説明

パネルゾーンの構造及び鉄筋接合方法

【課題】 既存柱に新設の柱を添わせる耐震補強方法において、強固な構造で作業が容易なパネルゾーンの構造及び鉄筋接合方法を提供する。
【解決手段】 補強用の太い柱1aのネジ形状の鉄筋11と補強用の細い柱1bのネジ形状の鉄筋12が同一垂直線上にない場合に、両者を、筒状を斜め方向に折り曲げ、両端に開口部を備え、当該開口部の内径面にネジ溝を有する継手21,22と短いネジ形状の鉄筋13を用いて連結して接合するパネルゾーンの構造及び鉄筋接合方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存柱の外側に新しく柱を添わせる耐震補強の方法に係り、垂直方向に配筋された鉄筋を接合するパネルゾーンの構造及び鉄筋接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
耐震補強の方法として、既存の柱に、鉄筋を配筋した別の柱を新設し、既存の柱と新設した柱とをアンカーで固定して、既存の柱を補強することが行われていた。
【0003】
[従来の柱補強方法(側面説明図):図6]
従来の柱補強方法について図6を参照しながら説明する。図6は、従来の柱補強方法を示す側面説明図である。
図6に示すように、既存の縦(垂直)方向のコンクリート製の柱2と既存の横(水平)方向のコンクリート製の柱3とが建設されており、柱2には縦方向に複数の鉄筋2aが配筋され、柱3には横方向に複数の鉄筋3aが配筋されている。
【0004】
このような既存の柱の状況において、既存柱3の外壁に複数のアンカー4を打ち込んで固定し、新設の柱用の鉄筋11,12を配筋し、型枠で囲んでコンクリートを流し込み、アンカー4を介して既存の柱2と一体となるよう補強用の柱1を形成する。
図6では、柱1内には、径の大きい(太い)鉄筋11と、径の小さい(細い)鉄筋12が配筋されている。
【0005】
新設する柱に配筋される鉄筋は、本数をなるべく少なくする代わりに、径が太く、直径38〜51mmを使用する。
また、柱の大きさは、上階へ行く程に細く(柱断面積は小さく)なっている。
【0006】
[従来の柱補強方法(断面説明図):図7]
図6で説明した補強方法について図7を参照しながら説明する。図7は、従来の柱補強方法を示す断面説明図である。
図7では、補強用の柱と補強用の柱を結合した部分(パネルゾーン又は結合部分)の断面を示したものとなっている。
【0007】
既存の柱で、垂直方向に設立された柱2には、垂直方向に鉄筋2aが配筋され、水平方向の柱3,5にも水平方向に鉄筋3a,5aが配筋されている。
そして、既存の柱2に添わせて補強するために新設の柱1が形成されている。柱1内には、垂直方向に鉄筋11,12が配筋され、柱2と柱1とはアンカー4で固定される。
【0008】
[従来のパネルゾーン1:図8]
次に、従来のパネルゾーンの第1の接合例について図8を参照しながら説明する。図8は、従来のパネルゾーンの第1の接合を示す図である。
柱の補強は、建物の低い階(低層)では強度が要求されるため柱を太くする必要があり、高い階(高層)では低層に比べて強度が要求されないから柱を細くすることが通常行われている。
【0009】
図8の例では、補強用の太い柱と補強用の細い柱を接合するパネルゾーンにおける第1の接合を示すものであり、太い柱1aに対して細い柱1bの細い鉄筋12が長さl(エル)分差し込まれて固定(定着)されている。
長さlは、鉄筋の径をdとした場合に、l=40dと表され、例えば、鉄筋の径dが51mmであれば、約2mとなる。
【0010】
[従来のパネルゾーン2:図9]
また、従来のパネルゾーンの第2の接合例について図9を参照しながら説明する。図9は、従来のパネルゾーンの第2の接合を示す図である。
図9の例では、太い鉄筋11と細い配筋12を斜め方向に配筋し、両鉄筋を継手23で連結するものとなっている。
【0011】
鉄筋がネジ形状のネジ節鉄筋となっており、継手23の内面がそのネジ形状に対応したネジ溝が形成されてり、鉄筋に継手23を回し込んで定着するようになっている。
また、通常、継手23は太い鉄筋11の径に合わせたものとなっており、継手23の反対側に細い鉄筋12が挿入された場合には、内径面との隙間に接着剤を充填して固定するようになっている。
【0012】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2010−106559号公報「曲げジョイント筋」(大和ハウス工業株式会社)[特許文献1]、特開2001−129694号公報「建物の基礎の鉄筋構造及びその施工方法」(ミサワホーム株式会社)[特許文献2]、特開2005−016201号公報「鉄筋の継手」(有限会社仁メタル)[特許文献3]がある。
【0013】
特許文献1には、段違いの鉄筋を斜め方向に連結することが記載され、特許文献2には、直角に配筋された鉄筋をL字の継手フレームで連結することが記載され、特許文献3には、直角に配筋されたネジ状の鉄筋をL字の継手でネジ回転により結合することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2010−106559号公報
【特許文献2】特開2001−129694号公報
【特許文献3】特開2005−016201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記従来の柱の補強方法では、下側の補強用の柱と上側の補強用の柱とを接合する場合に、耐震の強度を高めて、両柱に配筋された鉄筋同士を連結する作業を容易に行うことができるものとはなっていないという問題点があった。
【0016】
具体的には、図8の例では、下の柱のコンクリートに上の柱の鉄筋を長さl差し込み、定着させる必要があり、鉄筋が余計に必要になって、更に、下の柱の鉄筋と上の柱の鉄筋を連結していないため、強度が十分ではないという問題がある。
【0017】
また、図9の例では、下の柱の鉄筋と上の柱の鉄筋を継手で連結するものではあるが、鉄筋を柱の幅に応じて斜め方向に設置する必要があるため、作業が繁雑となり、柱の下側と上側で鉄筋の配筋位置が端側か中央側かで異なるため、一定の耐震強度を維持するのが難しいという問題がある。
【0018】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、既存柱に新設の柱を添わせる耐震補強方法において、強固な構造で作業が容易なパネルゾーンの構造及び鉄筋接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、既存の柱の外側に添えて新設される耐震補強用の柱におけるパネルゾーンの構造であって、下層に形成される柱内に配筋され、ネジ節の第1の鉄筋と、上層に形成される柱内に配筋され、ネジ節の第2の鉄筋と、筒状を斜め方向に折り曲げて、両端の開口部の内径面にネジ溝が形成された第1の継手と、筒状を斜め方向に折り曲げて、両端の開口部の内径面にネジ溝が形成された第2の継手と、ネジ節の第3の鉄筋とを備え、第1の鉄筋と第2の鉄筋とが同一の垂直線上にない場合に、第1の鉄筋と第2の鉄筋を、第1の継手と、第3の鉄筋と、第2の継手とを用いて連結して接合したことを特徴とする。
【0020】
本発明は、既存の柱の外側に添えて新設される耐震補強用の柱におけるパネルゾーンの構造であって、下層に形成される柱内に配筋され、ネジ節の第1の鉄筋と、上層に形成される柱内に配筋され、ネジ節の第2の鉄筋と、筒状を斜め方向に折り曲げて、両端の開口部の内径面にネジ溝が形成された第1の継手と、筒状を斜め方向に折り曲げて、両端の開口部の内径面にネジ溝が形成された第2の継手と、ネジ節の第4の鉄筋と、ネジ節の第5の鉄筋と、円筒状で両端の開口部の内径面にネジ溝が形成された第3の継手とを備え、第1の鉄筋と第2の鉄筋とが同一の垂直線上にない場合に、第1の鉄筋と第2の鉄筋を、第1の継手と、第4の鉄筋と、第3の継手と、第5の鉄筋と、第2の継手とを用いて連結して接合したことを特徴とする。
【0021】
本発明は、上記パネルゾーンの構造において、第1の鉄筋と第2の鉄筋が複数本配筋されている場合、第2の鉄筋の下側同士、又は第2の鉄筋の下端に定着された第2の継手同士を帯筋で固定したことを特徴とする。
【0022】
本発明は、上記パネルゾーンの構造において、第2の鉄筋は第1の鉄筋に比べて細く、第2の継手における第2の鉄筋が挿入される開口部は、第2の鉄筋の外径に応じた大きさの内径を備え、第2の鉄筋のネジ形状に対応したネジ溝を有することを特徴とする。
【0023】
本発明は、上記パネルゾーンの構造における鉄筋接合方法であって、第1の鉄筋の上端に第1の継手の一端が定着されると共に第3の鉄筋の一端が第1の継手の他端奥方向に回し込まれており、第2の鉄筋の下端に第2の継手の一端が定着された状態で、第3の鉄筋の一端をゆるめて第3の鉄筋の他端を第2の継手の他端開口部にネジ回転により挿入して固定することを特徴とする。
【0024】
本発明は、上記パネルゾーンの構造における鉄筋接合方法であって、第2の鉄筋の下端に第2の継手の一端が定着されると共に第3の鉄筋の一端が第2の継手の他端奥方向に回し込まれており、第1の鉄筋の上端に第1の継手の一端が定着された状態で、第3の鉄筋の一端をゆるめて第3の鉄筋の他端を第1の継手の他端開口部にネジ回転により挿入して固定することを特徴とする。
【0025】
本発明は、上記パネルゾーンの構造における鉄筋接合方法であって、第1の鉄筋の上端に第1の継手の一端が定着されると共に第4の鉄筋の一端が第1の継手の他端奥方向に回し込まれ、第4の鉄筋の他端には第3の継手の一端が回し込まれて取り付けられ、第2の鉄筋の下端に第2の継手の一端が定着されると共に第5の鉄筋の一端が第2の継手の他端奥方向に回し込まれた状態で、第3の継手の一端をゆるめて第5の鉄筋の他端を第3の継手の他端開口部にネジ回転により挿入して固定することを特徴とする。
【0026】
本発明は、上記パネルゾーンの構造における鉄筋接合方法であって、第2の鉄筋の下端に第2の継手の一端が定着されると共に第5の鉄筋の一端が第2の継手の他端奥方向に回し込まれ、第5の鉄筋の他端には第3の継手の一端が回し込まれて取り付けられ、第1の鉄筋の上端に第1の継手の一端が定着されると共に第4の鉄筋の一端が第1の継手の他端奥方向に回し込まれた状態で、第3の継手の一端をゆるめて第4の鉄筋の他端を第3の継手の他端開口部にネジ回転により挿入して固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、既存の柱の外側に添えて新設される耐震補強用の柱におけるパネルゾーンの構造であって、ネジ節の第1の鉄筋が、下層に形成される柱内に配筋され、ネジ節の第2の鉄筋が、上層に形成される柱内に配筋され、第1の継手が、筒状を斜め方向に折り曲げて、両端の開口部の内径面にネジ溝が形成され、第2の継手が、筒状を斜め方向に折り曲げて、両端の開口部の内径面にネジ溝が形成され、ネジ節の第3の鉄筋を備え、第1の鉄筋と第2の鉄筋とが同一の垂直線上にない場合に、第1の鉄筋と第2の鉄筋を、第1の継手と、第3の鉄筋と、第2の継手とを用いて連結して接合したものとしているので、強固な構造で作業を容易にできる効果がある。
【0028】
本発明によれば、既存の柱の外側に添えて新設される耐震補強用の柱におけるパネルゾーンの構造であって、ネジ節の第1の鉄筋が、下層に形成される柱内に配筋され、ネジ節の第2の鉄筋が、上層に形成される柱内に配筋され、第1の継手が、筒状を斜め方向に折り曲げて、両端の開口部の内径面にネジ溝が形成され、第2の継手が、筒状を斜め方向に折り曲げて、両端の開口部の内径面にネジ溝が形成され、ネジ節の第4の鉄筋とネジ節の第5の鉄筋とを備え、第3の継手が、円筒状で両端の開口部の内径面にネジ溝が形成され、第1の鉄筋と第2の鉄筋とが同一の垂直線上にない場合に、第1の鉄筋と第2の鉄筋を、第1の継手と、第4の鉄筋と、第3の継手と、第5の鉄筋と、第2の継手とを用いて連結して接合したものとしているので、強固な構造で作業を容易にできる効果がある。
【0029】
本発明によれば、第1の鉄筋と第2の鉄筋が複数本配筋されている場合、第2の鉄筋の下側同士、又は第2の鉄筋の下端に定着された第2の継手同士を帯筋で固定した上記パネルゾーンの構造としているので、第2の鉄筋が広がることを防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態に係る第1のパネルゾーンの構造を示す概略図である。
【図2】第1の継手の概略図である。
【図3】第1の継手の断面図である。
【図4】第2の継手の断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る第2のパネルゾーンの構造を示す概略図である。
【図6】従来の柱補強方法を示す側面説明図である。
【図7】従来の柱補強方法を示す断面説明図である。
【図8】従来のパネルゾーンの第1の接合を示す図である。
【図9】従来のパネルゾーンの第2の接合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係るパネルゾーンの構造は、既存の柱の外側に添えて新設される耐震補強用の柱におけるものであって、下層に形成される柱内に配筋され、ネジ形状の第1の鉄筋と、上層に形成される柱内に配筋され、ネジ形状の第2の鉄筋と、筒状を斜め方向に折り曲げて、両端の開口部の内径面にネジ溝が形成された第1の継手と、筒状を斜め方向に折り曲げて、両端の開口部の内径面にネジ溝が形成された第2の継手と、ネジ形状の第3の鉄筋とを備え、第1の鉄筋と第2の鉄筋とが同一の垂直線上にない場合に、第1の鉄筋と第2の鉄筋を、第1の継手と、第3の鉄筋と、第2の継手とを用いて連結して接合したものであり、強固な構造で作業を容易にできるものである。
【0032】
また、上記第3の鉄筋の代わりに、第4の鉄筋、第3の継手、第5の鉄筋を用い、第1の鉄筋と第2の鉄筋を、第1の継手と、第4の鉄筋と、第3の継手と、第5の鉄筋と、第2の継手とを用いて連結して接合したものであり、バルコニー等の構造物があっても、強固な構造で作業を容易にできるものである。
【0033】
[パネルゾーンの接合1:図1]
本発明の実施の形態に係る第1のパネルゾーン(第1のパネルゾーン)の構造について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る第1のパネルゾーンの構造を示す概略図である。
第1のパネルゾーンは、図1に示すように、既存の柱に添わせる新設の柱として、下側の太い柱1aと、上側の細い柱1bが形成されるものであるが、柱1a内に垂直方向に複数配筋される鉄筋11が設立され、柱1b内に垂直方向に複数の鉄筋12が配筋されるようになっている。
【0034】
尚、下側の鉄筋11と上側の鉄筋12とは、柱1a,1bの形状に合わせて配筋されるため、同一の垂直線上に配筋されるとは限らない。図1でも異なる垂直線上に配筋した例を示しており、更に、鉄筋11は鉄筋12に比べて太い径となっている。そこで、鉄筋11を太い鉄筋、鉄筋12を細い鉄筋と呼ぶことにする。
【0035】
第1のパネルゾーンでは、鉄筋11と鉄筋12とを2つの継手21,22と短い鉄筋13を用いて連結している。つまり、鉄筋11と鉄筋12とを斜め方向に連結している。
ここで、斜め方向の連結としたのは、直角方向の連結であれば、耐震の強度が十分ではなく、更に、直角方向の連結であれば、鉄筋11,12のいずれか又は双方を延長することになるため、鉄筋の長さの節約にならないからである。
【0036】
斜め方向に連結する勾配は、第1の継手21の中心(折り曲がっている箇所)から第2の継手22の中心に対して垂直方向の長さをDとし、水平方向の長さをeとすると、e/Dが勾配となる。
また、継手21と継手22とを連結する短い鉄筋13は、鉄筋11と同じ太さの鉄筋となっている。
【0037】
[帯筋での固定]
尚、図1において、一方の鉄筋12の下側、又は一方の第2の継手22の垂直部分と、他方の鉄筋12の下側、又は他方の第2の継手22の垂直部分とを二重帯筋で連結して固定する。
一方の鉄筋12の下側等と他方の鉄筋12の下側等とを帯筋で結び付けるのは、鉄筋11が鉄筋12の下側を外側に引っ張って、鉄筋12が広がってしまうのを抑えるためである。
【0038】
[第1の継手:図2,図3]
次に、第1の継手21について図2及び図3を参照しながら説明する。図2は、第1の継手の概略図であり、図3は、第1の継手の断面図である。
第1の継手21は、図2,3に示すように、円筒形状を途中で「く」の字に斜め方向に折り曲げた形状となっており、両端に開口部21a,21bが設けられている。
【0039】
また、鉄筋11,12,13がネジ節鉄筋となっているのに対応して、第1の継手21における下側の開口部21aの内径は、鉄筋11等の外径に対応し、開口部21aの内径面には、ネジ節鉄筋のネジ形状に対応してネジ溝21cが形成されており、鉄筋をネジ回転により挿入して固定(定着)するようになっている。
同様に、第1の継手21における上側の開口部21bの内径は、鉄筋11等の外径に対応し、開口部21bの内径面にもネジ溝21dが形成されている。
【0040】
ここで、第1の継手21における下側の内径と上側の内径は、同じ大きさとなっており、同じ太さの外径を有する鉄筋11と鉄筋13とを連結するものである。
また、第1の継手21の「く」の字の傾きθ1は、図1で説明した勾配(e/D)によって定められる。勾配としては1/6,1/8,1/10などがある。従って、θ1=tan(e/D)で求められる。
【0041】
[第2の継手:図4]
次に、第2の継手22について図4を参照しながら説明する。図4は、第2の継手の断面図である。
第2の継手22は、外観上、第1の継手21と同様の形状をしているが、図4に示すように、上側の開口部22bが細い鉄筋12の外径に対応して狭い内径となっており、鉄筋12のネジ形状に対応してネジ溝22dが形成されている。
【0042】
尚、第2の継手22における下側の開口部22aとネジ溝22cは、第1の継手21における開口部とネジ溝と同様である。
また、第2の継手22の傾きθ2も勾配によって求められるものであり、傾きθ1と同様の傾きとしている。
【0043】
第2の継手22における上側の開口部22bに細い鉄筋12をネジ回転により挿入して固定し、下側の開口部22aに太い鉄筋13をネジ回転により挿入して固定し、太い鉄筋13と細い鉄筋12とを連結している。
【0044】
[鉄筋の接合方法1]
次に、第1のパネルゾーンにおける鉄筋の接合方法(第1の接合方法)を説明する。
柱1aに使用される鉄筋11が配筋され、また、柱1bに使用される鉄筋12が配筋された状態で、鉄筋11の上側先端に第1の継手21をネジ回転により挿入して取り付け、柱12の下側先端に第2の継手22をネジ回転により挿入して取り付ける。
【0045】
次に、第1の継手21又は第2の継手22のいずれか一方に鉄筋13の一端をネジ回転により、奥まで回し込み、他方の継手の開口部に鉄筋13の他端を回し込みながら、上記一端側を緩めて、継手21,22への鉄筋13の一端と他端の挿入部分の長さが同じ程度となるよう調整する。
このようにして、鉄筋11と鉄筋12が第1の継手21、鉄筋13、第2の継手22によって連結され、接合された状態となる。
【0046】
[パネルゾーンの接合2:図5]
次に、本発明の実施の形態に係る第2のパネルゾーン(第2のパネルゾーン)の構造について図5を参照しながら説明する。図5は、本発明の実施の形態に係る第2のパネルゾーンの構造を示す概略図である。
図1の例は、既存の柱の外壁に突出する構造物が存在しない場合であり、図5の例では、既存の柱の外壁にバルコニー等の突出する構造物1cが形成されている場合である。
【0047】
バルコニー等の構造物1cが存在する場合でも、補強用の柱は既存の柱に添うように形成されるが、バルコニー部分については、鉄筋を通す部分に穴を開けて、そこに鉄筋を通して接合し、その後、穴部分をコンクリートで埋め合わせるものとなっている。
【0048】
具体的に、図5のパネルゾーンは、図1と比較して、鉄筋11と鉄筋12を連結するのに、第1の継手21と、第2の継手22と、鉄筋13aと、鉄筋13bと、第3の継手23を用いている。
鉄筋13a,13bは、図1の鉄筋13と比べて半分以下と短いものである。
【0049】
第3の継手23は、両端に開口部を備え、両端の開口部は同じ大きさの内径を備えて貫通し、内径面にはネジ溝が形成されている。従って、ネジ節鉄筋を第3の継手23における一方の開口部からネジ回転により挿入すると、他方の開口部に貫通させることができるものである。
【0050】
[帯筋での固定]
尚、図5においても、一方の鉄筋12の下側、又は一方の第2の継手22の垂直部分と、他方の鉄筋12の下側、又は他方の第2の継手22の垂直部分とを二重帯筋で連結して固定する。これにより、鉄筋12が広がってしまうのを抑えることができる。
【0051】
[鉄筋の接合方法2]
次に、第2のパネルゾーンにおける鉄筋の接合方法(第2の接合方法)を説明する。
まず、図5に示すように、バルコニー等の構造物1cに鉄筋連結用の穴を形成する。穴は、幅wの長さで、奥行きは、継手21,22が図5に示す横向き方向(最も幅を取らない方向)で通すことができるものとなっている。
【0052】
柱1aに使用される鉄筋11の先端に第1の継手21を取り付けた状態で配筋され、また、柱1bに使用される鉄筋12の先端に第2の継手22を取り付けた状態で配筋される。
この場合、構造物1cに設けた穴に対して継手が入る方向に調整して鉄筋11,12の先端を穴に挿入する。
【0053】
そして、鉄筋13aの一端を第3の継手23の奥までネジを回して挿入し、第3の継手23が取り付けられた鉄筋13aの他端を第1の継手21にネジ回転で挿入する。
次に、鉄筋13bの一端を第2の継手22にネジ回転により挿入し、第3の継手23を鉄筋13aから回して緩めながら鉄筋13bの他端にネジ回転により挿入する。第3の継手23への鉄筋13a,13bの挿入長さが同じ程度になるよう調整する。
【0054】
また、別の方法として、鉄筋13bの一端を第3の継手23の奥までネジを回して挿入し、第3の継手23が取り付けられた鉄筋13bの他端を第2の継手22にネジ回転で挿入する。
次に、鉄筋13aの一端を第1の継手21にネジ回転により挿入し、第3の継手23を鉄筋13bから回して緩めながら鉄筋13aの他端にネジ回転により挿入する。第3の継手23への鉄筋13a,13bの挿入長さが同じ程度になるよう調整する。
このようにして、鉄筋11と鉄筋12が第1の継手21、鉄筋13a、第3の継手23、鉄筋13b、第2の継手22によって連結され、接合された状態となる。
【0055】
[実施の形態の効果]
第1のパネルゾーンの構造によれば、補強用の太い柱1aの鉄筋11と補強用の細い柱1bの鉄筋12を、継手21,22と短い鉄筋13を用いて連結しているので、連結作業を容易とし、耐震強度を高めると共に、余計な鉄筋を節約できる効果がある。
【0056】
第2のパネルゾーンの構造によれば、バルコニー等の構造物1cがある場合でも、該当箇所に穴を開け、その穴部分で、継手21,22,23と短い鉄筋13a,13bを用いて鉄筋11と鉄筋12とを連結しているので、最小限の穴部分での連結作業を容易とし、耐震強度を高めると共に、余計な鉄筋を節約できる効果がある。
【0057】
第1,2のパネルゾーンの構造では、鉄筋12の下側又は継手22の垂直部分を帯筋で固定するようにしているので、鉄筋12が鉄筋11に引っ張られて広がるのを防止できる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、既存柱に新設の柱を添わせる耐震補強方法において、強固な構造で作業が容易なパネルゾーンの構造及び鉄筋接合方法に好適である。
【符号の説明】
【0059】
1…柱、 1a…柱、 1b…柱、 1c…構造物、 2…柱、 2a…鉄筋、 3…柱、 3a…鉄筋、 4…アンカー、 5…柱、 5a…鉄筋、 11…鉄筋、 12…鉄筋、 13…鉄筋、 13a…鉄筋、 13b…鉄筋、 21…第1の継手、 21a…開口部、 21b…開口部、 21c…ネジ溝、 21d…ネジ溝、 22…第2の継手、 22a…開口部、 22b…開口部、 22c…ネジ溝、 22d…ネジ溝、 23…継手(第3の継手)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存の柱の外側に添えて新設される耐震補強用の柱におけるパネルゾーンの構造であって、
下層に形成される柱内に配筋され、ネジ節の第1の鉄筋と、
上層に形成される柱内に配筋され、ネジ節の第2の鉄筋と、
筒状を斜め方向に折り曲げて、両端の開口部の内径面にネジ溝が形成された第1の継手と、
筒状を斜め方向に折り曲げて、両端の開口部の内径面にネジ溝が形成された第2の継手と、
ネジ節の第3の鉄筋とを備え、
前記第1の鉄筋と前記第2の鉄筋とが同一の垂直線上にない場合に、前記第1の鉄筋と前記第2の鉄筋を、前記第1の継手と、前記第3の鉄筋と、前記第2の継手とを用いて連結して接合したことを特徴とするパネルゾーンの構造。
【請求項2】
既存の柱の外側に添えて新設される耐震補強用の柱におけるパネルゾーンの構造であって、
下層に形成される柱内に配筋され、ネジ節の第1の鉄筋と、
上層に形成される柱内に配筋され、ネジ節の第2の鉄筋と、
筒状を斜め方向に折り曲げて、両端の開口部の内径面にネジ溝が形成された第1の継手と、
筒状を斜め方向に折り曲げて、両端の開口部の内径面にネジ溝が形成された第2の継手と、
ネジ節の第4の鉄筋と、
ネジ節の第5の鉄筋と、
円筒状で両端の開口部の内径面にネジ溝が形成された第3の継手とを備え、
前記第1の鉄筋と前記第2の鉄筋とが同一の垂直線上にない場合に、前記第1の鉄筋と前記第2の鉄筋を、前記第1の継手と、前記第4の鉄筋と、前記第3の継手と、前記第5の鉄筋と、前記第2の継手とを用いて連結して接合したことを特徴とするパネルゾーンの構造。
【請求項3】
第1の鉄筋と第2の鉄筋が複数本配筋されている場合、前記第2の鉄筋の下側同士、又は前記第2の鉄筋の下端に定着された第2の継手同士を帯筋で固定したことを特徴とする請求項1又は2記載のパネルゾーンの構造。
【請求項4】
第2の鉄筋は第1の鉄筋に比べて細く、第2の継手における前記第2の鉄筋が挿入される開口部は、前記第2の鉄筋の外径に応じた大きさの内径を備え、前記第2の鉄筋のネジ形状に対応したネジ溝を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のパネルゾーンの構造。
【請求項5】
請求項1記載のパネルゾーンの構造における鉄筋接合方法であって、
第1の鉄筋の上端に第1の継手の一端が定着されると共に第3の鉄筋の一端が前記第1の継手の他端奥方向に回し込まれており、第2の鉄筋の下端に第2の継手の一端が定着された状態で、前記第3の鉄筋の一端をゆるめて前記第3の鉄筋の他端を前記第2の継手の他端開口部にネジ回転により挿入して固定することを特徴とする鉄筋接合方法。
【請求項6】
請求項1記載のパネルゾーンの構造における鉄筋接合方法であって、
第2の鉄筋の下端に第2の継手の一端が定着されると共に第3の鉄筋の一端が前記第2の継手の他端奥方向に回し込まれており、第1の鉄筋の上端に第1の継手の一端が定着された状態で、前記第3の鉄筋の一端をゆるめて前記第3の鉄筋の他端を前記第1の継手の他端開口部にネジ回転により挿入して固定することを特徴とする鉄筋接合方法。
【請求項7】
請求項2記載のパネルゾーンの構造における鉄筋接合方法であって、
第1の鉄筋の上端に第1の継手の一端が定着されると共に第4の鉄筋の一端が前記第1の継手の他端奥方向に回し込まれ、前記第4の鉄筋の他端には第3の継手の一端が回し込まれて取り付けられ、第2の鉄筋の下端に第2の継手の一端が定着されると共に第5の鉄筋の一端が前記第2の継手の他端奥方向に回し込まれた状態で、前記第3の継手の一端をゆるめて前記第5の鉄筋の他端を前記第3の継手の他端開口部にネジ回転により挿入して固定することを特徴とする鉄筋接合方法。
【請求項8】
請求項2記載のパネルゾーンの構造における鉄筋接合方法であって、
第2の鉄筋の下端に第2の継手の一端が定着されると共に第5の鉄筋の一端が前記第2の継手の他端奥方向に回し込まれ、前記第5の鉄筋の他端には第3の継手の一端が回し込まれて取り付けられ、第1の鉄筋の上端に第1の継手の一端が定着されると共に第4の鉄筋の一端が前記第1の継手の他端奥方向に回し込まれた状態で、前記第3の継手の一端をゆるめて前記第4の鉄筋の他端を前記第3の継手の他端開口部にネジ回転により挿入して固定することを特徴とする鉄筋接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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