説明

パークアンドライドシステム、当該システムを構成する自動車、および当該システムの制御方法

【課題】自動車から公共車両へのまたは自動車から公共車両への乗り換えをスムーズにすることが可能なパークアンドライドシステムを提供する。
【解決手段】パークアンドライドシステム1は、所望の目的地に行くために自動車から公共車両に乗り継いで移動するためのパークアンドライドシステムであって、当該パークアンドライドシステムの利用者により乗車される自動車20を含んで構成される。自動車20は、パークアンドライドシステムの利用者が公共車両の停留所にて自動車から降車した後に、停留所から駐車場まで自動車を自動的に移動させるパークアンドライド制御部25を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車から公共車両へ乗り換えるためのパークアンドライドシステム、当該システムを構成する自動車、および当該システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来文献(特許文献1)には、自動車から電車への乗り換えるためのパークアンドライドシステムが示されている。この従来技術のパークアンドライドシステムでは、所定の目的地の途中まで車を利用し、その利用した車をその途中に設けられている駐車場に駐車し、その途中からその所定の目的地までは大量輸送手段を利用する。この従来技術のパークアンドライドシステムでは、目的地まで自動車を利用したときの旅行時間や、道路の交通量等から計測した交通状態に基づいてパークアンドライド駐車場の料金を決定する。
【特許文献1】特開2004−199571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
パークアンドライドシステムを普及させるためには、自動車から公共車両への乗り換えを容易にすることが重要である。しかし、公共車両の停留所の近辺に自動車の駐車場を設置できずに、公共車両の停留所から離れた場所に自動車の駐車場を設置する場合もある。このような場合には、利用者は駐車場で自動車を降車してから、自動車の駐車場から公共車両の停留所まで長い距離を歩く必要があり、自動車から公共車両への乗り換えを困難にする要因となっている。
【0004】
また、利用者が停留所に早目に着いた場合には、利用者は公共車両を停留所で待つことになるが、停留所によっては待ち時間が快適でない場合もある。例えば、停留所に屋根や椅子が設置されていない場合には、利用者は待ち時間に疲労することになる。このように停留所での環境が悪いことも、自動車から公共車両への乗り換えを困難にする要因となっている。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、自動車から公共車両へのまたは公共車両から自動車への乗り換えをスムーズにすることが可能なパークアンドライドシステム、当該システムを構成する自動車、および当該システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明に係るパークアンドライドシステムは、所望の目的地に行くために自動車から公共車両に乗り継いで移動するためのパークアンドライドシステムであって、当該パークアンドライドシステムの利用者により乗車される自動車を含んで構成され、自動車は、パークアンドライドシステムの利用者が公共車両の停留所にて自動車から降車した後に、停留所から駐車場まで自動車を自動的に移動させるパークアンドライド制御部を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明のパークアンドライドシステムによれば、パークアンドライドシステムの利用者が自動車に乗車して公共車両の停留所まで行き公共車両の停留所にて自動車から降車した後に、停留所から駐車場まで自動的に移動する。このため、パークアンドライドシステムの利用者は、自動車を駐車場に駐車してから停留所まで歩く必要がなくなり、自動車から公共車両にスムーズに乗り継ぐことができる。
【0008】
また、本発明に係るパークアンドライドシステムは、自動車のパークアンドライド制御部は、自動車が停留所に到着した後に、パークアンドライドシステムの利用者を乗せたまま公共車両が到着するまで停留所で待機し、パークアンドライドシステムの利用者が自動車から降車した後に、停留所から駐車場まで自動車を自動的に移動させることが好ましい。この構成によれば、自動車は、自動車が停留所に到着した後に、パークアンドライドシステムの利用者を乗せたまま公共車両が到着するまで停留所で待機する。このため、パークアンドライドシステムの利用者は、公共車両が到着するまで自動車の車室内で待つことができる。
【0009】
また、本発明に係るパークアンドライドシステムは、パークアンドライドシステムは、自動車に駐車場の空きの有無を示す情報を送信する駐車場管理装置を含んで構成され、自動車のパークアンドライド制御部は、駐車場管理装置から駐車場に空きが有ることを示す情報を受信した場合に、停留所から駐車場まで自動車を自動的に移動させることが好ましい。この構成によれば、自動車は、駐車場管理装置から駐車場に空きが有ることを示す情報を受信した場合に、停留所から駐車場まで自動的に移動する。このため、駐車場に空きが有ることが確実な場合にのみ、自動車を駐車場に移動させることができる。
【0010】
また、本発明に係るパークアンドライドシステムは、自動車のパークアンドライド制御部は、駐車場管理装置から駐車場に空きが無いことを示す情報を受信した場合に、停留所から他の駐車場まで自動車を自動的に移動させることが好ましい。この構成によれば、自動車は、駐車場管理装置から駐車場に空きが無いことを示す情報を受信した場合に、停留所から他の駐車場まで自動的に移動する。このため、駐車場に空きが無い場合であっても、自動車を他の駐車場に移動させることができる。
【0011】
また、本発明に係るパークアンドライドシステムは、停留所には、公共車両が到着するまで自動車が並んで待機するための降車待ちスペースが設けられており、当該降車待ちスペースの先頭位置が利用者が自動車から降車する降車位置となっており、自動車のパークアンドライド制御部は、公共車両が到着するまでの時間Tの情報と降車待ちスペースにある他の自動車の台数Nの情報とを取得し、他の自動車の停車予定時間がT/Nより大きい場合に、当該他の自動車に駐車場に移動すること指令することが好ましい。この構成によれば、自動車は、他の自動車の停車予定時間がT/Nより大きい場合に、当該他の自動車に駐車場に移動すること指令する。このため、自動車は公共車両が到着するまでに降車待ちスペースの降車位置まで到達することができ、パークアンドライドシステムの利用者を降車位置にて確実に降車させることができる。
【0012】
上述した目的を達成するために、本発明に係るパークアンドライドシステムは、所望の目的地に行くために自動車から公共車両に乗り継いで移動するためのパークアンドライドシステムであって、当該パークアンドライドシステムの利用者により乗車される自動車を含んで構成され、自動車は、パークアンドライドシステムの利用者を乗せた公共車両が停留所に到着する時刻の情報を取得し、当該到着時刻に合わせて駐車場から乗車位置まで自動車を自動的に移動させるパークアンドライド制御部を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明のパークアンドライドシステムによれば、パークアンドライドシステムの利用者が戻って来る場合に、パークアンドライドシステムの利用者を乗せた公共車両が停留所に到着する時刻の情報を取得し、当該到着時刻に合わせて駐車場から乗車位置まで自動車を自動的に移動させる。このため、自動車がタイムリーに乗車位置に移動し、パークアンドライドシステムの利用者は自動車にスムーズに乗車することができる。
【0014】
また、本発明に係るパークアンドライドシステムは、自動車のパークアンドライド制御部は、公共車両の停留所の乗車待ちスペースが満車である場合には、他の停留所に自動車を移動させることが好ましい。この構成によれば、公共車両の停留所の乗車待ちスペースが満車である場合には、自動車は他の停留所に移動する。このため、自動車が停留所の乗車待ちスペースを利用できない事態を回避して、利用者は他の停留場で自動車にスムーズに乗車することができる。
【0015】
また、本発明に係るパークアンドライドシステムは、自動車のパークアンドライド制御部は、他の停留所に変更されたことを利用者の所持する通信端末に通知することが好ましい。この構成によれば、他の停留所に変更されたことが利用者の所持する通信端末に通知されるため、利用者は通信端末を介して他の停留所に変更されたことを知り、他の停留所で公共車両を降車することができる。
【0016】
上述した目的を達成するために、本発明に係る自動車は、所望の目的地に行くために自動車から公共車両に乗り継いで移動するためのパークアンドライドシステムを構成する自動車であって、パークアンドライドシステムの利用者が公共車両の停留所にて自動車から降車した後に、停留所から駐車場まで自動車を自動的に移動させるパークアンドライド制御部を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の自動車によれば、パークアンドライドシステムの利用者が自動車に乗車して公共車両の停留所まで行き公共車両の停留所にて自動車から降車した後に、停留所から駐車場まで自動的に移動する。このため、パークアンドライドシステムの利用者は、自動車を駐車場に駐車してから停留所まで歩く必要がなくなり、自動車から公共車両にスムーズに乗り継ぐことができる。また、本発明の自動車によれば、遊園地やデパートなどの入口で自動車を降車した後に、自動車を自動的に入口から駐車場に移動させることもできる。
【0018】
上述した目的を達成するために、本発明に係る自動車は、所望の目的地に行くために自動車から公共車両に乗り継いで移動するためのパークアンドライドシステムを構成する自動車であって、自動車は、パークアンドライドシステムの利用者を乗せた公共車両が停留所に到着する時刻の情報を取得し、当該到着時刻に合わせて駐車場から乗車位置まで自動車を自動的に移動させるパークアンドライド制御部を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明の自動車によれば、パークアンドライドシステムの利用者が戻って来る場合に、パークアンドライドシステムの利用者を乗せた公共車両が停留所に到着する時刻の情報を取得し、当該到着時刻に合わせて駐車場から乗車位置まで自動車を自動的に移動させる。このため、自動車がタイムリーに乗車位置に移動し、パークアンドライドシステムの利用者は自動車にスムーズに乗車することができる。また、本発明の自動車によれば、利用者が遊園地やデパートなどの出口から出てくる時間に合わせて、自動車を自動的に駐車場から出口に移動させることができる。
【0020】
上述した目的を達成するために、本発明に係るパークアンドライドシステムの制御方法は、所望の目的地に行くために自動車から公共車両に乗り継いで移動するためのパークアンドライドシステムの制御方法であって、当該パークアンドライドシステムの利用者により乗車される自動車を、利用者が公共車両の停留所にて自動車から降車した後に、停留所から駐車場まで自動的に移動させるように制御する。
【0021】
上述した目的を達成するために、本発明に係るパークアンドライドシステムの制御方法は、所望の目的地に行くために自動車から公共車両に乗り継いで移動するためのパークアンドライドシステムの制御方法であって、パークアンドライドシステムの利用者を乗せた公共車両が停留所に到着する時刻の情報を取得し、パークアンドライドシステムの利用者により乗車される自動車を、当該到着時刻に合わせて駐車場から乗車位置まで自動的に移動させるように制御する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、自動車から公共車両へのまたは公共車両から自動車への乗り換えをスムーズにすることが可能なパークアンドライドシステム、当該システムを構成する自動車、および当該システムの制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素または同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0024】
(パークアンドライドシステムの概要)
図1は、本実施形態のパークアンドライドシステム1の概要を示す図である。このパークアンドライドシステム1は、個人が所有する自動車20と、地域の住民により利用される複数の公共車両10と、を含んで構成されている。パークアンドライドシステム1の利用者は、所望の目的地まで行くために、現在地から公共車両10の停留所Sまで自動車20を利用し、自動車20を公共車両10の停留所Sの近くに設けられている駐車場Pに駐車し、公共車両10の停留所Sからその目的地まで公共車両10を利用する。本実施形態において、自動車20は通常の自家用車である。また、本実施形態において、公共車両10は、予め決められた走行ルートを走行するバスである。なお、本実施形態では、公共車両10はバスであるが、電車などの他の種類の公共車両10であってもよい。
【0025】
公共車両10の停留所の前には、利用者が自動車20に乗って公共車両10の到着を待つための降車待ちスペースAと、無人の自動車20が利用者が乗った公共車両10の到着を待つための乗車待ちスペースAと、が用意されている。降車待ちスペースAでは、自動車20は一列に並んで公共車両10の到着を待つ。降車待ちスペースAにおいて停留所に最も近い先頭位置が、運転者が自動車20から降車する降車位置である。降車待ちスペースAでは、自動車20から運転者が降車して、その自動車20が降車位置から駐車場Pに移動すると、降車待ちスペースAにおいて次の自動車20が自動的に降車位置に移動し、さらに後続の自動車20が自動的に前方車両との車間距離を狭める。なお、本実施形態では、降車待ちスペースAおよび乗車待ちスペースAは個別に用意されているが、降車待ちスペースAおよび乗車待ちスペースAは同一のスペースであってもよい。
【0026】
公共車両10の停留所の近くには、2つの駐車場PおよびPが用意されている。自動車20は停留所に比較的に近い第1駐車場Pに駐車されるように設定されており、第1駐車場Pに空きがある限り自動車は第1駐車場Pに駐車される。停留所から比較的に遠い第2駐車場Pは、自動車20が駐車する駐車場として予備的に用意されている。第1駐車場Pが満車である場合には、第2駐車場Pに駐車されるように自動車20の設定が切り替えられ、自動車は第2駐車場Pに駐車される。
【0027】
本実施形態のパークアンドライドシステム1は、公共車両10の停留所で利用者が自動車20から降車した後に、無人の自動車20を停留所から駐車場P,Pまで自動的に移動する降車時自動制御機能を有している。この機能を利用することにより、利用者が自動車20を駐車場P,Pに置いてくる必要が無くなるため、利用者は自動車20から公共車両10へシームレスに乗り継ぐことが可能となる。また、この機能を利用することにより、利用者は公共車両10が到着するまで自動車20内で待つことが可能となる。
【0028】
また、本実施形態のパークアンドライドシステム1は、利用者が公共車両10に乗車して戻ってきた時に、駐車場P,Pから停留所まで自動車20を自動的に移動する乗車時自動制御機能を有している。この機能を利用することにより、利用者が自動車20を駐車場P,Pに取りに行く必要が無くなるため、利用者は公共車両10から自動車20へシームレスに乗り継ぐことが可能となる。
【0029】
上述した降車時自動制御機能および乗車時自動制御機能を実現するために、公共車両10の停留所には、当該停留所を管理するための停留所管理装置Sが設けられている。停留所管理装置Sは、自動車20との間で通信を行う機能を有しており、当該停留所に関する情報を自動車20に提供する。停留所管理装置Sが提供する情報は、公共車両10の到着時刻、降車待ちスペースAの情報、乗車待ちスペースAの情報などである。
【0030】
また、駐車場P,Pには、当該駐車場P,Pを管理するための駐車場管理装置C,Cが設けられている。駐車場管理装置C,Cは、自動車20との間で通信を行う機能を有しており、当該駐車場P,Pに関する情報を自動車20に提供する。駐車場管理装置C,Cが提供する情報は、駐車場P,Pの空きの有無、駐車場P,Pの空き台数などの情報である。
【0031】
(自動車の構成)
図2は、本実施形態の自動車20の構成を示すブロック図である。図2を参照して、自動車20の構成について説明する。
【0032】
GPS位置検出装置21は、自動車20が存在する位置を検出するための装置である。車車間通信装置22は、他の自動車20との間で通信を行うための装置である。路車間通信装置23は、路側に設置された装置(停留所管理装置S、駐車場管理装置C,Cなど)との間で通信を行うための装置である。携帯通信端末24は、利用者の持つ携帯通信端末(携帯電話など)との間で通信を行うための装置である。
【0033】
パークアンドライド制御装置25は、利用者の降車時および乗車時における自動車20の自動的な制御を統括的に制御するための装置である。パークアンドライド制御装置25は、車車間通信装置22、路車間通信装置23、携帯通信端末24などから情報を取得し、これらの情報に基づいて、前述した降車時自動制御機能および乗車時自動制御機能を実現する。このため、パークアンドライド制御装置25は、自動運転制御装置27に動作指令を出力する。
【0034】
自動運転制御装置27は、パークアンドライド制御装置25からの動作指令に従って、具体的に自動車20の挙動を制御するための装置である。自動運転制御装置27は、周囲環境検出センサ26により検出された自動車20の周囲環境に応じて、自動車20の挙動を制御する。自動運転制御装置27は、パークアンドライド制御装置25からの動作指令に従って、駆動力調節機構28、制動力調節機構29、操舵調節機構30などを制御する。
【0035】
(降車時自動制御機能)
図3は、自動車20から公共車両10への乗り換え時における自動車20の自動制御を示すフローチャートである。図4および図5は、この自動車20の自動制御を説明するための模式図である。図3、図4および図5を参照して、自動車20の自動制御を説明する。
【0036】
以下の説明では複数の自動車20が登場するため、理解を容易にするために自動車20の夫々の呼び方を定義する。「制御実行自動車」とは、自動制御を実行する機能を有する自動車20Aであり、以下に説明する自動制御の主体となる自動車20Aである。また、「降車待ち自動車」とは、制御実行自動車20Aと同じく自動制御を実行する機能を有する自動車20Bであり、降車待ちスペースAの範囲内に位置する他の自動車20Bである。また、「駐車自動車」とは、制御実行自動車20Aと同じく自動制御を実行する機能を有する自動車20Cであり、駐車場に駐車している他の自動車20Cである。
【0037】
制御実行自動車20Aは、停留所付近まで到達すると(図4(a)参照)、停留所管理装置Sとの間で通信を行い、公共車両10の次の到着時刻の情報を取得し、公共車両10が次に到着するまでの時間Tを演算する(S301)。次に、制御実行自動車20Aは、周囲に存在する他の自動車20Bとの間で通信を行い、他の自動車20Bの位置情報を取得して、降車待ちスペースAの範囲内に位置する他の自動車20Bの台数をカウントすることにより、降車待ち自動車20Bの台数Nを求める(S302、図4(b)参照)。
【0038】
次に、制御実行自動車20Aは、降車待ちスペースAの先頭である降車位置の降車待ち自動車20Bとの間で車車間通信を行い、降車位置の降車待ち自動車20Bの停車予定時間がT/N(秒)以上か否かをチェックする(S303)。ここで、制御実行自動車20Aは、降車位置の降車待ち自動車20Bの停車予定時間がT/N(秒)よりも大きい場合には、制御実行自動車20Aが公共車両10の到着時刻までに降車位置に到達しない状況となる可能性があるため、この状況を未然に回避すべくステップ304の処理に進む。なお、制御実行自動車20Aは、降車待ち自動車20Bが高齢者、妊婦、障害者等が乗車している情報を発している場合には、停車予定時間が長めになるようにT/N(秒)に重み付けをしてもよい。
【0039】
ステップ303からステップ304に進んだ場合には、制御実行自動車20Aは、降車待ちスペースAにおいて先頭の降車待ち自動車20Bとの間で車車間通信を行い、先頭の降車待ち自動車20Bに駐車場Pへの移動を促す移動指令を先頭車両に送信する。降車待ちスペースAの先頭車両は、制御実行自動車20Aからの移動指令を受信すると、自動運転制御を実行して、降車位置でT/N秒間停車した後に駐車場Pに移動する(図5(a)参照)。その後、制御実行自動車20Aは、ステップ305の処理に進む。
【0040】
一方、ステップ303において、降車位置の降車待ち自動車20Bの停車予定時間がT/N(秒)よりも小さい場合には、制御実行自動車20Aは、制御実行自動車20Aが公共車両10の到着時刻までに降車位置に到達することが予想されるため、ステップ305の処理に進む。
【0041】
その後、制御実行自動車20Aは、制御実行自動車20Aの存在する位置が降車位置か否かを判定する(S305)。ここで、制御実行自動車20Aは、制御実行自動車20Aの存在する位置が降車位置でないと判定した場合には、降車スペースにおいて先行する全ての降車待ち自動車20Bに関してステップ303〜ステップ304の処理を繰り返す。これにより、降車スペースにおいて先行する降車待ち自動車20Bを順番に駐車場Pに移動させることができる。一方、制御実行自動車20Aは、制御実行自動車20Aの存在する位置が降車位置であると判定した場合には、ステップ306の処理に進む。
【0042】
次に、制御実行自動車20Aは、第1駐車場Pは満車であるか否かを判定する(S306)。ここで、制御実行自動車20Aは、第1駐車場Pが満車でない場合には、駐車する予定の駐車場を第1駐車場Pのままにする。一方、制御実行自動車20Aは、第1駐車場Pが満車である場合には、駐車する予定の駐車場を第1駐車場Pから第2駐車場Pに切り替える(S307)。これにより、制御実行自動車20Aは、第1駐車場Pが満車である場合でも、第2駐車場Pに確実に駐車することができる。
【0043】
次に、制御実行自動車20Aは、降車スペースにおいて後続する降車待ち自動車20Bから移動指令を受信したか否かを判定する(S308)。ここで、制御実行自動車20Aは、降車スペースにおいて後続する降車待ち自動車20Bから移動指令を受信しない場合には、ステップ309の処理に進む。一方、制御実行自動車20Aは、降車スペースにおいて後続する降車待ち自動車20Bから移動指令を受信した場合には、ステップ310の処理に進む。
【0044】
ステップ308からステップ309に進んだ場合には、制御実行自動車20Aは、公共車両10の到着時刻まで降車位置に停車し続けて、公共車両10の到着時刻となって運転者が降車すると、自動運転制御を実行して駐車場P,Pに移動する(S309、図5(b)参照)。制御実行自動車20Aが公共車両10の到着時刻まで降車位置に停車し続けるため、運転者は公共車両10の到着を自動車20の中に座って待つことができる。制御実行自動車20Aが駐車場P,Pに自動的に移動するため、運転者が自動車20を駐車場P,Pに駐車してから駐車場P,Pから停留所まで歩く必要がなくなり、運転者は自動車20から公共車両10にスムーズに乗り継ぐことができる。
【0045】
ステップ308からステップ310に進んだ場合には、制御実行自動車20Aは、公共車両10の到着時刻まで降車スペースに停車し続けることなく、後続する降車待ち自動車20Bからの移動指令に含まれるT/N(秒)の間、降車位置に停車し、T/N(秒)が経過した後に運転者が降車すると自動運転制御を実行して駐車場P,Pに移動する(S310)。制御実行自動車20AがT/N(秒)の間だけ降車位置に停車するため、後続する降車待ち自動車20Bは公共車両10の到着時刻までに降車位置に到達することができる。よって、後続する降車待ち自動車20Bの運転者は、自動車20から公共車両10にスムーズに乗り継ぐことができる。
【0046】
(乗車時自動制御機能)
図6は、公共車両10から自動車20への乗り換え時における自動車20の自動制御を示すフローチャートである。図7は、この自動車20の自動制御を説明するための模式図である。図6および図7を参照して、自動車20の自動制御を説明する。
【0047】
以下の説明では複数の自動車20が登場するため、理解を容易にするために自動車20の夫々の呼び方を定義する。「制御実行自動車」とは、自動制御を実行する機能を有する自動車20Aであり、以下に説明する自動制御の主体となる自動車20Aである。また、「駐車自動車」とは、制御実行自動車20Aと同じく自動制御を実行する機能を有する自動車20Cであり、駐車場に駐車している他の自動車20Cである。また、「乗車待ち自動車」とは、制御実行自動車20Aと同じく自動制御を実行する機能を有する自動車20Dであり、乗車待ちスペースAの範囲内に位置する他の自動車20Dである。
【0048】
図6および図7に示される自動車20の自動制御は、利用者が公共車両10に乗って帰って来た時に実行される制御である。公共車両10に乗って帰ってきた利用者は、携帯通信端末である携帯電話を所持しており、携帯電話を用いて駐車場Pに駐車されている制御実行自動車20Aとの間で通信を行い、公共車両10に乗って最寄りの停留所に到着する概略的な時刻を制御実行自動車20Aに通知する。この利用者からの通知に応じて、図6および図7に示される自動制御が実行される。
【0049】
制御実行自動車20Aは、公共車両10が最寄りの停留所に到着する時刻に近づくと、停留所管理装置Sとの間で通信を行い、公共車両10の次の到着時刻の情報を取得し、公共車両10が次に到着するまでの時間Tを演算する(S601)。次に、制御実行自動車20Aは、周囲に存在する他の自動車20との間で通信を行い、他の自動車20の位置情報を取得して、乗車待ちスペースAの範囲内に位置する他の自動車20の台数をカウントすることにより、乗車待ち自動車20の台数Nを求める(S602)。
【0050】
次に、制御実行自動車20Aは、停留所の乗車待ちスペースAは満車であるか否かを判定する(S603)。ここで、制御実行自動車20Aは、乗車待ち自動車20の台数Nが停留所の乗車待ちスペースAに停車可能な車両台数を下回っている場合には、停留所の乗車待ちスペースAに空きがあることを判定し、ステップ604の処理に進む。一方、制御実行自動車20Aは、乗車待ち自動車20の台数Nが停留所の乗車待ちスペースAに停車可能な車両台数と同じであるか上回っている場合には、停留所の乗車待ちスペースAは満車であることを判定し、ステップ605の処理に進む。
【0051】
ステップ603からステップ604に進んだ場合には、制御実行自動車20Aは、乗車待ちスペースAに自動で移動する(S604、図7(a)参照)。制御実行自動車20Aは、公共車両10が停留所に到着する時刻に合わせて、駐車場Pから乗車待ちスペースAに移動するため、公共車両10に乗って帰ってきた利用者は、公共車両10から制御実行自動車20Aにスムーズに乗り換えることができる。
【0052】
ステップ603からステップ605に進んだ場合には、制御実行自動車20Aは、近い停留所から順番に乗車待ちスペースAの空きをチェックする(S605)。制御実行自動車20Aは、停留所管理装置Sとの間で通信を行い、公共車両10に乗って帰ってきた利用者が公共車両10を降車する予定であった停留所の一つ前の停留場Sまたは一つ後の停留所S2の乗車待ちスペースAに空きがあるか否かをチェックする。制御実行自動車20Aは、一つ前の停留場Sまたは一つ後の停留所S2の乗車待ちスペースAに空きがない場合には、乗車待ちスペースAに空きのある停留所が見つかるまで、公共車両10に乗って帰って来た者が公共車両10を降車する予定であった停留所のさらに前の停留場またはさらに後の停留所の乗車待ちスペースAに空きがあるか否かをチェックする。
【0053】
次に、制御実行自動車20Aは、利用者が制御実行自動車20Aに乗車する停留所を、乗車待ちスペースAに空きのある停留所に変更し、自動運転制御を実行して、変更後の停留所まで自動で移動する(S606、図7(b)参照)。また、制御実行自動車20Aは、利用者の持つ携帯電話と通信を行い、変更後の停留所を利用者に通知する(S607)。これにより、公共車両10に乗って帰ってきた利用者は、携帯電話を用いて変更後の停留所を確認し、その停留所で公共車両10を降車することで、公共車両10から自動車20にスムーズに乗り継ぐことができる。また、乗車待ちスペースAに空きがない停留所に制御実行自動車20Aが移動しないため、乗車待ちスペースAに空きがない停留所で渋滞が発生することを防止することができる。なお、制御実行自動車20Aは、天候が悪い場合には停留所の変更を禁止してもよい。
【0054】
本実施形態のパークアンドライドシステム1では、自動車から公共車両への乗り継ぎをスムーズにすると共に、公共車両から自動車への乗り継ぎをスムーズにしており、利用者の利便性を顕著に高めている。このように利便性を高めることにより、パークアンドライドシステム1の利用者が増加するため、パークアンドライドシステム1の収益性を高めることができる。特に、利用者の少ない低需要地域にパークアンドライドシステム1を導入する場合には、パークアンドライドシステム1の収益を確保するために、上述したように利便性を高めることが重要である。
【0055】
なお、本実施形態ではパークアンドライドシステムについて説明したが、本実施形態の自動車は、自動車から公共車両への乗り換える場合だけでなく、遊園地やデパートなどの入口で自動車を降車する場合にも有効である。すなわち、本実施形態のパークアンドライドシステムと同様なシステムを遊園地やデパートなどの出入口に設置することにより、遊園地やデパートなどの入口で自動車を降車した後に、自動車を自動的に入口から駐車場に移動させることができる。また、利用者が遊園地やデパートなどの出口から出てくる時間に合わせて、自動車を自動的に駐車場から出口に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本実施形態のパークアンドライドシステムの概要を示す概略図である。
【図2】自動車の構成を示すブロック図である。
【図3】自動車から公共車両への乗り換え時における自動車の自動制御を示すフローチャートである。
【図4】自動車から公共車両への乗り換え時における自動車の自動制御を説明するための第1図である。
【図5】自動車から公共車両への乗り換え時における自動車の自動制御を説明するための第2図である。
【図6】公共車両から自動車への乗り換え時における自動車の自動制御を示すフローチャートである。
【図7】公共車両から自動車への乗り換え時における自動車の自動制御を説明するための図である。
【符号の説明】
【0057】
1…パークアンドライドシステム、10…公共車両、20…自動車、21…位置検出装置、22…車車間通信装置、23…路車間通信装置、24…携帯通信端末、25…パークアンドライド制御装置、26…周囲環境検出センサ、27…自動運転制御装置、28…駆動力調節機構、29…制動力調節機構、30…操舵調節機構、C…駐車場管理装置、P…駐車場、S…停留所管理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の目的地に行くために自動車から公共車両に乗り継いで移動するためのパークアンドライドシステムであって、
当該パークアンドライドシステムの利用者により乗車される自動車を含んで構成され、
前記自動車は、前記パークアンドライドシステムの利用者が前記公共車両の停留所にて前記自動車から降車した後に、前記停留所から駐車場まで前記自動車を自動的に移動させるパークアンドライド制御部を備えることを特徴とするパークアンドライドシステム。
【請求項2】
前記自動車のパークアンドライド制御部は、前記自動車が前記停留所に到着した後に、前記パークアンドライドシステムの利用者を乗せたまま前記公共車両が到着するまで前記停留所で待機し、前記パークアンドライドシステムの利用者が前記自動車から降車した後に、前記停留所から前記駐車場まで前記自動車を自動的に移動させることを特徴とする請求項1に記載のパークアンドライドシステム。
【請求項3】
前記パークアンドライドシステムは、前記自動車に前記駐車場の空きの有無を示す情報を送信する駐車場管理装置を含んで構成され、
前記自動車のパークアンドライド制御部は、前記駐車場管理装置から前記駐車場に空きが有ることを示す情報を受信した場合に、前記停留所から前記駐車場まで前記自動車を自動的に移動させることを特徴とする請求項1または2に記載のパークアンドライドシステム。
【請求項4】
前記自動車のパークアンドライド制御部は、前記駐車場管理装置から前記駐車場に空きが無いことを示す情報を受信した場合に、前記停留所から他の駐車場まで前記自動車を自動的に移動させることを特徴とする請求項3に記載のパークアンドライドシステム。
【請求項5】
前記停留所には、前記公共車両が到着するまで前記自動車が並んで待機するための降車待ちスペースが設けられており、当該降車待ちスペースの先頭位置が前記利用者が前記自動車から降車する降車位置となっており、
前記自動車のパークアンドライド制御部は、公共車両が到着するまでの時間Tの情報と降車待ちスペースにある他の自動車の台数Nの情報とを取得し、他の自動車の停車予定時間がT/Nより大きい場合に、当該他の自動車に駐車場に移動すること指令することを特徴とするパークアンドライドシステム。
【請求項6】
所望の目的地に行くために自動車から公共車両に乗り継いで移動するためのパークアンドライドシステムであって、
当該パークアンドライドシステムの利用者により乗車される自動車を含んで構成され、
前記自動車は、パークアンドライドシステムの利用者を乗せた前記公共車両が停留所に到着する時刻の情報を取得し、当該到着時刻に合わせて駐車場から前記乗車位置まで前記自動車を自動的に移動させるパークアンドライド制御部を備えることを特徴とするパークアンドライドシステム。
【請求項7】
前記自動車のパークアンドライド制御部は、公共車両の停留所の乗車待ちスペースが満車である場合には、他の停留所に前記自動車を移動させることを特徴とする請求項6に記載のパークアンドライドシステム。
【請求項8】
前記自動車のパークアンドライド制御部は、前記他の停留所に変更されたことを前記利用者の所持する通信端末に通知することを特徴とする請求項7に記載のパークアンドライドシステム。
【請求項9】
所望の目的地に行くために自動車から公共車両に乗り継いで移動するためのパークアンドライドシステムを構成する自動車であって、
前記パークアンドライドシステムの利用者が前記公共車両の停留所にて前記自動車から降車した後に、前記停留所から駐車場まで前記自動車を自動的に移動させるパークアンドライド制御部を備えることを特徴とする自動車。
【請求項10】
所望の目的地に行くために自動車から公共車両に乗り継いで移動するためのパークアンドライドシステムを構成する自動車であって、
前記自動車は、パークアンドライドシステムの利用者を乗せた前記公共車両が停留所に到着する時刻の情報を取得し、当該到着時刻に合わせて駐車場から前記乗車位置まで前記自動車を自動的に移動させるパークアンドライド制御部を備えることを特徴とするパークアンドライドシステム。
【請求項11】
所望の目的地に行くために自動車から公共車両に乗り継いで移動するためのパークアンドライドシステムの制御方法であって、
当該パークアンドライドシステムの利用者により乗車される自動車を、前記利用者が前記公共車両の停留所にて前記自動車から降車した後に、前記停留所から駐車場まで自動的に移動させるように制御するパークアンドライドシステムの制御方法。
【請求項12】
所望の目的地に行くために自動車から公共車両に乗り継いで移動するためのパークアンドライドシステムの制御方法であって、
パークアンドライドシステムの利用者を乗せた前記公共車両が前記公共車両の停留所に到着する時刻の情報を取得し、前記パークアンドライドシステムの利用者により乗車される自動車を、当該到着時刻に合わせて駐車場から前記乗車位置まで自動的に移動させるように制御するパークアンドライドシステムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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