説明

パターン書き込み方法及び磁化消去状態の判定方法

【課題】セルフ・サーボ・ライトにおけるピッチ変動を防止する。
【解決手段】本発明の一実施形態において、磁気ディスク11の外周側領域212は外部磁界でイレーズされ、内周側領域211はヘッドによってセルフ・イレーズされる。内周側領域と外周側領域とは、パターンを書き込む前における下地の磁化状態が異なる。このため、内周側領域と外周側領域とにおいて、同一ピッチのラディアル・パターン117を読み出しても、異なるAPCが測定される。本形態のSSWは、内周側領域と外周側領域とにおいて、異なる基準APCを使用する。これによって、ピッチ変動を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気記録面へのパターン書き込み方法及び磁気記録面における磁化消去状態の判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク・ドライブ装置として、光ディスク、光磁気ディスクあるいはフレキシブル磁気ディスクなどの様々な態様の記録ディスクを使用する装置が知られている。その中で、ハードディスク・ドライブ(HDD)は、コンピュータの記憶装置として広く普及し、現在のコンピュータ・システムにおいて欠かすことができない記憶装置の一つとなっている。さらに、コンピュータ・システムにとどまらず、動画像記録再生装置、カーナビゲーション・システム、携帯電話、あるいはデジタル・カメラなどで使用されるリムーバブルメモリなど、HDDの用途は、その優れた特性により益々拡大している。
【0003】
HDDは、磁気ディスクと、磁気ディスクを回転駆動するためのスピンドル・モータ(SPM)と、磁気ディスクに対してデータの書き込み、読み取りを実行するためのヘッド素子部と、ヘッド素子部を支持しヘッド素子部を所望位置に移動するアクチュエータ等を備える。HDDは、構成部品を収容する筐体を備えている。筐体は、一般に、開口部を有するベースと、ベースの開口部を覆う板状のトップ・カバーとを有している。
【0004】
構成部品をベース内に組み付けた後に、トップ・カバーでベースの開口部を覆って組み付けが終了する。組み付けが終了した後に、磁気ディスクにサーボ・パターンを書き込む。サーボ・パターンの書き込みが終了したHDDは、製品出荷のための種々のテストに供される。サーボ・パターンの書き込み自体が不良と認定された場合、サーボ・パターンのイレーズが必要となる。さらに、製品出荷のためのテストにおいてもテスト・データが書き込まれており、不良品となったHDDについては、そのテスト・データのイレーズも必要となる。
【0005】
磁気ディスクのイレーズに関して、特許文献1は、磁気ディスクがHDDに装着された状態でイレーズを行う方法を開示している。この手法は、磁気ディスクの外周側を、永久磁石で生成された外部磁界によってイレーズし、内周側をHDDのヘッド素子部によって消去する。
【0006】
さらに、特許文献1は、ヘッド素子部を使用して消去した領域と外部磁界によって消去した領域との境界に、磁気段差が生ずることを指摘している。特許文献1によれば、この磁気段差がセルフ・サーボ・ライト(SSW)工程に影響し、磁気段差部分におけるサーボ・データのトラック・ピッチが変化する。そこで、この手法は、SSWにおいてトラック・ピッチをモニタし、磁気段差によるピッチ変動を検出した場合には、記録面の全ての領域をヘッド素子部によってイレーズする。
【特許文献1】特開2005−317125
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
SSWは、HDD本体の機械機構のみを使い、外部回路からHDD内のスピンドル・モータとアクチュエータを駆動するボイス・コイル・モータ(VCM)とをコントロールし、外部回路を用いてプロダクト・サーボ・パターンを書き込む。これによって、サーボ・ライタのコスト削減を図っている。
【0008】
SSWは、ヘッド素子部のリード素子とライト素子の半径方向位置が異なる(本明細書においてリード・ライト・オフセットと呼ぶ)ことを利用して、内周側もしくは外周側にすでに書き込まれたパターンをリード素子が読み取りながらヘッド素子部の位置決めを行い、ライト素子が、リード・ライト・オフセット離れた所望のトラックに新たなパターンを書きこむ。SSWは、プロダクト・サーボ・パターンに加え、それ以外のパターンを記録面に書き込み、それらを使用してヘッド位置制御やタイミング制御を実行する。
【0009】
SSWは、外部位置決め機構を使用しないため、サーボ・ライト・トラック間の距離を決定する際、半径方向に重なる位置にある隣接複数トラックのパターンを読み出し、その値(本明細書においてAPCと呼ぶ)を使用する。APCは、記録面の初期状態に大きな影響を受け、初期状態(下地磁化状態)によって、各パターンが物理的に同じ間隔にあっても異なる値を示すことがわかった。
【0010】
特許文献1に開示されるように、磁気ディスクの外周側を永久磁石で生成された外部磁界によってイレーズし、内周側をHDDのヘッド素子部によって消去する場合、各領域における下地の磁化状態(消磁状態)が異なるものとある。このため、これらの領域において、同じ間隔のパターンが、異なるAPCを示すことになる。SSWは、その途中で書き込んだパターンのAPCを測定し、その値が予め設定されている基準APCに沿うように、ヘッドを順次送っていく。このため、外周側と内周側とにおいて同一の基準APCを使用すると、トラック・ピッチに変動が生じることがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、半径方向における位置が異なるリード素子とライト素子とを有するヘッドを使用して、回転する磁気記録面にパターンを書き込む方法である。この方法は、前記磁気記録面の第1の領域において、前記ライト素子が書き込んだ異なる半径位置のパターンを前記リード素子で読み出した値から算出される値が第1の基準に従うように、前記ライト素子が書き込んだパターンを前記リード素子で順次読み出して位置決めしながら前記ライト素子により新たなパターンを順次書き込む。さらに、前記第1の領域と下地磁化状態が異なる第2領域において、前記ライト素子が書き込んだ異なる半径位置のパターンを前記リード素子で読み出した値から算出される値が前記第1の基準と異なる第2の基準に従うように、前記ライト素子が書き込んだパターンを前記リード素子で読み出して位置決めしながら前記ライト素子により新たなパターンを順次書き込む。二つの領域で異なる基準を使用することで、下地磁化状態に応じて正確にヘッド制御することができる。
前記第1領域は前記ライト素子によってイレーズされ、前記第2領域は外部磁界によってイレーズされている場合、本発明は特に有効である。
【0012】
前記第2領域において、前記ライト素子によって半径位置の異なる複数のパターンを書き込み、その複数パターンを位置決めされた前記リード素子で読み出した値を使用して、前記第1の基準から前記第2の基準を算出することが好ましい。これによって、容易かつ正確に第2の基準を得ることができる。
【0013】
前記第1の領域内における前記算出される値に対する、前記第2の領域内における前記算出される値の変化量に基づいて下地磁化状態の良否判定を行うことが好ましい。あるいは、前記第2の領域において、同一の半径位置における複数の前記算出される値のばらつきに基づいて下地磁化状態の良否判定を行うことが好ましい。あるいは、前記第2の領域において、異なる半径位置における複数の前記算出される値のばらつきに基づいて下地磁化状態の良否判定を行うことが好ましい。良否判定を行うことで、誤った第2基準の算出によるパターン書き込みを防ぐことができる。
【0014】
本発明の他の態様は、半径方向における位置が異なるリード素子とライト素子とを有するヘッドを使用して、回転する磁気記録面にパターンを書き込む方法である。この方法は、第1の領域において、前記ライト素子が書き込んだ異なる半径位置の複数パターンを、第1半径位置の前記リード素子で読み出し、その読み出した値を使用して算出される値と前記第1半径位置に対応する第1基準とに基づいてターゲットを決定する。さらに、前記ライト素子が書き込んだパターンを前記リード素子で読み出して前記ターゲットに前記ヘッドを位置決めし、位置決めした状態において前記ライト素子により新たなパターンを書き込む。そして、第2の領域において、前記ライト素子が書き込んだ異なる半径位置の複数パターンを、第2半径位置の前記リード素子で読み出し、その読み出した値を使用して算出される値に基づいて前記第1基準から第2基準を算出し、その第2基準に従って新たなターゲットを決定する。さらに、前記ライト素子が書き込んだパターンを前記リード素子で読み出して前記新たなターゲットに前記ヘッドを位置決めし、位置決めした状態において前記ライト素子により新たなパターンを書き込む。二つの領域で異なる基準を使用することで、領域に応じて正確にヘッド制御することができる。
【0015】
本発明の他の態様は、磁気記録面における磁化消去状態を判定する方法である。この方法は、前記ライト素子が書き込んだ異なる半径位置の複数パターンを位置決めされた前記リード素子で読み出し、その読み出した値を使用して第1比較値を算出する。さらに、前記ライト素子が書き込んだ異なる半径位置の複数パターンを位置決めされた前記リード素子で読み出し、その読み出した値を使用して第2比較値を算出する。そして、前記第1比較値と第2比較値との間の差分に基づいて消去状態の良否を判定する。
【0016】
異なる複数の半径位置のそれぞれにおいて、前記ライト素子が書き込んだ異なる半径位置の複数パターンを位置決めされた前記リード素子で読み出し、その読み出した値を使用して比較値を算出し、前記複数の異なる半径位置における比較値のばらつきに基づいて消去状態の良否を判定することができる。
【0017】
同一半径位置における異なる複数の円周方向位置において、前記ライト素子が書き込んだ異なる半径位置の複数パターンを位置決めされた前記リード素子で読み出し、その読み出した値を使用して比較値を算出し、算出した前記同一半径位置における複数の比較値のばらつきに基づいて消去状態の良否を判定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、磁化状態の異なる複数の領域において所望ピッチのパターンを書き込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明を適用可能な実施の形態を説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略及び簡略化がなされている。又、各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略されている。以下においては、磁気ディスク・ドライブ装置の一例であるハードディスク・ドライブ(HDD)のサーボ・ライトを例として、本発明の好ましい態様を説明する。本形態は、サーボ・ライトにおいて、下地磁化状態の異なる領域にパターンを書き込むときにおける手法に、その特徴を有している。
【0020】
本形態のHDDの製造は、まず、外部磁界によってヘッド・ディスク・アセンブリ(HDA)内に実装されている磁気ディスクの外周側領域をイレーズする。その後、HDA内の内部機構を制御して、HDA内の磁気ディスクにパターンを書き込む。まず、外部磁界によるイレーズについて説明する。図1は、外部磁界によるディスク・イレーズの方法を模式的に示す図である。外部磁界生成装置9が磁界を生成し、HDA1に実装された磁気ディスク11の記録面をイレーズする。説明のため、図1は、トップ・カバーが外されたHDA1を示しているが、HDA1にトップ・カバーをはめた状態において、ディスク・イレーズを行うことができる。図1においては、ベース10内に実装された磁気ディスク11とアクチュエータ16とが例示されている。
【0021】
外部磁界生成装置9は、永久磁石91、92及び永久磁石91、92を支持する磁石支持部93有している。永久磁石91、92は、互いに離間し、対向して配置されている。この永久磁石91、92の間の空間において、永久磁石91、92による磁界が生成されている。この空間内にHDA1の一部を挿入し、その状態で磁気ディスク11をスピンドル・モータ(SPM:不図示)によって回転することで、磁気ディスク11の外周側領域がイレーズされる。永久磁石91、92によって形成される磁界の磁力は、磁気ディスク11の保持力よりも強い。このため、この外部磁界が、磁気ディスク11に記録されたデータを消去することができる。外部磁界を使用することで、迅速に磁気ディスク11のイレーズを行うことができる。
【0022】
永久磁石91、91の間で生成される磁界の方向は、回転する磁気ディスク11の記録面に対して垂直もしくは平行となる。外部磁界の方向は、HDAに実装される磁気ディスク11の記録方式によって変更することができる。外部磁界によるSPMへの影響を避けるため、外部磁界内には、磁気ディスク11の外周側の一部領域のみが挿入される。このため、磁気ディスク11の内周側の領域は、十分にイレーズされない。このため、本形態においては、磁気ディスク11へのサーボ・ライトにおいて、内周側領域をHDA1のヘッド素子部によってイレーズする。
【0023】
続いて、本形態におけるサーボ・ライトについて以下に説明する。図2は、HDA1及びHDA1のサーボ・ライトを制御するサーボ・ライト制御装置2の論理構成を模式的に示すブロック図である。HDA1は、HDDの構成要素であって、ベース及びベースの上部開口を塞ぐトップ・カバーを有する筐体10を有している。HDA1は、この筐体内に、その中に収容された磁気ディスク11、ヘッド・スライダ12、回路素子の一例であるプリアンプIC13、ボイス・コイル・モータ(VCM)15及びアクチュエータ16を有している。アクチュエータ16は、先端部においてヘッド・スライダ12を支持している。また、プリアンプIC13は回路基板(不図示)を介してアクチュエータ16に固定され、具体的には、その回動軸161の近くに固定されている。
【0024】
HDDは、HDA1に加えて、筐体10の外側に固定された回路基板を備える。回路基板上には、信号処理及び制御処理を実行するICが実装される。本形態のサーボ・ライトはこの制御回路基板上の回路を使用せず、サーボ・ライト制御装置2が、サーボ・ライトを制御する。本形態のサーボ・ライトは、HDA1の内部機構を直接に制御して磁気ディスク11にサーボ・データ(サーボ・パターン)を書き込む。磁気ディスク11は、磁性層が磁化されることによってデータを記憶する不揮発性の記憶ディスクである。
【0025】
このようなサーボ・ライトを、セルフ・サーボ・ライト(SSW)と呼ぶ。SSWは、筐体10内の各構成要素を使用して、磁気ディスク11にユーザ・データの書き込み及び読み取りにおいて使用するサーボ・データを書き込む。以下において、このサーボ・データをプロダクト・サーボ・パターンと呼ぶ。なお、HDDに実装される制御回路を使用して本形態のサーボ・ライトを実行することも可能である。
【0026】
サーボ・ライト制御装置2は、本形態のSSWを制御、実行する。サーボ・ライト制御装置2は、SSWコントローラ22を有する。このSSWコントローラ22は、SSW全体を制御する。SSWコントローラ22は、ヘッド・スライダ12の位置決め制御及びパターン生成の制御などを実行する。SSWコントローラ22は、予め記憶されたマイクロ・コードに従って動作するプロセッサによって構成することができる。SSWコントローラ22は、外部の情報処理装置からの要求に応じて制御処理を実行し、エラー情報などの必要な情報を情報処理装置に送信する。
【0027】
磁気ディスク11へのパターンの書き込みにおいて、SSWコントローラ22がパターン生成器21に指示を行い、パターン生成器21が所定のパターンを生成する。リード・ライト・インターフェース23が、パターン生成器21が生成したパターンの変換処理を行い、パターン信号をプリアンプIC13に転送する。プリアンプIC13は信号を増幅してヘッド・スライダ12に転送し、ヘッド・スライダ12が磁気ディスク11にパターンを書き込む。
【0028】
SSWコントローラ22は、ヘッド・スライダ12が読み取った信号を使用してアクチュエータ16を制御し、ヘッド・スライダ12の移動及び位置決めを行う。具体的には、ヘッド・スライダ12が読み取った信号は、RWインターフェース23を介して、振幅復調器27に入力される。振幅復調器27が復調処理した読み取り信号は、ADコンバータ26によってAD変換され、SSWコントローラ22に入力される。SSWコントローラ22は、得られたデジタル信号を分析し、数値制御信号を計算する。
【0029】
SSWコントローラ22は、その値をDAコンバータ25に送る。DAコンバータ25は、取得したデータをDA変換し、制御信号をVCMドライバ24に与える。VCMドライバ24は制御信号に基づき制御電流をVCM15に供給し、ヘッド・スライダ12を移動及び位置決めする。本明細書において、サーボ・ライト制御装置2及びHDA1の磁気ディスク11以外の構成要素を含む装置を、セルフ・サーボ・トラック・ライタ(SSTW)と呼ぶ。つまり、SSTWが、磁気ディスク11の記録面にサーボ・パターンを書き込む。
【0030】
図3に示すように、本形態のHDA1は、複数の磁気ディスク11a−11cを有し、各磁気ディスク11a−11cは、スピンドル・モータ(SPM)14の回転軸に固定されている。SPM14は、そこに固定されている磁気ディスク11a−11cを、所定の角速度で回転する。また、各磁気ディスク11a−11cの両面が記録面であり、HDA1は各記録面に対応した複数のヘッド・スライダ12a−12fを有している。
【0031】
各ヘッド・スライダ12a−12fは、アクチュエータ16に固定されている。具体的には、アクチュエータ・アーム162aがヘッド・スライダ12aを支持し、アクチュエータ・アーム162bがヘッド・スライダ12b、cを支持し、アクチュエータ・アーム162cがヘッド・スライダ12d、eを支持し、アクチュエータ・アーム162dがヘッド・スライダ12fを支持する。
【0032】
アクチュエータ16はVCM15に連結され、回動軸161を中心に回動することによって、各ヘッド・スライダ12a−12fを磁気ディスク11a−11cの各記録面上において半径方向に移動する。各ヘッド・スライダ12a−12fは、スライダとそこに形成された薄膜素子としてのヘッド素子部(不図示)とを有している。ヘッド素子部は、ライト・データに応じて電気信号を磁界に変換するライト素子及び磁気ディスク11からの磁界を電気信号に変換するリード素子を備えている。
【0033】
プリアンプIC13は、複数のヘッド・スライダ12a−12fの中からデータを読み取る1つのヘッド・スライダを選択し、選択されたヘッド・スライダにより再生される再生信号を一定のゲインで増幅(プリアンプ)し、サーボ・ライト制御装置2に出力する。また、プリアンプIC13は、サーボ・ライト制御装置2からの信号を増幅して、選択されたヘッド・スライダに出力する。プロダクト・サーボ・パターンの書き込みにおいては、全ヘッド・スライダ12a−12fが同時に選択される。
【0034】
図2に戻って、SSWによって、磁気ディスク11の記録面には、磁気ディスク11の中心から半径方向に放射状に延び、所定の角度毎に形成された複数のサーボ領域111が形成される。図2は、7つのサーボ領域を例示している。各サーボ領域111は、ユーザ・データの読み取り/書き込みにおいてヘッド・スライダの位置決め制御を行うためのプロダクト・サーボ・パターンが記録される。隣り合う2つのサーボ領域111の間の領域がデータ領域112であって、そこにユーザ・データが記録される。サーボ領域111とデータ領域112は、所定の角度で交互に設けられる。
【0035】
図4は、1サーボ・セクタのプロダクト・サーボ・パターン115のデータ・フォーマットを示している。1サーボ領域111において、円周方向において一サーボ・セクタのプロダクト・サーボ・パターン115が形成され、半径方向に複数サーボ・セクタのプロダクト・サーボ・パターン115が形成されている。プロダクト・サーボ・パターン115は、プリアンブル(PREAMBLE)、サーボ・アドレス・マーク(SAM)、グレイ・コードからなるトラックID(GRAY)、サーボ・セクタ・ナンバ(PHSN)(オプショナル)及びバースト・パターン(BURST)から構成されている。SAMは、トラックID等の実際の情報が始まることを示す部分で、通常SAMが見つかったときに出てくるタイミング信号であるSAM信号が磁気ディスク11上に書き込まれた位置と正確な相関をもっている。
【0036】
また、バースト・パターン(BURST)は、トラックIDで示されるサーボ・トラックの更に精密な位置を示す信号である。バースト・パターンは、典型的には、サーボ・トラックごとに周回上に位置を少し違えたところに千鳥状に書かれたA、B、C、Dの4つの振幅信号を備える(図5参照)。これらの各バーストはプリアンブル(PREAMBLE)と同じ周期の単一周波数信号である。
【0037】
図5は、本形態のSSTWが記録面上に書き込むパターン及びその書き込み方法を模式的に示している。図5は、1サーボ・セクタに対応するパターンを示している。SSTWは、プロダクト・サーボ・パターン115の他に、タイミング・パターン116とラディアル・パターン117とを書き込む。タイミング・パターン116はパルス状のパターンであり、ラディアル・パターン117は所定周波数のバーストである。従って、本形態のSSWにおける一つのセクタは、プロダクト・サーボ・パターン115を書き込む領域151、1スロットのタイミング・パターン116を書き込む領域161及び1スロットのラディアル・パターン117を書き込む領域171を有している。タイミング・パターン116及びラディアル・パターン117は、ユーザ・データを記憶するデータ領域112に書き込まれる。
【0038】
SSTWは、自分で磁気ディスク11に書き込んだパターンを参照し、その信号から得られる時間的、空間的情報を使用して、ヘッド素子部120の時間的(周方向におけるタイミング制御)、空間的(半径方向における位置制御)な制御を行いながら、リード・ライト・オフセットだけ半径方向にずれた位置に、次のパターンを書き込む。
【0039】
リード・ライト・オフセット(RWO)は、ヘッド素子部120における、ライト素子121とリード素子との間の半径方向における間隔であり、具体的には、リード素子122とライト素子121の各センター間の、磁気ディスク11の半径方向における距離である。リード・ライト・オフセットは、磁気ディスク11上の半径位置によって変化する。なお、ライト素子121とリード素子122とは円周方向においても位置がずれており、この方向における間隔をリード・ライト・セパレーションと呼ぶ。
【0040】
本形態のSSTWは、複数のヘッド素子部120から一つを選択し(例えば図3におけるヘッド・スライダ12bのヘッド素子部)、その選択したヘッド素子部120によって記録面上のパターンを読み取る。このヘッド素子部120を、本明細書においてプロパゲーション・ヘッドと呼ぶ。そして、SSTWは、プロパゲーション・ヘッドが読み取った信号を使用してアクチュエータ16を制御し、全ヘッド・スライダ12a−12fによって各記録面に同時に各パターンを書き込む。
【0041】
本形態においては、図5に示すように、リード素子122がライト素子121よりも磁気ディスク11の内周(ID)側に配置されている。パターンは、内周側から外周側に書き進められる。内周側からパターンを書き込むことによって、ライト素子121により先に書き込まれたパターンをリード素子122が読み取ることができる。これによって、リード素子122が読み取ったパターンによってヘッド素子部120の位置合わせを行いながら、ライト素子121は新たなパターンの書き込みを行うことができる。尚、ライト素子121、リード122の位置を変更することによって、磁気ディスク11の外側からSSWを開始することも可能である。
【0042】
具体的には、SSTWは、ラディアル・パターン117を使用してヘッド素子部120の位置決めを行い、タイミング・パターン116を基準として、パターン書き込みのタイミングを測定する。プロパゲーション・ヘッドのリード素子122がタイミング・パターンを読み取ったタイミングから予め定められた時間経過後に、各ヘッド素子部120のライト素子121が、プロダクト・サーボ・パターン115(の一部)を書き込む。また、次のセクタのタイミング・パターン116は、一つ前のセクタのタイミング・パターン116の読み取りを基準にして書き込まれる。
【0043】
図5に示すように、ライト素子121は、各プロダクト・サーボ・パターン115を、半径方向において一部が重なるように書き込む。つまり、各プロダクト・サーボ・パターンの形成において、各パターンの一部は外周側のパターンに上書きされる。図5においては、3つのすでに書き込まれたプロダクト・サーボ・パターン115が示されており、ライト素子121は内周側から4つ目のプロダクト・サーボ・パターンを形成している途中である。
【0044】
ライト素子121は磁気ディスク1周でプロダクト・サーボ・パターンの半分を書き込む。本明細書において、このプロダクト・サーボ・パターンの半分に相当するトラックを、サーボ・ライト・トラックと呼ぶ。1サーボ・ライト・トラックのプロダクト・サーボ・パターンが、115で指示されている。また、プロダクト・サーボ・パターンのトラックをサーボ・トラックと呼ぶ。サーボ・ライト・トラックのトラック・ピッチは、サーボ・トラック・ピッチの半分となる。図5の例においては、7サーボ・ライト・トラックが既に書き込まれており、ライト素子121は、内周側から8つ目のサーボ・ライト・トラックを書き込んでいる途中である。
【0045】
同一のセクタにおけるタイミング・パターン117は、円周方向における実質的に同一の位置に形成される。一方、各ラディアル・パターン117は、半径方向において隣接するラディアル・パターン117と、異なる円周方向位置に形成される。つまり、各隣接するラディアル・パターン117は、円周方向位置がずれている。また、半径方向において、各隣接するラディアル・パターン117は重なるように形成される。なお、図5において、各ラディアル・パターン117が外周方向に向かうにつれて図の右側に順次ずれていくが、さらに外周側のトラックにおいて、図の左側にずれた位置に書き込まれる。
【0046】
SSWコントローラ22は、ラディアル・パターン117の読み取り信号を使用してヘッド・ポジショニングを行う。具体的に、図6を参照して、リード素子122を、ターゲット位置118に位置決めする例を説明する。図6におけるリード素子122の半径方向の寸法がリード幅、ライト素子121の寸法がライト幅に相当する。磁気ディスク11は図の右から左に回転し、リード素子122は図の左から右に向かって移動する。ライト素子121は、ターゲット位置119において対応するサーボ・ライト・トラックを書き込む。
【0047】
ライト素子121をターゲット位置119に位置決めするために、SSWコントローラ22は、ターゲット位置119からリード・ライト・オフセット(RWO)内周側のターゲット位置118にリード素子122を位置決めする。リード素子122は、ラディアル・パターン117a、117b及び117cを読み取る。SSWコントローラ22は、各ラディアル・パターン117a、117b、117cの振幅(A、B及びCとする)の関数値(本明細書においてPES値と呼ぶ)を求め、その値がターゲット値となるようにリード素子122を位置決めする。
【0048】
リード素子122がターゲット位置118に位置決めされた状態で、ライト素子122はラディアル・パターン117dを書き込む。なお、各パターンを書き込む工程において、典型的には、リード素子122のターゲット位置は各ラディアル・パターン117の中心に一致せず、半径方向においてずれている。
【0049】
このように、SSTWは、内周側から順次、各サーボ・ライト・トラックにパターンを書き込んでいく。図1を参照して説明したように、磁気ディスク11記録面の外周側領域は、外部磁界によってイレーズ処理されているが、内周側領域は、外部磁界によって十分にイレーズ処理がなされていない。そこで、図7に示すように、本形態のSSTWは、各記録面の内周側領域211においては、各ヘッド素子部120によるセルフ・イレーズを行う。外周側領域212においては、SSTWはセルフ・イレーズを行うことなく、パターンを各記録面に書き込む。
【0050】
内周側領域211におけるパターンの書き込み方法について、図8を参照して説明する。内周側領域211において、イレーズ工程を含むサーボ・パターン書き込みシーケンスは、ターゲット・サーボ・ライト・トラックにおけるプロダクト・サーボ・パターン115を含むパターンの書き込み工程(以下、サーボ・パターン書き込み工程)と、パターンを書き込んだ位置から数サーボ・ライト・トラック先におけるイレーズ工程とを繰り返す。
【0051】
具体的には、図8を参照して、まず、ライト素子位置121bにあるライト素子121が、ターゲット・トラックにおいてプロダクト・サーボ・パターンを含むパターンを書き込む。続いて、ライト素子121は、外周側の数トラック先へのライト素子位置121cへ移動する[1]。ライト素子121は、移動先のサーボ・ライト・トラックにおいて、イレーズを行い、イレーズ・トラックを生成する。イレーズ工程は、DCイレーズ・パターンもしくはACイレーズ・パターンを書き込む。
【0052】
磁気ディスク11が1回転し、移動先トラックにおけるイレーズが終了すると、ライト素子121は、直前にパターンを書き込んだサーボ・ライト・トラック(ライト素子位置121b)に戻る[2]。さらに、ライト素子121は、次のプロダクト・サーボ・パターン115を含むパターンの書き込みのため、一つ外側のサーボ・ライト・トラックに移動し[3]、そのライト素子位置121aにおいて各パターンを書き込む。このときのリード素子位置が122aで示されている。
【0053】
以降、内周側領域211におけるサーボ・パターン書き込みシーケンスは、イレーズするサーボ・ライト・トラックへのシーク工程、シーク先におけるイレーズ工程、シーク前位置に戻るシーク工程、一つ外周側のサーボ・ライト・トラックへのシーク工程及びシーク先におけるサーボ・パターン書き込み工程を繰り返す。
【0054】
外周側領域212におけるサーボ・パターン書き込みシーケンスは、内周側領域211におけるサーボ・パターン書き込みシーケンスから、イレーズのための各工程を除いたものとなる。具体的には、図8の例において、ライト素子121は、ライト素子位置121bにおいて、プロダクト・サーボ・パターン115を含むパターンを書き込む。その後、ライト素子121は外周側の隣接サーボ・ライト・トラックにシークし[3]、シーク先のライト素子121aにおいて各パターンを書き込む。以後、一つ外周側のサーボ・ライト・トラックへのシーク工程と、シーク先でのサーボ・パターン書き込み工程とを繰り返す。
【0055】
本形態のSSWコントローラ22は、APCと呼ぶ値が予め定められた規定値に一致するようにヘッド・スライダ12a−12fを順次移動する。これによって、所望のピッチのプロダクト・サーボ・パターンを書き込む。SSTWは、APCが規定値に一致するように(近づくように)、ターゲットPES値を決定し、そのターゲット位置にプロパゲーション・ヘッドを位置決めした状態で、各サーボ・ライト・トラックにおいてパターンを書き込む。
【0056】
APCは、半径方向において隣接する3つのサーボ・ライト・トラックのラディアル・パターン117の読み取り振幅A、B及びCから算出される。具他的には、プロパゲーション・ヘッドを一つのラディアル・パターン117の中心に位置決めした状態において、各ラディアル・パターン117の読み取り振幅A、B及びCを取得する。APCは、(A+C/B)によって算出される。
【0057】
図6に示すように、3つの隣接するラディアル・パターンは、半径方向及び円周方向において隣接する。また、中央のラディアル・パターンに対して、半径方向において隣接する各ラディアル・パターンの一部が、半径方向において重なっている。円周方向において、各ラディアル・パターンは重なっていない。
【0058】
本形態のSSWにおいて特徴的な点の一つは、内周側領域211と外周側領域212とにおいて、異なる基準APCを使用するということである。セルフ・イレーズされる内周側領域211と、外部磁界によってイレーズされる外周側領域212とは、パターンを書き込む前における下地の磁化状態が異なる。リード素子122がラディアル・パターン117を読み出してAPCを測定する場合、リード素子122は、ラディアル・パターン117の他に、下地部分の磁化も読み出す。このため、磁化消去状態が異なる内周側領域211と外周側領域212とにおいて、同一ピッチのラディアル・パターン117を読み出しても、異なるAPCが測定される。
【0059】
そこで、外周側領域212におけるパターン書き込みにおいて、内周側領域211において使用した基準APCを変更し、新たな基準APCを設定する。図9は、本形態における基準APCカーブの一例を示している。内周側領域211においてはAPCカーブ81を使用し、外周側領域212においてはAPCカーブ82を使用する。APCカーブ81とAPCカーブ82との間には段差、つまり、オフセットが存在する。図9の例においては、外周側領域212のAPCカーブ82が内周側領域211のAPCカーブ81に対して増加する方向にずれているが、この逆の関係になることもある。
【0060】
この基準APCをターゲットとして各サーボ・ライト・トラックのパターンを書き込むことで、サーボ・ライト・トラック・ピッチが所望の値となるようにコントロールする。なお、基準APCは、開発段階において予め決定される。具体的には、ロータリ・ポジショナを使用して理想的なパターンを同一設計のHDAにおいて書き込み、そのパターンのAPCを計測することで決定することができる。
【0061】
本形態のSSTWには、SSWを開始する前に、内周側領域211及び外周側領域211の各サーボ・ライト・トラックに対応する基準APCカーブが予め設定される。つまり。SSWの開始時において、各領域の基準APCカーブは同一である。SSTWは、APCキャリブレーション・シーケンス内において、予め設定されている基準APCカーブを補正し、外周側領域212のAPCカーブ82を設定する。まず、このAPCキャリブレーション・シーケンスについて説明する。
【0062】
本形態のSSWは、所定サーボ・ライト・トラック数のパターンを書き込むと、APCキャリブレーションを実行する。つまり、本形態のSSWは複数のシーケンスを有しており、記録面の各サーボ・ライト・トラックにパターンを順次書き込んでいくパターン書き込みシーケンスと、各パターン書き込みシーケンスの間に実行されるAPCキャリブレーション・シーケンスを有する。
【0063】
APCキャリブレーション・シーケンスは、設計に従ったピッチでパターンを書き込むため、書き込んだパターンのAPCを測定すると共に、以降のパターン書き込みにおけるターゲットとなるPES値を決定する。このAPCキャリブレーション・シーケンスは、数百サーボ・ライト・トラック毎に1回行われる。
【0064】
本形態のSSWコントローラ22は、APCが規定値となるように、ヘッド素子部120を順次移動していく。しかし、次のサーボ・ライト・トラックへの各移動においてAPCを測定することは、多大な時間を必要とし、イールドに大きく影響する。そのため、本形態のSSWは、数百サーボ・ライト・トラック毎にAPCを測定し、その測定値に従って、次の工程のターゲットPESを決定する。
【0065】
APCキャリブレーション・シーケンスは、図10に示すように、最後にパターンを書き込んだターゲット位置118aから内周側にリード素子122を移動し、複数サーボ・ライト・トラックについて、APCを測定する。図10の例においては、リード素子122は、最後にパターン書き込みをした位置から4サーボ・ライト・トラック内側に移動し、そのリード素子位置122cからリード素子位置122fまで順次移動しながら、各ラディアル・パターンを読み取る。図10の例は、サーボ・ライト・トラックのAPCを測定する。複数サーボ・ライト・トラックのAPCを測定することで、測定誤差による誤ったAPCを測定することを防止する。APCの測定は、シークとラディアル・パターンの読み取りの工程から構成され、上述の例は、ディスク4回転のシーク(リード)と、ディスク4回転のラディアル・パターン読み取り(リード)とを実行する。
【0066】
SSTWは、予め定められた半径位置におけるAPCキャリブレーション・シーケンスにおいて、外周側領域212のAPCカーブ82を設定する。典型的には、外周側領域212における最内周側のACPキャリブレーション位置において、SSTWは、基準APCカーブの再設定を行う。例えば、4900サーボ・ライト・トラック位置に領域境界が存在し、SSTWが4800サーボ・ライト・トラック位置と、5000サーボ・ライト・トラック位置とでACPキャリブレーションを行う場合を考える。この場合、SSTWは、この5000サーボ・ライト・トラック位置におけるACPキャリブレーションにおいて、基準APCカーブの再設定を行う。
【0067】
具体的には、SSWコントローラ22は、外周側領域212における最内周側のAPCキャリブレーションにおいて、複数のサーボ・ライト・トラック(上述の例において4サーボ・ライト・トラック)におけるAPCの平均値を算出する。つまり、各サーボ・ライト・トラックのAPC平均値を加算し、それをサーボ・ライト・トラック数で割った値である。SSWコントローラ22は、この値を使用して、予め設定されている基準APCカーブを補正(校正)する。
【0068】
典型的には、基準APCカーブは、サーボ・ライト・トラック位置に対する三次もしくは五次の関数として設定される。SSWコントローラ22は、この初期設定された関数が表すキャリブレーション位置のAPCと、実際に測定したAPCを比較する。そして、これらの値の差分を算出し、その差分をオフセットとして関数に加算する。この新たな関数が、外周側領域212における基準APCカーブを表す関数となる。
【0069】
このように、外周側領域212において実際に測定されたAPCを使用して、内周側領域211において使用した基準APCカーブを表す関数を補正することで、外周側領域212の下地磁化状態に適した基準APCカーブを得ることができ、サーボ・データのトラック・ピッチ変動を抑制することができる。
【0070】
正確なAPC測定値を得るためには、上述のように、複数のAPCを測定し、それらの値から算出した値を使用することが好ましい。また、上述のように複数サーボ・ライト・トラックのAPCを測定して、それらの平均値を使用することが好ましいが、1サーボ・ライト・トラックにおいて測定される複数APC値の平均値を使用することもできる。あるいは、1サーボ・ライト・トラックもしくは複数サーボ・ライト・トラックにおける一部のAPC測定値を使用してもよい。
【0071】
このように、基準APCカーブの補正は、実際に外周側領域212においてAPCを測定することによって行われる。従って、このAPCの測定が正確に行われることが必要となる。しかし、外周側領域212を外部磁界でイレーズする場合、内周側領域211に近い領域が、完全にイレーズされていない場合がある。このように、消磁不良状態にある領域においてAPC測定を行うと、測定したAPC値にノイズが含まれ、正確にAPCが測定される、トラック・ピッチが変動してしまう。
【0072】
そのため、基準APC補正のために測定を行う領域の消磁の良否を判定することが要求される。本形態のSSTWは、APCキャリブレーションにおいて、比較値の一例であるAPC測定値を使用してその領域における下地磁化状態を測定し、消磁状態の良否判定を行う。消磁状態が良好な場合、SSTWは新たに設定した基準APCに従って、外周側領域212におけるパターンの書き込みを続けて行う。
【0073】
消磁状態が不良であると判定すると、SSTWはサーボ・ライトを停止する。例えば、そのHDA1はサーボ・ライト制御装置から外され、再度、外部磁界によるイレーズ工程に回される。あるいは、SSTWはヘッド素子部120を使用して、消磁不良の領域を含む領域をセルフ・イレーズする。例えば、SSTWは、ヘッド素子部120を使用して記録面の全面をイレーズする、あるいは、境界近傍の所定領域をヘッド素子部120でセルフ・イレーズする。その後、SSTWはパターンの書き込みを再開する。
【0074】
消磁状態の判定方法について説明する。好ましい消磁良否判定基準の一つは、APCの変化量である。APC測定値は、トラック位置によってある程度変動するが、それが大きく変動することはない。従って、測定APC値が一定量を超えて変化する場合、正しくない基準APCが設定されようとしていると判定することができる。
【0075】
具体的には、SSWコントローラ22は、内周側領域211における測定APC値を基準とし、基準APC再設定において外周側領域212で測定したAPC値と比較する。これら比較値の変化量が基準となる許容範囲を超えている場合、SSWコントローラ22は消磁不良と判定する。
【0076】
上述の例に従えば、4800トラックにおけるAPCキャリブレーションにおいて得たAPC平均値を、SSWコントローラ22は保存しておく。そして、5000トラックにおけるAPCキャリブレーションにおいて取得したAPC平均値と、保存していたAPC平均値とを比較する。これらの差分が基準範囲内にあれば、SSWコントローラ22は、消磁状態について良判定を行う。なお、判定に使用するAPC値は、このように複数APC値の平均値であることが好ましい。
【0077】
しかし、上述の基準APCの再設定の説明において言及したのと同様に、1サーボ・ライト・トラックにおける平均値など、他のAPC値を使用してもよい。また、複数APC値の平均値を使用することは、その複数APC値の和を使用することと、実質的に同一である。この点は、以下の説明において同様である。
【0078】
他の好ましい判定基準は、APC値のばらつきを使用する。具体的な手法の一つは、外周側領域212において、APCキャリブレーションにおける、複数サーボ・ライト・トラックにおけるAPC値のばらつきに基づいて判定を行う。好ましい一例は、各サーボ・ライト・トラックのAPC平均値についての分散を使用する。図10を参照して説明した例においては、SSWコントローラ22は、4つのサーボ・ライト・トラックにおいて円周方向において離間した各セクタのAPC値を測定する。
【0079】
SSWコントローラ22は、一つのサーボ・ライト・トラックにおける各セクタにおけるAPC値から、そのサーボ・ライト・トラックのAPC平均値を算出する。SSWコントローラ22は、他のサーボ・ライト・トラックについても同様に、各APC平均値を算出する。SSWコントローラ22は、さらに、各サーボ・ライト・トラックのAPC平均値を使用して、それらの値のばらつきを表す分散を算出する。
【0080】
SSWコントローラ22は予め設定された基準範囲を有しており、この基準範囲と得られた分散とを比較する。分散が基準範囲内にあるとき、SSWコントローラ22は消磁状態に問題がない(良状態)と判定する。一方、分散が基準範囲外にある場合、SSWコントローラ22は消磁不良を判定する。なお、正確な測定のためには、より多くのサーボ・ライト・トラックから分散を算出することが好ましい。
【0081】
APC値のばらつきを使用する他の好ましい手法は、1サーボ・ライト・トラック内における各セクタのAPC値のばらつきを使用する。外周側領域212におけるAPCキャリブレーションにおいて、SSWコントローラ22は、選択したサーボ・ライト・トラックにおける各セクタのAPC値を測定する。SSWコントローラ22は、さらに、各セクタのAPC値について分散を計算する。
【0082】
SSWコントローラ22は予め設定された基準範囲を有しており、この基準範囲と得られた分散とを比較する。分散が基準範囲内にあるとき、SSWコントローラ22は消磁状態に問題がない(良状態)と判定する。一方、分散が基準範囲外にある場合、SSWコントローラ22は消磁不良を判定する。なお、SSWコントローラ22は、複数のサーボ・ライト・トラックについて分散を算出し、それら複数の分散を使用して消磁状態の良否判定を行ってもよい。
【0083】
以上、3つの判定基準を説明したが、好ましくは、SSWコントローラ22は、これらの全ての基準について判定を行う。そして、そのうちの少なくとも一つの判定基準を満たさない場合、SSW22コントローラは、下地の磁化状態が不良であると判定する。なお、SSWコントローラ22は、3つの判定基準を全て使用することなく、一つもしくは二つの判定基準を使用してもよい。あるいは、SSWコントローラ22は、二つもしくは三つの判定基準が満足しない場合に、消磁状態を不良と判定してもよい。
【0084】
上述の説明においては、半径方向におけるAPC値の分散(複数サーボ・ライト・トラックにおけるAPCの分散)と、円周方向におけるAPC値の分散(1サーボ・トラック内にけるAPCの分散)とを別々に使用するが、これらを併せて使用することできる。つまり、SSWコントローラ22は、複数サーボ・ライト・トラックの各セクタのAPC値を測定し、その測定したAPC値の分散を算出する。この分散を使用して、消磁状態を不良と判定してもよい。なお、APC値のばらつきを表す値として、分散以外の関数を使用してもよい。
【0085】
以上、本発明を好ましい実施形態を例として説明したが、本発明が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。例えば、HDDの制御回路にサーボ・ライト制御機能を組み込むことも可能である。下地消磁状態の判定は、SSWに限らず、HDDの開発段階などにおいて、セルフ・イレーズする領域を決定するために使用してもよい。基準APCの再設定及び下地消磁状態の判定は、APCキャリブレーション内において行わなくともよく、別の独立シーケンスとして実行してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本実施形態において、HDA内の磁気ディスク記録面を外部磁界でイレーズする手法を模式的に示す図である。
【図2】本実施形態において、HDA及びHDAのサーボ・ライトを制御するサーボ・ライト制御装置の論理構成を模式的に示す図である。
【図3】本実施形態において、HDAの内部機構を模式的に示す図である。
【図4】本実施形態において、1サーボ・セクタのプロダクト・サーボ・パターンのデータ・フォーマットを示している。
【図5】本実施形態において、SSTWが記録面上に書き込むパターン及びその書き込み方法を模式的に示している。
【図6】本実施形態において、リード素子をターゲット位置に位置決めし、ライト素子でパターンを書き込む例を模式的に示している。
【図7】本実施形態において、ヘッド素子部によるセルフ・イレーズを行う内周側領域と、外部磁界によってイレーズを行う外周側領域を模式的に示す図である。
【図8】本実施形態において、内周側領域におけるイレーズ工程を含むサーボ・パターン書き込みシーケンスを模式的に示す図である。
【図9】本実施形態において、キャリブレーション・シーケンスを実行した直後のパターン書き込みにおけるトラック・ピッチ変化を模式的に示す図である。
【図10】本実施形態において、APCキャリブレーション・シーケンスにけるリード素子の移動方法を模式的に示している。
【符号の説明】
【0087】
1 ヘッド・ディスク・アセンブリ、2 サーボ・ライト制御装置、10 筐体
11 磁気ディスク、12 ヘッド・スライダ、13 プリアンプIC
14 スピンドル・モータ、15 ボイス・コイル・モータ、16 アクチュエータ
21 パターン生成器、22 SSWコントローラ
23 リード・ライト・インターフェース、24 VCMドライバ
25 DAコンバータ、26 ADコンバータ、27 振幅復調器
111 サーボ領域、112 データ領域、115 プロダクト・サーボ・パターン
116 タイミング・パターン、117 ラディアル・パターン、
118 リード素子のターゲット位置、119 ライト素子のターゲット位置
121 ライト素子、122 リード素子、162 アーム、165 回動軸、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半径方向における位置が異なるリード素子とライト素子とを有するヘッドを使用して、回転する磁気記録面にパターンを書き込む方法であって、
前記磁気記録面の第1の領域において、前記ライト素子が書き込んだ異なる半径位置のパターンを前記リード素子で読み出した値から算出される値が第1の基準に従うように、前記ライト素子が書き込んだパターンを前記リード素子で順次読み出して位置決めしながら前記ライト素子により新たなパターンを順次書き込み、
前記第1の領域と下地磁化状態が異なる第2領域において、前記ライト素子が書き込んだ異なる半径位置のパターンを前記リード素子で読み出した値から算出される値が前記第1の基準と異なる第2の基準に従うように、前記ライト素子が書き込んだパターンを前記リード素子で読み出して位置決めしながら前記ライト素子により新たなパターンを順次書き込む、方法。
【請求項2】
前記第1領域は前記ライト素子によってイレーズされ、前記第2領域は外部磁界によってイレーズされている、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2領域において、前記ライト素子によって半径位置の異なる複数のパターンを書き込み、その複数パターンを位置決めされた前記リード素子で読み出した値を使用して、前記第1の基準から前記第2の基準を算出する、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の領域内における前記算出される値に対する、前記第2の領域内における前記算出される値の変化量に基づいて下地磁化状態の良否判定を行う、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の領域において、同一の半径位置における複数の前記算出される値のばらつきに基づいて下地磁化状態の良否判定を行う、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の領域において、異なる半径位置における複数の前記算出される値のばらつきに基づいて下地磁化状態の良否判定を行う、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
半径方向における位置が異なるリード素子とライト素子とを有するヘッドを使用して、回転する磁気記録面にパターンを書き込む方法であって、
第1の領域において、前記ライト素子が書き込んだ異なる半径位置の複数パターンを、第1半径位置の前記リード素子で読み出し、その読み出した値を使用して算出される値と前記第1半径位置に対応する第1基準とに基づいてターゲットを決定し、
前記ライト素子が書き込んだパターンを前記リード素子で読み出して前記ターゲットに前記ヘッドを位置決めし、位置決めした状態において前記ライト素子により新たなパターンを書き込み、
第2の領域において、前記ライト素子が書き込んだ異なる半径位置の複数パターンを、第2半径位置の前記リード素子で読み出し、その読み出した値を使用して算出される値に基づいて前記第1基準から第2基準を算出し、その第2基準に従って新たなターゲットを決定し、
前記ライト素子が書き込んだパターンを前記リード素子で読み出して前記新たなターゲットに前記ヘッドを位置決めし、位置決めした状態において前記ライト素子により新たなパターンを書き込む、方法。
【請求項8】
前記第1の領域内における前記算出される値に対する、前記第2の領域内における前記算出される値の変化量に基づいてエラー判定を行う、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の領域において、同一の半径位置における複数の前記算出される値のばらつきに基づいてエラー判定する、
請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の領域において、異なる半径位置における複数の前記算出される値のばらつきに基づいてエラー判定する、
請求項7に記載の方法。
【請求項11】
磁気記録面における磁化消去状態を判定する方法であって、
前記ライト素子が書き込んだ異なる半径位置の複数パターンを位置決めされた前記リード素子で読み出し、その読み出した値を使用して第1比較値を算出し、
前記ライト素子が書き込んだ異なる半径位置の複数パターンを位置決めされた前記リード素子で読み出し、その読み出した値を使用して第2比較値を算出し、
前記第1比較値と第2比較値との間の差分に基づいて消去状態の良否を判定する、方法。
【請求項12】
異なる複数の半径位置のそれぞれにおいて、前記ライト素子が書き込んだ異なる半径位置の複数パターンを位置決めされた前記リード素子で読み出し、その読み出した値を使用して比較値を算出し、
前記複数の異なる半径位置における比較値のばらつきに基づいて消去状態の良否を判定する、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
同一半径位置における異なる複数の円周方向位置において、前記ライト素子が書き込んだ異なる半径位置の複数パターンを位置決めされた前記リード素子で読み出し、その読み出した値を使用して比較値を算出し、
算出した前記同一半径位置における複数の比較値のばらつきに基づいて消去状態の良否を判定する、
請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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