説明

パルパー

【課題】離解力を向上させたパルパーを提供する。
【解決手段】パルパーPは、槽1の円筒部1Bの内壁にバッフルBが設けられ、該バッフルBの円筒部1B内に臨む面は、バッフルBの最下部BSと、バッフルBの第1の直線部B11の先端の内、Y座標の高い側の先端B11Aと、バッフルBの第1の直線部B11の先端の内、Y座標の低い側の先端B11Bとを結んで形成された第1の面B1、バッフルBの最下部BSと、バッフルBの第1の直線部B11の先端の内、Y座標の高い側の先端B11Aと、第1の傾斜部B21の円筒部1Bの内壁に接する部位B21Bとを結んで形成された第2の面B2を有し、ロ−タ9の回転方向は、第1の面B1の第4象限dに位置する部位に製紙原料が衝突する方向である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルパーに係り、特に、槽内の製紙原料を縦方向(Z軸方向)により回流させて、離解力を向上させたパルパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、槽内にパルプ、古紙等の製紙原料を投入して水中で離解させるパルパーにあって、該パルパーの槽内に上部を下部より内方に突出する形状をなしたバッフルを備えている。
このパルパーにあっては、バッフルに槽内の製紙原料を案内させて縦方向(Z軸方向)に回流させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したパルパーにあっては、槽内の製紙原料を縦方向(Z軸方向)に回流させて離解させているものの、回流制御が不十分で離解力の点で改善の余地があった。
【0004】
本発明は、上記の問題点を考慮してなされたもので、全体的に強い回流を得るようにして離解力を向上させたパルパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載のパルパーは、上部に製紙原料投入口、下部に排出口を有し、製紙原料と水を受け入れる槽と、この槽の前記排出口を覆うように設けられたストレーナと、前記槽内に設けられ、前記製紙原料を離解させるロ−タとを備え、前記槽は、逆円錐台部と、この逆円錐台部に接続された直径D、高さHの円筒部とを有し、前記逆円錐台部内に前記ロ−タ及び前記ストレーナが配置され、前記ストレーナの上に前記ロ−タが位置し、前記ロ−タの回転中心は、平面視前記槽の逆円錐台部の中心にあり、前記円筒部の内壁にバッフルが設けられ、前記バッフルは、平面視前記ロ−タの回転中心を原点とするX軸とY軸との直交座標にあって、反時計回りに第1象限、第2象限、第3象限、第4象限に区分けしたとき、前記第1象限及び前記第4象限に位置し、前記バッフルは、平面視前記円筒部の周壁からD/4以上より大きくD/2未満の前記Y軸に平行な第1の直線部と、この第1の直線部の先端の内、前記Y座標の高い側の先端から前記円筒部の内壁に向かう第1の傾斜部とを有し、この第1の傾斜部は、前記X軸に平行な直線より反時計回りに鋭角の角度で傾斜したものであり、前記バッフルの最下部は、平面視前記第1の直線部の先端の内、前記Y座標の高い側の先端から前記X軸に平行な直線が前記円筒部の内壁に接する部位から前記ロ−タの回転中心を原点とするZ軸方向にZ(Z≦H)寸法垂下した前記円筒部の内壁に接する部位であり、前記バッフルの前記円筒部内に臨む面は、前記バッフルの最下部と、平面視前記バッフルの前記第1の直線部の先端の内、前記Y座標の高い側の先端と、平面視前記バッフルの前記第1の直線部の先端の内、前記Y座標の低い側の先端とを結んで形成された第1の面、前記バッフルの最下部と、平面視前記バッフルの前記第1の直線部の先端の内、前記Y座標の高い側の先端と、平面視前記第1の傾斜部の前記円筒部の内壁に接する部位とを結んで形成された第2の面を有し、前記ロ−タの回転方向は、前記第1の面の前記第4象限に位置する部位に前記製紙原料が衝突する方向である。
【0006】
また、請求項2記載のパルパーは、請求項1記載のパルパーにおいて、平面視第1の直線部の先端の内、Y座標の高い側の先端をロ−タの回転中心を原点とする座標軸のY座標をY1とすれば、0≦Y1≦D/4であり、平面視第1の直線部の先端の内、Y座標の低い側の先端Y2は円筒部の内壁に接する部位である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載のパルパーによれば、ロ−タの回転により水平方向に回流して、バッフルの最下部と、前記バッフルの第1の直線部の先端の内、Y座標の高い側の先端と、前記バッフルの前記第1の直線部の先端の内、前記Y座標の低い側の先端とを結んで形成された第1の面に衝突し、平面視、アルファベットのGの形を描いた製紙原料の偏心回流(G型水平回流)は、前記第1の面に案内されて下降する縦回流を発生し、その後、前記バッフルの第2の面に案内されて上昇する回流が形成され、つまり、第1の面がロ−タの回転側に向いている分、ロ−タから送り出される製紙原料をより多く、第1の面に案内させて、槽内を縦方向(Z軸方向)に回流(偏心縦回流)させて、全体的に強い回流を生じさせて製紙原料を離解させ、離解力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の一実施例のパルパーの概略的断面図である。
【図2】図2は、図1のパルパーの概略的平面図である。
【図3】図3は、図1のパルパーの槽の概略的斜視図である。
【図4】図4は、図2の一部を拡大して示す概略的一部拡大平面図である。
【図5】図5は、図4の概略的断面図である。
【図6】図6は、図1のパルパー内の回流状態を示す概略的平面図である。
【図7】図7は、図1のバッフルの第2の面の作用による回流状態を示す概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施例のパルパーを図面を参照して説明する。
図1乃至図7に示すPは槽1内にパルプ、古紙等の製紙原料を投入して水中で離解させるパルパーで、該パルパーPは、上部に製紙原料投入口1a(図1参照)、下部に排出口1b(図5参照)を有し、製紙原料と水を受け入れる槽1を有している。
槽1は、下方に位置する逆円錐台部1Aと、上方に位置する円筒部1Bとを有し、円筒部1Bは直径D、高さHで、円筒部1Bは逆円錐台部1Aに接続されている。
パルプ、古紙等の製紙原料2は、槽1内へコンベア3により連続的に供給され、また、水は第1のパイプ5により槽1内へ供給され、槽1内で離解された製紙原料は第2のパイプ6により、槽1外へと排出されるようになっている。なお、図1に示す7は、槽1を支持する脚部である。
【0010】
また、図4及び図5に示す8は、槽1の排出口1bを覆うように設けられたストレーナで、ストレーナー8は、例えば、丸孔を多数形成した円板状のものである。9は、製紙原料を離解させるロ−タである。ロ−タ9は、図示しないモータから伝達された動力をベルト10、プーリー11、回転軸12を介して回転されるようになっている。
上述したロ−タ9及びストレーナ8は、図5に示すように、槽1の逆円錐台部1A内に配置され、ストレーナ8の上にロ−タ9が位置し、ロ−タ9の回転中心Oは、図4及び図6に示すように、平面視槽1の逆円錐台部1Aの中心にあり、ロ−タ9の回転方向は、説明を後述する第1の面B1の第4象限d(図6参照)に位置する部位に製紙原料が衝突する方向で、本実施例では、例えば、平面視反時計回りとなっている。
【0011】
また、図1、図2、図3、図6及び図7に示すBは、円筒部1Bの内壁に設けられたバッフルで、バッフルBは、図6に示すように、平面視ロ−タ9の回転中心Oを原点とするX軸とY軸との直交座標にあって、反時計回りに第1象限a、第2象限b、第3象限c、第4象限dに区分けしたとき、第1象限a及び第4象限dに位置している。
バッフルBは、平面視、図6に示すように、バッフルBの周壁からD/4以上より大きくD/2未満のY軸に平行な第1の直線部B11と、この第1の直線部B11の先端B11A、B11Bの内、Y座標の高い側の先端B11Aから円筒部1Bの内壁に向かう第1の傾斜部B21とを有し、この第1の傾斜部B21は、X軸に平行な直線より反時計回りに鋭角の角度θで傾斜したものとなっている。
また、バッフルBの最下部BS(図7参照)は、平面視第1の直線部B11の先端B11A、B11Bの内、Y座標の高い側の先端B11AからX軸に平行な直線が円筒部1Bの内壁に接する部位B11Cからロ−タ9の回転中心Oを原点とするZ軸方向にZ(Z≦H)寸法垂下した円筒部1Bの内壁に接する部位となっている。
【0012】
バッフルBの円筒部1B内に臨む面は、
バッフルBの最下部BSと、平面視バッフルBの第1の直線部B11の先端B1 1A、B11Bの内、Y座標の高い側の先端B11Aと、バッフルBの第1の直線 部B11の先端B11A、B11Bの内、Y座標の低い側の先端B11Bとを結ん で形成された第1の面B1、
バッフルBの最下部BSと、バッフルBの第1の直線部B11の先端B11A、 B11Bの内、Y座標の高い側の先端B11Aと、第1の傾斜部B21の円筒部1 Bの内壁に接する部位B21Bとを結んで形成された第2の面B2
を有している。
平面視第1の直線部の先端B11A、B11Bの内、Y座標の高い側の先端B11Aをロ−タ9の回転中心を原点とする座標軸のY座標をY1とすれば、0≦Y1≦D/4であり、平面視第1の直線部B11の先端B11A、B11Bの内、Y座標の低い側の先端B11Bが円筒部1Bの内壁に接する部位となっている。
【0013】
従って、上述したパルパーPによれば、ロ−タ9の回転により水平方向に回流して、図6に示すように、バッフルBの最下部BSと、バッフルBの第1の直線部B11の先端B11A、B11Bの内、Y座標の高い側の先端B11Aと、バッフルBの第1の直線部B11の先端B11A、B11Bの内、前記Y座標の低い側の先端B11Bとを結んで形成された第1の面B1に衝突し、図6に示すように、平面視、アルファベットのGの形を描いた製紙原料の偏心回流(G型水平回流)は、第1の面B1に案内されて下降する縦回流を発生し、その後、バッフルBの第2の面B2に案内されて上昇する回流が形成され、つまり、第1の面B1がロ−タ9の回転側に向いている分、ロ−タ9から送り出される製紙原料をより多く、第1の面B1に案内させて、槽1内を図7に示すように縦方向(Z軸方向)に回流(偏心縦回流)させて、全体的に強い回流を生じさせて製紙原料を離解させ、離解力を向上させることができる。
【符号の説明】
【0014】
P パルパー
B バッフル
B1 第1の面
B2 第2の面
BS 最下部
B11 第1の直線部
B21 第1の傾斜部
1 槽
1B 円筒部
9 ロ−タ
d 第4象限

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に製紙原料投入口、下部に排出口を有し、製紙原料と水を受け入れる槽と、
この槽の前記排出口を覆うように設けられたストレーナと、
前記槽内に設けられ、前記製紙原料を離解させるロ−タとを備え、
前記槽は、逆円錐台部と、この逆円錐台部に接続された直径D、高さHの円筒部とを有し、
前記逆円錐台部内に前記ロ−タ及び前記ストレーナが配置され、前記ストレーナの上に前記ロ−タが位置し、
前記ロ−タの回転中心は、平面視前記槽の逆円錐台部の中心にあり、
前記円筒部の内壁にバッフルが設けられ、
前記バッフルは、平面視前記ロ−タの回転中心を原点とするX軸とY軸との直交座標にあって、反時計回りに第1象限、第2象限、第3象限、第4象限に区分けしたとき、前記第1象限及び前記第4象限に位置し、
前記バッフルは、平面視前記円筒部の周壁からD/4以上より大きくD/2未満の前記Y軸に平行な第1の直線部と、この第1の直線部の先端の内、前記Y座標の高い側の先端から前記円筒部の内壁に向かう第1の傾斜部とを有し、この第1の傾斜部は、前記X軸に平行な直線より反時計回りに鋭角の角度で傾斜したものであり、
前記バッフルの最下部は、平面視前記第1の直線部の先端の内、前記Y座標の高い側の先端から前記X軸に平行な直線が前記円筒部の内壁に接する部位から前記ロ−タの回転中心を原点とするZ軸方向にZ(Z≦H)寸法垂下した前記円筒部の内壁に接する部位であり、
前記バッフルの前記円筒部内に臨む面は、
前記バッフルの最下部と、平面視前記バッフルの前記第1の直線部の先端の内、
前記Y座標の高い側の先端と、平面視前記バッフルの前記第1の直線部の先端の内
、前記Y座標の低い側の先端とを結んで形成された第1の面、
前記バッフルの最下部と、平面視前記バッフルの前記第1の直線部の先端の内、
前記Y座標の高い側の先端と、平面視前記第1の傾斜部の前記円筒部の内壁に接す る部位とを結んで形成された第2の面を有し、
前記ロ−タの回転方向は、前記第1の面の前記第4象限に位置する部位に前記製紙原料が衝突する方向である
ことを特徴とするパルパー。
【請求項2】
平面視第1の直線部の先端の内、Y座標の高い側の先端をロ−タの回転中心を原点とする座標軸のY座標をY1とすれば、
0≦Y1≦D/4であり、
平面視第1の直線部の先端の内、Y座標の低い側の先端Y2は円筒部の内壁に接する部位である
ことを特徴とする請求項1記載のパルパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−162820(P2012−162820A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23443(P2011−23443)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000202235)相川鉄工株式会社 (18)
【Fターム(参考)】