説明

パーツフィーダ

【課題】ワークを今までにない高速で移送できるパーツフィーダを提供する。
【手段】パーツフィーダは、レール1とこれを支持する板ばね3、レール1の往復動を規制するリンク4、加振手段としての電磁石10を有している。電磁石10に交流電流を印加するとレール1から垂下した磁性体11が往復動し、結果としてレール1が前後方向に振動する。リンク4の下端は第2弾性体8を介して基礎ベース9に取り付けられており、板ばね3の下端と電磁石10とは中間ベース6に取り付けられている。板ばね3とリンク4とは互いの振動が影響しないように絶縁された状態で安定良く保持されているため、電磁石10に高い周波数の電流を印加しても磁性体11は的確に追従してレール1を高速で加振できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ状等のワークを直列に並べた状態で略水平方向に移送(搬送)するライン型の加振式パーツフィーダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のライン型パーツフィーダは、ワークが滑り移動するガイド部を形成したレール(トラフ)を備えており、レールとベースとを側面視で傾斜状等の複数本の板ばねで連結することにより、レールが板ばねを弾性変形させて長手方向に往復動するようになっている。
【0003】
そして、ベースに電磁石を固定する一方、レールには電磁石と近接した磁性体を固定しており、電磁石に交流電源を印加して磁性体を往復移動させることにより、レールをその長手方向に小刻みに振動させており、その場合、磁性体が電磁石に引かれるときの速度と、磁性体が板ばねによって戻り移動するときの速度との違いにより、ワークは一定方向に移送される。
【0004】
しかし、単にレールを板ばねで支持したに過ぎない構成では、振動が大きくて騒音が大きい問題や、振動数を大きくすべく電磁石に印加する電流の周波数を高くしても共振現象が発生する等して移送能力のアップにはつながらないという問題があった。このような問題を解決すべく本願出願人は、特許文献1において、レールを板ばねとは別にリンクでも支持し、リンクの回動によってレールの往復動を規制する技術を開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−40419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のパーツフィーダは、レールの振動が外部が伝わることは殆どなく、従来に比べて振動や騒音を格段に低減することができた。また、電磁石に印加する電流の周波数を従来より高くしても共振することなく高速運転することができる。従って、レールを板ばねで支持しただけのものに比べると移送速度を速くできるが、電磁石に印加する周波数をある程度以上に高くすると、磁性体の往復移動が追従せずに移送速度をアップできなくなる現象が見られた。
【0007】
本願発明は、レールの動きをリンクで規制するという特許文献1の考え方は踏襲しつつ、リンクの利点をフルに引き出してより一層の高速移送を可能ならしめたパーツフィーダを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は上記の知見を基にしつつ、振動系を工夫すれば高速運転を実現できると考え、研究と実験を繰り返して各請求項の発明に至った。このうち請求項1の発明は、ワークを直列に並べて水平移送するレール(トラフ)と、前記レールをその長手方向に往復動可能な状態に支持するばね手段と、前記レールの往復動を規制するリンクと、前記レールをその長手方向に小刻みに振動させる加振手段とを備えており、そして、前記ばね手段とリンクとは弾性体を介して固定式のベースで支持されている。
【0009】
請求項2の発明は請求項1の発明を好適に展開したものであり、この発明では、前記ばね手段は板ばねである一方、前記加振手段は交流電流が印加される電磁石とこれに磁着する磁性体とで構成されており、更に、基礎ベースとこれに弾性体を介して支持された中間ベースとを有しており、前記基礎ベースに弾性体を介して前記リンクが取り付けられ、前記中間ベースに前記板ばねと電磁石とが取り付けられている。なお、ここに記載している「取り付け」には、直接的に取り付ける場合と、他の部材を介して取り付ける場合との両方を含んでいる。
【発明の効果】
【0010】
既述のとおり、特許文献1は従来のものに比べると優れているが、電磁石に印加する交流電流の周波数がある程度高くなるとワークの移送速度がさほど速くならない現象が見られた。その原因は十分解明できていないが、板ばねとリンクと電磁石とが共通の揺動式ベースで支持されていることに起因していると推測される。
【0011】
すなわち、リンクはレールの動きを規制するためのものであり、板ばねに影響されることなく電磁石の動きに追従して動くのが好ましいが、板ばねとリンクと電磁石とが共通した揺動式のベースで支持されているため、周波数(振動数)がある程度以上に高くなると、ベースの揺動(振動)と板ばねの振動とリンクの振動とが共振又は打ち消しあって、磁性体が不規則な動きをしてしまうと推測される。
【0012】
これに対して本願発明では、ばね手段とリンクとが弾性体を介して固定式のベースで支持されているため、振動数を非常に高くしてもばね手段とリンクとは互いに影響されることなく安定した状態で振動(揺動)し、その結果、ばね手段は本来の機能であるレールの戻し機能を的確に発揮すると共に、リンクはレールの往復動規制(ストローク規制)の機能を的確に発揮するのであり、これにより、レールを板ばねで支持したに過ぎないものに比べて2倍以上の高速移送が実現できた。
【0013】
更に述べると、レールが板ばねのみで支持されていると、例えば電磁石に印加する交流電流の周波数を高くすると、板ばねの強さを強くして戻り機能を高くせねばならず、すると電磁石には大きなパワーが必要となるという悪循環が生じるが、本願発明のようにリンクを設けると、レールの動きはリンクで規制されるためばね手段のばね力を強くすることなく振動数を高くできるのであり、このことと、板ばねとリンクとが相互影響しないこととが相まって、スムースな高速運転を実現できたものである。
【0014】
上記のとおり、本願発明ではばね手段のばね力(弾性復原力)を強くする必要がないため、高速運転しても消費電力はさほど高くないという利点も有する。すなわち、本願発明は、レールを強引に振動させるのではなく、リズミカルにスムースに振動させ得るのであり、このため、消費電力がアップすることもない。
【0015】
加振手段としてはバイブレータも使用できるが、バイブレータを使用した方式は振動や騒音が大きいと共に、汎用品では高速運転し難い問題がある。これに対して請求項2のように電磁石と磁性体との組み合わせを採用すると、高い周波数の交流電流を印加することで高速運転を簡単に実現できると共に騒音も少なく、更に、安価な電磁石を使用できるためコスト面でも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係るパーツフィーダの側面図である。
【図2】図1の一部破断II-II 視断面図である。
【図3】図1のIII-III 視断面図である。
【図4】図1の IV-IV視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では「前後」「左右」の用語を使用するが、この「前後」「左右」は、ワークWの移送方向に向いた方向を基準にしている。従って、図1では、右方向が前で左方向が後ろ、紙面に向かって手前側が右で奥側が左になる。
【0018】
(1).構造の説明
本実施形態のパーツフィーダは、チップコンデンサやチップ抵抗器のようなチップ型のワークWの移送に使用するもので、ワークWを一列に並べて直列移送するレール1と、レール1が固定された上支持体2と、上支持体2を介してレール1を支持する前後一対の板ばね3と、上端を上支持体2に連結した前後のリンク4と、板ばね3が固定された中間ブラケット5と、中間ブラケット5が固定された中間ベース6と、中間べース6が第1弾性体7を介して支持されていると共にリンク4が第2弾性体8を介して取り付けられている基礎ベース9とを有している。板ばね3はばね手段の一例である。
【0019】
中間ベース6の前後中間部には磁着面を後ろ向きにした電磁石10を固定しており、上支持体2の下面から、電磁石10の手前に位置する磁性体(鉄の板又はブロック)11が垂下している。電磁石10と磁性体11とは加振手段の一例であり、これら電磁石10と磁性体11の前後両側にリンク4と板ばね3とを配置している。実施形態では板ばね3をリンク4の前後外側に配置しているが、板ばね3とリンク4との前後位置関係は逆であってもよい。
【0020】
レール1にはガイド部の一例として上向きに開口した移送溝13が形成されており、移送溝13を滑り移動してきたワークWはシュートやコンベヤ等の搬送路14に移行する。レール1の移送溝13のうちその後端寄りの適宜範囲は左側に開口した切り開き部13aと成しており、切り開き部13aを設けることでワーク投入部13bを形成している。なお、ガイド部としては、移送溝13を設けることに代えて、段部を形成することも可能である。
【0021】
図3に一点差線で示すように、投入部13bの左側にホッパー15を設け、ホッパー15に溜まったワークWを昇降部材16で持ち上げることにより、ワークWの群を投入部13bに供給することができる。なお、切り開き部13aのうちその終端寄りの部位はホッパー15に向けて斜め下向きの傾斜部13a′になっており、列から外れたワークWは傾斜部13a′からホッパー15に戻る。投入部13bには、重なったワークWを単層に均すためのストッパー(図示せず)を設けている(移送溝13をトンネル状に形成して、ワークWの重なりを排除してもよい。)。
【0022】
レール1にワークWを供給する手段は任意に選択できる。例えば、ホッパーをレール1の上に配置して、ホッパーからワークWを移送溝13に連続的又は断続的に供給することができる。或いは、別にコンベヤやシュート等の供給搬送路を設け、この供給搬送路からワークWを移送溝13に繰り出すことも可能である。敢えて述べるまでもないが、レール1の長さは任意に設定できる。
【0023】
中間ベース6は板材からなっており、その前後両端部が左右2個ずつの第1弾性体7で支持されている。第1弾性体7はゴム製であり、中間ベース6と第1弾性体7と基礎ベース9とがボルト17及びナット18で共締めされている。基礎ベース9の下面には、ナット18の嵌め込みを許容する座ぐり穴19が空いている。なお、ナット18を使用せずに、基礎ベース9に設けたタップ穴にボルト17をねじ込むことも可能である。中間ベース6と基礎ベース9とのうちいずれか一方又は両方に、第1弾性体7が嵌まる凹所を形成することも可能である(この点は第2弾性体8も同じである。)。
【0024】
中間ベース6の前後2カ所に中間ブラケット5がボルト止めや溶接で固定されており、中間ブラケット5の上端部後面に板ばね3の下端部をボルト20で固定している。板ばね3の上端部は上支持体2の前後端面にボルト21で固定されている。前側の板ばね3は側面視で鉛直姿勢になっているが、後ろ側の板ばね3は上に行くほど後ろに倒れるように若干の角度で後傾している。なお、レール1や上支持体2の重量が大きい場合は、前後2カ所の部位に板ばね3を左右複数本ずつ配置してもよい。また、板ばね3は前後3カ所以上の部位に配置することも可能である。
【0025】
中間ブラケット5は、第1弾性体7を締結するボルト17に当たらないように下向きに切り開かれている。また、中間ブラケット5の左右側面には側板22をボルトで固定している。このため、中間ベース6と中間ブラケット5と左右側板22とで頑丈な枠体が構成されている(これらを中間部材と総称するこもとも可能である。)。
【0026】
図3に示すように、リンク4は左右一対で1セットになっており、その上端部は、上支持体2の下面にボルト23aで固定された上軸受け体23に左右横長の上部ピン24で回動可能に連結されている。上部ピン24は上軸受け体23とリンク4との両方に対して回転可能であってもよいし、上軸受け体23とリンク4とのうちいずれか一方にビスで固定してもよい。
【0027】
左右リンク4の下端部は、正面視上向き開口コ字形に形成された下軸受け体25の側板25aに左右横長の下部ピン26で回動可能に連結されている。下軸受け体25の側板25aにはブッシュ27が嵌まっている。また、下部ピン26のうち左右リンク4の間の部位にはカラー28を嵌めている。なお、下軸受け体25は左右に分離することも可能であり、逆に、下軸受け体25を正面視凸形に形成して、上向き凸部を左右のリンク4で挟む形式とすることも可能である。
【0028】
下軸受け体25は中間ベース6に設けた窓穴29の箇所に配置しており、第2弾性体8を介して基礎ベース9で支持されている。下軸受け体25と第2弾性体8と基礎ベース9とはボルト30及びナット31で共締めされている。中間ブラケット5には、ボルト30の頭を嵌め込む座ぐり穴33が形成されており、また、基礎ベース9にはナット31の嵌め込みを許容する座ぐり穴33が空いている。ナット31を使用せずに、ボルト30を基礎ベース9にねじ込んでもよい。
【0029】
図1に示すように、前側の位置では上部ピン24と下部ピン26とは側面視で鉛直の線上に位置しているが、後ろ側の位置では上部ピン24が下部ピン26のやや後ろに位置している。従って、後ろ側の位置では上下ピン24,26を結ぶ線34は後ろ側の板ばね3と同様の姿勢に傾斜している。電磁石10は、中間ベース6の上面にボルト等で固定されている。他方、磁性体11は上支持体2の下面にボルト35で固定されている。
【0030】
なお、磁性体11の左右幅寸法はレール1の大きさ等に応じて任意に設定できる。図示の状態より左右幅寸法を小さくしてもよいし、逆に大きくしてもよい。1つの中間ベース6に複数の電磁石10を左右並設することも可能である。要は、レール1の大きさ等に応じて必要な駆動パワーを設定したらよいのである。電磁石10を基礎ベース9に取り付けることも可能である(弾性体を介して取り付けるのが好ましい。)。
【0031】
(2).作用
以上の構成において、電磁石10に交流電流を印加すると、磁性体11は電磁石10に引かれる前進動と板ばね3による後退動との動きを高速で行い、これにより、レール1は前後方向に小刻みに振動する。この場合、磁性体11の前進速度と後退速度とが相違することにより、ワークWはレール1の前進方向に滑り移動する。
【0032】
そして、板ばね3のみによる支持の場合は、電磁石10に印加する交流電流の周波数がある程度以上になると、板ばね3の動きとレール1及び上支持体2の動きとが乖離してしまって、磁性体11が電磁石10のON・OFFに追従できなくなるが、本願発明のようにリンク4を設けると、レール1及び上支持体2の動きが前後リンク4から成る平行リンク機構で規制されることにより、周波数がアップして電磁石のON・OFFの時間間隔が短くなっても、磁性体11の追従性が確保される。
【0033】
そして、本実施形態では、板ばね3及び電磁石10は中間ベース6に取り付けられていて安定性が高いこと、リンク4は基礎ベース9に取り付けられていて安定性が高いこと、板ばね3及び電磁石10とリンク4とは互いに振動の影響を受けないように振動系が絶縁されていることの三者が相まって、電磁石10に例えば従来の2倍程度の高い周波数を印加しても磁性体11は追従して軽快に往復動させることができ、このため、ワークWを極めて高速で移送することができる。電磁石10の駆動電力を高くする必要はないため、騒音は発生せず静粛性にも優れている。
【0034】
本実施形態のようにリンク4が第2弾性体8を介して基礎ベース9に取り付けられていると、リンク4が全体的に振れ動くことを防止又は著しく抑制できるため、レール1の動きを規制する機能が向上して好適である。また、本実施形態では、後ろの板ばね3は側面視でやや後傾姿勢になっているが、この構成を採用すると、レール1は前進過程で僅かながら前傾傾向を呈するため、ワークWの滑り移動がよりスムースになる利点がある。前後の弾性体7,8はそれぞれ前後1つずつ配置することも可能でなる。
【0035】
(3).その他
本願発明は、上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えばレールにワークの移送路を複数条形成して、1つのレール上でワークの群を並走させることも可能である。ばね手段としては、板ばねに代えて線状のばねやコイルばねを使用することも可能である(レールを戻す応答性の点からは、板ばねや線ばねのように単に曲がり変形するだけのものが好ましい。)。
【0036】
リンクやベースの具体的な形態は、必要に応じて任意に設定できる。電磁石と磁性体との対を前後又は左右に複数対設けることも可能である。板ばねやリンクを支持する弾性体(吸振体)としては、ゴムの他にコイルスプリングや板ばね等のばねを使用することも可能である。ゴムは天然ゴムや樹脂ゴムなど何でも使用できる。ゴムにボルト又はナットをインサート成形したアブソーバを使用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本願発明は、チップ部品等を移送するライン型パーツフィーダに実際に適用できる。従って、産業上、利用できる。
【符号の説明】
【0038】
1 レール
2 上支持体
3 ばね手段の一例としての板ばね
4 リンク
5 中間ブラケット
6 中間ベース
7,8 弾性体(ゴム)
9 基礎ベース
10 加振手段を構成する電磁石
11 加振手段を構成する磁性体
24,26 連結用のピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを直列に並べて水平移送するレールと、前記レールをその長手方向に往復動可能な状態に支持するばね手段と、前記レールの往復動を規制するリンクと、前記レールをその長手方向に小刻みに振動させる加振手段とを備えており、
前記ばね手段とリンクとは弾性体を介して固定式のベースで支持されている、
パーツフィーダ。
【請求項2】
前記ばね手段は板ばねである一方、前記加振手段は交流電流が印加される電磁石とこれに磁着する磁性体とで構成されており、更に、基礎ベースとこれに弾性体を介して支持された中間ベースとを有しており、
前記基礎ベースに弾性体を介して前記リンクが取り付けられ、前記中間ベースに前記板ばねと電磁石とが取り付けられている、
請求項1に記載したパーツフィーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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