説明

パッド

【課題】パッド本体とパッドカバーとを一体的に結合して商品性を向上させること。
【解決手段】ペダルパッド22は、樹脂製材料によって形成された略平板状のパッド本体28と、金属製材料によって形成され、前記パッド本体28を被覆して該パッド本体28と一体的に結合されたパッドカバー30とから構成され、パッド本体28の側部には、パッドカバー30の枠体30aが矢印A方向に加圧されることにより角部44が弾性変形して、断面円弧状の変形部42となる複数の縦リブ36が等間隔離間して配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両等において、運転者の足が当接する各種ペダルの踏面やフットレストの踏面等に設けられるパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、車両等におけるペダルの踏面に取り付けられるペダルパッドをアルミ基材とゴム材とによって構成し、前記アルミ基材に筋状のスリットを形成すると共に、前記ゴム材を前記スリットに充填して筋状部を設けることにより、ペダルの側部に片寄って踏み込まれた場合であっても、ペダルの踏面に取り付けられたペダルパッドで靴底がすべることを抑制することができるとする技術的思想が開示されている。
【0003】
また、図6に示されるように、例えば、金属製のカバー部材に形成された複数の小孔を介してリベットを打ち込んだ後、前記リベットの一端部を加圧して潰すことにより、樹脂製のパッド本体と前記パッド本体を被覆するカバー部材とを一体的に固定することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−236179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記リベットによって金属製のカバー部材と樹脂製のパッド本体とを固定した場合、リベットで挟持された部位を除いた他の部位において、例えば、カバー部材及びパッド本体の製造誤差等によって前記カバー部材と前記パッド本体とを密着させることが困難であり、前記カバー部材と前記パッド本体との間隙によって、ペダル振動音や、カバー部材の浮き等が発生し、商品性(意匠的美観性)が劣化するという問題がある。
【0006】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、パッド本体とパッドカバーとを一体的に結合して商品性を向上させることが可能なパッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明は、運転者の足が当接されるパッド本体と、前記パッド本体の外面を被覆するパッドカバーとを備えたパッドにおいて、前記パッドカバーは、前記パッド本体の一部を変形させた状態で該パッド本体に固定されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、パッドカバーに対する加圧作用で前記パッドカバーとパッド本体の一部が当接し、前記パッド本体の一部が弾性変形することにより、パッド本体とパッドカバーとの密着性が増大し、パッド本体に対してパッドカバーを強固に固定することができる。
【0009】
この結果、本発明では、例えば、パッド本体及びパッドカバーに製造誤差等があった場合であっても、パッド本体とパッドカバーとの結合面における間隙を無くし、ペダル振動音や、パッドカバーの浮き等が発生することを防止して、商品性(意匠的美観性)を向上させることができる。
【0010】
さらに、本発明によれば、変形するパッド本体の一部として、例えば、パッド本体の側部にリブを形成した場合、パッドカバーに対する加圧作用でパッド本体の側部に形成されたリブのリブ先端部が潰れて弾性変形し、パッド本体とパッドカバーとの密着性が増大することにより、パッド本体に対してパッドカバーを強固に固定することができる。
【0011】
また、変形するパッド本体の一部として、例えば、パッド本体の側部に弾性片を形成した場合、パッドカバーに対する加圧作用でパッド本体の側部に形成された弾性片が弾性変形して屈曲し、パッド本体とパッドカバーとの密着性が増大することにより、パッド本体に対してパッドカバーを強固に固定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、パッド本体とパッドカバーとを一体的に結合して商品性を向上させることが可能なパッドが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るパッドが適用されたアクセル用ペダルを備えた車両の一部省略斜視図である。
【図2】(a)は、図1に示すアクセル用ペダルの正面図、(b)は、前記アクセルペダルの背面図、(c)は、前記アクセルペダルを構成するパッドカバーの正面図である。
【図3】(a)は、前記アクセル用ペダルを構成するペダルパッドの一部破断斜視図、(b)は、前記ペダルパッドからパッドカバーを外したパッド本体の一部破断斜視図である。
【図4】(a)〜(d)は、パッド本体に対してパッドカバーが装着される製造工程を示す一部破断斜視図である。
【図5】(a)〜(d)は、パッド本体に対してパッドカバーが装着される他の製造工程を示す一部破断斜視図である。
【図6】本出願人が案出した従来技術に係るパッドの固定構造を示す一部破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るパッドが適用されたアクセル用ペダルを備えた車両の一部省略斜視図、図2(a)は、図1に示すアクセル用ペダルの正面図、図2(b)は、前記アクセルペダルの背面図、図2(c)は、前記アクセルペダルを構成するパッドカバーの正面図である。
【0015】
図1に示されるように、自動車(車両)10の運手席の前面に配設されたインストルメントパネル12の下方には、図示しないフロントドアに近接して、アクセル用ペダル14、ブレーキ用ペダル16、フットレスト18が順に配設されている。
【0016】
なお、本実施形態では、以下の説明において、アクセル用ペダル14に適用した場合を例示しているが、これに限定されるものではなく、ブレーキ用ペダル16、フットレスト18や図示しないクラッチ用ペダル等にも適用される。また、自動車10等の車両に備えられるペダルに限定されるものではなく、各種装置や各種工作機構等において、運転者(操作者)の足が当接されるパッドであれば、適用可能である。
【0017】
アクセル用ペダル14は、図2に示されるように、ペダルアーム20とペダルパッド22とから構成される。前記ペダルアーム20の一端部は、図2(b)に示されるように、円筒状の連結部材24を介してペダルパッド22に連結されている。なお、図2(a)、(b)において、参照数字26は、アクセル用ペダル14を支持する支持プレートを示している。
【0018】
ペダルパッド22は、図2に示されるように、例えば、樹脂製材料によって形成された略平板状のパッド本体28と、金属製材料によって形成され、前記パッド本体28を被覆して該パッド本体28と一体的に結合されたパッドカバー30とから構成される。前記パッド本体28を形成する樹脂製材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)等の汎用樹脂やポリブチレンテレフタレート(PBT)等のエンジニアリングプラスチックを含み、好ましくは、伸び率1パーセント以上の樹脂製材料によって形成されるとよい。なお、前記パッド本体28とパッドカバー30とを、例えば、軟質製金属と硬質製金属とからなる金属製同士で形成してもよい。
【0019】
パッドカバー30は、図2(c)に示されるように、パッド本体28の外周形状に対応する形状からなる枠体30aを有するプレート部材によって構成され、前記プレート部材には、平面視して矩形状や台形状からなる複数の窓部32a〜32cが切り欠いて形成され、前記複数の窓部32a〜32cを通じてパッド本体28が外部に露呈するように設けられる(図2(a)参照)。
【0020】
また、パッドカバー30の側部には、図2(b)に示されるように、矢印方向に沿って内側に折り曲げて加締められることにより、前記パッドカバー30をパッド本体28に対して挟持する4つの爪片34が設けられる。
【0021】
図3(a)は、前記アクセル用ペダルを構成するペダルパッドの一部破断斜視図、図3(b)は、前記ペダルパッドからパッドカバーを外したパッド本体の一部破断斜視図である。
【0022】
樹脂製材料によって形成されたパッド本体28の側部には、図3(b)に示されるように、縦方向の側壁28aと横方向の底壁28bとが相互に略直交するように形成され、前記側壁28a及び底壁28bとの間に複数の縦リブ(パッド本体の一部)36が一体的に設けられる。
【0023】
この縦リブ36は、パッド本体28の側壁28aから外方に向かって所定長だけ突出すると共に、パッド本体28の底壁28bと略直交する方向に立設する壁部38によって形成される。隣接する縦リブ36、36同士の間には、略矩形状の溝部40が形成される。この場合、複数の縦リブ36は、パッド本体28の外周面(側壁28a)の全周にわたって等距離だけ離間して配置される。
【0024】
縦リブ36を構成する壁部38には、図3(b)に示されるように、後記する製造工程でパッドカバー30の枠体30aを加圧したとき、前記枠体30aの内壁に当接して断面略円弧状に弾性変形する変形部42が設けられる。なお、この点については、後記で詳細に説明するが、図3(b)では、弾性変形して変形部42が形成されている状態を示している。
【0025】
本実施形態に係るパッドが適用されたアクセル用ペダル14は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその製造工程について説明する。
【0026】
図4(a)〜(d)は、パッド本体に対してパッドカバーが装着される製造工程を示す一部破断斜視図である。
【0027】
先ず、予め所定形状に製造されたパッドカバー30の枠体30aと、パッド本体28の側部に所定間隔離間して複数形成された縦リブ36とが対応するように位置決めしておく(図4(a)参照)。なお、縦リブ36のリブ先端は、未だ弾性変形されていないため変形部42が形成されておらず、図4(a)に示されるように、弾性変形前において直角状の角部44によって形成されている。
【0028】
図示しない加圧機構を用いてパッドカバー30の枠体30aを矢印A方向に沿って加圧することにより(図4(b)参照)、縦リブ36の壁部38で外方に向かって一番突出しているリブ先端の角部44が枠体30aの内壁に当接し、前記角部44が枠体30aの内壁で押圧されて弾性変形することにより、断面円弧状の変形部42が形成される(図4(c)参照)。
【0029】
加圧されたパッドカバー30の枠体30aの上部側端縁部46a及び下部側端縁部46bは、図4(c)に示されるように、パッド本体28の側壁28a及び底壁28bにそれぞれ当接して係止される。図4(d)に示されるようにパッド本体28に対してパッドカバー30が固定された後、さらに、パッドカバー30の側部に設けられた4つの爪片34を、図2(b)の矢印方向に沿って内側に折り曲げて加締めることにより、前記パッドカバー30をパッド本体28に対して強固に挟持することができる。
【0030】
このように、本実施形態では、パッド本体28の側部に所定間隔離間して配置された複数の縦リブ36がパッドカバー30の枠体30aの内壁に当接する当接面となり、前記枠体30aが矢印A方向に加圧されて前記複数の縦リブ36の角部44が弾性変形して断面円弧状の変形部42となることにより、パッド本体28に対してパッドカバー30が一体的に固定される。
【0031】
換言すると、パッドカバー30の枠体30aに対する加圧作用でパッド本体28の側部に形成された複数の縦リブ36の角部44が潰れて弾性変形し、前記複数の縦リブ36の角部44による弾性力(原形状復帰力)によってパッドカバー30の枠体30aの内壁を外方に向かって押圧する力が作用し、パッド本体28とパッドカバー30との密着性が増大することにより、パッド本体28に対してパッドカバー30を強固に固定することができる。
【0032】
この結果、本実施形態では、例えば、パッド本体28及びパッドカバー30に製造誤差等があった場合であっても、パッド本体28とパッドカバー30との結合面における間隙を無くし、ペダル振動音や、パッドカバー30の浮き等が発生することを防止して、商品性(意匠的美観性)を向上させることができる。
【0033】
なお、本実施形態では、パッド本体28の側部に沿って複数の縦リブ36を等間隔に配置することにより、縦リブ36の変形部42を均一に弾性変形させることができ、より一層密着性を増大させて強固に固定することができる。また、本実施形態では、パッド本体28を樹脂製材料で形成して弾性域を確保することにより、弾性変形した縦リブ36の変形部42とパッドカバー30との結合面における面圧を増大させて、密着性の向上に寄与させることができる。
【0034】
図5(a)〜(d)は、パッド本体に対してパッドカバーが装着される他の製造工程を示す一部破断斜視図である。
【0035】
この他の製造工程では、前記縦リブ36に代替して、図5(a)に示されるように、パッド本体28の側壁28aから底壁28bと略平行に突出する樹脂製の弾性片50を前記パッド本体28の外周面(側壁)の全周にわたって配置している点で、前記製造工程と相違している。
【0036】
すなわち、この他の製造工程では、図5(c)に示される弾性変形領域において弾性変形可能な弾性片(パッド本体の一部)50をパッド本体28の側部に所定間隔離間して複数配置し、前記弾性片50をパッドカバー30の枠体30aの内壁に当接する当接面としている。
【0037】
この場合、前記パッドカバー30の枠体30aが矢印A方向に加圧され(図5(b)参照)、前記複数の弾性片50が弾性変形して屈曲した変形部42aが形成されることにより、パッド本体28とパッドカバー30との密着性が増大することにより、パッド本体28に対してパッドカバー30を強固に固定することができる。なお、その他の作用効果は、前記製造工程と同一であるため、その詳細な説明を省略する。
【0038】
本実施形態では、変形するパッド本体28の一部として、パッド本体28の側部に形成された縦リブ36や弾性片50を例示して説明しているが、これに限定されるものではなく、パッド本体28の一部であって弾性変形可能なその他のものであってもよい。
【符号の説明】
【0039】
14 アクセル用ペダル
22 ペダルパッド
28 パッド本体
30 パッドカバー
36 縦リブ(パッド本体の一部)
42、42a 変形部
50 弾性片(パッド本体の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の足が当接されるパッド本体と、前記パッド本体の外面を被覆するパッドカバーとを備えたパッドにおいて、
前記パッドカバーは、前記パッド本体の一部を変形させた状態で該パッド本体に固定されることを特徴とするパッド。
【請求項2】
前記変形するパッド本体の一部は、少なくとも、前記パッド本体の側部に形成されたリブ又は弾性片からなることを特徴とするパッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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