説明

ヒストンデアセチラーゼ阻害薬の局所製剤及びその使用方法

少なくとも一つのヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害薬(HDI)及びペトロラタムを含む担体を含む局所組成物を開示する。そのような組成物を用いて癌及び様々な皮膚病を処置又は阻害する為の方法も又、開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
ヒストンデアセチラーゼ阻害薬(HDIs)は、幾つかの臨床試験の対象となっている抗腫瘍薬に分類される。HDIsは、しばしば細胞分化又はアポトーシスと関連する増殖停止を誘導する。幾つかの悪性腫瘍でヒストンのアセチル化及び脱アセチル化を制御する酵素における変化が、直接的な形質転換の機序であることが示されている。一つのHDIを特定すると、デプシペプチドFK228(例えば、立体異性体であるFR901228)が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)は、有効で毒性の低い治療についての多大な、未だ対処されていない必要性を有している、珍しい型のリンパ腫である。CTCLは、皮膚、血流、局所リンパ節、及び脾臓に頻繁に関与する、悪性の、比較的成熟したT細胞における、進行の遅い疾患である。合衆国において、年間、約800−1,000の新しい症例が診断されている。本病気については、いくつかの臨床的変異が存在している。その症状は、重度の皮膚の痒み、痛み、浮腫を引き起こす。病気が進行した患者の皮膚は、醜い外観、及び頻繁な皮膚の痛み及び痒みをもたらすリンパ腫と大きく関与している。CTCL患者は、皮膚腫瘍、皮膚潰瘍、及び繰り返す皮膚の脱落に侵される。本病気に対する処置は存在するが、病気の進行を止めることは、大抵の場合、不可能である。皮膚によって通常提供されるバリアの欠損または低下により、CTCL患者は通常、感染症で死亡する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
CTCLを処置するため、FR901228の体内投与による臨床試験が実施されたが、毒性及び有効性について、限界があった。CTCL、他の癌、及び他の病気を処置するにあたり、毒性の低下、並びにHDIsの効果の増大を幇助するため、FR901228及び他のHDIsの代替となる投与形態を確立する必要がある。本発明は、このような代替となる投与形態を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の簡潔な要約
本発明は、少なくとも一のヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害薬(HDI)とペトロラタムを含む担体とを含む局所組成物を提供する。一つの側面として、本発明は局所適用に適した組成物、ペプチド、抗体、抗体の断片に結合した抗原、核酸、脂肪酸、ヒドロキサム酸、ベンズアミド、デプデシン(depudecin)、及び求電子ケトン、及び塩、プロドラッグ、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される一以上のHDI;及びペトロラタムを含む局所用担体を含む組成物を提供する。他の側面において、本発明は、局所適用に適した組成物、HDI又はプロドラッグ、又はそれらの塩(ここで、HDIはデプシペプチドである);及びペトロラタムを含む局所用担体を含む組成物を提供する。
【0005】
本発明は、癌及び様々な皮膚病を処置するための、本発明に係る一以上の局所的ヒストンデアセチラーゼ阻害薬(HDI)組成物の使用方法、並びにそれに関連する分子及び生理学的過程も又、提供する。一つの側面において、本発明は、有効量の局所的HDI組成物を局所的に投与することを含む、癌を処置又は阻害する方法を提供する。他の側面において、本発明は、局所的HDI組成物の有効量を局所的に投与することを含む、皮膚内のT細胞数を減少させる方法を提供する。他の側面において、本発明は、有効量の局所的HDI組成物を局所的に投与することを含む、免疫学的皮膚疾患を処置又は阻害する方法を提供する。かかる免疫学的皮膚疾患には、狼瘡、薬疹、接触性皮膚炎、及びそれらの組み合わせにおける皮膚の徴候が挙げられるが、これらに限られない。
【0006】
本発明の詳細な説明
一つの側面において、本発明は、局所適用に適した組成物、ペプチド、抗体、抗体の断片に結合した抗原、核酸、脂肪酸、ヒドロキサム酸、ベンズアミド、デプデシン、及び求電子ケトン、及び塩、プロドラッグ、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される一以上のヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害薬(HDIs);及びペトロラタムを含む局所用担体を含む組成物を提供する。他の側面において、本発明は、局所適用に適した組成物(該組成物はHDI又はプロドラッグ、又はそれらの塩を含む)(ここで、該阻害薬はブチラート塩ではない);及びペトロラタムを含む局所用担体を含む。他の側面において、本発明は、局所適用に適した組成物、HDI又はプロドラッグ、又はそれらの塩(ここで、HDIはデプシペプチドである);及びペトロラタムを含む局所用担体を含む組成物を提供する。幾つかの実施形態において、ペトロラタムを含む局所用担体は、鉱油、セレシン、及びラノリンアルコールから成る群から選択される少なくとも一つの成分を更に含む。幾つかの実施形態において、ペトロラタムを含む局所用担体は、パンテノール、グリセリン、及びビサボロールから成る群から選択される少なくとも一つの成分を更に含む。
【0007】
ヒストンデアセチラーゼは、タンパク質デアセチラーゼとも呼ばれる酵素に分類され、ヒストン又は他のタンパク質(例えば、ヒストンH2A、H2B、H3又はH4)内のリジン側鎖のイプシロン−アミノ基に由来するアセチル基の除去を触媒し、それによって、リジン側鎖の正電荷を再び構成する。幾つかのヒストンデアセチラーゼが同定されており、HDAC1、HDAC2、及びRPD3が挙げられるが、これらに限定されない。特定の、限定されないヒストンデアセチラーゼの例としては、GenBank アクセッション番号 NM 058277、NM15401、AF407273、XM004379、及びAF426160、AF006603、AF006602、及びAF074882;参照 米国特許番号6,287,843が挙げられるが、これらに限られない。ヒストンデアセチラーゼが阻害された場合、対応する酵素活性であるヒストンアセチルトランスフェラーゼの活性が相対的に過剰となり、ヒストン又は他のタンパク質の高アセチル化が起こる。理論にとらわれなければ、ヒストンデアセチラーゼの阻害は、中和されたヒストンのリジン尾部、ヒストン構造の崩壊、及びDNAのアンフォールディングをもたらす。ヒストンのアンフォールディング状態は、転写因子がDNAに接近することを許容する。
【0008】
ヒストンデアセチラーゼ阻害薬(HDI)は、例えば、10%、20%、30%、40%、50%、80%、95%又はそれ以上、一以上のヒストンデアセチラーゼの機能を阻害する薬剤である。かかる薬剤は、医薬品又は薬物、治療上有効なオリゴヌクレオチド、特異的結合剤、又はヒストンデアセチラーゼの断片若しくは変異体といった形態を取り得る。ヒストンデアセチラーゼ阻害薬の幾つかの構造上の分類としては、(1)短鎖脂肪酸、(2)ヒドロキサム酸、(3)2−アミノ−8−オキソ−9,10−エポキシ−デカノイル部分を含む環状テトラペプチド、及び(4)ベンズアミド類が挙げられるが、これらに限定されない。具体的には、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬の例としては、FR901228、N−アセチルジナリン(CI−994)、スクリプタイド、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、トリコスタチンA、トラポキシンA、トラポキシンB、HC−毒素、クラミドシン、Cly−2、WF−3161、Tan−1746、アピシジン、アピシジン類似体、ベンズアミド、ベンズアミド誘導体、ヒドロキサム酸誘導体、アゼラインビスヒドロキサム酸、酢酸塩(actetate salts)、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(suberoylanilide hydoxamide acid)、スベリンビスヒドロキサム酸(suberic bishydroxyamic acid)、m−カルボキシ−桂皮酸ビスヒドロキサム酸、オキサムフラチン、デプデシン、又はMS−275が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは該薬剤は、アンチセンス分子又はリボザイムといったヒストンデアセチラーゼの発現又は機能を阻害する、治療上有効なオリグヌクレオチドであり得る。あるいは、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬は、ヒストンデアセチラーゼのドミナントネガティブ断片又は変異体であり得る。HDIの更なる例をここで述べる。
【0009】
HDIは、ペプチド、例えば環状ペプチド、及びより具体的にはデプシペプチドであり得る。デプシペプチドは、環状構造とるペプチド結合を含む環状ペプチドである。デプシペプチドは、環状テトラペプチドであり得る。幾つかの実施形態において、デプシペプチドは、二環式のテトラペプチドである。幾つかの実施形態において、HDIは、デプシペプチドであり、より具体的には、式Iによって表されるFK228である。
【0010】
【化1】

【0011】
HDIは、FK228の特定の立体異性体、例えば、(E)−(1S,4S,10S,21R)−7−[(Z)−エチリデン]−4,21−ジイソプロピル−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザビシクロ[8,7,6]−トリコス−16−エン−3,6,19,22−ペンタノン(NSC 630176)であるFR901228であり得る;参照 式II。
【0012】
【化2】

【0013】
他に特別の定めのない限り、本明細書中のFK228への単なる言及は、立体異性体に関係なく、式(II)の化合物を含む化合物群を意味する。
【0014】
FK228及びその塩は、既知物質であり、細菌生産、合成、及び半合成法といった、様々な手段によって得ることができる。例えば、FK228の立体異性体の一つであるFR901228は、好気的条件下、クロモバクテリウム属に属する菌種、例えば、クロモバクテリウム ビオラセウム WB968(FERM BP−1968)(参照例、JP−B−7−64872)を培養することにより、得ることができる。様々なFK228立体異性体が、Khan W.Li,et al.,J.Am.Chem.Soc.,118:7237−7238(1996)により報告されている方法に従って製造することができる。
【0015】
HDI(例えばFK228)の塩は、一般的に非毒性であって、生物学的に許容され得る塩であり、アルカリ金属塩(例、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例、カルシウム塩、マグネシウム塩など)、アンモニウム塩といった無機塩基との塩、有機アミン塩(例、トリエチルアミン塩、ジイソプロピルエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩など)などの有機塩基との塩、無機酸塩(例、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩など)、有機カルボン酸塩又はスルホン酸塩(例、蟻酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩など)、塩基性又は酸性アミノ酸(例、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸など)との塩、を含む塩基との塩、あるいは酸付加塩などが例示される。
【0016】
本発明は、その範囲として、HDIのプロドラッグを含む。このようなプロドラッグは、インビボで容易に特定のHDIに変換し得る、HDIの機能的誘導体であり得る。プロドラッグは、エステル類及びアミド類といった、様々な共有結合した群から選択され得る。プロドラッグの例としては、エステル類、アセテート類、ホルメート類、アルコール類のベンゾエート誘導体、アミド類、及びアミン類が挙げられる。アミジン又はグアニン官能基の誘導体も又、プロドラッグとして挙げられ、C(=NR3)NH2(R3がOH、NH2、C1−4アルコキシ、C6−10アリールオキシ、C1−10アルコキシカルボニル、C6−10アリールオキシカルボニルから選択される)が挙げられるだろう。好ましい誘導体としては、R3がOH、NH2、メトキシ、及びエトキシカルボニルである例が挙げられる。適したプロドラッグ誘導体の選別及び調製のための常套的な手法は、例えば、Design of Prodrugs,ed.H.Bundgaard,Elsevier(1985)中に記述されている。
【0017】
HDI(例、FK228)は、光学異性体、幾何異性体などといった、不斉炭素原子及び二重結合に基づく立体異性体を有し得、それらの全て、及びその混合物も又、本発明に包含される。更に、HDI及びその塩の溶媒和化合物(例えば、水和物といったような包接化合物)も又、本発明に包含される。
【0018】
FK228に加え、又はFK228に代えて、HDIは、アピジシン、FR225497、トラポキシンA、クラミドシン、ジデムニンB、CHAP、HC−毒素、WF27082、サンドラマイシン、及びその組み合わせといった環状テトラペプチドであり得るか、又はこれを含み得る。
【0019】
幾つかの実施形態において、HDIは、バルプロ酸、吉草酸、イソ吉草酸、プロピオン酸、3−ブロモプロピオン酸、酪酸、2−プロピルペンタン酸、及びそれらの組み合わせといった、脂肪酸又はその塩であり得るか、又はこれを含み得る。幾つかの実施形態において、HDIは、ヒドロキサム酸であり得るか、又はこれを含み得る。ヒドロキサム酸の例としては、トリコスタチンA(TSA)、トリコスタチンC、サリチリヒドロキサム酸(salicylihydroxamic acid)(SBHA)、アゼラインビスヒドロキサム酸(ABHA)、アゼライン−1−ヒドロキサメート−9−アニリド(AAHA)、6−(3−クロロフェニルウレイド)カルポイックヒドロキサム酸(3Cl−UCHA)、オキサムフラチン(oxamflatin)、A−161906、スクリプタイド、PXD−101、MW2796、MW2996、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、LAQ824、m−カルボキシル桂皮酸ビスヒドロキサメート(CBHA)、CHAP、及びピロキサミド、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0020】
幾つかの実施形態において、HDIは、デプデシン又はそのプロドラッグであり得るか、又はこれを含み得る。幾つかの実施形態において、HDIは求電性子性ケトンであり得るか、又はこれを含み得る。求電子性ケトンの例としては、トリフルオロメチルケトン及びα−ケトアミドが挙げられる。α−ケトアミドの例としては、N−メチル−α−ケトアミドが挙げられる。幾つかの実施形態において、HDIはベンズアミドであり得るか、又はこれを含み得る。ベンズアミドの例としては、これに限られず、MS−27−275(MS−275)、MS−27−275の3’アミノ誘導体、及びCI−994、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0021】
幾つかの実施形態において、局所組成物のHDIは、ヒストンデアセチラーゼと結合し、その酵素を阻害する抗体又はその抗原結合断片を含むポリペプチドといった特異的結合剤である。特異的結合剤とは、所定の標的にのみ特異的に結合する薬剤である。従って、ヒストンデアセチラーゼ特異的結合剤は、実質的に、特定のヒストンデアセチラーゼアイソフォームといった、ヒストンデアセチラーゼのみに結合する。抗ヒストンデアセチラーゼタンパク質抗体は、Harlow and Lane,Antibodies,A Laboratory Manual,CSHL,New York(1988)を含む数多くの教科書に記述される標準的な方法によって製造され得る。特定の薬剤が、実質的にヒストンデアセチラーゼのみに結合するということの判断は、常法の使用又は適用により、容易になされ得る。一つの適したインビトロアッセイは、ウエスタンブロット法を利用する(Harlow and Lane,Antibodies,A Laboratory Manual,CSHL,New York (1988);Ausubel et al.,in Molecular Biology,CSHL,New York(1998)を含む、多くの標準的な教科書に記述がされている。
【0022】
抗体のより短い断片も又、特異的結合剤としての機能を果たす。例えば、ヒストンデアセチラーゼに結合するFab、Fv、及び一本鎖Fv(SCFv)は、ヒストンデアセチラーゼ特異的結合剤である。これらの抗体断片は、以下のように定義される:(1)酵素パパインにより抗体全体を分解することで、完全な軽鎖及び一本の重鎖の一部分を得ることにより産生される、抗体分子の一価の抗原結合断片を含む断片(Fab);(2)ペプシンによって抗体全体を処理し、次いで還元することで完全な軽鎖及び重鎖の一部分を得ることにより、得られる抗体分子の断片(Fab’);抗体分子あたり二つのFab’断片が得られる;(3)次の還元をせずに、酵素ペプシンで抗体全体を処理することにより得られた抗体断片((Fab’)2);(4)二つのジスルフィド結合によって互いに連結している二つのFab’断片二量体(F(ab’)2);(5)二本鎖として発現した軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含む、遺伝子操作された断片(Fv);及び(6)遺伝的に融合した一本鎖分子として、適当なポリペプチドリンカーによって結合された、軽鎖可変領域、重鎖可変領域を含む、遺伝子操作された分子(一本鎖抗体(“SCA”))。
【0023】
幾つかの実施形態において、局所用組成物としてのHDIには、核酸分子が含まれる。治療上有効なオリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド類似体は、例えば、タンパク質の発現を阻害するといった、タンパク質の機能を阻害する能力で特徴付けられる。阻害は、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体非存在下における標的タンパク質の活性又は発現と比較した際に観察される、標的タンパク質の活性又は発現の任意の低下であり得る。更に、幾つかのオリゴヌクレオチドは、少なくとも15%、30%、40%、50%、60%、又は70%、又はそれ以上、標的タンパク質の活性又は発現を阻害し得るであろう。
【0024】
幾つかの治療上有効なオリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド類似体は、更に、核酸配列をコードする標的タンパク質と十分に相補的であるということによって特徴付けられる。ここで述べるように十分相補的とは、治療上有効なオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体が標的タンパク質の発現を特異的に妨げ得、標的核酸配列以外の遺伝子発現には目立った変化を与え得ないことを意味する。例えば、治療上有効なオリゴヌクレオチドは、細胞内のヒストンデアセチラーゼ活性を少なくとも15%、30%、40%、50%、60%、又は70%、又はそれ以上減じ得る。
【0025】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、リボ核酸又はデオキシリボ核酸のオリゴマー又はポリマーを示す。この用語は、天然由来の核酸塩基、糖及び共有結合性の糖間(intersugar)(バックボーン)結合から成るオリゴヌクレオチド、及び同様の機能を有する非天然由来の部分を有するオリゴヌクレオチドを含む。このように改変又は置換されたオリゴヌクレオチドが、例えば増強された細胞取り込み、増強された標的に対する結合性、及びヌクレアーゼの存在下における安定性の増大といった望ましい性質の為、しばしば天然の形態よりも好まれる。
【0026】
本組成物は、一単位用量の形態で供給され得る。ここで、HDI及び局所用担体は混合されるのではなく、共に投与されるために一緒にパッケージングされる。本組成物は、ここで述べたものを含むがこれに限定されない様々な症状及び病気を処置するための医薬の製造にも又、用いられ得る。
【0027】
局所用担体を構成するペトロラタムは、異なる量のペトロラタムを含み得る。例えば、ペテロラタムは、約1〜約99%の量であってもよく(例、局所用担体の約10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、又は90重量%といったような、5〜90重量%)。幾つかの実施形態において、ペテロラタムは、担体の41重量%である。ペテロラタムは、主に一般式C2n+2で表されるメタン系から成る半固体の炭化水素の精製された混合物である。ペテロラタムは、非直鎖型の固体炭化水素及び高沸点の液状炭化水素のコロイド系(ここで液状炭化水素のほとんどがミセル内に保持されている)としても又、特徴付けられる。ペテロラタムの更なる情報については、Schindler,Drug Cosmet.Ind.89:36−37,76,78−80、及び82(1961)を参照されたい。局所用担体としては、更に一以上の付加的な成分、例えば、鉱油、セレシン、ラノリンアルコール、パンテノール、グリセリン、ビサボロール、ココアバター、水、鉱油、ミリスチン酸イソプロピル、PEG−40 ソルビタン ペルオレエート(PEG−40 sorbitan peroleate)、グリセリル ラノレート、ソルビトール、プロピレン グリコール、パルミチン酸セチル、硫酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、BHT、メチルクロロイソチアゾリノン、及びメチルイソチアゾリノンが挙げられる。これらの更なる成分の各々は、例えば約0.1から約99%又は約0.01%から約50%、例えば0.1−20%又は1−10%といった適当量で存在し得る。ペテロラタムを構成する好適な組成物及び一以上の更なる成分をとしては、例えば、アクアフォー(登録商標)(Aquaphor(登録商標))及びユーセリン(登録商標)(Eucerin(登録商標))が挙げられる。HDIは、任意の適量中で局所用担体の中に組み入れられ得る。例えば、HDIは、少なくとも約0.001重量%、0.01重量%、0.05重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1.0重量%、1.5重量%、2重量%、2.5重量%、3重量%、4重量%、又は5重量%存在し得る。
【0028】
本発明は又、癌及び様々な皮膚病、並びにこれと関連する細胞、経路、系、及び生理学的過程を処置する為の、本発明の一以上の局所的ヒストンデアセチラーゼ阻害薬(HDI)組成物の用法をも又、提供する。本方法は、任意のタイプの動物において用いられ得る。幾つかの実施形態において、動物は、げっ歯類又は霊長類といった哺乳類である。げっ歯類の例としては、マウス、ラット、及びウサギが挙げられる。霊長類の例は、ヒトである。
【0029】
本発明は、局所的HDI組成物の有効量を局所的に投与することを含んだ、癌を処置又は阻害する方法を提供する。本処置又は阻害は、任意の適当な癌(例えば、ポスト胸腺リンパ腫(postthymic lymphoma)といったリンパ腫)に適用される。例えば、ポスト胸腺リンパ腫は、T細胞リンパ腫であり得る。T細胞リンパ腫は、低グレードの皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)から高度に悪性の末梢T細胞リンパ腫(PTCL)までの一連の臨床表現型から成る。幾つかのPTCLは、「詳細不明(unspecified)」と称されている。CTCLは、皮膚で現れ、そして菌状息肉腫、セザリー症候群、及び中間の徴候として観察され得る、ヘルパーT細胞の非ホジキンリンパ腫の形態である。幾つかの実施形態において、T細胞リンパ腫は、末梢T細胞リンパ腫である。幾つかの実施形態において、T細胞リンパ腫は皮膚T細胞リンパ腫である。幾つかの実施形態において、癌は、B細胞リンパ腫である。
【0030】
本発明は、局所的HDI組成物の有効量を局所的に投与することを含んだ、皮膚、血液、及び/又は隣接組織中のT細胞数を減少させる方法を提供する。幾つかの実施形態において、本減少には、悪性T細胞数の減少が含まれる。幾つかの実施形態において、本減少には、ヘルパーT細胞数の減少が含まれる。悪性であれ、そうでないものであれ、T細胞の数の減少は、癌及び様々な皮膚病の治療に関与し得る。
【0031】
本発明は、有効量のHDI組成物の局所的投与を含んだ、免疫学的皮膚疾患を処置又は阻害する方法を提供する。このような免疫学的皮膚疾患には、狼瘡、薬疹、接触性皮膚炎、及びそれらの組み合わせによる皮膚の徴候が挙げられる。
【0032】
「有効量」は、適切な期間にわたって、哺乳類、特にヒトの皮膚T細胞リンパ腫を処置するのに十分なヒストンデアセチラーゼ阻害薬の量を意味する。有効量の判断は、通常の技術の範囲内でなされる。哺乳類、特にヒトに投与される量は、本発明に照らし、投与される阻害薬(例えば、その効力)、採用された組成物、投与経路、病状の重篤度、被験体の体重、性、及び年齢、接触の範囲、及び処置を受ける特定の部位に伴い、変化するだろう。投与量の規模も又、特定の採用された阻害薬の使用に伴い得る任意の副作用の存在によって、判断され得る。副作用は、可能であれば最小限度が維持される。
【0033】
本発明の局所組成物は、所定の症状又は病気を処置又は阻害するのに有効な投与計画で投与される。一般的には、阻害薬が哺乳類といった動物、特にヒトに投与された場合、阻害薬は、一日あたりホストの体重(kg)あたり、約1から約1,000マイクログラム又は約1から約1,000ミリグラムの投与量で投与され得る。しかしながら、この用量範囲は、単なる例示にすぎず、然るべき状況において、より高い又はより低い投与量が選択され得る。例えば、実際の投与量及びスケジュールは、組成物が、放射線又は医薬組成物といった一以上の他の治療と組み合せて投与されるか否かに基づき、あるいは薬物動態、薬物の性質、及び代謝における個人間の差異に基づき変化し得る。例えば、組成物は、約1.25又は約2.5mg/kg/dのHDIの投与量で投与され得る。2.5mg/kg/日は、30mg/m/dとして同等に投与され得る。mg/kg/dとmg/kg/日間の適切な変換は、当業者により理解されるものとして利用され得る。一つの例となる変換は、70−75kgの個体と2mの体表面積との変換である。他の例となる投与量としては、少なくとも約0.01、0.05、0.1、0.5、0.75、1、1.5、1.75、2.0、2.25、2.75、3.0、3.25、3.5、3.75、4.0、4.25、4.5、4.75、5.0、7.5、10、12.5、15、20、25、30、40、50、100、250、500、及び750mg/kg/dのHDIが挙げられる。幾つかの実施形態において、投与量は約2.25から約2.75、約2から約3、約1.5から約3.5、約1から約4、約0.5から約4.5、約0.1から約10、約0.05から約25、又は約0.01から約750mg/kg/dの間となり得る。
【0034】
幾つかの実施形態において、HDI局所組成物は、毎日投与される。例えば、組成物は、14日間、又は28日間(4週間)投与され得る。組成物は、一日のうちのごくわずかの間、又は一日中、例えば1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、12時間、16時間、20時間、24時間、又はその中間の任意の期間に投与され得る。幾つかの実施形態において、組成物は一週間に1、2、3、4、5、6又は7回投与される。幾つかの実施形態において、組成物は、ドレイズスコア(Draize score)が約0から約1.9、約2.0から約5.0、又はその幾つかの中間の値が得られるまで投与される。例えば、デプシペプチド投与に対する耐性スケジュールは、14mg/mといった投与量で28日周期の1、8、及び15日又は18mg/mといった投与量で21日周期の1日及び5日である。
【0035】
局所組成物は、任意の所望のエリアの皮膚標的エリア(例えば、約20平方インチ〜約2平方インチ)に対し、投与され得る。例としては、2平方インチ、5平方インチ、10平方インチ、15平方インチ、及び20平方インチが挙げられる。幾つかの実施形態において、二つの10平方インチのパッチが用いられる。幾つかの実施形態において、局所組成物は、1〜4つの標的エリア、及び場合によっては、5〜10の標的エリアに対し投与される。幾つかの実施形態において、局所組成物は、体表面積の10%、25%、又は50%に対し適用される。幾つかの実施形態において、局所組成物は、体表面積の少なくとも約10%、少なくとも25%、又は少なくとも50%に対し投与される。局所組成物は、体表面積の一部、ほとんど全て、又は全てに対し投与され得る。
【0036】
幾つかの実施形態において、組成物は、局所的に、及び限定されないが全身投与を含む一以上の付加的投与経路により、投与される。もし、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬が、全身投与される場合は、経口又は静脈内注射により投与されるのが好ましい。経口及び静脈内注射に適した組成物も又、当技術分野で公知である。組成物は、皮膚パッチデリバリーシステムを用いることで適用され得る。このようなパッチは、組成物に対するマトリックスといったリザーバー、組成物を所望の速度で放出させる機構、及び皮膚に対する付着の形態を随意に含む。
【0037】
経口投与に適した剤形は、(a)水、生理食塩水、又はオレンジジュースといった希釈剤中に溶解した有効量の化合物であるといった、液体の溶液;(b)固形物又は顆粒として、所定の活性成分量を各々含有した、カプセル剤、サシェ剤(sachets)、又は錠剤;(c)適当な液体中における懸濁液;及び(d)適当な乳液から成り得る。錠剤の形態は、一以上のラクトース、マンニトール、コーンスターチ、ポテトスターチ、微結晶セルロース、アカシア、ゼラチン、コロイドシリコンニ酸化物、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、及び他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、防腐剤、香料添加剤、及び薬理学的に相容性のある賦形剤を含み得る。ロゼンジ(lozenge)の形態は、しばしばスクロース及びアカシア又はトラガカントであるといった香味料中に活性成分を含み得る。トローチ(pastilles)は、活性成分をゼラチン及びグリセリン、又はシュクロース及びアカシアのような不活性な基剤中に含み、乳液、ゲル剤等は活性成分に加えて当技術分野で知られているような賦形剤を含有している。
【0038】
非経口投与に適した製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、及び意図する受血者の血液と製剤とを等張とする溶質を含み得る、水性及び非水性の等張無菌注射液、及び懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、及び防腐剤を含み得る、水性及び非水性の無菌懸濁液が挙げられる。製剤は、アンプル及びバイアルといったような、容器に封入された単位用量又は複数回投与量の状態であり得、且つ注射用に、使用直前に、無菌の液体賦形剤(例えば、水)を添加するだけでよい、フリーズドライ(凍結乾燥)された状態で保存され得る。即席の注射液及び懸濁液剤は、無菌粉末剤、顆粒、及び錠剤から調製され得る。
【0039】
ヒストンデアセチラーゼ阻害薬を全身投与する場合、好ましくは、投与は断続的となる。例えば、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬NSC630176が静脈内注射により投与される場合、他の投与量及びスケジュールも有効であり得、当技術分野で知られた方法に従って判断され得るものの、例えば、最大耐性量の17.8mg/m2といった投与量で、21日周期の1、及び5日目に4時間にわたって投与され得る。一定のレベルを超えて血流中に存在した場合、FR901228等、幾つかのHDIは、毒性の問題を引き起こし得る。従って、幾つかの実施形態において、血流中のHDI量を制限することが望まれる。しかしながら、セザリー症候群といったある種状況下では、癌細胞が同様に血流中に存在し得る。従って、特定の癌により、投与の方法及び程度を変更し得る。例えば、局所的に投与された場合、局所組成物は、体表面の病気の影響を受けたエリア及び/又は病気の影響を受けていないエリアに対し、適用され得る。
【0040】
本発明の方法は、一以上のHDI及び一以上のHDIと他の治療との組み合わせを用いた処置を含み得る。幾つかの実施形態において、方法は更に、(i)ステロイド、P−糖タンパク質多剤耐性(MDR)アンタゴニスト、レチノイド及び/又はT−細胞受容体に対する抗体を投与すること、(ii)化学療法の使用、(iii)光化学療法の使用、及び/又は放射線治療の使用を含む。
【0041】
本発明において、使用に適したステロイド類の例としては、これに限定されないが、糖質コルチコイド類が挙げられる。好ましくは、ステロイドは局所的に投与される。P−糖タンパク質アンタゴニスト類も又、当技術分野で公知であり、且つ、これに限定されないが、シクロスポリンA、ベラパミル、キニジン、ジヒドロ−ピリジン類、カルシウムチャネル遮断薬類、シクロスポリン類似体(例、PSC833(Novartis,East Hanover,NJ))、フェノチアジン類、チオキサンチン類、XR9576(Xenova,Flough,United Kingdom)、GG918(Glaxo)、VX710(Vertex)、及び同等の又はより高い有効性を有する他のものが挙げられる。好ましくは、P−糖タンパク質アンタゴニストは、局所的に又は全身に投与される。レチノイド類には、9−シス−レチノイン酸、4−ヒドロキシ−レチノイン酸、全トランス−レチノイン酸、(E)−4−[2−(5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチレニル)−1−プロペニル]−安息香酸、及び3−メチル−(E)−4−[2−(5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチレニル)−1−プロペニル]−安息香酸)といったレチノイン酸受容体に結合する薬剤が挙げられる。レチノイドは、好ましくは、局所的に又は全身に投与される。市販で入手可能なT−細胞受容体に対する抗体は、Hoffman−LaRoche,Inc.,Nutley,NJから入手できるゼナパックスがある。抗体、又はその抗体結合断片は、全身投与されるのが好ましい。
【0042】
有効性、毒性、及び他のパラメーターをモニタリングするために、本発明の組成物投与前に、中に、及び/又は後において、様々な試験及びアッセイが行われ得る。このような試験の例としては、生検、薬物動態アッセイ、及び免疫組織化学的解析が挙げられる。生検は数多くの異なった方法で行われ得る。例えば、皮膚及び腫瘍の生検は、デプシペプチド標的遺伝子のmRNA発現における変化(例、p21、サイクリンE、及び/又はMDR−1の誘導レベルにおける変化)を判断するために行われ得る。幾つかの実施形態において、増加した発現を探す。免疫組織化学的解析としては、ヒストンのアセチル化のレベルを測定するものが挙げられ得る。本発明の一以上の局所組成物の適用を受けたものの、陰性反応を示す被験体は、治療を続行する前に休薬期間を与えられ得る。投与用量及び経路は、本発明の一以上の組成物の投与期間中、変更することができる。
【実施例】
【0043】
以下の実施例は、本発明を更に説明するものであるが、勿論その範囲を何ら制限するものとして解するべきではない。
【0044】
実施例1
本実施例は、本発明の実施形態に従った局所組成物の利点を説明する。セタフィル(登録商標)(Cetaphil(登録商標))ローション(CL)又はアクアフォークリーム(AC)のいずれかを局所的に適用した場合の、デプシペプチドFR901228の局所的な毒性を判断するために、調査では、ニュージーランド白色ウサギを用いる。ペトロラタムを含まないセタフィルローションは、精製水、グリセリン、水素化ポリイソブテン、セテアリルアルコール及びセテアレス−20、マカダミアナッツオイル、ジメチコーン、酢酸トコフェロール、ステアロキシトリメチルシラン(及び)ステアリルアルコール、パンテノール、ファルネソール、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、アクリレート/c10−30 アルキルアクリレート クロスポリマー、水酸化ナトリウム、及びクエン酸を含む。FR901228(Fujisawa)201mg、セタフィル(Galderma)40gを、20分間又は全てが取り込まれるまで、ガラスのすりばちで軟らかくする。最終組成物を、軟膏つぼに収納する。アクアフォークリームは、ペトロラタム(41%)及び鉱油、セレシン、及びラノリンアルコールを含む。FR901228(純ペプチドに相当するデプシペプチド粉末)216mg及びアクアフォー軟膏(クリーム)(Beiersdorf,Inc.)40gを均質になるまでガラスのすりばちで混合する。最終生成物を、チューブに収納する。AC及びCL組成物は通常、共に、冷却下(例えば2−8℃)、1.5年の貯蔵期間を有し得る。
【0045】
デプシペプチドの投与量は、2.5mg/kg/日(30mg/m2/d)である;コントロールは、デプシペプチドの代わりに、ビヒクル(アクアフォー又はセタフィル)を投与する。毒性につき調査をするために、非常に厳しい投与計画が採用される。調査には、28日間毎日4時間、ウサギに各局所組成物を適用させるよう設計がなされる。適用後、約4時間後に適用組成物を取り除くことによって、4時間の適用がなされたとする。ウサギ4群(ウサギ2羽/性/群)を、二つのコントロール群、及び二つの実験群として用いる。コントロール群には、担体のみ(CL又はAC)を、実験群には、各担体中でFR901228を投与する。実験パラメータとしては、週ごとの臨床病理学試験及び血漿薬物レベル試験が挙げられる。組織病理学的試験が、15日目及び28日目に行われる。
【0046】
セタフィル(Cetaphil)デペプシペプチド製剤、及びアクアフォー(Aquaphor)デペプシペプチド製剤の両方の場合において、適用を受けた部位の皮膚病変により、14日後には、局所組成物の適用を終える。CL中でデプシペプチドを投与したウサギは、浮腫、皮膚の変色、及び硬化、並びに腐肉形成を示す。デプシペプチドCLウサギは、軽度から中程度の刺激を示唆する、1.5−2.5のドレイズスコアを示す。AC中でデプシペプチドを投与したウサギは、紅斑、水疱形成、及び腫れを示す。デプシペプチドACウサギは、軽度から明確な刺激を示唆する、0.5−1.0 のドレイズスコアを示す。実験群のウサギは、22日目までに、皮膚がほぼ正常を示すまで回復する。コントロール(ベヒクルのみ)のウサギは、観察できる皮膚の毒性は示さない。
【0047】
CL及びAC製剤としてデプシペプチドを投与したウサギの4日目のデペプシペプチドの平均血漿レベルが各々、0.78ng/mL及び0.12ng/mLであることを含む、薬理学的データを回収する。薬力学的測定により、8日目及び15日目の両日でデプシペプチドを処置した両群において、赤血球(RBC)数の軽度から中程度の減少が示される。病理学的な調査によると、15日目までに微小な病変が見出される。CL中でデプシペプチドを投与した群に対し、軽度の潰瘍及び浮腫が著しい痂皮形成と共に観察される。AC中でデプシペプチドを投与した群に対し、軽度の化膿性炎症、軽度の出血(hermorrhage)、及び壊死、軽度の潰瘍、及び著しい痂皮形成が観察される。病変のほとんどが28日目までには消失する。
【0048】
本調査は数多くの結論を可能とする。ウサギに対し局所的に14日間投与した、投与量2.5mg/kgのデプシペプチド(FR901228)は、適用部位で重篤な皮膚毒性をもたらす。しかしながら、本毒性は改善可能なように思われる。CL中でのデプシペプチドは、AC製剤に比べて、より目に見える皮膚毒性を引き起こすように思われる。
【0049】
実施例2
本実施例は、本発明の実施形態に従ったHDI局所組成物が、良好な耐容性を有することを説明する。投与計画は、実施例1で述べたものに比べ、集中的なものではない。使用された投与量は、この場合もAC中の、2.5/mg/kg/d(30mg/m2/d)のFR901228又はベヒクルであるが、週3回、4週間、1日当たり4時間局所的に投与する。調査パラメータとしては、週ごとの臨床病理学及び組織病理学を含み、27日目と41日目に行う。組成物は、実質上、全てのウサギの背中に対し適用する。ヒト患者又は他の病気の被験体において、本組成物は、病気の影響を受けた及び/又は影響を受けていない表面エリアに対し適用され得る。
【0050】
この結果は、デプシペプチド及びベヒクルのコントロールのウサギの両方が、各々9日目及び17日目と、その発症が異なるものの、適用部位において皮膚の発赤を有することを示している。デプシペプチド群におけるドレイズスコアは、わずかに明確なものである。薬力学は、デプシペプチドを処置した動物において、4、11、及び27日目において、増加したFBN(1.6−2x)を示す。病理学は、微小な病変を示す。27日目のデプシペプチド群において、適用した部位で最小限の重篤度の潰瘍が観察される。
【0051】
本調査は、4週間、1週間に3回、局所的にウサギに投与した場合において、2.5mg/kg(30mg/m2)のAC中でのFR901228の耐容性が良好であることを示す。
【0052】
ここで引用された刊行物、特許出願、及び特許を含む全引用文献は、あたかも各引用文献が、参照によって組み入れられることが個々に及び具体的に示され、ここにその全体が説明されているのと同じ程度まで、引用によりここに組み込まれる。
【0053】
本発明を記述した文脈において(特に特許請求の範囲の文脈において)、用語、「ひとつの(a)」、及び「ひとつの(an)」及び「その(the)」及び同様の指示語の使用は、本明細書中で違うように示されるか、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を包含するように解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」は、違うように言及されない限り、オープン・エンドな用語(すなわち、「含むが、限定されない」という意味)として解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書中に違うように示されていない限り、範囲内の個々の異なる値に対してそれぞれ言及する略記的方法としての役割が単に意図され、個々の異なる値は、あたかもそれぞれが本明細書中に列挙されるかのように、本明細書中に取り込まれている。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中で違うように示されるか、又は文脈と明らかに矛盾していない限り、任意の適切な順序において、遂行されうる。本明細書中に提供された任意及び全ての例、又は例示的な言語(例えば、「といった」)の使用は、本発明を単に明らかにすることが意図されているものであり、違うようにクレームされていない限り、本発明の範囲の限定を意図するものではない。明細書中のいかなる言葉も、本発明の実施に必須なものとしてクレームされていないどんな要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0054】
本発明を遂行するために本発明者らが知っている最良の形態を含む、本発明の好適な実施態様を本明細書で記載する。それらの好ましい実施態様の変形は、前記の記載を読めば、当業者には明らかであろう。本発明者らは、当業者がこのような変形を必要に応じて使用することを予期しており、本発明者らは本明細書中に具体的に記載されているものとは違うように本願発明が遂行されることを意図している。したがって、本発明は、適用法によって許容される限り、本明細書に添えた特許請求の範囲に記載された事項の全ての改変及び均等物を含む。さらに、これら全ての可能な変形において、本明細書中に違うように示されないか、又は文脈と明らかに矛盾していない限り、先に記載した要素の任意の組み合わせが、本発明に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ペプチド、抗体、抗体の断片に結合した抗原、核酸、脂肪酸エステル、ヒドロキサム酸、ベンズアミド、デプデシン、及び求電子ケトン、及び塩、プロドラッグ、並びにそれらの組み合わせから成る群より選択される一以上のヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害薬(HDI);及び(b)ペトロラタムを含む局所用担体:を含む、局所適用に適した組成物。
【請求項2】
(a)ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害薬(HDI)又はプロドラッグ、又はそれらの塩(該阻害薬はブチラート塩ではない);及び(b)ペトロラタムを含む局所用担体:を含む、局所適用に適した組成物。
【請求項3】
(a)ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害薬(HDI)又はプロドラッグ、又はそれらの塩(該HDIはデプシペプチドである);及び(b)ペトロラタムを含む局所用担体:を含む、局所適用に適した組成物。
【請求項4】
担体が、鉱油、セレシン、及びラノリンアルコールから成る群から選択される少なくとも一つの成分を更に含む、請求項1〜3のいずれかの一の組成物。
【請求項5】
担体が、パンテノール、グリセリン、及びビサボロールから成る群から選択される少なくとも一つの成分を更に含む、請求項1〜4のいずれかの一の組成物。
【請求項6】
HDIが環状テトラペプチドである、請求項1〜5のいずれかの一の組成物。
【請求項7】
環状テトラペプチドが、アピジシン、FR901228、FR225497、トラポキシンA、クラミドシン、ジデムニンB、CHAP、HC−毒素、WF27082、サンドラマイシン、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される一つである、請求項6の組成物。
【請求項8】
HDIがデプシペプチドである、請求項1、2、4、5、6及び7のいずれかの一の組成物。
【請求項9】
デプシペプチドが、二環式デプシペプチドである、請求項3又は8の組成物。
【請求項10】
デプシペプチドが、(E)−(1S,4S,10S,21R)−7−[(Z)−エチリデン]−4,21−ジイソプロピル−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザビシクロ[8,7,6]−トリコサ−16−エン−3,6,19,22−ペンタノン(NSC 630176)である、請求項8又は9の組成物。
【請求項11】
デプシペプチドが、FK228である、請求項8又は9の組成物。
【請求項12】
デプシペプチドが、FR901228である、請求項8又は9の組成物。
【請求項13】
HDIが、バルプロ酸、吉草酸、イソ吉草酸、プロピオン酸、3−ブロモプロピオン酸、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される脂肪酸又はその塩である、請求項2、4、及び5のいずれかの一の組成物。
【請求項14】
HDIがヒドロキサム酸である、請求項1、2、4、及び5のいずれかの一の組成物。
【請求項15】
ヒドロキサム酸が、トリコスタチンA(TSA)、トリコスタチンC、サリチリヒドロキサム酸(SBHA)、アゼラインビスヒドロキサム酸(ABHA)、アゼライン−1−ヒドロキサメート−9−アニリド(AAHA)、6−(3−クロロフェニルウレイド)カルポイックヒドロキサム酸(3Cl−UCHA)、オキサムフラチン、A−161906、スクリプタイド、PXD−101、MW2796、MW2996、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、LAQ824、m−カルボキシル桂皮酸ビスヒドロキサメート(CBHA)、CHAP、及びピロキサミド、並びにそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項14の組成物。
【請求項16】
HDI阻害薬が、デプデシン又はそのプロドラッグである、請求項1、2、4、及び5のいずれかの一の組成物。
【請求項17】
HDI阻害薬が、求電子ケトンである、請求項1、2、4、及び5のいずれかの一の組成物。
【請求項18】
求電子ケトン誘導体が、トリフルオロメチルケトン及びα−ケトアミドから成る群から選択される、請求項17の組成物。
【請求項19】
α−ケトアミドが、N−メチル−α−ケトアミドである、請求項18の組成物。
【請求項20】
HDI阻害薬が、ベンズアミドである、請求項1、2、4、及び5のいずれかの一の組成物。
【請求項21】
ベンズアミドが、MS−27−275(MS−275)、MS−27−275の3’アミノ誘導体、及びCI−994、並びにそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項20の組成物。
【請求項22】
有効量の請求項1〜21のいずれかの一の組成物を局所的に投与することを含む、癌を処置又は阻害する方法。
【請求項23】
有効量の請求項1〜21のいずれかの一の組成物を局所的に投与することを含む、皮膚又は隣接組織内のT細胞数を減少させる方法。
【請求項24】
該減少が、悪性T細胞の数においてである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
該減少が、ヘルパーT細胞の数においてである、請求項23又は24記載の方法。
【請求項26】
有効量の請求項1〜21のいずれかの一の組成物を局所的に投与することを含む、免疫学的皮膚疾患を処置又は阻害する方法。
【請求項27】
免疫学的皮膚疾患が、狼瘡、薬疹、接触性皮膚炎、及びそれらの組み合わせにおける皮膚の徴候から成る群から選択される、請求項26の方法。
【請求項28】
該組成物を、HDI投与量2.5mg/kg/dで投与する、請求項22〜27のいずれかの一の方法。
【請求項29】
該組成物を、HDI投与量1.25mg/kg/dで投与する、請求項22〜27のいずれかの一の方法。
【請求項30】
該組成物を毎日投与する、請求項22〜27のいずれかの一の方法。
【請求項31】
該組成物を14日間投与する、請求項22〜27のいずれかの一の方法。
【請求項32】
該組成物を28日間投与する、請求項22〜27のいずれかの一の方法。
【請求項33】
該組成物を週3回投与する、請求項22〜27のいずれかの一の方法。
【請求項34】
該組成物を4週間投与する、請求項22〜27のいずれかの一の方法。
【請求項35】
局所組成物が、約2平方インチから約20平方インチの皮膚の標的エリアに対して投与される、請求項22〜34のいずれかの一の方法。
【請求項36】
局所組成物が、1〜4つの標的エリアに対して投与される、請求項22〜35のいずれかの一の方法。
【請求項37】
局所組成物が、5〜10つの標的エリアに対して投与される、請求項22〜35のいずれかの一の方法。
【請求項38】
局所組成物が、体表面エリアの少なくとも約10%に対して投与される、請求項22〜34のいずれかの一の方法。
【請求項39】
局所組成物が、体表面エリアの少なくとも約25%に対して投与される、請求項22〜34のいずれかの一の方法。
【請求項40】
局所組成物が、体表面エリアの少なくとも約50%に対して投与される、請求項22〜34のいずれかの一の方法。
【請求項41】
局所組成物が、実質的に全ての体表面エリアに対して投与される、請求項22〜34のいずれかの一の方法。
【請求項42】
局所組成物が、哺乳類に対して投与される、請求項22〜41のいずれかの一の方法。
【請求項43】
上記哺乳類がげっ歯類である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
上記哺乳類がヒトである、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
癌を処置又は阻害するための、請求項1〜21のいずれかの一の組成物の使用。
【請求項46】
癌を処置又は阻害する薬剤を製造するための、請求項1〜21のいずれかの一の組成物の使用。
【請求項47】
皮膚又は隣接組織内のT細胞数を減少させるための、請求項1〜21のいずれかの一の組成物の使用。
【請求項48】
皮膚又は隣接組織内のT細胞数を減少させる薬剤を製造するための、請求項1〜21のいずれかの一の組成物の使用。
【請求項49】
該減少が、悪性T細胞の数においてである、請求項47又は48の使用。
【請求項50】
免疫学的皮膚疾患を処置又は阻害するための、請求項1〜21のいずれかの一の組成物の使用。
【請求項51】
免疫学的皮膚疾患を処置又は阻害する薬剤を製造するための、請求項1〜21のいずれかの一の組成物の使用。
【請求項52】
免疫学的皮膚疾患が、狼瘡、薬疹、接触性皮膚炎、及びそれらの組み合わせにおける皮膚の徴候から成る群から選択される、請求項50又は51の使用。
【請求項53】
癌がリンパ腫である、請求項22、及び28〜44のいずれかの一に従った方法、又は請求項45又は46の使用。
【請求項54】
該リンパ腫が、B細胞リンパ腫である、請求項53の方法。
【請求項55】
該リンパ腫が、T細胞リンパ腫である、請求項53の方法。
【請求項56】
該リンパ腫が、ポスト胸腺リンパ腫である、請求項53の方法又は使用。
【請求項57】
ポスト胸腺リンパ腫がT細胞リンパ腫である、請求項56の方法又は使用。
【請求項58】
該T細胞リンパ腫が末梢T細胞リンパ腫である、請求項57の方法又は使用。
【請求項59】
該T細胞リンパ腫が皮膚T細胞リンパ腫である、請求項57の方法又は使用。
【請求項60】
該皮膚T細胞リンパ腫が菌状息肉腫、セザリー症候群、それら中間の徴候、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項59の方法又は使用。
【請求項61】
哺乳類において、局所適用に適した有効量の、FR901228及びペトロラタムを含む組成物を局所的に投与することを含む、詳細不明の皮膚T細胞リンパ腫又は末梢T細胞リンパ腫を処置又は阻害する方法。
【請求項62】
(a)FR901228;及び(b)ペトロラタムを含む局所用担体:を含む、局所適用に適した局所組成物。

【公表番号】特表2009−504751(P2009−504751A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527070(P2008−527070)
【出願日】平成18年8月15日(2006.8.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/031870
【国際公開番号】WO2007/024574
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(304048296)アメリカ合衆国 (18)
【Fターム(参考)】