パンされたステレオオーディオコンテンツについての改善された頭部伝達関数
【課題】オーディオ信号を処理する方法、オーディオ信号を受け入れる装置、オーディオウィン号を処理する方法をプロセッサに実施させるための命令を伝達する伝達媒体、及びオーディオ信号のフィルターを実施させるフィルターデータを伝達する伝達媒体を提供する。
【解決手段】入力信号の各々をHRTFフィルター対によりフィルターし、このHRTFフィルターされた信号を加算することによる結果に対応する1対の出力信号を生成する処理により、1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップが含まれる。このHRTFフィルター対は、ヘッドフォン19を通して1対の出力信号を聞いているリスナー20に、好ましい1対のバーチャルスピーカ位置からのサウンドを体験させるようなフィルター対である。
【解決手段】入力信号の各々をHRTFフィルター対によりフィルターし、このHRTFフィルターされた信号を加算することによる結果に対応する1対の出力信号を生成する処理により、1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップが含まれる。このHRTFフィルター対は、ヘッドフォン19を通して1対の出力信号を聞いているリスナー20に、好ましい1対のバーチャルスピーカ位置からのサウンドを体験させるようなフィルター対である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオーディオ信号処理の分野に関し、さらに詳細には、両耳性の再生システム又はトランスオーラル再生システムを用いたリスニング時に、パンされた信号を適切に位置特定することを含む、フィルターを通して空間特性を知覚させるオーディオチャンネルの処理に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、入力オーディオチャンネルの各々が特定の方向を表すような印象をリスナー20に提供する、複数の頭部伝達関数(HRTF)、例えばFIRフィルター、により複数のオーディオの複数のチャンネルを処理することを含む普通の両耳性の再生システムを示す。図1は、第1番目のオーディオ情報チャンネル11(チャンネル1),第2番目のオーディオ情報チャンネル(チャンネル2),...,第N番目のオーディオ情報チャンネル(チャンネルN)からなる、Nで表された個数のオーディオ源の処理を示す。この両耳性の再生システムは、リスナー20が装着しているヘッドフォン19を用いて再生するものである。各チャンネルは、1対のHRTFフィルター、すなわち、1つのフィルターは、リスナーの左耳22を通して再生し、もう1つはリスナーの右耳23を通して再生するためのものである。そこで、第1のHRTFフィルターのペア13,14から、第NのHRTFフィルターのペア15及び16までが示されている。リスナー20の左耳22用の各HRTFフィルターの出力は加算器18により加算され、リスナー20の右耳23で再生させるための各HRTFフィルターの出力は加算器17により加算される。リスナー20によって知覚される各チャンネルで生じた音の方向は、そのチャンネルに適用される選択したHRTFフィルター対により決定される。例えば、図1において、オーディオチャンネル1(11)は、フィルターのペア13,14により処理され、オーディオチャンネル1(11)のサウンドは、リスナーに対してθ1で表される特定の方位角から、例えば位置21から生じたという印象をリスナーに与えるような、オーディオ入力をヘッドフォン19を介してリスナーに提供する。同様に第2番目のオーディオチャンネルのHRTFフィルター対は、オーディオチャンネル2のサウンドがリスナーに対してθ2で表される特定の方位角から生じたかのように設計され、...第N番目のオーディオチャンネルのHRTFフィルター対は、オーディオチャンネルN(12)がリスナーに対してθNで表される特定の方位角から生じたかのように設計される。
【0003】
簡単にするために、図1は、例えば、チャンネル1に対応する知覚されたサウンドの到達角が音源21からと知覚される到達方位角のみを示す。一般に、生じた方向角と、生じた仰角とで特定される全ての方向に対応する刺激をリスナー20に与えるために、HRTFフィルターを用いることができる。
【0004】
1つの耳に1つのHRTFフィルターで、リスナーの2つの耳22,23に対する単一のチャンネルを処理するために必要とされる2つの別々のHRTFフィルターのセットを、HRTFフィルター対は意味する。したがって、2チャンネルサウンドには、2つのHRTFフィルター対が用いられる。
【0005】
ここでの説明では、主に2入力チャンネルすなわちステレオ入力ペアシステムについて詳細に説明する。ここで説明した特徴を3以上の入力チャンネルに拡張することは簡単であり、したがって、そのような拡張は本発明の技術範囲に含まれるとみなす。
【0006】
図2は、左チャンネル入力31と右チャンネル入力32の2オーディオ入力を有するステレオバイノーラライザ(binauralizer)システムを示す。2つのオーディオチャンネル入力の各々は、左チャンネル入力はHRTF対33,34で、右チャンネル入力は別のHRTF対35,36で、別々に処理される。一般的な状況の下では、HRTF対を用いたバイノーラライジングの狙いが、左右のチャンネルを聞いているリスナーにリスナー20の中間平面に対して対称的に位置するそれぞれの左右の位置角を認識させるためなので、左チャンネル入力31と右チャンネル入力32は対称的な再生をしなければならない。図2を参照して、もし、HRTF対33,34,35,及び36が対称的なリスニングのためであれば、左チャンネルは、方向角θの音源37からと認識され、右チャンネルは、右からの認識された音源37からとは反対の方向角すなわち、方向角−θからの音源38からと認識される。
【0007】
このような対称的な状況では、前提条件の単純化がなされる。第1番目は、リスナーの頭とサウンド認識は対称的であるということである。これは、
HRTF(θ,L)=HRTF(−θ,R) (1)
を意味する。
【0008】
さらに、左音源37から左耳22へのHRTFは、右音源38から右耳23へのHRTFに等しい。このようなHRTFをHRTFnearで表す。同様に、このような対称性の仮定の下では、左音源37から右耳23へのHRTFは、右音源38から左耳22へのHRTFに等しい。このようなHRTFをHRTFfarで表す。
【0009】
バイノーラライザ(binauralizer)において、一般にダミーの頭又は人間のリスナーの頭での実際のHRTF応答を測定することにより、HRTFフィルターを見つける。比較的高機能な両耳性処理システムでは、複数のリスナー及び/又は複数のサウンド発生方向角及び仰角に対応した膨大なHRTF測定ライブラリを利用する。
【0010】
今日使われている両耳性システムにおいて、図2に示すような両耳性処理システムにおける計測されたθ及び−θのHRTF対をそのまま用いることが一般的となっている。言い換えれば、HRTF対が対称的であることを仮定することが一般的となっている。
【0011】
HRTFnear=HRTF(θ,L)
HRTFfar=HRTF(θ,R) (2)
それによりHRTF対が測定されるリスナーの頭での応答が対照的でなかったとしても、すなわち式(1)が成り立たなかったとしても、測定したHRTFを平均化することにより形成したHRTFフィルター対を使うことにより図2のように、バイノーラライザを対称的なものとすることができる。すなわち、音源から左右に対称的に聞こえるようにみえるために、方向角θと−θの「バーチャル音源」あるいは、「バーチャルスピーカ」と呼ばれ、両耳性処理のためのフィルターは、以下のように設定される。
【数1】
【0012】
ここでHRTF(θ,L)とHRTF(θ,R)は、それぞれ角θで知覚される音源に対する左右の角度に対して測定したHRTFである。したがって、HRTFnearとHRTFfarとは、対称な場合は実際に測定したHRTF又は仮定したHRTFを意味し、非対称な場合は平均化したHRTFを意味する。
【0013】
大まかに(そして乱暴に)言えば、このようなバイノーラライザは、左バーチャルスピーカ、例えば37、に対応するHRTF対を通して左オーディオ入力信号を表し、右バーチャルスピーカ、例えば38、に対応するHRTF対を通して右オーディオ入力信号を表すことにより、通常のステレオスピーカシステムの動作をシミュレートする。これは、リスナーに左右のチャンネル入力がそれぞれ左右のバーチャルスピーカ位置から生じているような感覚をうまく与えることが分かった。
【0014】
サウンドの再生において、例えば、実際のステレオスピーカを通して、リスナーに左右のオーディオ入力源31及び32がリスナーの左右に正確に置かれたスピーカから聞こえる感覚だけでなく、左右のスピーカの間の位置から1以上の音源があるように聞こえる感覚を与えることがしばしば望まれる。例えばリスナーの前方の他の場所に、サウンド成分があると仮定する。一例として、想定される左右の入力オーディオチャンネル同士の中央に音源があると仮定する。これは、例えば、現代のステレオレコーディングにおいて、左右のチャンネル入力をリスナーの前方にあるステレオスピーカで再生するとき、左右のスピーカの中間に位置する「ファントムスピーカ」と呼ばれる源から音源が生じているような印象をリスナーに与えるために、たとえ振幅が減衰したとしても、左右のチャンネルに等しく供給されるオーディオ信号には、一般的である。このようなスピーカに用語「ファントム」が用いられるのは、そこに実際のスピーカが存在しないからである。これはしばしば「ファントム中央」と称され、中央から来るサウンドの感覚を生成するプロセスは「中央音像の生成」と呼ばれる。
【0015】
同様に、異なった量の信号を同じ比率で左右のチャンネル入力に送ることにより、左スピーカ位置と右スピーカ位置との間のいずれかの場所からサウンドが生じているような感覚をリスナーに与える。
【0016】
このように、左右のチャンネル同士の間に入力を分割することを「パンする」と呼び、均等に信号を分割することを「中央パンする」と呼ぶ。
【0017】
同じ感覚を与えること、すなわち、ヘッドフォンで再生するバイノーラライザシステムにおいて、中央音像を生成することが望まれる。
【0018】
例えば、中央パンされた単一入力と呼ばれるオーディオ入力信号、例えば、2つのチャンネル入力に分割された入力信号を考える。例えば、2つの信号、左オーディオ(LeftAudio)と右オーディオ(RightAudio)が以下のように作られる。
【数2】
【0019】
ステレオスピーカで再生するためにこのように中央パンされた結果の信号は、前方中央から生じる信号として認識されるよう意図している。
【0020】
もし、式(4)の入力LeftAudioとRightAudioとが、図2のバイノーラライザの入力であるならば、信号が左耳22と右耳23とに送られ、それぞれ、LeftEar及びRightEarで示され、以下のようになる。
【数3】
【数4】
【0021】
入力をこのように分割することにより、方向角0°の位置にあるバーチャルスピーカで聞いている感覚を表現することが好ましい。すなわち、左右の耳に、方向角0°のHRTF対に対応する刺激を与えることが好ましい。実際には、このようなことは起こらないので、リスナーは、仮想的な左右のバーチャルスピーカ37及び38の間の中央に位置するバーチャルスピーカから単一入力(MonoInput)信号を知覚することはない。同様に、左右のチャンネル入力間で不均等に分割し、そして図2に示したようなバイノーラライザによりバイノーラライズすることにより、左右のバーチャルスピーカの間に望みのバーチャルな音源があるような錯覚を正しく作るとこはできない。
【0022】
そこで、左右のバーチャルスピーカ位置が、左チャンネル入力と右チャンネル入力の位置を意図すると想定され、リスナーに、音がバイノーラライザシステムの左右のバーチャルスピーカ位置の間の位置から生じるような錯覚を生じさせるバイノーラライザ及びバイノーラライジングシステムがこの技術分野に必要とされている。
【0023】
例えば、単一の信号を左後方チャンネル入力と右後方チャンネル入力に分割することにより、中央後方から来たようにみせることを意図する信号は、対称的な後方バーチャルスピーカ位置に後部スピーカを置くこととした対称的な後方HRTFフィルターを用いたバイノーラライザでは、一般に、ヘッドフォンで再生するときには中央後方から来たと知覚されることはない。
【0024】
このため、例えば、左右のバーチャル後方(サラウンド)スピーカの間で中央パンすることにより作られた、4又は5のチャンネルシステムのサラウンドサウンド信号のように、リスナーに後方スピーカ信号のために中央後方の位置から生じたサウンドのような錯覚を起こさせるバイノーラライザ及びバイノーラライジングシステムがこの技術分野に必要とされている。
【発明の概要】
【0025】
ここでは、オーディオ信号を処理する方法と、オーディオ信号を受け入れる装置と、オーディオ信号を処理する方法を実行するプロセッサに対する命令を伝達する伝達媒体と、オーディオ信号のフィルターを実行するためのフィルターデータを伝達する伝達媒体とが、異なった実施の形態と特徴とにより記載されている。入力にパンされた信号が含まれるとき、これらの各々は、中央位置のバーチャル音源からパンされた信号成分が生じているような感覚をリスナー
に与える。
【0026】
本発明の1つの特徴は、入力信号の各々をHRTFフィルター対によりフィルターし、このHRTFフィルターされた信号を加算した結果に対応する1対の出力信号を生成する処理により、1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップが含まれている方法である。このHRTFフィルター対は、ヘッドフォンで1対の出力信号を聞いているリスナーが好ましい1対のバーチャルスピーカ位置からのサウンドを体験するようなフィルター対である。さらに、このフィルター処理は、この1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれている場合、このバーチャルスピーカ位置の間の中央位置にあるバーチャル音源からパンされた信号成分が生じているような感覚を1対の出力信号を聞いているリスナーにヘッドフォンを通して提供するような処理である。
【0027】
他の実施の形態における方法は、イコライジングフィルターにより1対のオーディオ入力信号をイコライジングするステップと、HRTF対を用いてイコライジングされた入力信号をバイノーラライズするステップとを具備し、第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置から生じたオーディオ入力信号に対応するサウンドであるかのような錯覚をヘッドフォンを通したバイノーラライズされた出力を聞いているリスナーに与えるような、1対のバイノーラライズされた出力を提供する。この方法の要素は、イコライジングとバイノーラライジングの組み合わせがイコライズされたHRTF対を用いてバイノーラライズすることと等価となるように構成され、イコライズされたHRTF対の各イコライズされたHRTFは、イコライジングフィルターによりイコライズされた、イコライズされた信号をバイノーラライズするために対応するHRTFとなる。イコライズされたHRTFの平均は、第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置との間の中央位置から生じるサウンドを聞いているリスナーにとって好ましいHRTFと実質的に等しい。1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれている場合、ヘッドフォンを通してバイノーラライズされた出力を聞いているリスナーに、中央に位置するバーチャル音源からパンされた信号成分が生じているような感覚を与える。
【0028】
本発明の他の特徴は、ヘッドフォンを通して処理された信号を聞いているリスナーに、第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置から生じたオーディオ入力信号にほぼ対応するサウンドのような錯覚を起こさせるように、1対のオーディオ入力信号を処理する1組のHRTFフィルターのための、フィルターデータを伝達する伝達媒体であり、このHRTFフィルターは、HRTFフィルターの平均が、第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置との中央位置からサウンドを聞いているリスナーのHRTF応答に近似するように設計されている。
【0029】
本発明の他の特徴は、ヘッドフォンを通して処理された信号を聞いているリスナーに、1対のオーディオ入力信号間でパンされた信号成分が、第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置との中央位置から生じたパンされた信号であるかのような錯覚を起こさせるほど、第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置から生じたオーディオ入力信号に対応するサウンドのような錯覚をヘッドフォンを通して処理された信号を聞いているリスナーに起こさせるように、1対のオーディオ入力信号を処理する1組のHRTFフィルターのフィルターデータを伝達する伝達媒体である。
【0030】
本発明の他の特徴は、オーディオ再生のための1対のオーディオ入力信号を受け取るステップと、前記入力信号の和に比例する第1の信号(「和信号」)と、前記入力信号の差に比例する第2の信号(「差信号」)を作るために前記入力信号をシャッフルするステップと、近接耳(near
ear)HRTFをイコライズしたものと遠方耳(far ear)HRTFをイコライズしたものとの和に近似するフィルターにより前記和信号をフィルターするスッテップとを具備する方法である。この近接耳HRTFと遠方耳HRTFとは、対応するバーチャルスピーカ位置で1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーのためのものである。このイコライズしたものは、イコライズした近接耳HRTFとイコライズした遠方耳HRTFとを平均したものが、バーチャルスピーカ位置の中央位置でバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFに近似するように、設計したイコライゼーションフィルターを用いて得られる。この方法はさらに、1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーの、近接耳HRTFをイコライズしたものと遠方耳HRTFをイコライズしたものとの差に近似するフィルターにより前記差信号をフィルターするスッテップを具備する。この方法はさらに、前記フィルターされた和信号とフィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と、前記フィルターされた和信号とフィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作るために、前記フィルターされた和信号とフィルターされた差信号とをシャッフル解除(アンシャッフリング)するステップを具備する。この方法は、1対のオーディオ入力信号がパンされた信号成分を含む場合、ヘッドフォンを通して第1の出力信号と第2の出力信号を聞いているリスナーに、中央に位置するバーチャル音源からこのパンされた信号成分が生じているような感覚を与えるものである。
【0031】
本発明の他の特徴は、1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップであって、該フィルターするステップは、前記入力信号の各々をHRTFフィルター対でフィルターした結果得られたものに対応する1対の出力信号を生成する処理により行われるステップと、このHRTFフィルターで処理された信号を加算するステップと、このHRTFフィルターで処理された信号を加算したもののクロストークを除去するステップと、を具備する方法である。このクロストークを除去するステップは、第1の組のスピーカ位置におかれたスピーカを通して1対の出力信号を聞いているリスナーに対するものである。このHRTFフィルター対は、この1対の出力信号を聞いているリスナーに好ましいバーチャルスピーカ位置にある1対のバーチャルスピーカからのサウンドを体験させるようなものである。このフィルターするステップは、この1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれる場合、第1の組のスピーカ位置におかれた1対のスピーカを通して1対の出力信号を聞いているリスナーに好ましいバーチャルスピーカ位置同士の間の中央に位置するバーチャル音源からこのパンされた信号成分が生じているような感覚を与えるものである。
【0032】
本発明の他の特徴は、オーディオ再生のための1対のオーディオ入力信号を受け取るステップと、前記入力信号の和に比例する第1の信号(「和信号」)と、前記入力信号の差に比例する第2の信号(「差信号」)を作るために前記入力信号をシャッフルするステップと、中央位置でバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFの2倍に近似するフィルターによりこの和信号をフィルターするステップと、1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーの近接耳HRTFと遠方耳HRTFとの差に近似するフィルターによりこの差信号をフィルターするステップと、前記フィルターされた和信号とフィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と、前記フィルターされた和信号とフィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作るために、前記フィルターされた和信号とフィルターされた差信号とをシャッフル解除するステップとを具備する方法である。この方法は、この1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれる場合、ヘッドフォンを通して前記第1の出力信号と前記第2の出力信号を聞いているリスナーに、このパンされた信号成分が中央位置でバーチャル音源から生じているような感覚を与える。
【0033】
この方法を変形したものの1つでは、中央HRTFの2倍に近似するフィルターは、近接耳HRTFと遠方耳HRTFとをそれぞれイコライズしたものの和として得られ、近接耳HRTFと遠方耳HRTFとをそれぞれイコライジングフィルターによりフィルターすることにより得られ、ここで、近接耳HRTFと遠方耳HRTFとの差に近似するフィルターは、近接耳HRTFをイコライズしたものと遠方耳HRTFをイコライズしたものとの差に実質的に等しい応答を持つフィルターである。
【0034】
この方法を変形したものの1つでは、このイコライジングフィルターは、近接耳HRTFと遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの逆フィルターである。特定の実施の形態においては、このイコライジングフィルターの応答は、近接耳HRTFと遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの周波数領域での応答を反転させることにより決定される。
【0035】
他の特定の実施の形態においては、このイコライジングフィルターの応答は、近接耳HRTFと遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの応答を反転させる適応フィルター法により決定される。
【0036】
この方法を変形したものの1つでは、前記中央HRTFの2倍に近似するフィルターは、好ましい中央HRTFの2倍に実質的に等しい応答を持つフィルターである。
【0037】
特定の構成においては、オーディオ入力信号には左入力と右入力とが含まれ、1対のバーチャルスピーカは、リスナーに対称的に、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置にあり、リスナー及びリスニングは、近接HRTFが左バーチャルスピーカから左耳へのHRTFおよび右バーチャルスピーカから右耳へのHRTFとなるような、そして、遠方HRTFが左バーチャルスピーカから右耳へのHRTFおよび右バーチャルスピーカから左耳へのHRTFとなるような対称的なものとなる。
【0038】
この方法の模範的な実施形態において、オーディオ入力信号には左入力と右入力とが含まれ、1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置とにあり、近接HRTFは、この左バーチャルスピーカから左耳へのHRTFおよび右バーチャルスピーカから右耳へのHRTFとの平均に比例し、遠方HRTFは、左バーチャルスピーカ右耳へのHRTFおよび右バーチャルスピーカから左耳へのHRTFの平均に比例する。
【0039】
他の模範的な実施形態において、オーディオ入力信号には左入力と右入力とが含まれ、1対のバーチャルスピーカは、リスナーの前の左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置にある。
他の形態と特徴とは、明細書、図面、及び特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】リスナーに入力オーディオチャンネルの各々が特定の方向からのものであるような印象を与える複数のHRTFフィルターにより、オーディオの複数のチャンネルを処理するステップを含む一般的な両耳性の再生システムを示す。図1の構成を持つバイノーラライザは従来技術かもしれないが、ここに記載した1以上の発明の形態により選択されたフィルターを持つバイノーラライザは従来技術ではない。
【図2】各々1対のHRTFフィルターにより処理された左チャンネル入力と右チャンネル入力との2つのオーディオ入力を具備するステレオバイノーラライザシステムを示す。図1の構成を持つバイノーラライザは従来技術かもしれないが、ここに記載した1以上の発明の形態により選択されたフィルターを持つバイノーラライザは従来技術ではない。
【図3】左バーチャルスピーカ、右バーチャルスピーカ、及び中央位置の3つの音源角度に対するHRTFの、図表で表した例である。
【図4A】θ=±45°にバーチャルスピーカを位置させるバイノーラライザで用いる代表的なHRTFであり、0°のHRTFをしめす。
【図4B】θ=±45°にバーチャルスピーカを位置させるバイノーラライザで用いる代表的なHRTFであり、近接耳HRTFを示す。
【図4C】θ=±45°にバーチャルスピーカを位置させるバイノーラライザで用いる代表的なHRTFであり、遠方耳HRTFを示す。
【図4D】θ=±45°にバーチャルスピーカを位置させるバイノーラライザで用いる代表的なHRTFであり、近接耳HRTFと遠方耳HRTFとの平均を示す。
【図5A】合計が好ましい0°のHRTFに非常に近似するような、近接HRTFフィルターと遠方HRTFフィルターを修正するためのイコライゼーションを、どのように用いることができるかを示し、近接HRTFフィルターと遠方HRTFフィルターに適用するイコライゼーションフィルターのインパルス応答を示す。
【図5B】合計が好ましい0°のHRTFに非常に近似するような、近接HRTFフィルターと遠方HRTFフィルターを修正するためのイコライゼーションを、どのように用いることができるかを示し、イコライゼーションを行った後の近接耳HRTFを示す。
【図5C】合計が好ましい0°のHRTFに非常に近似するような、近接HRTFフィルターと遠方HRTFフィルターを修正するためのイコライゼーションを、どのように用いることができるかを示し、イコライゼーションを行った後の遠方耳HRTFを示す。
【図5D】合計が好ましい0°のHRTFに非常に近似するような、近接HRTFフィルターと遠方HRTFフィルターを修正するためのイコライゼーションを、どのように用いることができるかを示し、本発明の形態によりイコライズされた近接耳HRTFと遠方耳HRTFとを平均した結果を示す。
【図6】本発明の1形態により設計されたイコライゼーションフィルターの周波数振幅応答を示す。
【図7】本発明の形態により決定された、イコライズされたHRTFフィルターを用いたバイノーラライザの第1の実施形態を示す。
【図8】シャッフラー回路網(「シャッフラー」)を用いて本発明の形態により決定された、イコライズされたHRTFフィルターを用いたバイノーラライザの第2の実施形態を示す。
【図9】本発明の1形態による、好ましい中央HRTFフィルターである信号フィルターの合計を用いたバイノーラライザの他のシャッフラーの実施形態を示す。
【図10】好ましい位置にバーチャルスピーカを置くために縦列接続したバイノーラライザを有するクロストークを除去したバイノーラライジングフィルターとクロストークキャンセラーの実施の形態を示す。このバイノーラライザ部分は、本発明の形態を組み込んでいる。
【図11】4つのフィルターを有するクロストークを除去したバイノーラライジングフィルターの1つの代替的な実施形態を示す。
【図12】シャッフラー回路網、信号フィルターの加算、及びフィルター回路網の差を有する、クロストークを除去したバイノーラライジングフィルターのもう1つの代替的な実施形態を示す。
【図13】本発明の形態による、ステレオ入力対を処理するオーディオ処理システムのDSP装置をベースにした実施形態を示す。
【図14A】リスナーの中央後方から中央後方でパンされた信号が生じているような印象をリスナーに作り出すための本発明の形態を具備し、5チャンネルのオーディオ情報を受け取る、プロセッシングシステムベースのバイノーラライザの実施形態を示す。
【図14B】リスナーの中央前方から中央前方でパンされた信号が生じているような印象と、リスナーの中央後方から中央後方でパンされた信号が生じているような印象をリスナーに作り出すための本発明の形態を具備し、4チャンネルのオーディオ情報を受け取る、プロセッシングシステムベースのバイノーラライザの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
[詳細な説明]
本発明の1つの特徴は、例えば、ステレオペアの入力の間でパンされた信号が第1の音源の角度と第2の音源の角度との間の第3の音源の角度から生じているような錯覚を生じさせるために、入力がステレオペアである場合に、第1の音源角度と第2の音源角度との2つの音源に対して、計測又は仮定したHRTF対を用い、ステレオ対の入力を3以上の音源角度にバイノーラライズする、バイノーラライザ又はバイノーラライジングの方法である。
【0042】
図3は、左バーチャルスピーカのためのθで表示される第1の方位角と、対称性を仮定して図3で−θとなる右バーチャルスピーカのための角度と、0度の、すなわち左右のバーチャルスピーカの間の半分の道程にある中央バーチャルスピーカとの、3つの音源角度に対するHRTFの例を示す。中央バーチャルスピーカに対して、HRTF対は、それぞれHRTF(0,L)及びHRTF(0,R)のペアで表示される。左バーチャルスピーカHRTF対は、それぞれHRTF(θ,L)及びHRTF(θ,R)のペアで表示され、そして、右バーチャルスピーカHRTF対は、それぞれHRTF(−θ,L)及びHRTF(−θ,R)のペアで表示される。
【0043】
サウンドが方向角±θのバーチャルスピーカから来るように聞こえるようにステレオ入力をバイノーラライズすることが好ましい。背景技術の項で説明したように、中央でパンされた信号は、図2の方向角±θでバーチャルスピーカにて再生させるような、従来の両耳性の再生システムで再生させるとき、リスナーに十分な中央音像を提供できないのが通常であることに気づいた。すなわち、バイノーラライザはHRTF(0,L)及びHRTF(0,R)を十分に近似しない。
【0044】
図2と式(1)〜(6)を参照して、単一入力(MonoInput)と表示される入力が左右のチャンネル入力に分割され、図2のステレオ・両耳性のシステムで処理されるとき、リスナーの左右の耳での刺激、それぞれLeftEar及びRightEarは、対称であると仮定され、
【数5】
【0045】
ここで、
【数6】
【0046】
であることが好ましい。
【0047】
これは、リスナーに単一入力が中央位置から生じているような錯覚を与えるからである。HRTFの計測値が完全な対称性を示すと仮定する。したがって、HRTF(0,L)=HRTF(0,R)であるとみなし、この値をHRTFctrと表示する。したがって、信号を左右の入力に分割するために、下式が必要となる、
【数7】
【0048】
式(7)と(9)とを比較して、リスナーに、「ファントム中央音像」と称される単一入力の正しい方向認識を与えるために、下式が必要となる、
【数8】
【0049】
本発明の第1の実施の形態によれば、イコライジングフィルターが入力に適用される。結果として生じた近接HRTFと遠方HRTFの平均が好ましいファントム中央HRTFに近似するように、このイコライジングフィルターを時間不変のフィルターに限定することにより、このようなイコライジングフィルターを、(a)バイノーラライジングの前に左右のチャンネルの入力信号に、又は、(b)左右のバーチャルスピーカ位置に対するリスナーの計測又は仮定したHRTFに適用してもよい。すなわち、
【数9】
【0050】
ここで、HRTF’nearとHRTF’farは、式に含まれるHRTFnearフィルターとHRTFfarフィルターである。
【0051】
EQでイコライジングフィルターの応答、例えば、インパルス応答を表す。バイノーラライジングの前にこのフィルターを左右のチャンネルの入力に適用することは、対称性を仮定して、以下のように、HRTFnearとHRTFfarで表示されるθと−θのHRTF対と、イコライジングフィルターにより決定される、HRTF’nearフィルターとHRTF’farフィルターによるバイノーラライジングと等価である、
【数10】
【0052】
式(11)と組み合わせ、以下の関係が導かれる、
【数11】
【0053】
1つの実施の形態において、このイコライジングフィルターは、好ましいHRTFフィルターと逆フィルターを組み合わせた1つのイコライジングフィルターにより得られる。特に、下式で得られるイコライジングフィルターは、式(13)を満足する。
【数12】
【0054】
【0055】
本発明はこの逆フィルターを決定する特定の方法に限定されるものではない。1つの代替的な方法では、逆フィルター問題を適応フィルター設計の問題として構築する。インパルス応答X、長さm1のFIRフィルターにはインパルス応答Y、長さm2のFIRフィルターが続く。入力を遅らせる参照出力は、縦列接続されたフィルターX及びYの出力から差し引き、誤差信号を生成する。Yの係数は2乗平均誤差が最小になるよう適応的に変化する。これは、最小2乗(LMS)法又は、正規化されたLMS法と呼ばれるその変形による通常の方法で解決される、通常の適応フィルター問題である。例えば、S.Haykimの「適応フィルター理論」第3版、Englewood
Cliffs,NJ: Prentice Hall,1996を参照のこと。他の逆フィルター決定法を用いてもよい。
【0056】
さらに、逆フィルターの他の実施の形態は、周波数領域で定められる。本願発明者は、バイノーラライザに用いるHRTFフィルターのライブラリを作った。これらの所定のHRTFフィルターは、周波数応答がHRTFフィルターの周波数応答とは逆となるフィルターを作るためにそれらの周波数応答を逆にすることができると分かっているような、周波数領域で滑らかな振る舞いをすることで知られている。逆フィルターを作る方法ではうまく動作することが分かっているHRTFフィルターにするために(HRTFnear+HRTFfar)/2を反転させる。
【0057】
さらに他の実施の形態では、フィルター(HRTFnear+HRTFfar)/2は、以下のように周波数領域に変換される。
【0058】
インパルス応答を周波数領域に変換する。
【0059】
例えば対数周波数領域スケールで、例えば1/3オクターブ分解能で、振幅応答に平滑処理を施す。この平滑処理は、平滑化した振幅応答を良好に動作させ、それにより、逆変換可能にさせる。
【0060】
平滑化した振幅応答を逆変換させる。
【0061】
逆変換した、平滑化した振幅フィルターに位相応答を付加し、その結果生じたフィルターが最小位相フィルターになるようにする。逆変換前のフィルターの元の位相は用いない。
【0062】
したがって、第1の実施の形態には、EQCで表示されるイコライゼーションフィルターを用いるステップが含まれる。1つの実施の形態では以下のように計算される。
【数13】
【0063】
イコライズしたHRTFフィルターHRTF’nearとHRTF’farを作るためにHRTFnearとHRTFfarを修正することは、もはやHRTF(θ,L)及びHRTF(θ,R)、すなわち、理想的なHRTFnearとHRTFfarとは同じでない。代わりに、左右のチャンネルのオーディオ入力信号が、これらに適用される全体的なイコライゼーションを持つ。
【0064】
一般に、このイコライゼーションは全体的な処理における必要以上の劣化を招かないことが分かり、リスナーは左右のバーチャルスピーカサウンドが悪いとは気づかない。
【0065】
結果生じたイコライズしたHRTF対、HRTF’nearとHRTF’farは以下の基準を満たす、
1.システムの応答は、入力信号が左又は右に自由にパンされるとき、θ及び−θで表示される選択された音源位置に対する好ましいHRTF応答と等価であるが、比較的良性の全体的なイコライザー、EQCが適用される。
【0066】
2.システムの応答は、入力信号が中央にパンされるとき、0°の音源に対するHRTF応答に非常に近い。
【0067】
図4A,4B,4C,及び4Dは、θ=±45°にバーチャルスピーカを位置させるバイノーラライザで用いる代表的なHRTFを示す。図4Aは、HRTFcenterで表示した好ましい中央フィルターである、測定した0°のHRTFを示し、図4Bは、バイノーラライザで用いる、測定した45°の近接耳HRTF、HRTFnearを示す。図4Cは、バイノーラライザで用いる、測定した45°の遠方耳HRTF、HRTFfarを示し、図4Dは、45°の近接耳及び遠方耳のHRTFの平均を示す。近接耳及び遠方耳のHRTFの和が好ましい0°のHRTFに一致しないことがわかるだろう。
【0068】
図5A〜5Dは、合計が好ましい0°のHRTFに非常に近似するような、近接HRTFフィルターと遠方HRTFフィルターを修正するためのイコライゼーションを、どのように用いることができるかを示す。図5Aは、近接HRTFフィルターと遠方HRTFフィルターに適用するイコライゼーションフィルターのインパルス応答を示す。図5Bは、イコライゼーション後の45°の近接耳HRTF、すなわちHRTF’nearを示す。図5Cは、イコライゼーション後の45°の遠方耳HRTF、すなわちHRTF’farを示し、図5Dは、イコライズした近接HRTFとイコライズした遠方HRTFとを平均した結果を示す。図5Dと図4Aとを比較すると、イコライズした近接HRTFとイコライズした遠方HRTFとを平均したものは測定した0°のHRTFに非常に近似することが分かるだろう。
【0069】
図6は、イコライゼーションフィルターEQCの周波数振幅応答を示す。一旦FIRフィルター、HRTF’nearとHRTF’farについてのフィルター係数を定めたとき、図7及び8は、このように定めたイコライズされたHRTFフィルターを用いたバイノーラライザの代替的な実施の形態を示す。図7は、4つのフィルターを有する第1の実施の形態40を示す。インパルス応答がHRTF’nearである2つの近接フィルター41及び44とインパルス応答がHRTF’farである2つの近接フィルター42及び43とは、加算器45及び46により加算すべき信号を作るために用いられて、左耳及び右耳信号を生成する。
【0070】
図8は、CooperとBauckによって最初に提案されたシャッフラー構造を用いた第2の実施の形態を示す。例えばCooperとBauckの米国特許4,893,342、表題「HEAD
DIFFRACTION COMPENSATED STEREO SYSTEM」を参照のこと。加算器51と減算器52を具備するシャッフラーは、左右のオーディオ入力信号の和である第1の信号と、左右のオーディオ入力信号の差である第2の信号とを生成する。シャッフラーの実施の形態50において、2つのフィルターのみが必要であり、加算フィルター53は第1のシャッフルされた信号に対するインパルス応答HRTF’near+HRTF’far、すなわち和信号を有し、減算フィルター54は、第2のシャッフルされた信号に対するインパルス応答HRTF’near−HRTF’far、すなわち差信号を有する。結果生じた信号は、左耳信号を生成する加算器55と右耳信号を生成する減算器56とを具備しシャッフラーとは逆の演算をおこなうアンシャッフラー回路網(「アンシャッフラー」)でシャッフル解除される。例えば各経路に置いた減衰器57及び58又は、回路の別々の部分に分割した一続きの減衰器による縮小拡大が含まれていてもよい。
【0071】
図8において、加算フィルター53は、近接HRTFと遠方HRTFをイコライズすることにより中央HRTFフィルター応答、2*HRTFcenterにほぼ等しくなるインパルス応答を持つことに留意しなければならない。これは、加算フィルターに続く、アンシャッフラー回路網55,56と減衰器57,58が基本的には中央にパンされた信号に対する1つのHRTFフィルター対となることから、当然のことである。
【0072】
代替的な方法において、近接HRTFと遠方HRTFをあらかじめイコライズするのではなく、図8に類似するシャッフラー構造を用いるが、加算フィルターは、好ましい中央HRTFフィルターを二重にしたもので置き換えられる。
【0073】
このような実施の形態は図9に示され、
・ 中央にパンされた信号成分を定位した中央バーチャルスピーカの音像を形成するフィルターを用いた、シャッフラーからの第1の信号、すなわち、左右のチャンネル入力の和に比例した和信号の処理、
・ 好ましい左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置とを定位するために左右の入力を概略的に処理するように、シャッフラーからの第2の信号、すなわち、左右のチャンネル入力の差に比例した差信号の処理、
に対応する。
【0074】
図9の実施の形態により、加算器51と減算器52を具備し中央信号と差信号を生成するシャッフラー回路網を用いて実行される。この図9の実施の形態では、イコライズされた左HRTFと右HRTFとを用い、これらをイコライズされたHRTFの和と差に変換する一方、この図9の実施の形態では、加算フィルターを好ましい中央HRTF応答の2倍となる加算フィルターに置き換え、アンイコライズした差フィルターに等しい応答に差フィルター60を用いる。この方法により、左信号と右信号における定位誤差が生じるという犠牲を払って好ましい質の高い中央HRTF音像がもたらされる。
【0075】
したがって、以下のように、第1と第2の実施の形態は以下のように表現される、
1. 近接バーチャルスピーカHRTFと遠方バーチャルスピーカHRTFとから始めて、近接HRTFと遠方HRTFとの和を好ましい中央HRTFの2倍に近似させるために、イコライゼーションフィルタリング処理をこれらの近接バーチャルスピーカHRTFと遠方バーチャルスピーカHRTFとに適用する。これにより、感知される左右の信号でいくらかのイコライゼーションに変動が生じるという犠牲を払って、リスナーに好ましい質の高い中央HRTF音像がもたらされる。このような、イコライゼーション誤差は不快なものでないことが分かっている、
2. 近接バーチャルスピーカHRTFと遠方バーチャルスピーカHRTFと好ましい中央HRTFとから始めて、差フィルターを近接HRTFと遠方HRTFとの差として定める。例えば、シャッフラー回路網を用いて和信号と差信号とを組み立てる。好ましい中央HRTFフィルターをこの和信号に適用し、近接スピーカHRTFフィルターと遠方スピーカHRTFフィルターの差に比例する応答を有するフィルターをこの差信号に適用する。結果生じたこの2つのフィルターされた信号をシャッフル解除し、左右の耳に、例えばヘッドフォンを介して適用する。これにより、左右のバーチャルスピーカ信号でいくらかの定位誤差が生じるという犠牲を払って、リスナーに好ましい質の高い中央音像がもたらされる、
第3の実施の形態は以下のように、第1と第2の形態を組み合わせたものである、
3. 上記第1の方法を用いて、イコライズされた近接HRTFと遠方HRTFとに基づきフィルターの和と差を生成する。イコライズされたフィルター応答の和と中央HRTFとを平均し、平均化された和信号フィルターを生成する。イコライズされたフィルター応答の差とイコライズされないHRTFフィルターの差とを平均し、平均化された差信号フィルターを生成する。例えばシャッフラー回路網を用いて和信号と差信号とを組み立てる。この和信号に好ましい平均化された和信号フィルターを適用し、この差信号に好ましい平均化された差信号フィルターを適用する。結果生じた2つのフィルターされた信号をシャッフル解除し、左右の耳に、例えばヘッドフォンを介して適用する。これにより、左右の信号にいくらかのEQ変動といくらかの定位誤差が生じるという犠牲を払って、リスナーに好ましい質の高い中央HRTF音像がもたらされる。
【0076】
中央音像の質と左右の音像の質との間で妥協点を見つけるため他の代替的な実施の形態が可能である。そのような実施の形態の第1番目のものは、例えば±45°のバーチャルスピーカにおける図6のようなイコライゼーションフィルターは、部分的にだけ効果があるように修正され、その結果、上述の第1の実施の形態で記載したHRTFより少し不鮮明な中央音像を有する1組のHRTFとなるが、左右の信号は、上述の第1の実施の形態で記載したイコライズされたHRTFフィルターで生じるものよりも音色が少ししか付かないという利点がある。
【0077】
もう1つの具体例として、イコライザーは、好ましい位相応答が保持できる期間、例えば最低限の位相フィルターを保持できる期間、各周波数において、フィルターの効果を半減させ、同様に、イコライゼーションフィルターの位相応答(図示せず)を半減させるために、図6のイコライゼーション曲線を(dBスケール上で)半分にすることにより生成される。結果生じたフィルターは、縦列接続されたような1対のイコライゼーションフィルターが図6で示したフィルターと同じ応答を生成するようなものとなる。このイコライゼーションフィルターは、好ましいスピーカ位置に対する好ましい例えば正確に測ったHRTFフィルターと等しくするために用いられる。結果として生じたこの信号をリスナーにたいして再生させたとき、本願発明者は、結果として生じたイコライズされた近接HRTFフィルターとイコライズされた遠方HRTFフィルターとが部分的に改善された中央音像を提示するが、左右の音像についてはほんの少しのイコライゼーション誤差を受けるだけであることを見つけた。
【0078】
[大きなスピーカ角]
上記説明では、バーチャルLスピーカとバーチャルRスピーカをリスナーの前に、例えば±30度又は±45度で置いたものに使う技術を示したが、説明したこの方法と装置は、±90度までの大きな角度に置いたバーチャルスピーカに対してもうまくいく。ラウドスピーカをリスナーに対して±90度に近い角度で、例えばリスナーのちょうど左右に置いた、実際のラウドスピーカを用いた再生では、パンすることにより作られた中央信号を適切に定位できない。例えば、モノラル信号を左右のスピーカに等しく分割して作った中央にパンする信号のような場合、ステレオスピーカでの再生で適切なファントム中央音像を生じさせることはない。実際のスピーカで再生する場合、このような中央でパンするようなものは、リスナーに対して正確に中央の位置を生じさせないこと、すなわち、ステレオスピーカがリスナーの前に約±45度以下の角度で対称的におかれた場合にのみファントム中央音像を生じることが知られている。本発明の特徴によれば、仮想的な左右のスピーカをリスナーに対して±90度以下の角度で置いた状態の中央前方の音像をヘッドフォンで再生する。
【0079】
[スピーカでの再生]
HRTFフィルターを用いた上述の方法及び装置は、両耳性のヘッドフォンでの再生に適用できるだけではなく、ステレオスピーカでの再生にも適用できる。スピーカでのサウンド定位効果を生み出す技術、すなわちスピーカでの再生によって幻の音源像を作り出す技術は当業者に良く知られており、一般に「クロストークを除去した両耳性」技術、及び、「トランスオーラル」フィルターと称されている。例えば、AtalとSchroederの米国特許3,236,949、表題「APPARENT
SOUND SOURCE TRANSLATOR」参照のこと。リスニング中のリスナーの左耳と右耳間でのクロストーク、例えば、スピーカの出力とスピーカから遠い方の耳とのクロストークをクロストークと称する。例えば、リスナーの前に置かれた1対のステレオスピーカについて、左耳で聞こえる右スピーカのサウンドと、右耳で聞こえる左スピーカのサウンドとをクロストークと称する。通常、クロストークによりサウンドの手がかりが乱されるので、クロストークは定位を著しくあいまいにさせるものとして知られている。クロストークキャンセレーションは、クロストークの影響を無効にする。
【0080】
モノラル入力にたいして、クロストークを除去するフィルターには、スナーの耳を仮想的なサウンド位置から到達したサウンドに起因する両耳性の応答に相当する、スピーカにて刺激する信号をもつ、ステレオ対のように、通常リスナーの前に置かれた2つのスピーカへのモノラル入力信号を処理するフィルターが含まれる。
【0081】
1例として、リスナーの前に±30°の角度で置かれた2つの実際のスピーカを想定し、リスナーに+60°の位置に音源があるような錯覚を与えたいと仮定する。クロストークを除去する両耳化は、実際のスピーカ構成に分け与えられた±30°のHRTFを「取り消し(undoing)」、60度のHRTFフィルターを用いて両耳化することで達成される。
【0082】
これらのクロストークキャンセリング技術がリスナーの前に仮想的な音源のほぼどんな角度を生成させるためにも用いることができる一方(リスナーの後方に仮想的な音源を位置させることを達成することは非常に難しい)、0度の前方音像は、一般に、HRTFを用いるより、中央パンニングと呼ばれるような、2つのスピーカに入力を分割する方法により作られ、リスナーの中央に位置するようなモノラル入力は、約3から6dB減衰させて左右のスピーカに送られる。
【0083】
ある角度、例えば30°の角度でリスナーの前に置かれたスピーカで再生するステレオ入力信号対を処理し、他の位置、例えば60°の角度でリスナーの前に置かれた1対のスピーカで聞いているような錯覚をリスナーに与えたいと仮定する。これを達成する従来技術の一つではクロストークを除去するバイノーラライザを生成する。図10は、このようなバーチャルスピーカを好みの位置、例えば±60°に置くためにバイノーラライザの縦列接続として実施されたクロストーク除去フィルターを示す。バイノーラライザには、対称的なケース(又は対称的に見せかけた、例えば式(3)のようなケースに)の中に、そのインパルス応答がHRTFnearと表示される近接HRTFフィルター61,62と、そのインパルス応答がHRTFfarと表示される遠方HRTFフィルター63,64が含まれる。各近接フィルターと遠方フィルターの出力は加算器65,66により加算され左右のバイノーラライズされた信号を形成する。このバイノーラライザの後に、例えば±30°に位置する実際のスピーカで生じたクロストークを除去するためのクロストークキャンセラーが続く。このクロストークキャンセラーは、バイノーラライザから信号を受け取り、インパルス応答がXnearと表示される近接クロストーク除去フィルター67,68と、インパルス応答がXfarと表示される遠方クロストーク除去フィルター69,70とを対称的なケース、又は対称的に見せかけたケース内に具備し、その後に、±30°で生じるクロストークを除去する加算器71及び72が続く。その出力は左スピーカ73と右スピーカ74へ行く。
【0084】
近接バイノーラライザと遠方バイノーラライザと近接クロストーク除去フィルターと遠方クロストーク除去フィルターのそれぞれは、線形の時間不変システムなので、バイノーラライザの縦列接続は、2入力2出力システムとして表現することができる。図11は、このような、4つのフィルター75,76,77,及び78、と2つの加算器79,80としての、クロストークを除去するバイノーラライザの実施の形態を示す。対称的な(又は対称的に見せかけた)ケース内の4つのフィルターは2つの異なった応答、すなわち、フィルター75及び76に対するGnearと表示した近接インパルス応答と、フィルター77及び78に対するGfarと表示した遠方インパルス応答を有し、ここで、GnearとGfarの各々は、HRTFnearとHRTFfarのHRTFフィルターとXnearとXfarのクロストーク除去フィルターである。
【0085】
良く知られているように、図11に示した2入力2出力対称構成は、図12に示した構成でも実施することができる。図12は、和信号を生成する加算器81と差信号を生成する減算器82を有するシャッフリング回路網90と、和信号をフィルターする和信号フィルター83であって、この和信号フィルターはGnear+Gfarに比例するインパルス応答を有する和信号フィルターと、差信号をフィルターする差信号フィルター84であって、この差和信号フィルターはGnear−Gfarに比例するインパルス応答を有する差信号フィルターと、それに続く、これもまた左スピー73カへの左スピーカ信号を生成する加算器85と、右スピーカ74への右スピーカ信号を生成する減算器を有するアンシャッフリング回路網91とを具備するクロストークを除去するバイノーラライザを示す。
【0086】
かくして、クロストークを除去するバイノーラライザフィルターは、図12に示した構成で実施され、これは、図8及び図9に示した構成と類似する。
【0087】
1実施の形態においては、中央例えば0°に定位する音源を正確に再生するように設計される。そのようなフィルターを計算するのではなく、1実施の形態においては、左右のスピーカからの等量のモノラル信号を聞いているリスナーがそのような信号が中央から来ているかのように正確に定位するための認知情報を使って、そのようなフィルターにデルタ関数を用いる。代替的な実施の形態において、クロストークを除去するフィルターは、加算フィルターを、例えば、そのインパルス応答がデルタ関数の識別フィルターに見せかけるのと等しい。代替的な実施の形態において、この加算フィルターは、フラットな(デルタ関数インパルス応答)フィルターに置き換えられる。
【0088】
本発明の両耳性での応用例では、「定位」の認識誤差を修正するためのものであるのに対して、クロストークを除去する本発明の応用例では、中央音像において生じる共通に認識されるイコライゼーション誤差を修正するものである。
【0089】
[後方バーチャルスピーカ]
本発明の他の特徴によれば、例えば、2つの後方バーチャルスピーカに加えて、幻の音源が180度(後方中央)位置にあるかのような、つまり1つのスピーカが後方中央位置にあるかのように、±90度以上にスピーカをシミュレートするためにバイノーラライズすることにより、中央後方音源を正確にシミュレートする。
【0090】
具体的な例では、5スピーカホームシアターの効果を生み出すバイノーラライザを考える。このような「仮想的な」5スピーカ構成の左右のサラウンド位置は、鮮明な後方中央音像を作り出す利点を加えることによりシミュレートされる。これにより、ドルビーディジタル(Dolby
Digital)EXtm(ドルビー・ラボラトリーズ・インク、サンフランシスコ、CA)のような後方中央スピーカを有するシステムをシミュレートすることが可能となる。
【0091】
第1の後方信号の実施の形態には、後方近接HRTFフィルターと後方遠方HRTFフィルターとの和が好ましい後方中央HRTFフィルターに近似するような後方近接HRTFフィルターと後方遠方HRTFフィルターとをイコライジングする処理が含まれる。例えば、バイノーラライザを経由したサラウンドサウンド入力のような左後方と右後方の信号を、プレイコライジングについての第1の後方信号の実施の形態を用いて処理することにより、中央後方にパンした音源を中央後方から現れるようにヘッドフォンで認識させるが、2つのサラウンド音像(後方左と後方右)が耐えられる程度のイコライゼーション誤差を持つようになる。あるいは、ヘッドフォンで再生されたとき、正確に中央から来るように見えるが、好ましい位置から少しずれた左後方バーチャルスピーカと右後方バーチャルスピーカから来るようにみえる左後方と右後方の信号を、好ましい中央後方HRTFに近似する、シャッフラーとHRTFフィルターの和信号を用いたバイノーラライザを使って実施する。
【0092】
他の実施の形態には、前方の信号と後方の信号の両方を処理する、前方処理と後方処理とを組み合わせる処理が含まれる。ここで、サラウンドサウンド、例えば、4チャンネルサウンドは、仮想的なバーチャル中央前方サウンドと仮想的なバーチャル中央後方サウンドを正しく生成するために、前方左の信号と前方右の信号を処理することができ、また、後方左の信号と後方右の信号を処理することができることに留意すべきである。
【0093】
ここで、上記フィルターの実施の形態にはオーディオ増幅器及び他の同様な構成要素が含まれないことは当業者に理解されていることに留意すべきである。さらに、上記実施の形態はディジタルフィルタリングによるものである。したがって、アナログ入力に対しては、アナログ・ディジタル変換器が含まれることは、当業者には分かるだろう。さらに、ヘッドフォンで再生させるために、又は、トランスオーラルフィルタリングケースでラウドスピーカで再生させるために、ディジタル信号出力をアナログ出力に変換させるためディジタル・アナログ変換器を用いることは当業者には分かるだろう。
【0094】
さらに、ディジタルフィルターが多くの方法で導入されることは当業者には分かるだろう。
【0095】
図13は本発明の特徴にしたがってステレオ入力対の処理を行うオーディオ処理システムの実施の形態を示す。このオーディオ処理システムには、アナログ入力をそれに相当するディジタル信号に変換するアナログ・ディジタル変換器(A/D)97と、処理した信号をアナログ出力信号に変換するディジタル・アナログ変換器(D/A)98が含まれる。代替的な実施の形態において、ブロック97には、A/D変換器ではなくディジタル入力信号に対して用意されるSPDIFインターフェースが含まれる。このシステムには、入力を処理して、十分速く出力を生成することのできるDSP装置が含まれる。1つの実施の形態において、DSP装置には、プロセッサのオーバーヘッドなしにA/D変換器及びD/A変換器97及び98と通信を行うシリアルポート96の形態を持つインターフェースが含まれ、また、1つの実施の形態において、入出力処理の動作を妨げることなくオフチップメモリからデータをオンチップメモリ95にコピーすることのできる、装置外メモリ92及びDMAエンジンが含まれる。ここに記載した本発明の特徴を実行するコードは、オフチップメモリとし、必要に応じてオンチップメモリのロードしてもよい。DSP装置には、DSP装置のプロセッサ93にここに記載したフィルタリングを実行させるコードを収納するプログラムメモリ94が含まれる。外部メモリが必要な場合のために、外部バスマルチプレクサが含まれる。
【0096】
同様に、図14Aは、前方スピーカを通じて再生させることを目的とする左信号、中央信号、及び右信号と、後方スピーカを通じて再生させることを目的とする左サラウンド信号、及び右サラウンド信号と、の形の5チャンネルのオーディオ情報を受け取るバイノーラライジングシステムを示す。このバイノーラライザは、左サラウンド信号及び右サラウンド信号を含む各入力にHRTFフィルター対を実施し、ヘッドフォンを通じてリスニングしているリスナーに中央後方にパンされた信号がリスナーの中央後方から来るような体験をさせるような本発明の特徴を実行する。このバイノーラライザは、例えば、プロセッサを具備するDSP装置のような処理システムを用いて実施する。この命令を保持するためのメモリには、プロセッサに上記のフィルタリングを実行するパラメータが含まれる。
【0097】
同様に、図14Bは、前方スピーカを通じて再生させることを目的とする左信号及び右信号と、後方スピーカを通じて再生させることを目的とする左後方信号、及び右後方信号と、の形の4チャンネルのオーディオ情報を受け取るバイノーラライジングシステムを示す。このバイノーラライザは、左信号及び右信号、左後方信号及び右後方信号を含む各入力にHRTFフィルター対を実施し、ヘッドフォンを通じてリスニングしているリスナーに中央前方にパンされた信号がリスナーの中央前方から来るような、そして、中央後方にパンされた信号がリスナーの中央後方から来るような体験をさせるような、本発明の特徴を実行する。このバイノーラライザは、例えば、プロセッサを有するDSP装置のようなプロセッシングシステムを用いて実行する。この命令を保持するためのメモリには、プロセッサに上記のフィルタリングを実行するパラメータが含まれる。
【0098】
したがって、ここに記載の手法は、命令を含むコードセグメントを受け取る1以上のプロセッサを有する機械により実行可能である。ここに記載の方法は、この機械により命令が実行されるとき、この機械がその方法を実施する。その機械が行う(シーケンシャルな又はその他の)動作を特定する命令を実行することのできるどんな機械も含まれる。したがって、1つの標準的な機械は、1以上のプロセッサを有する標準的な処理システムで例示することができる。各プロセッサには1以上のCPUと、グラッフィック処理ユニットと、プログラマブルDSPユニットとを含めることができる。この処理システムは、メインRAM及び/又はスタティックRAM、及び/又はROMを有するメモリサブシステムを含めることができる。構成要素間での通信のためにバスサブシステムを含めてもよい。もしこの処理システムがディスプレイを必要とするなら、このようなディスプレイ、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)又はブラウン管(CRT)ディスプレイ、を含めてもよい。もし、手動でのデータ入力が必要であれば、この処理システムはまた、キーボード、マウスのようなポインティングコントロール装置その他のような1以上の英数字入力ユニットのような入力装置を含む。ここで用いられるメモリユニットの語は、ディスクドライブユニットのような記憶システムを含有する。ある構成における処理システムには、サウンド出力装置及びネットワークインターフェース装置が含まれる。したがって、このメモリサブシステムには、処理システムにより実行されるとき、ここに記載の多くの方法の1つを実行するための命令を含む機械読取可能なコードセグメント(例えば、ソフトウェア)を伝達する伝達媒体が含まれる。このソフトウェアは、ハードディスク内に置くことができ、又は、コンピュータシステムにより実行されている間全て又は少なくとも一部をRAM及び/又はプロセッサ内に置くことができる。したがって、メモリ及びプロセッサはまた、機械読取可能なコードを伝達する伝達媒体を構成する。
【0099】
代替的な実施の形態において、この機械は、標準のスタンドアローン装置として動作するが、例えばネットワーク上の他の装置に接続した装置として作動させることもできる。この機械は、サーバとしてまたはサーバ・クライアントネットワーク装置のクライアント機として、または、ピア・トゥー・ピア環境または分散型ネットワーク環境におけるピアマシンとして作動させることもできる。この機械は、パーソナルコンピュータ(PC)でも、タブレットPCでも、セットトップボックス(STB)でも、携帯端末(PDA)でも、携帯電話でも、ウェブアプライアンスでも、ネットワークルータでも、その機械で行う動作を特定する(シーケンシャルな、またはその他の)命令を実行することのできるどんな機械でもよい。
【0100】
ここで留意すべきは、図は単一のプロセッサとコードを実行する単一のメモリのみ示しているが、当業者は、上述の多くの構成要素が含まれていることを理解するだろうが、本発明の特徴が分かりにくくならないように、このことを明確には示していない。例えば、単一の機械が描かれているが、「機械」の語には、ここに記載した方法のいずれかを実行する1つの命令セット(または多くの命令セット)をここにまたは組み合わせて実行する機械の集合も含まれることとしている。
【0101】
したがって、ここに記載した方法の1実施の形態は、例えば、両耳性システムの一部をなす1以上のプロセッサのような処理システムで実行されるコンピュータプログラムの形態となる。したがって、当業者には良く理解されているように、本発明の実施の形態では、方法や、特定の目的を持つ装置のような装置や、データ処理システムのような装置や、コンピュータプログラム製品のような伝達媒体として実施される。伝達媒体は、処理システムにおける方法の実施を制御する、コンピュータで読み取り可能な1以上のコードセグメントを伝達する。したがって、本発明は、方法の形態や、完全なハードウェアの実施の形態や、完全なソフトウェアの実施の形態や、ソフトウェアとハードウェアを結合させた実施の形態とすることができる。さらに、本発明は、その媒体中にあるコンピュータ読取可能なコードセグメントを伝達する伝達媒体(例えば、コンピュータ読取可能な記憶媒体上に作られたコンピュータプログラム製品)の形態とすることができる。
【0102】
このソフトウェアはさらに、ネットワークインターフェース装置を介してネットワークに送受信することができる。この伝達媒体は、単一の媒体として例示した実施の形態には示されているが、「伝達媒体」の語には、1以上の命令セットを保存する単一のまたは複数の媒体(例えば、中央集中型データベースや分散型データベース及び/又は関連するキャッシュ及びサーバ)も含まれることとしている。「伝達媒体」の語には、また、その機械により実行される命令セットを保存したり、エンコーディングしたり、伝達したりすることができ、その機械に本発明の方法を実行させることのできるあらゆる媒体が含まれることとすべきである。伝達媒体は、それに限定されないが、不揮発性媒体、揮発性媒体、及び伝送媒体を含む、多くの形態とすることができる。不揮発性媒体には、例えば、光学ディスク、磁気ディスク、及び光‐磁気ディスクが含まれる。揮発性媒体には、主メモリのようなダイナミックメモリが含まれる。伝送媒体には、バスサブシステムを構成する電線を含む、同軸ケーブル、銅線及び光ファイバーが含まれる。伝送媒体は、ラジオは及び赤外線データ通信において生じるような音波又は光波の形態とすることもできる。例えば、「伝送媒体」の語は、それに限定されないが、半導体メモリ、光媒体、磁気媒体、及び搬送波信号を含むとすべきである。
【0103】
本発明の他の実施の形態は、ステレオ入力のペアを処理するフィルターのコンピュータ読取可能なデータを伝送する伝送媒体の形態となる。このデータは、このフィルターのインパルス応答の形態、又はこのフィルターの周波数領域の伝達関数の形態とすることができる。このフィルターには、上述のように設計した2つのHRTFフィルターが含まれる。その処理がヘッドフォンによるリスニングのためのものである場合は、HRTFフィルターは、バイノーラライザにおける入力データをフィルターするために用いられ、スピーカリスニングである場合は、HRTFフィルターは、クロストークを除去したバイノーラライザに組み込まれる。
【0104】
説明した方法のステップは、記憶装置に保存した命令(コードセグメント)を実行する処理(コンピュータ)システムの1つの適当なプロセッサ(又は複数のプロセッサ)による実施の形態により実行されることが分かる。本発明は特定の実施の形態又はプログラミング技法に限定されず、また、本発明はここで機能的に記載したものを実施するために適するどのような技法を用いてでも実行されることは了解されよう。本発明は特定のプログラム言語またはオペレーティングシステムに限定されるものではない。
【0105】
この明細書で「1つの実施の形態」または「実施の形態」と称するものは、本発明の少なくとも1つの実施の形態に含まれる実施の形態との関連において説明した、特定の特徴、構成、または特性を意味する。したがって、この明細書を通じてさまざまな場所で現れる「1つの実施の形態」または「実施の形態」の言いまわしは必ずしも同じ実施の形態を称しているのではない。さらに、1以上の実施の形態において、特定の形態、構成、または特性を当業者にとってこの明細書から明らかなような適切な方法で結合してもよい。
【0106】
同様に、本発明のさまざまな特徴のうちの1以上を効率的に開示しその理解を助けるために、本発明の模範的な実施の形態の上記記載において、本発明のさまざまな特徴はしばしば単一の実施の形態、図、又は記載にグループ化されていることは評価すべきである。しかし、開示した方法は、各請求項で明白に記載した以上の形態を請求項に記載の発明が必要としているものと解釈されるものではない。さらにいえば、以下の請求項に示すように、発明の創作的形態は、先に開示した実施の形態の1つの全ての特徴より少ない。したがって、この詳細な説明に続く特許請求の範囲は、この詳細な説明に組み込まれ、この発明の別々の実施の形態として各請求項がそれ自身に基づくことができる。さらに、以下に主張するように、ここに記載のある実施の形態は、ある特徴を含むが他の特徴を含まないが、他の実施の形態における特徴を組み合わせることは本発明の技術的範囲内である。
【0107】
さらに、いくつかの実施の形態は、コンピュータシステムのプロセッサにより実行することのできる方法又は要素の結合としてここに記載されている。したがって、このような方法又は方法の要素を実行するのに必要な命令を持つプロセッサは、この方法又は方法の要素を実行する方法を形成する。同様に、ここに記載された装置の実施の形態のここに記載された要素は、本発明を実行するための要素により実施される機能を実行する方法の例である。
【0108】
ここに記載の明細書及び特許請求の範囲において、等価又は実質的に等価であることには、比例定数の範囲が等価である場合が含まれる。
【0109】
ここに引用した全ての刊行物、特許、及び特許出願は、参考として本明細書に組み込まれる。
【0110】
したがって、本発明の好ましい実施の形態と信じるものについてここに記載したが、当業者は、本発明の思想から離れることなく他の又はさらなる変更を加えることができること、及び、このような変更又は修正の全ては本発明の技術的範囲内であることを認識するだろう。例えば、上記の全ての式は、用いることのできる手順を単に代表するものである。機能をブロック図に付加しても削除してもよく、機能ブロック間で動作が交換可能である。ステップを本発明の技術的範囲内に記載した方法に付加しても削除してもよい。
【0111】
原出願の出願当初の特許請求の範囲を記載しておく。
〔請求項1〕
オーディオの再生のための1対のオーディオ入力信号を受け入れるステップと、
前記入力信号の和に比例する第1の信号(和信号)と前記入力信号の差に比例する第2の信号(差信号)とを作り出すために前記入力信号をシャッフルするステップと、
中央位置でバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFの2倍に近似するフィルターで前記和信号をフィルターするステップと、
1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーの近接耳HRTFと遠方耳HRTFとの差に近似するフィルターで前記差信号をフィルターするステップと、
前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作り出すために、前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号とをシャッフル解除するステップと、
を具備し、
前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれる場合、ヘッドフォンを通して前記第1の出力信号と前記第2の出力信号とを聞いているリスナーに、前記パンされた信号成分が前記中央位置でバーチャル音源から生じているような感覚を与えることを特徴とする、
方法。
〔請求項2〕
前記中央HRTFの2倍に近似するフィルターは、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとをそれぞれイコライジングフィルターによりフィルターすることにより得られた、前記近接耳HRTFをイコライズしたものと前記遠方耳HRTFをイコライズしたものとの和として得られたことを特徴とする請求項1に記載の方法。
〔請求項3〕
前記イコライジングフィルターは、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの逆フィルターであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
〔請求項4〕
前記イコライジングフィルターの応答は、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの応答を周波数領域に変換することにより決定されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
〔請求項5〕
前記イコライジングフィルターの応答は、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの応答を反転させる適応フィルター法により決定されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
〔請求項6〕
前記中央HRTFの2倍に近似するフィルターは、好ましい中央HRTFの2倍に実質的に等しい応答を持つフィルターであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
〔請求項7〕
前記オーディオ入力信号には左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置とがリスナーに対して対称であり、リスナー及びリスニングは、近接HRTFが左バーチャルスピーカから左耳HRTFへと、右バーチャルスピーカから右耳HRTFへとなるような、そして、遠方HRTFが左バーチャルスピーカから右耳HRTFへ、右バーチャルスピーカから左耳HRTFへとなるような対称的なものとなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
〔請求項8〕
前記オーディオ入力信号には左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置にあり、前記近接HRTFは、左バーチャルスピーカから左耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから右耳HRTFへのとの平均に比例し、前記遠方HRTFは、左バーチャルスピーカから右耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから左耳HRTFへのとの平均に比例することを特徴とする請求項1に記載の方法。
〔請求項9〕
前記オーディオ入力信号には、左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの前の左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする請求項1に記載の方法。
〔請求項10〕
前記左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置とは、45度と90度との間の大きさの方位角であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
〔請求項11〕
前記オーディオ入力信号には、左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの後の左後方バーチャルスピーカ位置と右後方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする請求項1に記載の方法。
〔請求項12〕
前記オーディオ入力信号は、サラウンドサウンド再生のための3以上の入力信号のセットのサブセットであり、前記方法には、ヘッドフォン通して聞くために、前記入力信号の各々にバーチャルスピーカ位置を生成するステップを含む、3以上の入力信号のセットを処理するステップが含まれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
〔請求項13〕
1対のオーディオ入力信号をシャッフルする手段であって、該シャッフルする手段は、前記入力信号の和に比例する第1の信号(和信号)と前記入力信号の差に比例する第2の信号(差信号)とを生成することを特徴とするシャッフルする手段と、
中央位置でバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFの2倍に近似するフィルターで前記和信号をフィルターする手段であって、該和信号をフィルターする手段は、前記シャッフルする手段と結合していることを特徴とする和信号をフィルターする手段と、
1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーの近接耳HRTFと遠方耳HRTFとの差に近似するフィルターで前記差信号をフィルターする手段であって、該差信号をフィルターする手段は、前記シャッフルする手段と結合していることを特徴とする差信号をフィルターする手段と、
前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号とをシャッフル解除する手段であって、該シャッフル解除する手段は前記シャッフルする手段と結合しており、該シャッフル解除する手段は、前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作り出すことを特徴とするシャッフル解除する手段と、
を具備し、
前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれる場合、ヘッドフォンを通して前記第1の出力信号と前記第2の出力信号とを聞いているリスナーに、前記パンされた信号成分が前記中央位置でバーチャル音源から生じているような感覚を与えることを特徴とする、
装置。
〔請求項14〕
前記中央HRTFの2倍に近似するフィルターは、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとをそれぞれイコライジングフィルターによりフィルターすることにより得られた、前記近接耳HRTFをイコライズしたものと前記遠方耳HRTFをイコライズしたものとの和として得られたことを特徴とする請求項13に記載の装置。
〔請求項15〕
前記イコライジングフィルターは、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの逆フィルターであることを特徴とする請求項14に記載の装置。
〔請求項16〕
前記イコライジングフィルターの応答は、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの応答を周波数領域に変換することにより決定されることを特徴とする請求項15に記載の装置。
〔請求項17〕
前記イコライジングフィルターの応答は、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの応答を反転させる適応フィルター法により決定されることを特徴とする請求項15に記載の装置。
〔請求項18〕
前記中央HRTFの2倍に近似するフィルターは、好ましい中央HRTFの2倍に実質的に等しい応答を持つフィルターであることを特徴とする請求項13に記載の装置。
〔請求項19〕
前記オーディオ入力信号には左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置とがリスナーに対して対称であり、リスナー及びリスニングは、近接HRTFが左バーチャルスピーカから左耳HRTFへと、右バーチャルスピーカから右耳HRTFへとなるような、そして、遠方HRTFが左バーチャルスピーカから右耳HRTFへ、右バーチャルスピーカから左耳HRTFへとなるような対称的なものとなることを特徴とする請求項13に記載の装置。
〔請求項20〕
前記オーディオ入力信号には左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置にあり、前記近接HRTFは、左バーチャルスピーカから左耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから右耳HRTFへのとの平均に比例し、前記遠方HRTFは、左バーチャルスピーカから右耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから左耳HRTFへのとの平均に比例することを特徴とする請求項13に記載の装置。
〔請求項21〕
前記オーディオ入力信号には、左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの前の左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする請求項13に記載の装置。
〔請求項22〕
前記左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置とは、45度と90度との間の大きさの方位角であることを特徴とする請求項21に記載の装置。
〔請求項23〕
前記オーディオ入力信号には、左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの後の左後方バーチャルスピーカ位置と右後方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする請求項13に記載の装置。
〔請求項24〕
前記オーディオ入力信号は、サラウンドサウンド再生のための3以上の入力信号のセットのサブセットであり、前記方法には、ヘッドフォン通して聞くために、前記入力信号の各々にバーチャルスピーカ位置を生成するステップを含む、3以上の入力信号のセットを処理するステップが含まれることを特徴とする請求項13に記載の装置。
〔請求項25〕
1対のオーディオ入力信号を受け入れ、該入力信号の和に比例する第1の信号(和信号)と該入力信号の差に比例する第2の信号(差信号)とを生成するシャッフラーと、
中央位置でバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFの2倍に近似するフィルターで前記和信号をフィルターする前記シャッフルする手段と結合している和フィルターと、
前記差信号出力と結合していて該差信号をフィルターする差フィルターであって、該フィルターは、1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーの近接耳HRTFと遠方耳HRTFとの差に近似することを特徴とする差信号をフィルターと、
前記和フィルターと前記差フィルターとに結合しており、前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作り出すアンシャッフラーと、
を具備し、
前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれる場合、ヘッドフォンを通して前記第1の出力信号と前記第2の出力信号とを聞いているリスナーに、前記パンされた信号成分が前記中央位置でバーチャル音源から生じているような感覚を与えることを特徴とする、
装置。
〔請求項26〕
前記中央HRTFの2倍に近似するフィルターは、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとをそれぞれイコライジングフィルターによりフィルターすることにより得られた、前記近接耳HRTFをイコライズしたものと前記遠方耳HRTFをイコライズしたものとの和として得られたことを特徴とする請求項25に記載の装置。
〔請求項27〕
前記イコライジングフィルターは、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの逆フィルターであることを特徴とする請求項26に記載の装置。
〔請求項28〕
前記イコライジングフィルターの応答は、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの応答を周波数領域に変換することにより決定されることを特徴とする請求項27に記載の装置。
〔請求項29〕
前記イコライジングフィルターの応答は、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの応答を反転させる適応フィルター法により決定されることを特徴とする請求項27に記載の装置。
〔請求項30〕
前記中央HRTFの2倍に近似するフィルターは、好ましい中央HRTFの2倍に実質的に等しい応答を持つフィルターであることを特徴とする請求項25に記載の装置。
〔請求項31〕
前記オーディオ入力信号には左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置とがリスナーに対して対称であり、リスナー及びリスニングは、近接HRTFが左バーチャルスピーカから左耳HRTFへと、右バーチャルスピーカから右耳HRTFへとなるような、そして、遠方HRTFが左バーチャルスピーカから右耳HRTFへ、右バーチャルスピーカから左耳HRTFへとなるような対称的なものとなることを特徴とする請求項25に記載の装置。
〔請求項32〕
前記オーディオ入力信号には左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置にあり、前記近接HRTFは、左バーチャルスピーカから左耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから右耳HRTFへのとの平均に比例し、前記遠方HRTFは、左バーチャルスピーカから右耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから左耳HRTFへのとの平均に比例することを特徴とする請求項25に記載の装置。
〔請求項33〕
前記オーディオ入力信号には、左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの前の左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする請求項25に記載の装置。
〔請求項34〕
前記左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置とは、45度と90度との間の大きさの方位角であることを特徴とする請求項33に記載の装置。
〔請求項35〕
前記オーディオ入力信号には、左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの後の左後方バーチャルスピーカ位置と右後方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする請求項25に記載の装置。
〔請求項36〕
前記オーディオ入力信号は、サラウンドサウンド再生のための3以上の入力信号のセットのサブセットであり、前記方法には、ヘッドフォン通して聞くために、前記入力信号の各々にバーチャルスピーカ位置を生成するステップを含む、3以上の入力信号のセットを処理するステップが含まれることを特徴とする請求項25に記載の装置。
〔請求項37〕
入力信号の各々をHRTFフィルター対によりフィルターするステップと
該HRTFフィルターされた信号を加算するステップと、
による結果に対応する1対の出力信号を生成する処理により、1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップを具備する方法であって、
前記HRTFフィルター対は、ヘッドフォンで1対の出力信号を聞いているリスナーが好ましい1対のバーチャルスピーカ位置からのサウンドを体験するようなフィルター対であり、
前記フィルターするステップは、前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれている場合、前記バーチャルスピーカ位置の間の中央位置にあるバーチャル音源からパンされた信号成分が生じているような感覚を1対の出力信号を聞いているリスナーにヘッドフォンを通して提供するようなステップである、
ことを特徴とする方法。
〔請求項38〕
前記HRTFフィルター対は、好ましいバーチャルスピーカ位置の1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーに対する近接耳HRTFと遠方耳HRTFとからなり、前記1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップは、
前記入力信号の和に比例する第1の信号(和信号)と前記入力信号の差に比例する第2の信号(差信号)とを作り出すために前記入力信号をシャッフルするステップと、
中央位置でバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFの2倍に近似するフィルターで前記和信号をフィルターするステップと、
前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの差に近似するフィルターを介して前記差信号をフィルターするステップと、
前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作り出すために、前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号とをシャッフル解除するステップと、
を具備することを特徴とする請求項37に記載の方法。
〔請求項39〕
前記中央HRTFの2倍に近似するフィルターは、好ましい中央HRTFの2倍に実質的に等しい応答を持つフィルターであることを特徴とする請求項38に記載の方法。
〔請求項40〕
前記HRTFフィルター対は、イコライズされた近接耳HRTFとイコライズされた遠方耳HRTFとからなり、前記イコライズされた近接耳HRTFと前記イコライズされた遠方耳HRTFとはそれぞれ、前記好ましいバーチャルスピーカ位置の1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーに対する近接耳HRTFと遠方耳HRTFとをイコライズすることにより得られ、前記イコライズは、前記イコライズされた近接耳HRTFと前記イコライズされた遠方耳HRTFとの平均が、中央位置でバーチャル音源を聞いているリスナーに対する好ましい中央HRTFであることを特徴とする請求項37に記載の方法。
〔請求項41〕
前記イコライジングフィルターは、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの平均に比例するフィルターの逆フィルターであることを特徴とする請求項40に記載の方法。
〔請求項42〕
前記1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップは、前記1対のオーディオ入力信号の和が、好ましい中央HRTFに実質的に等しいフィルター応答によりフィルターされるようになされることを特徴とする請求項37に記載の方法。
〔請求項43〕
前記オーディオ入力信号には左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置とがリスナーに対して対称であり、リスナー及びリスニングは、近接HRTFが左バーチャルスピーカから左耳HRTFへと、右バーチャルスピーカから右耳HRTFへとなるような、そして、遠方HRTFが左バーチャルスピーカから右耳HRTFへ、右バーチャルスピーカから左耳HRTFへとなるような対称的なものとなることを特徴とする請求項37に記載の方法。
〔請求項44〕
前記オーディオ入力信号には左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置にあり、前記近接HRTFは、左バーチャルスピーカから左耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから右耳HRTFへのとの平均に比例し、前記遠方HRTFは、左バーチャルスピーカから右耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから左耳HRTFへのとの平均に比例することを特徴とする請求項37に記載の方法。
〔請求項45〕
前記オーディオ入力信号には、左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの前の左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする請求項37に記載の方法。
〔請求項46〕
前記左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置とは、45度と90度との間の大きさの方位角であることを特徴とする請求項45に記載の方法。
〔請求項47〕
前記オーディオ入力信号には、左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの後の左後方バーチャルスピーカ位置と右後方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする請求項37に記載の方法。
〔請求項48〕
前記オーディオ入力信号は、サラウンドサウンド再生のための3以上の入力信号のセットのサブセットであり、前記方法には、ヘッドフォン通して聞くために、前記入力信号の各々にバーチャルスピーカ位置を生成するステップを含む、3以上の入力信号のセットを処理するステップが含まれることを特徴とする請求項37に記載の方法。
〔請求項49〕
オーディオ再生のために1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップであって、前記入力信号の各々をHRTFフィルター対によりフィルターするステップと、
前記HRTFフィルターされた信号を加算するステップと、
前記加算されたHRTFフィルターされた信号のクロストークを除去するステップと、
を具備する処理の結果得られたものに対応する1対の出力信号を生成する処理によりフィルターされることを特徴とするステップを具備する方法であって、
前記HRTFフィルター対は、1対の出力信号を聞いているリスナーが好ましいバーチャルスピーカ位置の1対のバーチャルスピーカからのサウンドを体験するようなフィルター対であり、
前記フィルターするステップは、前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれている場合、前記バーチャルスピーカ位置の間の中央位置にあるバーチャル音源からパンされた信号成分が生じているような感覚を1対の出力信号を聞いているリスナーに前記第1のスピーカセットの位置にある1対のスピーカを通して提供するようなステップである、
ことを特徴とする方法。
〔請求項50〕
前記HRTFフィルター対は、好ましいバーチャルスピーカ位置の1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーに対する近接耳HRTFと遠方耳HRTFとからなり、前記1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップは、
前記入力信号の和に比例する第1の信号(和信号)と前記入力信号の差に比例する第2の信号(差信号)とを作り出すために前記入力信号をシャッフルするステップと、
中央位置でバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFの2倍に近似するフィルターで前記和信号をフィルターするステップと、
前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの差に近似するフィルターを介して前記差信号をフィルターするステップと、
前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作り出すために、前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号とをシャッフル解除するステップと、
を具備することを特徴とする請求項49に記載の方法。
〔請求項51〕
前記中央HRTFの2倍に近似するフィルターは、好ましい中央HRTFの2倍に実質的に等しい応答を持つフィルターであることを特徴とする請求項50に記載の方法。
〔請求項52〕
前記HRTFフィルター対は、イコライズされた近接耳HRTFとイコライズされた遠方耳HRTFとからなり、前記イコライズされた近接耳HRTFと前記イコライズされた遠方耳HRTFとはそれぞれ、前記好ましいバーチャルスピーカ位置の1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーに対する近接耳HRTFと遠方耳HRTFとをイコライズすることにより得られ、前記イコライズは、前記イコライズされた近接耳HRTFと前記イコライズされた遠方耳HRTFとの平均が、中央位置でバーチャル音源を聞いているリスナーに対する好ましい中央HRTFであることを特徴とする請求項49に記載の方法。
〔請求項53〕
前記イコライジングフィルターは、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの平均に比例するフィルターの逆フィルターであることを特徴とする請求項52に記載の方法。
〔請求項54〕
前記1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップは、前記1対のオーディオ入力信号の和が、好ましい中央HRTFの2倍に実質的に等しいフィルター応答によりフィルターされるようになされることを特徴とする請求項49に記載の方法。
〔請求項55〕
前記オーディオ入力信号には左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置とがリスナーに対して対称であり、リスナー及びリスニングは、近接HRTFが左バーチャルスピーカから左耳HRTFへと、右バーチャルスピーカから右耳HRTFへとなるような、そして、遠方HRTFが左バーチャルスピーカから右耳HRTFへ、右バーチャルスピーカから左耳HRTFへとなるような対称的なものとなることを特徴とする請求項49に記載の方法。
〔請求項56〕
前記オーディオ入力信号には左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置にあり、前記近接HRTFは、左バーチャルスピーカから左耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから右耳HRTFへのとの平均に比例し、前記遠方HRTFは、左バーチャルスピーカから右耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから左耳HRTFへのとの平均に比例することを特徴とする請求項49に記載の方法。
〔請求項57〕
前記オーディオ入力信号には、左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの前の左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする請求項49に記載の方法。
〔請求項58〕
前記左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置とは、45度と90度との間の大きさの方位角であることを特徴とする請求項57に記載の方法。
〔請求項59〕
前記オーディオ入力信号には、左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの後の左後方バーチャルスピーカ位置と右後方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする請求項49に記載の方法。
〔請求項60〕
前記オーディオ入力信号は、サラウンドサウンド再生のための3以上の入力信号のセットのサブセットであり、前記方法には、ヘッドフォン通して聞くために、前記入力信号の各々にバーチャルスピーカ位置を生成するステップを含む、3以上の入力信号のセットを処理するステップが含まれることを特徴とする請求項49に記載の方法。
〔請求項61〕
イコライジングフィルターにより1対のオーディオ入力信号をイコライズするステップと、
第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置から生じたオーディオ入力信号に対応するサウンドであるかのような錯覚をヘッドフォンを通したバイノーラライズされた出力を聞いているリスナーに与えるような、1対のバイノーラライズされた出力を提供するHRTF対を用いて、前記イコライジングされた入力信号をバイノーラライズするステップと、
を具備し、
イコライジングとバイノーラライジングの組み合わせがイコライズされたHRTF対を用いてバイノーラライズすることと等価となるように、イコライズされたHRTF対の各イコライズされたHRTFは、イコライジングフィルターによりイコライズされた、イコライズされた信号をバイノーラライズするために対応するHRTFとなり、
イコライズされたHRTFの平均は、第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置との間の中央位置から生じるサウンドを聞いているリスナーにとって好ましいHRTFと実質的に等しく、
前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれている場合、ヘッドフォンを通してバイノーラライズされた出力を聞いているリスナーに、中央に位置するバーチャル音源からパンされた信号成分が生じているような感覚を与える、
ことを特徴とする方法。
〔請求項62〕
ヘッドフォンを通して処理された信号を聞いているリスナーに、第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置から生じたオーディオ入力信号にほぼ対応するサウンドのような錯覚を起こさせるように、1対のオーディオ入力信号を処理する1組のHRTFフィルターのための、フィルターデータを伝達する伝達媒体であって、該HRTFフィルターは、HRTFフィルターの平均が第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置との中央位置からサウンドを聞いているリスナーのHRTF応答に近似するように設計されていることを特徴とする、伝達媒体。
〔請求項63〕
ヘッドフォンを通して処理された信号を聞いているリスナーに、1対のオーディオ入力信号の各々の間でパンされた信号成分が、第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置との中央位置から生じたパンされた信号成分であるかのような錯覚を起こさせような、第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置から生じたオーディオ入力信号に対応するサウンドのような錯覚をヘッドフォンを通して処理された信号を聞いているリスナーに起こさせるように、1対のオーディオ入力信号を処理することを特徴とする1組のHRTFフィルターのフィルターデータを伝達する伝達媒体。
〔請求項64〕
オーディオの再生のための1対のオーディオ入力信号を受け入れるステップと、
前記入力信号の和に比例する第1の信号(和信号)と前記入力信号の差に比例する第2の信号(差信号)とを作り出すために前記入力信号をシャッフルするステップと、
近接耳HRTFをイコライズしたものと遠方耳HRTFをイコライズしたものとの和に近似するフィルターにより前記和信号をフィルターするステップであって、該近接耳HRTFと該遠方耳HRTFは、対応するバーチャルスピーカ位置で1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーのためのものであり、該イコライズしたものは、前記イコライズした近接耳HRTFと前記イコライズした遠方耳HRTFとを平均したものが、バーチャルスピーカ位置の中央位置でバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFに近似するように設計したイコライゼーションフィルターを用いて得られることを特徴とするステップと、
前記1対のバーチャルスピーカを聞いている前記リスナーの、前記近接耳HRTFをイコライズしたものと前記遠方耳HRTFをイコライズしたものとの差に近似するフィルターにより前記差信号をフィルターするスッテップと、
前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作り出すために、前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号とをシャッフル解除するステップと、
を具備し、
前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれる場合、ヘッドフォンを通して前記第1の出力信号と前記第2の出力信号とを聞いているリスナーに、前記パンされた信号成分が前記中央位置でバーチャル音源から生じているような感覚を与えることを特徴とする方法。
【0112】
いくつかの態様を記載しておく。
〔態様1〕
オーディオの再生のための1対のオーディオ入力信号であって、該1対のオーディオ入力信号には、左入力信号と右入力信号とが含まれることを特徴とする、1対のオーディオ入力信号を受け入れるステップと、
前記入力信号の和に比例する第1の信号(和信号)と前記入力信号の差に比例する第2の信号(差信号)とを作り出すために前記入力信号をシャッフルするステップと、
中央位置にあるバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFの2倍に近似するフィルターで前記和信号をフィルターするステップと、
1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーの近接耳HRTFと遠方耳HRTFとの差に近似するフィルターで前記差信号をフィルターするステップと、
前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作り出すために、前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号とをシャッフル解除するステップと、
を具備し、 前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれる場合、ヘッドフォンを通して前記第1の出力信号と前記第2の出力信号とを聞いているリスナーに、前記パンされた信号成分が前記中央位置にあるバーチャル音源から生じているような感覚を与えることを特徴とする、
方法。
〔態様2〕
前記中央HRTFの2倍に近似するフィルターは、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとをそれぞれイコライジングフィルターによりフィルターすることにより得られた、前記近接耳HRTFをイコライズしたものと前記遠方耳HRTFをイコライズしたものとの和として得られたことを特徴とする態様1に記載の方法。
〔態様3〕
1対のオーディオ入力信号をシャッフルする手段であって、該シャッフルする手段は、前記入力信号の和に比例する第1の信号(和信号)と前記入力信号の差に比例する第2の信号(差信号)とを生成し、該オーディオ入力信号には、左入力信号と右入力信号とが含まれることを特徴とする、1対のオーディオ入力信号をシャッフルする手段と、
中央位置にあるバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFの2倍に近似するフィルターで前記和信号をフィルターする手段であって、該和信号をフィルターする手段は、前記シャッフルする手段と結合していることを特徴とする和信号をフィルターする手段と、
1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーの近接耳HRTFと遠方耳HRTFとの差に近似するフィルターで前記差信号をフィルターする手段であって、該差信号をフィルターする手段は、前記シャッフルする手段と結合していることを特徴とする差信号をフィルターする手段と、
前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号とをシャッフル解除する手段であって、該シャッフル解除する手段は前記シャッフルする手段と結合しており、該シャッフル解除する手段は、前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作り出すことを特徴とするシャッフル解除する手段と、
を具備し、
前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれる場合、ヘッドフォンを通して前記第1の出力信号と前記第2の出力信号とを聞いているリスナーに、前記パンされた信号成分が前記中央位置にあるバーチャル音源から生じているような感覚を与えることを特徴とする、
装置。
〔態様4〕
前記中央HRTFの2倍に近似するフィルターは、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとをそれぞれイコライジングフィルターによりフィルターすることにより得られた、前記近接耳HRTFをイコライズしたものと前記遠方耳HRTFをイコライズしたものとの和として得られたことを特徴とする態様3に記載の装置。
〔態様5〕
前記イコライジングフィルターは、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの逆フィルターであることを特徴とする態様4に記載の装置。
〔態様6〕
前記イコライジングフィルターの応答は、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの応答を周波数領域に変換することにより決定されることを特徴とする態様5に記載の装置。
〔態様7〕
前記イコライジングフィルターの応答は、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの応答を反転させる適応フィルター法により決定されることを特徴とする態様5に記載の装置。
〔態様8〕
前記中央HRTFの2倍に近似するフィルターは、所望の中央HRTFの2倍に実質的に等しい応答を持つフィルターであることを特徴とする態様3に記載の装置。
〔態様9〕
前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置とがリスナーに対して対称であり、リスナー及びリスニングは、近接HRTFが左バーチャルスピーカから左耳へのHRTFおよび右バーチャルスピーカから右耳へのHRTFとなるような、そして、遠方HRTFが左バーチャルスピーカから右耳へのHRTFおよび右バーチャルスピーカから左耳へのHRTFとなるような対称的なものとなることを特徴とする態様3に記載の装置。
〔態様10〕
前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置にあり、前記近接HRTFは、左バーチャルスピーカから左耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから右耳HRTFへのとの平均に比例し、前記遠方HRTFは、左バーチャルスピーカから右耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから左耳HRTFへのとの平均に比例することを特徴とする態様3に記載の装置。
〔態様11〕
前記オーディオ入力信号には、左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの前の左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする態様3に記載の装置。
〔態様12〕
前記左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置とは、45度と90度との間の大きさの方位角であることを特徴とする態様11に記載の装置。
〔態様13〕
前記オーディオ入力信号には、左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの後の左後方バーチャルスピーカ位置と右後方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする態様3に記載の装置。
〔態様14〕
前記オーディオ入力信号は、サラウンドサウンド再生のための3以上の入力信号のセットのサブセットであり、前記方法には、ヘッドフォン通して聞くために、前記入力信号の各々にバーチャルスピーカ位置を生成するステップを含む、3以上の入力信号のセットを処理するステップが含まれることを特徴とする態様3に記載の装置。
〔態様15〕
入力信号の各々をHRTFフィルター対によりフィルターするステップと
該HRTFフィルターされた信号を加算するステップと、
による結果に対応する1対の出力信号を生成する処理により、1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップを具備する方法であって、
前記HRTFフィルター対は、ヘッドフォンで1対の出力信号を聞いているリスナーが所望の1対のバーチャルスピーカ位置からのサウンドを体験するようなフィルター対であり、
前記フィルターするステップは、前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれている場合、前記バーチャルスピーカ位置の間の中央位置にあるバーチャル音源からパンされた信号成分が生じているような感覚を1対の出力信号を聞いているリスナーにヘッドフォンを通して提供するようなステップであり、
前記オーディオ入力信号には左入力信号と右入力信号とが含まれ、前記HRTFフィルター対には所望のバーチャルスピーカ位置の1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーに対する近接耳HRTFと遠方耳HRTFとが含まれ、前記1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップは、
前記入力信号の和に比例する第1の信号(和信号)と前記入力信号の差に比例する第2の信号(差信号)とを作り出すために前記入力信号をシャッフルするステップと、
中央位置にあるバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFの2倍に近似するフィルターで前記和信号をフィルターするステップと、
前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの差に近似するフィルターで前記差信号をフィルターするステップと、
前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作り出すために、前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号とをシャッフル解除するステップと、
を具備する、
ことを特徴とする方法。
〔態様16〕
オーディオ再生のために1対のオーディオ入力信号であって、該1対のオーディオ入力信号には、左入力信号と右入力信号とが含まれることを特徴とする、1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップであって、
前記入力信号の各々をHRTFフィルター対によりフィルターするステップと、
前記HRTFフィルターされた信号を加算するステップと、
前記加算されたHRTFフィルターされた信号のクロストークを除去するステップであって、該クロストークを除去するステップは、第1の組のスピーカ位置にあるスピーカを通して1対の出力信号を聞いているリスナーのためのものであることを特徴とする、クロストークを除去するステップと、
を具備する処理の結果得られたものに対応する1対の出力信号を生成する処理によりフィルターすることを特徴とするフィルターするステップを含む方法であって、
前記HRTFフィルター対は、1対の出力信号を聞いているリスナーが所望のバーチャルスピーカ位置の1対のバーチャルスピーカからのサウンドを体験するようなフィルター対であり、
前記フィルターするステップは、前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれている場合、前記所望のバーチャルスピーカ位置の間の中央位置にあるバーチャル音源から前記パンされた信号成分が生じているような感覚を、前記第1の組のスピーカ位置にある1対のスピーカを通して1対の出力信号を聞いているリスナーに提供するようなステップであり、
前記HRTFフィルター対には所望のバーチャルスピーカ位置の1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーに対する近接耳HRTFと遠方耳HRTFとが含まれ、前記1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップは、
前記入力信号の和に比例する第1の信号(和信号)と前記入力信号の差に比例する第2の信号(差信号)とを作り出すために前記入力信号をシャッフルするステップと、
中央位置にあるバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFの2倍に近似するフィルターで前記和信号をフィルターするステップと、
前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの差に近似するフィルターで前記差信号をフィルターするステップと、
前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作り出すために、前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号とをシャッフル解除するステップと、
を具備する、
ことを特徴とする方法。
〔態様17〕
前記HRTFフィルター対には、イコライズされた近接耳HRTFとイコライズされた遠方耳HRTFとが含まれ、前記イコライズされた近接耳HRTFと前記イコライズされた遠方耳HRTFとはそれぞれ、前記所望のバーチャルスピーカ位置の1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーに対する近接耳HRTFと遠方耳HRTFとをイコライズすることにより得られ、前記イコライズは、前記イコライズされた近接耳HRTFと前記イコライズされた遠方耳HRTFとの和又は平均が、中央位置にあるバーチャル音源を聞いているリスナーに対する所望の中央HRTFに比例することを特徴とする態様15又は態様16に記載の方法。
〔態様18〕
前記イコライジングフィルターは、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの平均に比例するフィルターの逆フィルターであることを特徴とする態様2又は態様17に記載の方法。
〔態様19〕
前記1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップは、前記1対のオーディオ入力信号の和が、所望の中央HRTFの2倍に実質的に等しいフィルター応答によりフィルターされるようになされることを特徴とする態様15又は態様16に記載の方法。
〔態様20〕
前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置とがリスナーに対して対称であり、
リスナー及びリスニングは、近接HRTFが左バーチャルスピーカから左耳へのHRTFおよび右バーチャルスピーカから右耳へのHRTFとなるような、そして、遠方HRTFが左バーチャルスピーカから右耳へのHRTFおよび右バーチャルスピーカから左耳へのHRTFとなるような対称的なものとなることを特徴とする態様1、態様15、又は態様16のいずれか1項に記載の方法。
〔態様21〕
前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置にあり、
前記近接HRTFは、左バーチャルスピーカから左耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから右耳HRTFへのとの平均に比例し、
前記遠方HRTFは、左バーチャルスピーカから右耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから左耳HRTFへのとの平均に比例することを特徴とする態様1、態様15、又は態様16のいずれか1項に記載の方法。
〔態様22〕
前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの前の左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする態様1、態様15、又は態様16のいずれか1項に記載の方法。
〔態様23〕
前記左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置とは、45度と90度との間の大きさの方位角であることを特徴とする態様22に記載の方法。
〔態様24〕
前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの後の左後方バーチャルスピーカ位置と右後方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする態様1、態様15、又は態様16のいずれか1項に記載の方法。
〔態様25〕
前記オーディオ入力信号は、サラウンドサウンド再生のための3以上の入力信号のセットのサブセットであり、前記方法には、ヘッドフォン通して聞くために、前記入力信号の各々にバーチャルスピーカ位置を生成するステップを含む、3以上の入力信号のセットを処理するステップが含まれることを特徴とする態様1、態様15、又は態様16のいずれか1項に記載の方法。
〔態様26〕
イコライジングフィルターにより1対のオーディオ入力信号をイコライズするステップと、
第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置から生じたオーディオ入力信号に対応するサウンドであるかのような錯覚をヘッドフォンを通したバイノーラライズされた出力を聞いているリスナーに与えるような、1対のバイノーラライズされた出力を提供するHRTF対を用いて、前記イコライジングされた入力信号をバイノーラライズするステップと、
を具備し、
イコライジングとバイノーラライジングの組み合わせがイコライズされたHRTF対を用いてバイノーラライズすることと等価となるように、イコライズされたHRTF対の各イコライズされたHRTFは、イコライジングフィルターによりイコライズされた、イコライズされた信号をバイノーラライズするために対応するHRTFとなり、
イコライズされたHRTFの平均は、第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置との間の中央位置から生じるサウンドを聞いているリスナーにとって所望のHRTFと実質的に等しく、
前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれている場合、ヘッドフォンを通してバイノーラライズされた出力を聞いているリスナーに、中央に位置するバーチャル音源からパンされた信号成分が生じているような感覚を与える、
ことを特徴とする方法。
〔態様27〕
1以上のプロセッサと、命令及び1組のHRTFフィルターのフィルターデータを記憶するコンピュータ読取可能な媒体とを具備する処理システムであって、
該処理システムが該命令を実行したとき、1対のオーディオ入力信号を処理する該1組のHRTFフィルターを適用して、ヘッドフォンを通して処理された信号を聞いているリスナーに、第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置から生じたオーディオ入力信号にほぼ対応するサウンドのような錯覚を起こさせ、
該HRTFフィルターは、HRTFフィルターの平均が第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置との中央位置からサウンドを聞いているリスナーのHRTF応答に近似するように設計されていることを特徴とする、
処理システム。
〔態様28〕
1以上のプロセッサと、命令及び1組のHRTFフィルターのフィルターデータを記憶するコンピュータ読取可能な媒体とを具備する処理システムであって、
該処理システムが該命令を実行したとき、1対のオーディオ入力信号を処理する該1組のHRTFフィルターを適用して、ヘッドフォンを通して処理された信号を聞いているリスナーに、第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置から生じたオーディオ入力信号にほぼ対応するサウンドのような錯覚を起こさせ、
1対のオーディオ入力信号の各々の間でパンされた信号成分が、処理された信号をヘッドフォンを通して聞いているリスナーに、該パンされた信号成分が、前記第1のバーチャルスピーカ位置と前記第2のバーチャルスピーカ位置との中央位置から聞こえるような錯覚を起こさせるようにすることを特徴とする、
処理システム。
〔態様29〕
オーディオの再生のための1対のオーディオ入力信号を受け入れるステップと、
前記入力信号の和に比例する第1の信号(和信号)と前記入力信号の差に比例する第2の信号(差信号)とを作り出すために前記入力信号をシャッフルするステップと、
近接耳HRTFをイコライズしたものと遠方耳HRTFをイコライズしたものとの和に近似するフィルターにより前記和信号をフィルターするステップであって、該近接耳HRTFと該遠方耳HRTFは、対応するバーチャルスピーカ位置で1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーのためのものであり、該イコライズしたものは、前記イコライズした近接耳HRTFと前記イコライズした遠方耳HRTFとを平均したものが、バーチャルスピーカ位置の中央位置にあるバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFに近似するように設計したイコライゼーションフィルターを用いて得られることを特徴とするステップと、
前記1対のバーチャルスピーカを聞いている前記リスナーの、前記近接耳HRTFをイコライズしたものと前記遠方耳HRTFをイコライズしたものとの差に近似するフィルターにより前記差信号をフィルターするステップと、
前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作り出すために、前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号とをシャッフル解除するステップと、
を具備し、
前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれる場合、ヘッドフォンを通して前記第1の出力信号と前記第2の出力信号とを聞いているリスナーに、前記パンされた信号成分が前記中央位置にあるバーチャル音源から生じているような感覚を与えることを特徴とする方法。
〔態様30〕
前記イコライジングフィルターの応答は、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの応答を周波数領域に変換することにより決定されることを特徴とする態様18に記載の方法。
〔態様31〕
前記イコライジングフィルターの応答は、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの応答を反転させる適応フィルター法により決定されることを特徴とする態様18に記載の方法。
〔態様32〕
態様1、態様2、態様15、態様16乃至態様26、態様29乃至態様31のいずれか1項に記載の方法を実行させる処理システムの少なくとも1つのプロセッサにより実行されるプログラムコード。
〔態様33〕
態様1、態様2、態様15、態様16乃至態様26、態様29乃至態様31のいずれか1項に記載の方法を実行させる処理システムの少なくとも1つのプロセッサにより実行される命令を具備するコンピュータ読取可能な媒体。
【技術分野】
【0001】
本発明はオーディオ信号処理の分野に関し、さらに詳細には、両耳性の再生システム又はトランスオーラル再生システムを用いたリスニング時に、パンされた信号を適切に位置特定することを含む、フィルターを通して空間特性を知覚させるオーディオチャンネルの処理に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、入力オーディオチャンネルの各々が特定の方向を表すような印象をリスナー20に提供する、複数の頭部伝達関数(HRTF)、例えばFIRフィルター、により複数のオーディオの複数のチャンネルを処理することを含む普通の両耳性の再生システムを示す。図1は、第1番目のオーディオ情報チャンネル11(チャンネル1),第2番目のオーディオ情報チャンネル(チャンネル2),...,第N番目のオーディオ情報チャンネル(チャンネルN)からなる、Nで表された個数のオーディオ源の処理を示す。この両耳性の再生システムは、リスナー20が装着しているヘッドフォン19を用いて再生するものである。各チャンネルは、1対のHRTFフィルター、すなわち、1つのフィルターは、リスナーの左耳22を通して再生し、もう1つはリスナーの右耳23を通して再生するためのものである。そこで、第1のHRTFフィルターのペア13,14から、第NのHRTFフィルターのペア15及び16までが示されている。リスナー20の左耳22用の各HRTFフィルターの出力は加算器18により加算され、リスナー20の右耳23で再生させるための各HRTFフィルターの出力は加算器17により加算される。リスナー20によって知覚される各チャンネルで生じた音の方向は、そのチャンネルに適用される選択したHRTFフィルター対により決定される。例えば、図1において、オーディオチャンネル1(11)は、フィルターのペア13,14により処理され、オーディオチャンネル1(11)のサウンドは、リスナーに対してθ1で表される特定の方位角から、例えば位置21から生じたという印象をリスナーに与えるような、オーディオ入力をヘッドフォン19を介してリスナーに提供する。同様に第2番目のオーディオチャンネルのHRTFフィルター対は、オーディオチャンネル2のサウンドがリスナーに対してθ2で表される特定の方位角から生じたかのように設計され、...第N番目のオーディオチャンネルのHRTFフィルター対は、オーディオチャンネルN(12)がリスナーに対してθNで表される特定の方位角から生じたかのように設計される。
【0003】
簡単にするために、図1は、例えば、チャンネル1に対応する知覚されたサウンドの到達角が音源21からと知覚される到達方位角のみを示す。一般に、生じた方向角と、生じた仰角とで特定される全ての方向に対応する刺激をリスナー20に与えるために、HRTFフィルターを用いることができる。
【0004】
1つの耳に1つのHRTFフィルターで、リスナーの2つの耳22,23に対する単一のチャンネルを処理するために必要とされる2つの別々のHRTFフィルターのセットを、HRTFフィルター対は意味する。したがって、2チャンネルサウンドには、2つのHRTFフィルター対が用いられる。
【0005】
ここでの説明では、主に2入力チャンネルすなわちステレオ入力ペアシステムについて詳細に説明する。ここで説明した特徴を3以上の入力チャンネルに拡張することは簡単であり、したがって、そのような拡張は本発明の技術範囲に含まれるとみなす。
【0006】
図2は、左チャンネル入力31と右チャンネル入力32の2オーディオ入力を有するステレオバイノーラライザ(binauralizer)システムを示す。2つのオーディオチャンネル入力の各々は、左チャンネル入力はHRTF対33,34で、右チャンネル入力は別のHRTF対35,36で、別々に処理される。一般的な状況の下では、HRTF対を用いたバイノーラライジングの狙いが、左右のチャンネルを聞いているリスナーにリスナー20の中間平面に対して対称的に位置するそれぞれの左右の位置角を認識させるためなので、左チャンネル入力31と右チャンネル入力32は対称的な再生をしなければならない。図2を参照して、もし、HRTF対33,34,35,及び36が対称的なリスニングのためであれば、左チャンネルは、方向角θの音源37からと認識され、右チャンネルは、右からの認識された音源37からとは反対の方向角すなわち、方向角−θからの音源38からと認識される。
【0007】
このような対称的な状況では、前提条件の単純化がなされる。第1番目は、リスナーの頭とサウンド認識は対称的であるということである。これは、
HRTF(θ,L)=HRTF(−θ,R) (1)
を意味する。
【0008】
さらに、左音源37から左耳22へのHRTFは、右音源38から右耳23へのHRTFに等しい。このようなHRTFをHRTFnearで表す。同様に、このような対称性の仮定の下では、左音源37から右耳23へのHRTFは、右音源38から左耳22へのHRTFに等しい。このようなHRTFをHRTFfarで表す。
【0009】
バイノーラライザ(binauralizer)において、一般にダミーの頭又は人間のリスナーの頭での実際のHRTF応答を測定することにより、HRTFフィルターを見つける。比較的高機能な両耳性処理システムでは、複数のリスナー及び/又は複数のサウンド発生方向角及び仰角に対応した膨大なHRTF測定ライブラリを利用する。
【0010】
今日使われている両耳性システムにおいて、図2に示すような両耳性処理システムにおける計測されたθ及び−θのHRTF対をそのまま用いることが一般的となっている。言い換えれば、HRTF対が対称的であることを仮定することが一般的となっている。
【0011】
HRTFnear=HRTF(θ,L)
HRTFfar=HRTF(θ,R) (2)
それによりHRTF対が測定されるリスナーの頭での応答が対照的でなかったとしても、すなわち式(1)が成り立たなかったとしても、測定したHRTFを平均化することにより形成したHRTFフィルター対を使うことにより図2のように、バイノーラライザを対称的なものとすることができる。すなわち、音源から左右に対称的に聞こえるようにみえるために、方向角θと−θの「バーチャル音源」あるいは、「バーチャルスピーカ」と呼ばれ、両耳性処理のためのフィルターは、以下のように設定される。
【数1】
【0012】
ここでHRTF(θ,L)とHRTF(θ,R)は、それぞれ角θで知覚される音源に対する左右の角度に対して測定したHRTFである。したがって、HRTFnearとHRTFfarとは、対称な場合は実際に測定したHRTF又は仮定したHRTFを意味し、非対称な場合は平均化したHRTFを意味する。
【0013】
大まかに(そして乱暴に)言えば、このようなバイノーラライザは、左バーチャルスピーカ、例えば37、に対応するHRTF対を通して左オーディオ入力信号を表し、右バーチャルスピーカ、例えば38、に対応するHRTF対を通して右オーディオ入力信号を表すことにより、通常のステレオスピーカシステムの動作をシミュレートする。これは、リスナーに左右のチャンネル入力がそれぞれ左右のバーチャルスピーカ位置から生じているような感覚をうまく与えることが分かった。
【0014】
サウンドの再生において、例えば、実際のステレオスピーカを通して、リスナーに左右のオーディオ入力源31及び32がリスナーの左右に正確に置かれたスピーカから聞こえる感覚だけでなく、左右のスピーカの間の位置から1以上の音源があるように聞こえる感覚を与えることがしばしば望まれる。例えばリスナーの前方の他の場所に、サウンド成分があると仮定する。一例として、想定される左右の入力オーディオチャンネル同士の中央に音源があると仮定する。これは、例えば、現代のステレオレコーディングにおいて、左右のチャンネル入力をリスナーの前方にあるステレオスピーカで再生するとき、左右のスピーカの中間に位置する「ファントムスピーカ」と呼ばれる源から音源が生じているような印象をリスナーに与えるために、たとえ振幅が減衰したとしても、左右のチャンネルに等しく供給されるオーディオ信号には、一般的である。このようなスピーカに用語「ファントム」が用いられるのは、そこに実際のスピーカが存在しないからである。これはしばしば「ファントム中央」と称され、中央から来るサウンドの感覚を生成するプロセスは「中央音像の生成」と呼ばれる。
【0015】
同様に、異なった量の信号を同じ比率で左右のチャンネル入力に送ることにより、左スピーカ位置と右スピーカ位置との間のいずれかの場所からサウンドが生じているような感覚をリスナーに与える。
【0016】
このように、左右のチャンネル同士の間に入力を分割することを「パンする」と呼び、均等に信号を分割することを「中央パンする」と呼ぶ。
【0017】
同じ感覚を与えること、すなわち、ヘッドフォンで再生するバイノーラライザシステムにおいて、中央音像を生成することが望まれる。
【0018】
例えば、中央パンされた単一入力と呼ばれるオーディオ入力信号、例えば、2つのチャンネル入力に分割された入力信号を考える。例えば、2つの信号、左オーディオ(LeftAudio)と右オーディオ(RightAudio)が以下のように作られる。
【数2】
【0019】
ステレオスピーカで再生するためにこのように中央パンされた結果の信号は、前方中央から生じる信号として認識されるよう意図している。
【0020】
もし、式(4)の入力LeftAudioとRightAudioとが、図2のバイノーラライザの入力であるならば、信号が左耳22と右耳23とに送られ、それぞれ、LeftEar及びRightEarで示され、以下のようになる。
【数3】
【数4】
【0021】
入力をこのように分割することにより、方向角0°の位置にあるバーチャルスピーカで聞いている感覚を表現することが好ましい。すなわち、左右の耳に、方向角0°のHRTF対に対応する刺激を与えることが好ましい。実際には、このようなことは起こらないので、リスナーは、仮想的な左右のバーチャルスピーカ37及び38の間の中央に位置するバーチャルスピーカから単一入力(MonoInput)信号を知覚することはない。同様に、左右のチャンネル入力間で不均等に分割し、そして図2に示したようなバイノーラライザによりバイノーラライズすることにより、左右のバーチャルスピーカの間に望みのバーチャルな音源があるような錯覚を正しく作るとこはできない。
【0022】
そこで、左右のバーチャルスピーカ位置が、左チャンネル入力と右チャンネル入力の位置を意図すると想定され、リスナーに、音がバイノーラライザシステムの左右のバーチャルスピーカ位置の間の位置から生じるような錯覚を生じさせるバイノーラライザ及びバイノーラライジングシステムがこの技術分野に必要とされている。
【0023】
例えば、単一の信号を左後方チャンネル入力と右後方チャンネル入力に分割することにより、中央後方から来たようにみせることを意図する信号は、対称的な後方バーチャルスピーカ位置に後部スピーカを置くこととした対称的な後方HRTFフィルターを用いたバイノーラライザでは、一般に、ヘッドフォンで再生するときには中央後方から来たと知覚されることはない。
【0024】
このため、例えば、左右のバーチャル後方(サラウンド)スピーカの間で中央パンすることにより作られた、4又は5のチャンネルシステムのサラウンドサウンド信号のように、リスナーに後方スピーカ信号のために中央後方の位置から生じたサウンドのような錯覚を起こさせるバイノーラライザ及びバイノーラライジングシステムがこの技術分野に必要とされている。
【発明の概要】
【0025】
ここでは、オーディオ信号を処理する方法と、オーディオ信号を受け入れる装置と、オーディオ信号を処理する方法を実行するプロセッサに対する命令を伝達する伝達媒体と、オーディオ信号のフィルターを実行するためのフィルターデータを伝達する伝達媒体とが、異なった実施の形態と特徴とにより記載されている。入力にパンされた信号が含まれるとき、これらの各々は、中央位置のバーチャル音源からパンされた信号成分が生じているような感覚をリスナー
に与える。
【0026】
本発明の1つの特徴は、入力信号の各々をHRTFフィルター対によりフィルターし、このHRTFフィルターされた信号を加算した結果に対応する1対の出力信号を生成する処理により、1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップが含まれている方法である。このHRTFフィルター対は、ヘッドフォンで1対の出力信号を聞いているリスナーが好ましい1対のバーチャルスピーカ位置からのサウンドを体験するようなフィルター対である。さらに、このフィルター処理は、この1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれている場合、このバーチャルスピーカ位置の間の中央位置にあるバーチャル音源からパンされた信号成分が生じているような感覚を1対の出力信号を聞いているリスナーにヘッドフォンを通して提供するような処理である。
【0027】
他の実施の形態における方法は、イコライジングフィルターにより1対のオーディオ入力信号をイコライジングするステップと、HRTF対を用いてイコライジングされた入力信号をバイノーラライズするステップとを具備し、第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置から生じたオーディオ入力信号に対応するサウンドであるかのような錯覚をヘッドフォンを通したバイノーラライズされた出力を聞いているリスナーに与えるような、1対のバイノーラライズされた出力を提供する。この方法の要素は、イコライジングとバイノーラライジングの組み合わせがイコライズされたHRTF対を用いてバイノーラライズすることと等価となるように構成され、イコライズされたHRTF対の各イコライズされたHRTFは、イコライジングフィルターによりイコライズされた、イコライズされた信号をバイノーラライズするために対応するHRTFとなる。イコライズされたHRTFの平均は、第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置との間の中央位置から生じるサウンドを聞いているリスナーにとって好ましいHRTFと実質的に等しい。1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれている場合、ヘッドフォンを通してバイノーラライズされた出力を聞いているリスナーに、中央に位置するバーチャル音源からパンされた信号成分が生じているような感覚を与える。
【0028】
本発明の他の特徴は、ヘッドフォンを通して処理された信号を聞いているリスナーに、第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置から生じたオーディオ入力信号にほぼ対応するサウンドのような錯覚を起こさせるように、1対のオーディオ入力信号を処理する1組のHRTFフィルターのための、フィルターデータを伝達する伝達媒体であり、このHRTFフィルターは、HRTFフィルターの平均が、第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置との中央位置からサウンドを聞いているリスナーのHRTF応答に近似するように設計されている。
【0029】
本発明の他の特徴は、ヘッドフォンを通して処理された信号を聞いているリスナーに、1対のオーディオ入力信号間でパンされた信号成分が、第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置との中央位置から生じたパンされた信号であるかのような錯覚を起こさせるほど、第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置から生じたオーディオ入力信号に対応するサウンドのような錯覚をヘッドフォンを通して処理された信号を聞いているリスナーに起こさせるように、1対のオーディオ入力信号を処理する1組のHRTFフィルターのフィルターデータを伝達する伝達媒体である。
【0030】
本発明の他の特徴は、オーディオ再生のための1対のオーディオ入力信号を受け取るステップと、前記入力信号の和に比例する第1の信号(「和信号」)と、前記入力信号の差に比例する第2の信号(「差信号」)を作るために前記入力信号をシャッフルするステップと、近接耳(near
ear)HRTFをイコライズしたものと遠方耳(far ear)HRTFをイコライズしたものとの和に近似するフィルターにより前記和信号をフィルターするスッテップとを具備する方法である。この近接耳HRTFと遠方耳HRTFとは、対応するバーチャルスピーカ位置で1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーのためのものである。このイコライズしたものは、イコライズした近接耳HRTFとイコライズした遠方耳HRTFとを平均したものが、バーチャルスピーカ位置の中央位置でバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFに近似するように、設計したイコライゼーションフィルターを用いて得られる。この方法はさらに、1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーの、近接耳HRTFをイコライズしたものと遠方耳HRTFをイコライズしたものとの差に近似するフィルターにより前記差信号をフィルターするスッテップを具備する。この方法はさらに、前記フィルターされた和信号とフィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と、前記フィルターされた和信号とフィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作るために、前記フィルターされた和信号とフィルターされた差信号とをシャッフル解除(アンシャッフリング)するステップを具備する。この方法は、1対のオーディオ入力信号がパンされた信号成分を含む場合、ヘッドフォンを通して第1の出力信号と第2の出力信号を聞いているリスナーに、中央に位置するバーチャル音源からこのパンされた信号成分が生じているような感覚を与えるものである。
【0031】
本発明の他の特徴は、1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップであって、該フィルターするステップは、前記入力信号の各々をHRTFフィルター対でフィルターした結果得られたものに対応する1対の出力信号を生成する処理により行われるステップと、このHRTFフィルターで処理された信号を加算するステップと、このHRTFフィルターで処理された信号を加算したもののクロストークを除去するステップと、を具備する方法である。このクロストークを除去するステップは、第1の組のスピーカ位置におかれたスピーカを通して1対の出力信号を聞いているリスナーに対するものである。このHRTFフィルター対は、この1対の出力信号を聞いているリスナーに好ましいバーチャルスピーカ位置にある1対のバーチャルスピーカからのサウンドを体験させるようなものである。このフィルターするステップは、この1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれる場合、第1の組のスピーカ位置におかれた1対のスピーカを通して1対の出力信号を聞いているリスナーに好ましいバーチャルスピーカ位置同士の間の中央に位置するバーチャル音源からこのパンされた信号成分が生じているような感覚を与えるものである。
【0032】
本発明の他の特徴は、オーディオ再生のための1対のオーディオ入力信号を受け取るステップと、前記入力信号の和に比例する第1の信号(「和信号」)と、前記入力信号の差に比例する第2の信号(「差信号」)を作るために前記入力信号をシャッフルするステップと、中央位置でバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFの2倍に近似するフィルターによりこの和信号をフィルターするステップと、1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーの近接耳HRTFと遠方耳HRTFとの差に近似するフィルターによりこの差信号をフィルターするステップと、前記フィルターされた和信号とフィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と、前記フィルターされた和信号とフィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作るために、前記フィルターされた和信号とフィルターされた差信号とをシャッフル解除するステップとを具備する方法である。この方法は、この1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれる場合、ヘッドフォンを通して前記第1の出力信号と前記第2の出力信号を聞いているリスナーに、このパンされた信号成分が中央位置でバーチャル音源から生じているような感覚を与える。
【0033】
この方法を変形したものの1つでは、中央HRTFの2倍に近似するフィルターは、近接耳HRTFと遠方耳HRTFとをそれぞれイコライズしたものの和として得られ、近接耳HRTFと遠方耳HRTFとをそれぞれイコライジングフィルターによりフィルターすることにより得られ、ここで、近接耳HRTFと遠方耳HRTFとの差に近似するフィルターは、近接耳HRTFをイコライズしたものと遠方耳HRTFをイコライズしたものとの差に実質的に等しい応答を持つフィルターである。
【0034】
この方法を変形したものの1つでは、このイコライジングフィルターは、近接耳HRTFと遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの逆フィルターである。特定の実施の形態においては、このイコライジングフィルターの応答は、近接耳HRTFと遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの周波数領域での応答を反転させることにより決定される。
【0035】
他の特定の実施の形態においては、このイコライジングフィルターの応答は、近接耳HRTFと遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの応答を反転させる適応フィルター法により決定される。
【0036】
この方法を変形したものの1つでは、前記中央HRTFの2倍に近似するフィルターは、好ましい中央HRTFの2倍に実質的に等しい応答を持つフィルターである。
【0037】
特定の構成においては、オーディオ入力信号には左入力と右入力とが含まれ、1対のバーチャルスピーカは、リスナーに対称的に、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置にあり、リスナー及びリスニングは、近接HRTFが左バーチャルスピーカから左耳へのHRTFおよび右バーチャルスピーカから右耳へのHRTFとなるような、そして、遠方HRTFが左バーチャルスピーカから右耳へのHRTFおよび右バーチャルスピーカから左耳へのHRTFとなるような対称的なものとなる。
【0038】
この方法の模範的な実施形態において、オーディオ入力信号には左入力と右入力とが含まれ、1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置とにあり、近接HRTFは、この左バーチャルスピーカから左耳へのHRTFおよび右バーチャルスピーカから右耳へのHRTFとの平均に比例し、遠方HRTFは、左バーチャルスピーカ右耳へのHRTFおよび右バーチャルスピーカから左耳へのHRTFの平均に比例する。
【0039】
他の模範的な実施形態において、オーディオ入力信号には左入力と右入力とが含まれ、1対のバーチャルスピーカは、リスナーの前の左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置にある。
他の形態と特徴とは、明細書、図面、及び特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】リスナーに入力オーディオチャンネルの各々が特定の方向からのものであるような印象を与える複数のHRTFフィルターにより、オーディオの複数のチャンネルを処理するステップを含む一般的な両耳性の再生システムを示す。図1の構成を持つバイノーラライザは従来技術かもしれないが、ここに記載した1以上の発明の形態により選択されたフィルターを持つバイノーラライザは従来技術ではない。
【図2】各々1対のHRTFフィルターにより処理された左チャンネル入力と右チャンネル入力との2つのオーディオ入力を具備するステレオバイノーラライザシステムを示す。図1の構成を持つバイノーラライザは従来技術かもしれないが、ここに記載した1以上の発明の形態により選択されたフィルターを持つバイノーラライザは従来技術ではない。
【図3】左バーチャルスピーカ、右バーチャルスピーカ、及び中央位置の3つの音源角度に対するHRTFの、図表で表した例である。
【図4A】θ=±45°にバーチャルスピーカを位置させるバイノーラライザで用いる代表的なHRTFであり、0°のHRTFをしめす。
【図4B】θ=±45°にバーチャルスピーカを位置させるバイノーラライザで用いる代表的なHRTFであり、近接耳HRTFを示す。
【図4C】θ=±45°にバーチャルスピーカを位置させるバイノーラライザで用いる代表的なHRTFであり、遠方耳HRTFを示す。
【図4D】θ=±45°にバーチャルスピーカを位置させるバイノーラライザで用いる代表的なHRTFであり、近接耳HRTFと遠方耳HRTFとの平均を示す。
【図5A】合計が好ましい0°のHRTFに非常に近似するような、近接HRTFフィルターと遠方HRTFフィルターを修正するためのイコライゼーションを、どのように用いることができるかを示し、近接HRTFフィルターと遠方HRTFフィルターに適用するイコライゼーションフィルターのインパルス応答を示す。
【図5B】合計が好ましい0°のHRTFに非常に近似するような、近接HRTFフィルターと遠方HRTFフィルターを修正するためのイコライゼーションを、どのように用いることができるかを示し、イコライゼーションを行った後の近接耳HRTFを示す。
【図5C】合計が好ましい0°のHRTFに非常に近似するような、近接HRTFフィルターと遠方HRTFフィルターを修正するためのイコライゼーションを、どのように用いることができるかを示し、イコライゼーションを行った後の遠方耳HRTFを示す。
【図5D】合計が好ましい0°のHRTFに非常に近似するような、近接HRTFフィルターと遠方HRTFフィルターを修正するためのイコライゼーションを、どのように用いることができるかを示し、本発明の形態によりイコライズされた近接耳HRTFと遠方耳HRTFとを平均した結果を示す。
【図6】本発明の1形態により設計されたイコライゼーションフィルターの周波数振幅応答を示す。
【図7】本発明の形態により決定された、イコライズされたHRTFフィルターを用いたバイノーラライザの第1の実施形態を示す。
【図8】シャッフラー回路網(「シャッフラー」)を用いて本発明の形態により決定された、イコライズされたHRTFフィルターを用いたバイノーラライザの第2の実施形態を示す。
【図9】本発明の1形態による、好ましい中央HRTFフィルターである信号フィルターの合計を用いたバイノーラライザの他のシャッフラーの実施形態を示す。
【図10】好ましい位置にバーチャルスピーカを置くために縦列接続したバイノーラライザを有するクロストークを除去したバイノーラライジングフィルターとクロストークキャンセラーの実施の形態を示す。このバイノーラライザ部分は、本発明の形態を組み込んでいる。
【図11】4つのフィルターを有するクロストークを除去したバイノーラライジングフィルターの1つの代替的な実施形態を示す。
【図12】シャッフラー回路網、信号フィルターの加算、及びフィルター回路網の差を有する、クロストークを除去したバイノーラライジングフィルターのもう1つの代替的な実施形態を示す。
【図13】本発明の形態による、ステレオ入力対を処理するオーディオ処理システムのDSP装置をベースにした実施形態を示す。
【図14A】リスナーの中央後方から中央後方でパンされた信号が生じているような印象をリスナーに作り出すための本発明の形態を具備し、5チャンネルのオーディオ情報を受け取る、プロセッシングシステムベースのバイノーラライザの実施形態を示す。
【図14B】リスナーの中央前方から中央前方でパンされた信号が生じているような印象と、リスナーの中央後方から中央後方でパンされた信号が生じているような印象をリスナーに作り出すための本発明の形態を具備し、4チャンネルのオーディオ情報を受け取る、プロセッシングシステムベースのバイノーラライザの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
[詳細な説明]
本発明の1つの特徴は、例えば、ステレオペアの入力の間でパンされた信号が第1の音源の角度と第2の音源の角度との間の第3の音源の角度から生じているような錯覚を生じさせるために、入力がステレオペアである場合に、第1の音源角度と第2の音源角度との2つの音源に対して、計測又は仮定したHRTF対を用い、ステレオ対の入力を3以上の音源角度にバイノーラライズする、バイノーラライザ又はバイノーラライジングの方法である。
【0042】
図3は、左バーチャルスピーカのためのθで表示される第1の方位角と、対称性を仮定して図3で−θとなる右バーチャルスピーカのための角度と、0度の、すなわち左右のバーチャルスピーカの間の半分の道程にある中央バーチャルスピーカとの、3つの音源角度に対するHRTFの例を示す。中央バーチャルスピーカに対して、HRTF対は、それぞれHRTF(0,L)及びHRTF(0,R)のペアで表示される。左バーチャルスピーカHRTF対は、それぞれHRTF(θ,L)及びHRTF(θ,R)のペアで表示され、そして、右バーチャルスピーカHRTF対は、それぞれHRTF(−θ,L)及びHRTF(−θ,R)のペアで表示される。
【0043】
サウンドが方向角±θのバーチャルスピーカから来るように聞こえるようにステレオ入力をバイノーラライズすることが好ましい。背景技術の項で説明したように、中央でパンされた信号は、図2の方向角±θでバーチャルスピーカにて再生させるような、従来の両耳性の再生システムで再生させるとき、リスナーに十分な中央音像を提供できないのが通常であることに気づいた。すなわち、バイノーラライザはHRTF(0,L)及びHRTF(0,R)を十分に近似しない。
【0044】
図2と式(1)〜(6)を参照して、単一入力(MonoInput)と表示される入力が左右のチャンネル入力に分割され、図2のステレオ・両耳性のシステムで処理されるとき、リスナーの左右の耳での刺激、それぞれLeftEar及びRightEarは、対称であると仮定され、
【数5】
【0045】
ここで、
【数6】
【0046】
であることが好ましい。
【0047】
これは、リスナーに単一入力が中央位置から生じているような錯覚を与えるからである。HRTFの計測値が完全な対称性を示すと仮定する。したがって、HRTF(0,L)=HRTF(0,R)であるとみなし、この値をHRTFctrと表示する。したがって、信号を左右の入力に分割するために、下式が必要となる、
【数7】
【0048】
式(7)と(9)とを比較して、リスナーに、「ファントム中央音像」と称される単一入力の正しい方向認識を与えるために、下式が必要となる、
【数8】
【0049】
本発明の第1の実施の形態によれば、イコライジングフィルターが入力に適用される。結果として生じた近接HRTFと遠方HRTFの平均が好ましいファントム中央HRTFに近似するように、このイコライジングフィルターを時間不変のフィルターに限定することにより、このようなイコライジングフィルターを、(a)バイノーラライジングの前に左右のチャンネルの入力信号に、又は、(b)左右のバーチャルスピーカ位置に対するリスナーの計測又は仮定したHRTFに適用してもよい。すなわち、
【数9】
【0050】
ここで、HRTF’nearとHRTF’farは、式に含まれるHRTFnearフィルターとHRTFfarフィルターである。
【0051】
EQでイコライジングフィルターの応答、例えば、インパルス応答を表す。バイノーラライジングの前にこのフィルターを左右のチャンネルの入力に適用することは、対称性を仮定して、以下のように、HRTFnearとHRTFfarで表示されるθと−θのHRTF対と、イコライジングフィルターにより決定される、HRTF’nearフィルターとHRTF’farフィルターによるバイノーラライジングと等価である、
【数10】
【0052】
式(11)と組み合わせ、以下の関係が導かれる、
【数11】
【0053】
1つの実施の形態において、このイコライジングフィルターは、好ましいHRTFフィルターと逆フィルターを組み合わせた1つのイコライジングフィルターにより得られる。特に、下式で得られるイコライジングフィルターは、式(13)を満足する。
【数12】
【0054】
【0055】
本発明はこの逆フィルターを決定する特定の方法に限定されるものではない。1つの代替的な方法では、逆フィルター問題を適応フィルター設計の問題として構築する。インパルス応答X、長さm1のFIRフィルターにはインパルス応答Y、長さm2のFIRフィルターが続く。入力を遅らせる参照出力は、縦列接続されたフィルターX及びYの出力から差し引き、誤差信号を生成する。Yの係数は2乗平均誤差が最小になるよう適応的に変化する。これは、最小2乗(LMS)法又は、正規化されたLMS法と呼ばれるその変形による通常の方法で解決される、通常の適応フィルター問題である。例えば、S.Haykimの「適応フィルター理論」第3版、Englewood
Cliffs,NJ: Prentice Hall,1996を参照のこと。他の逆フィルター決定法を用いてもよい。
【0056】
さらに、逆フィルターの他の実施の形態は、周波数領域で定められる。本願発明者は、バイノーラライザに用いるHRTFフィルターのライブラリを作った。これらの所定のHRTFフィルターは、周波数応答がHRTFフィルターの周波数応答とは逆となるフィルターを作るためにそれらの周波数応答を逆にすることができると分かっているような、周波数領域で滑らかな振る舞いをすることで知られている。逆フィルターを作る方法ではうまく動作することが分かっているHRTFフィルターにするために(HRTFnear+HRTFfar)/2を反転させる。
【0057】
さらに他の実施の形態では、フィルター(HRTFnear+HRTFfar)/2は、以下のように周波数領域に変換される。
【0058】
インパルス応答を周波数領域に変換する。
【0059】
例えば対数周波数領域スケールで、例えば1/3オクターブ分解能で、振幅応答に平滑処理を施す。この平滑処理は、平滑化した振幅応答を良好に動作させ、それにより、逆変換可能にさせる。
【0060】
平滑化した振幅応答を逆変換させる。
【0061】
逆変換した、平滑化した振幅フィルターに位相応答を付加し、その結果生じたフィルターが最小位相フィルターになるようにする。逆変換前のフィルターの元の位相は用いない。
【0062】
したがって、第1の実施の形態には、EQCで表示されるイコライゼーションフィルターを用いるステップが含まれる。1つの実施の形態では以下のように計算される。
【数13】
【0063】
イコライズしたHRTFフィルターHRTF’nearとHRTF’farを作るためにHRTFnearとHRTFfarを修正することは、もはやHRTF(θ,L)及びHRTF(θ,R)、すなわち、理想的なHRTFnearとHRTFfarとは同じでない。代わりに、左右のチャンネルのオーディオ入力信号が、これらに適用される全体的なイコライゼーションを持つ。
【0064】
一般に、このイコライゼーションは全体的な処理における必要以上の劣化を招かないことが分かり、リスナーは左右のバーチャルスピーカサウンドが悪いとは気づかない。
【0065】
結果生じたイコライズしたHRTF対、HRTF’nearとHRTF’farは以下の基準を満たす、
1.システムの応答は、入力信号が左又は右に自由にパンされるとき、θ及び−θで表示される選択された音源位置に対する好ましいHRTF応答と等価であるが、比較的良性の全体的なイコライザー、EQCが適用される。
【0066】
2.システムの応答は、入力信号が中央にパンされるとき、0°の音源に対するHRTF応答に非常に近い。
【0067】
図4A,4B,4C,及び4Dは、θ=±45°にバーチャルスピーカを位置させるバイノーラライザで用いる代表的なHRTFを示す。図4Aは、HRTFcenterで表示した好ましい中央フィルターである、測定した0°のHRTFを示し、図4Bは、バイノーラライザで用いる、測定した45°の近接耳HRTF、HRTFnearを示す。図4Cは、バイノーラライザで用いる、測定した45°の遠方耳HRTF、HRTFfarを示し、図4Dは、45°の近接耳及び遠方耳のHRTFの平均を示す。近接耳及び遠方耳のHRTFの和が好ましい0°のHRTFに一致しないことがわかるだろう。
【0068】
図5A〜5Dは、合計が好ましい0°のHRTFに非常に近似するような、近接HRTFフィルターと遠方HRTFフィルターを修正するためのイコライゼーションを、どのように用いることができるかを示す。図5Aは、近接HRTFフィルターと遠方HRTFフィルターに適用するイコライゼーションフィルターのインパルス応答を示す。図5Bは、イコライゼーション後の45°の近接耳HRTF、すなわちHRTF’nearを示す。図5Cは、イコライゼーション後の45°の遠方耳HRTF、すなわちHRTF’farを示し、図5Dは、イコライズした近接HRTFとイコライズした遠方HRTFとを平均した結果を示す。図5Dと図4Aとを比較すると、イコライズした近接HRTFとイコライズした遠方HRTFとを平均したものは測定した0°のHRTFに非常に近似することが分かるだろう。
【0069】
図6は、イコライゼーションフィルターEQCの周波数振幅応答を示す。一旦FIRフィルター、HRTF’nearとHRTF’farについてのフィルター係数を定めたとき、図7及び8は、このように定めたイコライズされたHRTFフィルターを用いたバイノーラライザの代替的な実施の形態を示す。図7は、4つのフィルターを有する第1の実施の形態40を示す。インパルス応答がHRTF’nearである2つの近接フィルター41及び44とインパルス応答がHRTF’farである2つの近接フィルター42及び43とは、加算器45及び46により加算すべき信号を作るために用いられて、左耳及び右耳信号を生成する。
【0070】
図8は、CooperとBauckによって最初に提案されたシャッフラー構造を用いた第2の実施の形態を示す。例えばCooperとBauckの米国特許4,893,342、表題「HEAD
DIFFRACTION COMPENSATED STEREO SYSTEM」を参照のこと。加算器51と減算器52を具備するシャッフラーは、左右のオーディオ入力信号の和である第1の信号と、左右のオーディオ入力信号の差である第2の信号とを生成する。シャッフラーの実施の形態50において、2つのフィルターのみが必要であり、加算フィルター53は第1のシャッフルされた信号に対するインパルス応答HRTF’near+HRTF’far、すなわち和信号を有し、減算フィルター54は、第2のシャッフルされた信号に対するインパルス応答HRTF’near−HRTF’far、すなわち差信号を有する。結果生じた信号は、左耳信号を生成する加算器55と右耳信号を生成する減算器56とを具備しシャッフラーとは逆の演算をおこなうアンシャッフラー回路網(「アンシャッフラー」)でシャッフル解除される。例えば各経路に置いた減衰器57及び58又は、回路の別々の部分に分割した一続きの減衰器による縮小拡大が含まれていてもよい。
【0071】
図8において、加算フィルター53は、近接HRTFと遠方HRTFをイコライズすることにより中央HRTFフィルター応答、2*HRTFcenterにほぼ等しくなるインパルス応答を持つことに留意しなければならない。これは、加算フィルターに続く、アンシャッフラー回路網55,56と減衰器57,58が基本的には中央にパンされた信号に対する1つのHRTFフィルター対となることから、当然のことである。
【0072】
代替的な方法において、近接HRTFと遠方HRTFをあらかじめイコライズするのではなく、図8に類似するシャッフラー構造を用いるが、加算フィルターは、好ましい中央HRTFフィルターを二重にしたもので置き換えられる。
【0073】
このような実施の形態は図9に示され、
・ 中央にパンされた信号成分を定位した中央バーチャルスピーカの音像を形成するフィルターを用いた、シャッフラーからの第1の信号、すなわち、左右のチャンネル入力の和に比例した和信号の処理、
・ 好ましい左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置とを定位するために左右の入力を概略的に処理するように、シャッフラーからの第2の信号、すなわち、左右のチャンネル入力の差に比例した差信号の処理、
に対応する。
【0074】
図9の実施の形態により、加算器51と減算器52を具備し中央信号と差信号を生成するシャッフラー回路網を用いて実行される。この図9の実施の形態では、イコライズされた左HRTFと右HRTFとを用い、これらをイコライズされたHRTFの和と差に変換する一方、この図9の実施の形態では、加算フィルターを好ましい中央HRTF応答の2倍となる加算フィルターに置き換え、アンイコライズした差フィルターに等しい応答に差フィルター60を用いる。この方法により、左信号と右信号における定位誤差が生じるという犠牲を払って好ましい質の高い中央HRTF音像がもたらされる。
【0075】
したがって、以下のように、第1と第2の実施の形態は以下のように表現される、
1. 近接バーチャルスピーカHRTFと遠方バーチャルスピーカHRTFとから始めて、近接HRTFと遠方HRTFとの和を好ましい中央HRTFの2倍に近似させるために、イコライゼーションフィルタリング処理をこれらの近接バーチャルスピーカHRTFと遠方バーチャルスピーカHRTFとに適用する。これにより、感知される左右の信号でいくらかのイコライゼーションに変動が生じるという犠牲を払って、リスナーに好ましい質の高い中央HRTF音像がもたらされる。このような、イコライゼーション誤差は不快なものでないことが分かっている、
2. 近接バーチャルスピーカHRTFと遠方バーチャルスピーカHRTFと好ましい中央HRTFとから始めて、差フィルターを近接HRTFと遠方HRTFとの差として定める。例えば、シャッフラー回路網を用いて和信号と差信号とを組み立てる。好ましい中央HRTFフィルターをこの和信号に適用し、近接スピーカHRTFフィルターと遠方スピーカHRTFフィルターの差に比例する応答を有するフィルターをこの差信号に適用する。結果生じたこの2つのフィルターされた信号をシャッフル解除し、左右の耳に、例えばヘッドフォンを介して適用する。これにより、左右のバーチャルスピーカ信号でいくらかの定位誤差が生じるという犠牲を払って、リスナーに好ましい質の高い中央音像がもたらされる、
第3の実施の形態は以下のように、第1と第2の形態を組み合わせたものである、
3. 上記第1の方法を用いて、イコライズされた近接HRTFと遠方HRTFとに基づきフィルターの和と差を生成する。イコライズされたフィルター応答の和と中央HRTFとを平均し、平均化された和信号フィルターを生成する。イコライズされたフィルター応答の差とイコライズされないHRTFフィルターの差とを平均し、平均化された差信号フィルターを生成する。例えばシャッフラー回路網を用いて和信号と差信号とを組み立てる。この和信号に好ましい平均化された和信号フィルターを適用し、この差信号に好ましい平均化された差信号フィルターを適用する。結果生じた2つのフィルターされた信号をシャッフル解除し、左右の耳に、例えばヘッドフォンを介して適用する。これにより、左右の信号にいくらかのEQ変動といくらかの定位誤差が生じるという犠牲を払って、リスナーに好ましい質の高い中央HRTF音像がもたらされる。
【0076】
中央音像の質と左右の音像の質との間で妥協点を見つけるため他の代替的な実施の形態が可能である。そのような実施の形態の第1番目のものは、例えば±45°のバーチャルスピーカにおける図6のようなイコライゼーションフィルターは、部分的にだけ効果があるように修正され、その結果、上述の第1の実施の形態で記載したHRTFより少し不鮮明な中央音像を有する1組のHRTFとなるが、左右の信号は、上述の第1の実施の形態で記載したイコライズされたHRTFフィルターで生じるものよりも音色が少ししか付かないという利点がある。
【0077】
もう1つの具体例として、イコライザーは、好ましい位相応答が保持できる期間、例えば最低限の位相フィルターを保持できる期間、各周波数において、フィルターの効果を半減させ、同様に、イコライゼーションフィルターの位相応答(図示せず)を半減させるために、図6のイコライゼーション曲線を(dBスケール上で)半分にすることにより生成される。結果生じたフィルターは、縦列接続されたような1対のイコライゼーションフィルターが図6で示したフィルターと同じ応答を生成するようなものとなる。このイコライゼーションフィルターは、好ましいスピーカ位置に対する好ましい例えば正確に測ったHRTFフィルターと等しくするために用いられる。結果として生じたこの信号をリスナーにたいして再生させたとき、本願発明者は、結果として生じたイコライズされた近接HRTFフィルターとイコライズされた遠方HRTFフィルターとが部分的に改善された中央音像を提示するが、左右の音像についてはほんの少しのイコライゼーション誤差を受けるだけであることを見つけた。
【0078】
[大きなスピーカ角]
上記説明では、バーチャルLスピーカとバーチャルRスピーカをリスナーの前に、例えば±30度又は±45度で置いたものに使う技術を示したが、説明したこの方法と装置は、±90度までの大きな角度に置いたバーチャルスピーカに対してもうまくいく。ラウドスピーカをリスナーに対して±90度に近い角度で、例えばリスナーのちょうど左右に置いた、実際のラウドスピーカを用いた再生では、パンすることにより作られた中央信号を適切に定位できない。例えば、モノラル信号を左右のスピーカに等しく分割して作った中央にパンする信号のような場合、ステレオスピーカでの再生で適切なファントム中央音像を生じさせることはない。実際のスピーカで再生する場合、このような中央でパンするようなものは、リスナーに対して正確に中央の位置を生じさせないこと、すなわち、ステレオスピーカがリスナーの前に約±45度以下の角度で対称的におかれた場合にのみファントム中央音像を生じることが知られている。本発明の特徴によれば、仮想的な左右のスピーカをリスナーに対して±90度以下の角度で置いた状態の中央前方の音像をヘッドフォンで再生する。
【0079】
[スピーカでの再生]
HRTFフィルターを用いた上述の方法及び装置は、両耳性のヘッドフォンでの再生に適用できるだけではなく、ステレオスピーカでの再生にも適用できる。スピーカでのサウンド定位効果を生み出す技術、すなわちスピーカでの再生によって幻の音源像を作り出す技術は当業者に良く知られており、一般に「クロストークを除去した両耳性」技術、及び、「トランスオーラル」フィルターと称されている。例えば、AtalとSchroederの米国特許3,236,949、表題「APPARENT
SOUND SOURCE TRANSLATOR」参照のこと。リスニング中のリスナーの左耳と右耳間でのクロストーク、例えば、スピーカの出力とスピーカから遠い方の耳とのクロストークをクロストークと称する。例えば、リスナーの前に置かれた1対のステレオスピーカについて、左耳で聞こえる右スピーカのサウンドと、右耳で聞こえる左スピーカのサウンドとをクロストークと称する。通常、クロストークによりサウンドの手がかりが乱されるので、クロストークは定位を著しくあいまいにさせるものとして知られている。クロストークキャンセレーションは、クロストークの影響を無効にする。
【0080】
モノラル入力にたいして、クロストークを除去するフィルターには、スナーの耳を仮想的なサウンド位置から到達したサウンドに起因する両耳性の応答に相当する、スピーカにて刺激する信号をもつ、ステレオ対のように、通常リスナーの前に置かれた2つのスピーカへのモノラル入力信号を処理するフィルターが含まれる。
【0081】
1例として、リスナーの前に±30°の角度で置かれた2つの実際のスピーカを想定し、リスナーに+60°の位置に音源があるような錯覚を与えたいと仮定する。クロストークを除去する両耳化は、実際のスピーカ構成に分け与えられた±30°のHRTFを「取り消し(undoing)」、60度のHRTFフィルターを用いて両耳化することで達成される。
【0082】
これらのクロストークキャンセリング技術がリスナーの前に仮想的な音源のほぼどんな角度を生成させるためにも用いることができる一方(リスナーの後方に仮想的な音源を位置させることを達成することは非常に難しい)、0度の前方音像は、一般に、HRTFを用いるより、中央パンニングと呼ばれるような、2つのスピーカに入力を分割する方法により作られ、リスナーの中央に位置するようなモノラル入力は、約3から6dB減衰させて左右のスピーカに送られる。
【0083】
ある角度、例えば30°の角度でリスナーの前に置かれたスピーカで再生するステレオ入力信号対を処理し、他の位置、例えば60°の角度でリスナーの前に置かれた1対のスピーカで聞いているような錯覚をリスナーに与えたいと仮定する。これを達成する従来技術の一つではクロストークを除去するバイノーラライザを生成する。図10は、このようなバーチャルスピーカを好みの位置、例えば±60°に置くためにバイノーラライザの縦列接続として実施されたクロストーク除去フィルターを示す。バイノーラライザには、対称的なケース(又は対称的に見せかけた、例えば式(3)のようなケースに)の中に、そのインパルス応答がHRTFnearと表示される近接HRTFフィルター61,62と、そのインパルス応答がHRTFfarと表示される遠方HRTFフィルター63,64が含まれる。各近接フィルターと遠方フィルターの出力は加算器65,66により加算され左右のバイノーラライズされた信号を形成する。このバイノーラライザの後に、例えば±30°に位置する実際のスピーカで生じたクロストークを除去するためのクロストークキャンセラーが続く。このクロストークキャンセラーは、バイノーラライザから信号を受け取り、インパルス応答がXnearと表示される近接クロストーク除去フィルター67,68と、インパルス応答がXfarと表示される遠方クロストーク除去フィルター69,70とを対称的なケース、又は対称的に見せかけたケース内に具備し、その後に、±30°で生じるクロストークを除去する加算器71及び72が続く。その出力は左スピーカ73と右スピーカ74へ行く。
【0084】
近接バイノーラライザと遠方バイノーラライザと近接クロストーク除去フィルターと遠方クロストーク除去フィルターのそれぞれは、線形の時間不変システムなので、バイノーラライザの縦列接続は、2入力2出力システムとして表現することができる。図11は、このような、4つのフィルター75,76,77,及び78、と2つの加算器79,80としての、クロストークを除去するバイノーラライザの実施の形態を示す。対称的な(又は対称的に見せかけた)ケース内の4つのフィルターは2つの異なった応答、すなわち、フィルター75及び76に対するGnearと表示した近接インパルス応答と、フィルター77及び78に対するGfarと表示した遠方インパルス応答を有し、ここで、GnearとGfarの各々は、HRTFnearとHRTFfarのHRTFフィルターとXnearとXfarのクロストーク除去フィルターである。
【0085】
良く知られているように、図11に示した2入力2出力対称構成は、図12に示した構成でも実施することができる。図12は、和信号を生成する加算器81と差信号を生成する減算器82を有するシャッフリング回路網90と、和信号をフィルターする和信号フィルター83であって、この和信号フィルターはGnear+Gfarに比例するインパルス応答を有する和信号フィルターと、差信号をフィルターする差信号フィルター84であって、この差和信号フィルターはGnear−Gfarに比例するインパルス応答を有する差信号フィルターと、それに続く、これもまた左スピー73カへの左スピーカ信号を生成する加算器85と、右スピーカ74への右スピーカ信号を生成する減算器を有するアンシャッフリング回路網91とを具備するクロストークを除去するバイノーラライザを示す。
【0086】
かくして、クロストークを除去するバイノーラライザフィルターは、図12に示した構成で実施され、これは、図8及び図9に示した構成と類似する。
【0087】
1実施の形態においては、中央例えば0°に定位する音源を正確に再生するように設計される。そのようなフィルターを計算するのではなく、1実施の形態においては、左右のスピーカからの等量のモノラル信号を聞いているリスナーがそのような信号が中央から来ているかのように正確に定位するための認知情報を使って、そのようなフィルターにデルタ関数を用いる。代替的な実施の形態において、クロストークを除去するフィルターは、加算フィルターを、例えば、そのインパルス応答がデルタ関数の識別フィルターに見せかけるのと等しい。代替的な実施の形態において、この加算フィルターは、フラットな(デルタ関数インパルス応答)フィルターに置き換えられる。
【0088】
本発明の両耳性での応用例では、「定位」の認識誤差を修正するためのものであるのに対して、クロストークを除去する本発明の応用例では、中央音像において生じる共通に認識されるイコライゼーション誤差を修正するものである。
【0089】
[後方バーチャルスピーカ]
本発明の他の特徴によれば、例えば、2つの後方バーチャルスピーカに加えて、幻の音源が180度(後方中央)位置にあるかのような、つまり1つのスピーカが後方中央位置にあるかのように、±90度以上にスピーカをシミュレートするためにバイノーラライズすることにより、中央後方音源を正確にシミュレートする。
【0090】
具体的な例では、5スピーカホームシアターの効果を生み出すバイノーラライザを考える。このような「仮想的な」5スピーカ構成の左右のサラウンド位置は、鮮明な後方中央音像を作り出す利点を加えることによりシミュレートされる。これにより、ドルビーディジタル(Dolby
Digital)EXtm(ドルビー・ラボラトリーズ・インク、サンフランシスコ、CA)のような後方中央スピーカを有するシステムをシミュレートすることが可能となる。
【0091】
第1の後方信号の実施の形態には、後方近接HRTFフィルターと後方遠方HRTFフィルターとの和が好ましい後方中央HRTFフィルターに近似するような後方近接HRTFフィルターと後方遠方HRTFフィルターとをイコライジングする処理が含まれる。例えば、バイノーラライザを経由したサラウンドサウンド入力のような左後方と右後方の信号を、プレイコライジングについての第1の後方信号の実施の形態を用いて処理することにより、中央後方にパンした音源を中央後方から現れるようにヘッドフォンで認識させるが、2つのサラウンド音像(後方左と後方右)が耐えられる程度のイコライゼーション誤差を持つようになる。あるいは、ヘッドフォンで再生されたとき、正確に中央から来るように見えるが、好ましい位置から少しずれた左後方バーチャルスピーカと右後方バーチャルスピーカから来るようにみえる左後方と右後方の信号を、好ましい中央後方HRTFに近似する、シャッフラーとHRTFフィルターの和信号を用いたバイノーラライザを使って実施する。
【0092】
他の実施の形態には、前方の信号と後方の信号の両方を処理する、前方処理と後方処理とを組み合わせる処理が含まれる。ここで、サラウンドサウンド、例えば、4チャンネルサウンドは、仮想的なバーチャル中央前方サウンドと仮想的なバーチャル中央後方サウンドを正しく生成するために、前方左の信号と前方右の信号を処理することができ、また、後方左の信号と後方右の信号を処理することができることに留意すべきである。
【0093】
ここで、上記フィルターの実施の形態にはオーディオ増幅器及び他の同様な構成要素が含まれないことは当業者に理解されていることに留意すべきである。さらに、上記実施の形態はディジタルフィルタリングによるものである。したがって、アナログ入力に対しては、アナログ・ディジタル変換器が含まれることは、当業者には分かるだろう。さらに、ヘッドフォンで再生させるために、又は、トランスオーラルフィルタリングケースでラウドスピーカで再生させるために、ディジタル信号出力をアナログ出力に変換させるためディジタル・アナログ変換器を用いることは当業者には分かるだろう。
【0094】
さらに、ディジタルフィルターが多くの方法で導入されることは当業者には分かるだろう。
【0095】
図13は本発明の特徴にしたがってステレオ入力対の処理を行うオーディオ処理システムの実施の形態を示す。このオーディオ処理システムには、アナログ入力をそれに相当するディジタル信号に変換するアナログ・ディジタル変換器(A/D)97と、処理した信号をアナログ出力信号に変換するディジタル・アナログ変換器(D/A)98が含まれる。代替的な実施の形態において、ブロック97には、A/D変換器ではなくディジタル入力信号に対して用意されるSPDIFインターフェースが含まれる。このシステムには、入力を処理して、十分速く出力を生成することのできるDSP装置が含まれる。1つの実施の形態において、DSP装置には、プロセッサのオーバーヘッドなしにA/D変換器及びD/A変換器97及び98と通信を行うシリアルポート96の形態を持つインターフェースが含まれ、また、1つの実施の形態において、入出力処理の動作を妨げることなくオフチップメモリからデータをオンチップメモリ95にコピーすることのできる、装置外メモリ92及びDMAエンジンが含まれる。ここに記載した本発明の特徴を実行するコードは、オフチップメモリとし、必要に応じてオンチップメモリのロードしてもよい。DSP装置には、DSP装置のプロセッサ93にここに記載したフィルタリングを実行させるコードを収納するプログラムメモリ94が含まれる。外部メモリが必要な場合のために、外部バスマルチプレクサが含まれる。
【0096】
同様に、図14Aは、前方スピーカを通じて再生させることを目的とする左信号、中央信号、及び右信号と、後方スピーカを通じて再生させることを目的とする左サラウンド信号、及び右サラウンド信号と、の形の5チャンネルのオーディオ情報を受け取るバイノーラライジングシステムを示す。このバイノーラライザは、左サラウンド信号及び右サラウンド信号を含む各入力にHRTFフィルター対を実施し、ヘッドフォンを通じてリスニングしているリスナーに中央後方にパンされた信号がリスナーの中央後方から来るような体験をさせるような本発明の特徴を実行する。このバイノーラライザは、例えば、プロセッサを具備するDSP装置のような処理システムを用いて実施する。この命令を保持するためのメモリには、プロセッサに上記のフィルタリングを実行するパラメータが含まれる。
【0097】
同様に、図14Bは、前方スピーカを通じて再生させることを目的とする左信号及び右信号と、後方スピーカを通じて再生させることを目的とする左後方信号、及び右後方信号と、の形の4チャンネルのオーディオ情報を受け取るバイノーラライジングシステムを示す。このバイノーラライザは、左信号及び右信号、左後方信号及び右後方信号を含む各入力にHRTFフィルター対を実施し、ヘッドフォンを通じてリスニングしているリスナーに中央前方にパンされた信号がリスナーの中央前方から来るような、そして、中央後方にパンされた信号がリスナーの中央後方から来るような体験をさせるような、本発明の特徴を実行する。このバイノーラライザは、例えば、プロセッサを有するDSP装置のようなプロセッシングシステムを用いて実行する。この命令を保持するためのメモリには、プロセッサに上記のフィルタリングを実行するパラメータが含まれる。
【0098】
したがって、ここに記載の手法は、命令を含むコードセグメントを受け取る1以上のプロセッサを有する機械により実行可能である。ここに記載の方法は、この機械により命令が実行されるとき、この機械がその方法を実施する。その機械が行う(シーケンシャルな又はその他の)動作を特定する命令を実行することのできるどんな機械も含まれる。したがって、1つの標準的な機械は、1以上のプロセッサを有する標準的な処理システムで例示することができる。各プロセッサには1以上のCPUと、グラッフィック処理ユニットと、プログラマブルDSPユニットとを含めることができる。この処理システムは、メインRAM及び/又はスタティックRAM、及び/又はROMを有するメモリサブシステムを含めることができる。構成要素間での通信のためにバスサブシステムを含めてもよい。もしこの処理システムがディスプレイを必要とするなら、このようなディスプレイ、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)又はブラウン管(CRT)ディスプレイ、を含めてもよい。もし、手動でのデータ入力が必要であれば、この処理システムはまた、キーボード、マウスのようなポインティングコントロール装置その他のような1以上の英数字入力ユニットのような入力装置を含む。ここで用いられるメモリユニットの語は、ディスクドライブユニットのような記憶システムを含有する。ある構成における処理システムには、サウンド出力装置及びネットワークインターフェース装置が含まれる。したがって、このメモリサブシステムには、処理システムにより実行されるとき、ここに記載の多くの方法の1つを実行するための命令を含む機械読取可能なコードセグメント(例えば、ソフトウェア)を伝達する伝達媒体が含まれる。このソフトウェアは、ハードディスク内に置くことができ、又は、コンピュータシステムにより実行されている間全て又は少なくとも一部をRAM及び/又はプロセッサ内に置くことができる。したがって、メモリ及びプロセッサはまた、機械読取可能なコードを伝達する伝達媒体を構成する。
【0099】
代替的な実施の形態において、この機械は、標準のスタンドアローン装置として動作するが、例えばネットワーク上の他の装置に接続した装置として作動させることもできる。この機械は、サーバとしてまたはサーバ・クライアントネットワーク装置のクライアント機として、または、ピア・トゥー・ピア環境または分散型ネットワーク環境におけるピアマシンとして作動させることもできる。この機械は、パーソナルコンピュータ(PC)でも、タブレットPCでも、セットトップボックス(STB)でも、携帯端末(PDA)でも、携帯電話でも、ウェブアプライアンスでも、ネットワークルータでも、その機械で行う動作を特定する(シーケンシャルな、またはその他の)命令を実行することのできるどんな機械でもよい。
【0100】
ここで留意すべきは、図は単一のプロセッサとコードを実行する単一のメモリのみ示しているが、当業者は、上述の多くの構成要素が含まれていることを理解するだろうが、本発明の特徴が分かりにくくならないように、このことを明確には示していない。例えば、単一の機械が描かれているが、「機械」の語には、ここに記載した方法のいずれかを実行する1つの命令セット(または多くの命令セット)をここにまたは組み合わせて実行する機械の集合も含まれることとしている。
【0101】
したがって、ここに記載した方法の1実施の形態は、例えば、両耳性システムの一部をなす1以上のプロセッサのような処理システムで実行されるコンピュータプログラムの形態となる。したがって、当業者には良く理解されているように、本発明の実施の形態では、方法や、特定の目的を持つ装置のような装置や、データ処理システムのような装置や、コンピュータプログラム製品のような伝達媒体として実施される。伝達媒体は、処理システムにおける方法の実施を制御する、コンピュータで読み取り可能な1以上のコードセグメントを伝達する。したがって、本発明は、方法の形態や、完全なハードウェアの実施の形態や、完全なソフトウェアの実施の形態や、ソフトウェアとハードウェアを結合させた実施の形態とすることができる。さらに、本発明は、その媒体中にあるコンピュータ読取可能なコードセグメントを伝達する伝達媒体(例えば、コンピュータ読取可能な記憶媒体上に作られたコンピュータプログラム製品)の形態とすることができる。
【0102】
このソフトウェアはさらに、ネットワークインターフェース装置を介してネットワークに送受信することができる。この伝達媒体は、単一の媒体として例示した実施の形態には示されているが、「伝達媒体」の語には、1以上の命令セットを保存する単一のまたは複数の媒体(例えば、中央集中型データベースや分散型データベース及び/又は関連するキャッシュ及びサーバ)も含まれることとしている。「伝達媒体」の語には、また、その機械により実行される命令セットを保存したり、エンコーディングしたり、伝達したりすることができ、その機械に本発明の方法を実行させることのできるあらゆる媒体が含まれることとすべきである。伝達媒体は、それに限定されないが、不揮発性媒体、揮発性媒体、及び伝送媒体を含む、多くの形態とすることができる。不揮発性媒体には、例えば、光学ディスク、磁気ディスク、及び光‐磁気ディスクが含まれる。揮発性媒体には、主メモリのようなダイナミックメモリが含まれる。伝送媒体には、バスサブシステムを構成する電線を含む、同軸ケーブル、銅線及び光ファイバーが含まれる。伝送媒体は、ラジオは及び赤外線データ通信において生じるような音波又は光波の形態とすることもできる。例えば、「伝送媒体」の語は、それに限定されないが、半導体メモリ、光媒体、磁気媒体、及び搬送波信号を含むとすべきである。
【0103】
本発明の他の実施の形態は、ステレオ入力のペアを処理するフィルターのコンピュータ読取可能なデータを伝送する伝送媒体の形態となる。このデータは、このフィルターのインパルス応答の形態、又はこのフィルターの周波数領域の伝達関数の形態とすることができる。このフィルターには、上述のように設計した2つのHRTFフィルターが含まれる。その処理がヘッドフォンによるリスニングのためのものである場合は、HRTFフィルターは、バイノーラライザにおける入力データをフィルターするために用いられ、スピーカリスニングである場合は、HRTFフィルターは、クロストークを除去したバイノーラライザに組み込まれる。
【0104】
説明した方法のステップは、記憶装置に保存した命令(コードセグメント)を実行する処理(コンピュータ)システムの1つの適当なプロセッサ(又は複数のプロセッサ)による実施の形態により実行されることが分かる。本発明は特定の実施の形態又はプログラミング技法に限定されず、また、本発明はここで機能的に記載したものを実施するために適するどのような技法を用いてでも実行されることは了解されよう。本発明は特定のプログラム言語またはオペレーティングシステムに限定されるものではない。
【0105】
この明細書で「1つの実施の形態」または「実施の形態」と称するものは、本発明の少なくとも1つの実施の形態に含まれる実施の形態との関連において説明した、特定の特徴、構成、または特性を意味する。したがって、この明細書を通じてさまざまな場所で現れる「1つの実施の形態」または「実施の形態」の言いまわしは必ずしも同じ実施の形態を称しているのではない。さらに、1以上の実施の形態において、特定の形態、構成、または特性を当業者にとってこの明細書から明らかなような適切な方法で結合してもよい。
【0106】
同様に、本発明のさまざまな特徴のうちの1以上を効率的に開示しその理解を助けるために、本発明の模範的な実施の形態の上記記載において、本発明のさまざまな特徴はしばしば単一の実施の形態、図、又は記載にグループ化されていることは評価すべきである。しかし、開示した方法は、各請求項で明白に記載した以上の形態を請求項に記載の発明が必要としているものと解釈されるものではない。さらにいえば、以下の請求項に示すように、発明の創作的形態は、先に開示した実施の形態の1つの全ての特徴より少ない。したがって、この詳細な説明に続く特許請求の範囲は、この詳細な説明に組み込まれ、この発明の別々の実施の形態として各請求項がそれ自身に基づくことができる。さらに、以下に主張するように、ここに記載のある実施の形態は、ある特徴を含むが他の特徴を含まないが、他の実施の形態における特徴を組み合わせることは本発明の技術的範囲内である。
【0107】
さらに、いくつかの実施の形態は、コンピュータシステムのプロセッサにより実行することのできる方法又は要素の結合としてここに記載されている。したがって、このような方法又は方法の要素を実行するのに必要な命令を持つプロセッサは、この方法又は方法の要素を実行する方法を形成する。同様に、ここに記載された装置の実施の形態のここに記載された要素は、本発明を実行するための要素により実施される機能を実行する方法の例である。
【0108】
ここに記載の明細書及び特許請求の範囲において、等価又は実質的に等価であることには、比例定数の範囲が等価である場合が含まれる。
【0109】
ここに引用した全ての刊行物、特許、及び特許出願は、参考として本明細書に組み込まれる。
【0110】
したがって、本発明の好ましい実施の形態と信じるものについてここに記載したが、当業者は、本発明の思想から離れることなく他の又はさらなる変更を加えることができること、及び、このような変更又は修正の全ては本発明の技術的範囲内であることを認識するだろう。例えば、上記の全ての式は、用いることのできる手順を単に代表するものである。機能をブロック図に付加しても削除してもよく、機能ブロック間で動作が交換可能である。ステップを本発明の技術的範囲内に記載した方法に付加しても削除してもよい。
【0111】
原出願の出願当初の特許請求の範囲を記載しておく。
〔請求項1〕
オーディオの再生のための1対のオーディオ入力信号を受け入れるステップと、
前記入力信号の和に比例する第1の信号(和信号)と前記入力信号の差に比例する第2の信号(差信号)とを作り出すために前記入力信号をシャッフルするステップと、
中央位置でバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFの2倍に近似するフィルターで前記和信号をフィルターするステップと、
1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーの近接耳HRTFと遠方耳HRTFとの差に近似するフィルターで前記差信号をフィルターするステップと、
前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作り出すために、前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号とをシャッフル解除するステップと、
を具備し、
前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれる場合、ヘッドフォンを通して前記第1の出力信号と前記第2の出力信号とを聞いているリスナーに、前記パンされた信号成分が前記中央位置でバーチャル音源から生じているような感覚を与えることを特徴とする、
方法。
〔請求項2〕
前記中央HRTFの2倍に近似するフィルターは、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとをそれぞれイコライジングフィルターによりフィルターすることにより得られた、前記近接耳HRTFをイコライズしたものと前記遠方耳HRTFをイコライズしたものとの和として得られたことを特徴とする請求項1に記載の方法。
〔請求項3〕
前記イコライジングフィルターは、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの逆フィルターであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
〔請求項4〕
前記イコライジングフィルターの応答は、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの応答を周波数領域に変換することにより決定されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
〔請求項5〕
前記イコライジングフィルターの応答は、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの応答を反転させる適応フィルター法により決定されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
〔請求項6〕
前記中央HRTFの2倍に近似するフィルターは、好ましい中央HRTFの2倍に実質的に等しい応答を持つフィルターであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
〔請求項7〕
前記オーディオ入力信号には左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置とがリスナーに対して対称であり、リスナー及びリスニングは、近接HRTFが左バーチャルスピーカから左耳HRTFへと、右バーチャルスピーカから右耳HRTFへとなるような、そして、遠方HRTFが左バーチャルスピーカから右耳HRTFへ、右バーチャルスピーカから左耳HRTFへとなるような対称的なものとなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
〔請求項8〕
前記オーディオ入力信号には左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置にあり、前記近接HRTFは、左バーチャルスピーカから左耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから右耳HRTFへのとの平均に比例し、前記遠方HRTFは、左バーチャルスピーカから右耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから左耳HRTFへのとの平均に比例することを特徴とする請求項1に記載の方法。
〔請求項9〕
前記オーディオ入力信号には、左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの前の左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする請求項1に記載の方法。
〔請求項10〕
前記左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置とは、45度と90度との間の大きさの方位角であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
〔請求項11〕
前記オーディオ入力信号には、左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの後の左後方バーチャルスピーカ位置と右後方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする請求項1に記載の方法。
〔請求項12〕
前記オーディオ入力信号は、サラウンドサウンド再生のための3以上の入力信号のセットのサブセットであり、前記方法には、ヘッドフォン通して聞くために、前記入力信号の各々にバーチャルスピーカ位置を生成するステップを含む、3以上の入力信号のセットを処理するステップが含まれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
〔請求項13〕
1対のオーディオ入力信号をシャッフルする手段であって、該シャッフルする手段は、前記入力信号の和に比例する第1の信号(和信号)と前記入力信号の差に比例する第2の信号(差信号)とを生成することを特徴とするシャッフルする手段と、
中央位置でバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFの2倍に近似するフィルターで前記和信号をフィルターする手段であって、該和信号をフィルターする手段は、前記シャッフルする手段と結合していることを特徴とする和信号をフィルターする手段と、
1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーの近接耳HRTFと遠方耳HRTFとの差に近似するフィルターで前記差信号をフィルターする手段であって、該差信号をフィルターする手段は、前記シャッフルする手段と結合していることを特徴とする差信号をフィルターする手段と、
前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号とをシャッフル解除する手段であって、該シャッフル解除する手段は前記シャッフルする手段と結合しており、該シャッフル解除する手段は、前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作り出すことを特徴とするシャッフル解除する手段と、
を具備し、
前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれる場合、ヘッドフォンを通して前記第1の出力信号と前記第2の出力信号とを聞いているリスナーに、前記パンされた信号成分が前記中央位置でバーチャル音源から生じているような感覚を与えることを特徴とする、
装置。
〔請求項14〕
前記中央HRTFの2倍に近似するフィルターは、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとをそれぞれイコライジングフィルターによりフィルターすることにより得られた、前記近接耳HRTFをイコライズしたものと前記遠方耳HRTFをイコライズしたものとの和として得られたことを特徴とする請求項13に記載の装置。
〔請求項15〕
前記イコライジングフィルターは、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの逆フィルターであることを特徴とする請求項14に記載の装置。
〔請求項16〕
前記イコライジングフィルターの応答は、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの応答を周波数領域に変換することにより決定されることを特徴とする請求項15に記載の装置。
〔請求項17〕
前記イコライジングフィルターの応答は、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの応答を反転させる適応フィルター法により決定されることを特徴とする請求項15に記載の装置。
〔請求項18〕
前記中央HRTFの2倍に近似するフィルターは、好ましい中央HRTFの2倍に実質的に等しい応答を持つフィルターであることを特徴とする請求項13に記載の装置。
〔請求項19〕
前記オーディオ入力信号には左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置とがリスナーに対して対称であり、リスナー及びリスニングは、近接HRTFが左バーチャルスピーカから左耳HRTFへと、右バーチャルスピーカから右耳HRTFへとなるような、そして、遠方HRTFが左バーチャルスピーカから右耳HRTFへ、右バーチャルスピーカから左耳HRTFへとなるような対称的なものとなることを特徴とする請求項13に記載の装置。
〔請求項20〕
前記オーディオ入力信号には左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置にあり、前記近接HRTFは、左バーチャルスピーカから左耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから右耳HRTFへのとの平均に比例し、前記遠方HRTFは、左バーチャルスピーカから右耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから左耳HRTFへのとの平均に比例することを特徴とする請求項13に記載の装置。
〔請求項21〕
前記オーディオ入力信号には、左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの前の左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする請求項13に記載の装置。
〔請求項22〕
前記左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置とは、45度と90度との間の大きさの方位角であることを特徴とする請求項21に記載の装置。
〔請求項23〕
前記オーディオ入力信号には、左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの後の左後方バーチャルスピーカ位置と右後方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする請求項13に記載の装置。
〔請求項24〕
前記オーディオ入力信号は、サラウンドサウンド再生のための3以上の入力信号のセットのサブセットであり、前記方法には、ヘッドフォン通して聞くために、前記入力信号の各々にバーチャルスピーカ位置を生成するステップを含む、3以上の入力信号のセットを処理するステップが含まれることを特徴とする請求項13に記載の装置。
〔請求項25〕
1対のオーディオ入力信号を受け入れ、該入力信号の和に比例する第1の信号(和信号)と該入力信号の差に比例する第2の信号(差信号)とを生成するシャッフラーと、
中央位置でバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFの2倍に近似するフィルターで前記和信号をフィルターする前記シャッフルする手段と結合している和フィルターと、
前記差信号出力と結合していて該差信号をフィルターする差フィルターであって、該フィルターは、1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーの近接耳HRTFと遠方耳HRTFとの差に近似することを特徴とする差信号をフィルターと、
前記和フィルターと前記差フィルターとに結合しており、前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作り出すアンシャッフラーと、
を具備し、
前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれる場合、ヘッドフォンを通して前記第1の出力信号と前記第2の出力信号とを聞いているリスナーに、前記パンされた信号成分が前記中央位置でバーチャル音源から生じているような感覚を与えることを特徴とする、
装置。
〔請求項26〕
前記中央HRTFの2倍に近似するフィルターは、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとをそれぞれイコライジングフィルターによりフィルターすることにより得られた、前記近接耳HRTFをイコライズしたものと前記遠方耳HRTFをイコライズしたものとの和として得られたことを特徴とする請求項25に記載の装置。
〔請求項27〕
前記イコライジングフィルターは、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの逆フィルターであることを特徴とする請求項26に記載の装置。
〔請求項28〕
前記イコライジングフィルターの応答は、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの応答を周波数領域に変換することにより決定されることを特徴とする請求項27に記載の装置。
〔請求項29〕
前記イコライジングフィルターの応答は、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの応答を反転させる適応フィルター法により決定されることを特徴とする請求項27に記載の装置。
〔請求項30〕
前記中央HRTFの2倍に近似するフィルターは、好ましい中央HRTFの2倍に実質的に等しい応答を持つフィルターであることを特徴とする請求項25に記載の装置。
〔請求項31〕
前記オーディオ入力信号には左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置とがリスナーに対して対称であり、リスナー及びリスニングは、近接HRTFが左バーチャルスピーカから左耳HRTFへと、右バーチャルスピーカから右耳HRTFへとなるような、そして、遠方HRTFが左バーチャルスピーカから右耳HRTFへ、右バーチャルスピーカから左耳HRTFへとなるような対称的なものとなることを特徴とする請求項25に記載の装置。
〔請求項32〕
前記オーディオ入力信号には左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置にあり、前記近接HRTFは、左バーチャルスピーカから左耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから右耳HRTFへのとの平均に比例し、前記遠方HRTFは、左バーチャルスピーカから右耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから左耳HRTFへのとの平均に比例することを特徴とする請求項25に記載の装置。
〔請求項33〕
前記オーディオ入力信号には、左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの前の左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする請求項25に記載の装置。
〔請求項34〕
前記左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置とは、45度と90度との間の大きさの方位角であることを特徴とする請求項33に記載の装置。
〔請求項35〕
前記オーディオ入力信号には、左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの後の左後方バーチャルスピーカ位置と右後方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする請求項25に記載の装置。
〔請求項36〕
前記オーディオ入力信号は、サラウンドサウンド再生のための3以上の入力信号のセットのサブセットであり、前記方法には、ヘッドフォン通して聞くために、前記入力信号の各々にバーチャルスピーカ位置を生成するステップを含む、3以上の入力信号のセットを処理するステップが含まれることを特徴とする請求項25に記載の装置。
〔請求項37〕
入力信号の各々をHRTFフィルター対によりフィルターするステップと
該HRTFフィルターされた信号を加算するステップと、
による結果に対応する1対の出力信号を生成する処理により、1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップを具備する方法であって、
前記HRTFフィルター対は、ヘッドフォンで1対の出力信号を聞いているリスナーが好ましい1対のバーチャルスピーカ位置からのサウンドを体験するようなフィルター対であり、
前記フィルターするステップは、前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれている場合、前記バーチャルスピーカ位置の間の中央位置にあるバーチャル音源からパンされた信号成分が生じているような感覚を1対の出力信号を聞いているリスナーにヘッドフォンを通して提供するようなステップである、
ことを特徴とする方法。
〔請求項38〕
前記HRTFフィルター対は、好ましいバーチャルスピーカ位置の1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーに対する近接耳HRTFと遠方耳HRTFとからなり、前記1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップは、
前記入力信号の和に比例する第1の信号(和信号)と前記入力信号の差に比例する第2の信号(差信号)とを作り出すために前記入力信号をシャッフルするステップと、
中央位置でバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFの2倍に近似するフィルターで前記和信号をフィルターするステップと、
前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの差に近似するフィルターを介して前記差信号をフィルターするステップと、
前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作り出すために、前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号とをシャッフル解除するステップと、
を具備することを特徴とする請求項37に記載の方法。
〔請求項39〕
前記中央HRTFの2倍に近似するフィルターは、好ましい中央HRTFの2倍に実質的に等しい応答を持つフィルターであることを特徴とする請求項38に記載の方法。
〔請求項40〕
前記HRTFフィルター対は、イコライズされた近接耳HRTFとイコライズされた遠方耳HRTFとからなり、前記イコライズされた近接耳HRTFと前記イコライズされた遠方耳HRTFとはそれぞれ、前記好ましいバーチャルスピーカ位置の1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーに対する近接耳HRTFと遠方耳HRTFとをイコライズすることにより得られ、前記イコライズは、前記イコライズされた近接耳HRTFと前記イコライズされた遠方耳HRTFとの平均が、中央位置でバーチャル音源を聞いているリスナーに対する好ましい中央HRTFであることを特徴とする請求項37に記載の方法。
〔請求項41〕
前記イコライジングフィルターは、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの平均に比例するフィルターの逆フィルターであることを特徴とする請求項40に記載の方法。
〔請求項42〕
前記1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップは、前記1対のオーディオ入力信号の和が、好ましい中央HRTFに実質的に等しいフィルター応答によりフィルターされるようになされることを特徴とする請求項37に記載の方法。
〔請求項43〕
前記オーディオ入力信号には左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置とがリスナーに対して対称であり、リスナー及びリスニングは、近接HRTFが左バーチャルスピーカから左耳HRTFへと、右バーチャルスピーカから右耳HRTFへとなるような、そして、遠方HRTFが左バーチャルスピーカから右耳HRTFへ、右バーチャルスピーカから左耳HRTFへとなるような対称的なものとなることを特徴とする請求項37に記載の方法。
〔請求項44〕
前記オーディオ入力信号には左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置にあり、前記近接HRTFは、左バーチャルスピーカから左耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから右耳HRTFへのとの平均に比例し、前記遠方HRTFは、左バーチャルスピーカから右耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから左耳HRTFへのとの平均に比例することを特徴とする請求項37に記載の方法。
〔請求項45〕
前記オーディオ入力信号には、左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの前の左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする請求項37に記載の方法。
〔請求項46〕
前記左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置とは、45度と90度との間の大きさの方位角であることを特徴とする請求項45に記載の方法。
〔請求項47〕
前記オーディオ入力信号には、左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの後の左後方バーチャルスピーカ位置と右後方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする請求項37に記載の方法。
〔請求項48〕
前記オーディオ入力信号は、サラウンドサウンド再生のための3以上の入力信号のセットのサブセットであり、前記方法には、ヘッドフォン通して聞くために、前記入力信号の各々にバーチャルスピーカ位置を生成するステップを含む、3以上の入力信号のセットを処理するステップが含まれることを特徴とする請求項37に記載の方法。
〔請求項49〕
オーディオ再生のために1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップであって、前記入力信号の各々をHRTFフィルター対によりフィルターするステップと、
前記HRTFフィルターされた信号を加算するステップと、
前記加算されたHRTFフィルターされた信号のクロストークを除去するステップと、
を具備する処理の結果得られたものに対応する1対の出力信号を生成する処理によりフィルターされることを特徴とするステップを具備する方法であって、
前記HRTFフィルター対は、1対の出力信号を聞いているリスナーが好ましいバーチャルスピーカ位置の1対のバーチャルスピーカからのサウンドを体験するようなフィルター対であり、
前記フィルターするステップは、前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれている場合、前記バーチャルスピーカ位置の間の中央位置にあるバーチャル音源からパンされた信号成分が生じているような感覚を1対の出力信号を聞いているリスナーに前記第1のスピーカセットの位置にある1対のスピーカを通して提供するようなステップである、
ことを特徴とする方法。
〔請求項50〕
前記HRTFフィルター対は、好ましいバーチャルスピーカ位置の1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーに対する近接耳HRTFと遠方耳HRTFとからなり、前記1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップは、
前記入力信号の和に比例する第1の信号(和信号)と前記入力信号の差に比例する第2の信号(差信号)とを作り出すために前記入力信号をシャッフルするステップと、
中央位置でバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFの2倍に近似するフィルターで前記和信号をフィルターするステップと、
前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの差に近似するフィルターを介して前記差信号をフィルターするステップと、
前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作り出すために、前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号とをシャッフル解除するステップと、
を具備することを特徴とする請求項49に記載の方法。
〔請求項51〕
前記中央HRTFの2倍に近似するフィルターは、好ましい中央HRTFの2倍に実質的に等しい応答を持つフィルターであることを特徴とする請求項50に記載の方法。
〔請求項52〕
前記HRTFフィルター対は、イコライズされた近接耳HRTFとイコライズされた遠方耳HRTFとからなり、前記イコライズされた近接耳HRTFと前記イコライズされた遠方耳HRTFとはそれぞれ、前記好ましいバーチャルスピーカ位置の1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーに対する近接耳HRTFと遠方耳HRTFとをイコライズすることにより得られ、前記イコライズは、前記イコライズされた近接耳HRTFと前記イコライズされた遠方耳HRTFとの平均が、中央位置でバーチャル音源を聞いているリスナーに対する好ましい中央HRTFであることを特徴とする請求項49に記載の方法。
〔請求項53〕
前記イコライジングフィルターは、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの平均に比例するフィルターの逆フィルターであることを特徴とする請求項52に記載の方法。
〔請求項54〕
前記1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップは、前記1対のオーディオ入力信号の和が、好ましい中央HRTFの2倍に実質的に等しいフィルター応答によりフィルターされるようになされることを特徴とする請求項49に記載の方法。
〔請求項55〕
前記オーディオ入力信号には左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置とがリスナーに対して対称であり、リスナー及びリスニングは、近接HRTFが左バーチャルスピーカから左耳HRTFへと、右バーチャルスピーカから右耳HRTFへとなるような、そして、遠方HRTFが左バーチャルスピーカから右耳HRTFへ、右バーチャルスピーカから左耳HRTFへとなるような対称的なものとなることを特徴とする請求項49に記載の方法。
〔請求項56〕
前記オーディオ入力信号には左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置にあり、前記近接HRTFは、左バーチャルスピーカから左耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから右耳HRTFへのとの平均に比例し、前記遠方HRTFは、左バーチャルスピーカから右耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから左耳HRTFへのとの平均に比例することを特徴とする請求項49に記載の方法。
〔請求項57〕
前記オーディオ入力信号には、左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの前の左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする請求項49に記載の方法。
〔請求項58〕
前記左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置とは、45度と90度との間の大きさの方位角であることを特徴とする請求項57に記載の方法。
〔請求項59〕
前記オーディオ入力信号には、左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの後の左後方バーチャルスピーカ位置と右後方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする請求項49に記載の方法。
〔請求項60〕
前記オーディオ入力信号は、サラウンドサウンド再生のための3以上の入力信号のセットのサブセットであり、前記方法には、ヘッドフォン通して聞くために、前記入力信号の各々にバーチャルスピーカ位置を生成するステップを含む、3以上の入力信号のセットを処理するステップが含まれることを特徴とする請求項49に記載の方法。
〔請求項61〕
イコライジングフィルターにより1対のオーディオ入力信号をイコライズするステップと、
第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置から生じたオーディオ入力信号に対応するサウンドであるかのような錯覚をヘッドフォンを通したバイノーラライズされた出力を聞いているリスナーに与えるような、1対のバイノーラライズされた出力を提供するHRTF対を用いて、前記イコライジングされた入力信号をバイノーラライズするステップと、
を具備し、
イコライジングとバイノーラライジングの組み合わせがイコライズされたHRTF対を用いてバイノーラライズすることと等価となるように、イコライズされたHRTF対の各イコライズされたHRTFは、イコライジングフィルターによりイコライズされた、イコライズされた信号をバイノーラライズするために対応するHRTFとなり、
イコライズされたHRTFの平均は、第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置との間の中央位置から生じるサウンドを聞いているリスナーにとって好ましいHRTFと実質的に等しく、
前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれている場合、ヘッドフォンを通してバイノーラライズされた出力を聞いているリスナーに、中央に位置するバーチャル音源からパンされた信号成分が生じているような感覚を与える、
ことを特徴とする方法。
〔請求項62〕
ヘッドフォンを通して処理された信号を聞いているリスナーに、第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置から生じたオーディオ入力信号にほぼ対応するサウンドのような錯覚を起こさせるように、1対のオーディオ入力信号を処理する1組のHRTFフィルターのための、フィルターデータを伝達する伝達媒体であって、該HRTFフィルターは、HRTFフィルターの平均が第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置との中央位置からサウンドを聞いているリスナーのHRTF応答に近似するように設計されていることを特徴とする、伝達媒体。
〔請求項63〕
ヘッドフォンを通して処理された信号を聞いているリスナーに、1対のオーディオ入力信号の各々の間でパンされた信号成分が、第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置との中央位置から生じたパンされた信号成分であるかのような錯覚を起こさせような、第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置から生じたオーディオ入力信号に対応するサウンドのような錯覚をヘッドフォンを通して処理された信号を聞いているリスナーに起こさせるように、1対のオーディオ入力信号を処理することを特徴とする1組のHRTFフィルターのフィルターデータを伝達する伝達媒体。
〔請求項64〕
オーディオの再生のための1対のオーディオ入力信号を受け入れるステップと、
前記入力信号の和に比例する第1の信号(和信号)と前記入力信号の差に比例する第2の信号(差信号)とを作り出すために前記入力信号をシャッフルするステップと、
近接耳HRTFをイコライズしたものと遠方耳HRTFをイコライズしたものとの和に近似するフィルターにより前記和信号をフィルターするステップであって、該近接耳HRTFと該遠方耳HRTFは、対応するバーチャルスピーカ位置で1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーのためのものであり、該イコライズしたものは、前記イコライズした近接耳HRTFと前記イコライズした遠方耳HRTFとを平均したものが、バーチャルスピーカ位置の中央位置でバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFに近似するように設計したイコライゼーションフィルターを用いて得られることを特徴とするステップと、
前記1対のバーチャルスピーカを聞いている前記リスナーの、前記近接耳HRTFをイコライズしたものと前記遠方耳HRTFをイコライズしたものとの差に近似するフィルターにより前記差信号をフィルターするスッテップと、
前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作り出すために、前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号とをシャッフル解除するステップと、
を具備し、
前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれる場合、ヘッドフォンを通して前記第1の出力信号と前記第2の出力信号とを聞いているリスナーに、前記パンされた信号成分が前記中央位置でバーチャル音源から生じているような感覚を与えることを特徴とする方法。
【0112】
いくつかの態様を記載しておく。
〔態様1〕
オーディオの再生のための1対のオーディオ入力信号であって、該1対のオーディオ入力信号には、左入力信号と右入力信号とが含まれることを特徴とする、1対のオーディオ入力信号を受け入れるステップと、
前記入力信号の和に比例する第1の信号(和信号)と前記入力信号の差に比例する第2の信号(差信号)とを作り出すために前記入力信号をシャッフルするステップと、
中央位置にあるバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFの2倍に近似するフィルターで前記和信号をフィルターするステップと、
1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーの近接耳HRTFと遠方耳HRTFとの差に近似するフィルターで前記差信号をフィルターするステップと、
前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作り出すために、前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号とをシャッフル解除するステップと、
を具備し、 前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれる場合、ヘッドフォンを通して前記第1の出力信号と前記第2の出力信号とを聞いているリスナーに、前記パンされた信号成分が前記中央位置にあるバーチャル音源から生じているような感覚を与えることを特徴とする、
方法。
〔態様2〕
前記中央HRTFの2倍に近似するフィルターは、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとをそれぞれイコライジングフィルターによりフィルターすることにより得られた、前記近接耳HRTFをイコライズしたものと前記遠方耳HRTFをイコライズしたものとの和として得られたことを特徴とする態様1に記載の方法。
〔態様3〕
1対のオーディオ入力信号をシャッフルする手段であって、該シャッフルする手段は、前記入力信号の和に比例する第1の信号(和信号)と前記入力信号の差に比例する第2の信号(差信号)とを生成し、該オーディオ入力信号には、左入力信号と右入力信号とが含まれることを特徴とする、1対のオーディオ入力信号をシャッフルする手段と、
中央位置にあるバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFの2倍に近似するフィルターで前記和信号をフィルターする手段であって、該和信号をフィルターする手段は、前記シャッフルする手段と結合していることを特徴とする和信号をフィルターする手段と、
1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーの近接耳HRTFと遠方耳HRTFとの差に近似するフィルターで前記差信号をフィルターする手段であって、該差信号をフィルターする手段は、前記シャッフルする手段と結合していることを特徴とする差信号をフィルターする手段と、
前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号とをシャッフル解除する手段であって、該シャッフル解除する手段は前記シャッフルする手段と結合しており、該シャッフル解除する手段は、前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作り出すことを特徴とするシャッフル解除する手段と、
を具備し、
前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれる場合、ヘッドフォンを通して前記第1の出力信号と前記第2の出力信号とを聞いているリスナーに、前記パンされた信号成分が前記中央位置にあるバーチャル音源から生じているような感覚を与えることを特徴とする、
装置。
〔態様4〕
前記中央HRTFの2倍に近似するフィルターは、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとをそれぞれイコライジングフィルターによりフィルターすることにより得られた、前記近接耳HRTFをイコライズしたものと前記遠方耳HRTFをイコライズしたものとの和として得られたことを特徴とする態様3に記載の装置。
〔態様5〕
前記イコライジングフィルターは、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの逆フィルターであることを特徴とする態様4に記載の装置。
〔態様6〕
前記イコライジングフィルターの応答は、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの応答を周波数領域に変換することにより決定されることを特徴とする態様5に記載の装置。
〔態様7〕
前記イコライジングフィルターの応答は、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの応答を反転させる適応フィルター法により決定されることを特徴とする態様5に記載の装置。
〔態様8〕
前記中央HRTFの2倍に近似するフィルターは、所望の中央HRTFの2倍に実質的に等しい応答を持つフィルターであることを特徴とする態様3に記載の装置。
〔態様9〕
前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置とがリスナーに対して対称であり、リスナー及びリスニングは、近接HRTFが左バーチャルスピーカから左耳へのHRTFおよび右バーチャルスピーカから右耳へのHRTFとなるような、そして、遠方HRTFが左バーチャルスピーカから右耳へのHRTFおよび右バーチャルスピーカから左耳へのHRTFとなるような対称的なものとなることを特徴とする態様3に記載の装置。
〔態様10〕
前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置にあり、前記近接HRTFは、左バーチャルスピーカから左耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから右耳HRTFへのとの平均に比例し、前記遠方HRTFは、左バーチャルスピーカから右耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから左耳HRTFへのとの平均に比例することを特徴とする態様3に記載の装置。
〔態様11〕
前記オーディオ入力信号には、左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの前の左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする態様3に記載の装置。
〔態様12〕
前記左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置とは、45度と90度との間の大きさの方位角であることを特徴とする態様11に記載の装置。
〔態様13〕
前記オーディオ入力信号には、左入力と右入力とが含まれ、前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの後の左後方バーチャルスピーカ位置と右後方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする態様3に記載の装置。
〔態様14〕
前記オーディオ入力信号は、サラウンドサウンド再生のための3以上の入力信号のセットのサブセットであり、前記方法には、ヘッドフォン通して聞くために、前記入力信号の各々にバーチャルスピーカ位置を生成するステップを含む、3以上の入力信号のセットを処理するステップが含まれることを特徴とする態様3に記載の装置。
〔態様15〕
入力信号の各々をHRTFフィルター対によりフィルターするステップと
該HRTFフィルターされた信号を加算するステップと、
による結果に対応する1対の出力信号を生成する処理により、1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップを具備する方法であって、
前記HRTFフィルター対は、ヘッドフォンで1対の出力信号を聞いているリスナーが所望の1対のバーチャルスピーカ位置からのサウンドを体験するようなフィルター対であり、
前記フィルターするステップは、前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれている場合、前記バーチャルスピーカ位置の間の中央位置にあるバーチャル音源からパンされた信号成分が生じているような感覚を1対の出力信号を聞いているリスナーにヘッドフォンを通して提供するようなステップであり、
前記オーディオ入力信号には左入力信号と右入力信号とが含まれ、前記HRTFフィルター対には所望のバーチャルスピーカ位置の1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーに対する近接耳HRTFと遠方耳HRTFとが含まれ、前記1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップは、
前記入力信号の和に比例する第1の信号(和信号)と前記入力信号の差に比例する第2の信号(差信号)とを作り出すために前記入力信号をシャッフルするステップと、
中央位置にあるバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFの2倍に近似するフィルターで前記和信号をフィルターするステップと、
前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの差に近似するフィルターで前記差信号をフィルターするステップと、
前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作り出すために、前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号とをシャッフル解除するステップと、
を具備する、
ことを特徴とする方法。
〔態様16〕
オーディオ再生のために1対のオーディオ入力信号であって、該1対のオーディオ入力信号には、左入力信号と右入力信号とが含まれることを特徴とする、1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップであって、
前記入力信号の各々をHRTFフィルター対によりフィルターするステップと、
前記HRTFフィルターされた信号を加算するステップと、
前記加算されたHRTFフィルターされた信号のクロストークを除去するステップであって、該クロストークを除去するステップは、第1の組のスピーカ位置にあるスピーカを通して1対の出力信号を聞いているリスナーのためのものであることを特徴とする、クロストークを除去するステップと、
を具備する処理の結果得られたものに対応する1対の出力信号を生成する処理によりフィルターすることを特徴とするフィルターするステップを含む方法であって、
前記HRTFフィルター対は、1対の出力信号を聞いているリスナーが所望のバーチャルスピーカ位置の1対のバーチャルスピーカからのサウンドを体験するようなフィルター対であり、
前記フィルターするステップは、前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれている場合、前記所望のバーチャルスピーカ位置の間の中央位置にあるバーチャル音源から前記パンされた信号成分が生じているような感覚を、前記第1の組のスピーカ位置にある1対のスピーカを通して1対の出力信号を聞いているリスナーに提供するようなステップであり、
前記HRTFフィルター対には所望のバーチャルスピーカ位置の1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーに対する近接耳HRTFと遠方耳HRTFとが含まれ、前記1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップは、
前記入力信号の和に比例する第1の信号(和信号)と前記入力信号の差に比例する第2の信号(差信号)とを作り出すために前記入力信号をシャッフルするステップと、
中央位置にあるバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFの2倍に近似するフィルターで前記和信号をフィルターするステップと、
前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの差に近似するフィルターで前記差信号をフィルターするステップと、
前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作り出すために、前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号とをシャッフル解除するステップと、
を具備する、
ことを特徴とする方法。
〔態様17〕
前記HRTFフィルター対には、イコライズされた近接耳HRTFとイコライズされた遠方耳HRTFとが含まれ、前記イコライズされた近接耳HRTFと前記イコライズされた遠方耳HRTFとはそれぞれ、前記所望のバーチャルスピーカ位置の1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーに対する近接耳HRTFと遠方耳HRTFとをイコライズすることにより得られ、前記イコライズは、前記イコライズされた近接耳HRTFと前記イコライズされた遠方耳HRTFとの和又は平均が、中央位置にあるバーチャル音源を聞いているリスナーに対する所望の中央HRTFに比例することを特徴とする態様15又は態様16に記載の方法。
〔態様18〕
前記イコライジングフィルターは、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの平均に比例するフィルターの逆フィルターであることを特徴とする態様2又は態様17に記載の方法。
〔態様19〕
前記1対のオーディオ入力信号をフィルターするステップは、前記1対のオーディオ入力信号の和が、所望の中央HRTFの2倍に実質的に等しいフィルター応答によりフィルターされるようになされることを特徴とする態様15又は態様16に記載の方法。
〔態様20〕
前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置とがリスナーに対して対称であり、
リスナー及びリスニングは、近接HRTFが左バーチャルスピーカから左耳へのHRTFおよび右バーチャルスピーカから右耳へのHRTFとなるような、そして、遠方HRTFが左バーチャルスピーカから右耳へのHRTFおよび右バーチャルスピーカから左耳へのHRTFとなるような対称的なものとなることを特徴とする態様1、態様15、又は態様16のいずれか1項に記載の方法。
〔態様21〕
前記1対のバーチャルスピーカは、左バーチャルスピーカ位置と右バーチャルスピーカ位置にあり、
前記近接HRTFは、左バーチャルスピーカから左耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから右耳HRTFへのとの平均に比例し、
前記遠方HRTFは、左バーチャルスピーカから右耳HRTFへのと右バーチャルスピーカから左耳HRTFへのとの平均に比例することを特徴とする態様1、態様15、又は態様16のいずれか1項に記載の方法。
〔態様22〕
前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの前の左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする態様1、態様15、又は態様16のいずれか1項に記載の方法。
〔態様23〕
前記左前方バーチャルスピーカ位置と右前方バーチャルスピーカ位置とは、45度と90度との間の大きさの方位角であることを特徴とする態様22に記載の方法。
〔態様24〕
前記1対のバーチャルスピーカは、リスナーの後の左後方バーチャルスピーカ位置と右後方バーチャルスピーカ位置にあることを特徴とする態様1、態様15、又は態様16のいずれか1項に記載の方法。
〔態様25〕
前記オーディオ入力信号は、サラウンドサウンド再生のための3以上の入力信号のセットのサブセットであり、前記方法には、ヘッドフォン通して聞くために、前記入力信号の各々にバーチャルスピーカ位置を生成するステップを含む、3以上の入力信号のセットを処理するステップが含まれることを特徴とする態様1、態様15、又は態様16のいずれか1項に記載の方法。
〔態様26〕
イコライジングフィルターにより1対のオーディオ入力信号をイコライズするステップと、
第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置から生じたオーディオ入力信号に対応するサウンドであるかのような錯覚をヘッドフォンを通したバイノーラライズされた出力を聞いているリスナーに与えるような、1対のバイノーラライズされた出力を提供するHRTF対を用いて、前記イコライジングされた入力信号をバイノーラライズするステップと、
を具備し、
イコライジングとバイノーラライジングの組み合わせがイコライズされたHRTF対を用いてバイノーラライズすることと等価となるように、イコライズされたHRTF対の各イコライズされたHRTFは、イコライジングフィルターによりイコライズされた、イコライズされた信号をバイノーラライズするために対応するHRTFとなり、
イコライズされたHRTFの平均は、第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置との間の中央位置から生じるサウンドを聞いているリスナーにとって所望のHRTFと実質的に等しく、
前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれている場合、ヘッドフォンを通してバイノーラライズされた出力を聞いているリスナーに、中央に位置するバーチャル音源からパンされた信号成分が生じているような感覚を与える、
ことを特徴とする方法。
〔態様27〕
1以上のプロセッサと、命令及び1組のHRTFフィルターのフィルターデータを記憶するコンピュータ読取可能な媒体とを具備する処理システムであって、
該処理システムが該命令を実行したとき、1対のオーディオ入力信号を処理する該1組のHRTFフィルターを適用して、ヘッドフォンを通して処理された信号を聞いているリスナーに、第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置から生じたオーディオ入力信号にほぼ対応するサウンドのような錯覚を起こさせ、
該HRTFフィルターは、HRTFフィルターの平均が第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置との中央位置からサウンドを聞いているリスナーのHRTF応答に近似するように設計されていることを特徴とする、
処理システム。
〔態様28〕
1以上のプロセッサと、命令及び1組のHRTFフィルターのフィルターデータを記憶するコンピュータ読取可能な媒体とを具備する処理システムであって、
該処理システムが該命令を実行したとき、1対のオーディオ入力信号を処理する該1組のHRTFフィルターを適用して、ヘッドフォンを通して処理された信号を聞いているリスナーに、第1のバーチャルスピーカ位置と第2のバーチャルスピーカ位置から生じたオーディオ入力信号にほぼ対応するサウンドのような錯覚を起こさせ、
1対のオーディオ入力信号の各々の間でパンされた信号成分が、処理された信号をヘッドフォンを通して聞いているリスナーに、該パンされた信号成分が、前記第1のバーチャルスピーカ位置と前記第2のバーチャルスピーカ位置との中央位置から聞こえるような錯覚を起こさせるようにすることを特徴とする、
処理システム。
〔態様29〕
オーディオの再生のための1対のオーディオ入力信号を受け入れるステップと、
前記入力信号の和に比例する第1の信号(和信号)と前記入力信号の差に比例する第2の信号(差信号)とを作り出すために前記入力信号をシャッフルするステップと、
近接耳HRTFをイコライズしたものと遠方耳HRTFをイコライズしたものとの和に近似するフィルターにより前記和信号をフィルターするステップであって、該近接耳HRTFと該遠方耳HRTFは、対応するバーチャルスピーカ位置で1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーのためのものであり、該イコライズしたものは、前記イコライズした近接耳HRTFと前記イコライズした遠方耳HRTFとを平均したものが、バーチャルスピーカ位置の中央位置にあるバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFに近似するように設計したイコライゼーションフィルターを用いて得られることを特徴とするステップと、
前記1対のバーチャルスピーカを聞いている前記リスナーの、前記近接耳HRTFをイコライズしたものと前記遠方耳HRTFをイコライズしたものとの差に近似するフィルターにより前記差信号をフィルターするステップと、
前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作り出すために、前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号とをシャッフル解除するステップと、
を具備し、
前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれる場合、ヘッドフォンを通して前記第1の出力信号と前記第2の出力信号とを聞いているリスナーに、前記パンされた信号成分が前記中央位置にあるバーチャル音源から生じているような感覚を与えることを特徴とする方法。
〔態様30〕
前記イコライジングフィルターの応答は、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの応答を周波数領域に変換することにより決定されることを特徴とする態様18に記載の方法。
〔態様31〕
前記イコライジングフィルターの応答は、前記近接耳HRTFと前記遠方耳HRTFとの和に比例するフィルターの応答を反転させる適応フィルター法により決定されることを特徴とする態様18に記載の方法。
〔態様32〕
態様1、態様2、態様15、態様16乃至態様26、態様29乃至態様31のいずれか1項に記載の方法を実行させる処理システムの少なくとも1つのプロセッサにより実行されるプログラムコード。
〔態様33〕
態様1、態様2、態様15、態様16乃至態様26、態様29乃至態様31のいずれか1項に記載の方法を実行させる処理システムの少なくとも1つのプロセッサにより実行される命令を具備するコンピュータ読取可能な媒体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオの再生のための1対のオーディオ入力信号を受け入れるステップと、
前記入力信号の和に比例する第1の信号(和信号)と前記入力信号の差に比例する第2の信号(差信号)とを作り出すために前記入力信号をシャッフルするステップと、
中央位置にあるバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFの2倍に近似するフィルターで前記和信号をフィルターするステップと、
1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーの近接耳HRTFと遠方耳HRTFとの差に近似するフィルターで前記差信号をフィルターするステップと、
前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作り出すために、前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号とをシャッフル解除するステップと、
を具備し、
前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれる場合、ヘッドフォンを通して前記第1の出力信号と前記第2の出力信号とを聞いているリスナーに、前記パンされた信号成分が前記中央位置にあるバーチャル音源から生じているような感覚を与えることを特徴とする、
方法。
【請求項1】
オーディオの再生のための1対のオーディオ入力信号を受け入れるステップと、
前記入力信号の和に比例する第1の信号(和信号)と前記入力信号の差に比例する第2の信号(差信号)とを作り出すために前記入力信号をシャッフルするステップと、
中央位置にあるバーチャル音源を聞いているリスナーの中央HRTFの2倍に近似するフィルターで前記和信号をフィルターするステップと、
1対のバーチャルスピーカを聞いているリスナーの近接耳HRTFと遠方耳HRTFとの差に近似するフィルターで前記差信号をフィルターするステップと、
前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との和に比例する第1の出力信号と前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号との差に比例する第2の出力信号とを作り出すために、前記フィルターされた和信号と前記フィルターされた差信号とをシャッフル解除するステップと、
を具備し、
前記1対のオーディオ入力信号にパンされた信号成分が含まれる場合、ヘッドフォンを通して前記第1の出力信号と前記第2の出力信号とを聞いているリスナーに、前記パンされた信号成分が前記中央位置にあるバーチャル音源から生じているような感覚を与えることを特徴とする、
方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【公開番号】特開2012−120219(P2012−120219A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−9561(P2012−9561)
【出願日】平成24年1月20日(2012.1.20)
【分割の表示】特願2007−535948(P2007−535948)の分割
【原出願日】平成17年10月10日(2005.10.10)
【出願人】(507236292)ドルビー ラボラトリーズ ライセンシング コーポレイション (82)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月20日(2012.1.20)
【分割の表示】特願2007−535948(P2007−535948)の分割
【原出願日】平成17年10月10日(2005.10.10)
【出願人】(507236292)ドルビー ラボラトリーズ ライセンシング コーポレイション (82)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]