説明

ヒトサイトメガロウイルスの複製制御

【課題】 ヒトサイトメガロウイルスの複製メカニズムを解明し、HCMV感染症の治療及び予防のための新たな手段・方法を提供すること。
【解決手段】 ヒトサイトメガロウイルスのMIE遺伝子エンハンサー領域に存在する全てのGCボックスを部位特異的に変異させ、転写因子Sp1及びSp3の当該部位への結合を阻害することにより、ヒトサイトメガロウイルスの複製能力を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MIE遺伝子エンハンサー領域に存在する全てのGCボックスを部位特異的に変異させたことを特徴とする組換えヒトサイトメガロウイルス及び各ウイルスのゲノムDNA、ならびにこれらの利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)はβヘルペスウイルスの1種で、ほとんどのヒトに不顕性に感染している。潜伏しているHCMVの再活性化は、肺炎、肝炎、網膜炎など種々の疾患を引き起こすが、ウイルスゲノムの潜伏感染から溶解感染への転換の機構は未だ解明されていない。
【0003】
In vitroでのHCMVの宿主域は狭く、例えば線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、単球由来マクロファージといった分化した細胞でのみ複製し増殖する。宿主におけるHCMVの複製効率には、major immediate-early(MIE)遺伝子が重要な役割を果たしていることがわかっている。このMIE遺伝子のプロモーター上流域は、モジュレーター、ユニーク領域、エンハンサーの3つの領域からなる。モジュレーターはIn vitroにおいて、MIE転写にもウイルスの複製にも影響しないことが報告されている。ユニーク領域もMIEプロモーターからの転写に作用しないが、1つ以上のシス作用性エレメントが、ウイルスの様々なUL127初期プロモーターからの転写を抑制することが知られている。
【0004】
エンハンサーはさらに近位側と遠位側の2つのコンポーネントに分けることができ、遠位エンハンサーがない組換えウイルスの複製は遅く、ヒト線維芽細胞のプラーク表現型が小さくなることが知られている(非特許文献1参照)。発明者らは、ヒト及びマウスのCMVエンハンサーを近位及び遠位でキメラにすると、低MOIでの複製の効率性が低くなり、プラーク表現型も小さくなることを確認した(非特許文献2)。また発明者らは、近位エンハンサー領域の段階的欠失とMIE遺伝子の転写及びウイルスの自己複製との関係について検討し、-636から-39の領域をさせたウイルスでは複製を生じなくなるが、-636から-67を欠失させたウイルスは自己複製可能なことを報告した(非特許文献3参照)。この複製可能な組換えウイルスでは、MIEプロモーター上流に存在する1つのGCボックスが保持されていた。
【0005】
転写因子であるSp1ファミリーは、4つのタンパク質(Sp1、Sp2、Sp3、Sp4)から構成される。Sp1とSp3はGCボックスとして知られるGCリッチな配列を認識して結合し、Sp2はGTリッチな配列を認識する。一般に、Sp1は細胞周期の調節、クロマチンリモデリング、非メチル化CpGアイランドの伸張などの細胞プロセスに必須な多数の遺伝子の活性化に関与している。Sp3は、多くのプロモーター上のSp1様部位において転写活性化因子として作用することが明らかにされている。これまで、HCMV感染がヒト線維芽細胞のSp1量をアップレギュレートするという報告(非特許文献4)があるものの、Sp1ファミリーとウイルスの複製との関係について詳細な検討されたことはない。
【0006】
【非特許文献1】Meier, J. L., and J. A. Pruessner, (2000) J. Virol. 74:p1602-1613
【非特許文献2】Isomura, H., and M. F. Stinski, (2003) J. Virol. 77:p3602-3614
【非特許文献3】Isomura, H., T. Tsurumi, and M. F. Stinski, (2004) J. Virol. 78:p12788-12799
【非特許文献4】Yurochko, A. D., et al., (1997) J. Virol. 71:p4638-4648
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、ヒトサイトメガロウイルスの複製メカニズムを解明し、HCMV感染症の治療及び予防のための新たな手段・方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
HCMVのMIE遺伝子近位エンハンサーには、転写開始部位(+1)から数えて約-55及び-75の部位に、2つのSp1/Sp3結合部位(GCボックス)がある。発明者らは、この-55と-75のGCボックスを欠失させ、ウイルス遺伝子の発現及び複製に関してどのような影響があるかを検討した。そして、一方のGCボックスの変異では、ウイルス遺伝子の発現及び複製に顕著な影響はないが、両方のGCボックスを変異させると、ウイルス遺伝子の発現及び複製が顕著に抑制されることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、MIE遺伝子エンハンサー領域に存在する全てのGCボックスを部位特異的に変異させたことを特徴とする、組換えHCMV(但し、MIE遺伝子の転写開始位置を+1としたとき、-636から-67までの全領域を欠失したウイルスを除く)を提供する。
【0010】
本発明において、前記変異はGCボックスへのSp1及びSp3転写因子の結合を阻害するような変異であればよく、例えば、GCボックス内の配列の一部又は全ての配列の欠失又は置換、もしくは他の配列の付加により実現できる。
【0011】
好ましい実施形態において、前記組換えHCMVは、自己複製能力が野生型に比較して約1/100以下である。
【0012】
本発明はまた、MIE遺伝子エンハンサー領域に存在する全てのGCボックスを部位特異的に変異させたことを特徴とする、組換えHCMVゲノムDNA(但し、MIE遺伝子の転写開始位置を+1としたとき、-636から-67までの全領域を欠失したDNAを除く)を提供する。
【0013】
本発明はまた、前記組換えHCMVゲノムDNAを含むベクター、並びに各ベクターで形質転換された宿主細胞を提供する。好ましい実施形態において、宿主細胞は、ヒト線維芽細胞、グリオーマ細胞又はヒト胎児繊維芽細胞である。
【0014】
本発明はまた、MIE遺伝子エンハンサー領域に存在する全てのGCボックスを部位特異的に変異させたHCMVゲノムDNAを含むベクターで宿主細胞を形質転換し、各細胞の培養上清からウイルス粒子を回収することを特徴とする、組換えHCMVの製造方法(但し、MIE遺伝子の転写開始位置を+1としたとき、-636から-67までの全領域を欠失したウイルスの製造方法は除く)を提供する。
【0015】
本発明の組換えHCMVは宿主内での感染性、病原性が著しく低下した弱毒化ウイルスであり、当該ウイルス又はその一部はHCMV感染症用ワクチンの製造に好適に利用でき、本発明はそのようなワクチンも提供する。
【0016】
さらに本発明は、HCMVゲノムDNA中のMIE遺伝子エンハンサー領域に存在する全てのGCボックスへのSp1又はSp3転写因子の結合を阻害することにより、HCMVの複製効率を減少させる方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、MIE遺伝子エンハンサー領域に存在するSp1/Sp3結合部位(GCボックス)の変異により、ウイルスの複製能力を制御できることが明らかにされた。本発明で提供される弱毒化組換えHCMVは、HCMV感染症の治療用ワクチンとして利用することができる。さらに、本発明で明らかにされたSp1/Sp3結合部位を介した複製制御機構を標的として、新たな抗HCMV薬の探索、開発が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
1.組換えヒトサイトメガロウイルス(HCMV)
ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)は、βヘルペスウイルス亜科の1種で、そのゲノムは230kbの線状二本鎖DNAからなる。宿主におけるHCMVの複製機構は十分解明されていないが、その複製効率にはMIE(major immediate-early)遺伝子が重要な役割を担っていることがわかっている。HCMVの全ゲノム配列は既に解析され、当業者はその配列をGenBank等の公共データベースを通じて容易に入手することができる(GenBank Accession:NC_001347)。
【0020】
HCMVのMIE遺伝子近位エンハンサーには、転写開始部位(+1)から数えて約-55及び-75の部位に、2つのSp1/Sp3結合部位(GCボックス)がある。GCボックスは転写因子Sp1及びSp3の認識配列であり、発明者らは、GCボックスへの部位特異的変異によりこれら転写因子がエンハンサーに結合できなくなることを確認した。さらに、一方のGCボックスの変異では、ウイルス遺伝子の発現及び複製に顕著な影響はないが、両方のGCボックスを変異させるとウイルス遺伝子の発現及び複製が顕著に抑制されることを見出した。
【0021】
本発明の「組換えHCMV」は、そのゲノムDNA中のMIE遺伝子上流のエンハンサー領域に存在する全てのGCボックス(すなわち、-55と-75に存在する2つのGCボックス)が部位特異的に変異し、その結果、自己複製能力が著しく低下していることを特徴とする。換言すれば、本発明の組換えHCMVは、感染した宿主内で十分な自己複製能力を有さず、感染性や病原性を実質的に欠いた弱毒化組換えHCMVといえる。
【0022】
本発明において、組換えHCMVの複製効率は野生型に比較して少なくとも1/100以下、好ましくは1/500以下、より好ましくは1/1000以下である。この程度の複製効率であれば、宿主に対する感染性、病原性が期待できず、研究や臨床での利用可能性が期待できるからである。
【0023】
本発明における「GCボックスの変異」とは、Sp1及びSp2の当該部位への結合を妨げるような変異であればよく、GCボックス内の一部又は全ての配列の欠失又は置換、もしくは適当な配列の付加により実施できる。
【0024】
2.組換えHCMVゲノムDNA及びベクター
本発明の組換えHCMVは、HCMVゲノムDNA中に存在する全てのGCボックスを人為的に変異(欠失、置換、又は付加)させた組換えHCMVゲノムDNAを作製し、これを適当なベクターに組み込んで宿主中で発現させることにより作製することができる。本発明はそのような「組換えHCMVゲノムDNA」と「ベクター」を提供する。
【0025】
本発明の「組換えHCMVゲノムDNA」は、前記HCMVゲノムDNA中に存在するMIE遺伝子エンハンサー領域における全てのGCボックスを人為的に部位特異的に変異(欠失、置換、又は付加)させた組換えHCMV ゲノムDNAである。
【0026】
また、本発明の「ベクター」は、前記組換えHCMV ゲノムDNAを含むベクターあって、宿主細胞内でHCMV粒子を発現させることはできても、感染性や病原性(自己複製能力)を有するHCMV粒子を発現させることができないベクターである。
【0027】
動物細胞を宿主として用いる場合、ベクターとしては、発現させようとする遺伝子の上流に位置するプロモーター、RNAのスプライス部位、ポリアデニル化部位、及び転写終結配列等を有するものを使用できる。例えば、SV40の初期プロモーターを有するpSV2dhfrや、pcDNAI/Amp(Invitrogen)、pcDNAI、pAMoERC3Sc、pCDM8、pREP4(Invitrogen)、pCAT3-Basic(Promega社)等を挙げることができる。
【0028】
プロモーターは、動物細胞中で発現できるものであれば特に限定されず、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)のIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター又はメタロチオネインのプロモーター、レトロウイルスのプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーター、CAG等を用いることができる。また、CMVのIE遺伝子のエンハンサーをプロモーターと共に用いてもよい。
【0029】
本発明のベクターは、選択マーカーや他の外来遺伝子をさらに含んでもよい。外来遺伝子は、導入された細胞内で翻訳される際に、各外来遺伝子産物を発現することができる。従って外来遺伝子は、外来遺伝子の遺伝子産物を細胞内で生成させること、もしくはHCMV粒子内あるいは表面に発現させることを目的とする場合にも、好適に使用することができる。外来遺伝子と組換えHCMVゲノムDNAはHCMVと一続きのポリペプチドとして翻訳され発現された後、プロテアーゼによって切断され、遊離するように、プロテアーゼ切断部位等を介して互いに連結すればよい。
【0030】
3.組換えHCMV産生細胞
上記のようにして作製される本発明のベクターを宿主細胞に導入することにより、培養細胞の培養液中に組換えHCMV粒子を一過性又は持続的に産生させることができる。以下、この組換えHCMV発現ベクター含む組換え細胞を「組換えHCMV産生細胞」と称する。
【0031】
宿主細胞としては、真核細胞、特に動物細胞が好ましい。そのような細胞としては、ヒト正常繊維芽細胞、不死化ヒト繊維芽細胞、HEL細胞等のヒト胎児繊維芽細胞、U373細胞等のグリオーマ細胞等を挙げることができ、特にヒト正常繊維芽細胞が好ましい。細胞は市販のものを利用してもよいし、細胞寄託機関から入手して使用してもよいし、任意の細胞から株化した細胞を使用してもよい。
【0032】
本発明のベクターの宿主細胞内への導入は、当業者には公知の任意の技術を使用して行うことができる。そのような導入法としては、例えば、エレクトロポレーション、パーティクルガン法、リポフェクション法、リン酸カルシウム法、マイクロインジェクション法、DEAEセファロース法等が挙げられるが、リン酸カルシウム法による方法が特に好ましい。
【0033】
細胞内導入に用いるベクターの量は、使用する導入法に応じて決めればよいが、好ましくは1ピコグラム〜100マイクログラム、より好ましくは10ピコグラム〜10マイクログラムの量を使用する。
細胞内での組換えHCMVの発現は、抗HCMV抗体を用いたウェスタンブロット解析により確認することができる。
【0034】
4.本発明のその他の実施形態
(1)組換えHCMVを利用したワクチンの製造
本発明の組換えHCMV産生細胞より産生される組換えHCMVは、HCMVとしての完全な構造、すなわち免疫原性を有しているにもかかわらず、自己複製能力が著しく低下し、感染した宿主内での感染性や病原性を実質的に欠いた組換えHCMVである。よって、本発明の組換えHCMV又はその一部は、HCMV感染に起因する種々の疾患に対するワクチンの製造に利用できる。
【0035】
(2)HCMV感染の診断薬又は治療薬
本発明により、ヒトサイトメガロウイルスのMIE遺伝子エンハンサー領域に存在するSp1/Sp3結合部位(GCボックス)を部位特異的に変異させ、転写因子Sp1及びSp3の当該部位への結合を阻害することにより、ウイルスの複製能力を低下させうることが確認された。よって、当該Sp1/Sp3結合部位への転写因子の作用を標的として、新たなHCMV感染の治療薬や治療方法の研究、開発が可能となる。
【実施例】
【0036】
本発明を、以下の実施例及び図面に基づいてさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0037】
1.材料及び方法
(1)細胞及びウイルス量
初代ヒト包皮線維芽細胞(HFF)は10%ウシ胎児血清(シグマ社)、ペニシリン(100 U/ml)、ストレプトマイシン(100 mg/ml)を含むイーグルMEM培地で、37℃、5%CO2下で培養した(59)。
【0038】
野生型(wt)HCMV Towne及び組換えウイルスのウイルス量は、HFF細胞に対する標準的なプラークアッセイにより測定した。Sp1結合部位が変異した組換えウイルスの量は、次のようにして野生型ウイルスに対して標準化した。ウイルスDNA取込量は、35 mm又は60 mmプレートで感染させたHFF細胞について3回測定した。感染(pi)4時間後に、細胞を50 mg/mlプロテイナーゼKを含むPCR用溶解緩衝液(10mM Tris-HCl、pH8.0、1mM EDTA、0.001% TritonX-100、0.001%SDS)中に回収した。55℃で100分静置後、95℃で10分間処理してプロテイナーゼKを不活化した。ウイルスDNAの相対的取込量は、HCMV gBプライマー及びプローブを用いたリアルタイムPCR法により測定した(Isomura, H., T. Tsurumi, and M. F. Stinski, (2004) J. Virol. 78:p12788-12799)。
【0039】
ウイルスのプラークサイズを推定するため、MOI=0.01でwt又は組換えウイルスからプラークを作製し、さらに寒天を感染後3日間オーバーレイした。プラークの最短及び最長の長さを倒立顕微鏡(model SZ、オリンパス社)で測定し、結果をプラーク10個あたりの平均値として表した。
【0040】
(2)酵素
制限エンドヌクレアーゼと子牛小腸由来アルカリホスファターゼ(CIP)は、New England Biolabs社より購入した。High Fidelity 及びExpanded High Fidelity Taq DNAポリメラーゼはそれぞれInvitrogen社とRoche社より購入した。RNasin及びRNaseフリーのDNaseはPromega社及びタカラ社よりそれぞれ購入した。これらの酵素は、メーカーの説明書に従って使用した。
【0041】
(3)ベクターの構築
以下、MIE遺伝子の転写開始部位を+1とし、Sp1/Sp3の認識配列であるposition -55付近のGCボックスをSp1(-55)、position-75付近のGCボックスをSp1(-75)、これらを変異させた配列をmutSp1(-55)及びmutSp1(-75)と記載する。
【0042】
組換えベクターはCAT遺伝子の上流にマルチクローニングサイトを有するプラスミドpCAT3-Basic(Promega社)を用いて構築した。まず、PCRにより(i) MIEプロモーター(48〜+53)、(ii) Sp1(-55)を含むMIEプロモーター(58〜+53)、(iii) Sp1(-55)及びSp1(-75)を含むMIEプロモーター(77〜+53)、(iv) 変異Sp1(-55)及びSp1(-75)を含むMIEプロモーターのみの配列を増幅した。鋳型としては、MIEエンハンサーとプロモーターの583から+78のHCMV Towne DNAを含むプラスミドpKS+MIE 583/+78を用い、プライマーは、それぞれ以下に示すフォワードプライマーと、リバースプライマーBg1IISp1Rを用いた。
【0043】
NheITATAF:5’-CTAGCTAGCGGCGTGTACGGTGGGAGGTCTATATAAGC-3’(配列番号1)
NheISpI(-55)F:5’-CTAGCTAGCATGGGCGGTAGGCGTGTACGGT-3’(配列番号2)
NheISpI(-75)F:5’-CTAGCTAGCCCCGCCCCGTTGACGCAAATG-3’(配列番号3)
NheImutSpI(-55)F:5’-CTAGCTAGCCCCGCCCCGTTGACGCAAATGgatccTAGGCGTGTACG-3’ (配列番号4)
Bg1IISpIR:5’-GGAAGATCTCGGTGTCTTCTATGGAGGTCAAAACAGCG-3’(配列番号5)
小文字は変異塩基を示す。
【0044】
増幅産物はシークエンシングにより確認し、Bg1II及びNheIで処理し、pCAT3-Basicベクターの各制限酵素部位に組込み、クローニングした。
【0045】
(4)CATアッセイ
HFF細胞のトランスフェクションは、35 mm直径のプレート上、各発現プラスミド2 mg、リポフェクタミン及びPLUS試薬(Invitrogen社)を用いて3回行い、72時間後に回収した。さらに細胞溶解液を調製し、既報に従いCATアッセイを行った(38)。クロロホルム-メタノール(95:5)溶媒を用いた薄層クロマトグラフィーにより、アセチル化及び非アセチル化14Cクロラムフェニコール(Amersham Pharmacia Biotech社)を分離した。画像読取装置(BAS2500、富士フィルム)を用いてシグナル強度を測定し、非アセチル化14Cクロラムフェニコールからアセチル化体への転換率を計算した。各レポータープラスミドの相対的CAT活性を、pCAT TATAに基づいて決定した。
【0046】
(5)電気泳動移動度シフト解析(EMSA)
以下の配列を有するプローブ(センス)及びコンペティターDNA(アンチセンス)はInvitrogen社より購入した。
Sp1(-55)及びSp1(-75):
Probe:5’-GTCGTAATAACCCCGCCCCGTTGACGCAAATGGGCGGTAGGCGTGTACGGTGGGA-3’(配列番号6)
Competitor:5’-CCTCCCACCGTACACGCCTACCGCCCATTTGCGTCAACGGGGCGGGGTTATTACGAC-3’(配列番号7)
Sp1(-55):
Probe:5’-TGACGCAAATGGGCGGTAGGCGTGT-3’(配列番号8)
Competitor:5’-CGTACACGCCTACCGCCCATTTGC-3’(配列番号9)
mutSp1(-55):
Probe:5’-TGACGCAAATtttCttTAGGCGTGT-3’(配列番号10)
Competitor:5’-CGTACACGCCTAaaGaaaATTTGC-3’(配列番号11)
Sp1(-75):
Probe:5’-GTCGTAATAACCCCGCCCCGTTGAC-3’(配列番号12)
Competitor:5’-TGCGTCAACGGGGCGGGGTTATTAC-3’(配列番号13)
mutSp1(-75):
Probe:5’-GTCGTAATAAttttGttttGTTGAC-3’(配列番号14)
Competitor:5’-TGCGTCAACaaaaCaaaaTTATTAC-3’(配列番号15)
小文字は変異塩基を示す。
【0047】
プローブ及びコンペティターDNAは等モル比になるように混合し、95℃で変性させ、室温(RT)まで徐々に冷却してアニーリングした。大腸菌DNAポリメラーゼIのKlenowフラグメントと32P-dGTP(Amersham社)により3’末端を標識し、32P標識プローブを作製した。取り込まれなかったデオキシヌクレオシド三リン酸はクロマスピン+TE 10カラム(Clontech社)で除去した。
【0048】
a)ゲルスーパーシフトアッセイ
特異抗体を用いたゲルスーパーシフトアッセイは以下の手順で行った。Hela細胞の核抽出物2 mgを、2 mgのポリ(dI-dC)を加えた緩衝液I(20 mM HEPES、pH7.9、6.25 mM MgCl2、0.5 mM EDTA、0.5 mMジチオトレイトール、0.01% Nonidet P-40、9% グリセロール)と合わせて15分間、室温でプレインキュベートした。次いで、10 mgの抗Sp1及び/又は抗Sp3のポリクローナル抗体、あるいは対照IgG(Zymed社)を反応液に添加し(計20 ml)、室温で30分インキュベートしてから、176 fmolの32P標識プローブ(50,000 cpm)を加えた。この反応液をさらに室温で15分インキュベートし、プローブ−タンパク質複合体を電気泳動により分離した。泳動は、0.5xTAE(20 mM Tris- 酢酸、pH7.2、1.0 mM EDTA)を泳動バッファーとし、5% 非変性ポリアクリルアミドゲルを用いて4℃で行った。ゲルを乾燥させ、Hyperfilm MP(Amersham社)に露光させた。
【0049】
b)競合アッセイ
競合アッセイでは、Hela細胞の核抽出物2 mgを、一定の過剰モル比の非放射線標識競合dsDNA及び2 mgポリ(dI-dC)を含む緩衝液Iに加え(計20 ml)、室温で15分間プレインキュベートした。次に、この反応混液に176 fmolの放射標識プローブを加え、さらに15分間室温でインキュベートした。上述のように電気泳動を行った。
【0050】
c)ウェスタンブロット解析
感染後、一定の時間に細胞を回収し、PBSで洗浄後、溶解緩衝液(0.02%SDS、0.5% Triton X-100、300 mM NaCl、20 mM Tris-HCl(pH7.6)、1 mM EDTA、1 mM DTT、10 mg/mlロイペプチン、5 mg/ml A)により氷上で20分間処理した。試料を15,000 rpm、4℃で10分間遠心し、BioRadタンパク質アッセイキットを用いてタンパク質濃度を測定した。タンパク質 20 mgを、SDS 10%ポリアクリルアミド(アクリルアミド29.2、ビスアクリルアミド0.8)ゲル電気泳動(SDS-PAGE)で分離した。これをPVDF膜に転写し、ブロッティング用緩衝液(1xPBS+0.1% Tween 20)で洗浄後、10% 脱脂粉乳を含むブロッティング用緩衝液で60分間ブロッキングした。洗浄したPVDF膜に一次抗体を加え、5%脱脂粉乳を含むブロッティング用緩衝液中室温で60分間インキュベートした。洗浄後、さらにホースラディッシュペルオキシダーゼ結合二次抗体を加え室温で60分間インキュベートした。標的タンパク質の検出は、改良化学発光検出システム(Amersham社)を用いて行った。冷却CCDカメラを搭載したLumiVision PRO(Aisin/Taitec社)で画像を検出し、Apple G4コンピューター上でAdobe Photoshop 5.0により構成した。
【0051】
(6)抗体
抗Sp1及び抗Sp3のポリクローナル抗体であるsc59及びsc644は、Santa Cruz Biotechnology社より入手した。pIE72及びpIE86に対するモノクローナル抗体NEA9221は、Perkin Elmer社より入手した。細胞性GAPDHにコードされるp36タンパク質に対する、ポリクローナル抗体MAB374は、Chemicon社より入手した。
【0052】
(7)HCMV BAC(bacterial artificial chromosome) DNAの変異誘発
HCMVの変異誘導は、λファージの組換えタンパク質exo、beta及びgamを発現している大腸菌の相同組換え系(米国立衛生研究所D. Court氏より供与)を用いて実施した(Ellis, H. M., et al., 2001. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 98:6742-6746. 42)。HCMV TowneのBAC-DNAはF. Liu氏より提供を受けた(Dunn, W., C. F. Liu et al., 2003 Sci. USA 100:14223-14228)。このBAC-DNAには、34bp最小FRT(FLP recognition target)部位(5’-GAAGTTCCTATTCTCTAGAAAGTATAGGAACTTC-3’:配列番号16)に挟まれたカナマイシン耐性遺伝子及び50から70 bpのhomologous viral DNA配列が含まれている。
【0053】
Sp1(-55)とSp1(-75)の両方のGCボックス、もしくは片方を欠損させるために、BACdelSp1(-55)R及びBACdelSp1(-55)F、BACdelSp1(-75)R及びBACdelSp1(-75)F、BACdelSp1(-55)R及びBACdelSp1(-75)Fのプライマーペアをそれぞれ使用した。FRT配列(wt+FRT1及びwt+FRT2)を有する対照組換えウイルスは、BAC Control(-75)F及びBACdelSp1(-75)R、もしくはBACdelSp1(-75)F及びBAC Control(-75)Rのプライマーペアを用いて構築した。以下に、プライマーの配列を示す。
【0054】
BACdelSp1(-55)F:
5’-GAGTTTGTTTTGGCACCAAAATCAACGGGACTTTCCAAAATGTCGTAATAACCCCGCCCCGTTGACGCAAGAAGTTCCTATTCTCTAGAAAGTATAGGAACTTCCGATTTATTCAAC -3’ (配列番号17)
BACdelSp1(-55)R:
5’-ACAGCGTGGATGGCGTCTCCAGGCGATCTGACGGTTCACTAAACGAGCTCTGCTTATATAGACCTCCCACGAAGTTCCTATACTTTCTAGAGAATAGGAACTTCGCCAGTGTTACAACCA-3’(配列番号18)
BACdelSp1(-75)F:
5’-ACCCCATTGACGTCAATGGGAGTTTGTTTTGGCACCAAAATCAACGGGACTTTCCAAAATGTCGTAATAAGAAGTTCCTATTCTCTAGAAAGTATAGGAACTTCCGATTTATTCAAC-3’ (配列番号19)
BACdelSp1(-75)R:
5’-GACGGTTCACTAAACGAGCTCTGCTTATATAGACCTCCCACCGTACACGCCTACCGCCCATTTGCGTCAAGAAGTTCCTATACTTTCTAGAGAATAGGAACTTCGCCAGTGTTACAACCA-3’ (配列番号20)
BACcontrol(-75)F:
5’-TTTGTTTTGGCACCAAAATCAACGGGACTTTCCAAAATGTCGTAATAACCCCGCCCCGGAAGTTCCTATTCTCTAGAAAGTATAGGAACTTCAACTCAGCAAAAGTTCGATTTATTCAAC-3’ (配列番号21)
BACcontrol(-75)R:
5’-CTGCTTATATAGACCTCCCACCGTACACGCCTACCGCCCATTTGCGTCAACGGGGCGGGGGAAGTTCCTATACTTTCTAGAGAATAGGAACTTCTAATGCTCTGCCAGTGTTACAACCA-3’ (配列番号22)
【0055】
PCR増幅は、94℃ 2分間 変性を1サイクル、94℃ 15秒、55℃ 30秒、72℃ 5分間を40サイクル、72℃ 7分間又は94℃ 2分間を1サイクル、94℃ 2分間、55℃ 2分間、72℃ 2分間を30サイクル、72℃ 7分間を1サイクルで実施した。
【0056】
PCR産物は37℃ 1.5時間 Dpn I処理して、残った鋳型DNAを除去した後、フェノールクロロホルムで抽出し、95%エタノールで沈殿させた。約100 ngの各DNAフラグメントをエレクトロポレーション法により、HCMV Towne-BAC DNAを含むコンピテントE coli DY380に導入した。相同組換えのためのバクテリオファージコード組換えタンパク質を、42℃で15分処理して誘導した。
【0057】
(8)カナマイシン耐性遺伝子の除去
カナマイシン耐性遺伝子を除去するため、組換えHCMV BAC DNAを大腸菌DH10Bに形質転換した。pCP20(Max von Pettenkofer Institute、G. Hahn氏より供与を受けた、21)を、組換えHCMV BAC-DNAを含むDH10Bに形質転換させ、カナマイシンを有しないHCMV BAC DNAを、アンピシリンとクロラムフェニコールを含むLBプレートで選択した。
【0058】
(9)組換えウイルスの同定
1 mgのpSVpp71の存在下、各組換えBAC DNA 5 mg又は10 mgをリン酸カルシウム沈殿法によりHFF細胞にトランスフェクトした。5〜20日後、ウイルスプラークが出現した。細胞変性効果(CPE)100%となってから5〜7日後、遊離ウイルスを含む細胞外液を、80℃の50%ウシ胎児血清中で保存した。保存ウイルスは未希釈、もしくは1:10に希釈して、HFF細胞の感染に使用した。
【0059】
(10)PCR解析
PCR解析は、以下のプライマーを用いて、94℃ 2分間 変性を1サイクル、94℃ 15秒、55℃ 30秒、72℃ 1分間、30秒を30サイクル、72℃ 7分間を1サイクルにより実施した。
HCMVF:5’-CCCGGTGTCTTCTATGGAGGT-3’(配列番号23)
HCMVUL127R:5’-GGTTATATAGCATAAATCAATATTGGCTATTGG-3’(配列番号24)
PCR産物はTAクローニングベクター中にクローニングした後、シークエンシングにより確認した。
【0060】
(11)サザンブロット解析
組換えBAC DNAを、NucleoBondキット(Macherey-Nagel Duren社)で精製し、制限エンドヌクレアーゼBlpI及びXhoIで分解し、1.0% アガロースゲル電気泳動にかけ、定法に従いサザンブロット解析を行った。pKS 583/+78のDNAフラグメント(EagI-SpeI)(図4参照)をメガプライムDNA標識システム(Amersham Pharmacia Biotech社)及び32P-dCTP(Amersham Pharmacia Biotech社)を用いて標識した。
【0061】
(12)ノーザンブロット解析
偽感染又はHCMV感染のHFF細胞から、定法に従い細胞質RNAを精製し、その20 mgを2.2 Mホルムアルデヒド含有1%アガロースゲルを用いた電気泳動にかけ、最高強度のHybond N+(Amersham社)に転写し、ノーザンブロット解析を行った。
【0062】
プライマー(ex4F:5’-AAGCGGGAGATGTGGATGGC-3’(配列番号25)及びex4R:5’-GGGATAGTCGCGGGTACAGG-3’(配列番号26))を用いたPCRによりIE1 DNAを増幅し、TAクローニングベクター(Invitrogen社)にクローニングした後、32P-dCTPで標識してIE1 DNAプローブを作製した。
【0063】
(13)リアルタイムPCR及びRT-PCR解析
低濃度のMIE RNAを検出するため、メーカーの説明書どおりにTRI試薬(Invitrogen社)を用い、全細胞RNAを精製した。逆転写酵素(RT) Transciptor(Roche Applied Science社)をメーカーの説明書どおりに用いて、2 mgのRNAと250 ngのオリゴdTプライマー(Roche社)からfirst strand cDNAを合成し、最終容積20 μlに調整した。試料を70℃で15分処理して不活化した。ウイルスDNA検出のため、60 mmプレート中の細胞を感染4時間後、上述のようにして50 mg/mlプロテイナーゼKを含むPCR溶解緩衝液中に3回採取した。増幅は、定量PCR SUPERMIX-UDG Cocktail 「PLATINUM」(Invitrogen社)を含む、最終容積25 μl中で行った。各反応混液は2 mgのfirst-strand cDNA又はDNA、5 mM MgCl2、500 nMのMIEプライマー又はgBプライマー、250 nMのMIEプローブ又はgBプローブを含む。MIEプライマー及びMIEレポータープローブは定法に従い分解した。HCMV gBプライマー及びgBレポータープローブはPE Applied Biosystems社に合成を委託した。
【0064】
HCMV gBプライマー:
Forward:5’-GGCGAGGACAACGAAATCC-3’(配列番号27)
Reverse:5’-TGAGGCTGGGAAGCTGACAT-3’ (配列番号28)
HCMV gBレポータープローブ:5’-FAM-TTGGGCAACCACCGCACTGAGG-TAMRA-3’(配列番号29)
MIEプライマー:
Forward: 5’-GCATTGGAACGCGGATTC-3’(配列番号30)
Reverse: 5’-CAGGATTATCAGGGTCCATC-3’(配列番号31)
MIEレポータープローブ:5’-AGTGACTCACCGTCCTTGACACGATGG-3’(配列番号32)
PCR条件は、50℃ 2分間、95℃ 2分間処理後、95℃ 15秒、60℃ 1分間を40サイクル行った。相対的MIE RNA及びgB DNA量の定量は、標準曲線分析により行った。
【0065】
(14)ウイルスDNA複製解析
等量のウイルスDNAを感染させてから一定の時間後に細胞を回収した。35 mmプレート中の細胞を、50 mg/mlプロテイナーゼKを含む溶解緩衝液(50 mM Tris-HCl、pH8.0、10 mM EDTA、1%SDS及び20 mg/ml RNase A)中に懸濁した(3回実施)。55℃ 10分間、さらに95℃ 10分間インキュベートしたのち、DNAをフェノールクロロホルムで抽出し、エタノールで沈殿させた。細胞溶解後、タンパク質分解とフェノールクロロホルム抽出の前に、Lambda DNA(2 mg)を各試料に添加した。ウイルスゲノムをHind III処理し、0.6%アガロースゲルで分離し、サザンブロット解析を行った。既報に従い、プラスミドp1.6中の1.6-kbpのBamHI-Hind IIIフラグメント(Tプローブ)を用いて、terminal repeat long(TRL)及びinverted repeat long(IRL)を含むHCMVゲノム末端を調べた(Meier, J. L., and J. A. Pruessner, (2000) J. Virol. 74:p1602-1613)。
【0066】
2.結果
(1)Sp1及びSp3転写因子の近位エンハンサーのGCボックスへの結合
以前発明者は、ウイルス複製のためにはHCMVプロモーター上流に最小配列が必要であることを報告した(Isomura, H., T. Tsurumi, and M. F. Stinski, (2004) J. Virol. 78:p12788-12799)。すなわち、TATAボックスを持ちエンハンサーのないHCMV(39+F)は、細胞培養において複製しないが、プロモーターと転写開始位置(+1)から57〜52に位置するGCボックスを有する組換えウイルス(67+F)は複製する。78から70の上流領域にはGCボックスが1つ含まれ、116〜67の領域が存在することで、MIEプロモーターからのMIE転写量が増加した。
【0067】
Sp1(-55)及びSp1(-75)が、Sp1やSp3に結合するか否かを決定するため、EMSAを行った。結果を図1Aに示す。図1A(レーン1)はSp1(-75)プローブを使ったEMSAの結果を示し、複合体X及びYが検出された。どちらの複合体も、非放射性のコンペティターSp1(-75)を過量に使った実験から、これらプローブに特異的であることが明らかにされた(データ表示せず)。Sp1に対して特異的なウサギポリクローナルIgGを用いたとき、複合体Xのほとんどは上方にシフトしたが、複合体Yについてはほとんどまったく影響しなかった。対照IgGも影響しなかった(図1Aレーン3、4)。Sp3に対する抗体は、複合体Yのすべてを上方にシフトさせた(図1Aレーン5〜7)。Sp1抗体とSp3抗体を混合して用いたとき、複合体XとYとの両方が上方にシフトした(図1Aレーン8)。Sp1(-55)プローブを用いた場合も、同様のEMSA上方シフトという結果が得られた(データ表示せず)。以上のデータから、Sp1とSp3転写因子のどちらも、HCMV MIE近位エンハンサーの約-75と-55に存在するGCボックスに結合できることが確認された。
【0068】
次に、HCMV感染がSp1及びSp3の発現量に対してどのような影響を及ぼすかも検討した。HFF細胞をMOI=3で野生型ウイルスに感染させ、感染後3、6、12、24及び48時間に回収した。等量のタンパク質をSDS-PAGEとウェスタンブロットにより分析した。結果を図1Bに示す。代替翻訳開始位置(-55)からのSp3アイソフォームの発現量は、感染を通して一定であった(図1B)。これとは対照的に、Sp1量は感染後経時的に増加した(図1B)。以上の結果は、Sp3は感染直後に近位エンハンサーに結合し、Sp1との結合量は感染後経時的に増加するという可能性を示唆するものであった。
【0069】
(2)MIE転写に対するSp1(-55)及びSp1(-75)の影響
MIEプロモーターからの転写に対するSp1(-55)及びSp1(-75)の影響を、図2AのようにCAT遺伝子コンストラクトを用いた一過性トランスフェクションにより調べた。CAT活性は、MIEプロモーターTATAボックスのみを有するpCAT TATAに対する比率として測定した。pCAT TATA+Sp1(-55)のCAT活性は2.8倍に増加した(図2B、C)。また、-55に変異Sp1部位を持つpCAT TATA+mutSp1(-55)+Sp1(-75)は、13.9倍のCAT活性を示した(図2B、C)。以上より、HCMVのMIE近位エンハンサーに位置する2つのSp1/Sp3結合部位は、いずれも一過性トランスフェクションによりMIE転写量を増加させることが確認された。
【0070】
(3)Sp1/Sp3結合部位での結合親和性
各Sp1/Sp3結合部位に対するSp1、Sp3の相対的な結合親和性を決定するため、様々なコンペティターDNAを用いたEMSAを行った。図3AはSp1/Sp3結合部位及びその変異部位を有する、32P標識プローブ及びコンペティターDNAのDNA配列を示す。-55、-75の両方で結合部位を持つプローブを用いると複合体X及びYが形成された。-55、-75部位の両方を含む非放射性コンペティターDNAを過量に加えることで、いずれの複合体も減少した(図3Bレーン2、3)。いずれかのSp1/Sp3結合部位に変異を持つコンペティターDNAは、200倍モル量多く加えた場合も、DNA複合体X及びYに対して競合することはできなかった(図3Bレーン6、9)。
【0071】
両方の結合部位を持つ配列中で、各Sp1/Sp3結合部位に対する転写因子の親和性を推定するため、核抽出物及びプローブを、各Sp1/Sp3結合部位を含む一定過剰量の非放射性コンペティターDNAとともにインキュベートし、-55及び-75コンペティターDNAとの間で、検出された複合体の低下率を比較した。図3B(レーン4、5をレーン7、8と比較)で示されているように、Sp1(-75)とのin vitro DNA結合の競合は、Sp1(-55)より強いものであった。
【0072】
-55及び-75部位へのSp1/Sp3の結合親和性が異なることを確認するため、定量的競合アッセイを行った。図3C及び3Dのように、33倍のモル量としたSp1(-75)非放射性コンペティターDNAを用いたとき、複合体Xは70%低下した。一方、Sp1(-55)については、132倍のモル量の非放射性コンペティターDNAを必要とした。in vitroでの核因子のSp1(-75)への結合は、Sp1(-55)への結合の約4倍の強さであった。
【0073】
(4)GCボックスを変異させた組換えHCMVの単離
HCMVエンハンサーは複数の転写因子結合部位を有するが、HFF細胞においてどの部位が最も効果的に機能しているかは不明である。MIEエンハンサー中の2つのSp1/Sp3結合部位がどのような役割を果たしているかを明らかにするため、近位Sp1/Sp3結合部位のいずれか、又は両方を変異させた、組換えBAC DNAを構築した。元のBAC DNAから組換えBAC DNAを選択するためのマーカーとして薬剤耐性遺伝子の導入が必要なため、まずカナマイシン耐性遺伝子(KanR)を含む組換えBAC DNAを設計した。
【0074】
FLPリコンビナーゼを利用してKanRを除去した。組換えBAC DNA中に残るFRT部位の影響を否定するため、2つのSp1/Sp3結合部位の間で、かつ-75のすぐ上流にFRT部位を持つ、組換えウイルス2種を対照として構築した。すべての組換えBAC DNAを制限エンドヌクレアーゼBlpI及びXhoIで分解した。ウイルスDNA断片を電気泳動により分画し、サザンブロットハイブリダイゼーションを行った。KanR及びUL127領域はそれぞれXhoI部位を持っているため、KanRを有する組換えBAC DNAは、サザンブロット上で2つのDNA断片として検出された(図4B)。KanRを除いた後、元のBAC DNAからBlpI及びXhoIにより分解したDNA断片の大きさを区別することは困難であった。そこで、UL127RとHCMVFのプライマーを用いて、PCR産物の配列を決定した。図4Cのように、組換えウイルスには、図4Aから予測されたサイズのDNA断片が含まれていた。このDNA断片を増幅し、配列を決定することで、変異、組換え及び除去が正しく行われていたことが確認された。
【0075】
(5)感染細胞のMIE転写に対する、Sp1/Sp3結合部位の変異の影響
HCMV感染において、2つのSp1/Sp3結合部位がMIEプロモーターに対してどのような役割を持つのかを明らかにするため、ノーザンブロット解析を行い、IE1遺伝子の転写量を比較した。様々な組換えウイルスに関するウイルスDNA取込量を、感染4時間後の定量的リアルタイムPCRアッセイにより決定した。野生型(wt)のMOI約0.5に相当するウイルスDNA取込量で感染させ、RNAを感染24時間後に回収し、アガロースゲル電気泳動にかけた。28S及び18SのリボゾームRNAを臭化エチジウム染色し、各レーンに等量のRNAがロードされたことを確認した(図5A)。野生型と、Sp1(-55)又はSp1(-75)のいずれかを変異させた組換えウイルスでは、定常状態のIE1 RNA転写量に顕著な差は検出されなかった。一方、Sp1/Sp3の両方の結合部位を変異させた組換えウイルスでは、IE1 RNA量が大きく減少していた(図5A、レーン3)。
【0076】
野生型ウイルス、もしくは、Sp1/Sp3の両方を変異させた組換えウイルスを用いてMOI=3で感染させ、種々の時点でリアルタイムRT-PCRアッセイを行い、定常状態のIE1及びIE2 RNA量を定量した。野生型のIE RNA量は感染12時間後に最大となり、その後低下した。組換えウイルスRdlSp1(-55,-75)+Fの場合、感染3時間後から24時間後にかけてウイルスIE RNA量が10分の1以下に低下した。このようなデータは、高いMOIでは、-75と-55のいずれのGCボックスもMIE転写を制御し、GCボックス部位が1つもなければ、MIE転写は非常に効率が低いことを示している。
【0077】
(6)ウイルスDNA複製に対するSp1/Sp3結合部位変異の影響
ウイルスDNA複製に対する2つのSp1/Sp3結合部位の影響を検討するため、HFF細胞を野生型、もしくは組換えウイルスで感染させ、その際のMOIを3又は0.01とした。また、gBプライマーを使ったリアルタイムPCR法により、同様のウイルス取込量であることを確認した。同等数の感染細胞からDNAを精製し、HCMVゲノム末端をプローブとしたサザンブロットハイブリダイゼーションにより、ウイルスDNAを定量した。λDNAをロードの対照DNAとした。高いMOI(MOI=3)の場合、いずれかのSp1/Sp3部位を欠損させた組換えウイルスのDNA複製は、感染3日後の野生型のそれとほぼ同等であった。これに対し、両方のSp1/Sp3部位を欠損させた組換えウイルスRdl(-55,-75)+Fの複製は3分の1となった(図6A)。低MOIでは、Sp(-55)又はSp(-75)を欠損させた組換えウイルスRdl-55+FとRdl-75+FでのDNA複製は、野生型と顕著な違いはなかった。これとは対照的に、Rdl(-55,-75)+FのDNA複製は、感染8日後には約46分の1、13日後には約12分の1となった。以上のデータは、いずれか一方のSp1/Sp3部位が存在することが、HFF細胞中のウイルスDNA複製に必須であることを示している。
【0078】
(7)ウイルスプラークサイズに対するSp1/Sp3結合部位変異の影響
感染性ウイルスの複製及びプラークサイズに対するSp1/Sp3結合部位の影響を検討するため、野生型及び組換えウイルスのプラークサイズを測定した。プラークはすべて、MOI=0.01で、野生型又は組換えウイルスで接種感染させ、感染後3日間寒天をオーバーレイして作製した。プラークサイズは感染後7日、10日及び14日目に測定した。Sp1(-55)又はSp1(-75)を変異させてもプラークサイズは変化しなかったが、両方のSp1/Sp3結合部位を変異させると、感染後10日及び14日目のプラークサイズは約3分の1となった(図7)。
【0079】
以上より、HCMVのSp1/Sp3結合部位に変異を加えることにより、MIE遺伝子の転写及びウイルスの複製を著しく抑制できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明により、ヒトサイトメガロウイルスのMIE遺伝子エンハンサー領域に存在する全てのSp1/Sp3結合部位に変異を加えるによりウイルスの複製能力を失わせることができることが確認された。自己複製能力を欠いた組換えウイルスは、HCMV感染症の治療用ワクチンの製造に利用できる。さらにSp1/Sp3結合部位への転写因子の作用を標的として、新たは抗HCMV医薬の探索が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、転写因子Sp1及びSp3のGCボックスへの結合を確認した結果を示す。(A) プローブとして32P標識Sp1(-75)を用いたEMSA(レーン1:プローブ+核抽出物、レーン2:プローブ+核抽出物+10 mgウサギ対照IgG、レーン3,4:プローブ+核抽出物+2又は4 mgの抗Sp1抗体、レーン5,6,7:プローブ+核抽出物+2又は4又は10 mgの抗Sp3抗体、レーン8:プローブ+核抽出物+2 mgの抗Sp1+抗Sp3抗体)。プローブとして32P標識Sp1(-55)を用いた場合も、同様の結果が得られた。(B) HCMV感染後のSp1及びSp3転写因子のウェスタンブロット解析(Sp1:リン酸化体、Sp3li-1及び-2:Sp3の長いアイソフォーム、Sp3si-3及び4:Sp3の短いアイソフォーム、レーン1:偽感染、レーン2:感染3時間後、レーン3:感染6時間後、レーン4:感染12時間後、レーン5:感染24時間後、レーン6:感染48時間後)
【図2】図2は、Sp1/Sp3結合部位とMIEプロモーター活性との相関を示す。(A) CAT遺伝子コンストラクトの構造(B) CATアッセイ(数値は非アセチル化クロラムフェニコールからアセチル化体への変換率を表す)(C) pCAT TATAに比較したCAT活性(データは各3回の平均値を表す。□pCAT TATA、■PCAT TATA+Sp1(-55)、□pCAT TATA+Sp1(-55)+Sp1(-75)、□pCAT TATA+mutSp1(-55)+Sp1(-75))
【図3】図3は、Sp1(-75)とSp1(-55)に対する転写因子Sp1/Sp3の結合活性を示す。(A) Sp1(-55)及びSp1(-75)の両方を持つ32P標識プローブのDNA配列と、Sp1(-55,-75)、Sp1(-55)、mutSp1(-55)、Sp1(-75)又はmutSp1(-75)を持つコンペティターdsDNAのDNA配列。(B) 競合EMSAのオートラジオグラム(レーン1:プローブ+核抽出物、レーン2及び3:プローブ+核抽出物+50又は200倍モル量のSp1(-55,-75)、レーン4,5:プローブ+核抽出物+50又は200倍モル量の非放射性Sp1(-55)DNA、レーン6:プローブ+核抽出物+200倍モル量の非放射性変異Sp1(-55)DNA、レーン7,8:プローブ+核抽出物+50又は200倍モル量の非放射性Sp1(-75)DNA、レーン9:プローブ+核抽出物+200倍モル量の非放射性変異Sp1(-75)DNA)(C) 競合EMSAのオートラジオグラム(レーン1:コンペティターDNAなし、レーン2,8,14:コンペティターDNAが33倍のモル量、レーン3,9,15:コンペティターDNAが66倍のモル量、レーン4,10,16:コンペティターDNAが99倍のモル量、レーン5,11,17:コンペティターDNAが132倍のモル量、レーン6,12,18:コンペティターDNAが165倍のモル量、レーン7,13,19:コンペティターDNAが198倍のモル量)(D) Sp1(-55)及び/又はSp1(-75)への結合親和性(コンペティターDNAがない場合の結合に対する比率)。
【図4】図4は、組換えHCMV BAC-DNAの構造解析結果を示す。(A) Original BAC-DNAと組換えBAC-DNAの略図(B)サザンブロット解析(レーン1:wt、レーン2:dl-55+F+K、レーン3:dl-55+F、レーン4:dl-75+F+K、レーン5:dl-75+F、レーン6:dl(-55,-75)+F+K、レーン7:dl(-55,-75)+F、レーン8:wt+F+K 1、レーン9:wt+F+K 2、レーン10:wt+F 1、レーン11:wt+F 2)(C) Original BAC DNA及び組換えBAC DNAのPCR解析(レーン1:wt、レーン2:dl-55+F+K、レーン3:dl-55+F、レーン4:dl-75+F+K、レーン5:dl-75+F、レーン6:dl(-55,-75)+F+K、レーン7:dl(-55,-75)+F、レーン8:wt+F+K 1、レーン9:wt+F 1、レーン10:wt+F+K 2、レーン11:wt+F 2)
【図5】図5は、野生型及び組換えウイルスを用いたウイルスMIE遺伝子の転写に関する。(A)ノーザンブロット解析(レーン1:wt、レーン2:dl-55+F、レーン3:dl(-55,-75)+F、レーン4:dl-75+F)(B) リアルタイムPCR(数値は感染24時間後の野生型での転写量に対する比、データは3回の独立した実験の平均値)
【図6】2つのSp1/Sp3結合部位の欠損のウイルスDNA複製に対する影響を示す。(A) 野生型、又はdl-55+F、dl-75+Fもしくはdl(-55,-75)+Fの組換えウイルスを感染させたHFF細胞のDNAのサザンブロット解析(矢印はウイルスDNAの融合端17.2と13.0 kbp、自由端9.7 kbp及び対照のインターナルラムダDNAを示している。レーン1:wt、レーン2:dl-55+F、レーン3:dl(-55,-75)+F、レーン4:dl-75+F)(B) HFF細胞を野生型、又はwt+F 1、wt+F 2、dl-55+F、dl-75+Fもしくはdl(-55,-75)+Fの組換えウイルスを感染させたHFF細胞から精製したDNAのサザンブロット解析(レーン1,7,13:wt、レーン2,8,14:dl-55+F、レーン3,9,15:dl(-55,-75)+F、レーン4,10,16:dl-75+F、レーン5,11,17:wt+F 1、レーン6,12,18:wt+F 2。レーン1から6は感染5日後、レーン7から12は感染8日後、レーン13から18は感染13日後のもの)
【図7】図7は、Sp1/Sp3結合部位をホモ欠損させた組換えウイルスを感染させた後のプラーク形成を示す。各プラークサイズは、感染後一定の時点における、最小の長さと最長の長さの平均値として求めた。結果はプラーク10個の平均値。
【配列表フリーテキスト】
【0082】
配列番号1−人工配列の説明:プライマー(NheITATAF)
配列番号2−人工配列の説明:プライマー(NheISpI(-55)F)
配列番号3−人工配列の説明:プライマー(NheISpI(-75)F)
配列番号4−人工配列の説明:プライマー(NheImutSpI(-55)F)
配列番号5−人工配列の説明:プライマー(Bg1IISpIR)
配列番号6−人工配列の説明:Sp1(-55)及びSp1(-75)用プローブ
配列番号7−人工配列の説明:Sp1(-55)及びSp1(-75)用コンペティターDNA
配列番号8−人工配列の説明:Sp1(-55)用プローブ
配列番号9−人工配列の説明:Sp1(-55)用コンペティターDNA
配列番号10−人工配列の説明:mutSp1(-55)用プローブ
配列番号11−人工配列の説明:DNA for mutSp1(-55)用コンペティターDNA
配列番号12−人工配列の説明:Sp1(-75)用プローブ
配列番号13−人工配列の説明:Sp1(-75)用コンペティターDNA
配列番号14−人工配列の説明:probe for mutSp1(-75)
配列番号15−人工配列の説明:competitor DNA for mutSp1(-75)
配列番号16−人工配列の説明:FLP認識配列
配列番号17−人工配列の説明:プライマー(BACdelSp1(-55)F)
配列番号18−人工配列の説明:プライマー(BACdelSp1(-55)R)
配列番号19−人工配列の説明:プライマー(BACdelSp1(-75)F)
配列番号20−人工配列の説明:プライマー(BACdelSp1(-75)R)
配列番号21−人工配列の説明:プライマー(BACcontrol(-75)F)
配列番号22−人工配列の説明:プライマー(BACcontrol(-75)R)
配列番号23−人工配列の説明:プライマー(HCMVF)
配列番号24−人工配列の説明:プライマー(HCMVUL127R)
配列番号25−人工配列の説明:プライマー(ex4F)
配列番号26−人工配列の説明:プライマー(ex4R)
配列番号27−人工配列の説明:HCMV gBプライマー (Forward)
配列番号28−人工配列の説明:HCMV gBプライマー (Reverse)
配列番号29−人工配列の説明:HCMV gBレポータープローブ
配列番号30−人工配列の説明:MIEプライマー(Forward)
配列番号31−人工配列の説明:MIEプライマー(Reverse)
配列番号32−人工配列の説明:MIEレポータープローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MIE遺伝子エンハンサー領域に存在する全てのGCボックスを部位特異的に変異させたことを特徴とする、組換えヒトサイトメガロウイルス:
但し、MIE遺伝子の転写開始位置を+1としたとき、-636から-67までの全領域を欠失したウイルスを除く。
【請求項2】
前記変異がGCボックスへのSp1及びSp3転写因子の結合を阻害する変異である、請求項1に記載の組換えヒトサイトメガロウイルス。
【請求項3】
前記変異が、GCボックス内の配列の一部又は全ての配列の欠失又は置換、もしくは他の配列の付加によるものである、請求項1又は2に記載の組換えヒトサイトメガロウイルス。
【請求項4】
自己複製能力が野生型に比較して1/100以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組換えヒトサイトメガロウイルス。
【請求項5】
MIE遺伝子エンハンサー領域に存在する全てのGCボックスを部位特異的に変異させたことを特徴とする、組換えヒトサイトメガロウイルスゲノムDNA:
但し、MIE遺伝子の転写開始位置を+1としたとき、-636から-67までの全領域を欠失したDNAを除く。
【請求項6】
請求項5記載の組換えヒトサイトメガロウイルスゲノムDNAを含むベクター。
【請求項7】
請求項6記載のベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項8】
宿主細胞が、ヒト線維芽細胞、グリオーマ細胞又はヒト胎児繊維芽細胞である、請求項7に記載の宿主細胞。
【請求項9】
MIE遺伝子エンハンサー領域に存在する全てのGCボックスを部位特異的に変異させたヒトサイトメガロウイルスゲノムDNAを含むベクターで宿主細胞を形質転換し、各細胞の培養上清からウイルス粒子を回収することを特徴とする、組換えヒトサイトメガロウイルスの製造方法:
但し、MIE遺伝子の転写開始位置を+1としたとき、-636から-67までの全領域を欠失したウイルスの製造方法は除く。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組換えヒトサイトメガロウイルス又はその一部を含むHCMV感染症用ワクチン。
【請求項11】
ヒトサイトメガロウイルスゲノムDNA中のMIE遺伝子エンハンサー領域に存在する全てのGCボックスへのSp1又はSp3転写因子の結合を阻害することにより、ヒトサイトメガロウイルスの複製効率を減少させる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−246814(P2006−246814A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69561(P2005−69561)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(304031427)愛知県 (36)
【Fターム(参考)】