説明

パルプ工場廃水の嫌気性処理方法及び装置

【課題】パルプ工場内で発生する薬液をメタン発酵処理に利用することで、薬品添加コストを低減し安定処理が可能な嫌気性処理方法及び装置を提供する。
【解決手段】クラフトパルプ製造工程から排出される有機性廃水4を処理するメタン発酵槽1を有する嫌気性処理装置において、前記メタン発酵槽1に、前記有機性廃水の導入口と、クラフトパルプ製造工程で発生する薬液である白液、緑液又は弱液5の一種以上を添加する導入口とを有することとし、また、メタン発酵槽1の前段に、調整槽2又は酸発酵槽を備え、該調整槽2又はメタン発酵槽に、前記有機性廃水4の導入口と、クラフトパルプ製造工程で発生する薬液である白液、緑液又は弱液5の一種以上を添加する導入口とを有することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラフトパルプ製造工程より排出される有機性廃水を対象とし、この廃水を処理する嫌気性処理方法及び装置、特にメタン発酵処理方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クラフトパルプ製造工程では、木材チップに硫化ナトリウムや水酸化ナトリウムを主成分とする蒸解薬液(これを白液という)を添加して、高温で蒸解することでリグニンを除去してパルプを得ている。パルプを取り出した後のリグニンと蒸解薬品との混合液(これを黒液という)を、真空蒸発缶等により濃縮を行い、濃縮された黒液は回収ボイラーで焼却されエネルギーを回収している。ボイラーでの黒液の焼却残渣には、還元された蒸解薬品が無機溶融物質(これをスメルトという)になる。スメルトは、薬液再生工程である苛性化工程にて発生する廃液(これを弱液という)により溶解され、緑液として苛性化工程へ送られる。苛性化工程では、緑液と酸化カルシウム(生石灰)とを反応させ水酸化ナトリウムと炭酸カルシウムを生成し、炭酸カルシウムを沈降除去した後、上澄みを白液として蒸解工程で再利用している。苛性化工程で、緑液中の未燃カーボン、あるいは白液中の炭酸カルシウム等の固形物が沈殿除去されるが、これらの沈殿物の洗浄廃液が前述の弱液となり前述のスメルト溶解に使用される(非特許文献1、特許文献1)。
【0003】
廃水の活性汚泥に代表される好気性処理方法は、曝気動力を要し、ランニングコストが多大であり、さらに余剰汚泥が多量に発生するといった問題がある。一方、嫌気性処理方法であるメタン発酵処理は、曝気動力を必要とせず、メタンガスをエネルギーとして回収でき、余剰汚泥発生量が少ないといったメリットがあることが知られている。
クラフトパルプ製造工程より排出される有機性廃水等の中で、蒸留廃水等のメタノールを主成分としたものを対象としたメタン発酵処理に関しては、メタン発酵処理におけるpH調整のために、水酸化ナトリウムや水酸化マグネシウムのようなアルカリ剤が使用されている(非特許文献2)。
さらに、メタノールを主成分とする排水では、栄養塩類である金属陽イオンが欠乏すると、メタノールから酢酸を生成し処理性能が悪化することが知られている(非特許文献3)。そのため、栄養塩類として金属塩類の添加が必要とされている。
【0004】
メタン発酵処理方法の運転コストに占めるアルカリ剤のコストは大きく、アルカリ剤の使用量の低減が求められている。
さらに、クラフトパルプ製造工程で排出されるガスの凝縮水は、不揮発性の金属塩類は含まれない。しかし、メタン発酵菌は、菌体及びその活性を維持するために有機物だけではなく、窒素、リン、鉄、硫黄のほか、金属塩類が必要であることが広く知られている。そのため、メタン発酵処理を安定的に進めるためには、金属塩類の添加が必要となるが、この薬品添加コストの低減が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−200821号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】紙パルプ技術協会、紙パルプ製造技術シリーズ1クラフトパルプ、p.225−228
【非特許文献2】The Start−up of an IC−UASB Reactor at BOISE CASSADE for MACT I ComplianceCarol Wiseman, Trey Wilson, Martin TielbaardTappi International Environmental Conference and Exhibit, p.615−624
【非特許文献3】清水建設研究報告、第54号平成3年10月、p.73−84 1991
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、前記従来技術の問題点を解消し、クラフトパルプ工場内で発生する薬液をメタン発酵処理用のアルカリ剤及び金属塩類の供給源として再利用することで、薬品添加コストの低減を可能とし安定処理が可能な嫌気性処理方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明では、クラフトパルプ製造工程から排出される有機性廃水をメタン発酵槽で処理する嫌気性処理方法において、クラフトパルプ製造工程で発生する薬液である白液、緑液又は弱液の一種以上を前記メタン発酵槽内に添加することを特徴とする嫌気性処理方法としたものである。
また、本発明では、クラフトパルプ製造工程から排出される有機性廃水を処理するメタン発酵槽を有する嫌気性処理装置において、前記メタン発酵槽に、前記有機性廃水の導入口と、クラフトパルプ製造工程で発生する薬液である白液、緑液又は弱液の一種以上を添加する導入口とを有することを特徴とする嫌気性処理装置としたものである。
さらに、本発明では、前記嫌気性処理装置において、メタン発酵槽の前段に、調整槽又は酸発酵槽を備え、該調整槽又はメタン発酵槽に、前記有機性廃水の導入口と、クラフトパルプ製造工程で発生する薬液である白液、緑液又は弱液の一種以上を添加する導入口とを有することとしたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、場内薬液である白液、緑液、弱液が、アルカリ剤としてメタン発酵処理に利用可能であると共に、メタン発酵菌に必須である金属塩類、特にカリウムが含まれていることを見出してなされたものであり、クラフトパルプ工場内で発生する薬液である白液、緑液、弱液をメタン発酵処理にて使用することで、アルカリ剤の添加量を低減すると共に、メタン発酵菌の活性促進作用のある金属塩類の添加量の低減を図ることができ、発酵処理の安定を図るものである。
特に、クラフトパルプ工場内で発生する廃液である弱液を利用する場合、廃液の有効利用を図ると同時に、アルカリ剤添加量の低減及びメタン発酵菌の活性促進を達成でき、極めて有効な手段となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の嫌気性処理装置の一例を示すフロー構成図。
【図2】本発明の嫌気性処理装置の他の例を示すフロー構成図。
【図3】比較例を用いた処理装置の一例を示すフロー構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明を実施するのに好ましい薬液添加手段を備えた一相式の上向流嫌気性処理工程からなる一相式嫌気性処理方法の一形態の概要を例示した図である。
本発明における嫌気性処理工程とは、嫌気微生物を浮遊状態で保持する嫌気性消化法や、自己造粒性の嫌気微生物からなるグラニュール汚泥を保持した上向流汚泥床法(UASB)、嫌気微生物を砂や粒状活性炭などの流動性担体表面に保持する嫌気性流動床法、嫌気微生物を固定床充填材の表面に保持する嫌気性固定床法などがあるが、嫌気性処理方法であればいずれの方式でも良い。
また、酸発酵とメタン発酵とを一つの反応槽で行う一相式でも、図2に示すように両反応を別々の反応槽で行う二相式でも良い。二相式の場合、クラフトパルプ工場内で発生する薬液を酸発酵槽に添加しても、メタン発酵槽に添加してもよい。
【0012】
本発明が対象とするクラフトパルプ製造工程から排出される有機性廃水とは、木材チップの蒸解工程や黒液の濃縮工程で発生するガスの凝縮水(これをコンデンセートという)、塗工工程で顔料の接着剤として使用されたデンプンを含有する排水等を指す。
コンデンセートの有機物は、メタノールを主成分とし、ほかに硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化メチル、アンモニアといった悪臭成分を含んでいる。このため、悪臭成分を除去するため、スチームストリッピングやエアーストリッピング等の物理学的除去方法と活性汚泥等の生物学的除去方法が併用されることが多い。
【0013】
表1に、本発明で対象とする有機性廃水の一般的な成分分析値を示す。
【表1】

【0014】
ここでは、一例としてコンデンセートを原水とした一相式の上向流汚泥床法について説明するが、コンデンセートから悪臭物質を除去するためにストリッピング処理したストリッピング処理水を原水として処理しても良い。
図1において、原水4は、調整槽2に導入され、ここで場内薬液である弱液5が注入される。調整槽2とメタン発酵槽1の下部は配管によって連絡され、メタン発酵槽1に流入した原水は上向流となり、メタン発酵槽上部より流出する。流出した処理水の一部は、循環水7としてメタン発酵槽流入部へ循環する。残りの処理水8は、活性汚泥処理などの後段の処理工程へ導入される。
原水は調整槽3で弱液5と混合されたのち、メタン発酵槽1であるUASBに上向流となるように導入される。上向流嫌気性処理装置は、嫌気性菌からなるグラニュール汚泥を投入して使用する。
【0015】
本発明の対象となる嫌気性処理は、30℃〜37℃を至適温度とした中温メタン発酵処理、50℃〜55℃を至適温度とした高温メタン発酵処理の温度範囲の嫌気性処理のいずれでもよい。
メタノールを基質とするメタン発酵菌の至適pHの観点から、UASB内のpHを6.5〜8.2となるように設定することが多い。
メタノールのメタン発酵では、発生する二酸化炭素のよってアルカリ度が消費され、pHが低下するため、アルカリ剤を添加することで、UASB内のpHを至適範囲に維持し、安定処理を行う。
アルカリ剤としては、クラフトパルプ製造工程で使用されるアルカリ性の場内薬液である白液、緑液、弱液から少なくとも1種類を添加する。添加位置は、調整槽に添加することを例示したが、原水ラインに直接添加してもよい。
表2に、白液、緑液、弱液の一般的な成分分析値を示す。
【0016】
【表2】

【0017】
クラフトパルプ製造工程で排出され、メタノールを有機性成分の主成分として含有する有機性廃水であるコンデンセートは、不揮発性の金属塩であるカリウムは含まれない。そのため、クラフトパルプ製造工程で排出されるコンデンセートをメタン発酵処理する場合にカリウムの添加は極めて重要であり、原水量あたりのカリウム濃度が1mg/L以上2000mg/L以下となるように添加することで、メタン発酵処理性能は大幅に向上する。
そのため、アルカリ性場内薬液をカリウムの供給源として、有機性廃水であるクラフトパルプ製造工程で排出されるコンデンセートに添加することは、クラフトパルプ製造工程で排出されるコンデンセートをメタン発酵処理する場合に、極めて有効な手段となる。
【0018】
アルカリ性場内薬液の注入率は、原水量あたりのカリウム濃度が1mg/L以上2000mg/L以下となるように添加する。その上で、原水量あたり一定としても良いし、薬液のアルカリ度や電気伝導度などの指標を元に添加アルカリ量が一定となるようにしても良いし、UASB処理水のpHがメタン発酵菌の至適範囲となるように制御してもよい。
原水量あたりのアルカリ性場内薬液の注入率は、弱液を使用した場合、0.1〜20L−弱液/m−原水がよく、さらに好ましくは0.2〜10L−弱液/m−原水がよい。白液、緑液を使用する場合は、弱液とアルカリ度が同量となるような注入率にする。
【0019】
前記の場内薬液は、メタン発酵に阻害性のある硫化水素や、悪臭物質であるメチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化メチルが含まれているため、本発明の嫌気性処理装置の処理水を直接工場外に放流することが困難な場合がある。このような場合は、嫌気性処理工程の後段に設置された活性汚泥処理工程などので悪臭物質を除去するが、このような後段での処理工程における悪臭成分除去能力に応じて、場内薬液と、アルカリ剤を併用してもよい。アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等があるが、pH制御の容易さ及び取り扱いの容易さを考慮して、水酸化ナトリウムが使用されることが多い。
弱液には、炭酸カルシウムのスラリーが含まれていることがある。炭酸カルシウムのスラリーは、メタン発酵槽内ではメタン発酵で発生する二酸化炭素により溶解するが、弱液添加配管が閉塞する原因となるため、炭酸カルシウムを固液分離した液成分を嫌気性処理工程に導入してもよい。固液分離方法としては、沈降濃縮、遠心分離、膜分離等がある。
【0020】
弱液に含まれる金属塩類のうち塩化カリウムは、回収ボイラー内の伝熱面に蓄積し、ボイラーの電熱効率を低下させる原因として知られている。このため、弱液からイオン交換によって分離されることがある。この分離した廃液を、金属塩類の供給源として嫌気性処理工程に導入してもよい。
弱液の性状によっては、金属塩類濃度に対してアルカリ度が過剰な場合がある。また、メタン発酵処理の立ち上げ時や、処理不調時などに、メタノールからのメタン発酵に伴う二酸化炭素の発生量が少ないため、二酸化炭素による中和が不足してメタン発酵処理水pHが上昇する場合がある。このような場合は、酸を加えて弱液を中和させることが有効である。使用する酸は、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸等が上げられるが、メタン発酵への影響がなく、低価格な塩酸が好ましい。
【実施例】
【0021】
以下に、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1
実施例1は、図1に示されるグラニュール汚泥を投入したUASBタイプのメタン発酵槽でコンデンセートの処理を行った。メタン発酵槽は、10cm角、高さ100cmで内部に3段のGSSを備え、容量10Lのものを使用した。メタン発酵槽には、種汚泥としてあらかじめコンデンセートで馴致したものを使用した。メタン発酵槽処理水の一部は、調整槽に循環を行うことで、メタン発酵槽内の上昇線流速(LV)が2.0m/hとなるように設定した。調整槽及びメタン発酵槽は、槽内が35℃となるようにウォーターバスに浸漬した。
栄養剤として、リン酸塩、また、鉄、コバルト、ニッケルを微量金属として調整槽に添加した。
【0022】
処理成績を表3に示す。比較例であるA系列では、図3に示すように弱液を添加しない状態で、S−CODCr除去率は61%であった。この際、水酸化ナトリウム注入量212g/m、塩化カリウム注入量31g−K/mであった。
本発明であるB系列では、弱液を添加した状態での処理である。
B−1系列では、弱液添加率を1L−弱液/m−原水とした結果、A系列と比較して水酸化ナトリウム注入率はA系列の59%に低減され、S−CODCr除去率は86%に向上した。
B−2系列では、弱液添加率を2L−弱液/m−原水とした結果、A系列と比較して水酸化ナトリウム注入率は13%に低減され、S−CODCr除去率は88%に向上した。
【0023】
B−3系列では、弱液添加率を4L−弱液/m−原水とした結果、A系列と比較して水酸化ナトリウム注入は不要となり、S−CODCr除去率は88%に向上した。このとき処理水pHは7.5であった。
B−4系列では、弱液添加率を6L−弱液/m−原水とした結果、A系列と比較して水酸化ナトリウム注入は不要となり、S−CODCr除去率は88%に向上した。このとき処理水pHは7.8であった。
B−5系列では、弱液添加率を8L−弱液/m−原水とした結果、A系列と比較して水酸化ナトリウム注入は不要で、S−CODCr除去率は88%に向上した。このとき処理水pHは8.2であり、メタン発酵に適した6.5から8.2の範囲の上限であった。
【0024】
【表3】

※1:水酸化ナトリウム注入率はA系列を100%とした割合を示す。
※2:S−CODCrはNo.5Aろ紙のろ液CODCrを示す。
【0025】
実施例2
実施例2は、図1に示されるグラニュール汚泥を投入したUASBタイプのメタン発酵槽でコンデンセートのストリッピング処理水を原水として処理を行った。メタン発酵槽は、直径7.9m、高さ11.2mで内部に3段のGSSを備えた容量550mのものを使用した。メタン発酵槽処理水の一部は、調整槽に循環を行うことで、メタン発酵槽内の上昇線流速(LV)が2.0から2.5m/hとなるように設定した。調整槽は、槽内が35℃となるように蒸気加温を行った。
栄養剤として、リン酸塩、また、鉄、コバルト、ニッケルを微量金属として調整槽に添加した。
【0026】
処理成績を表4に示す。比較例であるC−1系列では、弱液を添加しない状態で、水酸化ナトリウムを195g/m注入し、S−CODCr除去率は66%であった。処理水pHは7.1、処理水VFAは422mg/Lであった。
比較例であるC−2系列では、弱液を添加せず、水酸化ナトリウムを180g/m注入すると共に、弱液中の金属塩であるカリウムを塩化カリウムとして31g−K/m添加した状態で処理し、C−1系列と比較してS−CODCr除去率は89%に向上した。処理水pHは8.0、処理水VFAは70mg/Lに減少した。
本発明であるD系列では、弱液を添加した状態で処理し、塩化カリウムの添加は行わなかった。
【0027】
D−1系列では、弱液添加率を1L−弱液/m−原水とした結果、C−1系列と比較して水酸化ナトリウム注入率はA系列の63%に低減され、S−CODCr除去率は88%に向上した。処理水pHは7.0、処理水VFAは64mg/Lに減少した。
D−2系列では、弱液添加率を2L−弱液/m−原水Lとした結果、A系列と 比較して水酸化ナトリウム注入率は41%に低減され、S−CODCr除去率は92%に向上した。この時、処理水pHは7.5、処理水VFAは37mg/Lに減少した。
D−3系列では、弱液添加率を2L−弱液/m−原水とし、水酸化ナトリウム注入を停止した結果、S−CODCr除去率は90%に向上した。この時、処理水pHは7.0、処理水VFAは21mg/Lに減少した。
D系列のメタン発酵処理水pHは、いずれもメタン発酵に適したpHである6.5から8.2の範囲にあった。
【0028】
【表4】

※1:水酸化ナトリウム注入率はC−1系列を100%とした割合を示す。
※2:S−CODCrはNo.5Aろ紙のろ液CODCrを示す。
【0029】
実施例3
実施例3は、酸発酵槽でデンプン排水の処理を行った。酸発酵槽は有効容量3Lの完全混合槽を使用した。デンプン排水は工業用水で5倍に希釈し、約19000mg/Lとしたものを2L/dで酸発酵槽に投入した。酸発酵槽は槽内が35℃となるように加温した。
【0030】
処理成績を表5に示す。比較例であるE系列では、アルカリ剤として水酸化ナトリウムを使用し、酸発酵槽内のpHを7.0となるように制御した。デンプン排水のCODCrに対する有機酸の割合は3%、酸発酵処理水では31%であった。この際、水酸化ナトリウム注入量5.1g/Lであった。
本発明であるF系列では、アルカリ剤として弱液を添加した状態での処理である。F系列では、弱液添加率を82L−弱液/m−デンプン排水とした結果、A系列と比較して水酸化ナトリウム注入は不要となり、酸発酵処理水のCODCrに対する有機酸の割合は35%であった。
【0031】
【表5】

【符号の説明】
【0032】
1:メタン発酵槽、2:調整槽、3:酸発酵槽、4:原水、5:弱酸、6:栄養剤の微量金属、7:循環水、8:処理水、9:水酸化ナトリウム、塩化カリウム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラフトパルプ製造工程から排出される有機性廃水をメタン発酵槽で処理する嫌気性処理方法において、クラフトパルプ製造工程で発生する薬液である白液、緑液又は弱液の一種以上を前記メタン発酵槽内に添加することを特徴とする嫌気性処理方法。
【請求項2】
クラフトパルプ製造工程から排出される有機性廃水を処理するメタン発酵槽を有する嫌気性処理装置において、前記メタン発酵槽に、前記有機性廃水の導入口と、クラフトパルプ製造工程で発生する薬液である白液、緑液又は弱液の一種以上を添加する導入口とを有することを特徴とする嫌気性処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の嫌気性処理装置において、メタン発酵槽の前段に、調整槽又は酸発酵槽を備え、該調整槽又はメタン発酵槽に、前記有機性廃水の導入口と、クラフトパルプ製造工程で発生する薬液である白液、緑液又は弱液の一種以上を添加する導入口とを有することを特徴とする嫌気性処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−59730(P2013−59730A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200139(P2011−200139)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(591030651)水ing株式会社 (94)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】