パターン形成方法
【課題】微細なブロックコポリマーのミクロ相分離パターンを得ることができるパターン形成方法を提供する。
【解決手段】被加工膜11上に、表面エネルギーの異なる第1の表面エネルギー調整層12c、第2の表面エネルギー調整層12dが交互に平行に並んだガイドパターンを形成し、ガイドパターン上に第1および第2のブロック鎖を含むブロックコポリマー層13を形成し、ブロックコポリマーをミクロ相分離させ、ガイドパターンに基づいてブロックコポリマーを配向させる。第1の表面エネルギー調整層12cは第1のブロック鎖と略同一の表面エネルギーを有し、第2の表面エネルギー調整層12dは第2のブロック鎖と略同一の表面エネルギーを有し、ガイドパターンの周期はブロックコポリマーの周期の3以上の整数倍であり、第1の表面エネルギー調整層12c、第2の表面エネルギー調整層12d各々の幅は、ブロックコポリマー半周期の3以上の奇数倍である。
【解決手段】被加工膜11上に、表面エネルギーの異なる第1の表面エネルギー調整層12c、第2の表面エネルギー調整層12dが交互に平行に並んだガイドパターンを形成し、ガイドパターン上に第1および第2のブロック鎖を含むブロックコポリマー層13を形成し、ブロックコポリマーをミクロ相分離させ、ガイドパターンに基づいてブロックコポリマーを配向させる。第1の表面エネルギー調整層12cは第1のブロック鎖と略同一の表面エネルギーを有し、第2の表面エネルギー調整層12dは第2のブロック鎖と略同一の表面エネルギーを有し、ガイドパターンの周期はブロックコポリマーの周期の3以上の整数倍であり、第1の表面エネルギー調整層12c、第2の表面エネルギー調整層12d各々の幅は、ブロックコポリマー半周期の3以上の奇数倍である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、パターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LSIをはじめとする半導体デバイス等の各種電子デバイスにおける微細パターンの製造プロセスでは、リソグラフィーによる微細加工技術が採用されている。今後、さらに微細な加工が要求されることは確実であり、リソグラフィーにおける光源の短波長化およびレジストの高性能化が進められている。しかし、これらの対策による解像度の向上は困難になってきている。 また、要求されるパターンの微細化に伴うコストの増大も問題になっている。現在、より微細なパターンを形成するためには、高額のEUV(extreme ultraviolet)露光装置(産業用には露光波長13.5nmの光を使用した露光装置が主流)およびArF液浸露光装置(波長193nmのArFエキシマレーザー光を使用した露光装置で、レンズとウエハの間に水を入れることにより高開口数が得られる)が一般的に使用されている。しかし、特にEUV露光装置は、装置自体のコストおよびランニングコストが高く、パターン形成にかかるコストが大幅に増大すると考えられている。このため、微細なパターンを安価に形成できる技術の開発が必要となっている。
【0003】
そのため、今後のパターンの微細化に対応する新しい技術として、複数種類のポリマーブロックが結合したブロックコポリマー(BCP)をミクロ相分離させ、これを用いて加工を行う方法がある。この方法においては、BCPを所望の位置に所望の配向でミクロ相分離させることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,521,094号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、微細なブロックコポリマーのミクロ相分離パターンを得ることができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、被加工膜上に、表面エネルギーの異なる第1の表面エネルギー調整層および第2の表面エネルギー調整層が交互に平行に並んだガイドパターンを形成し、前記ガイドパターン上に、第1および第2のブロック鎖を含むブロックコポリマー層を形成し、前記ブロックコポリマーをミクロ相分離させ、前記ガイドパターンに基づいて前記ブロックコポリマーを配向させることを含むパターン形成方法が提供される。ここで形成されるパターンは、前記第1のブロック鎖の層と前記第2のブロック鎖の層が前記ガイドパターンと平行に交互に並び、前記第1のブロック鎖の層と前記第2のブロック鎖の層の界面が前記被加工膜の表面に対して垂直であるラメラ相である。前記パターン形成方法において、前記第1の表面エネルギー調整層は前記第1のブロック鎖と略同一の表面エネルギーを有し、前記第2の表面エネルギー調整層は前記第2のブロック鎖と略同一の表面エネルギーを有し、前記ガイドパターンの周期は前記ブロックコポリマーの周期の3以上の整数倍であり、前記第1の表面エネルギー調整層および前記第2の表面エネルギー調整層の各々の幅は、前記ブロックコポリマーの半周期の3以上の奇数倍である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】従来のパターン形成方法を示す断面図。
【図2】従来のパターン形成方法におけるガイドパターンを示す平面図。
【図3】従来のパターン形成方法におけるブロックコポリマー分子の配向を示す平面図。
【図4】実施形態に係るパターン形成方法を示す断面図。
【図5】実施形態に係るパターン形成方法におけるガイドパターンを示す平面図。
【図6】実施形態に係るパターン形成方法におけるブロックコポリマー分子の配向を示す平面図。
【図7】ガイドパターンのライン幅と露光によるプロセスマージンの関係を示す図。
【図8】実施例1に係るパターン形成方法を示す断面図。
【図9】実施例2に係るパターン形成方法を示す断面図。
【図10】変形例1に係るパターン形成方法を示す断面図。
【図11】変形例2に係るパターン形成方法を示す断面図。
【図12】変形例3に係るパターン形成方法を示す断面図。
【図13】変形例4に係るパターン形成方法を示す断面図。
【図14】変形例5に係るパターン形成方法を示す断面図。
【図15】変形例6に係るパターン形成方法を示す断面図。
【図16】比較例に係るパターン形成方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0009】
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
【0010】
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0011】
図5は本発明のケミカルガイドの平面図である。
【0012】
第1の表面エネルギー調整層12cと第2の表面エネルギー調整層12dが交互に形成されている。ガイドパターンの2つの表面エネルギー調整層の表面エネルギーは、BCPを構成する2種類のポリマーの表面エネルギーとおのおのほぼ同一となるようにする。
【0013】
また、第1の表面エネルギー調整層12cの幅L1および第2の表面エネルギー調整層12dの幅L2は、それぞれ、BCP半周期の3以上の奇数倍とほぼ等しい。
【0014】
続いて、ガイドパターン上に、ブロックコポリマー層13を形成し、加熱してアニーリングすることにより、ブロックコポリマーをミクロ相分離させる。その結果、図4(d)に示すように、ガイドパターンに応じて第1のブロック鎖および第2のブロック鎖が配向し、ブロックコポリマーのミクロ相分離パターンが形成される。得られるパターンは、第1のブロック鎖の層13aおよび第2のブロック鎖の層13bがガイドパターンと平行に交互に並び、これらの界面が基板に対して垂直なラメラ相である。
【0015】
本発明を用いると、ガイドパターンを形成するためのレジストパターンのライン幅をガイドパターンの半周期に比べて極端に細くする必要がない。ライン幅とスペース幅の比率が1:1に近いパターンを形成すればよい。特に、二光束干渉を利用して露光を行うと、ガイドパターンを形成するための露光において広いプロセスマージンが得られ、解像できる限界のパターン周期も小さくできる。このため比較的安価な露光装置を使って、ガイドパターンが形成でき、結果として、ガイドパターンの1/整数(3以上の奇数)の周期を持つ微細なパターンを精度よく、ブロックコポリマーにより形成できる。
【実施例】
【0016】
ブロックコポリマー(BCP)は、同一種類のモノマーが連続して結合したもの(ブロック)から構成されている。各々のブロックは化学結合で結合している。すなわち、BCPはブロック状になった複数種類のポリマーが化学結合したものである。ポリマー間の斥力によりミクロ相分離させることで、微細な周期パターンが形成される。ブロックパターンのラメラやシリンダーといったモルフォロジー(形態)は、ブロックの組成により決まる。例えば2種類のポリマー(第1のポリマー、第2のポリマー)からなるBCPの場合、2つのポリマーの比率が約50%であるとラメラを形成する。ラメラの場合は、第一のポリマー、第2のポリマー、第1のポリマー、第2のポリマー、・・・と交互に並ぶことにより、交互に第1のポリマーの層と第2のポリマーの層を形成する。
【0017】
BCPはミクロ相分離させただけでは、指紋状のパターンとなったり、種々のドメインとができてしまい、半導体のパターンで必要とされるL&S(ライン アンド スペース)パターンのような規則的なパターンを形成することは困難である。また、所望の位置にどのポリマーが配列するかも規定できない。このため、ブロックポリマーを規則的に配列させるためのガイドパターンが必要となる。
【0018】
ケミカルガイドは、表面エネルギーの異なる領域をパターンとして形成する。
まず、従来のケミカルガイドを使ったパターン形成方法について図1および図2を用いて説明する。従来のケミカルガイドにおけるパターン形成方法は、ピニング層および中性化膜で構成されるガイドパターンに基づいてブロックコポリマーのミクロ相分離パターンを形成するものである。
【0019】
図2は従来のケミカルガイドの平面図である。ブロックポリマーを構成する1つのポリマーを固定する(ピニングする)ピニング層と、中性化膜からなる。ピニング層の幅LPはブロックポリマーの半周期(HP)とほぼ同じ幅を持つように設定する(LP〜HP)。
【0020】
ブロックコポリマー(BCP)を使ってL&Sパターンを形成する場合を説明する。BCPは2種類のポリマーブロックから構成され、第1のポリマー13bおよび第2のポリマー13aからなるとする。その表面エネルギーは第1のポリマー13bの方が第2のポリマー13aより小さいとする。たとえば、第1のポリマー13bがピニング層12bに固定されるとすると、ピニング層の表面エネルギーは第1のポリマーの表面エネルギーと同じかそれ以下になるよう設定する。第2のポリマーとピニング層の表面エネルギーの差は大きく、親和性が低いため、選択的に第1のポリマーがピニング層上に形成されることになる。逆に第2のポリマーをピニング層に固定する場合には、ピニング層の表面エネルギーは第2のポリマーの表面エネルギーと同じかそれ以上になるよう設定する。
【0021】
中性化膜の表面エネルギーは第1のポリマーと第2のポリマーの表面エネルギーの中間の値を取るように設定する。中性化膜と2つのポリマーブロックとの相互作用は第1のポリマー、第2のポリマーいずれに対しても、ほぼ同じになるように設定されるので、中性化膜上には第1のポリマーも第2のポリマーも付着することができ、ラメラを、垂直に交互に−A−B−A−B−と並べることができる。(図1(d))この場合には、中性化膜の表面エネルギーは第1のポリマーの表面エネルギーより高く、第2のポリマーの表面エネルギーよりも低い。
【0022】
ブロックポリマーを構成するポリマーブロックが3つ以上の場合は、表面エネルギーの一番小さいポリマーまたは一番大きいポリマーがピニング層に固定されるように、ピニング層の表面エネルギーを、表面エネルギーの一番小さいポリマー以下にするか、表面エネルギーの一番大きいポリマー以上に設定する。中性化膜の表面エネルギーはすべてのポリマーと親和性をもつよう、ブロックポリマーを構成するポリマーの中間の表面エネルギーになるよう設定する。
【0023】
図1は、従来のパターン形成方法を示す断面図である。まず、被加工膜11上に中性化膜12aを形成する(図1(a))。
【0024】
続いて、中性化膜12a表面に選択的にピニング層12bを形成し、中性化膜12aとピニング層12bが交互に平行に並んだガイドパターンを形成する(図1(b))。ここで形成するガイドパターンの平面図が図2である。
【0025】
ケミカルガイドパターンの周期がBCP周期の整数倍になるようにすることでガイドパターン周期の1/整数のパターンが形成できる。(frequency doubling、 density multiplication等と呼ばれている)これにより露光装置では形成できない周期のパターンをBCPで形成することが可能になる。
【0026】
たとえば、ケミカルガイドパターン周期がBCP周期の2倍の場合には中性化膜の幅LNはBCP周期のHPの3倍程度となる(LN〜3HP)。ケミカルガイドパターン周期がBCP周期の3倍の場合にはLN〜5HP、4倍の場合にはLN〜7HPとなる。この際、ピニング層の幅はBCP周期のHPとほぼ同一である。ここでは、ピニング層12bの幅(LP)はブロックポリマーの半周期(HP)とほぼ同じ幅を持つように設定する(LP〜HP)。
【0027】
形成したガイドパターン上に、ブロックコポリマー層13を形成する(図1(c))。
【0028】
ブロックコポリマー層13の形成後、真空または窒素中で加熱するか、溶剤雰囲気にさらすことにより、ミクロ相分離させる。その結果、図1(d)に示すように、ガイドパターンに応じてBCPを構成する第1のブロック鎖および第2のブロック鎖が配向し、BCPのミクロ相分離パターンが形成される。得られるパターンは、第1のブロック鎖の層13aおよび第2のブロック鎖の層13bがガイドパターンと平行に交互に並び、これらの界面が基板に対して垂直なラメラ相である。ピニング層12bには第2のブロック鎖が固定され、第2のブロック鎖の層13bが形成される。
【0029】
その後、第1のブロック鎖の層13aおよび第2のブロック鎖の層13bの一方を除去すし、残存したブロック鎖の層をエッチングのマスクとして、被加工膜11のエッチングを行う(図示せず)。
【0030】
ピニング層の幅は、通常、ブロックコポリマーの半周期(ハーフピッチとも称する)とほぼ同じ幅となるように設定される。従って、パターンの微細化に伴い、ピニング層の幅も狭くなり、ピニング層を精度よく形成するのが難しくなってきている。
【0031】
また、density multiplicationの場合には、ケミカルガイドパターンはラインとスペースの比率が1:1からはずれた1:3、1:5といったパターンを形成する必要がある。この場合にはライン幅が非常に細くなるため、精度良く形成することが難しいという課題がある。
【0032】
レジスト段階でも、レジストマスクに加工する段階でも、ラインエッジラフネスが増加したり、途中で切れてしまったりという課題が発生する。
【0033】
特に、光露光の場合には1:1から比率が離れていくと、同じ周期でも露光によるプロセスマージンが低下し、限界解像度も低下してしまうという課題がある。
【0034】
ガイドパターンの周期を一定として、ライン幅と露光によるプロセスマージンの関係について見積もった例を図7を参照して説明する。露光によるプロセスマージンは光学像シミュレーションにより計算した。
【0035】
照明条件は開口数(NA)=1.35、二重極照明で、照明の開口形状は円、開口の中心が0.85、σが0.1とした。レチクルのパターンはライン幅42nm、スペース幅42nmである。1:1L&S はライン幅42nm、スペース幅42nmの場合である。また、ガイドパターン周期がBCP周期の3倍の場合に形成しなければならない1:5L&Sは、ライン幅14nm、スペース幅70nmの場合である。
【0036】
図7(a)はフォーカスと露光量が変動させた際、線幅変動が4.2nm以内となる条件を線で囲ったものである。(Exposure-Defocusツリー、EDツリーと呼ばれる)2本の線の間に囲まれた領域がこの条件を満たしている。実線が1:1L&Sパターンの場合を示し、点線が1:5L&Sパターンの場合を示している。
【0037】
1:1L&Sパターンの場合は、2本の線で囲まれた領域が左右に対象であるため、露光量を変化させた際に、線幅変動が4.2nm内に収まる焦点の範囲が広く取れ、焦点深度が極端に狭まることはない。一方、1:5L&Sの場合には、2本の線で囲まれた領域は湾曲しているため、露光量が変動すると、線幅変動が4.2nm内に収まる焦点の範囲が、1:1L&Sパターンに比べて、狭まってしまう。このため焦点深度が狭まってしまう。
【0038】
所望寸法を得られる露光量から露光量が何%変動した時、どれだけ焦点深度が得られるかを示したのが図7(b)である。変動した露光量を露光量余裕度としている。線が1:1L&Sの場合、点線が1:5L&Sの場合である。1:1L&Sパターンのほうが1:5L&Sパターンよりも、露光量が変動しても広い焦点深度が得られることがわかる。計算に使用する焦点範囲を±0.2μmとしたため、1:1L&Sパターンの場合には焦点深度が0.4μmで飽和しているが、計算する焦点範囲を広げれば、飽和している領域で焦点深度は0.4μm以上となる。
【0039】
実際のパターニングではプロセス要因により、理論値よりも露光によるプロセスマージンが低下するため、解像限界付近で1:5L&Sパターンを形成することは難しいと考えられる。実際、レジストパターンを形成する際、ライン幅とスペース幅がそれぞれ42nmの1:1L&Sパターンは形成することができる。一方、ライン幅14nm、スペース幅70nmの1:5L&Sパターンは形成することができない。
【0040】
このようにガイドパターンが1:1から離れると、ガイドパターンを形成する際の露光によるプロセスマージンが狭くなってしまう。安価なBCPパターンを形成するためには、ガイドパターンは露光装置の解像限界で形成する必要がある。このため、ガイドパターン形成のマージンが狭まることは、逆に、ガイドパターンの解像限界が狭まる、つまり、微細パターンが形成できなくなることになる。その結果、周期の大きいBCPパターンしか形成できないという課題があった。
【0041】
そこで、ピニング層の線幅(Lp)を大きくすることも検討されるが、Lpの値には最適値があり、最適値から寸法をずらすと配列しにくくなり、Lpの幅を広げることには限界があった。たとえば、ガイドパターンとBCPパターンの周期が同一で、ガイドパターン周期を一定として、レジストライン幅(ピニング層の幅)をBCP周期の0.26から0.65までの範囲で変化させた例がある。最適値から外れると、配列しにくくなり、欠陥が生ずるのが観察される。つまり、欠陥が生じてしまうため、Lpの幅を広げることには限界がある。
【0042】
このようなピニング層を利用した従来のパターン形成方法は、ブロックコポリマーの半周期分という非常に微細なピニング層を形成する必要があるため、種々の課題を有する。
【0043】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
まず、本発明のケミカルガイドを使ったパターン形成方法について図4および図5を用いて説明する。
図5は本発明のケミカルガイドの平面図である。
【0044】
第1の表面エネルギー調整層12cと第2の表面エネルギー調整層12dが交互に形成されている。本発明のガイドパターンは従来例と次の点で異なる。
【0045】
ガイドパターンの2つの表面エネルギー調整層の表面エネルギーは、BCPを構成する2種類のポリマーの表面エネルギーとおのおのほぼ同一となるようにする。すなわち第1の表面エネルギー調整層12cは、その上に積層するブロックコポリマーの第1のブロック鎖14aと略同一の表面エネルギーを有する。また、第2の表面エネルギー調整層12dは、その上に積層するブロックコポリマーの第2のブロック鎖14bと略同一の表面エネルギーを有する。
【0046】
また、第1の表面エネルギー調整層12cの幅L1および第2の表面エネルギー調整層12dの幅L2は、それぞれ、BCP半周期の3以上の奇数倍とほぼ等しい。したがって、幅L1およびL2は、以下の式で表すことができる。
【0047】
L1≒(2n+1)×(BCPの周期/2)
L2≒(2m+1)×(BCPの周期/2)
上記式において、nおよびmは1以上の整数である。
【0048】
また、ガイドパターンの周期(L1+L2)はBCP周期の3以上の整数倍とほぼ等しい。
従って、ガイドパターンの周期(L1+L2)は以下の式で表すことができる。
【0049】
L1+L2≒k×BCPの周期
上記式において、kは3以上の整数である。
【0050】
図5に示した第1の表面エネルギー調整層12cの幅L1、および第2のエネルギー調整層12dの幅L2がほぼ同じであれば、図7を用いて示したように、ガイドパターンを形成するための露光の際のプロセスマージンは、理論上は無限大となる。このため、L1とL2が略同一であることが、露光マージンを最も広くすることができる。したがって、L1とL2がほぼ同じであることが望ましい。
【0051】
L1:L2の比が1:1からずれた場合、露光マージンは狭くなっていく。たとえば、L1がブロックポリマー半周期の3倍であり、L2がブロックポリマー半周期の5倍であれば、同じガイドパターン周期で、L1:L2が1:1の場合と比較すれば、露光マージンは狭い。しかし、従来の、ピニング層の幅がブロックポリマー半周期、中性化層の幅がブロックポリマー半周の3倍と略同一の場合に比べれば、露光マージンは広く取ることができる。
【0052】
ここではL1とL2がほぼ同じで、ブロックポリマー半周期の3倍である場合を例に取って説明する。
【0053】
図4は、実施形態に係るパターン形成方法を示す断面図である。
【0054】
まず、被加工膜11上に、第1の表面エネルギー調整層12cと第2のエネルギー調整層12dが交互に平行に並んだガイドパターンを形成する。図4では、被加工膜11上に第1の表面エネルギー調整層12cを形成し(図4(a))、その上に選択的に第2の表面エネルギー調整層12dを形成することによりガイドパターンを形成した様子を示している(図4(b))。
【0055】
例えば、被加工膜11上に第1の表面エネルギー調整層12cを形成し、第1の表面エネルギー調整層12c上にフォトレジストを塗布し、フォトレジストをエネルギー線で選択的に露光し、現像することによりレジストパターンを形成し、レジストパターンをマスクあるいは鋳型として第2の表面エネルギー調整層12dを形成することができる。また、被加工膜11上に感光性の膜を形成し、感光性の膜をエネルギー線で選択的に露光し、露光部を第1の表面エネルギー調整層12cとし、未露光部を第2の表面エネルギー調整層12dとすることもできる。ガイドパターンの形成方法はこれらに限定されるものではなく、後述するような種々の方法を用いることができる。
【0056】
続いて、ガイドパターン上に、ブロックコポリマー層13を形成する(図4(c))。ブロックコポリマーは、性質の異なる第1のブロック鎖および第2のブロック鎖を含む。ブロックコポリマー層13の形成後、加熱してアニーリングすることにより、ブロックコポリマーをミクロ相分離させる。その結果、図4(d)に示すように、ガイドパターンに応じて第1のブロック鎖および第2のブロック鎖が配向し、ブロックコポリマーのミクロ相分離パターンが形成される。得られるパターンは、第1のブロック鎖の層13aおよび第2のブロック鎖の層13bがガイドパターンと平行に交互に並び、これらの界面が基板に対して垂直なラメラ相である。ここで得られるブロックコポリマーのパターンの周期は、ガイドパターンの周期の1/3倍である。
【0057】
図4(b)および図4(d)を比較することにより、ガイドパターンよりも微細なパターンをブロックコポリマーにより形成できることがわかる。ガイドパターンの周期をブロックコポリマーの周期のn倍(nは3以上の奇数)にすることにより、ガイドパターン周期の1/nの周期を有するブロックコポリマーのパターンを形成することができる。従って、ブロックコポリマーのミクロ相分離を利用することにより、露光装置では形成できない周期のパターンを形成することが可能になる。
【0058】
ここで、本発明で、ブロックポリマーが配列する理由について、従来例の配列を図3で説明した後、図6を使って説明する。
【0059】
図3は、前述した従来のパターン形成方法におけるブロックコポリマー分子の配向を示す平面図である。塗布直後のBCPは必ずしも、ガイドパターンに沿って配列するわけではない、熱によるアニールや溶媒アニールを行うことで、ポリマー鎖が移動できるようになり、全体の自由エネルギーが最小になるよう配列していく。ガイドパターンとポリマー間の相互作用エネルギーを小さくするようにポリマーが並んでいくことで、規則パターンが得られる。
【0060】
ブロックコポリマー分子14は、第1のブロック鎖14aおよび第2のブロック鎖14bにより構成される。従来例では図3(a)に示すように第2のブロック鎖14bはピニング層と親和性を持つ。第2のブロック鎖14bがピニング層上に、親和性が第2のブロック鎖ほど高くない第1のブロック鎖は中性化膜上に移動してくることで全体の自由エネルギーは低下する。つまり図3(a)のようにガイドパターンエッジでの表面エネルギー変化にしたがってBCPが並ぶ。
【0061】
このようにガイドパターンエッジで固定されたBCP分子を起点としてBCP全体がガイドパターンエッジと垂直に規則的に並ぶ(図3(b))。LBはブロックコポリマー1分子分の長さを意味する。中性化膜上では第1のブロック鎖と中性化膜、第2のブロック鎖と中性化膜では表面エネルギーが異なるが、2つのポリマーの中間の表面エネルギーをもつため、第1のブロック鎖と第2のブロック鎖が並ぶと考えられる。
【0062】
ガイドパターンエッジと垂直に規則的に並ぶために、全体として、第1のブロック鎖の層13aと第2のブロック鎖の層13bが交互に並び、図3(c)のようにガイドパターンの半分の周期を持つBCPパターンが得られる。図3(c)をA−A’線で切断した場合の断面図が、図1(d)である。第1のブロック鎖と第2のブロック鎖の界面が被加工膜11表面に対して垂直なラメラ相が得られる。
【0063】
前述したように、ピニング層の幅は最適値から大きくずれると、配列が崩れてしまう。これはピニング層の幅が最適値(ほぼBCP周期の半分)より大きくずれた場合、無理に規則配列しようとすると、隣あうBCP分子の間にできたすき間を埋めるためポリマー鎖が延びたり、逆にBCP分子間が詰まってしまってポリマー鎖が縮んだりする必要があるからである。ポリマー鎖の伸び縮みにより自由エネルギーが増加するので配列状態が安定ではなくなってしまうためである。
【0064】
次に本発明の場合について図6を用いて、説明する。
【0065】
本発明の場合も、熱によるアニールや溶媒アニールを行うことで、自由エネルギーが最小になるようにポリマー鎖が移動する。第1のブロック鎖14aは第1の表面エネルギー調整層12cと、第2のブロック鎖14bは第2の表面エネルギー調整層12dとほぼ同じ表面エネルギーをもっている。このため、第1のブロック鎖14aは第1の表面エネルギー調整層12cと、第2のブロック鎖14bは第2の表面エネルギー調整層12dと親和性が高い。このため第1の表面エネルギー調整層と第2の表面エネルギー調整層のエッジの部分でBCP分子が並ぶ。つまり第1の表面エネルギー層と第2の表面エネルギー層の境界の表面エネルギー変化にしたがってBCPが並ぶ(図6(a))。
【0066】
このようにガイドパターンエッジで固定されたBCP分子を起点としてBCP全体がガイドパターンエッジと垂直に規則的に並んでいく(図5(b))。LBはブロックコポリマー1分子分の長さを意味する。第1の表面エネルギー層と第2のブロック鎖、第2の表面エネルギー層と第1のブロック鎖では表面エネルギーが異なるので、自由エネルギーは同一の箇所よりは高くなってしまう。しかし、表面エネルギーがずれていても一定の範囲内であれば、両方のポリマーブロックがその上に並ぶことができ、ラメラが垂直に並ぶ。
【0067】
ガイドパターンエッジと垂直にBCP分子が規則的に並ぶために、全体として、第1のブロック鎖の層14aと第2のブロック鎖の層14bが交互に並び、図6(c)のようにガイドパターンの半分の周期を持つBCPパターンが得られる。図6(c)をB−B’線で切断した場合の断面図が、図4(d)である。第1のブロック鎖と第2のブロック鎖の界面が被加工膜11表面に対して垂直なラメラ相が得られる。
【0068】
従来例同様、第1の表面エネルギー層の幅L1、第2の表面エネルギー層の幅L2がBCP半周期の奇数倍から大きくずれると、配列は崩れてしまう。この場合も、無理に規則配列しようとすると、隣あうBCP分子の間にすき間ができてポリマー鎖が延びたり、逆にBCP分子間が詰まってしまってポリマー鎖が縮んだりする必要があるからである。ポリマー鎖の伸び縮みにより自由エネルギーが増加するので、配列状態が安定ではなくなってしまうのである。
【0069】
ただし、逆に言うと、ポリマー鎖の伸び縮みによる自由エネルギーの増加が一定以内であれば、ガイドパターンにそってBCPは並ぶ。ガイドパターンの寸法のずれが小さければ、BCPを配列させることができる。つまり、BCP半周期の3以上の奇数倍と第1の表面エネルギー層の幅L1、BCP半周期の3以上の奇数倍と第2の表面エネルギー層の幅L2は完全に一致していなくても、略同一でも良い。このため、領域1、2の幅L1、L2はブロックポリマーの半周期の3倍から20%程度の変動ぐらいまでが許容される。
【0070】
デンシティーマルティプリケーションにおいて、従来例でもガイドパターンの幅を振って評価はしていた。しかしその変化の幅はBCP1/4周期から3/4周期の範囲に限定していたために、ポリマー鎖の伸び縮みが起きないBCP周期の半分程度が最適値だった。このため、BCP周期の半分から大きくずれると、配列がくずれてしまった。しかし、上記にも述べたようにポリマー鎖の伸び縮みが起きないよう、BCP半周期の3以上の奇数倍になるようガイドパターンを設計することで、BCP規則配列ができるようになった。
【0071】
次に、具体的なパターン形成方法の実施例について述べる。
【0072】
<実施例1>
図8は、実施例1に係るパターン形成方法を示す断面図である。ここで使用したブロックコポリマーは、ポリスチレン(以下、PSとも称する)ブロック鎖とポリメタクリレート(以下、PMMAとも称する)ブロック鎖からなるブロックコポリマーである。
【0073】
まず、Si酸化膜からなる被加工膜11上に、PMMAとほぼ同一の表面エネルギーを持つ有機塗布膜である第1のエネルギー調整層12cを形成した(図8(a))。第1のエネルギー調整層12cは、ArF露光の際に反射防止膜となるようにする。第1のエネルギー調整層12cのみでは反射防止膜としての役割を果たさない場合は、その下にさらなる層を形成してもよい。
【0074】
次に、第1のエネルギー調整層12c上にレジストを塗布し、これをベークし、ArF液浸露光装置を使用して露光した。照明条件は、NA:1.35、二重極照明、開口の中心:0.85、σ:0.1とした。使用したレチクルのパターンは、ライン幅42nm、スペース幅42nmであった。ポストエクスポージャーベークを行い、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(以下、TMAHとも称する)の0.27N溶液で現像をすることで、ハーフピッチ42nm、1:1ラインアンドスペースのレジストパターン15を得ることができた(図8(b))。
【0075】
得られたレジストパターン15を再度ArFで露光し、ポストエクスポージャーベークすることにより(J. Y. Cheng et al. :ACS Nano 4 (2010) 4815)、レジストパターンの極性を疎水性から親水性に変化させた(図8(c))。その上に、第2のエネルギー調整層12dの材料であるPSの末端をOH基としたPSポリマーブラシ前駆体をトルエンに溶解させたものを塗布した。フォーミングガス(N2:96%、H2:4%)中で160℃、48時間アニールし、第1のエネルギー調整層12c表面に第2のエネルギー調整層12dとしてのPSポリマーブラシを架橋反応により接着した。この後、未反応のポリマーブラシ前駆体をトルエンで除去した(図8(d))。
【0076】
その後、レジストをTMAHで除去した(図8(e))。レジストを剥離する際に、レジスト上部や側面にあるPSポリマーブラシ前駆体は除去された。その結果、第1のエネルギー調整層12cの表面に、第2のエネルギー調整層12dが形成された領域と第1のエネルギー調整層12cが露出している領域が交互に平行に並んだガイドパターンが形成された。
【0077】
第1のエネルギー調整層12cを構成する塗布型有機膜はPMMAと略同一のエネルギーを有し、第二のエネルギー調整層12dを構成するPSポリマーブラシはPSと略同一の表面エネルギーを有する。
【0078】
使用したブロックコポリマーの分子量は88000であり、PSの体積分率は50%である。ブロックコポリマーのミクロ相分離後の周期は、28nmである。第2のエネルギー調整層が形成された領域のライン幅(L2)および第1のエネルギー調整層12aが露出している領域のライン幅(L1)は、それぞれ42nmである。つまり、ガイドパターンの周期(84nm)がブロックコポリマーの周期(28nm)の3倍になるようにブロックコポリマーの分子量、ガイドパターンの周期を設定した。
【0079】
上記で作製したガイドパターン上に、前述のブロックコポリマーを塗布し、フォーミングガス(N2:96%、H2:4%)中で180℃、48時間アニールした。ブロックコポリマーがミクロ相分離し、図8(f)に示すようなパターンが形成できた。図8(f)では、PSブロック鎖の層20aとPMMAブロック鎖の層20bが交互に並び、その界面が被加工膜11表面に対して垂直であるラメラ相が形成されていることがわかる。このパターンの周期は28nmであった。
【0080】
このようにして形成したラメラパターンをエッチングのマスクとして、被加工膜を加工した例について図9を使って次に説明する。基板17はSi酸化膜下層の膜を総称している。
【0081】
PMMAブロック鎖の層20bのみをO2プラズマ処理により、除去した。その結果、PSブロック鎖の層20aからなるラインアンドスペースパターンが得られた((図9(a))。このPSブロック鎖の層20aは、通常のリソグラフィーで使用するレジストパターンと同様に扱うことができる。この後、PSブロック鎖の層20aをマスクとしてエッチングすることにより、第1および第2のエネルギー調整層12cおよび12d、ならびに被加工膜11を加工した(図9(b))。PSブロック鎖の層20a、第1および第2のエネルギー調整層12cおよび12dを剥離することで、図9(c)に示すような被加工膜11のライン・アンド・スペースパターンを形成することができた。
【0082】
本発明が従来例よりも優れているのは、ガイドパターンを形成するためのレジストパターンのライン幅をガイドパターンの半周期に比べて極端に細くする必要がないことである。ここではガイドパターンを形成する際、レジストをArF液浸露光装置で露光してパターニングし、レジストパターンをマスクとして、エッチングによりPSポリマーブラシをパターニングした。周期に比べて細い線のレジストパターンを形成したり、これをマスクに加工しようとすると、ラインエッジラフネスが増加したり、途中で切れてしまったりという問題が発生する。しかし、本発明においては、ほぼ1:1のレジストパターンを形成すればよいので(1:1からのずれはエッチング時の加工変換差による)、ラインエッジラフネスが増加したり、途中で切れてしまったりという問題は回避できる。
【0083】
さらに、ArF露光装置で二光束干渉を利用して露光を行っているので、マージンが広く、微細なパターンまでできるという利点がある。特に、1:1L&Sパターンにおいては、二重極照明のような二光束干渉を用いれば、原理的に、焦点深度が無限大となる。(実際には理想条件は形成できないので、有限である。)しかし、1:1から比率が離れていくと、フォーカスがずれた時の寸法変動が大きくなり、焦点深度が極端に低下してしまう。このことは、図7を参照して前述した。図7のシミュレーションと本実施例は同一条件である。
【0084】
図7から、1:1L&Sパターンのほうが1:5L&Sパターンよりも、露光量が変動しても広い焦点深度が得られることがわかる。実際のパターニングでは、プロセス要因によりマージンが劣化してしまうので、シミュレーションよりも実際のパターニングの方がマージンは下がる。このため、解像限界付近では1:1L&Sパターンができても、1:5L&Sパターンができなくなってしまう。
【0085】
実際、レジストパターンを形成する際、42nmの1:1L&Sパターンは容易に形成することができる。一方、ライン幅14nm、スペース幅70nmの1:5L&Sパターンは形成することができない。つまり1:5L&Sパターンではなく、1:1L&Sパターンをガイドとして形成した方が、より小さな周期のケミカルガイドパターンを形成できる。その結果、BCP周期も1:1L&Sパターンをガイドとした方が小さくできる。同じ露光装置を使用しても、1:1L&Sパターンをガイドとした方が1:5L&Sパターンをガイドとした場合より微細なBCPからなるL&Sパターンが形成できるのである。
【0086】
ここでは1:1L&Sパターンと1:5L&Sパターンの比較をおこなったが、第1の表面エネルギー調整層12cの幅L1と第2の表面エネルギー調整層12dの幅L2の比率が1:1に近いほど、ガイドパターン形成の際の露光におけるプロセスマージンが広くなる。したがって、第1の表面エネルギー調整層12cの幅L1と第2の表面エネルギー調整層12dの幅L2の比率が1:1に近いことが好ましい。
【0087】
しかし、第1の表面エネルギー調整層12cの幅L1と第2の表面エネルギー調整層12dの幅L2は完全に一致する必要はない。L1とL2が略同一であっても、1:3や1:5に比べれば、広いマージンを得られる。さらには第1の表面エネルギー調整層12cの幅L1がBCP半周期の3倍、第2の表面エネルギー調整層12dの幅L2がBCP半周期の5倍で合ったとしても、やはり、比率が1:3や1:5の場合よりは広いマージンを得ることができる。
【0088】
<比較例>
従来例として、ピニング層がBCPの半周期と略同一の幅を持ち、中性化膜の幅はBCP半周期の奇数倍である場合を述べた。次に、上記実施例と同様、ピニング層がBCPの半周期の奇数倍、中性化膜の幅がBCP半周期の奇数倍である従来例(従来例の変形例、以下では比較例と呼ぶ)について述べる。
【0089】
図16は、比較例に係るパターン形成方法を説明する図である。実施例の第1の表面エネルギー調整層を中性化膜12aに、第2の表面エネルギー調整層をピニング層12bに置き換えて、実施例と同様にガイドパターンを形成した(図16(a))。
【0090】
ここでは、ピニング層幅、中性化膜幅いずれも、BCP半周期の3倍である。すなわち、比較例と本発明ではケミカルガイドパターンの幅は同じである。
この変形例と、本発明の違いは、ピニング層、中性化膜の表面エネルギーと、第1の表面エネルギー調整層、第2の表面エネルギー調整層の表面エネルギーが異なることである。
【0091】
比較例では、ピニング層はBCPを構成するポリマーの一番表面エネルギーの低いもの以下の表面エネルギーまたは、BCPを構成するポリマーの一番表面エネルギーの高いもの以上の表面エネルギーを持つ。中性化膜はBCPを構成するポリマーの中間の表面エネルギーを持つ。一方、本発明では、領域1はポリマー1とほぼ同じ表面エネルギーを持ち、領域2はポリマー2とほぼ同じ表面エネルギーを持つ。
【0092】
ここで使用したブロックコポリマーは、実施例と同様、ポリスチレン(以下、PSとも称する)ブロック鎖とポリメタクリレート(以下、PMMAとも称する)ブロック鎖からなるブロックコポリマーである。ピニング層12bは、PSおよびPMMAより高いエネルギーを有するSiを用いた。中性化膜12aは、PSとPMMAの中間の表面エネルギーを有するPS−PMMAのランダムコポリマー末端がOH基となったポリマーを中性化膜前駆体とし、Si表面の水酸基と架橋反応させて、中性化膜とした。図16(a)は、形成したガイドパターンの平面図であり、直線C−C’で切断した場合の断面図が図16(b)である。
【0093】
実施例1と同様にブロックコポリマーを塗布し、アニールによりミクロ相分離させた。その結果、ブロックコポリマーは図14(c)に示すようにミクロ相分離した。図14(d)はブロックコポリマーのミクロ相分離の様子を示す平面図であり、直線C−C’で切断した場合の断面図が図14(c)である。
【0094】
ピニング層12bの部分では、ピニング層12bと親和性のあるPMMAブロック鎖の層20bが下に、親和性のないPSブロック鎖の層20aが上に層状に並ぶ。一方、中性化膜12a上では、中性化膜12aとPSブロック鎖および中性化膜12aとPMMAブロック鎖の親和性が同程度なので、PSブロック鎖およびPMMAブロック鎖の両方が中性化膜12a上に接着する。その結果、PSブロック鎖の層20aとPMMAブロック鎖の層20bの界面は、中性化膜12c表面に対して垂直になる。しかし、位置制御がされないため、図16(d)に示すように、中性化膜12c上で縞模様のような指紋状のパターンができてしまう。
【0095】
このように、比較例ではブロックコポリマーの界面が中性化膜表面に対して垂直に規則配列したラメラ相のパターンは得られなかった。
【0096】
一方、実施例では、第1の表面エネルギー調整層とPMMA、第2の表面エネルギー層とPSの親和性が高いために、第1の表面エネルギー調整層と第2表面エネルギー調整層の境界でポリマーがピニングされる。さらに第1の表面エネルギー調整層上、第2の表面エネルギー調整層上ともに表面エネルギーはずれてはいるものの、PMMA、PSいずれとも親和性も有するために、図8(f)に示すようにラメラが垂直に、交互に並んだパターンを得ることができる。
【0097】
従来のパターン形成方法では、ピニング層のライン幅は、ブロックコポリマーの半周期が最適であると考えられてきた。従って、目的とするブロックコポリマーのミクロ相分離パターンが微細であるほど、ピニング層のライン幅を細くする必要があった。それに対して本実施形態では、そのようなピニング層を形成する必要がなく、ガイドパターンのライン幅をより広く設定することが可能である。これにより、露光の際のプロセスマージンがより広い、第1の表面エネルギー調整層12cの幅L1と第2の表面エネルギー調整層12dの幅L2の比を1:1に近い条件を選択できる。従って、本実施形態によると、精度よくガイドパターンを形成することができ、ブロックコポリマーをより安定にミクロ相分離させることが可能になる。その結果、ブロックコポリマーの一方のブロック鎖を除去して残ったパターンをエッチングマスクとして使用する場合に、ラインエッジラフネスの増加や、ラインが途中で切れるという問題を防ぐことができる。
【0098】
しかし、比較例の結果からわかるように、単にガイドパターンのライン幅を広げただけではブロックコポリマーを規則的にミクロ相分離させることはできない。従来のようなピニング層と中性化膜からなるガイドパターンではなく、ブロックコポリマーを構成する各ブロックと略同一の表面エネルギーを有する領域からなるガイドパターンを利用することにより、より広いライン幅のガイドパターンに基づいて目的とするブロックコポリマーのミクロ相分離パターンを得ることを可能にした。
【0099】
上記ではガイドパターンを構成するピニング層、中性化膜、第1の表面エネルギー調整層、第2の表面エネルギー調整層およびブロックコポリマーを構成する第1のポリマーブロック鎖、第2のポリマーブロック鎖の「表面エネルギー」という言葉を使って、ガイドパターン材料とポリマー間の親和性を説明した。
【0100】
表面エネルギーは物質の表面におけるギブスの自由エネルギーである。表面張力は単位面積当たりの表面でのギブスの自由エネルギーである。物質間の表面エネルギーが近いほど、それら物質間の親和性が高いことを意味する。
【0101】
固体の表面張力を求めることで、固体の表面エネルギーを求めることができる。
【0102】
固体の表面張力の測定方法はいくつか存在するが、その例を以下に示す。以下に示す方法は、表面張力がわかっている液体と表面張力を知りたい対象の固体との接触角を測定することにより対象の固体の表面張力を求める方法である。まず、以下に示すヤングデュプレの式を用いて、測定した接触角と付着仕事とを関連付ける。
【0103】
(1+cosθ)γL=WSL
θ:接触角
γL:液体の表面張力
WSL:固体と液体が付着することにより減少する付着仕事
一方、液体の表面張力成分は予め分かっているため、付着仕事量をモデル化して表面張力成分を算出することにより、対象の固体の表面張力成分を求めることができる。表面張力は、複数の表面張力成分により規定される。対象の固体について不明な表面張力成分が複数ある場合、不明な表面張力成分の数と同じだけの種類の液体の接触角を同様に測定することにより、各表面張力成分を求めることができる。そのように得られた複数の表面張力成分から、対象の固体の表面張力が得られる。
【0104】
その例として、R. D. Peters et al.: Langmuir 16, 4625 (2000)には次のような方法が述べられている。Fowkes-van Oss-Chaudhury-Good(FOCG)表面張力モデルによると、固体の表面張力は、Lifshitz-van der Waals成分と、ルイス酸・塩基の極性相互作用成分からなる。これは、以下の式で表される。
【0105】
γLW=γLW+γAB
γLW: Lifshitz-van der Waals成分
γAB:極性相互作用(または水素結合成分)
γAB=2(γ+γ−)1/2
γ-:電子受容成分
γ+:電子供与成分
付着仕事WSLは、2{(γSLWγLLW)1/2+(γS+γL-)1/2+(γS-γL+)1/2}と表すことができるので、
(1+cosθ)γL=2{(γSLWγLLW)1/2+(γS+γL-)1/2+(γS-γL+)1/2}
となる。
【0106】
液体の表面張力成分γL、γLLW、γL+、γL-は予め分かっている。従って、変数は、対象の固体の表面張力成分であるγSLW、γS+、γS-の3つである。このため、3種類の液体について対象の固体との接触角を測定することにより、固体の表面張力成分を求める。得られた固体の表面張力成分から、固体の表面張力が得られる。
【0107】
FOCGモデル以外にも、分散力、極性による相互作用力、および水素結合力を使って付着仕事を記述するモデルもある。この方法では、付着仕事WSLを以下の式で表している。
【0108】
WSL=2{(γSdγLd}1/2+(γSPγLP)1/2+(γSHγLH)1/2)
γd:分散力、γP:極性力、γH:水素結合力
FOCG表面張力モデル同様、液体の表面張力成分はあらかじめわかっているので、3種類の液体について対象の固体との接触角を測定することにより、固体の表面張力成分を求める。
【0109】
また、液体と固体の親和性を見るのであれば、固体に液体を滴下して接触角を測定する方法もある。測定した接触角と上記で示したヤングデュプレの式から付着仕事を算出し、それを以下の式に当てはめることにより固体−液体間の界面エネルギーを算出することができる。一方、付着仕事は次の式で表される。
【0110】
γSL=γS+γL−WSL
γSL:固体−液体間の界面エネルギー
γS:固体の表面エネルギー
γL:液体の表面エネルギー
この式から、付着仕事とは、液体と固体が付着することによって低下したエネルギーである。付着仕事が大きいほど固体−液体間の界面エネギーは低下し、安定な状態であること、すなわち液体と固体の親和性が高いことを意味する。このように接触角は固体−液体間の界面エネルギーを反映しているため、異なる固体について同一の液体で接触角を測定すれば、固体間の親和性を比較できる。
【0111】
このようにガイドパターンを構成する第1の表面エネルギー調整層12cと第2の表面エネルギー調整層12dおよびブロックコポリマーを構成する第1のブロック鎖14a、第2のブロック鎖14bの表面張力を求めることで“表面エネルギー”を求めることができる。求められた表面エネルギーから、第1のブロック鎖14aとの親和性のある材料を第1の表面エネルギー調整層12cの材料とし、第2のブロック鎖14bとの親和性のある材料を第2の表面エネルギー調整層12dの材料として選択することができる。または、液体―固体間の接触角を測定することで間接的に親和性を求めることができ、ケミカルガイドの表面エネルギー調整層12cと第2の表面エネルギー調整層12dの材料が選択できる。
【0112】
第1の表面エネルギー調整層12cの表面エネルギーと第1のブロック鎖14aの表面エネルギーは完全に同一であることが好ましい。しかし、完全に同一でなくても親和性を有する範囲であればよい。同様に、第2の表面エネルギー調整層12dの表面エネルギーと第2のブロック鎖14bの表面エネルギーも完全に同一であることが好ましい。しかし、完全に同一でなくても親和性を有する範囲であればよい。
【0113】
第1の表面エネルギー調整層12cと第1のブロック鎖14aの表面エネルギーの差、および第2の表面エネルギー調整層12dと第2のブロック鎖14bの表面エネルギーの差が、それぞれ約0.5erg/cm2以内であることが好ましい。しかし、この値は、使用するブロックコポリマーの種類、分子量、組成、アニール温度、塗布時の溶媒の種類等の種々の条件により異なる。
【0114】
上記実施例では二光束干渉をさせるために二重極照明を使用したが、照明条件はこれに限定されるものではない。二重極照明を使用する場合、その形状は円形に限られず、扇形、楕円等であってもよい。重要なことは、ガイドパターンを解像するのに必要な回折光が露光装置の対物レンズの瞳面を通過してウエハ上に達し、干渉効果により結像することである。照明形状をアパーチャーにより成形する場合、回折光が対物レンズの瞳面を通過する位置に、開口を有するアパーチャーを設置すればよい。照明形状をビーム成形により形成する場合、回折光が対物レンズの瞳面を通過する位置から照明光が照射されればよい。開口の大きさまたはビームの大きさが小さい方が、バックグラウンドが小さくなり、解像性能は高くなる。一方、開口を小さくすると光の強度が低下するという問題が生じるため、開口の大きさおよび形状は一義的には決まらない。このため、開口の大きさおよび形状は、目的に合わせて適宜選択すればよい。さらに、照明は、二重極照明に限られず、四重極照明や輪帯照明であってもよい。ガイドパターンを解像するのに必要な回折光が対物レンズの瞳面を通過する照明形状であれば良いからである。
【0115】
露光にArF光を使用する場合、ArF液浸露光装置、ArFドライ露光装置、ArF光を使用する干渉露光装置、液中でArF光を使用する干渉露光装置等により行うことができる。また、露光する光は、波長193nmのArFエキシマレーザー光に限定されず、KrF光、X線、EUV光、紫外光等を用いることも可能である。例えば、X線露光装置、EUV露光装置、KrF露光装置、電子ビーム描画装置、レーザービーム描画装置、イオンビーム描画装置、粒子線描画装置、X線二光束干渉露光装置、EUV二光束干渉露光装置、ArF二光束干渉露光装置、KrF二光束干渉露光装置等を使用することができる。
【0116】
光リソグラフィープロセスでは、レジストパターンと被加工膜の間に転写膜を形成することが行われている。レジストパターンをエッチングにより転写膜に転写し、この転写膜パターンを使って酸化膜や金属等の最終的な被加工膜をエッチングする。本実施形態においても、それと同様の転写プロセスをとることが可能であることは言うまでもない。
【0117】
また、転写膜は1種類には限られず、複数の転写膜を使用してもよい。複数の転写膜を組み合わせることで、被加工膜を加工する際のエッチング選択比を高くすることができる。転写膜としては、SiN等のハードマスクを使用することができる。また、Si酸化膜と有機膜の組み合わせを使用することもできる。
【0118】
上記実施例では、ガイドパターンを塗布膜とポリマーブラシで構成した。しかし表面エネルギーを調整する膜は種々提案されており、これに限定されるものではない。例えば、表面と反応して基板上にに1層だけ分子層ができる自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer:SAM);ブロックコポリマーと同じ成分からなるランダムコポリマーに基板と反応する基を付加し、基板と反応させて形成するポリマーブラシ;表面エネルギーを調整するポリマー種と架橋基を有するポリマー種をランダムに結合させたポリマーを基板上に塗布し、加熱により架橋させて架橋膜とする塗布膜;露光によりエネルギーが変化することを利用して表面エネルギーを調整する塗布膜;SAMと表面エネルギーを調整するランダムコポリマーを接着して形成する複合膜等を使用することができる。また、予め所望の表面エネルギーを有する膜を第1のエネルギー調整層12cおよび第2のエネルギー調整層12dとして使用することも可能である。そのような膜としては、金のような金属の膜、酸化膜、窒化膜、有機膜等が挙げられる。
【0119】
被加工膜11上に第1の表面エネルギー調整層12cを形成する方法としては、ケミカルベーパーデポジション(CVD)、回転塗布、スキャン塗布等を用いることができる。
【0120】
これらを組み合わせることで、ガイドパターンを形成することが可能である。
【0121】
使用するブロックコポリマーは、相分離させたときに第1のブロック鎖と第2のブロック鎖がラメラ相を形成する組成であることが好ましい。さらに好ましいのは、相分離後に一方のブロック鎖を除去できるブロックコポリマーである。例えば、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートからなるブロックコポリマーが挙げられる(以下、ポリマーAとポリマーBからなるブロックコポリマーをポリマーA−b−ポリマーBと表す)。
【0122】
他には、ポリスチレン−b−ポリ2−ビニルピリジン、ポリスチレン−b−ポリイソプレン、ポリスチレン−b−ポリエチレンオキサイド、ポリスチレン−b−ポリジメチルシロキサン、ポリイソプレン−b−ポリエチレンオキサイド、ポリブタジエン−b−ポリヘキサフルオロピロピレンオキサイド、ポリペンタフルオロスチレン−b−ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン−b−ポリ{11−[4−(4−ブチルフェニルアゾ)フェノキシ]−アンデシル−メタクリレート]、ポリエチレンオキサイド−b−ポリ{11−[4−(4−ブチルフェニルアゾ)フェノキシ]−アンデシル-メタクリレート]、ポリスチレン−b−ポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサンメタクリレート、ポリメチルメタクリレート−b−ポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサンメタクリレート等が挙げられる。これ以外であっても、ミクロ相分離するのに十分なχパラメーターを有するポリマーの組み合わせであれば使用することができる。エッチング耐性、サイズ等、目的に合わせて使用するブロックコポリマーを選択することができる。
【0123】
本明細書においては、2種類のポリマーからなるブロックコポリマーを使用した場合について主に説明するが、3種類以上のポリマーからなるブロックポリマーも同様に使用することが可能である。3種類のポリマーA、B、Cからなるトリブロックポリマーを使用する場合、ブロック鎖の層が−A−B−A−C−の順で繰り返し並んだラメラ相が形成される。この場合のガイドパターンは、ポリマーA、BおよびCとそれぞれ略同一の表面エネルギーを有する3種類の表面エネルギー調整層で形成すればよい。
【0124】
トリブロックポリマーの例としては、ポリスチレン−b−ポリブタジエン−b−ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン−b−(ポリエチレン−co−ポリブチレン)−b−ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。トリブロックポリマーを使用する場合も、ブロックコポリマーと同様、目的に合わせてトリブロックポリマーを選択することができる。
【0125】
また、ブロックコポリマーの種類は同じであるが、分子量の異なるものを混合して使用したり、ブロックコポリマーを構成するいずれかのポリマーをホモポリマーとしてブロックコポリマーに添加したものを使用してもよい。このような調整を行うことにより、ブロックコポリマーの周期やミクロ相分離温度を調節することができる。
【0126】
さらに、ブロックコポリマーを構成するいずれのポリマーとも異なるポリマーをホモポリマーとしてブロックコポリマーに添加したものを使用してもよい。例えば、ポリスチレン−b−ポリエチレンオキサイドにオルガノシリケートを添加したものを使用することができる。このようなブロックコポリマーを使用することにより、エッチング耐性の向上等の付加的な効果が得られる。
【0127】
ブロックコポリマーを相分離させるには、一般的に、ブロックコポリマーのガラス転移温度以上の温度でアニールする。しかし、アニール温度がガラス転移温度以上でも秩序・無秩序転移温度(ODT)を超えて高くなると、無秩序構造になり、相分離構造が得られない。このため、アニール温度はガラス転移温度以上、ODT以下であることが好ましい。アニール装置については特に限定されないが、好ましくはオーブン、ホットプレート等を用いて行う。
【0128】
また、アニールを行う際の雰囲気は特に限定されない。好ましくは、ブロックコポリマーの分解を抑えるために窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気や真空中で行うのがよい。必要に応じて、水素などの還元作用のあるガスを不活性ガスに混合した雰囲気下でアニールしてもよい。あるいは、加熱するのではなく、有機溶媒雰囲気下に置くことによりポリマーを移動させてミクロ相分離させてもよい。
【0129】
本願においては、第1または第2のブロック鎖のパターンを選択的に除去し、残存した前記第2または第1のブロック鎖のパターンをエッチングマスクとして用いるものである。ブロックコポリマーを上記のように相分離させた場合、第1および第2のブロック鎖のうち一方を除去して他方を残すと、ラインアンドスペースパターンを形成することができる。このようにして残ったパターンをマスクとして、最終的に被加工膜11をエッチングする。
【0130】
前記実施例ではPMMAブロック鎖の層20bのみをO2プラズマ処理により、除去したが、相分離後に一方のブロック鎖を除去する方法は、これに限定されない。従来公知の方法を採用することができる。例えば、反応性イオンエッチング(RIE)を用いることができる。この方法によると、第1のブロック鎖と第2のブロック鎖が異なるRIE耐性を有することを利用して、一方のブロック鎖を除去できる。例えば、ポリスチレンとポリブタジエンからなるブロックコポリマーを相分離させた場合には、オゾン処理によりポリスチレンブロックのみを残すことができる。また、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートからなるブロックコポリマーを相分離させた場合には、O2の他に、CF4などの反応性ガスを用いたRIEによりポリスチレンブロックのみを残すこともできる。
【0131】
ドライ現像をする場合には、ブロックコポリマーを構成する各ポリマーに対する選択比が異なるガスを選択すればよい。フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を含むハロゲン系のガスやハロゲン化炭素を用いることもできる。さらに、少量のガスをハロゲン系のガスに添加して、ポリマーに対する選択比やパターンの形状を制御してもよい。また、ドライ現像のみならず、ウェット現像してもよい。ブロックコポリマーとしてポリスチレン−b−ポリメチルメタクリレートを使用する場合、例えばポリメチルメタクリレートにUV光を照射してポリマー鎖を切断し、酢酸により現像してもよい。また、熱により一方のポリマーを蒸散させてもよい。あるいは、UV光を真空中でポリスチレン−b−ポリメチルメタクリレートに照射してポリメチルメタクリレートを除去してもよい。また、ポリスチレン−b−ポリジメチルシロキサンを使用する場合には、真空中で400℃以上に加熱してポリスチレンを除去することもできる。このように、一方のポリマーを除去する方法は、使用するブロックコポリマーによって種々選択可能である。
【0132】
上記実施例は、ガイドパターンを形成するプロセスとして、先に第1の表面エネルギー調整層(塗布膜)を形成し、その上にレジストパターンを形成した後、第2の表面エネルギー調整層(PSポリマーブラシ)を形成している。レジストを除去することでレジスト表面や上方にある第2の表面エネルギー調整層を除去する。これによりケミカルガイドパターンを形成している。いわばリフトオフプロセスにより、レジストパターンを使ってガイドパターンを形成している。
【0133】
しかしレジストパターンを使ったガイドパターン形成プロセスはこれに限定されない。これには、次のようなものが考えられる。
【0134】
<変形例1>
図10は、変形例1に係るパターン形成方法を説明する断面図である。
【0135】
被加工膜11上に、第1の表面エネルギー調整層12cおよび第2の表面エネルギー調整層12dを積層して形成した(図10(a))。その上に、実施例1と同様にレジストパターン15を形成した(図10(b))。このレジストパターン15をマスクとして第2の表面エネルギー調整層12dを加工することで、ガイドパターンを形成した(図10(c))。
【0136】
このように作製したガイドパターン上に、実施例1と同様にブロックコポリマーを塗布してミクロ相分離させることにより、実施例1と同様のパターンが得られた。
【0137】
<変形例2>
図11は、変形例2に係るパターン形成方法を説明する断面図である。
【0138】
被加工膜11上に、第1の表面エネルギー調整層12cを形成した(図11(a))。その上に、実施例1と同様にレジストパターン15を形成した(図11(b))。このレジストパターン15をマスクとして第1の表面エネルギー層12cを加工した(図11(c))。加工後、第1の表面エネルギー調整層12cのスペース部のみに選択的に第2のエネルギー調整層12dを形成することで、ガイドパターンを形成した(図11(d))。
【0139】
このように作製したガイドパターン上に、実施例1と同様にブロックコポリマーを塗布してミクロ相分離させることにより、実施例1と同様のパターンが得られた。
【0140】
<変形例3>
図12は、変形例3に係るパターン形成方法を説明する断面図である。
【0141】
レジストパターン15をマスクとして第1の表面エネルギー調整層12cを加工するところまでは、変形例2と同様に行った。その後、図12(a)に示すように、被加工膜11およびエネルギー調整層12cの上に第2の表面エネルギー調整層12dを形成した。形成した第2の表面エネルギー調整層12dを第1の表面エネルギー調整層12cが露出するまでエッチバックすることにより、ガイドパターンを形成した(図12(b))。
【0142】
このように作製したガイドパターン上に、実施例1と同様にブロックコポリマーを塗布してミクロ相分離させることにより、実施例1と同様のパターンが得られた。
【0143】
<変形例4>
図13は、変形例4に係るパターン形成方法を説明する断面図である。
【0144】
被加工膜11上に、第1の表面エネルギー調整層12cを形成した(図13(a))。その上に、実施例1と同様にレジストパターン15を形成し、このレジストパターン15をそのまま第2のエネルギー調整層として使用してガイドパターンを形成した(図13(b))。
【0145】
このように作製したガイドパターン上に、実施例1と同様にブロックコポリマーを塗布してミクロ相分離させることにより、実施例1と同様のパターンが得られた。
【0146】
<変形例5>
図14は、変形例5に係るパターン形成方法を説明する断面図である。
【0147】
被加工膜11上に第1の表面エネルギー調整層12cを形成し(図14(a))、その上に実施例1と同様にレジストパターン15を形成した(図14(b))。形成したレジストパターン15のスペース部のみに選択的に第2の表面エネルギー調整層12dを形成した(図14(c))。レジストパターン15を除去することにより、図14(d)に示すようなガイドパターンを得た。
【0148】
この方法において、レジストパターン15の上に第2のエネルギー調整層12dを形成した後、エッチバックにより第2の表面エネルギー調整層12dおよびレジストを薄膜化し、ガイドパターンを形成してもよい。
【0149】
このように作製したガイドパターン上に、実施例1と同様にブロックコポリマーを塗布してミクロ相分離させることにより、実施例1と同様のパターンが得られた。
【0150】
<変形例6>
図15は、変形例6に係るパターン形成方法を説明する断面図である。ここで使用した材料は、実施例1と同様である。
【0151】
ここでは、第1の表面エネルギー調整層12cとして、感光性の膜を使用した。一例として、シランカップリング剤をSi表面に供給して基板と反応させ、露光により脱離させることで表面エネルギー調整した。
【0152】
第1の表面エネルギー調整層12cを、レクチルを介して選択的にArF露光し、露光部を第2のエネルギー調整層12dとすることによりガイドパターンを形成した。この場合にも、レジストパターンを形成する場合と同様、ガイドパターンのライン幅を1:1にすることにより、優れた露光によるプロセスマージンでガイドパターンを形成することができる。
【0153】
このように作製したガイドパターン上に、実施例1と同様にブロックコポリマーを塗布してミクロ相分離させることにより、実施例1と同様のパターンが得られた。
【0154】
上記実施形態または実施例によれば、ブロックコポリマーのミクロ相分離を利用したパターン形成方法において、露光において広いプロセスマージンで、精度よくガイドパターンを形成でき、ガイドパターンよりも微細なブロックコポリマーのミクロ相分離パターンを得ることができる。
【0155】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0156】
11…被加工膜、12a…中性化膜、12b…ピニング層、第1の表面エネルギー調整層12c、12d…第2の表面エネルギー調整層、13…ブロックコポリマー層、13a…第1のブロック鎖の層、13b…第2のブロック鎖の層、14…ブロックコポリマー分子、14a…第1のブロック鎖、14b…第2のブロック鎖、15…レジストパターン、20a…PSブロック鎖の層、20b…PMMAブロック鎖の層。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、パターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LSIをはじめとする半導体デバイス等の各種電子デバイスにおける微細パターンの製造プロセスでは、リソグラフィーによる微細加工技術が採用されている。今後、さらに微細な加工が要求されることは確実であり、リソグラフィーにおける光源の短波長化およびレジストの高性能化が進められている。しかし、これらの対策による解像度の向上は困難になってきている。 また、要求されるパターンの微細化に伴うコストの増大も問題になっている。現在、より微細なパターンを形成するためには、高額のEUV(extreme ultraviolet)露光装置(産業用には露光波長13.5nmの光を使用した露光装置が主流)およびArF液浸露光装置(波長193nmのArFエキシマレーザー光を使用した露光装置で、レンズとウエハの間に水を入れることにより高開口数が得られる)が一般的に使用されている。しかし、特にEUV露光装置は、装置自体のコストおよびランニングコストが高く、パターン形成にかかるコストが大幅に増大すると考えられている。このため、微細なパターンを安価に形成できる技術の開発が必要となっている。
【0003】
そのため、今後のパターンの微細化に対応する新しい技術として、複数種類のポリマーブロックが結合したブロックコポリマー(BCP)をミクロ相分離させ、これを用いて加工を行う方法がある。この方法においては、BCPを所望の位置に所望の配向でミクロ相分離させることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,521,094号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、微細なブロックコポリマーのミクロ相分離パターンを得ることができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、被加工膜上に、表面エネルギーの異なる第1の表面エネルギー調整層および第2の表面エネルギー調整層が交互に平行に並んだガイドパターンを形成し、前記ガイドパターン上に、第1および第2のブロック鎖を含むブロックコポリマー層を形成し、前記ブロックコポリマーをミクロ相分離させ、前記ガイドパターンに基づいて前記ブロックコポリマーを配向させることを含むパターン形成方法が提供される。ここで形成されるパターンは、前記第1のブロック鎖の層と前記第2のブロック鎖の層が前記ガイドパターンと平行に交互に並び、前記第1のブロック鎖の層と前記第2のブロック鎖の層の界面が前記被加工膜の表面に対して垂直であるラメラ相である。前記パターン形成方法において、前記第1の表面エネルギー調整層は前記第1のブロック鎖と略同一の表面エネルギーを有し、前記第2の表面エネルギー調整層は前記第2のブロック鎖と略同一の表面エネルギーを有し、前記ガイドパターンの周期は前記ブロックコポリマーの周期の3以上の整数倍であり、前記第1の表面エネルギー調整層および前記第2の表面エネルギー調整層の各々の幅は、前記ブロックコポリマーの半周期の3以上の奇数倍である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】従来のパターン形成方法を示す断面図。
【図2】従来のパターン形成方法におけるガイドパターンを示す平面図。
【図3】従来のパターン形成方法におけるブロックコポリマー分子の配向を示す平面図。
【図4】実施形態に係るパターン形成方法を示す断面図。
【図5】実施形態に係るパターン形成方法におけるガイドパターンを示す平面図。
【図6】実施形態に係るパターン形成方法におけるブロックコポリマー分子の配向を示す平面図。
【図7】ガイドパターンのライン幅と露光によるプロセスマージンの関係を示す図。
【図8】実施例1に係るパターン形成方法を示す断面図。
【図9】実施例2に係るパターン形成方法を示す断面図。
【図10】変形例1に係るパターン形成方法を示す断面図。
【図11】変形例2に係るパターン形成方法を示す断面図。
【図12】変形例3に係るパターン形成方法を示す断面図。
【図13】変形例4に係るパターン形成方法を示す断面図。
【図14】変形例5に係るパターン形成方法を示す断面図。
【図15】変形例6に係るパターン形成方法を示す断面図。
【図16】比較例に係るパターン形成方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0009】
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
【0010】
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0011】
図5は本発明のケミカルガイドの平面図である。
【0012】
第1の表面エネルギー調整層12cと第2の表面エネルギー調整層12dが交互に形成されている。ガイドパターンの2つの表面エネルギー調整層の表面エネルギーは、BCPを構成する2種類のポリマーの表面エネルギーとおのおのほぼ同一となるようにする。
【0013】
また、第1の表面エネルギー調整層12cの幅L1および第2の表面エネルギー調整層12dの幅L2は、それぞれ、BCP半周期の3以上の奇数倍とほぼ等しい。
【0014】
続いて、ガイドパターン上に、ブロックコポリマー層13を形成し、加熱してアニーリングすることにより、ブロックコポリマーをミクロ相分離させる。その結果、図4(d)に示すように、ガイドパターンに応じて第1のブロック鎖および第2のブロック鎖が配向し、ブロックコポリマーのミクロ相分離パターンが形成される。得られるパターンは、第1のブロック鎖の層13aおよび第2のブロック鎖の層13bがガイドパターンと平行に交互に並び、これらの界面が基板に対して垂直なラメラ相である。
【0015】
本発明を用いると、ガイドパターンを形成するためのレジストパターンのライン幅をガイドパターンの半周期に比べて極端に細くする必要がない。ライン幅とスペース幅の比率が1:1に近いパターンを形成すればよい。特に、二光束干渉を利用して露光を行うと、ガイドパターンを形成するための露光において広いプロセスマージンが得られ、解像できる限界のパターン周期も小さくできる。このため比較的安価な露光装置を使って、ガイドパターンが形成でき、結果として、ガイドパターンの1/整数(3以上の奇数)の周期を持つ微細なパターンを精度よく、ブロックコポリマーにより形成できる。
【実施例】
【0016】
ブロックコポリマー(BCP)は、同一種類のモノマーが連続して結合したもの(ブロック)から構成されている。各々のブロックは化学結合で結合している。すなわち、BCPはブロック状になった複数種類のポリマーが化学結合したものである。ポリマー間の斥力によりミクロ相分離させることで、微細な周期パターンが形成される。ブロックパターンのラメラやシリンダーといったモルフォロジー(形態)は、ブロックの組成により決まる。例えば2種類のポリマー(第1のポリマー、第2のポリマー)からなるBCPの場合、2つのポリマーの比率が約50%であるとラメラを形成する。ラメラの場合は、第一のポリマー、第2のポリマー、第1のポリマー、第2のポリマー、・・・と交互に並ぶことにより、交互に第1のポリマーの層と第2のポリマーの層を形成する。
【0017】
BCPはミクロ相分離させただけでは、指紋状のパターンとなったり、種々のドメインとができてしまい、半導体のパターンで必要とされるL&S(ライン アンド スペース)パターンのような規則的なパターンを形成することは困難である。また、所望の位置にどのポリマーが配列するかも規定できない。このため、ブロックポリマーを規則的に配列させるためのガイドパターンが必要となる。
【0018】
ケミカルガイドは、表面エネルギーの異なる領域をパターンとして形成する。
まず、従来のケミカルガイドを使ったパターン形成方法について図1および図2を用いて説明する。従来のケミカルガイドにおけるパターン形成方法は、ピニング層および中性化膜で構成されるガイドパターンに基づいてブロックコポリマーのミクロ相分離パターンを形成するものである。
【0019】
図2は従来のケミカルガイドの平面図である。ブロックポリマーを構成する1つのポリマーを固定する(ピニングする)ピニング層と、中性化膜からなる。ピニング層の幅LPはブロックポリマーの半周期(HP)とほぼ同じ幅を持つように設定する(LP〜HP)。
【0020】
ブロックコポリマー(BCP)を使ってL&Sパターンを形成する場合を説明する。BCPは2種類のポリマーブロックから構成され、第1のポリマー13bおよび第2のポリマー13aからなるとする。その表面エネルギーは第1のポリマー13bの方が第2のポリマー13aより小さいとする。たとえば、第1のポリマー13bがピニング層12bに固定されるとすると、ピニング層の表面エネルギーは第1のポリマーの表面エネルギーと同じかそれ以下になるよう設定する。第2のポリマーとピニング層の表面エネルギーの差は大きく、親和性が低いため、選択的に第1のポリマーがピニング層上に形成されることになる。逆に第2のポリマーをピニング層に固定する場合には、ピニング層の表面エネルギーは第2のポリマーの表面エネルギーと同じかそれ以上になるよう設定する。
【0021】
中性化膜の表面エネルギーは第1のポリマーと第2のポリマーの表面エネルギーの中間の値を取るように設定する。中性化膜と2つのポリマーブロックとの相互作用は第1のポリマー、第2のポリマーいずれに対しても、ほぼ同じになるように設定されるので、中性化膜上には第1のポリマーも第2のポリマーも付着することができ、ラメラを、垂直に交互に−A−B−A−B−と並べることができる。(図1(d))この場合には、中性化膜の表面エネルギーは第1のポリマーの表面エネルギーより高く、第2のポリマーの表面エネルギーよりも低い。
【0022】
ブロックポリマーを構成するポリマーブロックが3つ以上の場合は、表面エネルギーの一番小さいポリマーまたは一番大きいポリマーがピニング層に固定されるように、ピニング層の表面エネルギーを、表面エネルギーの一番小さいポリマー以下にするか、表面エネルギーの一番大きいポリマー以上に設定する。中性化膜の表面エネルギーはすべてのポリマーと親和性をもつよう、ブロックポリマーを構成するポリマーの中間の表面エネルギーになるよう設定する。
【0023】
図1は、従来のパターン形成方法を示す断面図である。まず、被加工膜11上に中性化膜12aを形成する(図1(a))。
【0024】
続いて、中性化膜12a表面に選択的にピニング層12bを形成し、中性化膜12aとピニング層12bが交互に平行に並んだガイドパターンを形成する(図1(b))。ここで形成するガイドパターンの平面図が図2である。
【0025】
ケミカルガイドパターンの周期がBCP周期の整数倍になるようにすることでガイドパターン周期の1/整数のパターンが形成できる。(frequency doubling、 density multiplication等と呼ばれている)これにより露光装置では形成できない周期のパターンをBCPで形成することが可能になる。
【0026】
たとえば、ケミカルガイドパターン周期がBCP周期の2倍の場合には中性化膜の幅LNはBCP周期のHPの3倍程度となる(LN〜3HP)。ケミカルガイドパターン周期がBCP周期の3倍の場合にはLN〜5HP、4倍の場合にはLN〜7HPとなる。この際、ピニング層の幅はBCP周期のHPとほぼ同一である。ここでは、ピニング層12bの幅(LP)はブロックポリマーの半周期(HP)とほぼ同じ幅を持つように設定する(LP〜HP)。
【0027】
形成したガイドパターン上に、ブロックコポリマー層13を形成する(図1(c))。
【0028】
ブロックコポリマー層13の形成後、真空または窒素中で加熱するか、溶剤雰囲気にさらすことにより、ミクロ相分離させる。その結果、図1(d)に示すように、ガイドパターンに応じてBCPを構成する第1のブロック鎖および第2のブロック鎖が配向し、BCPのミクロ相分離パターンが形成される。得られるパターンは、第1のブロック鎖の層13aおよび第2のブロック鎖の層13bがガイドパターンと平行に交互に並び、これらの界面が基板に対して垂直なラメラ相である。ピニング層12bには第2のブロック鎖が固定され、第2のブロック鎖の層13bが形成される。
【0029】
その後、第1のブロック鎖の層13aおよび第2のブロック鎖の層13bの一方を除去すし、残存したブロック鎖の層をエッチングのマスクとして、被加工膜11のエッチングを行う(図示せず)。
【0030】
ピニング層の幅は、通常、ブロックコポリマーの半周期(ハーフピッチとも称する)とほぼ同じ幅となるように設定される。従って、パターンの微細化に伴い、ピニング層の幅も狭くなり、ピニング層を精度よく形成するのが難しくなってきている。
【0031】
また、density multiplicationの場合には、ケミカルガイドパターンはラインとスペースの比率が1:1からはずれた1:3、1:5といったパターンを形成する必要がある。この場合にはライン幅が非常に細くなるため、精度良く形成することが難しいという課題がある。
【0032】
レジスト段階でも、レジストマスクに加工する段階でも、ラインエッジラフネスが増加したり、途中で切れてしまったりという課題が発生する。
【0033】
特に、光露光の場合には1:1から比率が離れていくと、同じ周期でも露光によるプロセスマージンが低下し、限界解像度も低下してしまうという課題がある。
【0034】
ガイドパターンの周期を一定として、ライン幅と露光によるプロセスマージンの関係について見積もった例を図7を参照して説明する。露光によるプロセスマージンは光学像シミュレーションにより計算した。
【0035】
照明条件は開口数(NA)=1.35、二重極照明で、照明の開口形状は円、開口の中心が0.85、σが0.1とした。レチクルのパターンはライン幅42nm、スペース幅42nmである。1:1L&S はライン幅42nm、スペース幅42nmの場合である。また、ガイドパターン周期がBCP周期の3倍の場合に形成しなければならない1:5L&Sは、ライン幅14nm、スペース幅70nmの場合である。
【0036】
図7(a)はフォーカスと露光量が変動させた際、線幅変動が4.2nm以内となる条件を線で囲ったものである。(Exposure-Defocusツリー、EDツリーと呼ばれる)2本の線の間に囲まれた領域がこの条件を満たしている。実線が1:1L&Sパターンの場合を示し、点線が1:5L&Sパターンの場合を示している。
【0037】
1:1L&Sパターンの場合は、2本の線で囲まれた領域が左右に対象であるため、露光量を変化させた際に、線幅変動が4.2nm内に収まる焦点の範囲が広く取れ、焦点深度が極端に狭まることはない。一方、1:5L&Sの場合には、2本の線で囲まれた領域は湾曲しているため、露光量が変動すると、線幅変動が4.2nm内に収まる焦点の範囲が、1:1L&Sパターンに比べて、狭まってしまう。このため焦点深度が狭まってしまう。
【0038】
所望寸法を得られる露光量から露光量が何%変動した時、どれだけ焦点深度が得られるかを示したのが図7(b)である。変動した露光量を露光量余裕度としている。線が1:1L&Sの場合、点線が1:5L&Sの場合である。1:1L&Sパターンのほうが1:5L&Sパターンよりも、露光量が変動しても広い焦点深度が得られることがわかる。計算に使用する焦点範囲を±0.2μmとしたため、1:1L&Sパターンの場合には焦点深度が0.4μmで飽和しているが、計算する焦点範囲を広げれば、飽和している領域で焦点深度は0.4μm以上となる。
【0039】
実際のパターニングではプロセス要因により、理論値よりも露光によるプロセスマージンが低下するため、解像限界付近で1:5L&Sパターンを形成することは難しいと考えられる。実際、レジストパターンを形成する際、ライン幅とスペース幅がそれぞれ42nmの1:1L&Sパターンは形成することができる。一方、ライン幅14nm、スペース幅70nmの1:5L&Sパターンは形成することができない。
【0040】
このようにガイドパターンが1:1から離れると、ガイドパターンを形成する際の露光によるプロセスマージンが狭くなってしまう。安価なBCPパターンを形成するためには、ガイドパターンは露光装置の解像限界で形成する必要がある。このため、ガイドパターン形成のマージンが狭まることは、逆に、ガイドパターンの解像限界が狭まる、つまり、微細パターンが形成できなくなることになる。その結果、周期の大きいBCPパターンしか形成できないという課題があった。
【0041】
そこで、ピニング層の線幅(Lp)を大きくすることも検討されるが、Lpの値には最適値があり、最適値から寸法をずらすと配列しにくくなり、Lpの幅を広げることには限界があった。たとえば、ガイドパターンとBCPパターンの周期が同一で、ガイドパターン周期を一定として、レジストライン幅(ピニング層の幅)をBCP周期の0.26から0.65までの範囲で変化させた例がある。最適値から外れると、配列しにくくなり、欠陥が生ずるのが観察される。つまり、欠陥が生じてしまうため、Lpの幅を広げることには限界がある。
【0042】
このようなピニング層を利用した従来のパターン形成方法は、ブロックコポリマーの半周期分という非常に微細なピニング層を形成する必要があるため、種々の課題を有する。
【0043】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
まず、本発明のケミカルガイドを使ったパターン形成方法について図4および図5を用いて説明する。
図5は本発明のケミカルガイドの平面図である。
【0044】
第1の表面エネルギー調整層12cと第2の表面エネルギー調整層12dが交互に形成されている。本発明のガイドパターンは従来例と次の点で異なる。
【0045】
ガイドパターンの2つの表面エネルギー調整層の表面エネルギーは、BCPを構成する2種類のポリマーの表面エネルギーとおのおのほぼ同一となるようにする。すなわち第1の表面エネルギー調整層12cは、その上に積層するブロックコポリマーの第1のブロック鎖14aと略同一の表面エネルギーを有する。また、第2の表面エネルギー調整層12dは、その上に積層するブロックコポリマーの第2のブロック鎖14bと略同一の表面エネルギーを有する。
【0046】
また、第1の表面エネルギー調整層12cの幅L1および第2の表面エネルギー調整層12dの幅L2は、それぞれ、BCP半周期の3以上の奇数倍とほぼ等しい。したがって、幅L1およびL2は、以下の式で表すことができる。
【0047】
L1≒(2n+1)×(BCPの周期/2)
L2≒(2m+1)×(BCPの周期/2)
上記式において、nおよびmは1以上の整数である。
【0048】
また、ガイドパターンの周期(L1+L2)はBCP周期の3以上の整数倍とほぼ等しい。
従って、ガイドパターンの周期(L1+L2)は以下の式で表すことができる。
【0049】
L1+L2≒k×BCPの周期
上記式において、kは3以上の整数である。
【0050】
図5に示した第1の表面エネルギー調整層12cの幅L1、および第2のエネルギー調整層12dの幅L2がほぼ同じであれば、図7を用いて示したように、ガイドパターンを形成するための露光の際のプロセスマージンは、理論上は無限大となる。このため、L1とL2が略同一であることが、露光マージンを最も広くすることができる。したがって、L1とL2がほぼ同じであることが望ましい。
【0051】
L1:L2の比が1:1からずれた場合、露光マージンは狭くなっていく。たとえば、L1がブロックポリマー半周期の3倍であり、L2がブロックポリマー半周期の5倍であれば、同じガイドパターン周期で、L1:L2が1:1の場合と比較すれば、露光マージンは狭い。しかし、従来の、ピニング層の幅がブロックポリマー半周期、中性化層の幅がブロックポリマー半周の3倍と略同一の場合に比べれば、露光マージンは広く取ることができる。
【0052】
ここではL1とL2がほぼ同じで、ブロックポリマー半周期の3倍である場合を例に取って説明する。
【0053】
図4は、実施形態に係るパターン形成方法を示す断面図である。
【0054】
まず、被加工膜11上に、第1の表面エネルギー調整層12cと第2のエネルギー調整層12dが交互に平行に並んだガイドパターンを形成する。図4では、被加工膜11上に第1の表面エネルギー調整層12cを形成し(図4(a))、その上に選択的に第2の表面エネルギー調整層12dを形成することによりガイドパターンを形成した様子を示している(図4(b))。
【0055】
例えば、被加工膜11上に第1の表面エネルギー調整層12cを形成し、第1の表面エネルギー調整層12c上にフォトレジストを塗布し、フォトレジストをエネルギー線で選択的に露光し、現像することによりレジストパターンを形成し、レジストパターンをマスクあるいは鋳型として第2の表面エネルギー調整層12dを形成することができる。また、被加工膜11上に感光性の膜を形成し、感光性の膜をエネルギー線で選択的に露光し、露光部を第1の表面エネルギー調整層12cとし、未露光部を第2の表面エネルギー調整層12dとすることもできる。ガイドパターンの形成方法はこれらに限定されるものではなく、後述するような種々の方法を用いることができる。
【0056】
続いて、ガイドパターン上に、ブロックコポリマー層13を形成する(図4(c))。ブロックコポリマーは、性質の異なる第1のブロック鎖および第2のブロック鎖を含む。ブロックコポリマー層13の形成後、加熱してアニーリングすることにより、ブロックコポリマーをミクロ相分離させる。その結果、図4(d)に示すように、ガイドパターンに応じて第1のブロック鎖および第2のブロック鎖が配向し、ブロックコポリマーのミクロ相分離パターンが形成される。得られるパターンは、第1のブロック鎖の層13aおよび第2のブロック鎖の層13bがガイドパターンと平行に交互に並び、これらの界面が基板に対して垂直なラメラ相である。ここで得られるブロックコポリマーのパターンの周期は、ガイドパターンの周期の1/3倍である。
【0057】
図4(b)および図4(d)を比較することにより、ガイドパターンよりも微細なパターンをブロックコポリマーにより形成できることがわかる。ガイドパターンの周期をブロックコポリマーの周期のn倍(nは3以上の奇数)にすることにより、ガイドパターン周期の1/nの周期を有するブロックコポリマーのパターンを形成することができる。従って、ブロックコポリマーのミクロ相分離を利用することにより、露光装置では形成できない周期のパターンを形成することが可能になる。
【0058】
ここで、本発明で、ブロックポリマーが配列する理由について、従来例の配列を図3で説明した後、図6を使って説明する。
【0059】
図3は、前述した従来のパターン形成方法におけるブロックコポリマー分子の配向を示す平面図である。塗布直後のBCPは必ずしも、ガイドパターンに沿って配列するわけではない、熱によるアニールや溶媒アニールを行うことで、ポリマー鎖が移動できるようになり、全体の自由エネルギーが最小になるよう配列していく。ガイドパターンとポリマー間の相互作用エネルギーを小さくするようにポリマーが並んでいくことで、規則パターンが得られる。
【0060】
ブロックコポリマー分子14は、第1のブロック鎖14aおよび第2のブロック鎖14bにより構成される。従来例では図3(a)に示すように第2のブロック鎖14bはピニング層と親和性を持つ。第2のブロック鎖14bがピニング層上に、親和性が第2のブロック鎖ほど高くない第1のブロック鎖は中性化膜上に移動してくることで全体の自由エネルギーは低下する。つまり図3(a)のようにガイドパターンエッジでの表面エネルギー変化にしたがってBCPが並ぶ。
【0061】
このようにガイドパターンエッジで固定されたBCP分子を起点としてBCP全体がガイドパターンエッジと垂直に規則的に並ぶ(図3(b))。LBはブロックコポリマー1分子分の長さを意味する。中性化膜上では第1のブロック鎖と中性化膜、第2のブロック鎖と中性化膜では表面エネルギーが異なるが、2つのポリマーの中間の表面エネルギーをもつため、第1のブロック鎖と第2のブロック鎖が並ぶと考えられる。
【0062】
ガイドパターンエッジと垂直に規則的に並ぶために、全体として、第1のブロック鎖の層13aと第2のブロック鎖の層13bが交互に並び、図3(c)のようにガイドパターンの半分の周期を持つBCPパターンが得られる。図3(c)をA−A’線で切断した場合の断面図が、図1(d)である。第1のブロック鎖と第2のブロック鎖の界面が被加工膜11表面に対して垂直なラメラ相が得られる。
【0063】
前述したように、ピニング層の幅は最適値から大きくずれると、配列が崩れてしまう。これはピニング層の幅が最適値(ほぼBCP周期の半分)より大きくずれた場合、無理に規則配列しようとすると、隣あうBCP分子の間にできたすき間を埋めるためポリマー鎖が延びたり、逆にBCP分子間が詰まってしまってポリマー鎖が縮んだりする必要があるからである。ポリマー鎖の伸び縮みにより自由エネルギーが増加するので配列状態が安定ではなくなってしまうためである。
【0064】
次に本発明の場合について図6を用いて、説明する。
【0065】
本発明の場合も、熱によるアニールや溶媒アニールを行うことで、自由エネルギーが最小になるようにポリマー鎖が移動する。第1のブロック鎖14aは第1の表面エネルギー調整層12cと、第2のブロック鎖14bは第2の表面エネルギー調整層12dとほぼ同じ表面エネルギーをもっている。このため、第1のブロック鎖14aは第1の表面エネルギー調整層12cと、第2のブロック鎖14bは第2の表面エネルギー調整層12dと親和性が高い。このため第1の表面エネルギー調整層と第2の表面エネルギー調整層のエッジの部分でBCP分子が並ぶ。つまり第1の表面エネルギー層と第2の表面エネルギー層の境界の表面エネルギー変化にしたがってBCPが並ぶ(図6(a))。
【0066】
このようにガイドパターンエッジで固定されたBCP分子を起点としてBCP全体がガイドパターンエッジと垂直に規則的に並んでいく(図5(b))。LBはブロックコポリマー1分子分の長さを意味する。第1の表面エネルギー層と第2のブロック鎖、第2の表面エネルギー層と第1のブロック鎖では表面エネルギーが異なるので、自由エネルギーは同一の箇所よりは高くなってしまう。しかし、表面エネルギーがずれていても一定の範囲内であれば、両方のポリマーブロックがその上に並ぶことができ、ラメラが垂直に並ぶ。
【0067】
ガイドパターンエッジと垂直にBCP分子が規則的に並ぶために、全体として、第1のブロック鎖の層14aと第2のブロック鎖の層14bが交互に並び、図6(c)のようにガイドパターンの半分の周期を持つBCPパターンが得られる。図6(c)をB−B’線で切断した場合の断面図が、図4(d)である。第1のブロック鎖と第2のブロック鎖の界面が被加工膜11表面に対して垂直なラメラ相が得られる。
【0068】
従来例同様、第1の表面エネルギー層の幅L1、第2の表面エネルギー層の幅L2がBCP半周期の奇数倍から大きくずれると、配列は崩れてしまう。この場合も、無理に規則配列しようとすると、隣あうBCP分子の間にすき間ができてポリマー鎖が延びたり、逆にBCP分子間が詰まってしまってポリマー鎖が縮んだりする必要があるからである。ポリマー鎖の伸び縮みにより自由エネルギーが増加するので、配列状態が安定ではなくなってしまうのである。
【0069】
ただし、逆に言うと、ポリマー鎖の伸び縮みによる自由エネルギーの増加が一定以内であれば、ガイドパターンにそってBCPは並ぶ。ガイドパターンの寸法のずれが小さければ、BCPを配列させることができる。つまり、BCP半周期の3以上の奇数倍と第1の表面エネルギー層の幅L1、BCP半周期の3以上の奇数倍と第2の表面エネルギー層の幅L2は完全に一致していなくても、略同一でも良い。このため、領域1、2の幅L1、L2はブロックポリマーの半周期の3倍から20%程度の変動ぐらいまでが許容される。
【0070】
デンシティーマルティプリケーションにおいて、従来例でもガイドパターンの幅を振って評価はしていた。しかしその変化の幅はBCP1/4周期から3/4周期の範囲に限定していたために、ポリマー鎖の伸び縮みが起きないBCP周期の半分程度が最適値だった。このため、BCP周期の半分から大きくずれると、配列がくずれてしまった。しかし、上記にも述べたようにポリマー鎖の伸び縮みが起きないよう、BCP半周期の3以上の奇数倍になるようガイドパターンを設計することで、BCP規則配列ができるようになった。
【0071】
次に、具体的なパターン形成方法の実施例について述べる。
【0072】
<実施例1>
図8は、実施例1に係るパターン形成方法を示す断面図である。ここで使用したブロックコポリマーは、ポリスチレン(以下、PSとも称する)ブロック鎖とポリメタクリレート(以下、PMMAとも称する)ブロック鎖からなるブロックコポリマーである。
【0073】
まず、Si酸化膜からなる被加工膜11上に、PMMAとほぼ同一の表面エネルギーを持つ有機塗布膜である第1のエネルギー調整層12cを形成した(図8(a))。第1のエネルギー調整層12cは、ArF露光の際に反射防止膜となるようにする。第1のエネルギー調整層12cのみでは反射防止膜としての役割を果たさない場合は、その下にさらなる層を形成してもよい。
【0074】
次に、第1のエネルギー調整層12c上にレジストを塗布し、これをベークし、ArF液浸露光装置を使用して露光した。照明条件は、NA:1.35、二重極照明、開口の中心:0.85、σ:0.1とした。使用したレチクルのパターンは、ライン幅42nm、スペース幅42nmであった。ポストエクスポージャーベークを行い、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(以下、TMAHとも称する)の0.27N溶液で現像をすることで、ハーフピッチ42nm、1:1ラインアンドスペースのレジストパターン15を得ることができた(図8(b))。
【0075】
得られたレジストパターン15を再度ArFで露光し、ポストエクスポージャーベークすることにより(J. Y. Cheng et al. :ACS Nano 4 (2010) 4815)、レジストパターンの極性を疎水性から親水性に変化させた(図8(c))。その上に、第2のエネルギー調整層12dの材料であるPSの末端をOH基としたPSポリマーブラシ前駆体をトルエンに溶解させたものを塗布した。フォーミングガス(N2:96%、H2:4%)中で160℃、48時間アニールし、第1のエネルギー調整層12c表面に第2のエネルギー調整層12dとしてのPSポリマーブラシを架橋反応により接着した。この後、未反応のポリマーブラシ前駆体をトルエンで除去した(図8(d))。
【0076】
その後、レジストをTMAHで除去した(図8(e))。レジストを剥離する際に、レジスト上部や側面にあるPSポリマーブラシ前駆体は除去された。その結果、第1のエネルギー調整層12cの表面に、第2のエネルギー調整層12dが形成された領域と第1のエネルギー調整層12cが露出している領域が交互に平行に並んだガイドパターンが形成された。
【0077】
第1のエネルギー調整層12cを構成する塗布型有機膜はPMMAと略同一のエネルギーを有し、第二のエネルギー調整層12dを構成するPSポリマーブラシはPSと略同一の表面エネルギーを有する。
【0078】
使用したブロックコポリマーの分子量は88000であり、PSの体積分率は50%である。ブロックコポリマーのミクロ相分離後の周期は、28nmである。第2のエネルギー調整層が形成された領域のライン幅(L2)および第1のエネルギー調整層12aが露出している領域のライン幅(L1)は、それぞれ42nmである。つまり、ガイドパターンの周期(84nm)がブロックコポリマーの周期(28nm)の3倍になるようにブロックコポリマーの分子量、ガイドパターンの周期を設定した。
【0079】
上記で作製したガイドパターン上に、前述のブロックコポリマーを塗布し、フォーミングガス(N2:96%、H2:4%)中で180℃、48時間アニールした。ブロックコポリマーがミクロ相分離し、図8(f)に示すようなパターンが形成できた。図8(f)では、PSブロック鎖の層20aとPMMAブロック鎖の層20bが交互に並び、その界面が被加工膜11表面に対して垂直であるラメラ相が形成されていることがわかる。このパターンの周期は28nmであった。
【0080】
このようにして形成したラメラパターンをエッチングのマスクとして、被加工膜を加工した例について図9を使って次に説明する。基板17はSi酸化膜下層の膜を総称している。
【0081】
PMMAブロック鎖の層20bのみをO2プラズマ処理により、除去した。その結果、PSブロック鎖の層20aからなるラインアンドスペースパターンが得られた((図9(a))。このPSブロック鎖の層20aは、通常のリソグラフィーで使用するレジストパターンと同様に扱うことができる。この後、PSブロック鎖の層20aをマスクとしてエッチングすることにより、第1および第2のエネルギー調整層12cおよび12d、ならびに被加工膜11を加工した(図9(b))。PSブロック鎖の層20a、第1および第2のエネルギー調整層12cおよび12dを剥離することで、図9(c)に示すような被加工膜11のライン・アンド・スペースパターンを形成することができた。
【0082】
本発明が従来例よりも優れているのは、ガイドパターンを形成するためのレジストパターンのライン幅をガイドパターンの半周期に比べて極端に細くする必要がないことである。ここではガイドパターンを形成する際、レジストをArF液浸露光装置で露光してパターニングし、レジストパターンをマスクとして、エッチングによりPSポリマーブラシをパターニングした。周期に比べて細い線のレジストパターンを形成したり、これをマスクに加工しようとすると、ラインエッジラフネスが増加したり、途中で切れてしまったりという問題が発生する。しかし、本発明においては、ほぼ1:1のレジストパターンを形成すればよいので(1:1からのずれはエッチング時の加工変換差による)、ラインエッジラフネスが増加したり、途中で切れてしまったりという問題は回避できる。
【0083】
さらに、ArF露光装置で二光束干渉を利用して露光を行っているので、マージンが広く、微細なパターンまでできるという利点がある。特に、1:1L&Sパターンにおいては、二重極照明のような二光束干渉を用いれば、原理的に、焦点深度が無限大となる。(実際には理想条件は形成できないので、有限である。)しかし、1:1から比率が離れていくと、フォーカスがずれた時の寸法変動が大きくなり、焦点深度が極端に低下してしまう。このことは、図7を参照して前述した。図7のシミュレーションと本実施例は同一条件である。
【0084】
図7から、1:1L&Sパターンのほうが1:5L&Sパターンよりも、露光量が変動しても広い焦点深度が得られることがわかる。実際のパターニングでは、プロセス要因によりマージンが劣化してしまうので、シミュレーションよりも実際のパターニングの方がマージンは下がる。このため、解像限界付近では1:1L&Sパターンができても、1:5L&Sパターンができなくなってしまう。
【0085】
実際、レジストパターンを形成する際、42nmの1:1L&Sパターンは容易に形成することができる。一方、ライン幅14nm、スペース幅70nmの1:5L&Sパターンは形成することができない。つまり1:5L&Sパターンではなく、1:1L&Sパターンをガイドとして形成した方が、より小さな周期のケミカルガイドパターンを形成できる。その結果、BCP周期も1:1L&Sパターンをガイドとした方が小さくできる。同じ露光装置を使用しても、1:1L&Sパターンをガイドとした方が1:5L&Sパターンをガイドとした場合より微細なBCPからなるL&Sパターンが形成できるのである。
【0086】
ここでは1:1L&Sパターンと1:5L&Sパターンの比較をおこなったが、第1の表面エネルギー調整層12cの幅L1と第2の表面エネルギー調整層12dの幅L2の比率が1:1に近いほど、ガイドパターン形成の際の露光におけるプロセスマージンが広くなる。したがって、第1の表面エネルギー調整層12cの幅L1と第2の表面エネルギー調整層12dの幅L2の比率が1:1に近いことが好ましい。
【0087】
しかし、第1の表面エネルギー調整層12cの幅L1と第2の表面エネルギー調整層12dの幅L2は完全に一致する必要はない。L1とL2が略同一であっても、1:3や1:5に比べれば、広いマージンを得られる。さらには第1の表面エネルギー調整層12cの幅L1がBCP半周期の3倍、第2の表面エネルギー調整層12dの幅L2がBCP半周期の5倍で合ったとしても、やはり、比率が1:3や1:5の場合よりは広いマージンを得ることができる。
【0088】
<比較例>
従来例として、ピニング層がBCPの半周期と略同一の幅を持ち、中性化膜の幅はBCP半周期の奇数倍である場合を述べた。次に、上記実施例と同様、ピニング層がBCPの半周期の奇数倍、中性化膜の幅がBCP半周期の奇数倍である従来例(従来例の変形例、以下では比較例と呼ぶ)について述べる。
【0089】
図16は、比較例に係るパターン形成方法を説明する図である。実施例の第1の表面エネルギー調整層を中性化膜12aに、第2の表面エネルギー調整層をピニング層12bに置き換えて、実施例と同様にガイドパターンを形成した(図16(a))。
【0090】
ここでは、ピニング層幅、中性化膜幅いずれも、BCP半周期の3倍である。すなわち、比較例と本発明ではケミカルガイドパターンの幅は同じである。
この変形例と、本発明の違いは、ピニング層、中性化膜の表面エネルギーと、第1の表面エネルギー調整層、第2の表面エネルギー調整層の表面エネルギーが異なることである。
【0091】
比較例では、ピニング層はBCPを構成するポリマーの一番表面エネルギーの低いもの以下の表面エネルギーまたは、BCPを構成するポリマーの一番表面エネルギーの高いもの以上の表面エネルギーを持つ。中性化膜はBCPを構成するポリマーの中間の表面エネルギーを持つ。一方、本発明では、領域1はポリマー1とほぼ同じ表面エネルギーを持ち、領域2はポリマー2とほぼ同じ表面エネルギーを持つ。
【0092】
ここで使用したブロックコポリマーは、実施例と同様、ポリスチレン(以下、PSとも称する)ブロック鎖とポリメタクリレート(以下、PMMAとも称する)ブロック鎖からなるブロックコポリマーである。ピニング層12bは、PSおよびPMMAより高いエネルギーを有するSiを用いた。中性化膜12aは、PSとPMMAの中間の表面エネルギーを有するPS−PMMAのランダムコポリマー末端がOH基となったポリマーを中性化膜前駆体とし、Si表面の水酸基と架橋反応させて、中性化膜とした。図16(a)は、形成したガイドパターンの平面図であり、直線C−C’で切断した場合の断面図が図16(b)である。
【0093】
実施例1と同様にブロックコポリマーを塗布し、アニールによりミクロ相分離させた。その結果、ブロックコポリマーは図14(c)に示すようにミクロ相分離した。図14(d)はブロックコポリマーのミクロ相分離の様子を示す平面図であり、直線C−C’で切断した場合の断面図が図14(c)である。
【0094】
ピニング層12bの部分では、ピニング層12bと親和性のあるPMMAブロック鎖の層20bが下に、親和性のないPSブロック鎖の層20aが上に層状に並ぶ。一方、中性化膜12a上では、中性化膜12aとPSブロック鎖および中性化膜12aとPMMAブロック鎖の親和性が同程度なので、PSブロック鎖およびPMMAブロック鎖の両方が中性化膜12a上に接着する。その結果、PSブロック鎖の層20aとPMMAブロック鎖の層20bの界面は、中性化膜12c表面に対して垂直になる。しかし、位置制御がされないため、図16(d)に示すように、中性化膜12c上で縞模様のような指紋状のパターンができてしまう。
【0095】
このように、比較例ではブロックコポリマーの界面が中性化膜表面に対して垂直に規則配列したラメラ相のパターンは得られなかった。
【0096】
一方、実施例では、第1の表面エネルギー調整層とPMMA、第2の表面エネルギー層とPSの親和性が高いために、第1の表面エネルギー調整層と第2表面エネルギー調整層の境界でポリマーがピニングされる。さらに第1の表面エネルギー調整層上、第2の表面エネルギー調整層上ともに表面エネルギーはずれてはいるものの、PMMA、PSいずれとも親和性も有するために、図8(f)に示すようにラメラが垂直に、交互に並んだパターンを得ることができる。
【0097】
従来のパターン形成方法では、ピニング層のライン幅は、ブロックコポリマーの半周期が最適であると考えられてきた。従って、目的とするブロックコポリマーのミクロ相分離パターンが微細であるほど、ピニング層のライン幅を細くする必要があった。それに対して本実施形態では、そのようなピニング層を形成する必要がなく、ガイドパターンのライン幅をより広く設定することが可能である。これにより、露光の際のプロセスマージンがより広い、第1の表面エネルギー調整層12cの幅L1と第2の表面エネルギー調整層12dの幅L2の比を1:1に近い条件を選択できる。従って、本実施形態によると、精度よくガイドパターンを形成することができ、ブロックコポリマーをより安定にミクロ相分離させることが可能になる。その結果、ブロックコポリマーの一方のブロック鎖を除去して残ったパターンをエッチングマスクとして使用する場合に、ラインエッジラフネスの増加や、ラインが途中で切れるという問題を防ぐことができる。
【0098】
しかし、比較例の結果からわかるように、単にガイドパターンのライン幅を広げただけではブロックコポリマーを規則的にミクロ相分離させることはできない。従来のようなピニング層と中性化膜からなるガイドパターンではなく、ブロックコポリマーを構成する各ブロックと略同一の表面エネルギーを有する領域からなるガイドパターンを利用することにより、より広いライン幅のガイドパターンに基づいて目的とするブロックコポリマーのミクロ相分離パターンを得ることを可能にした。
【0099】
上記ではガイドパターンを構成するピニング層、中性化膜、第1の表面エネルギー調整層、第2の表面エネルギー調整層およびブロックコポリマーを構成する第1のポリマーブロック鎖、第2のポリマーブロック鎖の「表面エネルギー」という言葉を使って、ガイドパターン材料とポリマー間の親和性を説明した。
【0100】
表面エネルギーは物質の表面におけるギブスの自由エネルギーである。表面張力は単位面積当たりの表面でのギブスの自由エネルギーである。物質間の表面エネルギーが近いほど、それら物質間の親和性が高いことを意味する。
【0101】
固体の表面張力を求めることで、固体の表面エネルギーを求めることができる。
【0102】
固体の表面張力の測定方法はいくつか存在するが、その例を以下に示す。以下に示す方法は、表面張力がわかっている液体と表面張力を知りたい対象の固体との接触角を測定することにより対象の固体の表面張力を求める方法である。まず、以下に示すヤングデュプレの式を用いて、測定した接触角と付着仕事とを関連付ける。
【0103】
(1+cosθ)γL=WSL
θ:接触角
γL:液体の表面張力
WSL:固体と液体が付着することにより減少する付着仕事
一方、液体の表面張力成分は予め分かっているため、付着仕事量をモデル化して表面張力成分を算出することにより、対象の固体の表面張力成分を求めることができる。表面張力は、複数の表面張力成分により規定される。対象の固体について不明な表面張力成分が複数ある場合、不明な表面張力成分の数と同じだけの種類の液体の接触角を同様に測定することにより、各表面張力成分を求めることができる。そのように得られた複数の表面張力成分から、対象の固体の表面張力が得られる。
【0104】
その例として、R. D. Peters et al.: Langmuir 16, 4625 (2000)には次のような方法が述べられている。Fowkes-van Oss-Chaudhury-Good(FOCG)表面張力モデルによると、固体の表面張力は、Lifshitz-van der Waals成分と、ルイス酸・塩基の極性相互作用成分からなる。これは、以下の式で表される。
【0105】
γLW=γLW+γAB
γLW: Lifshitz-van der Waals成分
γAB:極性相互作用(または水素結合成分)
γAB=2(γ+γ−)1/2
γ-:電子受容成分
γ+:電子供与成分
付着仕事WSLは、2{(γSLWγLLW)1/2+(γS+γL-)1/2+(γS-γL+)1/2}と表すことができるので、
(1+cosθ)γL=2{(γSLWγLLW)1/2+(γS+γL-)1/2+(γS-γL+)1/2}
となる。
【0106】
液体の表面張力成分γL、γLLW、γL+、γL-は予め分かっている。従って、変数は、対象の固体の表面張力成分であるγSLW、γS+、γS-の3つである。このため、3種類の液体について対象の固体との接触角を測定することにより、固体の表面張力成分を求める。得られた固体の表面張力成分から、固体の表面張力が得られる。
【0107】
FOCGモデル以外にも、分散力、極性による相互作用力、および水素結合力を使って付着仕事を記述するモデルもある。この方法では、付着仕事WSLを以下の式で表している。
【0108】
WSL=2{(γSdγLd}1/2+(γSPγLP)1/2+(γSHγLH)1/2)
γd:分散力、γP:極性力、γH:水素結合力
FOCG表面張力モデル同様、液体の表面張力成分はあらかじめわかっているので、3種類の液体について対象の固体との接触角を測定することにより、固体の表面張力成分を求める。
【0109】
また、液体と固体の親和性を見るのであれば、固体に液体を滴下して接触角を測定する方法もある。測定した接触角と上記で示したヤングデュプレの式から付着仕事を算出し、それを以下の式に当てはめることにより固体−液体間の界面エネルギーを算出することができる。一方、付着仕事は次の式で表される。
【0110】
γSL=γS+γL−WSL
γSL:固体−液体間の界面エネルギー
γS:固体の表面エネルギー
γL:液体の表面エネルギー
この式から、付着仕事とは、液体と固体が付着することによって低下したエネルギーである。付着仕事が大きいほど固体−液体間の界面エネギーは低下し、安定な状態であること、すなわち液体と固体の親和性が高いことを意味する。このように接触角は固体−液体間の界面エネルギーを反映しているため、異なる固体について同一の液体で接触角を測定すれば、固体間の親和性を比較できる。
【0111】
このようにガイドパターンを構成する第1の表面エネルギー調整層12cと第2の表面エネルギー調整層12dおよびブロックコポリマーを構成する第1のブロック鎖14a、第2のブロック鎖14bの表面張力を求めることで“表面エネルギー”を求めることができる。求められた表面エネルギーから、第1のブロック鎖14aとの親和性のある材料を第1の表面エネルギー調整層12cの材料とし、第2のブロック鎖14bとの親和性のある材料を第2の表面エネルギー調整層12dの材料として選択することができる。または、液体―固体間の接触角を測定することで間接的に親和性を求めることができ、ケミカルガイドの表面エネルギー調整層12cと第2の表面エネルギー調整層12dの材料が選択できる。
【0112】
第1の表面エネルギー調整層12cの表面エネルギーと第1のブロック鎖14aの表面エネルギーは完全に同一であることが好ましい。しかし、完全に同一でなくても親和性を有する範囲であればよい。同様に、第2の表面エネルギー調整層12dの表面エネルギーと第2のブロック鎖14bの表面エネルギーも完全に同一であることが好ましい。しかし、完全に同一でなくても親和性を有する範囲であればよい。
【0113】
第1の表面エネルギー調整層12cと第1のブロック鎖14aの表面エネルギーの差、および第2の表面エネルギー調整層12dと第2のブロック鎖14bの表面エネルギーの差が、それぞれ約0.5erg/cm2以内であることが好ましい。しかし、この値は、使用するブロックコポリマーの種類、分子量、組成、アニール温度、塗布時の溶媒の種類等の種々の条件により異なる。
【0114】
上記実施例では二光束干渉をさせるために二重極照明を使用したが、照明条件はこれに限定されるものではない。二重極照明を使用する場合、その形状は円形に限られず、扇形、楕円等であってもよい。重要なことは、ガイドパターンを解像するのに必要な回折光が露光装置の対物レンズの瞳面を通過してウエハ上に達し、干渉効果により結像することである。照明形状をアパーチャーにより成形する場合、回折光が対物レンズの瞳面を通過する位置に、開口を有するアパーチャーを設置すればよい。照明形状をビーム成形により形成する場合、回折光が対物レンズの瞳面を通過する位置から照明光が照射されればよい。開口の大きさまたはビームの大きさが小さい方が、バックグラウンドが小さくなり、解像性能は高くなる。一方、開口を小さくすると光の強度が低下するという問題が生じるため、開口の大きさおよび形状は一義的には決まらない。このため、開口の大きさおよび形状は、目的に合わせて適宜選択すればよい。さらに、照明は、二重極照明に限られず、四重極照明や輪帯照明であってもよい。ガイドパターンを解像するのに必要な回折光が対物レンズの瞳面を通過する照明形状であれば良いからである。
【0115】
露光にArF光を使用する場合、ArF液浸露光装置、ArFドライ露光装置、ArF光を使用する干渉露光装置、液中でArF光を使用する干渉露光装置等により行うことができる。また、露光する光は、波長193nmのArFエキシマレーザー光に限定されず、KrF光、X線、EUV光、紫外光等を用いることも可能である。例えば、X線露光装置、EUV露光装置、KrF露光装置、電子ビーム描画装置、レーザービーム描画装置、イオンビーム描画装置、粒子線描画装置、X線二光束干渉露光装置、EUV二光束干渉露光装置、ArF二光束干渉露光装置、KrF二光束干渉露光装置等を使用することができる。
【0116】
光リソグラフィープロセスでは、レジストパターンと被加工膜の間に転写膜を形成することが行われている。レジストパターンをエッチングにより転写膜に転写し、この転写膜パターンを使って酸化膜や金属等の最終的な被加工膜をエッチングする。本実施形態においても、それと同様の転写プロセスをとることが可能であることは言うまでもない。
【0117】
また、転写膜は1種類には限られず、複数の転写膜を使用してもよい。複数の転写膜を組み合わせることで、被加工膜を加工する際のエッチング選択比を高くすることができる。転写膜としては、SiN等のハードマスクを使用することができる。また、Si酸化膜と有機膜の組み合わせを使用することもできる。
【0118】
上記実施例では、ガイドパターンを塗布膜とポリマーブラシで構成した。しかし表面エネルギーを調整する膜は種々提案されており、これに限定されるものではない。例えば、表面と反応して基板上にに1層だけ分子層ができる自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer:SAM);ブロックコポリマーと同じ成分からなるランダムコポリマーに基板と反応する基を付加し、基板と反応させて形成するポリマーブラシ;表面エネルギーを調整するポリマー種と架橋基を有するポリマー種をランダムに結合させたポリマーを基板上に塗布し、加熱により架橋させて架橋膜とする塗布膜;露光によりエネルギーが変化することを利用して表面エネルギーを調整する塗布膜;SAMと表面エネルギーを調整するランダムコポリマーを接着して形成する複合膜等を使用することができる。また、予め所望の表面エネルギーを有する膜を第1のエネルギー調整層12cおよび第2のエネルギー調整層12dとして使用することも可能である。そのような膜としては、金のような金属の膜、酸化膜、窒化膜、有機膜等が挙げられる。
【0119】
被加工膜11上に第1の表面エネルギー調整層12cを形成する方法としては、ケミカルベーパーデポジション(CVD)、回転塗布、スキャン塗布等を用いることができる。
【0120】
これらを組み合わせることで、ガイドパターンを形成することが可能である。
【0121】
使用するブロックコポリマーは、相分離させたときに第1のブロック鎖と第2のブロック鎖がラメラ相を形成する組成であることが好ましい。さらに好ましいのは、相分離後に一方のブロック鎖を除去できるブロックコポリマーである。例えば、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートからなるブロックコポリマーが挙げられる(以下、ポリマーAとポリマーBからなるブロックコポリマーをポリマーA−b−ポリマーBと表す)。
【0122】
他には、ポリスチレン−b−ポリ2−ビニルピリジン、ポリスチレン−b−ポリイソプレン、ポリスチレン−b−ポリエチレンオキサイド、ポリスチレン−b−ポリジメチルシロキサン、ポリイソプレン−b−ポリエチレンオキサイド、ポリブタジエン−b−ポリヘキサフルオロピロピレンオキサイド、ポリペンタフルオロスチレン−b−ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン−b−ポリ{11−[4−(4−ブチルフェニルアゾ)フェノキシ]−アンデシル−メタクリレート]、ポリエチレンオキサイド−b−ポリ{11−[4−(4−ブチルフェニルアゾ)フェノキシ]−アンデシル-メタクリレート]、ポリスチレン−b−ポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサンメタクリレート、ポリメチルメタクリレート−b−ポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサンメタクリレート等が挙げられる。これ以外であっても、ミクロ相分離するのに十分なχパラメーターを有するポリマーの組み合わせであれば使用することができる。エッチング耐性、サイズ等、目的に合わせて使用するブロックコポリマーを選択することができる。
【0123】
本明細書においては、2種類のポリマーからなるブロックコポリマーを使用した場合について主に説明するが、3種類以上のポリマーからなるブロックポリマーも同様に使用することが可能である。3種類のポリマーA、B、Cからなるトリブロックポリマーを使用する場合、ブロック鎖の層が−A−B−A−C−の順で繰り返し並んだラメラ相が形成される。この場合のガイドパターンは、ポリマーA、BおよびCとそれぞれ略同一の表面エネルギーを有する3種類の表面エネルギー調整層で形成すればよい。
【0124】
トリブロックポリマーの例としては、ポリスチレン−b−ポリブタジエン−b−ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン−b−(ポリエチレン−co−ポリブチレン)−b−ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。トリブロックポリマーを使用する場合も、ブロックコポリマーと同様、目的に合わせてトリブロックポリマーを選択することができる。
【0125】
また、ブロックコポリマーの種類は同じであるが、分子量の異なるものを混合して使用したり、ブロックコポリマーを構成するいずれかのポリマーをホモポリマーとしてブロックコポリマーに添加したものを使用してもよい。このような調整を行うことにより、ブロックコポリマーの周期やミクロ相分離温度を調節することができる。
【0126】
さらに、ブロックコポリマーを構成するいずれのポリマーとも異なるポリマーをホモポリマーとしてブロックコポリマーに添加したものを使用してもよい。例えば、ポリスチレン−b−ポリエチレンオキサイドにオルガノシリケートを添加したものを使用することができる。このようなブロックコポリマーを使用することにより、エッチング耐性の向上等の付加的な効果が得られる。
【0127】
ブロックコポリマーを相分離させるには、一般的に、ブロックコポリマーのガラス転移温度以上の温度でアニールする。しかし、アニール温度がガラス転移温度以上でも秩序・無秩序転移温度(ODT)を超えて高くなると、無秩序構造になり、相分離構造が得られない。このため、アニール温度はガラス転移温度以上、ODT以下であることが好ましい。アニール装置については特に限定されないが、好ましくはオーブン、ホットプレート等を用いて行う。
【0128】
また、アニールを行う際の雰囲気は特に限定されない。好ましくは、ブロックコポリマーの分解を抑えるために窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気や真空中で行うのがよい。必要に応じて、水素などの還元作用のあるガスを不活性ガスに混合した雰囲気下でアニールしてもよい。あるいは、加熱するのではなく、有機溶媒雰囲気下に置くことによりポリマーを移動させてミクロ相分離させてもよい。
【0129】
本願においては、第1または第2のブロック鎖のパターンを選択的に除去し、残存した前記第2または第1のブロック鎖のパターンをエッチングマスクとして用いるものである。ブロックコポリマーを上記のように相分離させた場合、第1および第2のブロック鎖のうち一方を除去して他方を残すと、ラインアンドスペースパターンを形成することができる。このようにして残ったパターンをマスクとして、最終的に被加工膜11をエッチングする。
【0130】
前記実施例ではPMMAブロック鎖の層20bのみをO2プラズマ処理により、除去したが、相分離後に一方のブロック鎖を除去する方法は、これに限定されない。従来公知の方法を採用することができる。例えば、反応性イオンエッチング(RIE)を用いることができる。この方法によると、第1のブロック鎖と第2のブロック鎖が異なるRIE耐性を有することを利用して、一方のブロック鎖を除去できる。例えば、ポリスチレンとポリブタジエンからなるブロックコポリマーを相分離させた場合には、オゾン処理によりポリスチレンブロックのみを残すことができる。また、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートからなるブロックコポリマーを相分離させた場合には、O2の他に、CF4などの反応性ガスを用いたRIEによりポリスチレンブロックのみを残すこともできる。
【0131】
ドライ現像をする場合には、ブロックコポリマーを構成する各ポリマーに対する選択比が異なるガスを選択すればよい。フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を含むハロゲン系のガスやハロゲン化炭素を用いることもできる。さらに、少量のガスをハロゲン系のガスに添加して、ポリマーに対する選択比やパターンの形状を制御してもよい。また、ドライ現像のみならず、ウェット現像してもよい。ブロックコポリマーとしてポリスチレン−b−ポリメチルメタクリレートを使用する場合、例えばポリメチルメタクリレートにUV光を照射してポリマー鎖を切断し、酢酸により現像してもよい。また、熱により一方のポリマーを蒸散させてもよい。あるいは、UV光を真空中でポリスチレン−b−ポリメチルメタクリレートに照射してポリメチルメタクリレートを除去してもよい。また、ポリスチレン−b−ポリジメチルシロキサンを使用する場合には、真空中で400℃以上に加熱してポリスチレンを除去することもできる。このように、一方のポリマーを除去する方法は、使用するブロックコポリマーによって種々選択可能である。
【0132】
上記実施例は、ガイドパターンを形成するプロセスとして、先に第1の表面エネルギー調整層(塗布膜)を形成し、その上にレジストパターンを形成した後、第2の表面エネルギー調整層(PSポリマーブラシ)を形成している。レジストを除去することでレジスト表面や上方にある第2の表面エネルギー調整層を除去する。これによりケミカルガイドパターンを形成している。いわばリフトオフプロセスにより、レジストパターンを使ってガイドパターンを形成している。
【0133】
しかしレジストパターンを使ったガイドパターン形成プロセスはこれに限定されない。これには、次のようなものが考えられる。
【0134】
<変形例1>
図10は、変形例1に係るパターン形成方法を説明する断面図である。
【0135】
被加工膜11上に、第1の表面エネルギー調整層12cおよび第2の表面エネルギー調整層12dを積層して形成した(図10(a))。その上に、実施例1と同様にレジストパターン15を形成した(図10(b))。このレジストパターン15をマスクとして第2の表面エネルギー調整層12dを加工することで、ガイドパターンを形成した(図10(c))。
【0136】
このように作製したガイドパターン上に、実施例1と同様にブロックコポリマーを塗布してミクロ相分離させることにより、実施例1と同様のパターンが得られた。
【0137】
<変形例2>
図11は、変形例2に係るパターン形成方法を説明する断面図である。
【0138】
被加工膜11上に、第1の表面エネルギー調整層12cを形成した(図11(a))。その上に、実施例1と同様にレジストパターン15を形成した(図11(b))。このレジストパターン15をマスクとして第1の表面エネルギー層12cを加工した(図11(c))。加工後、第1の表面エネルギー調整層12cのスペース部のみに選択的に第2のエネルギー調整層12dを形成することで、ガイドパターンを形成した(図11(d))。
【0139】
このように作製したガイドパターン上に、実施例1と同様にブロックコポリマーを塗布してミクロ相分離させることにより、実施例1と同様のパターンが得られた。
【0140】
<変形例3>
図12は、変形例3に係るパターン形成方法を説明する断面図である。
【0141】
レジストパターン15をマスクとして第1の表面エネルギー調整層12cを加工するところまでは、変形例2と同様に行った。その後、図12(a)に示すように、被加工膜11およびエネルギー調整層12cの上に第2の表面エネルギー調整層12dを形成した。形成した第2の表面エネルギー調整層12dを第1の表面エネルギー調整層12cが露出するまでエッチバックすることにより、ガイドパターンを形成した(図12(b))。
【0142】
このように作製したガイドパターン上に、実施例1と同様にブロックコポリマーを塗布してミクロ相分離させることにより、実施例1と同様のパターンが得られた。
【0143】
<変形例4>
図13は、変形例4に係るパターン形成方法を説明する断面図である。
【0144】
被加工膜11上に、第1の表面エネルギー調整層12cを形成した(図13(a))。その上に、実施例1と同様にレジストパターン15を形成し、このレジストパターン15をそのまま第2のエネルギー調整層として使用してガイドパターンを形成した(図13(b))。
【0145】
このように作製したガイドパターン上に、実施例1と同様にブロックコポリマーを塗布してミクロ相分離させることにより、実施例1と同様のパターンが得られた。
【0146】
<変形例5>
図14は、変形例5に係るパターン形成方法を説明する断面図である。
【0147】
被加工膜11上に第1の表面エネルギー調整層12cを形成し(図14(a))、その上に実施例1と同様にレジストパターン15を形成した(図14(b))。形成したレジストパターン15のスペース部のみに選択的に第2の表面エネルギー調整層12dを形成した(図14(c))。レジストパターン15を除去することにより、図14(d)に示すようなガイドパターンを得た。
【0148】
この方法において、レジストパターン15の上に第2のエネルギー調整層12dを形成した後、エッチバックにより第2の表面エネルギー調整層12dおよびレジストを薄膜化し、ガイドパターンを形成してもよい。
【0149】
このように作製したガイドパターン上に、実施例1と同様にブロックコポリマーを塗布してミクロ相分離させることにより、実施例1と同様のパターンが得られた。
【0150】
<変形例6>
図15は、変形例6に係るパターン形成方法を説明する断面図である。ここで使用した材料は、実施例1と同様である。
【0151】
ここでは、第1の表面エネルギー調整層12cとして、感光性の膜を使用した。一例として、シランカップリング剤をSi表面に供給して基板と反応させ、露光により脱離させることで表面エネルギー調整した。
【0152】
第1の表面エネルギー調整層12cを、レクチルを介して選択的にArF露光し、露光部を第2のエネルギー調整層12dとすることによりガイドパターンを形成した。この場合にも、レジストパターンを形成する場合と同様、ガイドパターンのライン幅を1:1にすることにより、優れた露光によるプロセスマージンでガイドパターンを形成することができる。
【0153】
このように作製したガイドパターン上に、実施例1と同様にブロックコポリマーを塗布してミクロ相分離させることにより、実施例1と同様のパターンが得られた。
【0154】
上記実施形態または実施例によれば、ブロックコポリマーのミクロ相分離を利用したパターン形成方法において、露光において広いプロセスマージンで、精度よくガイドパターンを形成でき、ガイドパターンよりも微細なブロックコポリマーのミクロ相分離パターンを得ることができる。
【0155】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0156】
11…被加工膜、12a…中性化膜、12b…ピニング層、第1の表面エネルギー調整層12c、12d…第2の表面エネルギー調整層、13…ブロックコポリマー層、13a…第1のブロック鎖の層、13b…第2のブロック鎖の層、14…ブロックコポリマー分子、14a…第1のブロック鎖、14b…第2のブロック鎖、15…レジストパターン、20a…PSブロック鎖の層、20b…PMMAブロック鎖の層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工膜上に、表面エネルギーの異なる第1の表面エネルギー調整層および第2の表面エネルギー調整層が交互に平行に並んだガイドパターンを形成し、
前記ガイドパターン上に、第1および第2のブロック鎖を含むブロックコポリマー層を形成し、
前記ブロックコポリマーをミクロ相分離させ、前記ガイドパターンに基づいて前記ブロックコポリマーを配向させることにより、前記第1のブロック鎖の層と前記第2のブロック鎖の層が前記ガイドパターンと平行に交互に並び、前記第1のブロック鎖の層と前記第2のブロック鎖の層の界面が前記被加工膜の表面に対して垂直であるラメラ相を形成する
ことを含むパターン形成方法であって、
前記第1の表面エネルギー調整層は、前記第1のブロック鎖と略同一の表面エネルギーを有し、
前記第2の表面エネルギー調整層は、前記第2のブロック鎖と略同一の表面エネルギーを有し、
前記ガイドパターンの周期は、前記ブロックコポリマーの周期の3以上の整数倍であり、
前記第1の表面エネルギー調整層および前記第2の表面エネルギー調整層の各々の幅は、前記ブロックコポリマーの半周期の3以上の奇数倍である
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
前記第1の表面エネルギー調整層および前記第2の表面エネルギー調整層の幅は、相互に略同一であることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記ガイドパターンの形成は、
前記被加工膜上に前記第1の表面エネルギー調整層を形成し、
前記第1の表面エネルギー調整層上にフォトレジストを塗布し、
前記フォトレジストをエネルギー線で選択的に露光し、現像することによりレジストパターンを形成し、
前記レジストパターンをマスクあるいは鋳型として前記第2の表面エネルギー調整層を形成する
ことにより行うことを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記ガイドパターンの形成は、
被加工膜上に感光性の膜を形成し、
前記感光性の膜をエネルギー線で選択的に露光し、
露光部を前記第1の表面エネルギー調整層とし、未露光部を前記第2の表面エネルギー調整層とする
ことにより行うことを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記エネルギー線は、KrF光、ArF光、X線、EUV光および紫外光からなる群より選択されることを特徴とする請求項3または4に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
前記エネルギー線による露光は、二光束干渉を利用して行うことを特徴とする請求項3または4に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記第1または第2のブロック鎖のパターンの一方を選択的に除去し、残存した前記第2または第1のブロック鎖のパターンをエッチングマスクとして用いることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項1】
被加工膜上に、表面エネルギーの異なる第1の表面エネルギー調整層および第2の表面エネルギー調整層が交互に平行に並んだガイドパターンを形成し、
前記ガイドパターン上に、第1および第2のブロック鎖を含むブロックコポリマー層を形成し、
前記ブロックコポリマーをミクロ相分離させ、前記ガイドパターンに基づいて前記ブロックコポリマーを配向させることにより、前記第1のブロック鎖の層と前記第2のブロック鎖の層が前記ガイドパターンと平行に交互に並び、前記第1のブロック鎖の層と前記第2のブロック鎖の層の界面が前記被加工膜の表面に対して垂直であるラメラ相を形成する
ことを含むパターン形成方法であって、
前記第1の表面エネルギー調整層は、前記第1のブロック鎖と略同一の表面エネルギーを有し、
前記第2の表面エネルギー調整層は、前記第2のブロック鎖と略同一の表面エネルギーを有し、
前記ガイドパターンの周期は、前記ブロックコポリマーの周期の3以上の整数倍であり、
前記第1の表面エネルギー調整層および前記第2の表面エネルギー調整層の各々の幅は、前記ブロックコポリマーの半周期の3以上の奇数倍である
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
前記第1の表面エネルギー調整層および前記第2の表面エネルギー調整層の幅は、相互に略同一であることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記ガイドパターンの形成は、
前記被加工膜上に前記第1の表面エネルギー調整層を形成し、
前記第1の表面エネルギー調整層上にフォトレジストを塗布し、
前記フォトレジストをエネルギー線で選択的に露光し、現像することによりレジストパターンを形成し、
前記レジストパターンをマスクあるいは鋳型として前記第2の表面エネルギー調整層を形成する
ことにより行うことを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記ガイドパターンの形成は、
被加工膜上に感光性の膜を形成し、
前記感光性の膜をエネルギー線で選択的に露光し、
露光部を前記第1の表面エネルギー調整層とし、未露光部を前記第2の表面エネルギー調整層とする
ことにより行うことを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記エネルギー線は、KrF光、ArF光、X線、EUV光および紫外光からなる群より選択されることを特徴とする請求項3または4に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
前記エネルギー線による露光は、二光束干渉を利用して行うことを特徴とする請求項3または4に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記第1または第2のブロック鎖のパターンの一方を選択的に除去し、残存した前記第2または第1のブロック鎖のパターンをエッチングマスクとして用いることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−73974(P2013−73974A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209918(P2011−209918)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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