パルスドRFネットワーク測定を行うためのトリガ型狭帯域方法
【課題】パルスドRFネットワーク測定を行うためのトリガ型狭帯域方法を提供する。
【解決手段】被試験デバイス(DUT)110を測定する方法は、パルスドRF入力信号124をDUTに印加するステップと、DUTの出力113からのRFパルス応答スペクトル内の中央トーンを測定するべく選択されている出力帯域幅を具備したレシーバ104に、このDUTの出力を接続するステップと、を含む。このレシーバは、ウィンドウ期間625内において、DUTからデータ出力をサンプリングするべくトリガされ、ウィンドウ期間後に、データの取得を停止する。
【解決手段】被試験デバイス(DUT)110を測定する方法は、パルスドRF入力信号124をDUTに印加するステップと、DUTの出力113からのRFパルス応答スペクトル内の中央トーンを測定するべく選択されている出力帯域幅を具備したレシーバ104に、このDUTの出力を接続するステップと、を含む。このレシーバは、ウィンドウ期間625内において、DUTからデータ出力をサンプリングするべくトリガされ、ウィンドウ期間後に、データの取得を停止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、パルスドRFネットワーク測定に関し、特に、パルスドRFネットワーク測定を行うためのトリガ型狭帯域法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのマイクロ波電子システムは、パルスドRF(pulsed-RF)モードで動作している。レーダーシステムや時分割多重アクセス(TDMA)無線通信システムが、パルスドRFモードで稼働するシステムの例である。レーダーシステムは、通常、数ギガヘルツ(GHz)〜数十GHzの範囲の信号によって動作し、アンテナ、増幅器、送受信モジュール、及び周波数変換器(「ミキサ」)などのデバイスを使用する。TDMA無線通信システムの場合には、通常、約6GHz未満で動作し、レーダーシステムに使用されているものに類似した電子デバイスを使用している。しかしながら、大部分の電子デバイスは、連続波(CW)の条件において試験されている。即ち、試験対象のこれらの電子デバイス(通常、これを被試験デバイス(即ち、「DUT」)と呼ぶ)をCW信号によって刺激し、この信号の応答を信号アナライザやネットワークアナライザなどのレシーバによって測定している。
いくつかの電子デバイスの動作は、CW信号ではなく、パルスドRF信号によって刺激された場合には、異なったものになる。RFパルスのバイアスの変化が、デバイスの高周波(RF)性能に影響を及ぼす場合がある。パルスド信号を使用すると、CW信号によってデバイスを試験する際には発生しないオーバーシュート、リンギング、又はドループ(通常は自己加熱に起因するRFパルスの後半部分における利得の低下)が結果的に生じる。その他の例においては、CW信号がDUTを破壊することもある。例えば、CWウエハ試験(即ち、DUTが製造されたウエハからまだ分離されていないDUTに関する試験)の実行により、十分なヒートシンクが施されていないDUTが壊れてしまう場合がある。又、レーダーシステム内で使用される高パワー増幅器などのように、DUTがCWモードで動作するべく設計されていない場合もあろう。パルスドRF測定法を使用したDUT試験に関する更なる情報は、David Ballo著、「Pulsed−RF S−Parameter Measurements Using a VNA」、AGILENT TECHNOLOGIEDS, INC.、2004年10月13日、に記述されており、この開示内容は、本引用により、そのすべてが、あらゆる目的のために本明細書に包含される。
【0003】
DUTのパルスドRF試験には、従来、2つの技法が存在している。第1の技法は、一般に、「広帯域」同期パルスド測定法と呼ばれている。相対的に広い出力帯域幅(具体的には、レシーバがRFパルスエネルギーのすべて(又は、実質的にすべて)を取得するのに十分な出力帯域幅)を有するレシーバが使用される。立ち上がり時間などの対象とするRFパルスの特性を測定するには、RFパルスの立ち上がり時間が、1/BWよりも長くなければならない。この技法を使用して測定可能な最小RFパルス持続時間は、使用するレシーバの最大帯域幅によって制限されている。
【0004】
広帯域パルスドRF測定は、同期型である。即ち、レシーバが、到来するRFパルスと同期しており、RFパルスエネルギーを取得(即ち、測定)するタイミングに関する知識を有している。これには、トリガ信号が必要であり、このトリガ信号は、周期的なRFパルスの場合には、レシーバ(例:カリフォルニア州パロアルトに所在するAGILENT TECHNOLOGIES, INC.社が製造するMODEL 8510(商標)ネットワークアナライザ)によって内部的に生成可能であり、或いは、このトリガ信号は、パルス発生器などの外部ソースからレシーバに対して提供される。ダイナミックレンジがデューティサイクルとは無関係であるため、この広帯域パルスドRF測定は望ましいが、ダイナミックレンジは、広いIF帯域幅によって制限されている。
【0005】
測定可能なRFパルス幅に下限が存在する。RFパルス幅が短くなるに伴って、周波数領域におけるRFパルスのスペクトルエネルギーが拡散する。そして、持続時間が短いRFパルスの場合には、スペクトル成分がIF帯域幅の外に位置することになる。大量のエネルギーがレシーバの帯域幅の外に位置する場合には、レシーバは、DUTのRFパルス応答を正確に表現し測定することができない。
【0006】
2番目のパルスドRF法は、一般に、狭帯域非同期パルスドRF測定法(「狭帯域RFパルス検出」)と呼ばれている。この狭帯域RFパルス検出は、広帯域検出が使用できないほどにRFパルススペクトルがレシーバの帯域幅の外に位置している場合に使用される。この技法においては、パルスドRFスペクトルの中央周波数成分(「中央トーン」)を除いた残りのすべてをレシーバがフィルタリングによって除去している。(RFパルスのスペクトルと比較して)相対的に狭いIFフィルタを使用し、任意の狭いRFパルスを測定可能である。この狭いIFフィルタによってRFパルススペクトルの中央トーンを測定する(この中央トーンは、RF搬送波の周波数を表している)。フィルタリングの後の狭帯域RFパルスの検出は、CW測定に類似しており、これは、レシーバが問題なく処理可能である。
【0007】
この狭帯域RFパルス検出の場合には、アナライザのサンプル周期が、到来するRF信号と同期してはおらず、従って、パルストリガが不要である。このため、この技法は、しばしば、非同期取得モードとも呼ばれている。この狭帯域RFパルス検出を使用する利点は、RFパルススペクトルがどれほど広くても、その大部分がフィルタリングによって除去され、DUTのRFパルス応答スペクトルの中央トーンのみが残るため、RFパルス幅の下限が存在しないという点にある。
【0008】
しかしながら、測定のダイナミックレンジがデューティサイクルの関数になっている。RFパルスのデューティサイクルが低下するに伴って、中央トーン内のエネルギーも低下するが、雑音パワーは、一定に留まる。従って、RFパルスのデューティサイクルが低下する(即ち、RFパルスの間の時間が長くなる)に伴って、RFパルスの平均パワーが低下し、この結果、信号対雑音比が劣化することになる。この効果は、しばしば、「パルス感度抑圧(pulse desensitization)」と呼ばれている。この結果、狭帯域非同期RFパルス検出のダイナミックレンジが、20*log(デューティサイクル)だけ劣化する。尚、この狭帯域非同期RFパルス測定法は、高パルス反復周波数(PRF)法とも呼ばれることがあるが、この理由は、良好なダイナミックレンジを維持するために、通常、PRFがIF帯域幅よりも格段に大きいためである。
【0009】
【非特許文献1】David Ballo著、「Pulsed−RF S−Parameter Measurements Using a VNA」、AGILENT TECHNOLOGIEDS, INC.、2004年10月13日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、前述の欠点を回避するパルスドRFを使用したデバイスの測定法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
被試験デバイス(DUT)を測定する方法は、パルスドRF入力信号をDUTに印加するステップと、DUTの出力のRFパルス応答スペクトル内の中央トーンを測定するべく選択されている出力帯域幅を具備したレシーバに、このDUTの出力を接続するステップと、を含む。このレシーバは、ウィンドウ期間内において、DUTからデータ出力をサンプリングするべくトリガされ、ウィンドウ期間後に、データの取得を停止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の実施例に従って電子デバイスを測定する模範的な試験セット100を示している。この試験セット100は、第1のパルス発生器102、第2のパルス発生器103、並びに、スペクトラムアナライザ、ネットワークアナライザ、又は専用のレシーバなどのレシーバ104を含んでいる。特定の実施例においては、このレシーバは、カリフォルニア州パロアルトに所在するAGILENT TECHNOLOGIES, INC.社が販売するMODEL E8362B(商標)ネットワークアナライザであり、パルス発生器は、こちらもAGILENT TECHNOLOGIES, INC.社が販売しているMODEL 81110A(商標)である。スペクトラムアナライザは、振幅対周波数の測定が望ましい場合に、レシーバとして有用である。ネットワークアナライザは、振幅対周波数及び/又は位相対周波数の測定が望ましい場合に、レシーバとして有用である。スペクトラムアナライザは、DUTによって生成された信号、又は、掃引装置又はシンセサイザなどの信号源からDUTに提供され、DUTからレシーバに出力された信号を測定可能である。ネットワークアナライザは、刺激/応答測定を実行し、試験信号をDUTに提供する。この試験信号は、ネットワークアナライザに内蔵されている信号源から(又は、この代わりに、外部信号源から)提供される。試験ケーブル106、108が、レシーバ104の試験ポート107、109にDUT110を接続している。例えば、DUT110の伝送又は利得の測定が望ましい場合には、第1の試験ポート107は、パルス変調RF入力をDUTの入力111に提供する。従って、これは、信号源出力ポートと見なされる。DUTの出力113は、第2の試験ポート109に接続されており、これは、レシーバ入力ポートと見なされる。
【0013】
DUTは、多くの異なる方法で特徴付け可能である。例えば、2ポートDUTは、そのSパラメータ(S11、S12、及びS22)によって特徴付け可能である。S11を測定する場合には、第1の試験ポート107がパルスドRF入力信号を提供し、DUTの入力111からの反射信号を受信する。尚、このような表記法は、一般的に使用されており、高周波試験及び測定法の分野における知識を有するものには周知である。又、DUTは、1つのポート、又は、2つを上回る数のポートを具備することも可能である。
【0014】
第1のパルス発生器102とレシーバ104は、10MHzの基準信号112などの共通時間軸によって動作している。第1のパルス発生器102は、トリガ信号114を第2のパルス発生器103に提供する。任意選択の汎用インターフェイスバス(GPIB)116により、コントローラによる試験装置の協調動作が可能になっている(このコントローラは、試験装置の中のいずれかのものの内部に存在するか、又は外部コントローラ(図示されてはいない)である)。
【0015】
カリフォルニア州パロアルトに所在するAGILENT TECHNOLOGIES, INC.社が販売しているMODEL Z5623A(商標)のオプションH81などの高周波変調器118が、第1のパルス発生器102からのパルス出力信号122に従って、ネットワークアナライザ104からの信号源出力120をスイッチオン/オフしている。この結果、パルスド信号源出力(「パルスドRF信号」)124と、パルスドRF基準出力(方向性カプラ128からのもの)が提供される。この変調器118は、約1GHzから約20GHzの信号を変調可能である。「パルスドRF信号」又は「パルスド搬送波信号」とは、そのRF信号が、選択された期間にわたってオンであり、次いで、選択された期間にわたってオフであることを意味しており、換言すれば、そのRF信号がパルス列と畳み込まれている(convolved)ことを意味している。同軸ジャンパケーブル129は、試験レシーバの「A」ポートに対するアクセスをユーザーに対して提供するが、これは、この例においては不要である。レシーバのもう一方の側の類似した同軸ジャンパも、順方向のパルスドRF測定においては使用されないが、レシーバの信号経路にアクセスするその他の実施例においては使用される。第1のパルス発生器102からのトリガ信号122’がレシーバに接続されている。このトリガ信号122’をレシーバ104の内部遅延回路(図示されてはいない)と共に使用することにより、レシーバ104は、RFパルス情報が存在する際に、試験ポート107、109においてデータを測定(「サンプリング」)することができる。尚、このトリガ信号122’の物理的なコネクタは、レシーバ104の背面パネル(図示されてはいない)上に位置している。
【0016】
パルス発生器は、多くの場合に、個別に変更可能な遅延を具備する複数の出力を提供している。別の試験セットにおいては、パルス出力との組み合わせで、スプリッタと外部遅延線(例:長さの長いケーブルなどの調節可能な遅延線や固定遅延線)を使用している。同様に、その他の代替試験セットにおいては、更に多くの又は更に少ないパルス出力を提供しており、個々のパルス発生器は、図1に示されている模範的なパルス発生器よりも、多くの又は少ないパルス出力を具備可能である。
【0017】
パルス発生器からの出力チャネル130、132、134が、レシーバ内部のゲート(図示されてはいない)を駆動し(例:カリフォルニア州パロアルトに所在するAGILENT TECHNOLOGIES, INC.社が販売するMODEL E8362B(商標)ネットワークアナライザにおいて、一般に、Aゲート、Bゲート、R1ゲート、及びR2ゲートと呼ばれているもの)、ポイント・イン・パルス(point-in-pulse)及びパルス・プロファイル(pulse-profile)測定のために、これらのゲートにおけるデータ取得をDUTからのRFパルス出力と同期化している。尚、このポイント・イン・パルス及びパルス・プロファイル測定の更なる情報については、David Balloによる「Pulsed−RF S−Parameter Measurements Using a VNA」、AGILENT TECHNOLOGIES, INC.、2004年10月13日、特に10〜13頁)に記述されている。
【0018】
パルスドRF信号は、レシーバ内において復調される。この検出は、アナログ回路及び/又はデジタル信号処理(DSP)法を使用して実現される。広帯域パルスドRF測定においては、アナライザは、パルスドRF信号(「RFパルスストリーム」)と同期化されており、データ取得は、DUTのRFパルス応答がレシーバに存在している際に実行される。これは、PRFに同期したパルストリガが存在していることを意味している。MODEL8510(商標)ネットワークアナライザなどのいくつかのレシーバは、データ取得を同期化する組込型のパルス発生器を具備している。別のレシーバにおいては、この目的に外部パルス発生器を使用している。
【0019】
この試験セット100は、類似の非同期狭帯域パルスドRF測定と比べて、約10*log(デューティサイクル)だけダイナミックレンジが改善される、DUT110のトリガ型狭帯域パルスドRF測定を行うのに使用される。レシーバは、雑音を測定することなく、RFパルスの前に、信号データの取得を開始し、RFパルスの後に、信号データの取得を停止するようにトリガされる。実施例に従ってレシーバが信号データの取得を停止する方法の例には、アナログ入力信号の接地、レジスタからDSPへのデジタル・ヌルデータの供給、RFパルス後にヌルデータを処理するためのDSPのプログラミング、又はデータ収集の無効化(例:データ処理の停止)が含まれる。いくつかの実施例においては、これらの技法の組み合わせを使用している。
【0020】
いくつかの実施例においては、遷移を「漸減(tapering)」させることにより、測定信号データとヌル状態間の急激な遷移を回避することが望ましい。一般に、遷移の漸減には、いくつかのサンプルにわたって、RFパルス信号データ又は雑音信号データなどの信号データとヌル状態との間における穏やかな遷移が必要である。さもなければ、急激な遷移が発生し、この結果、雑音パワーの増大によって測定を劣化させるスペクトル成分が生成されることになる。アナログ信号経路内においては、この漸減は、アナログ・デジタル変換器(ADC)の前段の分路コンデンサ又は低域通過フィルタによって実現される。デジタルの場合には、漸減は、ウィンドウの境界において「1」と「0」の間で係数を遷移させる、デジタル信号出力と直列接続された乗算器を使用することによって実現される。或いは、この代わりに、ウィンドウの境界において「1」と「0」の間で遷移する係数を適用するようにDSPをプログラムする。このような技法は、有限インパルス応答法の分野における知識を有する者には周知であり、データをゼロ化又はヌル化するその他の技法についても明らかであろう(又は、明らかになろう)。
【0021】
従来の狭帯域及び広帯域法を使用して取得された測定値を参照し、本発明の実施例について説明する。試験セット100は、パルスドRF条件において標準的な較正法を使用して較正する。機械的標準及び/又は電子的較正モジュール(「ECal」)を使用可能である。一般に、パルス、トリガリング、及びウィンドウ化条件のそれぞれの組ごとに、別個の較正を実行する。
【0022】
図2A〜図2Fは、広帯域パルスドRF検出法を示している(図4の参照番号402も参照されたい)。尚、図2A〜図2F、図3A〜図3F、及び図5A〜図5Hは、マサチューセッツ州ナティックに所在するTHE MATHWORKS社が販売するMATLAB(登録商標)を使用して生成されたものである。図2Aは、時間領域におけるパルスドRF入力信号のプロットを示しており、図2Bは、周波数領域におけるパルスドRF入力信号の対応するスペクトルのプロットを示している。図2Aのy軸は、ボルトであるが、この単位は、モデル化の目的ごとに任意に選択される。図2Aのx軸は、任意の単位(「A.U.」)で表された所与のサンプリングレートにおいて取得されたサンプルの数として時間を表している。尚、このA.U.値は、比較を目的として提供されているものに過ぎない。又、図2Eの時間尺度は、詳細な情報を示すべく、拡張されていることに留意されたい。サンプル数は、モデル化の目的ごとに任意に選択される。図2Bのy軸は、パワー(単位:dBm)であり、x軸は、0ヘルツ〜サンプリングレートの約半分の範囲におけるIF周波数を表している。この単位は、任意であり、比較を目的として提供されているに過ぎない。
【0023】
図2Bに示されているRFパルススペクトルは、その大部分が、使用するレシーバの出力帯域幅内に収まっている。図2Cは、IF周波数応答によって成形されたIF時間応答のプロットを示しており、図2Dは、IF周波数応答(線形利得対IF周波数)のプロットを示している。図2Eは、拡張された時間尺度で、入力RFパルス列(図2Aを参照されたい)の一部の第1のプロット200と、IF周波数応答によって成形されたIF時間応答(図2Cを参照されたい)の一部の第2のプロット202を示している。この説明においては、2ボルトの電圧オフセットが第1のプロットに加算されている。基本的に、この図2Eは、入力RFパルスとIF時間応答の拡大した比較を提供している。図2Fは、IF周波数応答(図2Dを参照されたい)によって変更されたRFパルススペクトル(図2Bを参照されたい)のプロットを示している。従って、図2Fに示されているRFパルススペクトルのプロットは、基本的に、図2Cに示されているプロットを周波数領域に変換したものになっている。
【0024】
図2Fには、図2Bと比べて、RFパルスのスペクトルの中央から離れた地点において減衰したスペクトル成分を具備する限定された帯域幅が表れている。図2Cを図2Aと比べると、入力RFパルスストリームがIFフィルタによって成形された後には、制限されたIF周波数応答に起因し、雑音は少なくなっているが、リンギングが多くなっている。換言すれば、このRFパルスの応答は、IF周波数応答の影響を受けている。この広帯域RFパルス測定の精度は、較正法を使用することによって改善可能である。
【0025】
RFパルススペクトルの全体が1回の測定イベントにおいて取得されており、しばしば、これを、「ワンショット」測定と呼んでいる。この方法によれば、RFパルス情報に歪がほとんど混入しない。図2Eを参照すれば、IFデータから時間領域において構築されたRFパルスがオリジナルのRFパルスに忠実なものになっており、これは、広帯域RFパルス検出法の利点であることに留意されたい。
【0026】
図3A〜図3Fは、狭帯域RFパルス検出法を示している(図4の参照番号404、406も参照されたい)。IFフィルタ応答が、1つのスペクトルトーンのみを含むように狭められている。この結果、保存を要する情報が格段に少なくなり、且つ、デジタル化レートの制約が軽減される。通常、連続したRFパルスを測定し、これをフィルタリングすることにより、基本的にCW信号が生成される。
【0027】
図3Aは、時間領域におけるパルスドRF入力信号のプロットを示しており、図3Bは、周波数領域におけるパルスドRF入力信号の対応するスペクトルのプロットを示している。図3Cは、IF周波数応答によって成形されたIF時間応答のプロットを示しており、図3Dは、IF周波数応答のプロットを示している。図3Eは、拡張された時間スケールで、入力データ(図3Aを参照されたい)から時間領域において構築されたパルスドRF入力信号の一部の第1のプロット300と、IF周波数応答によって成形されたIF時間応答(図3Cを参照されたい)の一部の第2のプロット302を示している。この説明においては、2ボルトの電圧オフセットが第1のプロットに加算されている。基本的に、図3Eは、入力RFパルスとIF時間応答の拡大した比較を提供している。図3Fは、IF周波数応答(図3Dを参照されたい)によって変更されたRFパルススペクトル(図3Bを参照されたい)のプロットを示している。従って、図3Fに示されているRFパルススペクトルのプロットは、基本的に、図3Cに示されているプロットを周波数領域に変換したものになっている。
【0028】
IF帯域幅を使用して1つのスペクトルトーンのみを選択することにより、RFパルスのIFが、いくつかのタイプのレシーバにおいて一般的な動作モードであるCW又は純粋なトーンの測定のように見える。図3Aに示されている相対的に高いデューティサイクルの場合にも(この場合には、RFパルスは、時間の約20%だけ存在している)、図3C及び図3Eに示されているCWトーンの振幅が、オリジナルのRFパルス振幅と比べて格段に低いことに留意するのは有益である。この振幅は、デューティサイクルが低下するに伴って、更に低下するが、雑音パワーは一定に留まる。従って、RFパルス測定のダイナミックレンジは、デューティサイクルが低下するに伴って劣化することになる。
【0029】
図4は、周波数領域におけるRFパルススペクトル400を示している。第1のIFフィルタ応答402は、RFパルススペクトル400の大部分を含むように十分に広くなっている。広帯域パルスドRF法においては、このようなフィルタ応答を有するIFフィルタを具備するレシーバを使用することにより、単一イベントにおいてRFパルスの全体を取得している。第2のIFフィルタ応答404は、第1のIFフィルタ応答よりも狭くなっており、基本的に、RFパルススペクトル400の中央トーン406のみを通過させる。
【0030】
図5A〜図5Hは、本発明の一実施例によるトリガ型狭帯域パルスドRF測定法を示している。レシーバは、RFパルスがレシーバ試験ポートに到来する直前に信号データの取得を開始するべくトリガされ、RFパルスが十分に減衰するまで信号データの取得を継続した後に、信号データの取得を停止する。トリガジッタが、RFパルス内ではなく、信号の雑音部分内において発生するように、RFパルスが到来する以前に、レシーバをトリガすることが望ましい。RFパルス内のトリガジッタは、結果的に不正確な測定をもたらす可能性がある。レシーバは、RFパルス内において信号データをサンプリングし、そのサンプリングレート(これは、通常、レシーバによって決定される)に応じて、RFパルスが十分に広い場合には、単一のRFパルス内において、複数回にわたってRFパルスデータをサンプリング可能である。複数のパルスを取得することが望ましく、これは、IF帯域幅に応じて、レシーバを複数回にわたってトリガすることによって実行可能である。
【0031】
一実施例においては、レシーバは、トリガ信号の前縁によってトリガされ、レシーバに入力されたユーザーが選択した期間にわたって、特定のサンプリングレートでデータを取得する。例えば、RF変調器を駆動するパルス発生器を具備した試験セット内においては、RFパルスの長さ(即ち、RFパルスの持続時間)が判明しており、レシーバは、RFパルスが十分に減衰するまで(例:略RFパルスの持続時間だけ)、RFパルスデータを取得するようにプログラムされている。レシーバは、そのRFパルスの持続時間とサンプリングレートに応じて、RFパルスを1回のみサンプリングするか、又は、RFパルスを複数回にわたってサンプリングすることができる。RFパルスが減衰した後に、レシーバは、信号データの取得を停止するが、これは、例えば、ゼロデータの強制又はデータ測定の無効化によって実現される。尚、このゼロ化されたデータの強制とデータ測定の無効化については、図6、図7A、図7B、及び図7Cを参照し、後程、更に説明する。この信号データとゼロ化されたデータの間のスイッチングは、データ取得の期間内において、複数回にわたって実行可能である。パルスの間の雑音期間内においてデータを取得しないようにすることにより、トリガ型狭帯域パルスドRF測定のダイナミックレンジは、従来の非同期狭帯域パルスドRF測定と比べて、改善される。
【0032】
RFパルスがトリガ型狭帯域RFパルス検出に到来する以前にレシーバを起動しておく別の理由は、IF信号のアナログ・デジタル変換器(ADC)が、数マイクロ秒のトリガジッタを有する可能性があるためであり、RFパルス信号の一部が失われないように、レシーバを十分早期に起動することが望ましい。ADC取得対変調RFパルスは、ADCクロックの少なくとも1サンプル周期のジッタを有することになる。
【0033】
レシーバ(図1の参照番号104を参照されたい)は、データをサンプリングするべく、RFパルスがいつ入力に存在しているのかに関する通知を具備している。この通知は、RF変調器118に提供されるパルスに対して先行又は遅行したパルス発生器のトリガ出力(図1の参照番号114を参照されたい)など、外部トリガから到来したものであってよい。或いは、この代わりに、レシーバが、いつRFパルスが存在しているのかを検出し、RFパルスが減衰したことを検出するまで、RFパルスデータをサンプリングする。
【0034】
狭いIFフィルタは、レシーバが選択的に中央トーンを測定できるように、RFパルススペクトルの中央トーンを除いた残りのすべてを排除する。多数のスペクトルトーンにわたって、IFフィルタの大きさと位相がフラットである必要がないため、これは重要である。広帯域RFパルス検出法と比べて、RFパルススペクトルの単一トーンの測定に必要なデジタル化及びメモリ資源が少ない。取得した1つ又は複数のRFパルスを使用し、基本的にCWトーン(図5Gの参照番号510を参照されたい)を構築する。
【0035】
レシーバの外部又は内部トリガは、レシーバが、基本的に、RFパルスウィンドウ内においては、入力信号からデータを取得(サンプリング)するが(RFパルスの前及び/又は後の数サンプルは雑音を測定する可能性がある)、RFパルスが存在しないRFパルスウィンドウの後においては、データを取得しないように、設定されている。いくつかの実施例においては、一定のPRFを使用してDUT(図1の参照番号110)を試験している。トリガ型狭帯域RFパルス測定法には、IF信号をゲーティングすることによるポイント・イン・パルス測定とパルス・プロファイル測定が含まれる。IF信号のゲーティングにより、RFパルスの一部がレシーバに提供される。
【0036】
図5Aは、パルスドRF入力信号内における一連のRFパルス500、502のプロットを示している。尚、この測定法を更に明瞭に示すべく、デューティサイクルが数パーセントに低減されている。図5Bは、周波数領域おける図5Aのスペクトルのプロットを示している。図5Cは、レシーバに提供された(又は、試験セット(図1を参照されたい)内のレシーバによって生成された)トリガ信号を示している。トリガ信号の立ち上がりエッジ503は、RFパルスを測定するためにレシーバが入力信号の測定を開始すべきタイミングを設定している。クロックにより、レシーバ内のアナログ・デジタル変換器(「ADC」)を駆動する。そして、このADCが、入力(図1の参照番号109を参照されたい)における電圧をデジタル化している。このADCクロックレートにより、入力のサンプリング頻度が決定されることになる(図6と、以下の関連する説明を参照されたい)。レシーバがトリガされると、RFパルスがサンプリングされる。
【0037】
図5Aを参照すれば、RFパルス500、502の間の信号は雑音である。信号をウィンドウ化することにより、サンプリングされたRFパルスデータの間の望ましくない雑音データの大部分が除去される。どの信号データを取得し、どれを取得しないかに関する通知は、いくつかの方法で実行される。一実施例においては、ADCへの入力を接地(即ち、0ボルト)に短絡している。別の実施例においては、ADCとDSPの間の乗算器が、RFパルスウィンドウ内においては、ADCのデジタル出力を「1」の係数によって乗算し、RFパルスウィンドウの前後においては、「0」の係数から、及び、「0」の係数へ遷移させて、後続の雑音データをゼロ化している。この結果、RFパルスの間の雑音が、レシーバによって測定されなくなり、測定のダイナミックレンジが改善される。
【0038】
特定の実施例においては、RF信号を変調するパルス信号のRFパルス幅が判明している(図1の参照番号122、118を参照されたい)。代替実施例においては、いくつかの到来RFパルスは、レシーバによって特徴付けされ、トリガ型狭帯域パルスドRF測定を開始する前に、それらの幅がレシーバによって判定される。更に別の実施例によれば、RFパルスと雑音データサンプルを弁別するべく、RFパルスデータが十分に減衰したタイミングを判定するのに十分な信号処理能力をレシーバが具備している。
【0039】
図5Dは、レシーバのIF周波数応答によって変更された後の図5Bのサブ領域のプロットを示している。図5Eは、時間ゲーティングされた入力信号を時間領域において表したプロットを示している。入力RFパルス500’、502’の間に雑音エネルギーが基本的に存在していないことを留意されたい。図5Fは、ウィンドウ化された入力RFパルスのスペクトル応答のプロットを周波数領域において示している。図5Hは、IF周波数応答によって変更された後の図5Fのサブ領域のプロットを示している。図5Gは、図5Dに示されている入力RFパルスのスペクトルの逆変換である時間領域における第1のプロット508と、図5Hに示されているゲーティングされた入力RFパルスのスペクトルの逆変換である時間領域における第2のプロット510と、を示している。
【0040】
図5Fに対して図5Bを、そして、図5Hに対して図5Dを比較することにより、このトリガ型狭帯域パルスドRF検出法が、どれほど雑音を抑圧しているかに留意されたい。又、この雑音の抑圧については、図5D及び図5Hのスペクトルが時間領域に逆変換されて戻されている図5G内の第1及び第2のプロット508、510を比較することによっても明らかである。第1のプロット508の振幅は、トリガ型狭帯域パルスドRF検出を使用して導出された下のプロット510と比べて、格段に安定性を欠いている。
【0041】
図6は、データのウィンドウ化を示す一連のプロットを示している。第1のプロット602は、時間領域においてRFパルス604、606、608を示している(図3Eと比較されたい)。RFパルス604、606、608の間に、雑音パワー603、605、607が存在している。不都合なことに、この雑音パワーは、測定のダイナミックレンジに影響を及ぼす。第2のプロット610は、レシーバがデータを取得するタイミングを表す一連の周期的なサンプリングイベント612、614を示している。このサンプリングイベントの周期は、ADCクロックによって決定される。
【0042】
中括弧616、618内のサンプリングなどのいくつかのサンプリングは、雑音のみを取得する。中括弧620、622、624内のサンプリングなどのその他のサンプリングは、RFパルスデータを取得する。RFパルスデータを取得するサンプリングは、レシーバトリガにおいて発生するウィンドウ625の前縁626と、既知のRFパルス幅(RFパルス持続時間)に従ってユーザーが選択したウィンドウ625の後縁628と、を具備する時間ウィンドウ625(「ウィンドウ」又は「パルスウィンドウ」)内において実行される。トリガ信号がウィンドウをパルスドRF入力信号に同期させている(図3Aを参照されたい)。或いは、この代わりに、レシーバが、RFパルスが減衰したタイミングを検出し、RFパルスのサンプリングが完了した後に、ウィンドウの後縁を設定する。実際には、RFパルスの開始時点の前に取得された幾つかの雑音サンプルが存在する可能性があり、RFパルスの後においても、いくつかの雑音サンプルが取得される可能性がある。
【0043】
ウィンドウ625の前縁626と後縁628間において、RFパルス606の3つのサンプリングイベントが発生している。パルスドRF入力信号内の異なるRF入力においては、異なる数のサンプリングイベントが発生可能である。同様に、更に長い又は更に短いRFパルス持続時間を具備するパルスドRF入力信号においては、異なる数のサンプリングイベントが発生する。又、RFパルス当たりのサンプリングイベント数は、ADCクロックレートの影響も受けることになる。ADCクロックレートが高速であるほど、RFパルスから(並びに、雑音からも)、より多くの信号データサンプルが提供され、ADCクロックレートが低速であるほど、RFパルスから提供される信号データサンプルは、少なくなる。選択したIF帯域幅により、サンプルの合計数と利用するパルス数が決定される。
【0044】
第3のプロット630は、本発明の実施例による時間領域におけるRFパルス634、636、638を示している。ウィンドウ623、625、627内において発生したRFパルスデータのサンプルが保持されている。しかしながら、パルスドRF入力信号の雑音部分605、607は、ゼロ化されており、この結果、ゼロ化された部分635、637が生成されている。この結果、従来の狭帯域RFパルス検出法と比べて、ダイナミックレンジの大幅な改善が提供される。これらの雑音部分605、607は、ゼロ化されたアナログデータの測定、ゼロ化されたデジタルデータの測定、ゼロ係数による雑音信号データの乗算、又はウィンドウ期間後のデータ収集の停止など、いくつかの技法のいずれかを使用してゼロ化される。これらの技法のそれぞれ、並びに、これらの技法の組み合わせにより、基本的に、さもなければ雑音データとなるはずのものがヌル値によって置換され、結果的に、ウィンドウ期間後の信号データの測定の停止が実現する。尚、いくつかの実施例においては、ウィンドウ期間において雑音のサンプリングが発生し得るため、この説明においては、「データの取得」という用語は、それがRFパルス信号であるか、雑音信号であるかを問わず、信号パワーの測定を意味している。又、「データ取得の停止」という用語は、「1」以外の係数(即ち、ゼロ係数又は遷移係数)を乗算することによって測定データがゼロ化されるか、又はデータ収集が無効化されることを意味している。
【0045】
トリガ型狭帯域RFパルス検出法を使用して、デューティサイクルが低下すると、雑音の振幅とスペクトルトーンの振幅の両方が減少する。雑音は、RFパルスがレシーバ入力に存在していない際にデータのゼロ化によって雑音を除去する時間領域におけるサンプリングデータのウィンドウ化によって減少する。RFパルスの中央トーンは、20*log(デューティサイクル)で低下し、雑音は、約10*log(デューティサイクル)で低下する。従って、ダイナミックレンジが、約10*log(デューティサイクル)だけ低下することになる。従来の狭帯域パルスドRF検出と比べ、このトリガ型狭帯域パルスドRF検出を使用した場合の改善点は、サンプリングデータが入力信号データを含んでいる時間(これは、通常、ほとんどRFパルスデータのみであるが、例えば、トリガリングの精度、ウィンドウ化の精度、及びジッタに応じて、更に、いくつかの雑音データのサンプルを含む可能性がある)に対するサンプリングデータが強制ゼロ化振幅状態にある時間の比率にある。
【0046】
類似した従来の狭帯域パルスドRF検出に比べて、トリガ型狭帯域パルスドRF検出を使用した場合には、ウィンドウ期間内においてサンプリングされたデータからの雑音寄与が基本的に存在しないと仮定すると、例えば、0.1%のデューティサイクルにおいて、ダイナミックレンジの30dBの改善が実現する。デューティサイクルの係数が10ずつ減少するごとに、トリガ型狭帯域パルスドRF測定のダイナミックレンジは、10dBだけ減少する(非トリガ型狭帯域法の場合には、20dBだけ減少する)。
【0047】
図7Aは、本発明の一実施例によるレシーバのブロック図の一部700を示している。アナログ入力信号702が、スイッチ706の第1のポート704に接続されている。スイッチ706の第2のポート708は、接地710に接続されている。アナログ入力信号702は、ADC712内の検出器(別途に図示されてはいない)に接続される最終IFにRF入力信号を下方変換する一連の周波数フィルタ及びミキサ(図示されてはいない)を通常含むレシーバを通じた信号経路の結果物である。
【0048】
ADC712が、アナログADC入力信号714をデジタルADC出力信号716に変換し、これがDSP719に提供されている。スイッチ706は、ウィンドウ期間(図6の参照番号623、625、627を参照されたい)内においては、アナログ入力信号702にスイッチングされ、ウィンドウ期間とウィンドウ期間との間においては、接地710にスイッチングされる。ADC712を接地710にスイッチングすることにより、ウィンドウ期間とウィンドウ期間との間においてADC入力信号714がゼロ化され、この結果、パルスドRF入力信号の測定のダイナミックレンジが改善される。デジタル化されたIFデータからRF入力信号を再構築することにより、結果的に、図6のプロット630に実質的に基づいたプロットが生成されることになる。尚、スイッチ706がアナログ入力信号702と接地710の間でスイッチングされた際に発生し得る高周波スペクトル成分を回避するべく、コンデンサ又は低域通過フィルタなどの漸減要素715が、任意選択により、スイッチ706とADC712の間に配置される。
【0049】
図7Bは、本発明の別の実施例によるレシーバのブロック図の一部720を示している。アナログ入力信号702’がADC712に接続されている。このADC712のデジタル出力716は、乗算器717に接続されており、この乗算器は、デジタル出力716を、ウィンドウ内おいては「1」の係数によって乗算し、ウィンドウ外においては、デジタルデータをゼロ化させる「0」の係数に遷移させる。特定の実施例においては、この乗算器は、いくつかのサンプル期間にわたって「1」の係数と「0」の係数の間で遷移し、測定データからのデジタルデータをゼロ化データに漸減する。別の実施例においては、この乗算器717は省略されており、ウィンドウ内における「1」とウィンドウ外における「0」の間で遷移する係数を提供するべく、DSP719がプログラムされている。デジタル化されたデータからパルスドRF入力信号を再構築することにより、結果的に、図6のプロット630に実質的に基づいたプロットが生成される。
【0050】
図7Cは、本発明の更に別の実施例によるレシーバのブロック図の一部730を示している。アナログ入力信号702がADC712に提供されている。このADC712が、アナログ入力信号702をデジタルADC出力信号716に変換し、これがDSP719に提供されている。このDSPは、ウィンドウ期間外においてヌル擬似データを処理するべくプログラムされている。特定の実施例においては、デジタルADC出力信号の処理とヌル擬似データの処理間における遷移が漸減されている。別の実施例においては、DSPは、ウィンドウ期間外において、データの処理を停止するべくプログラムされている。データ取得を無効化するべくDSPをプログラムするその他の方法も存在している。ゼロ化されたデータから(又は、ウィンドウ内において、収集され、ウィンドウ間においては、無効化されたデータから)RF入力信号を再構築することにより、結果的に、図6のプロット630に実質的に基づいたプロットが生成される。
【0051】
図8は、本発明の一実施例に従ってDUTを測定する方法800のフローチャートである。パルスドRF入力信号をDUTに印加する(ステップ802)。このDUTの出力を、狭帯域幅(即ち、DUT出力からのRFパルス応答スペクトル内の中央トーンのみを基本的に選択的に測定するべく選択された帯域幅)に設定されたレシーバに接続する(ステップ804)。レシーバをトリガし、ウィンドウ期間内においては、DUTからRFパルスデータ出力をサンプリングし(ステップ806)、ウィンドウ期間の後に、データ収集を停止する(ステップ808)。そして、サンプリングされたデータがレシーバのフィルタ条件を満足させるのに十分でない場合には(例:アナログフィルタが十分に充電されていたり、デジタルフィルタが、複素フィルタリングされた出力ポイントを提供するべく十分に充填されている場合)、別のRFパルスを測定する(分岐810)。一方、フィルタ条件を満足している場合には(分岐812)、レシーバは、通常、コンピュータ可読メモリ内に保存されているデータを処理し(ステップ814)、測定結果を提供する(ステップ816)。
【0052】
以上、本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、当業者であれば、添付の請求項に規定されている本発明の範囲を逸脱することなしに、これらの実施例に対する変更及び適合を想起可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施例に従って電子デバイスを測定するための模範的な試験セットを示す図である。
【図2A】広帯域RFパルス検出法を示す図である。
【図2B】広帯域RFパルス検出法を示す図である。
【図2C】広帯域RFパルス検出法を示す図である。
【図2D】広帯域RFパルス検出法を示す図である。
【図2E】広帯域RFパルス検出法を示す図である。
【図2F】広帯域RFパルス検出法を示す図である。
【図3A】狭帯域RFパルス検出法を示す図である。
【図3B】狭帯域RFパルス検出法を示す図である。
【図3C】狭帯域RFパルス検出法を示す図である。
【図3D】狭帯域RFパルス検出法を示す図である。
【図3E】狭帯域RFパルス検出法を示す図である。
【図3F】狭帯域RFパルス検出法を示す図である。
【図4】周波数領域におけるRFパルススペクトルを示す図である。
【図5A】本発明の実施例によるトリガ型狭帯域RFパルス測定法を示す図である。
【図5B】本発明の実施例によるトリガ型狭帯域RFパルス測定法を示す図である。
【図5C】本発明の実施例によるトリガ型狭帯域RFパルス測定法を示す図である。
【図5D】本発明の実施例によるトリガ型狭帯域RFパルス測定法を示す図である。
【図5E】本発明の実施例によるトリガ型狭帯域RFパルス測定法を示す図である。
【図5F】本発明の実施例によるトリガ型狭帯域RFパルス測定法を示す図である。
【図5G】本発明の実施例によるトリガ型狭帯域RFパルス測定法を示す図である。
【図5H】本発明の実施例によるトリガ型狭帯域RFパルス測定法を示す図である。
【図6】データサンプルのウィンドウ化を示す一連のプロットを示す図である。
【図7A】本発明の実施例によるレシーバのブロック図の一部を示す図である。
【図7B】本発明の別の実施例によるレシーバのブロック図の一部を示す図である。
【図7C】本発明の更に別の実施例によるレシーバのブロック図の一部を示す図である。
【図8】本発明の実施例によるDUTを測定する方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
110:被試験デバイス(DUT)
113:DUTの出力
124:パルスドRF入力信号
104:レシーバ
625:ウィンドウ期間
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、パルスドRFネットワーク測定に関し、特に、パルスドRFネットワーク測定を行うためのトリガ型狭帯域法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのマイクロ波電子システムは、パルスドRF(pulsed-RF)モードで動作している。レーダーシステムや時分割多重アクセス(TDMA)無線通信システムが、パルスドRFモードで稼働するシステムの例である。レーダーシステムは、通常、数ギガヘルツ(GHz)〜数十GHzの範囲の信号によって動作し、アンテナ、増幅器、送受信モジュール、及び周波数変換器(「ミキサ」)などのデバイスを使用する。TDMA無線通信システムの場合には、通常、約6GHz未満で動作し、レーダーシステムに使用されているものに類似した電子デバイスを使用している。しかしながら、大部分の電子デバイスは、連続波(CW)の条件において試験されている。即ち、試験対象のこれらの電子デバイス(通常、これを被試験デバイス(即ち、「DUT」)と呼ぶ)をCW信号によって刺激し、この信号の応答を信号アナライザやネットワークアナライザなどのレシーバによって測定している。
いくつかの電子デバイスの動作は、CW信号ではなく、パルスドRF信号によって刺激された場合には、異なったものになる。RFパルスのバイアスの変化が、デバイスの高周波(RF)性能に影響を及ぼす場合がある。パルスド信号を使用すると、CW信号によってデバイスを試験する際には発生しないオーバーシュート、リンギング、又はドループ(通常は自己加熱に起因するRFパルスの後半部分における利得の低下)が結果的に生じる。その他の例においては、CW信号がDUTを破壊することもある。例えば、CWウエハ試験(即ち、DUTが製造されたウエハからまだ分離されていないDUTに関する試験)の実行により、十分なヒートシンクが施されていないDUTが壊れてしまう場合がある。又、レーダーシステム内で使用される高パワー増幅器などのように、DUTがCWモードで動作するべく設計されていない場合もあろう。パルスドRF測定法を使用したDUT試験に関する更なる情報は、David Ballo著、「Pulsed−RF S−Parameter Measurements Using a VNA」、AGILENT TECHNOLOGIEDS, INC.、2004年10月13日、に記述されており、この開示内容は、本引用により、そのすべてが、あらゆる目的のために本明細書に包含される。
【0003】
DUTのパルスドRF試験には、従来、2つの技法が存在している。第1の技法は、一般に、「広帯域」同期パルスド測定法と呼ばれている。相対的に広い出力帯域幅(具体的には、レシーバがRFパルスエネルギーのすべて(又は、実質的にすべて)を取得するのに十分な出力帯域幅)を有するレシーバが使用される。立ち上がり時間などの対象とするRFパルスの特性を測定するには、RFパルスの立ち上がり時間が、1/BWよりも長くなければならない。この技法を使用して測定可能な最小RFパルス持続時間は、使用するレシーバの最大帯域幅によって制限されている。
【0004】
広帯域パルスドRF測定は、同期型である。即ち、レシーバが、到来するRFパルスと同期しており、RFパルスエネルギーを取得(即ち、測定)するタイミングに関する知識を有している。これには、トリガ信号が必要であり、このトリガ信号は、周期的なRFパルスの場合には、レシーバ(例:カリフォルニア州パロアルトに所在するAGILENT TECHNOLOGIES, INC.社が製造するMODEL 8510(商標)ネットワークアナライザ)によって内部的に生成可能であり、或いは、このトリガ信号は、パルス発生器などの外部ソースからレシーバに対して提供される。ダイナミックレンジがデューティサイクルとは無関係であるため、この広帯域パルスドRF測定は望ましいが、ダイナミックレンジは、広いIF帯域幅によって制限されている。
【0005】
測定可能なRFパルス幅に下限が存在する。RFパルス幅が短くなるに伴って、周波数領域におけるRFパルスのスペクトルエネルギーが拡散する。そして、持続時間が短いRFパルスの場合には、スペクトル成分がIF帯域幅の外に位置することになる。大量のエネルギーがレシーバの帯域幅の外に位置する場合には、レシーバは、DUTのRFパルス応答を正確に表現し測定することができない。
【0006】
2番目のパルスドRF法は、一般に、狭帯域非同期パルスドRF測定法(「狭帯域RFパルス検出」)と呼ばれている。この狭帯域RFパルス検出は、広帯域検出が使用できないほどにRFパルススペクトルがレシーバの帯域幅の外に位置している場合に使用される。この技法においては、パルスドRFスペクトルの中央周波数成分(「中央トーン」)を除いた残りのすべてをレシーバがフィルタリングによって除去している。(RFパルスのスペクトルと比較して)相対的に狭いIFフィルタを使用し、任意の狭いRFパルスを測定可能である。この狭いIFフィルタによってRFパルススペクトルの中央トーンを測定する(この中央トーンは、RF搬送波の周波数を表している)。フィルタリングの後の狭帯域RFパルスの検出は、CW測定に類似しており、これは、レシーバが問題なく処理可能である。
【0007】
この狭帯域RFパルス検出の場合には、アナライザのサンプル周期が、到来するRF信号と同期してはおらず、従って、パルストリガが不要である。このため、この技法は、しばしば、非同期取得モードとも呼ばれている。この狭帯域RFパルス検出を使用する利点は、RFパルススペクトルがどれほど広くても、その大部分がフィルタリングによって除去され、DUTのRFパルス応答スペクトルの中央トーンのみが残るため、RFパルス幅の下限が存在しないという点にある。
【0008】
しかしながら、測定のダイナミックレンジがデューティサイクルの関数になっている。RFパルスのデューティサイクルが低下するに伴って、中央トーン内のエネルギーも低下するが、雑音パワーは、一定に留まる。従って、RFパルスのデューティサイクルが低下する(即ち、RFパルスの間の時間が長くなる)に伴って、RFパルスの平均パワーが低下し、この結果、信号対雑音比が劣化することになる。この効果は、しばしば、「パルス感度抑圧(pulse desensitization)」と呼ばれている。この結果、狭帯域非同期RFパルス検出のダイナミックレンジが、20*log(デューティサイクル)だけ劣化する。尚、この狭帯域非同期RFパルス測定法は、高パルス反復周波数(PRF)法とも呼ばれることがあるが、この理由は、良好なダイナミックレンジを維持するために、通常、PRFがIF帯域幅よりも格段に大きいためである。
【0009】
【非特許文献1】David Ballo著、「Pulsed−RF S−Parameter Measurements Using a VNA」、AGILENT TECHNOLOGIEDS, INC.、2004年10月13日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、前述の欠点を回避するパルスドRFを使用したデバイスの測定法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
被試験デバイス(DUT)を測定する方法は、パルスドRF入力信号をDUTに印加するステップと、DUTの出力のRFパルス応答スペクトル内の中央トーンを測定するべく選択されている出力帯域幅を具備したレシーバに、このDUTの出力を接続するステップと、を含む。このレシーバは、ウィンドウ期間内において、DUTからデータ出力をサンプリングするべくトリガされ、ウィンドウ期間後に、データの取得を停止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の実施例に従って電子デバイスを測定する模範的な試験セット100を示している。この試験セット100は、第1のパルス発生器102、第2のパルス発生器103、並びに、スペクトラムアナライザ、ネットワークアナライザ、又は専用のレシーバなどのレシーバ104を含んでいる。特定の実施例においては、このレシーバは、カリフォルニア州パロアルトに所在するAGILENT TECHNOLOGIES, INC.社が販売するMODEL E8362B(商標)ネットワークアナライザであり、パルス発生器は、こちらもAGILENT TECHNOLOGIES, INC.社が販売しているMODEL 81110A(商標)である。スペクトラムアナライザは、振幅対周波数の測定が望ましい場合に、レシーバとして有用である。ネットワークアナライザは、振幅対周波数及び/又は位相対周波数の測定が望ましい場合に、レシーバとして有用である。スペクトラムアナライザは、DUTによって生成された信号、又は、掃引装置又はシンセサイザなどの信号源からDUTに提供され、DUTからレシーバに出力された信号を測定可能である。ネットワークアナライザは、刺激/応答測定を実行し、試験信号をDUTに提供する。この試験信号は、ネットワークアナライザに内蔵されている信号源から(又は、この代わりに、外部信号源から)提供される。試験ケーブル106、108が、レシーバ104の試験ポート107、109にDUT110を接続している。例えば、DUT110の伝送又は利得の測定が望ましい場合には、第1の試験ポート107は、パルス変調RF入力をDUTの入力111に提供する。従って、これは、信号源出力ポートと見なされる。DUTの出力113は、第2の試験ポート109に接続されており、これは、レシーバ入力ポートと見なされる。
【0013】
DUTは、多くの異なる方法で特徴付け可能である。例えば、2ポートDUTは、そのSパラメータ(S11、S12、及びS22)によって特徴付け可能である。S11を測定する場合には、第1の試験ポート107がパルスドRF入力信号を提供し、DUTの入力111からの反射信号を受信する。尚、このような表記法は、一般的に使用されており、高周波試験及び測定法の分野における知識を有するものには周知である。又、DUTは、1つのポート、又は、2つを上回る数のポートを具備することも可能である。
【0014】
第1のパルス発生器102とレシーバ104は、10MHzの基準信号112などの共通時間軸によって動作している。第1のパルス発生器102は、トリガ信号114を第2のパルス発生器103に提供する。任意選択の汎用インターフェイスバス(GPIB)116により、コントローラによる試験装置の協調動作が可能になっている(このコントローラは、試験装置の中のいずれかのものの内部に存在するか、又は外部コントローラ(図示されてはいない)である)。
【0015】
カリフォルニア州パロアルトに所在するAGILENT TECHNOLOGIES, INC.社が販売しているMODEL Z5623A(商標)のオプションH81などの高周波変調器118が、第1のパルス発生器102からのパルス出力信号122に従って、ネットワークアナライザ104からの信号源出力120をスイッチオン/オフしている。この結果、パルスド信号源出力(「パルスドRF信号」)124と、パルスドRF基準出力(方向性カプラ128からのもの)が提供される。この変調器118は、約1GHzから約20GHzの信号を変調可能である。「パルスドRF信号」又は「パルスド搬送波信号」とは、そのRF信号が、選択された期間にわたってオンであり、次いで、選択された期間にわたってオフであることを意味しており、換言すれば、そのRF信号がパルス列と畳み込まれている(convolved)ことを意味している。同軸ジャンパケーブル129は、試験レシーバの「A」ポートに対するアクセスをユーザーに対して提供するが、これは、この例においては不要である。レシーバのもう一方の側の類似した同軸ジャンパも、順方向のパルスドRF測定においては使用されないが、レシーバの信号経路にアクセスするその他の実施例においては使用される。第1のパルス発生器102からのトリガ信号122’がレシーバに接続されている。このトリガ信号122’をレシーバ104の内部遅延回路(図示されてはいない)と共に使用することにより、レシーバ104は、RFパルス情報が存在する際に、試験ポート107、109においてデータを測定(「サンプリング」)することができる。尚、このトリガ信号122’の物理的なコネクタは、レシーバ104の背面パネル(図示されてはいない)上に位置している。
【0016】
パルス発生器は、多くの場合に、個別に変更可能な遅延を具備する複数の出力を提供している。別の試験セットにおいては、パルス出力との組み合わせで、スプリッタと外部遅延線(例:長さの長いケーブルなどの調節可能な遅延線や固定遅延線)を使用している。同様に、その他の代替試験セットにおいては、更に多くの又は更に少ないパルス出力を提供しており、個々のパルス発生器は、図1に示されている模範的なパルス発生器よりも、多くの又は少ないパルス出力を具備可能である。
【0017】
パルス発生器からの出力チャネル130、132、134が、レシーバ内部のゲート(図示されてはいない)を駆動し(例:カリフォルニア州パロアルトに所在するAGILENT TECHNOLOGIES, INC.社が販売するMODEL E8362B(商標)ネットワークアナライザにおいて、一般に、Aゲート、Bゲート、R1ゲート、及びR2ゲートと呼ばれているもの)、ポイント・イン・パルス(point-in-pulse)及びパルス・プロファイル(pulse-profile)測定のために、これらのゲートにおけるデータ取得をDUTからのRFパルス出力と同期化している。尚、このポイント・イン・パルス及びパルス・プロファイル測定の更なる情報については、David Balloによる「Pulsed−RF S−Parameter Measurements Using a VNA」、AGILENT TECHNOLOGIES, INC.、2004年10月13日、特に10〜13頁)に記述されている。
【0018】
パルスドRF信号は、レシーバ内において復調される。この検出は、アナログ回路及び/又はデジタル信号処理(DSP)法を使用して実現される。広帯域パルスドRF測定においては、アナライザは、パルスドRF信号(「RFパルスストリーム」)と同期化されており、データ取得は、DUTのRFパルス応答がレシーバに存在している際に実行される。これは、PRFに同期したパルストリガが存在していることを意味している。MODEL8510(商標)ネットワークアナライザなどのいくつかのレシーバは、データ取得を同期化する組込型のパルス発生器を具備している。別のレシーバにおいては、この目的に外部パルス発生器を使用している。
【0019】
この試験セット100は、類似の非同期狭帯域パルスドRF測定と比べて、約10*log(デューティサイクル)だけダイナミックレンジが改善される、DUT110のトリガ型狭帯域パルスドRF測定を行うのに使用される。レシーバは、雑音を測定することなく、RFパルスの前に、信号データの取得を開始し、RFパルスの後に、信号データの取得を停止するようにトリガされる。実施例に従ってレシーバが信号データの取得を停止する方法の例には、アナログ入力信号の接地、レジスタからDSPへのデジタル・ヌルデータの供給、RFパルス後にヌルデータを処理するためのDSPのプログラミング、又はデータ収集の無効化(例:データ処理の停止)が含まれる。いくつかの実施例においては、これらの技法の組み合わせを使用している。
【0020】
いくつかの実施例においては、遷移を「漸減(tapering)」させることにより、測定信号データとヌル状態間の急激な遷移を回避することが望ましい。一般に、遷移の漸減には、いくつかのサンプルにわたって、RFパルス信号データ又は雑音信号データなどの信号データとヌル状態との間における穏やかな遷移が必要である。さもなければ、急激な遷移が発生し、この結果、雑音パワーの増大によって測定を劣化させるスペクトル成分が生成されることになる。アナログ信号経路内においては、この漸減は、アナログ・デジタル変換器(ADC)の前段の分路コンデンサ又は低域通過フィルタによって実現される。デジタルの場合には、漸減は、ウィンドウの境界において「1」と「0」の間で係数を遷移させる、デジタル信号出力と直列接続された乗算器を使用することによって実現される。或いは、この代わりに、ウィンドウの境界において「1」と「0」の間で遷移する係数を適用するようにDSPをプログラムする。このような技法は、有限インパルス応答法の分野における知識を有する者には周知であり、データをゼロ化又はヌル化するその他の技法についても明らかであろう(又は、明らかになろう)。
【0021】
従来の狭帯域及び広帯域法を使用して取得された測定値を参照し、本発明の実施例について説明する。試験セット100は、パルスドRF条件において標準的な較正法を使用して較正する。機械的標準及び/又は電子的較正モジュール(「ECal」)を使用可能である。一般に、パルス、トリガリング、及びウィンドウ化条件のそれぞれの組ごとに、別個の較正を実行する。
【0022】
図2A〜図2Fは、広帯域パルスドRF検出法を示している(図4の参照番号402も参照されたい)。尚、図2A〜図2F、図3A〜図3F、及び図5A〜図5Hは、マサチューセッツ州ナティックに所在するTHE MATHWORKS社が販売するMATLAB(登録商標)を使用して生成されたものである。図2Aは、時間領域におけるパルスドRF入力信号のプロットを示しており、図2Bは、周波数領域におけるパルスドRF入力信号の対応するスペクトルのプロットを示している。図2Aのy軸は、ボルトであるが、この単位は、モデル化の目的ごとに任意に選択される。図2Aのx軸は、任意の単位(「A.U.」)で表された所与のサンプリングレートにおいて取得されたサンプルの数として時間を表している。尚、このA.U.値は、比較を目的として提供されているものに過ぎない。又、図2Eの時間尺度は、詳細な情報を示すべく、拡張されていることに留意されたい。サンプル数は、モデル化の目的ごとに任意に選択される。図2Bのy軸は、パワー(単位:dBm)であり、x軸は、0ヘルツ〜サンプリングレートの約半分の範囲におけるIF周波数を表している。この単位は、任意であり、比較を目的として提供されているに過ぎない。
【0023】
図2Bに示されているRFパルススペクトルは、その大部分が、使用するレシーバの出力帯域幅内に収まっている。図2Cは、IF周波数応答によって成形されたIF時間応答のプロットを示しており、図2Dは、IF周波数応答(線形利得対IF周波数)のプロットを示している。図2Eは、拡張された時間尺度で、入力RFパルス列(図2Aを参照されたい)の一部の第1のプロット200と、IF周波数応答によって成形されたIF時間応答(図2Cを参照されたい)の一部の第2のプロット202を示している。この説明においては、2ボルトの電圧オフセットが第1のプロットに加算されている。基本的に、この図2Eは、入力RFパルスとIF時間応答の拡大した比較を提供している。図2Fは、IF周波数応答(図2Dを参照されたい)によって変更されたRFパルススペクトル(図2Bを参照されたい)のプロットを示している。従って、図2Fに示されているRFパルススペクトルのプロットは、基本的に、図2Cに示されているプロットを周波数領域に変換したものになっている。
【0024】
図2Fには、図2Bと比べて、RFパルスのスペクトルの中央から離れた地点において減衰したスペクトル成分を具備する限定された帯域幅が表れている。図2Cを図2Aと比べると、入力RFパルスストリームがIFフィルタによって成形された後には、制限されたIF周波数応答に起因し、雑音は少なくなっているが、リンギングが多くなっている。換言すれば、このRFパルスの応答は、IF周波数応答の影響を受けている。この広帯域RFパルス測定の精度は、較正法を使用することによって改善可能である。
【0025】
RFパルススペクトルの全体が1回の測定イベントにおいて取得されており、しばしば、これを、「ワンショット」測定と呼んでいる。この方法によれば、RFパルス情報に歪がほとんど混入しない。図2Eを参照すれば、IFデータから時間領域において構築されたRFパルスがオリジナルのRFパルスに忠実なものになっており、これは、広帯域RFパルス検出法の利点であることに留意されたい。
【0026】
図3A〜図3Fは、狭帯域RFパルス検出法を示している(図4の参照番号404、406も参照されたい)。IFフィルタ応答が、1つのスペクトルトーンのみを含むように狭められている。この結果、保存を要する情報が格段に少なくなり、且つ、デジタル化レートの制約が軽減される。通常、連続したRFパルスを測定し、これをフィルタリングすることにより、基本的にCW信号が生成される。
【0027】
図3Aは、時間領域におけるパルスドRF入力信号のプロットを示しており、図3Bは、周波数領域におけるパルスドRF入力信号の対応するスペクトルのプロットを示している。図3Cは、IF周波数応答によって成形されたIF時間応答のプロットを示しており、図3Dは、IF周波数応答のプロットを示している。図3Eは、拡張された時間スケールで、入力データ(図3Aを参照されたい)から時間領域において構築されたパルスドRF入力信号の一部の第1のプロット300と、IF周波数応答によって成形されたIF時間応答(図3Cを参照されたい)の一部の第2のプロット302を示している。この説明においては、2ボルトの電圧オフセットが第1のプロットに加算されている。基本的に、図3Eは、入力RFパルスとIF時間応答の拡大した比較を提供している。図3Fは、IF周波数応答(図3Dを参照されたい)によって変更されたRFパルススペクトル(図3Bを参照されたい)のプロットを示している。従って、図3Fに示されているRFパルススペクトルのプロットは、基本的に、図3Cに示されているプロットを周波数領域に変換したものになっている。
【0028】
IF帯域幅を使用して1つのスペクトルトーンのみを選択することにより、RFパルスのIFが、いくつかのタイプのレシーバにおいて一般的な動作モードであるCW又は純粋なトーンの測定のように見える。図3Aに示されている相対的に高いデューティサイクルの場合にも(この場合には、RFパルスは、時間の約20%だけ存在している)、図3C及び図3Eに示されているCWトーンの振幅が、オリジナルのRFパルス振幅と比べて格段に低いことに留意するのは有益である。この振幅は、デューティサイクルが低下するに伴って、更に低下するが、雑音パワーは一定に留まる。従って、RFパルス測定のダイナミックレンジは、デューティサイクルが低下するに伴って劣化することになる。
【0029】
図4は、周波数領域におけるRFパルススペクトル400を示している。第1のIFフィルタ応答402は、RFパルススペクトル400の大部分を含むように十分に広くなっている。広帯域パルスドRF法においては、このようなフィルタ応答を有するIFフィルタを具備するレシーバを使用することにより、単一イベントにおいてRFパルスの全体を取得している。第2のIFフィルタ応答404は、第1のIFフィルタ応答よりも狭くなっており、基本的に、RFパルススペクトル400の中央トーン406のみを通過させる。
【0030】
図5A〜図5Hは、本発明の一実施例によるトリガ型狭帯域パルスドRF測定法を示している。レシーバは、RFパルスがレシーバ試験ポートに到来する直前に信号データの取得を開始するべくトリガされ、RFパルスが十分に減衰するまで信号データの取得を継続した後に、信号データの取得を停止する。トリガジッタが、RFパルス内ではなく、信号の雑音部分内において発生するように、RFパルスが到来する以前に、レシーバをトリガすることが望ましい。RFパルス内のトリガジッタは、結果的に不正確な測定をもたらす可能性がある。レシーバは、RFパルス内において信号データをサンプリングし、そのサンプリングレート(これは、通常、レシーバによって決定される)に応じて、RFパルスが十分に広い場合には、単一のRFパルス内において、複数回にわたってRFパルスデータをサンプリング可能である。複数のパルスを取得することが望ましく、これは、IF帯域幅に応じて、レシーバを複数回にわたってトリガすることによって実行可能である。
【0031】
一実施例においては、レシーバは、トリガ信号の前縁によってトリガされ、レシーバに入力されたユーザーが選択した期間にわたって、特定のサンプリングレートでデータを取得する。例えば、RF変調器を駆動するパルス発生器を具備した試験セット内においては、RFパルスの長さ(即ち、RFパルスの持続時間)が判明しており、レシーバは、RFパルスが十分に減衰するまで(例:略RFパルスの持続時間だけ)、RFパルスデータを取得するようにプログラムされている。レシーバは、そのRFパルスの持続時間とサンプリングレートに応じて、RFパルスを1回のみサンプリングするか、又は、RFパルスを複数回にわたってサンプリングすることができる。RFパルスが減衰した後に、レシーバは、信号データの取得を停止するが、これは、例えば、ゼロデータの強制又はデータ測定の無効化によって実現される。尚、このゼロ化されたデータの強制とデータ測定の無効化については、図6、図7A、図7B、及び図7Cを参照し、後程、更に説明する。この信号データとゼロ化されたデータの間のスイッチングは、データ取得の期間内において、複数回にわたって実行可能である。パルスの間の雑音期間内においてデータを取得しないようにすることにより、トリガ型狭帯域パルスドRF測定のダイナミックレンジは、従来の非同期狭帯域パルスドRF測定と比べて、改善される。
【0032】
RFパルスがトリガ型狭帯域RFパルス検出に到来する以前にレシーバを起動しておく別の理由は、IF信号のアナログ・デジタル変換器(ADC)が、数マイクロ秒のトリガジッタを有する可能性があるためであり、RFパルス信号の一部が失われないように、レシーバを十分早期に起動することが望ましい。ADC取得対変調RFパルスは、ADCクロックの少なくとも1サンプル周期のジッタを有することになる。
【0033】
レシーバ(図1の参照番号104を参照されたい)は、データをサンプリングするべく、RFパルスがいつ入力に存在しているのかに関する通知を具備している。この通知は、RF変調器118に提供されるパルスに対して先行又は遅行したパルス発生器のトリガ出力(図1の参照番号114を参照されたい)など、外部トリガから到来したものであってよい。或いは、この代わりに、レシーバが、いつRFパルスが存在しているのかを検出し、RFパルスが減衰したことを検出するまで、RFパルスデータをサンプリングする。
【0034】
狭いIFフィルタは、レシーバが選択的に中央トーンを測定できるように、RFパルススペクトルの中央トーンを除いた残りのすべてを排除する。多数のスペクトルトーンにわたって、IFフィルタの大きさと位相がフラットである必要がないため、これは重要である。広帯域RFパルス検出法と比べて、RFパルススペクトルの単一トーンの測定に必要なデジタル化及びメモリ資源が少ない。取得した1つ又は複数のRFパルスを使用し、基本的にCWトーン(図5Gの参照番号510を参照されたい)を構築する。
【0035】
レシーバの外部又は内部トリガは、レシーバが、基本的に、RFパルスウィンドウ内においては、入力信号からデータを取得(サンプリング)するが(RFパルスの前及び/又は後の数サンプルは雑音を測定する可能性がある)、RFパルスが存在しないRFパルスウィンドウの後においては、データを取得しないように、設定されている。いくつかの実施例においては、一定のPRFを使用してDUT(図1の参照番号110)を試験している。トリガ型狭帯域RFパルス測定法には、IF信号をゲーティングすることによるポイント・イン・パルス測定とパルス・プロファイル測定が含まれる。IF信号のゲーティングにより、RFパルスの一部がレシーバに提供される。
【0036】
図5Aは、パルスドRF入力信号内における一連のRFパルス500、502のプロットを示している。尚、この測定法を更に明瞭に示すべく、デューティサイクルが数パーセントに低減されている。図5Bは、周波数領域おける図5Aのスペクトルのプロットを示している。図5Cは、レシーバに提供された(又は、試験セット(図1を参照されたい)内のレシーバによって生成された)トリガ信号を示している。トリガ信号の立ち上がりエッジ503は、RFパルスを測定するためにレシーバが入力信号の測定を開始すべきタイミングを設定している。クロックにより、レシーバ内のアナログ・デジタル変換器(「ADC」)を駆動する。そして、このADCが、入力(図1の参照番号109を参照されたい)における電圧をデジタル化している。このADCクロックレートにより、入力のサンプリング頻度が決定されることになる(図6と、以下の関連する説明を参照されたい)。レシーバがトリガされると、RFパルスがサンプリングされる。
【0037】
図5Aを参照すれば、RFパルス500、502の間の信号は雑音である。信号をウィンドウ化することにより、サンプリングされたRFパルスデータの間の望ましくない雑音データの大部分が除去される。どの信号データを取得し、どれを取得しないかに関する通知は、いくつかの方法で実行される。一実施例においては、ADCへの入力を接地(即ち、0ボルト)に短絡している。別の実施例においては、ADCとDSPの間の乗算器が、RFパルスウィンドウ内においては、ADCのデジタル出力を「1」の係数によって乗算し、RFパルスウィンドウの前後においては、「0」の係数から、及び、「0」の係数へ遷移させて、後続の雑音データをゼロ化している。この結果、RFパルスの間の雑音が、レシーバによって測定されなくなり、測定のダイナミックレンジが改善される。
【0038】
特定の実施例においては、RF信号を変調するパルス信号のRFパルス幅が判明している(図1の参照番号122、118を参照されたい)。代替実施例においては、いくつかの到来RFパルスは、レシーバによって特徴付けされ、トリガ型狭帯域パルスドRF測定を開始する前に、それらの幅がレシーバによって判定される。更に別の実施例によれば、RFパルスと雑音データサンプルを弁別するべく、RFパルスデータが十分に減衰したタイミングを判定するのに十分な信号処理能力をレシーバが具備している。
【0039】
図5Dは、レシーバのIF周波数応答によって変更された後の図5Bのサブ領域のプロットを示している。図5Eは、時間ゲーティングされた入力信号を時間領域において表したプロットを示している。入力RFパルス500’、502’の間に雑音エネルギーが基本的に存在していないことを留意されたい。図5Fは、ウィンドウ化された入力RFパルスのスペクトル応答のプロットを周波数領域において示している。図5Hは、IF周波数応答によって変更された後の図5Fのサブ領域のプロットを示している。図5Gは、図5Dに示されている入力RFパルスのスペクトルの逆変換である時間領域における第1のプロット508と、図5Hに示されているゲーティングされた入力RFパルスのスペクトルの逆変換である時間領域における第2のプロット510と、を示している。
【0040】
図5Fに対して図5Bを、そして、図5Hに対して図5Dを比較することにより、このトリガ型狭帯域パルスドRF検出法が、どれほど雑音を抑圧しているかに留意されたい。又、この雑音の抑圧については、図5D及び図5Hのスペクトルが時間領域に逆変換されて戻されている図5G内の第1及び第2のプロット508、510を比較することによっても明らかである。第1のプロット508の振幅は、トリガ型狭帯域パルスドRF検出を使用して導出された下のプロット510と比べて、格段に安定性を欠いている。
【0041】
図6は、データのウィンドウ化を示す一連のプロットを示している。第1のプロット602は、時間領域においてRFパルス604、606、608を示している(図3Eと比較されたい)。RFパルス604、606、608の間に、雑音パワー603、605、607が存在している。不都合なことに、この雑音パワーは、測定のダイナミックレンジに影響を及ぼす。第2のプロット610は、レシーバがデータを取得するタイミングを表す一連の周期的なサンプリングイベント612、614を示している。このサンプリングイベントの周期は、ADCクロックによって決定される。
【0042】
中括弧616、618内のサンプリングなどのいくつかのサンプリングは、雑音のみを取得する。中括弧620、622、624内のサンプリングなどのその他のサンプリングは、RFパルスデータを取得する。RFパルスデータを取得するサンプリングは、レシーバトリガにおいて発生するウィンドウ625の前縁626と、既知のRFパルス幅(RFパルス持続時間)に従ってユーザーが選択したウィンドウ625の後縁628と、を具備する時間ウィンドウ625(「ウィンドウ」又は「パルスウィンドウ」)内において実行される。トリガ信号がウィンドウをパルスドRF入力信号に同期させている(図3Aを参照されたい)。或いは、この代わりに、レシーバが、RFパルスが減衰したタイミングを検出し、RFパルスのサンプリングが完了した後に、ウィンドウの後縁を設定する。実際には、RFパルスの開始時点の前に取得された幾つかの雑音サンプルが存在する可能性があり、RFパルスの後においても、いくつかの雑音サンプルが取得される可能性がある。
【0043】
ウィンドウ625の前縁626と後縁628間において、RFパルス606の3つのサンプリングイベントが発生している。パルスドRF入力信号内の異なるRF入力においては、異なる数のサンプリングイベントが発生可能である。同様に、更に長い又は更に短いRFパルス持続時間を具備するパルスドRF入力信号においては、異なる数のサンプリングイベントが発生する。又、RFパルス当たりのサンプリングイベント数は、ADCクロックレートの影響も受けることになる。ADCクロックレートが高速であるほど、RFパルスから(並びに、雑音からも)、より多くの信号データサンプルが提供され、ADCクロックレートが低速であるほど、RFパルスから提供される信号データサンプルは、少なくなる。選択したIF帯域幅により、サンプルの合計数と利用するパルス数が決定される。
【0044】
第3のプロット630は、本発明の実施例による時間領域におけるRFパルス634、636、638を示している。ウィンドウ623、625、627内において発生したRFパルスデータのサンプルが保持されている。しかしながら、パルスドRF入力信号の雑音部分605、607は、ゼロ化されており、この結果、ゼロ化された部分635、637が生成されている。この結果、従来の狭帯域RFパルス検出法と比べて、ダイナミックレンジの大幅な改善が提供される。これらの雑音部分605、607は、ゼロ化されたアナログデータの測定、ゼロ化されたデジタルデータの測定、ゼロ係数による雑音信号データの乗算、又はウィンドウ期間後のデータ収集の停止など、いくつかの技法のいずれかを使用してゼロ化される。これらの技法のそれぞれ、並びに、これらの技法の組み合わせにより、基本的に、さもなければ雑音データとなるはずのものがヌル値によって置換され、結果的に、ウィンドウ期間後の信号データの測定の停止が実現する。尚、いくつかの実施例においては、ウィンドウ期間において雑音のサンプリングが発生し得るため、この説明においては、「データの取得」という用語は、それがRFパルス信号であるか、雑音信号であるかを問わず、信号パワーの測定を意味している。又、「データ取得の停止」という用語は、「1」以外の係数(即ち、ゼロ係数又は遷移係数)を乗算することによって測定データがゼロ化されるか、又はデータ収集が無効化されることを意味している。
【0045】
トリガ型狭帯域RFパルス検出法を使用して、デューティサイクルが低下すると、雑音の振幅とスペクトルトーンの振幅の両方が減少する。雑音は、RFパルスがレシーバ入力に存在していない際にデータのゼロ化によって雑音を除去する時間領域におけるサンプリングデータのウィンドウ化によって減少する。RFパルスの中央トーンは、20*log(デューティサイクル)で低下し、雑音は、約10*log(デューティサイクル)で低下する。従って、ダイナミックレンジが、約10*log(デューティサイクル)だけ低下することになる。従来の狭帯域パルスドRF検出と比べ、このトリガ型狭帯域パルスドRF検出を使用した場合の改善点は、サンプリングデータが入力信号データを含んでいる時間(これは、通常、ほとんどRFパルスデータのみであるが、例えば、トリガリングの精度、ウィンドウ化の精度、及びジッタに応じて、更に、いくつかの雑音データのサンプルを含む可能性がある)に対するサンプリングデータが強制ゼロ化振幅状態にある時間の比率にある。
【0046】
類似した従来の狭帯域パルスドRF検出に比べて、トリガ型狭帯域パルスドRF検出を使用した場合には、ウィンドウ期間内においてサンプリングされたデータからの雑音寄与が基本的に存在しないと仮定すると、例えば、0.1%のデューティサイクルにおいて、ダイナミックレンジの30dBの改善が実現する。デューティサイクルの係数が10ずつ減少するごとに、トリガ型狭帯域パルスドRF測定のダイナミックレンジは、10dBだけ減少する(非トリガ型狭帯域法の場合には、20dBだけ減少する)。
【0047】
図7Aは、本発明の一実施例によるレシーバのブロック図の一部700を示している。アナログ入力信号702が、スイッチ706の第1のポート704に接続されている。スイッチ706の第2のポート708は、接地710に接続されている。アナログ入力信号702は、ADC712内の検出器(別途に図示されてはいない)に接続される最終IFにRF入力信号を下方変換する一連の周波数フィルタ及びミキサ(図示されてはいない)を通常含むレシーバを通じた信号経路の結果物である。
【0048】
ADC712が、アナログADC入力信号714をデジタルADC出力信号716に変換し、これがDSP719に提供されている。スイッチ706は、ウィンドウ期間(図6の参照番号623、625、627を参照されたい)内においては、アナログ入力信号702にスイッチングされ、ウィンドウ期間とウィンドウ期間との間においては、接地710にスイッチングされる。ADC712を接地710にスイッチングすることにより、ウィンドウ期間とウィンドウ期間との間においてADC入力信号714がゼロ化され、この結果、パルスドRF入力信号の測定のダイナミックレンジが改善される。デジタル化されたIFデータからRF入力信号を再構築することにより、結果的に、図6のプロット630に実質的に基づいたプロットが生成されることになる。尚、スイッチ706がアナログ入力信号702と接地710の間でスイッチングされた際に発生し得る高周波スペクトル成分を回避するべく、コンデンサ又は低域通過フィルタなどの漸減要素715が、任意選択により、スイッチ706とADC712の間に配置される。
【0049】
図7Bは、本発明の別の実施例によるレシーバのブロック図の一部720を示している。アナログ入力信号702’がADC712に接続されている。このADC712のデジタル出力716は、乗算器717に接続されており、この乗算器は、デジタル出力716を、ウィンドウ内おいては「1」の係数によって乗算し、ウィンドウ外においては、デジタルデータをゼロ化させる「0」の係数に遷移させる。特定の実施例においては、この乗算器は、いくつかのサンプル期間にわたって「1」の係数と「0」の係数の間で遷移し、測定データからのデジタルデータをゼロ化データに漸減する。別の実施例においては、この乗算器717は省略されており、ウィンドウ内における「1」とウィンドウ外における「0」の間で遷移する係数を提供するべく、DSP719がプログラムされている。デジタル化されたデータからパルスドRF入力信号を再構築することにより、結果的に、図6のプロット630に実質的に基づいたプロットが生成される。
【0050】
図7Cは、本発明の更に別の実施例によるレシーバのブロック図の一部730を示している。アナログ入力信号702がADC712に提供されている。このADC712が、アナログ入力信号702をデジタルADC出力信号716に変換し、これがDSP719に提供されている。このDSPは、ウィンドウ期間外においてヌル擬似データを処理するべくプログラムされている。特定の実施例においては、デジタルADC出力信号の処理とヌル擬似データの処理間における遷移が漸減されている。別の実施例においては、DSPは、ウィンドウ期間外において、データの処理を停止するべくプログラムされている。データ取得を無効化するべくDSPをプログラムするその他の方法も存在している。ゼロ化されたデータから(又は、ウィンドウ内において、収集され、ウィンドウ間においては、無効化されたデータから)RF入力信号を再構築することにより、結果的に、図6のプロット630に実質的に基づいたプロットが生成される。
【0051】
図8は、本発明の一実施例に従ってDUTを測定する方法800のフローチャートである。パルスドRF入力信号をDUTに印加する(ステップ802)。このDUTの出力を、狭帯域幅(即ち、DUT出力からのRFパルス応答スペクトル内の中央トーンのみを基本的に選択的に測定するべく選択された帯域幅)に設定されたレシーバに接続する(ステップ804)。レシーバをトリガし、ウィンドウ期間内においては、DUTからRFパルスデータ出力をサンプリングし(ステップ806)、ウィンドウ期間の後に、データ収集を停止する(ステップ808)。そして、サンプリングされたデータがレシーバのフィルタ条件を満足させるのに十分でない場合には(例:アナログフィルタが十分に充電されていたり、デジタルフィルタが、複素フィルタリングされた出力ポイントを提供するべく十分に充填されている場合)、別のRFパルスを測定する(分岐810)。一方、フィルタ条件を満足している場合には(分岐812)、レシーバは、通常、コンピュータ可読メモリ内に保存されているデータを処理し(ステップ814)、測定結果を提供する(ステップ816)。
【0052】
以上、本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、当業者であれば、添付の請求項に規定されている本発明の範囲を逸脱することなしに、これらの実施例に対する変更及び適合を想起可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施例に従って電子デバイスを測定するための模範的な試験セットを示す図である。
【図2A】広帯域RFパルス検出法を示す図である。
【図2B】広帯域RFパルス検出法を示す図である。
【図2C】広帯域RFパルス検出法を示す図である。
【図2D】広帯域RFパルス検出法を示す図である。
【図2E】広帯域RFパルス検出法を示す図である。
【図2F】広帯域RFパルス検出法を示す図である。
【図3A】狭帯域RFパルス検出法を示す図である。
【図3B】狭帯域RFパルス検出法を示す図である。
【図3C】狭帯域RFパルス検出法を示す図である。
【図3D】狭帯域RFパルス検出法を示す図である。
【図3E】狭帯域RFパルス検出法を示す図である。
【図3F】狭帯域RFパルス検出法を示す図である。
【図4】周波数領域におけるRFパルススペクトルを示す図である。
【図5A】本発明の実施例によるトリガ型狭帯域RFパルス測定法を示す図である。
【図5B】本発明の実施例によるトリガ型狭帯域RFパルス測定法を示す図である。
【図5C】本発明の実施例によるトリガ型狭帯域RFパルス測定法を示す図である。
【図5D】本発明の実施例によるトリガ型狭帯域RFパルス測定法を示す図である。
【図5E】本発明の実施例によるトリガ型狭帯域RFパルス測定法を示す図である。
【図5F】本発明の実施例によるトリガ型狭帯域RFパルス測定法を示す図である。
【図5G】本発明の実施例によるトリガ型狭帯域RFパルス測定法を示す図である。
【図5H】本発明の実施例によるトリガ型狭帯域RFパルス測定法を示す図である。
【図6】データサンプルのウィンドウ化を示す一連のプロットを示す図である。
【図7A】本発明の実施例によるレシーバのブロック図の一部を示す図である。
【図7B】本発明の別の実施例によるレシーバのブロック図の一部を示す図である。
【図7C】本発明の更に別の実施例によるレシーバのブロック図の一部を示す図である。
【図8】本発明の実施例によるDUTを測定する方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
110:被試験デバイス(DUT)
113:DUTの出力
124:パルスドRF入力信号
104:レシーバ
625:ウィンドウ期間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験デバイス(DUT)を測定する方法であって、
(1)パルスドRF入力信号を前記DUTに印加するステップと、
(2)前記DUTの出力からのRFパルス応答スペクトル内の中央トーンを選択的に測定するレシーバに、前記DUTの出力を接続するステップと、
(3)ウィンドウ期間内において前記DUTからのデータ出力をサンプリングするように、前記レシーバをトリガするステップと、
(4)前記ウィンドウ期間の後に、データ取得を停止するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記ステップ(4)が、ゼロ化されたアナログデータを測定するステップ、ゼロ化されたデジタルデータを測定するステップ、デジタルデータにゼロ係数を乗算するステップ、及びデータ収集を停止するステップ、のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(4)が、前記パルスドRF入力信号の雑音部分内において実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(3)が、前記パルスドRF入力信号のデータ出力部分内において実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(4)が、漸減させるステップを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記漸減させるステップが、複数のサンプルにわたって、「1」の値と「0」の値の間で遷移する係数によってデジタル出力を乗算するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記漸減させるステップが、デジタル信号プロセッサ内において実行される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ(4)が、前記ウィンドウ期間の後にヌル擬似データを処理するように、デジタル信号プロセッサをプログラムするステップを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ウィンドウ期間が、既定のRFパルス持続時間に応じて設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ウィンドウ期間が、測定されたRFパルス持続期間に応じて設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項1】
被試験デバイス(DUT)を測定する方法であって、
(1)パルスドRF入力信号を前記DUTに印加するステップと、
(2)前記DUTの出力からのRFパルス応答スペクトル内の中央トーンを選択的に測定するレシーバに、前記DUTの出力を接続するステップと、
(3)ウィンドウ期間内において前記DUTからのデータ出力をサンプリングするように、前記レシーバをトリガするステップと、
(4)前記ウィンドウ期間の後に、データ取得を停止するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記ステップ(4)が、ゼロ化されたアナログデータを測定するステップ、ゼロ化されたデジタルデータを測定するステップ、デジタルデータにゼロ係数を乗算するステップ、及びデータ収集を停止するステップ、のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(4)が、前記パルスドRF入力信号の雑音部分内において実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(3)が、前記パルスドRF入力信号のデータ出力部分内において実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(4)が、漸減させるステップを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記漸減させるステップが、複数のサンプルにわたって、「1」の値と「0」の値の間で遷移する係数によってデジタル出力を乗算するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記漸減させるステップが、デジタル信号プロセッサ内において実行される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ(4)が、前記ウィンドウ期間の後にヌル擬似データを処理するように、デジタル信号プロセッサをプログラムするステップを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ウィンドウ期間が、既定のRFパルス持続時間に応じて設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ウィンドウ期間が、測定されたRFパルス持続期間に応じて設定される、請求項1に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図5H】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図5H】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【公開番号】特開2006−201173(P2006−201173A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−9901(P2006−9901)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】395 Page Mill Road Palo Alto,California U.S.A.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】395 Page Mill Road Palo Alto,California U.S.A.
【Fターム(参考)】
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