パターヘッド
【課題】ボールにトップスピンがかかり易く、かつこのトップスピンのかけ易さの温度依存性が小さいパターヘッドを提供する。
【解決手段】ヘッド本体2の前面(フェース面)に凹部2Hが設けられ、この凹部2H内にフェースインサート3が配置されている。このフェースインサート3の底面から上方に向ってスリット3aが設けられている。スリット3aは、フェースインサート3のトウ側端部近傍からヒール側端部近傍まで延在している。スリット3aの下端部はフェースインサート3の後縁に位置している。スリット3aの天井面はトウ側からヒール側に向ってアーチ状となっている。スリット3aに粘弾性材3bが充填されてもよい。
【解決手段】ヘッド本体2の前面(フェース面)に凹部2Hが設けられ、この凹部2H内にフェースインサート3が配置されている。このフェースインサート3の底面から上方に向ってスリット3aが設けられている。スリット3aは、フェースインサート3のトウ側端部近傍からヒール側端部近傍まで延在している。スリット3aの下端部はフェースインサート3の後縁に位置している。スリット3aの天井面はトウ側からヒール側に向ってアーチ状となっている。スリット3aに粘弾性材3bが充填されてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフのパターのパターヘッドに関するものであり、特にヘッド本体のフェース面にフェースインサートを装着したパターヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴルフのパターは、主としてグリーン上においてボールをヒットしてボールをカップに向けて転がす用途に用いられるクラブである。特開2007−117635には、パターヘッドのフェース面にフェースインサートを装着して打感を柔らかくすることが記載されている。
【0003】
特開2001−62008には、フェース面の下部に合成樹脂発泡体を一体に設けることによりトップスピンをかけ易くしたパターヘッドが記載されている。しかしながら、合成樹脂発泡体は特性の温度依存性が強いので、気温によってトップスピンのかかり方がかなり変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−117635
【特許文献2】特開2001−62008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、通常のパターに比べボールを打った時にボールのバックスピンが減少し、ひいては、ボールにトップスピンがかかり易く、かつこのトップスピンのかけ易さの温度依存性が小さいパターヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1のパターヘッドは、ヘッド本体のフェース面にフェースインサートを装着したパターヘッドにおいて、該フェースインサートに、該フェースインサートの底面から上方に切り込まれたスリットが設けられており、該スリットよりもフェース面側の前面部と該スリットよりも後面側の後面部とが該スリットよりもトウ側及びヒール側において連なっていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2のパターヘッドは、請求項1において、前記スリットはフェースインサートのトウ側端部近傍からヒール側端部近傍まで延在していることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3のパターヘッドは、請求項1又は2において、前記スリットは、フェースインサートのトウ・ヒール方向の中央部において最も深くなっており、該中央部からトウ側及びヒール側に向って連続的に又は段階的に浅くなっていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4のパターヘッドは、請求項1ないし3のいずれか1項において、該スリットに粘弾性材が充填されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のパターヘッドのフェースインサートには、底面から上方に向って切り込まれた形状のスリットが設けられている。そのため、ボールをヒットしたときにフェースインサートの前面部の下部が後退し、バックスピンが減少し、ボールにトップスピンがかかり易いものとなり、ヒットされたボールの直進性が良好となる。
【0011】
このスリットのトウ側及びヒール側において、フェースインサートの前面部と後面部とが連なっているので、フェースインサートは強度及び耐久性に優れる。
【0012】
このスリットは、フェースインサートのトウ側端部近傍からヒール側端部近傍まで延在していることが好ましい。
【0013】
このスリットに粘弾性材を充填することにより、打球音や、打感の調節を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)図は実施の形態に係るパターヘッドの分解斜視図、(b)図はこのパターヘッドの正面図、(c)図は(b)図のC−C線断面図である。
【図2】フェースインサートの正面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】スリットに粘弾性体を充填したフェースインサートの断面図である。
【図6】別の実施の形態に係るパターヘッドのフェースインサートの断面図である。
【図7】別の実施の形態に係るパターヘッドのフェースインサートの断面図である。
【図8】別の実施の形態に係るパターヘッドのフェースインサートの断面図である。
【図9】別の実施の形態に係るパターヘッドのフェースインサートの前後方向の縦断面図である。
【図10】異なる実施の形態に係るパターヘッドの断面図である。
【図11】(a)図は、さらに異なる実施の形態に係るパターヘッドの正面図、(b)図は(a)図のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0016】
第1図〜第4図は第1の実施の形態に係るパターヘッド1を示すものである。このパターヘッド1では、ヘッド本体2の前面(フェース面)に凹部2Hが設けられ、この凹部2H内にフェースインサート3が配置されている。この実施の形態では、ヘッド本体2はアルミ合金、チタン合金、銅合金、ステンレスなどの金属製である。フェースインサート3は、ポリエステル、ナイロン、ウレタンなどの合成樹脂又はアルミ合金、銅合金、ステンレスなどの金属よりなる。フェースインサート3の前面と、凹部2Hの周囲のヘッド本体2の前面とは面一である。
【0017】
凹部2H及びフェースインサート3は、横長の略長方形状である。凹部2Hの深さは全体として均一であり、フェースインサート3の厚さも全体として均一である。ただし、部分的に深い箇所及び厚い部位を設けたり、逆に部分的に浅い箇所及び薄い部位を設けてもよい。
【0018】
フェースインサート3の左右幅及び上下幅は凹部2Hよりも若干小さいものとなっており、フェースインサート3の上下左右の側面3Sと凹部2Hの周面2Sとの間には若干の空隙4があいている。この空隙4の幅は0.3〜1.5mm特に0.4〜1.0mm程度が好適である。フェースインサート3の大きさは上下幅H0が16〜30mm特に18〜25mm、左右幅W0が50〜150mm特に70〜100mm、厚さが2〜10mm特に3〜8mm程度が好ましいが、これに限定されない。
【0019】
第2図〜第4図に明示の通り、このフェースインサート3にあっては、その底面から上方に向って切り込まれた形状のスリット3aが設けられている。スリット3aは、フェースインサート3のトウ側端部近傍からヒール側端部近傍まで延在している。フェースインサート3のトウ側及びヒール側の側端面にはスリット3aは到達していない。スリット3aよりも前面(フェース面)側の前面部と、スリット3aよりも後面側の後面部とは、このフェースインサート3のトウ側端部及びヒール側端部において連なっている。また、フェースインサート3のトウ側端部及びヒール側端部の底面は、フェースインサート3の該前面部及び後面部の底面と面一となっている。
【0020】
このスリット3aは、トウ・ヒール方向(パターヘッドの正面視において左右方向)の中央付近において最も深くなっており、この中央付近からトウ側及びヒール側に向って徐々に浅くなっている。この実施の形態では、第4図において、スリット3aの天井面は略半楕円形のアーチ状となっている。
【0021】
この実施の形態において、スリット3aのトウ・ヒール方向の長さW1は、フェースインサート3のトウ・ヒール方向の長さW0の80〜98%特に85〜90%であることが好ましい。
【0022】
第3図の通り、この実施の形態においては、フェース面を鉛直とした状態において、スリット3aは、鉛直方向に設けられている。また、スリット3bの前後方向の幅(スリット厚み)t2は全体にわたって均等となっている。この実施の形態では、スリット3aよりもフェース面側の前面部の厚みt1は、後面部の厚みt3よりも小さくなっており、スリット3aは、フェースインサート3の厚み方向の中間よりも若干フェース面側に位置しているが、中間に位置してもよい。フェースインサート3の全体の厚み(t1+t2+t3)に対し、スリット3aの厚みt2の比率は10〜50%特に25〜45%程度であることが好ましく、t1の比率は10〜50%特に25〜40%程度であることが好ましい。
【0023】
このスリット3aは、フェースインサート3の素板に対し切削加工を施すことにより容易に形成することができるが、フェースインサート3を合成樹脂製とする場合には、射出成形用金型にスリット3aに相当する凸部を中子等により形成しておくことにより、フェースインサートの成形時にスリット3aを併せて形成するようにしてもよい。
【0024】
フェースインサート3は、第3図の左側面がパターのフェース前面となるように凹部2H内に配置され、反対側が接着剤によって凹部2Hの奥壁面に接着される。接着剤としては、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤、両面テープなどが好適であるが、これに限定されない。
【0025】
このように構成されたパターヘッド1のホゼル部1hにシャフトを連結することによりパターが構成される。このパターでパッティング(グリーン上のボールをフェース面で打つこと)すると、ボールをヒットしたときにフェースインサート3の前面部(スリット3aよりもフェース側)が若干後退することにより、トップスピンがかかり易くなり、ヒットされたボールの直進性が良好となる。また、このフェースインサート3の前面部の変形特性は気温の変化に殆ど影響されず、トップスピンのかかり易さに温度依存性が殆どない。
【0026】
本発明では、第5図のようにスリット3aに粘弾性材3bを充填してもよい。粘弾性材としてはゴム、エラストマー、軟質合成樹脂などが用いられる。スリット3aに粘弾性材を充填すると、ボールをヒットしたときの打球音や打感を調節することができる。この粘弾性材は、フェースインサートの前面部の変形特性に殆ど影響せず、トップスピンのかかり易さに温度依存性は実質的にない。
【0027】
上記実施の形態のフェースインサート3では、スリット3aの天井面はトウ側からヒール側にかけて半楕円形のアーチ状となっており、トウ・ヒール方向の中央付近からトウ側及びヒール側に向って連続的に低く(即ち、スリット3aが浅く)なっているが、第6図のフェースインサート3Aのようにトウ・ヒール方向の中央付近からトウ側及びヒール側に向って段階的に低くなってもよい。また、第7図のフェースインサート3Bのように、トウ・ヒール方向の中央付近ではスリット3aの深さはトウ・ヒール方向において一定であり、トウ側近傍及びヒール側近傍においてトウ側及びヒール側に向って徐々に(又は段階的に)浅くなるようにしてもよい。
【0028】
本発明では、第8図のフェースインサート3Dのように、スリット3aと、フェースインサート3Dのトウ側側端面及びヒール側側端面とを連通する浅い溝部3dを設けてもよい。この浅い溝部3dの深さH2は、フェースインサート3Dの高さH0の20%以下特に15%以下であることが好ましい。なお、H2を過度に大きくすると、(例えば、H2を前述のH1と同等にすると、)ボールを打ったときのボールの反発性が低くなる。H2をH0の20%以下(0%を含む。)とすると、ボールの反発性が高くなり、ボールの転がる距離が長くなる。
【0029】
本発明では、第9図(a)のフェースインサート3Eのように、スリット3aを上部ほどフェース側となるように前傾状態としてもよく、逆に、第9図(b)のフェースインサート3Fのように後傾させてもよい。
【0030】
上記実施の形態では、フェースインサートの前面は平坦となっているが、横長の溝を複数本平行に設けてもよい。溝の幅員(上下幅)は0.3〜1.6mm程度が好適であり、溝の深さは0.05〜1.1mm程度が好ましい。
【0031】
第1図では、フェースインサート3の周囲に空隙4を形成しているが、第10図のようにこの空隙に、ゴム、エラストマー、合成樹脂などの粘弾性材8を配材してもよい。また、第11図のパターヘッド1’のように、空隙4が生じないようにフェースインサート3を凹部2Hにぴったりと嵌まるように構成してもよい。
【0032】
第10,11図のその他の構成は第1図と同様であり、同一符号は同一部分を示している。なお、フェースインサート3の側面3Sと凹部2Hの周面2Sとの間に空隙4や粘弾性材8を設けると、フェースインサートの反発特性が設計通りになるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0033】
1,1’ パターヘッド
2 ヘッド本体
2H 凹部
3,3A,3B,3D,3E,3F フェースインサート
3a スリット
3b 粘弾性材
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフのパターのパターヘッドに関するものであり、特にヘッド本体のフェース面にフェースインサートを装着したパターヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴルフのパターは、主としてグリーン上においてボールをヒットしてボールをカップに向けて転がす用途に用いられるクラブである。特開2007−117635には、パターヘッドのフェース面にフェースインサートを装着して打感を柔らかくすることが記載されている。
【0003】
特開2001−62008には、フェース面の下部に合成樹脂発泡体を一体に設けることによりトップスピンをかけ易くしたパターヘッドが記載されている。しかしながら、合成樹脂発泡体は特性の温度依存性が強いので、気温によってトップスピンのかかり方がかなり変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−117635
【特許文献2】特開2001−62008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、通常のパターに比べボールを打った時にボールのバックスピンが減少し、ひいては、ボールにトップスピンがかかり易く、かつこのトップスピンのかけ易さの温度依存性が小さいパターヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1のパターヘッドは、ヘッド本体のフェース面にフェースインサートを装着したパターヘッドにおいて、該フェースインサートに、該フェースインサートの底面から上方に切り込まれたスリットが設けられており、該スリットよりもフェース面側の前面部と該スリットよりも後面側の後面部とが該スリットよりもトウ側及びヒール側において連なっていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2のパターヘッドは、請求項1において、前記スリットはフェースインサートのトウ側端部近傍からヒール側端部近傍まで延在していることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3のパターヘッドは、請求項1又は2において、前記スリットは、フェースインサートのトウ・ヒール方向の中央部において最も深くなっており、該中央部からトウ側及びヒール側に向って連続的に又は段階的に浅くなっていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4のパターヘッドは、請求項1ないし3のいずれか1項において、該スリットに粘弾性材が充填されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のパターヘッドのフェースインサートには、底面から上方に向って切り込まれた形状のスリットが設けられている。そのため、ボールをヒットしたときにフェースインサートの前面部の下部が後退し、バックスピンが減少し、ボールにトップスピンがかかり易いものとなり、ヒットされたボールの直進性が良好となる。
【0011】
このスリットのトウ側及びヒール側において、フェースインサートの前面部と後面部とが連なっているので、フェースインサートは強度及び耐久性に優れる。
【0012】
このスリットは、フェースインサートのトウ側端部近傍からヒール側端部近傍まで延在していることが好ましい。
【0013】
このスリットに粘弾性材を充填することにより、打球音や、打感の調節を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)図は実施の形態に係るパターヘッドの分解斜視図、(b)図はこのパターヘッドの正面図、(c)図は(b)図のC−C線断面図である。
【図2】フェースインサートの正面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】スリットに粘弾性体を充填したフェースインサートの断面図である。
【図6】別の実施の形態に係るパターヘッドのフェースインサートの断面図である。
【図7】別の実施の形態に係るパターヘッドのフェースインサートの断面図である。
【図8】別の実施の形態に係るパターヘッドのフェースインサートの断面図である。
【図9】別の実施の形態に係るパターヘッドのフェースインサートの前後方向の縦断面図である。
【図10】異なる実施の形態に係るパターヘッドの断面図である。
【図11】(a)図は、さらに異なる実施の形態に係るパターヘッドの正面図、(b)図は(a)図のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0016】
第1図〜第4図は第1の実施の形態に係るパターヘッド1を示すものである。このパターヘッド1では、ヘッド本体2の前面(フェース面)に凹部2Hが設けられ、この凹部2H内にフェースインサート3が配置されている。この実施の形態では、ヘッド本体2はアルミ合金、チタン合金、銅合金、ステンレスなどの金属製である。フェースインサート3は、ポリエステル、ナイロン、ウレタンなどの合成樹脂又はアルミ合金、銅合金、ステンレスなどの金属よりなる。フェースインサート3の前面と、凹部2Hの周囲のヘッド本体2の前面とは面一である。
【0017】
凹部2H及びフェースインサート3は、横長の略長方形状である。凹部2Hの深さは全体として均一であり、フェースインサート3の厚さも全体として均一である。ただし、部分的に深い箇所及び厚い部位を設けたり、逆に部分的に浅い箇所及び薄い部位を設けてもよい。
【0018】
フェースインサート3の左右幅及び上下幅は凹部2Hよりも若干小さいものとなっており、フェースインサート3の上下左右の側面3Sと凹部2Hの周面2Sとの間には若干の空隙4があいている。この空隙4の幅は0.3〜1.5mm特に0.4〜1.0mm程度が好適である。フェースインサート3の大きさは上下幅H0が16〜30mm特に18〜25mm、左右幅W0が50〜150mm特に70〜100mm、厚さが2〜10mm特に3〜8mm程度が好ましいが、これに限定されない。
【0019】
第2図〜第4図に明示の通り、このフェースインサート3にあっては、その底面から上方に向って切り込まれた形状のスリット3aが設けられている。スリット3aは、フェースインサート3のトウ側端部近傍からヒール側端部近傍まで延在している。フェースインサート3のトウ側及びヒール側の側端面にはスリット3aは到達していない。スリット3aよりも前面(フェース面)側の前面部と、スリット3aよりも後面側の後面部とは、このフェースインサート3のトウ側端部及びヒール側端部において連なっている。また、フェースインサート3のトウ側端部及びヒール側端部の底面は、フェースインサート3の該前面部及び後面部の底面と面一となっている。
【0020】
このスリット3aは、トウ・ヒール方向(パターヘッドの正面視において左右方向)の中央付近において最も深くなっており、この中央付近からトウ側及びヒール側に向って徐々に浅くなっている。この実施の形態では、第4図において、スリット3aの天井面は略半楕円形のアーチ状となっている。
【0021】
この実施の形態において、スリット3aのトウ・ヒール方向の長さW1は、フェースインサート3のトウ・ヒール方向の長さW0の80〜98%特に85〜90%であることが好ましい。
【0022】
第3図の通り、この実施の形態においては、フェース面を鉛直とした状態において、スリット3aは、鉛直方向に設けられている。また、スリット3bの前後方向の幅(スリット厚み)t2は全体にわたって均等となっている。この実施の形態では、スリット3aよりもフェース面側の前面部の厚みt1は、後面部の厚みt3よりも小さくなっており、スリット3aは、フェースインサート3の厚み方向の中間よりも若干フェース面側に位置しているが、中間に位置してもよい。フェースインサート3の全体の厚み(t1+t2+t3)に対し、スリット3aの厚みt2の比率は10〜50%特に25〜45%程度であることが好ましく、t1の比率は10〜50%特に25〜40%程度であることが好ましい。
【0023】
このスリット3aは、フェースインサート3の素板に対し切削加工を施すことにより容易に形成することができるが、フェースインサート3を合成樹脂製とする場合には、射出成形用金型にスリット3aに相当する凸部を中子等により形成しておくことにより、フェースインサートの成形時にスリット3aを併せて形成するようにしてもよい。
【0024】
フェースインサート3は、第3図の左側面がパターのフェース前面となるように凹部2H内に配置され、反対側が接着剤によって凹部2Hの奥壁面に接着される。接着剤としては、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤、両面テープなどが好適であるが、これに限定されない。
【0025】
このように構成されたパターヘッド1のホゼル部1hにシャフトを連結することによりパターが構成される。このパターでパッティング(グリーン上のボールをフェース面で打つこと)すると、ボールをヒットしたときにフェースインサート3の前面部(スリット3aよりもフェース側)が若干後退することにより、トップスピンがかかり易くなり、ヒットされたボールの直進性が良好となる。また、このフェースインサート3の前面部の変形特性は気温の変化に殆ど影響されず、トップスピンのかかり易さに温度依存性が殆どない。
【0026】
本発明では、第5図のようにスリット3aに粘弾性材3bを充填してもよい。粘弾性材としてはゴム、エラストマー、軟質合成樹脂などが用いられる。スリット3aに粘弾性材を充填すると、ボールをヒットしたときの打球音や打感を調節することができる。この粘弾性材は、フェースインサートの前面部の変形特性に殆ど影響せず、トップスピンのかかり易さに温度依存性は実質的にない。
【0027】
上記実施の形態のフェースインサート3では、スリット3aの天井面はトウ側からヒール側にかけて半楕円形のアーチ状となっており、トウ・ヒール方向の中央付近からトウ側及びヒール側に向って連続的に低く(即ち、スリット3aが浅く)なっているが、第6図のフェースインサート3Aのようにトウ・ヒール方向の中央付近からトウ側及びヒール側に向って段階的に低くなってもよい。また、第7図のフェースインサート3Bのように、トウ・ヒール方向の中央付近ではスリット3aの深さはトウ・ヒール方向において一定であり、トウ側近傍及びヒール側近傍においてトウ側及びヒール側に向って徐々に(又は段階的に)浅くなるようにしてもよい。
【0028】
本発明では、第8図のフェースインサート3Dのように、スリット3aと、フェースインサート3Dのトウ側側端面及びヒール側側端面とを連通する浅い溝部3dを設けてもよい。この浅い溝部3dの深さH2は、フェースインサート3Dの高さH0の20%以下特に15%以下であることが好ましい。なお、H2を過度に大きくすると、(例えば、H2を前述のH1と同等にすると、)ボールを打ったときのボールの反発性が低くなる。H2をH0の20%以下(0%を含む。)とすると、ボールの反発性が高くなり、ボールの転がる距離が長くなる。
【0029】
本発明では、第9図(a)のフェースインサート3Eのように、スリット3aを上部ほどフェース側となるように前傾状態としてもよく、逆に、第9図(b)のフェースインサート3Fのように後傾させてもよい。
【0030】
上記実施の形態では、フェースインサートの前面は平坦となっているが、横長の溝を複数本平行に設けてもよい。溝の幅員(上下幅)は0.3〜1.6mm程度が好適であり、溝の深さは0.05〜1.1mm程度が好ましい。
【0031】
第1図では、フェースインサート3の周囲に空隙4を形成しているが、第10図のようにこの空隙に、ゴム、エラストマー、合成樹脂などの粘弾性材8を配材してもよい。また、第11図のパターヘッド1’のように、空隙4が生じないようにフェースインサート3を凹部2Hにぴったりと嵌まるように構成してもよい。
【0032】
第10,11図のその他の構成は第1図と同様であり、同一符号は同一部分を示している。なお、フェースインサート3の側面3Sと凹部2Hの周面2Sとの間に空隙4や粘弾性材8を設けると、フェースインサートの反発特性が設計通りになるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0033】
1,1’ パターヘッド
2 ヘッド本体
2H 凹部
3,3A,3B,3D,3E,3F フェースインサート
3a スリット
3b 粘弾性材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド本体のフェース面にフェースインサートを装着したパターヘッドにおいて、
該フェースインサートに、該フェースインサートの底面から上方に切り込まれたスリットが設けられており、
該スリットよりもフェース面側の前面部と該スリットよりも後面側の後面部とが該スリットよりもトウ側及びヒール側において連なっていることを特徴とするパターヘッド。
【請求項2】
請求項1において、前記スリットはフェースインサートのトウ側端部近傍からヒール側端部近傍まで延在していることを特徴とするパターヘッド。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記スリットは、フェースインサートのトウ・ヒール方向の中央部において最も深くなっており、該中央部からトウ側及びヒール側に向って連続的に又は段階的に浅くなっていることを特徴とするパターヘッド。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、該スリットに粘弾性材が充填されていることを特徴とするパターヘッド。
【請求項1】
ヘッド本体のフェース面にフェースインサートを装着したパターヘッドにおいて、
該フェースインサートに、該フェースインサートの底面から上方に切り込まれたスリットが設けられており、
該スリットよりもフェース面側の前面部と該スリットよりも後面側の後面部とが該スリットよりもトウ側及びヒール側において連なっていることを特徴とするパターヘッド。
【請求項2】
請求項1において、前記スリットはフェースインサートのトウ側端部近傍からヒール側端部近傍まで延在していることを特徴とするパターヘッド。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記スリットは、フェースインサートのトウ・ヒール方向の中央部において最も深くなっており、該中央部からトウ側及びヒール側に向って連続的に又は段階的に浅くなっていることを特徴とするパターヘッド。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、該スリットに粘弾性材が充填されていることを特徴とするパターヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−143444(P2012−143444A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4939(P2011−4939)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(592014104)ブリヂストンスポーツ株式会社 (652)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(592014104)ブリヂストンスポーツ株式会社 (652)
【Fターム(参考)】
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