説明

パック電池の検査方法及びパック電池

【課題】完成品の出荷状態で非復帰スイッチを作動させることなく検査することが可能なパック電池の検査方法及びパック電池を提供する。
【解決手段】3つ直列に接続された二次電池11,12,13の接続点のうちの1つに抵抗器43を介して接続されている保護IC5の入力端子53の電位を、該入力端子53に抵抗器44を介して接続されたオープンドレインの出力ポート731の出力をオンすることによって、強制的に低下せしめる。これにより、保護IC5が二次電池12の過電圧状態を検知して検知信号を出力した場合、入力ポート732を介して検知信号を検出したときに出力ポート731の出力をオフすることによって、保護IC5が検知する二次電池12の過電圧状態を解消させる。従って、検知信号の出力が短時間のうちに停止されることとなり、非復帰スイッチ30のヒューズ31,31の溶断が回避される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列接続された複数の二次電池の夫々が所定の過電圧状態にあることを検知する保護回路の検知信号によって非復帰スイッチが作動するパック電池の検査方法、及びこの検査方法を実行するパック電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン電池に代表される二次電池の充電では、所定電流にて定電流充電し、端子電圧(以下、電池電圧又はセル電圧という)が、二次電池に許容される最大電圧(過充電を防止するための保護電圧)より低く設定された所定電圧に達した後は、定電圧充電にて充電する、いわゆる定電流・定電圧充電方式が主に用いられる。電池電圧が最大電圧を超えた場合は、電池の寿命(劣化の程度)及び充放電容量を損ねることとなり、発火に至る虞もあるため、充電中は電池電圧が最大電圧を超えないように制御される。
【0003】
ところで、二次電池(セル)を2個以上直列に接続した組電池を備えるパック電池を充電する場合、セルバランスが崩れるとセル電圧が充電電圧の「1/直列接続されたセル数」の電圧を超えることが普通に起こり得る。このため、上記のような組電池を備えるパック電池では、確実を期すために、ハードウェアによる保護回路とソフトウェアにより制御される制御回路とで二重に過電圧が防止されることが多い。
【0004】
保護回路が過電圧を検知した場合は、二次電池の充放電路に介装された非復帰スイッチが遮断されるようになっているが、例えば出荷状態で実際に保護回路を作動させる検査を行うと、非復帰スイッチが作動してパック電池が使用不能となるため、非復帰スイッチに流入する電流の上限を検査時に制限できない回路構成をとる場合は、このような検査は実際には採用されない。
【0005】
例えば、特許文献1では、非復帰スイッチを作動させる電流が通電する回路に介装された接続部にスリットを設けておき、保護回路(電圧監視回路)と、該保護回路の過電圧検知信号によってオンしたときに上記電流を通電させる駆動回路とを検査した後に、スリットに半田を肉盛りして接続部を導通させる検査方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−176561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された検査方法は、パック電池の完成品を出荷状態で検査するものではないため、基板単体又は半完成品状態での検査後、完成品に加工する際に保護回路に係る不具合が発生する虞があった。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、完成品の出荷状態で非復帰スイッチを作動させることなく検査することが可能なパック電池の検査方法及びパック電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るパック電池の検査方法は、直列接続された複数の二次電池と、該二次電池の充放電路に介装されており、該充放電路を遮断する非復帰スイッチと、前記二次電池の各接続点に所定のインピーダンス回路を介して接続されており、夫々の二次電池が所定の過電圧状態にあることを検知する保護回路とを備え、該保護回路の検知信号によって前記非復帰スイッチが作動するパック電池を検査する方法において、一のインピーダンス回路及び保護回路の接続点を所定の電圧源又は電流源に接続/切断するスイッチ回路と、前記検知信号を検出する検出回路とを備え、前記スイッチ回路を接続し、接続後に前記検知信号を検出したか否かを判定し、検出した場合、前記スイッチ回路を切断することを特徴とする。
【0010】
本発明に係るパック電池の検査方法は、前記一のインピーダンス回路は、最も低電位側(又は高電位側)の二次電池の正極端子(又は負極端子)が接続される接続点に接続されており、前記スイッチ回路は、前記最も低電位側(又は高電位側)の二次電池の負極端子(又は正極端子)の電位と同等の電位を供給する所定の電圧源に接続/切断するようにしてあることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るパック電池の検査方法は、前記インピーダンス回路は、抵抗回路であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るパック電池の検査方法は、前記スイッチ回路と直列に他の抵抗回路を接続してあることを特徴とする。
【0013】
本発明に係るパック電池は、直列接続された複数の二次電池と、該二次電池の充放電路に介装されており、該充放電路を遮断する非復帰スイッチと、前記二次電池の各接続点に所定のインピーダンス回路を介して接続されており、夫々の二次電池が所定の過電圧状態にあることを検知する保護回路とを備え、該保護回路の検知信号によって前記非復帰スイッチが作動するパック電池において、一のインピーダンス回路及び保護回路の接続点を所定の電圧源又は電流源に接続/切断するスイッチ手段と、前記検知信号を検出する検出手段と、前記スイッチ手段を接続した場合、前記検出手段が検出したか否かを判定する手段とを備え、該手段が検出したと判定した場合、前記スイッチ手段を切断するようにしてあることを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、直列に接続された複数の二次電池の接続点のうちの1つに一のインピーダンス回路を介して接続されている保護回路の入力端子を、該入力端子に接続されたスイッチ回路で所定の電圧源又は電流源に接続する。
これにより、前記一のインピーダンス回路に接続されている保護回路の入力端子の電位が強制的に変動せしめられるため、各インピーダンス回路を介して保護回路に印加されている二次電池の電池電圧のうち、前記一のインピーダンス回路を介して保護回路に印加されている電池電圧の1つが、保護回路側で強制的に上昇せしめられる。
その後、保護回路が二次電池の過電圧状態を検知して検知信号を出力した場合、検知信号を検出したときにスイッチ回路を切断して、保護回路の入力端子を所定の電圧源又は電流源から切り離すことにより、二次電池の電池電圧が各インピーダンス回路を介してそのまま保護回路に印加されるようになる。
このため、保護回路が検知する二次電池の過電圧状態が解消して、検知信号の出力が短時間のうちに停止されることとなり、非復帰スイッチの作動が回避される。
【0015】
本発明にあっては、最も低電位側の二次電池の正極端子(又は最も高電位側の二次電池の負極端子)に他端が接続されているインピーダンス回路の一端と、保護回路の入力端子との接続点を、スイッチ回路によって、前記最も低電位側の二次電池の負極端子(又は最も高電位側の二次電池の正極端子)と同等の電位の電圧源に接続する。
この場合、保護回路の入力端子の電位を変動させるための電圧源が供給すべき電位が、最も低電位側(又は高電位側)の二次電池の負極端子(又は正極端子)の電位と同等でよいため、特別な電圧源を準備する必要がなくなると共に、前記電圧源に接続するスイッチ回路の構成が簡単になる。
更に、保護回路の入力端子の電位が強制的に変動せしめられたときに、各入力端子間の電位の高低関係が逆転することがないため、保護回路の入力端子間の電圧が逆方向の耐電圧(逆耐圧)を超えることがない。
【0016】
本発明にあっては、インピーダンス回路が抵抗回路であるため、スイッチ回路が接続/切断したときに誘導電圧が発生したり、スイッチ回路にサージ電流が流れたりする虞がない。また、各回路内の電圧及び電流の算出が容易となる。
【0017】
本発明にあっては、保護回路の入力端子を所定の電圧源に接続するスイッチ回路と直列に他の抵抗回路が接続されているため、スイッチ回路が接続したときに保護回路の入力端子に生じる電位変動の大きさが、保護回路の入力端子に接続された2つの抵抗回路による分圧回路の分圧比に応じて低減される。
これにより、上記分圧比を適当に定めることにより、保護回路の入力端子間の電圧が順方向の耐電圧を超えないようになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、各インピーダンス回路を介して保護回路に印加されている二次電池の電池電圧のうち、一のインピーダンス回路を介して保護回路に印加されている電池電圧の1つが、保護回路側で強制的に上昇せしめられる。その後、保護回路が二次電池の過電圧状態を検知したことを検出したときに、各インピーダンス回路を介して夫々の二次電池の電池電圧がそのまま保護回路に印加されるようにすることにより、検知信号の出力が短時間のうちに停止されて、非復帰スイッチの作動が回避される。
従って、完成品の出荷状態で非復帰スイッチを作動させることなく検査することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るパック電池の構成例を示すブロック図である。
【図2】保護ICの入出力の時間変化を示すタイミングチャートである。
【図3】保護ICによる保護動作の試験を実施するCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、本発明に係るパック電池の構成例を示すブロック図である。図中10は電池ブロックであり、電池ブロック10は、リチウムイオン電池からなる二次電池11,12,13を図示しない導電性のタブでこの順番に直列接続してなる。
【0021】
電池ブロック10の近傍には、該電池ブロック10の温度を検出する温度センサ2が配されている。二次電池11,12,13は、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の他の電池であってもよい。また、電池ブロック10を構成する二次電池11,12,13の数は3つに限定されず、2つ又は4つ以上であってもよい。更に、二次電池11,12,13の夫々に、1又は複数の他の二次電池が並列に接続されていてもよい。
【0022】
二次電池11の正極端子は、二次電池11,12,13の充放電電流を遮断する遮断部3を介して、図示しないケースの外部に露出したプラス(+)端子39に接続されている。二次電池13の負極端子は、二次電池11,12,13の充放電電流を検出するための電流検出抵抗61を介して、ケースの外部に露出したマイナス(−)端子69に接続されている。
【0023】
パック電池は、プラス(+)端子39と、マイナス(−)端子69と、後述する制御部7に接続された通信端子761,762とを介してパーソナルコンピュータ(PC)、携帯端末等の電気機器(図示せず)に着脱可能に装着される。プラス(+)端子39から、遮断部3、二次電池11,12,13及び電流検出抵抗61を介してマイナス(−)端子69に至る経路が、充放電路を構成する。
【0024】
遮断部3は、二次電池11,12,13の充放電電流を断続するNチャネル型のMOSFET(以下、FETという)35,36と、2端子間にヒューズ31,31が直列に介装された非復帰スイッチ30との直列回路を有し、該直列回路が二次電池11の正極端子及びプラス(+)端子39間に接続されている。充放電用のFET35,36に代えて、バイポーラトランジスタ等の他のスイッチング素子を用いてもよい。充放電用のFET35,36のゲートには、充電時及び放電時に、後述するアナログフロントエンド6からH(ハイ)レベルのオン信号が与えられる。非復帰スイッチ30は、3端子型であり、該非復帰スイッチ30の他の1端子とヒューズ31,31の接続点との間には、加熱抵抗32,32の並列回路が介装されている。
【0025】
遮断部3は、また、非復帰スイッチ30の他の1端子にドレインが接続されたNチャネル型のFET33と、該FET33のゲートに出力端子が接続されたOR回路34とを有する。FET33のソースは、二次電池13の負極端子に接続されている。OR回路34の出力端子がH(ハイ)レベルになった場合、FET33のドレイン及びソース間が導通し、加熱抵抗32,32にヒューズ31,31を介して二次電池11,12,13の直列電圧及び/又は外部からの電圧が印加されて、ヒューズ31,31が溶断する。これにより、充放電路が非可逆的に遮断される。非復帰スイッチ30において充放電路を遮断するものは、ヒューズ31,31に限定されない。
【0026】
二次電池11,12,13夫々の正極端子は、各二次電池11,12,13の過電圧状態を検知して検知信号をOR回路34に与える保護IC5の入力端子51,52,53に抵抗器41,42,43を介して接続されている。抵抗器41,42,43の夫々は、複数の抵抗器を直並列に接続したものであってもよいし、リアクタンス素子が含まれていてもよい。保護IC5の入力端子51,52,53の夫々及び接地電位間にコンデンサを接続して、保護IC5に与えられる電池電圧の変動を抑制するようにしてもよい。二次電池13の負極端子は、保護IC5の他の入力端子54と共に接地電位に接続されている。
【0027】
二次電池11,12,13夫々の正極端子及び負極端子は、各二次電池11,12,13の電池電圧を適宜切り替えて制御部7に与えるアナログフロントエンド(Analogue Front End。以下AFEという)6の入力端子に接続されている。AFE6の他の入力端子は、電流検出抵抗61の両端に接続されている。
【0028】
保護IC5は、二次電池11,12,13夫々の電池電圧及び基準電圧を比較するコンパレータと、タイマとを各別に備える(何れも図示せず)。基準電圧は、本実施の形態では4.3Vであるが、これに限定されるものではない。各コンパレータの夫々は、二次電池11,12,13の電池電圧が4.3Vより高くなった場合、タイマの計時を開始させる信号を出力する。そして、各タイマが計時する時間が例えば2秒のオン遅延時間を経過した場合、二次電池11,12,13の過電圧状態が検出されて、OR回路34の一方の入力端子に過電圧状態の検知信号が与えられる。これにより、遮断部3のヒューズ31,31が溶断されて、二次電池11,12,13の充放電路が遮断される。
【0029】
AFE6は、図示しないコンパレータを有しており、該コンパレータが電流検出抵抗61の両端電圧と他の基準電圧との比較結果から二次電池11,12,13の過電流を検出した場合、FET35,36にL(ロウ)レベルのオフ信号を与えて充放電電流を遮断させる。AFE6は、また、後述するI/Oポート73から過電圧状態の検知信号を与えられた場合にも、FET35,36にオフ信号を与えるようになっている。
【0030】
制御部7は、CPU70を有するマイクロコンピュータからなる。CPU70は、プログラム等の情報を記憶するROM71、一時的に発生した情報を記憶するRAM72、各種の入出力を行うI/Oポート73、アナログの電圧をデジタルの電圧に変換するA/D変換器74、各種時間を並列的に計時するタイマ75、並びに外部の電気機器と通信するための通信部76と互いにバス接続されている。
【0031】
I/Oポート73は、複数のポートからなり、一部の出力ポートがAFE6及びOR回路34の他方の入力端子に接続されている。I/Oポート73には、保護IC5の入力端子53に抵抗器44を介して接続されているオープンドレインの出力ポート731と、保護IC5の検知信号を検出するための入力ポート732とが含まれる。出力ポート731を駆動するFET(図示せず)のソースは、接地電位に接続されている。出力ポート731及び入力ポート732に代えて、AFEが有する汎用の入出力ポート(図示せず)を用いてもよい。尚、本実施の形態では、抵抗器44の抵抗値がゼロオーム(0Ω)であるものとする。
【0032】
A/D変換器74には、二次電池11,12,13夫々の電池電圧と、温度センサ2の電圧と、電流検出抵抗61の両端電圧とが与えられておりA/D変換器74は、これらのアナログの電圧をデジタルの電圧に変換する。
【0033】
通信部76は、シリアルデータ(SDA)を授受するための通信端子761と、シリアルクロック(SCL)を受信するための通信端子762とに接続されており、外部の電気機器との間でSMBus(System Management Bus )方式による通信を行う。通信部76と外部の電気機器との間では、他の通信方式によって通信してもよい。
【0034】
さて、CPU70は、ROM71に予め格納されている制御プログラムに従って、演算及び入出力等の処理を実行する。例えば、CPU70は、A/D変換器74を介して電流検出抵抗61の電圧を時系列的に取り込み、取り込んだ電圧から換算された充放電電流を積算して二次電池11,12,13に充放電した容量と二次電池11,12,13の残容量とを積算すると共に残容量のデータを生成する。生成された残容量のデータは、通信部76を介して外部の電気機器に送信される。CPU70は、また、A/D変換器74を介して温度センサ2の電圧を、例えば250m秒周期で時系列的に取り込み、取り込んだ電圧に基づいて電池温度を検出する。
【0035】
CPU70は、更に、AFE6及びA/D変換器74を介して二次電池11,12,13の過電圧を監視しており、過電圧状態を検知したときに、I/Oポート73を介してAFE6に検知信号を出力する。CPU70が、更に高い過電圧を検知したときは、I/Oポート73を介してOR回路34の他方の入力端子に検知信号が出力される。
【0036】
以下では、上述したパック電池で、非復帰スイッチ30のヒューズ31,31を溶断させることなく、保護IC5の動作が正常であるか否かを判定する方法について説明する。ここでは、二次電池11,12,13の電池電圧を、V11,V12,V13とし、入力端子51,52,53の接地電位に対する入力電位を、v51,v52,v53とする。
【0037】
図2は、保護IC5の入出力の時間変化を示すタイミングチャートである。図2Aは、入力電位v53及び接地電位(0V)の電位差Va(v53−0)を、図2Bは、入力電位v52,v53の電位差Vb(v52−v53)を、図2Cは、保護IC5の検知信号の状態を夫々示している。図2A〜図2Cにおいて、縦軸は電位差又はオン/オフ状態を表し、横軸は時間を表す。
【0038】
入力端子53に接続されている出力ポート731の出力がオフの場合、図2A,2Bに示すように、電位差Va,Vbの夫々は、二次電池13,12の電池電圧V13,V12そのものである。この状態では、保護IC5の検知信号がオフとなっている。
【0039】
次に時刻T1で、出力ポート731の出力がオンとなった場合、入力端子53の入力電位v53が接地電位(0V)に引き下げられる。この場合、電位差Va(v53−0)が0Vとなる一方、電位差Vb(v52−v53)が、入力端子52の入力電位及び接地電位の電位差、つまり、電池電圧V12,V13を加算したものとなる(図2B参照)。これにより、保護IC5が二次電池11,12,13の過電圧を検知するための電圧条件が満たされる。
【0040】
その後、上述したオン遅延時間(例えば2秒)が経過した時刻T2において、保護IC5の検知信号がオンとなった場合、I/Oポート73の入力ポート732から取り込まれるべき検知信号がオフ(0)からオン(1)に変化する。これをそのまま放置した場合、FET33がオンして非復帰スイッチ30のヒューズ31,31が溶断するため、本実施の形態では、時刻T3で出力ポート731の出力がオフに戻される。時刻T2からT3までの時間は、CPU70が入力ポート732から取り込んだ検知信号のオンを検出してから出力ポート731の出力をオフに戻すまでの時間であり、通常の処理では100ms以内となる。
【0041】
時刻T3以降では、電位差Va,Vbが時刻T1以前の状態に復帰するため、保護IC5が二次電池11,12,13の過電圧を検知するための電圧条件が満たされなくなる。その後、保護IC5のオフ遅延時間が経過した時刻T4において、保護IC5の検知信号がオフとなる。ここでのオフ遅延時間は、例えば16〜20msである。
【0042】
以上のことから、保護IC5が出力する検知信号の信号幅(検知信号がオンしている時間)を20ms前後に抑えることができる。一方、非復帰スイッチ30として広く用いられる抵抗器内蔵型の温度ヒューズでは、内蔵された抵抗器が発熱して温度ヒューズが溶断するまでに秒単位の時間を要するため、検知信号が出力されている間に非復帰スイッチ30が差動することがない。他の非復帰スイッチを用いた場合であっても、同様である。
【0043】
以下では、上述したパック電池の制御部7の動作を、それを示すフローチャートを用いて説明する。以下に示す処理は、ROM71に予め格納された制御プログラムに従ってCPU70により実行される。
図3は、保護IC5による保護動作の試験を実施するCPU70の処理手順を示すフローチャートである。図3の処理は、例えば、外部の電気機器から通信によって保護IC5の試験を指示されたときに起動される。
【0044】
図3の処理が起動された場合、CPU70は、出力ポート731の出力をオン(1)とすることにより、保護IC5の入力端子53を接地電位に接続する(S11)。上述したように、出力ポート731はオープンドレインで駆動されているため、出力がオフ(0)のときは、入力端子53が接地電位から切り離されている。つまり、出力ポート731は、入力端子53を接地電位に接続/切断するスイッチの役割を担う。
【0045】
その後、CPU70は、入力ポート732を介して保護IC5の検知信号(のオン/オフ状態)を取り込み(S12)、取り込んだ検知信号がオンとなったか否かを判定する(S13)。検知信号がオンとなっていない場合(S13:NO)、ステップS12に処理を戻して、オンとなるまでステップS12,13の処理を継続する。
【0046】
検知信号がオンとなった場合(S13:YES)、CPU70は、出力ポート731の出力をオフ(0)とすることにより、保護IC5の入力端子53を接地電位から切り離す(S14)。次いで、CPU70は、検査完了のメッセージのデータを生成して、通信部76経由で外部の電気機器に出力した(S15)後に、図3の処理を終了する。
【0047】
以上のように本実施の形態によれば、3つ直列に接続された二次電池の接続点のうちの1つに抵抗器(一のインピーダンス回路)を介して接続されている保護ICの入力端子を、該入力端子に接続されたオープンドレインの出力ポートの出力をオンすることによって接地電位に接続する。
これにより、前記抵抗器(一のインピーダンス回路)の一端に接続されている保護ICの入力端子の電位が強制的に低下せしめられるため、各抵抗器(インピーダンス回路)を介して保護ICに印加されている二次電池の電池電圧のうち、前記抵抗器(一のインピーダンス回路)を介して保護ICに印加されている電池電圧の1つが、保護IC側で強制的に上昇せしめられる。
その後、保護ICが二次電池の過電圧状態を検知して検知信号を出力した場合、入力ポートを介して検知信号を検出したときにオープンドレインの出力ポートの出力をオフして、保護ICの入力端子を接地電位から切り離すことにより、二次電池の電池電圧が各抵抗器(インピーダンス回路)を介してそのまま保護ICに印加されるようになる。
このため、保護ICが検知する二次電池の過電圧状態が解消して、検知信号の出力が短時間のうちに停止されることとなり、非復帰スイッチのヒューズの溶断が回避される。
従って、完成品の出荷状態で非復帰スイッチを作動させることなく検査することが可能となる。
【0048】
また、最も低電位側の二次電池の正極端子に他端が接続されているインピーダンス回路(抵抗器)の一端と、保護ICの入力端子との接続点を、オープンドレインの出力ポートの出力をオンすることによって、二次電池の負極端子と同等の電位にある接地電位に接続する。
この場合、保護ICの入力端子の電位を変動させるための電圧源の電位が、最も低電位側の二次電池の負極端子の電位と同等でよいため、特別な電圧源を準備する必要をなくすことが可能になると共に、前記電圧源に接続するスイッチ回路の構成を、オープンドレインのような簡単な構成にすることが可能となる。
更に、保護ICの入力端子の電位が強制的に低下せしめられたときに、各入力端子間の電位の高低関係が逆転することがないため、保護ICの入力端子間の電圧が逆方向の耐電圧(逆耐圧)を超えないようにすることが可能となる。
【0049】
更に、インピーダンス回路が抵抗回路であるため、オープンドレインの出力ポートの出力がオン/オフしたときに誘導電圧が発生したり、出力ポートにサージ電流が流れたりする虞がなくなると共に、各回路内の電圧及び電流の算出を容易にすることが可能となる。
【0050】
尚、本実施の形態にあっては、保護IC5の入力端子53を、出力ポート731によって接地電位に接続したが、他のスイッチング素子を用いて接地電位とは異なる電圧源に接続するようにしてもよいし、電流源に接続して、入力端子53の電位を変動させてもよい。
【0051】
また、本実施の形態にあっては、保護IC5の入力端子53の電位を接地電位まで引き下げたが、これに限定されるものではなく、例えば、入力端子52の電位を、二次電池11の正極端子と同等の電位まで引き上げるようにしてもよい。具体的には、ドレインが入力端子52に接続されており、ソースが二次電池11の正極端子に接続されているPチャネル型のFETを用意しておき、入力端子52の電位を変動させるに際して、前記Pチャネル型のFETをオンさせるようにすればよい。
【0052】
更に、本実施の形態にあっては、マイクロコンピュータからなる制御部7のI/Oポート73を用いて、入力端子53の電位を変動させた後に、保護IC5の検知信号を検出したが、これらの処理を、ワイヤードロジック等によるハードウェアで構成された回路で実行するようにしてもよい。
【0053】
(変形例)
上述の実施の形態に係るパック電池では、保護IC5の入力端子53及び出力ポート731間に介装されている抵抗器44の抵抗値をゼロオームとしたが、本変形例に係るパック電池では、抵抗器44が有限の抵抗値を有している。これにより、出力ポート731の出力をオンにしたときの入力端子53の入力電位v53が、実施の形態に係るパック電池の場合とは異なる値となる。以下、実施の形態の図2A,2Bに示した電位差Va,Vbが、本変形例ではどのような値になるのかを説明する。以下では、抵抗器43,44の抵抗値をR43,R44とする。
【0054】
入力端子53に抵抗器44を介して接続されている出力ポート731の出力がオフの場合、実施の形態に係るパック電池と同様に、電位差Va,Vbの夫々は、二次電池13,12の電池電圧V13,V12そのものである。この状態では、保護IC5の検知信号がオフとなっている。
【0055】
次に時刻T1で、出力ポート731の出力がオンとなった場合、入力端子53の入力電位v53及び電位差Vaは、以下の式(1)で示される値になる。
【0056】
Va=v53=(R44/(R43+R44))×V13・・・(1)
【0057】
この場合の電位差Vbは、以下の式(2)で示される値になる。
【0058】
Vb=V12+V13−v53
=V12+(R43/(R43+R44))×V13・・・(2)
【0059】
つまり、実施の形態の図2Bに示すVbの値が、本変形例では、時刻T1からT3までの間において、式(1)で示される値だけ低下する。ここで低下する電圧は、二次電池13の電池電圧V13を、抵抗器43,44で分圧した電圧に応じて変化する。
つまり、式(2)の右辺に示す分圧比を適当に設定することにより、入力端子52,53間の電位差の上限値を制限することができる。
【0060】
尚、変形例に係るパック電池のその他の構成は、実施の形態に係るパック電池の構成と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0061】
以上のように、本変形例によれば、保護ICの入力端子を接地電位に接続するオープンドレインの出力ポートと直列に抵抗器が接続されているため、出力ポートの出力がオンしたときに保護ICの入力端子に生じる電位変動の大きさが、保護ICの入力端子に接続された2つの抵抗器による分圧回路の分圧比に応じて低減される。
従って、上記分圧比を適当に定めることにより、保護ICの入力端子間の電圧が順方向の耐電圧を超えないようにすることが可能となる。
【0062】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
11,12,13 二次電池
30 非復帰スイッチ
31,31 ヒューズ
41,42,43 抵抗器(インピーダンス回路、抵抗回路)
44 抵抗器(第2の抵抗回路)
5 保護IC(保護回路)
6 AFE
7 制御部
70 CPU
71 ROM
72 RAM
731 出力ポート(スイッチ回路、スイッチ手段)
732 入力ポート(検出回路、検出手段)
76 通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された複数の二次電池と、該二次電池の充放電路に介装されており、該充放電路を遮断する非復帰スイッチと、前記二次電池の各接続点に所定のインピーダンス回路を介して接続されており、夫々の二次電池が所定の過電圧状態にあることを検知する保護回路とを備え、該保護回路の検知信号によって前記非復帰スイッチが作動するパック電池を検査する方法において、
一のインピーダンス回路及び保護回路の接続点を所定の電圧源又は電流源に接続/切断するスイッチ回路と、
前記検知信号を検出する検出回路とを備え、
前記スイッチ回路を接続し、
接続後に前記検知信号を検出したか否かを判定し、
検出した場合、前記スイッチ回路を切断すること
を特徴とするパック電池の検査方法。
【請求項2】
前記一のインピーダンス回路は、最も低電位側(又は高電位側)の二次電池の正極端子(又は負極端子)が接続される接続点に接続されており、
前記スイッチ回路は、前記最も低電位側(又は高電位側)の二次電池の負極端子(又は正極端子)の電位と同等の電位を供給する所定の電圧源に接続/切断するようにしてあること
を特徴とする請求項1に記載のパック電池の検査方法。
【請求項3】
前記インピーダンス回路は、抵抗回路であることを特徴とする請求項1又は2に記載のパック電池の検査方法。
【請求項4】
前記スイッチ回路と直列に他の抵抗回路を接続してあることを特徴とする請求項3に記載のパック電池の検査方法。
【請求項5】
直列接続された複数の二次電池と、該二次電池の充放電路に介装されており、該充放電路を遮断する非復帰スイッチと、前記二次電池の各接続点に所定のインピーダンス回路を介して接続されており、夫々の二次電池が所定の過電圧状態にあることを検知する保護回路とを備え、該保護回路の検知信号によって前記非復帰スイッチが作動するパック電池において、
一のインピーダンス回路及び保護回路の接続点を所定の電圧源又は電流源に接続/切断するスイッチ手段と、
前記検知信号を検出する検出手段と、
前記スイッチ手段を接続した場合、前記検出手段が検出したか否かを判定する手段とを備え、
該手段が検出したと判定した場合、前記スイッチ手段を切断するようにしてあること
を特徴とするパック電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−106442(P2013−106442A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249001(P2011−249001)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】