説明

パッキン及び蓋付きコンテナ

【課題】 使用中に蓋からずれにくいとともに、取り付ける際にも外れにくいパッキンを備えた蓋付きコンテナを提供する。
【解決手段】 蓋付きコンテナ1は、頂部に開口が設けられたコンテナ2と、コンテナ2の開口を閉じる蓋3と、を有する。蓋3の外周縁には、立ち上がり壁3b及びその上端に設けられた下向きの凹部3aが形成されている。凹部3aには、リング状のパッキン10が収容されている。パッキン10は、凹部3aに収容された状態の断面視において、その頂部付近11aと内側下縁付近11bが凹部3aの内面に接し、両接触点の間の部分11cにおいては、凹部3aの内面との間にスキマSが開く形状である。さらに、パッキン10の下面12が平坦である。このような形状としたことにより、使用時にパッキン10が凹部3aからずれにくいとともに、凹部3aから外れないように蓋3に取り付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナの開口を閉じる蓋に取り付けられて、コンテナと蓋とをシールするパッキンに関する。特には、蓋から自然に外れにくいように改良されたパッキンなどに関する。
【背景技術】
【0002】
蓋付きのコンテナなどにおいては、コンテナと蓋とをシールするために、弾性材料で作製されたリング状のパッキンが用いられる。このようなパッキンは、蓋の外周縁に形成された下向き凹部に収容され、この凹部に嵌り込むコンテナの上端縁との間をシールする。
【0003】
図2は、一般的なパッキンの形状と、パッキンに作用する力を模式的に示す図である。
蓋3の外周縁には、下向きの凹部3aが形成されており、この凹部3aにパッキン20が収容される。凹部3aの断面(半径方向に沿う断面)の形状はこの例では半円形である。そして、パッキン20の断面形状は略半円形で、凹部3aの半円形の内面と蓋の直線状の側面に沿う上面21と、上に凹の下面22とを有する。このような形状により、パッキン20は上面21の内側の部分が、蓋3の凹部3aの内面と側面とにほぼ密に接する。なお、下面22を上に凹としたのは、コンテナの上端縁とパッキンとを密に接触させるためである。
【0004】
このような形状のパッキン20においては、蓋に取り付ける際に、凹部3aから外れやすいという問題がある。パッキン20の径は蓋3の外周縁の径よりも小さいので、取り付ける際は、まず、パッキン20を拡径させるように引っ張った状態で蓋3の凹部3aに嵌め込む。この際、パッキン20には縮径方向の力がかかっているが、パッキン20が内側下端部Pを中心として、図2の想像線で示すように、図の反時計方向に回転しやすくなる。その結果、凹部3aから外れることがある。
【0005】
このような現象は以下の理由によるものと考えられる。
図2(A)に示すように、パッキン20の上面21は蓋の凹部3aの内面に接しており、下面22は上に凹の形状となっているので、パッキン20の断面における重心Gは比較的上方に位置すると考えられる。この重心Gには、図の斜め右上に向かうパッキン20の緊縛力F1がかかっている。この緊縛力F1のうち、縦方向の成分F2は上向きであり、パッキン20が蓋の凹部3aに入り込む方向の力である。ただし、この成分F2の大きさは、重心Gが下方に位置する場合と比べると小さい(詳細は図1を参照して後述する)。これにより、パッキン20が凹部3aから抜け出てしまうことがある。
【0006】
あるいは、以下のようにも考えられる。
図2(B)に示すように、パッキン20を、上下方向において、蓋3の凹部3aの半円形内面と蓋の直線状側面との境Lで分けて、各々上部20Aと下部20Bとする。上部20Aの内側の全面は、蓋3の凹部3aの下向きに湾曲した内面に接触しているため、同部には、縮径方向(内方向)に対して斜め下方向の反力R1がかかっている。一方、下部20Bには、縮径方向(内方向)に対して反対方向(外方向)の反力とともに、上部から及ぼされる斜め下方向の力がかかっている。さらに、下部20Bの下面22は上に凹の形状であるので、下部20Bは、中央部分でボリュームが少なくなっている。このような形状により、縮径方向(内方向)の力がかかると、下部の中央部分が上方向にたわんで、外側端部は内側へ弾性変形しやすくなり、内方向の力F2がかかる。これらの結果、実線の矢印で示すように、パッキン20は内側下端部Pを中心として図の反時計方向に回転しやすくなる。
【0007】
このようにパッキンが回転しやすいと、蓋に取り付ける際に、何度もやり直せねばならず、作業の効率が悪くなってしまう。
【0008】
なお、コンテナ側に取り付けるパッキンとしては、コンテナの周縁に係合する環状部と、この環状部からコンテナの側面に沿って垂下するスカート部を設けたものが提案されている(特許文献1参照)。このようなスカート部を設けることにより、取り付け時に外れやすくなることを防止している。
【特許文献1】特公昭45−7354
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、蓋に取り付けるパッキンであって、使用中に蓋からずれにくいとともに、取り付ける際にも外れにくいパッキンを備えた蓋付きコンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のパッキンは、 頂部に開口を有するコンテナ、及び、該コンテナの開口を閉じる蓋、を備える蓋付きのコンテナ用のパッキンであって、 該パッキンは、前記蓋の外周縁に形成された下向き凹部に収容されて、該下向き凹部と、該凹部に嵌り込む前記コンテナの上端縁との間をシールするリング状のものであり、 該パッキンが、前記凹部に収容された状態の断面視において、その頂部付近と内側下縁付近が前記凹部の内面に接し、両接触点の間においては、該パッキンと前記凹部の内面との間にスキマが開く形状であることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、パッキンが蓋の外周凹部に収容された状態において、半径方向に沿う断面視で、その頂部付近と内側下縁付近の間の部分が、蓋の外周凹部の内面に接触しておらず空間となっている。この理由は詳しくは図1を参照しつつ後述するが、以下のように考えられる。このように空間が存在すると、パッキンには空間に向かう緊縛力がかかる。そして、この緊縛力の内、縦方向の成分は上向きの力であり、パッキンが凹部に入り込もうとする力である。この力によって、パッキンが凹部から抜け出てこない。
あるいは、以下のようにも考えられる。パッキンの頂部付近と内側下縁付近の間の部分では、パッキンの縮径方向への力に対する下向きの反力が発生しない。したがって、パッキンを内側下端縁を中心として回転させるための下方向への力が小さくなり、パッキンが回転し難くなる。これらのことにより、パッキンを凹部から外れないように蓋に取り付けることができる。
【0012】
本発明においては、 前記パッキンの下面がフラットあるいはやや上に凹状となっていることがより好ましい。
【0013】
この理由も図1を参照しつつ後述するが、下面の断面形状が上に大きく凹状となっている場合、下面がフラットあるいはやや上に凹状となっている場合に比べて、パッキンの重心が上方に移動する。すると、パッキンにかかる緊縛力の内、縦方向の成分が小さくなり、パッキンが凹部に入り込もうとする力が小さくなる。
あるいは、下面の形状が上に大きく凹状となると、中央部分でボリュームがなくなり、縮径方向(内方向)に力がかかったときに、中央部が上方向にたわんで、外側下端部に力がかかり同方向に引かれやすくなる。その結果、パッキンが内側下端部を中心として回転しやすくなる。
【0014】
本発明によれば、下面をフラットあるいはやや上に凹状(フラットに近い凹状)としたので、パッキンの重心が下方に位置するので、パッキンにかかる緊縛力の内、縦方向の成分が比較的大きく、パッキンが凹部に入り込もうとする力が得られる。また、パッキンの中央部分や外側下端部の全体に均一な縮径方向の力がかかり、パッキンを回転させる力が小さくなる。
【0015】
さらに、本発明においては、 前記パッキンの外側面と、前記蓋の凹部の内面の外側の部分との間にスキマが開く形状であることが好ましい。
【0016】
蓋を閉めた際、パッキンは蓋の凹部の内面とコンテナの上縁との間で押し潰されて変形する。この際、パッキンの外側面と、蓋の凹部の内面の外側の部分との間にスキマを設けておくと、パッキンがこのスキマに向けて変形するので、凹部から下にはみ出ない。
【0017】
本発明の蓋付きのコンテナは、 頂部に開口を有するコンテナと、 該コンテナの開口を閉じる蓋と、 前記コンテナと蓋との間をシールするパッキンと、を備える蓋付きのコンテナであって、 前記蓋の外周縁には下向き凹部が形成されており、 前記パッキンは、前記蓋の下向き凹部と、該凹部に嵌り込む前記コンテナの上端縁との間をシールするリング状のものであり、 前記パッキンが前記に記載のパッキンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、パッキンに、その頂部付近と内側下縁付近の間の部分と凹部の内面との間のスキマに向く緊縛方向の力の内の、パッキンを凹部に向ける力が作用するので、パッキンが凹部内で自然にずれにくくなる。また、縮径方向への力に対する下向きの反力が発生しないので、取り付け時に回転しにくくなる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1(A)は、本発明の実施の形態に係る蓋付きコンテナのパッキン周辺部分を示す側断面図であり、図1(B)及び(C)は、パッキンと同パッキンが収容される蓋の凹部を拡大して示す側断面図である。
図1(A)に示すように、蓋付きコンテナ1は、頂部に開口が設けられたコンテナ2と、コンテナ2の開口を閉じる蓋3と、を有する。蓋3の外周縁には、立ち上がり壁3b及びその上端に設けられた下向きの凹部3aが形成されている。この例では、凹部3aの断面(蓋3の半径方向に沿った断面)の形状は半円形である。同凹部3aには、リング状のパッキン10が収容されている。このパッキン10は、蓋3の凹部3aと、この凹部3aに嵌り込むコンテナ2の上端縁2aとの間をシールするためのものである。
【0020】
パッキン10は、弾性材料(例えばシリコンゴム)で作製され、径は蓋3の立ち上がり壁3bの外径あるいはコンテナ2の開口の径よりも小さい。一例として、コンテナ2の開口の径が450mmの場合、パッキン10の径は430mmである。このような寸法設定により、パッキン10を蓋3の下向き凹部3aに収容する際は、パッキン10を拡径させるように引っ張った状態で装着する必要がある。そして、パッキン10の弾性による縮径方向の力と摩擦力により、パッキン10が蓋3の下向き凹部3aに保持される。
【0021】
図1(B)、(C)に示すように、パッキン10の断面形状は略半円形もしくは略三角形であり、上に凸の上面11と、平坦な下面12とを有する。詳細に説明すると、上面11の内側は1/4円状であり、外側は略三角形状である。そして、蓋3の凹部3aに収容された状態において、上面の頂部付近11aが蓋3の凹部3aの頂部付近に接し、内側下縁付近11bが蓋3の立ち上がり壁3bに接している。そして、両接触点11a、11bの間の部分11cにおいては、パッキン10の上面11と凹部3aの内面との間にスキマS1が開いている。スキマS1の最大幅は、一例として、蓋3の凹部3aの径の1/5程度である。また、パッキン10の外面11の外側の部分と、凹部3aの内面との間にはスキマS2があいている。
なお、パッキン10の側断面形状は、自由状態と、蓋3の凹部3aに収容された状態とで、形状は変わらない。
【0022】
パッキン10をこのような形状とすることにより、蓋3の凹部3aから外れにくくなる。これは以下のような理由によるものと考えられる。
図1(B)に示すように、パッキン10の下面12は平坦であるので、重心Gは比較的下方に位置する。そして、パッキン10の上面11の両接触点11a、11bの間の部分11と蓋3の凹部3aの内面との間にスキマS1が開いていると、パッキン10の重心GにはこのスキマS1に向かう、図の実線で示す緊縛力F1がかかる。そして、この緊縛力F1の内、縦方向の成分F2は上向きの力であり、パッキン10が凹部3aに入り込もうとする力である。この力によって、パッキン10が凹部3aから抜け出てこない。
なお、パッキン10の下面12が上に大きく凹状となっている場合、パッキン10の重心Gが、図1(B)の想像線で示すように上方に移動する。すると、パッキン10の重心Gに作用する緊縛力F1は、図の想像線で示すように、実線で示した場合に比べて、傾きが小さくなり、縦方向の成分F2が小さくなる。つまり、パッキン10が凹部3aに入り込む方向の力が小さくなってしまう。
【0023】
あるいは、以下のようにも考えられる。
図1(C)に示すように、前述と同様に、パッキン10を、上下方向において、蓋3の凹部3aの半円形内面と立ち上がり壁3bとの境Lで分けて、各々上部10Aと下部10Bとする。上部10Aにおいては、上面11の両接触点11a、11bの間の部分11cは蓋3の凹部3aの内面に接していないので、同部分11cにはパッキン10に縮径方向の力F1のみが働いて、その反力はかからない。つまり、前述した、パッキン10が凹部3aから外れようとする斜め下向きの反力F2は、頂部付近にのみかかり、その他の部分にはかからないことになる。さらには、下部10Bの下面12は平坦であるので、下部10Bの全体が縮径方向(内方向)へ引かれることになる。これらの結果、パッキン10が図の反時計方向に回転しようとした場合の回転支点Pが、図2の場合に比べて上方に移動し、回転しにくくなる。したがって、パッキン10を蓋3に取り付ける際、外れないように取り付けることができる。
【0024】
さらに、パッキン10の外側面と、蓋3の凹部3aの内面の外側の部分との間にスキマS2が開いている。蓋3を閉めると、パッキン10は蓋3の凹部3aの内面とコンテナ2の上端縁2aとの間で押し潰されて変形する。この際、パッキン10が、このスキマS2に向けて変形するので、凹部3aから下にはみ出ない。
【0025】
この例では、凹部3aの形状が半円形の場合を説明したが、その他の形状においても、パッキン10の頂部付近11aと内側下縁付近11bとが凹部3aの内面に接し、その間の部分11cで凹部3aの内面との間にスキマが開く形状とすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1(A)は、本発明の実施の形態に係る蓋付きコンテナのパッキン周辺部分を示す側断面図であり、図1(B)及び(C)は、パッキンと同パッキンが収容される蓋の凹部を拡大して示す側断面図である。
【図2】一般的なパッキンの形状と、パッキンに作用する力を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 蓋付きコンテナ 2 コンテナ
3 蓋 10 パッキン
11 上面 12 下面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂部に開口を有するコンテナ、及び、該コンテナの開口を閉じる蓋、を備える蓋付きのコンテナ用のパッキンであって、
該パッキンは、前記蓋の外周縁に形成された下向き凹部に収容されて、該下向き凹部と、該凹部に嵌り込む前記コンテナの上端縁との間をシールするリング状のものであり、
該パッキンが、前記凹部に収容された状態の断面視において、その頂部付近と内側下縁付近が前記凹部の内面に接し、両接触点の間においては、該パッキンと前記凹部の内面との間にスキマが開く形状であることを特徴とするパッキン。
【請求項2】
前記パッキンの下面がフラットあるいはやや上に凹状となっていることを特徴とする請求項1に記載のパッキン。
【請求項3】
前記パッキンの外側面と、前記蓋の凹部の内面の外側の部分との間にスキマが開く形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載のパッキン。
【請求項4】
頂部に開口を有するコンテナと、
該コンテナの開口を閉じる蓋と、
前記コンテナと蓋との間をシールするパッキンと、
を備える蓋付きのコンテナであって、
前記蓋の外周縁には下向き凹部が形成されており、
前記パッキンは、前記蓋の下向き凹部と、該凹部に嵌り込む前記コンテナの上端縁との間をシールするリング状のものであり、
前記パッキンが請求項1、2又は3に記載のパッキンであることを特徴とする蓋付きのコンテナ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−120682(P2010−120682A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296756(P2008−296756)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(596013394)パシフィックサイエンス株式会社 (8)
【出願人】(506242898)
【Fターム(参考)】