説明

パチンコ機

【課題】モータ等を必要とすることなく振分部材を作動させて遊技球を振り分けることができる上、所定条件の充足をもって遊技球を特定経路へと振り分けるといった遊技に対応することが可能な振分装置を備えたパチンコ機を提供する。
【解決手段】振分部材33を、その姿勢を多段階で周期的に変更可能に、且つ、振分装置30内へ進入してきた遊技球により振分部材33が押圧されることで一段階ずつ変更可能とした。そして、その姿勢の変更に伴い、第1阻止壁56又は第2阻止壁57が第1経路43と第2経路42との何れか一方の対応する経路への当該遊技球の進入を阻止し、開放している側の経路へと進入させる、すなわち遊技球を第1経路43と第2経路42との何れかに振り分けるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技領域へ遊技球を打ち込んで遊技するパチンコ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、遊技領域内における遊技球の流下経路を第1経路又は第2経路へ振り分ける振分装置を備えてなるパチンコ機が種々考案されている。そして、そのような振分装置としては、たとえば特許文献1や特許文献2に開示されているようなものがある。特許文献1に開示されている振分装置は、最も一般的な振分装置の1つであって、周面に複数の球受け部を備えた円柱状の振分部材をモータによって回転させており、遊技球を受け入れた球受け部の違いによって、当該遊技球を第1経路又は第2経路へ振り分けるように構成されている。また、特許文献2に開示されている振分装置は、分岐流路を備えているとともに、当該分岐流路の分岐点にモータにより揺動して第2経路を開閉する振分部材を設置している一方、分岐流路へ進入する遊技球をセンサでカウントしており、振分装置の分岐流路へ所定個数の遊技球が進入するまでは遊技球を第1経路へ流下させるとともに、所定個数に達すると振分部材を揺動させて第2経路を開放し、遊技球を第2経路へも流下可能とするように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−94325号公報
【特許文献2】特開2006−43216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている振分装置によれば、遊技球を振り分けるために振分部材を回転させるためのモータ等が必要になるため、装置の大型化がさけられず、設置スペースに問題が生じるし、部品点数が増えることによるコスト高となるという問題もある。また、遊技球がどの球受け部に受け入れられるか、すなわち第1経路又は第2経路の何れの経路へ振り分けられるかは偶然による(抽選していると見なすこともできる)ため、たとえば所定個数の遊技球が振分装置へ進入したという所定条件の充足をもって、遊技球を特定の経路へと振り分けるといった遊技に対応することができない。
【0005】
一方、特許文献2に開示されている振分装置によれば、所定条件の充足をもって遊技球を第2経路へと振り分けるといった遊技に対応することは可能である。しかしながら、特許文献1に開示されている振分装置と同様、振分部材をモータにより作動させているため、モータを要することによる装置の大型化や高コスト化といった問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、モータ等を必要とすることなく振分部材を作動させて遊技球を振り分けることができる上、所定条件の充足をもって遊技球を特定経路へと振り分けるといった遊技に対応することが可能な振分装置を備えたパチンコ機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、遊技盤の前面に形成された遊技領域を流下する遊技球が進入可能な進入口と、前記進入口よりも下方に設けられ、前記進入口から進入してきた遊技球を排出する2つの排出口と、前記進入口と両前記排出口との間に設けられ、前記進入口から進入してきた遊技球を、一方の前記排出口に連通する第1経路と他方の前記排出口に連通する第2経路との何れか一方に振り分ける振分部材とを備えた振分装置が設置されてなるパチンコ機であって、前記振分部材は、その姿勢を多段階で周期的に変更可能となっており、進入してきた遊技球に押圧されることによって、前記姿勢を一段階変更するとともに、前記多段階のうちの少なくとも1つの段階において、前記振分部材は遊技球を前記第1経路へ進めさせる第1姿勢をとり、残りの段階において前記第2経路へ進めさせる複数の第2姿勢をとることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記振分部材を所定方向へ回転可能に取り付けるとともに、付勢力によって前記振分部材の回転動作を規制する付勢部材を設けており、前記振分部材は、遊技球に押圧されることにより前記付勢部材の付勢力に抗して回転するとともに、前記遊技球が前記振分部材から離れて前記第1経路又は前記第2経路へ進むことにより前記付勢部材の付勢力で回転を停止することによって、前記姿勢を一段階変更する一方、前記振分部材に、前記第1経路側へ突出して前記第1経路への遊技球の進入を阻止する第1阻止部と、前記第2経路側へ突出して前記第2経路への遊技球の進入を阻止する第2阻止部とを設けており、前記第1姿勢は、前記第2阻止部が前記第2経路側へ突出する姿勢である一方、前記第2姿勢は、前記第1阻止部が前記第1経路側へ突出する姿勢であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、振分部材は、その姿勢を多段階で周期的に変更可能となっており、進入してきた遊技球に押圧されることによって、姿勢を一段階変更するとともに、多段階のうちの少なくとも1つの段階において、振分部材は遊技球を第1経路へ進めさせる第1姿勢をとり、残りの段階において第2経路へ進めさせる複数の第2姿勢をとるように構成している。したがって、従来の振分装置と比較してモータ等の駆動装置を必要とせず、部品点数の削減に伴う低コスト化、及び振分装置の小型化やモータの設置スペースが必要ないことによる設計自由度の向上等といった効果がある。また、第1経路又は第2経路の何れの経路へ振り分けられるかを抽選で決める等していないため、所定個数の遊技球が振分装置へ進入したという所定条件の充足をもって、再び遊技球を第1経路へと振り分けるといった遊技に対応することができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、振分部材を所定方向へ回転可能に取り付けるとともに、付勢力によって振分部材の回転動作を規制する付勢部材を設けており、振分部材は、遊技球に押圧されることにより付勢部材の付勢力に抗して回転するとともに、遊技球が振分部材から離れて第1経路又は第2経路へ進むことにより付勢部材の付勢力で回転を停止することによって、その姿勢を一段階変更するように構成している。さらに、振分部材に、第1経路側へ突出して第1経路への遊技球の進入を阻止する第1阻止部と、第2経路側へ突出して第2経路への遊技球の進入を阻止する第2阻止部とを設けており、第1姿勢を、第2阻止部が第2経路側へ突出する姿勢とする一方、第2姿勢を、第1阻止部が第1経路側へ突出する姿勢としている。したがって、複雑な構造を採用することなく、少ない部品点数による簡素な構造で確実に遊技球を振り分けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】パチンコ機を前面側から示した説明図である。
【図2】遊技盤を前面側から示した説明図である。
【図3】パチンコ機を後面側から示した説明図である。
【図4】振分装置を前方から示した説明図である。
【図5】振分装置の外観を示した斜視説明図である。
【図6】振分装置を分解して示した斜視説明図である。
【図7】振分装置の振分部材を拡大して示した斜視説明図である。
【図8】振分装置のA−A線断面説明図であり、振分部材が進入してきた遊技球を第1経路へ振り分ける回転姿勢にある状態を示している。
【図9】振分装置のA−A線断面説明図であり、振分部材が第2姿勢をとっている状態を示している。
【図10】振分装置のA−A線断面説明図であり、振分部材が図9に示す姿勢から一段階姿勢を変更し、第1姿勢をとった状態を示している。
【図11】振分装置のA−A線断面説明図であり、振分部材が図10に示す姿勢から一段階姿勢を変更し、第2姿勢をとった状態を示している。
【図12】振分装置のA−A線断面説明図であり、振分部材が図11に示す姿勢から一段階姿勢を変更し、第2姿勢をとった状態を示している。
【図13】振分装置のA−A線断面説明図であり、振分部材が図12に示す姿勢から一段階姿勢を変更し、第2姿勢をとった状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態となるパチンコ機について、図面にもとづき詳細に説明する。
【0011】
(パチンコ機の全体的な説明)
図1は、パチンコ機1を前面側から示した説明図である。また、図2は、遊技盤2を前面側から示した説明図である。さらに、図3は、パチンコ機1を後面側から示した説明図である。
パチンコ機1は、遊技盤2の前面に形成された遊技領域16内へ遊技球を打ち込み、遊技領域16内を流下させて遊技するものであって、遊技盤2は、支持体として機能する機枠3の前面上部に、金属製のフレーム部材であるミドル枠5を介して設置されている。また、遊技盤2の前方には、ガラス板を嵌め込み設置してなる前扉4が、左端縁を軸として片開き可能に機枠3に蝶着されており、該前扉4によって閉塞される遊技盤2の前方空間が遊技領域16とされている。
【0012】
当該遊技領域16は、遊技盤2の前面に円弧状に配設された外レール23及び内レール24等によって囲まれており、遊技領域16に左部における両レール23、24間が遊技球を遊技領域16内へ打ち込むための発射通路13とされている。また、遊技領域16の略中央には、「0」〜「9」の数字や絵柄等からなる図柄を表示するための図柄表示部6が設けられている。さらに、図柄表示部6を囲むように種々の電動役物を備えたセンター部材26が遊技盤2に設置されており、該センター部材26の左方には、後述する振分装置30と、遊技球が通過可能な2つのゲート部材19、20とが設けられている。加えて、遊技領域16には、一対の爪片を開閉動作可能に備えたチューリップ式電動役物17、開閉可能な扉部材を有する大入賞装置18や多数の遊技釘等が設置されている。
【0013】
また、機枠3の前面側であって上記遊技盤2の下方には、遊技球を発射装置10へ供給するための供給皿7、及び供給皿7から溢れた遊技球を貯留するための貯留皿8が取り付けられており、供給皿7は前扉4の開放に伴い、貯留皿8はミドル枠5の開放に伴い夫々機枠3に対して片開き可能となっている。さらに、貯留皿8の右側には、発射装置10を作動させるためのハンドル9が回動操作可能に設置されている。加えて、供給皿7の前方には、遊技者が任意に押し込み操作可能な押しボタン25が設けられている。
さらに、前扉4の上部には、効果音や各種メッセージ等を報音する一対のスピーカ14、14が設けられており、前扉4の側部には、パチンコ機1の遊技状態等に応じて点灯・点滅する複数のLEDを備えたランプ部材15、15が設けられている。
【0014】
一方、機枠3の後面側には、供給皿7へ貸球や賞品球として払い出される遊技球を貯留するための貯留タンク11、当該貯留タンク11と連結された払出装置12、払出装置12における払い出し動作を制御する払出制御装置28、及び各制御基板や装置・部材に電源電圧を供給するための電源装置29等が設置されている。また、21は、合成樹脂製のカバー状に形成されたセンターカバーであって、当該センターカバー21の内部には、図柄表示部6に図柄を表示させるための液晶表示装置、遊技に係る主たる制御(たとえば、所謂「大当たり抽選」等)を実行するためのメイン制御装置(図示せず)、図柄表示部6における表示動作等を制御する表示制御装置(図示せず)、ランプ部材15の点灯/点滅動作等を制御する発光制御装置(図示せず)、スピーカ14からの報音動作を制御する音制御装置(図示せず)、及び表示制御装置や発光制御装置等の動作を統合的に制御するとともに、センター部材26に設けられた電動役物の作動を制御するサブ制御装置(図示せず)等が設置されている。尚、22は、パチンコ機1をトランスに接続するためのプラグであり、27は、アースである。
【0015】
以上のようなパチンコ機1では、遊技者によってハンドル9が回動操作されると、発射装置10が作動して遊技球が遊技領域16内へ打ち込まれる。そして、遊技領域16内を流下する遊技球がチューリップ式電動役物17へ入賞すると、メイン制御装置にて「大当たり抽選」を行う。該「大当たり抽選」は、乱数から1つの数値を取得する態様で行われ、取得した数値に応じて「大当たり」であるか「外れ」であるかを決定する。該「大当たり抽選」の結果、「大当たり」である場合には、図柄表示部6において所定の変動時間だけ図柄を変動表示させた後、所定の「大当たり図柄」(たとえば、「7、7、7」等)を確定表示させる。さらに確定表示後、大入賞装置18の扉部材を所定回数にわたって断続的に開成させるといった所謂「大当たり状態」を生起させる。
【0016】
また、遊技領域16内を流下する遊技球が振分装置30に進入すると、該遊技球は振分装置30内で後述するように6個の遊技球うち5個の遊技球は左側の排出口31へ、1個の遊技球は右側の排出口32へ(図4に示す)夫々振り分けられて排出される。そして、左側の排出口31から排出された遊技球は、その下方に設置されているゲート部材19を、右側の排出口32から排出された遊技球は、その下方に設置されているゲート部材20を夫々通過する。一方、メイン制御装置では、遊技球のゲート部材19、20の通過を検出すると、乱数から1つの数値を取得し、取得した数値に応じて「当たり」であるか「外れ」であるかを決定する「当たり抽選」を実行する。そして、「当たり抽選」の結果、「当たり」である場合には、チューリップ式電動役物17に備えられた一対の翼片を所定時間(たとえば2秒間)にわたって開動作させ、チューリップ式電動役物17へ遊技球が入賞しやすい状態とする。尚、上記「当たり抽選」において「当たり」となる確率は、ゲート部材19、20毎に設定されており、ゲート部材19を通過した場合には1/20の確率で「当たり」となる一方、ゲート部材20を通過した場合には1/4の確率で「当たり」となるように夫々設定されている。
【0017】
(振分装置の構造)
ここで、本発明の要部となる振分装置30について、まず振分装置30の構造を図4〜図7にもとづき詳細に説明する。
図4は、振分装置30を前方から示した説明図であり、図5は、振分装置30の外観を示した斜視説明図である。図6は、振分装置30を分解して示した斜視説明図であり、図7は、振分装置30の振分部材33を拡大して示した斜視説明図である。
【0018】
振分装置30は、進入口34を介して本体ケース35内部へ進入した遊技球を振分部材33によって振り分け、左側の排出口31又は右側の排出口32の何れか一方から排出する装置であって、前ケース35a及び後ケース35bからなる本体ケース35と、振分部材33を有して本体ケース35内に収納される振分部36と、遊技球を検出する3つのセンサ37、38、39とからなる。後ケース35bは、前面に開口する箱状体であって、前面開口の開口縁には、振分装置30を遊技盤2に固定するための取付部40が鍔状に設けられている。また、後ケース35bの上部は、振分部36を収納可能な収納部41とされており、該収納部41の下端前縁から連続して下方へ第1経路43及び第2経路42が八の字状に設けられている。さらに、後ケース35bの上面には、進入口34を介して本体ケース35内部へ進入する遊技球を検出するためのセンサ37の後部を保持するセンサ保持部44が設けられている一方、第1経路43及び第2経路42の下流端の更に下方となる位置には、第1経路43又は第2経路42を介して左側の排出口31又は右側の排出口32から排出される遊技球を検出するためのセンサ38、39の後部を保持するセンサ保持部45、45が夫々設けられている。
【0019】
また、前ケース35aは、後ケース35bの前面に組み付けられるカバー部材であって、前ケース35aの上面で、後ケース35bに組み付けた際にセンサ保持部44の前方となる位置には進入口34が開設されているとともに、前ケース35aの後面で進入口34の下方には、センサ37の前部が嵌入する保持凹部47(図8に示す)が設けられている。さらに、前ケース35aの下面で、後ケース35bに組み付けた際にセンサ保持部45、45の前方となる位置には左側の排出口31及び右側の排出口32が開設されているとともに、前ケース35aの後面で各排出口31、32の上方には、振分部36で第1経路43又は第2経路42へ振り分けられた遊技球を左側の排出口31又は右側の排出口32へ導くための排出路48、及びセンサ38、39の前部が嵌入する保持凹部(図示せず)が設けられている。
【0020】
一方、振分部36は、振分部材33と、振分部材33を回転させるための軸49と、第1経路43側と第2経路42側とに仕切る仕切り板50と、振分部材33の回転動作を規制するバネ部材51と、左右一対のケース体からなるケース部材52とからなる。ケース部材52は、軸49を回転可能に軸支するとともに振分部材33やバネ部材51を内蔵するものであって、その側面内側には軸49を軸支するための軸支部54が、後面内側にはバネ部材51を支持するバネ支持部55が夫々設けられている。また、ケース部材52の前面内側の上部には、収納部41へ収納した際に進入口34と連通し、進入口34を介して進入した遊技球を振分部材33へ導くための誘導路46が設けられている。さらに、ケース部材52の下面は開口しており、収納部41へ収納すると当該開口が第1経路43及び第2経路42と連通するようになっている。
【0021】
バネ部材51は、前後方向へ長い帯状の板バネであって、後端をバネ支持部55に支持させ、前端を後述する振分部材33の凹状面内に当接させた状態でケース部材52内に取り付けられている。尚、バネ部材51の付勢力は、遊技球の重力よりは弱い力とされている。
仕切り板50は、ケース部材52の下面開口を左右で第1経路43側と第2経路42側とに仕切る板状部材であって、振分部材33の下方に隣接して取り付けられており、振分部36を収納部41に収納すると、仕切り板50によって仕切られた下面の開口の左側は第2経路42に、右側は第1経路43に夫々連通するようになっている。
【0022】
振分部材33は、各側面(周面)が夫々凹状面に形成された正六角柱体であって、中心線に沿って軸49を挿通可能な軸孔54が穿設されている。また、振分部材33の軸方向で一方側の端縁には、第1阻止壁56が6つの側面のうち5つの側面にわたって(中心角度300度の範囲で)鍔状に設けられている。さらに、振分部材33の他方側であって、第1阻止壁56が唯一設けられていない側面における端縁には、第2阻止壁57が鍔状に設けられている。そして、振分部材33は、軸孔54へ軸49を挿通させた状態で、ケース部材52内において左右方向を軸として回転可能に設置されており、上記バネ部材51の押圧力によって、6つの側面のうちの何れかを誘導路46の下流端に対向させた姿勢で停止している。また、第1阻止壁56又は第2阻止壁57の何れか一方が、仕切り板50によって仕切られた下面開口の対応する側の開口内へ入り込むことで、第1経路43又は第2経路42の対応する側へしか遊技球を進入させない(第1阻止壁56又は第2阻止壁57が入り込んだ側の開口への遊技球の進入を阻止する)ようになっている。
【0023】
(振分装置の作用)
次に、以上のような構成を有する振分装置30の作用、すなわち遊技球の振分動作について、図8〜図13をもとに説明する。図8〜図13は、それぞれ振分部材33の回転姿勢が異なる状態を示した断面説明図である。
まず図8に示すように、振分部材33が、第2阻止壁57を有する凹状面が誘導路46の下流端に対向するような姿勢で停止していたとする。当該状態にある振分装置30に対し、遊技領域16を流下する遊技球が進入口34から振分装置30内部へ進入すると、当該遊技球は誘導路46により導かれた後、誘導路46の下流端から放出される。そして、放出された遊技球は、振分部材33の凹状面(ここでは、第2阻止壁57を有する凹状面)に衝突して凹状面で受け止められた後、重力によって振分部材33を下方へ押圧する。すると、振分部材33は、バネ部材51の付勢力に抗して回転し、凹状面で受け止めている遊技球を下面開口側へ移動させる。このとき、振分部材33の回転に伴い第2阻止壁57が第2経路42と連通する側の開口内へ入り込み、振分部材33が、第2経路42への遊技球の進入を阻止するとともに第1経路43への遊技球の進入を許容する第1姿勢をとるため、遊技球は第1経路43と連通する側の開口から排出される。したがって、遊技球は第1経路43及び第1経路43と連通する排出路48を介して、右側の排出口32から振分装置30外部へと排出される。そして、右側の排出口32の下方に設置されたゲート部材20を通過する。一方、振分部材33は、遊技球が凹状面から離れるに伴い、バネ部材51の付勢力によって上記排出時の姿勢、すなわち第2阻止壁57を有する凹状面の回転方向で後隣にある第1阻止壁56を有する凹状面を誘導路46の下流端に対向させた姿勢(図9に示す姿勢)で停止する。
【0024】
その後、振分部材33が図9に示すような姿勢にある振分装置30に対して、遊技球が進入すると、誘導路46の下流端から放出された遊技球は、上記同様に誘導路46の下流端に対向する凹状面で受け止められた後、重力によって振分部材33を下方へ押圧する。すると、振分部材33は、上記同様にバネ部材51の付勢力に抗して回転し、凹状面で受け止めている遊技球を下面開口側へ移動させる。しかしながら、今回は、回転に伴って第1阻止壁56が第1経路43と連通する側の開口内へ入り込み、振分部材33が、第1経路43への遊技球の進入を阻止するとともに第2経路42への遊技球の進入を許容する第2姿勢をとるため、遊技球は第2経路42と連通する側の開口から排出される。したがって、第2経路42及び第2経路42と連通する排出路48を介して、左側の排出口31から振分装置30外部へと排出される。そして、左側の排出口31の下方に設置されたゲート部材19を通過する。一方、振分部材33は、遊技球が凹状面から離れるに伴い、バネ部材51の付勢力によって上記排出時の姿勢、今度は上記凹状面の回転方向で後隣にある第1阻止壁56を有する凹状面を誘導路46の下流端に対向させた姿勢(図10に示す姿勢)で停止する。
【0025】
以降、振分装置30では、遊技球が進入する度に、図10〜図13に示す如く振分部材33が遊技球による押圧及びバネ部材51の付勢力によって上記同様段階的に回転し、振分部材33が一回転して図8に示す姿勢に復帰するまで4個の遊技球を連続して第2経路42へと振り分け(第1経路43へと振り分けた後からカウントすると、合計5個の遊技球を連続して第2経路42へと振り分け)、左側の排出口31から排出させる。そして、振分部材33が図8に示す姿勢へと復帰すると、次に進入してきた遊技球を再び第1経路43へと振り分け、更にその後は、進入する遊技球を5個まで連続して再び第2経路42へと振り分けるといった動作を周期的に繰り返す。すなわち、振分部材33は、自身の回転姿勢を多段階で周期的に変更可能となっており、遊技球が進入してくる度に回転姿勢を一段階ずつ変更するようになっている。そして、複数ある回転姿勢のうちの1つの姿勢が第1経路43への遊技球の進入のみを許容する第1姿勢(図9に示す姿勢)であり、他の姿勢が第2経路42への遊技球の進入のみを許容する第2姿勢(図8、及び図10〜図13に示す姿勢)となっている。
【0026】
(本実施形態のパチンコ機による効果)
以上のようなパチンコ機1によれば、振分部材33が、その姿勢を多段階で周期的に変更可能に、且つ、振分装置30内へ進入してきた遊技球により振分部材33が押圧されることで一段階ずつ変更可能となっている。そして、その姿勢の変更に伴い、第1阻止壁56又は第2阻止壁57が第1経路43と第2経路42との何れか一方の対応する経路への当該遊技球の進入を阻止し、開放している側の経路へと進入させる、すなわち遊技球を第1経路43と第2経路42との何れかに振り分けるように構成している。したがって、従来の振分装置と比較してモータ等の駆動装置を必要とせず、部品点数の削減に伴う低コスト化、及び振分装置30の小型化やモータの設置スペースが必要ないことによる設計自由度の向上等といった効果がある。
【0027】
また、振分装置30では、遊技球を第1経路43へと振り分けた後、遊技球が5個進入するまで、遊技球を連続して第2経路42へと振り分けるように構成されている。したがって、第1経路又は第2経路の何れの経路へ振り分けられるかを抽選で決めたり偶然によらせたりしていないため、所定個数(ここでは5個)の遊技球が振分装置30へ進入したという所定条件の充足をもって、再び遊技球を第1経路へと振り分けるといった遊技に対応することができる。
【0028】
さらに、振分部材33を回転可能に軸支するとともに、付勢力によって振分部材33の回転動作を規制するバネ部材51を設けており、振分部材33は、遊技球に押圧されることによりバネ部材51の付勢力に抗して回転するとともに、遊技球が振分部材33から離れて第1経路43又は第2経路42へ進むことによりバネ部材51の付勢力で回転を停止することによって、その姿勢を一段階変更するように構成している。また、振分部材33に、第1経路43側へ突出して第1経路43への遊技球の進入を阻止する第1阻止壁56と、第2経路42側へ突出して第2経路42への遊技球の進入を阻止する第2阻止壁57とを夫々鍔状に備えており、回転して姿勢を変更した際に、どちらの阻止壁56、57が対応する経路42、43側へ突出して遊技球の進入を阻止する位置にあるかの違いによって遊技球の振分を可能としている。したがって、複雑な構造を採用することなく、少ない部品点数による簡素な構造で確実に遊技球を振り分けることができる。
【0029】
(本発明の変更例)
なお、本発明のパチンコ機に係る構成は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、パチンコ機全体の構成、振分装置の構造や振分装置の下方にどのような部材を設けるのか等について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で必要に応じて適宜変更可能である。
【0030】
たとえば、上記実施形態では、6個のうち1個の遊技球を第1経路43へ、他の5個の遊技球を第2経路42へ夫々振り分けるように構成しているが、第1阻止壁56及び第2阻止壁57の設置位置等を変更することにより、6個のうち所定の2個の遊技球を第1経路43へ、他の4個の遊技球を第2経路42へ夫々振り分けるような構成とすることも可能である。また、言うまでもなく4個のうち1個の遊技球を第1経路43へ、他の3個の遊技球を第2経路42へ夫々振り分けるように構成することも可能であり、遊技球の振分パターンについては適宜変更可能であるし、振分部材33の形状についても振分パターン等に応じて適宜設計変更可能である。
【0031】
また、遊技球が振分部材33から離れた後に振分部材33の回転を停止させるためのバネ部材51として、上記実施形態では先端が振分部材33の周面に当接する板バネを採用しているが、軸49に嵌装させたコイルバネ等、他のバネ部材を採用することも可能である。
さらに、上記実施形態では、振分部材33の軸方向で両端に鍔状に設けた第1阻止壁56及び第2阻止壁57を第1阻止部及び第2阻止部としているが、鍔状の各阻止壁56、57に代えて、各凹状面の端部から棒状の突起を放射状に配設して第1阻止部及び第2阻止部としてもよいし、第1経路43や第2経路42に連通する開口内へ進入して遊技球の進入を阻止するのではなく、第1経路43や第2経路42の入口を被覆することにより各経路42、43への遊技球の進入を阻止するように第1阻止部及び第2阻止部を構成することも可能である。
【0032】
さらにまた、上記実施形態では、振分装置30の各排出口31、32の下方に夫々ゲート部材19、20を設けているが、ゲート部材の代わりに入賞装置を設けることも可能である。そして、該入賞装置への入賞に伴い「大当たり抽選」を行うようにし、左側の入賞装置へ入賞した(左側の排出口31から排出された)場合よりも、右側の入賞装置へ入賞した(右側の排出口32から排出された)場合の方が「大当たり」となる確率が高くなっているようなパチンコ機としても何ら問題はない。
またさらに、振分装置30の遊技領域16内での設置位置についても適宜変更可能であって、センター部材26の下方に、チューリップ式電動役物17に代えて振分装置30及び2つの入賞装置を設けてもよい。
加えて、進入口34へ流入する遊技球をセンサ37で検出すると、振動検出センサをONとし、パチンコ機に対して衝撃を加える等の不正行為が行われていないかを検出するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0033】
1・・パチンコ機、2・・遊技盤、16・・遊技領域、30・・振分装置、31・・左側の排出口、32・・右側の排出口、33・振分部材、34・・進入口、35・・本体ケース、36・・振分部、37、38、39・・センサ、42・・第2経路、43・・第1経路、46・・誘導路、48・・排出路、49・・軸、50・・仕切り板、51・・バネ部材(付勢部材)、52・・ケース部材、54・・軸孔、55・・バネ支持部、56・・第1阻止壁(第1阻止部)、57・・第2阻止壁(第2阻止部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技盤の前面に形成された遊技領域を流下する遊技球が進入可能な進入口と、前記進入口よりも下方に設けられ、前記進入口から進入してきた遊技球を排出する2つの排出口と、前記進入口と両前記排出口との間に設けられ、前記進入口から進入してきた遊技球を、一方の前記排出口に連通する第1経路と他方の前記排出口に連通する第2経路との何れか一方に振り分ける振分部材とを備えた振分装置が設置されてなるパチンコ機であって、
前記振分部材は、その姿勢を多段階で周期的に変更可能となっており、進入してきた遊技球に押圧されることによって、前記姿勢を一段階変更するとともに、
前記多段階のうちの少なくとも1つの段階において、前記振分部材は遊技球を前記第1経路へ進めさせる第1姿勢をとり、残りの段階において前記第2経路へ進めさせる複数の第2姿勢をとることを特徴とするパチンコ機。
【請求項2】
前記振分部材を所定方向へ回転可能に取り付けるとともに、付勢力によって前記振分部材の回転動作を規制する付勢部材を設けており、
前記振分部材は、遊技球に押圧されることにより前記付勢部材の付勢力に抗して回転するとともに、前記遊技球が前記振分部材から離れて前記第1経路又は前記第2経路へ進むことにより前記付勢部材の付勢力で回転を停止することによって、前記姿勢を一段階変更する一方、
前記振分部材に、前記第1経路側へ突出して前記第1経路への遊技球の進入を阻止する第1阻止部と、前記第2経路側へ突出して前記第2経路への遊技球の進入を阻止する第2阻止部とを設けており、
前記第1姿勢は、前記第2阻止部が前記第2経路側へ突出する姿勢である一方、前記第2姿勢は、前記第1阻止部が前記第1経路側へ突出する姿勢であることを特徴とする請求項1に記載のパチンコ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−81544(P2013−81544A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222199(P2011−222199)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000241234)豊丸産業株式会社 (428)
【Fターム(参考)】