説明

パワーアシストつき体幹筋力トレーニングマシン

【課題】パワーアシスト型運動、ハーフ・アシスト型運動、完全自立型運動と段階的な運動機能回復や機能向上を目指したトレーニング装置を提供する。
【解決手段】レバーアーム、パワーアシスト装置を備え、レバーアームを押す、引くという基本動作が、パワーアシスト装置を用いて自動的または半自動的に行われるとともに、使用者の体力・身体状況にあわせて自立的な運動としても実施することが出来るパワーアシスト一体型の体幹筋力トレーニングマシンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本装置は、リハビリ、高齢者の体力維持向上、および、低体力状態にある人の基礎体力向上を目的として開発された総合的な体幹筋力トレーニングマシンである。
【背景技術】
【0002】
体力向上を目的としたトレーニングマシンの需要が近年増加しつつある。しかも、トレーニング部位を特化したマシンの要求に応じて種々の装置が用いられるようになった。例として、立位姿勢でアームレバーを握り、足元の乗り板が前方向や後方向に動力で傾斜することによって、前傾姿勢やのけぞる姿勢が作り出されることよって、乗り物酔いなどの抵抗力を高める「平衡感覚訓練装置」(特許文献1参照)がある。この装置では、アームレバーと乗り板が一体化しており、乗り板の傾斜がアームレバーの傾斜と同じになる構造となっている。アームレバーは、姿勢保持のために使われるもので、筋力発揮を目的とした仕様にはなっていない。
「リハビリテーション用機能訓練装置」(特許文献2参照)は、基台に取り付けられたクラッチ機構を内臓したクラッチケースに回転力を伝える回転軸とモータがあり、腕または脚の他動運動または自動運動に用いる各種のアタッチメントと連結させる構造になっている。この装置では、片足、または片手をアタッチメントを介して回転軸周りの運動に関与させる運動形態がとられている。しかし、全身運動については、考慮されていない。
【0003】
「格闘技トレーニング装置」(特許文献3参照)は、電磁負荷装置を用い、シャフトとジョイントを介してサンドバッグ状の棒状人体ダミーを回転させたり、動揺させたりする格闘技用のトレーニングマシンである。この装置では、ハンドルを回転させる運動も考えられている。電磁負荷装置を用いたトレーニングマシンであるが、人体をひねったり、投げ飛ばしたりするための基礎体力を高めるためのトレーニング装置として開発されている。
「電磁抵抗負荷式体幹筋力トレーニングマシーン」(特許文献4参照)は、電磁負荷装置を用い、着脱可能な各種の筋力トレーニング用のアタッチメントを用いたトレーニングマシンである。この装置の動作様式の中で、「和船漕ぎトレーニング」がとり扱われている。トレーニングする人が立位姿勢で、レバーアームを前方向および手前方向に移動させる運動様式である。しかし、この装置の場合は、パワーアシスト装置を備えておらず、健常者やスポーツ選手のトレーニングを目的としたものなので、機能回復(リハビリ)運動や、低体力状態にある人のための段階的なトレーニングの利用への配慮(運動用座席など)がなされていない。
【特許文献1】特開平9−173502号公報
【特許文献2】実開昭56−106714号公報
【特許文献3】実開平5−93470号公報
【特許文献4】特許第3503117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トレーニングマシンによる、運動機能回復(リハビリ)及び運動機能向上をはかるためには、次の段階的手順が効果的である。
第1段階:「他の人や装置の力に依存して、身体を動かし、自発的な筋力発揮の関与が少ない段階(パワーアシスト型運動)」。
第2段階:「他の人や装置の力の助けを借りながら、自発的な筋力の発揮を行なって動作する段階(ハーフ・アシスト型運動)」。
第3段階:「他の人や装置の力の助けがなく、自発的な筋力発揮によって自立して動作する段階(完全自立型運動)」。
こうしたコンセプトに基づいた段階的な運動機能回復や機能向上を目指したトレーニング装置は、これまでに開発されていない。
本発明の「パワーアシストつき体幹筋力トレーニングマシン」は、「和船漕ぎ運動」が健康増進の運動形態について効果的であるという昔からの経験的な事実に基づき、その運動がパワーアシストを用いた段階から可能となるように開発されたトレーニングマシンである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、和船漕ぎ運動がパワーアシストを用いた段階から可能となるようなトレーニングマシンであって、レバーアーム、パワーアシスト装置を備え、レバーアームを押す、引くという基本動作が、パワーアシスト装置を用いて自動的または半自動的に行われるとともに、使用者の体力・身体状況にあわせて自立的な運動としても実施することが出来るパワーアシスト一体型の体幹筋力トレーニングマシンである。前記パワーアシスト装置は、好ましくは自立的な運動のための抵抗負荷装置の双方を兼ね備え、座位姿勢、中腰姿勢、立位姿勢のいずれの姿勢でも運動負荷様式を選択して使用する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、パワーアシスト装置を用いるので、段階的手順による運動機能回復(リハビリ)及び運動機能向上をはかることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本装置の基本的な運動形態は、両手(または片手)でハンドルレバーを握り、「椅子に腰掛けた姿勢」、「腰を支えられた中腰姿勢」、「立位姿勢」のいずれかで、レバーアームを身体の遠位方向(前方)に「押す」、および遠位から近位方向(手前)に「引く」という動作をおこなうものである。レバーアームを「押す」動作は、腕を伸展させることだけでも可能であるが、腕の筋力が弱いか、力がこもらない場合には、アームレバーにつかまり、肘を曲げたまま、レバーアームに体重をあずけるように体幹部全体を前傾させれば、レバーアームを前方向に「押す」ことができる。逆に、レバーアームを手前方向に「引き戻す」ことは、「前傾姿勢からの立ち直り動作」であり、体重を後方に移動させるように体幹部を起こして、レバーアームを「引く」ことが可能である。
このようなレバーアームを「押す」「引く」という動作は、腕や肩の筋肉ばかりでなく、背中や胸部、腹部、腰部の筋肉全体を使用する動作であり、立位姿勢で行う場合には、脚や臀部の筋肉群をトレーニングする効果が高い。
立位姿勢で、レバーアームを押したり、引いたりする動作は、「和船漕ぎ運動」に通じるものであり、「和船漕ぎ運動」は昔から全身的な体力向上の基礎運動として、武術訓練の中でも取り入れられている。レバーアームの「押し」「引き」運動は、体幹部の筋力発揮を伴うので、体幹部の姿勢保持能力を高めるとともに、腕や脚の筋肉を体幹部と連結させる「体幹深部筋」を鍛えることに効果がある。また、体幹部を前後に動揺させて力の発揮を行うことから、立位姿勢バランスの向上や、歩行能力の改善効果が期待される。
このようなトレーニング効果を実現するために、本装置では、前述の3段階(パワーアシスト型運動、ハーフ・アシスト型運動、完全自立型運動)の運動が段階的に実施できるように工夫されている。
【実施例】
【0008】
本発明の「パワーアシストつき体幹筋力トレーニングマシン」の実施例を図1に示す。
本トレーニングマシンは、レバーアーム(1)、レバーアーム制御部(2)、姿勢制御シート(3)、操作・表示パネル(4)および台座(5)からなる。
図2は、レバーアーム制御部の構造図である。
レバーアーム制御部は動力モータ(6)、抵抗負荷装置(7)、プーリa(8)、ベルト(9)、プーリb(10)、角度検出スイッチ(11)、レバーアーム(1)からなる。
「パワーアシスト型運動」時には、動力モータ(6)を駆動し、回転力を抵抗負荷装置(7)、プーリa(8)、ベルト(9)およびプーリb(10)を介してレバーアーム(1)の回転運動に伝える。このとき、抵抗負荷装置(7)は動力モータ(6)の回転力をプーリa(8)へ、すべり無く伝えられるように設定されている。また、角度検出スイッチ(11)によりレバーアーム(1)動作範囲の任意設定を可能としている。
この動作中において、使用者のレバーアーム(1)を「押す」「引く」の力が動力モータ(6)による回転力を超える場合には、抵抗負荷装置(7)にすべりが生じることで「ハーフ・アシスト型運動」が可能となる。
「完全自立型運動」時には、動力モータ(6)の回転をロックし、抵抗負荷装置(7)のすべりを任意に設定可能とする。このとき「押す」「引く」の運動によるレバーアーム(1)の回転力はプーリb(10)、ベルト(9)およびプーリa(8)を介して抵抗負荷装置(7)に伝えられる。
【0009】
図3は、「姿勢制御シート」の構成およびシート設定例の図である。
シートクッション(12)、シートバック(13)、シート上下装置(14)、シート前後装置(15)を示す。
「座位姿勢」運動時には、シート上下装置(14)およびシート前後装置(15)にてシートクッション(12)とシートバック(13)を適正位置に調節可能である。
「中腰姿勢」運動時には、後方へのはね上げ可能なシートクッション(12)の格納により、シートバック(13)に腰を預けた姿勢とすることができる。
「立位姿勢」運動時には、立位姿勢において必要としないシートクッション(12)およびシートバック(13)を後方へ移動し、運動に必要な十分なスペースを確保することが可能である。
図4は「操作・表示パネル」の構造図である。
このパネルには「レバーアームの抵抗負荷」、「レバーアームの動作速度」、「レバーアームの動作範囲」、「シート位置」を設定する機能および「レバーアームを押し引きした回数データ」を表示する機能などを備え、一箇所で集中的にマシン操作することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本マシンが備えるパワーアシスト装置は、健常者やスポーツ選手のトレーニングだけでなく、機能回復(リハビリ)運動や、低体力状態にある人のための段階的なトレーニングの利用への配慮(運動用座席など)がなされている。
また、レバーアームの形状によって、および使用者が運動可能な姿勢を作り出すための姿勢制御シートを付属装置として用いることによって、様々な運動姿勢でのトレーニングが可能である。
さらに、操作・表示パネルによって、レバーアームの移動運動範囲をあらかじめ任意に設定できるとともに、レバーアームの運動速度およびレバーアームにかかる運動負荷を超える力がレバーアームにかかった場合には、抵抗負荷にすべり摩擦が生じ、使用者がレバーアームの運動をコントロールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のトレーニングマシンの実施例を示す概略構成図である。
【図2】図1のマシンに備えるレバーアーム制御部の構造を示す説明図である。
【図3】図1のマシンに備える姿勢制御シートの構成および設定例を示す説明図である。
【図4】図1のマシンに備える操作・表示パネルを示す説明図である。
【符号の説明】
【0012】
1 レバーアーム
2 レバーアーム制御部
3 姿勢制御シート
4 操作・表示パネル
5 台座
6 動力モータ
7 抵抗負荷装置
8 プーリa
9 ベルト
10 プーリb
11 角度検出スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レバーアーム、パワーアシスト装置を備え、レバーアームを押す、引くという基本動作が、パワーアシスト装置を用いて自動的または半自動的に行われるとともに、使用者の体力・身体状況にあわせて自立的な運動としても実施することが出来るパワーアシスト一体型の体幹筋力トレーニングマシン。
【請求項2】
パワーアシスト装置と、自立的な運動のための抵抗負荷装置の双方を兼ね備え、座位姿勢、中腰姿勢、立位姿勢のいずれの姿勢でも運動負荷様式を選択して使用する請求項1記載のトレーニングマシン。
【請求項3】
レバーアームの形状によって、および使用者が運動可能な姿勢を作り出すための姿勢制御シートを付属装置として用いることによって、様々な運動姿勢でのトレーニングが、パワーアシストを利用した形で可能である請求項1記載のトレーニングマシン。
【請求項4】
レバーアームの移動運動範囲をあらかじめ任意に設定できるとともに、レバーアームの運動速度およびレバーアームにかかる運動負荷を超える力がレバーアームにかかった場合には、抵抗負荷にすべり摩擦が生じ、使用者がレバーアームの運動をコントロールすることができる請求項1記載のトレーニングマシン。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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