説明

パッド印刷における転写方法及びパッド印刷機における転写装置

【解決手段】パッド5の外面6aに付着させた紫外線硬化性転写物11を被印刷物3に押し付けてパッド印刷を施す際に、紫外線硬化性転写物11をパッド外面6aに付着させてから、紫外線硬化性転写物11を被印刷物3に押し付けるまでの間に、パッド5内の空洞の内面側からパッド外面6a側に紫外線を通過させる。
【効果】パッド外面6aに付着させた紫外線硬化性転写物11のうちパッド外面6aに対し近い厚み方向内側部分11aが遠い厚み方向外側部分11bよりも紫外線により硬化し易くなるため、その外側部分11bが柔軟性を維持して被印刷物3に付着し易くなり、被印刷物3上の転写面が剥離しにくくなる。その反面、その内側部分11aがその外側部分11bよりも硬化してパッド外面6aから分離し易くなり、被印刷物3上の転写面の一部に剥離部分が生じにくくなって被印刷物3への印刷が良好に行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッドの外面に付着させたインク等の転写物を被印刷物に押し付けてパッド印刷を施す際の転写方法、並びに、その転写方法の実施の際に使用するパッド印刷機の転写装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1では、パッドの外面に付着させたインクを被印刷物に押し付けてパッド印刷を施す従来技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−276607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、パッドの外面に付着させたインクを被印刷物に押し付けた後にパッドを被印刷物から離すと、インクが被印刷物に転写される。しかし、そのインクはパッドの外面に付着させ易くするためにある程度溶けて柔らかな状態にあるため、パッドを被印刷物上のインク転写面から離す際にインクの一部がパッドに付着したまま残るおそれがあり、被印刷物上のインク転写面の一部に剥離部分が生じ易くなって被印刷物への印刷が良好に行われなくなる問題があった。
【0005】
この発明は、被印刷物上の転写面に対するパッドの分離性を高めて良好な印刷状態を得るパッド印刷の転写方法、並びに、このパッド印刷の転写方法の実施の際に使用するパッド印刷機の転写装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
後記実施形態の図面(図1〜4)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかるパッド印刷の転写方法においては、パッド部材4の外面6aに付着させた紫外線硬化性転写物11を被印刷物3に押し付けてパッド印刷を施す際に、パッド部材4を被印刷物3から離すまでに、パッド部材4内に設けた紫外線案内路8,9からパッド部材4の外面6a側に紫外線を通過させる。
【0007】
請求項2の発明にかかるパッド印刷の転写方法においては、パッド部材4の外面6aに付着させた紫外線硬化性転写物11を被印刷物3に押し付けてパッド印刷を施す際に、パッド部材4を被印刷物3から離すまでに、パッド部材4内に設けた空洞8の内面側からパッド部材4の外面6a側に紫外線を通過させる。
【0008】
請求項1の発明及び請求項2の発明では、パッド部材4の外面6aに付着させた紫外線硬化性転写物11のうちパッド部材4の外面6aに対し近い厚み方向内側部分11aが遠い厚み方向外側部分11bよりも紫外線により硬化し易くなる。そのため、紫外線硬化性転写物11の外側部分11bが柔軟性を維持して被印刷物3に付着し易くなり、被印刷物3上の転写面が剥離しにくくなる。その反面、紫外線硬化性転写物11の内側部分11aがその外側部分11bよりも硬化してパッド部材4の外面6aから分離し易くなり、被印刷物3上の転写面の一部に剥離部分が生じにくくなって被印刷物3への印刷が良好に行われる。
【0009】
請求項1または請求項2の発明を前提とする請求項3の発明において、前記紫外線は、紫外線硬化性転写物11をパッド部材4の外面6aに付着させてから、そのパッド部材4の紫外線硬化性転写物11を被印刷物3に押し付けるまでの間に、パッド部材4の内面側から外面6a側に通過する。請求項3の発明では、パッド部材4の外面6aに付着させた紫外線硬化性転写物11のうちパッド部材4の外面6aに対し近い厚み方向内側部分11aを遠い厚み方向外側部分11bよりも紫外線により硬化させ易くなる。
【0010】
請求項1または請求項2または請求項3の発明を前提とする請求項4の発明において、前記紫外線硬化性転写物11はインクまたは接着剤である。請求項4の発明では、インクまたは接着剤において請求項1または請求項2または請求項3の発明の効果を発揮させることができる。
【0011】
請求項5の発明にかかるパッド印刷機はパッド部材4の外面6aに付着させた転写物11を被印刷物3に押し付けてパッド印刷を施すものであって、その転写装置において、紫外線が通過し得るパッド部材4内には紫外線発生器10を接続した紫外線案内路8,9を設け、その紫外線案内路8,9からパッド部材4の外面6a側に紫外線を通過させる。
【0012】
請求項5の発明では、請求項1の発明にかかるパッド印刷の転写方法を実施し得るパッド印刷機の転写装置を提供することができる。
請求項6の発明にかかるパッド印刷機はパッド部材4の外面6aに付着させた転写物11を被印刷物3に押し付けてパッド印刷を施すものであって、その転写装置においては、紫外線が通過し得るパッド部材4内に空洞8を設け、パッド部材4にはその空洞8の内面側からパッド部材4の外面6a側に紫外線を通過させる紫外線発生器10を接続した。
【0013】
請求項6の発明では、請求項2の発明にかかるパッド印刷の転写方法を実施し得るパッド印刷機の転写装置を提供することができる。
請求項6の発明を前提とする請求項7の発明において、前記パッド部材4はその空洞8に設けた開口8aを閉塞する基板7を有し、この基板7にはこの空洞8の開口8aに連通する紫外線案内孔9を設け、この紫外線案内孔9に前記紫外線発生器10を接続した。請求項7の発明では、既存の基板7に設けた紫外線案内孔9によりパッド部材4内の空洞8に紫外線を容易に案内することができる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜4の発明にかかるパッド印刷の転写方法においては、被印刷物3上の転写面に対するパッド部材4の分離性を高めて良好な印刷状態を得ることができる。また、請求項5〜7の発明にかかるパッド印刷機の転写装置においては、請求項1〜4の発明にかかるパッド印刷の転写方法の実施の際に使用するパッド印刷機の転写装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は本実施形態にかかるパッド印刷機の転写装置を概略的に示す原理図であり、(b)はパッド内を示す部分断面図である。
【図2】(a)(b)はそれぞれパッド印刷工程を示す作用説明図である。
【図3】(a)(b)はそれぞれパッド印刷工程を示す作用説明図である。
【図4】(a)(b)(c)はそれぞれパッド印刷工程を示す作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
パッド印刷機の転写装置においては、図1(a)の原理図に示すように、機台1に載置された凹版プレート2及び被印刷物3の上方で機台1に支持されたパッド部材4が、その凹版プレート2の上方域と被印刷物3の上方域との間で横方向へ往復動するとともに、それらの上方域で昇降してその凹版プレート2と被印刷物3とに対し接近離間する。図1(b)に示すように、このパッド部材4は、シリコンゴムにより一体成形された外壁6からなるパッド5と、そのパッド5が取着された基板7とを備えている。そのパッド5には基板7により閉塞された開口8aを有する空洞8が紫外線案内路の一部として外壁6の内側に形成され、その基板7には空洞8の開口8aに連通する紫外線案内孔9が紫外線案内路の一部として形成されているとともに、この紫外線案内孔9に紫外線発生器10が接続されている。この紫外線発生器10により発生した紫外線は、基板7の紫外線案内孔9で屈折して開口8aから空洞8に入り、空洞8の内面側からパッド5の外面6a側へ外壁6を通って通過する。
【0017】
図2(a)に示す状態では、パッド部材4が凹版プレート2の上方域で待機位置にある。図2(b)に示す状態では、その凹版プレート2に紫外線硬化性転写物11(インクまたは接着剤)が供給される。図3(a)に示す状態では、待機位置のパッド部材4が下降してパッド5の外面6aが凹版プレート2に押し付けられる。図3(b)に示す状態では、凹版プレート2からパッド部材4が上昇してパッド5の外面6aに紫外線硬化性転写物11が付着される。図4(a)に示す状態では、紫外線硬化性転写物11が付着されて凹版プレート2の上方域で待機位置にあるパッド部材4が被印刷物3の上方域へ移動して待機位置になる。図4(b)に示す状態では、待機位置のパッド部材4が下降してパッド5の外面6aに付着された紫外線硬化性転写物11が被印刷物3に押し付けられる。図4(c)に示す状態では、被印刷物3からパッド部材4が上昇してパッド5の外面6aに付着された紫外線硬化性転写物11が被印刷物3に転写される。
【0018】
前記紫外線発生器10により発生した紫外線は、例えば、図3(b)に示すように紫外線硬化性転写物11が付着されて凹版プレート2の上方域で待機位置にあるパッド部材4が図4(a)に示すように被印刷物3の上方域へ移動して待機位置になるタイミングから、図4(b)に示すように待機位置のパッド部材4が下降してパッド5の外面6aに付着された紫外線硬化性転写物11が被印刷物3に押し付けられるタイミングまでの間、空洞8の内面側からパッド5の外面6a側へ外壁6を通って通過するが、少なくとも、図4(c)に示すように被印刷物3からパッド部材4が上昇してパッド5の外面6aが被印刷物3から離れてパッド5の外面6aに付着された紫外線硬化性転写物11が被印刷物3に転写される直前までに、好ましくは、図3(b)に示すように凹版プレート2からパッド部材4が上昇してパッド5の外面6aに紫外線硬化性転写物11が付着された直後から、図4(b)に示すようにパッド部材4が被印刷物3に下降してパッド5の外面6aに付着された紫外線硬化性転写物11が被印刷物3に押し付けられる直前までの間に、空洞8の内面側からパッド5の外面6a側へ外壁6を通って所定時間だけ通過する。紫外線の通過タイミングや通過時間は紫外線硬化性転写物11の種類や紫外線発生器10から発生する紫外線の強さなどに応じて任意に変更可能である。
【0019】
本実施形態は下記の効果を有する。
* 空洞8の内面側からパッド5の外面6a側へ外壁6を通って所定タイミングで所定時間だけ通過した紫外線により、パッド5の外面6aに付着させたインクまたは接着剤である紫外線硬化性転写物11のうち、パッド5の外面6aに対し近い厚み方向内側部分11aが遠い厚み方向外側部分11bよりも紫外線により硬化し易くなるため、紫外線硬化性転写物11の外側部分11bが柔軟性を維持して被印刷物3に付着し易くなり、被印刷物3上の転写面が剥離しにくくなる。その反面、紫外線硬化性転写物11の内側部分11aがその外側部分11bよりも硬化してパッド5の外面6aから分離し易くなり、被印刷物3上の転写面の一部に剥離部分が生じにくくなって被印刷物3への印刷が良好に行われる。
【0020】
* 空洞8に設けた開口8aを閉塞する基板7に紫外線案内孔9を設け、その紫外線案内孔9に紫外線発生器10を接続したので、既存の基板7に設けた紫外線案内孔9によりパッド5内の空洞8に紫外線を容易に案内することができる。
【0021】
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
・ インクカップ方式やインクトレー方式などの各種方式のパッド印刷機に本発明を応用することができる。
【0022】
・ 紫外線硬化性転写物としては、インクや接着剤以外の各種の転写物に本発明を応用することができる。
・ 紫外線発生器が接続される紫外線案内路としては、空洞8及び紫外線案内孔9以外に、パッド5の外壁6に形成した紫外線案内孔であってもよい。
【符号の説明】
【0023】
3…被印刷物、4…パッド部材、5…パッド、6a…パッドの外面、7…基板、8…パッドの空洞(紫外線案内路)、8a…空洞の開口、9…紫外線案内孔(紫外線案内路)、10…紫外線発生器、11…紫外線硬化性転写物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッド部材の外面に付着させた紫外線硬化性転写物を被印刷物に押し付けてパッド印刷を施す際に、パッド部材を被印刷物から離すまでに、パッド部材内に設けた紫外線案内路からパッド部材の外面側に紫外線を通過させることを特徴とするパッド印刷における転写方法。
【請求項2】
パッド部材の外面に付着させた紫外線硬化性転写物を被印刷物に押し付けてパッド印刷を施す際に、パッド部材を被印刷物から離すまでに、パッド部材内に設けた空洞の内面側からパッド部材の外面側に紫外線を通過させることを特徴とするパッド印刷における転写方法。
【請求項3】
前記紫外線は、紫外線硬化性転写物をパッド部材の外面に付着させてから、そのパッド部材の紫外線硬化性転写物を被印刷物に押し付けるまでの間に、パッド部材の内面側から外面側に通過することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパッド印刷における転写方法。
【請求項4】
前記紫外線硬化性転写物はインクまたは接着剤であることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3に記載のパッド印刷における転写方法。
【請求項5】
パッド部材の外面に付着させた転写物を被印刷物に押し付けてパッド印刷を施すパッド印刷機において、紫外線が通過し得るパッド部材内には紫外線発生器を接続した紫外線案内路を設け、その紫外線案内路からパッド部材の外面側に紫外線を通過させることを特徴とするパッド印刷機における転写装置。
【請求項6】
パッド部材の外面に付着させた転写物を被印刷物に押し付けてパッド印刷を施すパッド印刷機において、紫外線が通過し得るパッド部材内には空洞を設け、パッド部材にはその空洞の内面側からパッド部材の外面側に紫外線を通過させる紫外線発生器を接続したことを特徴とするパッド印刷機における転写装置。
【請求項7】
前記パッド部材はその空洞に設けた開口を閉塞する基板を有し、この基板にはこの空洞の開口に連通する紫外線案内孔を設け、この紫外線案内孔に前記紫外線発生器を接続したことを特徴とする請求項6に記載のパッド印刷機における転写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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