説明

パネル材用連結金具

【課題】パネル材側に何らの事前加工を施すことなく、現場状況にも柔軟に対応させながら作業性よく枠体を組み立てることができるパネル材用連結金具の提供。
【解決手段】揺動自在に相手材に当接する当接面27を有して各別に配置される複数の揺動体12と、該揺動体12側を着脱自在に個別螺着する螺合固定部36を各別に有し、かつ、相互間に略直角の内角を形成して組み合わされる2枚ないし3枚のパネル材P,P,Pの各内側面A,B,Cへの当接面26の正対配置を自在にして揺動体12相互を一体的に連結する連結支腕体32とで構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2〜3枚のパネル材相互を連結用孔などの事前加工部を設けることなく一体的に連結して組み立てることができるパネル材用連結金具に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
2〜3枚のパネル材相互を連結して枠体を形成する手法において、組立時間の短縮や組立作業の簡易化、組立てに要する場所の省スペース化を目指すものとしては、例えば下記特許文献1に示す「板体の組立方法」などがある。
【特許文献1】特開昭63−195407号公報
【0003】
上記特許文献1に開示されている組立手法は、相互に突き合わせて接合されるパネル材の各端部側に力点として回転操作させる支点部と、互いに締着される作用部とを設け、一方に対し他方を鋭角の状態から直角の状態へと回転操作して締結することにより、枠体として組み立てられるようにしたものである。
【0004】
一方、天板をガラス板からなるパネル材とすることで、適宜の枠体を組み立てる場合においては、天板側に取付け用孔などを設けるとともに、パネル材の内側に連結金具を配置し、取付け用孔を介して連結金具を連結させることで2〜3枚のパネル材相互を一体的に組み立てるようにしたものもある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このうち、特許文献1に開示されている手法は、作業性に優れ、かつ、組立てに要する場所の省スペース化を実現することもできる点で優れてはいるものの、事前にパネル材側に必要な加工を施したり、金具を取り付けておかなければならないなどの不都合があった。
【0006】
また、内側に配置した連結金具を用いて連結する従来手法による場合には、パネル材側に取付け用孔を設けておかなければならないほか、連結金具側をパネル材側に正対させるのが難しかしいなど、必ずしも現場状況に柔軟に対応しきれない不都合があった。
【0007】
本発明は、従来技術にみられた上記課題に鑑み、パネル材側に何らの事前加工を施すことなく、現場状況にも柔軟に対応させながら作業性よく枠体を組み立てることができるパネル材用連結金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成すべくなされたものであり、揺動自在に相手材に当接する当接面を有して各別に配置される複数の揺動体と、該揺動体側を着脱自在に個別螺着する螺合固定部を各別に有し、かつ、相互間に略直角の内角を形成して組み合わされる2枚ないし3枚のパネル材の各内側面への前記当接面の正対配置を自在にして前記揺動体相互を一体的に連結する連結支腕体とで構成したことを最も主要な特徴とする。
【0009】
この場合、前記連結支腕体は、所要長さの直進支杆部と、該直進支杆部の両端側から各別に延設された短寸折曲部とを備え、該短寸折曲部の開放端側に前記螺合固定部を具備させて形成するのが好ましい。
【0010】
また、前記揺動体は、前記螺合固定部への螺着が自在な支持体部と、該支持体部を介して前記螺合固定部との間で遊動自在に支持される可動体部と、該可動体部への螺着が自在で、かつ、前記当接面をその表出面に備える当接体部とで形成するのが好ましい。この場合、前記可動体部は、止着材を介して前記支持体部側への位置固定を自在とするのが望ましい。さらに、前記当接面上には、適宜の接着剤を塗布してなる接合層を形成しておくのが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、相互間に略直角の内角を形成して組み合わされる2枚ないし3枚のパネル材の各内側面に対し、連結支腕体に取り付けた揺動体を介してその当接面を正対配置することができるので、デザイン性に優れた枠体を現場状況に柔軟に対応させながら容易に組み立てることができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、直進支杆部の両端側に短寸折曲部を延設することで連結支腕体が形成されているので、煩雑感のないシンプルなデザインのもとで各揺動体を取り付けることができ、その設置時におけるデザイン的な印象をより好ましいものとすることができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、当接体部を螺着させた可動体部を遊動自在に支持させた支持体部を螺合固定部に螺着することで、揺動体が連結支腕体側に取り付けられているので、その当接面を常にパネル材側に正対配置することができる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、止着材を介して支持体部側に可動体部を位置固定することができるので、螺合固定部に対し可動体部を把持しながら螺合固定部に対し支持体部を螺着することができる。また、可動体部は、止着材を緩めることで容易に遊動性を付与することができる。
【0015】
請求項5に係る発明によれば、当接面に接合層が形成されているので、相手材であるパネル材側に接合層を接合させることで、直ちに枠体を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の一例についての斜視図を示し、図2は、本発明における揺動体と連結支腕体が備える螺合固定部との配置関係を分解して示す要部斜視部である。また、図3は、本発明の他例についての斜視図を示す。
【0017】
図1に示す例によれば、パネル材用連結金具11の全体は、揺動自在に相手材に当接する当接面26を有して各別に配置される3個の揺動体12と、該揺動体12側を着脱自在に個別螺着する螺合固定部36を各別に有し、かつ、相互間に略直角の内角を形成して組み合わされる3枚のパネル材P,P,Pの各内側面 への個々の当接面26の正対配置を自在にして各揺動体12を一体的に連結する連結支腕体32とで構成されている。
【0018】
この場合、揺動体12は、図2に示すように螺合固定部36への螺着が自在に形成された支持体部13と、該支持体部13を介して螺合固定部36との間で遊動自在に支持される可動体部16と、該可動体部16への螺着が自在で、かつ、当接面26をその表出面に備えて形成された当接体部23とで構成されている。
【0019】
このうち、支持体部13は、螺合固定部36の表面側に開口を有する雌ねじ穴37に螺着される雄ねじ部14と、該雄ねじ部14の外径よりも大径な外径が付与されてその頂端部側に一体に形成された掛止部15とを備えている。
【0020】
可動体部16は、基端側に支持体部13の掛止部15よりも小径な縮径開口部17を、頂端側に掛止部15よりも大径な開口部18をそれぞれ有し、かつ、その内周面に雌ねじ部19を刻入してなる略円筒状を呈して形成されている。また、可動体部16の縮径開口部17近傍に位置する外周側16aには、六角ねじなどの止着材21をその先端部を突出させた状態で螺着させることができるい螺孔20が3カ所に形成されている。
【0021】
当接体部23は、可動体部16の開口部18側から挿入して雌ねじ部19に螺着される雄ねじ部24と、該雄ねじ部24の外径よりも大径な外径が付与されてその頂端部側に一体に形成された当接部25とを備えている。また、該当接部25は、その表面側に平坦な当接面26が形成され、さらに、適宜の接着剤を塗布してなる接合層27が形成されている。
【0022】
連結支腕体32は、相互間に略直角の内角を形成して組み合わされる3枚のパネル材P,P,Pの各内側面A,B,Cに対し、3個で構成されている揺動体12のそれぞれの当接体部23が備える当接面26を正対させて配置させることができる形状が付与されて形成されている。
【0023】
すなわち、連結支腕体32は、それぞれが所要長さの直進支杆部34と、該直進支杆部34の両端側から各別に延設された短寸折曲部35とからなる連結杆33を3本の組み合わせとすることで構成されている。
【0024】
これを図1に基づいて説明すれば、1本の連結杆33は、天板であるパネル材Pの内側面Aと一方の側板であるパネル材Pの内側面Bとの面方向に対し、それぞれの短寸折曲部35をその長さ方向が直交する位置関係のもとで配置できる形状が付与されて形成されている。
【0025】
また、他の1本の連結杆33は、天板であるパネル材Pの内側面Aと他方の側板であるパネル材Pの内側面Cとの面方向に対し、それぞれの短寸折曲部35をその長さ方向が直交する位置関係のもとで配置できる形状が付与されて形成されている。
【0026】
さらに、残りの1本の連結杆33は、一方の側板であるパネル材Pの内側面Bと他方の側板であるパネル材Pの内側面Cとの面方向に対し、それぞれの短寸折曲部35をその長さ方向が直交する位置関係のもとで配置できる形状が付与されて形成されている。
【0027】
このようにして形成されている各連結杆33は、天板であるパネル材Pの内側面A側に位置することになる短寸折曲部35,35相互を隣接配置した上で、その開放端35a側に螺合固定部36を図2に示すように固着する。
【0028】
また、一方の側板であるパネル材Pの内側面B側に位置することになる短寸折曲部35,35相互を隣接配置した上で、その開放端35a側に螺合固定部36を図2に示すように固着する。
【0029】
さらに、他方の側板であるパネル材Pの内側面C側に位置することになる短寸折曲部35,35相互を隣接配置した上で、その開放端35a側に螺合固定部36を図2に示すように固着する。
【0030】
3本の連結杆33は、それぞれの短寸折曲部35側に螺合固定部36を各別に固着することで、図1に示すように一体的に組み合わされた連結支腕体32として機能させることができることになる。
【0031】
一方、図3に示す本発明の他例における連結支腕体32は、相互間に略直角の内角を形成して組み合わされる2枚のパネル材P,Pの各内側面A,B,に対し、2個で構成されている揺動体12のそれぞれの当接体部23が備える当接面26を正対させて配置させることができる形状が付与されて形成されている。
【0032】
すなわち、連結支腕体32は、それぞれが所要長さの直進支杆部34と、該直進支杆部34の両端側から各別に延設された短寸折曲部35とからなる連結杆33を2本の組み合わせとすることで構成されている。
【0033】
各連結杆33は、天板であるパネル材Pの内側面Aと側板であるパネル材Pの内側面Bとの面方向に対し、それぞれの短寸折曲部35をその長さ方向が直交する位置関係のもとで配置できる同一形状が付与されて形成されている。
【0034】
そして、2本の連結杆33は、相互に沿うように隣接配置することで天板であるパネル材Pの内側面A側に位置することになる短寸折曲部35の開放端35a側には、螺合固定部36を図2に示すように固着する。
【0035】
また、側板であるパネル材Pの内側面B側に位置することになる短寸折曲部35の開放端35a側には、螺合固定部36を図2に示すように固着する。
【0036】
2本の連結杆33は、このようにして短寸折曲部35側に螺合固定部36を各別に固着することで、図3に示すように一体的に組み合わされた連結支腕体32として機能させることができることになる。
【0037】
次に、本発明の作用・効果を図1に示す例について説明すれば、例えばガラス板材からなる天板として用いられるパネル材Pと、例えば木質板材からなる側板として用いられるパネル材Pとパネル材Pとは、図1に示すように相互間に略直角の内角を形成して突き合わせることで、直角のコーナー部52を有する適宜の枠体51として組み合わせる必要があるものとする。
【0038】
この場合、パネル材用連結金具11は、図1に示すように連結支腕体32を介することで、3枚のパネル材P,P,Pの各内側面A,B,Cに対し、3個で構成されている揺動体12のそれぞれの当接体部23が備える当接面26を正対させて配置させることができる。
【0039】
しかも、各揺動体12は、図2に示すように螺合固定部36への螺着が自在に形成された支持体部13と、該支持体部13を介して螺合固定部36との間で遊動自在に支持される可動体部16と、該可動体部16への螺着が自在で、かつ、当接面26をその表出面に備えて形成された当接体部23とで構成されている。
【0040】
このため、各揺動体12は、次の手順を踏んで連結支腕体32の螺合固定部36側に連結させることができる。
【0041】
すなわち、可動体部16には、その縮径開口部17に支持体部13の掛止部15を掛止させた状態のもとで、各螺孔20から例えば六角ねじなどの止着材21を各別に送り込み、これら止着材21を緊締することで、支持体部13側を仮り固定する。
【0042】
このようにして可動体部16側に仮り固定した支持体部13は、可動体部16側を手指で把持しながら回すことで、雄ねじ部14を連結支腕体32の螺合固定部36の雌ねじ穴37へと螺着させて可動体部16ともども取り付けることができる。
【0043】
しかる後、可動体部16の開口部18側からは、当接体部23の雄ねじ部24を送り込んでその雌ねじ部19に螺着させることで当接体部23を取り付け、その全体で揺動体12が組み立てられることになる。
【0044】
このようにして連結支腕体32の各螺合固定部36に揺動体12を各別に取り付けた後は、図1に示すように組み立てられた枠体51のコーナー部52へと配置し、各揺動体12の当接面26を対応する各パネル材P,P,Pの各内側面A,B,Cに当接配置する。
【0045】
この際、各内側面A,B,Cに当接面26側を正対させることができない場合には、止着材21を緩めて可動体部16に対する支持体部13側の仮り固定状態を解除する。これにより、可動体部16は、遊動状態におかれる結果、該可動体部16に螺着されている当接体部23にも揺動性を付与することができる。
【0046】
このように当接体部23に揺動性を付与することで、その当接面26は、各パネル材P,P,Pの各内側面A,B,Cに正対させた位置関係のもとで各パネル材P,P,P側に当接させることができることになる。
【0047】
したがって、各パネル材P,P,Pは、パネル用連結金具11を介して一体的に組み立てられ、枠体51として用いることができることになる。
【0048】
しかも、各パネル材P,P,Pの各内側面A,B,Cに対する当接面26側の位置調整は、可動体部16側に対する当接体部23の螺合状態を調整させて当接体部23を進退させることで容易に行うことができる。
【0049】
また、各パネル材P,P,Pの各内側面A,B,Cに対する当接面26側の接着力をより強化したい場合には、より大径な当接部25を有する当接体部23に交換することで、即応させることができる。
【0050】
なお、図3に示す例による場合も、同様の手順を踏んでパネル材Pとパネル材Pとを一体的に組み立てて2枚構成の枠体51として用いることができることになる。
【0051】
以上は、本発明を図示例に基づいて説明したものであり、その具体的な内容は、本発明の要旨を逸脱しない限り、種々の変形を加えることができる。例えば、連結支杆33は、複数本で構成することなく、一体に打ち抜かれた1個のものであってもよい。また、当接体部の当接面26には、事前ではなく、組み立て作業時に接合面27をその都度設けるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
例えば、美術館等におけるガラス板材からなる展示ケースや展示棚として枠体を用いようとする場合には、ガラス板材側に連結孔などの加工部を設けることなく、デザイン性や透視性に優れた見やすい状態のもとで容易に組み立てて設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一例についての斜視図。
【図2】本発明における揺動体と連結支腕体が備える螺合固定部との配置関係を分解して示す要部斜視部。
【図3】本発明の一例についての斜視図。
【符号の説明】
【0054】
11 パネル用連結金具
12 揺動体
13 支持体部
14 雄ねじ部
15 掛止部
16 可動体部
16a 外周面
17 縮径開口部
18 開口部
19 雌ねじ部
20 螺孔
21 止着材
23 当接体部
24 雄ねじ部
25 当接部
26 当接面
27 接合層
32 連結支腕体
33 連結杆
34 直進支杆部
35 短寸折曲部
35a 開放端
36 螺合固定部
37 雌ねじ穴
51 枠体
52 コーナー部
,P,P パネル材
A,B,C 内側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動自在に相手材に当接する当接面を有して各別に配置される複数の揺動体と、該揺動体側を着脱自在に個別螺着する螺合固定部を各別に有し、かつ、相互間に略直角の内角を形成して組み合わされる2枚ないし3枚のパネル材の各内側面への前記当接面の正対配置を自在にして前記揺動体相互を一体的に連結する連結支腕体とで構成したことを特徴とするパネル材用連結金具。
【請求項2】
前記連結支腕体は、所要長さの直進支杆部と、該直進支杆部の両端側から各別に延設された短寸折曲部とを備え、該短寸折曲部の開放端側に前記螺合固定部を具備させた請求項1に記載のパネル材用連結金具。
【請求項3】
前記揺動体は、前記螺合固定部への螺着が自在な支持体部と、該支持体部を介して前記螺合固定部との間で遊動自在に支持される可動体部と、該可動体部への螺着が自在で、かつ、前記当接面をその表出面に備える当接体部とを少なくとも具備させた請求項1または2に記載のパネル材用連結金具。
【請求項4】
前記可動体部は、止着材を介して前記支持体部側への位置固定を自在とした請求項3に記載のパネル材用連結金具。
【請求項5】
前記当接面上には、適宜の接着剤を塗布してなる接合層を形成した請求項1ないし4のいずれかに記載のパネル材用連結金具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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