説明

パネル体の格子構造

【課題】簡単な構造により、開閉の際にパネル体に衝撃が発生しても、格子同士の接触による音鳴りを軽減し防止する。
【解決手段】上枠4aと下枠4bと左右の縦枠4cとを方形状に枠組みした枠体4内に、複数の格子材5、6を前後で交差するように配置した門扉1において、前記格子材5、6同士を複数の交差部で前後で交差させ、交差部には、格子材5、6同士が連結される連結部と、格子材5、6同士が連結されない非連結部とを設け、前記連結部の格子材5、6間同士は間隔保持部11を介して連結され、前記非連結部の格子材5、6間には隙間12が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、跳ね上げ式門扉などのパネル体を構成する格子同士が接触しないようにする格子構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、複数の格子をクロス状、井桁状に交差させた構成の門扉は、スイング式や引き戸式だけでなく跳ね上げ式門扉においても使用されている。これらの門扉は可動構成であるため、その衝撃によって格子同士が撓み変形して接触し、衝撃音を発するのが問題となっている。このため、格子同士を隙間なく強く接合することが知られている。例えば、特許文献1には、格子材同士の交差部をリベット止めすることで隙間なく強接合している。
【0003】
また、格子同士の間に十分な隙間を形成することが行われている。例えば、特許文献2の面材ユニットでは、取付片に格子体をクロス状に取り付けているが、取付片の厚さ分だけ格子同士に隙間が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−125750号公報
【特許文献2】2001−241217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、格子同士を強接合する場合、全ての格子の交差部をリベット止めすることは作業が煩雑となり、コスト面から困難である。また、格子間に隙間を設ける構成では、一方の格子に隙間を保持するための部品を取り付ける必要があるから、この場合も、作業が煩雑となり、コストが高くなるという問題がある。
【0006】
本発明は上記問題点を解消し、簡単な構造により、開閉の際にパネル体に衝撃が発生しても、格子同士の接触による音鳴りを軽減し防止することができるパネル体の格子構造を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、上枠と下枠と左右の縦枠とを方形状に枠組みした枠体内に、複数の格子材を前後で交差するように配置したパネル体において、前記格子材同士を複数の交差部で前後で交差させ、交差部には、格子材同士が連結される連結部と、格子材同士が連結されない非連結部とを設け、前記連結部の格子材間同士は間隔保持部を介して連結され、前記非連結部の格子材間には隙間が形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記間隔保持部は、格子材の一部を隆起するように変形させた隆起部によって構成されたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2において、前記隆起部は、前後いずれか一方の側の格子材にのみ形成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項2又は3において、前記後側の格子材は、底面壁と底面壁の左右両側から後方に突出する側面壁とにより断面コ字状に形成され、前記後側の格子材に形成された隆起部は、底面壁から前面側に隆起するように形成され、前記後側の格子材の前記底面壁の反対側の開口部にはカバー材を配置したことを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記格子材をクロス状に組み、前記格子材の端部を前記枠体の内周面に形成された嵌合溝内に嵌入固定し、前記交差部のうち前記枠体の近傍に連結部を設け、固定具で連結固定したことを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記格子材を井桁状に組み、前記格子材の端部を前記枠体の内周面に形成された嵌合溝内に嵌入固定し、前記枠体の縦枠に沿って一定間隔で連結部を設け、固定具で連結固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、連結部の格子材間同士は間隔保持部を介して当接するので、固定具で確実に固定することができる。
【0014】
また、非連結部の格子材同士間には間隔保持部の高さ分だけの間隔が形成される。したがって、特に開閉時にパネル体が地面等にぶつかったとき、その衝撃によって格子材も変形するが、連結部には前後の格子材間が連結固定されているので、騒音が生じることがなく、また非連結部では、前後の格子材間に間隔が形成されているから、直接に接触する可能性は非常に小さい。したがって、開閉時の不快な音鳴りを有効に軽減又は防止することができるとともに、格子材同士の摩耗や塗装の剥げを軽減することができ、さらに耐久性も向上する。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、間隔保持部は、格子材の一部を隆起するように変形させた隆起部によって構成されているから、隆起部は皿加工によって形成することができ、この場合、中央に孔が形成されるから、リベットやビス止めにより連結材業を迅速に行うことができる。
【0016】
しかも、格子材同士の間隔は、格子材自体に形成した隆起部によって得ることができ、特別の間隔保持材を取り付ける必要はない。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、隆起部は、前後いずれか一方の側の格子材にのみ形成すればよいので、構造が簡単である。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、前記後側の格子材は、底面壁と底面壁の左右両側から後方に突出する側面壁とにより断面コ字状に形成され、前記後側の格子材に形成された隆起部は、底面壁から前面側に隆起するように形成され、前記後側の格子材の底面壁の反対側の開口部にはカバー材を配置したから、見掛け上は角筒状の格子材に隆起部を形成することができるとともに、固定用の固定具はカバー材によって外部から見えないように隠れるから、外観体裁もよい。
【0019】
請求項5又は6に係る発明によれば、格子材を斜めにクロス掛けした場合でも井桁状にした場合でも、上述の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る跳ね上げ式門扉の正面図
【図2】上記跳ね上げ式門扉の側面図
【図3】図1のA−A線上の拡大断面図
【図4】図1のB−B線上の拡大断面図
【図5】図4の一部の拡大図
【図6】後側の格子の一部の斜視図
【図7】(a)(b)は格子の交差部における非連結部と連結部の断面図
【図8】パネル体の他の実施形態の正面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態を図面によって説明する。図1は跳ね上げ式門扉を本発明の一実施形態とした場合の例で、図2〜図4において符号1は門扉(パネル体)であり、門扉1の両側には支持アーム2が固定され、支持アーム2の基部は支柱3に回動自在に取り付けられている。支持アーム2を上下方向に回動させることにより、門扉1を上下に開閉作動させることができる。
【0022】
門扉1はアルミニウムの押出形材製の上枠4aと下枠4bと左右の縦枠4cとを方形状に枠組みした枠体4内に、同じくアルミニウムの押出形材製の複数の斜めの格子材5、6を前後で交差するように配置したもので、格子材5、6はクロス状に組まれ、格子材5、6の端部は方形に組まれたパネル框7に保持された状態で、詳しくは図5に示されるように、枠体4の内周面に形成された嵌合溝8内に嵌入固定されている。交差部のうち最も枠体4側に近い交差部10aは、枠体4の近傍に配置されている。
【0023】
次に、格子材5、6の交差部には、格子材5、6同士が連結される連結部と、格子材5、6同士が連結されない非連結部とが設けられている。連結部は、図1に丸印で示した部分であり、非連結部は丸印が付いていない部分である。連結部は左右両側端においては全ての交差部10aであり、上下においては、上下枠4a、4bに最も近い交差部を除いて2番目に上下枠4a、4bに近い交差部と中央部の交差部とである。このように、全ての交差部が連結されているわけではない。交差部には連結されているものと連結されていないものとがある。
【0024】
次に、連結部の格子材5、6間同士は間隔保持部を介して連結され、非連結部の格子材5、6間には隙間12が形成されている。
【0025】
間隔保持部は、図6に示されるように、後側の格子材6の一部を隆起するように変形させた隆起部11によって構成されている。すなわち、前側の格子材5は単に断面が長方形に形成されているが、これに対し後側の格子材6は、底面壁6aと底面壁6aの左右両側から後方に突出する側面壁6bとにより断面コ字状に形成されている。そして、後側の格子材6には、上記連結部に対応する位置に、前面側に隆起する環状の隆起部11が形成されている。このような隆起部11は、底面壁6aの後面より前面に皿絞り加工をすることにより形成すればよい。バーリング加工によってもよい。なお、後側の格子材6は底面壁6aの反対側の開口部にカバー材13を備えている。カバー材13の背面側には係止片16が形成され、格子材6の側面壁6bの開口端内側の係止部17に係止している。
【0026】
上述のように、連結部の格子材5、6間同士は間隔保持部11を介して連結させると、連結部の格子材5、6間同士は間隔保持部11を介して当接するが、図7(a)に示すように、非連結部の格子材5、6同士間には間隔保持部11の高さ分だけの隙間12が形成される。そして、連結部では、同図(b)に示されるように、隆起部11の中央の孔からリベット14やビス15により前側と後側の格子材6を固定する。すなわち、図1、図3及び図4に示されるように、左右両側における全ての交差部と、上下において2番目に上下枠4a、4bに近い交差部とはリベット14により固定されている。これに対し、中央部の交差部には、ビス15によって固定されている。このように、枠体4の周囲に近い部分をリベット14で、中央部をビス15によって固定する理由は、リベットで固定する方が固定作業を迅速に行うことはできるが、リベット止めによる加工誤差は中央部に集積される傾向にあるので、中央部はビス止め、つまり手作業によって加工誤差を修正するためである。もちろん、全ての連結部の格子材をビス又はリベットあるいは別の固定具によって連結固定してもよい。
【0027】
上記構成によれば、連結部の格子材5、6間同士は間隔保持部11を介して当接するので、図7(b)に示されるように、リベット14とビス15とで確実に固定することができる。特に隆起部11を皿加工によって形成する場合は、中央に孔が形成された環状構造になっているので、リベットやビス止めにより連結作業を迅速に行うことができる。
【0028】
また、非連結部の格子材5、6同士間には、図7(a)に示されるように、間隔保持部11の高さ分だけの隙間12が形成される。したがって、特に開口閉鎖時に門扉1が下方に作動して地面にぶつかったとき、その衝撃によって格子材5、6も変形するが、連結部には前後の格子材5、6間が連結固定されているので、騒音が生じることがなく、また非連結部では、前後の格子材5、6間に隙間12が形成されているから、直接に接触する可能性は非常に小さい。したがって、開閉時の不快な音鳴りを有効に軽減又は防止することができるとともに、格子材5、6同士の摩耗や塗装の剥げを軽減することができ、さらに耐久性も向上する。
【0029】
しかも、格子材5、6同士の間隔は、格子材自体に形成した隆起部11によって得ることができ、特別の間隔保持部材を取り付ける必要はない。もちろん、間隔保持部材として、金属、合成樹脂等のワッシャを利用してもよい。
【0030】
なお、隆起部11は前側の格子材5に形成してもよく、あるいは前後両方の格子材5、6に設けてもよい。両方の格子材5、6に設ける場合は、両隆起部の先端同士を当接させればよいので、隆起部の高さは前述の形態の隆起部の高さの半分程度で前後の格子材5、6間に同じ間隔を保持することができる。
【0031】
さらに、後側の格子材6は、底面壁6aと底面壁6aの左右両側から後方に突出する側面壁6bとにより断面コ字状に形成され、前記後側の格子材6に形成された隆起部11は、底面壁6aから前面側に隆起するように形成され、前記後側の格子材6の底面壁6aの反対側の開口部にはカバー材13を配置したから、見掛け上は角筒状の格子材5、6に隆起部11を形成することができるとともに、固定用の固定具はカバー材13によって外部から見えないように隠れるから、外観体裁もよい。
【0032】
次に、格子材5、6による門扉1は上述のようなクロス格子に限定されない。図8に示す井桁格子であってもよい。同図において5aは縦格子材、6aは横格子材である。これらの格子材5a、6aにおいて横格子材6aの方が縦格子材5aよりも長い、横長の長方形状に形成されている。
【0033】
上記構成の門扉1においては、連結部は一定の間隔をおいて設ければよい。この場合、同図に丸印で示されるように、長さの短い縦格子材5aを中心に連結部を配置し、上下方向に配置されている交差部の横格子と縦格子とは全て連結固定する。横格子材6aに固定されない部分があると撓み変形が生じやすい。固定具はリベットでもビスでもよい。
【0034】
なお、井桁格子においても、一方の格子材には間隔保持用の隆起部が形成されていることは、上述の実施形態と同じである。
【0035】
また、パネル体は上述のような跳ね上げ式門扉に限定されない。衝撃を受ける可能性のある他のパネル体であってもよい。
【0036】
さらに、隆起部は上述のような環状構造に限定されない。中央が窪んだ凸状部として構成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 門扉
4 枠体
5、6 格子
11 隆起部(間隔保持部)
12 隙間
13 カバー材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠と下枠と左右の縦枠とを方形状に枠組みした枠体内に、複数の格子材を前後で交差するように配置した門扉において、前記格子材同士を複数の交差部で前後で交差させ、
交差部には、格子材同士が連結される連結部と、格子材同士が連結されない非連結部とを設け、前記連結部の格子材間同士は間隔保持部を介して連結され、前記非連結部の格子材間には隙間が形成されていることを特徴とするパネル体の格子構造。
【請求項2】
前記間隔保持部は、格子材の一部を隆起するように変形させた隆起部によって構成されたことを特徴とする、請求項1に記載のパネル体の格子構造。
【請求項3】
前記隆起部は、前後いずれか一方の側の格子材にのみ形成されたことを特徴とする、請求項2に記載のパネル体の格子構造。
【請求項4】
前記後側の格子材は、底面壁と底面壁の左右両側から後方に突出する側面壁とにより断面コ字状に形成され、前記後側の格子材に形成された隆起部は、底面壁から前面側に隆起するように形成され、前記後側の格子材の前記底面壁の反対側の開口部にはカバー材13を配置したことを特徴とする、請求項2又は3に記載のパネル体の格子構造。
【請求項5】
前記格子材をクロス状に組み、前記格子材の端部を前記枠体の内周面に形成された嵌合溝内に嵌入固定し、前記交差部のうち前記枠体の近傍に連結部を設け、固定具で連結固定したことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のパネル体の格子構造。
【請求項6】
前記格子材を井桁状に組み、前記格子材の端部を前記枠体の内周面に形成された嵌合溝内に嵌入固定し、前記枠体の縦枠に沿って一定間隔で連結部を設け、固定具で連結固定したことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のパネル体の格子構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−255356(P2010−255356A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108913(P2009−108913)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000191065)新日軽株式会社 (545)
【Fターム(参考)】