説明

ヒップパッド及び該ヒップパッドの収容部を備えたガードル

【課題】いずれの姿勢においても、ヒップパッドの膨出部の頂点部を着用者のヒップ膨出部の頂点部より上方に位置させることができるようにし、ヒップアップ機能を常時保持できるヒップパッドを提供する。
【解決手段】ガードルの背面部の内面に設けた収容部に、着脱自在に装着されるヒップパッドであって、弾性材からなる一体成形品からなり、ヒップの左右膨出部の中央部側より上部側を被覆する形状とした左右一対の円弧部と、該左右一対の円弧部を連結する中央連結部とを備え、前記中央連結部の下端位置は、左右一対の円弧部の最大上下長さLに対して1/3〜4/7の長さL1を前記円弧部の下端位置から隔てた位置として、下端ラインは前記左右一対の円弧部が深くえぐられて前記中央連結部の下端に小さい曲率で連続する一方、上端ラインは前記左右一対の円弧部の上端縁から前記中央連結部の上端にかけて大きな曲率で窪むように連続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒップパッド及び該ヒップパッドの収容部を備えたガードルに関し、ヒップパッドにより常にヒップアップの外観を呈することが出来るようにするものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ヒップ膨出部が下垂気味の人やヒップにボリュームが無い人は、ヒップ膨出部の下部に比べて上部のボリュームが貧弱となり、パンツやスカートを着用した場合に魅力的な外観とはならない。ヒップ膨出部の位置が高く見えると脚は長く見えるため、ヒップ膨出部の上方をボリュームアップし、ヒップの外観を整えることが望まれている。
【0003】
従来から、ヒップに丸みを形成し、ヒップアップしたシルエットを形成したり、あるいはメリハリのある立体的なヒップラインを形成するため、衣類に装着して使用されるヒップパッドや、該ヒップパッドを装着した衣類が多数提供されている。
【0004】
例えば、特許第3868532号(特許文献1)では、図7に示すように、パット本体1の上端部に縫着したベルト2を腰に巻いた状態で、ベルト2の両端をマジックファスナー(登録商標)で固定している。パット本体1は位置は腰の位置で保持されているだけであるので、腰での保持位置がずれて下降すると、パット本体の装着位置も下方にずれ、パッドの膨出部が下方にずれてヒップアップの機能に呈しないこととなる。
【0005】
前記特許文献1のヒップパッドを含めて従来提供されているヒップパッドは、上端を保持して取り付ける構成とされているものが多く、ヒップパッドの下端位置を支持して、ヒップパッドのずり下がりを防止し、ヒップパッドの膨出部の頂点部を着用者のヒップ膨出部の頂点部より上方位置に常に保持して、ヒップアップ機能を確実に奏する構成とはされていない。
【0006】
【特許文献1】特許第3868532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、着用者が着座姿勢、起立姿勢あるいは運動時のいずれの姿勢においても、ヒップパッドの膨出部の頂点部を着用者のヒップ膨出部の頂点部より上方に位置させることができるようにして、ヒップアップ機能を常時保持できるヒップパッドおよび該ヒップパッドを取り付けるガードルを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、第1の発明として、ガードルの背面部の内面に設けた収容部に、着脱自在に装着されるヒップパッドであって、
弾性材からなる一体成形品からなり、
ヒップの左右膨出部の中央部側より上部側を被覆する形状とした左右一対の円弧部と、該左右一対の円弧部を連結する中央連結部とを備え、
前記中央連結部の下端位置は、左右一対の円弧部の最大上下長さLに対して1/3〜4/7の長さL1を前記円弧部の下端位置から隔てた位置として、下端ラインは前記左右一対の円弧部が深くえぐられて前記中央連結部の下端に小さい曲率で連続する一方、
上端ラインは前記左右一対の円弧部の上端縁から前記中央連結部の上端にかけて大きな曲率で窪むように連続していることを特徴とするヒップパッドを提供している。
【0009】
本発明のヒップパッドは、ヒップの左右膨出部を連結する中央部において、下端ラインは前記左右一対の円弧部がえぐられた深い逆U字状としている。
即ち、臀裂に沿う中央部の下端位置を深くえぐった形状し、該ヒップパッドを収容する後述のガードルのヒップパッド収容部に設ける左右仕切部の上端部で位置決め保持して、ヒップパッドの下端位置を規制している。よって、特許文献1のようにヒップパッドの上端を腰の回りに止める場合に発生するヒップパッドのずり下がりを防止でき、ヒップパッドを目的とする位置に保持でき、ヒップアップ機能を奏することができる。
【0010】
また、ヒップパッドの上端ラインも中央部に窪みを設け、前記下端ラインの中央部を深くえぐった逆U形状とし、中央部の両側を左右一対の円弧部としているため、これら左右の円弧部は、着用者の左右のヒップ膨出部の外面に丁度被せることができ、ヒップパッドにより着用者の左右のヒップ膨出部をくっきり膨出させることができる。さらに、ヒップパッドは装着状態で、着用者のヒップ膨出部の頂点部よりヒップパッドの膨出部の頂点部を上方に位置させているため、くっきりと膨出した頂点部を上方に位置させて、ヒップアップ機能を確実に奏することができる。
このように、本発明のヒップパッドは、左右のヒップ膨出部をくっきりと膨出させることができると共に、ヒップアップの外観を呈することができ、美しいシルエットとすることができる。
【0011】
さらに、前記形状として、ヒップパッドの中央部下側には深い逆U字状の空間を備えているので、動作による臀裂の開きに対応でき、運動追従性に優れる。
また、従来のようにヒップの左右膨出部全体を被覆したり、左右膨出部を別個に被覆したりするのではなく、2つの円弧部を中央連結部で連結する構成としているので、一方の円弧部が形状変化してもその影響がもう一方の円弧部に及びにくい。そのため、ヒップの左右膨出部がそれぞれ異なる形状変化をしても個別に追従することができ、ヒップパッドの周縁部とヒップとの間に浮きが生じない。かつ、2つの円弧部は連結されているので、左右膨出部を覆うパッドが離反することがなく、臀裂からの浮きが生じることもない。
かつ、前記ヒップパッドは弾性材からなる一体成形品から形成しているので、柔軟で、適度な弾性を有し、ヒップへの追従性に優れる。
【0012】
具体的には、中央連結部の下端位置は、左右一対の円弧部の最大上下長さLに対して1/3〜4/7の長さL1を前記円弧部の下端位置から隔てた位置としている。
これは、円弧部の下端位置から隔てる中央連結部の下端位置を左右一対の円弧部の最大上下長さLの1/3未満の位置とすると、臀裂の動きが大きい部分に中央連結部が位置するようになり、左右円弧部の動きが規制されてしまい、ヒップの左右膨出部の形状変化に追従して独立して動きにくくなる。一方、最大上下長さLの4/7を超える位置とすると、中央連結部の長さが小さくなり、左右の円弧部の支持安定性に欠ける。
なお、中央連結部の上端位置は、左右一対の円弧部の最大長さLに対して20〜40mmの長さを前記円弧部の上端位置から隔てた位置とすることが好ましい。
【0013】
前記左右一対の円弧部は外周縁に向けて厚さを次第に減少させ、最大厚さ位置は前記中央連結部の下端位置に相当すると共に該円弧部の幅方向の中央部とし、かつ、
前記中央連結部の幅は、前記左右一対の円弧部を含めた最大幅寸法Wの10〜20%とし、かつ、該中央連結部の厚さは前記左右一対の円弧部の最大厚さの1/2以下の一定厚さとしていることが好ましい。
【0014】
このように、左右一対の円弧部は外周縁に向けて厚さを次第に減少させているので、ヒップパッドの周縁部に段差を生じさせることなく、ヒップの丸みに自然に沿わせることができる。また、円弧部の最大厚さ位置は中央連結部の下端位置に相当すると共に各円弧部の幅方向の中央部とすることで、本来のヒップの膨出部よりもヒップ位置を高くかつ幅方向に広がらないように見せることができ、美しくヒップアップした外観とすることができる。
【0015】
前記中央連結部の幅を前記左右一対の円弧部を含めた最大幅寸法Wの10〜20%とするのが好ましいのは、前記左右一対の円弧部をちょうど左右のヒップ膨出部にフィットさせて、運動追従性を確保し、かつ、該円弧部により形成される膨らみに対してメリハリをつけた外観とすることができるからである。即ち、中央連結部の幅が、最大幅寸法の20%を超えると左右円弧部が離れ過ぎ、整った自然なシルエットを形成することができないおそれがある。一方、最大寸法幅の10%未満であると、着座した場合のようにヒップの左右膨出部が離反した場合に左右円弧部がヒップに追従しにくくなり、美しいシルエットを形成できないおそれがある。
なお、中央連結部の上下方向の長さL2は、左右一対の円弧部の最大上下長さLの2/5〜4/7であることが好ましい。
【0016】
また、前記中央連結部の厚さは前記左右一対の円弧部の最大厚さの1/2以下の厚さで、かつ厚さを一定とすることが好ましいのは、左右円弧部との厚さの差異を明確にしてメリハリのある外観を形成できると共に、曲げに対する反発力を小さくでき、中央連結部に柔軟性を持たせることができるからである。本構成とすることで、左右円弧部が左右の各ヒップ膨出部に個別に追従しやすくなる。
【0017】
これに対し、ヒップパッドの左右一対の円弧部は、肌側に配置される面が、大臀筋に沿わせやすいように隆起状とされていることが好ましい。特に、ヒップパッドを平面上に置いた場合、前記円弧部の最大厚さ位置の肌側面が前記中央連結部の肌側面から8〜12mm程度盛り上がっていれば、ヒップ膨出部にフィットしやすく、好適である。
【0018】
前記ヒップパッドは弾性材からなる一体成形品からなるものとしており、該弾性材の両面には伸縮性生地からなる被覆材を備えていることが好ましい。
弾性材としては、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエステルエラストマーの発泡体等の樹脂発泡体や繊維構造体、不織布等を用いることができ、ポリウレタンフォームが好適に用いられる。被覆材の素材は、特に限定されないが、肌触りの良いポリエステル、ナイロン、綿等の糸からなる両面編ニット(スムース)、平編ニット等が好適に用いられる。
【0019】
前記ヒップパッドは、例えば、シート状の弾性材の両面に被覆材を接着剤等であらかじめ張り合わせておき、加熱・加圧成形し、所望の寸法および形状に打ち抜く等の方法によりカットして製造することができる。このとき、厚さの薄い縁取り部が加熱・加圧成形時に全外周縁に沿って設けられていることが好ましい。
【0020】
本発明は、第2の発明として、前記ヒップパッドを着脱自在に挿入する収容部を、背面布の内面に収容部形成用の別布を取り付けて設け、
前記収容部形成用の別布は、ヒップパッド挿入口とする上端縁を除き、側端縁および下端縁を背面布に縫着し、該収容部の下端縁に前記ヒップパッドの下端縁を沿わせて収容した状態で、前記左右一対の円弧部の最大厚さ位置はヒップの左右膨出部の頂点より上方に位置させる設定とし、
かつ、前記別布は、臀裂に沿った中央部を下端から上下中間位置まで背面布と縫着して左右仕切部を設け、前記ヒップパッドを前記収容部に収容した状態で、前記中央連結部の下端を前記左右仕切部の上端に当接させるものとしていることを特徴とするガードルを提供している。
【0021】
前述のように、収容部を備えたガードルとすることで、ガードルによるリフトアップ効果を得ながらヒップパッドによりヒップ上方をボリュームアップできるため、より美しいシルエットに造形することができる。前記左右一対の円弧部の最大厚さ位置はヒップの左右膨出部の頂点より上方に位置させているので、ヒップの膨出部を高く、脚長に見せることができる。
さらに、ヒップパッド挿入口とする上端縁のみ背面布に縫着しないが、他の端縁は背面布に縫着して収容部を形成しているので、ヒップパッドが位置ずれしたり、飛び出たりしないように安定保持しながら、洗濯時やヒップパッドが必要のない時にはヒップパッドを取り外すことができる。
なお、収容部は背面布の内面に取り付けているので、ヒップパッドを取り付けても外観には響きにくく、自然なシルエットを形成することができる。
【0022】
さらに、前記収容部形成用の別布は臀裂に沿った中央部を下端から上下中間位置まで背面布と縫着することにより左右仕切部を設けているので、ヒップパッドの左右一対の円弧部の間の逆U字形状に深くえぐられた空間に該左右仕切部を挿入して装着することができ、動きが大きい臀裂付近におけるヒップパッドの保持安定性に極めて優れる。特に、前記ヒップパッドを前記収容部に収容した状態で、前記中央連結部の下端を前記左右仕切部の上端に当接させているので、中央連結部をガードル中央部に安定保持することができる。
【0023】
前記収容部には、前記ヒップパッド挿入口を設けた上部に被せるカバー布を背面布の内面に取り付けていることが好ましい。該カバー布を取り付けることで、収容されたヒップパッドの飛び出しやズレを確実に防止することができる。
【0024】
前記収容部形成用の別布、カバー布は、通気性を良好し、ヒップパッドを収容しやすくするため、伸縮性のあるメッシュ生地で形成していることが好ましい。該メッシュ生地は、例えば、メッシュパワーネットからなることが好ましい。
【0025】
前記収容部には、前記ヒップパッドに加えて、あるいはヒップパッドに替えて、使い捨てカイロを挿入してもよい。前記収容部はヒップの左右膨出部の頂点を越えてウエストラインに向けた位置となり、冷え等が発生しやすい部位に相当するので、温めると効果的である。
【0026】
前記ガードルにはヒップを臀溝(太腿とヒップの境目)から上方にリフトアップするために、前記収容部の下側に帯状のリフト布を縫着していることが好ましい。このような位置にリフト布を設けることにより、着用者のリフトアップされたヒップ膨出部のヒップラインとヒップパッドにより形成されるラインとを自然な曲線で繋げることができ、より美しいシルエットを形成することができる。
【0027】
なお、第2の発明のガードルはロングタイプ、セミロングタイプ、ショートタイプのいずれとしてもよい。ガードルのみならず、ショーツやボディースーツに前記収容部を形成してもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明のヒップパッドは、その下端中央部を深くえぐった逆U形状とし、ガードルに設ける左右仕切部の上端位置と当接させて、ヒップパッドの下端位置を規制しているため、ヒップパッドのズリ下りを防止でき、ヒップアップ機能を奏する位置にヒップパッドを保持できる。
また、ヒップの左右膨出部の中央部側より上部側を被覆する形状としているので、ヒップ上部を効率良くボリュームアップし、ヒップの形状を整え、脚長に見せることができる。かつ、2つの円弧部を中央連結部で連結する構成として上端ライン、下端ラインが所定の形状に窪むように形成しているので、一方の円弧部が形状変化してもその影響がもう一方の円弧部に及びにくい。その結果、ヒップの左右膨出部がそれぞれ異なる形状変化をしても個別に追従することができるため、ヒップパッドの周縁部にも浮きを生じることがない。かつ、2つの円弧部は中央連結部で連結されているので、左右膨出部を覆うパッドが離反することがなく、臀裂からの浮きが生じることもない。このように、本発明のヒップパッドは、ヒップ上部をボリュームアップし、ヒップの形状を整えながら、大きく形状変化するヒップへの追従性に優れるので、美しいシルエットと快適な着用感を得ることができる。
【0029】
本発明の前記ヒップパッドの収容部を備えたガードルは、ガードルによるリフトアップ効果を得ながらヒップパッドによるヒップ膨出部上方のボリュームアップ効果を得ることができるので、ヒップの膨出部をより高く、脚長に見せ、美しいシルエットを造形することができる。また、ヒップパッドは着脱自在としているので、洗濯時やヒップパッドが必要のない時にはヒップパッドを取り外すことができる。
【0030】
前記ガードルは、ヒップパッド挿入口とする上端縁のみ背面布に縫着しないが、他の端縁は背面布に縫着して収容部を形成しているので、ヒップパッドが位置ずれを生じたり、飛び出たりしないように安定保持することができる。さらに、左右仕切部を設け、前記ヒップパッドを前記収容部に収容した状態で、前記中央連結部の下端を前記左右仕切部の上端に当接させているので、中央連結部を安定支持することができ、動きが大きい臀裂付近におけるヒップパッドの保持安定性に極めて優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1に、本発明の第1実施形態のヒップパッド10を示し、図2、3に該ヒップパッド10が装着されたセミロングタイプのガードル20を示す。ヒップパッド10は、このようにガードル20の内部に設けた収容部21に着脱自在に装着されるものである。
【0032】
ヒップパッド10は、表被覆布13と裏被覆布14で両面被覆された弾性材15の一体成形品としており、左右一対の円弧部11A、11Bと、該左右一対の円弧部11A、11Bを連結する中央連結部12とを備えている。
【0033】
中央連結部12の下端位置P1は、左右一対の円弧部11A、11Bの最大上下長さLに対して、1/3〜4/7の長さとなるL1を前記円弧部11A、11Bの下端位置Q1、Q2を結ぶ直線から隔てた位置としている。本実施形態ではLを18.2mm、L1を9.2mmとしている。
ヒップパッド10の下端ライン10bは、円弧部11A,11Bに挟まれた空間が深くえぐられ、中央連結部12の下端位置P1に小さい曲率で連続する逆U字形状としている。一方、ヒップパッド10の上端ライン10aは、左右一対の円弧部11A,11Bの上端縁11a、11bから前記中央連結部12の上端位置P2にかけて大きな曲率で窪む浅いV字形状を形成して連続させている。
【0034】
左右一対の円弧部11A,11Bは、その断面形状に示されるように、大臀筋に沿ったなだらかな立体隆起形状としていると共に、外周縁11a〜11fに向けて厚さを次第に減少させた立体形状としている。最大厚さ位置C1、C2はおよそ中央連結部12の下端位置P1に相当すると共に各円弧部11A、11Bの夫々の幅方向の中央部に位置するようにしている。
本実施形態では、最大厚さ位置となる中央部C1、C2において、ヒップパッド10の厚さT1を10mmとし、高さH1を12mmとしている。
【0035】
これに対して、中央連結部12の厚さT2は、左右一対の円弧部11A,11Bの最大厚さT1の1/2以下とし、厚さを一定としている。本実施形態では厚さT2は4mmとしている。
また、前記中央連結部の幅W1は、前記左右一対の円弧部11A、11Bを含めた最大幅寸法Wの10〜20%としている。本実施形態では最大幅寸法Wを266mm、中央連結部の幅W1を30mmとし、最大幅寸法Wの11.3%としている。
【0036】
以下、ヒップパッド10の製造方法について説明する。
はじめに、シート状のポリウレタンフォームからなる弾性材15の両面にポリエステルスムース(トリコット)からなる表被覆布13、裏被覆布14を接着剤でラミネートした一定の厚みの積層体を作製する。
次に、前述した左右一対の円弧部11A、11B及び中央連結部12の立体形状を備えた上部金型と下部金型を用いて、圧縮率に差異を持たせて前記積層体を加熱・加圧成形し、立体形状に形成している。この際、ヒップパッドの全外周縁は、厚さ1mm、幅4mmの薄肉状に成形して縁取り部16を形成している。
その後、縁取り部16に沿ってカットし、捲縮糸を用いてオーバーロックミシンにより縁かがりの端始末処理を行い、本実施形態のヒップパッド10を製造している。
【0037】
前述したように、ヒップパッド10はガードル20の収容部21に着脱自在に装着されるものとしている。
次に、図2及び図3を参照し、ガードル20について説明する。
【0038】
ガードル20の表側は、図2(A)に正面図、図2(B)に背面図を示すように、左右一対のガードル本体布22−1、22−2と、左右一対の腹部中央拘束布23−1、23−2と、腹部当て布24と、マチ布25とを備えている。ガードル20の裏面側上端縁には腹部当て布24の部分を除き、ウエスト保持用の伸縮性ゴムテープ35を縫着している。
【0039】
左右一対のガードル本体布22−1、22−2はウエスト位置から大腿部まで延在する長さとしており、背面側では縫着線30で後中心にて互いに縫着していると共に前面側ではマチ布25の前面側にて縫着線31で互いに縫着している。また、内太腿に相当する位置において、縫着線32(32A、32B)で互いに縫着して筒状として脚部を形成している。ガードル本体布22−1、22−2はサテン調パワーネット生地1枚から形成している。
【0040】
ガードル20の前面の腹部に相当する部分は、ガードル本体布22−1、22−2と同一のサテン調パワーネット生地1枚を上端側で2つ折りにして2枚重ねにしてなる逆三角形状の腹部当て布24の端縁24a、24bに非伸縮性レースからなる腹部中央拘束布23−1、23−2を夫々縫着している。腹部中央拘束布23−1、23−2は、前中心で縫着線33にて互いに縫着している。また、腹部中央拘束布23−1、23−2の端縁23a、23bはガードル本体布22−1、22−2に夫々縫着している。
【0041】
本構成からなるガードル20の背面側の裏面(内面)には、図3(A)、図3(B)に示すように、ガードル本体布22−1、22−2からなる背面布26にメッシュパワーネットからなる収容部形成布27を取り付けて前記ヒップパッド10の収容部21を設けている。詳細には、前記収容部形成布27は、その左右側端縁27b、27cおよび下端縁27dを背面布26に縫着するが、上端縁27aは縫着しないようにし、該上端縁27aをヒップパッド挿入口としている。ヒップパッド挿入口となる上端縁27aの上部側には、カバー布28を取り付け、収容部形成布27の上端縁27aに被せる構成としている。該カバー布28の上端縁28aはゴムテープ35と共に背面布26に縫着し、左右側端縁28b、28cは収容部形成布27の左右端縁27a、27bと共に背面布26に縫着するが、下端縁27dは縫着せず、パッド挿入口として開けている。
【0042】
前記収容部21の下側部分の背面布26には帯状のヒップリフト布29を縫着している。該ヒップリフト布29の両端は、腹部中央拘束布23−1、23−2の端縁23a、23bまで夫々延在させている。
カバー布28、ヒップリフト布29はいずれも前記収容部形成布27と同一のメッシュパワーネットから形成している。
【0043】
さらに、前記収容部形成布27及びヒップリフト布29は、臀裂に沿った中央部を下端から上下中間位置まで背面布26と縫着し、収容部21に左右仕切部36を設けている。前記ヒップパッド10を前記収容部21に収容した状態では、前記中央連結部12の下端P1は左右仕切り部36の上端36aに当接する位置となる。
【0044】
なお、左右仕切り部に加えて、あるいは左右仕切り部を設ける代わりに、図4に示すように、ヒップパッド10の下端ライン10bに沿うように背面布26と収容部形成布27を縫着線37で縫着してもよい。
【0045】
次に、図5を参照して、第1実施形態のヒップパッド10を収容部21に収容したガードル20の作用について説明する。
【0046】
ヒップパッド10を収容部21に収容したガードル20は、着用すると、ヒップパッド10の左右円弧部11A、11Bが着用者100のヒップ膨出部101の中央部側より上部側を被覆する。このとき、ヒップパッド10の円弧部11A、11Bの最大厚さ位置C1、C2はヒップの左右膨出部の頂点部Rより上方に位置している。
ヒップパッド10は、その下端中央部を深くえぐった逆U形状とし、ガードル20に設ける左右仕切部36の上端位置36aと中央連結部12の下端位置P1を当接させて、ヒップパッドの下端位置を規制しているため、前記位置からヒップパッドのズリ下りを防止でき、ヒップパッドによりヒップアップ機能を奏する位置に保持できる。
【0047】
ヒップパッド10は、ヒップの左右膨出部の中央部側より上部側を被覆する形状としているので、ヒップ上方を効率良くボリュームアップし、ヒップの形状を整え、脚長に見せることができる。ヒップパッド10は、左右のヒップに夫々対応する左右一対の円弧部11A、11Bを中央連結部12で連結する構成とし、かつ、上端ライン10aと下端ライン10bが所定の形状及び長さの窪みを有しているので、ヒップの左右膨出部がぞれぞれ異なる形状変化をしても個別に追従することができ、周縁部に浮きを生じることがない。かつ、2つの円弧部11A、11Bは連結されているので、離反することがなく、臀裂からの浮きが生じることもない。そのため、ヒップ上部をボリュームアップして、ヒップの形状を整えながら、形状変化の大きいヒップへの追従性に優れるので、美しいシルエットと快適な着用感を得ることができる。
【0048】
本発明のヒップパッド10を備えたガードル20は、前述のようなヒップパッド挿入口を備えた収容部21とし、該ヒップパッド挿入口はカバー布28で覆っているので、ヒップパッドが位置ずれしたり、飛び出たりしないように安定保持することができる。
【0049】
ヒップパッド10は着脱可能であるので、洗濯時や必要のない時には取り外すことができる。また、収容部21の下方側の背面布26にはヒップリフト布29を縫着して、図5(B)中の矢印に示すようにヒップを臀溝の位置から効率よくリフトアップしているので、着用者100のヒップをリフトアップしながらボリュームある美しいシルエットに造形することができる。
【0050】
図6に、本発明の第2実施形態のショート丈としたガードル40を示す。
ガードル40は、第1実施形態のガードル本体布の丈を短くすると共に、ヒップリフト布29は設けず、第1実施形態のヒップリフト布29の取り付け位置に相当するガードル本体布42−1、42−2の部分43−1、43−2の編組織を密にしている。これにより、緊締力を強め、臀溝からヒップをリフトアップする構成としている。
なお、他の構成および作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
なお、本発明のヒップパッドの収容部を備えたガードルは、前記実施形態の構成に限定されない。他の構成のガードルのほか、ショーツ、ボディースーツにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態に係るヒップパッドの(A)は平面図、(B)は(A)のA−A断面図、(C)は(A)のB−B断面図を示す。
【図2】図1に示すヒップパッドを収容したガードルの表面側を示す図であり、(A)は前面図、(B)は背面図である。
【図3】図1に示すヒップパッドを収容したガードルの裏面側を示す図であり、(A)は前面図、(B)は背面図である。
【図4】第1実施形態の変形例を示す図である。
【図5】ヒップパッドを収容部に備えたガードルの着用状態を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は断面方向から見た図である。
【図6】第2実施形態のガードルを示す図である。
【図7】従来例を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
10 ヒップパッド
11 円弧部
12 中央連結部
13 表被覆布
14 裏被覆布
15 弾性材
20 ガードル
21 収容部
22−1、22−2 ガードル本体布
26 背面布
27 収容部形成布
28 カバー布
29 ヒップリフト布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガードルの背面部の内面に設けた収容部に、着脱自在に装着されるヒップパッドであって、
弾性材からなる一体成形品からなり、
ヒップの左右膨出部の中央部側より上部側を被覆する形状とした左右一対の円弧部と、該左右一対の円弧部を連結する中央連結部とを備え、
前記中央連結部の下端位置は、左右一対の円弧部の最大上下長さLに対して1/3〜4/7の長さL1を前記円弧部の下端位置から隔てた位置として、下端ラインは前記左右一対の円弧部が深くえぐられて前記中央連結部の下端に小さい曲率で連続する一方、
上端ラインは前記左右一対の円弧部の上端縁から前記中央連結部の上端にかけて大きな曲率で窪むように連続していることを特徴とするヒップパッド。
【請求項2】
前記左右一対の円弧部は外周縁に向けて厚さを次第に減少させ、最大厚さ位置は前記中央連結部の下端位置に相当すると共に該円弧部の幅方向の中央部とし、かつ、
前記中央連結部の幅は、前記左右一対の円弧部を含めた最大幅寸法Wの10〜20%とし、かつ、該中央連結部の厚さは前記左右一対の円弧部の最大厚さの1/2以下の一定厚さとしている請求項1に記載のヒップパッド。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のヒップパッドを着脱自在に挿入する収容部を、背面布の内面に収容部形成用の別布を取り付けて設け、
前記収容部形成用の別布は、ヒップパッド挿入口とする上端縁を除き、側端縁および下端縁を背面布に縫着し、該収容部の下端縁に前記ヒップパッドの下端縁を沿わせて収容した状態で、前記左右一対の円弧部の最大厚さ位置はヒップの左右膨出部の頂点より上方に位置させる設定とし、
かつ、前記別布は、臀裂に沿った中央部を下端から上下中間位置まで背面布と縫着して左右仕切部を設け、前記ヒップパッドを前記収容部に収容した状態で、前記中央連結部の下端を前記左右仕切部の上端に当接させるものとしていることを特徴とするガードル。
【請求項4】
前記収容部のヒップパッド挿入口を設けた上部に被せるカバー布を背面布の内面に取り付けている請求項3に記載のガードル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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