配置されるパケット処理モジュール7(1〜x)に順番にそれぞれの入力速度に調整して分配する。パケット遅延回路3aは入力されるパケット流に固定長セル化部からパケット処理モジュールまでの処理時間を考慮した遅延処理を施す。パケット情報挿入部4aはパケット処理モジュール7(1〜x)にて判定された転送先等の情報をパケット遅延回路3aから入力する対応するパケットに挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パケットの宛先、発信元等の情報を解析するパケット処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
IP等のパケットを処理するルータ装置等では、パケット処理装置の主構成要素であるパケット処理モジュールを装備し、そのパケット処理モジュールが解析したパケットの宛先、発信元等の情報に従ってパケットの転送処理を行っている。
【0003】
近年、データの高速化に伴い、ルータ装置等では、転送速度が上昇する傾向にあるが、パケット処理モジュールでの処理速度に限界があることから、高速入力されるパケットを処理する手法として、高速なパケット流をディストリビュータにて複数の低速パケット流に分散し、それを並列配置した複数のパケット処理モジュールにて並列処理する方法を採用することになる。その際、IP等のパケットが可変長であること等に起因し、並列に配置されたパケット処理モジュールでの処理時間にばらつきが発生するので、従来では、並列処理後にパケットの順序補正を行うようにしている(例えば、特許文献1)。
【0004】
すなわち、特許文献1では、パケットの順序補正を実現する方法として、ディストリビュータにてパケット流を分散する際に一連番号を付与し、並列処理後に、順序補正手段にてディストリビュータが付与した一連番号に従って並べ替えて出力する方法が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−158903号公報(パケット処理装置)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、従来のパケット処理装置では、並列にパケット処理を行う場合に、IP等のパケットが可変長であること等に起因して並列に配置した各パケット処理モジュールでの処理時間が固定時間でないために、並列処理後のパケット順序補正が必要となり、一連番号付与手段や順序補正手段等の特別な回路が必要であった。
【0007】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであり、並列に配置した各パケット処理モジュールでの処理時間を固定時間化する手段を設けることで、一連番号付与手段や順序補正手段等の特別な手段を設けることなく並列パケット処理を実現するパケット処理装置を得ることを目的とする。
【0008】
また、この発明は、一連番号付与手段や順序補正手段等の特別な手段を設けることなく並列パケット処理を実現するともに、並列に配置するパケット処理モジュール数の低減を可能にするパケット処理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、この発明は、可変長パケットの転送先判定等のパケット処理を実施するパケット処理モジュールの複数個を並列に配置するパケット処理装置において、入力されるパケット流の転送過程で前記各可変長パケットから前記パケット処理を実施するために必要とされるパケット情報を抽出するパケット情報抽出手段と、前記パケット情報抽出手段にて抽出された前記パケット情報を固定長のセルに変成する固定長セル化手段と、前記固定長セル化手段にて生成された固定長セルを並列に配置される前記パケット処理モジュールの複数個に順番にそれぞれの入力速度に調整して分配する分配手段と、前記パケット情報抽出手段から入力されるパケット流に、前記固定長セル化手段から前記パケット処理モジュールまでの処理時間を考慮した遅延処理を施す固定遅延手段と、前記パケット処理モジュールの複数個にて判定された転送先等の情報を前記固定遅延手段から入力する対応するパケットに挿入するパケット情報挿入手段とを備えていることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、入力される可変長パケットから転送先判定等のパケット処理に必要なヘッダ等の情報のみを固定長セル化し、それを並列に配置したパケット処理モジュールの複数個に分配するので、各パケット処理モジュールでの処理時間を固定時間化することができる。つまり、並列処理後のパケット順序補正が不要となる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、一連番号付与手段や順序補正手段等の特別な手段を設けることなく並列パケット処理を実現するパケット処理装置が得られるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に図面を参照して、この発明にかかるパケット処理装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるパケット処理装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、実施の形態1によるパケット処理装置1は、パケット情報抽出部2と、パケット遅延回路3aと、パケット情報挿入部4aと、固定長セル化部5と、分配手段であるディストリビュータ6と、並列に配置されたパケット処理モジュール7−1〜7−xとを備えている。ディストリビュータ6は、分配回路6aと、パケット処理モジュール7(1〜x)と1対1の関係で配置される速度変換回路6b(1〜x)とを備えている。
【0014】
パケット情報抽出部2は、外部から入力される可変長の各パケットをパケット遅延回路3aに送出する過程で、各入力パケットから転送先判定等のパケット処理を実施するのに必要なヘッダ等の情報(以降「パケット情報」と記す)を抽出し、それを固定長セル化部5に出力する。
【0015】
パケット遅延回路3aは、例えばメモリを備え、パケット情報抽出部2から送られてくる各パケットに、固定長セル化部5、ディストリビュータ6及びパケット処理モジュール7(7−1〜7−x)での合計処理時間(固定遅延時間)だけの遅延処理を施し、順にパケット情報挿入部4aに出力する。
【0016】
パケット情報挿入部4aは、パケット遅延回路3aにて遅延処理が施された各パケットにパケット処理モジュール7(1〜x)にて処理された当該パケットの転送先等の情報を挿入して各出力パケットを生成し、外部に送出する。
【0017】
さて、固定長セル化部5は、パケット情報抽出部2から入力する各パケット情報にオーバーヘッドを付加して固定長のセルに変成し、それをディストリビュータ6に与える。
【0018】
ディストリビュータ6では、まず、分配回路6aにて、固定長セル化部5が生成した固定長セルを速度変換回路6b(1〜x)に順番に分配する。速度変換回路6b(1〜x)では、入力する固定長セルを対応するパケット処理モジュール7(1〜x)の入力速度に変換して出力する。
【0019】
パケット処理モジュール7−1〜7−xは、それぞれ、いわゆる連想メモリ(CAM)を備え、固定長セルに含まれるパケット情報からパケットの転送先判定等を行い、その転送先等の判定結果を固定長セルに含まれるオーバーヘッドに設定してパケット情報挿入部4に与える。
【0020】
次に、図1を参照しつつ図2に沿って、以上のように構成されるパケット処理装置1の動作について説明する。なお、図2は、図1に示すパケット処理装置の動作を説明するタイムチャートである。ここでは、理解を容易にするため、パケット処理モジュール7−1〜7−xのうち、パケット処理モジュール7−1,7−2の2つを取り上げて説明する。
【0021】
パケット情報抽出部2への入力パケットは、図2(1)に示すように、例えばパケット(イ)とパケット(ロ)の2つであり、それぞれ長さが異なる。パケット(イ)のパケット情報はPh1であり、パケット(ロ)のパケット情報はPh2であるとしている。
【0022】
パケット情報抽出部2は、パケット(イ)のパケット情報Ph1と、パケット(ロ)のパケット情報Ph2とをそれぞれ抽出し、固定長セル化部5に与える(図2(2))。
【0023】
固定長セル化部5は、パケット情報Ph1にオーバーヘッドa1を付加して固定長セル化し、パケット情報Ph2にオーバーヘッドa2を付加して固定長セル化する(図2(3))。これらは、速度変換回路6b1,6b2にて速度変換処理を受ける。
【0024】
したがって、パケット処理モジュール7−1には、長さが変更されたパケット情報Ph1及びオーバーヘッドb1からなる固定長セルが入力され(図2(4))、パケット処理モジュール7−2には、長さが変更されたパケット情報Ph2及びオーバーヘッドb2からなる固定長セルが入力される(図2(4)(5))。
【0025】
パケット処理モジュール7−1,7−2では、固定長セルにおけるパケット情報Ph1,Ph2を元に転送先判定等のパケット処理を固定時間内で実施し、符号を違えたオーバーヘッドc1,c2に処理結果である転送先情報等を設定してパケット情報挿入部4aに出力する(図2(6)(7))。
【0026】
パケット遅延回路3aでは、パケット処理モジュール7−1,7−2が処理結果を出力するタイミングに合わせて、入力パケット(イ)(ロ)がパケット情報挿入部4aに到達するように遅延処理を施すので、パケット情報挿入部4aでは、入力パケット(イ)内のパケット情報Ph1に転送先情報等を挿入したオーバーヘッドd1を付加して入力パケット(イ)に対する出力パケット(ハ)を生成し、引き続いて入力パケット(ロ)内のパケット情報Ph2に転送先情報等を挿入したオーバーヘッドd2を付加して入力パケット(ロ)に対する出力パケット(ニ)を生成し、それぞれを連続して出力することができる(図2(8))。なお、パケット情報挿入部4aでは、オーバーヘッドd1,d2を付加する場合には、速度調整等も実施する。
【0027】
以上のように、実施の形態1によれば、可変長のパケットに対して、パケット処理で必要となるヘッダ情報等のみを固定長セル化し、それを並列に配置したパケット処理モジュールに分配してパケット処理時間を固定時間化し、パケットの入力順固定遅延後にパケット処理結果が出力されるようにしたので、特別なパケット順序補正回路を用意することなく、パケットの並列処理が可能となる。
【0028】
ここで、入力パケット速度をZ、パケット処理モジュールの処理速度をY、パケット処理モジュール並列配置数をX、固定長セル化するセルサイズを64バイトとした場合、Z=Y×Xとなるようにすれば、最短パケット(64バイト)のみが連続して入力された場合でも、ディストリビュータでは、特別なバッファを用意することなく、固定長セルを順番に分配しパケット処理モジュールの入力速度に速度変換を実施するのみで、パケット処理モジュールの処理速度Yに対するX倍のパケット処理(ワイヤレート処理)が可能となるので、簡易に装置全体としてのパケット処理能力を向上することができる。
【0029】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2によるパケット処理装置の構成を示すブロック図である。なお、図3では、図1(実施の形態1)に示した構成要素と同一ないしは同等である構成要素には同一の符号が付されている。ここでは、実施の形態2に関わる部分を中心に説明する。
【0030】
実施の形態1では、ワイヤーレート処理を実現するために、Z=Y×Xとなるようにパケット処理モジュールの所定数を並列配置する場合を示したが、この実施の形態2では、Z>Y×Xとなるようにパケット処理モジュールの所定数を並列配置する場合の構成例を示す。この場合には、パケット処理モジュールの並列配置数は、実施の形態1よりも少なくすることができる。
【0031】
図3に示すように、実施の形態2によるパケット処理装置10では、図1(実施の形態1)に示した構成において、符号を代えたパケット情報抽出部11、パケット遅延回路3b、パケット情報挿入部4b及びディストリビュータ12が設けられている。
【0032】
ディストリビュータ12では、分配回路6aと速度変換回路6b(1〜x)との間に、バッファ12a(1〜x)が設けられ、バッファ12a(1〜x)にセルの廃棄が発生した場合にパケット情報抽出部11に対してパケット廃棄指示信号13を出力するようになっている。パケット情報抽出部11は、パケット情報抽出部2の機能に加えて、パケット廃棄指示信号13を受けて、入力パケットのうち指定されたパケットの廃棄処理を行うようになっている。
【0033】
パケット遅延回路3bは、固定遅延型ではなく、遅延時間を可変操作できるFIFO型の遅延回路である。パケット情報挿入部4bは、パケット処理モジュール7(1〜x)から処理結果が入力すると、それに応答してパケット遅延回路3bのFIFOからパケットを読み出して出力パケットを生成する。
【0034】
パケット処理モジュールの並列配置数を削減する場合、削減する数は、平均パケット長等を考慮して算出する。例えば、平均パケット長を128バイトとすると、並列配置されたパケット処理モジュールでは、平均すると、入力パケットの128バイト内の時間で、固定長セル(今の例では64バイト)を1つ処理すればよいので、並列配置数を実施の形態1の最大半分程度まで削減することが可能である。
【0035】
但し、一時的に平均パケット長以下のパケットが連続する場合には、パケット処理モジュールで輻輳することが考えられる。そのため、図3に示すように、ディストリビュータ12に、パケット処理モジュール7(1〜x)と1対1の関係でバッファ12a(1〜x)を用意し、パケット処理モジュール7(1〜x)で固定長セル処理が輻輳した場合、このバッファにて待ち合わせを行い、バッファ溢れを生じた場合にはパケットの廃棄処理を行って対応するようにしている。
【0036】
次に、以上のように構成される実施の形態2によるパケット処理装置10の動作について説明する。
【0037】
パケット情報抽出部11は、外部から入力される各パケットをパケット遅延回路3bのFIFOに書き込む過程で、各入力パケットから転送先判定等のパケット処理を実施するのに必要なパケット情報を抽出し、それを固定長セル化部5に出力する。なお、パケット情報抽出部11は、入力されたパケットに対応する固定長セルのバッファ12a(1〜x)への書き込みが可能であることを判断した後、つまり、ディストリビュータ12から廃棄指示信号13の入力が無い場合に、その入力パケットをパケット遅延回路3bのFIFO型に書き込むようにしている。
【0038】
固定長セル化部5は、パケット情報抽出部11から入力する各パケット情報にオーバーヘッドを付加して固定長のセル(今の例では64バイト)に変成し、ディストリビュータ12に与える。
【0039】
ディストリビュータ12では、分配回路6aが、固定長セル化部5が生成した固定長セルをパケット処理モジュール7(1〜x)と1対1の関係で配置されるバッファ12a(1〜x)に順に分配する。バッファ12a(1〜x)に分配された固定長セルは、対応する速度変換回路6b(1〜x)を介してパケット処理モジュール7(1〜x)に転送される。
【0040】
ここで、並列配置されたパケット処理モジュール7(1〜x)のトータルの固定長セル処理速度よりも、ディストリビュータ12に入力される固定長セル速度が大きい場合は、バッファ12a(1〜x)にて待ち合わせが実施され、パケット処理モジュール7(1〜x)での輻輳に対応する。
【0041】
しかし、バッファ12a(1〜x)は有限サイズであるので、バッファ12a(1〜x)にてバッファ溢れが発生する場合がある。その場合には、溢れた固定長セルは廃棄するとともに、対応するパケットを廃棄するため、パケット情報抽出部11に対してパケット廃棄指示信号13を発行する。パケット情報抽出部11では、パケット廃棄指示信号13で指定されたパケットをパケット遅延回路3bに送出せずに廃棄する。
【0042】
パケット情報挿入部4は、パケット処理モジュール7(1〜x)からの処理結果出力をトリガとして、パケット遅延回路3bのFIFOからパケットを読み出し、それにパケット処理モジュール7(1〜x)からの処理結果を挿入する。その際に、パケットに対してオーバーヘッドを付与する場合は、速度調整等も実施する。
【0043】
以上のように、実施の形態2によれば、ディストリビュータにパケット処理モジュール対応にバッファを用意し、パケット処理モジュールでの固定長セル処理の一時的輻輳を待ち合わせるようにし、バッファ溢れが生じた場合は対応するパケットの廃棄を行うようにしたので、実施の形態1に比べてパケット処理モジュールの並列配置数を削減できる。
【0044】
実施の形態3.
図4は、この発明の実施の形態3によるパケット処理装置の構成を示すブロック図である。なお、図4では、図3(実施の形態2)に示した構成要素と同一ないしは同等である構成要素には同一の符号が付されている。ここでは、実施の形態3に関わる部分を中心に説明する。
【0045】
実施の形態2では、固定長セル処理が輻輳した場合に、ディストリビュータ内のバッファにて待ち合わせを行い、そのバッファも溢れた場合は、溢れた固定長セルを廃棄するとともに、対応するパケットを廃棄する方法を説明した。この方法では、廃棄されるパケットは、パケットの優先度等に関わらず廃棄されることになる。そこで、この実施の形態3では、パケット廃棄が起きた場合に取捨選択して廃棄できるようにし、高優先パケットの廃棄数を削減する構成例を示す。
【0046】
すなわち、図4に示す実施の形態3によるパケット処理装置20は、図3(実施の形態2)に示した構成において、ディストリビュータ12に代えてディストリビュータ21が設けられている。ディストリビュータ21では、優先度判定回路21aが追加され、符号を代えたバッファ21b(1〜x)には閾値22が設けられている。
【0047】
優先度判定回路21は、パケットの優先度を固定長セル内のパケット情報(サービスタイプフィールド等)から判断する。パケットの廃棄処理では、優先度判定回路21にて判断された優先度を参照して廃棄対象パケットを決定する。
【0048】
次に、以上のように構成される実施の形態3によるパケット処理装置20で実施されるパケットの廃棄処理について説明する。
【0049】
実施の形態2にて説明したように、並列配置されたパケット処理モジュール7(1〜x)のトータルの固定長セル処理速度よりも、ディストリビュータ21に入力される固定長セル速度が大きい場合は、バッファ21b(1〜x)にて待ち合わせが実施され、パケット処理モジュール7(1〜x)の輻輳に対応する。
【0050】
この実施の形態3では、ディストリビュータ21は、バッファ21b(1〜x)にて待ち合わせを実施する際に、バッファ21b(1〜x)の蓄積量が、閾値22を超えた場合は、優先度判定回路21aにて低優先と判断された固定長セルはバッファ21b(1〜x)への分配を行わずに廃棄する。
【0051】
そして、ディストリビュータ21は、対応する入力パケットを廃棄するため、パケット情報抽出部11に対しパケット廃棄指示信号13を発行する。パケット情報抽出部11では、パケット廃棄指示信号13にて指定された入力パケットを、ハケット遅延回路3bのFIFOに書き込まず廃棄する。
【0052】
このとき、低優先の廃棄を実施してもさらに、バッファ21b(1〜x)にてバッファ溢れが発生する場合は、溢れた固定長セルは廃棄するとともに、対応するパケットを廃棄するため、パケット情報抽出部11に対してパケット廃棄指示信号13を発行し、同様に対応したパケットはハケット遅延回路3bのFIFOに書き込まず廃棄する。
【0053】
なお、バッファ21b(1〜x)に設ける閾値は、図4では、1つのみとしているが、閾値を複数用意し、優先度判定回路21aにて複数優先度を判定し、優先度毎に廃棄制御を実施してもよい。
【0054】
以上のように、実施の形態3によれば、ディストリビュータ内のバッファに閾値を用意し、優先度判定回路にてパケットの優先度を判断し、低優先のパケットから優先的に廃棄するようにしたので、高優先パケットの廃棄数を削減することができる。
【0055】
実施の形態4.
図5は、この発明の実施の形態4によるパケット処理装置の構成を示すブロック図である。なお、図5では、図4(実施の形態3)に示した構成要素と同一ないしは同等である構成要素には同一の符号が付されている。ここでは、実施の形態4に関わる部分を中心に説明する。
【0056】
実施の形態3では、パケットヘッダのサービスタイプフィールド等に、明示的に優先度が表示されていることを前提として、優先度判定をディストリビュータ内で実施する場合を説明したが、この実施の形態4では、それらの表示がない場合に、パケット処理モジュールでのパケット処理結果による優先度判定を利用して同様のパケット廃棄処理を実施する構成例を示す。
【0057】
すなわち、図5に示す実施の形態4によるパケット処理装置30は、図4(実施の形態3)に示した構成において、ディストリビュータ12に代えてディストリビュータ31が設けられ、また、パケット処理モジュール7(1〜x)に代えてパケット処理モジュール32(1〜x)が設けられている。
【0058】
ディストリビュータ31では、ディストリビュータ12において、圧縮コード挿入回路31aと優先度判定テーブル31bとが追加されている。
【0059】
圧縮コード挿入回路31aは、固定長セル化されたセルに格納されているパケット情報をハッシュ等によって圧縮コード化し、それを固定長セルのオーバーヘッド領域に挿入する。
【0060】
したがって、パケット処理モジュール32(1〜x)は、圧縮コード化されたパケット情報を元に転送先判定等を行ってパケット情報挿入部4bに出力するが、この実施の形態4では、転送先判定等に加えて、パケットの優先度判定も実施し、その判定した優先度を圧縮コードと対応する形で固定長セルのオーバーヘッド領域に格納し、それをディストリビュータ31に設けた優先度判定テーブル31bに出力する。
【0061】
優先度判定テーブル31bは、パケット処理モジュール32(1〜x)から送られてくる圧縮コードと優先度とを対応付けて格納し、圧縮コード挿入回路31aから受け取る圧縮コードをキーとして検索を実施し、優先度判定を行うようになっている。
【0062】
すなわち、ディストリビュータ31では、バッファ21b(1〜x)の蓄積量が、閾値22を超えた場合は、優先度判定テーブル31bでの判定結果、低優先と判断された固定長セルは、実施の形態3と同様に、バッファ21b(1〜x)への分配を行わずに廃棄し、パケット情報抽出部11にも対応する入力パケットをハケット遅延回路3bのFIFOに書き込まずに廃棄させる。
【0063】
そして、ディストリビュータ31では、低優先の廃棄を実施してもさらに、バッファ21b(1〜x)にてバッファ溢れが発生する場合も、実施の形態3と同様に、溢れた固定長セルは廃棄するとともに、対応するパケットをパケット情報抽出部11に廃棄させる。
【0064】
なお、バッファ21b(1〜x)に設ける閾値は、図5では、1つのみとしているが、閾値を複数用意し、優先度判定テーブル31bにて複数優先度を判定し、優先度毎に廃棄制御を実施してもよい。
【0065】
以上のように、実施の形態4によれば、パケット処理モジュールにて実施したパケットの優先度判定結果をディストリビュータ内の優先度判定テーブルに格納するようにしたので、パケットヘッダのサービスタイプフィールド等に明示的に優先度が表示されていない場合でも、優先度判定が実施可能となり、低優先のパケットから優先的に廃棄することができ、高優先パケットの廃棄数を削減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上のように、この発明にかかるパケット処理装置は、可変長パケットの転送先判定等のパケット処理を並列の実施する場合に、一連番号付与手段や順序補正手段等の特別な手段を設けることなく並列パケット処理を実現するのに有用である。
【0067】
また、この発明にかかるパケット処理装置は、可変長パケットの転送先判定等のパケット処理を並列の実施する場合に、一連番号付与手段や順序補正手段等の特別な設けることなく並列パケット処理を実現するとともに、パケット処理モジュールの並列配置数を削減するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】この発明の実施の形態1によるパケット処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すパケット処理装置の動作を説明するタイムチャートである。
【図3】この発明の実施の形態2によるパケット処理装置の構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態3によるパケット処理装置の構成を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態4によるパケット処理装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0069】
1,10,20,30 パケット処理装置
2,11 パケット情報抽出部
3a パケット遅延回路(固定遅延型)
3b パケット遅延回路(可変遅延型)
4a,4b パケット情報挿入部
5 固定長セル化部
6,12,21,31 ディストリビュータ(分配手段)
6a 分配回路
6b1〜6bx 速度変換回路
7−1〜7−x,32−1〜32−x パケット処理モジュール
12a1〜12ax バッファ
13 パケット廃棄指示信号
21a 優先度判定回路
21b1〜21bx バッファ
22 閾値
31a 圧縮コード挿入部
31b 優先度判定テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変長パケットの転送先判定等のパケット処理を実施するパケット処理モジュールの複数個を並列に配置するパケット処理装置において、
入力されるパケット流の転送過程で前記各可変長パケットから前記パケット処理を実施するために必要とされるパケット情報を抽出するパケット情報抽出手段と、
前記パケット情報抽出手段にて抽出された前記パケット情報を固定長のセルに変成する固定長セル化手段と、
前記固定長セル化手段にて生成された固定長セルを並列に配置される前記パケット処理モジュールの複数個に順番にそれぞれの入力速度に調整して分配する分配手段と、
前記パケット情報抽出手段から入力されるパケット流に、前記固定長セル化手段から前記パケット処理モジュールまでの処理時間を考慮した遅延処理を施す固定遅延手段と、
前記パケット処理モジュールの複数個にて判定された転送先等の情報を前記固定遅延手段から入力する対応するパケットに挿入するパケット情報挿入手段と
を備えていることを特徴とするパケット処理装置。
【請求項2】
可変長パケットの転送先判定等のパケット処理を実施するパケット処理モジュールの複数個を並列に配置するパケット処理装置において、
入力されるパケット流の転送過程で前記各可変長パケットから前記パケット処理を実施するために必要とされるパケット情報を抽出するとともに、パケット廃棄指示を受けて対応するパケットを転送せずに廃棄するパケット情報抽出手段と、
前記パケット情報抽出手段にて抽出された前記パケット情報を固定長のセルに変成する固定長セル化手段と、
前記固定長セル化手段にて生成された固定長セルを並列に配置される前記パケット処理モジュールの複数個と1対1の関係で配置されるバッファに順番に分配し、前記バッファから対応する前記パケット処理モジュールにそれぞれの入力速度に調整して出力するとともに、当該パケット処理モジュールでの前記固定長セルの処理で生ずる一時的輻輳に対する待ち合わせ制御を行い、バッファ溢れが生じたとき前記パケット廃棄指示を発行する分配手段と、
前記パケット情報抽出手段から入力される各パケットを読み出しがあるまで入力順に保持する可変遅延手段と、
前記パケット処理モジュールの複数個から判定された転送先等の情報の入力を受けて前記可変遅延手段から対応するパケットを読み出して前記転送先等の情報を挿入するパケット情報挿入手段と
を備えていることを特徴とするパケット処理装置。
【請求項3】
前記分配手段は、前記固定長セルに含まれる前記パケット情報における所定の表示から優先度を判定する手段と、前記各バッファに定めた閾値と蓄積量との関係を監視する手段とを備え、蓄積量が閾値を超えるときは低優先度のパケットを選択して前記パケット廃棄指示を発行することを特徴とする請求項2に記載のパケット処理装置。
【請求項4】
並列に配置される前記パケット処理モジュールの複数個は、それぞれ、処理する固定長セルから当該パケットの優先度を判定し、それを当該固定長セルと関連付けて出力する手段を備え、
前記分配手段は、前記パケット処理モジュールの複数個が出力する優先度と固定長セルとを関連付けて記憶する記憶手段と、前記各バッファに定めた閾値と蓄積量との関係を監視する手段とを備え、蓄積量が閾値を超えるときは前記固定長セル化手段にて生成された固定長セルに基づき前記記憶手段を検索し、低優先度のパケットを選択して前記パケット廃棄指示を発行することを特徴とする請求項2に記載のパケット処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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