説明

パーフルオロビニルエーテルの製造方法

一般式(I−A):RO−CR’X−CR’’R’’’X’(I−A)(式中、Rは、C〜Cパーフルオロ(オキシ)アルキル基を表し;互いに等しいかまたは異なる、R’、R’’およびR’’’は独立して、フッ素原子またはC〜Cパーフルオロ(オキシ)アルキル基を表し;互いに等しいかまたは異なる、XおよびX’は独立してCl、BrまたはIのうちから選択される);
または(IB)


(式(I−B)(式中、互いに等しいかまたは異なる、RおよびR’は独立して、フッ素原子またはC〜Cパーフルオロ(オキシ)アルキル基を表し;互いに等しいかまたは異なる、YおよびYは独立して、フッ素原子またはC〜Cパーフルオロアルキル基を表し;XおよびX’は上に定義された通りである)を有するハロフルオロエーテル(HFE)の水素化脱ハロゲンによるパーフルオロビニルエーテルの製造方法であって、前記ハロフルオロエーテル(HFE)を、高くても340℃の温度で少なくとも1つのVIIIB族の遷移金属を含む触媒の存在下に水素と接触させる工程を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーフルオロビニルエーテルへのハロフルオロエーテルの水素化脱ハロゲン方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーフルオロビニルエーテルは、様々なフルオロポリマー、特に熱加工性テトラフルオロエチレン(TFE)ベースのプラスチックおよびエラストマーの製造用の有用なモノマーである。
【0003】
パーフルオロビニルエーテルの製造方法は当該技術分野では公知であり、上記方法は一般に、遷移金属の存在下の液相での好適なハロフルオロエーテル前駆体の脱ハロゲンを含む。
【0004】
このように、(特許文献1)(SOLVAY SOLEXIS SPA)2007年8月30日は、亜鉛、銅、マンガンのような遷移金属またはZn/Cu、Zn/Sn、Zn/Hgのような金属カップルの存在下のある種のハロフルオロエーテルの脱ハロゲンによるパーフルオロビニルエーテルの液相製造方法を開示している。
【0005】
それにもかかわらず、先行技術の方法は、かなりの量の金属ハロゲン化物水溶液または泥が副生物として典型的には得られる(例えばクロロフルオロエーテルが亜鉛上で脱塩素されるときにはZnCl溶液/泥が生成される)という不利点に一般に悩まされる。目標のパーフルオロビニルエーテルからの上記副生物の分離ならびにそれらの取り扱いおよび廃棄処分は、これらの泥が高度に腐食性であり、かつ、おそらく負の環境影響を与えるので、時間がかかり、費用が高くつき、そして工業的観点から非常に厄介である。
【0006】
それ故、先行技術の液相法の欠点を克服する、費用効果的な、工業的なパーフルオロビニルエーテルの製造方法が当該技術分野で必要とされた。
【0007】
不飽和化合物を選択的に生成するためのクロロフルオロカーボン(CFC)の接触水素化脱塩素は当該技術分野で公知である。(特許文献2)(UNION CARBIDE)1953年10月14日および(特許文献3)(UNION CARBIDE)1954年8月3日は、400〜475℃の範囲の温度で担持ニッケル触媒上で1−クロロ−1,2,2−トリフルオロエチレン(CTFE)を生成するためのCFC−113の気相水素化脱塩素を開示しているが、より低い温度では触媒性能がより悪い。
【0008】
さらに、不飽和化合物を比較的低い温度で生成するためのCFCの接触水素化脱塩素もまた当該技術分野で公知である。(特許文献4)(DU PONT DE NEMOURS)1991年11月26日は、200℃での5重量%Re/C触媒上のCTFEへのCFC−113の選択的気相水素化脱塩素を開示している。また、(非特許文献1)は、CTFEを生成するためのCFC−113のRu接触気相水素化脱塩素を開示している。非常に高い水素/基質モル比が、不飽和化合物を選択的に得るために必須であると教示されており、この高い水素消費はこの方法を非経済的なものにする。
【0009】
最後に、(非特許文献2)は、200℃で、とりわけ、タリウムのような金属添加物を含有するパラジウム触媒上でCTFEまたは1,2,2−トリフルオロエチレン(TrFE)を生成するためのCFC−113の選択的気相水素化脱塩素を開示している。(特許文献5)(DAIKIN INDUSTRIES)1996年3月12日は、200℃でTl/Ru触媒(Tl/Ruモル比は2:1である)上で選択的にCTFEを生成するためのCFC−113の気相水素化脱塩素を開示している。これらの公文書は、とりわけ、高毒性のTlのような、ある種の金属ドーパントを使用すると、上記触媒の水素化活性を抑えながら、水素化脱塩素を選択的に促進することが可能であることを教示している。
【0010】
このたび本出願人は意外にも、ある種の条件下に接触水素化脱ハロゲン法が、高選択率でパーフルオロビニルエーテルを得るためにハロフルオロエーテルに有利にも適用できることを見いだした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007203368号明細書
【特許文献2】英国特許第698386号明細書
【特許文献3】米国特許第2685606号明細書
【特許文献4】米国特許第5068473号明細書
【特許文献5】米国特許第5498806号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】MORI、Tohruら、Hydrodechlorination of 1,1,2−trichloro−1,2,2−trifluoroethane(CFC−113) over supported ruthenium and other noble metal catalysts、Catalysis Today.vol.88(2004)、111〜120ページ
【非特許文献2】OHNISHI,Ryuichiroら、Selective hydrodechlorination of CFC−113 on Bi− and Tl−modified palladium catalysts、29〜41ページ
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、一般式(I−A):
O−CR’X−CR’’R’’’X’ (I−A)
(式中、Rは、C〜Cパーフルオロ(オキシ)アルキル基を表し;互いに等しいかまたは異なる、R’、R’’およびR’’’は独立して、フッ素原子またはC〜Cパーフルオロ(オキシ)アルキル基を表し;互いに等しいかまたは異なる、XおよびX’は独立してCl、BrまたはIのうちから選択される);
または(I−B):
【化1】

(式中、互いに等しいかまたは異なる、RおよびR’は独立して、フッ素原子またはC〜Cパーフルオロ(オキシ)アルキル基を表し;互いに等しいかまたは異なる、YおよびYは独立して、フッ素原子またはC〜Cパーフルオロアルキル基を表し;XおよびX’は上に定義された通りである)
を有するハロフルオロエーテル(HFE)の水素化脱ハロゲンによるパーフルオロビニルエーテルの製造方法であって、
上記ハロフルオロエーテル(HFE)を、高くても340℃の温度で少なくとも1つのVIIIB族の遷移金属を含む触媒の存在下に水素と接触させる上記工程を含む方法を提供することが本発明の目的である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本出願人は、本発明の方法を用いて、金属ハロゲン化物含有廃水および/または泥の形成が実質的になしに、パーフルオロビニルエーテルを(96%を超える)高い選択率で成功裡に単離することが有利にも可能であることを見いだした。
【0015】
本発明の方法は、ある種のVIIIB族遷移金属触媒の競争的な同時に起こる水素化活性を抑えることが知れられている、とりわけ、水銀、タリウム、鉛、カドミウムのような、金属ドーパントを使用する必要性が全くなしに、その結果上記金属ドーパントの使用に関連する毒性問題が完全に回避されて、式それぞれ(A)および(B):
O−CR’=CR’’R’’’ (A
【化2】

(式中、R、R’、R’’、R’’’、Y、Y、RおよびR’は上に定義されたような意味を有する)
のパーフルオロビニルエーテルを有利にも選択的に得ることを可能にする。
【0016】
本方法は340℃を超えない温度で実施されるので、他の方法ではVIIIB族遷移金属触媒寿命を著しく低下させることが知られているHFによる被毒、焼結またはコーキング現象を本質的に回避することができる。
【0017】
用語「水素化脱ハロゲン」は、本明細書で用いるところでは、相当するパーフルオロビニルエーテルを生成するために、水素の存在下に上記ハロフルオロエーテル(HFE)の2つの隣接するフッ素置換炭素原子からのCl、BrまたはIのうちから選択される2個のハロゲン原子、式(I−A)および(I−B)中のX、X’の選択的脱離を意味することが意図される。
【0018】
本発明の第1実施形態によれば、本発明のハロフルオロエーテル(HFE)は、上記のような一般式(I−A)(式中、互いに等しいかまたは異なる、XおよびX’は独立して、Cl、BrまたはIのうちから選択される、ただし上記式(I−A)中のXおよびX’の少なくとも1つは塩素原子である)を有するクロロフルオロエーテル(HFE−1)である。
【0019】
この第1実施形態のハロフルオロエーテル(HFE)は好ましくは、上記のような一般式(I−A)(式中、XおよびX’は互いに等しく、塩素原子である)を有するクロロフルオロエーテル(HFE−2)である、すなわち当該クロロフルオロエーテル(HFE−2)は本明細書で下の式(II−A):
O−CR’Cl−CR’’R’’’Cl (II−A)
(式中、Rは、C〜Cパーフルオロ(オキシ)アルキル基、好ましくはC〜Cパーフルオロアルキル基、より好ましくはC〜Cパーフルオロアルキル基を表し;互いに等しいかまたは異なる、R’、R’’およびR’’’は独立して、フッ素原子またはC〜Cパーフルオロ(オキシ)アルキル基、好ましくはフッ素原子またはC〜Cパーフルオロアルキル基、より好ましくはフッ素原子またはC〜Cパーフルオロアルキル基、さらにより好ましくはフッ素原子を表す)
に従う。
【0020】
本発明のクロロフルオロエーテル(HFE−2)は典型的には、プロセス条件下でガス状化合物である。
【0021】
本発明に有用な式(II−A)で表されるクロロフルオロエーテル(HFE−2)の代表的な化合物には、次の化合物が含まれるが、それらに限定されない:CFOCFClCFCl、CFCFOCFClCFCl、CFCFCFOCFClCFCl、CFOCFOCFClCFCl、CFCFOCFOCFClCFCl、CFOCFCFOCFOCFClCFCl。
【0022】
本発明の第2実施形態によれば、本発明のハロフルオロエーテル(HFE)は、上記のような一般式(I−B)(式中、互いに等しいかまたは異なる、XおよびX’は独立して、Cl、BrまたはIのうちから選択される、ただし上記式(I−B)中のXおよびX’の少なくとも1つは塩素原子である)を有するクロロフルオロジオキソラン(HFE−3)である。
【0023】
この第2実施形態のハロフルオロエーテル(HFE)は好ましくは、上記のような一般式(I−B)(式中、XおよびX’は互いに等しく、塩素原子である)を有するクロロフルオロジオキソラン(HFE−4)である、すなわち当該クロロフルオロジオキソラン(HFE−4)は本明細書で下の式(II−B):
【化3】

(式中、互いに等しいかまたは異なる、RおよびR’は独立して、フッ素原子またはC〜Cパーフルオロ(オキシ)アルキル基、好ましくはフッ素原子またはC〜Cパーフルオロオキシアルキル基、より好ましくはフッ素原子または−OCF基を表し;互いに等しいかまたは異なる、YおよびYは独立して、フッ素原子またはC〜Cパーフルオロアルキル基、好ましくはフッ素原子を表す)
に従う。
【0024】
本発明のクロロフルオロジオキソラン(HFE−4)は典型的には、プロセス条件下でガス状化合物である。
【0025】
本発明に有用な式(II−B)で表されるクロロフルオロジオキソラン(HFE−4)の代表的な化合物には、次の化合物が含まれるが、それらに限定されない:
【化4】

【0026】
本発明の方法は、少なくとも1つのVIIIB族の遷移金属を含む触媒の存在下に実施される。
【0027】
不確かさを回避するために、用語「VIIIB族の遷移金属」は、次の金属を意味することが本明細書によって意図される:Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt。
【0028】
好ましいVIIIB族遷移金属のうち、Ru、Ni、PdおよびPtに言及することができる。
【0029】
本発明の触媒は典型的には担持触媒である、すなわちそれは、上記のようなVIIIB族遷移金属と不活性担体とを含む。
【0030】
不活性担体は一般に、カーボン、シリカおよびアルミナから、好ましくはカーボンから、より好ましくは、800〜1500m/g、好ましくは1000〜1500m/g、さらにより好ましくは1100〜1300m/gのBET表面積を有するカーボンから選択される。
【0031】
BET表面積は、ISO 9277に従って、計算のBrunauer、EmmettおよびTeller法によるN吸着によって測定される。
【0032】
触媒は有利には、VIIIB族遷移金属を0.1重量%〜2重量%、好ましくは0.3重量%〜1.8重量%、より好ましくは0.5重量%〜1.5重量%の量で含んでもよい。
【0033】
本発明に使用される触媒は一般に、本発明の方法に使用される前に、250℃〜450℃、より好ましくは250℃〜400℃、さらにより好ましくは300℃〜400℃に含まれる温度で水素下でのプレ還元によって活性化される。典型的には、上記触媒の再生はまた、300℃〜500℃、より好ましくは350℃〜500℃、さらにより好ましくは400℃〜500℃に含まれる温度で水素下に実施される。
【0034】
良好な結果は、ニッケルの量が0.5重量%〜1.5重量%の範囲である、カーボンに担持されたニッケル触媒で得られた。
【0035】
非常に良好な結果は、ルテニウムの量が0.5重量%〜1.5重量%の範囲である、カーボンに担持されたルテニウム触媒で得られた。Ru/C触媒が、VIIIB族遷移金属をベースとする他の担持触媒に対して比較的より低い温度でのそれらの良好な触媒性能の観点から特に好ましいことが分かった。
【0036】
本発明の方法は高くても340℃の温度で実施されるべきである。
【0037】
本出願人は、340℃を超えない温度で本方法を実施することがパーフルオロビニルエーテルを高収率で得るために不可欠であることを意外にも見いだした。温度が340℃を超えるとき、選択率の劇的な低下が観察される。
【0038】
パーフルオロビニルエーテルへのハロフルオロエーテルの効率的な転化を達成するために好適な温度の下限は特に限定されない。有利には少なくとも190℃、好ましくは少なくとも200℃、より好ましくは少なくとも210℃の温度が一般に用いられる。最良の結果は210℃および320℃で得られた。
【0039】
本発明の方法は有利には、気相で、すなわち水素ならびにハロフルオロエーテル(HFE)および相当するパーフルオロビニルエーテルの両方が気体状態にある条件で実施される。それにもかかわらず、触媒は一般に固体として使用されると理解され、その結果、反応は有利には気相の反応体と固体状態の触媒との間で行われる。
【0040】
水素は、ニート反応体としてか不活性ガス、例えば窒素、ヘリウムまたはアルゴンで希釈されてかのどちらかで供給することができる。
【0041】
本発明の方法は典型的には、固定床および流動床反応器を含む、任意の好適な反応器で実施される。本方法は一般に、触媒の固定床を含むプラグフロー反応器で連続的に実施される。
【0042】
圧力は決定的に重要であるわけではない。本発明の反応は、1〜3バールの圧力を用いることができるが、大気圧下に典型的には実施される。
【0043】
ハロフルオロエーテル(HFE)と触媒との間の接触時間は特に限定されず、とりわけ、反応温度および他のプロセスパラメーターに関連して当業者によって選択されるであろう。接触時間は、連続プロセスについては、0℃および1バールの標準条件での触媒床容量対ガス流量の比と定義され、2、3秒〜数時間の間で変わってもよいが、この接触時間は一般に2〜200秒、好ましくは5〜150秒に含まれると理解される。
【0044】
連続的に運転されるプロセスについては、オンストリーム時間は5〜500時間、好ましくは10〜200時間の間で変わってもよい。不確かさを回避するために、オンストリーム時間は、触媒再生のための相次ぐ反応器シャットダウンの間の連続運転の継続期間と本明細書で定義される。使用済み触媒は有利には、上述したように再生し、本発明の方法でさらなるオンストリーム時間にリサイクルできることがまた理解される。
【0045】
良好な転化率は一般に、0.8〜4、好ましくは0.8〜3、より好ましくは0.8〜2に含まれる水素/ハロフルオロエーテル(HFE)モル比の存在下に得られる。
【0046】
転化率は典型的には、水素/ハロフルオロエーテル(HFE)モル比を4まで上げることによって増加し、4より大きい水素/ハロフルオロエーテル(HFE)モル比は追加の増加を提供せず、通常非経済的であることが分かった。
【0047】
ハロゲン化酸(halogenidric acid)は一般に、本発明の方法から副生物として得られる。ハロフルオロエーテル(HFE)が、クロロフルオロエーテル(HFE−1)、クロロフルオロエーテル(HFE−2)、クロロフルオロジオキソラン(HFE−3)またはクロロフルオロジオキソラン(HFE−4)から選択されるとき、塩化水素が典型的には得られ;ハロゲン化酸は、水性アルカリ性溶液中での中和によってか、または水への吸収によって容易に回収することができる。
【0048】
本発明は、ここに、その目的が例示的であるにすぎず、本発明の範囲を限定しない以下の実施例に関してより詳細に記載される。
【実施例】
【0049】
一般的な手順
連続気相接触法は、プラグフロー反応器で、大気圧で実施した。全体反応は次式:
CFOCFClCFCl+H→CFOCF=CF+2HCl
で例示される。1200m/gのBET表面積を有するカーボンに担持されたVIIIB族の遷移金属を含む所定量の触媒を、520mmの長さおよび10mmの内径を有するステンレススチール管型反応器に装填した。触媒床を反応器の中間部分に置く一方で、その上方および下方部分には顆粒石英を詰めた。触媒を8時間の間ずっと流動ヘリウム(5Nl/h)中350℃で乾燥させ、次に室温に冷却した。触媒を次に、5℃/分の速度で350℃へ加熱しながらヘリウムで希釈した水素(5vol%H)の流れ下にプレ還元した。水素の流れを次に10vol%に上げ、30分後に、50vol%での水素の流れを4時間の間ずっと供給した。触媒活性化が完了するとすぐに、CFOCFClCFClおよび水素とヘリウムとの混合物を連続的に反応へ供給した。
【0050】
反応からのガス状反応器混合物をサンプリングし、選択率および転化率を測定するためにGCおよびGC−MSで分析した。
【0051】
結果を本明細書で下の表1にまとめる(実施例1〜3)。Ru/C触媒が、ハロフルオロエーテル(HFE)反応体の比較的より低い流量下で他の担持VIIIB族遷移金属触媒に対して比較的より低い温度で、転化率と選択率との最良の折衷を与えることが分かった。
【0052】
比較例1Cおよび2Cもまた担持VIIIB族遷移金属触媒の存在下に行われ、選択率が340℃を超える温度で劇的に低下することが分かることを示した。
【0053】
【表1】

【0054】
さらに、本明細書で下の表2は、水素/CFOCFClCFClモル比を上げることによって担持VIIIB族遷移金属触媒の選択性について得られた実験データをまとめる。実施例4〜6にも示されるように、所与の温度および触媒使用量で、転化率は、選択率への有害な影響が全くなしに、水素/ハロフルオロエーテル(HFE)モル比を上げることによって有利に増加させることができる。
【0055】
【表2】

【0056】
本明細書で下の表3(実施例7〜9)に示されるように、所与の水素/ハロフルオロエーテル(HFE)モル比で、良好な選択率が比較的より低い触媒使用量でさえも有利に得られた。
【0057】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I−A):
O−CR’X−CR’’R’’’X’ (I−A)
(式中、Rは、C〜Cパーフルオロ(オキシ)アルキル基を表し;互いに等しいかまたは異なる、R’、R’’およびR’’’は独立して、フッ素原子またはC〜Cパーフルオロ(オキシ)アルキル基を表し;互いに等しいかまたは異なる、XおよびX’は独立してCl、BrまたはIのうちから選択される);
または(I−B):
【化1】

(式中、互いに等しいかまたは異なる、RおよびR’は独立して、フッ素原子またはC〜Cパーフルオロ(オキシ)アルキル基を表し;互いに等しいかまたは異なる、YおよびYは独立して、フッ素原子またはC〜Cパーフルオロアルキル基を表し;XおよびX’は上に定義された通りである)
を有するハロフルオロエーテル(HFE)の水素化脱ハロゲンによるパーフルオロビニルエーテルの製造方法であって、
前記ハロフルオロエーテル(HFE)を、高くても340℃の温度で少なくとも1つのVIIIB族の遷移金属を含む触媒の存在下に水素と接触させる工程を含む方法。
【請求項2】
前記ハロフルオロエーテル(HFE)が、一般式(I−A)(式中、互いに等しいかまたは異なる、XおよびX’は独立してCl、BrまたはIから選択される、ただし前記式(I−A)中のXおよびX’の少なくとも1つは塩素原子である)を有するクロロフルオロエーテル(HFE−1)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ハロフルオロエーテル(HFE)が、一般式(II−A):
O−CR’Cl−CR’’R’’’Cl (II−A)
(式中、Rは、C〜Cパーフルオロ(オキシ)アルキル基、好ましくはC〜Cパーフルオロアルキル基、より好ましくはC〜Cパーフルオロアルキル基を表し;互いに等しいかまたは異なる、R’、R’’およびR’’’は独立して、フッ素原子またはC〜Cパーフルオロ(オキシ)アルキル基、好ましくはフッ素原子またはC〜Cパーフルオロアルキル基、より好ましくはフッ素原子またはC〜Cパーフルオロアルキル基、さらにより好ましくはフッ素原子を表す)
を有するクロロフルオロエーテル(HFE−2)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒が、少なくとも1つのVIIIB族の遷移金属と不活性担体とを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒がカーボンに担持されたルテニウム触媒である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ルテニウムの量が0.5重量%〜1.5重量%の範囲である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
190℃〜340℃、好ましくは200℃〜340℃、より好ましくは210℃〜320℃に含まれる温度で実施される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
水素/ハロフルオロエーテル(HFE)モル比が、0.8〜4、好ましくは0.8〜3、より好ましくは0.8〜2に含まれる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2011−522852(P2011−522852A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512937(P2011−512937)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056858
【国際公開番号】WO2009/150091
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(508305960)ソルヴェイ・ソレクシス・エッセ・ピ・ア (53)
【Fターム(参考)】