説明

パネル部材

【課題】施工時における作業性を向上させ得るパネル部材を提供する。
【解決手段】パネル部材1は、パネル体10と、このパネル体を保持するとともに、取付下地2に固定されるパネル保持具20とを備え、前記パネル保持具の手前側に、面ファスナー状保持部21を設け、前記パネル体の背面11側に、前記パネル保持具の面ファスナー状保持部に着脱自在とされたパネル体面ファスナー状部13を有した接合部12と、該接合部を当該パネル体の面方向に沿って少許の移動が可能なようにガイドするガイド部17とを設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住居等の建物に施工されるパネル部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、取付下地となる胴縁や桟、野縁さらには既設の天井や壁等に、パネル体を取り付ける施工態様としては、釘やねじ等の止具を用いて固定したり、接着剤を用いて固定したりする施工態様とされていた。止具を用いた施工態様では、止具が表面側に露出するため、見栄えが悪くなり、その隠蔽処理等が必要となる問題があった。また、接着剤を用いた施工態様では、接着剤が硬化するまでに時間を要し、また、接着剤によってパネル体が汚れる可能性があるという問題があった。
下記特許文献1では、壁下地材の全面または一部に面ファスナーを取り付け、この面ファスナーと繋合可能な面ファスナーを壁パネルの裏面の全面または一部に設け、面ファスナー同士を繋合させて壁パネルを躯体下地に固定する壁面施工方法が提案されている。これによれば、短工期で安価且つ簡便に施工可能で、また、簡便に壁パネルを着脱、交換することができる、と説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−169155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された壁面施工方法では、壁下地材側の面ファスナーと壁パネル側の面ファスナーとを繋合させた後に位置ズレ等があれば、壁パネルを壁下地材から脱離させて再度、繋合させる必要があり面倒な作業となることが考えられる。また、壁パネルは比較的に大きいものであるため、当該壁パネルの施工位置を位置合わせしながら面ファスナー同士を繋合させることは困難な作業となることも考えられる。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、施工時における作業性を向上させ得るパネル部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るパネル部材は、パネル体と、このパネル体を保持するとともに、取付下地に固定されるパネル保持具とを備え、前記パネル保持具の手前側には、面ファスナー状保持部が設けられており、前記パネル体の背面側には、前記パネル保持具の面ファスナー状保持部に着脱自在とされたパネル体面ファスナー状部を有した接合部と、該接合部を当該パネル体の面方向に沿って少許の移動が可能なようにガイドするガイド部とが設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明においては、前記接合部に、前記パネル体の背面に向けて突出する突起部を設け、前記ガイド部を、前記突起部が挿通されるとともに、該突起部よりも大径状とされた孔部を有したプレート状とし、前記パネル体の背面に設けられた凹部に嵌め込まれる構造とされたものとしてもよい。
また、本発明においては、前記ガイド部に、前記孔部を囲むようにガイド部面ファスナー状部を更に設け、前記接合部に、前記突起部を囲むように、前記ガイド部面ファスナー状部に着脱自在とされた第2面ファスナー状部を更に設け、前記パネル体の前記取付下地側への移動を伴って、前記ガイド部が当該パネル体の厚さ方向に沿って前記接合部の突起部に対して移動することで、前記ガイド部面ファスナー状部と前記第2面ファスナー状部とが接合される構造としてもよい。
また、本発明においては、前記パネル体の凹部の底面に、前記突起部を受け入れる突起受入凹部を設け、前記接合部の突起部の先端に、前記ガイド部面ファスナー状部と前記第2面ファスナー状部とを接合させないように、前記突起受入凹部内への当該突起部の移動を規制するリング状部を仮連結片によって連結して設け、前記パネル体の前記取付下地側への移動を伴って、前記ガイド部が当該パネル体の厚さ方向に沿って前記接合部の突起部に対して移動する際に、前記仮連結片が破断される構造としてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るパネル部材は、上述のような構成としたことで、施工時における作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)〜(c)は、いずれも本発明の一実施形態に係るパネル部材を模式的に示し、その取付構造の施工手順の一例をそれぞれ模式的に示す図2におけるX−X線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図である。
【図2】同パネル部材の施工手順の一例を模式的に示す一部破断概略斜視図、及び部分拡大図である。
【図3】(a)は、同パネル部材が備えるパネル体の一例を模式的に示し、図2における部分拡大図に対応させた一部分解図、(b)は、(a)に示す分解部材を他方向から見た概略拡大斜視図、(c)は、図1(a)におけるY1−Y1線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図、(d)は、図1(a)におけるY2−Y2線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
なお、図1では、パネル体及びガイド部(ガイドプレート)を断面図として図示し、その他については側面図として図示している。
また、図3(c)、(d)では、各部の面ファスナーを概念的にクロスハッチングで示している。
【0011】
図1〜図3は、本実施形態に係るパネル部材の一例について説明するための概念的な説明図である。
本実施形態に係るパネル部材1は、図2に示すように、略矩形平板状のパネル体10と、このパネル体10を保持するとともに、取付下地2に固定されるパネル保持具20とを備えている。
図例では、取付下地としての壁下地2にパネル保持具20を固定し、このパネル保持具20に対して、パネル体10を壁パネルとして取り付けた例を示している。
【0012】
パネル保持具20は、図2に示すように、略円板形状とされており、その手前側に、面ファスナー状保持部21を有している。
この面ファスナー状保持部21は、後記するパネル体10の背面11に設けられた接合部12のパネル体面ファスナー状部13と互いに着脱自在に接合される面ファスナーとされている。このような面ファスナー状保持部21及びパネル体面ファスナー状部13に適用可能な面ファスナーとしては、公知のものが適用可能である。例えば、一方側をフック面、他方側をループ面としたものや、それぞれにフックとループとを織り込んで設けた混在型とされたもの、フックに代えて矢尻状にしたもの等としてもよい。図例では、接合後の接合強度や接合前の滑り性(接合前の難接合性)等の観点から、いずれの面ファスナーも多数のマッシュルーム状(茸状)突起を植設したものとしている。なお、各図においては、各面ファスナーを概念的に示しており、その突起の個数や形状等は図例に限られるものではない。
【0013】
また、このパネル保持具20の面ファスナー状保持部21は、後記するパネル体10の背面11に設けられた略円板状の接合部12のパネル体面ファスナー状部13の面積よりも面積が大きく形成されている。図例では、面ファスナー状保持部21の径を、パネル体面ファスナー状部13の径よりも大径状とし、1.5倍程度の径とした例を示しているが、これよりも大きい径としてもよい。
また、図例では、複数のパネル保持具20を、天井面(または天井下地)4との入隅部近傍部位、及び床面(または床下地)5との入隅部近傍部位の壁下地2に、各入隅部に沿って間隔を空けて固定した例を示している。これら複数のパネル保持具20は、後記するパネル体10の背面11に設けられた接合部12の位置に対応させて配設するようにすればよい。
なお、このパネル保持具20は、金属系材料や硬質の合成樹脂系材料等からなる円板状の基台に、上記した面ファスナー状保持部21を積層して形成するようにしてもよい。または、面ファスナーからなる面ファスナー状保持部21のみによって構成するようにしてもよい。
また、このパネル保持具20の背面(壁下地2)側に、剥離紙等を設けた粘着テープなどの粘着材を設ける態様としてもよい。
【0014】
パネル体10は、図2に示すように、本実施形態では、上下方向に長尺に形成されており、床面5から天井面4に略至るような長さ寸法(高さ寸法)とされている。
このパネル体10としては、合板やLVL等の木質積層板、パーティクルボード等の木質ボード、またはインシュレーションボードやMDF(中密度繊維板)等の木質繊維板などの木質系材料から形成されたものとしてもよい。また、これら種々の木質系材料を積層した複合材料から形成されたものとしてもよい。または、石膏ボード等の無機質系材料から形成されたものとしてもよい。さらには、解繊したケナフ長繊維にバインダーとして合成樹脂系接着剤等を加えてボード化したケナフボードからなるものとしてもよい。
【0015】
また、パネル体10としては、上記のような種々の材料から平板状に形成されたものに限られない。例えば、縦枠や横枠等により枠組みした枠部材の間に、厚さ方向に開口する多数の中空筒状セルの集合体からなるハニカムコアなどのコア材を配設し、その表裏を面材によって覆ったいわゆるフラッシュ構造のパネル体10としてもよい。
さらに、断熱機能や、吸音機能、防音機能、調湿機能等を有した各種の機能性材料から製されたものや、各種の機能性材料を内蔵した断熱パネル、吸音パネル、防音パネル、調湿パネルなどの機能パネル体10としてもよい。
さらには、面状の輻射ヒーターを内蔵した暖房機能付きの機能パネル体10としてもよく、その他、種々の機能、例えば、送風機能や空気浄化機能、照明機能、音響機能等を備えた機能パネル体10としてもよい。この場合は、種々の機能に応じて、適宜の電気機器(例えば、送風機や静電霧化装置、LED(発光ダイオード)などの照明器具、スピーカーや加振器などの音響機器など)をパネル体10に設けるようにすればよい。
また、上記のような種々のパネル体の表面に表面化粧板や化粧樹脂シート(フィルム)、化粧紙等を積層したり、塗装等を施したりした化粧パネル体としてもよい。
【0016】
また、パネル体10の背面11には、図2に示すように、上記したパネル保持具20の面ファスナー状保持部21と互いに着脱自在に接合されるパネル体面ファスナー状部13を有した接合部12が設けられている。図例では、パネル体10の背面11の上端部及び下端部のそれぞれにおいて、複数(図例では、2つ)の接合部12,12を幅方向に間隔を空けて設けている。図例では、パネル体10の背面11の四隅近傍に接合部12をそれぞれに設けた例を示している。
パネル体面ファスナー状部13は、略円板状とされた接合部12の背面側(施工された状態における取付下地2側)に設けられており、上記した面ファスナーからなる。
【0017】
また、パネル体10の背面11には、接合部12を当該パネル体10の面方向に沿って少許の移動が可能なようにガイドするガイド部17が設けられている。本実施形態では、パネル体面ファスナー状部13を有した接合部12の手前側(パネル体10の背面11側)に、パネル体10の背面11に向けて突出する突起部14を設けている。また、この突起部14がパネル体10の面方向に沿って少許の移動が可能なようにガイド部17によってガイドされる構造とされている。また、本実施形態では、ガイド部17は、図1及び図3(c)に示すように、接合部12に設けられた突起部14が挿通されるとともに、この突起部14よりも大径状とされたガイド孔部18を有したプレート状のガイドプレート17とされている。このガイドプレート17のガイド孔部18内において接合部12の突起部14がパネル体10の面方向に沿って少許の移動が可能とされている。
【0018】
このガイドプレート17は、図3(a)〜(c)に示すように、突起部14の径よりも大径とされた丸孔状のガイド孔部18を略中心に有した円板形状とされている。また、このガイドプレート17は、図1及び図3(a)、(c)に示すように、パネル体10の背面11に設けられたプレート凹部11aに嵌め込まれる構造とされている。このプレート凹部11aは、当該プレート凹部11aにガイドプレート17が嵌め込まれた状態で、パネル体10の背面11とガイドプレート17とが略面一状となるように形成されている。
なお、接合部12のパネル体10に対する面方向に沿う少許の移動は、パネル体10を後記するように取り付ける際に種々の要因により生じることが考えられる誤差や不陸等を吸収し得る程度のものとすればよい。例えば、接合部12が、パネル体10に対して面方向に沿って数mm〜20mm程度の移動が可能とされたものとしてもよい。
【0019】
また、本実施形態では、図3(a)、(c)に示すように、ガイドプレート17の接合部12側に、ガイド孔部18を囲むように、ガイド部面ファスナー状部19を設けている。また、図1及び図3(d)に示すように、接合部12のガイドプレート17側に、突起部14を囲むように、ガイド部面ファスナー状部19に着脱自在に接合される第2面ファスナー状部15を設けている。これらガイド部面ファスナー状部19及び第2面ファスナー状部15は、互いに着脱自在に接合される上記同様の面ファスナーからなる。
これらガイド部面ファスナー状部19と第2面ファスナー状部15とは、パネル体10の壁下地2側への移動を伴って、ガイドプレート17が当該パネル体10の厚さ方向に沿って突起部14に対して移動することで接合される。
【0020】
また、突起部14の突出方向先端には、ガイドプレート17に抜止保持されるリング状部16が設けられている。このリング状部16は、図3(b)、(c)に示すように、本実施形態では、突起部14の先端にスポーク状に形成された仮連結片16aによって連結されて設けられており、突起部14及びガイドプレート17のガイド孔部18よりも大径の略円形状とされている。図例では、このリング状部16は、その外郭形状が、略円板状とされた接合部12と略同径とされた略円形状とされている。つまり、突起部14の突出方向両側に、略円形状の接合部12とリング状部16とを有した構造とされている。このリング状部16の仮連結片16aは、詳細については後述するがパネル体10をパネル保持具20に対して本固定する際に破断される構造とされている。
【0021】
また、パネル体10の背面11に形成されたプレート凹部11aの底面には、図1及び図3(a)に示すように、このリング状部16を受け入れるとともに、突起部14のパネル体10の面方向に沿う移動に伴うリング状部16の移動を許容するリング状部収容凹部11bが形成されている。このリング状部収容凹部11bは、パネル体10の背面11に形成されたプレート凹部11aから更に段落ち状にパネル体10の背面11に形成され、プレート凹部11aよりも小径状とされている。図1(a)に示すように、このリング状収容凹部11bによってパネル体10の厚さ方向に沿うリング状部16の移動が規制され、ガイド部面ファスナー状部19と第2面ファスナー状部15との接合が抑制される構造とされている。
また、本実施形態では、このリング状収容凹部11bの底面には、当該リング状収容凹部11bから更に段落ち状に形成され、当該リング状収容凹部11bよりも小径状とされた突起受入凹部11cが設けられている。
【0022】
この突起受入凹部11cは、突起部14の先端部を受け入れ可能に形成されるとともに、突起部14のパネル体10の面方向に沿う移動に伴う突起部14の先端部の移動を許容する形状とされ、突起部14よりも大径状で、リング状部16よりも小径状とされている。図例では、この突起受入凹部11cは、ガイドプレート17のガイド孔部18と略同径とされている(図3(c)参照)。また、この突起受入凹部11cは、リング状部16の仮連結片16aが破断し、突起部14の先端部(リング状部16が設けられた部位)を受け入れた状態で、ガイド部面ファスナー状部19と第2面ファスナー状部15とが接合可能な深さ寸法とされている。
このような構成により、図1(a)に示すように、接合部12の突起部14の先端に設けられたリング状部16によって、接合部12がガイドプレート17に対して抜止保持される。また、リング状部16がリング状収容凹部11bに規制されて、ガイド部面ファスナー状部19と第2面ファスナー状部15との接合が抑制される。また、このリング状部16の仮連結片16aが破断すれば、突起受入凹部11c内への突起部14の移動の規制が解除され、ガイド部面ファスナー状部19と第2面ファスナー状部15との接合が可能となる。
【0023】
なお、接合部12とガイドプレート17とは、接合部12の突起部14をガイドプレート17のガイド孔部18に挿通させた後に、リング状部16を突起部14の先端に接着や溶着、嵌合等によって固着させて組み付けるようにしてもよい。
また、ガイドプレート17に係止保持された接合部12のパネル体10への固定は、ガイドプレート17をプレート凹部11a等にねじ等の止具や接着剤によって固着させることで固定するようにしてもよい。
【0024】
次に、本実施形態に係るパネル部材1を用いたパネル取付構造の施工手順の一例について説明する。
まず、図2に示すように、天井面4との入隅部近傍部位、及び床面5との入隅部近傍部位の壁下地2に、各入隅部に沿って間隔を空けて、パネル体10の接合部12の位置に対応させて、複数のパネル保持具20を固定する。
これらパネル保持具20の固定は、上記のように背面側に粘着材を設けた場合には、剥離紙を剥離させ、該粘着材によって固定するようにしてもよく、または接着剤等を背面側に塗布して接着により固定するようにしてもよい。このような固定態様に代えて、または加えて、ねじ等の止具によって固定する態様としてもよい。
【0025】
次いで、例えば、取付対象の壁下地2に固定されたパネル保持具20に対して、壁下地2に隣接する隣接壁3(壁下地または壁面)側のパネル体10から順に取り付ける。この際、まず、図1(a)、(b)に示すように、パネル保持具20の面ファスナー状保持部21と、パネル体10の背面11に設けられた接合部12のパネル体面ファスナー状部13とを接合させる。次いで、当該パネル体10の固定位置を、例えば、一側端部が隣接壁3や既に施工した隣接するパネル体10の他側端部に当接するように、また、上下端面が天井面4乃至は床面5等に当接するように微調整を行う。上述のように、パネル体10に固定されたガイドプレート17と接合部12とはパネル体10の面方向に沿って相対的に少許の移動が可能であるので、パネル保持具20に対して固定された接合部12に対して、パネル体10を面方向に沿って移動させることで微調整が行える。
【0026】
そして、上記のような微調整を行った後、図1(c)に示すように、当該パネル体10を壁下地2側に向けて押し込むように移動させる。これにより、接合部12の突起部14の先端に設けられたリング状部16の仮連結片16aが破断し、突起部14の先端部がパネル体10の背面11に設けられた突起受入凹部11c内へ移動する。つまり、リング状部16の仮連結片16aは、施工者等がパネル体10を壁下地2側へ押し付ける程度の外力で破断される構造とされている。
また、突起部14の突起受入凹部11c内への移動を伴い、ガイドプレート17が突起部14に対してパネル体10の厚さ方向に沿って壁下地2側へ移動する。これにより、ガイドプレート17のガイド部面ファスナー状部19と、接合部12の第2面ファスナー状部15とが接合し、本固定がなされる。つまり、本実施形態では、パネル体10が二段階的に取付固定される態様とされている。
【0027】
以下、同様にして、図2に示すように、複数枚のパネル体10を壁下地2の上下に固定されたパネル保持具20に対して取り付けるようにしてもよい。
なお、隣接壁3側とは異なる側の壁出隅部や壁入隅部においては、パネル体10の幅寸法を適宜のものとし、適宜の見切り部材等によって納めるようにしてもよい。
また、このようにパネル体10を取付施工した後、パネル体10の手前面(室内側の面)に、適宜、表面化粧板や化粧樹脂シート(フィルム)、化粧紙等を貼着したり、塗装等を施したりするようにしてもよい。
【0028】
以上のように、本実施形態に係るパネル部材1によれば、施工時における作業性を向上させることができる。
つまり、パネル保持具20を取付下地2に固定し、このパネル保持具20の面ファスナー状保持部21とパネル体10のパネル体面ファスナー状部13とを接合させることでパネル体10の取付施工が可能である。従って、釘やねじ等の止具、接着剤等を用いる必要がなく、施工時における作業性を向上させることができる。
また、パネル体面ファスナー状部13を有した接合部12がパネル体10の面方向に沿って少許の移動が可能であるので、取付下地2の不陸や取付下地2に直交する面(本実施形態では、天井面4や床面5、隣接壁3等)の不陸、隣接するパネル体10の取付誤差等を吸収することができる。この結果、このような不陸や誤差等があった場合にもパネル体10を容易に施工できる。つまりは、再度、脱離させて位置決め等を行う必要が生じ難い。また、微調整が可能となるので、隣接するパネル体10,10同士の間や取付下地2に直交する上記面との間に隙間等が形成され難く、見栄え良くパネル体10を取り付けることができる。
さらに、パネル体10の背面11側に、接合部12を設ける構造としているので、パネル体10自体を比較的に簡易な構造とでき、例えば、本実施形態のように、四周端部に実部等を設けずにフラットな端面形状とすることもできる。
さらにまた、施工後にパネル体10を交換等のために取り外す必要が生じた場合には、面ファスナー状部21,13同士の接合状態を解除させることで、パネル体10に損傷を与えることなく比較的に容易に取り外すことができる。
【0029】
また、本実施形態では、接合部12に、パネル体10の背面11に向けて突出する突起部14を設けている。また、ガイド部17を、突起部14が挿通されるとともに、突起部14よりも大径状とされたガイド孔部18を有したプレート状のガイドプレート17とし、パネル体10の背面11に設けられたプレート凹部11aに嵌め込む構造としている。従って、ガイド部をパネル体10の背面11から突出させることなく設けることができる。これにより、例えば、背面11から突出するように設ける態様と比べて、パネル体10とパネル保持具20との間の空間を小さくすることができる。
【0030】
さらに、ガイドプレート17にガイド部面ファスナー状部19を設け、接合部12に第2面ファスナー状部15を設け、パネル体10の取付下地2側への移動を伴って、これらガイド部面ファスナー状部19と第2面ファスナー状部15とが接合される構造としている。従って、パネル保持具20の面ファスナー状保持部21とパネル体10のパネル体面ファスナー状部13とを接合させた後、パネル体10の位置合わせの微調整等を行い、パネル体10を取付下地2側に向けて押すことで本固定することができる。つまり、パネル体10に設けたガイドプレート17が接合部12の突起部14に対してパネル体10の厚さ方向に沿って移動し、ガイド部面ファスナー状部19と第2面ファスナー状部15とが接合され、本固定がなされる。
【0031】
さらにまた、本実施形態では、これらガイド部面ファスナー状部19と第2面ファスナー状部15との接合を規制する規制手段を設けている。つまり、パネル体10のプレート凹部11aの底面に、突起部14を受け入れる突起受入凹部11cを設けている。また、接合部12の突起部14の先端に、ガイド部面ファスナー状部19と第2面ファスナー状部15とを接合させないように、突起受入凹部11c内への当該突起部14の移動を規制するリング状部16を仮連結片16aによって連結して設けている。そして、この仮連結片16aが、上述のように、パネル体10の取付下地2側への移動を伴って、ガイドプレート17が当該パネル体10の厚さ方向に沿って接合部12の突起部14に対して移動する際に破断される構造とされている。従って、パネル保持具20の面ファスナー状保持部21とパネル体10のパネル体面ファスナー状部13とを接合させた後、パネル体10の位置合わせの微調整等を行う際に、ガイド部面ファスナー状部19と第2面ファスナー状部15とが接合されることを防止することができる。この結果、位置合わせの微調整等及び本固定をスムーズに行うことができる。
【0032】
また、本実施形態では、パネル保持具20の面ファスナー状保持部21をパネル体10の接合部12のパネル体面ファスナー状部13よりも大径状としている。つまり、パネル保持具20の面ファスナー状保持部21の面積を、パネル体10の接合部12のパネル体面ファスナー状部13の面積よりも大きくなるように形成している。従って、取付下地2へのパネル保持具20の固定位置に位置ずれ等があった場合にも、その位置ずれを吸収することができる。これにより、施工時における作業性をより向上させることができる。
このパネル保持具20の面ファスナー状保持部21の面積は、材料コストや固定位置の位置ずれを吸収する観点等から、パネル体10の接合部12のパネル体面ファスナー状部13の面積の1.5倍〜3倍程度としてもよい。
【0033】
なお、本実施形態では、パネル体10の背面11の長手方向両端部(上端部及び下端部)のそれぞれに2つの接合部12を設けた例を示しているが、1つ、または3つ以上の接合部12を、上端部及び下端部のそれぞれに設けるようにしてもよい。この場合は、パネル体10の接合部12に対応させた位置に、パネル保持具20を配設するようにすればよい。
また、本実施形態では、パネル体10の背面11の長手方向両端部のそれぞれに接合部12を設けた例を示しているが、背面11における長手方向の中間部位にも接合部12を設けるようにしてもよい。この場合は、その長手方向位置(高さ位置)に対応する位置に、パネル保持具20を配設するようにすればよい。
【0034】
さらに、本実施形態では、床面5から天井面4までの高さ寸法に応じた長さ寸法とされたパネル体10を例示しているが、これよりも短い寸法とされたものとし、複数枚を上下に並設する態様としてもよい。
さらにまた、パネル保持具20が固定される壁下地2としては、胴縁や桟部材、間柱、通し柱、下地パネル等としてもよい。また、パネル体10を壁パネルとして、壁下地2にパネル保持具20を介して取り付ける施工態様に限られず、パネル体10を天井パネルとして、野縁や下地パネル等の天井下地にパネル保持具20を介して取り付けるようにしてもよい。または、このような木造の下地を取付下地とする態様に限られず、鉄筋コンクリート造等の建築物において、直壁や直天井仕上げ等とされている場合には、その仕上げ面を取付下地としてもよい。この場合において、パネル保持具20を止具を用いて固定する際には、適宜、コンクリート用のアンカーボルト(プラグ)等の止具を採用するようにしてもよい。
さらには、既設の天井材や壁材等を取付下地として、後施工的に本実施形態に係るパネル部材1を施工する態様としてもよい。
【0035】
また、本実施形態では、パネル保持具20を略円板形状とし、パネル体10の接合部12及びリング状部16を略円板状とした例を示しているが、例えば、これらを略多角形状とされたものとしたり、その他の異形状とされたものとしたりしてもよい。
さらに、本実施形態では、複数のパネル保持具20を個別に取付下地2に固定する態様を例示しているが、このような態様に限られない。例えば、パネル体10に設けられた接合部12の位置に対応させて、パネル体10の幅方向に沿わせるようにして、パネル保持具20同士を紐状部材や帯状部材によって連結した構造とされたものとしてもよい。これによれば、パネル保持具20の固定位置の位置決めを容易に行うことができる。さらには、このような態様に代えて、パネル保持具20自体を長尺板状とし、その手前側に、パネル体10に設けられた接合部12の位置に対応させて、面ファスナー状保持部21を長手方向に沿って間隔を空けて設けた態様としてもよい。または、面ファスナー状保持部21自体をパネル体10の幅方向に沿って長尺に形成されたものとしてもよい。
【0036】
さらにまた、ガイドプレート17のガイド部面ファスナー状部19と接合部12の第2面ファスナー状部15との接合を規制する規制手段としては、図例のような態様に限られない。例えば、接合部12の突起部14自体または先端部等を圧縮性のあるゴムやばね部材等の弾性部材によって形成し、この弾性部材が規制手段として、これら面ファスナー状部19,15同士の接合を抑制する方向へ接合部12を付勢する態様としてもよい。この場合は、リング状部16やパネル体10の背面11に突起受入凹部11cを設けないようにしてもよい。さらには、このようなガイドプレート17のガイド部面ファスナー状部19と接合部12の第2面ファスナー状部15との接合を規制する規制手段を設けないようにしてもよい。この場合は、これらガイド部面ファスナー状部19及び第2面ファスナー状部15を、接合前の滑り性(接合前の難接合性)等の観点から、上述した多数のマッシュルーム状(茸状)突起を植設した面ファスナーとすることが好ましい。
【0037】
また、本実施形態では、ガイドプレート17にガイド部面ファスナー状部19を設け、接合部12に第2面ファスナー状部15を設けた例を示しているが、これらを設けないようにしてもよい。このような態様によっても、パネル保持具20の面ファスナー状保持部21とパネル体10の接合部12のパネル体面ファスナー状部13とを接合させた後に微調整を行うことができ、施工時における作業性を向上させることができる。なお、このような場合にも、隣接するパネル体10を順次、施工することで、パネル体10の移動を抑制することはできる。
さらに、本実施形態では、接合部12をパネル体10の面方向に沿って少許の移動を可能とするガイド部として、パネル体10のプレート凹部11aに嵌め込まれるガイドプレート17を設けた例を示しているが、このような態様に限られない。例えば、パネル体10の背面11に付設するように設けられたガイド部としてもよい。また、ガイド部としては、接合部12をパネル体10の面方向に沿って少許の移動が可能なようにガイドする構造とされたものであればどのようなものでもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 パネル部材
2 壁下地(取付下地)
10 パネル体
11 パネル体の背面
11a プレート凹部(凹部)
11c 突起受入凹部
12 接合部
13 パネル体面ファスナー状部
14 突起部
15 第2面ファスナー状部
16 リング状部
16a 仮連結片
17 ガイドプレート(ガイド部)
18 ガイド孔部(孔部)
19 ガイド部面ファスナー状部
20 パネル保持具
21 面ファスナー状保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル体と、このパネル体を保持するとともに、取付下地に固定されるパネル保持具とを備え、
前記パネル保持具の手前側には、面ファスナー状保持部が設けられており、
前記パネル体の背面側には、前記パネル保持具の面ファスナー状保持部に着脱自在とされたパネル体面ファスナー状部を有した接合部と、該接合部を当該パネル体の面方向に沿って少許の移動が可能なようにガイドするガイド部とが設けられていることを特徴とするパネル部材。
【請求項2】
請求項1において、
前記接合部には、前記パネル体の背面に向けて突出する突起部が設けられており、
前記ガイド部は、前記突起部が挿通されるとともに、該突起部よりも大径状とされた孔部を有したプレート状とされ、前記パネル体の背面に設けられた凹部に嵌め込まれる構造とされていることを特徴とするパネル部材。
【請求項3】
請求項2において、
前記ガイド部には、前記孔部を囲むようにガイド部面ファスナー状部が更に設けられており、
前記接合部には、前記突起部を囲むように、前記ガイド部面ファスナー状部に着脱自在とされた第2面ファスナー状部が更に設けられており、
前記パネル体の前記取付下地側への移動を伴って、前記ガイド部が当該パネル体の厚さ方向に沿って前記接合部の突起部に対して移動することで、前記ガイド部面ファスナー状部と前記第2面ファスナー状部とが接合される構造とされていることを特徴とするパネル部材。
【請求項4】
請求項3において、
前記パネル体の凹部の底面には、前記突起部を受け入れる突起受入凹部が設けられており、
前記接合部の突起部の先端には、前記ガイド部面ファスナー状部と前記第2面ファスナー状部とを接合させないように、前記突起受入凹部内への当該突起部の移動を規制するリング状部が仮連結片によって連結されて設けられており、
前記仮連結片は、前記パネル体の前記取付下地側への移動を伴って、前記ガイド部が当該パネル体の厚さ方向に沿って前記接合部の突起部に対して移動する際に、破断される構造とされていることを特徴とするパネル部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−172297(P2012−172297A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31892(P2011−31892)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】