説明

パーフォレーション装置

【課題】
複数のパンチングピンの出没をそれぞれ個別に制御して、シート部材の所望する部分のみにパンチ孔を開けることができるパーフォレーション装置を提供する。
【解決手段】
パーフォレーション装置1は、シート部材3に穿孔を行うものであり、基台2と、基台2上に設けられた押圧装置10と、押圧装置10の押圧軸11に取り付けられる穿孔装置21とからなる。穿孔装置21は、取付部材22と、取付部材22に移動可能に設けられた複数のパンチングピン15と、複数のパンチングピン15を非穿孔位置から穿孔位置又は穿孔位置から非穿孔位置へと移動制御可能な制御装置40とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮革シート、軟質合成樹脂シート等のシートに複数のパンチ孔を形成してシートを加工するパーフォレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟質合成樹脂シート、皮革シート等のシート製品は、通気性を確保するため、あるいはデザイン上の理由で複数の孔が開けられているものがある。この複数の孔を開けることをパーフォレーション処理と言われている。このように処理されたシート製品は、主に自動車内装品、家具等の製品に使用されている。この孔は、約0.5〜1.0mmの大きさであり、シート製品に一定の間隔で複数設けられている。
【0003】
このシート製品にパンチ孔を開けて加工するパーフォレーション装置は、押し型と受け型とからなり、押し型に複数のパンチングピンが植設され、受け型にパンチングピンを挿通する受け穴が形成されている。従来のパーフォレーション装置は、押し型と受け型の間にシート製品を配置せしめ、押し型を受け型に圧接することにより、パンチングピンが受け穴に挿通して、シート製品にパンチ孔を複数開けることになる(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−210695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来のパーフォレーション装置は、シート部材の全ての部分にパンチ孔を隈無く開けることになるが、所望する部分にのみパンチ孔を開け、それ以外の部分にパンチ孔を開けないようにすることはできないという問題点があった。従って、従来のパーフォレーション装置によって形成されたシート製品は、自動車の座席、ハンドル、家具等に被せて使用され、所定箇所がミシン等により縫製されているが、ミシン針がパンチ孔に入り込んで、縫い目の形状が乱れているという問題点があった。特に皮革シートは、その質感から高級自動車、高級ソファに使用されるが、縫い目が乱れていると、高級感が損なわれるという問題点があった。また、縫製時にミシン針がパンチ孔によって折れ曲がり、ミシン針が使えなくなったり、シート製品に損傷を与えてしまうという問題点があった。
【0005】
本願発明は、上記問題点に鑑み案出したものであって、複数のパンチングピンの出没をそれぞれ個別に制御して、シート部材の所望する部分のみにパンチ孔を開けることができ、又はシート部材の所望する部分のみにパンチ孔を開けないようにすることができ、シート部材にパンチ孔の影響を受けない領域を形成するようにしたパーフォレーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項1記載のパーフォレーション装置は、上記目的を達成するため、シート部材に穿孔を行うものであって、基台と、基台上に設けられた押圧装置と、押圧装置の押圧軸に取り付けられる穿孔装置とからなり、穿孔装置は、取付部材と、取付部材に移動可能に設けられた複数のパンチングピンと、複数のパンチングピンを非穿孔位置から穿孔位置又は穿孔位置から非穿孔位置へと移動制御可能な制御装置とからなることを特徴とする。
【0007】
本願請求項2記載のパーフォレーション装置は、上記目的を達成するため、前記制御装置は、前記複数のパンチングピンをそれぞれ個別に制御する複数の制御手段からなることを特徴とする。
【0008】
本願請求項3記載のパーフォレーション装置は、上記目的を達成するため、前記制御手段は、パンチングピンを非穿孔位置方向に付勢する弾性部材と、パンチングピンと係合してパンチングピンを弾性部材の弾性に抗して穿孔位置方向に移動させる係合部材と、係合部材をパンチングピンの係合位置と被係合位置に移動させ、パンチングピンを非穿孔位置から穿孔位置又は穿孔位置から非穿孔位置へと移動させる駆動手段とからなることを特徴とする。
【0009】
本願請求項4記載のパーフォレーション装置は、上記目的を達成するため、シート部材に穿孔を行うパーフォレーション装置であって、基台と、基台上に設けられた押圧装置と、押圧装置の押圧軸に取り付けられる穿孔装置とからなり、穿孔装置は、取付部材と、取付部材に設けられ、非穿孔位置から穿孔位置又は穿孔位置から非穿孔位置へと移動可能な複数のパンチングピンと、複数のパンチングピンを穿孔位置で固定制御可能な制御装置とからなることを特徴とする。
【0010】
本願請求項5記載のパーフォレーション装置は、上記目的を達成するため、前記制御装置は、前記複数のパンチングピンをそれぞれ個別に制御する複数の制御手段からなることを特徴とする。
【0011】
本願請求項6記載のパーフォレーション装置は、上記目的を達成するため、前記制御手段は、パンチングピンの穿孔位置において、パンチングピンと係合してパンチングピンを移動不能に固定する係合部材と、係合部材をパンチングピンの係合位置と被係合位置に移動させ、パンチングピンを移動可能状態から固定状態又は固定状態から移動可能状態へと切り替える駆動手段とからなることを特徴とする。
【0012】
本願請求項7記載のパーフォレーション装置は、上記目的を達成するため、前記取付部材には、パンチングピンの軸方向に可動可能な可動部材が設けられており、可動部材は、パンチングピンの先部を出没させる開口を備え、一方に可動するとパンチングピンが開口から突出し、他方に可動するとパンチングピンを内部に収納するように構成され、さらに、可動部材には、開口を開閉する開閉部材が設けられており、当該開閉部材は、前記制御装置によって開閉動作が制御され、パンチングピンが穿孔位置で固定されると開閉可能となることを特徴とする。
【0013】
本願請求項8記載のパーフォレーション装置は、上記目的を達成するため、前記開閉部材は、弾性部材によって閉じる方向に付勢され、前記制御装置によってパンチングピンが穿孔位置で固定されて開閉可能となった状態において、可動部材と連動するように構成されており、可動部材が一方に可動すると開口を開放してパンチングピンが開口から突出し、可動部材が他方に可動するとパンチングピンが可動部材内部に没入して開口を閉塞するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本願発明に係るパーフォレーション装置は、基台上にシート製品を載置し、押圧装置を駆動して、押圧軸に取り付けられる穿孔装置をシート製品に押し付けると、複数のパンチングピンがシート部材を貫通して、シート部材に複数のパンチ孔を形成する。穿孔装置は、制御手段によって、複数のパンチングピンを非穿孔位置から穿孔位置又は穿孔位置から非穿孔位置へと移動制御することができるので、複数のパンチングピンの出没をそれぞれ個別に制御して、シート部材の所望する領域にパンチ孔を形成することができ、又はシート部材の所望する領域にパンチ孔を形成しないようにすることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本願発明に係るパーフォレーション装置の一つの実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、パーフォレーション装置の全体側面図である。図2は、パーフォレーション装置の要部正面図である。図3乃至図6は、穿孔装置の動きを説明する動作説明図である。図7は、穿孔装置の要部側面図である。図8は、パーフォレーション装置の穿孔状態を説明する平面図である。図9は、穿孔加工されたシート部材の説明図である。
【0016】
パーフォレーション装置1は、シート部材3に穿孔を行うものであり、基台2と、基台2上に設けられた押圧装置10と、押圧装置10の押圧軸11に取り付けられる穿孔装置21とからなる。穿孔装置21は、取付部材22と、取付部材22に移動可能に設けられた複数のパンチングピン15と、複数のパンチングピン15を非穿孔位置から穿孔位置又は穿孔位置から非穿孔位置へと移動制御可能な制御装置40とからなる。
【0017】
前記制御装置40は、前記複数のパンチングピン15をそれぞれ個別に制御する複数の制御手段41からなる。前記制御手段41は、パンチングピン15を非穿孔位置方向に付勢する弾性部材20と、パンチングピン15と係合してパンチングピン15を弾性部材20の弾性に抗して穿孔位置方向に移動させる係合部材42と、係合部材42をパンチングピン15の係合位置と被係合位置に移動させ、パンチングピン15を非穿孔位置から穿孔位置又は穿孔位置から非穿孔位置へと移動させる駆動手段(アクチュエーター)56,57とからなる。
【0018】
パーフォレーション装置1は、基台2上にシート部材3を載置し、押圧装置10を駆動して、押圧軸11に取り付けられる穿孔装置21をシート部材3に押し付けると、複数のパンチングピン15がシート部材3を貫通して、シート部材3に複数のパンチ孔5を形成する。穿孔装置21は、制御手段41によって、複数のパンチングピン15を非穿孔位置から穿孔位置又は穿孔位置から非穿孔位置へと移動制御することができるので、複数のパンチングピン15の出没をそれぞれ個別に制御して、シート部材3の所望する領域にパンチ孔5を形成することができ、又はシート部材3の所望する領域にパンチ孔5を形成しないようにすることができる。
【0019】
このように、パーフォレーション装置1は、制御手段41によってパンチングピン15を制御し、シート部材3にパンチ孔領域Aと非パンチ孔領域Bを形成することができるので、この非パンチ孔領域Bに縫製等により縫い目等の加工を施すことが可能となる。このように、非パンチ孔領域Bを形成することができるので、縫製等の加工がパンチ孔5に干渉されず、正確且つ美麗に処理することができ、シート部材3を高級感あふれる物にすることができる。
【0020】
さらにパーフォレーション装置1について詳細に説明する。パーフォレーション装置1は、基台2と、基台2上に設けられた押圧装置10とからなる。押圧装置10には、上下方向に向かって移動する押圧軸11が設けられている。押圧軸11は、油圧シリンダ、空圧シリンダ、電磁式アクチュエータ等の駆動装置によって作動される駆動軸である。押圧軸11の先端には、穿孔装置21が設けられている。
【0021】
穿孔装置21は、取付部材(押圧金型)22と、取付部材(押圧金型)22に上下移動可能に設けられた複数のパンチングピン15と、複数のパンチングピン15を非穿孔位置から穿孔位置又は穿孔位置から非穿孔位置へと移動制御可能な制御装置40とからなる。パンチングピン15は、円軸状のガイド軸16と、ガイド軸16の下端に形成された取付穴17に嵌着固定される穿孔ピン18とからなる。ガイド軸16の側面には、略三角状のガイド片19が設けられている。
【0022】
取付部材(押圧金型)22は、略直方体状に形成され、前記パンチングピン15を上下移動可能に案内する小室23が複数形成されている。取付部材(押圧金型)22は、上部ブロック25と下部ブロック26と蓋プレート27が接合固定されて構成されている。下部ブロック26には、前記パンチングピン15のガイド軸16を案内する下部ガイド孔29が複数形成されている。蓋プレート27には、前記パンチングピン15の穿孔ピン18を挿通すると共にガイド軸16は挿通しない挿通孔30が複数形成されている。前記下部ガイド孔29内であって、前記ガイド軸16と蓋プレート27の間には、パンチングピン15を上方に付勢するバネ部材20が設けられている。
【0023】
上部ブロック25には、前記下部ブロック26に形成された下部ガイド孔29と連通するガイド室31が形成されている。ガイド室31は、前記ガイド軸16を案内する上部ガイド孔32と、前記ガイド片19を案内するガイド溝33とで構成されている。小室23は、前記下部ガイド孔29と前記ガイド室31によって構成される。パンチングピン15は、ガイド片19がガイド溝33に案内されるので、回動不能で上下移動可能であり、前述したように、バネ部材20によって上方に付勢されている。
【0024】
上部ブロック25には、前記ガイド室31の上端と連通する摺動室36が形成されている。摺動室36は、上部ブロック25の側面に形成された開口37と連通する。各摺動室36には、係合部材42が左右方向に摺動可能に取り付けられている。係合部材42は、先端縁43が傾斜しており、後部45が開口37から突出している。
【0025】
取付部材(押圧金型)22には、支持枠部材51が設けられている。支持枠部材51は、底板52と、底板52の両側に設けられた複数の第1の取付アーム53と複数の第2の取付アーム55とで構成されている。第1の取付アーム53には、アクチュエータ56が略垂直に取り付けられている。第2の取付アーム55には、アクチュエータ57が略水平に取り付けられている。従って、支持枠部材51の両側には、略垂直のアクチュエータ56と略水平のアクチュエータ57が交互に並んで配設されている。
【0026】
アクチュエータ56の駆動ロッド56aの先端には、固定片60が固定されている。固定片60には、リンク片61の一方61aが回動可能に取り付けられ、リンク片61の他方61bが略L字状の揺動片63の一方63aに回動可能に連結されている。揺動片63の他方63bは、前記係合部材42の後部45に回動可能に連結されている。なお、揺動片63は、前述したように、略L字状に形成され、中心部63cが支持枠部材51に回動可能に取り付けられている。アクチュエータ57の駆動ロッド57aの先端には、固定片60が固定されている。固定片60は、前記係合部材42の後部45に回動可能に連結されている。
【0027】
制御手段41は、前記パンチングピン15の移動をそれぞれ制御するものであり、パンチングピン15を非穿孔位置方向に付勢するバネ部材20と、パンチングピン15と係合してパンチングピン15をバネ部材20の弾性に抗して穿孔位置方向に移動させる係合部材42と、係合部材42をパンチングピン15の係合位置と被係合位置に移動させ、パンチングピン15を非穿孔位置から穿孔位置又は穿孔位置から非穿孔位置へと移動させるアクチュエータ56,57とからなる。前記制御装置40は、前記複数のパンチングピン15をそれぞれ個別に制御する複数の制御手段41からなる。なお、基台2内には、前記アクチュエータ56,57を個々に制御する制御回路を設けても構わない。
【0028】
基台2の上面には、受け金型65が設けられている。受け金型65は、前記取付部材(押圧金型)22と当接する位置に配置され、所定位置に前記パンチングピン15を挿通する挿通孔66が形成されている。
【0029】
基台2上には、シート部材3をX方向に送る移送装置71が設けられている。移送装置71は、シート部材3を緊張した状態で装着する枠部材72を有する。枠部材72は、基台2上に載置され、基台2に設けられた送り手段によってX方向に送られる。送り手段は、特に限定されるものではなく、種々変更可能であり、当業者においては容易に設計変更をすることができる技術事項である。
【0030】
パーフォレーション装置1は、上記構成を有し、パンチングピン15が取付部材(押圧金型)22内に収納されている。即ち、パンチングピン15は、バネ部材(弾性部材)20によって、上方に付勢され、上端がガイド室31の上壁35に当接し、小室23内に収納された位置(非穿孔位置)にある。
【0031】
各パンチングピン15の出没の制御は、制御装置40によって行われる。制御装置40の制御手段41を制御して、アクチュエータ(駆動手段)56,57を作動させると、係合部材42が摺動室36内に押し込まれ、傾斜した先端縁43がガイド片19に当接し、パンチングピン15をバネ部材(弾性部材)20の弾性に抗して穿孔位置まで突出させる。逆に、制御装置40の制御手段41を制御して、アクチュエータ(駆動手段)56,57の作動を解除すると、係合部材42が摺動室36内から引き出され、先端縁43がガイド片19から離間し、パンチングピン15をバネ部材(弾性部材)20の弾性により非穿孔位置まで移動させる。
【0032】
所望するパンチングピン15を上記したように制御装置40によって穿孔位置まで突出させ、押圧装置10を駆動して押圧軸11を押し下げ、取付部材(押圧金型)22を受け金型65に圧接させる。パンチングピン15がシート部材3を貫通して受け金型65の挿通孔66に挿通され、シート部材3にパンチ孔5を形成する。押圧装置10を駆動して押圧軸11を引き戻し、取付部材(押圧金型)22を受け金型65から離間させる。送り手段によってシート部材3をX方向に移動させる。前記したのと同様に、押圧装置10を駆動して押圧軸11を押し下げ、取付部材(押圧金型)22を受け金型65に圧接させて、シート部材3にパンチ孔5を形成する。これを連続的に繰り返すことにより、シート部材3にパンチ孔加工を施すことができる。また、制御手段40によって、シート部材3にパンチ孔5の形成されるパンチ孔領域Aと、パンチ孔5の形成されない非パンチ孔領域Bを形成することが可能である。
【0033】
シート部材3は、パンチ孔領域Aと非パンチ孔領域Bが形成され、パンチ孔領域Aに所定間隔あけてパンチ孔5が形成され、非パンチ孔領域Bに縫い目等が形成される。シート部材3は、パンチ孔5と縫い目が互いに干渉し合わないように構成されているので、パンチ孔5と縫い目が互いに干渉し合わず、美観及び高級感に優れ、装飾性の高いものにすることができる。
【0034】
本願発明に係るパーフォレーション装置の他の実施の形態を図10,11に基づいて説明する。図10は、穿孔装置の要部正面説明図である。図11は、図10の穿孔装置の動きを説明する動作説明図である。
【0035】
他の実施の形態の概要について説明する。パーフォレーション装置1は、シート部材3に穿孔を行うものであって、基台2と、基台2上に設けられた押圧装置10と、押圧装置10の押圧軸11に取り付けられる穿孔装置81とからなるのは、上述した通りである。穿孔装置81は、取付部材85と、取付部材85に設けられ、非穿孔位置から穿孔位置又は穿孔位置から非穿孔位置へと移動可能な複数のパンチングピン82と、複数のパンチングピン82を穿孔位置で固定制御可能な制御装置40とからなる。前記制御装置40は、前記複数のパンチングピン82をそれぞれ個別に制御する複数の制御手段41を有する。
【0036】
前記制御手段41は、パンチングピン82の穿孔位置において、パンチングピン82と係合してパンチングピン82を移動不能に固定する係合部材42と、係合部材42をパンチングピン82の係合位置と被係合位置に移動させ、パンチングピン82を移動可能状態から固定状態又は固定状態から移動可能状態へと切り替える駆動手段56,57とを有する。
【0037】
前記取付部材85には、パンチングピン82の軸方向に可動可能な可動部材90が設けられている。可動部材90は、パンチングピン82の先部を出没させる開口93を備え、一方(上方)に可動するとパンチングピン82が開口93から突出し、他方(下方)に可動するとパンチングピン82を内部に収納するように構成されている。さらに、可動部材90には、開口93を開閉する開閉部材95が設けられている。当該開閉部材95は、前記制御装置40によって開閉動作が制御され、パンチングピン82が穿孔位置で固定されると開閉可能となる。
【0038】
前記開閉部材95は、弾性部材102によって閉じる方向に付勢され、前記制御装置40によってパンチングピン82が穿孔位置で固定されて開閉可能となった状態において、可動部材90と連動するように構成されており、可動部材90が一方(上方)に可動すると開口93を開放してパンチングピン82が開口93から突出し、可動部材90が他方(下方)に可動するとパンチングピン82が可動部材90内部に没入して開口93を閉塞するように構成されている。
【0039】
さらに穿孔装置81について詳細に説明する。前記実施の形態の穿孔装置21は、各パンチングピン15の出没を制御装置40の各係合部材42によって制御した。下記の実施の形態の穿孔装置81は、各パンチングピン82の可動状態を制御装置40の各係合部材42によって制御する。即ち、以下の通りである。取付部材85は、矩形ブロック状に形成され、上下方向に向かってパンチングピン82を上下方向に案内するガイド孔86が設けられており、上面89であって、ガイド孔86の上端にはパンチングピン82の頭部83を収容する凹部87が形成されている。前記係合部材42は、パンチングピン82の頭部83と係合するようになっており、係合している時にはパンチングピン82を取付部材85に固定し、係合していない時にはパンチングピン82を取付部材85に移動可能としている。
【0040】
前記取付部材85には、パンチングピン82の軸方向に可動可能なカバー部材(可動部材)90が設けられている。カバー部材(可動部材)90は、箱形に形成され、前記取付部材85の側面88に沿って摺動する外周壁91と底壁92とを有する。底壁92には、取付部材85に設けられたパンチングピン82の先部を出没させる開口93が形成されている。また、底壁92には、開口93を開閉する開閉板(開閉部材)95が設けられている。開閉板95は、底壁92に形成された案内溝96に案内され摺動する。
【0041】
前記開閉板95は、後端がリンク部材101の下端に回動可能に連結され、リンク部材101に取り付けられたバネ部材(弾性部材)102によって閉じる方向に付勢されている。リンク部材101は、上部がカバー部材(可動部材)90に回動可能に取り付けられ、上部に係合突起103が形成されている。
【0042】
前記取付部材85には、略L字状の係合アーム105が回動可能に取り付けられている。係合アーム105は、前記リンク部材101の係合突起103と係合可能な位置と非係合位置に回動可能であり、バネ部材(弾性部材)106によって非係合方向に付勢されている。係合アーム105の上端には、係合凸部107が形成されている。
【0043】
また、取付部材85には、前記ガイド孔86と略平行に軸孔110が形成され、この軸孔110に係合軸111が上下方向に摺動可能に取り付けられている。係合軸111は、下端112が前記係合アーム105の係合凸部107に当接し、上端113が取付部材85の上面89から突出し、係合部材42に係合可能となっている。このように、穿孔装置81は、複数のパンチングピン82と、各パンチングピン82に対応した開口93と、各開口93を開閉する開閉板95と、各開閉板95を開閉する係合軸111とを有し、係合部材42が対応関係にあるパンチングピン82と係合軸111に略同時に操作することになる。
【0044】
上記構成のパーフォレーション装置1は、初期状態において、パンチングピン82が係合部材42に係合しておらず、パンチングピン82が取付部材85のガイド孔86内で上下方向に可動可能となっており、パンチングピン82がカバー部材(可動部材)90内に収納されている。前述したように、係合部材42は、制御装置40の制御手段41を制御して、アクチュエータ(駆動手段)56,57を作動させることによって押し込まれ、傾斜した先端縁43が係合軸111の上端113及びパンチングピン82の頭部83を下方に押し下げ、係合部材42の下端縁44がパンチングピン82の頭部83と係合軸111の上端113に当接する。パンチングピン82は、取付部材85に固定される。係合軸111は、下端112が係合アーム105の係合凸部107を押圧し、係合アーム105がバネ部材106の弾性に抗して前記リンク部材101の係合突起103と係合可能な位置に回動する。
【0045】
アクチュエータ(駆動手段)56,57が作動されずに押し込まれない係合部材42は、下端縁44がパンチングピン82の頭部83と係合軸111の上端113に当接しない。従って、パンチングピン82は、取付部材85に固定されず、上下方向に可動可能であり、係合軸111は、下端112が係合アーム105の係合凸部107を押圧しないので、係合アーム105はリンク部材101の係合突起103との非係合位置で静止している。
【0046】
所望するパンチングピン82を上記したように制御装置40によって穿孔位置で固定し、押圧装置10を駆動して押圧軸11を押し下げる。穿孔装置81が下方に移動し、カバー部材(可動部材)90の底壁92がシート部材3に圧接する。カバー部材(可動部材)90がシート部材3に圧接して下方への移動が停止するが、取付部材85はそのまま下方へ移動する。係合アーム105がリンク部材101の係合突起103に係合してリンク部材101をバネ部材(弾性部材)102の弾性に抗して回動させ、開閉板95が開口93を開放する。開閉板95が開口93を開放すると略同時に、パンチングピン82の先端が開口93から突出し、シート部材3を貫通してシート部材3にパンチ孔5を形成する。
【0047】
穿孔位置で固定されていないパンチングピン82は、押圧装置10を駆動して穿孔装置81を下方に移動させ、カバー部材(可動部材)90の底壁92をシート部材3に圧接させると、カバー部材(可動部材)90がシート部材3に圧接して下方への移動が停止し、取付部材5はそのまま下方へ移動するが、頭部83が係合部材42に係合していないので、先端が開閉板95に当接して上端が取付部材85の上面89から上方に突出する。なお、穿孔位置で固定されていないパンチングピン82に対応する係合軸111も、係合部材42に係合していないので、下端112が係合アーム105の係合凸部107を押圧することがなく、そのため、開閉板95は、開口93を閉じたままである。
【0048】
押圧装置10を駆動して穿孔装置81を上方に移動させると、カバー部材(可動部材)90が下方に移動し、開口93から先端が突出したパンチングピン82がカバー部材(可動部材)90内に収納され、開閉板(開閉部材)95が開口93を閉塞して、元の初期状態に復帰する。なお、取付部材85とカバー部材(可動部材)90の間に弾性部材を介在させ、カバー部材(可動部材)90を下方に付勢するように構成することが望ましい。
【0049】
このように、穿孔装置81は、制御手段40によって、シート部材3にパンチ孔5の形成されるパンチ孔領域Aと、パンチ孔5の形成されない非パンチ孔領域Bを形成することが可能である。図9に示すように、シート部材3は、パンチ孔領域Aと非パンチ孔領域Bが形成され、パンチ孔領域Aに所定間隔あけてパンチ孔5が形成され、非パンチ孔領域Bに縫い目等が形成される。シート部材3は、パンチ孔5と縫い目が互いに干渉し合わないように構成されているので、パンチ孔5と縫い目が互いに干渉し合わず、美観及び高級感に優れ、装飾性の高いものにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本願発明は、皮革シート、軟質合成樹脂シートにパンチ孔加工を行うパーフォレーション装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】パーフォレーション装置の全体側面図である。
【図2】パーフォレーション装置の要部正面図である。
【図3】穿孔装置の動きを説明する動作説明図である。
【図4】穿孔装置の動きを説明する動作説明図である。
【図5】穿孔装置の動きを説明する動作説明図である。
【図6】穿孔装置の動きを説明する動作説明図である。
【図7】穿孔装置の要部側面図である。
【図8】パーフォレーション装置の穿孔状態を説明する平面図である。
【図9】穿孔加工されたシート部材の説明図である。
【図10】他の実施の形態に係る穿孔装置の要部正面説明図である。
【図11】図10の穿孔装置の動きを説明する動作説明図である。
【符号の説明】
【0052】
X シート部材の送り方向
A パンチ孔領域
B 非パンチ孔領域
1 パーフォレーション装置
2 基台
3 シート部材
5 パンチ孔
10 押圧装置
11 押圧軸
15 パンチングピン
16 ガイド軸
17 取付穴
18 穿孔ピン
19 ガイド片
20 バネ部材(弾性部材)
21 穿孔装置
22 取付部材(押圧金型)
23 小室
25 上部ブロック
26 下部ブロック
27 蓋プレート
29 下部ガイド孔
30 挿通孔
31 ガイド室
32 上部ガイド孔
33 ガイド溝
35 上壁
36 摺動室
37 開口
40 制御装置
41 制御手段
42 係合部材
43 先端縁
44 下端縁
45 後部
51 支持枠部材
52 底板
53 第1の取付アーム
55 第2の取付アーム
56 アクチュエータ(駆動手段)
56a 駆動ロッド
57 アクチュエータ(駆動手段)
57a 駆動ロッド
60 固定片
61 リンク片
61a 一方
61b 他方
63 揺動片
63a 一方
63b 他方
63c 中心部
65 受け金型
66 挿通孔
71 移送装置
72 枠部材
81 穿孔装置
82 パンチングピン
83 頭部
85 取付部材
86 ガイド孔
87 凹部
88 側面
89 上面
90 カバー部材(可動部材)
91 外周壁
92 底壁
93 開口
95 開閉板(開閉部材)
96 案内溝
101 リンク部材
102 バネ部材(弾性部材)
103 係合突起
105 係合アーム
106 バネ部材(弾性部材)
107 係合凸部
110 軸孔
111 係合軸
112 下端
113 上端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート部材に穿孔を行うパーフォレーション装置であって、
基台と、基台上に設けられた押圧装置と、押圧装置の押圧軸に取り付けられる穿孔装置とからなり、
穿孔装置は、取付部材と、取付部材に移動可能に設けられた複数のパンチングピンと、複数のパンチングピンを非穿孔位置から穿孔位置又は穿孔位置から非穿孔位置へと移動制御可能な制御装置とからなることを特徴とするパーフォレーション装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記複数のパンチングピンをそれぞれ個別に制御する複数の制御手段からなることを特徴とする請求項1記載のパーフォレーション装置。
【請求項3】
前記制御手段は、パンチングピンを非穿孔位置方向に付勢する弾性部材と、パンチングピンと係合してパンチングピンを弾性部材の弾性に抗して穿孔位置方向に移動させる係合部材と、係合部材をパンチングピンの係合位置と被係合位置に移動させ、パンチングピンを非穿孔位置から穿孔位置又は穿孔位置から非穿孔位置へと移動させる駆動手段とからなることを特徴とする請求項2記載のパーフォレーション装置。
【請求項4】
シート部材に穿孔を行うパーフォレーション装置であって、
基台と、基台上に設けられた押圧装置と、押圧装置の押圧軸に取り付けられる穿孔装置とからなり、
穿孔装置は、取付部材と、取付部材に設けられ、非穿孔位置から穿孔位置又は穿孔位置から非穿孔位置へと移動可能な複数のパンチングピンと、複数のパンチングピンを穿孔位置で固定制御可能な制御装置とからなることを特徴とするパーフォレーション装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記複数のパンチングピンをそれぞれ個別に制御する複数の制御手段からなることを特徴とする請求項4記載のパーフォレーション装置。
【請求項6】
前記制御手段は、パンチングピンの穿孔位置において、パンチングピンと係合してパンチングピンを移動不能に固定する係合部材と、係合部材をパンチングピンの係合位置と被係合位置に移動させ、パンチングピンを移動可能状態から固定状態又は固定状態から移動可能状態へと切り替える駆動手段とからなることを特徴とする請求項5記載のパーフォレーション装置。
【請求項7】
前記取付部材には、パンチングピンの軸方向に可動可能な可動部材が設けられており、
可動部材は、パンチングピンの先部を出没させる開口を備え、一方に可動するとパンチングピンが開口から突出し、他方に可動するとパンチングピンを内部に収納するように構成され、
さらに、可動部材には、開口を開閉する開閉部材が設けられており、
当該開閉部材は、前記制御装置によって開閉動作が制御され、パンチングピンが穿孔位置で固定されると開閉可能となることを特徴とする請求項4、5又は6記載のパーフォレーション装置。
【請求項8】
前記開閉部材は、弾性部材によって閉じる方向に付勢され、前記制御装置によってパンチングピンが穿孔位置で固定されて開閉可能となった状態において、可動部材と連動するように構成されており、可動部材が一方に可動すると開口を開放してパンチングピンが開口から突出し、可動部材が他方に可動するとパンチングピンが可動部材内部に没入して開口を閉塞するように構成されていることを特徴とする請求項7記載のパーフォレーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−110869(P2010−110869A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286507(P2008−286507)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(505290829)株式会社縫技研究所 (15)
【出願人】(591189535)ミドリホクヨー株式会社 (37)
【Fターム(参考)】