パネル壁構造
【課題】美観の向上、スペースの有効利用を図り得るパネル壁構造を提供する。
【解決手段】本発明は、基準壁面Wから離間した状態で基準壁面Wに沿って複数の木質パネル1が並べて施工されるとともに、その複数の木質パネル1によってパネル壁10が形成されるようにしたパネル壁構造を対象とする。パネル壁10に、そのパネル壁10を貫通する作業用開口15が形成されるとともに、作業用開口15に、その開口形状に対応する形状のパネルピース11が着脱自在に取り付けられている。
【解決手段】本発明は、基準壁面Wから離間した状態で基準壁面Wに沿って複数の木質パネル1が並べて施工されるとともに、その複数の木質パネル1によってパネル壁10が形成されるようにしたパネル壁構造を対象とする。パネル壁10に、そのパネル壁10を貫通する作業用開口15が形成されるとともに、作業用開口15に、その開口形状に対応する形状のパネルピース11が着脱自在に取り付けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば一般家屋の屋内壁面から離間した状態で複数の木質パネルが並べて施工されるようにしたパネル壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特許文献1に示すように、室内の壁面に、その壁面から離間させた状態で、複数の木質パネルを並べて施工することにより、パネル壁を組み立てるようにしたパネル壁構造が周知である。
【0003】
このようなパネル壁構造は、室内壁面の前面側に、並んで配置された多数の木質パネルによってパネル壁が形成されるため、優れた意匠性を得ることができる。さらに、木質パネルをなす木材自身が保有する湿度調整機能(調湿機能)を発揮することによって、快適な居住環境を得ることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−6868号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のパネル壁構造においては、パネル壁と室内壁面との間に隙間が形成されるため、この隙間を有効に利用することが考えられる。例えばその隙間に、テレビジョン(テレビ)の電源コード等を敷設したり、あるいはパネル壁の裏面側における室内壁面に、電源コードを差し込むコンセント(配線用差込接続器)等を設置するようにすれば、美観を確保しつつ、スペースの有効利用を図ることができる。
【0006】
しかしながら、上記パネル壁構造における室内壁面とパネル壁との間隔(隙間)は狭いため、室内壁面上に拡がるこの狭い隙間に、電源コード等を効率良く敷設することは困難である。特にパネル壁の裏面側にコンセントを配置するような場合には、コンセントがパネル壁によって被覆されるため、電源コードをコンセントに対して抜き差しすることが困難となってしまう。このようにパネル壁裏面側に、電源コード等を敷設したり、コンセントを設置することは困難であり、パネル壁裏面側のスペースを有効に利用できない、という課題があった。
【0007】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、美観を向上させつつ、スペースの有効利用を図ることができるパネル壁構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0009】
[1]基準壁面から離間した状態で基準壁面に沿って複数の木質パネルが並べて施工されるとともに、その複数の木質パネルによってパネル壁が形成されるようにしたパネル壁構造であって、
前記パネル壁に、そのパネル壁を貫通する作業用開口が形成されるとともに、
前記作業用開口に、その開口形状に対応する形状のパネルピースが着脱自在に取り付けられたことを特徴とするパネル壁構造。
【0010】
[2]前記作業用開口は、木質パネルの一部が切除されるようにして形成され、
前記パネルピースが木質パネルに対して同じ構成を有している前項1に記載のパネル壁構造。
【0011】
[3]基準壁面における前記作業用開口の下側縁部に対応する位置に、前記パネルピースの下側縁部を着脱自在なピース取付具が取り付けられ、
前記パネルピースの後面側に、弾性圧縮変形可能な付勢手段と、上方に突出するストッパーとが設けられ、
前記パネルピースの下端が前記ピース取付具に着脱自在に取り付けられるとともに、基準壁面に押圧された前記付勢手段の弾性反発力によって前記パネルピースが前方へ押し付けられて前記ストッパーが前記パネル壁の後面側における前記作業用開口縁部の上側に当接係止することにより、前記パネルピースが前記作業用開口内に配置された状態に取り付けられるようになっている前項1または2に記載のパネル壁構造。
【0012】
[4]前記パネルピースの裏面側にピース着脱金具が取り付けられ、そのピース着脱金具に、前記付勢手段と前記ストッパーとが一体に形成されている前項3に記載のパネル壁構造。
【0013】
[5]前記ピース着脱金具は、前記パネルピースの裏面上部に取り付けられる取付板部と、その取付板部に上方に突出するように一体形成されたストッパーと、前記ストッパーに後面側に折り返されるように一体形成され、かつ前記付勢手段として構成されるバネ板部とを備え、前記バネ板部が前記取付板部側に近接する方向に押し込まれた際に、離間する方向に弾性反発力が作用するようになっている前項4に記載のパネル壁構造。
【0014】
[6]木質パネルは、帯板形状を有し、
木質パネルは、その長さ方向を水平方向に配置し、かつ上下方向に複数並んで配置された状態で、複数のパネル取付具を介して基準壁面に支持され、
前記複数のパネル取付具のうち、前記作業用開口の下側に対応する位置に配置されるパネル取付具が、前記ピース取付具として構成される前項3〜5のいずれか1項に記載のパネル壁構造。
【0015】
[7]隣り合う木質パネル間に隙間が形成され、その隙間によって、木質パネルの前面側および後面側が連通されている前項1〜6のいずれか1項に記載のパネル壁構造。
【発明の効果】
【0016】
発明[1]のパネル壁構造によれば、基準壁面の前面側に、並んで配置された複数の木質パネルによってパネル壁が形成されるため、良好な美観を得ることができる。
【0017】
また本パネル構造においては、開放された作業用開口を介して、パネル壁裏面側へのコード類の敷設作業を簡単かつスムーズに行えるとともに、パネル壁裏面側でのコード類の差込接続器に対する抜き差し操作を不具合なく行うことができる。このため、パネル壁裏面側に、コード類や差込接続器を確実に設置でき、パネル壁裏面側のスペースを有効に利用することができる。
【0018】
発明[2]のパネル壁構造によれば、パネル壁におけるパネルピースが周囲の木質パネルと一体化することによって、美観を一層向上させることができる上さらに、部品の共通化によってコストを削減することができる。
【0019】
発明[3]のパネル壁構造によれば、パネルピースの上端部を基準壁面側に押し付けながら、パネルピースの下側縁部をピース取付具に対し着脱するだけで簡単に、パネルピースを作業用開口に対し着脱することができる。
【0020】
発明[4][5]のパネル壁構造によれば、部品点数を削減できて、付勢手段やストッパーのパネルピースへの取付作業を簡単に行うことができる。
【0021】
発明[6]のパネル壁構造によれば、部品の共通化によって、コストの削減を図ることができる上、部品の取り違え等の不具合を確実に防止でき、パネル壁組立作業を効率良く行うことができる。
【0022】
発明[7]のパネル壁構造によれば、空気がパネル裏面側と表面側との間で循環し易くなり、パネル裏面においても空気が接触し易くなるため、パネルの表裏両面で空気に対する吸放湿を十分に行うことができ、調湿性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1はこの発明の実施形態であるパネル壁造を示す正面図である。
【図2】図2は実施形態のパネル壁構造を示す側面断面図である。
【図3A】図3Aはパネル間近接形態が採用された実施形態のパネル壁構造における取付具周辺を拡大して示す側面断面図である。
【図3B】図3Bは図3Aの分解断面図である。
【図3C】図3Cは実施形態のパネル壁構造においてパネル間の通気路周辺を拡大して示す側面断面図である。
【図4A】図4Aはパネル間隔離形態が採用された実施形態のパネル壁構造における取付具周辺を拡大して示す側面断面図である。
【図4B】図4Bは図4Aの分解断面図である。
【図5】図5は実施形態に適用された取付具を示す斜視図である。
【図6A】図6Aは実施形態に適用された取付具を縦方向から見た状態での断面図である。
【図6B】図6Bは実施形態の取付具を横方向から見た状態での断面図である。
【図6C】図6Cは実施形態の取付具を示す正面断面図である。
【図7】図7は実施形態に適用された取付具を示す図であって、同図(a)は正面図、同図(b)は縦方向の端面図、同図(c)は裏面図、同図(d)は横方向の端面図である。
【図8】図8は実施形態に適用された木質パネルの側面図である。
【図9A】図9Aは実施形態のパネル壁構造においてパネルピース取付状態を説明するための側面断面図である。
【図9B】図9Bは実施形態のパネル壁構造においてパネルピースの着脱操作を説明するための側面断面図である。
【図10】図10は実施形態のパネルピースに取り付けられたピース着脱金具を示す斜視図である。
【図11】図11は実施形態のピース着脱金具を示す図であって、同図(a)は平面図、同図(b)は正面図、同図(c)は側面図、同図(d)は底面図、同図(e)は背面図である。
【図12】図12は実施形態のパネル壁構造に適用された着脱金具付きパネルピースを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1はこの発明の実施形態であるパネル壁構造を示す正面図、図2はそのパネル壁構造の側面断面図である。両図に示すように、本実施形態のパネル壁構造においては、一般住宅における基準壁面としての室内の壁面(屋内壁面)Wに、帯板状の木質パネル1が、左右方向(水平方向)に沿って配置された状態で、上下方向に並列に複数並べて施工されている。
【0025】
本実施形態では、施工された多数の木質パネル1が、壁面Wの前面側を覆うパネル壁10として構成される。さらに本実施形態では、パネル壁10に、そのパネル壁10を貫通する作業用開口15が形成されるとともに、その作業用開口15に、パネルピース11が着脱自在に取り付けられる。
【0026】
なお、本実施形態では、室内側から壁面Wに近づいていく方向を、後側方向(裏面側方向)とし、その逆方向、つまり壁面Wから遠ざかっていく方向を、前側方向(表面側方向)として説明する。
【0027】
また各木質パネル1は、その一側縁部2側が下方側に配置されるとともに、他側縁部3側が上方に配置されるように施工される。従って本実施形態においては、必要に応じて、木質パネル1の「一側縁部2」を「下側縁部2」と称し、「他側縁部3」を「上側縁部3」と称する。
【0028】
さらに本実施形態において、隣り合う木質パネル1,1の対向縁部2,3は、上下に隣り合う木質パネル1,1のうち、上側の木質パネル1における一側縁部(下側縁部)2と、下側の木質パネル1における他側縁部(上側縁部)3によって構成されるものである。
【0029】
以下、本実施形態についてさらに詳細に説明する。
【0030】
壁面Wは、例えば間柱や胴縁の室内側に、多数の合板が面状に並べて貼り付けられるとともに、その合板上に、多数の石膏ボードが面状に並べて貼り付けられることによって構成されている。
【0031】
木質パネル1は、所定の長さを有する帯板形状を有している。この木質パネル1は、例えば複数の木材片を接着剤を用いて再構成して作製された集成材等を加工することよって形成されている。
【0032】
図3B,3Cおよび図8等に示すように、木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2は、その裏面側が切り欠かれることによって、前面側(表面側)に上あご片21が一側方(下方)に突出するように形成されている。上あご片21の後側(裏側)の面は、上あご片21の先端側から基端側に向かうに従って、裏面側(壁面側)に近づくように傾斜する裏側傾斜面22として形成されている。
【0033】
木質パネル1の一側縁部2には、上あご片21よりも裏面側(壁面側)に、パネル長さ方向に連続して延びる切込溝24が形成されるとともに、切込溝24よりも裏面側(壁面側)に、後述する取付具5の嵌合溝71,72に嵌合可能な嵌合凸部25が形成されている。さらにその嵌合凸部25の先端面と裏面との間には、面取り部26が形成されている。
【0034】
なお、上あご片21の先端面および嵌合凸部25の先端面は、壁面Wに対し直交し、かつパネル長さ方向に平行な平坦面に形成されている。
【0035】
さらに本実施形態において、木質パネル1の一側縁部2は、上あご片21および嵌合凸部25を含むものである。さらに本実施形態において、一側縁部2の表面側は、上あご片21を含むものであり、一側縁部2の裏面側は、嵌合凸部25を含むものである。
【0036】
木質パネル1の他側縁部(上側縁部)3は、その前面側(表面側)が切り欠かれることによって、後面側(裏面側)に下あご片31が他側方(上方)に突出するように形成されている。下あご片31の表側の面は、下あご片31の基端側から先端側に向かうに従って、裏面側(壁面側)に近づくように傾斜する表側傾斜面32として形成されている。この表側傾斜面32は、上あご片21の裏面側傾斜面22に対応して形成されており、後述するように、両傾斜面22,32間によって通気路4の主要部42が形成される。
【0037】
下あご片31の先端面には、パネル長さ方向に連続する切込溝34が形成され、下あご片31における切込溝34よりも裏面側の部分が、後に詳述するように取付具5の嵌合溝71,72に嵌合可能な嵌合凸部35として構成されている。さらに下あご片31の先端面と裏面との間には、面取り部36が形成されている。
【0038】
また木質パネル1の他側縁部3における下あご片31よりも表面側には、壁面Wに対し直交し、かつパネル長さ方向に平行な上あご対向面33が形成されている。
【0039】
なお、下あご片31の先端面は、壁面に対し直交し、かつパネル長さ方向に平行な平坦面に形成される。
【0040】
さらに本実施形態において、木質パネル1の他側縁部3は、下あご片31および上あご対向面33を含むものである。さらに本実施形態において、他側縁部3の表面側は、上あご対向面によって構成されるとともに、他側縁部3の裏面側は、嵌合凸部35を含む下あご片31によって構成されている。
【0041】
既述したように、本実施形態においては、パネル壁10に、作業用開口15が形成される。この作業用開口15は、開口形成予定領域に配置される木質パネル1の一部が切り取られることによって形成される。
【0042】
具体的には、図1において、下から3番目の木質パネル1の中央部が切り取られることによって、作業用開口15が形成される。換言すれば、パネル壁10に作業用開口15が残存形成されるように、作業用開口15の部分を挟んだ両側に、短い寸法の木質パネル1,1が施工されるものである。
【0043】
作業用開口15にはパネルピース11が着脱自在に取り付けられる。本実施形態において、パネルピース11は、木質パネル1から切り取られた木質パネル断片によって形成されるものである。このため、パネルピース11は、木質パネル1に対し、長さ寸法が異なるのみである。つまり、パネルピース11の構成は、木質パネル1と実質的に同様である。従って、本実施形態では、パネルピース11において、木質パネル1に対し、同一部分または相当する部分については、同一符号を付して、重複説明は省略する。
【0044】
このパネルピース11の後面側(裏面側)には、パネルピース11を作業用開口15に対し着脱自在に取り付けるためのピース着脱金具8が設けられている。
【0045】
図10,11に示すように、ピース着脱金具8は、板状のバネ鋼を加工した一体加工品によって構成されている。なお、このピース着脱金具8の構成を説明するに際しては、図11(b)の正面図で表示されている面が前面であり、同図(b)に向かって上側が上側、下側が下側とし、図11(e)の背面図で表示されている面が後面として説明する。
【0046】
これらの図に示すように、ピース着脱金具8は、パネルピース11に固定される固定板部81と、固定板部81の上端中間に上方に突出するようにして一体に形成されるストッパー85と、ストッパー85の上端に後方に折り返されるように一体に形成され、かつ下向きの斜め後方に向かって延びるように配置されるバネ板部87とを備えている。
【0047】
固定板部81は、その両側張り出し部にねじ孔82,82が形成されるとともに、両側張り出し部の上端に位置決め片83,83が後方に折り曲げられるようにして一体に形成されている。さらに固定板部81の下端中央には、矩形状の係止孔84が形成されている。
【0048】
バネ板部87の下端には、突き当て部88が後方に折り曲げられるようにして一体に形成されるとともに、その突き当て部88の先端中央には、上記係止孔84に対応して、係止片89が一体に形成されている。
【0049】
このピース着脱金具8において、バネ板部87が、ストッパー85との間の上端折り返し部の角度が小さくなるように、固定板部81側(前方)に押し込まれた際には、つまり固定板部81側に撓むように弾性圧縮変形した際には、その弾性反発力(付勢力)によって、バネ板部87を固定板部81から離間する方向(後方)に押し出されるようになっている。
【0050】
なお、このピース着脱金具8においては、バネ板部87が非常に強い力で前方に押し込まれた際には、図12の想像線に示すように、バネ板部87の係止片89が固定板部81の係止孔84に係合することにより、バネ板部87の突き当て部88が固定板部81の後面に当接した状態に保持される。この状態では、突き当て部88によってバネ板部87が固定板部81に支持されるため、バネ板部87に非常に強い力が作用しても過度に撓み変形するのが防止される。従って、過度の変形による不具合、例えば有害な塑性変形等を有効に防止することができる。
【0051】
ここで、本実施形態においては、バネ板部87が付勢手段を構成するものである。
【0052】
以上の構成のピース着脱金具8がパネルピース11の上側縁部(他側縁部)3に固定される。すなわち図12に示すように、ピース着脱金具8における固定板部81を、その位置決め片83,83をパネルピース11の上端面(下あご片31の先端面)に係止させつつ、パネルピース11の後面における上端中央部に配置する。そしてその状態で、固定板部81のねじ止め孔82,82にねじ(図示省略)を挿通してパネルピース11に固定することにより、ピース着脱金具8がパネルピース11に固定される。この固定状態においては、ストッパー85が、パネルピース11の上側縁部(下あご片31の先端面)よりも上方に突出するように配置される。さらにバネ板部87は、ストッパー85および固定板部81の後面側(背面側)において、下向きの斜め後方に傾斜するように配置される。
【0053】
なお本実施形態においては、ピース着脱金具8における固定板部81の位置決め片83,83をパネルピース11の上端面に係止すれば、ピース着脱金具8のパネルピース11に対する上下方向の位置決めが図られるようにしている。従って、ピース着脱金具8のパネルピース11への位置決め作業を簡単に行うことができ、ひいてはピース着脱金具8のパネルピース11への取付作業を簡単に行うことができる。
【0054】
図5〜7に示すように、パネル取付具を構成する取付具5は、壁面Wに設置される壁面設置体6と、壁面設置体6の前面側(表面側)に一体に形成され、かつ隣り合う木質パネル1,1間に配置されるパネル間設置体7とを備えている。この取付具5は、例えばポリプロピレン(PP)等の硬質合成樹脂の一体成形品(射出成形品)によって構成されている。
【0055】
壁面設置体6は、図7(a)に示す正面視において上下方向に対応する横方向D1が、同図の左右方向に対応する縦方向D2に対し短く形成された長方形の形状を有している。
【0056】
またパネル間設置体7は、同図の正面視において、壁面設置体6に対しサイズが小さい略相似形に形成されている。すなわちパネル間設置体7は、横方向(図7(a)の上下方向)D1が、縦方向(同図の左右方向)D2に対し短く形成された長方形の形状を有している。
【0057】
さらにパネル間設置体7の前端(表面側)外周には、溝壁部75が外径方向に突出するように形成されている。
【0058】
これにより、壁面設置体6と溝壁部75との間において、パネル間設置体7の横方向両側(図7(a)の上下両側)に、横方向両側に開放された第1嵌合溝71,71がそれぞれ形成されるとともに、パネル間設置体7の縦方向両側(同図の左右両側)に、縦方向両側に開放された第2嵌合溝72,72がそれぞれ形成される。
【0059】
また各嵌合溝71,72は、開口部の幅が、その溝底の幅よりも大きく形成されており、木質パネル1の嵌合凸部25,35をスムーズに嵌合できるようになっている。
【0060】
図5および図6C等に示すように、第1嵌合溝71の溝底面における中間部には切欠部711が形成されて、溝底面における切欠部711を除いた両側の領域が、木質パネル1における嵌合凸部25,35の先端面に接触するパネル接触面712,712として構成されている。このように本実施形態において、第2嵌合溝72は、溝底面全域の面積に比べて、パネル接触面712の面積が小さく設定されている。これは、後に詳述するように、パネル施工後に木質パネル1が不用意に浮き上がるのを防止するためである。
【0061】
また第2嵌合溝72は、その溝底面の全域が、木質パネル1における嵌合凸部25,35の先端面に接触するパネル接触面として構成されている。
【0062】
なお、本実施形態において、第1嵌合溝71のパネル接触面712,712の面積と、第2嵌合溝72のパネル接触面の面積とは、ほぼ等しく設定されている。
【0063】
ここで本実施形態においては、図6A,6Bに示すように、第1嵌合溝71,71における互いの底壁面間の寸法、詳細には、一方の嵌合溝71のパネル設置面712と、他方の嵌合溝71のパネル設置面712との間の寸法は、パネル間設置体7の横方向D1の寸法H1に相当することなる。さらに第2嵌合溝72,72における底壁面間の寸法は、パネル間設置体7の縦方向D2の寸法H2に相当することになる。
【0064】
また本発明においては、壁面Wに対し直交し、かつパネル間設置体7の中心(例えば、正面視において、パネル間設置体7における短径方向の中心線と長径方向の中心線とが交差する点、外接円中心、内接中心等)を通過する線分が、軸心として構成され、その軸心に対し直交する方向が径方向として構成されるものである。
【0065】
さらに本実施形態においては、横方向D1が短径方向として構成されるとともに、縦方向D2が長径方向として構成されている。言うまでもなく、横方向D1は、縦方向D2に対し正面視の状態で90°の角度に設定されている。
【0066】
また本実施形態において、横方向D1および縦方向D2は、共に径方向を構成するものである。
【0067】
図5〜7に示すように、取付具5の壁面設置体6は、後面側(裏面側)が開放された中空構造によって構成されている。
【0068】
この取付具5の前部には、前面側に開放され、かつ軸心に沿って裏面側に延びるビス取付用筒状凹部51が形成されている。さらにそのビス取付用筒状凹部51の底壁には、ビス挿通用筒状部52が軸心に沿って裏面側に延びるように形成されている。そしてビス挿通用筒状部52の表面側開口部がビス取付用筒状凹部51内に連通されるとともに、ビス挿通用筒状部52の裏面側開口部が、取付具5の裏面側に開放されている。
【0069】
なお本実施形態においては、必要に応じて、ビス取付用筒状凹部51およびビス挿通筒状部52を総称して、ビス取付孔51,52と称する。
【0070】
また本実施形態においては、第1、第2嵌合溝71,72が、隣り合う木質パネル1,1の対向縁部2,3を支持するための第1、第2パネル支持部として構成されている。
【0071】
本実施形態では、木質パネル1を施工するに際して、木質パネル1を、上下に隣り合うパネル間に小さめの隙間が形成されるパネル間近接形態と、大きめの隙間が形成されるパネル間隔離形態とのいずれの形態においても施工できるようになっている。
【0072】
まず始めにパネル間近接形態で施工する場合について説明する。
【0073】
図3A,3Bに示すように、壁面Wにおける1段目の木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2を固定する位置に、複数の取付具5を左右方向(水平方向)に沿って適当な間隔おきに取り付ける。このとき各取付具5は、そのパネル間設置体7の横方向D1が上下方向(パネル並列方向)に一致するようにして、壁面設置体6の裏面側を壁面Wに設置し、その状態で、ビス55を取付具5の前面側からビス取付用筒状凹部51に挿入し、さらにビス55の軸部をビス挿通用筒状部52に挿通して壁面Wにねじ込むことにより、各取付具5を壁面Wにそれぞれ固定する。この状態では、横方向両側の第1嵌合溝71,71が上下両側に配置されるとともに、縦方向両側の第2嵌合溝72,72が左右両側に配置される。
【0074】
こうして固定された各取付具5におけるパネル間設置体7の上側の第1嵌合溝71内に、1段目の木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2における嵌合凸部25をそれぞれ嵌合し、これにより木質パネル1の下側縁部2を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。
【0075】
次に、1段目の木質パネル1の他側縁部(上側縁部)3に、その上側縁部3に沿って所定の間隔おきに複数の取付具5を設置する。つまり木質パネル1の上側縁部3における嵌合凸部35に、取付具5におけるパネル間設置体7の横方向一方側(下側)の第1嵌合溝71を外嵌する。このとき、各取付具5は、上記と同様に、パネル間設置体7の横方向D1が上下方向に沿って配置される。
【0076】
そして各取付具5の壁面設置体6を壁面Wに沿わせるように配置した状態で、取付具5の表面側からビス55を、ビス取付孔51,52に挿通して壁面Wにねじ込むことにより、取付具5を壁面Wに固定する。こうして1段目の木質パネル1の上側縁部3を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。
【0077】
続いて、1段目の木質パネル1の上側縁部3を支持する複数の取付具5における上側の第1嵌合溝71内に、2段目の木質パネル1の下側縁部2を上記と同様に差し込んで、壁面Wに支持する。
【0078】
さらに2段目の木質パネル1の上側縁部3を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。このときも上記と同様に、取付具5は、パネル間設置体7の横方向D1を上下方向に一致させるように配置し、横方向下側の第1嵌合溝71内に、2段目の木質パネル1の上側縁部3を嵌め込むようする。
【0079】
以下同様にして、複数の取付具5および木質パネル1を順次施工することによって、壁面Wに木質パネル1を順次施工していくが、作業用開口15を形成する高さ位置では、作業用開口15の部分が木質パネル1で覆われないように、その作業用開口15の部分を挟んだ両側に短寸の木質パネル1を上記と同様に施工していく。具体的には、図1に示すように、下から3段目のパネル施工部においては、中央部に作業用開口15が残存形成されるように、その作業用開口15を避けた両側に、短寸の木質パネル1,1が上記と同様に施工される。
【0080】
こうして多数の木質パネル1が順次施工されて、壁面Wの前面側に、作業用開口15を有するパネル壁10が組み立てられて、パネル壁構造が形成される。
【0081】
なお本実施形態においては、作業用開口15の上側縁部に対応する位置には、取付具5が設置されておらず、作業用開口15の下側縁部に対応する位置には、取付具5が設置されている。なお本実施形態においては、作業用開口15の下側縁部(下端)に対応する位置に配置される取付具(パネル取付具)5が、ピース取付具として構成されている。
【0082】
一方、作業用開口15にはパネルピース11が取り付けられる。すなわち図9Aに示すように、パネルピース11が、作業用開口15に取り付けられた状態では、パネルピース11の一側縁部(下側縁部)2における嵌合凸部25が、作業用開口15の下縁部中央に位置する取付具5の第1嵌合溝71内に嵌め込まれている。なおこの嵌め込み状態では、パネルピース11は、嵌め込み部(下端部)を支点として、上側部が前後に少し揺動できるようになっている。そしてその嵌め込み状態でパネルピース11裏面のピース着脱金具8のバネ板部87がパネルピース11側に撓んだ状態で壁面Wに押圧接触している。従ってそのバネ板部87の弾性反発力によってパネルピース11自体が前方に押圧付勢される。そしてこの押圧力によって、着脱金具8のストッパー85が、作業用開口15の上側に配置された木質パネル1の下側縁部2の裏面側に当接係止する。これによりパネルピース11が作業用開口15に適合配置された状態に固定される。
【0083】
また作業用開口15に取り付けられたパネルピース11を取り外す場合には図9Bに示すように、パネルピース11の上側部を壁面W側(後方)に押し込む。これによりピース着脱金具8のバネ板部87を壁面Wに押し付けてパネルピース11側(前方)に撓ませて、パネルピース11の上側部を壁面W側に近接させて、パネルピース11を後方に傾けた状態(後傾状態)に配置する。続いてその後傾状態のままでパネルピース11を上方へ少しスライド移動させて、パネルピース11の上側縁部3を、作業用開口15の上側に配置される木質パネル1の下側縁部2の裏側(後側)に配置して、パネルピース11の下側縁部2における嵌合凸部25を、取付具5の第1嵌合溝71から抜き出す。その後、同図の想像線に示すようにパネルピース11をさらに後方に傾けつつ下側縁部2側から前方に引き出せば、パネルピース11を作業用開口15から取り外すことができる。
【0084】
なおパネルピース11を取り外す際に、パネルピース11を必要以上に強く押し込んだとしても、不具合が生じることはない。すなわちパネルピース11を強く押し込んだとしても、既述したように、ピース着脱金具8におけるバネ板部87の係止片89が固定板部81の係止孔84に係合することにより、バネ板部87の突き当て部88が固定板部81の後面に当接した状態に固定される(図12の想像線の状態)。この状態では、突き当て部88によってバネ板部87が固定板部81に支持されているため、例えばバネ板部87が過度に変形する等の不具合を確実に防止することができる。
【0085】
また作業用開口15にパネルピース11を取り付ける場合には、上記と逆の操作を行えば良い。すなわち図9Bの想像線に示すように、パネルピース11の上側縁部3側を作業用開口15に挿通して、パネルピース11の上側部を壁面W側に押し込む。これにより図9Bの実線に示すように、ピース着脱金具8のバネ板部87を壁面Wに押し付けて前方(パネルピース11側)へ撓ませて、パネルピース11の上側縁部3を壁面Wに近接させる。その状態(後傾状態)のままパネルピース11を上方へ少しスライド移動させて、パネルピース11の上側縁部3を、作業用開口15の上側に配置される木質パネル1の下側縁部2の裏面側(後側)に配置して、パネルピース11の下側縁部2における嵌合凸部25を、下側の取付具5の第1嵌合溝71に対向させる。続けて、パネルピース11を後傾状態のまま、下方にスライド移動させることにより、パネルピース11の嵌合凸部25を、取付具5の第1嵌合溝71内に嵌合させる。その後、パネルピース11への壁面W側への押込操作を解除すれば、バネ板部87の弾性反発力(付勢力)によって、パネルピース11の上側部が前方に押し戻されて、ストッパー85が上側の木質パネル1の下側縁部2の裏面側に当接係止する。これにより図9Aに示すように、パネルピース11を作業用開口15に適合状態に取り付けることができる。
【0086】
以上のように、本実施形態のパネル壁構造によれば、壁面W上に、整然と並ぶ多数の木質パネル1によってパネル壁10が形成されるため、良好な美観を得ることができる。
【0087】
さらに本実施形態において、パネル壁裏面側の隙間(スペース)を有効に利用することができる。すなわちパネル壁10の作業用開口15からパネルピース11を取り外して、作業用開口15を開放しておけば、パネル壁10の裏面側における壁面Wとの間の隙間(スペース)に、テレビ、AVシステム、照明スタンド等の電源コード、テレビアンテナケーブル、電話ケーブル、LANケーブル等のコード類を敷設する際の敷設作業を、作業用開口15を介して、簡単かつスムーズに行うことができる。
【0088】
しかも、電源コード、テレビ用アンテナケーブル、電話回線用ケーブルおよびLANケーブル等を差し込む配線用差込接続器(壁面設置器)や、空調機用リモートコントロール(リモコン)および給湯機用リモコン等の壁面設置型操作盤(壁面設置器)を、壁面Wにおける作業用開口15の近辺に設置しておけば、換言すれば、壁面設置器の近傍に作業用開口15を形成するようにすれば、開放された作業用開口15を介して、コード類の抜き差し操作や壁面操作盤の操作を簡単かつスムーズに行うことができる。
【0089】
このようにパネル壁10の裏面側へのコード類の敷設作業を正確かつスムーズに行えるとともに、パネル壁10の裏面側に壁面設置器を支障なく設置することができるため、パネル壁10の裏面側における壁面Wとの間の隙間(スペース)を有効に利用することができる。
【0090】
特に本実施形態においては、液晶テレビ(テレビジョン)、リアプロジェクションテレビ、有機ELテレビ、FEDテレビ等の薄型のディスプレイパネルを、パネル壁10に壁掛け状態で取り付ける場合や、ステレオフォニック等のAVシステムのスピーカーを壁掛け状態で取り付けるような場合には、これらの電気機器用のコード類やコンセント等の配線用差込接続器をパネル壁10の裏面側に確実に隠蔽することができる。従って、良好な美観を確保しつつ、スペースの有効利用を確実に図ることができる。
【0091】
また、本実施形態においては、壁掛けされた薄型テレビやステレオ等の電気製品に関連した機器、例えばテレビチューナー、HDDレコーダー、ステレオチューナー、ステレオアンプ等も、パネル壁10と壁面Wとの間のスペースに収容することも可能であり、それによって、美観を一層向上させつつ、より一層、スペースの有効利用を図ることができる。さらにこれらの機器を、作業用開口15の近傍に配置することにより、これらの機器を、作業用開口15を介して操作することもできる。
【0092】
また本実施形態においては、バネ板部87およびストッパー85を有するピース着脱金具8をパネルピース1の裏面側に設けておき、パネルピース1の下側縁部2を、壁面Wの付具5に嵌合した状態で、バネ板部87を弾性力によって壁面Wに押圧させて、ストッパー85を上側の木質パネル1の裏面側に当接係止させることにより、パネルピース1を作業用開口15に取り付けるようにしている。つまり、パネルピース1の上端部を壁面W側に押し付けながら、パネルピース1の下側縁部2を取付具5に対し嵌脱するだけで簡単に、パネルピース1を作業用開口15に対し着脱することができる。
【0093】
さらに本実施形態においては、ピース着脱金具8に、ストッパー85およびバネ板部87を一体に形成しているため、ピース着脱金具8をパネルピース11に取り付けるだけで、ストッパー85およびバネ板部87の二部材を一度に取り付けることができる。従って、部品点数を削減しつつ、金具付きのパネルピース11を簡単に製作できるため、パネル壁構造全体の施工作業を簡単かつスムーズに行うことができる。
【0094】
また本実施形態においては、木質パネル1を壁面Wに取り付けるための取付具4を用いて、パネルピース11を壁面Wに取り付けるようにしているため、部品の共通化によって、より一層コストの削減を図ることができる。さらにパネル取付具と、ピース取付具との共通化を図ることによって、部品の取り違え等を確実に防止でき、パネル壁組立作業を、より一層効率良くスムーズに行うことができる。
【0095】
一方、本実施形態のパネル壁構造において、既述したようにパネル間近接形態によって施工した場合には、上下に隣り合う木質パネル1,1の対向縁部2,3が、取付具5のパネル間設置体7における横方向両側の第1嵌合溝71,71に支持される。この状態において、パネル間設置体7の横方向寸法H1は短く設定されているため、上下の木質パネル1,1が近接した状態に配置されて、対向縁部2,3間に狭い隙間が形成される。この隙間は、木質パネル1の表裏間を連通する通気路4として機能する。さらにこの通気路4は、表面側開口部41、主要部42および裏面側開口部43の3つの部分によって構成されている。
【0096】
具体的に説明すると、図3A,3Cの側面断面視(パネル長さ方向に直交する平面で切断した際の断面視)の状態において、表面側開口部41は、上側木質パネル1の上あご片21の先端面と、下側木質パネル1の上あご対向面33との間の隙間によって構成され、壁面Wに対し垂直に延びるように配置される。主要部42は、上側木質パネル1の裏側傾斜面22と、下側木質パネル1の表側傾斜面32との間の隙間によって構成され、かつ壁面Wに対し傾斜するように配置される。裏面側開口部43は、上側木質パネル1の嵌合凸部25の先端面と、下側木質パネル1の嵌合凸部35の先端面との間の隙間によって構成され、壁面Wに対し垂直に延びるように配置される。
【0097】
本実施形態において、図3A、3Cの側面断面視の状態では、通気路4における表面開口部41および主要部42間のコーナー部と、主要部42および裏面側開口部43間のコーナー部とは共に、直角を超える鈍角のコーナー部に形成されている。従って通気路4は、コーナー部の曲りが小さい滑らかな通気路4に形成されている。
【0098】
ここで、上下に隣合う木質パネル1,1のうち、一方側(上側)の木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2における上あご片21は、既述したように、他方側(下側)の木質パネル1に向けて他側方(下方)に突出するように形成されるとともに、他方側(上側)の木質パネル1の他側縁部(上側縁部)3における下あご片31は、一方側(上側)の木質パネル1に向けて一側方(上方)に突出するように形成されている。そして、通気路4における表面側開口部41は、上あご片21の先端側(下あご片31の基端側)に配置されるとともに、裏面側開口部43は、上あご片21の基端側(下あご片31の先端側)に配置されている。つまり、本実施形態においては、表面側開口部41が、裏面側開口部43に対して、木質パネル1の並列方向(上下方向)に位置をずらせて配置されている。
【0099】
このパネル間近接形態において、上あご片21の先端面と、上あご対向面33との間の隙間(表面側開口部41の幅)寸法は、2mm程度に設定されている。
【0100】
なおこのパネル間近接形態において、取付具5の壁面設置体6は、木質パネル1を支持するパネル間設置体7と壁面Wとの間に介在されることにより、木質パネル1を壁面Wに対し離間した状態に保持するためのスペーサーとして機能する。
【0101】
またこのパネル間近接形態では図9Aに示すように、パネルピース11と、その上下の木質パネル1,1との間においても、上下に隣合う木質パネル1,1間と同様に小さめの隙間(通気路4)が形成されるようになっている。
【0102】
従って本実施形態によれば、パネルピース1と、その上下に隣合う木質パネル1,1との間に隙間4を介してパネルピース11の縁部2,3に指を引っかけるようにして、パネルピース1を取り外したり、取り付けたりすることができ、パネルピース1の着脱操作をより一層簡単に行うことができる。
【0103】
一方、本実施形態においては、パネル間に大きめの隙間が形成されるようにパネル間隔離形態で施工することもできる。この場合、以下に説明するように、上記のパネル間近接形態の場合と比較して、各取付具5を軸心回りに90°回転させた状態にして施工するものである。
【0104】
すなわち図4A,4Bに示すように、壁面Wにおける1段目の木質パネル1の下側縁部2を固定する位置に、複数の取付具5を左右方向(水平方向)に沿って適当な間隔おきに取り付ける。このとき各取付具5は、そのパネル間設置体7の縦方向D2が上下方向(パネル並列方向)に一致するようにして、壁面設置体6の裏面側を壁面Wに設置し、その状態で、ビス55を取付具5の前面側からビス取付孔51,52に挿通して、壁面Wにねじ込むことにより、各取付具5を壁面Wにそれぞれ固定する。この状態では、縦方向両側の第2嵌合溝72,72が上下両側に配置されるとともに、横方向両側の第1嵌合溝71,71が左右両側に配置される。
【0105】
こうして固定された各取付具5におけるパネル間設置体7の上側の第2嵌合溝72内に、1段目の木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2における嵌合凸部25をそれぞれ嵌合し、これにより木質パネル1の下側縁部2を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。
【0106】
次に、1段目の木質パネル1の他側縁部(上側縁部)3に、その上側縁部3に沿って所定の間隔おきに複数の取付具5を設置する。つまり木質パネル1の上側縁部3における嵌合凸部35に、取付具5におけるパネル間設置体7の縦方向一方側(下側)の第2嵌合溝72を外嵌する。このとき、各取付具5は、上記と同様に、パネル間設置体7の縦方向D2が上下方向に沿って配置される。
【0107】
そして各取付具5の壁面設置体6を壁面に設置した状態で、取付具5の表面側からビス55を、ビス取付孔51,52に挿通して壁面Wにねじ込むことにより、取付具5を壁面Wに固定する。こうして1段目の木質パネル1の上側縁部3を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。
【0108】
続いて、1段目の木質パネル1の上側縁部3を支持する複数の取付具5における上側の第2嵌合溝72内に、2段目の木質パネル1の下側縁部2を上記と同様に差し込んで、壁面Wに支持する。
【0109】
さらに2段目の木質パネル1の上側縁部3を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。このときも上記と同様に、取付具5は、パネル間設置体7の縦方向D2を上下方向に一致させるように配置し、縦方向下側の第2嵌合溝72内に、2段目の木質パネル1の上側縁部3を嵌め込むようにする。
【0110】
以下同様にして、複数の取付具5および木質パネル1を順次施工することによって、壁面Wに木質パネル1をを取り付けていくが、このパネル間隔離形態においても、上記パネル間近接形態と同様、作業用開口15の部分が木質パネル1で覆われないように、その作業用開口15の部分を除いた部分に短寸の木質パネル1を上記と同様に施工していく。例えば上記図1と同様に、下から3段目のパネル施工部の中央部に作業用開口15を形成する場合には、下から3段目のパネル施工部においては、中央部に作業用開口15が形成されるように、その作業用開口15を避けた両側に、短寸の木質パネル1,1が上記と同様に施工される。
【0111】
こうして多数の木質パネル1が順次施工されて、壁面Wの前面側に、作業用開口15を有するパネル壁10が組み立てられて、パネル壁構造が形成される。
【0112】
なおこのパネル間隔離形態においても、上記と同様に、作業用開口15の上側縁部に対応する位置には、取付具5が設置されておらず、作業用開口15の下側縁部に対応する位置には、取付具5が設置されている。
【0113】
またこのパネル間隔離形態においても、上記と同様に、同様の構成のピースパネル11が、作業用開口15に着脱自在に取り付けられる、
すなわち図9Bに示すように、パネルピース11を後傾させた状態でその上側部を作業用開口15に挿通して、ピース着脱金具8のバネ板部87の弾性力に抗して、パネルピース11の上側部を壁面Wに押し込む。これにより、ピース着脱金具8のバネ板部87を壁面Wに押し付けて前方へ撓ませて、パネルピース11の上側縁部3を壁面Wに近接させる。その状態(後傾状態)でパネルピース11の下側縁部2における嵌合凸部25を、取付具5の第1嵌合溝71内に嵌合させる。その後図9Aに示すように、パネルピース11への壁面W側への押込操作を解除する。こうすれば、バネ板部87の弾性反発力(付勢力)によって、パネルピース11の上側部が前方に押し戻されて、ストッパー85が上側の木質パネル1の下側縁部2の裏面側に当接係止する。これにより、パネルピース11を作業用開口15に取り付けることができる。
【0114】
またパネルピース11を取り外すには図9Bに示すように、パネルピース11の上側部を壁面W側に押し込んで、パネルピース11を後方に傾けてから、パネルピース11を上方へ少しスライド移動させて、パネルピース11の下側縁部2における嵌合凸部25を、取付具5の第1嵌合溝71から抜き出す。その後、同図の想像線に示すようにパネルピース11をその下側縁部2側から前方に引き出せば良い。
【0115】
なお言うまでもなく、本発明において、施工手順は、上記のものに限定されるものではなく、どのような手順で施工するようにしても良い。
【0116】
本実施形態においては、パネル間隔離形態で施工した場合でも、上記と同様に、パネルピース11を作業用開口15に簡単かつスムーズに着脱することができる。さらにこのパネル間隔離形態においても、上記と同様に、作業用開口15を開放できるため、その開口4を利用することにより、パネル壁10の裏面側へのコード類の配設作業や、コード類の壁面設置機器への抜き差し操作、壁面操作盤の操作等を簡単かつ確実に行うことができ、パネル壁裏面側のスペースを有効に利用することができる。
【0117】
またパネル間隔離形態によって施工されたパネル壁構造においては、上下に隣合う木質パネル1,1の対向縁部2,3が、取付具5のパネル間設置体7における縦方向両側の第2嵌合溝72,72に支持される。この状態において、パネル間設置体7の縦方向寸法H2は長く設定されているため、上下の木質パネル1,1が大きく離間した状態に配置されて、対向縁部2,3間に、パネル表裏間を連通する通気路4として機能する大きめの隙間が形成される。
【0118】
すなわち図4Aの断面視状態において、対向縁部2,3間に、上あご片21の先端面および上あご対向面33間の隙間に形成され、かつ壁面Wに対し垂直に延びる表面側開口部41と、裏側傾斜面および表側傾斜面32間の隙間に形成され、かつ壁面Wに対し傾斜する主要部42と、嵌合凸部25,36間の隙間に形成され、かつ壁面Wに対し垂直に延びる裏面側開口部43とを備えた通気路4が形成されている。
【0119】
さらに通気路4は、上記と同様、表面側開口部41、主要部42および裏面側開口部43の各間のコーナー部が、直角を超える鈍角に形成されることにより、コーナー部の曲りが小さい滑らかな通路に形成されている。
【0120】
このパネル間隔離形態において、上あご片21の先端面と、上あご対向面33との間の隙間(表面側開口部41の幅)寸法は、10mm程度に設定されている。
【0121】
なおこのパネル間隔離形態においても、上記と同様に、表面側開口部41が、裏面側開口部43に対して、木質パネル1の並列方向(上下方向)に位置をずらせて配置されている。
【0122】
さらにパネル間隔離形態においても、上記と同様に、取付具5の壁面設置体6は、木質パネル1を支持するパネル間設置体7と壁面Wとの間に介在されることにより、木質パネル1を壁面Wに対し離間した状態に保持するためのスペーサーとして機能する。
【0123】
またこのパネル間隔離形態においても、パネルピース11と、その上下の木質パネル1,1との間においても、上下に隣合う木質パネル1,1間と同様に大きめの隙間(通気路4)が形成されるようになっている。従って、このパネル間隔離形態においても、その隙間4を介して、パネルピース11の縁部2,3に指を引っかけるようにして、パネルピース1を取り外したり、取り付けたりすることができ、パネルピース1の着脱操作を一層簡単に行うことができる。特にこのパネル間隔離形態では、パネルピース11と木質パネル1との間の隙間が大きいため、パネルピース1の着脱操作をより一層簡単に行うことができる。
【0124】
一方、本実施形態のパネル壁構造によれば、室内の調湿性能を向上させることができる。すなわち木質材は、その表裏両面、左右両側端面および上下両側端面を含む全周面(周囲6面)から、水分(湿気成分)を吸収したり、放出することにより、周辺の湿度を適正に調整するものであるため、木質パネル1の全周面のうち、室内の空気(雰囲気)との接触する面積が大きくなるほど、吸放湿量を多くでき、調湿性能を向上させることができる。
【0125】
そこで本実施形態においては、木質パネル1を壁面Wから離間した状態に配置するものであるため、木質パネル1の表裏両面を共に室内空気に接触させることができ、木質パネル1の全周面における室内空気(屋内空気)との接触面積を大きく確保することができる。このため各木質パネル1による室内空気に対する吸放湿を十分に行うことができ、室内の調湿性能を十分に確保できて、快適な居住空間を確保することができる。
【0126】
しかも本実施形態においては、隣り合う木質パネル1,1間に、パネル裏面に通じる通気路(隙間)4を形成しているため、その通気路4を通って、室内の空気が、パネル裏面側と表面側との間で循環し易くなり、パネル裏面や周辺部での吸放湿をより確実に行うことができ、より一層調湿性能を向上させることができる。
【0127】
特にパネル間隔離形態においては、通気路4の幅を広くできるため、パネル表裏間での空気の往来がスムーズに行われ、パネル裏面等での吸放湿をより一層確実に行うことができ、より一層確実に調湿性能を向上させることができる。
【0128】
その上さらに、本実施形態においては、通気路4の主要部42を、表面側開口部41側から裏面側開口部43に向かうに従って、裏面側に近づくように傾斜させているため、パネル表面側から表面側開口部41に流入する空気は、主要部42を抵抗無くスムーズに流通してパネル裏面側に導かれるとともに、パネル裏面側から裏面側開口部43に流入する空気は、通気路4の主要部42を抵抗無くスムーズに流通してパネル表面側へと導かれる。従って、パネル表裏間での空気の往来(循環)をより一層スムーズに行うことができ、調湿津性能を一層向上させることができる。
【0129】
なお本実施形態では、隣り合う木質パネル1,1において、上側の木質パネル1の下側縁部2における上あご片21が、下側の木質パネル1の下あご片31における表面側に配置されるため、パネル表面側からパネル間の隙間(通気路4)を通して壁面Wが視認されるような不具合を確実に防止することができる。
【0130】
また本実施形態においては、パネル間に小さめの隙間が形成されるパネル間近接形態と、大きめの隙間が形成されるパネル間隔離形態とのいずれの形態でも施工できるようにしているため、居住者等のユーザーは、施工場所や施工目的に応じて、上記2つの形態の中から、好ましい形態を選択することができる。例えばリビングルーム等の場所では、パネル間近接形態で施工することによって、パネル間の隙間が小さくて意匠性の高い壁面構造を形成できる一方、寝室等の場所では、パネル間隔離形態で施工することによって、調湿性能が非常に優れた壁面構造を形成できて、快適な居住空間を得ることができる。このようにユーザーのニーズ等に合わせて、調湿性能を重視したり、意匠性を重視した壁面構造を形成することが可能であり、選択肢が増えて、汎用性を向上させることができ、高い商品価値を得ることができる。
【0131】
さらに本実施形態では、パネル間近接形態およびパネル間隔離形態のいずれにおいても1種類の取付具5によって施工できるようにしているため、部品点数の削減によって、コストを削減できる上、部品(取付具5)の種類を間違えたりするようなミスが生じるのも確実に防止でき、パネル施工作業を簡単に行うことができる。
【0132】
また本実施形態においては、取付具5における第1嵌合溝71の溝底に切欠部711を形成して、木質パネル1の縁部と実際に接触するパネル接触面712の面積を小さく形成しているため、施工後に、吸湿等によって木質パネル1が延びたとしても、木質パネル1が屋内側に浮き上がるのを防止することができる。すなわち、木質パネル1を第1嵌合溝71に嵌め込んで取付具5に支持した場合、木質パネル1における第1嵌合溝71の底面との接触面積が小さいため、木質パネル1が延びた際の応力が、木質パネル1の取付具5との接触部に局所的に作用し、その接触部が圧壊変形する。これにより、木質パネル1が表面側に不用意に膨れ上がるような浮き上がり変形を防止することができ、良好な美観を維持することができる。
【0133】
さらに第2嵌合溝72は、溝長さが短いため、切欠部等を形成しなくとも、溝底の面積は小さいものである。このため、木質パネル1を第2嵌合溝72に嵌め込んで取付具5に支持した場合においても、木質パネル1における取付具5との接触面積は小さくなっている。従って、木質パネル1が吸湿によって延びたとしても、上記と同様に、接触部に応力が集中してその接触部が圧壊変形することにより、木質パネル1が前方(表面側)に浮き上がるという不具合を確実に防止することができる。
【0134】
なお、本実施形態において、第1嵌合溝71の底面における木質パネル1との接触面積と、第2嵌合溝72の底面における木質パネル1との接触面積とが等しくなるように形成している。このため、第1嵌合溝71に木質パネル1を嵌合した状態(パネル間近接形態)と、第2嵌合溝72に木質パネル1を嵌合した状態(パネル間隔離形態)とのいずれの状態であっても、木質パネル1の浮き上がりを同様に抑制することができる。
【0135】
また本実施形態においては、取付具5における嵌合溝71,72の開口端部の幅を、奥部(底部)の幅よりも大きく形成しているため、各嵌合溝71,72に木質パネル1の縁部を簡単かつスムーズに嵌め込むことができ、パネル施工作業を効率良く行うことができる。
【0136】
しかも本実施形態においては、木質パネル1の縁部における嵌合凸部25,35の先端面と裏面との間に、面取り部26,36を形成しているため、木質パネル1の縁部(嵌合凸部25,35)を、取付具5の嵌合溝71,72内により一層簡単かつスムーズに嵌め込むことができ、パネル施工作業をより一層効率良く行うことができる。
【0137】
また本実施形態においては、木質パネル1の構成材料として、杉や檜を用いることによって、より一層調湿性能を向上させることができる。すなわち杉や檜は、針葉樹材で比重が小さく、木材の中でも、湿気成分の吸放出機能が大きいため、上記の調湿性能をより向上させることができる。
【0138】
さらに本実施形態において、例えば、木質パネル1の表面や裏面に溝や凸筋等の凹凸形状を形成することによって、木質パネル1の外表面積をさらに増大させることができ、調湿性能を一層向上させることができる。
【0139】
なお、上記実施形態においては、パネル壁10に矩形状の作業用開口15を1つ形成する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、作業用開口15(パネルピース11)の数や形状、形成位置は上記実施形態のものに限られるものではない。例えば、一つのパネル壁10に複数の作業用開口15を形成し、各作業用開口15にパネルピース11をぞれぞれ着脱自在に取り付けるようにしても良い。さらに作業用開口の大きさや形状も、上記実施形態のものに限定されるものではなく、作業用開口は、三角形状、五角形以上の多角形形状、円形、楕円形、非円形、異形形状等、どのような形状に形成しても良い。
【0140】
また大きさや形状の異なる2種以上の作業用開口を、一つのパネル壁に共存させるようにしても良い。
【0141】
さらに上記実施形態においては、パネルピース11と木質パネル1とは、長さが異なるのみで、両者の構成を実質的に同じに形成しているが、本発明においては、パネルピースの構成と木質パネル1の構成とを異ならせるようにしても良い。例えばパネルピース11の上側縁部(他側縁部)3における切込溝34、嵌合凸部35、面取り部36を形成しないようにしても良い。もっとも、本実施形態のように、パネルピースを木質パネルの構成と実質的に同様すれば、部品の共用化によって、コストの削減を図ることができる上さらに、パネル壁においてパネルピースがその周囲の木質パネルに対して一体感が得られて、美観をより一層向上させることができる。
【0142】
また上記実施形態においては、付勢手段としてのバネ板部とストッパーとを一体に形成するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、付勢手段とストッパ−とを別体に形成して、それぞれ別々パネルピースに取り付けるようにしても良い。
【0143】
また上記実施形態においては、通気路4の主要部42が断面視で略直線状に形成されているが、それだけに限られず、本発明においては、通気路の主要部が、曲率半径が大きい曲線状に形成されるようにしても良い。例えば、上あご片の裏側傾斜面や下あご片の表側傾斜面を湾曲面に形成して、通気路の主要部を断面円弧状や緩やかな波状に形成するようにしても良い。
【0144】
さらに本発明においては、通気路の主要部における表面側端部が、裏面側端部に対し、表面側(室内側)に配置していれば良く、通気路の主要部の一部に、パネル並列方向(壁面)に対し傾斜していない部分が含まれていても良い。換言すれば、上あご片の裏側傾斜面の先端が、基端よりも表面側(屋内側)に配置されるとともに、下あご片の表側傾斜面の先端が、基端よりも裏面側(屋内壁面側)に配置されていれば良く、表面側傾斜面および裏面側傾斜面の一部に、傾斜していない部分が含まれていても良い。
【0145】
さらに本発明においては、裏面側傾斜面は、上あご片の裏側の面における少なくとも一部に設けられていれば良く、同様に、表面側傾斜面は、下あご片の表側の面における少なくと一部に設けられていれば良い。
【0146】
また上記実施形態においては、木質パネル1として帯板形状のものを用いているが、それだけに限られず、本発明において、木質パネルの形状は特に限定されるものではなく、正方形や長方形等の四角形状のもの、四角形以外の多角形状のもの、異形状のものを用いても良い。さらに異なる大きさの木質パネルを複合して用いるようにしても良い。
【0147】
また上記実施形態においては、ひとつの壁面を仕上げるに際して、パネル間近接形態と、パネル間隔離形態とのいずれか一方のみで施工するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、ひとつの壁面に対し、パネル間近接形態と、パネル間隔離形態とを併用して施工するようにしても良い。例えば木質パネルを1枚毎にパネル間近接形態とパネル間隔離形態とで交互に施工することにより、2枚毎にパネル間に隙間が形成されるように施工しても良い。さらに多数のパネル間のうち、ランダムな位置のパネル間に大きめの隙間を形成するようにしても良い。
【0148】
また上記実施形態において、パネル間近接形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部を離間させるようにしているが、それだけに限られず、本発明において、パネル間近接形態で、隣り合う木質パネルの対向縁部を接触させるようにしても良い。
【0149】
さらに上記実施形態においては、木質パネルを、その上あご片が形成される側の縁部(一側縁部)を上側して施工するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、上あご片が形成される側の縁部(一側縁部)を下側して施工するようにしても良い。
【0150】
また上記実施形態においては、帯板形状の木質パネル1を水平方向(左右方向)に沿わせた状態で、上下方向に並列に並べて複数配置するように施工する場合を例に挙げて説明したが、本発明において、木質パネルの配列方向は限定されるものではない。例えば本発明において、帯板形状の木質パネル垂直方向(上下方向)に沿わせて配置した状態で、横方向に並列に並べて複数配置するように施工しても良い。この場合、木質パネルの並列方向(並び方向)は水平方向(左右方向)となる。
【0151】
また上記実施形態においては、パネル間設置体として、正面視四角形状(長方形)のものを用いているが、それだけに限られず、本発明においては、他の形状、例えば5角形以上の多角形のものを用いても良い。
【0152】
また本発明において、一径方向とは、径方向のいずれか一つの方向であり、他の径方向とは一径方向に対し直交し、かつ径方向のいずれか一つの方向である。
【0153】
また上記実施形態においては、木質パネルとして、集成材を用いるようにしているが、本発明において、木質パネルの素材は特に限定されるものではなく、無垢材等を用いても良く、要は木質系の素材であればどのような素材を用いても良い。
【0154】
さらに本発明において、木質パネルは、部分的に、合成樹脂や合成ゴム等の非木質系の部材が含まれていても良い。
【0155】
また取付具の素材はPPだけに限られず、取付具を、他の合成樹脂や、合成樹脂以外の素材、例えば金属等によって構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0156】
この発明のパネル壁構造は、屋内の壁面に適用可能である。
【符号の説明】
【0157】
1:木質パネル
10:パネル壁
11:パネルピース
15:作業用開口
4:通気路(隙間)
5:取付具(パネル取付具、ピース取付具)
8:ピース着脱金具
81:固定板部
85:ストッパー
87:バネ板部(付勢手段)
W:壁面(屋内壁面)
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば一般家屋の屋内壁面から離間した状態で複数の木質パネルが並べて施工されるようにしたパネル壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特許文献1に示すように、室内の壁面に、その壁面から離間させた状態で、複数の木質パネルを並べて施工することにより、パネル壁を組み立てるようにしたパネル壁構造が周知である。
【0003】
このようなパネル壁構造は、室内壁面の前面側に、並んで配置された多数の木質パネルによってパネル壁が形成されるため、優れた意匠性を得ることができる。さらに、木質パネルをなす木材自身が保有する湿度調整機能(調湿機能)を発揮することによって、快適な居住環境を得ることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−6868号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のパネル壁構造においては、パネル壁と室内壁面との間に隙間が形成されるため、この隙間を有効に利用することが考えられる。例えばその隙間に、テレビジョン(テレビ)の電源コード等を敷設したり、あるいはパネル壁の裏面側における室内壁面に、電源コードを差し込むコンセント(配線用差込接続器)等を設置するようにすれば、美観を確保しつつ、スペースの有効利用を図ることができる。
【0006】
しかしながら、上記パネル壁構造における室内壁面とパネル壁との間隔(隙間)は狭いため、室内壁面上に拡がるこの狭い隙間に、電源コード等を効率良く敷設することは困難である。特にパネル壁の裏面側にコンセントを配置するような場合には、コンセントがパネル壁によって被覆されるため、電源コードをコンセントに対して抜き差しすることが困難となってしまう。このようにパネル壁裏面側に、電源コード等を敷設したり、コンセントを設置することは困難であり、パネル壁裏面側のスペースを有効に利用できない、という課題があった。
【0007】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、美観を向上させつつ、スペースの有効利用を図ることができるパネル壁構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0009】
[1]基準壁面から離間した状態で基準壁面に沿って複数の木質パネルが並べて施工されるとともに、その複数の木質パネルによってパネル壁が形成されるようにしたパネル壁構造であって、
前記パネル壁に、そのパネル壁を貫通する作業用開口が形成されるとともに、
前記作業用開口に、その開口形状に対応する形状のパネルピースが着脱自在に取り付けられたことを特徴とするパネル壁構造。
【0010】
[2]前記作業用開口は、木質パネルの一部が切除されるようにして形成され、
前記パネルピースが木質パネルに対して同じ構成を有している前項1に記載のパネル壁構造。
【0011】
[3]基準壁面における前記作業用開口の下側縁部に対応する位置に、前記パネルピースの下側縁部を着脱自在なピース取付具が取り付けられ、
前記パネルピースの後面側に、弾性圧縮変形可能な付勢手段と、上方に突出するストッパーとが設けられ、
前記パネルピースの下端が前記ピース取付具に着脱自在に取り付けられるとともに、基準壁面に押圧された前記付勢手段の弾性反発力によって前記パネルピースが前方へ押し付けられて前記ストッパーが前記パネル壁の後面側における前記作業用開口縁部の上側に当接係止することにより、前記パネルピースが前記作業用開口内に配置された状態に取り付けられるようになっている前項1または2に記載のパネル壁構造。
【0012】
[4]前記パネルピースの裏面側にピース着脱金具が取り付けられ、そのピース着脱金具に、前記付勢手段と前記ストッパーとが一体に形成されている前項3に記載のパネル壁構造。
【0013】
[5]前記ピース着脱金具は、前記パネルピースの裏面上部に取り付けられる取付板部と、その取付板部に上方に突出するように一体形成されたストッパーと、前記ストッパーに後面側に折り返されるように一体形成され、かつ前記付勢手段として構成されるバネ板部とを備え、前記バネ板部が前記取付板部側に近接する方向に押し込まれた際に、離間する方向に弾性反発力が作用するようになっている前項4に記載のパネル壁構造。
【0014】
[6]木質パネルは、帯板形状を有し、
木質パネルは、その長さ方向を水平方向に配置し、かつ上下方向に複数並んで配置された状態で、複数のパネル取付具を介して基準壁面に支持され、
前記複数のパネル取付具のうち、前記作業用開口の下側に対応する位置に配置されるパネル取付具が、前記ピース取付具として構成される前項3〜5のいずれか1項に記載のパネル壁構造。
【0015】
[7]隣り合う木質パネル間に隙間が形成され、その隙間によって、木質パネルの前面側および後面側が連通されている前項1〜6のいずれか1項に記載のパネル壁構造。
【発明の効果】
【0016】
発明[1]のパネル壁構造によれば、基準壁面の前面側に、並んで配置された複数の木質パネルによってパネル壁が形成されるため、良好な美観を得ることができる。
【0017】
また本パネル構造においては、開放された作業用開口を介して、パネル壁裏面側へのコード類の敷設作業を簡単かつスムーズに行えるとともに、パネル壁裏面側でのコード類の差込接続器に対する抜き差し操作を不具合なく行うことができる。このため、パネル壁裏面側に、コード類や差込接続器を確実に設置でき、パネル壁裏面側のスペースを有効に利用することができる。
【0018】
発明[2]のパネル壁構造によれば、パネル壁におけるパネルピースが周囲の木質パネルと一体化することによって、美観を一層向上させることができる上さらに、部品の共通化によってコストを削減することができる。
【0019】
発明[3]のパネル壁構造によれば、パネルピースの上端部を基準壁面側に押し付けながら、パネルピースの下側縁部をピース取付具に対し着脱するだけで簡単に、パネルピースを作業用開口に対し着脱することができる。
【0020】
発明[4][5]のパネル壁構造によれば、部品点数を削減できて、付勢手段やストッパーのパネルピースへの取付作業を簡単に行うことができる。
【0021】
発明[6]のパネル壁構造によれば、部品の共通化によって、コストの削減を図ることができる上、部品の取り違え等の不具合を確実に防止でき、パネル壁組立作業を効率良く行うことができる。
【0022】
発明[7]のパネル壁構造によれば、空気がパネル裏面側と表面側との間で循環し易くなり、パネル裏面においても空気が接触し易くなるため、パネルの表裏両面で空気に対する吸放湿を十分に行うことができ、調湿性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1はこの発明の実施形態であるパネル壁造を示す正面図である。
【図2】図2は実施形態のパネル壁構造を示す側面断面図である。
【図3A】図3Aはパネル間近接形態が採用された実施形態のパネル壁構造における取付具周辺を拡大して示す側面断面図である。
【図3B】図3Bは図3Aの分解断面図である。
【図3C】図3Cは実施形態のパネル壁構造においてパネル間の通気路周辺を拡大して示す側面断面図である。
【図4A】図4Aはパネル間隔離形態が採用された実施形態のパネル壁構造における取付具周辺を拡大して示す側面断面図である。
【図4B】図4Bは図4Aの分解断面図である。
【図5】図5は実施形態に適用された取付具を示す斜視図である。
【図6A】図6Aは実施形態に適用された取付具を縦方向から見た状態での断面図である。
【図6B】図6Bは実施形態の取付具を横方向から見た状態での断面図である。
【図6C】図6Cは実施形態の取付具を示す正面断面図である。
【図7】図7は実施形態に適用された取付具を示す図であって、同図(a)は正面図、同図(b)は縦方向の端面図、同図(c)は裏面図、同図(d)は横方向の端面図である。
【図8】図8は実施形態に適用された木質パネルの側面図である。
【図9A】図9Aは実施形態のパネル壁構造においてパネルピース取付状態を説明するための側面断面図である。
【図9B】図9Bは実施形態のパネル壁構造においてパネルピースの着脱操作を説明するための側面断面図である。
【図10】図10は実施形態のパネルピースに取り付けられたピース着脱金具を示す斜視図である。
【図11】図11は実施形態のピース着脱金具を示す図であって、同図(a)は平面図、同図(b)は正面図、同図(c)は側面図、同図(d)は底面図、同図(e)は背面図である。
【図12】図12は実施形態のパネル壁構造に適用された着脱金具付きパネルピースを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1はこの発明の実施形態であるパネル壁構造を示す正面図、図2はそのパネル壁構造の側面断面図である。両図に示すように、本実施形態のパネル壁構造においては、一般住宅における基準壁面としての室内の壁面(屋内壁面)Wに、帯板状の木質パネル1が、左右方向(水平方向)に沿って配置された状態で、上下方向に並列に複数並べて施工されている。
【0025】
本実施形態では、施工された多数の木質パネル1が、壁面Wの前面側を覆うパネル壁10として構成される。さらに本実施形態では、パネル壁10に、そのパネル壁10を貫通する作業用開口15が形成されるとともに、その作業用開口15に、パネルピース11が着脱自在に取り付けられる。
【0026】
なお、本実施形態では、室内側から壁面Wに近づいていく方向を、後側方向(裏面側方向)とし、その逆方向、つまり壁面Wから遠ざかっていく方向を、前側方向(表面側方向)として説明する。
【0027】
また各木質パネル1は、その一側縁部2側が下方側に配置されるとともに、他側縁部3側が上方に配置されるように施工される。従って本実施形態においては、必要に応じて、木質パネル1の「一側縁部2」を「下側縁部2」と称し、「他側縁部3」を「上側縁部3」と称する。
【0028】
さらに本実施形態において、隣り合う木質パネル1,1の対向縁部2,3は、上下に隣り合う木質パネル1,1のうち、上側の木質パネル1における一側縁部(下側縁部)2と、下側の木質パネル1における他側縁部(上側縁部)3によって構成されるものである。
【0029】
以下、本実施形態についてさらに詳細に説明する。
【0030】
壁面Wは、例えば間柱や胴縁の室内側に、多数の合板が面状に並べて貼り付けられるとともに、その合板上に、多数の石膏ボードが面状に並べて貼り付けられることによって構成されている。
【0031】
木質パネル1は、所定の長さを有する帯板形状を有している。この木質パネル1は、例えば複数の木材片を接着剤を用いて再構成して作製された集成材等を加工することよって形成されている。
【0032】
図3B,3Cおよび図8等に示すように、木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2は、その裏面側が切り欠かれることによって、前面側(表面側)に上あご片21が一側方(下方)に突出するように形成されている。上あご片21の後側(裏側)の面は、上あご片21の先端側から基端側に向かうに従って、裏面側(壁面側)に近づくように傾斜する裏側傾斜面22として形成されている。
【0033】
木質パネル1の一側縁部2には、上あご片21よりも裏面側(壁面側)に、パネル長さ方向に連続して延びる切込溝24が形成されるとともに、切込溝24よりも裏面側(壁面側)に、後述する取付具5の嵌合溝71,72に嵌合可能な嵌合凸部25が形成されている。さらにその嵌合凸部25の先端面と裏面との間には、面取り部26が形成されている。
【0034】
なお、上あご片21の先端面および嵌合凸部25の先端面は、壁面Wに対し直交し、かつパネル長さ方向に平行な平坦面に形成されている。
【0035】
さらに本実施形態において、木質パネル1の一側縁部2は、上あご片21および嵌合凸部25を含むものである。さらに本実施形態において、一側縁部2の表面側は、上あご片21を含むものであり、一側縁部2の裏面側は、嵌合凸部25を含むものである。
【0036】
木質パネル1の他側縁部(上側縁部)3は、その前面側(表面側)が切り欠かれることによって、後面側(裏面側)に下あご片31が他側方(上方)に突出するように形成されている。下あご片31の表側の面は、下あご片31の基端側から先端側に向かうに従って、裏面側(壁面側)に近づくように傾斜する表側傾斜面32として形成されている。この表側傾斜面32は、上あご片21の裏面側傾斜面22に対応して形成されており、後述するように、両傾斜面22,32間によって通気路4の主要部42が形成される。
【0037】
下あご片31の先端面には、パネル長さ方向に連続する切込溝34が形成され、下あご片31における切込溝34よりも裏面側の部分が、後に詳述するように取付具5の嵌合溝71,72に嵌合可能な嵌合凸部35として構成されている。さらに下あご片31の先端面と裏面との間には、面取り部36が形成されている。
【0038】
また木質パネル1の他側縁部3における下あご片31よりも表面側には、壁面Wに対し直交し、かつパネル長さ方向に平行な上あご対向面33が形成されている。
【0039】
なお、下あご片31の先端面は、壁面に対し直交し、かつパネル長さ方向に平行な平坦面に形成される。
【0040】
さらに本実施形態において、木質パネル1の他側縁部3は、下あご片31および上あご対向面33を含むものである。さらに本実施形態において、他側縁部3の表面側は、上あご対向面によって構成されるとともに、他側縁部3の裏面側は、嵌合凸部35を含む下あご片31によって構成されている。
【0041】
既述したように、本実施形態においては、パネル壁10に、作業用開口15が形成される。この作業用開口15は、開口形成予定領域に配置される木質パネル1の一部が切り取られることによって形成される。
【0042】
具体的には、図1において、下から3番目の木質パネル1の中央部が切り取られることによって、作業用開口15が形成される。換言すれば、パネル壁10に作業用開口15が残存形成されるように、作業用開口15の部分を挟んだ両側に、短い寸法の木質パネル1,1が施工されるものである。
【0043】
作業用開口15にはパネルピース11が着脱自在に取り付けられる。本実施形態において、パネルピース11は、木質パネル1から切り取られた木質パネル断片によって形成されるものである。このため、パネルピース11は、木質パネル1に対し、長さ寸法が異なるのみである。つまり、パネルピース11の構成は、木質パネル1と実質的に同様である。従って、本実施形態では、パネルピース11において、木質パネル1に対し、同一部分または相当する部分については、同一符号を付して、重複説明は省略する。
【0044】
このパネルピース11の後面側(裏面側)には、パネルピース11を作業用開口15に対し着脱自在に取り付けるためのピース着脱金具8が設けられている。
【0045】
図10,11に示すように、ピース着脱金具8は、板状のバネ鋼を加工した一体加工品によって構成されている。なお、このピース着脱金具8の構成を説明するに際しては、図11(b)の正面図で表示されている面が前面であり、同図(b)に向かって上側が上側、下側が下側とし、図11(e)の背面図で表示されている面が後面として説明する。
【0046】
これらの図に示すように、ピース着脱金具8は、パネルピース11に固定される固定板部81と、固定板部81の上端中間に上方に突出するようにして一体に形成されるストッパー85と、ストッパー85の上端に後方に折り返されるように一体に形成され、かつ下向きの斜め後方に向かって延びるように配置されるバネ板部87とを備えている。
【0047】
固定板部81は、その両側張り出し部にねじ孔82,82が形成されるとともに、両側張り出し部の上端に位置決め片83,83が後方に折り曲げられるようにして一体に形成されている。さらに固定板部81の下端中央には、矩形状の係止孔84が形成されている。
【0048】
バネ板部87の下端には、突き当て部88が後方に折り曲げられるようにして一体に形成されるとともに、その突き当て部88の先端中央には、上記係止孔84に対応して、係止片89が一体に形成されている。
【0049】
このピース着脱金具8において、バネ板部87が、ストッパー85との間の上端折り返し部の角度が小さくなるように、固定板部81側(前方)に押し込まれた際には、つまり固定板部81側に撓むように弾性圧縮変形した際には、その弾性反発力(付勢力)によって、バネ板部87を固定板部81から離間する方向(後方)に押し出されるようになっている。
【0050】
なお、このピース着脱金具8においては、バネ板部87が非常に強い力で前方に押し込まれた際には、図12の想像線に示すように、バネ板部87の係止片89が固定板部81の係止孔84に係合することにより、バネ板部87の突き当て部88が固定板部81の後面に当接した状態に保持される。この状態では、突き当て部88によってバネ板部87が固定板部81に支持されるため、バネ板部87に非常に強い力が作用しても過度に撓み変形するのが防止される。従って、過度の変形による不具合、例えば有害な塑性変形等を有効に防止することができる。
【0051】
ここで、本実施形態においては、バネ板部87が付勢手段を構成するものである。
【0052】
以上の構成のピース着脱金具8がパネルピース11の上側縁部(他側縁部)3に固定される。すなわち図12に示すように、ピース着脱金具8における固定板部81を、その位置決め片83,83をパネルピース11の上端面(下あご片31の先端面)に係止させつつ、パネルピース11の後面における上端中央部に配置する。そしてその状態で、固定板部81のねじ止め孔82,82にねじ(図示省略)を挿通してパネルピース11に固定することにより、ピース着脱金具8がパネルピース11に固定される。この固定状態においては、ストッパー85が、パネルピース11の上側縁部(下あご片31の先端面)よりも上方に突出するように配置される。さらにバネ板部87は、ストッパー85および固定板部81の後面側(背面側)において、下向きの斜め後方に傾斜するように配置される。
【0053】
なお本実施形態においては、ピース着脱金具8における固定板部81の位置決め片83,83をパネルピース11の上端面に係止すれば、ピース着脱金具8のパネルピース11に対する上下方向の位置決めが図られるようにしている。従って、ピース着脱金具8のパネルピース11への位置決め作業を簡単に行うことができ、ひいてはピース着脱金具8のパネルピース11への取付作業を簡単に行うことができる。
【0054】
図5〜7に示すように、パネル取付具を構成する取付具5は、壁面Wに設置される壁面設置体6と、壁面設置体6の前面側(表面側)に一体に形成され、かつ隣り合う木質パネル1,1間に配置されるパネル間設置体7とを備えている。この取付具5は、例えばポリプロピレン(PP)等の硬質合成樹脂の一体成形品(射出成形品)によって構成されている。
【0055】
壁面設置体6は、図7(a)に示す正面視において上下方向に対応する横方向D1が、同図の左右方向に対応する縦方向D2に対し短く形成された長方形の形状を有している。
【0056】
またパネル間設置体7は、同図の正面視において、壁面設置体6に対しサイズが小さい略相似形に形成されている。すなわちパネル間設置体7は、横方向(図7(a)の上下方向)D1が、縦方向(同図の左右方向)D2に対し短く形成された長方形の形状を有している。
【0057】
さらにパネル間設置体7の前端(表面側)外周には、溝壁部75が外径方向に突出するように形成されている。
【0058】
これにより、壁面設置体6と溝壁部75との間において、パネル間設置体7の横方向両側(図7(a)の上下両側)に、横方向両側に開放された第1嵌合溝71,71がそれぞれ形成されるとともに、パネル間設置体7の縦方向両側(同図の左右両側)に、縦方向両側に開放された第2嵌合溝72,72がそれぞれ形成される。
【0059】
また各嵌合溝71,72は、開口部の幅が、その溝底の幅よりも大きく形成されており、木質パネル1の嵌合凸部25,35をスムーズに嵌合できるようになっている。
【0060】
図5および図6C等に示すように、第1嵌合溝71の溝底面における中間部には切欠部711が形成されて、溝底面における切欠部711を除いた両側の領域が、木質パネル1における嵌合凸部25,35の先端面に接触するパネル接触面712,712として構成されている。このように本実施形態において、第2嵌合溝72は、溝底面全域の面積に比べて、パネル接触面712の面積が小さく設定されている。これは、後に詳述するように、パネル施工後に木質パネル1が不用意に浮き上がるのを防止するためである。
【0061】
また第2嵌合溝72は、その溝底面の全域が、木質パネル1における嵌合凸部25,35の先端面に接触するパネル接触面として構成されている。
【0062】
なお、本実施形態において、第1嵌合溝71のパネル接触面712,712の面積と、第2嵌合溝72のパネル接触面の面積とは、ほぼ等しく設定されている。
【0063】
ここで本実施形態においては、図6A,6Bに示すように、第1嵌合溝71,71における互いの底壁面間の寸法、詳細には、一方の嵌合溝71のパネル設置面712と、他方の嵌合溝71のパネル設置面712との間の寸法は、パネル間設置体7の横方向D1の寸法H1に相当することなる。さらに第2嵌合溝72,72における底壁面間の寸法は、パネル間設置体7の縦方向D2の寸法H2に相当することになる。
【0064】
また本発明においては、壁面Wに対し直交し、かつパネル間設置体7の中心(例えば、正面視において、パネル間設置体7における短径方向の中心線と長径方向の中心線とが交差する点、外接円中心、内接中心等)を通過する線分が、軸心として構成され、その軸心に対し直交する方向が径方向として構成されるものである。
【0065】
さらに本実施形態においては、横方向D1が短径方向として構成されるとともに、縦方向D2が長径方向として構成されている。言うまでもなく、横方向D1は、縦方向D2に対し正面視の状態で90°の角度に設定されている。
【0066】
また本実施形態において、横方向D1および縦方向D2は、共に径方向を構成するものである。
【0067】
図5〜7に示すように、取付具5の壁面設置体6は、後面側(裏面側)が開放された中空構造によって構成されている。
【0068】
この取付具5の前部には、前面側に開放され、かつ軸心に沿って裏面側に延びるビス取付用筒状凹部51が形成されている。さらにそのビス取付用筒状凹部51の底壁には、ビス挿通用筒状部52が軸心に沿って裏面側に延びるように形成されている。そしてビス挿通用筒状部52の表面側開口部がビス取付用筒状凹部51内に連通されるとともに、ビス挿通用筒状部52の裏面側開口部が、取付具5の裏面側に開放されている。
【0069】
なお本実施形態においては、必要に応じて、ビス取付用筒状凹部51およびビス挿通筒状部52を総称して、ビス取付孔51,52と称する。
【0070】
また本実施形態においては、第1、第2嵌合溝71,72が、隣り合う木質パネル1,1の対向縁部2,3を支持するための第1、第2パネル支持部として構成されている。
【0071】
本実施形態では、木質パネル1を施工するに際して、木質パネル1を、上下に隣り合うパネル間に小さめの隙間が形成されるパネル間近接形態と、大きめの隙間が形成されるパネル間隔離形態とのいずれの形態においても施工できるようになっている。
【0072】
まず始めにパネル間近接形態で施工する場合について説明する。
【0073】
図3A,3Bに示すように、壁面Wにおける1段目の木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2を固定する位置に、複数の取付具5を左右方向(水平方向)に沿って適当な間隔おきに取り付ける。このとき各取付具5は、そのパネル間設置体7の横方向D1が上下方向(パネル並列方向)に一致するようにして、壁面設置体6の裏面側を壁面Wに設置し、その状態で、ビス55を取付具5の前面側からビス取付用筒状凹部51に挿入し、さらにビス55の軸部をビス挿通用筒状部52に挿通して壁面Wにねじ込むことにより、各取付具5を壁面Wにそれぞれ固定する。この状態では、横方向両側の第1嵌合溝71,71が上下両側に配置されるとともに、縦方向両側の第2嵌合溝72,72が左右両側に配置される。
【0074】
こうして固定された各取付具5におけるパネル間設置体7の上側の第1嵌合溝71内に、1段目の木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2における嵌合凸部25をそれぞれ嵌合し、これにより木質パネル1の下側縁部2を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。
【0075】
次に、1段目の木質パネル1の他側縁部(上側縁部)3に、その上側縁部3に沿って所定の間隔おきに複数の取付具5を設置する。つまり木質パネル1の上側縁部3における嵌合凸部35に、取付具5におけるパネル間設置体7の横方向一方側(下側)の第1嵌合溝71を外嵌する。このとき、各取付具5は、上記と同様に、パネル間設置体7の横方向D1が上下方向に沿って配置される。
【0076】
そして各取付具5の壁面設置体6を壁面Wに沿わせるように配置した状態で、取付具5の表面側からビス55を、ビス取付孔51,52に挿通して壁面Wにねじ込むことにより、取付具5を壁面Wに固定する。こうして1段目の木質パネル1の上側縁部3を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。
【0077】
続いて、1段目の木質パネル1の上側縁部3を支持する複数の取付具5における上側の第1嵌合溝71内に、2段目の木質パネル1の下側縁部2を上記と同様に差し込んで、壁面Wに支持する。
【0078】
さらに2段目の木質パネル1の上側縁部3を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。このときも上記と同様に、取付具5は、パネル間設置体7の横方向D1を上下方向に一致させるように配置し、横方向下側の第1嵌合溝71内に、2段目の木質パネル1の上側縁部3を嵌め込むようする。
【0079】
以下同様にして、複数の取付具5および木質パネル1を順次施工することによって、壁面Wに木質パネル1を順次施工していくが、作業用開口15を形成する高さ位置では、作業用開口15の部分が木質パネル1で覆われないように、その作業用開口15の部分を挟んだ両側に短寸の木質パネル1を上記と同様に施工していく。具体的には、図1に示すように、下から3段目のパネル施工部においては、中央部に作業用開口15が残存形成されるように、その作業用開口15を避けた両側に、短寸の木質パネル1,1が上記と同様に施工される。
【0080】
こうして多数の木質パネル1が順次施工されて、壁面Wの前面側に、作業用開口15を有するパネル壁10が組み立てられて、パネル壁構造が形成される。
【0081】
なお本実施形態においては、作業用開口15の上側縁部に対応する位置には、取付具5が設置されておらず、作業用開口15の下側縁部に対応する位置には、取付具5が設置されている。なお本実施形態においては、作業用開口15の下側縁部(下端)に対応する位置に配置される取付具(パネル取付具)5が、ピース取付具として構成されている。
【0082】
一方、作業用開口15にはパネルピース11が取り付けられる。すなわち図9Aに示すように、パネルピース11が、作業用開口15に取り付けられた状態では、パネルピース11の一側縁部(下側縁部)2における嵌合凸部25が、作業用開口15の下縁部中央に位置する取付具5の第1嵌合溝71内に嵌め込まれている。なおこの嵌め込み状態では、パネルピース11は、嵌め込み部(下端部)を支点として、上側部が前後に少し揺動できるようになっている。そしてその嵌め込み状態でパネルピース11裏面のピース着脱金具8のバネ板部87がパネルピース11側に撓んだ状態で壁面Wに押圧接触している。従ってそのバネ板部87の弾性反発力によってパネルピース11自体が前方に押圧付勢される。そしてこの押圧力によって、着脱金具8のストッパー85が、作業用開口15の上側に配置された木質パネル1の下側縁部2の裏面側に当接係止する。これによりパネルピース11が作業用開口15に適合配置された状態に固定される。
【0083】
また作業用開口15に取り付けられたパネルピース11を取り外す場合には図9Bに示すように、パネルピース11の上側部を壁面W側(後方)に押し込む。これによりピース着脱金具8のバネ板部87を壁面Wに押し付けてパネルピース11側(前方)に撓ませて、パネルピース11の上側部を壁面W側に近接させて、パネルピース11を後方に傾けた状態(後傾状態)に配置する。続いてその後傾状態のままでパネルピース11を上方へ少しスライド移動させて、パネルピース11の上側縁部3を、作業用開口15の上側に配置される木質パネル1の下側縁部2の裏側(後側)に配置して、パネルピース11の下側縁部2における嵌合凸部25を、取付具5の第1嵌合溝71から抜き出す。その後、同図の想像線に示すようにパネルピース11をさらに後方に傾けつつ下側縁部2側から前方に引き出せば、パネルピース11を作業用開口15から取り外すことができる。
【0084】
なおパネルピース11を取り外す際に、パネルピース11を必要以上に強く押し込んだとしても、不具合が生じることはない。すなわちパネルピース11を強く押し込んだとしても、既述したように、ピース着脱金具8におけるバネ板部87の係止片89が固定板部81の係止孔84に係合することにより、バネ板部87の突き当て部88が固定板部81の後面に当接した状態に固定される(図12の想像線の状態)。この状態では、突き当て部88によってバネ板部87が固定板部81に支持されているため、例えばバネ板部87が過度に変形する等の不具合を確実に防止することができる。
【0085】
また作業用開口15にパネルピース11を取り付ける場合には、上記と逆の操作を行えば良い。すなわち図9Bの想像線に示すように、パネルピース11の上側縁部3側を作業用開口15に挿通して、パネルピース11の上側部を壁面W側に押し込む。これにより図9Bの実線に示すように、ピース着脱金具8のバネ板部87を壁面Wに押し付けて前方(パネルピース11側)へ撓ませて、パネルピース11の上側縁部3を壁面Wに近接させる。その状態(後傾状態)のままパネルピース11を上方へ少しスライド移動させて、パネルピース11の上側縁部3を、作業用開口15の上側に配置される木質パネル1の下側縁部2の裏面側(後側)に配置して、パネルピース11の下側縁部2における嵌合凸部25を、下側の取付具5の第1嵌合溝71に対向させる。続けて、パネルピース11を後傾状態のまま、下方にスライド移動させることにより、パネルピース11の嵌合凸部25を、取付具5の第1嵌合溝71内に嵌合させる。その後、パネルピース11への壁面W側への押込操作を解除すれば、バネ板部87の弾性反発力(付勢力)によって、パネルピース11の上側部が前方に押し戻されて、ストッパー85が上側の木質パネル1の下側縁部2の裏面側に当接係止する。これにより図9Aに示すように、パネルピース11を作業用開口15に適合状態に取り付けることができる。
【0086】
以上のように、本実施形態のパネル壁構造によれば、壁面W上に、整然と並ぶ多数の木質パネル1によってパネル壁10が形成されるため、良好な美観を得ることができる。
【0087】
さらに本実施形態において、パネル壁裏面側の隙間(スペース)を有効に利用することができる。すなわちパネル壁10の作業用開口15からパネルピース11を取り外して、作業用開口15を開放しておけば、パネル壁10の裏面側における壁面Wとの間の隙間(スペース)に、テレビ、AVシステム、照明スタンド等の電源コード、テレビアンテナケーブル、電話ケーブル、LANケーブル等のコード類を敷設する際の敷設作業を、作業用開口15を介して、簡単かつスムーズに行うことができる。
【0088】
しかも、電源コード、テレビ用アンテナケーブル、電話回線用ケーブルおよびLANケーブル等を差し込む配線用差込接続器(壁面設置器)や、空調機用リモートコントロール(リモコン)および給湯機用リモコン等の壁面設置型操作盤(壁面設置器)を、壁面Wにおける作業用開口15の近辺に設置しておけば、換言すれば、壁面設置器の近傍に作業用開口15を形成するようにすれば、開放された作業用開口15を介して、コード類の抜き差し操作や壁面操作盤の操作を簡単かつスムーズに行うことができる。
【0089】
このようにパネル壁10の裏面側へのコード類の敷設作業を正確かつスムーズに行えるとともに、パネル壁10の裏面側に壁面設置器を支障なく設置することができるため、パネル壁10の裏面側における壁面Wとの間の隙間(スペース)を有効に利用することができる。
【0090】
特に本実施形態においては、液晶テレビ(テレビジョン)、リアプロジェクションテレビ、有機ELテレビ、FEDテレビ等の薄型のディスプレイパネルを、パネル壁10に壁掛け状態で取り付ける場合や、ステレオフォニック等のAVシステムのスピーカーを壁掛け状態で取り付けるような場合には、これらの電気機器用のコード類やコンセント等の配線用差込接続器をパネル壁10の裏面側に確実に隠蔽することができる。従って、良好な美観を確保しつつ、スペースの有効利用を確実に図ることができる。
【0091】
また、本実施形態においては、壁掛けされた薄型テレビやステレオ等の電気製品に関連した機器、例えばテレビチューナー、HDDレコーダー、ステレオチューナー、ステレオアンプ等も、パネル壁10と壁面Wとの間のスペースに収容することも可能であり、それによって、美観を一層向上させつつ、より一層、スペースの有効利用を図ることができる。さらにこれらの機器を、作業用開口15の近傍に配置することにより、これらの機器を、作業用開口15を介して操作することもできる。
【0092】
また本実施形態においては、バネ板部87およびストッパー85を有するピース着脱金具8をパネルピース1の裏面側に設けておき、パネルピース1の下側縁部2を、壁面Wの付具5に嵌合した状態で、バネ板部87を弾性力によって壁面Wに押圧させて、ストッパー85を上側の木質パネル1の裏面側に当接係止させることにより、パネルピース1を作業用開口15に取り付けるようにしている。つまり、パネルピース1の上端部を壁面W側に押し付けながら、パネルピース1の下側縁部2を取付具5に対し嵌脱するだけで簡単に、パネルピース1を作業用開口15に対し着脱することができる。
【0093】
さらに本実施形態においては、ピース着脱金具8に、ストッパー85およびバネ板部87を一体に形成しているため、ピース着脱金具8をパネルピース11に取り付けるだけで、ストッパー85およびバネ板部87の二部材を一度に取り付けることができる。従って、部品点数を削減しつつ、金具付きのパネルピース11を簡単に製作できるため、パネル壁構造全体の施工作業を簡単かつスムーズに行うことができる。
【0094】
また本実施形態においては、木質パネル1を壁面Wに取り付けるための取付具4を用いて、パネルピース11を壁面Wに取り付けるようにしているため、部品の共通化によって、より一層コストの削減を図ることができる。さらにパネル取付具と、ピース取付具との共通化を図ることによって、部品の取り違え等を確実に防止でき、パネル壁組立作業を、より一層効率良くスムーズに行うことができる。
【0095】
一方、本実施形態のパネル壁構造において、既述したようにパネル間近接形態によって施工した場合には、上下に隣り合う木質パネル1,1の対向縁部2,3が、取付具5のパネル間設置体7における横方向両側の第1嵌合溝71,71に支持される。この状態において、パネル間設置体7の横方向寸法H1は短く設定されているため、上下の木質パネル1,1が近接した状態に配置されて、対向縁部2,3間に狭い隙間が形成される。この隙間は、木質パネル1の表裏間を連通する通気路4として機能する。さらにこの通気路4は、表面側開口部41、主要部42および裏面側開口部43の3つの部分によって構成されている。
【0096】
具体的に説明すると、図3A,3Cの側面断面視(パネル長さ方向に直交する平面で切断した際の断面視)の状態において、表面側開口部41は、上側木質パネル1の上あご片21の先端面と、下側木質パネル1の上あご対向面33との間の隙間によって構成され、壁面Wに対し垂直に延びるように配置される。主要部42は、上側木質パネル1の裏側傾斜面22と、下側木質パネル1の表側傾斜面32との間の隙間によって構成され、かつ壁面Wに対し傾斜するように配置される。裏面側開口部43は、上側木質パネル1の嵌合凸部25の先端面と、下側木質パネル1の嵌合凸部35の先端面との間の隙間によって構成され、壁面Wに対し垂直に延びるように配置される。
【0097】
本実施形態において、図3A、3Cの側面断面視の状態では、通気路4における表面開口部41および主要部42間のコーナー部と、主要部42および裏面側開口部43間のコーナー部とは共に、直角を超える鈍角のコーナー部に形成されている。従って通気路4は、コーナー部の曲りが小さい滑らかな通気路4に形成されている。
【0098】
ここで、上下に隣合う木質パネル1,1のうち、一方側(上側)の木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2における上あご片21は、既述したように、他方側(下側)の木質パネル1に向けて他側方(下方)に突出するように形成されるとともに、他方側(上側)の木質パネル1の他側縁部(上側縁部)3における下あご片31は、一方側(上側)の木質パネル1に向けて一側方(上方)に突出するように形成されている。そして、通気路4における表面側開口部41は、上あご片21の先端側(下あご片31の基端側)に配置されるとともに、裏面側開口部43は、上あご片21の基端側(下あご片31の先端側)に配置されている。つまり、本実施形態においては、表面側開口部41が、裏面側開口部43に対して、木質パネル1の並列方向(上下方向)に位置をずらせて配置されている。
【0099】
このパネル間近接形態において、上あご片21の先端面と、上あご対向面33との間の隙間(表面側開口部41の幅)寸法は、2mm程度に設定されている。
【0100】
なおこのパネル間近接形態において、取付具5の壁面設置体6は、木質パネル1を支持するパネル間設置体7と壁面Wとの間に介在されることにより、木質パネル1を壁面Wに対し離間した状態に保持するためのスペーサーとして機能する。
【0101】
またこのパネル間近接形態では図9Aに示すように、パネルピース11と、その上下の木質パネル1,1との間においても、上下に隣合う木質パネル1,1間と同様に小さめの隙間(通気路4)が形成されるようになっている。
【0102】
従って本実施形態によれば、パネルピース1と、その上下に隣合う木質パネル1,1との間に隙間4を介してパネルピース11の縁部2,3に指を引っかけるようにして、パネルピース1を取り外したり、取り付けたりすることができ、パネルピース1の着脱操作をより一層簡単に行うことができる。
【0103】
一方、本実施形態においては、パネル間に大きめの隙間が形成されるようにパネル間隔離形態で施工することもできる。この場合、以下に説明するように、上記のパネル間近接形態の場合と比較して、各取付具5を軸心回りに90°回転させた状態にして施工するものである。
【0104】
すなわち図4A,4Bに示すように、壁面Wにおける1段目の木質パネル1の下側縁部2を固定する位置に、複数の取付具5を左右方向(水平方向)に沿って適当な間隔おきに取り付ける。このとき各取付具5は、そのパネル間設置体7の縦方向D2が上下方向(パネル並列方向)に一致するようにして、壁面設置体6の裏面側を壁面Wに設置し、その状態で、ビス55を取付具5の前面側からビス取付孔51,52に挿通して、壁面Wにねじ込むことにより、各取付具5を壁面Wにそれぞれ固定する。この状態では、縦方向両側の第2嵌合溝72,72が上下両側に配置されるとともに、横方向両側の第1嵌合溝71,71が左右両側に配置される。
【0105】
こうして固定された各取付具5におけるパネル間設置体7の上側の第2嵌合溝72内に、1段目の木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2における嵌合凸部25をそれぞれ嵌合し、これにより木質パネル1の下側縁部2を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。
【0106】
次に、1段目の木質パネル1の他側縁部(上側縁部)3に、その上側縁部3に沿って所定の間隔おきに複数の取付具5を設置する。つまり木質パネル1の上側縁部3における嵌合凸部35に、取付具5におけるパネル間設置体7の縦方向一方側(下側)の第2嵌合溝72を外嵌する。このとき、各取付具5は、上記と同様に、パネル間設置体7の縦方向D2が上下方向に沿って配置される。
【0107】
そして各取付具5の壁面設置体6を壁面に設置した状態で、取付具5の表面側からビス55を、ビス取付孔51,52に挿通して壁面Wにねじ込むことにより、取付具5を壁面Wに固定する。こうして1段目の木質パネル1の上側縁部3を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。
【0108】
続いて、1段目の木質パネル1の上側縁部3を支持する複数の取付具5における上側の第2嵌合溝72内に、2段目の木質パネル1の下側縁部2を上記と同様に差し込んで、壁面Wに支持する。
【0109】
さらに2段目の木質パネル1の上側縁部3を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。このときも上記と同様に、取付具5は、パネル間設置体7の縦方向D2を上下方向に一致させるように配置し、縦方向下側の第2嵌合溝72内に、2段目の木質パネル1の上側縁部3を嵌め込むようにする。
【0110】
以下同様にして、複数の取付具5および木質パネル1を順次施工することによって、壁面Wに木質パネル1をを取り付けていくが、このパネル間隔離形態においても、上記パネル間近接形態と同様、作業用開口15の部分が木質パネル1で覆われないように、その作業用開口15の部分を除いた部分に短寸の木質パネル1を上記と同様に施工していく。例えば上記図1と同様に、下から3段目のパネル施工部の中央部に作業用開口15を形成する場合には、下から3段目のパネル施工部においては、中央部に作業用開口15が形成されるように、その作業用開口15を避けた両側に、短寸の木質パネル1,1が上記と同様に施工される。
【0111】
こうして多数の木質パネル1が順次施工されて、壁面Wの前面側に、作業用開口15を有するパネル壁10が組み立てられて、パネル壁構造が形成される。
【0112】
なおこのパネル間隔離形態においても、上記と同様に、作業用開口15の上側縁部に対応する位置には、取付具5が設置されておらず、作業用開口15の下側縁部に対応する位置には、取付具5が設置されている。
【0113】
またこのパネル間隔離形態においても、上記と同様に、同様の構成のピースパネル11が、作業用開口15に着脱自在に取り付けられる、
すなわち図9Bに示すように、パネルピース11を後傾させた状態でその上側部を作業用開口15に挿通して、ピース着脱金具8のバネ板部87の弾性力に抗して、パネルピース11の上側部を壁面Wに押し込む。これにより、ピース着脱金具8のバネ板部87を壁面Wに押し付けて前方へ撓ませて、パネルピース11の上側縁部3を壁面Wに近接させる。その状態(後傾状態)でパネルピース11の下側縁部2における嵌合凸部25を、取付具5の第1嵌合溝71内に嵌合させる。その後図9Aに示すように、パネルピース11への壁面W側への押込操作を解除する。こうすれば、バネ板部87の弾性反発力(付勢力)によって、パネルピース11の上側部が前方に押し戻されて、ストッパー85が上側の木質パネル1の下側縁部2の裏面側に当接係止する。これにより、パネルピース11を作業用開口15に取り付けることができる。
【0114】
またパネルピース11を取り外すには図9Bに示すように、パネルピース11の上側部を壁面W側に押し込んで、パネルピース11を後方に傾けてから、パネルピース11を上方へ少しスライド移動させて、パネルピース11の下側縁部2における嵌合凸部25を、取付具5の第1嵌合溝71から抜き出す。その後、同図の想像線に示すようにパネルピース11をその下側縁部2側から前方に引き出せば良い。
【0115】
なお言うまでもなく、本発明において、施工手順は、上記のものに限定されるものではなく、どのような手順で施工するようにしても良い。
【0116】
本実施形態においては、パネル間隔離形態で施工した場合でも、上記と同様に、パネルピース11を作業用開口15に簡単かつスムーズに着脱することができる。さらにこのパネル間隔離形態においても、上記と同様に、作業用開口15を開放できるため、その開口4を利用することにより、パネル壁10の裏面側へのコード類の配設作業や、コード類の壁面設置機器への抜き差し操作、壁面操作盤の操作等を簡単かつ確実に行うことができ、パネル壁裏面側のスペースを有効に利用することができる。
【0117】
またパネル間隔離形態によって施工されたパネル壁構造においては、上下に隣合う木質パネル1,1の対向縁部2,3が、取付具5のパネル間設置体7における縦方向両側の第2嵌合溝72,72に支持される。この状態において、パネル間設置体7の縦方向寸法H2は長く設定されているため、上下の木質パネル1,1が大きく離間した状態に配置されて、対向縁部2,3間に、パネル表裏間を連通する通気路4として機能する大きめの隙間が形成される。
【0118】
すなわち図4Aの断面視状態において、対向縁部2,3間に、上あご片21の先端面および上あご対向面33間の隙間に形成され、かつ壁面Wに対し垂直に延びる表面側開口部41と、裏側傾斜面および表側傾斜面32間の隙間に形成され、かつ壁面Wに対し傾斜する主要部42と、嵌合凸部25,36間の隙間に形成され、かつ壁面Wに対し垂直に延びる裏面側開口部43とを備えた通気路4が形成されている。
【0119】
さらに通気路4は、上記と同様、表面側開口部41、主要部42および裏面側開口部43の各間のコーナー部が、直角を超える鈍角に形成されることにより、コーナー部の曲りが小さい滑らかな通路に形成されている。
【0120】
このパネル間隔離形態において、上あご片21の先端面と、上あご対向面33との間の隙間(表面側開口部41の幅)寸法は、10mm程度に設定されている。
【0121】
なおこのパネル間隔離形態においても、上記と同様に、表面側開口部41が、裏面側開口部43に対して、木質パネル1の並列方向(上下方向)に位置をずらせて配置されている。
【0122】
さらにパネル間隔離形態においても、上記と同様に、取付具5の壁面設置体6は、木質パネル1を支持するパネル間設置体7と壁面Wとの間に介在されることにより、木質パネル1を壁面Wに対し離間した状態に保持するためのスペーサーとして機能する。
【0123】
またこのパネル間隔離形態においても、パネルピース11と、その上下の木質パネル1,1との間においても、上下に隣合う木質パネル1,1間と同様に大きめの隙間(通気路4)が形成されるようになっている。従って、このパネル間隔離形態においても、その隙間4を介して、パネルピース11の縁部2,3に指を引っかけるようにして、パネルピース1を取り外したり、取り付けたりすることができ、パネルピース1の着脱操作を一層簡単に行うことができる。特にこのパネル間隔離形態では、パネルピース11と木質パネル1との間の隙間が大きいため、パネルピース1の着脱操作をより一層簡単に行うことができる。
【0124】
一方、本実施形態のパネル壁構造によれば、室内の調湿性能を向上させることができる。すなわち木質材は、その表裏両面、左右両側端面および上下両側端面を含む全周面(周囲6面)から、水分(湿気成分)を吸収したり、放出することにより、周辺の湿度を適正に調整するものであるため、木質パネル1の全周面のうち、室内の空気(雰囲気)との接触する面積が大きくなるほど、吸放湿量を多くでき、調湿性能を向上させることができる。
【0125】
そこで本実施形態においては、木質パネル1を壁面Wから離間した状態に配置するものであるため、木質パネル1の表裏両面を共に室内空気に接触させることができ、木質パネル1の全周面における室内空気(屋内空気)との接触面積を大きく確保することができる。このため各木質パネル1による室内空気に対する吸放湿を十分に行うことができ、室内の調湿性能を十分に確保できて、快適な居住空間を確保することができる。
【0126】
しかも本実施形態においては、隣り合う木質パネル1,1間に、パネル裏面に通じる通気路(隙間)4を形成しているため、その通気路4を通って、室内の空気が、パネル裏面側と表面側との間で循環し易くなり、パネル裏面や周辺部での吸放湿をより確実に行うことができ、より一層調湿性能を向上させることができる。
【0127】
特にパネル間隔離形態においては、通気路4の幅を広くできるため、パネル表裏間での空気の往来がスムーズに行われ、パネル裏面等での吸放湿をより一層確実に行うことができ、より一層確実に調湿性能を向上させることができる。
【0128】
その上さらに、本実施形態においては、通気路4の主要部42を、表面側開口部41側から裏面側開口部43に向かうに従って、裏面側に近づくように傾斜させているため、パネル表面側から表面側開口部41に流入する空気は、主要部42を抵抗無くスムーズに流通してパネル裏面側に導かれるとともに、パネル裏面側から裏面側開口部43に流入する空気は、通気路4の主要部42を抵抗無くスムーズに流通してパネル表面側へと導かれる。従って、パネル表裏間での空気の往来(循環)をより一層スムーズに行うことができ、調湿津性能を一層向上させることができる。
【0129】
なお本実施形態では、隣り合う木質パネル1,1において、上側の木質パネル1の下側縁部2における上あご片21が、下側の木質パネル1の下あご片31における表面側に配置されるため、パネル表面側からパネル間の隙間(通気路4)を通して壁面Wが視認されるような不具合を確実に防止することができる。
【0130】
また本実施形態においては、パネル間に小さめの隙間が形成されるパネル間近接形態と、大きめの隙間が形成されるパネル間隔離形態とのいずれの形態でも施工できるようにしているため、居住者等のユーザーは、施工場所や施工目的に応じて、上記2つの形態の中から、好ましい形態を選択することができる。例えばリビングルーム等の場所では、パネル間近接形態で施工することによって、パネル間の隙間が小さくて意匠性の高い壁面構造を形成できる一方、寝室等の場所では、パネル間隔離形態で施工することによって、調湿性能が非常に優れた壁面構造を形成できて、快適な居住空間を得ることができる。このようにユーザーのニーズ等に合わせて、調湿性能を重視したり、意匠性を重視した壁面構造を形成することが可能であり、選択肢が増えて、汎用性を向上させることができ、高い商品価値を得ることができる。
【0131】
さらに本実施形態では、パネル間近接形態およびパネル間隔離形態のいずれにおいても1種類の取付具5によって施工できるようにしているため、部品点数の削減によって、コストを削減できる上、部品(取付具5)の種類を間違えたりするようなミスが生じるのも確実に防止でき、パネル施工作業を簡単に行うことができる。
【0132】
また本実施形態においては、取付具5における第1嵌合溝71の溝底に切欠部711を形成して、木質パネル1の縁部と実際に接触するパネル接触面712の面積を小さく形成しているため、施工後に、吸湿等によって木質パネル1が延びたとしても、木質パネル1が屋内側に浮き上がるのを防止することができる。すなわち、木質パネル1を第1嵌合溝71に嵌め込んで取付具5に支持した場合、木質パネル1における第1嵌合溝71の底面との接触面積が小さいため、木質パネル1が延びた際の応力が、木質パネル1の取付具5との接触部に局所的に作用し、その接触部が圧壊変形する。これにより、木質パネル1が表面側に不用意に膨れ上がるような浮き上がり変形を防止することができ、良好な美観を維持することができる。
【0133】
さらに第2嵌合溝72は、溝長さが短いため、切欠部等を形成しなくとも、溝底の面積は小さいものである。このため、木質パネル1を第2嵌合溝72に嵌め込んで取付具5に支持した場合においても、木質パネル1における取付具5との接触面積は小さくなっている。従って、木質パネル1が吸湿によって延びたとしても、上記と同様に、接触部に応力が集中してその接触部が圧壊変形することにより、木質パネル1が前方(表面側)に浮き上がるという不具合を確実に防止することができる。
【0134】
なお、本実施形態において、第1嵌合溝71の底面における木質パネル1との接触面積と、第2嵌合溝72の底面における木質パネル1との接触面積とが等しくなるように形成している。このため、第1嵌合溝71に木質パネル1を嵌合した状態(パネル間近接形態)と、第2嵌合溝72に木質パネル1を嵌合した状態(パネル間隔離形態)とのいずれの状態であっても、木質パネル1の浮き上がりを同様に抑制することができる。
【0135】
また本実施形態においては、取付具5における嵌合溝71,72の開口端部の幅を、奥部(底部)の幅よりも大きく形成しているため、各嵌合溝71,72に木質パネル1の縁部を簡単かつスムーズに嵌め込むことができ、パネル施工作業を効率良く行うことができる。
【0136】
しかも本実施形態においては、木質パネル1の縁部における嵌合凸部25,35の先端面と裏面との間に、面取り部26,36を形成しているため、木質パネル1の縁部(嵌合凸部25,35)を、取付具5の嵌合溝71,72内により一層簡単かつスムーズに嵌め込むことができ、パネル施工作業をより一層効率良く行うことができる。
【0137】
また本実施形態においては、木質パネル1の構成材料として、杉や檜を用いることによって、より一層調湿性能を向上させることができる。すなわち杉や檜は、針葉樹材で比重が小さく、木材の中でも、湿気成分の吸放出機能が大きいため、上記の調湿性能をより向上させることができる。
【0138】
さらに本実施形態において、例えば、木質パネル1の表面や裏面に溝や凸筋等の凹凸形状を形成することによって、木質パネル1の外表面積をさらに増大させることができ、調湿性能を一層向上させることができる。
【0139】
なお、上記実施形態においては、パネル壁10に矩形状の作業用開口15を1つ形成する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、作業用開口15(パネルピース11)の数や形状、形成位置は上記実施形態のものに限られるものではない。例えば、一つのパネル壁10に複数の作業用開口15を形成し、各作業用開口15にパネルピース11をぞれぞれ着脱自在に取り付けるようにしても良い。さらに作業用開口の大きさや形状も、上記実施形態のものに限定されるものではなく、作業用開口は、三角形状、五角形以上の多角形形状、円形、楕円形、非円形、異形形状等、どのような形状に形成しても良い。
【0140】
また大きさや形状の異なる2種以上の作業用開口を、一つのパネル壁に共存させるようにしても良い。
【0141】
さらに上記実施形態においては、パネルピース11と木質パネル1とは、長さが異なるのみで、両者の構成を実質的に同じに形成しているが、本発明においては、パネルピースの構成と木質パネル1の構成とを異ならせるようにしても良い。例えばパネルピース11の上側縁部(他側縁部)3における切込溝34、嵌合凸部35、面取り部36を形成しないようにしても良い。もっとも、本実施形態のように、パネルピースを木質パネルの構成と実質的に同様すれば、部品の共用化によって、コストの削減を図ることができる上さらに、パネル壁においてパネルピースがその周囲の木質パネルに対して一体感が得られて、美観をより一層向上させることができる。
【0142】
また上記実施形態においては、付勢手段としてのバネ板部とストッパーとを一体に形成するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、付勢手段とストッパ−とを別体に形成して、それぞれ別々パネルピースに取り付けるようにしても良い。
【0143】
また上記実施形態においては、通気路4の主要部42が断面視で略直線状に形成されているが、それだけに限られず、本発明においては、通気路の主要部が、曲率半径が大きい曲線状に形成されるようにしても良い。例えば、上あご片の裏側傾斜面や下あご片の表側傾斜面を湾曲面に形成して、通気路の主要部を断面円弧状や緩やかな波状に形成するようにしても良い。
【0144】
さらに本発明においては、通気路の主要部における表面側端部が、裏面側端部に対し、表面側(室内側)に配置していれば良く、通気路の主要部の一部に、パネル並列方向(壁面)に対し傾斜していない部分が含まれていても良い。換言すれば、上あご片の裏側傾斜面の先端が、基端よりも表面側(屋内側)に配置されるとともに、下あご片の表側傾斜面の先端が、基端よりも裏面側(屋内壁面側)に配置されていれば良く、表面側傾斜面および裏面側傾斜面の一部に、傾斜していない部分が含まれていても良い。
【0145】
さらに本発明においては、裏面側傾斜面は、上あご片の裏側の面における少なくとも一部に設けられていれば良く、同様に、表面側傾斜面は、下あご片の表側の面における少なくと一部に設けられていれば良い。
【0146】
また上記実施形態においては、木質パネル1として帯板形状のものを用いているが、それだけに限られず、本発明において、木質パネルの形状は特に限定されるものではなく、正方形や長方形等の四角形状のもの、四角形以外の多角形状のもの、異形状のものを用いても良い。さらに異なる大きさの木質パネルを複合して用いるようにしても良い。
【0147】
また上記実施形態においては、ひとつの壁面を仕上げるに際して、パネル間近接形態と、パネル間隔離形態とのいずれか一方のみで施工するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、ひとつの壁面に対し、パネル間近接形態と、パネル間隔離形態とを併用して施工するようにしても良い。例えば木質パネルを1枚毎にパネル間近接形態とパネル間隔離形態とで交互に施工することにより、2枚毎にパネル間に隙間が形成されるように施工しても良い。さらに多数のパネル間のうち、ランダムな位置のパネル間に大きめの隙間を形成するようにしても良い。
【0148】
また上記実施形態において、パネル間近接形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部を離間させるようにしているが、それだけに限られず、本発明において、パネル間近接形態で、隣り合う木質パネルの対向縁部を接触させるようにしても良い。
【0149】
さらに上記実施形態においては、木質パネルを、その上あご片が形成される側の縁部(一側縁部)を上側して施工するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、上あご片が形成される側の縁部(一側縁部)を下側して施工するようにしても良い。
【0150】
また上記実施形態においては、帯板形状の木質パネル1を水平方向(左右方向)に沿わせた状態で、上下方向に並列に並べて複数配置するように施工する場合を例に挙げて説明したが、本発明において、木質パネルの配列方向は限定されるものではない。例えば本発明において、帯板形状の木質パネル垂直方向(上下方向)に沿わせて配置した状態で、横方向に並列に並べて複数配置するように施工しても良い。この場合、木質パネルの並列方向(並び方向)は水平方向(左右方向)となる。
【0151】
また上記実施形態においては、パネル間設置体として、正面視四角形状(長方形)のものを用いているが、それだけに限られず、本発明においては、他の形状、例えば5角形以上の多角形のものを用いても良い。
【0152】
また本発明において、一径方向とは、径方向のいずれか一つの方向であり、他の径方向とは一径方向に対し直交し、かつ径方向のいずれか一つの方向である。
【0153】
また上記実施形態においては、木質パネルとして、集成材を用いるようにしているが、本発明において、木質パネルの素材は特に限定されるものではなく、無垢材等を用いても良く、要は木質系の素材であればどのような素材を用いても良い。
【0154】
さらに本発明において、木質パネルは、部分的に、合成樹脂や合成ゴム等の非木質系の部材が含まれていても良い。
【0155】
また取付具の素材はPPだけに限られず、取付具を、他の合成樹脂や、合成樹脂以外の素材、例えば金属等によって構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0156】
この発明のパネル壁構造は、屋内の壁面に適用可能である。
【符号の説明】
【0157】
1:木質パネル
10:パネル壁
11:パネルピース
15:作業用開口
4:通気路(隙間)
5:取付具(パネル取付具、ピース取付具)
8:ピース着脱金具
81:固定板部
85:ストッパー
87:バネ板部(付勢手段)
W:壁面(屋内壁面)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準壁面から離間した状態で基準壁面に沿って複数の木質パネルが並べて施工されるとともに、その複数の木質パネルによってパネル壁が形成されるようにしたパネル壁構造であって、
前記パネル壁に、そのパネル壁を貫通する作業用開口が形成されるとともに、
前記作業用開口に、その開口形状に対応する形状のパネルピースが着脱自在に取り付けられたことを特徴とするパネル壁構造。
【請求項2】
前記作業用開口は、木質パネルの一部が切除されるようにして形成され、
前記パネルピースが木質パネルに対して同じ構成を有している請求項1に記載のパネル壁構造。
【請求項3】
基準壁面における前記作業用開口の下側縁部に対応する位置に、前記パネルピースの下側縁部を着脱自在なピース取付具が取り付けられ、
前記パネルピースの後面側に、弾性圧縮変形可能な付勢手段と、上方に突出するストッパーとが設けられ、
前記パネルピースの下端が前記ピース取付具に着脱自在に取り付けられるとともに、基準壁面に押圧された前記付勢手段の弾性反発力によって前記パネルピースが前方へ押し付けられて前記ストッパーが前記パネル壁の後面側における前記作業用開口縁部の上側に当接係止することにより、前記パネルピースが前記作業用開口内に配置された状態に取り付けられるようになっている請求項1または2に記載のパネル壁構造。
【請求項4】
前記パネルピースの裏面側にピース着脱金具が取り付けられ、そのピース着脱金具に、前記付勢手段と前記ストッパーとが一体に形成されている請求項3に記載のパネル壁構造。
【請求項5】
前記ピース着脱金具は、前記パネルピースの裏面上部に取り付けられる取付板部と、その取付板部に上方に突出するように一体形成されたストッパーと、前記ストッパーに後面側に折り返されるように一体形成され、かつ前記付勢手段として構成されるバネ板部とを備え、前記バネ板部が前記取付板部側に近接する方向に押し込まれた際に、離間する方向に弾性反発力が作用するようになっている請求項4に記載のパネル壁構造。
【請求項6】
木質パネルは、帯板形状を有し、
木質パネルは、その長さ方向を水平方向に配置し、かつ上下方向に複数並んで配置された状態で、複数のパネル取付具を介して基準壁面に支持され、
前記複数のパネル取付具のうち、前記作業用開口の下側に対応する位置に配置されるパネル取付具が、前記ピース取付具として構成される請求項3〜5のいずれか1項に記載のパネル壁構造。
【請求項7】
隣り合う木質パネル間に隙間が形成され、その隙間によって、木質パネルの前面側および後面側が連通されている請求項1〜6のいずれか1項に記載のパネル壁構造。
【請求項1】
基準壁面から離間した状態で基準壁面に沿って複数の木質パネルが並べて施工されるとともに、その複数の木質パネルによってパネル壁が形成されるようにしたパネル壁構造であって、
前記パネル壁に、そのパネル壁を貫通する作業用開口が形成されるとともに、
前記作業用開口に、その開口形状に対応する形状のパネルピースが着脱自在に取り付けられたことを特徴とするパネル壁構造。
【請求項2】
前記作業用開口は、木質パネルの一部が切除されるようにして形成され、
前記パネルピースが木質パネルに対して同じ構成を有している請求項1に記載のパネル壁構造。
【請求項3】
基準壁面における前記作業用開口の下側縁部に対応する位置に、前記パネルピースの下側縁部を着脱自在なピース取付具が取り付けられ、
前記パネルピースの後面側に、弾性圧縮変形可能な付勢手段と、上方に突出するストッパーとが設けられ、
前記パネルピースの下端が前記ピース取付具に着脱自在に取り付けられるとともに、基準壁面に押圧された前記付勢手段の弾性反発力によって前記パネルピースが前方へ押し付けられて前記ストッパーが前記パネル壁の後面側における前記作業用開口縁部の上側に当接係止することにより、前記パネルピースが前記作業用開口内に配置された状態に取り付けられるようになっている請求項1または2に記載のパネル壁構造。
【請求項4】
前記パネルピースの裏面側にピース着脱金具が取り付けられ、そのピース着脱金具に、前記付勢手段と前記ストッパーとが一体に形成されている請求項3に記載のパネル壁構造。
【請求項5】
前記ピース着脱金具は、前記パネルピースの裏面上部に取り付けられる取付板部と、その取付板部に上方に突出するように一体形成されたストッパーと、前記ストッパーに後面側に折り返されるように一体形成され、かつ前記付勢手段として構成されるバネ板部とを備え、前記バネ板部が前記取付板部側に近接する方向に押し込まれた際に、離間する方向に弾性反発力が作用するようになっている請求項4に記載のパネル壁構造。
【請求項6】
木質パネルは、帯板形状を有し、
木質パネルは、その長さ方向を水平方向に配置し、かつ上下方向に複数並んで配置された状態で、複数のパネル取付具を介して基準壁面に支持され、
前記複数のパネル取付具のうち、前記作業用開口の下側に対応する位置に配置されるパネル取付具が、前記ピース取付具として構成される請求項3〜5のいずれか1項に記載のパネル壁構造。
【請求項7】
隣り合う木質パネル間に隙間が形成され、その隙間によって、木質パネルの前面側および後面側が連通されている請求項1〜6のいずれか1項に記載のパネル壁構造。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−162931(P2012−162931A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24765(P2011−24765)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000213769)朝日ウッドテック株式会社 (47)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000213769)朝日ウッドテック株式会社 (47)
【Fターム(参考)】
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