説明

ヒアルロン酸およびボツリヌス毒素を使用する軟組織傷害の治療

哺乳動物における軟組織を支持するための方法が提供される。態様では、該方法が、動物またはヒトにおける急性的または慢性的に傷害を受けた軟組織を治療することが可能であり、該方法は、傷害を受けた軟組織の周囲に、治療有効量のHAおよびボツリヌス毒素を組み合わせて投与するステップを含む。該方法は、ヒトなどの動物における捻挫および挫傷を治療するのに有用である。本発明の一局面において、軟組織を治療するための、治療有効量のHAおよびボツリヌス毒素を含む組成物も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2009年1月7日に出願された米国仮出願第61/142,941号(これは、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、軟組織の治療に関し、より具体的には、動物およびヒトにおける軟組織傷害の治療にヒアルロン酸およびボツリヌス毒素を組み合わせて用いることに関する。
【背景技術】
【0003】
毎年、数百万人の人々が、軟組織の急性傷害またはその酷使による傷害、例えば、靭帯に対する傷害(捻挫)または筋腱構造に対する傷害(挫傷)の医学的治療を求めている。
【0004】
捻挫の例では、軟組織傷害が、1度(わずかな靭帯断裂)から、2度(凝血の形成および中等度の機能障害を伴うより大きな断裂)、3度(機能および力学的安定性の喪失を伴う靭帯の完全な分離)へと変化しうる。症状には、疼痛、発熱、発赤、腫脹、および機能的喪失が含まれる。捻挫の治療は、炎症および疼痛の軽減を対象とする。軽度〜中等度の捻挫(1度および2度)の治療は、通常、自宅で、安静、アイシング、圧迫、および挙上(いわゆるRICE治療;安静−アイシング−圧迫−挙上)、アスピリン、イブプロフェン、およびナプロキセンが含まれる、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)の使用、または、装具もしくはギプスを含めた、各種のデバイスを伴う固定により行われる。より重度の傷害は、副木固定、ギプス固定、または手術による安定化を必要としうる。
【0005】
軟組織傷害にはまた、筋腱単位の外傷性傷害から、または筋腱単位の不適切な使用もしくは酷使から生じ、疼痛、腫脹、ならびに該傷害を受けた筋肉を用いるときの運動障害を特徴とする挫傷も含まれうる。治療には、冷却(cold)または温熱(heat)を伴う圧迫、固定、および/またはNSAIDの使用が含まれる。
【0006】
捻挫および挫傷などの軟組織傷害は、任意の靭帯または筋腱構造に影響を及ぼす可能性があり、これらには、以下の関節および構造:足、足底筋膜、足関節、膝関節、膝蓋−大腿構造、股関節、腸脛靭帯、背部関節、肩関節、肘関節、橈骨手根関節、手関節、顎関節、および頸部関節と関連する靭帯および腱が含まれるがこれらに限定されない。
【0007】
ヒアルロナン、ヒアルロネート、またはヒアルロン酸ナトリウムとしても公知であるヒアルロン酸(以下、「HA」)は、すべての関節組織に豊富に存在する非硫酸化グリコサミノグリカンである。HAは、β−1,4−結合したD−グルグロン酸−(β−1,3)−N−アセチル−D−グルコサミンジサッカリド単位からなる、天然直鎖状の多糖である。その天然形態において、HAは、高分子量(約10〜10Da)ポリマーとして存在する。正常なヒト滑液中において、HAの分子量は、約6〜7×10Daであり、その濃度は、約2〜4mg/mlである。滑膜細胞により合成されるHAは、滑液の粘弾特性の一因であり、軟骨の栄養状態を維持するのに根本的な役割を果たす。関節疾患では、HAの濃度および分子量の両方が低下する。
【0008】
外因性の高分子量HA(>5×10Da)を関節内注射することは、骨関節炎または関節リウマチを示すヒトにおいて、機能を改善することが判明した(非特許文献1; 非特許文献2)。骨関節症を示す患者の疼痛および機能状態を著明に改善するには、毎週3〜5回にわたる関節内注射が必要とされたが、その効果は、治療休止後も少なくとも6カ月〜最長1年間にわたり持続した(非特許文献1)。HAの関節内投与は、骨関節炎において観察されるHAの分解を可逆化させ、滑液の粘稠性を回復しうる(関節内補充療法)(非特許文献3)。HAの関節内投与はまた、急性膝関節傷害を示すヒトにおける機能も改善することが判明した(非特許文献4)。各種の状態に対して、HAの関節内投与が提起されているが、関節内手順の際に関節腔を位置特定することは比較的困難であるので、これは複雑な過程である。不適切な注射は、各種の合併症をもたらしうる。
【0009】
2008年11月19日に公布された特許文献1では、関節周囲投与による関節傷害の治療が説明されている。足関節捻挫を示す患者にHAを関節周囲投与することの有効性は、シクロオキシゲナーゼ−2の阻害剤であるセレコキシブまたはNSAIDであるナプロキセンにより得られる有効性に匹敵して好ましいことが示された。
【0010】
別の研究(Petrella RJ、Petrella MJ、Cogliano A、「Periarticular hyaluronic acid in acute ankle sprain」、Clinical Journal of Sports Medicine、2007年;17巻(4号):251〜257頁)では、実薬治療対プラセボに無作為化した158例のスポーツ選手の外側足関節捻挫部分にHAを注射することにより、疼痛および機能が著明に改善されることについて説明している。効果がプラセボより大きかっただけでなく、これは、短期および長期(3カ月)の両方における患者の高い満足度のほか、疼痛の緩和、ならびにスポーツへのより迅速な復帰とも関連した。しかし、関節周囲HAの効果が発現するには約4日かかる。
【0011】
軟組織傷害の治療におけるボツリヌス毒素の使用を裏付ける明確な証拠は欠けている。ボツリヌス毒素は、排尿筋不安定、筋膜痛症候群、ジストニア、および書痙を含めた多くの状態の治療において用いられている。これらの状態の多くでは、疼痛経路に対するボツリヌス毒素の直接的な影響により、それが、軟組織疼痛に対して即時的に有用でありうることが示唆されている。しかし、これを外側上顆炎の治療に用いる結果は、報告されているが芳しくない。一研究(Hayton MJ、Santini AJ、Hughes PJ、Frostick SP、Trail IA、Stanley JK、Botulinum toxin injection in the treatment of tennis elbow. A double−blind, randomized, controlled, pilot study、J Bone Joint Surg Am、2005年;87巻:503〜507頁)では、疼痛および握力において、ボツリヌス毒素の注射と通常の生理食塩液によるプラセボとの差違は観察されなかった。ボツリヌス毒素の副作用は、投与部位における軟組織の機能低下でありうる。先行報告(Wong SM、Hui ACF、Tong PY、Poon DWF、Yu E、Wong LKS、Treatment of lateral epicondylitis with botulinum toxin. A randomized, double−blind, placebo−controlled trial、Ann Intern Med、2005年;143巻:793〜797頁)では、軽度の知覚障害および脱力感という望ましくない副作用について説明されている。脱力感の他の源泉は、シナプス末端における神経伝達物質放出の機能不全に続発しうる。これに対し、HAを傷害部位に局所投与しても、全身における有害事象の危険性、ならびに報告されている任意の局所的有害作用を、どのような形であれ誘発することはないと考えられている。
【0012】
関節傷害を治療するためのNSAIDの使用については多くの報告がなされている。NSAIDは、関節傷害に随伴する疼痛および腫脹および障害を効果的に軽減するが、これにより、スポーツへの復帰という点で、足関節捻挫の臨床経過を変化させることはできず、また、消化器における不忍容性、ならびに、潰瘍および出血などの重篤な事象を含め、著明な有害事象も引き起こしうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1677806号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Maheuら、Int. J. Clin. Pract.(2002年)56巻:804〜813頁
【非特許文献2】Matsunoら、Inflamm. Res.(1999年)48巻:154〜159頁
【非特許文献3】BalazsおよびDenlinger、J. Rheumatol.(1993年)20巻:3〜9頁
【非特許文献4】Zattonoら、Eur. J. Rheumatol. Inflamm.(1995年)15巻:53〜69頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
捻挫および挫傷について公知の医学的治療の大半は、炎症および/または疼痛の軽減に方向づけられているかどうかによらず、不十分であることが分かっている。軟組織、ならびに、特に、捻挫および挫傷など、軟組織の傷害を治療するための新規の組成物および方法が必要とされ続けている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のある態様により、動物における軟組織を治療する方法であって、前記軟組織部位に、治療有効量のHAおよび治療有効量のボツリヌス毒素を投与するステップを含む方法が提供される。
【0017】
本発明の別の態様により、哺乳動物における軟組織を治療するための、治療有効量のHAおよび治療有効量のボツリヌス毒素を含む薬剤の使用が提供される。
【0018】
本発明の別の態様により、哺乳動物における軟組織に対して内部の物理的支持を提供するための方法であって、前記軟組織部位の周囲に、治療有効量のHAおよびボツリヌス毒素を用いるステップを含む方法が提供される。態様では、軟組織が、急性的または慢性的に傷害を受けている。傷害は、捻挫および/または挫傷に由来しうる。態様では、HAおよびボツリヌス毒素により、内部装具を形成し、傷害を受けた軟組織を内部から支持して、それを治癒させ、治癒が生じる間のさらなる動きの防止を可能とする。
【0019】
本発明の別の態様により、動物における皮下軟組織を治療する方法であって、傷害を受けた前記軟組織部位に、治療有効量のHAおよび治療有効量のボツリヌス毒素を投与するステップを含む方法が提供される。
【0020】
本発明の別の態様により、動物における、傷害を受けた皮下軟組織を治療する方法であって、傷害を受けた前記軟組織部位に、治療有効量のHAおよび治療有効量のボツリヌス毒素を投与するステップを含む方法が提供される。
【0021】
本発明の別の態様により、動物における、傷害を受けた皮下軟組織を限局的に治療する薬剤を調製するための、治療有効量のHAおよび治療有効量のボツリヌス毒素の使用が提供される。
【0022】
本発明のさらに別の態様により、動物における、傷害を受けた皮下軟組織を限局的に治療するための、治療有効量のHAおよび治療有効量のボツリヌス毒素の使用が提供される。
【0023】
本発明のなおも別の態様により、傷害を受けた皮下軟組織を治療するための、治療有効量のHAおよび治療有効量のボツリヌス毒素を含む組成物が提供される。
【0024】
本発明のなおも別の態様により、軟組織を治療するための、治療有効量のHAおよびボツリヌス毒素を含む組成物が提供される。
【0025】
本発明のなおもさらに別の態様により、傷害を受けた皮下軟組織を治療するための、治療有効量のHAおよび治療有効量のボツリヌス毒素を含むキットが提供される。該キットは、使用のための指示書および投与レジメンをさらに含みうる。
【0026】
本発明のさらなる態様により、ヒトを含めた動物における、靭帯の捻挫または筋腱の挫傷を有効に治療する方法が提供される。態様では、HAおよびボツリヌス毒素が、関節周囲投与(periarticular administration)(靭帯周囲投与(peri−ligamentous administration)、筋膜周囲投与(peri−fascial administration)、および/または筋腱周囲投与(peri−musculotendinous administration)により投与される。HAおよびボツリヌス毒素は、組成物として施すことができる。
【0027】
本発明の別の態様により、軟組織に対して内部の装具または足場を供給する組成物であって、HAおよびボツリヌス毒素を含む組成物が提供される。態様では、軟組織を取り囲んで、物理的足場を形成し、該組織を支持する形で、組成物が提供される。態様では、軟組織が、急性的または慢性的に傷害を受けている。他の態様では、軟組織が、皮膚内などにおいて分解を受けている可能性があり、本発明の組成物を用いて、該分解部分を支持し、充填することができる。
【0028】
本発明のなおもさらなる態様は、捻挫または挫傷を治療する方法であって、レシピエントに対する毒性が最小限である方法を提供することである。
【0029】
本発明の別の態様では、哺乳動物における傷害を受けた軟組織に対して内部の物理的支持を提供することにより、該傷害を受けた軟組織を治療/支持する方法であって、前記軟組織部位の周囲において、治療有効量のHAおよびボツリヌス毒素を用いるステップを含み、さらなる損傷を最小限とし、傷害を受けた前記軟組織が治癒しうるように、前記HAおよびボツリヌス毒素により物理的足場を形成して、傷害を受けた前記軟組織を支持し、傷害を受けた前記軟組織を固定する方法が提供される。
【0030】
本発明のなおさらなる態様は、ヒトを含めた動物における捻挫または挫傷を、HAおよびボツリヌス毒素の相乗作用により治療する方法を提供することである。
【0031】
本発明のなおも別の態様は、捻挫または挫傷など、軟組織傷害のリハビリテーションを強化する方法を提供することである。
【0032】
本発明の別の態様は、捻挫または挫傷など、軟組織傷害の理学的治療を強化する方法を提供することである。
【0033】
本発明のさらに別の態様は、捻挫または挫傷など、軟組織傷害の治療における温熱または冷却の治癒効果を強化する方法を提供することである。
【0034】
本発明のなおも別の態様は、捻挫または挫傷など、軟組織傷害の治療における超音波の治癒効果を強化する方法を提供することである。
【0035】
本発明の別の態様は、捻挫または挫傷など、軟組織傷害の治療における電気刺激の治癒効果を強化する方法を提供することである。
【0036】
さらに別の態様は、捻挫または挫傷など、軟組織傷害の治療における手術の治癒効果を強化する方法を提供することである。
【0037】
開示される実施形態および添付される特許請求の範囲についての以下の詳細な説明を精査した後では、本発明のこれらおよび他の目的、特徴、および利点が明らかとなる。
【0038】
ここで、添付の図面を参照しながら、例示だけを目的として、実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、足関節捻挫を治療するための注射位置を示すダイアグラムである。
【図2】図2は、外側上顆炎を治療するための注射位置を示すダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、HAおよびボツリヌス毒素を併せて用いて、所望の軟組織の周囲に支持的な物理的足場を形成することにより、軟組織を治療する方法について説明する。このようにして、軟組織を固定する。傷害を受けて疼痛を伴う軟組織において、ボツリヌス毒素は、該傷害を受けた組織上における求心性疼痛受容体に直接に作用することが可能であるほか、該組織を麻痺させ、そのため、該組織は、事象後においてさらなる損傷を受けることがない。したがって、HAおよびボツリヌス毒素の組合せは、さらなる疼痛緩和を伴う内部ギプスと同義である。
【0041】
本発明の実施形態では、軟組織傷害の治療を必要とする動物またはヒトにおける捻挫および/または挫傷などを治療する方法が説明される。該方法は、ヒアルロン酸およびボツリヌス毒素の組合せ投与を含む。治療される軟組織の周囲に、ヒアルロン酸およびボツリヌス毒素を投与する。軟組織は、筋肉、筋膜、腱、および靭帯から選択しうるが、これらに限定されない。軟組織にはまた、筋膜、線維組織、脂肪、および筋肉も含まれうる。態様では、方法が、関節周囲投与、靭帯周囲投与、筋膜周囲投与、筋腱周囲投与、およびこれらの組合せからなる群より選択される投与方式を含む。
【0042】
傷害を受けた軟組織の周囲(around)(すなわち、「周囲(peri)」)にHAおよびボツリヌス毒素を用いて、捻挫および挫傷などの軟組織傷害の治療を行うことができる。理論に拘束されることは望まないが、傷害を受けたかまたは受けやすい靭帯組織または筋腱組織など、傷害を受けた軟組織または傷害を受けやすい軟組織に、HAを、関節周囲投与、靭帯周囲投与、筋膜周囲投与、または筋腱周囲投与することにより、内部の足場または生体適合性の内部支持(すなわち、内部の物理的装具または足場)を創出し、これにより、傷害を受けた組織に形態および機能の構造および安定性をもたらし、このようにして、傷害を受けた組織の治癒を生じさせる。この種の支持は、治癒を生じさせる間、傷害部位における望ましくないかもしくは傷害性のさらなる動きを制限し、かつ/またはさらなる再傷害を防止することにより、該部位に対する防御をもたらす。軟組織傷害に随伴する炎症および/または疼痛を軽減することを目的とする治療は、有効性が制約されるか、または著明な副作用を有することが示されている。HAは、炎症経路または疼痛経路に直接の影響を及ぼすことなく、傷害を受けた軟組織の外傷を治療するための支持をもたらしうる。ボツリヌス毒素は、それが、ギプスなしに、真の固定ギプスと同様であるように、傷害を受けた組織上における求心性疼痛受容体に直接に作用することが可能であるほか、該組織を麻痺させ、そのため、該組織は、急性事象後においてさらなる損傷を受けることがない。この2つ(HAおよびボツリヌス毒素)の組合せは、いずれか単独の場合より大きな支持をもたらし、治癒を生じさせる。
【0043】
本明細書で説明される組成物は、調製および投与が比較的単純である。HAは、時間が経過しても安定であり、伴う毒性が最小限である投与レジメンにおいても有効でありうる。ボツリヌス毒素は、例えば、2005年10月18日に公布された米国特許第6,955,813号、2004年8月5に公開された米国特許出願公開第2004/0151741号、または2008年11月27日に公開された米国特許出願公開第2008/0292612号(これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)において説明される、先行の報告と符合する形で調製および投与することができる。A、B、C1、C2、C3、D、E、F、Gおよびこれらの組合せなど、ボツリヌス毒素の種類のうちのいずれか1種を用いることができる。ボツリヌス毒素はまた、BOTOX(商標)の商標名でAllergan Inc.から、DYSPORT(商標)の商標名でIpsen Ltd.から、そして、MYOBLOC(商標)の商標名でSolstice Neurosciencesから市販されてもいる。
【0044】
本明細書で説明される組成物および方法は、HAおよびボツリヌス毒素の組合せを用いて、動物またはヒトの軟組織、特に、捻挫または挫傷など、動物またはヒトの軟組織傷害に対する治療を提供する。
【0045】
態様では、HAおよびボツリヌス毒素を、当業者により理解される、適切な薬学的担体を含む組成物として提供することができる。
【0046】
本明細書で説明される方法は、筋肉、筋膜、腱、および靭帯などであるがこれらに限定されない、傷害を受けた軟組織を治療する方法である。軟組織傷害を緩和する、治療有効量のHAおよび治療有効量のボツリヌス毒素を投与することにより、該傷害を治療する。傷害は、急性の場合もあり、慢性の場合もある。傷害は、以下の関節および構造:足、足底筋膜、足関節、膝関節、膝蓋−大腿構造、股関節、腸脛靭帯、背部関節、肩関節、肘関節、橈骨手根関節、手関節、顎関節、皮膚、および頸部関節と関連する靭帯および腱が含まれるがこれらに限定されない、靭帯構造または筋腱構造など、任意の軟組織に関与しうる。特定の例では、障害が、足関節捻挫、外側上顆炎、または前脛骨筋が前脛骨から剥離するシンスプリントでありうる。本明細書の態様で説明される方法は、皮膚、皮膚傷害、または皮膚障害の治療は意図しない、皮下軟組織の治療に用いることができる。他の態様では、例えば、コルチゾルの使用または傷害など、各種の理由による皮膚内のコラーゲン分化も、本発明の組成物、皮膚治療により治療することができる。
【0047】
本明細書で説明される方法/使用は、当業者により一般に用いられる捻挫および/または挫傷のための公知の治療と同時に用いることができる。このような治療には、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、RICE、ギプス、装具、シクロオキシゲナーゼ−2の阻害剤、コルチコステロイド、リハビリテーション、理学療法、温熱治療および/または冷却治療、超音波、電気治療、手術、ならびにこれらの組合せの使用が含まれるがこれらに限定されない。
【0048】
HAおよびボツリヌス毒素は、それを、関節周囲投与、靭帯周囲投与、および/または筋腱周囲投与しうる形で、傷害を受けた軟組織の外側(すなわち、周囲(around、「peri」))に投与することができる。関節周囲注射を行う方法は、当業者に公知である。周囲投与法の例を、図1に示す。このような注射は、一般に、皮下注射であり、関節の近傍、とりわけ、筋腱および靭帯の挿入部分または起点の近傍を標的とする(靭帯周囲注射および/または筋腱周囲注射である)。以下の言及により拘束されることを欲しないが、HAは、該組織の界面において、それらの周囲および間に浸透し、これにより、足場の形でこれらの組織を支持し、治癒過程を支援する内部装具の形態として作用すると考えられる。
【0049】
本明細書で用いられる「ヒアルロン酸(HA)」には、傷害を受けた軟組織への投与後において治癒を生じさせる構造をもたらす内部装具を形成し、捻挫および/または挫傷のために用いられる他の治療剤の活性を強化するのに有効な、ヒアルロナン、ヒアルロネート、HAの塩、相同体、類似体、誘導体、複合体、エステル、断片、およびサブユニットが含まれるがこれらに限定されない。
【0050】
HAは、当業者により理解される通り、分子量が異なる任意の各種の形態で用いることができる。態様では、HAの平均分子量が、約30〜750kDa、約50〜750kDa、約500〜750kDa、約30〜750kDa超、約750kDa超、約750〜1200kDa、約500kDa超、または約500〜2000kDaでありうる。これらのHAの形態は、約30kDa未満のHA分子種を含まない場合がある。用いうるHAの他の形態には、平均分子量が、約30〜750kDa、約50〜750kDa、約500〜750kDa、約30〜750kDa超、約750kDa超、約750〜1200kDa、約500kDa超、または約500〜2000kDaである形態が含まれ、これらにはまた、分子量が約30kDa未満のHAも含まれる。一実施形態では、用いうるHAの平均分子量が、約30〜750kDa、約50〜750kDa、約500〜750kDa、約30〜750kDa超、約750kDa超、約750〜1200kDa、約500kDa超、または約500〜2000kDaである形態が含まれ、これらにはまた、分子量が約24kDaのHAも含まれる。
【0051】
特定の例では、用いうるHAの形態の平均分子量が、50kDa未満、または30kDa未満である。一実施形態では、用いうるHAの平均分子量が、約24kDaである。別の実施形態では、平均分子量が約0.3kDa〜30kDaであるHAを用いることができる。別の実施形態では、平均分子量が約10kDa〜30kDaであるHAを用いることができる。
【0052】
HAは、高度に粘稠性、電気陰性、および親水性である。HAを単離、精製、画分化、または修飾する各種の方法が、当業者に公知である。その多くの形態におけるHAはまた、当業者により理解される通り、カナダ、Bioniche Life Sciences Inc;米国、Anika Therapeutics;スイス、Chemedica;イタリア、Fidia;米国、Genzyme(Biomatrix);米国、Hyalogic;米国、Hyalose;米国、Lifecore;日本、生化学社;イタリア、Societa Prodotti Antibiotici、および日本、明治製菓株式会社など、多くの販売元または製造元から容易に入手可能である。特定のヒアルロナン組成物もまた、例えば、以下の販売元:ニュージャージー州、リッジフィールド、BioMatrix Inc(Synvisc(商標):ヒラン液およびヒランゲルの90:10の混合物);イタリア、アバノテルメ、Fidia S.p.A(Hyalgan(商標):鶏冠に由来するヒアルロン酸のナトリウム塩(約500,000〜約700,000MW));日本、東京、科研製薬株式会社(Artz(商標):鶏冠に由来するヒアルロン酸の1%溶液、約700,000MW);スウェーデン、ストックホルム、Pharmacia AB(Healon(商標):鶏冠に由来するヒアルロン酸、約4×10MW);マサチューセッツ州、ケンブリッジ、Genzyme Corporation(Surgicoat(商標):組換えヒアルロン酸);ニューハンプシャー州、ポーツマス、Pronova Biopolymer,Inc.(ヒアルロン酸FCH: Streptococcus zooepidemicusの培養物から調製された、高分子量(例えば、約1.5〜2.2×10MW)のヒアルロン酸;ヒアルロン酸ナトリウムMV:約1.0〜1.6×10MW;およびヒアルロン酸ナトリウムLV:約1.5〜2.2×10MW);スイス、ラウテルフィンゲン、Calbiochem−Novabiochem AB(Streptococcus属種から調製された、ヒアルロン酸のナトリウム塩(1997年の同社型番:385908));ニューヨーク州、パーチェス、Intergen Company(鶏冠に由来するヒアルロン酸;>1×10MW);イリノイ州、シカゴ、Diosynth Inc.;ニュージャージー州、エジソン、Amerchol Corp.;英国、スコットランド、Hyaltec Ltd.;および日本、東京、協和発酵株式会社から入手可能である。
【0053】
HAを化学的に補完する方法、HAを生物学的担体もしくは化学的担体へと複合体化する方法、またはHAを組織型もしくは細胞型を指向するリガンドもしくは抗体へと連結する方法が含まれるがこれらに限定されない方法により、HAの治療有効性を増大させることができる。
【0054】
本明細書で用いられる「ボツリヌス毒素」には、A、B、C1、C2、C3、D、E、F、およびGなど各種の免疫型を含め、当技術分野で公知の類似体、誘導体、複合体、融合体、断片、およびこれらの組換え供給源を含め、元はClostridium botulinumの菌株から単離されたタンパク質毒素の生物学的活性を保有する分子が含まれる。
【0055】
本明細書で用いられる「タンパク質毒素の生物学的活性」には、筋肉麻痺またはエクソサイトーシス、特に、アセチルコリンもしくは別の神経伝達物質のエクソサイトーシスの阻害が含まれる。
【0056】
ボツリヌス毒素は、例えば、2005年10月18日に公布された米国特許第6,955,813号、2004年8月5に公開された米国特許出願公開第2004/0151741号、または2008年11月27日に公開された米国特許出願公開第2008/0292612号(これらの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)において説明される、先行の報告と符合する形で調製および投与することができる。ボツリヌス毒素はまた、BOTOX(商標)の商標名でAllergan Inc.から、DYSPORT(商標)の商標名でIpsen Ltd.から、そして、MYOBLOC(商標)の商標名でSolstice Neurosciencesから市販されてもいる。
【0057】
マウスにおけるボツリヌス毒素(精製神経毒素複合体)血清型AのLD50は、約50ピコグラムである。各々の体重が18〜20グラムである、雌Swiss Websterマウスに腹腔内注射したときのLD50として、1単位(U)のボツリヌス毒素を定義する。それらの各々が、血清型特異的抗体による中和を介して識別される、ボツリヌス毒素の血清型A、B、C1、C2、C3、D、E、F、およびGを含め、免疫学的に異なる複数のボツリヌス毒素が特徴づけられている。ボツリヌス毒素の異なる血清型は、それらが影響を及ぼす動物種が異なり、それらが引き起こす麻痺の重症度および期間が異なる。例えば、ボツリヌス毒素の血清型Aは、ラットにおいてもたらされる麻痺の速度により測定する場合、ボツリヌス毒素の血清型Bより500倍強力である。加えて、ボツリヌス毒素血清型Bは、霊長動物において、ボツリヌス毒素血清型Aの霊長動物におけるLD50の約12倍である、480U/kgの用量でも非毒性である。ボツリヌス毒素は、高アフィニティーでコリン作動性運動ニューロンに結合し、ニューロン内へと移送され、アセチルコリンの放出を遮断すると考えられている。
【0058】
in vitroにおける研究は、ボツリヌス毒素が、カリウム陽イオンにより誘導される、脳幹組織の初代細胞培養物からの、アセチルコリンおよびノルエピネフリン両方の放出を阻害することを示している。加えて、ボツリヌス毒素は、脊髄ニューロンの初代培養物中において引き起こされる、グリシンおよびグルタミン酸両方の放出を阻害し、脳のシナプトソーム調製物中において、ボツリヌス毒素は、神経伝達物質である、アセチルコリン、ドーパミン、ノルエピネフリン、CGRP、およびグルタミン酸の各々の放出を阻害することも報告されている。
【0059】
公知のボツリヌス毒素血清型の分子量は、約150kDaである。天然のボツリヌス毒素は、会合する非毒性タンパク質と共に150kDaのボツリヌス毒素を含む複合体として、Clostridium属菌により放出される。このようにして、ボツリヌス毒素の血清型A複合体は、Clostridium属菌により、900kDの形態、500kDの形態、および300kDの形態として生成されうる。ボツリヌス毒素の血清型BおよびC1は、見かけ上、500kDの複合体として生成される。ボツリヌス毒素の血清型Dは、300kDの複合体および500kDの複合体の両方として生成されることが示されている。最後に、ボツリヌス毒素の血清型EおよびFは、約300kDの複合体として生成されることが示されている。該複合体(すなわち、約150kDを超える分子量)は、非毒性のヘマグルチニンタンパク質および非毒性の非ヘマグルチニンタンパク質を含有すると考えられている。これらの2つの非毒性タンパク質(これらは、ボツリヌス毒素分子と共に、関連する神経毒素複合体を含む)は、ボツリヌス毒素分子に、変性に対する安定性をもたらし、毒素が摂取される場合、胃酸に対する防御をもたらすように作用しうる。加えて、高分子量の(約150kDの分子量を超える)ボツリヌス毒素複合体は、ボツリヌス毒素複合体の皮下注射部位からのボツリヌス毒素の拡散速度を結果として低下させうることも可能である。
【0060】
本明細書で用いられる「軟組織傷害」とは、体内の軟組織の損傷を指す。これらの種類の傷害は、疼痛および障害の主要な源泉である。影響を受ける4つの根本組織は、上皮組織、筋組織、神経組織、および結合組織である。これらの4つの組織のうち、本明細書で説明される組成物および方法は、主に、筋組織および結合組織の治療を意図する。態様では、本明細書で説明される治療が、皮膚を包含しない、皮下軟組織傷害を意図する。軟組織傷害には、捻挫、挫傷、亜脱臼、反復ストレス傷害、手根管症候群などが含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
本明細書で用いられる「構造」とは、靭帯、筋膜、腱、および筋肉が含まれるがこれらに限定されない、関節と関連する構造を指す。
【0062】
本明細書で用いられる「強化する」とは、相加的であることを超える相乗作用の程度に関する。
【0063】
本明細書で用いられる「相乗作用」とは、2つ以上の薬剤の協同作用に関する。
【0064】
本明細書で用いられる「有効量」とは、治療効果をもたらすのに十分な量である。有効量は、オープンラベルの臨床試験における用量漸増研究により、または盲検試験を伴う研究において決定することができる。ヒトを含めた動物に対する有効量のHAおよびボツリヌス毒素の投与は、捻挫、挫傷、およびシンスプリントが含まれるがこれらに限定されない、急性または慢性の軟組織状態を予防、治療、または除去する治療的処置である。
【0065】
本明細書で説明される方法は、傷害を受けた軟組織を治療する、HAおよびボツリヌス毒素の投与を提供する。HAおよびボツリヌス毒素は、個別の時点に投与することもでき、同時に投与することもできる。HAおよびボツリヌス毒素は、各々を単独で供給することもでき、薬学的に許容される担体を含む組成物として供給することもできる。特定の例では、HAおよびボツリヌス毒素を、ヒトを含めた動物の傷害を受けた軟組織の周囲(around(「peri」))に、関節周囲投与、靭帯周囲投与、筋膜周囲投与、および/または筋腱周囲投与することができる。
【0066】
HA組成物およびボツリヌス毒素組成物の投与は、単独で用いることもでき、軟組織傷害を治療するのに用いられる他の治療モダリティーと組み合わせて用いて、それらの効果を強化することもできる。このような薬剤および方法には、抗炎症薬、NSAID、コルチコステロイド、シクロオキシゲナーゼ−2の阻害剤、RICE法、理学的治療、リハビリテーション、温熱治療および/または冷却治療、超音波療法、筋骨格傷害および関節傷害を治療するのに一般に用いられる、経皮電気治療の圧電形態および他の形態などの電気治療、挙上、圧迫、固定、固定デバイス、装具、ギプス、ならびに手術が含まれるがこれらに限定されない。
【0067】
組成物の調製
本明細書で説明される方法は、HAおよびボツリヌス毒素の投与を含む。HAおよび/またはボツリヌス毒素は、単独で投与することもでき、液体担体、固体担体、またはこれらの両方が含まれるがこれらに限定されない、薬学的に許容される担体を含む組成物(複数可)(薬剤)中に、併せてまたは個別に調合することもできる。
【0068】
液体担体は、水性担体、非水性担体、またはこれらの両方であり、これらには、水性懸濁液、ジメチルスルホキシド、エタノール、油エマルジョン、油中水エマルジョン、水中油中水エマルジョン、部位特異的エマルジョン、長時間貯留エマルジョン、粘稠性エマルジョン、マイクロエマルジョン、およびナノエマルジョンが含まれるがこれらに限定されない。固体担体は、生物学的担体、化学的担体、またはこれらの両方であり、これらには、粒子、マイクロ粒子、ナノ粒子、マイクロスフェア、ナノスフェア、細菌細胞壁抽出物、および生体分解性または非生体分解性の天然または合成のポリマーが含まれるがこれらに限定されない。HAおよび/またはボツリヌス毒素を固体担体へと複合体化するのに用いられる方法には、固体担体の表面への直接的な吸着、固体担体に対する直接的であるかまたは連結部分を介する共有結合、ならびに固体担体を作製するのに用いられるポリマーに対する共有結合または静電結合が含まれるがこれらに限定されない。例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(TWEEN)など、非イオン性またはイオン性のポリマーを添加することにより、HAおよび/またはボツリヌス毒素を安定化させることができる。
【0069】
水性担体には、水、生理食塩液、ならびに、リン酸緩衝液など、薬学的に許容される緩衝液が含まれるがこれらに限定されない。非水性担体には、鉱油、または、ジグリセリド、トリグリセリド、リン脂質、脂質、ポリ不飽和脂肪酸および飽和脂肪酸の適切な混合物を含有する油およびこれらの混合物が含まれるがこれらに限定されない中性油が含まれるがこれらに限定されない。例には、大豆油、キャノーラ油、パーム油、オリーブ油、およびミグリオール(myglyol)が含まれるがこれらに限定されず、この場合、脂肪酸は、飽和脂肪酸の場合もあり、不飽和脂肪酸の場合もある。場合によって、用いられる薬学的に許容される担体に関わらず、添加剤を包含させることもできる。これらの添加剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤が含まれるがこれらに限定されず、懸濁剤および増粘剤も含まれうる。
【0070】
キット
HAおよびボツリヌス毒素は、キット内に併せて提供することができる。キットは、治療有効量のHAおよび治療有効量のボツリヌス毒素を含む。HAおよびボツリヌス毒素は、個別の組成物として個別の容器内で提供することもでき、単一の組成物の一部として同一の容器内で提供することもできる。キットにより提供される各HA組成物および/またはボツリヌス毒素組成物は、薬学的に許容される担体を包含しうる。キットは、キットの使用のための指示書をさらに含みうる。例えば、キットは、動物における、急性的または慢性的に傷害を受けた軟組織を治療するための、HAおよびボツリヌス毒素の局所投与についての指示書を含みうる。該指示書は、筋肉、筋膜、腱、および靭帯からなる群より選択される傷害を受けた軟組織を具体的に対象としうる。別の例では、キットが、HAおよびボツリヌス毒素の関節周囲投与、靭帯周囲投与、筋腱周囲投与、または筋膜周囲投与についての指示書を含みうる。
【0071】
組合せ療法
HAおよびボツリヌス毒素は、各々を単独で投与することもでき、組成物中において、さらには、抗炎症薬、NSAID、コルチコステロイド、シクロオキシゲナーゼ−2の阻害剤、RICE法、理学的治療、リハビリテーション、温熱治療および/または冷却治療、超音波療法、電気治療、挙上、圧迫、固定、固定デバイス、装具、ギプス、ならびに手術が含まれるがこれらに限定されない他の治療モダリティーと組み合わせて投与することもできる。抗炎症薬、NSAID、コルチコステロイド、シクロオキシゲナーゼ−2の阻害剤など、これらの治療剤は、当業者に公知の用量および経路を用いて投与する。例えば、抗炎症薬、NSAID、コルチコステロイド、シクロオキシゲナーゼ−2の阻害剤は、経口投与することができる。コルチコステロイドはまた、静脈内投与することもでき、関節内へと局所投与することもでき、コルチコステロイド投与の当業者に公知の他の経路を介して投与することもできる。
【0072】
HAおよびボツリヌス毒素の投与経路には、関節周囲注射、靭帯周囲注射、筋膜周囲注射、または筋腱周囲注射が含まれるがこれらに限定されない。当業者に公知の通り、シリンジなど、任意の適切なデバイスを用いて、HAおよびボツリヌス毒素、またはHA組成物およびボツリヌス毒素組成物(複数可)を投与することができる。
【0073】
HAおよびボツリヌス毒素は、公知の方法により投与することができる。投与1回当たりに投与されるHAの量は、約0.001〜1000mg、より具体的には約0.1〜100mg、約1〜10mg、ならびに約0.1mg〜5mgである。投与1回当たりの容量は、投与1回当たり約0.01〜5.0mlであり、態様では、投与1回当たり約0.1〜2.0ml、投与1回当たり約0.5〜1.0ml、または投与1回当たり約0.01〜1.0mlでありうる。組成物中に提供されるHAの濃度は、約5〜100mg/溶液ml、態様では、5〜50mg/溶液mlの範囲、ならびに、これらの間の任意の範囲でありうる。投与は通常、捻挫、挫傷、またはシンスプリントなど、軟組織傷害の近傍において行われる。
【0074】
当業者は、最適の臨床的結果を達成するのに適切な投与(複数可)の用量および頻度を決定することができる。すなわち、医療技術の当業者であれば、傷害を受けた軟組織(複数可)を有効に治療するのに適切な回数(複数可)で、適切な量のボツリヌス毒素を投与することができるであろう。投与される毒素の用量は、軟組織のサイズ、軟組織傷害の重症度、ボツリヌス毒素の種類および/または供給源などを含め、各種の因子に依存する。例えば、約0.1U/kg〜約15U/kgのA型ボツリヌス毒素を、傷害を受けた軟組織に投与することができる。別の例として述べると、約1U/kg〜約20U/kgのA型ボツリヌス毒素を、傷害を受けた軟組織に投与することができる。他の例では、約0.1U/kg〜約30U/kgのA型ボツリヌス毒素、ならびに約1U/kg〜約150U/kgのB型ボツリヌス毒素の使用を、本明細書で説明される方法について意図する。他のボツリヌス毒素の血清型(毒素E型およびF型を含めた)に関して、用いられるU/kg単位の用量の例は、約0.1U/kg〜約150U/kgの範囲内に収まる。
【0075】
治療剤としてのその導入以来、ボツリヌス毒素の脱神経活性または生物学的活性についての薬学的測定は、18〜22グラムのSwiss Websterマウスを用いるLD50単位であり、精製されたボツリヌス毒素タンパク質またはそのタンパク質複合体に由来する異なる希釈率で、マウスのコホートに注射することにより、統計学的に定量化されてきた。この測定は、明確な評価項目の判定(生存マウスまたは死亡マウス)が簡単であるという利点を有する。LD50単位の用量は、臨床研究で比較する場合、ボツリヌス毒素の免疫型に応じて変化することが公知である。例えば、B型ボツリヌス毒素による一調製物(MYOBLOC)が、斜頸を治療するのに5,000〜15,000 LD50単位を要するのに対し、A型ボツリヌス毒素による別の調製物(BOTOX)は、100〜300 LD50単位を要するに過ぎない。同様に、LD50単位は、ボツリヌス毒素の血清型が同じ異なる供給源間でも変化しうる。例えば、眼瞼痙攣および頸部ジストニアを治療するのに必要とされるA型ボツリヌス毒素の別の調製物であるDYSPORTが200〜1200単位であるのと比較して、これに必要とされるBOTOX(商標)は約50〜300単位である。投与レジメンを作成する場合、当業者は、このような変化項を考慮に入れることができる。
【0076】
HAおよびボツリヌス毒素の投与、または他の治療モダリティーを伴うHAおよびボツリヌス毒素の投与、投与1回当たりの量、投与スケジュール、ならびに投与法は、当業者に公知の方法を用いる医療従事者が決定するものとし、これは、傷害の種類、傷害の重症度、傷害の位置、ならびに、レシピエントの身長、体重、および身体状態など、他の臨床因子に依存する。HAおよびボツリヌス毒素は、それ自体、医師により指示される量および濃度で、医師により指示される通り、併せて投与することもでき、1回、2回、または複数回にわたり個別に投与することもできる。HAおよびボツリヌス毒素、または他の治療剤もしくは治療法を伴うHAおよびボツリヌス毒素は、治療される傷害、レシピエントの状態、および投与経路に適切なスケジュールで、これらに適切な期間にわたり、単回投与による治療で、複数回投与による治療で、または持続的な注入により投与または適用することができる。さらに、ボツリヌス毒素およびHAは、併せて投与することもでき、ボツリヌス毒素を、HAを投与する前に、これとほぼ同時に、またはこの後に投与または適用することもできる。同様に、治療剤または治療法を、HAおよびボツリヌス毒素の各々を投与する前に、これと同時に、またはこの後に投与または適用することもできる。
【0077】
以下の実施例は、本発明をさらに例示するのに用いられるが、同時に、その限定を構成することはない。
【実施例】
【0078】
(実施例1)
HAおよびボツリヌス毒素の調製
ヒアルロン酸は、総容量を1.5ccとするのに十分な添加剤中に、平均分子量が500〜2000キロドルトンの1%ヒアルロン酸ナトリウム塩溶液を含有する単回投与バイアル(英国、スコットランド、Hyaltec製)により供給された。バイアルは、室温(摂氏10〜30°)で保存した。ボツリヌス毒素は、60単位(1cc中)のBotox(米国、Allergan製)として供給された。ヒアルロン酸およびBotoxの総容量は、2.5ccであった。
【0079】
(実施例2)
関節周囲投与後における足関節捻挫に対するHAおよびボツリヌス毒素の有効性
足関節捻挫は、すべてのスポーツ傷害のうちで最も一般的なものであり、毎年約200万人が、医学的治療を求めている。「米国立病院救急医療ケアについての調査:2000年における救急部門の概要」からのデータによれば、米国だけで137万5000人に上る救急部門の外来患者が足関節捻挫を原因とし、これが、全外来患者の約1.3%を占めていた。したがって、これらの外傷の経済的影響は大きい。足関節捻挫は、外側靭帯複合体(前距腓靭帯、後距腓靭帯、および踵腓靭帯)に影響することが最も一般的である。これらは、内反(varusまたはinversion)捻挫に続発し、1度、2度、3度として定義されることが典型的である、疼痛、腫脹、圧痛、機能喪失など、あるスペクトルの症状および重症度を包含する。大半の足関節捻挫は、1度もしくは2度であるか、または症状の重症度が軽度〜中等度である。
【0080】
しかし、治療ガイドラインは一貫しておらず、米国整形外科アカデミーでは、最長3週間にわたる最初のリハビリテーションプログラムが、非ステロイド抗炎症薬、安静、アイシング、圧迫、および挙上(RICE)、防護下における体重負荷、早期運動療法、および等尺性運動と共に始まる。この治療レジメンは、保守的ではあるが、1度の捻挫では、障害を平均8〜10日間に、2度の捻挫では、障害を平均2〜3週間にとどめることができる。しかし、この手法では、障害の程度または回復期間を改変することができない。足関節捻挫についての一研究では、患者のうちの73%において、最初の捻挫後16〜18カ月まで疼痛および障害が遷延し、さらに、40%が歩行不能を報告し、11%が足関節疼痛症状のために薬剤の使用を続けていることが判明した。長期にわたる追跡研究では、患者のうちの40%が、最初の足関節捻挫の後、6.5年後においても、長期にわたる症状および障害の残存を報告した。
【0081】
NSAIDは、足関節捻挫に随伴する疼痛および腫脹および障害を効果的に軽減するが、これにより、スポーツへの復帰という点で、足関節捻挫の臨床経過を変化させることはできず、また、消化器における不忍容性、ならびに、潰瘍および出血などの重篤な事象を含め、著明な有害事象も引き起こしうる。
【0082】
方法:
ボツリヌス毒素と組み合わせたHAを、HA単独、ボツリヌス毒素単独、およびプラセボと比較する、二重盲検、プラセボ対照試験を実施した。
【0083】
倫理審査委員会による承認を得、全患者から、インフォームドコンセントを得た。治験は、2004年3月〜2007年12月に実施され、カナダオンタリオ州における、3つのスポーツ医学プライマリーケア施設から継続患者を募った。本治験前の2年間にわたる、これらの施設における足関節捻挫の総数は、1,174例であった。治験責任医師およびスタッフは、治験開始前の治験実施に関する会合に出席し、治験の手順、データの収集および管理の標準化について確認した。治験は、ヘルシンキ宣言に基づく医薬品の臨床試験の実施の基準に従い実施された。
【0084】
患者は、選択された組み入れ/除外基準に従い、診療所においてスクリーニングされた。組み入れに関する適格性の基準は:18歳以上であること;治験登録前の48時間以内において、1度および2度の外側足関節捻挫を有すること;10cmの目視アナログスケール(VAS)を用いる、患者による足関節疼痛の評価において、全体重をかけたときの足関節疼痛が中等度であるか、または>4.5cmであると報告されていること;ならびに治験期間(12カ月)にわたり参加可能であることを包含した。除外基準は:両側足関節捻挫;同側膝関節外傷;3度の足関節捻挫;6カ月以内における足関節捻挫の既往;結果を混同させうる、抗炎症薬、筋弛緩剤、向精神薬を最近用いたことがある患者;重度の消化器疾患、腎疾患、もしくは肝疾患の既往歴を有する患者;リウマチ性疾患(骨関節炎を含む)を示す患者;薬物乱用もしくはアルコール乱用の既往歴;治験中に許容可能な形態の経口避妊薬の使用を望まない、出産の可能性がある妊婦もしくは授乳婦;または1回目の治験来院の30日以内に治験薬を施されたことを包含した。
【0085】
足関節捻挫のスクリーニング:
大学のスポーツプログラムと提携するスポーツトレーナー、これと提携する地域病院の救急医師、ならびに照会ベースの家庭医が、1度および2度の足関節捻挫についての診断を下し、次いで、彼らが、48時間以内に、患者をスポーツ医学診療所へと来院させた。患者は、治験への参加を依頼され、傷害を受けてから48時間以内に報告を要請された。この来院の後、インフォームドコンセントを提出し、次いで、治験責任医師によるスクリーニング評価および身体検査が実施された。適格性について、目視アナログスケールにより評価される登録時の疼痛は、0〜10cmのスケールで>4.5cmであることが要請された。次いで、患者を、コンピュータにより作成される無作為化方式を用いて、4つの治療群:1)関節周囲における分子量500〜2000キロドルトン(20mg)の範囲のHAおよびボツリヌス毒素(60単位のBotox)を伴う群;2)関節周囲における分子量500〜2000キロドルトン(20mg)の範囲のHA単独群;3)ボツリヌス毒素(60単位のBotox)単独群;4)通常の生理食塩液群のうちの1つに1:4で無作為化した。また、全患者には、RICE(安静、アイシング、圧迫、挙上)を含め、標準的な支持手段についても助言を行った。
【0086】
表1にまとめる通り、ベースライン、ならびに、4日目、8日目、30日目、90日目、および12カ月後において評価を行った。足関節捻挫に対する有効性の尺度は、体重をかけたとき、ならびに20メートル歩いたときの、患者による疼痛についてのVAS(それぞれ、0〜10cm);患者による足関節傷害についての全般的な評価(5段階の分類スケール);患者による正常な機能/活動およびスポーツへの復帰についての評価(5段階の分類スケール);患者による満足度評価(10段階の分類スケール);スポーツ活動へと完全に復帰するまでの日数(日);世界保健機構により定義される有害事象を包含した。ベースライン(足関節捻挫から48時間以内)において、患者は、他の病態を除外するため、全身検査ならびにx線検査を受けた。
【0087】
【表1】

治療期間:
転帰を評価した後で、治療群に無作為化された患者には、HA+Botox(1.5cc HA+60単位のBotox1.0cc)、HA単独(1.5cc)、Botox(60単位、1.0cc)単独、またはプラセボ(通常の生理食塩液2.5cc)の単回注射を施した。
【0088】
足関節捻挫を治療するための関節周囲注射は、既に説明した技法(Petrella RJ、Petrella MJ、Cogliano A、Periarticular hyaluronic acid in acute ankle sprain、Clinical Journal of Sports Medicine、2007年;17巻(4号):251〜257頁)を用いて実施した。略述すると、前側−後側、内側、および外側〜近位の靭帯ランドマークにおける3つの平面に沿った単回穿刺を用いて、注射を送達した(図1)。4日目(±1日)に、すべての評価および注射を繰り返した。すべての群において、レスキュー投薬(1日当たり4錠までの、500mgアセトアミノフェン錠剤)を許容したが、各治験来院前の24時間にわたってはこれを差し控えた。テーピングならびに改造シリンジを用いてシリンジを遮蔽して、注射行為に加えられる圧力をほぼ同等なものとした。これについては、既に説明した(Petrella RJ、Petrella MJ、Cogliano A、Periarticular hyaluronic acid in acute ankle sprain、Clinical Journal of Sports Medicine、2007年;17巻(4号):251〜257頁)。患者は、試験の中断がいつでも自由にできた。
【0089】
追跡評価は、8日目、30日目、90日目、および12カ月後に遂行した。8日目(±2日)、30日目(±7日)、90日目(±7日)、および12カ月後(±7日)であった。患者が治験に参加する期間全体にわたり、有害事象および併用薬について評価した。
【0090】
転帰尺度:
有効性の主要転帰は、8日目において、足関節捻挫部分に体重をかけたときの疼痛についてのVASであった。有効性の副次的転帰は:20メートル歩いたときの疼痛についてのVAS;患者による足関節傷害についての全般的な評価;患者によるスポーツでの正常な機能/活動への復帰についての評価;患者による満足度評価;スポーツ活動へと完全に復帰するまでの日数を包含した。
【0091】
患者にはまた、レスキュー投薬(1日当たり4錠までの、500mgアセトアミノフェン錠剤)も処方したが、各治験来院前の24時間にわたってはこれを差し控えた。
【0092】
被験物質:
ヒアルロン酸は、総容量を1.5ccとするのに十分な添加剤中に、平均分子量が500〜2000キロドルトンの1%ヒアルロン酸ナトリウム塩溶液を含有する単回投与バイアルにより供給された。バイアルは、室温(摂氏10〜30°)で保存した。通常の生理食塩液は、2.5ccで供給された。ボツリヌス毒素は、1cc中に60単位のBotox(米国、Allergan製)として供給された。
【0093】
安全性の評価:
安全性を評価する治療〜追跡期間において、少なくとも1回の被験薬の投与を受けた患者すべてに対して、(治験全体にわたる)有害事象およびバイタルサインの評価を行った。
【0094】
統計学的解析:
足関節捻挫試験の試料サイズは、8日目に体重をかけたときのVASで20mmの差違の検出を可能とし、標準偏差が平均から10mm以内である分布、5%のα、および10%のβレベルを仮定し、90%の統計学的検定力を与えるように決定した。潜在的な中止率を約10%として、本発明者らは、患者の試料サイズを150例と推定した。
【0095】
連続変数についてはステューデントのt検定、かつ、非連続変数についてはカイ2乗統計を用い、4つの群内において、人口学的データおよびベースラインにおけるデータを比較した。統計学的解析は、治療を意図する(ITT)集団に基づいて行った。定量的変数についてはステューデントのt検定、名義変数についてはカイ2乗統計、順序変数についてはマン−ホイットニーのU検定を含め、適切な統計学的方法を用い、群間において、有効性および安全性についての変数を解析した。データ解析は、SAS version 8.0(ノースカロライナ州、ケアリー、SAS Institute製)を用いて実施した。すべての統計学的検定は、有意性レベルを5%とする両側検定であった。
【0096】
足関節捻挫試験の有効性の主要評価項目は、8日目に体重をかけたときの疼痛の軽減であった。有害事象は、個別に列挙し、身体系ごとにまとめた。
【0097】
結果:
合計500人の患者をスクリーニングしたところ、治療を意図する患者集団は258例であった。治験への不参加の理由には、治験期間に参加不可能であること;併発傷害があること;NSAIDを使用すること;6カ月以内に足関節捻挫の既往があること;ならびに注射に対する忌避があることが含まれた。足関節捻挫試験の被験集団の平均年齢は、26(±7)歳であった。足関節捻挫治験では、群間における男性/女性比率が同等であった。ベースラインにおける併発状態について群間差は見られず、注射の投与にも群間差は見られなかった。治療期間全体にわたり、一連の注射に対する100%の服薬順守が得られた。足関節捻挫治験では、介入までの時間が38(±4)時間であった。足関節捻挫治験では、7例の患者が、90日後の追跡に参加せず、21例の患者が、12カ月後の追跡に参加しなかった。追跡への不参加の理由は、治療に有効性が見られないこと;治験施設の圏外へと移動したこと;不詳の理由により復帰できなかったことであった。復帰できなかったすべての患者は、大学人集団内の学生(一時的学生)であった。
【0098】
全般的な治療効果:
患者の満足度を、治療スコアと共に、被験体間で比較したところ、プラセボの48%に対して92%のHA+Botoxが上回り、プラセボの57%に対して77%のHAが上回り、プラセボの57%に対して74%のBotoxが上回った。HA+Botox群と他のすべての群との間には統計学的な差違が見られた。これは、4日目、8日目、30日目、90日目、および12カ月後の追跡についても一貫していた(カイ2乗検定、p<0.0001)(表2)。
【0099】
忍容性:
HA+Botox群の2例、Botox群の2例、プラセボ群の1例、ならびにHA群の1例を含め、6例の有害事象がすべての被験体において観察された。有害事象には、軽度の紅斑、4日目に足関節の周囲に生じるが8日目以降には影響が残らない軽度の知覚障害が含まれた。4つの群すべてにおける有害事象について、疼痛強度は異ならなかった。残る8日目、30日目、90日目、および12カ月後における治験来院については、有害事象が報告されなかった。重篤な有害事象は見られなかった。
【0100】
有効性:
体重をかけたときの疼痛を、治療を意図する集団において計算し、それがベースラインから2回目の来院(8日目:±1日)までに示した軽減についての第一の判断基準を表2に示す。体重をかけたときの疼痛が、ベースラインから1回目の来院(4日目)までに示した変化は:
・HA+Botoxが−7.1(±1.1);
・HA単独が−2.4(±1.18);
・Botox単独が−2.4(±1.2);および
・プラセボが−1.3(±1)
であった。1回目の来院(4日目)で歩いたときの疼痛については:
・HA+Botoxが−6.6(±1.4);
・HA単独が−4.3(±2.0);
・Botox単独が−3.5(±1.8);および
・プラセボが−1.76(±2.4)
であった。2回目の来院(8日目)、3回目の来院(30日目)、4回目の来院(90日目)、ならびに5回目の来院(356日目)では、体重をかけたときのVASおよび歩いたときのVASのいずれについても、プラセボならびに他のすべての治療に対する、HA+Botoxの統計学的有意差が達成された(p<0.001)。
【0101】
【表2】

有効性についてのすべての副次的パラメータは、研究期間中すべての群において改善された。しかし、1回目の来院後、有効性についてのすべてのパラメータにおいて群間で比較したところ、HA+Botoxが他の治療と比較して有効であった。これにより、有効性についての副次的変数は、主要転帰に関する変数と全般的に符合した。
【0102】
本治験において、HA+Botoxについての所見は予測外であった。HA+Botox群では、4日目、8日目、30日目、90日目、および12カ月後において、他のすべての群と比較して、主要転帰および副次的転帰が著明に改善された。改善の大きさは、いずれかの治療単独の和を超えた。さらに、4日目および8日目においては、患者の満足度もまた、HA+Botox群において著明により大きかった。HA群における所見は、既に報告した所見(Petrella RJ、Petrella MJ、Cogliano A、Periarticular hyaluronic acid in acute ankle sprain、Clinical Journal of Sports Medicine、2007年;17巻(4号):251〜257頁)と同様であり、これにより、方法の一貫性が示される。よって、急性足関節捻挫に対する新規の代替的な療法が、開発および検証された。本治療の結果として、スポーツへの復帰が改善され、有害作用もプラセボと同様に少数かつ軽度である一方、主要転帰および副次的転帰は、今日文献において説明されているいずれの治療よりも大きく改善された。
【0103】
結果は、HAおよびBotoxにより、いずれの治療単独と比較しても、肯定的であるだけでなく、予測外に優れた改善が得られることを示した。さらに、この新規の療法が示す有害作用は、プラセボと同様に極めて少数であった。HA+Botoxにより、より迅速にスポーツへと復帰することは、そのリハビリテーションのより早期において競争レベルのスポーツへと復帰することに直面する人々にとって明らかに重要である。12カ月後までの結果により、HA+Botoxによる優れた改善が、他の治療による改善を凌駕し続け、より長期において結果としてもたらされる傷害がより少数でありうることが示唆される。長期にわたる追跡により、本治療の長期にわたる安全性が観察されることが示唆され、他の軟組織外傷モデルにおけるHAおよびBotoxの組合せを含め、さらなる探索が進行中である。さらなる探索にはまた、慢性で再発性の足関節捻挫を含め、その障害がより慢性的な性格を示す患者も含まれるはずである。
【0104】
(実施例3)
関節周囲投与後における外側上顆炎に対するHAおよびボツリヌス毒素の有効性
テニス肘(外側上顆炎)は、成人における肘関節痛および手関節伸筋障害の一般的な原因であり、毎年全人口の約1〜3%が罹患している。外側上顆周囲における局所的な圧痛が状態を特徴づける一方、肘関節をまっすぐに伸ばした位置に置いたときに、手関節または中指関節がこれに抵抗する形で伸びることにより、疼痛が再生される。テニス肘または外側上顆炎は、ゴルフおよびテニスを含め、上肢によるスポーツ活動において一般的である。それは、著明な罹患率、ならびにスポーツから遠ざかる時間を結果としてもたらす。現在のところ、最適の治療については合意が得られていないが、短期における疼痛の緩和には、局所NSAIDまたは経口NSAIDが推奨されることが多い。コルチコステロイドの注射は、少なくとも一時的に有益ではあるが、有害事象の危険性をもたらすことが示されている。局所NSAIDおよび経口NSAIDのいずれを用いた場合にも結果として生じる有害事象もまたこれらに匹敵する。
【0105】
方法:
ボツリヌス毒素と組み合わせたHAを、HA単独、ボツリヌス毒素単独、およびプラセボと比較する、二重盲検、プラセボ対照試験を実施した。
【0106】
倫理審査委員会による承認を得、全患者から、インフォームドコンセントを得た。治験は、2004年3月〜2007年12月に実施され、カナダオンタリオ州における、3つのスポーツ医学プライマリーケア施設から継続患者を募った。本治験前の2年間にわたる、これらの施設における外側上顆炎の総数は、310例であった。治験責任医師およびスタッフは、治験開始前の治験実施に関する会合に出席し、治験の手順、データの収集および管理の標準化について確認した。治験は、ヘルシンキ宣言に基づく医薬品の臨床試験の実施の基準に従い実施された。
【0107】
外側上顆炎研究の組み入れに関する適格性の基準は:肘関節の外側における疼痛が、手関節および肘関節を完全に伸ばしたときの10cmのVASにおいて>4.5cmであり続ける期間が、2週間を超えて3カ月未満であったことを包含した。除外基準は:コルチコステロイドもしくは鍼灸もしくはHAを含め、局所注射の既往;神経絞扼;妊娠;授乳;全身性神経筋障害;または目下における抗炎症薬、筋弛緩剤、向精神薬の使用;重度の消化器疾患、腎疾患、もしくは肝疾患の既往歴を有する患者;リウマチ性疾患(骨関節炎を含む)を示す患者;薬物乱用もしくはアルコール乱用の既往歴を包含した。1回目の治験来院の30日以内に治験薬を施されたことがある場合もまた、患者を除外した。
【0108】
外側上顆炎のスクリーニング:
外側上顆炎群において、患者は、スポーツ医学診療所に、家庭医により照会を受けるか、または自己照会した。スクリーニングは、外側肘関節痛が、肘関節を完全に伸ばした状態で、これに抵抗して手関節が背屈するときに特に悪化して、0〜10cmのVASにおけるVASスコアが>4.5cmとなる期間が、2週間より長く3カ月未満であることを確認する、治験責任医師による評価を包含した。次いで、患者を、コンピュータにより作成される無作為化方式を用いて、4つの治療群:1)関節周囲における分子量500〜2000キロドルトン(20mg)の範囲のHAおよびボツリヌス毒素(60単位のBotox)を伴う群;2)関節周囲における分子量500〜2000キロドルトン(20mg)の範囲のHA単独群;3)ボツリヌス毒素(60単位のBotox)単独群;4)通常の生理食塩液群のうちの1つに1:4で無作為化した。また、全患者には、RICE(安静、アイシング、圧迫、挙上)を含め、標準的な支持手段についても助言を行った。
【0109】
表3にまとめる通り、ベースライン、ならびに、8日目、30日目、90日目、および12カ月後において評価を行った。外側上顆炎に対する有効性の尺度は、握り締めたときの患者による疼痛についてのVAS(0〜10cm)、握力、患者による傷害についての全般的な評価(5段階の分類スケール)、患者による正常な機能/活動およびスポーツへの復帰についての評価(5段階の分類スケール)、患者による満足度評価(10段階の分類スケール)、世界保健機構により定義される有害事象を包含した。
【0110】
【表3】

治療期間:
転帰を評価した後で、治療群に無作為化された患者には、HA+Botox(1.5cc HA+60単位のBotox、1.0cc)、HA単独(2.0cc)、Botox(60単位、1.0cc)単独、またはプラセボ(通常の生理食塩液2.5cc)の単回注射を施した。
【0111】
外側上顆炎の注射では、患者が、罹患した腕を、堅固な表面上に横たえた状態で曲げ、治験責任医師が、外側上顆から主要な疼痛点へと、皮下組織および筋肉の1cmの深さまで注射を投与する(図2)。テーピングならびに改造シリンジを用いてシリンジを遮蔽して、注射行為に加えられる圧力をほぼ同等なものとした。これについては、既に説明した(Petrella RJ、Petrella MJ、Cogliano A、Periarticular hyaluronic acid in acute ankle sprain、Clinical Journal of Sports Medicine、2007年;17巻(4号):251〜257頁)。
【0112】
追跡評価は、8日目、30日目、90日目、および12カ月後に遂行した。8日目(±2日)、30日目(±7日)、90日目(±7日)、および12カ月後(±7日)であった。患者が治験に参加する期間全体にわたり、有害事象および併用薬について評価した。
【0113】
転帰尺度:
外側上顆炎試験における主要評価項目は、10cmのVASを用いる、0〜10cmの範囲の安静時疼痛強度であった。副次的転帰は、Jamar油圧式握力計(イリノイ州、ボリングブルック、Sammons Preston製)を用いる握力、患者によるテニス肘傷害についての全般的な評価;患者による満足度、完全なスポーツへと復帰するまでの日数を包含した。評価は、患者の肘関節を完全に伸ばし、握力計の握りを中間の位置に設定して行った。患者は、3回にわたり、罹患した腕に対する握り締め検査を実施し、平均スコアを計算し、解析に用いた。握力およびVASスコアは、ベースライン、8日目、30日目、90日目、および12カ月後に記録した。患者にはまた、レスキュー投薬(1日当たり4錠までの、500mgアセトアミノフェン錠剤)も処方したが、各治験来院前の24時間にわたってはこれを差し控えた。
【0114】
被験物質:
ヒアルロン酸は、総容量を1.5ccとするのに十分な添加剤中に、平均分子量が500〜2000キロドルトンの1%ヒアルロン酸ナトリウム塩溶液を含有する単回投与バイアルにより供給された。バイアルは、室温(摂氏10〜30°)で保存した。通常の生理食塩液は、2.5ccで供給された。ボツリヌス毒素は、1cc中に60単位のBotox(米国、Allergan製)として供給された。
【0115】
安全性の評価:
安全性を評価する治療〜追跡期間において、少なくとも1回の被験薬の投与を受けた患者すべてに対して、(治験全体にわたる)有害事象およびバイタルサインの評価を行った。
【0116】
統計学的解析:
外側上顆炎治験では、8日目のHAおよびBotoxの組合せ治療と、いずれかの治療単独との間において、0.05の統計学的有意水準、5%のαで、VASスコアの40%の差違を検出する、80%の統計学的検定力を達成するのに必要な試料サイズを60例と推定した。推定値は、コルチコステロイドをプラセボと比較して、VASスコアの40%の差違を報告した先行研究(Wong SM、Hui ACF、Tong PY、Poon DWF、Yu E、Wong LKS、Treatment of lateral epicondylitis with botulinum toxin. A randomized, double−blind, placebo−controlled trial、Ann Intern Med、2005年;143巻:793〜797頁)に由来する所見に基づいた。統計学的検定力もまた、Wongら(Wong SM、Hui ACF、Tong PY、Poon DWF、Yu E、Wong LKS、Treatment of lateral epicondylitis with botulinum toxin. A randomized, double−blind, placebo−controlled trial、Ann Intern Med、2005年;143巻:793〜797頁)による先行研究に基づいた。
【0117】
連続変数についてはステューデントのt検定、かつ、非連続変数についてはカイ2乗統計を用い、4つの群内において、人口学的データおよびベースラインにおけるデータを比較した。統計学的解析は、治療を意図する(ITT)集団に基づいて行った。定量的変数についてはステューデントのt検定、名義変数についてはカイ2乗統計、順序変数についてはマン−ホイットニーのU検定を含め、適切な統計学的方法を用い、群間において、有効性および安全性についての変数を解析した。データ解析は、SAS version 8.0(ノースカロライナ州、ケアリー、SAS Institute製)を用いて実施した。すべての統計学的検定は、有意性レベルを5%とする両側検定であった。
【0118】
結果:
合計100人の患者をスクリーニングしたところ、治療を意図する患者集団は88例であった。治験への不参加の理由には、治験期間に参加不可能であること、併発傷害があること、NSAIDを使用すること、ならびに注射に対する忌避があることが含まれた。外側上顆炎治験の被験集団の平均年齢は、49(±12)歳であった。外側上顆炎治験では、男性より女性が多かったが、ベースラインにおける特徴を用いて統計学的に決定したところ、その差は有意ではなかった。ベースラインにおける併発状態について群間差は見られず、注射の投与にも群間差は見られなかった。治療期間全体にわたり、一連の注射に対する100%の服薬順守が得られた。外側上顆炎治験では、介入までの時間が32日間(±18日間)であった。外側上顆炎治験では、6例の患者が、90日後の追跡に参加せず、18例の患者が、12カ月後の追跡に参加しなかった。追跡への不参加の理由は、治療に有効性が見られないこと、治験施設の圏外へと移動したこと、不詳の理由により復帰できなかったことであった。復帰できなかったすべての患者は、大学人集団内の学生(一時的学生)であった。
【0119】
全般的な治療効果:
患者の満足度を、治療スコアと共に、被験体間で比較したところ、プラセボの21%に対して88%のHA+Botoxが上回り、プラセボの20%に対して53%のHAが上回り、プラセボの18%に対して49%のBotoxが上回った。HA+Botox群と他のすべての群との間には統計学的な差違が見られた。これは、8日目、30日目、90日目、および12カ月後の追跡についても一貫していた(カイ2乗検定、p<0.0001)(表4)。
【0120】
忍容性:
外側上顆炎治験では、HA+Botox群では、4例の患者が、8日目の注射部位において軽度の知覚障害を示す一方、Botox群では、3例の患者が、8日目に同様の症状を示した。他の群では有害事象が報告されなかった。8日目以降に脱力感または知覚障害が持続することはなかった。
【0121】
有効性:
有効性の主要転帰は、2回目の来院(8日目、表4)において、手を握り締めたときの疼痛についてのVASであった。ベースラインから2回目の来院までの、手を握り締めたときの変化は:
・HA+Botoxが−6.7(±2.0);
・HA単独が−3.1(±1.5);
・Botox単独が−2.7(±2.0);および
・プラセボが−1.0(±1.9)
であった。3回目の来院〜5回目の来院でVASが改善されたのは、HA+Botox群だけであった。HA+Botox群では、患者の満足度と同様、各来院における握力の合計もまた増大した。HA群ではすべてのパラメータが著明に改善されたが、その差は、HA+Botox群においてより大きかった。Botox単独群およびプラセボ群では、ベースラインに対する差違が観察されなかった。
【0122】
【表4】

本治験において、HA+Botoxについての所見は予測外であった。
【0123】
外側上顆炎試験では、HA+Botox群が、他の治療群のうちのいずれよりも優れていることが示された。さらに、主要転帰および副次的転帰に対するHA+Botoxの効果は、HA単独群またはBotox単独群の和より大きかった。Botox単独の対照群による所見は、既に報告されている一部の治験による所見(Wong SM、Hui ACF、Tong PY、Poon DWF、Yu E、Wong LKS、Treatment of lateral epicondylitis with botulinum toxin. A randomized, double−blind, placebo−controlled trial、Ann Intern Med、2005年;143巻:793〜797頁)とは符合するが、変化を示さなかった先行治験(Keizer SB、Rutten HP、Pilot P、Morre HH、van Os JJ、Verburg AD、Botulinum toxin injection versus surgical treatment for tennis elbow: a randomized pilot study、Clin Orthop Relat Res、2002年;125〜131頁)とは符合しない。さらに、追跡の長さは、文献において既に報告されている追跡の長さより大幅に長い。とりわけ、主要転帰および副次的転帰の短期間における改善が8日目において見られただけでなく、これらの所見が、少なくとも12カ月後まで持続した。さらに、被験体数は、既に報告されている被験体数より多く、結果の一般性を増大させている。既に説明されている有効サイズが小さく、信頼区間が広いことは、試料サイズが小さいためでありうる。
【0124】
外側上顆炎治験における用量は、先行治験における用量と同等である(Wong SM、Hui ACF、Tong PY、Poon DWF、Yu E、Wong LKS、Treatment of lateral epicondylitis with botulinum toxin. A randomized, double−blind, placebo−controlled trial、Ann Intern Med、2005年;143巻:793〜797頁; Keizer SB、Rutten HP、Pilot P、Morre HH、van Os JJ、Verburg AD、Botulinum toxin injection versus surgical treatment for tennis elbow: a randomized pilot study、Clin Orthop Relat Res、2002年;125〜131頁; Morre HH、Keizer SB、van Os JJ、Treatment of chronic tennis elbow with botulinum toxin、Lancet、1997年;349巻:1746頁)。注射のランドマークは、筋電図による誘導を用いる、既に説明されているランドマークと同様である(Morre HH、Keizer SB、van Os JJ、Treatment of chronic tennis elbow with botulinum toxin、Lancet、1997年;349巻:1746頁)。臨床的な方法の使用が、筋電図を容易に実行できない日常的実践(Molloy FM、Shill HA、Kaelin−Lang A、Karp BI、Accuracy of muscle localization without EMG: implications for treatment of limb dystonia、Neurology、2002年;58巻:806〜807頁)を反映する可能性がより高い点で、方法は、Wongら(2005年)による方法に類似していた。本治験における被験体は、先行治験における被験体と比較して、より最近の傷害を包含した(Wong SM、Hui ACF、Tong PY、Poon DWF、Yu E、Wong LKS、Treatment of lateral epicondylitis with botulinum toxin. A randomized, double−blind, placebo−controlled trial、Ann Intern Med、2005年;143巻:793〜797頁; Hayton MJ、Santini AJ、Hughes PJ、Frostick SP、Trail IA、Stanley JK、Botulinum toxin injection in the treatment of tennis elbow. A double−blind, randomized, controlled, pilot study、J Bone Joint Surg Am、2005年;87巻:503〜507頁)。
【0125】
本治験の結果は、外側上顆炎において、HAおよびBotoxにより、いずれの治療単独と比較しても、肯定的であるだけでなく、予測外に優れた改善が得られることを示した。さらに、この新規の療法が示す有害作用は、プラセボと同様に極めて少数であった。HA+Botoxにより、より迅速にスポーツへと復帰することは、そのリハビリテーションのより早期において競争レベルのスポーツへと復帰することに直面する人々にとって明らかに重要である。12カ月後までの結果により、HA+Botoxによる優れた改善が、他の治療による改善を凌駕し続け、より長期において結果としてもたらされる傷害がより少数でありうることが示唆される。
【0126】
外側上顆炎では、立証されているかまたは推奨される方法が利用できる場合は少ない。有害事象が少数で、増強される効果がHA単独またはBotox単独より大きいという本所見は、実施との関連で明らかに重要である。さらなる探索にはまた、慢性で再発性のテニス肘を含め、その障害がより慢性的な性格を示す患者も含まれるはずである。
【0127】
本明細書では、本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明の精神から逸脱しない限りにおいて、これに対して変更を行いうることを、当業者は理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における軟組織に対して内部の物理的支持を提供するための方法であって、前記軟組織部位の周囲に、治療有効量のHAおよびボツリヌス毒素を投与する/提供するステップを含む方法。
【請求項2】
前記HAおよびボツリヌス毒素により、前記軟組織の周囲に内部の足場を形成し、内部の物理的支持を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記内部の物理的支持により、前記軟組織を固定する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記内部の物理的支持により、前記軟組織の望ましくないさらなる動きを制限する、請求項1、2、または3に記載の方法。
【請求項5】
前記ボツリヌス毒素により、前記軟組織を麻痺させ、前記HAと共に、前記軟組織の動きの制限を支援する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記軟組織が、急性的または慢性的に傷害を受けている、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
傷害を受けた前記軟組織が、筋肉、筋膜、腱、および靭帯からなる群より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
投与する/提供するステップが、関節周囲投与、靭帯周囲投与、筋腱周囲投与、筋膜周囲投与、およびこれらの組合せからなる群より選択される方式により行われる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記HAおよびボツリヌス毒素が、薬学的に許容される担体と併せた組成物として提供される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記HAの分子量が約500kDaを超える、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記HAが、分子量の組合せを伴って提供される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ボツリヌス毒素が、A型、B型、C型、D型、E型、F型、およびG型からなる群より選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ボツリヌス毒素がA型である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ボツリヌス毒素がB型である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
HAおよびボツリヌス毒素が、併せてまたは同時に投与される/提供される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が、1回または複数回にわたり反復して投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記HAおよび前記ボツリヌス毒素を投与する前記ステップが、個別に行われる、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
傷害を受けた前記軟組織が、捻挫および/または挫傷(sprain)の結果としてのものでる、請求項6に記載の方法。
【請求項19】
傷害を受けた前記軟組織が、急性的または慢性的に傷害を受けた皮下軟組織である、請求項6に記載の方法。
【請求項20】
NSAID、コルチコステロイド、シクロオキシゲナーゼ−2の阻害剤、RICE治療、リハビリテーション、理学的治療、電気治療、温熱、冷却、超音波、圧迫、挙上、固定、装具、ギプス包帯またはギプス包帯のうちの1または複数と共に用いられる、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
傷害を受けた軟組織を治療するための、治療有効量のHAおよびボツリヌス毒素を含む組成物。
【請求項22】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記軟組織が、皮下組織である、請求項21または22に記載の組成物。
【請求項24】
前記HAの分子量が約500kDaを超える、請求項21、22、または23に記載の組成物。
【請求項25】
前記HAが、分子量の組合せである、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記ボツリヌス毒素が、A型、B型、C型、D型、E型、F型、およびG型からなる群より選択される、請求項21から26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記ボツリヌス毒素がA型ボツリヌス毒素である、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記ボツリヌス毒素がB型である、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
動物における、急性的または慢性的に傷害を受けた皮下軟組織を限局的に治療するための、請求項21から28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
傷害を受けた前記軟組織が、筋肉、筋膜、腱、および靭帯からなる群より選択される、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
関節周囲投与、靭帯周囲投与、筋腱周囲投与、または筋膜周囲投与のための、請求項21から30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
傷害を受けた皮下軟組織を治療するための、治療有効量のHAおよび治療有効量のボツリヌス毒素を含むキット。
【請求項33】
哺乳動物の傷害を受けた軟組織部位の周囲において、傷害を受けた前記軟組織に対して内部の物理的支持を提供することにより、傷害を受けた前記軟組織を治療する薬剤の製造における、治療有効量のHAおよびボツリヌス毒素の使用であって、さらなる損傷を最小限とし、傷害を受けた前記軟組織が治癒しうるように、前記HAおよびボツリヌス毒素により物理的足場を形成して、傷害を受けた前記軟組織を支持し、傷害を受けた前記軟組織を固定する、使用。
【請求項34】
傷害を受けた前記軟組織が、筋肉、筋膜、腱、および靭帯からなる群より選択される、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
前記HAおよびボツリヌス毒素が、関節周囲において、靭帯周囲において、筋腱周囲において、筋膜周囲において、ならびにこれらの組合せにおいて用いられる、請求項33または34に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−514579(P2012−514579A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543955(P2011−543955)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【国際出願番号】PCT/CA2010/000008
【国際公開番号】WO2010/078648
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(511162554)
【Fターム(参考)】