説明

パラジウムの除去方法

【課題】リン系配位子を有するパラジウム錯体が溶解した溶液からパラジウムを効率的に除去する方法を提供すること。
【解決手段】リン系配位子を有するパラジウム錯体が溶解した溶液を、細孔径0.6〜2nmのゼオライトで処理することを特徴とするパラジウムの除去方法、反応生成物に対するパラジウム量が15ppb以下である反応生成物含有溶液の製造方法、及び、反応生成物に対するパラジウム量が15ppb以下である反応生成物含有溶液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラジウムの除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トリフェニルホスフィンに代表されるリン系配位子を有するパラジウム錯体は、例えば鈴木カップリング反応、薗頭カップリング反応、ヘック反応、ブッフバルド反応、カルボニル化反応等種々の有機合成反応の触媒として用いられており(例えば非特許文献1〜3参照)、これら反応は、医薬品、農薬、電子材料等およびこれらの中間体の製造に適した反応であることから、その重要性がますます高まってきている。
【0003】
前記パラジウム錯体を触媒として、これら反応を行った後、必要に応じて抽出処理等の後処理を行い、目的とする反応生成物が取り出されるが、反応液中には前記パラジウム錯体に由来するパラジウムも溶解しているため、反応生成物にパラジウムが混入してくるという問題やパラジウムが溶解した廃液を処理しなければならないという問題があった。そのため、前記パラジウム錯体が溶解した溶液からパラジウムを除去する方法が種々検討されており、例えば活性炭で処理する方法(例えば非特許文献4参照。)、乳酸水溶液で抽出処理する方法(例えば非特許文献5参照。)等が報告されている。かかる方法は、処理後に残存するパラジウム量が、反応生成物に対して1ppm程度まで除去可能な方法であるものの、反応生成物を医薬品、農薬、電子材料等の用途に用いるためには、不十分であり、さらにパラジウム量を低減することができる除去方法が必要であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】エイイチ・ネギシ編,「Handbook of Organopalladium Chemistry for Organic Synthesis」,A John Wiley & Sons,2002年
【非特許文献2】ジロウ・ツジ著,「Palladium Reagents and Catalysts−innovations in organic synthesis」,A John Wiley & Sons,1995年
【非特許文献3】日本化学会編,「実験化学講座(第25巻)有機合成VII」,第4版,丸善株式会社,p.396〜427
【非特許文献4】Organic Process Researach & Development,2001,5,383
【非特許文献5】J.Org.Chem.,2003,68,2633
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況のもと、本発明者らは、リン系配位子を有するパラジウム錯体が溶解した溶液からパラジウムを効率的に除去する方法を開発すべく鋭意検討したところ、前記溶液を、細孔径0.6〜2nmのゼオライトで処理することにより、パラジウムを効率的に除去できることを見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、リン系配位子を有するパラジウム錯体が溶解した溶液を、細孔径0.6〜2nmのゼオライトで処理することを特徴とするパラジウムの除去方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、リン系配位子を有するパラジウム錯体が溶解した溶液から、効率的にパラジウムを除去することができ、パラジウム含有量がより低レベルの溶液を得ることができる。しかも、医薬品、農薬、電子材料等の製造に好適な薗頭カップリング反応等の前記パラジウム錯体を触媒とする有機合成反応で得られる反応生成物を含む溶液からも、前記反応生成物のロスを抑えて、溶解しているパラジウムを効率的に除去できるため、工業的な観点からも有利な方法となり得る。
【発明を実施するための形態】
【0008】
リン系配位子を有するパラジウム錯体が溶解した溶液としては、前記パラジウム錯体が溶解した有機溶媒溶液であれば特に制限されない。例えばリン系配位子を有するパラジウム錯体を触媒とする有機合成反応を行い、得られた反応生成物と前記パラジウム錯体を含む反応液を用いてもよいし、前記反応液について、例えば抽出処理、濾過処理等の後処理を行った後の反応生成物と前記パラジウム錯体を含む溶液を用いてもよい。また、前記溶液中には、銅塩等の他の金属成分、塩基等の成分が含まれていてもよい。リン系配位子を有するパラジウム錯体を触媒とする有機合成反応も特に制限されず、Handbook of Organopalladium Chemistry for Organic Synthesis、Palladium Reagents and Catalysts−innovations in organic synthesis、第4版実験化学講座第25巻有機合成VII,p.396〜427等に記載の公知のパラジウム錯体を用いる有機合成反応が挙げられる。
【0009】
かかる有機合成反応としては、例えば水添反応、脱水素反応、ハロゲン化アリールの脱ハロゲン化反応、不飽和化合物の不飽和結合の転位反応、重合反応、炭素−炭素結合生成反応、炭素−窒素結合生成反応等が挙げられ、なかでも医薬品、農薬、電子材料等およびこれらの中間体の合成反応として用いられることが多い炭素−炭素結合生成反応や炭素−窒素結合生成反応の場合に、本発明の方法は好適である。炭素−炭素結合生成反応や炭素−窒素結合生成反応としては、例えばハロゲン化アリールとアリールホウ酸とを反応させる鈴木カップリング反応、ハロゲン化アリールとアルキンとを反応させる薗頭カップリング反応、ハロゲン化アリールもしくはハロゲン化ビニルとオレフィンとを反応させるヘック反応、ハロゲン化アリールとアミンとを反応させるブッフバルド反応、ハロゲン化アリールと一酸化炭素とアルコールとを反応させるカルボニル化反応、ハロゲン化アリールとケトンとを反応させるα−アリールケトン合成反応、ハロゲン化アリールと有機亜鉛試薬とのカップリング反応等が挙げられる。
【0010】
リン系配位子としては、パラジウムに配位可能なリン原子を有する配位子であれば特に制限されず、例えばトリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ(n−ブチル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン等の単座ホスフィン系配位子、例えばトリフェニルホスファイト等の単座ホスファイト系配位子、例えばビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフタレン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン等の二座ホスフィン系配位子等が挙げられ、単座または二座ホスフィン系配位子が好ましく、単座ホスフィン系配位子がより好ましい。
【0011】
リン系配位子を有するパラジウム錯体としては、前記溶液中でリン系配位子がパラジウムに配位した錯体であればよく、リン系配位子以外の配位子が配位していてもよい。かかるパラジウム錯体としては、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh34)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(PdCl2(PPh32)、ジクロロビス(トリエチルホスフィン)パラジウム(PdCl2(PEt32)、ジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム・ジクロロメタン錯体(PdCl2(dppf)・CH2Cl2)等の予めリン系配位子がパラジウムに配位した錯体であってもよいし、例えば塩化パラジウム(PdCl2)、臭化パラジウム(PdBr2)、酢酸パラジウム(Pd(OAc)2)、リチウムテトラクロロパラデート(Li2PdCl4)、ビス(η3−アリル)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd2(dba)3)、ビス(アセチルアセトナート)パラジウム(Pd(acac)2)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム((CH3CN)2PdCl2)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム((PhCN)2PdCl2)等のリン系配位子を有さないパラジウム化合物と前記リン系配位子とを反応系中で接触せしめて形成させたパラジウム錯体等であってもよい。
【0012】
有機溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、例えばアセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、例えばジクロロメタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等の単独または混合溶媒が挙げられ、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒およびこれらの混合溶媒が好ましい。脂肪族炭化水素系溶媒と芳香族炭化水素系溶媒の混合溶媒を用いる場合には、脂肪族炭化水素系溶媒を、芳香族炭化水素系溶媒よりも多く使用する方が好ましい。かかる有機溶媒の使用量は特に制限されないが、パラジウム錯体を触媒とする有機合成反応を行って得られる反応生成物を含む溶液の場合には、反応生成物に対して、通常0.5〜100重量倍、好ましくは2〜50重量倍、より好ましくは3〜30重量倍の有機溶媒が用いられる。
【0013】
前記溶液中のパラジウム量としては、通常100ppb〜1%、好ましくは100ppb〜1000ppmである。
【0014】
層状粘土化合物としては、例えばマグネシウム、アルミニウム、鉄、ケイ素等の酸化物からなる積層構造を有する化合物であればよく、例えばカオリナイト、モンモリロナイト、ハロイサイト等が挙げられ、モンモリロナイトが好ましい。モンモリロナイトとしては、例えば活性白土、酸性白土等が挙げられ、活性白土が好ましい。かかる層状粘土化合物の形状は特に制限されず、例えば粉末状、粒状等が挙げられ、好ましくは粉末状のものが用いられる。かかる層状粘土化合物としては、通常市販されているものが用いられる。
【0015】
細孔径0.6〜2nmのゼオライトとしては、天然ゼオライトであってもよいし、合成ゼオライトであってもよい。かかるゼオライトとしては、例えばY型ゼオライト、リンデX、AlPO4−37、フォージャサイト等のFAU構造を有するゼオライト、例えばグメリナイト等のGME構造を有するゼオライト、例えばリンデL等のLTL構造を有するゼオライト、例えばマザイト、ZSM−4ゼオライト等のMAZ構造を有するゼオライト、例えばモルデナイト、ゼオロン等のMOR構造を有するゼオライト、例えばオフレタイト、リンデT等のOFF構造を有するゼオライト等が挙げられ、FAU構造を有するゼオライトが好ましい。かかるゼオライトは、市販されているものを用いてもよいし、合成ゼオライトであれば、公知の方法に従い製造したものを用いてもよい。
【0016】
かかる層状粘土化合物または細孔径0.6〜2nmのゼオライトの使用量としては、特に制限されない。前記溶液中に反応生成物を含む場合の使用量は、反応生成物に対して、通常0.1〜100重量倍、好ましくは0.5〜30重量倍である。
【0017】
層状粘土化合物または細孔径0.6〜2nmのゼオライトで、前記溶液を処理する方法としては、例えば層状粘土化合物または細孔径0.6〜2nmのゼオライトと前記溶液を混合し、所定時間接触させた後、層状粘土化合物または細孔径0.6〜2nmのゼオライトを、例えば濾過、遠心分離等の通常の分離手段により分離する方法、層状粘土化合物または細孔径0.6〜2nmのゼオライトが充填された塔内に、前記溶液を通液する方法等が挙げられる。処理温度は、通常−50〜200℃、好ましくは−10〜100℃である。濾過により、処理後の層状粘土化合物または細孔径0.6〜2nmのゼオライトを分離する場合、例えばセライト等の濾過助剤を用いてもよい。処理時間は特に制限されないが、通常0.1〜48時間、好ましくは0.3〜10時間である。
【0018】
反応生成物を含む溶液についてかかる処理を行うことにより、反応生成物に対するパラジウム量が15ppb以下である反応生成物含有溶液が得られ、前記溶液を、必要に応じて濃縮処理した後、例えば晶析処理することにより、パラジウム含量がより低減された反応生成物を得ることができる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、溶液中のパラジウム(以下、Pdと略記する。)量は、採取した試料を濃縮処理した後、湿式加圧酸分解し、蒸発乾固し、次いで王水に溶解させ、ICP発光分析(Pd量が1ppm以上の場合)またはICP−MS分析(パラジウム量が1ppm未満の場合)し、算出した。また、溶液中の反応生成物の含量は、高速液体クロマトグラフィにより分析し、算出した。
【0020】
参考例1
100mLメスフラスコに、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh34)108.7mgおよびトリフェニルホスフィン98.7mgを秤量し、トルエンを加えて、100mLとした。この溶液10mLを採取し、トルエン/ヘキサン混合溶液(トルエン/ヘキサン重量比=17/83)を加え、全体重量を1000gとし、Pd含量1ppmの溶液を調製した。
【0021】
実施例1
温度計、冷却管および攪拌装置を備えた四つ口フラスコに、前記参考例1で調製したPd含量1ppmの溶液50gおよび活性白土(和光純薬製)7.5gを加え、内温20℃で2時間攪拌、保持した。その後、同温度で活性白土を濾別した。濾別した活性白土をトルエン/ヘキサン混合溶液(トルエン/ヘキサン重量比=17/83)7.5gで2回洗浄処理し、洗浄液を先に得た濾液と合一した。合一後の溶液を濃縮処理し、濃縮液10gを得た。濃縮液中のPd含量は5ppb未満であり、Pd除去率は99.9%以上であった。
【0022】
実施例2〜5
実施例1において、活性白土の使用量および処理温度を下記表1に示した条件とした以外は実施例1と同様に実施した。結果を表1に示した。
【0023】
【表1】

【0024】
実施例6
実施例1において、活性白土に代えてY型ゼオライト(細孔径0.74nm)を用いた以外は実施例1と同様に実施したところ、濃縮液中のPd含量は5ppb未満、Pd除去率は99.9%以上であった。
【0025】
比較例1
実施例1において、活性白土に代えてZSM−5ゼオライト(細孔径0.5nm)を用いた以外は実施例1と同様に実施したところ、濃縮液中のPd含量は140ppb、Pd除去率は97.2%であった。
【0026】
比較例2
実施例1において、活性白土に代えてケイソウ土(和光純薬製ハイフロスーパーセル)を用いた以外は実施例1と同様に実施したところ、濃縮液中のPd含量は230ppb、Pd除去率は95.4%であった。
【0027】
参考例2
温度計および攪拌装置を備えた1Lフラスコの内部を窒素置換した後、1,3−ジブロモアダマンタン43gおよび無水臭化アルミニウム10gを仕込み、内温0℃まで冷却した。これに、予め5℃に冷却しておいた1,3−ジブロモベンゼン190gを仕込み、内温0〜10℃で7時間攪拌、反応させた。反応中に発生する臭化水素ガスはアルカリ水溶液中に導き、除害しながら反応を行った。反応終了後、4重量%塩酸130gをゆっくり滴下し、反応液のオレンジ色が消失するまで攪拌を継続した。攪拌を停止し、静置後、分液処理し、得られた有機層を水で3回洗浄処理した。洗浄処理後の有機層にトルエン190gを加え、昇温し、還流条件下で水を除去した。その後冷却し、析出した結晶を濾取した。濾取した結晶をトルエン、メタノールおよび水で洗浄した後、減圧条件下で乾燥させ、1,3−ビス(3,5−ジブロモフェニル)アダマンタン44gを得た。
【0028】
温度計、還流冷却管および攪拌装置を備えた500mLフラスコの内部を窒素置換した後、トルエン268g、トリエチルアミン26g、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(PdCl2(PPh32)0.29g、トリフェニルホスフィン0.58gおよびヨウ化銅(I)0.23gを仕込んだ。これに、前記1,3−ビス(3,5−ジブロモフェニル)アダマンタン31gを加え、内温80℃に昇温した。同温度で、トリメチルシリルアセチレン22gを6時間かけて滴下した後、同温度で2時間保持し、薗頭カップリング反応を行った。反応終了後、室温まで冷却し、不溶分を濾別した。濾別した不溶分をトルエン31gで2回洗浄した後、洗浄液を先に得た濾液と合一した。合一後の溶液を4重量%塩酸中に加え、攪拌し、静置後、分液処理した。得られた有機層を水155gで2回洗浄した後、減圧条件下で濃縮処理し、濃縮液66gを得た。濃縮液中には、薗頭カップリング反応の反応生成物である1,3−ビス[3,5−ビス(トリメチルシリルエチニル)フェニル]アダマンタンが50重量%含まれていた。
【0029】
得られた濃縮液にヘキサン165gを加え、1,3−ビス[3,5−ビス(トリメチルシリルエチニル)フェニル]アダマンタンの含有量が、14重量%の溶液を調製した。この溶液に、シリカゲル(関東化学製、球状中性、粒径100〜210μm)62gを仕込み、内温25℃で2時間攪拌保持した後、同じシリカゲル31gをプレコートした濾過器で濾過処理した。濾過器上に濾取されたシリカゲルをトルエン/ヘキサン混合溶液(トルエン/ヘキサン重量比=17/83)31gで2回洗浄し、洗浄液は先に得た濾液と合一し、1,3−ビス[3,5−ビス(トリメチルシリルエチニル)フェニル]アダマンタン含有溶液250gを得た。該溶液中の1,3−ビス[3,5−ビス(トリメチルシリルエチニル)フェニル]アダマンタンの含有量は10重量%、1,3−ビス[3,5−ビス(トリメチルシリルエチニル)フェニル]アダマンタンに対するPd量は280ppbであった。また、該溶液中のトルエン/ヘキサン重量比は17/73であった。
【0030】
実施例7
温度計および攪拌装置を備えたフラスコに、前記参考例2で得られた1,3−ビス[3,5−ビス(トリメチルシリルエチニル)フェニル]アダマンタン含有溶液100重量部および活性白土(和光純薬製)28重量部を仕込み、室温で2時間攪拌、保持した。その後、同温度で活性白土を濾別した。濾別した活性白土をヘキサン28重量部で2回洗浄処理し、洗浄液を先に得た濾液と合一した。合一後の溶液を濃縮処理し、1,3−ビス[3,5−ビス(トリメチルシリルエチニル)フェニル]アダマンタンの含量が50重量%である濃縮液20重量部を得た。濃縮液中の1,3−ビス[3,5−ビス(トリメチルシリルエチニル)フェニル]アダマンタンに対するPd量は10ppb以下であり、Pd除去率は98.2%以上であった。また、1,3−ビス[3,5−ビス(トリメチルシリルエチニル)フェニル]アダマンタンの回収率は100%であった。
【0031】
比較例3
実施例7において、活性白土に代えて活性炭を用いた以外は実施例7と同様に実施したところ、濃縮液中の1,3−ビス[3,5−ビス(トリメチルシリルエチニル)フェニル]アダマンタンに対するPd量は22ppbであり、Pd除去率は92.1%であった。
また、1,3−ビス[3,5−ビス(トリメチルシリルエチニル)フェニル]アダマンタンの回収率は73%であった。
【0032】
比較例4
実施例7において、活性白土に代えてケイソウ土を用いた以外は実施例7と同様に実施したところ、濃縮液中の1,3−ビス[3,5−ビス(トリメチルシリルエチニル)フェニル]アダマンタンに対するPd量は154ppbであり、Pd除去率は44.9%であった。また、1,3−ビス[3,5−ビス(トリメチルシリルエチニル)フェニル]アダマンタンの回収率は98%であった。
【0033】
参考例3
参考例2において、シリカゲル31gをプレコートした濾過器に代えてプレコートしていない濾過器を用いた以外は参考例2と同様に実施して、1,3−ビス[3,5−ビス(トリメチルシリルエチニル)フェニル]アダマンタン含有溶液260gを得た。該溶液中の1,3−ビス[3,5−ビス(トリメチルシリルエチニル)フェニル]アダマンタンの含有量は12重量%、1,3−ビス[3,5−ビス(トリメチルシリルエチニル)フェニル]アダマンタンに対するPd量は2000ppbであった。また、該溶液中のトルエン/ヘキサン重量比は15/73であった。
【0034】
実施例8
実施例7において、前記参考例2で得られた1,3−ビス[3,5−ビス(トリメチルシリルエチニル)フェニル]アダマンタン含有溶液に代えて、前記参考例3で得られた1,3−ビス[3,5−ビス(トリメチルシリルエチニル)フェニル]アダマンタン含有溶液を用いた以外は実施例7と同様に実施したところ、濃縮液中の1,3−ビス[3,5−ビス(トリメチルシリルエチニル)フェニル]アダマンタンに対するPd量は10ppb以下であり、Pd除去率は99.5%以上であった。また、1,3−ビス[3,5−ビス(トリメチルシリルエチニル)フェニル]アダマンタンの回収率は95%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン系配位子を有するパラジウム錯体が溶解した溶液を、細孔径0.6〜2nmのゼオライトで処理することを特徴とするパラジウムの除去方法。
【請求項2】
前記溶液が、リン系配位子を有するパラジウム錯体を触媒として用いた有機合成反応の反応生成物がさらに溶解した溶液である請求項1記載のパラジウムの除去方法。
【請求項3】
リン系配位子が、ホスフィン系配位子である請求項1または2記載のパラジウムの除去方法。
【請求項4】
有機合成反応が、炭素−炭素結合生成反応または炭素−窒素結合生成反応である請求項2又は3記載のパラジウムの除去方法。
【請求項5】
細孔径0.6〜2nmのゼオライトがY型ゼオライトである請求項1〜4のいずれか記載のパラジウムの除去方法。
【請求項6】
リン系配位子を有するパラジウム錯体を触媒として用いた有機合成反応の反応生成物および前記パラジウム錯体が溶解した溶液を、細孔径0.6〜2nmのゼオライトで処理することを特徴とする反応生成物に対するパラジウム量が15ppb以下である反応生成物含有溶液の製造方法。
【請求項7】
リン系配位子が、ホスフィン系配位子である請求項6記載の反応生成物含有溶液の製造方法。
【請求項8】
有機合成反応が、炭素−炭素結合生成反応または炭素−窒素結合生成反応である請求項6又は7記載の反応生成物含有溶液の製造方法。
【請求項9】
細孔径0.6〜2nmのゼオライトがY型ゼオライトである請求項6〜8のいずれか記載の反応生成物含有溶液の製造方法。
【請求項10】
リン系配位子を有するパラジウム錯体を触媒として用いた有機合成反応の反応生成物および前記パラジウム錯体が溶解した溶液を、細孔径0.6〜2nmのゼオライトで処理してなる反応生成物に対するパラジウム量が15ppb以下である反応生成物含有溶液。
【請求項11】
リン系配位子が、ホスフィン系配位子である請求項10記載の反応生成物含有溶液。
【請求項12】
有機合成反応が、炭素−炭素結合生成反応または炭素−窒素結合生成反応である請求項10又は11記載の反応生成物含有溶液。
【請求項13】
細孔径0.6〜2nmのゼオライトがY型ゼオライトである請求項10〜12のいずれか記載の反応生成物含有溶液。

【公開番号】特開2010−58114(P2010−58114A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−243350(P2009−243350)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【分割の表示】特願2004−142066(P2004−142066)の分割
【原出願日】平成16年5月12日(2004.5.12)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】