説明

パルス波レーダー装置

【課題】本発明では、近距離にある対象物からの反射波に対しても距離分解能を確保すると共に、遠距離にある対象物からの反射波に対してもS/N比の悪化を防止して、対象物までの距離の遠近に関わらず高精度に対象物までの距離の測定をすることのできるパルス波レーダー装置を提供することを目的とする。
【解決手段】上記目的を達成するため、本願発明は、送信回路と、送信アンテナと、受信アンテナと、受信回路と、送信回路から送出される利得制御用送信パルス波によって得られる受信パルスの振幅に応じた利得制御信号を生成し、利得制御用送信パルス波の後に送信回路から送出される測定用送信パルス波によって得られる受信パルス波又は受信パルスに対する利得を利得制御信号で制御する利得制御回路と、を備えるパルス波レーダー装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波、又は準ミリ波帯を用いたパルス波レーダー装置に関する。特に、近距離にある対象物からの反射波に対しても、遠距離にある対象物からの反射波に対しても距離分解能やS/N比を向上させて距離を測定することのできるパルス波レーダー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、パルス波を送信してその反射パルス波を受信することにより対象物までの距離を検出するパルス波レーダー装置がある。パルス波レーダー装置は、対象物までの往復距離が、送信パルス波を放射してから対象物で反射した受信パルス波を受信する迄の時間に光速を積算することにより求められることから、送信パルス波を放射してから対象物からの受信パルス波を受信する迄の時間を測定し、対象物までの距離を算出することができる。
【0003】
このようなパルス波レーダー装置では、近距離から遠距離まで種々の距離にある対象物までの距離を測定するため、近距離にある対象物に対応させるべく送信パルス波のパルス幅を狭くする必要があることから、ダイナミックレンジの広い受信系を必要とする。そのため、装置が複雑となると共に、コスト増加につながるという課題があった。
【0004】
この課題を解決するために、従来ではAGC(Automatic Gain Control)回路を受信系に適用する発明が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平6−174826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、車両の衝突防止やオートクルーズを目的として数十cmという短い距離から数十mという長い距離まで、広い範囲について対象物の位置を正確に検知する場合には、送信パルス波のパルス幅を1ns程度と狭くしなければならない。
【0006】
そのため、特許文献1に開示された発明では、狭いパルス幅の受信パルス波に対してAGC回路で利得を制御する場合にフィードバック時間が足りなくなる。そのため、近距離にある対象物からの受信パルス波に対して受信回路が飽和してしまい受信パルス波の利得を安定して制御できない。また、送信パルス波のパルス幅が狭いと遠距離にある対象物からの受信パルス波のエネルギーが小さくなるためS/N比が小さくなり測定誤差を生じさせる。一方、特に近距離にある対象物では高い距離分解能が要求されるため、送信パルス波のパルス幅を広くすると近距離にある対象物の距離分解能の確保が不十分となる。
【0007】
そこで、本発明では、近距離にある対象物からの反射波に対しても距離分解能を確保すると共に、遠距離にある対象物からの反射波に対してもS/N比の悪化を防止して、対象物までの距離の遠近に関わらず高精度に対象物までの距離の測定をすることのできるパルス波レーダー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、発明者は、受信パルス波の利得制御用送信パルス波を予め送出して受信し復調した受信パルスに基づいて、後に送出する測定用送信パルス波によって得られる受信パルス波の利得の制御を行うこととした。
【0009】
具体的には、本願発明は、送信パルスで変調した送信パルス波を送出する送信回路と、前記送信回路からの送信パルス波を放射する送信アンテナと、前記送信アンテナからの送信パルス波のうち対象物で反射した受信パルス波を受信する受信アンテナと、前記受信アンテナからの受信パスル波を復調して受信パルスを出力する利得制御可能な受信回路と、前記受信回路での利得の制御用に前記送信回路から送出される利得制御用送信パルス波によって得られる前記受信パルスの振幅に応じた利得制御信号を生成し、前記対象物の測定用に前記利得制御用送信パルス波の後に前記送信回路から送出される測定用送信パルス波によって得られる前記受信パルス波又は前記受信パルスに対する利得を前記利得制御信号で制御する利得制御回路と、を備えるパルス波レーダー装置である。
【0010】
前述したように各受信パルス波に対して瞬時に利得制御する場合には、送信パルス波のパルス幅が狭いときにフィードバック時間が足りず受信パルス波の利得の制御が不十分となる。また、送信パルス波のパルス幅が狭いと遠距離にある対象物からの受信パルス波のエネルギーが小さくなるためS/N比が低くなり測定誤差を生じさせる。一方、特に近距離にある対象物では高い距離分解能が要求されるため、送信パルス波のパルス幅を広くすると近距離にある対象物の距離分解能の確保が不十分となる。
【0011】
そこで、本発明では、対象物の測定用の測定用送信パルス波の前に、受信回路内での利得制御用に利得制御用送信パルス波を予め送出して受信し復調した受信パルスの振幅に基づいて、受信回路内での利得の制御を行うこととした。
【0012】
ここで、送信パルス波の送信間隔が短いと、送信パルス波を送出してから次の送信パルス波を送出するまでに対象物が移動する距離は略無視できると考えられる。そのため、連続して送出する2つの送信パルス波により測定した対象物までの距離には略差がなく測定距離としていずれの値を採用しても測定精度に影響しないことを考慮した。
【0013】
これにより、利得制御用送信パルス波と測定用送信パルス波との間に時間差を設けることができる。そのため、利得制御用送信パルス波によって得られる受信パルスが一巡する間に、後に送出する測定用送信パルス波によって得られる受信パルス波の利得を制御するためのフィードバック時間を確保することができる。そのため、近距離にある対象物からの受信パルス波又は受信パルスに対しても受信回路を飽和させることを避けて受信パルスの振幅を略一定にすることができる。一方、遠距離にある対象物からの受信パルス波又は受信パルスに対しても予め生成した利得制御信号で利得制御するために受信パルスの振幅を略一定にすることができる。従って、本発明では、測定用送信パルス波によって得られる受信パルス波に対する利得を十分に制御して受信パルスの振幅を略一定にできるため高精度に対象物までの距離を測定することができる。
【0014】
上記パルス波レーダー装置において、前記パルス波レーダー装置の測定する前記対象物までの距離に応じて予め定められた複数の測定区間のうち前記パルス波レーダー装置から遠い測定区間ほどにパルス幅の広い前記測定用送信パルス波を送出することが望ましい。
【0015】
本発明では、パルス波レーダー装置からの距離が遠くなるに従って測定用送信パルス波のパルス幅を広くするため、近距離の対象物までの距離の測定の際には距離分解能を高くし、遠距離の対象物までの距離の測定の際には受信パルスのS/N比を高くすることができる。従って、対象物の遠近に関わらず対象物までの距離の測定が可能となる。
【0016】
上記パルス波レーダー装置において、前記複数の測定区間は、前記パルス波レーダー装置から前記複数の測定区間の各区間の遠端までの距離が等比級数で定められており、前記送信回路は、前記各区間の遠端までの距離に比例したパルス幅の前記測定用送信パルス波を送出することが望ましい。
【0017】
本発明では、複数の測定区間の各区間の遠端までの距離を等比級数で定めるため、対象物までの距離を級数的に分けて測定することができる。また、測定用送信パルス波のパルス幅を各区間の遠端までの距離に比例させて広げるため、複数の測定区間の各区間でS/N比をできるだけ高くして対象物までの距離の測定をすることができる。従って、対象物の遠近に関わらず測定精度を略一定に維持することができる。
【0018】
上記パルス波レーダー装置において、前記利得制御用送信パルス波によって得られる前記受信パルスに基づいて前記複数の測定区間のいずれかに複数の対象物の存在を検知し且つ前記複数の対象物の属する前記測定区間についての前記測定用送信パルス波のパルス幅が前記複数の対象物同士の距離に対する距離分解能以下と判断すると、前記送信回路に前記測定区間についての前記測定用送信パルス波として前記利得制御用送信パルス波のパルス幅と同じパルス幅の送信パルス波を送出させる判断回路をさらに備えることが望ましい。
【0019】
本発明では、パルス幅の広い送信パルス波では距離分解能が不足するときには、パルス幅の狭い送信パルス波で距離分解能を上げて対象物の距離を測定するので、複数の対象物のそれぞれに対する距離の測定を維持することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、近距離にある対象物からの反射波に対しても距離分解能を確保すると共に、遠距離にある対象物からの反射波に対してもS/N比の悪化を防止して、対象物までの距離の遠近に関わらず高精度に対象物までの距離の測定をすることのできるパルス波レーダー装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。
【0022】
図1は、本発明のパルス波レーダー装置の実施形態の一例を説明するブロック図であって、パルス波レーダー装置の構成を説明するブロック図である。図1において、21はパルス波レーダー装置の基準となる発振信号を出力する発振器、22は発振信号を分周して基準信号を発生する基準信号発振器、23は基準信号を基に発生させた所定の周期の送信パルスをそのパルス幅を変化させて出力する可変幅パルス発生回路、24は搬送波周波数で発振する発振器、25は搬送波周波数の信号を送信パルスで変調して送信パルス波を出力する変調器、26は送信パルス波を放射する送信アンテナ、31は対象物からの受信パルス波を受信する受信アンテナ、32、33は受信パルス波を所定の利得で増幅して出力する高周波増幅器、34は受信パルス波を分離し互いに90度の位相差をつけてそれぞれ出力する90度移相器、35は搬送波周波数の信号を2つに分配してそれぞれ出力する分配器、36a、36bは受信パルス波を搬送波周波数の信号で復調しI信号又はQ信号の受信パルスとして出力するミキサ、37a、37bはI信号又はQ信号の受信パルスを所定の利得で増幅して出力する中間周波増幅器、38は基準電圧を発生する基準電圧発生回路、39a、39bはI信号又はQ信号の受信パルスと基準電圧とを比較して受信パルスを出力するコンパレータ、41は受信パルスを記憶し、受信パルス及び基準信号を基に対象物までの距離を算出する信号処理回路、51は受信パルスを基に利得制御信号を生成する自動利得制御信号生成回路である。なお、対象物は、送信アンテナ26からの送信パルス波を反射するすべての物を含んでおり、図1において不図示である。
【0023】
発振器21、基準信号発振器22、可変幅パルス発生回路23、発振器24及び変調器25は、送信回路に含まれる。また、発振器24、高周波増幅器32、高周波増幅器33、90度移相器34、分配器35、ミキサ36a、36b、中間周波増幅器37a、37b、基準電圧発生回路38及びコンパレータ39a、39bは、受信回路に含まれる。また、自動利得制御信号生成回路51は、利得制御回路に含まれる。また、信号処理回路41は、判断回路を含んでいる。
【0024】
まず、図1において、パルス波レーダー装置10の送信系の構成を説明する。可変幅パルス発生回路23は、基準信号発振器22からの基準信号を基に所定のパルス幅の送信パルスを発生する。この送信パルスの発生間隔は、周期的でも非周期的でもよいが、パルス波レーダー装置10の最大検出距離に対応する電波の伝搬往復時間よりも長く設定することが望ましい。本実施形態では、可変幅パルス発生回路23は、基準信号発振器22からの基準信号の入力と共にそのパルス幅を変えて送信パルスとして出力する。これにより、変調器25から出力する送信パルス波のパルス幅が決定される。可変幅パルス発生回路23の出力する送信パルスのパルス幅は、1ns以上、100ns以下であることが望ましい。パルス波レーダー装置10が検出する測定対象物までの距離は、15cmから15m程度であるから、分解能を決定する送信パルスのパルス幅では1ns以上、100ns以下に相当する。なお、パルス幅の設定についての詳細は、後述する。
【0025】
変調器25は、発振器24からの搬送波周波数の信号を可変幅パルス発生回路23からの送信パルスで変調して送信パルス波を出力する。送信アンテナ26は、変調器25からの送信パルス波を放射する。送信アンテナ26は複数のアンテナから構成されるものでもよい。
【0026】
次に、図1において、パルス波レーダー装置10の受信系の構成を説明する。受信アンテナ31は、対象物で反射した受信パルス波を受信する。受信アンテナ31も送信アンテナ26と同様に、複数のアンテナから構成されるものでもよい。また、送受兼用アンテナであってもよい。高周波増幅器32、33は、後述の自動利得制御信号生成回路51で生成された利得制御信号を基に受信パルス波を所定の利得で増幅して出力する。
【0027】
ミキサ36aは、90度移相器34からの受信パルス波を復調してI信号である受信パルスを出力する。復調に際しては、例えば、同期検波や包洛線検波等の非同期検波の通常の技術で実現できる検波方式を適用することができる。本実施形態では、パルス波レーダー装置10の使用する周波数帯のローカル信号を発振器24で発生させ、発生させたローカル信号に基づいて同期検波している。中間周波増幅器37aは、後述の自動利得制御信号生成回路51で生成された利得制御信号を基にミキサ36aからの受信パルスを所定の利得で増幅して出力する。一方、ミキサ36bについても、90度移相器34からの受信パルス波を復調してQ信号としての受信パルスを出力する。また、中間周波増幅器37bは、後述の自動利得制御信号生成回路51で生成された利得制御信号を基にミキサ36bからの受信パルスを所定の利得で増幅して出力する。
【0028】
信号処理回路41は、コンパレータ39a、39bで基準電圧と比較され出力された受信パルスを取得し受信パルスの振幅及び出力タイミング、並びに基準信号発振器22からの基準信号を取得し基準信号の出力タイミングを記憶する。これにより、送信回路としての変調器25から送信パルス波が出力されてから受信回路としてのコンパレータ39a、39bから受信パルスが出力されるまでの時間が算出できるため、変調器25からコンパレータ39a、39bまでの信号処理による遅延時間を考慮すれば送信アンテナ26から放射された送信パルス波が対象物で反射し受信アンテナ31に戻ってくる時間を算出して対象物までの距離を算出することができる。また、信号処理回路41は、記憶した受信パルスに基づいて後述する種々の判断を行うこともできる。
【0029】
自動利得制御信号生成回路51は、信号処理回路41に記憶された受信パルスの振幅を基に高周波増幅器32、33及び中間周波増幅器37a、37bにおいて受信パルス波又は受信パルスに対する利得を制御するための利得制御信号を生成して出力する。
【0030】
ここで、図1及び後述のタイミングチャートを参照して、パルス波レーダー装置10での信号処理動作について説明する。
【0031】
図2は、パルス波レーダー装置で処理する送信パルス及び受信パルスを含むタイミングチャートの一例を示した図である。図2において、(a)は1巡目の利得制御用送信パルスによって得られる受信パルスのタイミングを示し、(a´)は1巡目の受信パルスを基にした利得制御信号のタイミングを示し、(b)は2巡目の測定用送信パルスによって得られる受信パルスのタイミングを示し、(c)は3巡目の測定用送信パルスによって得られる受信パルスのタイミングを示し、(d)は4巡目の測定用送信パルスによって得られる受信パルスのタイミングを示し、(e)はパルスのタイミングの時間軸に対応した対象物までの測定距離を示している。なお、時間軸の正方向は、図面右側である。
【0032】
図2(a)、(b)、(c)及び(d)では、図1の可変幅パルス発生回路23から複数の送信パルスが一定の発生間隔(図2では、100ns毎)で出力された後にコンパレータ39a、39bから出力される複数の受信パルスの出力タイミングをそれぞれ示している。
【0033】
可変幅パルス発生回路23から図2(a)に示す利得制御用送信パルス91が出力されると、利得制御用送信パルス91は、変調器25で変調され利得制御用送信パルス波として送信アンテナ26から放射される。そして、対象物で反射した受信パルス波は、受信アンテナ31で受信されミキサ36a、36bで復調された後、コンパレータ39a、39bから受信パルス101a、101b、101c、101d、101eとして出力される(以下、利得制御用送信パルス91と受信パルス101a、101b、101c、101d、101eとに相当する関係を、「送信パルスによって得られる受信パルス」ということとする。)。ここで、図2(a)において、受信パルスが受信パルス101a、101b、101c、101d、101eのように複数あるのは、パルス波レーダー装置10が距離の異なる複数の対象物からの受信パルス波を利得制御用送信パルスの伝搬往復時間に対応してそれぞれ受信するためである。このことは、図2(b)、(c)、(d)のそれぞれにおいて、測定用送信パルス波の基となる測定用送信パルス92、93、94を出力した場合にも同様である。また、図2(a)では、受信パルス101a、101b、101c、101d、101eについて、パルス波レーダー装置10から対象物までの距離が遠くなるに従って受信したときのエネルギーが小さくなるため振幅が小さくなる様子を示している。なお、受信パルスの振幅は対象物までの距離だけではなく、反射面の材質や角度にも影響されるため、必ずしも図2に示すような振幅の時系列に限られない。
【0034】
本実施形態では、対象物の測定距離に対する距離分解能を高くするため、利得制御用送信パルス91のパルス幅t1を1nsから2ns程度に設定している。例えば、パルス幅t1を1nsに設定すると、パルス波レーダー装置10と対象物との距離をxとし、電波の速度をc(c=3.0×10m/s)として、パルス波レーダー装置10は、最小測定距離xを約15cmとする距離測定をすることができる。
【0035】
この場合、各受信パルス101a、101b、101c、101d、101eの基となる受信パルス波又は受信パルスに対して瞬時に利得制御する場合には、前述したように利得制御用送信パルス91のパルス幅が狭いためフィードバック時間が足りず受信パルス波に対する利得の制御が不十分となる。また、利得制御用送信パルス91のパルス幅が狭いと遠距離にある対象物からの受信パルス波のエネルギーが小さくなるため、例えば、受信パルス101eのS/N比が低くなり受信パルス101eに基づいて算出した測定距離に誤差を生じさせる。一方、特に近距離にある対象物では高い距離分解能が要求されるため、利得制御用送信パルス波の基となる利得制御用送信パルス91のパルス幅をパルス幅t1より広くすると近距離にある対象物の距離分解能の確保が不十分となる。
【0036】
そこで、本実施形態では、パルス波レーダー装置10は、利得制御用送信パルス波の基となる図2(a)に示す利得制御用送信パルス91を可変幅パルス発生回路23から予め出力し、利得制御用送信パルス91によって利得制御用送信パルス91の伝搬往復時間に対応して得られる受信パルスの振幅に応じた利得制御信号を自動利得制御信号生成回路51において生成する。そして、その後、図2(b)から(d)に示す測定用送信パルス92、93、94を基にした測定用送信パルス波を可変幅パルス発生回路23から出力し、測定用送信パルス92、93、94によって得られる受信パルス波に対する利得を測定用送信パルス92、93、94を基にした測定用送信パルス波の伝搬往復時間に対応して自動利得制御信号生成回路51からの利得制御信号で利得制御する。
【0037】
具体的には、自動利得制御信号生成回路51は、信号処理回路41で記憶した図2(a)に示す受信パルス101a、101b、101c、101d、101eを基に、受信パルス101a、101b、101c、101d、101eを反転させた図2(a´)に示す利得制御信号105a、105b、105c、105d、105eを生成して出力する。この利得制御信号105a、105b、105c、105d、105eを高周波増幅器32、33、中間周波増幅器37a、37bに入力する。高周波増幅器32、33では、利得制御信号105a、105b、105c、105d、105eを基に、図2(b)に示す2巡目に出力された測定用送信パルス92によって得られる受信パルス波を測定用送信パルス92を基にした測定用送信パルス波の伝搬往復時間に対応して増幅する。また、中間周波増幅器37a、37bでは、利得制御信号105a、105b、105c、105d、105eを基に、2巡目に出力された測定用送信パルス92によって得られる受信パルスを測定用送信パルス92を基にした測定用送信パルス波の伝搬往復時間に対応して増幅する。このように、受信パルス102a、102b、102c、102d、102eの基となる受信パルス波又は受信パルスに対して利得制御信号105a、105b、105c、105d、105eで利得制御することにより受信パルス102a、102b、102c、102d、102eの振幅を振幅dとして一定に保つことができる。つまり、受信パルス102a、102b、102c、102d、102eのうち、例えば受信パルス102aの基となる振幅の大きい受信パルス波又は受信パルスに対しては、増幅率が下がり、受信パルス102eの基となる振幅の小さい受信パルス波又は受信パルスに対しては、受信パルス102aの場合に比べて増幅率が上がる。
【0038】
高周波増幅器32、33、中間周波増幅器37a、37bでは、上記の増幅処理を、図2(c)に示す3巡目に出力された測定用送信パルス93によって得られる受信パルス103b、103d、103e、図2(d)に示す4巡目に出力された測定用送信パルス94によって得られる受信パルス104d、104eの基となる受信パルス波又は受信パルスに対しても行う。なお、3巡目の測定用送信パルス93、4巡目の測定用送信パルス94では、パルス幅t2、t3をそれぞれ2巡目の測定用送信パルス92のパルス幅t1より広くしたため、当然に測定用送信パルス93、94によって得られる受信パルスのパルス幅は広くなる。そのため、高周波増幅器32、33、中間周波増幅器37a、37bでは、利得制御信号105a、105b、105c、105d、105eに基づいて、測定用送信パルス93、94のパルス幅t2、t3分の長さで受信パルス波又は受信パルスに対して利得制御をそれぞれ行うこととする。なお、本実施形態では、高周波増幅器32、33、中間周波増幅器37a、37bのすべての回路で利得制御を行っているが、受信パルス波又は受信パルスに対する利得制御は、高周波増幅器32、33、中間周波増幅器37a、37bのいずれか1つの回路において行ってもよいし、組み合わせて行ってもよい。
【0039】
このように、自動利得制御信号生成回路51が、高周波増幅器32、33、中間周波増幅器37a、37bにおける受信パルス波又は受信パルスに対して利得制御を行うことで、パルス波レーダー装置10は、1巡目の利得制御用送信パルス91より後に出力される、2巡目の測定用送信パルス92、3巡目の測定用送信パルス93及び4巡目の測定用送信パルス94によってコンパレータ39a、39bから出力される受信パルスの振幅を振幅dで略一定にして出力することができる。
【0040】
ここで、利得制御用送信パルス波及び測定用送信パルス波の送信間隔は、例えば図2(e)に示すようにパルス波レーダー装置10から数十mの距離にある対象物を測定する場合においても、100ns〜1μsと非常に短く設定できる。そのため、このように送信間隔が短いと、測定用送信パルス波の基となる測定用送信パルス92を出力してから次の利得制御用送信パルス波の基となる測定用送信パルス96を出力するまでに対象物との相対距離が変化する量は略無視できると考えられる。そのため、連続して出力する2つの測定用送信パルス92、96により測定した対象物までの距離には略差がなく測定距離としていずれの値を採用しても測定精度に影響しないことを考慮した。そのため、利得制御用送信パルス波の基となる利得制御用送信パルスは、1回のみ出力することとしてもよいし、図2(a)に示すように、利得制御用送信パルス91、95のように複数回出力することとしてもよい。利得制御用送信パルスを1回のみ出力する場合には、自動利得制御信号生成回路51は、短時間での利得制御が可能となる。一方、利得制御用送信パルスを複数回出力した場合には、自動利得制御信号生成回路51は、例えば、各回の利得制御用送信パルスによって得られる受信パルスの振幅値を平均することにより利得制御信号を生成して、利得制御の安定化を図ることができる。なお、図2(b)、(c)、(d)の測定用送信パルス92、93、94についても、各送信巡で、1回のみ出力することとしてもよいし、複数回出力することとしてもよい。
【0041】
このようにして、自動利得制御信号生成回路51が、利得制御用送信パルス波の基となる利得制御用送信パルス91を対象物までの距離の測定の前に予め出力して利得制御信号105a、105b、105c、105d、105eを生成することにより、パルス波レーダー装置10は、利得制御用送信パルス91と測定用送信パルス波の基となる測定用送信パルス92、93、94との間に時間差を設けることができる。そのため、利得制御用送信パルス波によって得られる受信パルス101a、101b、101c、101d、101eが一巡する間に、後に2巡目、3巡目、4巡目で出力する測定用送信パルス波の基となる測定用送信パルス92、93、94によって得られる受信パルス波の利得を制御するためのフィードバック時間を確保することができる。そのため、近距離にある対象物からの受信パルス波又は受信パルスに対しても受信回路内の高周波増幅器32、33、中間周波増幅器37a、37bからの出力を飽和させることを避けてコンパレータ39a、39bからの受信パルスの振幅を略一定にすることができる。一方、遠距離にある対象物からの受信パルス波又は受信パルスに対しても予め生成した利得制御信号で利得制御するためにコンパレータ39a、39bからの受信パルスの振幅を略一定にすることができる。従って、2巡目、3巡目、4巡目で出力する測定用送信パルスを基にした測定用送信パルス波によって得られる受信パルス波の利得を十分制御して受信パルスの振幅を略一定にできるため高精度に対象物までの距離を測定することができる。
【0042】
また、本実施形態では、図2(c)、(d)に示すように、3巡目の測定用送信パルス93のパルス幅t2、4巡目の測定用送信パルス94のパルス幅t3を2巡目の測定用送信パルス92のパルス幅t1より広く設定した。これは、以下に説明するように、パルス波レーダー装置10から対象物までの距離に応じて定めた測定区間によるものである。
【0043】
図3は、車両と車両に搭載されたパルス波レーダー装置の測定範囲の一例を示した概略図である。図3において、120は車両、131から134は測定区間を示している。図3では、車両の前方のバンパー内にパルス波レーダー装置10を配置している。なお、パルス波レーダー装置10は、対象物の検出方向に応じて車両120のいずれの場所に配置してもよい。
【0044】
本実施形態では、車両120から0m〜2m、2m〜4m、4m〜8mの範囲に測定区間を定めた。測定区間とは、例えば、測定区間133に対象物5が存在するとしたときに、対象物5のみを検出し、他の測定区間131、132に対象物が存在していてもその対象物は検出しない区間をいう。この測定区間は、予めパルス波レーダー装置10に固有に設定されている。図1の可変幅パルス発生回路23は、図3に示すようにパルス波レーダー装置10の測定する対象物までの距離に応じて予め定められた複数の測定区間131、132、133のうちパルス波レーダー装置10から遠い測定区間ほどに、図2(b)、(c)、(d)に示すように、パルス幅t1、t2、t3と次第に広くなる測定用送信パルス92、93、94を出力する。
【0045】
また、図3に示すように、パルス波レーダー装置10から複数の測定区間131、132、133の各区間の遠端141、142、143までの距離を等比級数で定めた場合には、図1の可変幅パルス発生回路23は、各区間の遠端141、142、143までの距離に比例したパルス幅の測定用送信パルスを出力する。図2(d)では、測定用送信パルス94のパルス幅t3を図2(c)の測定用送信パルス93のパルス幅t2の2倍とした。この場合、図3の遠端までの距離が8m以上の範囲に対してさらに16m、32m、64mと測定区間を設定した場合にも、測定用送信パルスのパルス幅を各区間の遠端までの距離に応じて測定用送信パルス93のパルス幅t2を基準に4倍、8倍、16倍と距離の等比級数に比例させることとする。
【0046】
ここで、図2(b)において、測定区間を0m〜2mとして対象物の距離測定を行う場合、図1の信号処理回路41は、図2(b)の受信パルス102a、102bのみを処理し、他の受信パルス102c、102d、102eについては、処理を行わない。また、図2(c)において、測定区間を2m〜4mとして対象物の距離測定を行う場合、信号処理回路41は、図2(c)の受信パルス103dのみを処理し、他の受信パルス103b、103eについては、処理を行わない。また、図2(d)において、測定区間を4m〜8mとして対象物の距離測定を行う場合、信号処理回路41は、図2(d)の受信パルス104eのみを処理し、他の受信パルス104dについては、処理を行わない。
【0047】
このように、図3に示す測定区間131、132、133の各区間の遠端141、142、143までの距離が遠くなるに従って、測定用送信パルス波の基となる測定用送信パルス92、93、94のパルス幅をパルス幅t1、t2、t3(図2)と広くすると、近距離の対象物までの距離の測定の際には距離分解能を高くし、遠距離の対象物までの距離の測定の際には受信パルスのS/N比を高くすることができる。従って、パルス波レーダー装置10は、対象物の遠近に関わらず対象物までの距離の測定が可能となる。
【0048】
さらに、図3に示す複数の測定区間131、132、133の各区間の遠端141、142、143までの距離を等比級数で定めると、対象物までの距離を級数的に分けて測定することができる。また、図2(c)(d)に示すように測定用送信パルス波の基となる測定用送信パルス93、94のパルス幅t2、t3を各区間の遠端142、143までの距離に比例させて広げるため、複数の測定区間132、133の各区間でS/N比をできるだけ高くして対象物までの距離の測定をすることができる。従って、パルス波レーダー装置10は、対象物の遠近に関わらず測定精度を略一定に維持することができる。
【0049】
ここで、図2(b)に示す2巡目の測定用送信パルス92によって得られる受信パルスと図2(d)に示す4巡目の測定用送信パルス94によって得られる受信パルスとでは、S/N比に差が生じると考えられる。この場合、1巡目の利得制御用送信パルス91により生成した利得制御信号105aから105eでは、測定用送信パルス92、93によって得られる受信パルス波又は受信パルスに対して利得制御が十分に対応しきれないことも想定できる。この場合、測定用送信パルス波のパルス幅に応じてそのパルス幅での利得制御用送信パルスを出力して利得制御信号を生成することとしてもよい。これにより、より遠距離の対象物までの距離を測定することができる。
【0050】
また、図2(c)の場合、図2(b)の受信パルス102c、102dに相当する受信パルスが互いに重なった受信パルス103dが出力されていることがわかる。これは、2m〜4mの範囲の測定区間に2つの対象物が存在しており、2つの対象物間の距離が測定用送信パルス93のパルス幅t2では距離分解能以下であるからである。この場合、利得制御用パルス91のパルス幅t1によれば2つの対象物をそれぞれ検出できるため、図1の信号処理回路41は、利得制御用送信パルス91に基づいて図3の複数の測定区間131、132、133のいずれかに複数の対象物の存在を検知し(図2(a)では0m〜2m及び2m〜4mの範囲の測定区間にそれぞれ2つの対象物の存在を検知することとなる。)且つ複数の対象物同士の距離が複数の対象物の属する測定区間についての測定用送信パルス波の基となる測定用送信パルスのパルス幅では距離分解能以下と判断すると(図2(c)に示す測定用送信パルス93のパルス幅t2では2m〜4mの範囲の測定区間内の2つの対象物間の距離が距離分解能以下であることを判断することとなる。)、可変幅パルス発生回路23及び基準信号発振器22に向けて結果信号を出力する。この結果信号の取得に起因して、基準信号発振器22は基準信号を出力し、可変幅パルス発生回路23は基準信号発振器22からの基準信号を利得制御用送信パルス91のパルス幅t1と同じパルス幅の送信パルスにして出力する。信号処理回路41は、結果信号の出力によって可変幅パルス発生回路23に利得制御用送信パルス91のパルス幅t1と同じパルス幅の送信パルスを出力させることができる。そして、信号処理回路41は、可変幅パルス発生回路23からの送信パルスを基にした送信パルス波が変調器25から出力されてから、出力された送信パルス波によって得られる受信パルスがコンパレータ39a、39bから出力されるまでの時間に基づいて複数の対象物までの距離をそれぞれ算出する。なお、複数の対象物に対する距離分解能の妥当性は、信号処理回路41が予め可変幅パルス発生回路23から出力される測定用送信パルスのパルス幅を予め記憶しておき、後に記憶した図2(a)に示す受信パルス101a、101b、101c、101d、101eの受信間隔と各測定区間に対応した測定用送信パルスのパルス幅とを比較することにより判断することができる。
【0051】
ここで、図1、図2及び後述の動作フローを参照して、対象物までの距離測定の手順について説明する。
【0052】
図4は、パルス波レーダー装置の動作フローの一例を示した図である。図4において、61から69、71から79、及び81から89はそれぞれ手順を示している。
【0053】
まず、手順61において可変幅パルス発生回路23は、図2(a)に示す1巡目の利得制御用送信パルス91を出力する。可変幅パルス発生回路23からの利得制御用送信パルス91は、変調器25において発振器24からの搬送波周波数の信号を変調して送信アンテナ26から利得制御用送信パルス波として放射される。その後、利得制御用送信パルス波は、対象物で反射し受信パルス波として受信アンテナ31で受信される。受信アンテナ31からの受信パルス波は、高周波増幅器32、33を介して90度移相器34で分離され互いに90度の位相差を付されてミキサ36a、36bにおいて復調され受信パルスとして出力される。ミキサ36a、36bからの受信パルスは、中間周波増幅器37a、37bを介してコンパレータ39a、39bで基準電圧と比較されて基準電圧との差分に応じて信号処理回路41に向けて出力される。そして、手順62において信号処理回路41は、利得制御用送信パルス波の伝搬往復時間に対応して得られる図2(a)に示す受信パルス101a、101b、101c、101d、101eを取得し、受信パルス101a、101b、101c、101d、101eのそれぞれの受信タイミング及び振幅を記憶する。
【0054】
次に、手順63において自動利得制御信号生成回路51は、信号処理回路41に記憶された受信パルス101a、101b、101c、101d、101eの振幅に基づいて、受信パルス101a、101b、101c、101d、101eを反転させた利得制御信号105a、105b、105c、105d、105eを生成して出力する。
【0055】
次に、手順64において信号処理回路41は、受信パルス101a、101b、101c、101d、101eの受信間隔から図2に示す2巡目、3巡目、4巡目の測定用送信パルス波の基となる測定用送信パルスの測定距離範囲内に対象物が複数あるかを判断する。本実施形態では、0mから2mの測定区間に受信パルス101a、101b及び2mから4mの測定区間に受信パルス101c、101dが存在しているため、この各区間にそれぞれ2つの対象物があることを判断することとなる。この場合、図4では、次の手順65に進む。一方、手順64においていずれの測定区分にも複数の対象物を検知しなかったときは、手順71に進む。なお、本実施形態では、手順65に進むため、手順71からの流れについては、後述する。
【0056】
次に、手順65において信号処理回路41は、図2(a)の受信パルス101a、101b、101c、101d、101eの受信間隔と各測定区間に対応した測定用送信パルス93、94のパルス間隔t2、t3とを比較して、可変幅パルス発生回路23から図2(b)、(c)に示す3巡目、4巡目に出力される測定用送信パルス93、94のパルス幅t2、t3が、複数の対象物の属する測定区間についての対象物同士の距離に対して距離分解能以下かを判断する。本実施形態では、2mから4mの測定区間の受信パルス101c、101d間の幅が測定用送信パルス93のパルス幅t2以下となるため、測定用送信パルス93のパルス幅t2が距離分解能以下となる。そのため、距離分解能以下と判断し、手順66に進む。一方、手順65においていずれの測定区分においても距離分解能より大きいと判断したときは、手順71に進む。なお、本実施形態では、手順66に進むため、手順71からの流れについては、後述する。
【0057】
次に、手順66において信号処理回路41は、いずれの巡目に出力される測定用送信パルスのパルス幅が距離分解能以下なのかを判断して後段のいずれの手順に進むかを決定する。本実施形態では、前述のように2mから4mの測定区間における受信パルス101c、101dに対する測定用送信パルス93のパルス幅t2が距離分解能以下であるため、手順87に進む。一方、4巡目のみの測定用送信パルス94のパルス幅t3が距離分解能以下である場合は、手順81に進み、3、4巡目の測定用送信パルス93、94のパルス幅t2、t3が共に距離分解能以下である場合は、手順67に進む。なお、本実施形態では、手順87に進むため、手順67、81からの流れについては、後述する。
【0058】
次に、手順87において可変幅パルス発生回路23は、図2(b)に示す2巡目の測定用送信パルス波の基となる測定用送信パルス92を出力する。そして、手順88において高周波増幅器32、33、中間周波増幅器37a、37bは、自動利得制御信号生成回路51からの利得制御信号105a、105b、105c、105d、105eに基づいて、測定用送信パルス92によって得られる受信パルス波又は受信パルスに対して利得制御を行って振幅dで一定の受信パルス波又は受信パルスとして出力する。手順89において信号処理回路41は、測定用送信パルス92と測定用送信パルス92によって得られる受信パルス102a、102b、102c、102dとの時間差から、0mから2m及び2mから4mの測定区間にある対象物までの距離を算出する。
【0059】
次に、手順77において可変幅パルス発生回路23は、図2(d)に示す4巡目の測定用送信パルス波の基となる測定用送信パルス94を出力する。そして、手順78において高周波増幅器32、33、中間周波増幅器37a、37bは、自動利得制御信号生成回路51からの利得制御信号105a、105b、105c、105d、105eに基づいて、測定用送信パルス94によって得られる受信パルス波又は受信パルスに対して利得制御を行って振幅dで一定の受信パルス波又は受信パルスとして出力する。手順79において信号処理回路41は、測定用送信パルス94と測定用送信パルス94によって得られる受信パルス104eとの時間差から、4mから8mの測定区間にある対象物までの距離を算出する。そしてリターンから再度スタートに戻り手順を繰り返す。
【0060】
次に、手順71から手順76までの流れ、手順67から手順69までの流れ、及び手順81から手順86までの流れについて説明する。
【0061】
手順64でいずれの測定区間にも複数の対象物を検知しなかったとき、又は手順65でいずれの測定区間に対応するパルス幅が距離分解能より大きいときは、手順71に進み、手順71において可変幅パルス発生回路23は、図2(b)に示す2巡目の測定用送信パルス波の基となる測定用送信パルス92を出力する。そして、手順72において高周波増幅器32、33、中間周波増幅器37a、37bは、自動利得制御信号生成回路51からの利得制御信号105a、105b、105c、105d、105eに基づいて、測定用送信パルス92によって得られる受信パルス波又は受信パルスに対して利得制御を行って振幅dで一定の受信パルス波又は受信パルスとして出力する。手順73において信号処理回路41は、測定用送信パルス92と測定用送信パルス92によって得られる受信パルス102a、102bとの時間差から、0mから2mの測定区間にある対象物までの距離を算出する。
【0062】
次に、手順74において可変幅パルス発生回路23は、図2(c)に示す3巡目の測定用送信パルス波の基となる測定用送信パルス93を出力する。そして、手順75において高周波増幅器32、33、中間周波増幅器37a、37bは、自動利得制御信号生成回路51からの利得制御信号105a、105b、105c、105d、105eに基づいて、測定用送信パルス93によって得られる受信パルス波又は受信パルスに対して利得制御を行って振幅dで一定の受信パルス波又は受信パルスとして出力する。手順76において信号処理回路41は、測定用送信パルス93と測定用送信パルス93によって得られる受信パルス103dとの時間差から、2mから4mの測定区間にある対象物までの距離を算出する。なお、本実施形態では、2mから4mの測定区間にある対象物は2つ存在するが、1つの対象物として距離の算出がされる。なお、手順77以降の処理は、前述した通りである。
【0063】
また、手順66において4巡目のみのパルス幅が距離分解能以下である場合は、手順81に進み、手順81において可変幅パルス発生回路23は、図2(b)に示す2巡目の測定用送信パルス波の基となる測定用送信パルス92を出力する。そして、手順82において高周波増幅器32、33、中間周波増幅器37a、37bは、自動利得制御信号生成回路51からの利得制御信号105a、105b、105c、105d、105eに基づいて、測定用送信パルス92によって得られる受信パルス波又は受信パルスに対して利得制御を行って振幅dで一定の受信パルス波又は受信パルスとして出力する。手順83において信号処理回路41は、測定用送信パルス92と測定用送信パルス92によって得られる受信パルス102a、102b、102eとの時間差から、0mから2m及び4mから8mの測定区間にある対象物までの距離を算出する。
【0064】
次に、手順84において可変幅パルス発生回路23は、図2(c)に示す3巡目の測定用送信パルス波の基となる測定用送信パルス93を出力する。そして、手順85において高周波増幅器32、33、中間周波増幅器37a、37bは、自動利得制御信号生成回路51からの利得制御信号105a、105b、105c、105d、105eに基づいて、測定用送信パルス93によって得られる受信パルス波又は受信パルスに対して利得制御を行って振幅dで一定の受信パルス波又は受信パルスとして出力する。手順86において信号処理回路41は、測定用送信パルス93と測定用送信パルス93によって得られる受信パルス103dとの時間差から、2mから4mの測定区間にある対象物までの距離を算出する。なお、本実施形態では、2mから4mの測定区間にある対象物は2つ存在するが、1つの対象物として距離の算出がされる。そしてリターンから再度スタートに戻り手順を繰り返す。
【0065】
また、手順66において3、4巡目のパルス幅が共に距離分解能以下である場合は、手順67に進み、手順67において可変幅パルス発生回路23は、図2(b)に示す2巡目の測定用送信パルス波の基となる測定用送信パルス92を出力する。そして、手順67において高周波増幅器32、33、中間周波増幅器37a、37bは、自動利得制御信号生成回路51からの利得制御信号105a、105b、105c、105d、105eに基づいて、測定用送信パルス92によって得られる受信パルス波又は受信パルスに対して利得制御を行って振幅dで一定の受信パルス波又は受信パルスとして出力する。手順68において信号処理回路41は、測定用送信パルス92と測定用送信パルス92によって得られる受信パルス102a、102b、102c、102d、102eとの時間差から、0mから2m、2mから4m、及び4mから8mの測定区間にある対象物までの距離を算出する。そしてリターンから再度スタートに戻り手順を繰り返す。
【0066】
このようにして、複数の対象物までの距離を算出することにより、パルス波レーダー装置10は、パルス幅の広い測定用送信パルス波では距離分解能が不足するときには、パルス幅の狭い測定用送信パルス波で距離分解能を上げて対象物の距離を測定するので、複数の対象物のそれぞれに対する距離の測定を維持することができる。なお、本実施形態では、手順66において3通りの判断を行って、なるべく各測定区間に対応するパルス幅の測定用送信パルスで対象物の測定を行っているが、手順65において、いずれかの測定区間の対象物同士の距離が距離分解能以下と判断したときに、パルス幅の短い図2(b)の2巡目の測定用送信パルス92によりすべての対象物の測定を行うこととしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のレーダー装置は、車両の衝突防止や車線変更アシストを目的としたレーダー装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】1実施形態に係るパルス波レーダー装置の構成を説明するブロック図である。
【図2】パルス波レーダー装置で処理する送信パルス及び受信パルスを含むタイミングチャートの一例を示した図である。
【図3】車両と車両に搭載されたパルス波レーダー装置の測定範囲の一例を示した概略図である。
【図4】パルス波レーダー装置の動作フローの一例を示した図である。
【符号の説明】
【0069】
5:対象物、10:パルス波レーダー装置、21:発振器、22:基準信号発振器、23:可変幅パルス発生回路、24:発振器、25:変調器、26:送信アンテナ
31:受信アンテナ、32:高周波増幅器、33:高周波増幅器、34:90度移相器、35:分配器、36a:ミキサ、36b:ミキサ、37a:中間周波増幅器、37b:中間周波増幅器、38:基準電圧発生回路、39a:コンパレータ、39b:コンパレータ、41:信号処理回路、51:自動利得制御信号生成回路
61−69:手順、71−79:手順、81−89:手順
91、95:利得制御用送信パルス、92−94、96−98:測定用送信パルス、101a、101b、101c、101d、101e:受信パルス、102a、102b、102c、102d、102e:受信パルス、103b、103d、103e:受信パルス、104d、104e:受信パルス、105a、105b、105c、105d、105e:利得制御信号
120:車両、131−133:測定区間、141−143:遠端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信パルスで変調した送信パルス波を送出する送信回路と、
前記送信回路からの送信パルス波を放射する送信アンテナと、
前記送信アンテナからの送信パルス波のうち対象物で反射した受信パルス波を受信する受信アンテナと、
前記受信アンテナからの受信パスル波を復調して受信パルスを出力する利得制御可能な受信回路と、
前記受信回路での利得の制御用に前記送信回路から送出される利得制御用送信パルス波によって得られる前記受信パルスの振幅に応じた利得制御信号を生成し、前記対象物の測定用に前記利得制御用送信パルス波の後に前記送信回路から送出される測定用送信パルス波によって得られる前記受信パルス波又は前記受信パルスに対する利得を前記利得制御信号で制御する利得制御回路と、
を備えるパルス波レーダー装置。
【請求項2】
前記送信回路は、前記パルス波レーダー装置の測定する前記対象物までの距離に応じて予め定められた複数の測定区間のうち前記パルス波レーダー装置から遠い測定区間ほどにパルス幅の広い前記測定用送信パルス波を送出することを特徴とする請求項1に記載のパルス波レーダー装置。
【請求項3】
前記複数の測定区間は、前記パルス波レーダー装置から前記複数の測定区間の各区間の遠端までの距離が等比級数で定められており、
前記送信回路は、前記各区間の遠端までの距離に比例したパルス幅の前記測定用送信パルス波を送出することを特徴とする請求項2に記載のパルス波レーダー装置。
【請求項4】
前記利得制御用送信パルス波によって得られる前記受信パルスに基づいて前記複数の測定区間のいずれかに複数の対象物の存在を検知し且つ前記複数の対象物の属する前記測定区間についての前記測定用送信パルス波のパルス幅が前記複数の対象物同士の距離に対する距離分解能以下と判断すると、前記送信回路に前記測定区間についての前記測定用送信パルス波として前記利得制御用送信パルス波のパルス幅と同じパルス幅の送信パルス波を送出させる判断回路をさらに備えることを特徴とする請求項2又は3に記載のパルス波レーダー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−170819(P2007−170819A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364202(P2005−364202)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】