説明

パターヘッド及びパタークラブ

【課題】距離に応じた打ち分けが正確かつ容易にできるようなパターヘッド及びパタークラブを提供する。
【解決手段】パターヘッド100は、偏平三角柱の各側面に、反発係数が各々異なる打球面101a,102a,103aを備え、パタークラブ110は、パターヘッドの上面中心から鉛直に立設されるシャフト111を備える。プレイヤーは、打球をすべき距離に応じて、反発係数が各々異なる複数の打球面のうちの一の打球面を選択して打球をする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフにおいて、主としてグリーン上でゴルフボールを打つために使用されるパタークラブ及びそのパターヘッドに係り、さらに詳しくは、反発係数が各々異なる複数の打球面を有するパターヘッド及びパタークラブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パタークラブを使用してグリーン上でゴルフボールを打つ際に、打球面(パターフェイス)における打球をする箇所毎に反発係数が異なること、即ちスイートスポットから離れると反発係数が低下することを利用し、ホールカップまでの距離に応じて、プレイヤーが、打球面における適切な打球箇所を選択して打球(パッティング)をすることが行われている。
【0003】
また特許文献1に示すように、距離に応じた打ち分けができるように、パターヘッドの面一の打球面の中に、硬度が各々異なる第1の打面,第2の打面,及び第3の打面を設け、比較的近距離に向けて打球をする場合には第1の打面を使用し、比較的中距離に向けて打球をする場合には第2の打面を使用し、比較的長距離に向けて打球をする場合には第3の打面を使用するものが知られている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−286587号公報(図1,図2,請求項2,4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたパターヘッドでは、面一の打球面の中に3つの打面が設けられているため、必ずしも正確な打ち分けができないという問題があった。即ち、各打面が隣接して設けられているため、例えば第1の打面での打球を意図しているのに第2の打面で打球をしてしまうということがある。またパターフェイスの打面でない箇所で打球をしてしまうということもある。
【0006】
本発明は、このような背景のもとになされたものであり、その目的は、距離に応じた打ち分けが正確かつ容易にできるようなパターヘッド及びパタークラブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために、次のような手段を採る。なお後述する発明を実施するための最良の形態の説明及び図面で使用した符号を参考のために括弧書きで付記するが、本発明の構成要素は該付記したものには限定されない。
【0008】
まず請求項1に係る発明は、三角柱又は直方体の各側面のうちの二以上の側面に打球面(101a〜103a,201a〜202a)が各々形成され、当該各打球面の反発係数が各々異なることを特徴とするパターヘッド(100,200)である。
【0009】
また請求項2に係る発明は、請求項1に記載したパターヘッド(100)であって、前記各打球面(101a〜103a)を各々有する複数の打球部材(101〜103)と、当該各打球部材が接合される基体(104)と、からなり、前記各打球部材は、同一の材質であり、かつ前記各打球面からの奥行き方向の厚み(t1〜t3)が各々異なることを特徴とするパターヘッドである。
【0010】
また請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載したパターヘッド(100)と、該パターヘッドの上面中心から鉛直に立設されるシャフト(111)と、からなることを特徴とするパタークラブ(110)である。
【0011】
さらに請求項4に係る発明は、請求項1又は2に記載したパターヘッド(200)と、該パターヘッドの上面中心に設けられ、前記各打球面のうちの一の打球面に対して並行であり、かつ鉛直に対して斜め方向となるようにシャフトを保持する保持部材(206)と、該保持部材に保持されるシャフト(211)と、からなることを特徴とするパタークラブ(210)である。
【発明の効果】
【0012】
まず請求項1に係るパターヘッドによれば、三角柱又は直方体の各側面のうちの二以上の側面に、反発係数が異なる打球面が各々形成されていることにより、打球をすべき距離に応じて、プレイヤーが、当該各打球面のうちの一の打球面を選択して打球をすれば良いので、距離に応じた打ち分けが正確かつ容易にできる。
【0013】
また請求項2に係るパターヘッドによれば、基体に接合される打球部材の厚みを各々異ならせることにより、各打球面の反発係数を各々異ならせているので、複数の異なる材質の打球部材を用意する必要が無い。
【0014】
また請求項3に係るパタークラブによれば、パターヘッドの上面中心から鉛直に立設されるシャフトを備えることにより、パターヘッドを真上から見下ろす形で又はパタークラブの真後ろからパッティングラインを見る形で打球をすることができるので、方向性が良く正確な打球をすることができると共に、略平地においてはパタークラブが自立するので、該パタークラブを自立させた状態で、パタークラブの真後ろからパッティグラインを確認して、打球をする方向を調整することができる。
【0015】
さらに請求項4に係るパタークラブによれば、パターヘッドの上面中心に設けられた保持部材により、複数の打球面のうちの一の打球面に対して並行かつ鉛直に対して斜め方向となるようにシャフトが保持されるので、あまり腰をかがめない体勢で打球をすることができると共に、右打ちのプレイヤーのみならず左打ちのプレイヤーにも容易に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るパターヘッド及びパタークラブについて、図面を参照して説明する。本発明に係るパターヘッド及びパタークラブは、三角柱又は直方体の各側面のうちの二以上の側面に打球面が各々形成され、当該各打球面の反発係数が各々異なることを特徴とするものである。このパターヘッド及びパタークラブには、図1及び図2に示す第1実施形態と、図3及び図4に示す第2実施形態とが含まれる。以下、各実施形態について説明し、さらに変形例について説明する。
【0017】
[1.第1実施形態に係るパターヘッド100及びパタークラブ110]
第1実施形態に係るパターヘッド100は、図1(a)に示すように、平面視で正三角形の形状を呈すると共に、図1(b)に示すように、立面視で当該正三角形の各辺の長さよりも短い高さの偏平正三角柱を呈し、当該偏平三角柱の各側面(即ち3側面)に、3つの打球面101a,102a,103aが形成されたものである。そしてパターヘッド100は、各打球面101a,102a,103aを各々有する複数の(ここでは3つの)打球部材101,102,103と、当該各打球部材101,102,103が接合される基体104と、からなる。
【0018】
ここで打球部材101は、図1(a)に示すように、平面視で等脚台形の下端左右から取付部101b,101bが突設された形状を呈すると共に、図1(b)に示すように、立面視でパターヘッド100の高さよりも取付部101b,101bの厚み分だけ高さが高い長方形の上端左右から当該取付部101b,101bが突設された逆凸型の形状を呈するものである。この打球部材101の正面が、該打球部材101が基体104に接合されたときに該基体104の側面と面一になる、平滑な打球面101aとされている。
【0019】
同様に打球部材102は、図1(a)に示すように、平面視で等脚台形の下端左右から取付部102b,102bが突設された形状を呈すると共に、図示しないが、立面視でパターヘッド100の高さよりも取付部102b,102bの厚み分だけ高さが高い長方形の上端左右から当該取付部102b,102bが突設された逆凸型の形状を呈するものである。この打球部材102の正面が、該打球部材102が基体104に接合されたときに該基体104の側面と面一になる、平滑な打球面102aとされている。
【0020】
同様に打球部材103は、図1(a)に示すように、平面視で等脚台形の下端左右から取付部103b,103bが突設された形状を呈すると共に、図示しないが、立面視でパターヘッド100の高さよりも取付部103b,103bの厚み分だけ高さが高い長方形の上端左右から当該取付部103b,103bが突設された逆凸型の形状を呈するものである。この打球部材103の正面が、該打球部材103が基体104に接合されたときに該基体104の側面と面一になる、平滑な打球面103aとされている。
【0021】
これら各打球部材101,102,103は、同一の材質により形成された中実の部材であり、例えばチタン又はチタン合金,ステンレス鋼又はステンレス合金,銅又は銅合金等により、鋳造や鍛造等で各々形成される。また各打球部材101,102,103は、図1(a)に示すように、各打球面101a,102a,103aからの奥行き方向の厚みt1,t2,t3が各々異なるように形成されており、ここでは打球部材101の打球面101aからの厚みt1>打球部材102の打球面102aからの厚みt2>打球部材103の打球面103aからの厚みt3となるように形成されている。
【0022】
これにより、3つの打球面のうち、打球面101aの反発係数が高くなって、比較的長距離に向けて打球をする場合には該打球面101aを使用するのが適するようになり、打球面102aの反発係数は中程度となって、比較的中距離に向けて打球をする場合には該打球面102aを使用するのが適するようになり、打球面103aの反発係数が低くなって、比較的短距離に向けて打球をする場合には該打球面103aを使用するのが適するようになる。ここで打球部材101の上面には、比較的長距離に向けて打球をするのに適する旨を示す目印101cとして「長」の文字が表示され、打球部材102の上面には、比較的中距離に向けて打球をするのに適する旨を示す目印102cとして「中」の文字が表示され、打球部材103の上面には、比較的短距離に向けて打球をするのに適する旨を示す目印103cとして「短」の文字が表示される。
【0023】
基体104は、図1(a)に示すように、各打球部材101,102,103を接合可能なように、平面視で前記正三角形の各辺が等脚台形状にえぐられた3つの凹部を有する形状を呈するものである。この基体104は、金属,プラスチック,又はセラミック等により、中実又は中空に形成される。この基体104の前記3つの凹部の各々に各打球部材101,102,103が密着するように嵌め込まれ、各打球部材101,102,103から突設された取付部101b,102b,103bに設けられたねじ穴にねじ105が挿通され、基体104の上面に設けられたねじ穴に該ねじ105が螺入されることにより、各打球部材101,102,103と基体104とが接合されて、パターヘッド100が形成される。
【0024】
このパターヘッド100では、基体104に接合される各打球部材101,102,103の厚みt1,t2,t3を各々異ならせることにより、各打球面101a,102a,103aの反発係数を各々異ならせているので、複数の異なる材質の打球部材を用意する必要が無い。
【0025】
第1実施形態に係るパタークラブ110は、図1(b)に示すように、上述したパターヘッド100と、該パターヘッド100の上面中心から鉛直に立設されるシャフト111と、からなるものである。ここでパターヘッド100の中心とは、パターヘッド100の平面形状である前記正三角形の図形状の中心を意味する。またシャフト111は、横断面が円形の形状を呈し、金属,プラスチック,又はグラスファイバー等により、中実又は中空に形成される既知のものである。
【0026】
このパタークラブ110を使用して打球をする場合には、プレイヤーは、打球をすべき距離に応じて、反発係数が各々異なる各打球面101a,102a,103aのうちの一の打球面(例えば打球面101a)を選択して打球をすれば良い。
【0027】
具体的には、まずプレイヤーは、選択した打球面101aがゴルフボールの後方に位置するように、パタークラブ110を自立させ、該パタークラブ110の真後ろからパッティグラインを確認して、打球をする方向を調整する。このパタークラブ110は、パターヘッド100の上面中心から鉛直に立設されるシャフト111を備えることにより、略平地においては自立するので、パタークラブ110を自立させた状態で、該パタークラブ110の真後ろからパッティグラインを確認して、打球をする方向を調整することができる。
【0028】
次に、パッティングラインを確認したプレイヤーは、図2(a)に示すように、パターヘッド100を真上から見下ろした状態で、右打ちの場合には、シャフト111の上端近傍を左手で把持すると共に、シャフト111の該左手よりも下側の部分を右手で把持する。そしてプレイヤーは、左手を支点にして、右手を後方(即ちプレイヤーの右側)に引き、該右手を前方(即ちプレイヤーの左側)に押し出すことにより、打球面101aでゴルフボールを打球する。この姿勢によれば、パターヘッド100を真上から見下ろす形で打球をすることができるので、方向性が良く正確な打球をすることができる。
【0029】
あるいは、パッティングラインを確認したプレイヤーは、図2(b)に示すように、パタークラブ110の後方にしゃがんだ状態で、右打ちの場合には、シャフト111の上端近傍を左手で把持すると共に、シャフト111の該左手よりも下側の部分を右手で把持する。そしてプレイヤーは、左手を支点にして、右手を後方に引き、該右手を前方に押し出すことにより、打球面101aでゴルフボールを打球する。この姿勢によれば、パタークラブ110の真後ろからパッティグラインを見る形で打球をすることができるので、方向性が良く正確な打球をすることができる。
【0030】
[2.第2実施形態に係るパターヘッド200及びパタークラブ210]
第2実施形態に係るパターヘッド200は、図3(a)に示すように、平面視で長辺及び短辺を有する長方形の形状を呈すると共に、図3(b)に示すように、立面視で当該長方形の各辺の長さよりも短い高さの偏平直方体を呈し、当該偏平直方体の長辺側の2側面(即ち正面及び背面)に、2つの打球面201a,202aが形成されたものである。そしてパターヘッド200は、各打球面201a,202aを各々有する複数の(ここでは2つの)打球部材201,202と、当該各打球部材201,202が接合される基体204と、からなる。
【0031】
ここで打球部材201は、図3(a)に示すように、平面視で長方形の左右から取付部201b,201bが突設された形状を呈すると共に、図3(b)に示すように、立面視でパターヘッド200の高さよりも取付部201b,201bの厚み分だけ高さが高い長方形の上端左右から当該取付部201b,201bが突設された逆凸型の形状を呈するものである。この打球部材201の正面が、該打球部材201が基体204に接合されたときに該基体204の側面と面一になる、平滑な打球面201aとされている。
【0032】
同様に打球部材202は、図3(a)に示すように、平面視で長方形の左右から取付部202b,202bが突設された形状を呈すると共に、図示しないが、立面視でパターヘッド200の高さよりも取付部202b,202bの厚み分だけ高さが高い長方形の上端左右から当該取付部202b,202bが突設された逆凸型の形状を呈するものである。この打球部材202の正面が、該打球部材202が基体204に接合されたときに該基体204の側面と面一になる、平滑な打球面202aとされている。
【0033】
これら各打球部材201,202は、異なる材質により形成された中実の部材であり、例えばチタン又はチタン合金,ステンレス鋼又はステンレス合金,銅又は銅合金のうちの異なる2つの材質により、鋳造や鍛造等で各々形成される。また各打球部材201,202は、図3(a)に示すように、各打球面201a,202aからの奥行き方向の厚みt1,t2が同一となるように形成されている。
【0034】
ここで打球部材201をチタン合金で形成し、打球部材202を銅合金で形成すると、2つの打球面のうち、打球面201aの反発係数が高くなって、比較的長距離に向けて打球をする場合には該打球面201aを使用するのが適するようになり、打球面202aの反発係数が低くなって、比較的短距離に向けて打球をする場合には該打球面202aを使用するのが適するようになる。ここで打球部材201の上面には、比較的長距離に向けて打球をするのに適する旨を示す目印201cとして「長」の文字が表示され、打球部材202の上面には、比較的短距離に向けて打球をするのに適する旨を示す目印202cとして「短」の文字が表示される。
【0035】
基体204は、図3(a)に示すように、各打球部材201,202を接合可能なように、平面視で前記長方形の長辺が長方形状にえぐられた2つの凹部を有するH型の形状を呈するものである。この基体204は、金属,プラスチック,又はセラミック等により、中実又は中空に形成される。この基体204の前記2つの凹部の各々に各打球部材201,202が密着するように嵌め込まれ、各打球部材201,202から突設された取付部201b,202bに設けられたねじ穴にねじ205が挿通され、基体204の上面に設けられたねじ穴に該ねじ205が螺入されることにより、各打球部材201,202と基体204とが接合されて、パターヘッド200が形成される。
【0036】
このパターヘッド200では、基体204に接合される各打球部材201,202の材質を各々異ならせることにより、各打球面201a,202aの反発係数を各々異ならせているので、打球部材201,202の形状が1種類で済み、該打球部材201,202の構造が簡素かつ製作が容易になる。
【0037】
第2実施形態に係るパタークラブ210は、図3(b)(c)に示すように、上述したパターヘッド200と、該パターヘッド200の上面中心に設けられる保持部材206と、該保持部材206に保持されるシャフト211と、からなるものである。ここでパターヘッド200の中心とは、パターヘッド200の平面形状である前記長方形の図形状の中心を意味する。またシャフト211は、横断面が円形の形状を呈し、金属,プラスチック,又はグラスファイバー等により、中実又は中空に形成される既知のものである。ただしシャフト211の下端は、図3(c)に示すように、側面視で逆凸型に形成されていると共に、該逆凸型の突出部には正面視で貫通穴が設けられている。
【0038】
保持部材206は、図3(c)に示すように、側面視で凹型を呈し、該凹型の両突出部に正面視で貫通穴が設けられている土台206aと、該土台206aの貫通穴に挿通される蝶ねじ206bと、該土台206aの貫通穴に挿通された蝶ねじ206bの先端に螺合されるナット206cと、からなる。
【0039】
そして土台206aの凹部にシャフト211の下端に形成された逆凸型の突出部が嵌合され、土台206aの手前の貫通穴,シャフト211の貫通穴,及び土台206aの奥の貫通穴に蝶ねじ206bが挿通され、シャフト211を鉛直に対して斜め方向となるようにした状態で、該蝶ねじ206bの先端にナット206cが螺合されて締め付けられることにより、各打球面201,202のうちの一の打球面に対して並行であり、かつ鉛直に対して斜め方向となるように、シャフト211が保持部材206に保持されて、パタークラブ210が形成される。
【0040】
このパタークラブ210を使用して打球をする場合には、プレイヤーは、打球をすべき距離に応じて、反発係数が各々異なる各打球面201a,202aのうちの一の打球面を選択し、保持部材206によるシャフト211の保持方向を変えることにより、該選択した打球面で打球が可能なパタークラブ210を形成する。
【0041】
具体的には、プレイヤーが右打ちの場合において、打球面201aで打球をする場合には、シャフト211を、図3(b)の二点鎖線で示すように、該打球面201aに向かって右側に傾斜させた状態で、ナット206cを締め付けることにより、打球面201aで打球が可能なパタークラブ210とする。そしてプレイヤーは、図4に示すように、該パタークラブ210を両手で把持した状態で、やや腰をかがめて、打球面201aがゴルフボールの後方となるようにパタークラブ210を構え、該パタークラブ210を後方に引いた後に前方にスイングすることにより、打球面201aでゴルフボールを打球する。
【0042】
一方、プレイヤーが右打ちの場合において、打球面202aで打球をする場合には、シャフト211を、図3(b)の実線で示すように、打球面201aに向かって左側に傾斜させた状態(即ち打球面202aに向かって右側に傾斜させた状態)で、ナット206cを締め付けることにより、打球面202aで打球が可能なパタークラブ210とする。そしてプレイヤーは、図示しないが、該パタークラブ210を両手で把持した状態で、やや腰をかがめて、打球面202aがゴルフボールの後方となるようにパタークラブ210を構え、該パタークラブ210を後方に引いた後に前方にスイングすることにより、打球面202aでゴルフボールを打球する。
【0043】
この図4に示す姿勢によれば、通常良く行われている、あまり腰をかがめない体勢で打球をすることができる。またシャフト211の方向を逆にすることにより、右打ちのプレイヤーのみならず左打ちのプレイヤーにも容易に対応することができる。
【0044】
以上に説明したように、本発明に係るパターヘッド100,200,及びパタークラブ110,210によれば、三角柱又は直方体の各側面のうちの二以上の側面に、反発係数が異なる打球面が各々形成されていることにより、打球をすべき距離に応じて、プレイヤーが、当該各打球面のうちの一の打球面を選択して打球をすれば良いので、距離に応じた打ち分けが正確かつ容易にできる、という顕著な効果を奏する。
【0045】
またゴルフ場では、グリーン上におけるゴルフボールの転がり具合(速さ)が、かなり速い,やや速い,普通,やや遅い,かなり遅い等、該グリーンのコンディションがその日によって各々異なるが、本発明によれば、該コンディションに合った打球面による打球を選択して打球をすることができる。またグリーンには、フラット,上り,下り等の傾斜が多くあるが、本発明によれば、該グリーンの傾斜に合った打球面を選択して打球をすることができる。さらにプレイヤーにおいて、当日の本人の体調も様々であるが、該体調にあった打球面を選択して打球をすることができる。即ち、本発明によれば、打球をすべき距離に応じて打球面を選択するのみならず、グリーンに合ったタッチやプレイヤーの好みのタッチが得られる打球面を選択して打球をすることもできる。さらに本発明によれば、該選択した打球面での打球を練習グリーンでテストできる。
【0046】
ここで前記特許文献1に記載されたパターヘッドと比較した本発明の優位性を明らかにしておく。まず、前記特許文献1に記載されたパターヘッドでは、面一の打球面の中に複数の打面が設けられているので、意図しない打面で打球をしてしまうという問題がある。これに対し、本発明では、面一でない複数の打球面が設けられているので、意図しない打球面で打球をしてしまうということがない。
【0047】
また、前記特許文献1に記載されたパターヘッドでは、面一の打球面の中に複数の打面が設けられているので、シャフトを該パターヘッドのいかなる位置に固定しようとも、3つの打面のうちの2つの打面で打球をする場合に、該シャフトにモーメントが影響して、正確な打球をすることができないという問題がある。具体的には、特許文献1の図1に示す如く、シャフトがパターヘッドのヒール部近傍に固定されていると、該ヒール部の打面で打球をする場合にはモーメントの影響は小さいが、トウ部の打面,及び中央部の打面で打球をする場合にはモーメントの影響が大きい。仮にシャフトがパターヘッドの中央部に固定されていても、該中央部の打面で打球をする場合にはモーメントの影響は小さいが、トウ部の打面,及びヒール部の打面で打球をする場合にはモーメントの影響が大きい。このようにモーメントの影響が大きいと、シャフトを把持しているグリップがゆるんだりして、正確な打球をすることができない。これに対し、本発明では、面一でない複数の打球面を有するパターヘッド100,200の上面中心にシャフト111,211が固定されており、通常は打球面の中央部で打球をするので、モーメントの影響はほとんど無く、正確な打球をすることができる。
【0048】
[3.変形例]
最後に、本発明の変形例について説明する。
【0049】
上記の第1実施形態では、図1(a)に示すように、パターヘッド100の平面形状が正三角形である例について説明したが、これに限らず、該パターヘッド100の平面形状は、正三角形以外の三角形(例えば二等辺三角形)であっても良い。また三角柱の3つの側面すべてを打球面とするのではなく、2つの側面のみを打球面としても良い。また打球部材の厚みで反発係数を異ならせるのではなく、第2実施形態の如く打球部材の材質で反発係数を異ならせるようにしても良い。さらにシャフト111は、パターヘッド100に固定されるのではなく、該パターヘッド100の上面中心に設けられた保持部材により水平面内で回動可能に保持され、各打球面のうちの一の打球面に対して並行であり、かつ鉛直に対して斜め方向となるように保持されるようにしても良い。
【0050】
上記の第2実施形態では、図3(a)に示すように、パターヘッド200の平面形状が長方形である例について説明したが、これに限らず、該パターヘッド200の平面形状は、正方形であっても良い。また直方体の2つの側面のみを打球面とするのではなく、3つの側面,又は4つの側面を打球面としても良い。また打球部材の材質で反発係数を異ならせるのではなく、第1実施形態の如く打球部材の厚みで反発係数を異ならせるようにしても良い。さらにシャフト211は、保持部材206により保持されるのではなく、パターヘッド200の上面中心から鉛直に立設されるようにしても良い。
【0051】
上記の実施形態では、パターヘッド100,200において、打球部材と基体とがねじにより接合される例について説明したが、これに限らず、該打球部材と基体とは、接着,溶接等の他の方法により接合されるものであっても良い。また打球部材と基体とが別体のものではなく一体のものであっても良い。
【0052】
上記の実施形態では、基体104,204に形成された凹部に打球部材が嵌め込まれて接合される例について説明したが、これに限らず、該基体104,204の平滑な側面に打球部材(第1実施形態であれば厚みが異なる打球部材,第2実施形態であれば厚みが同一である打球部材)が貼り付けられて接合されるものであっても良い。これによれば、基体104,204に凹部を形成する必要がないため、該基体104,204の構造が簡素かつ製作が容易になる。
【0053】
上記の実施形態では、図1(a)に示すように、目印101c〜103cが打球部材101〜103に設けられ、図2(a)に示すように、目印201c〜202cが打球部材201〜202に設けられる例について説明したが、これに限らず、これら目印が基体104,204に設けられるようにしても良い。
【0054】
上記の第2実施形態では、保持部材206が、土台206a,蝶ねじ206b,及びナット206cからなり、蝶ネジ206bとナット206cの締め付けによりシャフト211を保持する例について説明したが、これに限らず、例えば一方向ラチェット等の他の方法によりシャフト211を保持するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は第1実施形態の一例を表す図であり、(a)はパターヘッドの平面図,(b)はパタークラブの正面図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係るパタークラブを用いて打球をする様子の一例を表す図である。
【図3】図3は、第2実施形態の一例を表す図であり、(a)はパターヘッドの平面図,(b)はパタークラブの正面図,(c)はパタークラブの側面図である。
【図4】図4は、第2実施形態に係るパタークラブを用いて打球をする様子の一例を表す図である。
【符号の説明】
【0056】
[第1実施形態]
100…パターヘッド
101〜103…打球部材
101a〜103a…打球面
101b〜103b…取付部
101c〜103c…目印
104…基体
105…ねじ
110…パタークラブ
111…シャフト
[第2実施形態]
200…パターヘッド
201〜202…打球部材
201a〜202a…打球面
201b〜202b…取付部
201c〜202c…目印
204…基体
205…ねじ
206…保持部材
206a…土台
206b…蝶ねじ
206c…ナット
210…パタークラブ
211…シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三角柱又は直方体の各側面のうちの二以上の側面に打球面が各々形成され、当該各打球面の反発係数が各々異なることを特徴とするパターヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載したパターヘッドであって、
前記各打球面を各々有する複数の打球部材と、
当該各打球部材が接合される基体と、からなり、
前記各打球部材は、同一の材質であり、かつ前記各打球面からの奥行き方向の厚みが各々異なることを特徴とするパターヘッド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載したパターヘッドと、
該パターヘッドの上面中心から鉛直に立設されるシャフトと、
からなることを特徴とするパタークラブ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載したパターヘッドと、
該パターヘッドの上面中心に設けられ、前記各打球面のうちの一の打球面に対して並行であり、かつ鉛直に対して斜め方向となるようにシャフトを保持する保持部材と、
該保持部材に保持されるシャフトと、
からなることを特徴とするパタークラブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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