説明

パラレル型ハイブリッド電気自動車の電力管理システム、適応電力管理方法及びそのためのプログラム

【課題】ハイブリッド電気自動車のトルク制御のためのシステム、コンピュータ読み取り可能記憶装置及び方法を提供する。
【解決手段】上記方法は、エネルギ貯蔵装置の充電状態を決定し、基準状態を取得し、決定された充電状態と基準充電状態との差から誤差を取得し、及び、誤差に基づいてモータとエンジンの間でトルクを分配する工程を含む。モータはエネルギ貯蔵装置に電気的に接続され、エネルギ貯蔵装置から電力供給される。誤差に基づき、充電状態(state of charge: SOC)補正係数を決定する。SOC補正係数は、所定のトルク指令用に決定されるエンジン対モータのトルク比を調整するために使われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、ビーエーイー・システムズ・コントロールズ・インコーポレーテッド(BAE Systems Controls Inc.)に譲渡された「ハイブリッド電気自動車の制御方法及び装置(Method and Apparatus for Controlling Hybrid Electric Vehicles)」と題する同時係属出願に関連し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ハイブリッド電気自動車に関する。特に、本発明は、ハイブリッド電気自動車のエネルギ貯蔵装置から放出される電力を管理するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
パラレル型ハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle:HEV)では、2本の並列電力経路を使用し、車両を動かすために必要なトルクを供給する。並列電力経路のうちの1本は、エネルギ貯蔵装置(energy storage device: ESD)から電力を受け取る電気モータを含む。第2の経路では、一般的に内燃エンジンを使用する。ESDから供給されるエネルギの規制は、HEVの実行可能性及び燃料節約を最大限にするために不可欠である。通常、EDSの充電状態(state of charge: SOC)は、SOCの上限値及び下限値で制限される使用状況ウィンドウを設けて制御される。このウィンドウ内で動作する間、ESDのエネルギ使用は規制されない。SOCがSOC下限値未満になれば、制御装置はエンジンにESDの再充電をさせる。しかし、この管理方法はESDの寿命を短くし、車両の燃費性能を低下させる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本明細書では、非規制制御に対してESDの寿命を延ばし、予め回収した車両推進力のエネルギを使用することにより燃料を節約する、ESDのSOCを管理するシステム及び方法が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、ハイブリッド電気自動車(HEV)のトルク制御方法が開示される。上記方法は、エネルギ貯蔵装置の充電状態を決定し、基準充電状態を取得し、決定された充電状態と基準充電状態との差から誤差を取得し、及び、誤差に基づいてモータとエンジンの間でトルクを分配する工程を含む。モータはエネルギ貯蔵装置に電気的に接続され、エネルギ貯蔵装置から電力供給される。
【0006】
上記方法は、ハイブリッド電気自動車の少なくとも1つの動作パラメータを監視し、監視された少なくとも1つの動作パラメータに基づいて基準充電状態を調整する工程を更に含む。
【0007】
上記方法は、誤差に基づいて充電状態補正係数を取得する工程を更に含む。充電状態補正係数は、メモリ内に保存される。保存された充電状態補正係数は、市街走行サイクルや高速道路走行サイクル等を含むがこれに限定されない運転サイクルの種類と関連付けることができる。
【0008】
上記方法は、ハイブリッド電気自動車の少なくとも1つの動作パラメータを監視し、監視された少なくとも1つの動作パラメータに基づき取得した充電状態補正係数を調整する工程を更に含む。
【0009】
上記方法は、新たな種類の運転サイクルを備えたリセット条件を表わすリセット要求を受信し、新たな種類の運転サイクルに関連付けられた充電状態補正係数を読み出し、充電状態補正係数を読み出した充電状態補正係数に設定し、設定した充電状態補正係数に基づいてモータのトルク寄与を調整する工程を更に含む。
【0010】
上記方法は、トルク指令又はトルク指令の変化を受信する工程を更に含む。
【0011】
モータ及びエンジンのトルクは、受信したトルク指令に基づいてモータからの電力とエンジンからの電力の比率を決定し、充電状態補正係数に基づいて前記比率を調整することで制御される。
【0012】
エネルギ貯蔵装置は、回生制動を利用して充電される。これにより、エネルギ貯蔵装置の充電状態を増加させる。モータは、エネルギ貯蔵装置を内燃エンジンからの電力で充電することなく、回生制動からの充電エネルギのみを使う。
【0013】
モータ及びエンジンのトルクは、受信したトルク指令に基づいてモータからとエンジンからのトルク寄与を決定し、充電状態補正係数に基づいてモータのトルク寄与を調整することで制御することができる。
【0014】
本明細書では、エネルギ貯蔵装置、モータ及び内燃エンジンを有するハイブリッド電気自動車の全トルク制御方法も開示される。モータはエネルギ貯蔵装置に電気的に接続され、エネルギ貯蔵装置から電力供給される。全トルクは、モータ及び内燃エンジンにより発生したトルクの関数である。上記方法は、モータが発電機として作動した際に発生する回生制動からのエネルギのみを用いてエネルギ貯蔵装置を充電し、トルク指令を受信し、及び、トルク指令を受信した場合に回復制動からの充電エネルギを用いてモータに電力供給することによりモータが発生するトルクを制御する工程を含む。
【0015】
本明細書では、コンピュータにハイブリッド電気自動車のトルク制御方法を実行させるためのコンピュータ読み取り可能プログラムを保存するコンピュータ読み取り可能記憶装置も開示される。上記方法は、エネルギ貯蔵装置の充電状態を決定し、基準充電状態を取得し、決定された充電状態と基準充電状態との差から誤差を取得し、及び、誤差に基づいてモータとエンジンの間でトルクを分配する工程を含む。
【0016】
本明細書では、内燃エンジンと、エネルギ貯蔵装置と、エネルギ貯蔵装置に接続されたモータ制御装置と、モータ制御装置に接続されたモータ/発電機(モータ及び/又は発電機)と、エネルギ貯蔵装置の決定された充電状態と基準充電状態との差に基づいてモータ/発電機とエンジンの間でトルクを分配するシステム制御装置を備えたトルク制御システムも開示される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の上記及び他の特徴、利益及び利点は、全ての図面を通して参照符号が構造に対応する以下の図面を参照することにより明らかになるであろう。
【0018】
【図1】図1は、本発明による典型的なパラレル型ハイブリッド電気自動車管理システムを示す。
【図2】図2は、本発明による電気モータへの電力供給管理のフローチャートを示す。
【図3】図3は、本発明による電気モータへの電力供給管理のフローチャートを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明によるパラレル型ハイブリッド電気自動車管理システム(パラレル型ハイブリッド車又はHEV)1の例を示す。パラレル型ハイブリッド車1は、内燃エンジン130(以下「エンジン」という)を含む第1の経路と電気モータ105を含む第2の経路の2本の並列電力経路を備えている。エンジン130は、ガソリン、ディーゼル、バイオディーゼル、圧縮天然ガス(CNG)又は他の従来型燃料を用いて1つ以上の燃焼室で燃焼を開始及び持続させる従来型のものである。エンジン130のメカニズムは本分野で周知であることから、簡潔化のために、本開示ではエンジン130の動作の詳細な説明は行わない。
【0020】
エンジン130は、トランスミッション・システム135と機械的に接続される。トランスミッション・システム135は、車軸/車輪140に適用される、速度、トルク及び加速要求に応じて、少なくとも1つのギア比から、運転手制御又は車両コンピュータ制御によるギア比選択を行う。
【0021】
電気モータ/発電機(すなわち、電気モータ及び/又は発電機)105は、リチウムイオン電池等のエネルギ貯蔵装置(ESD)100から、又は、必要な電力を電気モータ/発電機105に供給することができる他のエネルギ貯蔵技術により電気エネルギを受け取る。モータ制御装置115は、電気モータ/発電機105の動作を制御するために設けられる。モータ制御装置115は、ESD100からの直流電力をモータ/発電機105用の交流電力に変換するインバータを含む。モータ制御装置115は、モータ/発電機105の制御を実行するためのプログラムがプログラムされている。システム制御装置110はHEV1を制御する。システム制御装置110は、各並列経路間で分担又は分配されるトルク、即ち、エンジン130及びモータ/発電機105から供給されるトルクの量を決定する。また、システム制御装置110は、ESD100のSOCの傾向に基づき、トルク分担のフィードバック制御を行う。モータ制御装置115は、システム制御装置110からトルク指令を受信し、モータ/発電機105を特定のトルクに制御する。
【0022】
システム制御装置110は、運転手のトルク指令に応答して使用され、モータ/発電機105及びエンジン130からのトルクを併用するトルク分担方法がプログラムされている。トルク分担方法により決定されたモータ/発電機105のトルクは、フィードバック補正係数(エンジンのトルクも効果的に調整する)を用いてシステム制御装置110により調整される。フィードバック補正係数を使用することにより、ESD100のSOCが所定の基準範囲内で瞬間的に変化しても、運転サイクルの間はこの基準範囲内に留まることができる。
【0023】
システム制御装置110には、フィードバック補正係数を用いて、モータ/発電機105及びエンジン130双方への基本的トルク分担(トルク分担方法により決定したもの)を調整する。例えば、フィードバック補正係数が、モータ/発電機105はより多くのエネルギを使うべきであると示す場合、モータ/発電機105に対して決定されるトルクは増加し、及び/又は、モータトルク指令頻度が多くなる。一方、フィードバック補正係数が、モータ/発電機105はエネルギを節約すべきであると示す場合、モータ/発電機105に対して決定されるトルクは減少し、及び/又は、モータトルク指令頻度が少なくなる。すなわち、モータ/発電機105により供給される瞬時電力及びその継続期間が調整される。
【0024】
エンジン130は、トルク指令に対応してエンジンのトルクを制御する別個のエンジン制御装置(図示せず)を有することができる。ESD100は、モータ/発電機105の駆動に適した電圧出力をモータ制御装置115を介して供給するように構成される。電池からの電圧出力は、数百ボルトとすることができ、例えば、325ボルトDCである。
【0025】
システム制御装置110は、アクセルペダルやブレーキ125からのブレーキ指令等のユーザー・インターフェース120を介して運転手から受信したトルク指令に応答する。
【0026】
また、減速時において、モータ制御装置115は、モータ/発電機105からの負トルクを指示する。減速状態においては、この構成により、回生制動エネルギを回収してESD100を再充電するために、モータ/発電機105を発電装置として作動させることができる。ESD100は、回生制動から回収したエネルギのみを用いて充電され、エンジン130からの電力はESD100の充電には用いられない。
【0027】
システム制御装置110は、ESD100の充電状態(SOC)を継続的に監視し、フィードバック補正係数を出力して、HEV1の正味エネルギ流(SOC)の傾向に基づいてモータ/発電機105及びエンジン130のトルクを調整する。システム制御装置110は、処理部とメモリ(揮発性及び不揮発性メモリ)を含む。システム制御装置のメモリは、基準SOCの値を決定するプログラムを格納する。基準SOCの既定値もまたメモリに保存される。基準SOCの値は一定、即ち、上下の許容範囲、即ち動作領域を有する特定の基準点又は基準範囲内とすることができる。指定された一定の基準SOCは、以下に限定はしないが、車両の種類、車両重量又はESD100の種類等を含む様々な要因に基づき変化しうる。また、基準SOCは、車両全体又は車両のサブシステムの基準プラントモデルを用いて計算することができる。基準プラントモデルは公知であり、本明細書では詳細に説明しない。
【0028】
システム制御装置110は、現在のSOCと基準SOC範囲との差に基づいて決定した誤差を用いてフィードバック補正係数を決定する。フィードバック補正係数は、パラレル型ハイブリッド車1が、ESD100からのエネルギを節約するのか又は更に使用するのかを表わす。フィードバック補正係数により、実際のSOCが全体の基準SOC範囲内で短時間変化しても、モータトルクを調整することが可能となるので、長時間にわたる同一の運転サイクルでは正味SOCの増減が無い。フィードバック補正係数は経時的に変化するが、その変化は減少し、最終的には安定する。
【0029】
フィードバック補正係数は、システム制御装置のメモリに継続的に又はシャットダウン期間中保存される。始動又はリセット時に、システム制御装置110は、フィードバック補正係数を保存されたフィードバック補正係数のうちの1つに初期化することができる。
【0030】
図2及び図3は、本発明によってESD100のSOCを管理し、モータ及びエンジンのトルクを制御する方法を示す。
【0031】
ステップ200では、SOCが計算される。計算は、電圧や電流等のバッテリー・パラメータに基づいて行われる。計算されたSOCは、全容量に対するパーセントとして表わされる。モータ/発電機105の動作モードに応じたESD100の充放電によってSOCが絶えず変化しているため、この計算は継続的に行われる。
【0032】
ステップ205では、計算により又はメモリからの読み出しにより基準SOCが決定される。上述のように、基準SOCは基準範囲とすることができる。ステップ207では、システム制御装置110が、計算したSOC(ステップ200)と基準SOC(ステップ205)との差から誤差を決定する。ステップ210では、システム制御装置110が、ステップ207で決定した誤差を用いてフィードバック補正係数を決定する。フィードバック補正係数の決定は、図3を参照して後に詳述する。フィードバック補正係数は、モータ/発電機105とエンジン130の間のトルク分配を調整するため、システム制御装置110により使用される。
【0033】
ステップ215では、システム制御装置110が、ユーザー・インターフェース120を介して駆動トルク要求又は指令の変化を受信したかどうかを決定する。駆動トルク指令の変化を受信しなかった場合、要求を満たすために必要な全トルクは同じままである。したがって、モータ/発電機105とエンジン130のトルク分担は、ステップ225でフィードバック補正係数に基づいて決定されるのみである。フィードバック補正係数が電気エネルギに正味剰余がある(SOCが上限にある、又は基準SOCを超える)ことを示す場合、システム制御装置110は、モータ制御装置115へのトルク指令を増加する。つまり、システム制御装置110は、エンジン出力に対するモータ出力のトルク分担比を増加させる、又は、モータトルクの継続期間を長くする。
【0034】
フィードバック補正係数が電気エネルギに正味損失がある(SOCが下限にある、又は基準SOC未満である)ことを示す場合、システム制御装置110は、モータ制御装置115へのトルク指令を減少させる。つまり、システム制御装置110は、エンジン出力に対するモータ出力のトルク分担比を減少させる、又は、モータトルクの継続期間を短くする。フィードバック補正係数を効果的に用いてモータ/発電機105の電力・トルク及び/又はトルクの継続期間を調整することで、モータ/発電機105は、回生制動を介して予め回収されたエネルギのみを使用して、充電を持続させるトルク分担方法を行う。
【0035】
ユーザー・インターフェース120を介して新たなトルク指令を受信した場合、システム制御装置110は、新たなトルク指令を満たすのに必要なトルク比、即ち全トルクの変化を決定する。
【0036】
モータ出力・トルク及び/又はモータトルクの継続期間は、フィードバック補正係数及び新たなトルク指令の双方に基づき、ステップ220で調整される。決定したトルク比は基本的比率である。この基本的比率は、フィードバック補正係数を用いて調整される。フィードバック補正係数が電気エネルギに剰余がある(回生エネルギを介した電池の充電がモータ/発電機105に電力供給するための電池の放電よりも多い結果、SOCが上限にある、又は基準SOC範囲を超える)ことを示す場合、システム制御装置110は、モータ制御装置115へのトルク指令を増加し、既に使用された分より多い電力をモータ/発電機105に供給する、即ち、基本的モータトルクを増加させ、エンジン出力を減少させる。
【0037】
フィードバック補正係数が現在のSOCに正味損失がある(モータ/発電機105に電力供給するための電池の放電が回生エネルギを介した電池の充電よりも多い結果、SOCが下限にある、又は基準SOC範囲未満である)ことを示す場合、システム制御装置110は、モータ制御装置115へのトルク指令を減少させ、既に使用された分より少ない電力をモータ/発電機105に供給する、即ち、基本的モータトルクを減少させ、エンジン出力を増加させる。このようにして、車両の最大燃料効率とESD100の寿命延長が達成できる。
【0038】
本明細書に記載したように、システム制御装置110は、トルク比及びモータ/発電機105とエンジン103双方のトルクを制御するために使用されるが、別個のエンジン制御装置をエンジン103の制御に用いることもできる。
【0039】
図3は、フィードバック補正係数を決定するためのフローチャートを示す。ステップ300では、システム制御装置110は、車両が始動(turned on)されたばかりかどうか、即ち、運転サイクルのタイミングを決定する。上述したように、システム制御装置110は、予め決定したフィードバック補正係数をメモリに保存する。車両が再始動される際に、システム制御装置110は、ステップ305で、フィードバック補正係数を車両が停止(turned off)される前のいかなる値に初期化することもできる。保存されたフィードバック補正係数は、メモリから読み出され、新たなフィードバック補正係数として設定される。これは、毎日同じタイプの運転サイクルで走行する車両に特に有用である。車両が始動されたばかりではない場合、システム制御装置110は、ステップ310で、初期リセット条件があるかどうかを決定する。初期リセット条件は、内部リセットでも外部リセットでもよい。リセット条件がある場合、既定値のフィードバック補正係数がメモリから読み出され(ステップ350)、新たなフィードバック補正係数として用いられる。既定値のフィードバック補正係数は、速度、推定電池寿命、運転サイクル状態及び/又は運転手からの入力等の現在の車両パラメータを基礎にすることができる。例えば、運転手は、保存されたフィードバック補正係数のうちの1つを用いる、ユーザー・インターフェース120を介してHEV1を制御することができる。具体的には、運転手は、リセットを信号によってシステム制御装置110に発し、運転サイクルの種類に基づく特定のフィードバック補正係数を選択してもよい。換言すれば、運転手は、運転サイクルが、例えば市街走行から高速道路走行に変わったこと、及びフィードバック補正係数が、現在の運転サイクルの種類のための保存されたフィードバック補正係数にリセットされるべきであることを、システム制御装置110に知らせることができる。保存された各フィードバック補正係数は、識別子とともに保存することができる。識別子は、運転サイクルの種類と関連付けることができる。したがって、運転手がユーザー・インターフェース120を介して運転サイクルの識別コードと共にリセットを入力した場合、システム制御装置110は、関連付けられたフィードバック補正係数を読み出すことができる。このように、市街サイクル用に保存されたフィードバック補正係数と高速道路サイクル用の別のフィードバック補正係数を存在させることができる。例えば、運転手が運転サイクルを高速道路サイクルに切り替えたことを示す場合、システム制御装置110は、HEV1を高速道路で走行させながらフィードバック補正係数をメモリ内に予め保存された値に初期化することができる。
【0040】
あるいは、システム制御装置110内に、決定した運転サイクルと他のリセット基準が存在してもよい。
【0041】
システム制御装置110は、フィードバック補正係数の安定性を監視する。一旦フィードバック補正係数が安定すると、システム制御装置110は、特定の運転サイクル用のフィードバック補正係数を後で使用する運転サイクルの既定値のフィードバック補正係数としてメモリに保存する。
【0042】
車両の始動も初期リセット条件も存在しない場合(ステップ300及び310の両方でNである場合)、システム制御装置110は、ステップ320で、メモリから可変制御ループ利得を読み出す。可変制御ループ利得は、車両の種類、重量、電池の種類等に応じてカスタマイズすることができる。また、可変制御ループ利得は、推定電池寿命等を含むがこれに限定されない実時間パラメータに基づいて調整することができる。ステップ325で、システム制御装置110は、継続的に監視される現在の実時間パラメータに基づいて、可変制御ループ利得を調整する必要があるかどうかを決定する。可変制御ループ利得に調整が必要な場合は、ステップ335で調整される。ステップ330では、可変制御ループ利得と誤差を用いてフィードバック補正係数が計算される。ステップ340では、調整された可変制御ループ利得と誤差を用いて、調整されたフィードバック補正係数が計算される。ステップ345では、計算されたフィードバック補正係数がメモリに保存される。
【0043】
当業者により理解されるように、本発明は、システム、方法及びコンピュータプログラム製品として具体化することができる。よって、本発明は、全体的にハードウェアの実施形態、全体的にソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード等を含む)、又はソフトウェアおよびハードウェアの態様を組み合わせた実施形態という形態を取ることができ、これらは全て、本明細書においては一般的に「システム」と称することができる。
【0044】
本発明の種々の態様は、コンピュータ又は機械使用可能又は読み取り可能媒体で実施されるプログラム、ソフトウェア又はコンピュータ命令として具体化することができ、コンピュータ、プロセッサ及び/又は機械で実行した場合にコンピュータ又は機械に本明細書に開示する方法のステップを行わせる。本開示に記載された様々な機能性と方法を実行するため、機械によって実行可能な命令のプログラムを具体的に組み入れた、機械読み取り可能のプログラム記憶装置もまた提供する。
【0045】
本発明のシステムと方法は、汎用コンピュータまたは専用コンピュータシステムにて実装又は実行することができる。コンピュータシステムは、いすれの公知の種類又は公知のシステムであってもよい。
【0046】
上記の説明では具体例を示しており、本発明がこれら特定の実施例に限定されないことに留意されたい。よって、当業者は、添付の請求項に規定する発明の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の変更及び改良を行うことができる。
【符号の説明】
【0047】
1・・・パラレル型ハイブリッド電気自動車管理システム、100・・・エネルギ貯蔵装置、105・・・電気モータ、110・・・システム制御装置、115・・・モータ制御装置、120・・・ユーザー・インターフェース、125・・・ブレーキ、130・・・内燃エンジン、135・・・トランスミッション・システム、140・・・車軸/車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギ貯蔵装置の充電状態を決定し、
基準充電状態を取得し、
前記決定された充電状態と前記基準充電状態との差から誤差を取得し、及び、
前記誤差に基づいて、前記エネルギ貯蔵装置に電気的に接続され前記エネルギ貯蔵装置から電力供給されるモータとエンジンの間でトルクを分配する工程を含むことを特徴とするハイブリッド電気自動車のトルク制御方法。
【請求項2】
前記基準充電状態は一定である請求項1記載のハイブリッド電気自動車のトルク制御方法。
【請求項3】
前記基準充電状態は、基準プラントモデルを用いて計算される請求項1記載のハイブリッド電気自動車のトルク制御方法。
【請求項4】
前記誤差に基づいて充電状態補正係数を取得する工程を更に含む請求項1記載のハイブリッド電気自動車のトルク制御方法。
【請求項5】
トルク指令を受信する工程を更に含み、
前記モータと前記エンジンの間での前記分配は、
前記受信したトルク指令に基づいて前記モータからの電力と前記エンジンからの電力の比率を決定し、及び、
前記充電状態補正係数に基づいて前記比率を調整することを含む請求項4記載のハイブリッド電気自動車のトルク制御方法。
【請求項6】
回生制動のみを使用して前記エネルギ貯蔵装置を充電する工程を更に含み、前記充電により前記エネルギ貯蔵装置の充電状態を増加させる請求項1記載のハイブリッド電気自動車のトルク制御方法。
【請求項7】
前記モータは、前記エネルギ貯蔵装置を前記エンジンからの電力で充電することなく、回生制動による前記充電エネルギのみを使用する請求項1記載のハイブリッド電気自動車のトルク制御方法。
【請求項8】
トルク指令を受信する工程を更に含み、
前記モータとエンジンの間での前記トルクの分配は、
前記受信したトルク指令に基づいて前記モータからと前記エンジンからのトルク寄与を決定し、
前記充電状態補正係数に基づき前記モータのトルク寄与を調整することを含む請求項4記載のハイブリッド電気自動車のトルク制御方法。
【請求項9】
前記充電状態補正係数を保存する工程を更に含む請求項4記載のハイブリッド電気自動車のトルク制御方法。
【請求項10】
前記保存された充電状態補正係数は、運転サイクルの種類と関連付けられる請求項9記載のハイブリッド電気自動車のトルク制御方法。
【請求項11】
新たな種類の運転サイクルを含み、リセット条件を示すリセット要求を受信し、
前記新たな種類の運転サイクルに関連付けられた充電状態補正係数を読み出し、
前記充電状態補正係数を前記読み出した充電状態補正係数に設定し、及び、
前記設定した充電状態補正係数に基づいてモータのトルク寄与を調整する工程を更に含む請求項10記載のハイブリッド電気自動車のトルク制御方法。
【請求項12】
前記ハイブリッド電気自動車の少なくとも1つの動作パラメータを監視し、及び、
前記監視された少なくとも1つの動作パラメータに基づいて前記基準充電状態を調整する工程を更に含む請求項1記載のハイブリッド電気自動車のトルク制御方法。
【請求項13】
前記ハイブリッド電気自動車の少なくとも1つの動作パラメータを監視し、及び、
前記監視された少なくとも1つの動作パラメータに基づき、前記取得した充電状態補正係数を調整する工程を更に含む請求項5記載のハイブリッド電気自動車のトルク制御方法。
【請求項14】
エネルギ貯蔵装置、モータ及び内燃エンジンを有するハイブリッド電気自動車の全トルク制御方法であって、前記モータは前記エネルギ貯蔵装置に電気的に接続され前記エネルギ貯蔵装置により駆動され、前記全トルクは前記モータ及び前記内燃エンジンが発生するトルクの関数であって、
前記モータが発電機として作動する際に発生する回生制動からのエネルギのみを用いて前記エネルギ貯蔵装置を充電し、
トルク指令を受信し、及び
前記トルク指令を受信した場合に前記回生制動からの充電エネルギを用いて前記モータに電力供給することにより、前記モータが発生する前記トルクを制御する工程を含む方法。
【請求項15】
前記エネルギ貯蔵装置の充電状態を決定し、
基準充電状態を取得し、
前記決定された充電状態と前記基準充電状態との差から誤差を取得し、及び、
前記誤差に基づいて前記モータが発生した前記トルクを調整する工程を更に含む請求項14記載のハイブリッド電気自動車の全トルク制御方法。
【請求項16】
コンピュータにハイブリッド電気自動車のトルク制御方法を実行させるためのコンピュータ読み取り可能プログラムを保存するコンピュータ読み取り可能記憶装置であって、
前記方法は、
エネルギ貯蔵装置の充電状態を決定し、
基準充電状態を取得し、
前記決定された充電状態と前記基準充電状態との差から誤差を取得し、及び、
前記誤差に基づいて、前記エネルギ貯蔵装置に電気的に接続され前記エネルギ貯蔵装置から電力供給されるモータとエンジンの間でトルクを分配する工程を含むことを特徴とする装置。
【請求項17】
内燃エンジンと、
エネルギ貯蔵装置と、
前記エネルギ貯蔵装置に接続されたモータ制御装置と、
前記モータ制御装置に接続されたモータ及び/又は発電機、及び
前記エネルギ貯蔵装置の決定された充電状態と基準充電状態との差に基づいて、前記モータ及び/又は発電機と前記エンジンの間でトルクを分配するシステム制御装置を備え、
前記モータ制御装置は前記エネルギ貯蔵装置からの電力を用いて前記モータ及び/又は発電機を制御することを特徴とするトルク制御システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−35545(P2013−35545A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−175294(P2012−175294)
【出願日】平成24年8月7日(2012.8.7)
【出願人】(500558894)ビーエーイー・システムズ・コントロールズ・インコーポレーテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】BAE SYSTEMS Controls, Inc.
【Fターム(参考)】