説明

パターンドガラス基板の透過率測定装置

【課題】パターンドガラス基板の透過率を高い信頼度で測定することのできる透過率測定装置を提供する。
【解決手段】本発明は、パターンドガラス基板の透過率測定装置であって、レーザービームを放射するレーザービーム照射部と、レーザービーム照射部から放射されるレーザービーム(beam)を反射する反射ミラー(mirror)と、反射ミラー(mirror)で反射されるレーザービーム(beam)をコリメートするコリメーションレンズと、コリメーションレンズでコリメートされたレーザービーム(beam)のサイズを拡大するビーム拡大器(beam expander)と、ビーム拡大器(beam expander)で拡大された後にパターンドガラス基板を透過したレーザービーム(beam)を受光する受光部を含むディテクターと、ディテクターで受光されたレーザービーム(beam)を利用してパターンドガラス基板の透過率を測定する測定部とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過率測定装置に関し、より詳細には、パターンドガラス基板の透過率を測定することのできる比較的単純な透過率測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、エネルギー資源の不足や環境汚染の対策として、高効率光電池モジュールの開発が大規模に行われている。光電池モジュール(Photovoltaic Module)の場合、カバー基板、たとえばガラス基板の透過率は、光電池モジュールの効率に影響を与える。これにより、ガラス基板の組成比を利用して内部吸収率を最小化したり、コーティングによって透過率を向上させたりする等、透過率の向上のために多くの研究開発が進められている。一方、ガラス基板の透過率向上のために、ガラス基板の光入射面に2Dアレイパターニング(Array Patterning)をしてパターンを形成したりもする。
【0003】
現在、パターンドガラス基板は、光電池モジュール(Photovoltaic Module)だけでなく、平板ディスプレイ装置に広く使用されている。ガラス基板を生産する企業では、パターンドガラス基板の製造工程中に、光を照射して、連続的に生産されるパターンドガラス基板の透過率をリアルタイムで精密検査している。
【0004】
従来、パターンドガラス基板の透過率を測定するために使用される装置としては、分光計(Spectrometer)がある。ところで、ISO 9050国際標準によると、太陽光によるガラス基板の透過率は、波長ごとの透過率に測定用標準光源(D65)と測定計の波長ごとの感度加重値とを乗じて計算するよう規定している。これにより、従来の分光計(Spectrometer)は、380nm〜780nmの可視光波長の光をすべて受光した後、処理過程を経て波長ごとの透過率で示すように具現される。すなわち、従来の分光計(Spectrometer)を利用してガラス基板の透過率を測定するためには、関心対象の波長ごとの透過率がすべて必要となる。
【0005】
図1は、従来のパターンドガラス基板の透過率を測定する分光計において、入射光を受光する過程を説明するための例示図であり、図2は、パターンドガラス基板にレーザービーム(beam)が通過した後に拡散したレーザービーム(beam)の形状を図示したものである。ここで、参照符号20は積分球、21は光を受光するディテクターである。図2のa)は、パターンドガラス基板にレーザービーム(beam)が通過した後に拡散したレーザービーム(beam)の形状を図示したもの、図2のb)は、パターンのないガラス基板にレーザービーム(beam)が通過した後に拡散したレーザービーム(beam)の形状を図示したものである。
【0006】
図1に示したところのように、従来の分光計(Spectrometer)は、入射光がパターンドガラス基板11透過後の拡散が大きく、パターンドガラス基板の透過率を正確に測定することができない。これは、図2のa)から分かるとおり、入射光がパターンドガラス基板を透過した後の拡散が激しい場合、積分球20に含まれるディテクター21において光を受光することができない場合が発生するためである。これにより、従来の分光計を利用してパターンドガラス基板の透過率を測定する場合、その結果を信頼することができないという問題点がある。また、パターンドガラス基板の透過率が低く評価されるという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記問題点を解決するために案出されたものであり、本発明の目的は、パターンドガラス基板の透過率を高い信頼度で測定することのできる透過率測定装置を提供することである。
【0008】
また、本発明の他の目的は、透過後の拡散が激しいパターンドガラス基板の透過率の低評価を防止することのできる透過率測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記のような目的を達成するために、本発明の一様相に係るパターンドガラス基板の透過率測定装置は、レーザービームを放射するレーザービーム照射部と、レーザービーム(beam)をコリメートするコリメーションレンズと、コリメーションレンズでコリメートされたレーザービーム(beam)のサイズを拡大するビーム拡大器(beam expander)と、ビーム拡大器(beam expander)で拡大された後にパターンドガラス基板を透過したレーザービーム(beam)を受光する受光部を含むディテクターと、ディテクターで受光されたレーザービーム(beam)を利用してパターンドガラス基板の透過率を測定する測定部とを含む。
【0010】
本発明の付加的な様相に係るパターンドガラス基板の透過率測定装置は、ビーム拡大器(beam expander)で拡大された後にパターンドガラス基板に入射するレーザービーム(beam)のサイズは、少なくとも、パターンドガラス基板のパターン10個に入射されるサイズであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
前述した構成によれば、本発明のパターンドガラス基板の透過率測定装置は、レーザービーム照射部と、反射ミラー(mirror)と、コリメーションレンズと、ビーム拡大器(beam expander)と、ディテクターと、測定部とを含み、また、ビーム拡大器(beam expander)で拡大された後にパターンドガラス基板に入射するレーザービーム(beam)のサイズは、少なくともパターンドガラス基板のパターン10個に入射されるサイズで具現されることにより、入射光が透過する場合に拡散の激しいパターンドガラス基板に対する透過率を、高い信頼度で測定することができる有用な効果がある。
【0012】
また、本発明のパターンドガラス基板の透過率測定装置は、複雑な波長分離光学系を使用する必要がなく、波長加重値が最大である短波長を使用して代表透過率を測定するように具現され、比較的単純に製作することができ、装置の製作費用を下げることができる有用な効果がある。
【0013】
また、本発明のパターンドガラス基板の透過率測定装置は、装置を小型化して、実際のガラス基板の製造工程における透過率検収過程に適用することができる有用な効果がある。
【0014】
また、本発明のパターンドガラス基板の透過率測定装置は、太陽電池用カバーガラスの透過率測定装置として活用することができる有用な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来のパターンドガラス基板の透過率を測定する分光計において、入射光を受光する過程を説明するための例示図である。
【図2】パターンドガラス基板にレーザービーム(beam)が通過した後に拡散したレーザービーム(beam)の形状を図示したものである。
【図3】ISO 9050国際標準で提示する波長別加重値を説明するための例示図である。
【図4】本発明の一実施例に係るパターンドガラス基板の透過率測定装置の構成を図示したものである。
【図5】本発明に係る透過率測定装置に使用されるディテクターの特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付された図面を参照して前述した、そして追加的な様相について、後述する好適な実施例を通じて、本発明を当業者が容易に理解し、再現することができるよう、詳細に説明することとする。
【0017】
図3は、ISO 9050国際標準で提示する波長別加重値を説明するための例示図である。
【0018】
ISO 9050国際標準によると、太陽光によるガラス基板の透過率は、波長ごとの透過率に測定用標準光源(D65)と測定系の波長ごとの感度加重値を乗じて計算するよう規定している。これにより、従来の分光計(Spectrometer)は、380nm〜780nmの可視光波長の光をすべて受光した後、処理過程を経て波長ごとの透過率で示すように具現される。ところが、ISO 9050国際標準の計算法で透過率を計算すると、加重値が低い波長における透過率はほぼ0に近く、透過率に大きく反映されない。
【0019】
表1は、パターンのない平らなガラス基板に対する透過率をISO 9050国際標準の計算法で測定したデータと、最大加重値の波長、たとえば550nmにおける透過率を測定したデータである。
【表1】

【0020】
表1から分かるように、380nm〜780nmの可視光波長を受光した後に計算されたISO 9050透過率と、最大加重値の波長のみを受光した後に計算された透過率を比較してみると、その差が約0.05%未満で非常に小さいことを知ることができる。
【0021】
このため、本発明に係るパターンドガラス基板の透過率測定装置は、波長ごとの加重値が最大の波長、たとえば550nmにおける透過率を測定する、比較的単純な透過率測定装置により具現される。
【0022】
図4は、本発明の一実施例に係るパターンドガラス基板の透過率測定装置の構成を図示したものである。
【0023】
図示したところのように、本実施例に係るパターンドガラス基板の透過率測定装置は、レーザービーム照射部41と、反射ミラー(mirror)42と、コリメーションレンズ(collimation lens)44と、ビーム拡大器(beam expander)45と、ディテクター47と、測定部48とを含む。
【0024】
レーザービーム照射部41は、レーザービームを放射する。一例として、レーザービーム照射部41は、レーザービームを生成するレーザー発振器と、レーザービームを反射ミラー(mirror)42へ誘導する照射部と、レーザー発振器を制御する制御部とを含んで具現することができる。たとえば、レーザービーム照射部41は、ヤグ(YAG)レーザー、イルフ(YLF)レーザー、バナデート(YVO4)レーザーのうちいずれか一つにより具現することができる。レーザービーム照射部41から照射されるレーザービーム(beam)の波長は、波長ごとの加重値が最大の波長、たとえば、550nmの短波長であることが好ましい。
【0025】
反射ミラー(mirror)42は、レーザービーム照射部41から放射されるレーザービーム(beam)を反射する。コリメーションレンズ44は、反射ミラー(mirror)42から反射されるレーザービーム(beam)をコリメートする。
【0026】
ビーム拡大器(beam expander)45は、コリメーションレンズ44でコリメートされたレーザービーム(beam)のサイズを拡大する装置であり、作業者に多様なパターンのサイズと形状を有するパターンドガラス基板46の透過率を測定することができるようにする。
【0027】
ビーム拡大器(beam expander)で拡大した後、パターンドガラス基板46に入射されるレーザービーム(beam)のサイズは、透過率測定の変数を除去して正確な透過率の測定が行われるよう、パターンドガラス基板46のパターン10個に入射されるサイズであることが好ましい。
【0028】
ここで、パターンドガラス基板46は、大部分の場合、ガラスが使用されており、一部アクリル、ポリカーボネート、フッ素樹脂等の合成樹脂が利用されている例があるが、宇宙用或いは民生用に限定されている。パターンドガラス基板46は、それ自体の反射損失を最大限減らすために、表面反射率の低い低鉄分強化ガラスを主に使用する。
【0029】
ディテクター47は、ビーム拡大器(beam expander)45で拡大された後にパターンドガラス基板46を透過したレーザービーム(beam)を受光する。ディテクター47は、受光部、信号処理部を含んで具現される。ディテクター47の受光部のサイズは、受光損失の防止のために、ビーム拡大器(beam expander)45で拡大された後にパターンドガラス基板46に入射されるレーザービーム(beam)のサイズよりも最小2倍以上大きいことが好ましい。
【0030】
ディテクター47は、パターンドガラス基板46を透過したレーザービーム(beam)の損失(loss)が発生しないよう、最大限パターンドガラス基板46のすぐ後端に密着設置されることが好ましい。一例として、ディテクター47のサイズとパターンドガラス基板46との間の最適な位置は、シミュレーションにより最適化することができる。
【0031】
測定部48は、ディテクター47で受光されたレーザービーム(beam)を利用してパターンドガラス基板の透過率を測定する。
【0032】
他の実施例において、本発明に係るパターンドガラス基板の透過率測定装置は、ノイズ除去フィルター43をさらに含んで具現することができる。ノイズ除去フィルター43は、反射ミラー(mirror)42で反射されるレーザービーム(beam)に含まれたノイズを除去する。これにより、測定部48における信号ノイズによる透過率の測定誤差を減らすことができる。
【0033】
図5は、本発明に係る透過率測定装置に使用されるディテクターの特性を示すグラフである。ここで、パターンドガラス基板一つのパターンの長さは0.5mmであり、ビーム拡大器(beam expander)で拡大された後にパターンドガラス基板に入射されるレーザービーム(beam)が少なくともパターンドガラス基板のパターン10個に入射されるよう、ビーム拡大器(beam expander)を調節した。
【0034】
まず、図5のa)は、ディテクターの受光部のサイズと透過率についてのグラフである。ディテクターの受光部のサイズが10mm以上の場合、パターンドガラス基板の透過率は90%以上であることを示している。これにより、本発明に使用されるディテクターの受光部のサイズは、ビーム拡大器(beam expander)で拡大した後にパターンドガラス基板に入射されるレーザービーム(beam)のサイズ5mmより最小2倍以上であることが好ましいことを知ることができる。
【0035】
図5のb)は、ディテクター−パターンドガラス基板間の位置と透過率についてのグラフである。ディテクターとパターンドガラス基板間の距離が5mm以下である場合、パターンドガラス基板の透過率は、92.5%以上であることを示している。これにより、本発明に使用されるディテクターは、パターンドガラス基板を透過したレーザービーム(beam)の損失(loss)が発生しないよう、最大限パターンドガラス基板のすぐ後端に密着設置されることが好ましいことを知ることができる。
【0036】
これまで、本明細書においては、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に理解し、再現することができるよう、図面に示した実施例を参考に説明してきたが、これは、例示的なものに過ぎず、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の実施例から多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解することができよう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、添付された特許請求の範囲によってのみ定められるべきであろう。
【符号の説明】
【0037】
41 レーザービーム照射部
42 反射ミラー(mirror)
43 ノイズ除去フィルター
44 コリメーションレンズ
45 ビーム拡大器(beam expander)
46 パターンドガラス基板
47 ディテクター
48 測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザービームを放射するレーザービーム照射部;
前記レーザービーム照射部から放射されたレーザービーム(beam)をコリメートするコリメーションレンズ;
前記コリメーションレンズでコリメートされたレーザービーム(beam)のサイズを拡大するビーム拡大器(beam expander);
前記ビーム拡大器(beam expander)で拡大された後にパターンドガラス基板を透過したレーザービーム(beam)を受光する受光部を含むディテクター;及び、
前記ディテクターで受光されたレーザービーム(beam)を利用して前記パターンドガラス基板の透過率を測定する測定部;
を含むことを特徴とするパターンドガラス基板の透過率測定装置。
【請求項2】
前記レーザービーム照射部から照射されるレーザービーム(beam)の波長は、550nmの短波長であることを特徴とする、請求項1記載のパターンドガラス基板の透過率測定装置。
【請求項3】
前記ビーム拡大器(beam expander)は、パターンドガラス基板に入射されるレーザービーム(beam)のサイズが少なくとも前記パターンドガラス基板のパターン10個に入射されるサイズとなるようにレーザービームを拡大することを特徴とする、請求項1記載のパターンドガラス基板の透過率測定装置。
【請求項4】
前記ディテクターの受光部のサイズは、
前記ビーム拡大器(beam expander)で拡大された後にパターンドガラス基板に入射するレーザービーム(beam)のサイズより最小2倍以上大きいことを特徴とする、請求項1記載のパターンドガラス基板の透過率測定装置。
【請求項5】
前記レーザービーム照射部から放射されたレーザービームを前記コリメーションレンズへ反射するミラーをさらに含むことを特徴とする、請求項1記載のパターンドガラス基板の透過率測定装置。
【請求項6】
前記パターンドガラス基板の透過率測定装置が、
前記反射ミラー(mirror)で反射されるレーザービーム(beam)に含まれたノイズを除去するノイズ除去フィルター;
をさらに含むことを特徴とする、請求項5記載のパターンドガラス基板の透過率測定装置。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−141311(P2012−141311A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−289069(P2011−289069)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【出願人】(502411241)サムスンコーニング精密素材株式会社 (80)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Corning Precision Materials Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】644−1 Jinpyeong−dong, Gumi−si,Gyeongsangbuk−do 730−360,Korea
【Fターム(参考)】