説明

パッケージ型消火装置

【課題】消火用ホースを引き出した際の、消火用ホースの開閉扉や筐体内部の構成部品への干渉を低減し、破損や操作性低減を解消したパッケージ型消火装置を提供する。
【解決手段】前面に開閉扉2を備える筐体1内に、消火剤充填容器3と、基端が前記消火剤充填容器に接続されて消火剤の供給を受け先端に設けられた消火用ノズル5から消火剤を噴射する消火用ホース4と、を収納したパッケージ型消火装置において、前記消火用ホース4を、基端から最初に前記筐体1の下部に立ち下げて固定する前記筐体1の下部に設けられたホース押さえ部8を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はパッケージ型消火装置、特に装置筐体内の消火用ホースの巻き回しに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のパッケージ型消火装置は、例えば下記特許文献1に示されるように、筐体内に消火用ホースを巻き回して収納するが、消火用ホースの基端は構造上、例えば消火剤充填容器の上部よりさらに高い、筐体全体の上部側にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−290475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような、消火用ホースの基端が筐体全体の比較的高い位置にある構造のパッケージ型消火装置では、火災を消火するために消火用ホースを最後まで引き出したときに、消火用ホースが上部方向に引っ張られるので、開閉扉に当たって開閉扉または消火用ホースを破損したり、開閉扉の下面に引っ掛かって消火用ホースの操作性を低下させる恐れがあった。
また、筐体内部の突起している構成部品に引っ掛かって、構成部品を破損させる恐れがあった。
さらにまた、例えば、工場などの広域な監視区域にパッケージ型消火装置が分散配置されるときに、床面固定のみで壁面固定できない場所に配置されることがあるが、消火用ホースの基端が高い位置にあるため、引き出し力の作用により、筐体全体が倒れる恐れがあった。
このように、パッケージ型消火装置を安全に使用するのに支障をきたす場合があった。
【0005】
この発明は上記の課題を解消するためになされたもので、消火用ホースを引き出した際の、消火用ホースの開閉扉や筐体内部の構成部品への干渉を低減し、破損や操作性低減を解消したパッケージ型消火装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、前面に開閉扉を備える筐体内に、消火剤充填容器と、基端が前記消火剤充填容器に接続されて消火剤の供給を受け先端に設けられた消火用ノズルから消火剤を噴射する消火用ホースと、を収納したパッケージ型消火装置において、前記消火用ホースを、基端から最初に前記筐体の下部に立ち下げて固定する前記筐体の下部に設けられたホース押さえ部を備えたことを特徴とするパッケージ型消火装置である。
【発明の効果】
【0007】
この発明では、消火用ホースを引き出した際の、消火用ホースの開閉扉や筐体内部の構成部品への干渉を低減し、破損や操作性低減を解消したパッケージ型消火装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の一実施の形態によるパッケージ型消火装置の開閉扉を開いた状態の構成を示す図である。
【図2】この発明における消火用ホースの引き出し方向に応じて向きが変わる構成を有するホース押さえ部の一例を示す図である。
【図3】この発明における消火用ホースが着脱可能な構造を有するホース押さえ部の一例を示す図である。
【図4】この発明における消火用ホースの引き出し方向に応じて向きが変わりかつ消火用ホースが着脱可能な構造を有するホース押さえ部の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明によるパッケージ型消火装置を実施の形態に従って図面を用いて説明する。なお、同一もしくは相当部分は同一符号で示し、重複する説明は省略する。
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の一実施の形態によるパッケージ型消火装置の開閉扉を開いた状態の構成を示す図であり、(a)が正面図、(b)は(a)の図面の右側から見た一部を透視して示した側面図である。なお図1のパッケージ型消火装置は泡状の消火剤を噴射する泡消火装置のものを一例として示しているが、本願はこれに限定されない。筐体1は前面にほぼ全体に亘って広がる開口1aを有する箱状の筐体である。両側の開閉扉2は筐体1の前面の開口1aを開閉自在に半分ずつ覆う。消火剤充填容器3は消火剤としての泡消火薬剤を充填したタンクである。消火用ホース4は保形性能を有する、例えば長さ方向に垂直な断面が中空円形状のゴムホースであり、基端が消火剤充填容器3側に接続されて消火剤の供給を受け先端に消火用ノズル5が接続されている。ホース格納部6は仕切り板6aと筐体1の両側の上部側面および上面のそれぞれの内壁で囲まれて形成され、消火用ホース4および消火用ノズル5を収納する。
【0011】
加圧用ガスボンベ7は加圧ガスを充填したタンクで、起動バルブ7aを操作することにより加圧ガスが放出され、圧力調整器9により加圧ガスの圧力が調整される。加圧ガス導入管10は加圧ガスを消火剤充填容器3に導入するための管で、放出集合管11は消火用ホース4の基端が接続され、各消火剤充填容器3から放出された泡消火薬剤を消火用ホース4に導入する。消火用ホース4の先端に接続された消火用ノズル5のレバー5aは、消火用ノズル5から泡消火薬剤により生成される消火用泡(消火液)を放出するために操作されるレバーである。なお、消火用ノズル5は、発泡倍率が例えば5〜20と低い消火用泡(低発泡)を生成して放出する低発泡用放水部5bと、発泡倍率が例えば20〜80と比較的高い消火用泡(中発泡)を生成して放出する中発泡用放水部5cとを備えている。そして筐体1の底面1c(図1の(b)参照)の中央部の開口1a側寄りには、消火用ホース4が挿通されることにより底面1c上に消火用ホース4を固定するホース押さえ部8が設けられている。
【0012】
仕切り板6aは、図1には詳細に示されていないが、平面視で前面側が幅狭の略台形形状であり、両側の側面6bとそれぞれの対向する筐体1の側面の内壁との間にスペースSが設けられている。なお、仕切り板6aは、平面視で前面側が幅狭であればよく、略台形形状に限定されない。例えば、側面を円弧状にした形状、側面が複数の面で形成されていてもよい。
【0013】
消火用ホース4は、放出集合管11に接続された基端から、最初に下方に立ち下げられ、ホース押さえ部8に挿通されることにより底面1cの内壁上に固定される。ホース押さえ部8に挿通された消火用ホース4はその後、底面1cから、例えば図1の(a)に示されるように、筐体1を開口1a側から見た時の(以下同様)時計回りに、左側側面の内壁に沿って立ち上げられてホース格納部6に至る。そして筐体1の両側の上部側面および上面のそれぞれの内壁および仕切り板6aで囲まれたホース格納部6内に、時計回りに奥側から開口1a方向側に向かって順に巻き回される。そして先端の消火用ノズル5が、ホース格納部6内の巻き回された消火用ホース4の内側にくるように収められる。
【0014】
この消火用ホース4の収納作業について、さらに詳細に説明する。利用者が消火用ホース4をホース収納部6に時計回りに収納する場合について説明すると、まず利用者は、筐体1の左側側面の内壁に沿って立ち上げた消火用ホース4を、筐体1の左側側面側のスペースSに挿通させて、ホース格納部6内に導入した後、筐体1の右側側面側のスペースSに挿通させて、一旦、消火用ホース4の先端側をホース格納部6外に出す。つぎに、ホース収納部6内の消火用ホース4を筐体1の背面側に押しつけながら、ホース収納部6外の消火用ホース4の先端側を手で持って、仕切り板6aの右側側面6b上を摺動させながらホース格納部6内に導入して、順次、筐体1の両側の上部側面、上面および仕切り板6aのそれぞれの内壁で囲まれたホース格納部6内に、時計回りに奥側から開口1a方向側に向かって順に巻き回すことを繰り返す。そして先端の消火用ノズル5が、ホース格納部6内の巻き回された消火用ホース4の内側にくるように収める。このとき、消火用ホース4は、自身の復元力によりホース収納部6の内壁面に密着した略固定状態で収納される。
【0015】
このように、筐体1の上部にホース収納部6を設けたことで、利用者が立った状態のままで大きくかがまずに消火用ホース4の収納が行える。また、仕切り板6aが平面視で前面側が幅狭となるようにテーパ状の側面6bとなっているので、矩形形状などと比較して、仕切り板6aの前面と側面6bとによる角部に、消火用ホース4が引っ掛かることがなく、消火用ホース4の先端側をホース格納部6内に導入しやすい。なお、筐体1の両側の側面との間に、それぞれ所定のスペースSが設けられているので、利用者に合わせて、時計回りの他に、反時計回りにも巻き回して収納することもできる。
【0016】
つぎに、火災が発生した場合について説明すると、利用者はまず、開閉扉2を開けて起動バルブ7aを開く。すると加圧用ガスボンベ7からの加圧ガスが圧力調整器9で所定の圧力に調整されて、加圧ガス導入管10を介して各消火剤充填容器3内に導入される。そして、各消火剤充填容器3内の泡消火薬剤が放出集合管11を介して消火用ホース4に導入される。つぎに、操作者は、消火用ノズル5を手に持って消火用ホース4をホース収納部6から引き出し、火災発生場所へと近づく。この際、消火用ホース4は、ホース収納部6内に消火用ノズル5が開口側にくるように奥から開口側に向かって時計回りに内巻きに巻回されて収納されているので、前方、左右いずれの方向にもスムーズに引き出すことができる。また、仕切り板6aが平面視で前面側が幅狭となるようにテーパ状の側面6bとなっているので、矩形形状などと比較して、仕切り板6aの前面と側面6bとによる角部に、消火用ホース4が引っ掛かることがなく、筐体1外部に繰り出すことができる。
【0017】
そして操作者は、最初に少し離れた場所から、レバー5aを操作して、低発泡用放水部5bから消火用泡(低発泡)を放出する。そしてある程度、火勢が鎮まったら、火災発生場所に近づいて、レバー5aを操作して中発泡用放水部5cから消火用泡(中発泡)を放出して、火災を鎮火する。火災鎮火後、操作者は、起動バルブ7a、レバー5aを閉じ、消火用ホース4をホース収納部6内に収納する。この際、ホース収納部6は筐体1に比べて小さいため、容易に消火用ホース4をホース収納部6内に消火用ノズル5が開口側にくるように(基端側が奥)奥から開口側に向かって時計回りに内巻きに巻回されるように収納することができる。そして開閉扉2を閉じる。
【0018】
このように、筐体1の上部にホース収納部6を設けたこと、消火用ノズル5を含めて消火用ホース4をホース収納部6内壁に沿って巻き回して収納したことで、利用者が立った状態のままで大きくかがまずに消火用ホース4の取り出しが行える。仕切り板6aが平面視で前面側が幅狭となるようにテーパ状の側面6bとなっているので、消火用ホース4をホース収納部6から筐体1の外部に引き出しやすい。
【0019】
ここで、火災を消火するために、開閉扉2を開いて筐体1から消火用ホース4を最後まで引き出したときに、消火用ホース4の筐体1での端部は、筐体1下部の底面1c上にホース押さえ部8で固定されているため、消火用ホース4の基端側が上部方向に引っ張られることがなくなり、消火用ホース4と開閉扉2や筐体1内部の突起している構成部品との干渉が極力抑えられ、開閉扉2、消火用ホース4、筐体1内部の構成部品が破損したり、引っ掛かりにより消火用ホース4の操作性が低下するのを抑制することができる。
また配置の都合から床面固定のみのパッケージ型消火装置の場合でも、消火用ホース4が引っ張られた時の作用点が筐体1の下部のホース押さえ部8であるため、引き出し力の作用により、筐体全体が倒れることを抑制することができる。
【0020】
ホース押さえ部8としては、例えば、筐体1の底面1c上に固定して設けられた、消火用ホース4を挿通可能な大きさの環状部材であればよいが、例えば図2に示すように、消火用ホース4の引き出し方向に応じて向きが変わる構造のものでもよい。図2のホース押さえ部8は、J字形金具81の長い方の端部がナット82により底面1cに回転可能に固定され、短い方の端部が自由端となって固定されていない構造を有する。これにより消火用ホース4を鋭角に曲げるような負荷を吸収できる。
【0021】
また、図3に示すように、消火用ホース4が着脱可能な構造のものでもよい。図3の(a)は上面図、(b)は側面図で、図3のホース押さえ部8は、底面1cに固定され間に消火用ホース4を挿通させる一対の固定部材83と、これらの固定部材83の上端間に延びて消火用ホース4が外れるのを防ぐボルト84と、このボルト84を固定部材83間に固定するナット85と、からなり、ナット85を外すことでボルト84が固定部材83から外れる構造を有する。これによりメンテナンス等がし易くなる。なお、ボルト84とナット85は、固定部材83間を脱着可能に連結する連結部材の一例であり、その他の構成でもよい。
【0022】
また、図4に示すように、消火用ホース4の引き出し方向に応じて向きが変わり、かつ消火用ホース4が着脱可能な構造のものでもよい。図4の(a)は上面図、(b)は側面図で、図3に示す一対の固定部材83、ボルト84、ナット85からなる構造部分を回転板86上に形成し、回転板86をボルト−ナット構造の支持部87により底面1cに回転可能に固定した構造を有する。これにより上述の負荷の吸収とメンテナンスのやり易さが得られる。
【0023】
なお、ホース押さえ部8の設置位置は筐体1の底面1cに限定されることなく、筐体1の下部(筐体1全体の重心位置より低い、筐体1内部の突起している構成部品の配置位置より低い等)であればよく、相当の効果を奏する。
【0024】
そして、筐体1の上部にホース収納部6を設けたこと、消火用ノズル5を含めて消火用ホース4をホース収納部6内壁に沿って巻き回して収納したことで、利用者が立った状態のままで大きくかがまずに消火用ホース4の収納、取り出しが行え、操作性が向上した。さらに図1に示すようにホース収納部6の仕切り板6aの両端(両側面)とそれぞれの対向する筐体1の側面の内壁との間にスペースSを設けたことで、消火用ホース4をホース収納部6に収納、装填する際の巻き回し作業をやり易くした。
【符号の説明】
【0025】
1 筐体、1a 開口、1c 底面、2 開閉扉、3 消火剤充填容器、4 消火用ホース、5 消火用ノズル、5a レバー、5c 中発泡用放水部、5b 低発泡用放水部、6 ホース格納部、6a 仕切り板、6b 側面、7 加圧用ガスボンベ、7a 起動バルブ、8 ホース押さえ部、9 圧力調整器、10 加圧ガス導入管、11 放出集合管、81 J字形金具、82 ナット、83 固定部材、84 ボルト、85 ナット、86 回転板、87 支持部、S スペース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開閉扉を備える筐体内に、消火剤充填容器と、基端が前記消火剤充填容器に接続されて消火剤の供給を受け先端に設けられた消火用ノズルから消火剤を噴射する消火用ホースと、を収納したパッケージ型消火装置において、
前記消火用ホースを、基端から最初に前記筐体の下部に立ち下げて固定する前記筐体の下部に設けられたホース押さえ部を備えたことを特徴とするパッケージ型消火装置。
【請求項2】
前記ホース押さえ部は、前記消火用ホースの引き出し方向に応じて向きが変わる構造を有することを特徴とする請求項1に記載のパッケージ型消火装置。
【請求項3】
前記ホース押さえ部は、前記消火用ホースが着脱可能な構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載のパッケージ型消火装置。
【請求項4】
前記筐体の上部にホース収納部を備え、前記消火用ホースが前記ホース押さえ部を挿通した後、前記ホース収納部に延び、先端側の前記消火用ノズルを含めて前記ホース収納部に内壁に沿って巻き回されて収納されることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載のパッケージ型消火装置。
【請求項5】
前記ホース押さえ部が、前記筐体の底面に設けられていることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のパッケージ型消火装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−196258(P2012−196258A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61002(P2011−61002)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】