説明

ヒストモナス症の処置のための置換されたベンズイミダゾール

本発明は、特にシチメンチョウにおける、ヒストモナス症の処置のための置換されたベンズイミダゾールの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家禽における、特にシチメンチョウにおけるヒストモナス症を処置するための置換されたベンズイミダゾールの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
置換されたベンズイミダゾールならびに殺虫剤、殺真菌剤および除草剤としてのそれらの使用は、以前に開示されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10)。ハロゲン化ベンズイミダゾールならびに駆虫薬、コクシジウム抑制薬および殺虫剤としてのそれらの効果は、開示されている(特許文献11、特許文献12)。本発明に従って好ましく用いられる置換されたベンズイミダゾールは、特許文献13および特許文献14に記述されている。
【0003】
ニトロで置換されたベンズイミダゾールおよびポリエーテル抗生物質の混合物は、コクシジウム症の治療薬として開示されている(特許文献15)。寄生原虫を抑制するための組成物としてのコクシジウム症用のポリエーテル抗生物質もしくは合成治療薬と置換されたベンズイミダゾールとの混合物は、特許文献16に開示されている。
【0004】
ヒストモナス症(「黒頭病」)は、感染症である。それは腸内寄生虫の一つであるヒストモナスspp.(Histomonas spp.)、特にヒストモナス・メレアグリディス(Histomonas meleagridis)によって引き起こされる。該病原体は腸組織に損傷を与え、そして血液を介して肝臓に到達し、そしてそこで壊死を生じさせるので、感染は盲腸および肝臓の重度の炎症をもたらす。疾患のよく起こる付随作用は、疾患の名称が由来する、罹患鳥類の黒っぽい青色の頭部から明らかな、循環障害である。
【0005】
感染した農場において、疾患は全家畜に非常に急速に広まり、そして非常に高い死亡率(いくつかの農場において100%まで)のために、多大な経済的損失をもたらす。
【0006】
ヒストモナス・メレアグリディスは、その構造の鞭毛のために、鞭毛虫(鞭毛虫上綱)の亜門に属する。鞭毛期は、2つに分裂することにより盲腸において増殖する。感染した盲腸に由来するアメーバ様期は血流を介して肝臓に侵入し、そして広範囲に及ぶ壊死によりそれを破壊する(非特許文献1)。
【0007】
ヒストモナド類(histomonads)の直接感染、例えばヒストモナドを含有する新鮮な糞便の経口摂取は、該病原体が宿主の外で短期間しか生存することができず、そして消化管を通過中に殺されるので、いつも失敗する。米国人研究者による試験(非特許文献3)は、排泄腔感染がシチメンチョウにおいて可能であることを実験的に明らかにした。排泄腔は糞便を置いた後にわずかな吸引力を生じるので、この経路による群れの感染は実際条件下で、例えば汚れた寝床を介して起こり得る。病原体は中間宿主により伝染することもまた科学的に実証されている。盲腸の寄生虫ヘテラキス・ガリナルム(Heterakis gallinarum)、特にヘテラキスの卵もしくは幼虫期は、キャリア(ヒストモナス・メレアグリディスの運搬媒介体)であることが既知である。このような理由でニワトリおよびシチメンチョウはヒストモナス類にすでに活発に感染し、そして成体ヘテラキス寄生虫が盲腸の内容物に現れる前でさえ病気になり得る。ヒストモナス類は、胚含有ヘテラキス卵において4年までの間感染性のままでいることができる。さらなる中間宿主は、ヘテラキスの卵で汚染されたミミズおよび節足動物であり得る。ニワトリお
よび他のタイプの家禽もまた、潜在的危険を示す。それらはシチメンチョウより感受性が低く、そして臨床症状なしに病原体のキャリアであることが多く、その結果それらは病原体の蔓延の一因となる。
【0008】
シチメンチョウは年齢を問わず感染し得るが、疾患はほとんどの場合3〜12週齢の間で起こる。感染と疾患の出現との間の期間は、通常は7〜12日である。死亡率は100%までであることができ、そして感染後17日目でその最高レベルに達する。盲腸における炎症は8日目から、そして肝臓では10日目以降から見出される。
【0009】
感染した鳥類は無気力で消耗し、うなだれた翼と頭部を示し、そして餌を拒絶する。硫黄色の糞、下痢そして後には血液の存在もまた典型的である。疾患と関連する循環障害は、頭部の顕著な黒っぽい青色の色合いをもたらす(そこからこの疾患の名称)。
【0010】
疾患の進行は、主にシチメンチョウの年齢および腸内細菌叢により決定される。エシェリキア・コリ(E.coli)、クロストリジウム・ペルフリンゲンス(Clostridium perfringens)もしくはコクシジウム類でのさらなる細菌感染は、経過をより重度にする(非特許文献2)。
【0011】
疾患は、食塩水溶液を用いて盲腸および肝臓から採取した検体から診断することができる。アメーバ運動を示す期は、位相差顕微鏡下で可視である。PAS染色は、組織学に使用される。
【0012】
1950年まで、ヒ素化合物(例えば、ニタルソン、カルバルゾン、ロキサルソン)は、ヒストモナス症に有効な唯一の化合物であった。しかしながら、ヒ素化合物は、一般に、いったん確定した感染を処置するために十分に強力ではないことが既知である。さらなる不都合は、それらの非常に低い安全域であり;ロキサルソンの投薬量を2倍にするだけでシチメンチョウのオスにおける運動機能障害が引き起こされる。
【0013】
1960年以来、ニトロイミダゾールおよびニトロフランは、飼料および/もしくは水において集中的に用いられているが、生産家畜におけるそして飼料添加物としての使用は、1990年代半ばからEUおよびUSAにより次第に禁止され:ジメトリダゾールは1997年にUSAにおいて市場から除かれ、そして2001年にEUにおいて飼料添加物としての使用が禁止された。2003年3月31日以来、EUにおいて今でも認可されている唯一の製品、ニフルソール(nifursol)を用いることもまた、もはや可能でなくなっている。従って、黒頭病の治療用の薬剤も予防的抑制用の製品も、現在そして将来に利用可能ではない。
【0014】
蠕虫有効物質(アルベンダゾールおよびフェンベンダゾール)は、インビトロでヒストモナスへの不十分な活性を有するが、感染の時期の後に14日間処置が行われる場合にインビボで予防活性を有する。この場合の活性はヒストモナス・メレアグリディスに対してではなく、ヒストモナス・メレアグリディスの運搬媒介体、ヘテラキス・ガリナルムに対してである(非特許文献3)。
【0015】
疾患を防ぐために現在利用可能である唯一の戦略は、衛生措置、家畜密度および栄養供給の最適化、ならびに病原体伝染の防止からなる。これらの措置は不十分であり、そして感染および疾患を防ぐことはできない。
【0016】
感染後でも自然免疫を獲得することはできないので、ヒストモナス・メレアグリディスに対するワクチン接種は生物学的に可能でない。1回感染した鳥類は、再び病気になり得る。弱毒化生ワクチンを用いる免疫感作での試験は、成功しなかった。
【0017】
従って、ヒストモナス症を処置するための薬剤の必要性がある。
【0018】
【特許文献1】EP−A 87 375明細書
【特許文献2】EP−A 152 360明細書
【特許文献3】EP−A 181 826明細書
【特許文献4】EP−A 239 508明細書
【特許文献5】EP−A 260 744明細書
【特許文献6】EP−A 266 984明細書
【特許文献7】US−P 3 418 318明細書
【特許文献8】US−P 3 472 865明細書
【特許文献9】US−P 3 576 818明細書
【特許文献10】US−P 3 728 994明細書
【特許文献11】DE−A 2 047 369明細書
【特許文献12】DE−A 4 237 617明細書
【特許文献13】WO 00/04022明細書
【特許文献14】WO 00/68225明細書
【特許文献15】US−A 5 331 003明細書
【特許文献16】WO 96/38140明細書
【非特許文献1】BonDurant,R.H.,Wakenell,P:S.(1994):Histomonas meleagridis and Relatives.Parasitic Protozoa,Volume 9,Chapter 3,pp189−206.Academic Press
【非特許文献2】McDougald,L.R.,Hu,J.(2001):Blackhead Disease(Histomonas meleagridis)aggravated in broiler chickens by concurrent infection with cecal coccidiosis(Eimeria tenella).Avian Diseases 45:307−312
【非特許文献3】Hu,J.,McDougald,L.R.,(2003):Direct lateral transmission of Histomonas meleagridis in turkeys.Avian Diseases 47:489−492
【発明の開示】
【0019】
本発明は、家禽におけるヒストモナス症を抑制するための薬剤を製造するための式(I)
【0020】
【化1】

【0021】
[式中、
はフルオロアルキルであり、
は水素もしくはアルキルであり、
は式
【0022】
【化2】

【0023】
の基であるか、もしくは式
【0024】
【化3】

【0025】
の基であり、
はアルキルであり、
はアルキルもしくは置換されたフェニルであり、
はアルキルであり、
、X、XおよびXは相互に独立して水素、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ハロアルキルチオもしくはハロアルキルスルホニルであるか、
あるいは
とXもしくはXとXは一緒になってジオキシハロアルキレン基である]
のベンズイミダゾールの使用に関する。
【0026】
本発明の置換されたベンズイミダゾールは、式(I)により一般に定義される。
【0027】
は好ましくはC〜C−フルオロアルキルであり、
は好ましくは水素もしくはC〜C−アルキルであり、
は好ましくはC〜C−アルキルであり、
は好ましくはC1〜6−アルキルあるいは場合によりC1〜4−アルキル、C1〜4−ハロアルキル、ハロゲン、ニトロ、C1〜4−アルコキシ、C1〜4−ハロアルコキシまたは場合によりモノ−もしくはポリ−ハロゲン置換されていてもよいメチレン−もしくはエチレンジオキシで1回もしくはそれ以上置換されていてもよいフェニルである。
【0028】
は好ましくはC1〜4−アルキルであり、
、X、XおよびXは好ましくは相互に独立して水素、F、Cl、Br、C〜C−ハロアルキル、C〜C−ハロアルコキシ、C〜C−ハロアルキルチオ、C〜C−ハロアルキルスルホニルであるか、または
さらに好ましい態様において、XとXもしくはXとXは一緒になってジオキシハロ−C〜C−アルキレン基である。
【0029】
は特に好ましくはCF、CHFもしくはCHFである。
【0030】
は特に好ましくは水素、メチル、エチル、n−プロピルもしくはイソプロピルである。
【0031】
は特に好ましくはメチル、エチル、n−プロピルもしくはイソプロピルである。
【0032】
は特に好ましくはC1−6−アルキルである。
【0033】
は特に好ましくはメチルもしくはエチルである。
【0034】
、X、XおよびXは特に好ましくは相互に独立して水素、F、Cl、Br、CF、CHF、CHF、OCF、OCHF、OCHF、SCF、SCHF、SCHF、SOCF、SOCHF、SOCHFである。
【0035】
さらなる態様において、XとXもしくはXとXはまた特に好ましくは一緒になって基−O−CF−O−、−O−CF−CF−O−、−O−CF−CF−CF−O−、−O−CF−CHF−O−、−O−CClF−CClF−O−、−O−CHF−O−、−O−CHF−CHF−O−もしくは−O−CClF−O−である。
【0036】
非常に特に好ましい態様において、Rは式
【0037】
【化4】

【0038】
の基である。
【0039】
さらに非常に特に好ましい態様において、Rは式
【0040】
【化5】

【0041】
の基である。
【0042】
は非常に特に好ましくは−CFである。
【0043】
は非常に特に好ましくは水素である。
【0044】
は非常に特に好ましくはメチルである。
【0045】
は非常に特に好ましくはClもしくはBrである。
【0046】
は非常に特に好ましくは水素である。
そして
およびXは非常に特に好ましくは一緒になって−OCF−CF−O−である。
【0047】
アルキルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルのような、1〜8個、好ましくは1〜6個、特に好ましくは1〜4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状炭化水素基である。
【0048】
アルキレンは、2つの異なる位置で連結される、1〜4個、好ましくは1〜3個、特に好ましくは1〜2個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状炭化水素基である。
【0049】
ハロアルキルは、1個もしくはそれ以上、特に1〜3個の水素原子がハロゲン原子、特にフッ素、塩素もしくは臭素で置換されている上記に定義するとおりのアルキル基である。
【0050】
フルオロアルキル基は、対応して、1個〜全ての水素原子がフッ素原子で置換されているアルキル基であり;ペルフルオロアルキル基、例えばトリフルオロメチルもしくはペンタフルオロエチルが好ましい。
【0051】
ハロアルコキシは、1個もしくはそれ以上、特に1〜3個の水素原子がハロゲン原子、特にフッ素、塩素もしくは臭素で置換されている、1〜8個、好ましくは1〜6個、特に好ましくは1〜4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状アルコキシ基である;例えば、−OCF
【0052】
ハロアルキルチオは、1個もしくはそれ以上、特に1〜3個の水素原子がハロゲン原子、特にフッ素、塩素もしくは臭素で置換されている、1〜8個、好ましくは1〜6個、特に好ましくは1〜4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状アルキルチオ基である;例えば、CFS−。
【0053】
ハロアルキルスルホニルは、そのアルキル部分において1個もしくはそれ以上、特に1〜3個の水素原子がハロゲン原子、特にフッ素、塩素もしくは臭素で置換されている、1〜8個、好ましくは1〜6個、特に好ましくは1〜4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状アルキルスルホニル基である。
【0054】
本発明の特に好ましい置換されたベンズイミダゾールの例は、式(I−1)の化合物(WO 00/04022を参照)および特に式(I−2)の化合物(WO 00/68225を参照)である:
【0055】
【化6】

【0056】
上記の有効成分は、置換基の性質および数により、適切な場合には、各種組成物において幾何および/もしくは光学異性体または位置異性体またはそれらの異性体混合物の形態であることができる。純粋な異性体および異性体混合物の両方を本発明に従って用いることができる。
【0057】
有効成分が塩を形成することができる場合、製薬学的に許容しうる塩の形態における使用もまた適当である。
【0058】
適切な場合には、有効成分もしくはそれらの塩の水和物もしくは他の溶媒和物の使用もまた適当である。
【0059】
予防および治療用途の両方が可能である。
【0060】
ヒストモナス症は、ヒストモナスspp.(Histomonas spp.)により引き起こされる。本発明に従って好ましく抑制されるヒストモナス症は、ヒストモナス・メレアグリディス(Histomonas meleagridis)により引き起こされるものである。
【0061】
本発明の処置は、通常、例えばニワトリ、ウズラ、アヒル、カモ、キジおよび特にシチメンチョウ(ここではシチメンチョウのオスと同義)のような家禽に適用される。
【0062】
有効成分は経腸的に、非経口的に、皮膚に、直接もしくは適当な製剤の形態で用いられる。
【0063】
有効成分の経腸使用は、例えば経口で散剤、座薬、錠剤、カプセル剤、パスタ剤、飲料、顆粒剤、飲薬、ボーラス、薬用飼料もしくは飲料水の形態で行われる。皮膚使用は、例えば浸漬、噴霧、入浴、洗浄、ポアオンおよびスポットオン、ならびにダスティングの形態で行われる。非経口使用は、例えば注射(筋肉内、皮下、静脈内、腹腔内)の形態でもしくは埋め込みにより行われる。
【0064】
適当な製剤は下記のとおりである:
注射用液剤、経口液剤、希釈後の経口投与用の濃縮物、皮膚上へのもしくは体腔におけ
る使用のための液剤、ポアオン製剤、ゲルのような液剤;
経口もしくは皮膚使用のためのそして注射用の乳剤および懸濁剤;半固体製剤。
【0065】
有効成分が軟膏基剤においてまたは水中油滴型もしくは油中水滴型乳剤基剤において処理される製剤;
散剤、プレミックスもしくは濃縮物、顆粒剤、ペレット剤、錠剤、ボーラス、カプセル剤のような固形製剤;エアロゾルおよび吸入剤、有効成分を含有する成形品。
【0066】
注射用液剤は、静脈内、筋肉内および皮下投与される。
【0067】
注射用液剤は、有効成分を適当な溶媒に溶解し、そして場合により可溶化剤、酸、塩基、バッファー塩、酸化防止剤、防腐剤のような添加剤を加えることにより製造される。液剤は濾過により滅菌され、そして瓶に詰められる。
【0068】
挙げることができる溶媒は:水、アルコール、例えばエタノール、ブタノール、ベンジルアルコール、グリセロール、炭化水素、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、N−メチルピロリドンおよびその混合物のような生理的に許容される溶媒である。
【0069】
有効成分はまた、適切な場合には、注射に適当な生理的に許容される植物油もしくは合成油に溶解することもできる。
【0070】
挙げることができる可溶化剤は:主溶媒における有効成分の溶解を促進するかもしくはその沈殿を防ぐ溶媒である。例はポリビニルピロリドン、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリエトキシル化ソルビタンエステルである。
【0071】
防腐剤は:ベンジルアルコール、トリクロロブタノール、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、n−ブタノールである。
【0072】
経口液剤は、直接使用される。濃縮物は、使用濃度への事前希釈後に経口で使用される。経口液剤および濃縮物は、注射液剤について上に記述するとおり製造され、滅菌操作で調剤することが可能である。
【0073】
皮膚上への使用のための液剤は、注がれるか、塗られるか、擦り込まれるか、噴霧されるかまたは浸漬、入浴もしくは洗浄により適用される。これらの液剤は、注射用液剤について上に記述するとおり製造される。
【0074】
製造中に増粘剤を加えることは好都合であり得る。増粘剤は:ベントナイト、コロイド状シリカ、モノステアリン酸アルミニウムのような無機増粘剤、セルロース誘導体、ポリビニルアルコールならびにそれらのコポリマー、アクリレートおよびメタクリレートのような有機増粘剤である。
【0075】
ゲルは、皮膚上に適用されるかもしくは噴霧され、または体腔に導入される。ゲルは、軟膏様の硬さを有する清澄組成物をもたらすために十分な増粘剤と注射用液剤について上に記述するとおり製造されている溶液を混合することにより製造される。用いる増粘剤は、上記に示す増粘剤である。
【0076】
ポアオン製剤は、皮膚の限られた領域上に注がれるかもしくは噴霧され、この場合、有効成分は皮膚を通して浸透して全身作用を有するか、もしくは体の表面上に分配されるいずれかである。
【0077】
ポアオン製剤は、皮膚と適合する適当な溶媒もしくは溶媒の混合物に有効成分を溶解するか、懸濁するかもしくは乳化することにより製造される。適切な場合には、着色剤、吸収促進物質、酸化防止剤、光安定剤、接着剤のようなさらなる賦形剤が加えられる。
【0078】
挙げることができる溶媒は:水、アルカノール、グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセロール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、フェノキシエタノールのような芳香族アルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸ベンジルのようなエステル、アルキレングリコールアルキルエーテル、例えばジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルのようなエーテル、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン、芳香族および/もしくは脂肪族炭化水素、植物油もしくは合成油、DMF、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、2,2−ジメチル−4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソランである。
【0079】
着色剤は、家畜への使用が認可されておりそして溶解するかもしくは懸濁することができる全ての着色剤である。
【0080】
吸収促進物質は、例えばDMSO、展着油(spreading oil)、例えばミリスチン酸イソプロピル、ペラルゴン酸ジプロピレングリコール、シリコーン油、脂肪酸エステル、トリグリセリド、脂肪アルコールである。
【0081】
酸化防止剤は、亜硫酸塩もしくはメタ重亜硫酸塩、例えばメタ重亜硫酸カリウム、アスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、トコフェロールである。
【0082】
光安定剤の例は、ベンゾフェノンもしくはノバンチソル酸(novantisolic
acid)の群からの物質である。
【0083】
接着剤の例は、セルロース誘導体、澱粉誘導体、ポリアクリレート、天然ポリマー、例えばアルギン酸塩、ゼラチンである。
【0084】
乳剤は、経口で、皮膚にもしくは注射として用いることができる。
【0085】
乳剤は、油中水滴型のものもしくは水中油滴型のもののいずれかである。
【0086】
それらは、有効成分を疎水性相にもしくは親水性相に溶解し、そして適当な乳化剤および適切な場合には着色剤、吸収促進物質、防腐剤、酸化防止剤、光安定剤、粘度増加物質のようなさらなる賦形剤を用いて後者をもう一方の相の溶媒と均質化することにより製造される。
【0087】
疎水性相(油)として以下のものを挙げることができる:パラフィン油、シリコーン油、天然の植物油、例えばゴマ油、扁桃油、ヒマシ油、合成トリグリセリド、例えば鎖長C8〜12の植物脂肪酸もしくは他の特に選択される天然脂肪酸とカプリル酸/カプリン酸ビグリセリド、トリグリセリド混合物、飽和もしくは不飽和の、可能な場合にはヒドロキシル基も含有する脂肪酸の部分グリセリド混合物、C/C10−脂肪酸のモノ−およびジグリセリド。
【0088】
脂肪酸エステル、例えばステアリン酸エチル、アジピン酸ジ−n−ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ペラルゴン酸ジプロピレングリコール、鎖長C16〜C18の飽和脂肪アルコールと中鎖長の分枝鎖状脂肪酸のエステル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鎖長C12〜C18の飽和脂肪アルコールのカプリル酸/カプリン酸エステ
ル、ステアリン酸イソプロピル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、オレイン酸エチル、乳酸エチル、油性脂肪酸エステル、例えばフタル酸ジブチル、アジピン酸ジイソプロピル、とりわけ後者に関係するエステル混合物。脂肪アルコール、例えばイソトリデシルアルコール、2−オクチルドデカノール、セチルステアリルアルコール、オレイルアルコール。
【0089】
例えばオレイン酸のような脂肪酸およびその混合物。
【0090】
親水性相として以下のものを挙げることができる:
水、例えばプロピレングリコール、グリセロール、ソルビトールのようなアルコールおよびその混合物。
【0091】
挙げることができる乳化剤は下記のとおりである:
非イオン性界面活性剤、例えばポリエトキシル化ヒマシ油、ポリエトキシル化ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート、グリセロールモノステアレート、ポリオキシエチルステアレート、アルキルフェノールポリグリコールエーテル;
両性界面活性剤、例えばN−ラウリル−β−イミノジプロピオン酸ジ−Naもしくはレシチン;
陰イオン界面活性剤、例えばラウリル硫酸Na、脂肪アルコールエーテル硫酸塩、モノ/ジアルキルポリグリコールエーテルオルトリン酸エステルモノエタノールアミン塩;
陽イオン界面活性剤、例えば塩化セチルトリメチルアンモニウム。
【0092】
挙げることができるさらに適当な賦形剤は下記のとおりである:
粘度増加および乳化安定化物質、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロースならびに他のセルロースおよび澱粉誘導体、ポリアクリレート、アルギン酸塩、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、ポリエチレングリコール、ろう、コロイド状シリカもしくは記載物質の混合物。
【0093】
懸濁剤は、経口で、皮膚にもしくは注射として使用することができる。それらは、適切な場合には湿潤剤、着色剤、吸収促進物質、防腐剤、酸化防止剤、光安定剤のようなさらなる賦形剤を加えて液状担体に有効成分を懸濁することにより製造される。
【0094】
挙げることができる液状担体は、全ての均質な溶媒および溶媒混合物である。
【0095】
挙げることができる湿潤剤(分散剤)は、上記に示す界面活性剤である。
【0096】
挙げることができるさらなる賦形剤は、上記に示すものである。
【0097】
半固形製剤は、経口でもしくは皮膚に投与することができる。それらはそれらのより高い粘度によってのみ上記の懸濁剤および乳剤と異なる。
【0098】
固形製剤は、適切な場合には賦形剤を加えて、適当な担体と有効成分を混合し、そして所望の形状にすることにより製造される。
【0099】
挙げることができる担体は、全ての生理的に許容される不活性固体である。無機および有機物質は、そのようなものとして役立つ。無機物質の例は、塩化ナトリウム、炭酸塩、例えば炭酸カルシウム、炭酸水素塩、アルミナ、シリカ、粘土、沈降もしくはコロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩である。
【0100】
有機物質の例は、糖、セルロース、食料および飼料、例えば粉乳、動物ミール(animal meal)、挽いたおよび破砕した穀粒、澱粉である。
【0101】
賦形剤は、上記にすでに挙げられている防腐剤、酸化防止剤、着色剤である。
【0102】
さらに適当な賦形剤は、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ベントナイトのような潤滑剤および流動促進剤、澱粉もしくは架橋ポリビニルピロリドンのような崩壊促進物質、例えば澱粉、ゼラチンもしくは線状ポリビニルピロリドンのような結合剤、ならびに微晶質セルロースのような乾燥結合剤である。
【0103】
有効成分は、共力剤ともしくはさらなる有効成分と組み合わせて存在することができる。
【0104】
適当であるさらなる有効成分の例は下記のとおりである:
場合により葉酸拮抗薬と組み合わせた、ロベニジンもしくはアンプロリウムのようなコクシジウム抑制薬;
モネンシン、サリノマイシン、ラサロシド、ナラシン、センデュラマイシンもしくは特にマデュラマイシンのようなポリエーテル抗生物質;
トルトラズリル、ポナズリル(ponazuril)もしくはジクラズリルのようなトリアジノン;
スルホンアミド;
駆虫薬、例えばフェバンテル、ベンズイミダゾール駆虫薬もしくはデプシペプチド駆虫薬、例えばPF1022Aもしくはエモデプシド。
【0105】
使える状態の製剤は、各場合において0.005ppm〜50ppm、好ましくは0.1〜10ppmの濃度の有効成分を含んでなる。
【0106】
一般に、有効な結果を得るために体重のkg当たりそして1日当たり約0.05〜約50mg、好ましくは0.1〜20mgの有効成分の量を投与することが好都合であると判明している。
【0107】
コクシジウム症用の他の治療薬もしくはポリエーテル抗生物質と混合して、本発明の有効成分は1:0.01−50〜1:1−50の比率で存在する。
【0108】
有効成分は、また、家畜に飼料もしくは飲料水と一緒に投与することもできる。
【0109】
飼料および食料は、適当な食用材料と組み合わせて0.005〜250ppm、好ましくは0.05〜100ppmの有効成分を含んでなる。
【0110】
このタイプの飼料および食料は、治療目的および予防目的の両方のために投与することができる。
【0111】
このタイプの飼料もしくは食料は、食用有機もしくは無機担体と混合した0.5〜30重量%、好ましくは1〜20重量%の有効成分を含んでなる濃縮物もしくはプレミックスを通常の飼料と混合することにより製造される。食用担体の例は、好ましくは少量の食用防塵油、例えばトウモロコシ油もしくはダイズ油を含んでなる、トウモロコシの粉もしくはトウモロコシとダイズの粉もしくは鉱塩である。次に、このようにして得られるプレミックスを完全飼料に加えることができ、その後にそれを家畜に与える。
【0112】
ヒストモナス症のための使用は、例として記述することができる:
家禽における、特にニワトリ、アヒル、カモもしくはシチメンチョウのオスにおけるヒストモナス症の治療および予防のために、0.005〜100ppm、好ましくは0.05〜100ppmの有効成分を適当な食用材料、例えば栄養価の高い飼料と混合する。所望に応じて、特に有効成分がレシピエントにより十分に許容される場合には、これらの量を増加することができる。飲料水を介した投与は、対応して行われることができる。
【0113】
それにもかかわらず、特に実験動物の体重もしくは投与方法のタイプの関数として、また動物の属ならびに有効成分もしくは製剤の形態およびそれが投与される時間もしくは間隔へのその個々の応答のために、規定量から逸脱することが必要であり得ることもある。従って、ある場合には上記の最小量未満で済ますことが十分であることができ、一方、ある場合には規定上限を超えなければならない。より多い量の投与ではこれらをその日を通して複数の単回投与に分割することが好都合であり得る。
【0114】
本発明の化合物の効能は、例えば、家畜をそれぞれの有効成分で処置する下記の試験設計でケージ試験において示すことができる。
【0115】
有効成分を含有する飼料は、栄養に関してバランスのとれた動物飼料と、例えば以下に示すニワトリ飼料と、必要量の有効成分を完全に混合するようにして製造される。
【0116】
目的が、最終的に試験において記載する値まで飼料に希釈するものである濃縮物もしくはプレミックスを製造することである場合、一般に約1〜30重量%、好ましくは約10〜20重量%の有効成分を食用有機もしくは無機担体、例えば、少量の食用防塵油、例えばトウモロコシ油もしくはダイズ油を含んでなるトウモロコシおよびダイズ粉もしくは鉱塩と混合する。次に、このようにして得られるプレミックスを投与前に完全家禽飼料に加えることができる。
【0117】
家禽飼料における本発明の物質の使用のための適当な組成物の例は、下記のとおりである。
【0118】
52.00% 破砕した飼料用穀類、特に40%のトウモロコシ、12%のコムギ
17.00% 抽出(extr.)ダイズ粉
5.00% トウモロコシグルテン飼料
5.00% コムギ飼料粉
3.00% 魚粉
3.00% 鉱物混合物
3.00% アルファルファ−牧草食
2.50% ビタミンプレミックス
2.00% 破砕したコムギ胚芽
2.00% ダイズ油
2.00% 魚の骨粉
1.50% ホエー粉末
1.00% 糖蜜
1.00% ビール醸造粕に結合した醸造用酵母
100.00%
【0119】
そのような飼料は、18%の粗タンパク質、5%の粗繊維、1%のCa、0.7%のP、およびkg当たり1200I.U.のビタミンA、1200I.U.のビタミンD3、10mgのビタミンE、20mgの亜鉛バシトラシンを含んでなる。
【0120】
生物学的実施例:
若い、感受性のシチメンチョウのオスの幼鳥をかごにおいて飼育し、そして約5log10の感染性ヒストモナス・メレアグリディス微生物で2週齢で通常の方法において排泄腔内感染を行った。試験化合物で処置した試験群とともに、2つのコントロール群を比較目的のために飼育した(感染/非処置および非感染/非処置)。試験群は6〜10匹のシチメンチョウからなった。試験化合物、式(I−1)もしくは(I−2)の化合物のいずれかを、飼料とともに、処置試験群に感染の1日前にそしてその後13日投与した。試験の最後に、動物を殺し、そしてヒストモナス症(「黒頭病」)に特有の損傷について調べた。2つの試験の結果を表1および2に要約する。
【0121】
【表1】

【0122】
【表2】

【0123】
試験化合物はヒストモナス・メレアグリディス感染の影響に対して臨床的に有効であることを示すことが可能であった。試験1において、ヒストモナス・メレアグリディスは重度の成長障害を引き起こし、そして試験化合物はこれらの影響を弱めた。
【0124】
試験2において、ヒストモナス・メレアグリディスは、続いて起こる黒頭病を伴って明白な肝臓および盲腸損傷を引き起こした。試験化合物は、両方とも、疾患を引き起こすこれらの肝臓損傷を著しく軽減した。式(I−2)の化合物は、また、盲腸損傷も軽減した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家禽におけるヒストモナス症を抑制するための薬剤を製造するための式(I)
【化1】

[式中、
はフルオロアルキルであり、
は水素もしくはアルキルであり、
は式
【化2】

の基であるか、もしくは式
【化3】

の基であり、
はアルキルであり、
はアルキルもしくは置換されたフェニルであり、
はアルキルであり、
、X、XおよびXは相互に独立して水素、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ハロアルキルチオもしくはハロアルキルスルホニルであるか、
あるいは
とXもしくはXとXは一緒になってジオキシハロアルキレン基である]
のベンズイミダゾールの使用。
【請求項2】
がC〜C−フルオロアルキルであり、
が水素もしくはC〜C−アルキルであり、
がC〜C−アルキルであり、
がC1〜6−アルキルあるいは場合によりC1〜4−アルキル、C1〜4−ハロアルキル、ハロゲン、ニトロ、C1〜4−アルコキシ、C1〜4−ハロアルコキシまたは場合によりモノ−もしくはポリ−ハロゲン置換されていてもよいメチレン−もしくはエチレンジオキシで1回もしくはそれ以上置換されていてもよいフェニルであり、
がC1〜4−アルキルであり、
、X、XおよびXが相互に独立して水素、F、Cl、Br、C〜C−ハロアルキル、C〜C−ハロアルコキシ、C〜C−ハロアルキルチオ、C〜C−ハロアルキルスルホニルであるか、または
とXもしくはXとXが一緒になってジオキシハロ−C〜C−アルキレン基である
式(I)の化合物の請求項1に記載の使用。
【請求項3】
式(I−1)
【化4】

の化合物の請求項1に記載の使用。
【請求項4】
式(I−2)
【化5】

の化合物の請求項1に記載の使用。
【請求項5】
家禽におけるヒストモナス症を抑制するための請求項1〜4のいずれかに記載の式(I)のベンズイミダゾールの使用。
【請求項6】
シチメンチョウにおけるヒストモナス症を抑制するための請求項1〜5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の式(I)のベンズイミダゾールの有効量を関連する家畜に投与するヒストモナス症の抑制方法。

【公表番号】特表2008−526798(P2008−526798A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549827(P2007−549827)
【出願日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【国際出願番号】PCT/EP2005/014119
【国際公開番号】WO2006/072448
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(503412148)バイエル・ヘルスケア・アクチェンゲゼルシャフト (206)
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare AG
【Fターム(参考)】