説明

パターンを組み込んだ虹色固体ナノ結晶セルロースフィルム及びその製造方法

ナノ結晶セルロース(NCC)の水性懸濁液の選択加熱により、パターンを含有する固体NCCフィルムを生成する新たな方法が発見された。酸性形態のNCC懸濁液を50℃を超える温度に加熱することにより乾燥させると、NCCの暗色化が生じ得、一方、105℃までの温度に加熱することにより、中性形態のNCCが虹色キラルネマチックフィルムを生成し得る。蒸発するNCC懸濁液を含有する容器の下に異なる熱伝導性を有する材料を設置することにより、フィルム構造内にインプリントされた異なる虹色の透かし模様状パターンが得られる。ナノ結晶セルロース(NCC)の代わりに、他のコロイドロッド状粒子、例えばキチン又はキトサンを使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ結晶セルロース(NCC)懸濁液の中程度の加熱によりNCCフィルムを製造する方法、及び、加熱環境の熱的特性とは異なる熱的特性を有する材料を用いて懸濁液への熱伝達を制御することにより、NCCフィルムの構造内に組み込まれたパターンを製造することに関する。本発明はまた、パターンを組み込んだ虹色(iridescent)固体ナノ結晶セルロースフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースは、地球上で最も豊富な有機化合物である。セルロースは、高等植物及び緑藻類の一次細胞壁の構造要素であり、また、細菌、ある種の菌類、及び被嚢類(無脊椎海洋生物)によっても形成される[1]。
【0003】
天然セルロースは、ポリマーグルコース鎖から、植物の細胞壁を構成する微小繊維まで、階層構造を有する。セルロースポリマー鎖は、D−グルコース単位から得られ、D−グルコース単位は、β(1→4)−グリコシド結合により縮合して、多くのグリコシドヒドロキシル基間に多くの分子間及び分子内水素結合を有する、剛性の直鎖を形成する。これらの特徴により、セルロース鎖は、密に充填し、微小繊維内に高結晶度の領域を提供し得る[2]。また、セルロース微小繊維は、その長さに沿って無秩序に分布した非晶質領域も含有する[3〜5]。
【0004】
セルロースウィスカー又はナノ結晶は、上記のセルロース源の制御された酸加水分解により、特に木材パルプ及び綿から得ることができる。セルロース微小繊維に沿ったアモルファス領域がより低密度であるほど、加水分解中の酸の攻撃をより受けやすく、開裂してセルロースナノ結晶を生成する[6,7]。その低コスト、再生可能性及びリサイクル可能性、並びにその化学的及び物理的特性を調整可能とする化学反応性により、ナノ結晶セルロースウィスカーは、様々な用途において魅力的となっている[8,9]。
【0005】
ナノ結晶セルロース(NCC)は、ロッド状の形状を有し、そのアスペクト比は、セルロース源に依存して1から100まで様々である。木材セルロースナノ結晶は、平均的に、長さが180〜200nm、断面が3〜5nmである[9]。また、ナノ結晶の寸法は、ナノ結晶を得るために使用される加水分解条件にもある程度依存する。
【0006】
NCC懸濁液の安定性は、硫酸での加水分解中にセルロースナノ結晶表面に付与される硫酸エステル基から得られる。したがって、NCC粒子は、水性媒体中では負に帯電し、それにより静電気的に安定化される[7,10〜14]。塩酸もまたNCCの生成に使用されているが、帯電した表面基を導入しない[15]。
【0007】
非等軸ロッド状形状及びNCC粒子の負の表面電荷は、Onsager[16]により理論的に説明されているように、臨界濃度を超える濃度で、上部の無秩序相及び下部の秩序相に相が分離する懸濁液をもたらす。実際には、秩序相は液晶であり、セルロース懸濁液の液晶挙動は、1951年にRanby[10]により初めて報告された。Marchessaultら及びHermansは、そのような懸濁液がネマチック液晶秩序を示すことを実証した[11,17]。1992年、Revolらは、懸濁液が実際にはコレステリック又はキラルネマチック液晶相を形成することを示した[12]。
【0008】
図1Aに示されるように、2つの臨界濃度間で、NCC懸濁液は2つの相に分離する[16]。この領域は、セルロースナノ結晶の場合、セルロース源に依存して約1〜15%(重量比)の範囲にわたる。NCC濃度が増加するにつれ、液晶相の体積分率は、上部臨界濃度より上で懸濁液が完全にキラルネマチックとなるまで増加する。図1Bに示されるように、キラルネマチック液晶は、擬似層として配置されるロッドを含有する[18,19]。ロッドは、互いに平行に、及び層の面に平行に配列し、各層は、その層の上及び下の層と相対的に若干回転しており、それにより擬似層で構成される螺旋を形成する。螺旋のピッチPは、NCC粒子が、層に垂直な線の周りを完全に1回転するのに必要な距離として定義される。
【0009】
米国特許第5,629,055号に開示されているように、臨界濃度より上で形成し、水が蒸発し続けるにつれて体積分率が増加する、キラルネマチック液晶秩序を保持する固体半透明NCCフィルムを生成するように水性NCC懸濁液を徐々に蒸発させることができる[20,21]。これらのフィルムは、式1に従いキラルネマチックピッチ及びフィルムの屈折率(1.55)により決定される狭い波長域における左円偏光を反射することにより、虹色を示す。
λ=nPsinθ (1)
式中、λは反射波長であり、nは屈折率であり、Pはキラルネマチックピッチであり、θはフィルムの表面に対する反射角である[21]。このように、反射された波長は、斜めの視角ではより短くなる。この反射率は、de Vries[22]により、キラルネマチック液晶中のセルロースナノ結晶の場合のように、複屈折層の螺旋配置におけるBragg反射に基づき説明された。螺旋のピッチがほぼ可視光の波長(約400nmから700nm)である場合、虹色が生じ、反射角により変化する。虹色波長は、フィルム形成前のNCC懸濁液中の電解質濃度(例えばNaCl又はKCl)を増加させることにより、電磁スペクトルの紫外領域に偏移させることができることが判明している[21]。追加の電解質は、NCC表面上の硫酸エステル基の負電荷を部分的に遮蔽し、静電反発力を低下させる。したがって、ロッド状粒子は互いにより近くに接近し、これにより、液晶相のキラルネマチックピッチが減少し、ひいてはフィルムの虹色がより短い波長に偏移する。このNCCフィルムの虹色を「青方偏移」(“blue−shifting”)させる方法は、懸濁液が過度の遮蔽により不安定化しゲル化が生じるまでに添加することができる塩の量により制限される[13,21]。
【0010】
また、Revolら(1998)により観察されたNCCフィルムの虹色は、セルロース源及び加水分解条件(例えば、反応時間及び粉砕セルロース粒子サイズ)に依存した。NCC粒子が小さいほど、より小さいピッチのフィルムが得られる。フィルムを形成する前に懸濁液を加熱することによる脱硫酸化もまた、キラルネマチックピッチを減少させることが判明した[21]。
【0011】
固体NCCフィルムの微細構造は、乾燥条件に依存する[23]。周囲条件下で蒸発させた懸濁液は、一般に、異なるキラルネマチックドメインの螺旋軸が異なる方向を向いたポリドメイン構造を有するフィルムを生成する。強い(2Tから7T)磁場中でNCC懸濁液を乾燥させると、軸が配列してより均一なテクスチャが生成され、波長を変化させることなく虹色の強度が増加する[21,24]。
【0012】
実験室規模のNCC生成手順では、粒子を分散させてコロイド懸濁液を得るために、透析による酸除去の後の最終ステップとして、超音波処理が使用される[13,24]。NCC懸濁特性に対する超音波処理の効果は、Dongら[14]により研究されている。Dongらは、セルロース粒子を分散させるには短時間の超音波処理で十分であり、さらなる超音波処理は逆効果であることを発見した。より最近の研究は、この観察を裏付けている[25]。超音波処理は、懸濁液中の隣り合ったNCCの凝集体を解砕すると考えられる[7]。
【0013】
NCCのフィルムはまた、シリコンなどの基板上で調製されている[26]。これらのフィルムは、固体NCCフィルムよりはるかに薄く、NCC及びカチオン性ポリマー(ポリ(アリルアミン塩酸塩))の交互の層で構成される。ある特定の厚さを超えると、フィルムは、厚さの増加に伴い変化する色を示すが、これらの色は、空気−フィルム界面から反射した光と、フィルム−基板界面から反射した光との間の相殺的干渉に起因するものである[26]。干渉色はまた、微小繊維化セルロースの高分子電解質多層においても観察されている[27]。
【0014】
硫酸エステル基は、酸加水分解からのH対イオンと会合し、この対イオンは一連の塩基(MOH)により中和され、H以外の中性対イオン、例えばアルカリ金属、特にNa、K若しくはLi、又は有機ホスホニウム(R)及び有機アンモニウムイオン(R)(式中、同一又は他のR基とは異なっていてもよい各R基は、有機鎖又は有機基、例えば、フェニル基又は1個若しくは複数、好ましくは1個から4個の炭素原子のアルキル鎖(例えば、テトラエチルアンモニウムイオン、(C)である)とともに、NCCの塩形態(M−NCC)を生じ得る[28]。酸性NCCは、H−NCCで示され、NCCの中性ナトリウム形態はNa−NCCで示される。蒸発により乾燥したNCCフィルムを水への再分散に対して安定化させるために、穏やかな熱処理及び激しい熱処理の両方が使用されており、周囲条件下で蒸発させた固体H−NCCフィルムについては、真空炉内での35℃で24時間の加熱で十分である[28]が、スピンコーティングされたH−NCCフィルムを安定化させるために、105℃で一晩[29]及び80℃で15分[30]の加熱もまた使用されている。Na対イオンを含有するNCCフィルムは、80℃で16時間[20];同様に105℃で2時間から12時間の間で安定化されている。
【0015】
本発明以前は、フィルム構造中に組み込まれたパターンを含有するNCCのフィルムを生成する方法はなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、添加剤を必要とせずにフィルム構造内に直接デザインが組み込まれた、コロイドロッド状粒子フィルム、例えばNCCフィルムを製造するための方法を提供することを目的とする。
【0017】
本発明はまた、パターンを組み込んだコロイドロッド状粒子の虹色固体フィルム、例えばナノ結晶セルロースフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、以降において、コロイドロッド状粒子がナノ結晶セルロース粒子である実施形態を参照することにより具体的に説明されるが、本発明は、本明細書において、一般的にコロイドロッド状粒子に拡張され、本発明の好ましい実施形態を表すナノ結晶セルロースに制限されないことが理解される。
【0019】
本発明の一態様によれば、虹色パターンを中に有する静電気的に帯電したナノ結晶セルロース(NCC)を含む虹色固体フィルムの製造方法であって、静電気的に帯電したNCCの水性懸濁液と熱源との間の熱伝達ゾーンに、パターン画定部材を配置することと、前記源からの熱で前記懸濁液から水を蒸発させて、前記NCCを含む固体フィルムを形成することとを含み、前記パターン画定部材は、前記熱伝達ゾーンの熱伝達速度とは異なる、前記源から前記懸濁液への熱伝達の熱伝達速度を有する、上記方法が提供される。
【0020】
源から懸濁液への熱伝達の熱伝達速度は、熱伝達ゾーンの熱伝達速度より大きくても、又は小さくてもよい。好ましくは、源から懸濁液への熱伝達の熱伝達速度は、熱伝達ゾーンの熱伝達速度より大きい。
【0021】
本発明の別の態様によれば、虹色パターンを中に有する静電気的に帯電したナノ結晶セルロース(NCC)を含む虹色固体フィルムの製造方法であって、静電気的に帯電したNCCの水性懸濁液を熱に供し、前記懸濁液から水を蒸発させて前記NCCを含む固体フィルムを形成することを含み、異なるレベルの熱伝達に供されたフィルムゾーンが固体フィルム内に形成され、それにより前記ゾーンがパターンを画定するように、懸濁液の熱への暴露が制御される上記方法が提供される。
【0022】
本発明のさらに別の態様によれば、ナノ結晶セルロース(NCC)の虹色パターンを中に有する静電的に帯電したNCCを含む虹色固体フィルムであって、パターンを形成するNCCのゾーンが前記パターンを包囲するNCCのゾーンとは構造的に異なる不均質構造である、上記虹色固体フィルムが提供される。
【0023】
本発明のさらに別の態様によれば、本発明の固体フィルムを組み込んだセキュリティ又は識別デバイスが提供される。
【0024】
本発明のさらに別の態様において、光学認証デバイスにおける本発明の固体フィルムの使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】交差偏光板の間で見た扁平管内の二相NCC懸濁液(等方相10が上、キラルネマチック相12が下)を示す図である。
【図1B】キラルネマチック相内のNCC粒子の配置の概略図である。示された距離は、キラルネマチックピッチPの半分である。
【図2】熱源と接触した熱導体上で加熱されるNCCフィルムの形成の概略図である。
【図3A】図3Bに示されるフィルム内のパターンを生成するために使用された、FPInnovationsロゴの形状に曲げられた金属ワイヤを示す図である。スケールバーは2.4cmである。
【図3B】図3Aに示されるワイヤ上で加熱することにより蒸発させた、事前に超音波処理され、ポリ(ビニルアルコール)を含有するNa−NCC懸濁液から生成されたフィルムを示す図である。スケールバーは1.3cmである。
【図4A】事前に超音波処理され、スチールワッシャ(washer)上で加熱されたNa−NCC懸濁液から生成されたフィルムを示す図である。スケールバーは2.25cmである。
【図4B】事前に超音波処理され、スチールワッシャ上で加熱されたNa−NCC懸濁液から生成されたフィルムを示す図である。スケールバーは2.25cmである。
【図5A】NCCフィルム内にパターンを形成するために使用された異なる熱導体の配置の概略図である。
【図5B】熱源上の熱導体と接触した容器内で加熱されるNCCフィルムの形成の概略図である。
【図5C】図5A及び5Bに記載のアセンブリにより生成されたNCCフィルムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
NCCは、漂白木材パルプを含む様々な源からのセルロースの制御された酸加水分解により生成される[6,7,14]。典型的には、粉砕された漂白木材パルプを64%(重量比)硫酸で、45℃で25分間加熱し加水分解する。反応混合物を水で希釈して加水分解を停止し、デカンテーション、遠心分離/洗浄及び透析により過剰の酸をNCCから除去する。超音波処理等の破壊的処理により個々のNCC粒子を分離させることによって、NCCの高分散コロイド懸濁液が得られる。NCC懸濁液の安定性は、加水分解中にセルロースナノ結晶表面に付与されるアニオン性硫酸エステル基から得られる。類似の様式でのセルロースの塩酸加水分解もまたNCCを生成するが、NCC粒子は静電気的に中性であり(アニオン性基が結合していない)、安定な水性コロイド懸濁液を形成しない[31]。硫酸処理による事後硫酸化[32]、又は、セルロースヒドロキシルをカルボキシレート部分に変換するための(例えば)NaOClによるTEMPO媒介酸化[33]を使用して、このHCl生成NCCに負に帯電した基を付与することができる。
【0027】
本発明の固体NCCフィルムは、光学認証デバイスとして、又は装飾目的に使用することができる。したがって、本発明のフィルムは、データを保持する基板、例えば重要書類、身分証明書又はクレジットカード等にキャストし、カラーコピー機を使用した偽造の試みに対し保護することができる。固体フィルムはまた、キャストしたままで、すなわち、例えばセキュリティ又は識別デバイス、例えば身分証明書におけるそのような光学認証デバイス用の基板なしで、又は偽造防止用の紙として使用することもできる。
【0028】
「虹色」(“iridescence”)という用語は、本明細書において使用される場合、式1に従い、反射波長が表面を見る角度によって変化する現象を意味する。
【0029】
「熱」という用語は、本明細書において使用される場合、物体を加熱する任意の手段、例えば伝導、対流、輻射、マイクロ波加熱、レーザ加熱等を意味する。
【0030】
単純な形態において、本発明の方法は、周囲の熱伝達媒体又は隣接する熱伝達環境とは異なる熱的特性を有する材料上に設置された容器内で、NCC懸濁液を加熱するステップを含む。
【0031】
本発明において使用されるナノ結晶セルロースは、特に、アニオン性基を保有するセルロースから得られ、この基はカチオンと会合し得る。特に、アニオン性基は、硫酸によるセルロースの加水分解から生じる硫酸エステル基であってもよい。カチオンは、特に、ナトリウムイオン又はカリウムイオン等のアルカリ金属イオンであってもよい。
【0032】
本発明の方法において、水性懸濁液は、典型的には、熱源から離間しており、これにより懸濁液と熱源との間に熱伝達ゾーンが配置される。この熱伝達ゾーンは、典型的には空気であってもよい。好適には、懸濁液自体は、液体薄層の形態である。このようにして熱源から熱伝達ゾーンを介して熱を適用することにより、典型的には、源から懸濁液への比較的均一な熱伝達が得られる。しかしながら、本発明において、熱伝達ゾーンを介した熱伝達は、懸濁液のある部分が、隣接部分よりも高い速度の熱源からの熱伝達に暴露されるように制御される。懸濁液からの水の蒸発によって、より高い速度の熱伝達に暴露された懸濁液の部分が、より高い速度の熱伝達に供されなかったフィルムの隣接したゾーンとは構造的に異なる熱処理されたゾーンを、得られる固体フィルム内に形成するフィルムが形成される。本発明によれば、構造的に異なるゾーンがパターンを画定し、ゾーン間の構造的な差が虹色波長の差をもたらすように、制御が行われる。
【0033】
一般に、乾燥時に懸濁液中のキラルネマチック相、又はキラルネマチック組織の形成を確実にするために、及びフィルムが虹色を示すように、典型的には4時間から6時間の蒸発時間が好適であることが判明している。そのような蒸発期間により、懸濁液試料中の適切な相分離が可能となる。
【0034】
加熱ゾーンの熱伝達速度は、好適には、懸濁液から水を蒸発させて必要な固体フィルムを形成させるのに十分な熱伝達速度である。特に、蒸発時間は、好適には、NCC粒子をキラルネマチック組織に自己集合させるのに十分な蒸発時間であり、蒸発のための典型的で好適な時間範囲は、4時間から6時間である。
【0035】
したがって、固体フィルムは、不均質構造であり、パターンを形成するゾーンは、パターンに隣接する、又はパターンを包囲するゾーンとは構造的に異なる。
【0036】
特に、より高い速度の熱伝達に暴露されるゾーンは、より低い速度の熱伝達に暴露されるゾーンよりも低密度充填のNCCで構成される。また、典型的には、制御によって、様々な厚さのフィルムが得られ、フィルムは、より低い速度の熱伝達に暴露される隣接又は周囲のゾーンよりも、より高い速度の熱伝達に暴露されるゾーンにおいて厚い。
【0037】
典型的には、より高い速度の熱伝達に暴露されるゾーンとより低い速度の熱伝達に供されるゾーンとの間には境界領域が存在し、これらの領域は、より高い速度の熱伝達に暴露されるゾーンとより低い速度の熱伝達に暴露されるゾーンの中間的構造を示し得ることが理解される。これらの中間領域はまた、典型的には、中間的厚さの領域である。
【0038】
典型的には、熱伝達の制御は、水性懸濁液と熱源との間の加熱ゾーンに、熱伝達ゾーンよりも大きい熱伝達特性を示すパターン画定部材を介在させることにより行うことができる。典型的には、パターン画定部材は、高い熱伝導性を有する金属部材であってもよく、この部材は、所望のパターンを画定するように整形される。部材はまた、略シート形態であってもよく、材料がそれを通して除去されて開いたパターンが画定される。この場合、固体フィルム内のパターンは、周囲の領域よりも低い熱伝達速度に供されるゾーンにより形成され、フィルムの周囲の隣接するゾーンは、より高い熱伝達速度に供される。
【0039】
加熱ゾーンの熱伝達速度は、懸濁液から水を蒸発させて固体フィルムを形成させるのに十分でなければならない。パターン画定部材は、固体フィルム内に所望の不均質構造を提供し、パターンを包囲する又はパターンに隣接するNCCのゾーンとは構造的に異なる、パターンを形成するNCCのゾーンをもたらすために、加熱ゾーンの熱伝達速度とは十分異なる熱伝達速度を提供する必要がある。フィルムがパターン画定部材(熱導体)上で室温で形成される場合、非常にぼやけたパターンとなる;明確なパターンの形成には、約30℃の最低温度が必要である。パターン画定部材がPVC等の断熱材であり、フィルムが炉内で60℃で形成される場合も、非常にぼやけたパターンとなる。
【0040】
水の蒸発速度及び固体フィルム形成速度は、種々の因子に依存し、特に、懸濁液が暴露される温度に依存する。一般に、懸濁液は、蒸発及び固体フィルム形成を達成するために、30℃から105℃の温度に暴露される。
【0041】
生成される固体フィルムは、NCCの固体フィルムであってもよく、又は、懸濁液中にポリビニルアルコール等の可塑剤を含めることにより達成されるNCCの可塑化フィルムであってもよい。
【0042】
得られるNCCフィルム内にパターンを生成するためには、最も好適には、パターン形成部材は、それ自体事実上熱源と接触している熱導体と接触している。すなわち、懸濁液容器(例えばペトリ皿の底)と接触しているがその他は空気又はプラスチック等の断熱媒体により包囲されている熱導体(例えば金属板)(例えば、ペトリ皿が炉の金属棚の上方に上げられている場合)は、得られるNCCフィルム内にパターンを生成しない。
【0043】
本発明の実施例において、虹色キラルネマチックフィルムは、ナノ結晶セルロース(NCC)のコロイドロッド状粒子から生成される。しかしながら、上述のように、本発明は、NCCフィルムのみに適用されるわけではない。液体中に懸濁されると臨界濃度より上でキラルネマチック液晶秩序相に自己集合する、適切なコロイド寸法を有する他の任意のロッド状粒子が、液体が蒸発するとキラルネマチック様式に配置されるロッド状粒子を備える固化液晶フィルムを生成する。前記フィルムのキラルネマチックピッチが正しい寸法(約100nmから1μm)である限り、フィルムは、電磁スペクトルの可視領域に反射波長を有する虹色を示す。したがって、本発明において説明される方法に従い、赤方偏移したパターンをフィルム内に生成することができる。懸濁液中にキラルネマチック液晶相を形成する他のロッド状粒子の例には、キチン[34,35]、キトサン[35]、及びfdバクテリオファージウイルス[36]が含まれる。本明細書において、ロッド状粒子に関するコロイド寸法とは、少なくとも1つの寸法が1nmから1000nmの範囲内にあるロッド状粒子を指す。便宜上、本発明は、ロッド状粒子がナノ結晶セルロース(NCC)である実施形態を参照してより具体的に説明される。
【0044】
パターン形成のメカニズム:パターン画定部が周囲領域よりも高い熱伝導性を有する場合、赤方偏移パターンが生成され、パターン領域が周囲領域よりも低い熱伝導性を有する場合、青方偏移パターンが生成されるが、これは、前者の場合、パターン領域における増加した蒸発速度が、赤方偏移の原因であることを示している。また、熱伝導速度の局所的な差、例えば金属パターンの端部における熱伝導速度の差は、金属パターンの上の領域と周囲のフィルムとの間で観察される色の差を高めることが分かり(結果は示されていない;周囲のフィルムと比較した金属パターン上の赤方偏移)、これは、これらの領域において熱乱流が増大し、赤方偏移パターンをもたらすことを示している。蒸発及び熱乱流メカニズムの両方が、NCCフィルム内の熱パターン形成に寄与し得る。
【0045】
異なる構造を有する異なるゾーンを形成し、それによりNCCフィルム内にパターンを形成するために、フィルムキャスト温度、並びにパターン形成部及び周囲の熱伝達媒体の相対的熱伝導性は、適切な熱伝達速度の差を提供するのに十分でなければならない。最低限の相対的熱伝達速度が必要であると思われ、0.2W/m・Kという低い熱伝導性の差(PVCと空気との間の差)は、NCCフィルム内の異なる虹色波長のぼやけたパターンを形成することが判明している。しかしながら、断熱材(例えば空気)と組み合わせた熱導体(例えば金属)は、最善の結果を提供すると思われる。
【0046】
(図面を参照した本発明の詳細な説明)
硫酸加水分解により生成された静電気的に帯電したNCCの水性懸濁液を蒸発させて、臨界濃度より上のこれらのNCC懸濁液に固有のキラルネマチック液晶秩序を保持する固体半透明NCCフィルムを生成することができる(図1A参照)[21]。これらのフィルムは、式1に従いキラルネマチックピッチ及びフィルムの屈折率により決定される狭い波長域における円偏光を反射することにより、虹色を示す。
λ=nPsinθ (1)
式中、λは反射波長であり、nは屈折率であり、Pはキラルネマチックピッチ(図1B参照)であり、θはフィルム表面に対する反射角である。
【0047】
酸性形態のNCC懸濁液(共有結合した表面硫酸エステル基と会合した対イオンがHである)は、熱に敏感である。40超〜45℃の温度では、ナノ結晶は緩やかな脱硫酸化を受け、結果的に表面電荷密度が失われ[28]、70〜75℃の温度では、乾燥したH−NCC懸濁液が数時間以内に若干暗色(褐色)化し、一方105℃では、乾燥したH−NCC懸濁液は5分以内に暗色化及び炭化する。対照的に、H以外の一価カチオンを有するNCC懸濁液(例えばNa−NCC)は、105℃で24時間後でも改質されないフィルムを生成する。このため、フィルムを作製するためのH−NCC懸濁液の使用は、50℃未満の温度に制限することが推奨され、一方、Na−NCC等の他の中性形態のNCCのフィルムは、50℃を超える温度で生成することができる。
【0048】
H−NCC懸濁液は、30〜50℃の範囲の温度で乾燥させると、炭化せずにフィルムを形成するが、脱硫酸化及びフィルム内のセルロースの残留酸触媒加水分解の可能性により、これらのフィルムの物理的又は機械的特性が、周囲条件下で生成されたフィルムとは異なるかどうかは未知である。
【0049】
IR、可視及びUVのスペクトル領域におけるNCCフィルムの虹色は、キラルネマチックピッチを減少させ、ひいては虹色をより短波長側に偏移させる[20,21]NCC懸濁液中の電解質(例えばNaCl)濃度を制御することにより微調整することができる。文献には、添加剤を使用することなく虹色波長を変化させる方法は報告されておらず、また虹色をより長波長側に偏移させる方法も報告されていない。
【0050】
本発明によれば、NCC懸濁液は、容器(典型的にはポリスチレン製ペトリ皿)の一部が周囲の材料とは異なる熱特性(例えば、より高い熱伝導性/熱容量)を有する材料と接触した状態で、30〜105℃の範囲の温度で加熱することにより蒸発させると、材料の形状内に識別可能なパターンを有する固体NCCフィルムを生成する。パターンは、熱導体と寸法がほぼ同一であり、周囲のフィルムよりも反射波長が長い(すなわち周囲のフィルムと比較して赤方偏移している)が、これは、熱伝達がより速かった(したがって溶媒蒸発がより速く、熱乱流がより大きかった)箇所では、自己集合するキラルネマチック構造がより低密度に充填し、より長いピッチを提供して、結果的により長い波長の光を反射することを意味する。熱導体(例えば金属)の真上の懸濁液中の温度は、熱導体によって熱がより大きい速度で懸濁液に伝達されることにより、周囲の懸濁液中の温度よりも高い(図2)。図2中の側面図は、リング形状の熱導体Dの上の容器B内のNCC懸濁液Cを示す。アセンブリ全体は、炉内の棚又は温度自動調節ホットプレートE上にある。上面図に示された懸濁液中のより高温の領域Aは、周囲領域と比較して、得られるフィルムの虹色の赤方偏移をもたらす。矢印は、懸濁液への熱伝達の相対速度を示す。図2に示されるように、パターン画定部材は、加熱源又は熱導体と共にある「熱的接触」の形態にある必要があり、良好な断熱媒体(例えば、空気、プラスチック)により包囲されている場合、得られるNCCフィルム内にパターンが生成されない。
【0051】
いかなる具体的な理論にも束縛されることを望まないが、2つの異なる、ただしおそらくは相補的であるメカニズムが、NCCフィルムキャスティング中の熱パターンの発生において役割を担うと考えられる。
【0052】
第1のメカニズムは、懸濁液の異なるゾーンの水蒸発の相対速度に依存する。熱伝導性のパターン画定要素上の懸濁液中の水は、暴露されるより高い速度の熱伝達に起因して、より迅速に蒸発する。一方で、これにより、懸濁液のそれらの領域は、NCC粒子がもはや移動性ではなくなる粘度に到達することができ、同時にNCC粒子が周囲の懸濁液中にある場合よりも大きく(すなわちより早く)分離し、それらの領域でより長いピッチ(より長い虹色波長)を有するより低密度充填の構造が保持されるようになる。
【0053】
パターン形成の第2のメカニズムは、パターン画定要素上の懸濁液の領域と周囲の懸濁液の領域との間の熱伝達速度の差に依存し、これはブラウン運動に類似したNCC粒子の「熱乱流」を形成し得る。NCC粒子の熱的に誘引された運動は、より速い熱伝達の領域においてより大きく、乾燥後、それらの領域内に、より大きなピッチを有するより低密度充填の構造をもたらす。
【0054】
細い熱導体(例えばワイヤ)は、フィルムの残りの部分と相対的に赤方偏移したパターンを誘引し、一方、2つの同一金属板の間の狭い断熱ギャップ(空気)は、青方偏移パターンを生成し、これは蒸発速度メカニズムを示している。さらに、熱伝達速度の局所的な差、例えば金属パターンの端部における熱伝達速度の差は、金属パターンの上の領域と周囲のフィルムとの間で観察される色の差を高めることが分かり、これは、これらの領域におけるより高い熱乱流、ひいては熱乱流メカニズムを示している。
【0055】
両方のメカニズムがNCCフィルム内の熱パターン形成に寄与し得る可能性がある。まず、希薄NCC懸濁液は等方性であり、ロッドは無秩序に配向し、互いに無秩序な距離だけ離れている。懸濁液への熱伝達は、粒子の無秩序な熱運動を増加させる。したがって、加熱下でのNCCフィルムの形成は、以下のように想定され得る。
【0056】
NCC濃度がc*を超えると、紡錘体又は小さいドメインのキラルネマチックテクスチャが形成し始める。様々な速度の熱伝達により誘引された熱乱流又はNCC粒子の熱運動は、平均粒子間分離距離を増加させるように作用し、より大きな熱運動の領域においてより大きなキラルネマチックピッチをもたらす。
【0057】
c*を超え、濃度cgelに近い濃度では、NCC粒子がもつれ始めるのに十分互いに近い場合(すなわち、ゲル化及び固体フィルム形成に近く、この点でNCC粒子分離距離が確定される)、蒸発速度が、最終的に確定される粒子間分離距離を決定する。より速い熱伝達、ひいてはより速い蒸発の領域では、cgelに到達してから、NCC粒子が最終的な最小平衡分離距離又はピッチに近づくことができ、キラルネマチックテクスチャが「固定」(“locking in”)される。したがって、ピッチは、NCC粒子が最小分離距離により近づくためのより多くの時間を有するより緩やかな蒸発の領域内(すなわち、より小さいピッチ)よりも大きい。したがって、蒸発速度は、NCCフィルム内の最終キラルネマチックピッチを制御する上で、熱乱流よりも重要である。
【0058】
本発明は、以下の実施例により説明されるが、これらに限定されない。
【0059】
一般手順:加熱によるパターン化NCCフィルムの調製
NCC懸濁液(1〜8%(重量比)、好ましくは2〜4%(重量比))を超音波処理(一般的には0〜5000J/g NCC)するか、又は高せん断機械力で処理し、次いで金属物体上の容器(例えば、ポリスチレン製ペトリ皿)内に設置し、固体NCCフィルムが得られるまで炉内で高温(30〜105℃、好ましくは45〜60℃)で加熱する。
【0060】
H−NCC及びNa−NCC(ひいては他の一価対イオンを有する拡張NCCによる[28])、並びにNaOClによるTEMPO媒介酸化により酸化されたNCC、可塑剤として2〜12%ポリ(ビニルアルコール)(重量比)を含有するNCC懸濁液、並びに高圧せん断ホモジナイザで処理されたNCC懸濁液は全て、上述の様式で処理されるとパターンを生成する。
【0061】
例1:ロゴを示すパターン化NCCフィルム
NCCに対し3.5%(重量比)のポリ(ビニルアルコール)(PVA)を含有する2.6%(重量比)Na−NCC懸濁液の15mLの一定分量を、600J(1540J/g NCC)で超音波処理した。2.4mmの断面直径を有する金属ワイヤ(図3A)を下に設置した直径9cmのポリスチレン製ペトリ皿内で、懸濁液を60℃に加熱することによりフィルムを形成した。得られたフィルムは明確なパターンを示すが(図3B)、パターン自体は橙黄色であり、周囲の領域は黄緑色から青色である。これは、ワイヤとペトリ皿との間の直接接触領域が最小限であるため、方法の感受性を実証している。
【0062】
例2:パターン化NCCフィルムの厚さ
0〜2.4%から5%PVA(NCCに対する重量比)を含有する2.6%(重量比)Na−NCC懸濁液(500Jから800Jの間で超音波処理された)の15mL試料を、スチールワッシャ上で45〜60℃の温度で加熱することにより、フィルムを作製した。フィルムの異なる領域の厚さは、デジタルマイクロメータで測定した。フィルム内の異なる色の領域の厚さは、反射波長とともに変動するようであり、より長い波長はより厚い領域に対応する。図4Aにおいて、中央(青色部分)の平均厚さは67μmであり、一方リング(橙色)の平均厚さは85μmであり、a、b及びcの場所は、それぞれ、67μm、101μm及び59μmの厚さを有する。図4Bにおいて、中央(青緑色)、内側リング(黄色)、外側リング(緑がかった黄色)及びリングのすぐ周りの細い領域(青色)は、それぞれ、69μm、82μm、74μm及び66μmであるが、d、e及びfの場所は、それぞれ69μm、82μm及び64μmの厚さを有する。この差は、これらの領域内のキラルネマチックテクスチャの様々なピッチに起因する可能性が最も高い。
【0063】
例3:NCC懸濁液の加熱により生成されたフィルムの色及び厚さ
異なる熱伝導性の領域により誘引される温度差は、NCCフィルムの色の差を提供するために必要ではない。加熱により生成されたNCCフィルムもまた、より低い温度で生成されたフィルムと比較して、より長波長側への色の偏移を示す。例えば、Na−NCCフィルムがそれぞれ45℃及び60℃で生成された場合、反射の450nmから470nmピーク波長への赤方偏移(入射角及び反射角は45度)が観察される。440nmから470nmへの赤方偏移はまた、プラスチックと比較して金属上で60℃で加熱することによりフィルムが生成された場合にも観察され、金属上で加熱されたフィルムはまた、プラスチック上で加熱されたフィルムよりもある程度厚い。
【0064】
例4:自動温度調節ホットプレート上で生成されたパターン化NCCフィルム
Na−NCC懸濁液(2.6%NCC(重量比))の15mLの一定分量を600J入力で超音波処理し、50℃に設定された自動温度調節ホットプレート上に置かれたステンレススチール製ディスク(直径3cm、厚さ1cm)の上のペトリ皿内に設置した。懸濁液を開放空気中で蒸発させた。明確な黄色から橙色の円(直径約3cm)を有する青色から緑色のフィルムが、生成された。フィルムのテクスチャは、炉内で生成されたフィルムのテクスチャほど均一ではなかった。
【0065】
例5:異なる熱導体によりNCCフィルム内に生成されたパターン
図5Aに示されるように、等しい厚さであるが異なる熱伝導性を有する金属のストリップBを、プラスチック製ペトリ皿Aの底と接触させて設置した。ペトリ皿Aに、600J入力で超音波処理された2.6%Na−NCC(重量比)懸濁液Cの15mLを加えた。図5Cに示されるような固体虹色NCCフィルムが形成されるまで、アセンブリを図5Bに示されるように55〜60℃の炉内の金属棚Dの上に設置した。NCCフィルムは、青色から青緑色であり、金属片の形状の橙黄色の矩形を有していた。これらの条件下では、得られるパターンに識別可能な波長の差はなかった。
【0066】
(参考文献)






【特許請求の範囲】
【請求項1】
虹色パターンを中に有する静電気的に帯電したコロイドロッド状粒子を含む虹色固体フィルムの製造方法であって、
ロッド状粒子の水性懸濁液と熱源との間の熱伝達ゾーンに、パターン画定部材を配置することと、
前記源からの熱で前記懸濁液から水を蒸発させて、前記ロッド状粒子を含む固体フィルムを形成することと
を含み、
前記パターン画定部材は、前記熱伝達ゾーンの熱伝達速度とは異なる、前記源から前記懸濁液への熱伝達の熱伝達速度を有する上記方法。
【請求項2】
前記源から懸濁液への熱伝達の前記熱伝達速度が、前記熱伝達ゾーンの前記熱伝達速度より大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
虹色パターンを中に有する静電気的に帯電したコロイドロッド状粒子を含む虹色固体フィルムの製造方法であって、静電気的に帯電したコロイドロッド状粒子の水性懸濁液を熱に供し、前記懸濁液から水を蒸発させて前記コロイドロッド状粒子を含む固体フィルムを形成することを含み、異なるレベルの熱伝達に供されたフィルムゾーンが固体フィルム内に形成され、それにより前記ゾーンがパターンを画定するように、懸濁液の熱への暴露が制御される上記方法。
【請求項4】
前記ロッド状粒子が、ナノ結晶セルロース(NCC)である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ナノ結晶セルロースが、硫酸化セルロースである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記硫酸化セルロースが、中性対イオン形態である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記中性対イオン形態が、アルカリ金属形態である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アルカリ金属形態が、ナトリウム形態である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記熱が、前記懸濁液を30℃から105℃の温度で加熱する、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記懸濁液が、前記固体フィルム用のポリビニルアルコール等の可塑剤を含有する、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記水性懸濁液を熱に供し、前記懸濁液から水を蒸発させて前記固体フィルムを形成し、その際、異なるレベルの熱伝達に供されたフィルムゾーンが固体フィルム内に形成され、それにより前記ゾーンがパターンを画定するように、懸濁液の熱への暴露が制御される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項12】
前記ロッド状粒子が、ナノ結晶セルロース(NCC)である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
コロイドロッド状粒子の虹色パターンを中に有する静電気的に帯電したコロイドロッド状粒子を含む虹色固体フィルムであって、パターンを形成するコロイドロッド状粒子のゾーンが前記パターンを包囲するコロイドロッド状粒子のゾーンとは構造的に異なる不均質構造である、上記虹色固体フィルム。
【請求項14】
コロイドロッド状粒子が、ナノ結晶セルロース(NCC)である、請求項13に記載の固体フィルム。
【請求項15】
パターンを形成するNCCのゾーンが、パターンを包囲するNCCのゾーンとは異なる熱伝達速度で加熱された、請求項14に記載の固体フィルム。
【請求項16】
前記ナノ結晶セルロースが、硫酸化セルロースである、請求項14に記載の固体フィルム。
【請求項17】
前記硫酸化セルロースが、中性対イオン形態である、請求項16に記載の固体フィルム。
【請求項18】
前記中性対イオン形態が、ナトリウム形態である、請求項17に記載の固体フィルム。
【請求項19】
パターンを形成するNCCのゾーンが、前記パターンを包囲するNCCのゾーンより低密度充填のNCCを含有する、請求項14から18までのいずれか一項に記載の固体フィルム。
【請求項20】
前記パターンを包囲するNCCのゾーンが、パターンを形成するNCCのゾーンより低密度充填のNCCを含有する、請求項14から18までのいずれか一項に記載の固体フィルム。
【請求項21】
請求項13から20までのいずれか一項に記載の固体フィルムを組み込んだセキュリティ又は識別デバイス。
【請求項22】
請求項13から20までのいずれか一項に記載の固体フィルムを備える光学認証デバイス。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【公表番号】特表2012−511595(P2012−511595A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539858(P2011−539858)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【国際出願番号】PCT/CA2009/001768
【国際公開番号】WO2010/066029
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(507171683)
【Fターム(参考)】