説明

パン類及びその製造法

【課題】比容積が大きく、添加粉末由来の異味異臭が無く、ふんわりした食感でサンドイッチなどに使用した際のコストダウンにつながる高比容積パン類の製造方法を提供すること。
【解決手段】パン類の製造に際し、冷水膨潤度9.0〜16のα化架橋澱粉を小麦粉を主原料とする原料穀粉に配合することにより、製品比容積が5.0以上であるふんわりした食感で高比容積のパン類を製造する。この製造方法により、使用した際のコストダウンにつながる高比容積のパン類を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は比容積が大きく、ふんわりした軽い食感の高比容積を有するパン類の製造方法に関する。特に、膨潤度9.0〜16のα化架橋澱粉を用いた、製品比容積が5.0以上である高比容積パン類の製造方法及び該製造方法によって製造された高比容積パン類に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パン類において、かつての硬く重い食感のものから、ふんわりした軽い食感の製品が望まれている。また原料価格が上昇するのに伴い、原材料費を抑えることが要求されている。これらの要求に応える手段として比容積の高いパンを製造することが考えられている。
【0003】
従来、比容積の高いパンを得る方法として、醸造醤油又は粉末醤油を添加する方法(特公昭64−11258号公報)が開示されている。この方法では、比容積の大きなパンを得ることができるが、醤油特有の香りと色が製品パンに付着する欠点を有する。また、アミノ酸液粉末を用いる方法も提案されているが、この方法も同様な欠点を有する。
【0004】
更に、パン生地にジェランガムを含有させる方法(特開昭63−248333号公報)、パン生地にフィターゼを含有させる方法(特開平3−76529号公報)、小麦グルテンの酵素分解調味液の乾燥粉末化物を含有させる方法(特開2001−231434号公報)が開示されているが、ふんわりした食感が得られなかったり、比容積の増大が充分でないなどの問題があった。
【0005】
一方、近年、食品全般に亘ってソフト化の傾向にあり、ベーカリー食品に於いてもモチ食感(モチ性食感)、ソフトな食感、或いは、しっとりした食感を有する製品が望まれている傾向があり、これらの傾向に対応する技術として、各種の方法が開示されている。例えば、ベーカリー食品の製造に際し、製造原料として、加工澱粉を配合する方法として、特許第2989039号公報には、冷水膨潤度が4〜15であるように調製された架橋加工澱粉を、すなわち加熱溶解度が8%以下であって、60メッシュの篩いを通過しない区分が5%以下の粒子状を有し、冷水膨潤度(Sc)と加熱膨潤度(Sh)の比が1.2≧Sc/Sh≧0.8の関係にあり、且つ冷水膨潤度が4〜15である架橋加工澱粉を配合する方法が開示されている。この方法によれば、経時的品質劣化を抑制し、且つ、ソフトな食感、しっとりした食感が改善されたベーカリー食品を製造することが可能であることが示されている。
【0006】
また、特開平4−91744号公報には、膨潤度4.0〜35のα化架橋澱粉を小麦粉原料に添加するパン類の製造法が、特開平10−295253号公報には、小麦粉、ヒドロキシプロピル化澱粉及び/又はアセチル化澱粉と共に、冷水膨潤度5〜25のα化澱粉を用いるパン類の製造方法が、特開平11−9174号公報には、小麦粉原料に、膨潤度が3〜15であり、かつ、溶解度が15%以下である架橋澱粉を配合した食パン類の製造方法が開示されている。これら開示のものは、いずれもモチモチしたソフトな食感、口溶け、歯切れの良さ、及び経時変化の改善されたパン類を製造するためのもので、高比容積のふんわりした軽い食感のパン類を製造することを目的とするパン類の製造方法を提供しているものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−248333号公報
【特許文献2】特公昭64−11258号公報
【特許文献3】特開平3−76529号公報
【特許文献4】特開平4−91744号公報
【特許文献5】特開平10−295253号公報
【特許文献6】特開平11−9174号公報
【特許文献7】特開2001−231434号公報
【特許文献8】特許第2989039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、比容積が大きく、添加粉末由来の異味異臭が無く、ふんわりした食感でサンドイッチなどに使用した際のコストダウンにつながる高比容積パン類の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決すべく高比容積のパンを製造する方法について鋭意検討する中で、パン類の製造に際し、小麦粉原料に膨潤度9.0〜16のα化架橋澱粉を配合することにより、製品比容積が5.0以上の高比容積パン類を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、高比容積のパンを製造する方法について鋭意検討する中で、パン類の製造に際し、冷水膨潤度9.0〜16のα化架橋澱粉を小麦粉を主原料とする原料穀粉に対し、1〜10%添加することにより、ふんわりした食感で高比容積のパン類を製造することができ、この製造方法により、使用した際のコストダウンにつながる高比容積のパン類を製造することができる。
【0010】
本発明の製造方法によって製造される高比容積パン類は、製品の水分が35重量%〜40重量%の時に製品比容積が5.0以上であるパンの比容積を有する。また、製品の水分が35重量%以下の場合、又は、40重量%以上の場合は、以下の計算式を用いて、製品の水分が35重量%以下の場合は、水分を35重量%に換算し、或いは、製品の水分が40重量%以上の場合は、水分を40重量%に換算し、比容積とする。
【0011】
[計算式]
製品の水分をA重量%とし、その時の容積をYml,重量をXgとすると、
[水分Aが35重量%以下では]
:比容積=Y/(1.54×X)×100/(100−A)
[水分Aが40重量%以上では]
:比容積=Y/(1.66×X)×100/(100−A)
【0012】
本発明の高比容積パンの製造方法において用いるα化架橋澱粉は、澱粉に架橋剤を作用させて架橋反応を行い、得られた架橋澱粉をα化して、膨潤度9.0〜16のα化架橋澱粉に調製したものを用いることができる。また、本発明の高比容積パンの製造方法において用いるα化架橋澱粉として、澱粉に架橋剤とともに、エステル化剤或いはエーテル化剤を作用させて架橋反応とエステル化或いはヒドロキシプロピル化反応を併用して、調製した加工澱粉をさらにα化して膨潤度9.0〜16に調製したα化エステル化架橋澱粉或いはα化ヒドロキシプロピル化架橋澱粉を用いることができる。
【0013】
本発明の高比容積パンの製造方法において、小麦原料に配合する膨潤度9.0〜16のα化架橋澱粉は、小麦粉を主原料としたパンの製造原料穀粉に対し、1〜10重量%の範囲で配合することが好ましい。本発明の高比容積パンの製造方法によって、製品比容積が5.0以上であるふんわりした食感で高比容積のパン類を製造することができる。
【0014】
すなわち具体的には本発明は、(1)パン類の製造に際し、小麦粉原料に膨潤度9.0〜16のα化架橋澱粉を配合することを特徴とする高比容積パン類の製造方法や、(2)パンの比容積が、製品の水分が35重量%〜40重量%の時に製品比容積が5.0以上であることを特徴とする上記(1)記載の高比容積パン類の製造方法や、(3)α化架橋澱粉が、澱粉に架橋剤を作用させて架橋反応を行い、得られた架橋澱粉をα化して、膨潤度9.0〜16のα化架橋澱粉に調製したものであることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の高比容積パン類の製造方法からなる。
【0015】
また本発明は、(4)α化架橋澱粉が、澱粉に架橋剤とともに、エステル化剤或いはエーテル化剤を作用させて架橋反応とエステル化或いはヒドロキシプロピル化反応を併用して、調製した加工澱粉をさらにα化して膨潤度9.0〜16に調製したα化エステル化架橋澱粉或いはα化ヒドロキシプロピル化架橋澱粉であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の高比容積パン類の製造方法や、(5)膨潤度9.0〜16のα化架橋澱粉を、小麦粉を主原料としたパンの製造原料穀粉に対し、1〜10重量%の範囲で配合することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか記載の高比容積パン類の製造方法や、(6)生地の比容積が、4.5以上の食パンであることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか記載の高比容積パン類の製造方法や、(7)上記(1)〜(6)のいずれか記載の高比容積パンの製造方法によって製造された製品比容積が5.0以上であることを特徴とする高比容積パン類からなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、製品比容積が5.0以上であるふんわりした食感で高比容積のパン類、及びその製造方法を提供する。そして、本発明の高比容積のパン類の製造方法により、使用した際のコストダウンにつながる高比容積のパン類を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を実施するための形態について説明する。以下の記載において、特に明記しない限り%は重量%を意味する。
【0018】
本発明は、パン類の製造に際し、小麦粉原料に膨潤度9.0〜16のα化架橋澱粉を配合することにより、製品比容積が5.0以上であるふんわりした食感の高比容積パン類を製造することからなる。本発明でいうパン類は小麦粉を主原料とする食パン、ロールパン、フランスパン、ブリオッシュ、蒸しパンをはじめ、あんパン、クリームパンなどの菓子パン類、中華饅頭、イーストドーナツ、ピザなどをいい、この場合原料の一部として小麦粉以外の穀粉、例えば米粉、コーンフラワー、そば粉、ライ麦粉などを使用する場合も包含される。また食パンはそれを粉砕してできるパン粉に使用した場合にも食感の良いものが得られ、スライスして具材をサンドしてサンドイッチにした場合も食感がよく、使用した際のコストダウンにつながる高比容積のパン類を製造することができる。
【0019】
本発明に用いられるα化架橋澱粉は冷水膨潤度が9.0〜16、好ましくは11〜15のα化架橋澱粉である。膨潤度が9.0より低い場合や16より高い場合は何れも本発明のような比容積の大きいパンは得られない。かかるα化架橋澱粉は澱粉をあらかじめ架橋した架橋澱粉をα化することによって製造される。架橋澱粉は澱粉に架橋剤のみを作用させて得られるものであっても良いが、エステル化又はヒドロキシプロピル化と架橋反応とを行ったエステル化架橋澱粉やヒドロキシプロピル化架橋澱粉であっても良い。
【0020】
このような架橋澱粉は常法に従って澱粉に架橋剤のみを反応させるか、あるいは架橋剤とエステル化剤又はエーテル化剤を反応させて得られる。この際の架橋剤としては、トリメタリン酸ナトリウム、オキシ塩化リンが例示され、更にエステル化剤として無水酢酸を用いる場合にはアジピン酸をしようすることも出来る。
エステル化架橋澱粉に用いられるエステル化剤としては、無水酢酸、酢酸ビニル、無水オクテニルコハク酸、オルトリン酸、オルトリン酸カリウム、オルトリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウムが例示され、好ましくは無水酢酸と酢酸ビニルである。またヒドロキシプロピル化架橋澱粉に用いられるエーテル化剤としては、プロピレンオキシドが例示される。このようにして得られた架橋澱粉をα化してα化架橋澱粉を得る。α化は常法に従ってドラムドライヤーまたはエクストルーダーなどで処理することにより行われる。
【0021】
架橋澱粉の架橋の程度は最終的にα化した後のα化架橋澱粉として膨潤度が9.0〜16、好ましくは11〜15になるように行う。膨潤度は支配的に架橋の程度によるが、その他に用いる澱粉の種類、エステル化度、エーテル化度、α化の条件などによっても違ってくる。何れにしてもこれらの要因を加味してα化架橋澱粉としたものの膨潤度が上述の範囲になるように架橋すればよい。
【0022】
ここで、本発明でα化架橋澱粉の指標として用いる冷水膨潤度は次の方法に従って測定される:α化架橋澱粉試料約1gを水100mlに分散せしめ、30分間30℃の恒温槽の中で攪拌して膨潤させた後、遠心分離(3000rpm、10分間)し、ゲル層と上澄層に分ける。次いでゲル層の重量を測定し、これをAとする。次に重量測定したゲル層を乾固(105℃、恒量)して重量を測定し、これをBとし、A/Bの値で冷水膨潤度を表す。
【0023】
本発明で用いられるα化架橋澱粉を製造するのに使用する原料澱粉としては馬鈴薯澱粉、ワキシー馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、サゴ澱粉、小麦澱粉、ワキシー小麦澱粉、米澱粉、もち米澱粉、豆澱粉などの天然澱粉又はこれらを漂白処理したものなどが挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることが出来るが、特に好ましい澱粉として馬鈴薯澱粉が挙げられる。漂白処理としては通常の方法でよく、漂白処理剤としては通常使われる次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素などを用い、処理の程度としては例えば次亜塩素酸ナトリウムを用いる場合有効塩素として約500〜2000ppm添加して常法に従って処理する方法などが挙げられる。
【0024】
パンの製造法は各種あり、製品の種類も多種多様であるが、その基本工程は混捏、発酵、焼成(蒸し、油調を含む)の工程からなり、目的とするパン類を製造するのに適した小麦粉の選定から、焼成にいたる各段階で行う処理は小麦粉グルテンのガス保持力を高度に保つことが主眼となっていて、それによる生地膨張が充分であることがパン類製造の基本とされ、各工程の条件もこの基本的用件を満たすように設定されている。
【0025】
本発明も基本的には従来の製造工程、製造条件を踏襲でき、これらの工程に従ってパン類を製造するに際して、膨潤度9.0〜16のα化架橋澱粉を原料穀粉に対し、1〜15%、好ましくは1〜10%添加することにより、本発明の目的が達せられる。その際α化架橋澱粉は保水性が小麦粉より高く、生地の好ましい状態からして、加水量を従来より1〜25%多くする必要がある。一般的に加水量を多くすると、パン生地が製造作業効率の低下を引き起こすが、本発明ではかかる支障は見られない。α化架橋澱粉の添加方式としては、(1)原料穀粉にあらかじめ添加、混合しておく、(2)混練機に原料穀粉と一緒に仕込む、(3)混捏中に添加する、が挙げられるが、本発明で用いるα化架橋澱粉は粉末で形状が小麦粉類に類似しているので、上記何れの添加方法も容易に行うことが出来る。
【0026】
上記のパン生地には、上記の各成分以外に、通常のパン類の生地に使用可能な成分を特に限定せず使用することができる。例えば、水、全卵・卵黄・卵白・乾燥卵白・乾燥卵黄・乾燥全卵・加糖卵黄などの卵類、イースト、甘味料、上記α化架橋澱粉以外の澱粉や、加工澱粉、増粘安定剤、着色料、酸化防止剤、デキストリン、カゼイン・ホエー・クリーム・脱脂粉乳・発酵乳・牛乳・全粉乳・ヨーグルト・練乳・全脂練乳・脱脂練乳・濃縮乳などの乳や乳製品、ナチュラルチーズ・プロセスチーズ・ゴーダチーズ・チェダーチーズなどのチーズ類、アルコール類、グリセリン脂肪酸エステル・グリセリン酢酸脂肪酸エステル・グリセリン乳酸脂肪酸エステル・グリセリンコハク酸脂肪酸エステル・グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル・ソルビタン脂肪酸エステル・ショ糖脂肪酸エステル・ショ糖酢酸イソ酪酸エステル・ポリグリセリン脂肪酸エステル・ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル・プロピレングリコールエステル・ステアロイル乳酸カルシウム・ステアロイル乳酸ナトリウム・ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド・卵黄レシチン・大豆レシチンなどの乳化剤、膨張剤、無機塩類、食塩、ベーキングパウダー、イーストフード、生地改良剤、チョコチップなどのカカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、ハーブ、豆類、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、保存料、苦味料、酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤、果実、調味料、香辛料、香料、野菜類・肉類・魚介類などの食品素材、コンソメ・ブイヨンなどの植物及び動物エキス、食品添加物などが挙げられる。これらの成分は、本発明の目的を損なわない限り、任意に使用することが出来る。また、難消化性デキストリンや難消化性澱粉を併用することにより、さらに機能性を持たせたパンを作ることができる。その場合の添加量は、場合によってかわるが、おおむね5%〜70%である。
【0027】
以下に実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限を受けるものではない。
【実施例】
【0028】
[実施例1〜4;比較例1〜4]
以下に本発明の実施例1〜4を示す。本発明の実施例1〜4及び比較例1〜4について、使用されるα化架橋澱粉の冷水膨潤度を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
このような冷水膨潤度の試料を得るために、試料1〜6について以下のような反応を行った。硫酸ナトリウム20部を溶解した水120部に原料となる澱粉100部を加えてスラリーとし、攪拌下苛性ソーダ、プロピレンオキサイド、トリメタリン酸ソーダを適宜加え、41℃で20時間反応した後、硫酸で中和、水洗した。次いで、ドラムドライヤーでα化後粉砕して試料1〜5のα化架橋澱粉を得た。また試料7については硫酸ナトリウム20部を溶解した水120部に原料となる澱粉100部を加えてスラリーとし、攪拌下苛性ソーダ、トリメタリン酸ソーダを適宜加え、40℃で5時間反応した後、硫酸で中和、水洗した、次いで、ドラムドライヤーでα化後、粉砕して得た。
【0031】
上記のようにして調製したα化架橋澱粉を用いて、食パンを製造した。食パンの製造に用いた原料の配合を表2に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
表2の配合で生地比容積を通常は3.5〜4.0程度で行うところを5.3として、それ以外は常法に従いプルマン食パンを焼成し、作業性・食感・ボリューム・内層・焼き色の項目について評価を行った。作業性については、ミキシング、分割、成型工程において生地のべたつきがなく且つ、伸展性の良い生地であるかどうかを、総合的に×、△、○、◎の4段階で評価した。食感の検証に際しては、ビニール袋に入れて密封して20℃に保持し、1日(24時間)後に官能検査を行った。官能検査は10人のパネラーにより5点満点でふんわり感と軽さを中心に評価を行い平均点を取った。ボリュームについては、×:フタに達しない、△:フタに少しつく、○:ほとんど達しているがやや足りない、◎:充分達している、の評価基準により評価した。内層については、×:大きな穴が見られる、△:やや穴が見られる、○:ほぼ均一であるが、時に大きめの気泡が見られる、◎:均一、の評価基準により評価した。焼き色については、×:つかないか黒い、△:ややぼけているか濃い、○:ほぼ充分であるが所々むらがある、◎:適正、の評価基準により評価した。その結果を表3に示す。
【0034】
【表3】

【0035】
ボリュームが×のものについては、ボリュームが不足してプルマン食パンの形にならなかったり、底面が浮き上がってしまったりしていた。また、これらの食パンを粉砕してパン粉を作成し、フライしたものの食感の軽さを官能検査で評価した。官能検査は10人のパネラーにより5点満点で行い、平均点を取った。その結果を表4に示す。
【0036】
【表4】

【0037】
[実施例5]
また、本発明で得られる試料No.5のα化架橋澱粉と難消化性澱粉(松谷化学工業株式会社製:ファイバージムRW)を併用し、表5に示すようなパンを製造した。得られたパンは、高比容積を示し、ボリューム感があり、満足感を損なうことなく摂取カロリーを抑えることのできるパンであった。
【0038】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、製品比容積が5.0以上であるふんわりした食感で高比容積の嗜好性の高いパン類を提供する。また、本発明の高比容積のパン類の製造方法により、原材料費を抑えることが可能であり、本発明は、製造コストダウンにつながる高比容積のパン類の製造方法を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パン類の製造に際し、小麦粉原料に膨潤度9.0〜16のα化架橋澱粉を配合することを特徴とする高比容積パン類の製造方法。
【請求項2】
パンの比容積が、製品の水分が35重量%〜40重量%の時に製品比容積が5.0以上であることを特徴とする請求項1記載の高比容積パン類の製造方法。
【請求項3】
α化架橋澱粉が、澱粉に架橋剤を作用させて架橋反応を行い、得られた架橋澱粉をα化して、膨潤度9.0〜16のα化架橋澱粉に調製したものであることを特徴とする請求項1又は2記載の高比容積パン類の製造方法。
【請求項4】
α化架橋澱粉が、澱粉に架橋剤とともに、エステル化剤或いはエーテル化剤を作用させて架橋反応とエステル化或いはヒドロキシプロピル化反応を併用して、調製した加工澱粉をさらにα化して膨潤度9.0〜16に調製したα化エステル化架橋澱粉或いはα化ヒドロキシプロピル化架橋澱粉であることを特徴とする請求項1又は2記載の高比容積パン類の製造方法。
【請求項5】
膨潤度9.0〜16のα化架橋澱粉を、小麦粉を主原料としたパンの製造原料穀粉に対し、1〜10重量%の範囲で配合することを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の高比容積パン類の製造方法。
【請求項6】
生地の比容積が、4.5以上の食パンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の高比容積パン類の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載の高比容積パンの製造方法によって製造された製品比容積が5.0以上であることを特徴とする高比容積パン類。