パルス発生回路
【課題】導通経路が長くなってもパルス幅が狭くピーク電圧が高いパルス電圧を発生するパルス発生回路を提供する。
【解決手段】正極から負極へ至る第1の導通経路にインダクタと第1のスイッチとが挿入される。第1の導通経路には正極に近い第1の分岐点と負極に近い第2の分岐点とがある。第2の導通経路は第1の分岐点から第2の分岐点へ至る。第2の導通経路にはトランスの1次側巻線と第2のスイッチとが挿入される。第1のスイッチ及び第2のスイッチは制御回路により制御される。トランスはインダクタから独立している。インダクタ及び第1のスイッチのうちの一方が第1の分岐点と第2の分岐点との間に挿入され、他方が第1の分岐点と第2の分岐点との間以外に挿入される。第1の期間に第1の導通経路が閉じられ前記第2の導通経路が開かれ、第1の期間に続く第2の期間に第1の導通経路が開かれ第2の導通経路が閉じられる。
【解決手段】正極から負極へ至る第1の導通経路にインダクタと第1のスイッチとが挿入される。第1の導通経路には正極に近い第1の分岐点と負極に近い第2の分岐点とがある。第2の導通経路は第1の分岐点から第2の分岐点へ至る。第2の導通経路にはトランスの1次側巻線と第2のスイッチとが挿入される。第1のスイッチ及び第2のスイッチは制御回路により制御される。トランスはインダクタから独立している。インダクタ及び第1のスイッチのうちの一方が第1の分岐点と第2の分岐点との間に挿入され、他方が第1の分岐点と第2の分岐点との間以外に挿入される。第1の期間に第1の導通経路が閉じられ前記第2の導通経路が開かれ、第1の期間に続く第2の期間に第1の導通経路が開かれ第2の導通経路が閉じられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス発生回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、従来の誘導エネルギー蓄積型のパルス発生回路の一例を示す。
【0003】
特許文献1のパルス発生回路においては、直流源(直流電源部12)の正極から負極へ至る1次側の導通経路にトランス(トランス14)の1次側巻線(一次巻線26)とスイッチ(スイッチSW)とが挿入される。スイッチによる1次側の導通経路の開閉は、制御回路(制御回路16)により制御される。第1の期間(期間T1)には、スイッチにより1次側の導通経路が閉じられ、トランスに誘導エネルギーが蓄積される。第1の期間に続く第2の期間(期間T2)には、スイッチにより1次側の導通経路が開かれ、2次側巻線から2次側の導通経路を経由して負荷へトランスにより昇圧されたパルス電圧が出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−5498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のパルス発生回路においては、導通経路が長くなるとパルス幅が狭くピーク電圧が高いパルス電圧の発生が困難になる場合がある。
【0006】
例えば、2次側の導通経路が長くなると、2次側の導通経路の寄生キャパシタンスが増加し、トランスの励磁インダクタンスと2次側の導通経路の寄生キャパシタンス等からなる合成キャパシタンスとにより形成される共振回路の共振周波数が低下し、パルス幅が短いパルス電圧の発生が困難になる。2次側の導通経路の寄生キャパシタンスは、1次側の導通経路の寄生キャパシタンスと比較すると、トランスの巻数比の2乗倍の寄与を共振周波数にもたらし、影響が大きい。
【0007】
また、2次側の導通経路からのノイズの放射を抑制するために2次側の導通経路に同軸ケーブルが用いられると、2次側の導通経路のキャパシタンスがさらに増加し、パルス幅が短いパルス電圧の発生がさらに困難になる。
【0008】
一方、1次側の導通経路が長くなると、1次側の導通経路の寄生インダクタンスが増加し、1次側巻線に印加される電圧が低くなり、トランスへの誘導エネルギーの蓄積が妨げられ、ピーク電圧が高いパルス電圧の発生が困難になる。
【0009】
本発明は、この問題を解決するためになされ、本発明の目的は、導通経路が長くなってもパルス幅が狭くピーク電圧が高いパルス電圧を発生するパルス発生回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明のパルス発生回路においては、一端が直流源の正極に接続され他端が直流源の負極に接続される第1の導通経路にインダクタと第1のスイッチとが挿入される。第1の導通経路は、相対的に正極の近くにある第1の分岐点と相対的に負極の近くにある第2の分岐点とを持つ。第2の導通経路の一端は、第1の分岐点に接続され、第2の導通経路の他端は、第2の分岐点に接続される。第2の導通経路には、トランスの1次側巻線と第2のスイッチとが挿入される。第1のスイッチによる第1の導通経路の開閉及び第2のスイッチによる第2の導通経路の開閉は、制御回路により制御される。トランスはインダクタから独立している。インダクタ及び第1のスイッチのうちの一方が第1の分岐点と第2の分岐点との間に挿入され、インダクタ及び第1のスイッチのうちの他方が第1の分岐点と第2の分岐点との間以外に挿入される。制御回路は、第1の期間に、第1のスイッチに第1の導通経路を閉じさせ、第2のスイッチに第2の導通経路を開かせ、第1の期間に続く第2の期間に、第1のスイッチに第1の導通経路を開かせ、第2のスイッチに第2の導通経路を閉じさせる。
【0011】
第2の発明のパルス発生回路では、第1の発明のパルス発生回路において、第2の導通経路の1次側巻線と第2のスイッチとの間に第3の分岐点が設けられる。電気抵抗の一端が第3の分岐点に接続され、第2の期間に流れる電流とは逆向きの電流を第1の期間に1次側巻線に流す電位の箇所に電気抵抗の他端が接続される。
【0012】
第3の発明のパルス発生回路では、第1又は第2の発明のパルス発生回路において、第1のスイッチ及び第2のスイッチのいずれも経由せずにインダクタ及び1次側巻線が直列接続される。インダクタ及び1次側巻線の直列接続体の一端にダイオードのアノードが接続され、直列接続体の他端にダイオードのカソードが接続される。第1のスイッチが第1の導通経路を開いたときに流れる誘導電流により順方向電圧がダイオードに印加される。
【0013】
第4の発明のパルス発生回路では、制御回路は、第2の期間に続く第3の期間に、第1のスイッチに第1の導通経路を開かせ、第2のスイッチに第2の導通経路を開かせる。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、インダクタに誘導エネルギーが蓄積される第1の期間に第2の導通経路に大きな電流が流れない。このため、第2の導通経路が長くなっても、トランスへの誘導エネルギーの蓄積が妨げられず、ピーク電圧が高いパルス電圧が発生する。また、第2の導通経路が長くなっても、寄生キャパシタンスの影響は小さく、パルス幅が短いパルス電圧が発生する。
【0015】
第2の発明によれば、第1の期間にトランスが初期化され、均一なパルス電圧が繰り返し発生する。
【0016】
第3の発明によれば、第2の期間に第2の導通経路が偶発的に閉じられなかった場合でも、インダクタに蓄積された誘導エネルギーが放出され、誘導エネルギーが残存しているインダクタにさらに誘導エネルギーが蓄積されることが抑制され、均一なパルス電圧が繰り返し発生する。
【0017】
第4の発明によれば、電力が回生され、パルス発生回路の効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】パルス発生回路の回路図である。
【図2】パルス発生回路の回路図である。
【図3】パルス発生回路の回路図である。
【図4】パルス発生回路の回路図である。
【図5】パルス発生回路の回路図である。
【図6】パルス発生回路の回路図である。
【図7】パルス発生回路の回路図である。
【図8】パルス発生回路の回路図である。
【図9】第1のスイッチの状態の時間変化を示すタイムチャートである。
【図10】第2のスイッチの状態の時間変化を示すタイムチャートである。
【図11】第1の付加回路が付加されたパルス発生回路の回路図である。
【図12】トランスのコアのB−Hカーブを示す図である。
【図13】第2の付加回路が付加されたパルス発生回路の回路図である。
【図14】パルス発生回路の回路図である。
【図15】パルス発生回路の動作を示すタイムチャートである。
【図16】パルス発生回路の動作を示すタイムチャートである。
【図17】パルス発生回路の動作を示すタイムチャートである。
【図18】パルス発生回路の動作を示すタイムチャートである。
【図19】パルス発生回路の動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<パルス発生回路の基本形>
(概略)
図1から図8までの回路図は、それぞれ、本発明の基本形の誘導エネルギー蓄積型のパルス発生回路100a,100b,100c,100d,100e,100f,100g及び100hを示す。
【0020】
図1から図8までに示すように、パルス発生回路100a,100b,100c,100d,100e,100f,100g及び100hにおいては、一端が直流源(直流電源)122の正極に接続され他端が直流源122の負極に接続される第1の導通経路(太線)102にインダクタ104と第1のスイッチ106とが直列に挿入される。第1の導通経路102は、相対的に正極の近くにある第1の分岐点108と相対的に負極の近くにある第2の分岐点110とを持つ。第2の導通経路(細線)112の一端は、第1の分岐点108に接続され、第2の導通経路112の他端は、第2の分岐点110に接続される。第2の導通経路112には、トランス114の1次側巻線116と第2のスイッチ118とが直列に挿入される。第1のスイッチ106による第1の導通経路102の開閉及び第2のスイッチ118による第2の導通経路112の開閉は、制御回路120により制御される。誘導エネルギー蓄積用のインダクタ104と変圧用のトランス114とは独立している。「独立」とは、トランス114の巻線とインダクタ104とが磁気的に結合されないことを意味する。
【0021】
(第1のスイッチ106及び第2のスイッチ118の状態の時間変化)
図9及び図10のタイムチャートは、それぞれ、第1のスイッチ106及び第2のスイッチ118の状態の時間変化を示す。
【0022】
図9及び図10に示すように、第1の期間T1に、第1のスイッチ106により第1の導通経路102が閉じられ(第1のスイッチON)、第2のスイッチ118により第2の導通経路112が開かれる(第2のスイッチOFF)。これにより、図1から図8までに示すように、正極から負極へ向かう電流IT1が第1の導通経路102に流れ、インダクタ104に誘導エネルギーが蓄積される。
【0023】
図9及び図10に示すように、第1の期間T1に続く第2の期間T2に、第1のスイッチ106により第1の導通経路102が開かれ(第1のスイッチOFF)、第2のスイッチ118により第2の導通経路112が閉じられる(第2のスイッチON)。これにより、図1から図8までに示すように、第2の導通経路112に電流(誘導電流)IT2が流れ、トランス114の2次側巻線124からパルス電圧が出力される。
【0024】
図1から図4までに示すように、第1のスイッチ106が第1の分岐点108と第2の分岐点110との間に挿入され、第2の導通経路112が第1のスイッチ112を迂回する場合は、第1の分岐点108から第2の分岐点110へ向かって第2の導通経路112に電流IT2が流れる。図5から図8までに示すように、インダクタ104が第1の分岐点108と第2の分岐点110との間に挿入され第2の導通経路112がインダクタ104を迂回する場合は、第2の分岐点110から第1の分岐点108へ向かって第2の導通経路112に電流IT2が流れる。
【0025】
パルス発生回路100a,100b,100c,100d,100e,100f,100g及び100hにおいては、インダクタ104に誘導エネルギーが蓄積される第1の期間T1に第2の導通経路112に大きな電流が流れない。このため、第2の導通経路112が長くなっても、インダクタ104への誘導エネルギーの蓄積が妨げられず、ピーク電圧が高いパルス電圧が発生する。また、第2の導通経路112が長くなっても、第2の導通経路112の寄生キャパシタンスの影響は小さく、パルス幅が短いパルス電圧が発生する。さらに、第2の導通経路112が長くなっても、第2の導通経路112からのノイズの放射が抑制される。
【0026】
(第1のスイッチ106及び第2のスイッチ118)
第1のスイッチ106及び第2のスイッチ118は、それぞれ、MOSFET(酸化金属半導体電界効果トランジスタ)・SI(静電誘導)サイリスタ・IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)・バイポーラトランジスタ・GTO(ゲートターンオフ)サイリスタ・SIT(静電誘導トランジスタ)等のスイッチング素子により第1の導通経路102及び第2の導通経路112を開閉する。第1のスイッチ106及び第2のスイッチ118が、それぞれ、同種又は異種の2個以上のスイッチング素子により第1の導通経路102及び第2の導通経路112を開閉してもよい。
【0027】
(インダクタ104及び第1のスイッチ106の挿入位置)
図1から図4までに示すように、パルス発生回路100a,100b,100c及び100dにおいては、第1の分岐点108と第2の分岐点110との間に第1のスイッチ106が挿入され、第1の分岐点108と第2の分岐点110との間以外にインダクタ104が挿入される。
【0028】
この場合は、直流源122、インダクタ104及び1次側巻線116を含む閉回路が第2の期間T2に形成される。したがって、第2の期間T2に1次側巻線116に印加される電圧は、直流源122の電圧とインダクタ104の誘導起電力との和に一致する。
【0029】
インダクタ104は、図1及び図2に示すように正極と第1の分岐点108との間に挿入されてもよいし、図3及び図4に示すように負極と第2の分岐点110との間に挿入されてもよい。ただし、正極と第1の分岐点108との間にインダクタ104が挿入されることが望ましい。正極と第1の分岐点108との間にインダクタ104が挿入されると、第1のスイッチ106の一端が負極に接続され、スイッチングが容易になるからである。
【0030】
逆に、図5から図8までに示すように、パルス発生回路100e,100f,100g及び100hにおいては、第1の分岐点108と第2の分岐点110との間にインダクタ104が挿入され、第1の分岐点108と第2の分岐点110との間以外に第1のスイッチ106が挿入される。
【0031】
この場合は、インダクタ104及び1次側巻線116を含む閉回路が第2の期間T2に形成される。したがって、第2の期間T2に1次側巻線116に印加される電圧は、インダクタ104の誘導起電力に一致する。
【0032】
第1のスイッチ106は、図5及び図6に示すように正極と第1の分岐点108との間に挿入されてもよいし、図7及び図8に示すように負極と第2の分岐点110との間に挿入されてもよい。ただし、負極と第2の分岐点110との間に第1のスイッチ106が挿入されることが望ましい。負極と第2の分岐点110との間に第1のスイッチ106が挿入されると、第2のスイッチ118の一端が負極と同電位になり、スイッチングが容易になるからである。
【0033】
より一般的に言えば、インダクタ104及び第1のスイッチ106のうちの一方が第1の分岐点108と第2の分岐点110との間に挿入され、インダクタ104及び第1のスイッチ106のうちの他方が第1の分岐点108と第2の分岐点110との間以外に挿入される。ただし、第1の分岐点108と第2の分岐点110との間に第1のスイッチ106が挿入され、第1の分岐点108と第2の分岐点110との間以外にインダクタ104が挿入されることが望ましい。インダクタ104及び第1のスイッチ106がこのように挿入されると、1次側巻線116に印加される電圧が直流源122の電圧だけ大きくなるからである。
【0034】
(第2の導通経路112への同軸ケーブルの使用)
第2の導通経路112には同軸ケーブルが使用されることが望ましい。特に、第2の導通経路112の第1の分岐点108と1次側巻線116との間の少なくとも一部が内部導体からなり、第2の導通経路112の第2の分岐点110と1次側巻線116との間の少なくとも一部が当該内部導体と同軸配置される外部導体からなることが望ましい。これにより、第2の導通経路112からのノイズの放射が抑制される。
【0035】
(1次側巻線116及び第2のスイッチ118の挿入位置)
図1、図3、図5及び図7に示すように、第2の導通経路112の第1の分岐点108寄りに1次側巻線116が挿入され、第2の導通経路112の第2の分岐点110寄りに第2のスイッチ118が挿入されてもよいし、図2、図4、図6及び図8に示すように、第2の導通経路112の第1の分岐点108寄りに第2のスイッチ118が挿入され、第2の導通経路112の第2の分岐点110寄りに1次側巻線116が挿入されてもよい。ただし、1次側巻線116及び第2のスイッチ118が前者のように挿入されることが望ましい。1次側巻線116及び第2のスイッチ118が前者のように挿入されると、第2のスイッチ118の一端が負極と同電位になり、スイッチングが容易になるからである。また、第2の導通経路112の第2の分岐点110から1次側巻線116までの部分が第2の期間T2に負極とほぼ同電位になり、第2の導通経路112に同軸ケーブルが使用された場合に外部導体が負極とほぼ同電位になり、第2の導通経路112からのノイズの放射が抑制されるからである。
【0036】
<パルス発生回路の基本形の変形>
(第1の付加回路)
図11の回路図は、第2の期間T2に流れる電流IT2とは逆向きのリセット電流IRを第1の期間T1に1次側巻線116に流す第1の付加回路126がパルス発生回路100aに付加されたパルス発生回路100iを示す。第1の付加回路126がパルス発生回路100aに付加されると、第1の期間T1にトランス114が初期化され、均一なパルス電圧が繰り返し発生する。
【0037】
図11に示すように、パルス発生回路100iにおいては、第2の導通経路112の1次側巻線116と第2のスイッチ118との間に第3の分岐点128が設けられ、第1の導通経路102の正極とインダクタ104との間に第4の分岐点132が設けられ、電気抵抗130の一端が第3の分岐点128に接続され、電気抵抗130の他端が第4の分岐点132に接続される。これにより、第2の導通経路112が開かれている第1の期間T1に電気抵抗130を経由してリセット電流IRが1次側巻線116に流れる。電気抵抗130の他端は、第2の期間T2に流れる電流IT2とは逆向きのリセット電流IRを1次側巻線116に流す電位の箇所に接続されればよく、電気抵抗130の他端は、第4の分岐点132以外に接続されてもよく、例えば、第4の分岐点132以外の正極と同電位の箇所に接続されてもよい。
【0038】
電気抵抗130の大きさは、第1の期間T1にリセット電流IRによりトランス114の磁性体コア134が図12に示すB−Hカーブにおける飽和状態S1となるように決められる。磁性体コア134の状態は、第2の期間T2に、図12に示すB−Hカーブにおける飽和状態S2の側へ向かう。
【0039】
パルス発生回路100b,100c,100d,100e,100f,100g又は100hに第1の付加回路が付加されてもよい。パルス発生回路100b,100c,100d,100e,100f,100g又は100hに第1の付加回路が付加される場合も、第2の導通経路112の1次側巻線116と第2のスイッチ118との間に第3の分岐点が設けられ、電気抵抗の一端が第3の分岐点に接続される。電気抵抗の他端は、第2の期間T2に流れる電流IT2とは逆向きのリセット電流IRを1次側巻線116に流す電位の箇所に接続されればよいが、直流源122とは別の電源が必要となる場合もある。例えば、パルス発生回路100bに第1の付加回路が付加される場合は、第1の分岐点108から第2の分岐点110へ向かって第2の導通経路112に電流IT2が流れるため、1次側巻線116が挿入される第2の導通経路112の第2の分岐点110と第3の分岐点との間に第2の分岐点110から第3の分岐点へ向かってリセット電流IRが流れる必要がある。したがって、電気抵抗の他端は負極より電位が低い箇所に接続されなければならず、直流源122とは別の電源が必要となる。すなわち、パルス発生回路100aに第1の付加回路126が付加される場合は、電気抵抗130の他端が単に正極と同電位の箇所に接続されればよく、直流源122とは別の電源は不要であり、パルス発生回路100aには、第1の付加回路126の付加が容易になるという利点もある。
【0040】
(第2の付加回路)
図13の回路図は、第2の期間T2に第2の導通経路112が偶発的に閉じられなかった場合にインダクタ104に蓄積された誘導エネルギーを放出する第2の付加回路136がパルス発生回路100aに付加されたパルス発生回路100jを示す。
【0041】
図13に示すように、パルス発生回路100jにおいては、第1のスイッチ106及び第2のスイッチ118のいずれも経由せずにインダクタ104と1次側巻線116とが直列接続されている。インダクタ104と1次側巻線116との直列接続体138にはダイオード140が並列接続される。ダイオード140のカソードは直列接続体138のインダクタ104の側の一端に接続され、ダイオード140のアノードは直列接続体138の1次側巻線116の側の他端に接続される。
【0042】
第1のスイッチ106により第1の導通経路102が閉じられ、第2のスイッチ118により第2の導通経路112が開かれている場合は、ダイオード140に逆方向電圧が印加され、ダイオード140に電流は流れない。したがって、第2の付加回路136は、インダクタ104への誘導エネルギーの蓄積を妨げない。
【0043】
逆に、第1のスイッチ106により第1の導通経路102が開かれ、第2のスイッチ118により第2の導通経路112が閉じられている場合も、ダイオード140に逆方向電圧が印加され、ダイオード140に電流は流れない。したがって、第2の付加回路136は、第2のスイッチ118が第2の導通経路112を正常に閉じた場合は、パルス電圧の出力を妨げない。
【0044】
しかし、第1のスイッチ106により第1の導通経路102が開かれ、第2のスイッチ118により第2の導通経路112が開かれ、インダクタ104に誘導エネルギーが蓄積されている場合は、ダイオード140に順方向電圧が印加され、インダクタ104及び1次側巻線116を含む閉回路が形成され、インダクタ104及び1次側巻線116を含む閉回路を誘導電流が流れる。すなわち、第2の期間T2に第2の導通経路112が偶発的に閉じられなかった場合でも、インダクタ104に蓄積された誘導エネルギーが放出され、誘導エネルギーが残存しているインダクタ104にさらに誘導エネルギーが蓄積されることが抑制され、均一なパルス電圧が繰り返し発生する。
【0045】
第1のスイッチ106及び第2のスイッチ118のいずれも経由せずにインダクタ104及び1次側巻線116が直列接続されるパルス発生回路100d,100e,100f,100g又は100hに第2の付加回路が付加されてもよい。パルス発生回路100d,100e,100f,100g又は100hに第2の付加回路が付加される場合も、インダクタ104と1次側巻線116との直列接続体138にダイオードが並列接続される。パルス発生回路100d,100e又は100gに第2の付加回路が付加される場合は、ダイオードのアノードが直列接続体138のインダクタ104の側の一端に接続され、ダイオードのカソードが直列接続体138の1次側巻線116の側の他端に接続される。パルス発生回路100f又は100hに第2の付加回路が付加される場合は、ダイオード140のアノードが直列接続体138の1次側巻線116の側の一端に接続され、ダイオードのカソードが直列接続体138のインダクタ104の側の他端に接続される。より一般的に言えば、第1のスイッチ106が第1の導通経路106を開いたときに流れる誘導電流によりダイオード140に順方向電圧が印加されるように直列接続体136とダイオードとが接続される。
【0046】
<パルス発生回路の具体例>
(概略)
図14の回路図は、より具体的な誘導エネルギー蓄積型のパルス発生回路1000を示す。パルス発生回路1000においては、第1のスイッチとしてSIサイリスタ1002及びMOSFET1004が選択され、第2のスイッチとしてMOSFET1006が選択され、第1の付加回路及び第2の付加回路が付加されている。
【0047】
(直流源1008からインダクタ1012への電流の供給)
図14に示すように、パルス発生回路1000は、一端が直流源1008の正極に接続され他端が直流源1008の負極に接続される第1の導通経路1010を備える。
【0048】
第1の導通経路1010には、インダクタ1012が挿入され、SIサイリスタ1002及びMOSFET1004が第1のスイッチとして挿入される。インダクタ1012の一端は正極に接続され、インダクタ1012の他端はSIサイリスタ1002のアノードに接続され、SIサイリスタ1002のカソードはMOSFET1004のドレインに接続され、MOSFET1004のソースは負極に接続される。直流源1008には直流の供給を安定化するキャパシタ1014が並列接続される。
【0049】
第1の導通経路1010は、直流源1008からインダクタ1012への電流の供給経路となる。したがって、SIサイリスタ1002及びMOSFET1004により第1の導通経路1010が閉じられると、直流源1008及びインダクタ1012を含む閉回路が形成され、インダクタ1012に電流が流れ、インダクタ1012に誘導エネルギーが蓄積される。
【0050】
(誘導電流の転流)
第1の導通経路1010は、相対的に正極の近くにある第1の分岐点1013と相対的に負極の近くにある第2の分岐点1014とを持つ。インダクタ1012は正極と第1の分岐点1013との間に挿入され、SIサイリスタ1002及びMOSFET1004は第1の分岐点1013と第2の分岐点1014との間に挿入される。
【0051】
パルス発生回路1000は、一端が第1の分岐点1013に接続され他端が第2の分岐点1014に接続される第2の導通経路1016をさらに備える。第2の導通経路1016の第1の分岐点1013寄りには昇圧パルストランス1018の1次側巻線1020が挿入され、第2の導通経路1016の第2の分岐点1014寄りにはMOSFET1006が第2のスイッチとして挿入される。1次側巻線1020の一端は第1の分岐点1013に接続され、1次側巻線1020の他端はMOSFET1006のドレインに接続され、MOSFET1006のソースは第2の分岐点1014に接続される。
【0052】
第2の導通経路1016は、SIサイリスタ1002及びMOSFET1004を迂回する第1の導通経路1010の迂回経路であり、誘導電流の転流経路となる。したがって、第1の分岐点1013と第2の分岐点1014との間に電圧が発生している状態においてMOSFET1006により第2の導通経路1016が閉じられると、SIサイリスタ1002及びMOSFET1004を迂回し直流源1008、インダクタ1012及び1次側巻線1020を含む閉回路が形成され、1次側巻線1020に誘導電流が流れ、2次側巻線1022からパルス電圧が出力される。
【0053】
(SIサイリスタ1002へのバイアスの付与)
SIサイリスタ1002のゲートは、ダイオード1024を経由して第1の導通経路1010の正極とインダクタ1012との間の正極と同電位の箇所に接続される。SIサイリスタ1002のゲートはダイオード1024のアノードに接続され、ダイオード1024のカソードは正極と同電位の箇所に接続される。
【0054】
MOSFET1004により第1の導通経路1010が閉じられると、SIサイリスタ1002のゲートに正バイアスが付与され、SIサイリスタ1002がターンオンする。MOSFET1004により第1の導通経路1010が開かれると、SIサイリスタ1002のカソードから流出していた電流がゲートへ転流し、SIサイリスタ1002からキャリアが排出されることにより、SIサイリスタ1002がターンオフする。SIサイリスタ1002が高速にターンオフすると、電圧の立ち上がりが急峻でパルス幅が短いパルス電圧が発生する。
【0055】
(第1の付加回路及び第2の付加回路)
第2の導通経路1016の1次側巻線1020とMOSFET1004との間には、第3の分岐点1026が設けられる。電気抵抗1028の一端は第3の分岐点1026に接続され、電気抵抗1028の他端は第1の導通経路1010の正極とインダクタ1012との間の正極と同電位の箇所に接続される。ダイオード1030のアノードは第3の分岐点1026に接続され、ダイオード1030のカソードは第1の導通経路1010の正極とインダクタ1012との間の正極と同電位の箇所に接続される。
【0056】
(動作)
図15から図19までのタイムチャートは、パルス発生回路1000の動作を示す。図15のタイムチャートは、MOSFET1004の状態S1の時間変化を示す。図16のタイムチャートは、MOSFET1006の状態S2の時間変化を示す。図17のタイムチャートは、第1の導通経路1010を流れる電流I1の時間変化を示す。図18のタイムチャートは、1次側巻線1020に印加される電圧V1の時間変化を示す。図19のタイムチャートは、1次側巻線1020を流れる電流I2の時間変化を示す。タイミングt0からt1までは、インダクタ1012に誘導エネルギーが蓄積される第1の期間T1である。タイミングt1からt2までは、パルス電圧が出力される第2の期間T2である。タイミングt2からt3までは電力が回生される第3の期間T3である。
【0057】
制御回路1032からMOSFET1004へのオン信号の入力がタイミングt0に始まると、図15に示すようにMOSFET1004がターンオンし、SIサイリスタ1002もターンオンし、第1の導通経路1010が閉じられる。第1の導通経路1010が閉じられると、図17に示すように電流I1が正方向に増加し始め、インダクタ1012への誘導エネルギーの蓄積が始まる。また、図18に示すように電圧V1が小さな負となり、昇圧パルストランス1018が初期化される。
【0058】
制御回路1032からMOSFET1004へのオン信号の入力がタイミングt1に終わると、図15に示すようにMOSFET1004がターンオフし、SIサイリスタ1002もターンオフし、第1の導通経路1010が開かれる。また、制御回路1032からMOSFET1006へのオン信号の入力が始まり、図16に示すようにMOSFET1006がターンオンし、第2の導通経路1016が閉じられる。第1の導通経路1010が開かれ第2の導通経路1016が閉じられると、図18に示すように電圧V1が正方向に急激に上昇し始め、図19に示すように電流I2が急激に増加し、2次側巻線1022からパルス電圧が出力される。その後に、図18に示すように電圧V1がピークに達し、図17及び図19に示すように電流I1及びI2が正から負へ反転する。
【0059】
SIサイリスタ1002及びMOSFET1004がターンオフし第1の導通経路1010が開かれるタイミングと、MOSFET1006がターンオンし第2の導通経路1016が閉じられるタイミングとは同時であることが望ましいが、第2の付加回路が付加されているため、第1の導通経路1010が開かれるのに若干遅れて第2の導通経路1016が閉じられても、パルス発生回路1000は概ね正常に動作する。
【0060】
制御回路1032からMOSFET1006へのオン信号の入力がタイミングt2に終わると、図16に示すようにMOSFET1006がターンオフし、第1の導通経路1010に加えて第2の導通経路1016も開かれる。第2の導通経路1016が開かれた後も、電流I1は負のまま減少し始める。電流I1により電力が回生され、パルス発生回路1000の効率が向上する。第1の導通経路1010が開かれているにもかかわらず電流I1が0にならないのは、SIサイリスタ1002のアノード・カソード間に接合容量が存在するからである。回生電流を流すためのダイオードを追加し、当該ダイオードのアノードをSIサイリスタ1002のカソードに接続し、当該ダイオードのカソードをSIサイリスタ1002のアノードに接続すれば、接合容量が小さくても電力が回生される。
【0061】
<用途>
上記のパルス発生回路は、どのように使用されてもよいが、例えば、パルスプラズマ放電を発生させる装置のパルス電源として使用される。パルスプラズマを発生させる装置には、例えば、プラズマCVD(化学気相蒸着)装置、ガス処理装置、表面処理装置等がある。
【符号の説明】
【0062】
100a,100b,100c,100d,100e,100f,100g,100h,100i,100j,1000 パルス発生回路
102,1010 第1の導通経路
112,1016 第2の導通経路
108,1012 第1の分岐点
110,1014 第2の分岐点
128,1026 第3の分岐点
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス発生回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、従来の誘導エネルギー蓄積型のパルス発生回路の一例を示す。
【0003】
特許文献1のパルス発生回路においては、直流源(直流電源部12)の正極から負極へ至る1次側の導通経路にトランス(トランス14)の1次側巻線(一次巻線26)とスイッチ(スイッチSW)とが挿入される。スイッチによる1次側の導通経路の開閉は、制御回路(制御回路16)により制御される。第1の期間(期間T1)には、スイッチにより1次側の導通経路が閉じられ、トランスに誘導エネルギーが蓄積される。第1の期間に続く第2の期間(期間T2)には、スイッチにより1次側の導通経路が開かれ、2次側巻線から2次側の導通経路を経由して負荷へトランスにより昇圧されたパルス電圧が出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−5498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のパルス発生回路においては、導通経路が長くなるとパルス幅が狭くピーク電圧が高いパルス電圧の発生が困難になる場合がある。
【0006】
例えば、2次側の導通経路が長くなると、2次側の導通経路の寄生キャパシタンスが増加し、トランスの励磁インダクタンスと2次側の導通経路の寄生キャパシタンス等からなる合成キャパシタンスとにより形成される共振回路の共振周波数が低下し、パルス幅が短いパルス電圧の発生が困難になる。2次側の導通経路の寄生キャパシタンスは、1次側の導通経路の寄生キャパシタンスと比較すると、トランスの巻数比の2乗倍の寄与を共振周波数にもたらし、影響が大きい。
【0007】
また、2次側の導通経路からのノイズの放射を抑制するために2次側の導通経路に同軸ケーブルが用いられると、2次側の導通経路のキャパシタンスがさらに増加し、パルス幅が短いパルス電圧の発生がさらに困難になる。
【0008】
一方、1次側の導通経路が長くなると、1次側の導通経路の寄生インダクタンスが増加し、1次側巻線に印加される電圧が低くなり、トランスへの誘導エネルギーの蓄積が妨げられ、ピーク電圧が高いパルス電圧の発生が困難になる。
【0009】
本発明は、この問題を解決するためになされ、本発明の目的は、導通経路が長くなってもパルス幅が狭くピーク電圧が高いパルス電圧を発生するパルス発生回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明のパルス発生回路においては、一端が直流源の正極に接続され他端が直流源の負極に接続される第1の導通経路にインダクタと第1のスイッチとが挿入される。第1の導通経路は、相対的に正極の近くにある第1の分岐点と相対的に負極の近くにある第2の分岐点とを持つ。第2の導通経路の一端は、第1の分岐点に接続され、第2の導通経路の他端は、第2の分岐点に接続される。第2の導通経路には、トランスの1次側巻線と第2のスイッチとが挿入される。第1のスイッチによる第1の導通経路の開閉及び第2のスイッチによる第2の導通経路の開閉は、制御回路により制御される。トランスはインダクタから独立している。インダクタ及び第1のスイッチのうちの一方が第1の分岐点と第2の分岐点との間に挿入され、インダクタ及び第1のスイッチのうちの他方が第1の分岐点と第2の分岐点との間以外に挿入される。制御回路は、第1の期間に、第1のスイッチに第1の導通経路を閉じさせ、第2のスイッチに第2の導通経路を開かせ、第1の期間に続く第2の期間に、第1のスイッチに第1の導通経路を開かせ、第2のスイッチに第2の導通経路を閉じさせる。
【0011】
第2の発明のパルス発生回路では、第1の発明のパルス発生回路において、第2の導通経路の1次側巻線と第2のスイッチとの間に第3の分岐点が設けられる。電気抵抗の一端が第3の分岐点に接続され、第2の期間に流れる電流とは逆向きの電流を第1の期間に1次側巻線に流す電位の箇所に電気抵抗の他端が接続される。
【0012】
第3の発明のパルス発生回路では、第1又は第2の発明のパルス発生回路において、第1のスイッチ及び第2のスイッチのいずれも経由せずにインダクタ及び1次側巻線が直列接続される。インダクタ及び1次側巻線の直列接続体の一端にダイオードのアノードが接続され、直列接続体の他端にダイオードのカソードが接続される。第1のスイッチが第1の導通経路を開いたときに流れる誘導電流により順方向電圧がダイオードに印加される。
【0013】
第4の発明のパルス発生回路では、制御回路は、第2の期間に続く第3の期間に、第1のスイッチに第1の導通経路を開かせ、第2のスイッチに第2の導通経路を開かせる。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、インダクタに誘導エネルギーが蓄積される第1の期間に第2の導通経路に大きな電流が流れない。このため、第2の導通経路が長くなっても、トランスへの誘導エネルギーの蓄積が妨げられず、ピーク電圧が高いパルス電圧が発生する。また、第2の導通経路が長くなっても、寄生キャパシタンスの影響は小さく、パルス幅が短いパルス電圧が発生する。
【0015】
第2の発明によれば、第1の期間にトランスが初期化され、均一なパルス電圧が繰り返し発生する。
【0016】
第3の発明によれば、第2の期間に第2の導通経路が偶発的に閉じられなかった場合でも、インダクタに蓄積された誘導エネルギーが放出され、誘導エネルギーが残存しているインダクタにさらに誘導エネルギーが蓄積されることが抑制され、均一なパルス電圧が繰り返し発生する。
【0017】
第4の発明によれば、電力が回生され、パルス発生回路の効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】パルス発生回路の回路図である。
【図2】パルス発生回路の回路図である。
【図3】パルス発生回路の回路図である。
【図4】パルス発生回路の回路図である。
【図5】パルス発生回路の回路図である。
【図6】パルス発生回路の回路図である。
【図7】パルス発生回路の回路図である。
【図8】パルス発生回路の回路図である。
【図9】第1のスイッチの状態の時間変化を示すタイムチャートである。
【図10】第2のスイッチの状態の時間変化を示すタイムチャートである。
【図11】第1の付加回路が付加されたパルス発生回路の回路図である。
【図12】トランスのコアのB−Hカーブを示す図である。
【図13】第2の付加回路が付加されたパルス発生回路の回路図である。
【図14】パルス発生回路の回路図である。
【図15】パルス発生回路の動作を示すタイムチャートである。
【図16】パルス発生回路の動作を示すタイムチャートである。
【図17】パルス発生回路の動作を示すタイムチャートである。
【図18】パルス発生回路の動作を示すタイムチャートである。
【図19】パルス発生回路の動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<パルス発生回路の基本形>
(概略)
図1から図8までの回路図は、それぞれ、本発明の基本形の誘導エネルギー蓄積型のパルス発生回路100a,100b,100c,100d,100e,100f,100g及び100hを示す。
【0020】
図1から図8までに示すように、パルス発生回路100a,100b,100c,100d,100e,100f,100g及び100hにおいては、一端が直流源(直流電源)122の正極に接続され他端が直流源122の負極に接続される第1の導通経路(太線)102にインダクタ104と第1のスイッチ106とが直列に挿入される。第1の導通経路102は、相対的に正極の近くにある第1の分岐点108と相対的に負極の近くにある第2の分岐点110とを持つ。第2の導通経路(細線)112の一端は、第1の分岐点108に接続され、第2の導通経路112の他端は、第2の分岐点110に接続される。第2の導通経路112には、トランス114の1次側巻線116と第2のスイッチ118とが直列に挿入される。第1のスイッチ106による第1の導通経路102の開閉及び第2のスイッチ118による第2の導通経路112の開閉は、制御回路120により制御される。誘導エネルギー蓄積用のインダクタ104と変圧用のトランス114とは独立している。「独立」とは、トランス114の巻線とインダクタ104とが磁気的に結合されないことを意味する。
【0021】
(第1のスイッチ106及び第2のスイッチ118の状態の時間変化)
図9及び図10のタイムチャートは、それぞれ、第1のスイッチ106及び第2のスイッチ118の状態の時間変化を示す。
【0022】
図9及び図10に示すように、第1の期間T1に、第1のスイッチ106により第1の導通経路102が閉じられ(第1のスイッチON)、第2のスイッチ118により第2の導通経路112が開かれる(第2のスイッチOFF)。これにより、図1から図8までに示すように、正極から負極へ向かう電流IT1が第1の導通経路102に流れ、インダクタ104に誘導エネルギーが蓄積される。
【0023】
図9及び図10に示すように、第1の期間T1に続く第2の期間T2に、第1のスイッチ106により第1の導通経路102が開かれ(第1のスイッチOFF)、第2のスイッチ118により第2の導通経路112が閉じられる(第2のスイッチON)。これにより、図1から図8までに示すように、第2の導通経路112に電流(誘導電流)IT2が流れ、トランス114の2次側巻線124からパルス電圧が出力される。
【0024】
図1から図4までに示すように、第1のスイッチ106が第1の分岐点108と第2の分岐点110との間に挿入され、第2の導通経路112が第1のスイッチ112を迂回する場合は、第1の分岐点108から第2の分岐点110へ向かって第2の導通経路112に電流IT2が流れる。図5から図8までに示すように、インダクタ104が第1の分岐点108と第2の分岐点110との間に挿入され第2の導通経路112がインダクタ104を迂回する場合は、第2の分岐点110から第1の分岐点108へ向かって第2の導通経路112に電流IT2が流れる。
【0025】
パルス発生回路100a,100b,100c,100d,100e,100f,100g及び100hにおいては、インダクタ104に誘導エネルギーが蓄積される第1の期間T1に第2の導通経路112に大きな電流が流れない。このため、第2の導通経路112が長くなっても、インダクタ104への誘導エネルギーの蓄積が妨げられず、ピーク電圧が高いパルス電圧が発生する。また、第2の導通経路112が長くなっても、第2の導通経路112の寄生キャパシタンスの影響は小さく、パルス幅が短いパルス電圧が発生する。さらに、第2の導通経路112が長くなっても、第2の導通経路112からのノイズの放射が抑制される。
【0026】
(第1のスイッチ106及び第2のスイッチ118)
第1のスイッチ106及び第2のスイッチ118は、それぞれ、MOSFET(酸化金属半導体電界効果トランジスタ)・SI(静電誘導)サイリスタ・IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)・バイポーラトランジスタ・GTO(ゲートターンオフ)サイリスタ・SIT(静電誘導トランジスタ)等のスイッチング素子により第1の導通経路102及び第2の導通経路112を開閉する。第1のスイッチ106及び第2のスイッチ118が、それぞれ、同種又は異種の2個以上のスイッチング素子により第1の導通経路102及び第2の導通経路112を開閉してもよい。
【0027】
(インダクタ104及び第1のスイッチ106の挿入位置)
図1から図4までに示すように、パルス発生回路100a,100b,100c及び100dにおいては、第1の分岐点108と第2の分岐点110との間に第1のスイッチ106が挿入され、第1の分岐点108と第2の分岐点110との間以外にインダクタ104が挿入される。
【0028】
この場合は、直流源122、インダクタ104及び1次側巻線116を含む閉回路が第2の期間T2に形成される。したがって、第2の期間T2に1次側巻線116に印加される電圧は、直流源122の電圧とインダクタ104の誘導起電力との和に一致する。
【0029】
インダクタ104は、図1及び図2に示すように正極と第1の分岐点108との間に挿入されてもよいし、図3及び図4に示すように負極と第2の分岐点110との間に挿入されてもよい。ただし、正極と第1の分岐点108との間にインダクタ104が挿入されることが望ましい。正極と第1の分岐点108との間にインダクタ104が挿入されると、第1のスイッチ106の一端が負極に接続され、スイッチングが容易になるからである。
【0030】
逆に、図5から図8までに示すように、パルス発生回路100e,100f,100g及び100hにおいては、第1の分岐点108と第2の分岐点110との間にインダクタ104が挿入され、第1の分岐点108と第2の分岐点110との間以外に第1のスイッチ106が挿入される。
【0031】
この場合は、インダクタ104及び1次側巻線116を含む閉回路が第2の期間T2に形成される。したがって、第2の期間T2に1次側巻線116に印加される電圧は、インダクタ104の誘導起電力に一致する。
【0032】
第1のスイッチ106は、図5及び図6に示すように正極と第1の分岐点108との間に挿入されてもよいし、図7及び図8に示すように負極と第2の分岐点110との間に挿入されてもよい。ただし、負極と第2の分岐点110との間に第1のスイッチ106が挿入されることが望ましい。負極と第2の分岐点110との間に第1のスイッチ106が挿入されると、第2のスイッチ118の一端が負極と同電位になり、スイッチングが容易になるからである。
【0033】
より一般的に言えば、インダクタ104及び第1のスイッチ106のうちの一方が第1の分岐点108と第2の分岐点110との間に挿入され、インダクタ104及び第1のスイッチ106のうちの他方が第1の分岐点108と第2の分岐点110との間以外に挿入される。ただし、第1の分岐点108と第2の分岐点110との間に第1のスイッチ106が挿入され、第1の分岐点108と第2の分岐点110との間以外にインダクタ104が挿入されることが望ましい。インダクタ104及び第1のスイッチ106がこのように挿入されると、1次側巻線116に印加される電圧が直流源122の電圧だけ大きくなるからである。
【0034】
(第2の導通経路112への同軸ケーブルの使用)
第2の導通経路112には同軸ケーブルが使用されることが望ましい。特に、第2の導通経路112の第1の分岐点108と1次側巻線116との間の少なくとも一部が内部導体からなり、第2の導通経路112の第2の分岐点110と1次側巻線116との間の少なくとも一部が当該内部導体と同軸配置される外部導体からなることが望ましい。これにより、第2の導通経路112からのノイズの放射が抑制される。
【0035】
(1次側巻線116及び第2のスイッチ118の挿入位置)
図1、図3、図5及び図7に示すように、第2の導通経路112の第1の分岐点108寄りに1次側巻線116が挿入され、第2の導通経路112の第2の分岐点110寄りに第2のスイッチ118が挿入されてもよいし、図2、図4、図6及び図8に示すように、第2の導通経路112の第1の分岐点108寄りに第2のスイッチ118が挿入され、第2の導通経路112の第2の分岐点110寄りに1次側巻線116が挿入されてもよい。ただし、1次側巻線116及び第2のスイッチ118が前者のように挿入されることが望ましい。1次側巻線116及び第2のスイッチ118が前者のように挿入されると、第2のスイッチ118の一端が負極と同電位になり、スイッチングが容易になるからである。また、第2の導通経路112の第2の分岐点110から1次側巻線116までの部分が第2の期間T2に負極とほぼ同電位になり、第2の導通経路112に同軸ケーブルが使用された場合に外部導体が負極とほぼ同電位になり、第2の導通経路112からのノイズの放射が抑制されるからである。
【0036】
<パルス発生回路の基本形の変形>
(第1の付加回路)
図11の回路図は、第2の期間T2に流れる電流IT2とは逆向きのリセット電流IRを第1の期間T1に1次側巻線116に流す第1の付加回路126がパルス発生回路100aに付加されたパルス発生回路100iを示す。第1の付加回路126がパルス発生回路100aに付加されると、第1の期間T1にトランス114が初期化され、均一なパルス電圧が繰り返し発生する。
【0037】
図11に示すように、パルス発生回路100iにおいては、第2の導通経路112の1次側巻線116と第2のスイッチ118との間に第3の分岐点128が設けられ、第1の導通経路102の正極とインダクタ104との間に第4の分岐点132が設けられ、電気抵抗130の一端が第3の分岐点128に接続され、電気抵抗130の他端が第4の分岐点132に接続される。これにより、第2の導通経路112が開かれている第1の期間T1に電気抵抗130を経由してリセット電流IRが1次側巻線116に流れる。電気抵抗130の他端は、第2の期間T2に流れる電流IT2とは逆向きのリセット電流IRを1次側巻線116に流す電位の箇所に接続されればよく、電気抵抗130の他端は、第4の分岐点132以外に接続されてもよく、例えば、第4の分岐点132以外の正極と同電位の箇所に接続されてもよい。
【0038】
電気抵抗130の大きさは、第1の期間T1にリセット電流IRによりトランス114の磁性体コア134が図12に示すB−Hカーブにおける飽和状態S1となるように決められる。磁性体コア134の状態は、第2の期間T2に、図12に示すB−Hカーブにおける飽和状態S2の側へ向かう。
【0039】
パルス発生回路100b,100c,100d,100e,100f,100g又は100hに第1の付加回路が付加されてもよい。パルス発生回路100b,100c,100d,100e,100f,100g又は100hに第1の付加回路が付加される場合も、第2の導通経路112の1次側巻線116と第2のスイッチ118との間に第3の分岐点が設けられ、電気抵抗の一端が第3の分岐点に接続される。電気抵抗の他端は、第2の期間T2に流れる電流IT2とは逆向きのリセット電流IRを1次側巻線116に流す電位の箇所に接続されればよいが、直流源122とは別の電源が必要となる場合もある。例えば、パルス発生回路100bに第1の付加回路が付加される場合は、第1の分岐点108から第2の分岐点110へ向かって第2の導通経路112に電流IT2が流れるため、1次側巻線116が挿入される第2の導通経路112の第2の分岐点110と第3の分岐点との間に第2の分岐点110から第3の分岐点へ向かってリセット電流IRが流れる必要がある。したがって、電気抵抗の他端は負極より電位が低い箇所に接続されなければならず、直流源122とは別の電源が必要となる。すなわち、パルス発生回路100aに第1の付加回路126が付加される場合は、電気抵抗130の他端が単に正極と同電位の箇所に接続されればよく、直流源122とは別の電源は不要であり、パルス発生回路100aには、第1の付加回路126の付加が容易になるという利点もある。
【0040】
(第2の付加回路)
図13の回路図は、第2の期間T2に第2の導通経路112が偶発的に閉じられなかった場合にインダクタ104に蓄積された誘導エネルギーを放出する第2の付加回路136がパルス発生回路100aに付加されたパルス発生回路100jを示す。
【0041】
図13に示すように、パルス発生回路100jにおいては、第1のスイッチ106及び第2のスイッチ118のいずれも経由せずにインダクタ104と1次側巻線116とが直列接続されている。インダクタ104と1次側巻線116との直列接続体138にはダイオード140が並列接続される。ダイオード140のカソードは直列接続体138のインダクタ104の側の一端に接続され、ダイオード140のアノードは直列接続体138の1次側巻線116の側の他端に接続される。
【0042】
第1のスイッチ106により第1の導通経路102が閉じられ、第2のスイッチ118により第2の導通経路112が開かれている場合は、ダイオード140に逆方向電圧が印加され、ダイオード140に電流は流れない。したがって、第2の付加回路136は、インダクタ104への誘導エネルギーの蓄積を妨げない。
【0043】
逆に、第1のスイッチ106により第1の導通経路102が開かれ、第2のスイッチ118により第2の導通経路112が閉じられている場合も、ダイオード140に逆方向電圧が印加され、ダイオード140に電流は流れない。したがって、第2の付加回路136は、第2のスイッチ118が第2の導通経路112を正常に閉じた場合は、パルス電圧の出力を妨げない。
【0044】
しかし、第1のスイッチ106により第1の導通経路102が開かれ、第2のスイッチ118により第2の導通経路112が開かれ、インダクタ104に誘導エネルギーが蓄積されている場合は、ダイオード140に順方向電圧が印加され、インダクタ104及び1次側巻線116を含む閉回路が形成され、インダクタ104及び1次側巻線116を含む閉回路を誘導電流が流れる。すなわち、第2の期間T2に第2の導通経路112が偶発的に閉じられなかった場合でも、インダクタ104に蓄積された誘導エネルギーが放出され、誘導エネルギーが残存しているインダクタ104にさらに誘導エネルギーが蓄積されることが抑制され、均一なパルス電圧が繰り返し発生する。
【0045】
第1のスイッチ106及び第2のスイッチ118のいずれも経由せずにインダクタ104及び1次側巻線116が直列接続されるパルス発生回路100d,100e,100f,100g又は100hに第2の付加回路が付加されてもよい。パルス発生回路100d,100e,100f,100g又は100hに第2の付加回路が付加される場合も、インダクタ104と1次側巻線116との直列接続体138にダイオードが並列接続される。パルス発生回路100d,100e又は100gに第2の付加回路が付加される場合は、ダイオードのアノードが直列接続体138のインダクタ104の側の一端に接続され、ダイオードのカソードが直列接続体138の1次側巻線116の側の他端に接続される。パルス発生回路100f又は100hに第2の付加回路が付加される場合は、ダイオード140のアノードが直列接続体138の1次側巻線116の側の一端に接続され、ダイオードのカソードが直列接続体138のインダクタ104の側の他端に接続される。より一般的に言えば、第1のスイッチ106が第1の導通経路106を開いたときに流れる誘導電流によりダイオード140に順方向電圧が印加されるように直列接続体136とダイオードとが接続される。
【0046】
<パルス発生回路の具体例>
(概略)
図14の回路図は、より具体的な誘導エネルギー蓄積型のパルス発生回路1000を示す。パルス発生回路1000においては、第1のスイッチとしてSIサイリスタ1002及びMOSFET1004が選択され、第2のスイッチとしてMOSFET1006が選択され、第1の付加回路及び第2の付加回路が付加されている。
【0047】
(直流源1008からインダクタ1012への電流の供給)
図14に示すように、パルス発生回路1000は、一端が直流源1008の正極に接続され他端が直流源1008の負極に接続される第1の導通経路1010を備える。
【0048】
第1の導通経路1010には、インダクタ1012が挿入され、SIサイリスタ1002及びMOSFET1004が第1のスイッチとして挿入される。インダクタ1012の一端は正極に接続され、インダクタ1012の他端はSIサイリスタ1002のアノードに接続され、SIサイリスタ1002のカソードはMOSFET1004のドレインに接続され、MOSFET1004のソースは負極に接続される。直流源1008には直流の供給を安定化するキャパシタ1014が並列接続される。
【0049】
第1の導通経路1010は、直流源1008からインダクタ1012への電流の供給経路となる。したがって、SIサイリスタ1002及びMOSFET1004により第1の導通経路1010が閉じられると、直流源1008及びインダクタ1012を含む閉回路が形成され、インダクタ1012に電流が流れ、インダクタ1012に誘導エネルギーが蓄積される。
【0050】
(誘導電流の転流)
第1の導通経路1010は、相対的に正極の近くにある第1の分岐点1013と相対的に負極の近くにある第2の分岐点1014とを持つ。インダクタ1012は正極と第1の分岐点1013との間に挿入され、SIサイリスタ1002及びMOSFET1004は第1の分岐点1013と第2の分岐点1014との間に挿入される。
【0051】
パルス発生回路1000は、一端が第1の分岐点1013に接続され他端が第2の分岐点1014に接続される第2の導通経路1016をさらに備える。第2の導通経路1016の第1の分岐点1013寄りには昇圧パルストランス1018の1次側巻線1020が挿入され、第2の導通経路1016の第2の分岐点1014寄りにはMOSFET1006が第2のスイッチとして挿入される。1次側巻線1020の一端は第1の分岐点1013に接続され、1次側巻線1020の他端はMOSFET1006のドレインに接続され、MOSFET1006のソースは第2の分岐点1014に接続される。
【0052】
第2の導通経路1016は、SIサイリスタ1002及びMOSFET1004を迂回する第1の導通経路1010の迂回経路であり、誘導電流の転流経路となる。したがって、第1の分岐点1013と第2の分岐点1014との間に電圧が発生している状態においてMOSFET1006により第2の導通経路1016が閉じられると、SIサイリスタ1002及びMOSFET1004を迂回し直流源1008、インダクタ1012及び1次側巻線1020を含む閉回路が形成され、1次側巻線1020に誘導電流が流れ、2次側巻線1022からパルス電圧が出力される。
【0053】
(SIサイリスタ1002へのバイアスの付与)
SIサイリスタ1002のゲートは、ダイオード1024を経由して第1の導通経路1010の正極とインダクタ1012との間の正極と同電位の箇所に接続される。SIサイリスタ1002のゲートはダイオード1024のアノードに接続され、ダイオード1024のカソードは正極と同電位の箇所に接続される。
【0054】
MOSFET1004により第1の導通経路1010が閉じられると、SIサイリスタ1002のゲートに正バイアスが付与され、SIサイリスタ1002がターンオンする。MOSFET1004により第1の導通経路1010が開かれると、SIサイリスタ1002のカソードから流出していた電流がゲートへ転流し、SIサイリスタ1002からキャリアが排出されることにより、SIサイリスタ1002がターンオフする。SIサイリスタ1002が高速にターンオフすると、電圧の立ち上がりが急峻でパルス幅が短いパルス電圧が発生する。
【0055】
(第1の付加回路及び第2の付加回路)
第2の導通経路1016の1次側巻線1020とMOSFET1004との間には、第3の分岐点1026が設けられる。電気抵抗1028の一端は第3の分岐点1026に接続され、電気抵抗1028の他端は第1の導通経路1010の正極とインダクタ1012との間の正極と同電位の箇所に接続される。ダイオード1030のアノードは第3の分岐点1026に接続され、ダイオード1030のカソードは第1の導通経路1010の正極とインダクタ1012との間の正極と同電位の箇所に接続される。
【0056】
(動作)
図15から図19までのタイムチャートは、パルス発生回路1000の動作を示す。図15のタイムチャートは、MOSFET1004の状態S1の時間変化を示す。図16のタイムチャートは、MOSFET1006の状態S2の時間変化を示す。図17のタイムチャートは、第1の導通経路1010を流れる電流I1の時間変化を示す。図18のタイムチャートは、1次側巻線1020に印加される電圧V1の時間変化を示す。図19のタイムチャートは、1次側巻線1020を流れる電流I2の時間変化を示す。タイミングt0からt1までは、インダクタ1012に誘導エネルギーが蓄積される第1の期間T1である。タイミングt1からt2までは、パルス電圧が出力される第2の期間T2である。タイミングt2からt3までは電力が回生される第3の期間T3である。
【0057】
制御回路1032からMOSFET1004へのオン信号の入力がタイミングt0に始まると、図15に示すようにMOSFET1004がターンオンし、SIサイリスタ1002もターンオンし、第1の導通経路1010が閉じられる。第1の導通経路1010が閉じられると、図17に示すように電流I1が正方向に増加し始め、インダクタ1012への誘導エネルギーの蓄積が始まる。また、図18に示すように電圧V1が小さな負となり、昇圧パルストランス1018が初期化される。
【0058】
制御回路1032からMOSFET1004へのオン信号の入力がタイミングt1に終わると、図15に示すようにMOSFET1004がターンオフし、SIサイリスタ1002もターンオフし、第1の導通経路1010が開かれる。また、制御回路1032からMOSFET1006へのオン信号の入力が始まり、図16に示すようにMOSFET1006がターンオンし、第2の導通経路1016が閉じられる。第1の導通経路1010が開かれ第2の導通経路1016が閉じられると、図18に示すように電圧V1が正方向に急激に上昇し始め、図19に示すように電流I2が急激に増加し、2次側巻線1022からパルス電圧が出力される。その後に、図18に示すように電圧V1がピークに達し、図17及び図19に示すように電流I1及びI2が正から負へ反転する。
【0059】
SIサイリスタ1002及びMOSFET1004がターンオフし第1の導通経路1010が開かれるタイミングと、MOSFET1006がターンオンし第2の導通経路1016が閉じられるタイミングとは同時であることが望ましいが、第2の付加回路が付加されているため、第1の導通経路1010が開かれるのに若干遅れて第2の導通経路1016が閉じられても、パルス発生回路1000は概ね正常に動作する。
【0060】
制御回路1032からMOSFET1006へのオン信号の入力がタイミングt2に終わると、図16に示すようにMOSFET1006がターンオフし、第1の導通経路1010に加えて第2の導通経路1016も開かれる。第2の導通経路1016が開かれた後も、電流I1は負のまま減少し始める。電流I1により電力が回生され、パルス発生回路1000の効率が向上する。第1の導通経路1010が開かれているにもかかわらず電流I1が0にならないのは、SIサイリスタ1002のアノード・カソード間に接合容量が存在するからである。回生電流を流すためのダイオードを追加し、当該ダイオードのアノードをSIサイリスタ1002のカソードに接続し、当該ダイオードのカソードをSIサイリスタ1002のアノードに接続すれば、接合容量が小さくても電力が回生される。
【0061】
<用途>
上記のパルス発生回路は、どのように使用されてもよいが、例えば、パルスプラズマ放電を発生させる装置のパルス電源として使用される。パルスプラズマを発生させる装置には、例えば、プラズマCVD(化学気相蒸着)装置、ガス処理装置、表面処理装置等がある。
【符号の説明】
【0062】
100a,100b,100c,100d,100e,100f,100g,100h,100i,100j,1000 パルス発生回路
102,1010 第1の導通経路
112,1016 第2の導通経路
108,1012 第1の分岐点
110,1014 第2の分岐点
128,1026 第3の分岐点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス発生回路であって、
一端が直流源の正極に接続され、他端が直流源の負極に接続され、相対的に前記正極の近くにある第1の分岐点と相対的に前記負極の近くにある第2の分岐点とを持つ第1の導通経路と、
前記第1の導通経路に挿入されるインダクタと、
前記第1の導通経路に挿入され、前記第1の導通経路を開閉する第1のスイッチと、
一端が前記第1の分岐点に接続され、他端が前記第2の分岐点に接続される第2の導通経路と、
1次側巻線が前記第2の導通経路に挿入され、前記インダクタから独立したトランスと、
前記第2の導通経路に挿入され、前記第2の導通経路を開閉する第2のスイッチと、
前記第1のスイッチによる前記第1の導通経路の開閉及び前記第2のスイッチによる前記第2の導通経路の開閉を制御する制御回路と、
を備え、
前記インダクタ及び前記第1のスイッチのうちの一方が前記第1の分岐点と前記第2の分岐点との間に挿入され、前記インダクタ及び前記第1のスイッチのうちの他方が前記第1の分岐点と前記第2の分岐点との間以外に挿入され、
前記制御回路は、
第1の期間に、前記第1のスイッチに前記第1の導通経路を閉じさせ、前記第2のスイッチに前記第2の導通経路を開かせ、
前記第1の期間に続く第2の期間に、前記第1のスイッチに前記第1の導通経路を開かせ、前記第2のスイッチに前記第2の導通経路を閉じさせるパルス発生回路。
【請求項2】
請求項1のパルス発生回路において、
前記第2の導通経路の前記1次側巻線と前記第2のスイッチとの間に第3の分岐点が設けられ、
前記パルス発生回路は、
前記第3の分岐点に一端が接続され、前記第2の期間に流れる電流とは逆向きの電流を前記第1の期間に前記1次側巻線に流す電位の箇所に他端が接続される電気抵抗、
をさらに備えるパルス発生回路。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のパルス発生回路において、
前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチのいずれも経由せずに前記インダクタと前記1次側巻線とが直列接続され、
前記パルス発生回路は、
前記インダクタと前記1次側巻線との直列接続体の一端にアノードが接続され、前記直列接続体の他端にカソードが接続され、前記第1のスイッチが前記第1の導通経路を開いたときに流れる誘導電流により順方向電圧が印加されるダイオード、
をさらに備えるパルス発生回路。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかのパルス発生回路において、
前記制御回路は、
前記第2の期間に続く第3の期間に、前記第1のスイッチに前記第1の導通経路を開かせ、前記第2のスイッチに前記第2の導通経路を開かせるパルス発生回路。
【請求項1】
パルス発生回路であって、
一端が直流源の正極に接続され、他端が直流源の負極に接続され、相対的に前記正極の近くにある第1の分岐点と相対的に前記負極の近くにある第2の分岐点とを持つ第1の導通経路と、
前記第1の導通経路に挿入されるインダクタと、
前記第1の導通経路に挿入され、前記第1の導通経路を開閉する第1のスイッチと、
一端が前記第1の分岐点に接続され、他端が前記第2の分岐点に接続される第2の導通経路と、
1次側巻線が前記第2の導通経路に挿入され、前記インダクタから独立したトランスと、
前記第2の導通経路に挿入され、前記第2の導通経路を開閉する第2のスイッチと、
前記第1のスイッチによる前記第1の導通経路の開閉及び前記第2のスイッチによる前記第2の導通経路の開閉を制御する制御回路と、
を備え、
前記インダクタ及び前記第1のスイッチのうちの一方が前記第1の分岐点と前記第2の分岐点との間に挿入され、前記インダクタ及び前記第1のスイッチのうちの他方が前記第1の分岐点と前記第2の分岐点との間以外に挿入され、
前記制御回路は、
第1の期間に、前記第1のスイッチに前記第1の導通経路を閉じさせ、前記第2のスイッチに前記第2の導通経路を開かせ、
前記第1の期間に続く第2の期間に、前記第1のスイッチに前記第1の導通経路を開かせ、前記第2のスイッチに前記第2の導通経路を閉じさせるパルス発生回路。
【請求項2】
請求項1のパルス発生回路において、
前記第2の導通経路の前記1次側巻線と前記第2のスイッチとの間に第3の分岐点が設けられ、
前記パルス発生回路は、
前記第3の分岐点に一端が接続され、前記第2の期間に流れる電流とは逆向きの電流を前記第1の期間に前記1次側巻線に流す電位の箇所に他端が接続される電気抵抗、
をさらに備えるパルス発生回路。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のパルス発生回路において、
前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチのいずれも経由せずに前記インダクタと前記1次側巻線とが直列接続され、
前記パルス発生回路は、
前記インダクタと前記1次側巻線との直列接続体の一端にアノードが接続され、前記直列接続体の他端にカソードが接続され、前記第1のスイッチが前記第1の導通経路を開いたときに流れる誘導電流により順方向電圧が印加されるダイオード、
をさらに備えるパルス発生回路。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかのパルス発生回路において、
前記制御回路は、
前記第2の期間に続く第3の期間に、前記第1のスイッチに前記第1の導通経路を開かせ、前記第2のスイッチに前記第2の導通経路を開かせるパルス発生回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−16176(P2012−16176A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150693(P2010−150693)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
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