説明

パネル取付構造

【課題】パネルを容易に着脱することができるパネル取付構造を提供する。
【解決手段】パネル1を壁面12に着脱自在に取り付けるパネル取付構造であって、前記壁面12または前記パネルの背面1aのいずれか一方に係止部2、他方に該係止部に係止される被係止部3がそれぞれ複数設けられており、前記被係止部が前記係止部に係止されることにより前記パネルが前記壁面に取り付け固定され、前記パネルからの押圧によって複数の係止部が連動し前記被係止部への係止を行う連動部材9が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面にパネルを着脱自在に取り付けるパネル取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パネルを壁面に取り付けるパネル取付構造は、種々提案されており、例えば、下記特許文献1及び2が挙げられる。
【0003】
下記特許文献1には、パネルの裏面に設けられた支持部材に支持孔を形成し、壁面(支持壁部)に設けられたピンに支持孔の上縁を引っ掛け、その後、連結具によって支持部材と壁面とを連結するものが記載されている。
また下記特許文献2には、隣り合う間柱の各対向部位にそれぞれ取り付けられる左右一対の胴縁係止用取付金具に、パネルの裏面に設けられた胴縁の両端部を係止するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−211440号公報
【特許文献2】特開平8−319709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のものは、支持孔にピンを引っ掛けた後、連結具で固定するものであるため取り付けが容易とはいえず、また取り付けた後、簡単に取り外すことができない構造になっている。
上記特許文献2に記載のものは、パネルを上方に持ち上げて取付金具に胴縁を係止する必要がある。
従って、例えばパネルの長手方向の長さが床面から略天井までの長さを有するものの場合は、上方に持ち上げると天井にぶつけてしまうため、この取付構造を採用することができない。
また、パネルを取り外すときには廻り縁となる移動制止部材を取り外す必要があり、これも簡単に取り外すことができないものであった。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、パネルを容易に着脱することができるパネル取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るパネル取付構造は、パネルを壁面に着脱自在に取り付けるパネル取付構造であって、前記壁面または前記パネルの背面のいずれか一方に係止部、他方に該係止部に係止される被係止部がそれぞれ複数設けられており、前記被係止部が前記係止部に係止されることにより前記パネルが前記壁面に取り付け固定され、前記パネルからの押圧によって複数の係止部が連動し前記被係止部への係止を行う連動部材が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明において、複数の前記パネルが隙間を空けた状態で取り付けられ、複数の前記係止部と前記被係止部との係止状態の解除が、前記係止部側または前記被係止部側に設けられた解除レバーを前記隙間から操作することにより前記連動部材に連動されてなされるものとしてもよい。
【0009】
また本発明において、複数の前記係止部は、それぞれ上下動する係止スライダーの先側に形成され、複数の前記係止スライダーは上下方向に並設されており、該複数の前記係止スライダーのうち、最上方に設けられた前記係止スライダーは、ロックプレートにより前記被係止部を係止する方向の力を蓄積した状態でロックされており、前記ロックプレートが、前記パネルからの押圧を受けて前記最上方の係止スライダーに対するロック状態を解除することにより、前記連動部材によってすべての前記係止スライダーが移動し、前記被係止部が前記係止部に係止されるようしてもよい。
【0010】
さらに本発明において、複数の前記係止スライダーが、付勢部材により前記係止部が被係止部に係止する方向に付勢されており、最上方に設けられた前記係止スライダー以外の前記係止スライダーと前記連動部材とは、前記連動部材に設けられた長孔内に移動自在に挿入された軸部を介して最上方に設けられた前記係止スライダーの動きと連動するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るパネル取付構造によれば、上述の構成としているので、パネルを容易に着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るパネル取付構造を説明するための模式的側面図であり、各部の係止前の状態を拡大斜視図とともに示した図である。
【図2】同パネル取付構造を説明するための模式的側面図であり、各部の係止状態の状態を拡大斜視図とともに示した図である。
【図3】同パネル取付構造を説明するための模式的斜視図である。
【図4】(a)及び(b)は、同パネル取付構造に採用される固定機構部及び解除レバーを説明するための模式的斜視図である。
【図5】同パネル取付構造に採用され、最上方に設けられる固定機構部を説明するための分解斜視図である。
【図6】(a)及び(b)は、同パネル取付構造に採用される係止部と被係止部の係止動作を説明するための模式的側面図である。
【図7】(a)及び(b)は、同パネル取付構造に採用される係止部と被係止部の係止動作を説明するための模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
本実施形態に係るパネルの取付構造は、複数のパネル1を壁面12に着脱自在に取り付けるパネル取付構造であって、壁面12またはパネル1の背面1aのいずれか一方に係止部2、他方に係止部2に係止される被係止部3がそれぞれ複数設けられている。被係止部3が係止部2に係止されることによりパネル1が壁面12に取り付け固定され、パネル1からの押圧によって複数の係止部2が連動し被係止部3への係止を行う連動部材9が設けられている。
以下、詳しく説明する。
なお、ここでは壁面12に係止部2、パネル1の背面1aに被係止部3が設けられた例について説明する。
【0014】
パネル1は、壁面12に沿って略鉛直に立てて設置され、縦長の薄型矩形状に形成されている。
パネル1は特に限定されるものではないが、着脱が容易で図1等に示すようにパネ ル1を上方に持ち上げることなく着脱できるように構成されているので、例えば調湿機能、脱臭機能等を有した機能パネルや略天井近くまで高さがあるようなパネルなどが好適である。従って、ここでは図示していないが、排気口、吸気口等を備えたパネルとしてもよいし、意匠性の高いパネル体であってもよい。
【0015】
パネル1の背面1aには、被係止具30がビスなどの固定具31(図6、図7等参照)によって固着されている。パネル1の背面1aに固着された被係止具30は固定具31が挿通される挿通孔を備えた固定部30aと被係止部3となる鉤型形状の引掛部30bとを備え、側面視して略Z字形状に形成されている。
【0016】
図3に示すようにパネル1が取り付けられる壁面12には、前面開口の凹所12aが形成されており、この凹所には、所定の間隔を空けて固定柱10が複数設けられている。固定柱10は、パネル1が複数並べて取り付けられたとき、パネル1とパネル1の間に若干隙間が形成されるように設けられる。
固定柱10は、金属材、樹脂材などからなり、断面視して前面が開口形成された凹条部10cを備えた形状(略コの字型形状)とされ、長手方向両側部は側壁10dとなっている(図3参照)。
【0017】
固定柱10の側壁10dには、解除レバー4が挿通される挿通開口部10b(図4(a)参照)が略長方形状に形成されている。また固定柱10の側壁10dには、固定機構部20A,20Bをブラケット80を介して取り付けるために固定具80bを挿通させる挿通孔80aが複数形成されている(図4(a)及び(b)参照)。
なお、図4(a)及び(b)は、図3の紙面右端の固定柱10に取り付けられた固定機構部20A,20Bと対応している。
固定柱10の長手方向の寸法は凹所12aの高さ寸法に合わせて形成される。固定柱10の厚み寸法は凹所12a内に納まり、且つパネル1を取り付け際にパネル1の前面が壁面12と略面一になるように設定される。固定柱10は、その上下両端部を固定部材10aによって固定されており、この固定部材10aはビスなどの連結具によって凹所12aに直接連結され固定されている(図3・D部拡大図参照)。
【0018】
凹所12aの下端部には、横方向に沿ってパネル1の下端部に形成された切欠溝部(不図示)と嵌合関係となり、パネル1の下端部を支持し取り付け位置の位置決め機能ともなるレール部13(図3・D部拡大図参照)が形成されている。
隣り合う固定柱10と固定柱10の間隔は、パネル1の幅方向の寸法に合わせて設定され、この固定柱10の所定位置に係止部2を備えた固定機構部20A,20Bが取り付けられる。
【0019】
ここでは、凹所12aの下端部にレール部13が形成された例を示しているが、これに限定されず、また凹所12aの上端部に回り縁を設けたものとしてもよい。このようにレール部13を備えたものとすれば、床面に対して略鉛直にパネル1を取り付け施工しやすいものとすることができる。またここでは天井と凹所12aの上端部との間に隙間がある例を示しているが、凹所12aの上端部と天井とがほぼ一致しているものとしてもよい。
【0020】
次に固定柱10に取り付けられた固定機構部20A,20Bについて説明する。
固定柱10の側壁10dには、一列に計3個の係止部2を備えた固定機構部20A,20Bが設けられており、パネル1の背面1aには、これに対応して被係止部3が設けられる。従って一枚のパネル1は、係止部2と被係止部3とが計6箇所で係止されることにより壁面12に取り付け固定されている。
固定柱10の側壁10dに上下方向に並設された3個の固定機構部20A,20Bのうち、一番上方の位置、すなわち最上方に設けられた固定機構部20Aと、その下方に設けられた2個の固定機構部20Bとは構成が異なるものが設けられている。
【0021】
まずは図5〜7を参照しながら、最上方に設けられる固定機構部20Aについて説明する。
固定機構部20Aは、上下動する係止スライダー5と、係止スライダー5の上下動を規制するロックプレート6と、係止スライダー5が内装される固定機構部本体7とを備えている。
ここで固定機構部20Aの係止スライダー5は、ロックプレート6により被係止部3を係止する方向の力を蓄積した状態でロックされる構造としてもよい。また、ロックプレート6が、パネル1からの押圧を受けてこの最上方の係止スライダー5に対するロック状態を解除することにより、連動部材9によって下方に設けられた2個の固定機構部20Bの係止スライダー5が移動し、被係止部3が係止部2に係止される構造としてもよい。言い換えれば、ロックプレート6は一番上方に取り付けられた固定機構部20Aにのみ設けられているので、係止スライダー5を下降動作に導くトリガは一番上方にのみ設けられていることになる。
さらに固定機構部20A,20Bの係止スライダー5が、付勢部材8により係止部2が被係止部3に係止する方向(図例のものは下向き)に付勢されたものとしてもよい。そして最上方に設けられた係止スライダー5以外の係止スライダー5と連動部材9とは、連動部材9に設けられたスライド孔9b(長孔)内に移動自在に挿入されたリンク軸9c(軸部)を介して最上方に設けられた係止スライダー5の動きと連動するようにしてよい。
以下、詳しく説明する。
【0022】
係止スライダー5は、付勢手段8とロックプレート6の動作をきっかけに上下動するように構成された側面視して略矩形状のブロック体からなり、係止スライダー5のいずれか一方の先側には係止部2となる漸次先細の傾斜部2aが形成されている。傾斜部2aはパネル1の取付状態において、壁面12側からパネル1側へと斜めに傾斜した傾斜面を備えており、この傾斜面に被係止部3が当接すると壁面12側に被係止部を引き寄せる分力を作用させることができる。
係止スライダー5の側部の係止部2近傍には、薄板状で固定機構部本体7側に突出した突出片50が形成されている。
突出片50は固定機構部本体7内に納められた際に、図7(a)に示すように固定機構部本体7の側部から突出するように配置される。
【0023】
係止スライダー5に形成された係止部2の他方側には、付勢手段8が固着されており、ここでは付勢手段8として圧縮コイルバネが用いられた例を示している。
付勢手段8は、係止スライダー5の先側に形成された係止部2と被係止具30に形成された被係止部3との係止位置方向に係止スライダー5が移動するように構成されている。従ってここでは、係止スライダー5が下降し係止部2と被係止部3とが係止状態になる例、すなわち係止位置が下方にある例を示しているので、付勢手段8は、係止スライダー5に対して下向きに付勢力が働くように設けられる。
【0024】
固定機構部本体7は、略直方体形状のブロック体からなり、係止スライダー5及び付勢手段8が納められる。固定機構部本体7内に納められた係止スライダー5は、ロックプレート6及び付勢手段8の作用によって上下動するよう構成されている。
従って、固定機構部本体7の下方端面は、下降した係止スライダー5が露出し、係止部2が現れるように(図6(b)等参照)開口状態に形成されている。
固定機構部本体7の固定柱10側の側面は、上述の突出片50が突出するように挿通部が形成されている。
また固定機構部本体7の固定柱10側の側面にはロックプレート6が取り付けられ、ロックプレート6の動きと係止スライダー5が連動するように構成される。
この固定機構部本体7の固定柱10側の側面には、ロックプレート6が回動するよう固定柱10側に突出した軸部70と、ロックプレート6が受ける押圧力に抗した力を作用させるバネ材7a(図例はトーションバネ)が巻きつけられたバネ軸部71とが設けられている。バネ部材7aの一端側は、固定機構部本体7に係止され、他端側は、ロックプレート6の係止孔63に係止されており、フック部61で解除レバー4を引掛ける方向に付勢している。
【0025】
ロックプレート6は、薄肉の板片からなり、パネル1が取り付けられる際にパネル1の背面1aが押し当てられる当接部60と、突出片50を係止するフック部61と、軸部70に挿通される貫通孔62とを備えている。
当接部60は、パネル1が取り付けられる際に押圧力を受け、係止スライダー5を下降動作に導くトリガとなる。
従って、固定機構部20Aが固定柱10に取り付けられた際には、パネル1の背面1aで押圧されるように当接部60が固定機構部本体7の前面及び固定柱10の前面よりも若干前方に突出した状態となるよう構成される(図4(a)、図6(a)参照)。
ここで当接部60の形状は特に限定されるものではないが、図例のように側面視して丸みを帯びた曲面とすることが望ましい。これによれば、当接部60にパネル1の背面1aが押し当てられても、パネル1の背面1aに傷などをつけたりすることを防止することができる。
【0026】
フック部61は、側面視して鉤型形状に形成されており、当接部60が押圧力を受けていない場合、すなわちパネル1が取り付けられていないロック状態では、突出片50を係止し係止スライダー5の下降を阻止する(図7(a)参照)。従って、パネル1が取り付けられていないロック状態では、係止スライダー5の突出片50がフック部61に係止されているので、係止部2は被係止部3を係止しない位置で保持される。
一方、フック部61は、当接部60が押圧力を受けている場合、すなわちパネル1が取り付けられた非ロック状態では、突出片50のフック部61による係止が解除されるので、係止スライダー5の下降を許容する(図7(b)参照)。従って、パネル1からの押圧を受けると、フックロックプレート6は係止スライダー5のロック状態を解除して、係止スライダー5が付勢手段8の付勢力によって係止位置に移動するよう作用する。
このように当接部60及びフック部61を備えたロックプレート6は、軸部70の周りを回動するように構成されており、この回動によって、係止スライダー5の移動を許容或いは阻止している。すなわち、係止スライダー5の上下動は、ロックプレート6の動作をきっかけに動作する。
なお、図6(a)及び図7(a)は、ロック状態を示し、図6(b)及び図7(b)は非ロック状態を示している。
【0027】
次いで図4(b)を参照しながら、下方に設けられる固定機構部20Bについて説明する。上述の固定機構部20Aと共通する部分には同じ符号を付し、その説明は省略する。
固定機構部20Bは、上下動する係止スライダー5と、係止スライダー5が内装される固定機構部本体7とを備えている。
最上方に設けられる固定機構部20A以外の固定機構部20Bは、ロックプレート6が設けられていない。従って係止スライダー5には、ロックプレート6のフック部61に係止される突出片50が形成されていない。また固定機構部本体7にロックプレート6を回動させる軸部70等も設けられていない。
係止部2が被係止部3に係止する方向に付勢する付勢手段8が内装されている点は、固定機構部20Aと同様である。
【0028】
従って固定機構部20Bに設けられる係止スライダー5は、パネル1の押圧を受けロックプレート6の動作をきっかけに上下動するのではなく、連動部材9によって最上方に設けられた固定機構部20Aの係止スライダー5の動作と連動して上下動する。
固定機構部20Bに設けられた係止スライダー5はロックプレート6を備えておらず、常時付勢手段8によって係止部2が被係止部3に係止する方向に付勢されているので、ロック状態ではリンク軸9cがスライド孔9bの下端に係止された状態とする。これにより、係止スライダー5がロック状態において下降しないよう動きを規制することができる。このとき付勢手段8は上方向に圧縮される。一方、非ロック状態では連動部材9が下降することによりリンク軸9cのスライド孔9b下端への係止が解除される。これにより、係止スライダー5が付勢手段8によって係止部2が被係止部3に係止する方向、すなわち係止スライダー5を下降させることができる。
【0029】
このように複数の係止スライダー5のうち、最上方に設けられた係止スライダー5のみにロックプレート6を設ける構成とし、残りは連動部材9でリンクさせるとともにフリーに上下動可能としているので、部品点数を減らし機構を簡略化することができる。
また最上方の係止スライダー5の他、すべての係止スライダー5が付勢手段8によって係止部2が被係止部3に係止される方向に付勢されているので、振動で係止部2が被係止部3に係止された状態で不用意に外れてしまうことがない。
【0030】
次いで連動部材9について説明する。
上述の3つの固定機構部20A,20Bは、連動部材9で連結されている。
連動部材9は、平面視して細長の略長方形状の板体からなり、この連動部材9によって複数の係止スライダー5を連動するよう構成されている。連動部材9は、少なくとも最上方の固定機構部20Aが設けられた位置から最下方の固定機構部20Bが設けられた位置までをつなぐ長さを要する(図3参照)。
連動部材9は、固定機構部20A,20Bの背面側に取り付けられ、連動部材9の長手方向上方端部には、最上方の固定機構部20Aに設けられた係止スライダー5が固定機構部本体7を介して固定具9aによって固定されている。
連動部材9は、ロック状態(パネル1が取り付けられていない状態)において、図1のB部・C部拡大図に示すようにリンク軸9cがスライド孔9bの最下端の位置に配置されるように取り付けられる。これにより、上述したように非ロック状態(パネル1が取り付けられた状態)となったときには、連動部材9が最上方の係止スライダー5の下降に伴って下降し、これによりスライド孔9bの位置も下降する。すると図2のB部・C部拡大図に示すようにスライド孔9bの下端に係止されていたリンク軸9bの係止が解除され固定機構部20Bの係止スライダー5が下降する。
【0031】
連動部材9の上下動によって、連動するよう固定機構部20Bに設けられた係止スライダー5は、連動部材9には固定されず、スライド孔9b内にリンク軸9bが係止され、上下動自在にフリーな状態に構成されている。
すなわち、中央と一番下方に設けられた固定機構部20Bの係止スライダー5と連動部材9とは、リンク軸9cを介して連動されており、連動部材9に形成された縦長のスライド孔9bにリンク軸9cが係止されて上下にスライド自在に構成されている。
このように中央と一番下方に設けられた係止スライダー5と連動部材9とを固定関係としないことにより、パネル1の背面1aに取り付ける被係止具30の設置位置に誤差が生じても係止スライダー5の先側に形成された係止部2によって被係止部3を係止することができる。
【0032】
以上によれば一枚のパネル1を複数の係止部2及び被係止部3で係止状態とするので、強固にパネル1を壁面に取り付け保持できるものでありながら、容易に取り付けを行うことができる。従って、例えば床面から天井近くまであるような高さのある大型のパネルであっても容易に取り付け施工することができる。
【0033】
続いて、図1〜図3及び図4(a)を参照しながら、解除レバー4について説明する。
解除レバー4は、壁面12に固定されたパネル1とパネル1の隙間から操作できるように設けられている。複数の係止部2と被係止部3との係止状態の解除が、係止部2側または被係止部3側に設けられた解除レバー4を隙間から操作することにより連動部材9に連動されてなされる。ここでは解除レバー4が係止部2側、すなわち固定機構部20A,20Bと並設された例について説明する。
解除レバー4は薄肉の板片に形成されており、連動部材9に固定具4cによって固着される固定部4aと、縦長に形成された挿通開口部10bに挿通され固定柱10の凹条部10c内において突出して露出するように設けられるレバー片4bとを備えている(図4(a)参照)。
ここで挿通開口部10bは、解除レバー4のレバー片4bの上下動を許容するための空間を備えた縦長に形成されている。
解除レバー4は、図1、図2のA部拡大図に示すように最上方に設けられた固定機構部20Aの下方で、パネル1の取り付け状態において被係止具30の邪魔にならない位置に取り付けられている。
【0034】
解除レバー4のレバー片4bをパネル1とパネル1の隙間から操作することにより連動部材9が作用し、この連動部材9によって係止部2と被係止部3の係止状態の解除がほぼ同時になされる。
すなわち、複数のパネル1を固定柱10に取り付けた状態で、その隙間から解除レバー4のレバー片4bを工具などで引き上げる操作を行う。すると連動部材9が上昇し、3箇所の係止スライダー5もこれに連動して上昇する。そして係止スライダー5の上昇に伴い、係止部2による被係止部3への係止状態が解除されるとパネル1の係止も解かれ、パネル1を壁面12から取り外すことができる。詳しくは後記する。
【0035】
次に図面を参照しながら、パネル1の取付要領を説明する。
まず、パネル1の下端部の切欠溝部をレール部13に嵌合させる(図3参照)。このとき、パネル1の左右両端部が、固定柱10に取り付けられた固定機構部20A,20Bの取付位置と対応する位置にきているか、位置あわせを行う。そしてパネル1の下端部を支点としてそのまま壁面12(凹所12a)側向かってにパネル1を押し倒していく。
【0036】
すると、パネル1の背面1aが最上方の固定機構部20Aに設けられたロックプレート6の当接部60が当接する。当接部60は、パネル1に加わる押圧を受け、バネ材7aの弾力に抗してロックプレート6が軸部70回りに(図6(a)白抜矢印方向)に回動する。その結果、ロックプレート6による係止スライダー5のロックが解除され、付勢手段8の付勢力が作用して最上方の係止スライダー5が下降し、これに連動して連動部材9が下降する。連動部材9の下降する力によって、スライド孔9bの下端に係止されたリンク軸9cの係止が解除され、下向きに付勢された付勢手段8による付勢力をして中央及び下方に取り付けられた固定機構部20Bの係止スライダー5が下降する。
そして、係止スライダー5の先側に形成された係止部2がパネル1の背面1aに取り付けられた被係止部3を係止してパネル1を壁面12側に引き寄せた状態に取り付けることができる。
このとき、係止部2は傾斜部2aを備えているため、パネル1を壁面12側に引き寄せやすく、隙間のない施工を行うことができる。
【0037】
以上によれば、パネル1を壁面12に向かって押し当てていけば複数の係止部2と被係止部3を係止状態とすることができ、パネル1を持ち上げなくてもパネル1の下端を置きながら壁面方向にパネルを回転させることで取り付けやすくなり、パネルの取り付け作業が容易となる。
従って、上方に持ち上げると天井にぶつけてしまうおそれがある高さのあるパネルや重量のあるパネルなどでも容易に取り付けることができる。
【0038】
続いて、パネル1の取り外し要領を説明する。
上述の要領で取り付けられた複数のパネル1同士の間には隙間が形成されているため、この隙間から解除レバー4を引き上げることができる工具などを差し込む。固定柱10内の解除レバー4のレバー片4bを引き上げると、解除レバー4に固着されている連動部材9も引き上げられる。これにより、最上方の固定機構部20Aに設けられた付勢手段8の付勢力に抗して係止スライダー5が上昇する。このとき付勢手段8は上方向に圧縮される。連動部材9の上昇に伴い、中央及び下方に設けられた固定機構部20Bのリンク軸9cがスライド孔9bの下端位置へ移動し、そこでリンク軸9cがスライド孔9bの下端に係止された状態となる。これにより、固定機構部20Bに設けられた付勢手段8の付勢力に抗してこれら係止スライダー5も上昇する。このとき付勢手段8は上方向に圧縮される。そして、複数の係止部2による被係止部3への係止状態がほぼ同時に解除されるとパネル1の係止も解かれ、パネル1を壁面12から取り外すことができる。このとき、最上方の固定機構部20Aに設けられたロックプレート6の当接部60への押圧も解除され、バネ材7aの付勢力によってロックプレート6が軸部70を軸として回動し、フック部61が元のロック状態にもどる。
以上によれば、解除レバー4を引き上げるという操作だけで複数の係止部2による被係止部3との係止状態をほぼ同時に解除でき、パネル1を容易に取り外すことができる。従って、パネル1のメンテナンスや交換などを容易にすることができる。
【0039】
以上、本実施形態では、係止部2を備えた固定機構部20を固定柱20に取り付け、パネル1の背面1aに被係止部3を備えた被係止具30を取り付けた例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、パネル1の背面1aに係止部2を備えた固定機構部20A,20Bを取り付け、固定柱10に被係止部3を備えた被係止具30を取り付けてもよい。
またここではパネル1の一方端部に3箇所設けられる例を示しているが、これに限定されず、2箇所でもよいし、パネル1の大きさなどに応じて4箇所以上設けたものとしてよい。
さらにパネル1の形状や構成等は上述の例に限定されず、係止部2及び被係止部3、解除レバー4、付勢手段8、連動部材9などの形状、構成、設置箇所等も図例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0040】
1 パネル
1a 背面
12 壁面
2 係止部
3 被係止部
4 解除レバー
5 係止スライダー
6 ロックプレート
8 付勢手段
9 連動部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルを壁面に着脱自在に取り付けるパネル取付構造であって、
前記壁面または前記パネルの背面のいずれか一方に係止部、他方に該係止部に係止される被係止部がそれぞれ複数設けられており、前記被係止部が前記係止部に係止されることにより前記パネルが前記壁面に取り付け固定され、
前記パネルからの押圧によって複数の係止部が連動し前記被係止部への係止を行う連動部材が設けられていることを特徴とするパネル取付構造。
【請求項2】
請求項1において、
複数の前記パネルが隙間を空けた状態で取り付けられ、
複数の前記係止部と前記被係止部との係止状態の解除が、前記係止部側または前記被係止部側に設けられた解除レバーを前記隙間から操作することにより前記連動部材に連動されてなされることを特徴とするパネル取付構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
複数の前記係止部は、それぞれ上下動する係止スライダーの先側に形成され、複数の前記係止スライダーは上下方向に並設されており、
該複数の前記係止スライダーのうち、最上方に設けられた前記係止スライダーは、ロックプレートにより前記被係止部を係止する方向の力を蓄積した状態でロックされており、前記ロックプレートが、前記パネルからの押圧を受けて前記最上方の係止スライダーに対するロック状態を解除することにより、前記連動部材によってその他の前記係止スライダーが移動し、前記被係止部が前記係止部に係止されることを特徴とするパネル取付構造。
【請求項4】
請求項3において、
複数の前記係止スライダーが、付勢部材により前記係止部が被係止部に係止する方向に付勢されており、
最上方に設けられた前記係止スライダー以外の前記係止スライダーと前記連動部材とは、前記連動部材に設けられた長孔内に移動自在に挿入された軸部を介して最上方に設けられた前記係止スライダーの動きと連動することを特徴とするパネル取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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