説明

パチンコ遊技機

【課題】球戻り防止装置を有効に活用して、糸付き遊技球を利用した不正行為を防止するようにしたパチンコ遊技機を提供する。
【解決手段】球戻り防止装置100の傾動部材120が、上側傾動部120aにて、内レール21の上側先端部12aよりも外レール22側に傾動した左側傾動位置にあるとき、下側傾動部120bを内レール21の上側先端部よりも外レール22とは反対側に位置させ、また、上側傾動部120bにて、内レール21の上側先端部よりも外レール22とは反対側に傾動した右側傾動位置にあるとき、下側傾動部120bをその下端部にて内レール21の上側先端部よりも外レール22側へ突出させるようになっている。ここで、傾動部材120が右側傾動位置にあるとき下側傾動部120bの下端部とこれに対する外レール22の対応部との間の間隔が遊技球の外径よりも狭くなるように、下側傾動部の長さが設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ遊技機に係り、特に、球戻り防止装置を備えるパチンコ遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のパチンコ遊技機においては、下記特許文献に記載のパチンコ遊技機が提案されている。当該パチンコ遊技機は、球戻り防止装置を備えており、この球戻り防止装置は、当該パチンコ遊技機の遊技盤の盤面にその外周部に沿い設けたガイドレールのうち内レールの先端部に支持されている。
【0003】
当該球戻り防止装置は、内レールの先端部に取り付けてなる本体部材と、この本体部材の外レール側面に回動自在に支持軸により枢支してなるゲート部材と、このゲート部材と一体的な錘部材とを備えている。
【0004】
ここで、ゲート部材は、その下端部にて、支持軸により遊技盤の盤面の左右方向に傾動可能に支持されている。また、錘部材は、ゲート部材の下端部から外レールとは逆の方向に下方に向け傾斜状に延出している。
【0005】
しかして、このように構成した球戻り防止装置は、外レールと内レールとの間から遊技盤の遊技領域内に向かう遊技球により、錘部材の自重に抗してゲート部材を原位置から外レールとは逆の方向へゲート部材を支持軸の軸周りに傾動させて、上記遊技球を遊技盤の遊技領域内に転動させた後、ゲート部材を錘部材の自重により原位置に復帰させて、上記を再び外レールと内レールとの間へは戻さないように動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−201229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、当該パチンコ遊技機においては、遊技球に糸の一端側を固着した糸付き遊技球を発射して遊技領域内に転動させて、糸付き遊技球をその糸の他端でもって遊技領域内において操作することで、例えば、不正に賞球を獲得するというような不正行為が遊技者によって行われることがある。
【0008】
このため、近年、上述の不正行為を防止すべく、対策を講じることが要請されている。
【0009】
そこで、本発明は、このような要請に鑑み、球戻り防止装置を有効に活用して、糸付き遊技球を利用した不正行為を防止するようにしたパチンコ遊技機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題の解決にあたり、本発明に係るパチンコ遊技機は、請求項1の記載によれば、
遊技盤(10)と、
この遊技盤の盤面(11)に立設する外レール(22)と、この外レールの内側にて遊技盤の盤面に外レールに対し所定間隔をおくように設けられて外レールの少なくとも一部との間にて遊技球を案内する球案内通路を形成する内レール(21)と、内レールの上側先端部或いはその近傍にて遊技盤の盤面に設けられる装置本体(110)と、傾動部材(120)とを有する球戻り防止装置(100)とを備える。
【0011】
当該球戻り防止装置において、傾動部材は、
装置本体に遊技盤の盤面に対し直角となるように回動自在に支持される軸状回動部材(120c)と、
この軸状回動部材から上記球案内通路による上記遊技球の案内方向に延出する上側傾動部(120a)と、
軸状回動部材を基準として上記案内方向とは反対方向へ延出する下側傾動部(120b)とを具備して、
傾動部材が、上記上側傾動部にて、内レールの上記上側先端部よりも外レール側に傾動した第1傾動位置にあるとき、上記下側傾動部を内レールの上記上側先端部よりも外レールとは反対側に位置させ、また、上記上側傾動部にて、内レールの上記上側先端部よりも外レールとは反対側に傾動した第2傾動位置にあるとき、上記下側傾動部を、その上記案内方向とは反対方向の端部にて、内レールの上記上側先端部よりも外レール側へ突出させるようになっている。
【0012】
これによれば、傾動部材が第1傾動位置にあるとき、上側傾動部は、内レールの上記上側先端部(詳細には、当該上側先端部の外レール側の面)よりも外レール側に傾動しており、また、下側傾動部が内レールの上側先端部(詳細には、当該上側先端部の外レール側の面)よりも外レールとは反対側に位置している。このため、上側傾動部が軸状回動部材から球案内通路内へ傾斜しており、また、下側傾動部が、球案内通路から外レールの反対側へ外れて位置している。
【0013】
このような状態において、遊技球が先行遊技球として球案内通路内に発射されると、当該先行遊技球は、球案内通路を通り上側傾動部と衝突して当該上側傾動部を上方へ押し上げるようにして傾動部材を第2傾動位置に向けて傾動させつつ、外レール及び内レールの内側にて遊技盤の盤面に形成される遊技領域内に球案内通路から案内される。
【0014】
このように先行遊技球が遊技領域内に案内された後には、傾動部材は、下側傾動部の自重のもとに、第1傾動位置に傾動する。このため、上側傾動部が、内レールの上側先端部よりも外レール側に傾動し、また、下側傾動部が内レールの上側先端部よりも外レールとは反対側へ傾動する。
【0015】
このような傾動部材の第1傾動位置において、遊技者が、不正行為を行う目的で、糸付き遊技球を、先行遊技球に後続する後続遊技球として、球案内通路内に発射すると、当該糸付き遊技球は、その糸を付随させながら、球案内通路内に沿い案内されて、上側傾動部を押し上げつつ遊技領域内に案内される。このとき、傾動部材は第2傾動位置に傾動される。
【0016】
上述のように糸付き遊技球が遊技領域内に案内されると、糸付き遊技球の糸は、内レールの外レール側の面並びに上側傾動部の外レール側の面に沿い引き出されて上側傾動部の先端部から遊技領域内にて遊技盤の盤面に沿い下方へ移動していく。
【0017】
その結果、糸が、傾動部材の第2傾動位置にて、下側傾動部の自重に抗して、傾動部材をその第2傾動位置に強制的に保持することとなる。
【0018】
このため、当該糸付き遊技球に続いて、遊技球が、順次、球案内通路内に案内されて、少なくとも内レールの外レール側の面に沿い傾動部材側に向けて移動する場合には、当該各遊技球は、上述のごとく内レールよりも外レール側へ突出している下側傾動部の上記案内方向とは反対方向の端部に衝突して、遊技領域内には進入することができない。
【0019】
以上によれば、糸付き遊技球が遊技領域内に案内されることで、当該糸付き遊技球を利用した不正行為が可能であったとしても、当該糸付き遊技球に順次後続して球案内通路内に案内される各遊技球のうち内レールの外レール側の面に沿う遊技球は、下側傾動部の上記案内方向とは反対方向の端部との衝突により、遊技領域内への進入を阻止される。
【0020】
このように、糸付き遊技球による不正行為を許容して、当該糸付き遊技球がその遊技球にて入賞(例えば、スタートチャッカーへの入賞)することがあっても、その後の各後続遊技球による遊技を阻止することで、遊技者が糸付き遊技球を利用した不正行為によっては、各後続遊技球を入賞させることができない。その結果、糸付き遊技球に後続する各遊技球を入賞させて賞球を不正に獲得することができない。このことは、糸付き遊技球を利用した不正行為が最小限に抑制されることを意味する。
【0021】
また、本発明係るパチンコ遊技機は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載のパチンコ遊技機において、傾動部材が上記第2傾動位置にあるとき上記下側傾動部の上記案内方向とは反対方向の端部とこれに対する外レールの対応部との間の間隔が遊技球の外径よりも狭くなるように、上記下側傾動部の長さが設定されていることを特徴とする。
【0022】
これにより、球案内通路内に後続遊技球として発射された遊技球が、内レールの外レール側の面に沿い移動する場合に限らず、外レールの内レール側の面に沿い移動する場合にも、第2傾動位置にある傾動部材の下側傾動部の上記案内方向とは反対方向の端部とこれに対する外レールの対応部位との間の間隔が遊技球の外径よりも狭いため、当該遊技球は、上述と同様に、下側傾動部の上記案内方向とは反対方向の端部に衝突して、遊技領域内には進入することができない。その結果、請求項1に記載の作用効果がより一層向上され得る。
【発明の効果】
【0023】
球戻り防止装置の傾動部材が、その上側傾動部にて、内レールの上側先端部よりも外レール側に位置する状態にて、糸付き遊技球が、球案内通路を通り上側傾動部を押し上げて遊技領域内に案内されても、糸が、遊技領域内にて下方へ移動する糸付き遊技球により引っ張られて、傾動部材を下側傾動部にて内レールよりも外レール側に突出させて保持するため、その後に球案内通路内に発射される遊技球のうち少なくとも内レールの外レール側の面に沿い移動する遊技球は、下側傾動部の上記案内方向とは反対方向の端部に衝突して遊技領域内への進入を阻止され得る。このため、糸付き遊技球を不正に利用したその後の遊技球による遊技球の獲得のための入賞が防止され得る。
【0024】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明が適用されるパチンコ遊技機の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】上記実施形態における遊技盤の正面図である。
【図3】図2におけるパチンコ遊技機の要部の拡大図である。
【図4】図3の球戻り防止装置の拡大斜視図である。
【図5】図3の球戻り防止装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態を図面により説明する。
【0027】
図1に示すパチンコ遊技機は、パチンコホール内の島に立設されるもので、このパチンコ遊技機は、機枠Fと、前後方向へ開閉可能に機枠Fによって支持される遊技機本体Bと、前枠FD1の中空部に窓ガラス(ガラス板)FD2を嵌め込んで構成された前扉FDとにより構成されている。
【0028】
なお、本実施形態において、図1にて図示上下方向が、それぞれ、当該パチンコ遊技機の上下方向に対応し、また、図1にて紙面の手前及び奥側が、それぞれ、当該パチンコ遊技機の前側及び後側に対応する。また、図1において、図示左斜め下方及び図示右斜め上方が、それぞれ、当該パチンコ遊技機の左方向及び右方向に対応する。
【0029】
遊技機本体Bは、図2に示すごとく、遊技盤10を備えており、この遊技盤10は、遊技機本体Bの枠体(図示しない)に嵌装されている。なお、遊技機本体Bは、その上記枠体にて、機枠Fによって前後方向へ回動可能に支持されている。
【0030】
また、当該遊技機本体Bは、案内レール20、環状のセンター飾り30及び多数の遊技釘(図示しない。)からなる遊技釘群を備えている。案内レール20は、図2にて示すごとく、内レール21と、外レール22とにより構成されており、内レール21は、外レール22の内周側に位置するように、当該外レール22とともに、遊技盤10の盤面11にその外周部に沿い配設されている。
【0031】
ここで、外レール22は、図2にて示すごとく、その長手方向にて、遊技盤10の盤面11にその外周部に沿い右斜め上側から盤面11の左側下端部にかけて、左斜め上側へ凸な円弧形状にて配設されており、この外レール22は、その幅方向にて、盤面11から前方へ立設するように延出されている。
【0032】
また、内レール21は、その長手方向にて、外レール22に沿いその内側にて遊技盤10の盤面11に沿い外レール22に対し所定レール間隔(遊技球の外径よりも広い間隔)をおくように、盤面11の左上側部位から当該盤面11の左右方向下縁中央部位にかけて、左斜め下方に向け凸な円弧形状でもって配設されており、当該内レール21は、その幅方向にて、遊技盤10の盤面11から前方へ延出されている。
【0033】
しかして、このように構成された案内レール20によれば、外レール22及び内レール22は、図2にて示すごとく、その内側において、遊技盤10の盤面11上に遊技領域11aを形成する。また、内レール21及び外レール22は、図2にて示すごとく、上述のように互いに所定レール間隔をおくように配設されることで、その間において、遊技盤10の盤面11上に球案内通路11bを形成する。これに伴い、球案内通路11bは、上記所定レール間隔に相当する幅を有する。
【0034】
本実施形態では、当該球案内通路11bは、ハンドルH(図1参照)の回動操作により、球発射装置(図示しない。)から内レール21及び外レール22の間に発射される遊技球を、遊技領域11a内へ案内する役割を果たす。なお、上記球発射装置は、遊技機本体Bの上記枠体の右下部に配設されている。また、ハンドルHは、上記球発射装置の一構成部品として前扉FDの右下部にその前面側から設けられている。
【0035】
センター飾り30は、図2に示すように、遊技盤10の中央開口部の外周部に盤面11側から組み付けられている。遊技釘群の各遊技釘は、案内レール20の内側において、センター飾り30の左側から下側にかけて、遊技盤10にその盤面11側から分散して打ち込まれている。
【0036】
また、球通路11cが、センター飾り30の右上側部と外レール22との間にて、遊技領域11aの一部に形成されている。しかして、上記球発射装置により最大の発射速度で発射される遊技球は、球案内通路11bにより案内されて外レール22の上側内周面に沿って移動し球通路11cへと案内されると、この遊技球は、球通路11cを通過した後、センター飾り30の右下方へと落下していく。
【0037】
また、当該遊技機本体Bは、画像表示器50を備えており、この画像表示器50は、その液晶パネル51にて、遊技盤10の中央部に設けた開口部から前方を臨むように、遊技盤10の裏面に配設されて、表示制御回路(図示しない。)による制御のもとに、種々の画像の表示を行う。
【0038】
また、当該遊技機本体Bは、第1始動口装置であるスタートチャッカー60a、第2始動口装置である電動チューリップ60b、スルーゲート70、複数の普通入賞口80及び大入賞口装置であるアタッカー90を備えており、これらスタートチャッカー60a、電動チューリップ60b、スルーゲート70、複数の普通入賞口80及びアタッカー90は、図2にて示すごとく、遊技盤10の盤面11に遊技領域11a内にて分散して組み付けられている。
【0039】
ここで、スタートチャッカー60aは、センター飾り30の中央部の直下にて遊技盤10の盤面11に組み付けられており、このスタートチャッカー60aは、当該スタートチャッカー60aへの遊技球の入賞に基づき大当たり抽選(大当たりか否かの抽選)の機会を形成する。
【0040】
電動チューリップ60bは、スタートチャッカー60aの直下にて遊技盤10のその盤面11側から組み付けられており、この電動チューリップ60bは、その両羽根部材(図示しない)による開口時に遊技球を当該電動チューリップ60bに入賞し易くすると共に、上記スタートチャッカー60aと同様、遊技球の入賞に基づき大当たり抽選の機会を形成する。
【0041】
スルーゲート70は、図2にて示すごとく、遊技盤10の中央開口部の右下隅角部の右側斜め下方にて、遊技盤10にその盤面11側から組み付けられている。
【0042】
しかして、遊技球が球通路11cを通り遊技盤10の盤面11に沿い下方へ転動してスルーゲート70を通過すると、当該スルーゲート70に対する遊技球の通過が検出されて、電動チューリップ60bを開口するか否かの抽選の機会が形成される。
【0043】
複数の普通入賞口80は、内レール21の内周側に位置するように遊技盤10の盤面11の左側下部に組み付けられている。しかして、遊技盤10の盤面11に沿い下方へ向け転動する遊技球が各普通入賞口80に入賞すると、各普通入賞口80に対する遊技球の入賞が検出されて、上述のような抽選の機会を与えることなく、遊技球の所定個数の払い出しの機会が形成される。
【0044】
アタッカー90は、スタートチャッカー60a及び電動チューリップ60bとスルーゲート70との間において、遊技盤10にその盤面11側から組み付けられている。しかして、当該アタッカー90は、上述した大当たり抽選の結果、大当たりのとき、開閉動作を繰り返して、球通路11cから遊技盤10の盤面11に沿い下方へ順次転動していく多数の遊技球に対し入賞の機会を与える。
【0045】
また、遊技機本体Bは、図2にて示すごとく、球戻り防止装置100を備えており、この球戻り防止装置100は、内レール21の上側先端部21aの近傍にて、遊技盤10の盤面11に組み付けられている。なお、内レール21の上側先端部21aとは、図2、図3及び図5のいずれかにて示すごとく、内レール21のうち遊技盤10の盤面11の左上隅角側に位置する先端部をいう。
【0046】
当該球戻り防止装置100は、図3及び図4に示すように、装置本体110と、傾動部材120とを備えている。
【0047】
装置本体110は、合成樹脂からなるもので、当該装置本体110は、図3及び図4にて示すごとく、長手状取り付け基板部111と、傾動規制板部112とを備えている。
【0048】
取り付け基板部111は、図3にて示すごとく、内レール21の上側先端部21aの近傍にて、遊技盤10に沿うようにその盤面11側から複数のねじ113(図4では、1つのねじ113のみを示す)により、締着されている。
【0049】
ここで、当該取り付け基板部111の長手方向下部は、内レール21の上側先端部21aにその右側から係合するようにして遊技盤10の盤面11に沿いねじ113により締着されており、一方、当該取り付け基板部111の長手方向上部は、上記長手方向下部から内レール21の上方への延長方向に延出するようにして遊技盤10の盤面11に沿いねじ113により締着されている。このことは、取り付け基板部111は、その内レール21側の縁部にて、当該内レール21の上側先端部21a及びその図3にて図示斜め右上方への延長方向に沿い遊技盤10の盤面11に締着されていることを意味する。
【0050】
傾動規制板部112は、後述のように傾動部材120の図3にて図示時計方向或いは図示反時計方向への傾動を所定の傾動角範囲内に規制するためのもので、当該傾動規制板部112は、取り付け基板部111の長手方向中間部位から遊技盤10の前方に向け延出されている。なお、上記所定の傾動角範囲は、後述する傾動部材120の上側傾動部120aの左側傾動端と右側傾動端との間の角度範囲をいう。
【0051】
当該傾動規制板部112は、図3或いは図4にて示すごとく、帯状湾曲壁部112aと、規制壁部112bとを有しており、湾曲壁部112aは、図4にて示すごとく、外レール22側に向け凹となる湾曲形状にて、取り付け基板部111の長手方向中間部位から遊技盤10から前方へ延出されている。これにより、当該湾曲壁部112aは、その上端部112cにて、外レール22をその右側から臨んでいる。
【0052】
ここで、湾曲壁部112aは、その上端部112cにて、後述のごとく、傾動部材120の図3にて図示時計方向への傾動角度を規制する役割を果たす。本実施形態では、以下、湾曲壁部112aの上端部112cは、上側規制部112cともいう。
【0053】
規制壁部112bは、湾曲壁部112aの長手方向下側中間部位から外レール22に向け延出してなるもので、当該規制壁部112bは、その延出端部にて、外レール22をその右側から臨んでいる。しかして、当該規制壁部112bは、その延出端部にて、後述のごとく、傾動部材120の図3にて図示反時計方向への傾動角度を規制する役割を果たす。
【0054】
傾動部材120は、図3或いは図4にて示すごとく、その円筒状回動軸120c(後述する)を介して、取り付け基盤部111に組み付けられており、当該傾動部材120は、後述のごとく、円筒状回動軸120cを軸として、当該回動軸120cと一体となり、図3にて図示時計方向或いは反時計方向に傾動自在となっている。
【0055】
当該傾動部材120は、図3或いは図4にて示すごとく、それぞれ合成樹脂からなる上下両側傾動部120a、120b及び円筒状回動軸120cと、支持ピン120dとにより構成されている。
【0056】
上下両側傾動部120a、120bは、その外レール22側の各面にて、共に、当該外レール22を臨むように円筒状回動軸120cと一体的に形成されている。ここで、上側傾動部120aは、矩形板状のもので、当該上側傾動部120aは、円筒状回動軸120cからその軸に直交して上方へ一体的に延出している。一方、下側傾動部120bは、錘としての役割を果たすもので、この下側傾動部120bは、円筒状回動軸120cからその軸に直交して下方へ一体的に延出している。なお、下側傾動部120bは、これ自体で錘としての役割を果たしてもよく、また、別途、錘を内蔵或いは外付けする構成であってもよい。
【0057】
本実施形態において、下側傾動部120bは、その厚さ方向中心面にて、上側傾動部120aの厚さ方向中心面に対し円筒状回動軸120cの軸を基準とし、所定の鈍角をなすように、円筒状回動軸120cから一体的に延出している。なお、当該下側傾動部120bには、金属部材が内蔵されている。
【0058】
支持ピン120dは、図3或いは図4にて示すごとく、傾動部材120を装置本体110の長手状取り付け基板部111に傾動自在に支持するためのものであり、当該支持ピン120dは、頭部121から軸状首下部を同軸的に延出して構成されている。
【0059】
この支持ピン120dは、その軸状首下部にて、傾動部材120の円筒状回動軸120cに遊技盤10の前方から相対回動自在に嵌装されており、当該支持ピン120dの軸状首下部は、その先端部にて、長手状取り付け基板部111の長手方向中間部位に嵌着されている。
【0060】
これにより、支持ピン120dは、その頭部121と取り付け基板部111との間において、円筒状回動軸120cを回動自在に支持する。換言すれば、傾動部材120は、支持ピン120dの軸を中心として、その軸周りに、図3にて図示時計方向或いは反時計方向に傾動するように支持ピン120dにより支持されている。また、傾動部材120がこのように支持されることで、下側傾動部120bが、その下端部にて、内レール21の上側先端部12aよりも上方に位置するようになっている。
【0061】
このように構成された球戻り防止装置100においては、傾動部材120が図3にて図示実線により示す傾動位置(図示反時計方向傾動位置)にあるとき、下側傾動部120bは、傾動規制板部112の規制壁部112bに左側から係合して、右側傾動端位置にある。このとき、上側傾動部120aは、図3にて示すごとく、湾曲壁部112aの上側規制部112cから左側へ解離して、左側傾動端(図示実線参照)に維持されている。
【0062】
ここで、本実施形態では、傾動部材120が現傾動端(左側傾動端)にあるとき、上側傾動部120aが、内レール21の上側先端部21a(詳細には当該上側先端部21aの外レール22側の面)から上方への延長線よりも外レール22側に傾動した位置に維持される。
【0063】
これにより、傾動部材120は、その上側傾動部120aを、球案内通路11bから遊技領域11a内に向けて案内される遊技球により衝突されて、図3にて図示時計方向に傾動し、逆に、球案内通路11bから遊技領域11a内に案内された遊技球の球案内通路11bへの戻りを阻止する役割を果たす。
【0064】
このため、本実施形態では、傾動部材120が現傾動端にあるとき上側傾動部120aの先端部とこれに対する外レール22の対応部位との間の間隔の球案内通路11bの幅方向に沿う間隔が、遊技球の外径よりも狭くなうように、上側傾動部120aの長さが上記所定の鈍角を前提として、所定の長さに選定されている。
【0065】
また、傾動部材120がその左側傾動端(図3にて図示実線参照)から時計方向に傾動して、図3にて図示2点鎖線により示す傾動端(右側傾動端)に達したとき、上側傾動部120aは、湾曲壁部112aの上側規制部112cにその左側から係合して、右側傾動端に維持される。このとき、下側傾動部120bは、傾動規制板部112の規制壁部112bから左方へ解離して、左側傾動端(図3にて図示2点鎖線参照)に維持される。
【0066】
ここで、本実施形態では、傾動部材120が右側傾動端に達したとき、上側傾動部120aが、内レール21の上側先端部21a(詳細には当該上側先端部21aの外レール22側の面)から上方への延長線よりも遊技領域11a側(外レール22とは反対側)に傾動した位置に維持される。これにより、傾動部材120は、球案内通路11b内にて内レール21に沿う遊技球の遊技領域11a内への案内を阻止する。このため、本実施形態では、傾動部材120が右側傾動端にあるとき下側傾動部120bの下端部とこれに対する外レール22の対応部位との間の間隔の球案内通路11bの幅方向に沿う間隔が、遊技球の外径よりも狭くなるように、下側傾動部120aの長さが上記所定の鈍角を前提として所定の長さに選定されている。
【0067】
以上のように構成した本実施形態において、上記球発射装置が遊技球を発射していない状態では、球戻り防止装置100においては、傾動部材120が、下側傾動部120bの錘としての自重に基づき、図3にて実線により示すごとく、上記左側傾動端に維持されている。
【0068】
このとき、下側傾動部120bは、傾動規制板部112の規制壁部112bにその先端部から係合して右側傾動端に維持されるとともに、上側傾動部120aは、その左側傾動端に維持されている(図3参照)。このような状態においては、下側傾動部120bが、図3にて実線により示すごとく、内レール21の上側先端部21aの延長線から外レール22側へは突出していない。このため、下側傾動部120bとこれに対する外レール22の対応部位との間の間隔は、球案内通路11bの幅、即ち、上記所定レール間隔となっている。
【0069】
一方、上側傾動部120aは、図3にて実線により示すごとく、内レール21の上側先端部21a(詳細には当該上側先端部21aの外レール22側の面)の延長線よりも外レール22側へ突出している。このため、上側傾動部120aの先端部とこれに対する外レール22の対応部位との間の間隔は、上述したように、遊技球の外径よりも狭い。
【0070】
このような状態において、遊技球(以下、先行遊技球ともいう)が球受け皿DSから球送り装置(図示しない)を介し上記球発射装置側へ送り出されて当該球発射装置により球案内通路11bに向けて発射されると、当該先行遊技球は、球案内通路11bにより遊技領域11a内に向けて案内される。
【0071】
このような案内過程においては、上述のごとく、上側傾動部120aの先端部とこれに対する外レール22の対応部位との間の間隔は、上述したように、遊技球の外径よりも狭いことから、当該先行遊技球は、傾動部材120のうち上側傾動部120aにその下側から衝突する。このとき、下側傾動部120bは、上述のごとく、内レール21の上側先端部21a(詳細には当該上側先端部21aの外レール22側の面)の延長線から外レール22側へは突出していないことから、先行遊技球が、上側傾動部120aに対する衝突に先立って、下側傾動部120bに緩衝されることはない。
【0072】
しかして、傾動部材120が、その上側傾動部120aにて先行遊技球の上記衝突による力を受けて、支持ピン120dを軸として、図3にて図示時計方向に傾動すると、傾動部材120は、右側傾動端に達して、上側傾動部120aにて、湾曲壁部112aの上側規制部112cに係合する。なお、これに伴い、下側傾動部120bは、図3にて2点鎖線で示す傾動端(左側傾動端)に達するが、上記先行遊技球は既に上側傾動部120aに対し上述のごとく衝突済み故、特に支障はない。
【0073】
従って、上述のような傾動部材120の時計方向への回動に伴い、上側傾動部120aの先端部とこれに対する外レール22の対応部位との間の間隔が、遊技球の外径よりも広くなって、先行遊技球は、上側傾動部120aの先端部とこれに対する外レール22の対応部位との間を通り遊技領域11a内に案内される。
【0074】
然る後、傾動部材120は、下側傾動部120bの錘としての自重のもとに、図3にて図示反時計方向に傾動する。このため、上側傾動部120bは、その左側傾動端に達するとともに、下側傾動部120bが、その右側傾動端に達して、傾動規制板部112の規制壁部112bにその先端部から係合する。
【0075】
このような段階において、後続の遊技球(以下、後続遊技球ともいう)が上記球発射装置により球案内通路11bに向けて発射されると、当該後続遊技球は、図3にて図示2点鎖線の傾動位置にある傾動部材120に向けて球案内通路11bにより案内されることとなる。
【0076】
ここで、上述のごとく、傾動部材120が右側傾動端に維持されているときには、下側傾動部120bの下端部とこれに対する外レール22の対応部位との間隔は、遊技球の外径よりも狭くなっている。
【0077】
従って、上述のように後続遊技球が球案内通路11bにより傾動部材120に向けて案内されても、当該後続遊技球は、下側傾動部120bの下端部により緩衝されて球案内通路11bに沿い逆戻りして、当該遊技盤10のアウト口(図示しない)から排出されることとなる。
【0078】
ところで、上述の後続遊技球が、糸付き遊技球として、球受け皿DS内に貯留されていた遊技球であれば、当該糸付き遊技球は、糸t(図5参照)を付随させながら、球受け皿DSから球送り装置(図示しない)を介し上記球発射装置側へ送り出される。なお、糸付き遊技球は、遊技球の外周面に糸tの基端部を固着して構成されている。また、糸tは、その先端部にて、遊技者の手により受け皿DS内にて把持されているものとする。
【0079】
しかして、上述のように送り出された糸付き遊技球が上記球発射装置により球案内通路11bに向けて発射されると、当該糸付き遊技球は、糸t(図5参照)を付随させながら、球案内通路11bにより傾動部材120に向けて案内される。
【0080】
ここで、球戻り防止装置100において、上述と同様に、糸付き遊技球が傾動部材120を右側傾動端(図3にて図示2点鎖線参照)に傾動させた後、球案内通路11bから遊技領域11a内に案内される。
【0081】
そして、このように遊技領域11a内に案内された糸付き遊技球は、糸tを付随させながら、遊技領域11aにおいて遊技釘と衝突しつつ遊技盤10の盤面11に沿い下方へ移動していくこととなる。
【0082】
このような糸付き遊技球の移動に伴い、糸tは、傾動部材120の右側傾動端への傾動状態にて、糸付き遊技球により引っ張られて当該糸付き遊技球とともに遊技領域11a内にて下方へ引き出されていくこととなる。このような過程においては、糸tは、内レール21の外レール22側の面並びに球戻り防止装置100の上側傾動部120aの外レール22側の面に沿い引き出されて上側傾動部120aの先端部から遊技領域11a内にて遊技盤10の盤面11に沿い下方へ移動していく。
【0083】
その結果、糸tが、球戻り防止装置100の傾動部材120の右側傾動端にて、下側傾動部120bの錘としての自重に抗して、傾動部材120をその右側傾動端に強制的に保持することとなる。
【0084】
このため、当該糸付き遊技球に続いて、遊技球が、順次、上記球発射装置により球案内通路11b内に案内されて、図5にて例示するように、内レール21の外レール22側の面に沿い傾動部材120側に向けて移動する場合には、当該各遊技球は、上述のごとく内レール21(詳細には内レール21の外レール22側の面)よりも外レール22側へ突出している下側傾動部120bの下端部に衝突して、遊技領域11a内には進入することができない。
【0085】
また、当該各遊技球が、内レール21の外レール22側の面ではなく、外レール22の内レール21側の面に沿い、傾動部材120側に向けて移動する場合であっても、上述のごとく、右側傾動端にある傾動部材120の下側傾動部120bの下端部とこれに対する外レール22の対応部位との間の間隔が遊技球の外径よりも狭いため、当該各遊技球は、上述と同様に、下側傾動部120bの下端部に衝突して、遊技領域11a内には進入することができない。
【0086】
以上によれば、本実施形態では、糸付き遊技球が遊技領域11a内に案内されることで、当該糸付き遊技球を利用した不正行為が可能であったとしても、当該糸付き遊技球に順次後続して球案内通路11b内に案内される各遊技球は、全て、傾動部材120の下側傾動部120bとの衝突により、遊技領域11a内への進入を阻止される。
【0087】
これ伴い、これらの各後続遊技球を利用した遊技領域11a内でのアタッカー90への入賞等の遊技者にとり有利な遊技を含めて、遊技領域11a内における全ての遊技が阻止されることとなる。
【0088】
このように、糸付き遊技球による不正行為を許容して、当該糸付き遊技球がその遊技球にて入賞(例えば、スタートチャッカーへの入賞)することがあっても、その後の各後続遊技球による遊技を全て阻止することで、遊技者が糸付き遊技球を利用した不正行為によっては、各後続遊技球をアタッカー90等へ入賞させることができない。その結果、糸付き遊技球に後続する各遊技球をアタッカー90に入賞させて賞球を不正に獲得することができない。このことは、糸付き遊技球を利用した不正行為が最小限に抑制されることを意味する。
【0089】
なお、本発明の実施にあたり、上記実施形態に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)本発明の実施にあたり、球戻り防止装置100において、傾動部材120が右側傾動端にあるとき、下側傾動部120bの下端部とこれに対する外レール22の対応部との間の球案内通路11bの幅方向に沿う間隔は、上記実施形態とは異なり、遊技球の外径以上であってもよい。
【0090】
これによれば、球案内通路11bにより、少なくとも内レール21の外レール22側の面に沿い案内される後続遊技球は、傾動部材120の下側傾動部120bとの衝突により、遊技領域11a内への進入を阻止され得る。
(2)本発明の実施にあたり、球戻り防止装置100において、傾動部材120が左側傾動端にあるとき、下側傾動部120bは、上記実施形態にて述べた位置に限ることなく、内レール21の先端部21aの延長線よりも右側に位置していてもよい。
(3)本発明の実施あたり、球戻り防止装置100は、上記実施形態にて述べたように内レール21の上側先端部21aの近傍にて遊技盤10の盤面11aに設けるのではなく、内レール21の上側先端部21aに直接支持するようにしてもよい。
(4)本発明の実施にあたり、上記実施形態にて述べた円筒状回動軸120cは、一般には、支持ピン120dをも含めて、軸状回動部材であってもよい。
(5)本発明の実施にあたり、上記実施形態にて述べた傾動部材120において、上側傾動部120aは、円筒状回動軸120cを介して下側傾動部120bと直線的に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0091】
10…遊技盤、11…盤面、11a…遊技領域、11b…球案内通路、
20…案内レール部材、21…内レール、21…外レール、100…球戻り防止装置、
110…装置本体、120…傾動部材、120a…上側傾動部、120b…下側傾動部、
120c…回動軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技盤と、
この遊技盤の盤面に立設する外レールと、この外レールの内側にて前記遊技盤の盤面に前記外レールに対し所定間隔をおくように設けられて前記外レールの少なくとも一部との間にて遊技球を案内する球案内通路を形成する内レールと、前記内レールの上側先端部或いはその近傍にて前記遊技盤の盤面に設けられる装置本体と、傾動部材とを有する球戻り防止装置とを備えて、
当該球戻り防止装置において、前記傾動部材は、
前記装置本体に前記遊技盤の盤面に対し直角となるように回動自在に支持される軸状回動部材と、
この軸状回動部材から前記球案内通路による前記遊技球の案内方向に延出する上側傾動部と、
前記軸状回動部材を基準として前記案内方向とは反対方向へ延出する下側傾動部とを具備して、
前記傾動部材が、前記上側傾動部にて、前記内レールの前記上側先端部よりも前記外レール側に傾動した第1傾動位置にあるとき、前記下側傾動部を前記内レールの前記上側先端部よりも前記外レールとは反対側に位置させ、また、前記上側傾動部にて、前記内レールの前記上側先端部よりも前記外レールとは反対側に傾動した第2傾動位置にあるとき、前記下側傾動部を、その前記案内方向とは反対方向の端部にて、前記内レールの前記上側先端部よりも前記外レール側へ突出させるようになっているパチンコ遊技機。
【請求項2】
前記傾動部材が前記第2傾動位置にあるとき前記下側傾動部の前記案内方向とは反対方向の端部とこれに対する前記外レールの対応部との間の間隔が遊技球の外径よりも狭くなるように、前記下側傾動部の長さが設定されていることを特徴とする請求項1に記載のパチンコ遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−125431(P2012−125431A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280057(P2010−280057)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000161806)京楽産業.株式会社 (4,820)
【Fターム(参考)】