説明

パレット搬送装置及びパレット搬送方法

【課題】駆動機構の数を最小限に抑え、パレットを個別に進行させ、所定の位置で停止させること。
【解決手段】パレットPを上流側から下流側に向けてスライド自在に案内する搬送ガイド11と、搬送ガイド11に沿って配置された複数の駆動機構30とを備え、駆動機構30は、搬送ガイド11の搬送方向に平行な方向に対して垂直に設置された回動軸と、この回動軸に回動自在に取り付けられ、両端に押出部及び受取部がそれぞれ形成されたアームと、このアームを回動させる回動機構とを備え、パレットPを上流側から下流側に向けて突き放して送り出すとともに、上流側から送られてきたパレットPを所定位置に停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、工場等で用いるパレットを搬送するパレット搬送装置及びパレット搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等では、パレットに部品を載せて加工、組立するために、パレットを所定方向に沿って搬送し、所定の位置に位置決めするパレット搬送装置が用いられている。パレット搬送装置としては、パレットをローラやレール上を走行させるものや、インデックス機構を用いた定ピッチ送り方法、ベルトコンベアに載せる方法等があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−23946号公報
【特許文献2】特開2007−90513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したパレット搬送装置では、次のような問題があった。すなわち、パレットを独立して搬送するためには、モータ等の駆動機構を搬送ラインに沿って隙間無く設置しなければならない。このため、搬送ラインが長くなると、装置が高価になる。
【0005】
そこで、駆動機構の数を最小限に抑え、パレットを個別に進行させ、所定の位置で停止させることができるパレット搬送装置及びパレット搬送方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
パレットを搬送するパレット搬送装置において、パレットを上流側から下流側に向けてスライド自在に案内する搬送ガイドと、上記搬送ガイドに沿って配置された複数の駆動機構とを備え、上記駆動機構は、上記パレットを上流側から下流側に向けて突き放して送り出す押出機構と、上流側から送られてきたパレットを所定位置に停止させる受取機構とを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態に係るパレット搬送装置を模式的に示す平面図。
【図2】同パレット搬送装置に組み込まれた駆動機構を示す斜視図。
【図3A】同駆動機構の動作を示す斜視図。
【図3B】同駆動機構の動作を示す斜視図。
【図3C】同駆動機構の動作を示す斜視図。
【図3D】同駆動機構の動作を示す斜視図。
【図3E】同駆動機構の動作を示す斜視図。
【図3F】同駆動機構の動作を示す斜視図。
【図4】第2の実施形態に係るパレット搬送装置を示す平面図。
【図5】同パレット搬送装置の別の状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は第1の実施形態に係るパレット搬送装置10を模式的に示す平面図、図2はパレット搬送装置10に組み込まれた駆動機構30を示す斜視図である。なお、図中Fはパレットの搬送方向を示している。すなわち、図1の右側が搬送方向Fの上流側、左側が搬送方向Fの下流側に相当する。また、図1中Kは、各種処理装置を示している。
【0009】
搬送ガイド11と、搬送ガイド11の上流側から下流側に向けてスライド自在に配置されたパレットP、搬送ガイド11に沿って所定の距離だけ離間して配置された3台の駆動機構30と、各駆動機構30を連携制御する制御部40とを備えている。なお、駆動機構30の数は3台に限定されるものではなく2台以上必要に応じて設置すればよく、また、その間隔も任意に設定できる。
【0010】
駆動機構30に対応して処理装置Kが配置されている。処理装置Kは、パレットPに搭載された部品等をピックアップしたり、加工・検査等の所定の処理を行う。
【0011】
駆動機構30は、搬送ガイド11から離間して配置されている。駆動機構30は、床面に取り付けられたベース部31と、このベース部31に取り付けられ、鉛直方向(搬送ガイドの搬送方向に平行な方向に対して垂直方向)の軸を有する回動軸Cと、この回動軸31に回動自在に取り付けられ、両端に押出部及び受取部がそれぞれ形成されたアーム32と、ベース部31内に設けられ、アーム32を回動させるロータリアクチュエータ等の回動機構35とを備えている。
【0012】
アーム32は、回転中心から互いに逆向きに設けられた押出アーム33及び受取アーム34とを備えている。これら押出アーム33及び受取アーム34の先端33a,34aは、搬送ガイド11側に傾斜している。これは、後述するようにパレットPの上流側側面Pj、下流側側面Pkに押出アーム33及び受取アーム34を当接させ易いようにするためである。
【0013】
押出アーム33及び受取アーム34の先端33a,34aにはそれぞれ、ゴム等の緩衝材33b,34bが設けられている。
【0014】
回動機構35は、圧搾空気で動作するロータリシリンダや電動モータによってアーム32を回動動作させており、これらは制御部40によって制御されている。制御部40は、例えばパレットPを上流側から下流側に向けて突き放して送り出すとともに、上流側から送られてきたパレットPを所定位置に停止させるように制御する。また、制御部40は、上流側の駆動機構30と下流側の駆動機構30とが組になり、下流側の駆動機構30が受取状態になってから、上流側の駆動機構がパレットPを押し出すように制御する。
【0015】
このように構成されたパレット搬送装置10は、次のようにしてパレットPを搬送する。なお、図3A〜図3Fは、駆動機構30の動作を示す斜視図である。
【0016】
図3Aは、駆動機構30の待機状態を示している。すなわち、受取アーム34を搬送ガイド11上に位置決めし、上流側からパレットPが滑ってくるのを待つ。次に、図3Bに示すように、滑ってきたパレットPを受取アーム34で受け取り、処理装置Kに対応する位置で停止させる。このとき、受取アーム34の先端34aには緩衝材34bが取り付けられているので、パレットPにかかる衝撃は緩和される。さらに、回動機構35側でパレットPの速度に合わせてアーム32を下流側に回転させることで、さらに衝撃を緩和させるようにしてもよい。次に、図3Cに示すように、回動機構35によりアーム32を回動させ、パレットPから受取アーム34から離間させる。
【0017】
ここで、処理装置Kにより所定の処理を行う。処理が終わると、図3Dに示すように、回動機構35によりアーム32を回動させ、パレットPへ押出アーム33を近づけ、そのまま、図3Eに示すようにパレットPに押出アーム33の先端33aを当接させ、図3Fに示すように下流側に押し出す。なお、この時の押出力は次の駆動機構30の位置に到達するまでの力が最低限必要となる。
【0018】
また、制御部40においては、下流側の駆動機構30が受取状態になってから、上流側の駆動機構がパレットPを押し出すように制御することで、パレットPとアーム32の不適当な部分が接触しないようにしている。
【0019】
このようにして、外部から供給されたパレットPを搬送ガイド11に沿って、次々と下流側の駆動機構30へ押し出すことで、パレットPを搬送することができる。また、所定の位置で停止させることができ、最終的にパレット搬送装置10は、パレットPを装置外に排出することができる。
【0020】
上述したように、本実施の形態に係るパレット搬送装置10によれば、駆動機構30を用いパレットPを搬送ガイド11上を滑らせて搬送しているので、駆動機構30を設ける間隔をあけることができる。すなわち、回動機構35等の駆動部の数を減らすことができるため、搬送装置の製造コストを低減することができる。また、パレットPの動作は隣接する駆動機構30に対によって決定されるので、その他のパレットPの搬送の影響を受けることがなく、個別に独立して搬送させることができる。したがって、処理効率を向上させることができる。
【0021】
また、搬送ガイド11の構造を変更することなく、回動機構35を必要な場所に設置するだけで、任意の位置にパレットPを停止することができ、処理装置Kのレイアウトの自由度が向上する。
【0022】
なお、同じ構造の駆動機構30が搬送ガイド11の一方側に並設されているため(1系統の駆動機構)、下流側の駆動機構30が受取状態になってから、上流側の駆動機構がパレットPを押し出すように制御する。したがって、パレットPを押し出したアーム32が受取位置に戻ってくるまで、次のパレットPの押し出しを行うことができない。なお、処理装置Kによる処理時間よりも、押出位置から受取位置に戻る間の時間が短ければ、アーム32を回動するための待ち時間は無視できる。
【0023】
図4は第2の実施形態に係るパレット搬送装置50を示す平面図、図5はパレット搬送装置50の別の状態を示す平面図である。なお、これらの図において、図1と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0024】
パレット搬送装置50は、搬送ガイド11の対向する両側にそれぞれ配置された2系統の駆動機構30A,30Bを備えている。すなわち、1つの停止位置に2つの駆動機構30A,30Bが配置されることになる。これら駆動機構30A,30Bは、前述した駆動機構30と構成は同じである。なお、アーム32の先端33a,34aは搬送ガイド11上は通らず、搬送ガイド11から離間した位置を通る。なお、2系統の駆動機構30A,30Bは、制御部40により後述するように連携制御されている。
【0025】
また、パレットPは、2系統の駆動機構30A,30Bのうち、いずれか1系統にのみ選択的に駆動される形状を有している。具体的には、駆動機構30A側に寄ったパレットPaと、駆動機構30B側に寄ったパレットPbとの2種類が供給される。
【0026】
前述したように、駆動機構30A,30Bのアーム32の先端33a,34aは搬送ガイド11から離間した位置を通ることで、それぞれパレットPa,Pbにのみ選択的に係合するように構成されている。
【0027】
このように構成されたパレット搬送装置50は、次のようにしてパレットPを搬送する。なお、ここで駆動機構30Aを上流側から下流側にかけてα1〜α4、駆動機構30Bを上流側から下流側にかけてβ1〜β4と称する。
【0028】
図4では、駆動機構30Aのうちα1,α3がパレットPa、駆動機構30Bのうちβ2,β4がパレットPbを受け取るための待機状態となっている。一方、駆動機構30Aのうちα2,α4がパレットPa、駆動機構30Bのうちβ1,β3がパレットPbを押し出すための待機状態となっている。現在のパレットPa,Pbが停止している位置での所定の処理が終了した時点で、駆動機構30A(α2,α4)及び駆動機構30B(β1,β3)において、図4中矢印R方向にアーム32を押し出しのために回動する。これにより、駆動機構30A(α2,α4)がパレットPa、駆動機構30B(β1,β3)がパレットPbを押し出し、搬送ガイド11上を滑らせて、図5に示すように、駆動機構30A(α1,α3)がパレットPa、駆動機構30B(β2,β4)がパレットPbを受け取る。
【0029】
パレットPが押し出した後、押し出した駆動機構30A(α2,α4)及び駆動機構30B(β1,β3)は、アーム32を受取位置に回動し、待機状態となる。一方、駆動機構30A(α1,α3)及び駆動機構30B(β2,β4)はパレットPa,Pbを受け取った後、アーム32を押出位置までに回動させ、待機状態となる。
【0030】
同様にして、パレットPa,Pbの押し出し、受け取りを行って、図4の状態に戻る。このようにして連続的にパレットPa,Pbの搬送を行う。
【0031】
本第2の実施の形態に係るパレット搬送装置50によれば、上述したパレット搬送装置10と同様に少ない数の駆動機構によりパレットPの搬送を行うことができる。さらに、2系統の駆動機構30A,30Bが設けられているため、次のような効果がある。すなわち、パレットPが一旦押し出されてしまえば、押し出した側の駆動機構30A及び駆動機構30Bは、すぐに受け取り側の待機状態となるようにアーム32を回動させることができる。したがって、アーム32が回動する間の待ち時間を短縮することができる。特に処理装置Kによる処理時間がアーム32が回動する時間より短い場合等には搬送効率を向上させることができる。
【0032】
なお、駆動機構30として、パレットPを上流側から下流側に向けて突き放して送り出す押出機構と、上流側から送られてきたパレットPを所定位置に停止させる受取機構との両機能を有するものを例示したが、押出機構と受取機構とを別々に設けてもよい。
【0033】
なお、必ずしも駆動機構30に対向して処理装置50を設ける必要はなく、レイアウトの関係で処理位置が離れている場合には中継点として用いるようにしてもよい。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
10…パレット搬送装置、11…搬送ガイド、30…駆動機構、31…ベース部、32…アーム、33…押出アーム、34…受取アーム、35…回動機構、K…処理装置、P…パレット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレットを搬送するパレット搬送装置において、
パレットを上流側から下流側に向けてスライド自在に案内する搬送ガイドと、
上記搬送ガイドに沿って配置された複数の駆動機構とを備え、
上記駆動機構は、上記パレットを上流側から下流側に向けて突き放して送り出す押出機構と、
上流側から送られてきたパレットを所定位置に停止させる受取機構とを備えていることを特徴とするパレット搬送装置。
【請求項2】
上記駆動機構は、上記搬送ガイドの搬送方向に平行な方向に対して垂直に設置された回動軸と、この回動軸に回動自在に取り付けられ、両端に押出部及び受取部がそれぞれ形成されたアームと、このアームを回動させる回動機構とを備えていることを特徴とするパレット搬送装置。
【請求項3】
上記駆動機構のうち、上流側の駆動機構と下流側の駆動機構とが組になり、上記下流側の駆動機構が受取状態になってから、上記上流側の駆動機構が上記パレットを押し出すように制御する制御部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のパレット搬送装置。
【請求項4】
上記駆動機構は、上記搬送ガイドの対向する両側にそれぞれ配置された2系統が設けられ、
上記パレットは、上記2系統の駆動機構のうち、いずれか1系統にのみ選択的に駆動される形状を有していることを特徴とする請求項1に記載のパレット搬送装置。
【請求項5】
搬送ガイドに沿ってパレットを搬送するパレット搬送方法において、
上記パレットを上流側から下流側に向けて押し出して滑走させ、
上流側から滑走してきた上記パレットを受け止めて所定位置に停止させることを特徴とするパレット搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−201453(P2012−201453A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66664(P2011−66664)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】