説明

ヒアルロン酸の製造方法

【課題】純白のヒアルロン酸を簡便に製造する方法の提供。
【解決手段】ヒアルロン酸生産能を有する微生物を、下記(1)及び/又は(2)
(1)一部又は全部の成分が非加熱滅菌された有機複合原料、
(2)酸化剤及び/又は還元剤
を含む培養液中で培養する工程を含む、ヒアルロン酸の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色成分が少ない純白のヒアルロン酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒアルロン酸は、ニワトリの鶏冠等からの抽出法により製造されているが、高分子量の生体成分等の夾雑物が多く、高純度に精製されたものはコスト高になる。これらの問題点を解決するため、醗酵法によりヒアルロン酸を製造することが行われている。
醗酵法によって製造されるヒアルロン酸は、前記抽出法と比較して均一条件で製造されるため、製品の品質が一定に保たれることから産業上の利用価値は大きい。
【0003】
しかし、醗酵法においても、醗酵に使用する培養液を滅菌、殺菌すると培養液中に着色成分が生成し、製造されるヒアルロン酸が褐変してしまう。また、製造されるヒアルロン酸含有液には醗酵原料由来の不純物が存在する。このため、醗酵法においても、不純物を分離除去して高純度の製品を得る方法が検討されている。
【0004】
不純物を分離除去して高純度の製品を得る方法としては、例えば、塩化セチルピリミジウム等の第4級アンモニウム塩とヒアルロン酸とのアダクトを形成させ、不純物を分離し、さらにケイ酸マグネシウムのカラムに不純物を吸着させる方法(特許文献1参照)、マクロレテイキュラー型アニオン交換樹脂を用いて、発熱性物質、蛋白質等を樹脂に捕捉し除去する方法(特許文献2参照)、アルミナを用いて、醗酵液から発熱性物質を担体に捕捉する方法(特許文献3参照)、強陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を用いて、蛋白質等を樹脂に捕捉し除去する方法(特許文献4参照)等が知られている。
【0005】
しかしながら、上記方法では、発熱性物質、蛋白質、核酸、金属等の不純物はある程度除去できるが、醗酵に使用する培地を殺菌した後の培養液の着色(褐変)成分を除去するには不十分である。即ち、上記方法では、精製ヒアルロン酸中に着色成分が検出され、純白のヒアルロン酸を得る効果が少ない。
【特許文献1】特許昭62−501471号公報
【特許文献2】特開昭62−12293号公報
【特許文献3】特許第2594322号公報
【特許文献4】特開平9−56394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、培養液由来の着色成分の含有量を低減させた、純白のヒアルロン酸を簡便に製造する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、ヒアルロン酸生産能を有する微生物を培養するための培養液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ヒアルロン酸生産能を有する微生物を、下記(1)及び/又は(2)
(1)一部又は全部の成分が非加熱滅菌された有機複合原料、
(2)酸化剤及び/又は還元剤
を含む培養液中で培養することにより、純白のヒアルロン酸を製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、ヒアルロン酸生産能を有する微生物を、下記(1)及び/又は(2)
(1)一部又は全部の成分が非加熱滅菌された有機複合原料、
(2)酸化剤及び/又は還元剤
を含む培養液中で培養する工程を含む、ヒアルロン酸の製造方法に関する。
また、本発明は、下記(1)及び/又は(2)
(1)一部又は全部の成分が非加熱滅菌された有機複合原料、
(2)酸化剤及び/又は還元剤
を含む、ヒアルロン酸生産能を有する微生物を培養するための培養液に関する。
ここで、非加熱滅菌される成分は、好ましくは酵母エキス及び/又はポリペプトン−Nである。
また、上記酸化剤は過酸化水素、上記還元剤はシステインが好ましく用いられる。培養液中に添加される酸化剤又は還元剤の濃度は、それぞれ0.01〜0.2(w/v)%で使用することができ、両者を併用する場合は、合計濃度0.02〜0.4(w/v)%で使用することができる。
上記ヒアルロン酸生産能を有する微生物は、好ましくはストレプトコッカス・ズーエピデミカス(Streptococcus zooepidemicus)などのストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する微生物である。このような微生物として、ストレプトコッカス・ズーエピデミカスMK5(FERM P−21487)が挙げられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、培養液由来の着色成分を含有しない純白のヒアルロン酸を、精製工程を簡略化した簡便な方法でも、例えばヒアルロン酸ナトリウムの形態で得ることができる。
また、本発明により、ヒアルロン酸生産能を有する微生物を培養するための培養液が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のヒアルロン酸の製造方法について詳細に説明する。
<ヒアルロン酸生産能を有する微生物>
本発明において使用するヒアルロン酸生産能を有する微生物とは、通常の培養によりヒアルロン酸を生産することができる微生物のことであり、種類は限定されない。例えば、ストレプトコッカス属に属する微生物を好ましく使用することができる。ストレプトコッカス属に属しない微生物でも、通常の遺伝子工学的手法を用いてヒアルロン酸生産能を得た微生物も使用することができる。
【0011】
ヒアルロン酸生産能を有するストレプトコッカス属に属する微生物は、一般に牛鼻腔粘膜、牛眼球に存在していることが知られている。本発明ではそこから単離された微生物を利用することもできる。
ストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する微生物としては、例えば、ストレプトコッカス・ズーエピデミカス(Streptococcus zooepidemicus)、ストレプトコッカス・エクイ(Streptococcus equi)、ストレプトコッカス・ピオゲニス(Streptococcus pyogenes)等が挙げられる。ストレプトコッカス・ズーエピデミカス(Streptococcus zooepidemicus)が好ましく使用することができる。
【0012】
さらに、ストレプトコッカス属の属する微生物等のヒアルロン酸生産能を有する微生物を、紫外線、NTG(N−メチル−N´−ニトロ−N−ニトロソグアニジン)、メチルメタンスルホン酸等で処理することにより、ヒアルロニダーゼ非生産菌や非溶血性菌に改良することがより好ましい。人体又は動物に悪影響を及ぼす可能性が低くなるからである。
前記ヒアルロニダーゼ活性及び溶血性を欠損させた菌株としては、ストレプトコッカス・ズーエピデミカスNH-131(FERM P-7580)、ストレプトコッカス・ズーエピデミカスHA-116(ATCC39920)、ストレプトコッカス・ズーエピデミカスMK5(FERM P-21487)、ストレプトコッカス・ズーエピデミカスYIT2030(FERM BP-1305)が好ましく、その中でもストレプトコッカス・ズーエピデミカスMK5(FERM P-21487)、ストレプトコッカス・ズーエピデミカスYIT2030(FERM BP-1305)が特に好ましい。
これらのうち、FERM株については、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターより入手可能である。また、ATCC株については、American Type Culture Collectionから入手可能である。
【0013】
微生物の有するヒアルロン酸生産能は、当業者であれば公知の方法に従い確認することができる。例えば、微生物を所望の時間培養した後、培養液を濾過し、濾液に食塩を添加し、2−プロパノールでヒアルロン酸ナトリウムの結晶を析出させることで確認することができる。培養液は、濾過する前に、水による希釈、活性炭の添加、濾過助剤の添加、pHの調整等を適宜施すことができる。また、2−プロパノールによる析出の前にpH4に調整することが望ましい。
【0014】
<培養液>
上記ヒアルロン酸を産生する微生物を培養する条件は、上記微生物がヒアルロン酸を生産できる条件であれば限定されず、微生物の種類に応じた通常の培養条件を用いることができる。
培養液としても上記ヒアルロン酸を産生する微生物がヒアルロン酸を産生できる培地であれば限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、以下の成分を含む培養液を使用することができる。
グルコース、シュクロース等の炭素源、
ポリペプトン−N、酵母エキス等の窒素源、
グルタミン酸、グルタミン等の遊離アミノ酸の窒素源、
ビタミン、
無機塩等、
タンニン等のフェノール性水酸基を有するヒアルロニダーゼ阻害剤
【0015】
本発明においては、例えば、グルコース6(w/v)%、ポリペプトン−N1.5(w/v)%、酵母エキス0.5%、硫酸マグネシウム7水塩0.01(w/v)%、リン酸水素2ナトリウム0.05(w/v)%、グルタミン酸ナトリウム0.05(w/v)%、可溶化剤(商品名:アデカプルロニックL−61(株式会社ADEKA))0.01(w/v)%の組成の培養液を使用することができる。
【0016】
本発明における「有機複合原料」とは、培養液中に含まれる培養液成分のうち、有機成分を意味し、例えば、グルコース、シュクロース等の炭素源、ポリペプトン−N、酵母エキス等の窒素源、グルタミン酸、グルタミン等の遊離アミノ酸の窒素源が挙げられる。
【0017】
(1)本発明の第一態様
上記培養液は、通常、滅菌後に微生物の培養に用いられるが、本発明の第一の態様では、有機複合原料の成分の一部又は全部を精密濾過により非加熱滅菌することが重要である。精密濾過により非加熱滅菌される有機複合原料は、好ましくはポリペプトン−N、酵母エキス又はそれらの組み合わせである。また、グルコースも精密濾過することができる。
【0018】
精密濾過には、滅菌処理済みのメンブレンフィルターを使用することができる。使用するメンブレンのタイプは、セルロース混合エステルタイプ、セルロースアセテートタイプ四フッ化エチレンタイプ等を挙げることができ、好ましくはセルロース混合エステルタイプである。メンブレンフィルターの孔径は0.1〜1.0μm、好ましくは0.2〜1.0μm、より好ましくは0.2〜0.45μmである。
実験室レベルで有機複合原料を濾過する場合は、メンブレンフィルターを装着したシリンジを用いることができる。タンクレベルで有機複合原料を濾過する場合は、メンブレンフィルターを装着したタンク付きステンレスフォルダーを用いる加圧濾過により精密濾過してもよい。
【0019】
精密濾過により非加熱滅菌しない残りの培養液成分については、通常の滅菌処理、例えば、105〜145℃で3〜30分間、好ましくは115〜125℃で15〜30分間、より好ましくは121℃、20分間加熱滅菌して使用すればよい。また、当業者であれば、上記通常の滅菌処理の他、精密濾過による滅菌を行って使用することも可能である。
【0020】
このように培養液成分を滅菌処理した後、滅菌後のそれぞれの培養液成分を一つにあわせ、微生物の培養に用いることができる。本発明の第一態様によれば、有機複合原料の全部又は一部の成分を非加熱滅菌することにより、生産されるヒアルロン酸の着色を防ぐことができる。
【0021】
(2)本発明の第二態様
本発明の第二の態様においては、酸化剤及び/又は還元剤が存在する培養液中で、ヒアルロン酸生産能を有する微生物を培養する。
本発明の第二態様で使用する酸化剤としては、過酸化水素、次亜塩素酸、二酸化マンガン、過マンガン酸カリウム、酸素などが挙げられ、好ましくは過酸化水素である。還元剤としては、システイン、チオ硫酸ナトリウム、シュウ酸、硫化水素などが挙げられ、好ましくはシステインである。これらの酸化剤及び/又は還元剤は、単独で使用することもできるし、2種類以上を併用することもできる。例えば、複数の酸化剤を併用してもよいし、複数の還元剤を併用してもよいし、酸化剤及び還元剤を併用することもできる。
【0022】
培養液中に添加する酸化剤及び還元剤の濃度は、それぞれ0.01〜0.2(w/v)%程度であり、好ましくは0.02〜0.2(w/v)%、より好ましくは0.04〜0.2(w/v)%程度である。また、酸化剤及び還元剤を併用する場合、これらの合計濃度は、0.02〜0.4(w/v)%程度であり、好ましくは0.04〜0.4(w/v)%、より好ましくは0.1〜0.4(w/v)%程度である。
【0023】
このように、本発明の第二態様によれば、酸化剤及び/還元剤を含んだ培養液中でヒアルロン酸を生産する微生物を培養することにより、生産されたヒアルロン酸の着色を防ぐことができる。
【0024】
(3)本発明の第三態様
本発明の第三の態様として、本発明の第一の態様と本発明の第二の態様を組み合わせることができる。すなわち、全部又は一部の成分が非加熱滅菌された有機複合原料、並びに酸化剤及び/又は還元剤を含む培養液中で、ヒアルロン酸生産能を有する微生物を培養することができる。本発明の第三態様によれば、生産されたヒアルロン酸の着色を防ぐことができる。
【0025】
<微生物の培養>
培養条件は、上記微生物がヒアルロン酸を生産できる条件であれば限定されず、微生物の種類に応じた通常の培養条件を用いることができる。例えば、本発明第一〜第三の態様の培養液中で、pHを7〜7.5程度、温度を30〜37℃程度に制御して好気的に行うことが好ましい。培養時間は特に限定はされず、適宜選択することができる。
本発明における培養方法としては、特に限定されるものではないが、回分培養とする方法と、連続培養とする方法、流下培養とする方法の何れも可能である。
【0026】
また、前記培養は、前培養を行った後に本培養を行ってもよい。前培養の条件としては、グルコース、フルクトース等の炭素源、ポリペプトン、酵母エキス、麦芽エキス等の窒素源、ビタミン、無機塩等を含む培地中で、pHを4〜8程度、温度を30〜37℃程度に制御して好気的に培養することが好ましい。
【0027】
培養(本培養)終了後、培養液は、まず、イオン交換水を用いて希釈し、例えば、遠心分離、膜濾過、又はセライトもしくはパーライト等の濾過助剤を用いたフィルタープレス等により除菌することが好ましい。また、必要に応じて、脱タンパク質、又は更なる脱色のために、活性炭と接触させることができる。
培養液をイオン交換水で希釈する場合は、培養液中のヒアルロン酸濃度が0.1〜5g/L程度になるように希釈することが好ましい。この場合、脱色及び脱タンパク質のためにpH4に調整することが好ましい。
このようにして、培養液からヒアルロン酸含有液を得ることができる。
【0028】
得られたヒアルロン酸含有液からヒアルロン酸を取得することができる。例えば、まず、ヒアルロン酸含有液に塩化ナトリウム3g/Lを溶解し、pH7に調整する。次に、2−プロパノールを添加することでヒアルロン酸ナトリウムの結晶を析出させ、結晶を真空乾燥させることでヒアルロン酸ナトリウムの結晶を得ることができる。本発明において、ヒアルロン酸は、ヒアルロン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩)の形態も含み、ヒアルロン酸金属塩の形態で製造されても良い。
【0029】
得られた結晶の色度は、目視による観察の他、吸光度計により測定することもできる。吸光度計により測定する場合には、例えば、結晶を0.1(w/w)%となるように純水に溶解させ、400 nmでの透過率を100 mmセルを用いて吸光度計で測定することができる。透過率が100%に近いほど、不純物の少ない純粋なヒアルロン酸であることを示し、結晶が純白であることを意味する。本発明においては、透過率が95%以上であるときに、純白というとする。
【0030】
本発明により得られたヒアルロン酸は、医薬品、化粧品、食品添加物等、あらゆる用途に用いることができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明する。
<実施例1>
工程1.ストレプトコッカス・ズーエピデミカスMK5(FERM P−21487)の培養
ストレプトコッカス・ズーエピデミカスMK5、グルコース0.2%、ポリペプトン2.0%、酵母エキス0.5%、硫酸マグネシウム7水塩0.05%の組成からなる培地(pH7.0)を綿栓付き500ml容三角フラスコに100ml入れ、滅菌後、同一組成を含む寒天プレート上に形成したコロニーをそれぞれ一白金糸植菌し、30℃で18時間前培養した。
続いて、本培養を行った。グルコース6(w/v)%、ポリペプトン−N(大日本製薬株式会社製)1.5(w/v)%、酵母エキス(オリエンタル酵母工業製)0.5%、硫酸マグネシウム7水塩0.01(w/v)%、リン酸水素2ナトリウム0.05(w/v)%、グルタミン酸ナトリウム0.05(w/v)%、可溶化剤(商品名:アデカプルロニックL−61(株式会社ADEKA))0.01(w/v)%の組成の培養液を用いた。ポリペプトン−N、酵母エキス及びグルコースを除いた培地を3Lのジャーファーメンターに2L入れ、121℃、20分間滅菌後、前培養したストレプトコッカス・ズーエピデミカスMK5(FERM P−21487)を1(v/v)%接種した。ポリペプトン−N及び酵母エキスは、121℃、20分間滅菌した孔径0.45ミクロンのセルロース混合エステルタイプメンブレンフィルター(ADVANTEC社製)を装着したタンク付きステンレスフォルダー(ADVANTEC社製)を用いて加圧濾過により非加熱滅菌して、培養開始時に一度に添加した。また、グルコースは121℃、20分間別滅菌して、培養開始時に一度に添加した。微生物は、20(w/v)%水酸化ナトリウムにてpHを7.4に連続的に制御しながら37℃で24時間通気攪拌培養した。
【0032】
工程2.培養液の処理
前記工程1で培養した培養液を、イオン交換水を用いて10倍に希釈し、その2.5L水溶液に活性炭(武田薬品社製の白鷺RW50−T)を5g、パーライト(三井金属鉱業株式会社のロカヘルプ(濾過助剤)♯409)を30g添加してpH4に調整後、1時間処理し、簡易濾過器(ヌッチェ)を用いて濾過し、ヒアルロン酸含有液を得た。
【0033】
工程3.ヒアルロン酸ナトリウム結晶の取得
前記2で調製したヒアルロン酸含有液1Lに、食塩3gを溶解、pH7に調整後、2−プロパノール6Lで析出を行い、40℃で真空乾燥し、0.5gのヒアルロン酸ナトリウム結晶を得た。
色度の分析は、目視による結晶の着色の様子、さらに、結晶を純水に0.1(w/v)%となるように溶解し、400nmの透過率を100mmセルを用いて吸光度計(島津社製 スペクトロフォトメーター UV−120−01)で測定した。その結果、得られた結晶は純白であり、透過率は100%であった。
【0034】
<実施例2>
実施例1で、酵母エキス、ポリペプトン−N及びシステイン0.04(W/V)%を、グルコースを除く他の成分と共に121℃、20分間滅菌した以外は、実施例1と同様の操作を実施した。得られたヒアルロン酸ナトリウムは0.5gであった。さらに、結晶は純白であり、透過率は96%であった。
【0035】
<実施例3>
実施例2でシステイン0.2(w/v)%にした以外は、実施例2と同様の操作を実施した。得られたヒアルロン酸ナトリウムは0.5gであった。さらに、結晶は純白であり、透過率は98%であった。
【0036】
<実施例4>
実施例2でシステインに代わって過酸化水素0.04(W/V)%にした以外は、実施例2と同様の操作を実施した。得られたヒアルロン酸ナトリウムは0.5gであった。さらに、結晶は純白であり、透過率96%を得た。
【0037】
<実施例5>
実施例2でシステインに代わって過酸化水素0.2(W/V)%にした以外は、実施例2と同様の操作を実施した。得られたヒアルロン酸ナトリウムは0.5gであった。さらに、結晶は純白であり、透過率は99%であった。
【0038】
<実施例6>
実施例3で過酸化水素0.04(W/V)%を追加した以外は、実施例3と同様の操作を実施した。得られたヒアルロン酸ナトリウムは0.5gであった。さらに、結晶は純白であり、透過率は98%であった。
【0039】
<比較例1>
実施例2でシステインを添加しない以外は、実施例2と同様の操作を実施した。得られたヒアルロン酸ナトリウムは0.5gであった。さらに、結晶は僅かに淡茶色を呈しており、透過率は85%であった。
【0040】
実施例1〜6及び比較例の結果を以下の表にまとめた。
【表1】

【0041】
これらの結果より、(1)成分の全部又は一部が非加熱滅菌された有機複合原料、及び/又は、(2)酸化剤及び/又は還元剤を含む培養液中で、ヒアルロン酸生産能を有する微生物を培養することにより、純白なヒアルロン酸を製造することが可能であることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸生産能を有する微生物を、下記(1)及び/又は(2)
(1)一部又は全部の成分が非加熱滅菌された有機複合原料、
(2)酸化剤及び/又は還元剤
を含む培養液中で培養する工程を含む、ヒアルロン酸の製造方法。
【請求項2】
非加熱滅菌される成分が、酵母エキス及び/又はポリペプトン−Nである請求項1記載の方法。
【請求項3】
酸化剤が過酸化水素である請求項1記載の方法。
【請求項4】
還元剤がシステインである請求項1記載の方法。
【請求項5】
培養液中に添加される酸化剤又は還元剤の濃度が0.01〜0.2(w/v)%である請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ヒアルロン酸生産能を有する微生物が、ストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する微生物である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する微生物が、ストレプトコッカス・ズーエピデミカス(Streptococcus zooepidemicus)である請求項6記載の方法。
【請求項8】
ストレプトコッカス・ズーエピデミカス(Streptococcus zooepidemicus)が、ストレプトコッカス・ズーエピデミカス(Streptococcus zooepidemicus)MK5(FERM P−21487)である請求項7記載の方法。
【請求項9】
下記(1)及び/又は(2)
(1)一部又は全部の成分が非加熱滅菌された有機複合原料、
(2)酸化剤及び/又は還元剤
を含む、ヒアルロン酸生産能を有する微生物を培養するための培養液。

【公開番号】特開2009−284826(P2009−284826A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140668(P2008−140668)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】