説明

ヒト化抗ヒトNKG2Aモノクローナル抗体

本発明は、ある種の抗NKG2A抗体、特にマウス抗NKG2A抗体Z199のヒト化型のような、CD94/NKG2Aレセプターの非競合的アンタゴニストである薬剤、並びにかかる薬剤及び抗体を製造し使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある種の抗NKG2A抗体、特にマウス抗NKG2A抗体Z199のヒト化型を含むCD94/NKG2Aレセプターの非競合的アンタゴニスト、並びにかかる抗体を製造し使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CD94/NKG2Aは、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)及びT細胞(α/β及びγ/δ)のサブセットに見出される阻害性レセプターである。CD94/NKG2Aは、CD94/NKG2A-リガンドHLA-Eを発現する細胞に対するサイトカイン放出及び上述のリンパ球の細胞傷害性応答を制限する(例えば国際公報99/28748号を参照)。HLA-Eはまたある種の腫瘍細胞(Derre等, J Immunol 2006;177:3100-7)及び活性化された内皮細胞(Coupel等, Blood 2007;109:2806-14)によって可溶型で分泌されることが見出されている。CD94/NKG2Aシグナル伝達を阻害する抗体は、例えばHLA−E発現腫瘍細胞に対するCD94/NKG2A陽性腫瘍特異的T細胞の応答、又はウイルス感染細胞に対するNK応答のように、HLA−E陽性標的細胞に対するサイトカイン放出及びリンパ球の細胞溶解活性を増加させうる。従って、CD94/NKG2Aを阻害するがCD94/NKG2A発現細胞の死滅を誘発しない治療用抗体(つまり、非枯渇抗体)は、癌患者における腫瘍増殖の制御を誘起しうる。
【0003】
また、ある種のリンパ腫、例えばNK-リンパ腫は、CD94/NKG2A発現に特徴がある。このような患者では、CD94/NKG2A発現細胞を標的としてこれを死滅させる治療用抗体(つまり枯渇抗体)は抗体依存性細胞傷害(ADCC)又は補体依存性細胞傷害(CDC)を経由して腫瘍細胞を根絶しうる。また、抗NKG2A抗体は、自己免疫性疾患又は炎症性疾患の治療での使用が示唆されている(例えば、米国特許出願公開第20030095965号、国際公開第2006070286号を参照)。
【0004】
NKG2Aに対する様々な抗体が従来から記述されている。例えば、Sivori等 (Eur J Immunol 1996;26:2487-92)はマウス抗NKG2A抗体Z270に言及し、Carretero等 (Eur J Immunol 1997;27:563-7)ではマウス抗NKG2A抗体Z199(現在Beckman Coulter, Inc., Product No. IM2750, USAから市販)が記載され、Vance等 (J Exp Med 1999;190: 1801-12)はラット抗マウスNKG2抗体20D5(現在BD Biosciences Pharmingen, カタログ番号550518, USAから市販)に言及し、米国特許出願公開第20030095965号は、主張するところによればNKG2A、NKG2C及びNKG2Eに結合するマウス抗体3S9を記載している。
【0005】
現在利用可能な抗CD94/NKG2A抗体は非ヒト起源であり、このため、その免疫原性により殆どのヒトの治療用途には適さないものとなっている。従って、ヒト患者の治療に適した抗CD94/NKG2A抗体が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、NKG2A結合薬剤、例えば抗NKG2A抗体、並びにかかる薬剤を含有する組成物、及びかかる薬剤を製造し使用する方法を提供する。該薬剤は典型的にはヒトCD94/NKG2Aレセプターの非競合的アンタゴニストであり、そのリガンドのHLA−Eの結合を阻止することなくレセプターの阻害活性を低減する。一実施態様では、薬剤は、NKG2Cに対してよりもNKG2Aに有意に高い親和性で結合し、また残基P94−N107及び/又はM189−E197を含むNKG2Aのセグメント、又は双方のセグメントに結合する抗体である。更なる又は代替の実施態様では、該薬剤は、CD94/NKG2Aへの結合においてマウス抗NKG2A抗体Z199と競合する。該薬剤は例えばヒト又はヒト化抗hNKG2A抗体であり得る。
【0007】
一実施態様では、ヒト化抗体はZ199のヒト化型である。改善した性質、例えば低い免疫原性、改善した抗原結合又は他の機能的性質、及び/又は改善した生理化学的特性、例えばより良好な安定性を有するかかるヒト化抗体のフレームワーク領域(FR)におけるアミノ酸置換のための例示的な相補性決定領域(CDR)残基又は配列及び/又は部位が提供される。一態様では、本発明は、Z199カバットCDRの少なくとも一部がヒトアクセプター配列の対応する部分と同一であるヒト化抗体を提供する。一実施態様では、ヒトフレームワーク配列は少なくとも一の逆突然変異、例えば1、2、3、4、5又は6の逆突然変異を含む。他の実施態様では、可変軽鎖(VL)ドメインのヒトフレームワーク配列は単一の逆突然変異を含む。
【0008】
他の態様では、本発明は、かかる薬剤と担体を含有する医薬組成物、及び細胞傷害剤又は検出可能な薬剤にコンジュゲートさせたかかる薬剤を含有してなるコンジュゲートを提供する。
【0009】
他の態様では、本発明は、かかる薬剤をコードする核酸及びベクター、及びかかる核酸及び/又はベクターを含む宿主細胞を提供する。また提供されるものは、核酸が生産されるようにかかる宿主細胞を培養することによる薬剤製造の組換え法である。
【0010】
他の態様では、本発明は、かかる薬剤を含む容器と、患者の癌やウイルス疾患などの疾患を治療するために使用者に指示する指示書とを具備する製造品を提供する。場合によって、製造品は他の薬剤を含む他の容器を具備し得、その指示書は薬剤と組み合わせた抗体によって疾患を治療するように使用者に指示するものである。
【0011】
本発明は、患者における癌、ウイルス性疾患、炎症性疾患又は自己免疫性疾患等の疾患の治療に、場合によっては他の抗癌剤、抗ウイルス疾患剤、又は抗炎症剤と組合わせて、本発明の薬剤を使用する方法をまた提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】CD94/NKG2A発現NKL細胞の機能的HLA−Eを発現し又は欠く標的細胞を死滅させる能力、並びにマウス抗体HP−3D9(A)(抗CD94)又はZ199(B)(抗NKG2A)のHLA−E発現標的細胞の死滅に対する効果を評価するCr−51放出アッセイの結果を示す。NKL細胞は機能的HLA−Eを欠いたCr−51標識標的細胞を効果的に死滅させたが、機能的HLA−Eを発現する標的細胞は余り効率的には死滅させられなかった。NKL細胞をZ199と共にプレインキュベートすると、HLA−Eを発現する標的細胞は、HLA−Eを欠く標的細胞と同等に良好に死滅させられ、Z199がCD94/NKG2Aを機能的に阻害することが確認される。
【図2】HLA−E四量体と共にプレインキュベートした一本鎖CD94/NKG2A Fc(scCD94−NKG2A−Fc)コンストラクトがZ199に結合する一方HP−3D9は結合が妨げられたBiacore実験を示している。
【図3】CD94/NKG2Aを過剰発現するBa/F3細胞が、フローサイトメトリーによって評価して、HLA−E四量体、HP−3D9、及びZ199に結合したことを示している。Z199と共にプレインキュベートした場合、Ba/F3−CD94/NKG2A細胞はHLA−E四量体に尚も結合することができたが、HP−3D9と共にプレインキュベートした場合は結合しなかった。
【図4】Z199のVL(配列番号2)及びVH(配列番号4)配列のヒト化についてなされた配列解析を示している。カバットスキームによる残基番号付けを示す最初のラインでは、マスクは下線を付して示され、カバットのCDRは太字で示されている。生殖細胞系列配列において、マウス/ヒト生殖細胞系列の差は灰色の背景で付与されている(VKIII_L6/JK2:配列番号12;VH3_21/JH3:配列番号14)。ヒト化Z199(humZ199)のVL(配列番号13)及びVH(配列番号15)領域の得られた配列は、太字で下線を付したヒトとの潜在的な逆突然変異残基と共に与えられている。
【図5】軽鎖中に逆突然変異E1Q、L46P、L47W、I58V又はD70Sを有するhumZ199変異体のBiacoreにおける結合プロファイルを示す。組換え的に発現された親のマウス抗体Z199(rec)及びヒトIgG4(S241P)部分を有するキメラZ199(chim)はscCD94/NKG2A−Fcに効率的に結合したが、如何なる逆突然変異も含まないヒト化Z199(hum)はscCD94−NKG2A−Fcに対して非常に低い結合能であった。これとは対照的に、Z199軽鎖における単一の逆突然変異L46Pは結合を回復した。
【図6】軽鎖中のL46Pと組み合わされて選択された逆突然変異を有するhumZ199変異体の親和性の定量を示す。各変異体のKD値を、軽鎖中のL46P変異を有するhumZ199の値に対して正規化して(図中「huZ199(LC:L46P)」と命名)、KDの相対変化を得た。
【図7】星印で示されたZ199のVL及びVH配列においてなされたAla−突然変異の位置を示す。配列番号については図4を参照のこと。
【図8】chimZ199の結合に対して正規化した固定化scCD94−NKG2A−Fcに対するVH領域にアラニン変異を有するZ199の結合を示す。
【図9】chimZ199の結合に対して正規化した固定化scCD94−NKG2A−Fcに対するVL領域にアラニン変異を有するZ199の結合を示す。
【図10】NKG2A(配列番号11)及びNKG2C(配列番号16)のアラインメントに対する(下線を付した)露出残基のマッピングを示す。NKG2A配列からの残基番号付けを使用した。保存された残基は*の印をつけている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(定義)
ここでの「抗体」なる用語は、最も広義に使用され、特に、完全長モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び所望の生物学的活性を表す限り、抗体断片を含む。抗体の生産に関連する様々な技術は、例えば、Harlow等, ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., (1988).)に提供される。
【0014】
「抗体断片」は、完全長抗体の一部、好ましくはその抗原結合性又は可変領域を含み、合成及び半合成抗体誘導分子を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab)、F(ab’)、F(ab)、Fv(典型的には抗体の単一アームのVL及びVHドメイン)、単鎖Fv(scFv)、dsFv、Fd断片(典型的にはVH及びCH1ドメイン)、及びdAb(典型的にはVHドメイン)断片;VH、VL、VhH及びV−NARドメイン;ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、及びカッパボディ(例えばIll等, Protein Eng 1997;10: 949-57を参照);ラクダIgG;IgNAR;及び抗体断片から形成された多特異性抗体断片、及び一又は複数の単離CDR又は機能的パラトープが含まれ、ここで、単離CDR又は抗原結合残基又はポリペプチドは互いに関連又は連結して機能的抗体断片を形成しうる。様々な種類の抗体断片が、例えばHolliger及びHudson, Nat Biotechnol 2005;23, 1126-1136;国際公開第2005040219号、及び公開米国特許出願第20050238646号及び同第20020161201号に記載されているか又は概説されている。
【0015】
ここで使用される「抗体誘導体」なる用語には、完全長抗体又は、好ましくは少なくとも抗体の抗原結合領域又は可変領域を含む抗体の断片が含まれ、このとき、例えば第二の分子に抗体を連結させるために、例えばアルキル化、ペグ化、アシル化、エステル形成又はアミド形成などによって一又は複数のアミノ酸が化学的に修飾されているものである。これには、ペグ化抗体、システイン-ペグ化抗体及びその変異体が含まれるが、これらに限定されるものではない。
「イムノコンジュゲート」には、細胞傷害性剤、検出可能試薬などの第二薬剤と結合した又は連結した抗体誘導体が含まれる。
【0016】
「ヒト化」抗体は、非ヒト免疫グロブリンから得られた最小配列を含むヒト/非ヒトのキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性をさらに洗練するために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、全て又は実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに一致し、全て又は実質的に全てのFR残基がヒト免疫グロブリン配列の残基である、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。ヒト化抗体はまた、場合によって免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。詳しくは、例えばJones等, Nature 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature 332:323-329 (1988);及び、Presta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)、国際公報92/02190、米国特許公開20060073137及び米国特許第6750325号、同第6632927号、同第6639055号、同第6548640号、同第6407213号、同第6180370号、同第6054297号、同第5929212号、同第5895205号、同第5886152号、同第5877293号、同第5869619号、同第5821337号、同第5821123号、同第5770196号、同第5777085号、同第5766886号、同第5714350号、同第5693762号、同第5693761号、同第5530101号、同第5585089号及び同第5225539号を参照のこと。
【0017】
本明細書中で用いられる「高頻度可変領域」なる用語は抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を指す。高頻度可変領域は一般に、「相補性決定領域」又は「CDR」のアミノ酸残基(軽鎖可変ドメインにおいては残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89−97(L3)、及び重鎖可変ドメインにおいては31−35(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3);上掲のKabat等, 1991)及び/又は「高度可変ループ」の残基(軽鎖可変ドメインにおいては残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)、及び重鎖可変ドメインにおいては26−32(H1)、53−55(H2)及び96−101(H3);Chothia及びLesk J.Mol.Biol. 196:901-917 (1987))を含んでなる。一般的に、この領域のアミノ酸残基の番号付けは、上掲のカバット等において記述される方法によって行われる。本明細書中の「カバット位置」、「カバット番号付けを使用して」、「カバットに記載の可変ドメイン残基番号付け」、及び「カバットによると」などの句は、重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインのためのこの番号付けシステムを指す。カバット番号付けシステムを用いて、実際の直鎖状のペプチドのアミノ酸配列は、可変ドメインのFR又はCDRの短縮又は挿入に応じてアミノ酸が減っていても又は増えていてもよい。例えば、重鎖可変ドメインは、CDR H2の残基52の後に単一アミノ酸挿入(カバットによると残基52a)を含んでいてもよいし、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えばカバットによると残基82a、82b及び82cなど)を含んでいてもよい。残基のカバット番号付けは、抗体の配列の相同領域に「標準の」カバット番号付けした配列と整列させて所定の抗体について決定してもよい。特に明記しない又は内容に反しない限り、本明細書中に記載したVL又はVH配列中のすべてのアミノ酸残基の位置はカバットに従う。
【0018】
本明細書において定められるように、「フレームワーク領域」又は「FR」残基はCDR以外のVH又はVL残基である。
ポリペプチドの「変異体」は、参照ポリペプチド、一般的に天然又は「親」ポリペプチドと実質的に同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。ポリペプチド変異体は、天然のアミノ酸配列内の特定の位置に一又は複数のアミノ酸置換、欠失及び/又は挿入を有してもよい。
「保存的」アミノ酸置換とは、アミノ酸残基が、類似の物理化学的性質を有する側鎖を持つアミノ酸残基に置換されているものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該分野で知られており、塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性の側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。
【0019】
2つのアミノ酸配列の関係において「実質的に同一の」なる用語は、例えば初期設定のギャップ加重を用いたプログラムGAP又はBESTFITによって、最適に整列させられた場合に、配列が少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約90、少なくとも約95、少なくとも約98又は少なくとも約99パーセントの配列同一性を共有することを意味する。一実施態様では、同一でない残基位置は保存的アミノ酸置換が異なる。配列同一性は、典型的には配列分析ソフトウェアを使用して測定される。タンパク質分析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む様々な置換、欠失及び他の修飾に割り当てられる類似性の尺度を用いて類似の配列を適合させる。例えば、公的に利用可能なGCGソフトウェアは、異なる生物種からの相同ポリペプチドなどの密接に関連したポリペプチド間、又は野生型タンパク質とその変異体間の配列相同性又は配列同一性を決定するために初期設定パラメーターと共に用いられうる「Gap」及び「BestFit」などのプログラムを含む。例えばGCGバージョン6.1を参照のこと。ポリペプチド配列はまた初期設定又は推奨パラメーターを適用してFASTA又はClustalWを用いて比較されうる。GCGバージョン6.1のプログラムであるFASTA(例えばFASTA2及びFASTA3)により、クエリー及びサーチ配列が整列され、最善のオーバーラップの領域のパーセント配列同一性がもたらされる(Pearson, Methods Enzymol. 1990;183:63-98;Pearson, Methods Mol. Biol. 2000;132:185-219)。ある配列を様々な生物の多数の配列を含むデータベースと比較する場合、又はそれを推定する場合の他の好適なアルゴニズムは、初期設定パラメーターを用いたコンピュータープログラムBLAST、特にblastpである。例えば各々出典明示によりここに援用されるAltschul等, J. Mol. Biol. 1990;215:403-410;Altschul等, Nucleic Acids Res. 1997;25:3389-402 (1997)を参照。2つの実質的に同一のアミノ酸配列における「対応する」アミノ酸位置は、典型的には初期設定パラメーターを用いた、ここで言及したタンパク質分析ソフトウェアの何れかによって整列されるものである。
【0020】
参照抗体の「生物学的特性」を有する抗体(例えばZ199)は、同じ抗原(例えばNKG2A)に結合する他の抗体とそれを区別するその抗体の生物学的特性の一又は複数を有するものである。例えば、Z199の生物学的特性を有する抗体は、NKG2Aの活性化をブロックするか、及び/又はNKG2Aの細胞外ドメインと結合する際にZ199と交差競合しうる。
【0021】
NKG2A(OMIM 161555、その全開示内容は出典明示によって本明細書中に援用される)は転写物のNKG2Aグループのメンバーである(Houchins,等 (1991) J. Exp. Med. 173: 1017-1020)。NKG2Aは25kbにわたる7つのエクソンによってコードされ、幾つかのディファレンシャルスプライシングを示す。CD94と共に、NKG2Aは、NK細胞、α/βT細胞、γ/δT細胞及びNKT細胞のサブセットの表面に見出されるヘテロ二量体阻害性レセプターを形成する。阻害性KIRレセプターと同様に、その細胞質ドメインにITIMを有している。ここで使用される場合、「NKG2A」は、NKG2A遺伝子又はコード配列の任意の変異体、誘導体又はアイソフォームを意味する。また包含されるものは、野生型の完全長NKG2Aと一又は複数の生物学的特性又は機能を共有し、少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上のヌクレオチド又はアミノ酸の同一性を共有する任意の核酸又はタンパク質配列である。ヒトNKG2Aは、3つのドメインに233のアミノ酸を含み、細胞質ドメインは残基1−70を含み、膜貫通領域は残基71−93を含み、細胞外領域は残基94−233を含む、以下の配列である。
MDNQGVIYSDLNLPPNPKRQQRKPKGNKSSILATEQEITYAELNLQKASQDFQGNDKTYHCKDLPSAPEKLIVGILGIICLILMASVVTIVVIPSTLIQRHNNSSLNTRTQKARHCGHCPEEWITYSNSCYYIGKERRTWEESLLACTSKNSSLLSIDNEEEMKFLSIISPSSWIGVFRNSSHHPWVTMNGLAFKHEIKDSDNAELNCAVLQVNRLKSAQCGSSIIYHCKHKL(配列番号11)。
【0022】
NKG2C(OMIM 602891、その全開示内容は出典明示によってここに援用される)とNKG2E(OMIM 602892、その全開示内容は出典明示によってここに援用される)は、転写物のNKG2Aグループの他の2つのメンバーである(Gilenke,等 (1998) Immunogenetics 48:163-173)。CD94/NKG2C及びCD94/NKG2EレセプターはNK細胞及びT細胞のようなリンパ球のサブセットの表面に見出される活性化レセプターである。
【0023】
HLA−E(OMIM143010、その全開示内容は出典明示によってここに援用される)は、細胞表面上に発現され、他のMHCクラスI分子のシグナル配列由来断片のようなペプチドの結合によって制御される非古典的なMHC分子である。HLA−Eの可溶型もまた同定されている。そのT細胞レセプター結合特性に加えて、HLA−Eは、CD94/NKG2A、CD94/NKG2B、及びCD94/NKG2Cに特異的に結合することによって、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT細胞(NKT)及びT細胞(α/β及びγ/δ)のサブセットに結合する(例えばその全開示内容が出典明示によってここに援用されるBraud等 (1998) Nature 391:795-799を参照)。HLA−Eの表面発現は、CD94/NKG2A+NK、T又はNKT細胞クローンによる溶解から標的細胞を保護する。ここで使用される場合、「HLA−E」は、HLA−E遺伝子又はコードされるタンパク質の任意の変異体、誘導体又はアイソフォームを意味する。また包含されるものは、野生型の完全長HLA−Eと一又は複数の生物学的特性又は機能を共有し、少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上のヌクレオチド又はアミノ酸同一性を共有する任意の核酸又はタンパク質配列である。
【0024】
核酸が、他の核酸配列と機能的な関係に配されている場合、「作用可能に連結」している。例えば、プレ配列又は分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関わっているタンパク質前駆体として発現する場合、そのポリペプチドのDNAと作用可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、それが配列の転写に影響する場合はコード化配列と作用可能に連結している;あるいは、リボソーム結合部位は、それが翻訳を容易にする位置にある場合はコード配列と作用可能に連結している。一般に、「作用可能に連結した」とは、連結しているDNA配列が連続しており、分泌リーダーの場合は連続して読み枠内にあることを意味する。しかし、エンハンサーは連続している必要はない。連結は都合のよい制限部位でのライゲーションによって達成される。このような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが、常套的な慣行に従って使用される。
【0025】
「単離された」分子は、それが属する分子のクラスに関して見出される組成物中の主な種である分子である(すなわち、それは、組成物中の分子のタイプの少なくとも約50%を占め、典型的には組成物中の分子、例えばペプチドの種の少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又はそれ以上を占める)。一般には、抗体分子の組成物は、組成物中の全ての存在するペプチド種の関係において、又は少なくとも提案された用途の関係において実質的に活性なペプチド種に対して、抗体分子の98%、98%又は99%の均一性を示すであろう。
【0026】
本発明の前後関係において、前後関係によって否定されない限り、「処置」又は「治療する」は、疾患又は疾病の一又は複数の症状又は臨床的に関連する徴候を予防するか、緩和するか、管理するか、治癒するか、又は低減することを指す。例えば、症状又は疾患ないし疾病の臨床的に関連する兆候が同定されていない患者の「処置」は予防又は防止的な治療であるのに対して、症状又は疾患ないし疾病の臨床的に関連する兆候が同定されている患者の「処置」は一般的に予防又は防止的な治療を成さない。
【0027】
本発明の文脈において、「CD94/NKG2A陽性リンパ球」は細胞表面にCD94/NKG2Aを発現するリンパ様系統の細胞(例えばNK−、NKT−及びT−細胞)を意味し、これは例えばCD94及びNKG2A上の組合わさったエピトープ又はNKG2A上の単独のエピトープを特異的に認識する抗体を使用するフローサイトメトリーによって検出することができる。「CD94/NKG2A陽性リンパ球」はまたリンパ球由来の不死細胞株(例えばNKL、NK−92)を含む。
【0028】
本発明の文脈において、「CD94/NKG2A陽性リンパ球の表面に発現されたヒトCD94/NKG2Aレセプターの阻害活性を低減させる」とは、CD94/NKG2Aが細胞内プロセスにネガティブに影響を及ぼすその能力が阻害され、サイトカイン放出及び細胞傷害応答のようなリンパ球応答を生じるプロセスを意味する。これは、例えばCD94/NKG2A陽性リンパ球によるHLA−E陽性細胞の死滅を刺激する治療用化合物の能力が測定される標準的なNK−又はT−細胞ベースの細胞毒性アッセイで測定することがでいる。一実施態様では、抗体調製物はCD94/NKG2A制限リンパ球の細胞傷害性の少なくとも10%の増強、好ましくはリンパ球細胞傷害性の少なくとも40%又は50%の増強、又はより好ましくはNK細胞傷害性の少なくとも70%の増強を引き起こし、記載された細胞傷害性アッセイを意味する。
【0029】
本発明の文脈において、「ヒトCD94/NKG2Aレセプターに結合する薬剤」とは、薬剤がCD94/NKG2A又はNKG2Aの存在下でインキュベートされ、結合が例えば放射標識、物理的方法、例えば質量スペクトルを介して検出され、又は直接的もしくは間接的蛍光標識が例えば細胞蛍光測定分析法(例えばFACScan)を使用して検出される任意の標準的なアッセイを使用して検出可能なヒトCD94/NKG2Aレセプターへの結合性を有する薬剤を意味する。コントロールの非特異的薬剤で見られる量を越える結合量は薬剤が標的に結合することを示している。
【0030】
本発明の文脈において、「Z199抗体」は、Carretero等(Eur J Immunol 1997;27:563-7)によって記載され、Beckman Coulter社(Product No. IM2750, USA)を介して現在市販されているマウス抗NKG2A抗体Z199である。Z199のVH及びVL配列の決定は実施例2に記載されている。Z199のヒト化型は、ここでは「humZ199」、「huZ199」、「hzZ199」、又は「hZ199」と称されうる。
【0031】
発明の説明
本発明は、ヒトNKG2Aの細胞外部分に結合するある種の薬剤が非競合的アンタゴニストである、つまりレセプターへのHLA−Eの結合を阻止しないでCD94/NKG2Aレセプターの阻害活性を低減するという発見に部分的に基づいている。好ましい薬剤は、活性化するCD94/NKG2Cレセプターに対してよりも高効率で阻害性CD94/NKG2Aレセプターに結合する。ここで示されるように、かかる薬剤は、残基P94−N107、M189−E197、又は双方を含むNKG2A(配列番号11)のセグメントに結合しうる。本発明の非競合的CD94/NKG2Aアンタゴニストを、例えば癌、ウイルス疾患、自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患のような幾つかのタイプの疾病及び疾患において治療用薬剤として使用することができる。非競合的アンタゴニストは、有利には、例えば可溶型HLA−Eが存在している治療用途に使用することができる。
【0032】
ここに記載の非競合的アンタゴニストの一つのタイプは、抗NKG2A抗体、特にヒト患者の治療に適した抗体である。かかる抗体はヒト抗体又は非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化型でありうる。ヒトCD94/NKG2Aへの結合においてマウス抗体Z199と結合するヒト又はヒト化抗体が本発明の特定の態様である。一実施態様では、CD94/NKG2Aレセプターへの結合においてZ199と競合するヒト又はヒト化抗体は、残基P94−N107、M189−E197を含むNKG2Aのセグメントに結合し、又は双方のセグメントに結合する。例えば、抗体は、NKG2AのP94、S95、T96、L97、I98、Q99、R100、H101、L106、M189、又はE197から選択される残基を含むエピトープに結合しうる。他の実施態様では、抗体はZ199と同じエピトープに結合する。実施例に記載されているように、Z199は、CD94/NKG2Aの機能を阻害したが(図1に示す)、CD94/NKG2AレセプターへのHLA−Eの結合には影響を及ぼさなかったので(図2及び3)、リンパ球上に発現されたヒトCD94/NKG2Aレセプターの非競合的アンタゴニストであることが見出された。Z199は更に高特異性でCD94/NKG2Aレセプターに結合し、KDはCD94/NKG2Cレセプターへの結合の値より少なくとも100倍低かった。
【0033】
他の態様では、本発明は、Z199のヒト化型である特定のヒト化抗体を提供する。かかる抗体は典型的にはヒトフレームワーク配列中にZ199のCDRからのキーとなるアミノ酸残基を含むことを特徴とする。例えば、ヒト化Z199抗体はZ199VLドメインにカバット残基Y32、L50、及びP95を、Z199のVHドメイン中にカバット残基Y56、Y98及びP99を含みうる。Z199のVH及びVL配列中において、これらは、Z199のCDRのものに対応するカバット位置での、Z199のVLドメイン(配列番号2)のアミノ酸残基Y31、L49及びP94と、Z199のVHドメイン(配列番号4)のアミノ酸残基Y57、Y102、及びP103に対応する。
【0034】
ヒト化Z199抗体は、例えばヒト化抗体の親和性、安定性、又は他の性質を亢進させるためにヒトフレームワーク配列中に一又は複数の逆突然変異を更に含みうる。好ましい逆突然変異は、好ましくはZ199のVH及びVLドメインのものに対応するカバット位置に、Z199のVLドメイン配列のアミノ酸残基Q1、P45、W46、V57、及びS69の一又は複数及び/又はZ199のVHドメイン配列のアミノ酸残基A49、T78、及びT97の一又は複数、好ましくはZ199のVLドメイン配列の少なくとも残基P45を含むヒト化抗体を生じるものを含む。一実施態様では、ヒト化Z199抗体は、Z199のVLドメイン配列の少なくともアミノ酸残基24−33、49−55、及び88−96と、Z199のVHドメイン配列の少なくともアミノ酸残基31−35、50−60及び99−108を含み、場合によってはまたZ199のVHドメイン配列の残基62、64、66を含む。ヒト化抗体はまたCDR、特にCDR_L1に挿入された一又は複数のアミノ酸、例えばZ199のVLドメインの残基30及び31間に挿入されたセリン(S)を含みうる。
【0035】
他の態様では、本発明は、ヒトCD94/NKG2Aレセプターに結合し、
(a)配列番号5を含むCDR−L1;
(b)配列番号6を含むCDR−L2;
(c)配列番号7を含むCDR−L3;
(d)配列番号8を含むCDR−H1;
(e)配列番号9を含むCDR−H2;
(f)配列番号10を含むCDR−H3;
(g)ヒトフレームワーク配列;及び
(h)VLドメイン中のカバット位置46のプロリン(P)残基
を含む単離された抗体を提供する。
【0036】
カバット位置46のプロリン(P)残基はヒトVLフレームワーク配列中に天然に存在しうるか、又はアミノ酸置換又は配列の他の修飾によって導入されうる。特定の実施態様では、抗体は、L46P変異を有する配列番号13を含むVL配列と、配列番号15を含むVH配列を含む。抗体は、安定性を改善するための任意のS241P変異を含むIgG4定常ドメインを更に含みうる。
これらの態様及び他の態様は次のセクションと実施例に更に詳細に記載する。
【0037】
薬剤
本発明は、ヒトCD94/NKG2Aレセプターの細胞外部分に結合する薬剤に関し、該薬剤は、(a)CD94/NKG2A陽性リンパ球の表面に発現するヒトCD94/NKG2Aレセプターの阻害活性を低減し;かつ(b)HLA−Eと同時にCD94/NKG2Aに結合可能であり、該薬剤はZ199抗体ではない。
【0038】
更なる又は別の実施態様では、本発明は、ヒトCD94/NKG2Aレセプターの細胞外部分に結合する薬剤に関し、該薬剤は、(a)CD94/NKG2A陽性リンパ球の表面に発現するヒトCD94/NKG2Aレセプターの阻害活性を低減し;かつ(b)HLA−EとCD94/NKG2Aへの結合において競合せず、該薬剤は、配列番号2を含む軽鎖可変ドメイン(VL)配列と配列番号4を含む重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む抗体ではない。
【0039】
本発明の一態様では、CD94/NKG2A陽性リンパ球は、NK細胞、細胞傷害性T細胞、例えばα/βT細胞又はγ/δT細胞、及びNKT細胞からなる群から選択される。
【0040】
本発明の一態様では、薬剤は、CD94/NKG2Aへの結合に対してZ199抗体と競合する抗体からの少なくともCDRsを含む完全長抗体、抗体断片、及び合成又は半合成抗体由来分子から選択される抗体である。
【0041】
本発明の一態様では、薬剤は、完全なヒト抗体、ヒト化抗体、及びキメラ抗体から選択される抗体である。
【0042】
本発明の一態様では、薬剤は、IgA、IgD、IgG、IgE及びIgM抗体から選択される抗体である。
【0043】
本発明の一態様では、薬剤は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4アイソタイプから選択されるヒト定常ドメインを含む抗体である。
【0044】
本発明の一態様では、薬剤は、IgA、IgD、IgG、IgE及びIgM抗体から選択される抗体の断片である。
【0045】
本発明の一態様では、薬剤は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4から選択される定常ドメインを含む抗体の断片である。
【0046】
本発明の一態様では、薬剤は、Fab断片、Fab’断片、Fab’−SH断片、F(ab)2断片、F(ab’)2断片、Fv断片、重鎖Ig(ラマ又はラクダIg)、VHH断片、単一ドメインFV、及び単鎖抗体断片から選択される抗体断片である。
【0047】
本発明の一態様では、薬剤は、scFV、dsFV、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、カッパボディ、IgNAR;及び多重特異性抗体から選択される合成又は半合成抗体誘導分子である。
【0048】
本発明はよってNKG2Aに結合する抗体又は他の薬剤に関する。一態様では、抗体は、ヒトNKG2C又はNKG2Eに対してよりも少なくとも100倍低いKDでNKG2Aに結合するマウスモノクローナル抗体である抗体Z199のヒト化型である。Z199はヒトCD94/NKG2Aの機能をブロックし得、特にCD94/NKG2A制限リンパ球による細胞の死滅を濃度依存的な形で誘導する。
【0049】
本発明の一態様では、薬剤は、例えばCD94/NKG2Aレセプターにおける立体構造変化を防止又は誘導し、及び/又はCD94/NKG2Aレセプターの二量体化及び/又はクラスター形成に影響を及ぼすことによって、CD94/NKG2Aシグナル伝達を妨害することによりCD94/NKG2A発現リンパ球のCD94/NKG2A媒介阻害を低減させる。
【0050】
本発明の一態様では、薬剤は、NKG2Cに対するよりも少なくとも100倍低いKDでNKG2Aの細胞外部分に結合する。更に好ましい態様では、該薬剤は、NKG2Cに対するよりも少なくとも150、200、300、400、又は10000倍低いKDでNKG2Aの細胞外部分に結合する。本発明の他の態様では、薬剤は、NKG2C又はNKG2E分子に対するよりも少なくとも100倍低いKDでNKG2Aの細胞外部分に結合する。更に好ましい態様では、該薬剤は、NKG2C又はNKG2E分子に対するよりも少なくとも150、200、300、400、又は10000倍低いKDでNKG2Aの細胞外部分に結合する。これは、例えば、固定化されたCD94/NKG2A(例えばCD94/NKG2発現細胞から精製され、又はバイオ系で生産された)の細胞外部分に結合する薬剤の能力を測定し、同じアッセイにおける同様に生産されたCD94/NKG2C及び/又は他のCD94/NKG2変異体への薬剤の結合と比較するBiaCore実験で測定することができる。あるいは、CD94/NKG2Aを自然に発現するか又は過剰発現する(例えば一過性又は安定な形質移入)細胞への薬剤の結合を測定し、CD94/NKG2C及び/又は他のCD94/NKG2変異体を発現する細胞の結合と比較することができる。本発明の抗NKG2A抗体は、CD94と共に阻害レセプターを形成するNKG2AスプライシングバリアントであるNKG2Bに場合によっては結合しうる。
【0051】
本発明の一態様では、薬剤は、ヒトCD94/NKG2Aレセプターの細胞外部分への結合において抗体Z199と競合する。これは、例えば、Z199で飽和された(satured)固定化CD94/NKG2Aレセプター(例えばCD94/NKG2発現細胞から精製され、又はバイオ系で生産された)の細胞外部分に結合する薬剤の能力を測定するBiaCore実験で測定することができる。あるいは、CD94/NKG2Aレセプターを自然に発現するか又は過剰発現し(例えば一過性又は安定な形質移入)、飽和用量のZ199と共にプレインキュベートされている細胞への薬剤の結合が測定される。
【0052】
本発明の一態様では、薬剤はZ199抗体と同じか又は本質的に同じエピトープに結合する。
【0053】
本発明の一態様では、薬剤はZ199のVH及びVLドメインから誘導されたCDR配列を含む。本発明の他の態様では、薬剤は、Z199のCDR配列にアミノ酸置換、欠失、又は挿入を含む。本発明の他の態様では、薬剤は、Z199のCDRに限られた数の置換、例えば1、2、3、4、5、又は6の逆突然変異のような逆突然変異を天然マウスCDR配列に含む。
【0054】
本発明の一態様では、薬剤は、Z199の可変重鎖(V)ドメイン(配列番号4)のアミノ酸残基31−35、50−60、62、64、66、及び99−108とZ199可変軽鎖(V)ドメイン(配列番号2)のアミノ酸残基24−33、49−55、及び88−96を、場合によっては1、2、3、4、又はそれ以上のアミノ酸置換と共に含む。
【0055】
本発明の一態様では、薬剤は、軽鎖のカバット位46にプロリンを含む完全なヒト又はヒト化抗体である。
【0056】
本発明の一態様では、薬剤は、組換え生殖細胞系列配列及び関連した体細胞突然変異からなる群から選択されるヒトフレームワーク領域を含む。
【0057】
本発明の一態様では、抗体は、生殖細胞系列J−セグメントとしてJH3及びJK2を伴うヒトVH3_21及びVKIII_L6スキャフォールド配列を含むが、原理的には多くの他の鋳型、例えばVH3_21、VH3_23、VH3_11、VH3_07、VH3_48、VH3_30_3、VH3_64、VH3_30_5(重鎖)及びVKIII_L6、VKI_L23、VKIII_A11、VKIII_A27、VKIII_L20、VKVI_A14、VKI_L23、VKI_L8、VKI_L15(軽鎖)を使用することができる。
【0058】
本発明の一態様では、薬剤は、抗体Z199が結合するCD94/NKG2Aエピトープに対して産生されたか、又はZ199のイディオタイプに特異的に結合する抗イディオタイプ抗体に対して産生された完全なヒト抗体である。
【0059】
本発明の一態様では、薬剤は、ヒトフレームワーク配列、46位にプロリン残基及び次の相補性決定領域(CDRs):a)配列番号8を含むCDR−H1;b)配列番号9を含むCDR−H2;c)配列番号10を含むCDR−H3;d)配列番号5を含むCDR−L1;e)配列番号6を含むCDR−L2;及びf)配列番号7を含むCDR−L3を含む。
本発明の一態様では、薬剤は少なくとも部分的に精製された形態にある。
本発明の一態様では、薬剤は本質的に単離された形態である。
【0060】
本発明は、例えばCDR−H2のようなVH CDRの少なくとも一部がヒトVHアクセプター配列の対応する部分に同一であり、よってヒト化抗体の免疫原性を低減するhumZ199変異体を提供する。例えば、図4に示されるように、humZ199 CDR−H2中の残基Y58からG65はVH3_21配列と同一である。このようなヒト化変異体はまたZ199のマウス又はキメラ型と同様にCD94/NKG2A発現細胞傷害性リンパ球の細胞傷害性を増強するのに効果的でありうる。他の態様では、本発明はマウス抗体Z199のものに対応するある種の抗原結合残基、及びヒトフレームワーク配列を含むCDRsを有する抗体を提供する。例えば、実施例4に示されているように、Z199のVL CDRs中のカバット残基Y32、L50、及びP95及びカバット残基Y56、Y98、及びY99は抗原認識に有意に寄与する。一実施態様では、本発明に係る抗体は、よってこれらの残基の少なくとも幾つか、好ましくは全てを含む。
【0061】
ヒト化抗NKG2A抗体
非ヒト抗体をヒト化する方法は当該分野で記述されている。一般に、ヒト化方法では、マウス抗体の相互作用領域をコードするヌクレオチドを、ヒトIgGをコードするcDNAベクター中にクローニングすることができ、これは、マウスCDR由来のアミノ酸残基を内部に持つヒトIgG骨格からなるキメラ抗体が生産されるように行うことができる。このような抗体は、元のマウス抗体と比べて低親和性、低安定性、又は他の望ましくない特徴を表し得、また免疫原性を持ちうる。従って、キメラAbの個々のアミノ酸は、ヒトの医療用途に対して高い品質の機能的なmAbを得るために最適化される必要があるかもしれない。
【0062】
典型的には、ヒト化抗体は、非ヒトである供与源から導入される一又は複数のアミノ酸残基を有している。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入(import)」可変ドメインから取られる「移入」残基と称される。ヒト化は、本質的にはWinter及び共同研究者(Jones等, Nature, 321: 522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332: 323-327 (1988);Verhoeyen等, Science, 239: 1534-1536 (1988))の方法に従って、高頻度可変領域配列をヒト「アクセプター」抗体の対応する配列と置換することにより、行うことができる。従って、このような「ヒト化」抗体は、インタクトなヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4816567号)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的には幾つかの高頻度可変領域残基及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位の残基によって置換されたヒト抗体である。
【0063】
ヒト化抗体の他の作製方法は米国特許出願公開第2003/0017534号に記載されており、ここでヒト化抗体及び抗体調製物はトランスジェニック非ヒト動物から産生されている。非ヒト動物に遺伝的操作を加えて、トランスジェニック非ヒト動物で遺伝子再構成及び遺伝子転換が可能になるように一又は複数のヒト化免疫グロブリン遺伝子座を含有させて、多様なヒト化免疫グロブリンを生産する。
【0064】
抗原性を低減するために、ヒト化抗体を作製する際に使用される軽鎖及び重鎖両方のヒト可変ドメインの選択が非常に重要である。いわゆる「ベストフィット法」によれば、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列が既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー又はヒト生殖系配列のライブラリーに対してスクリーニングされる。次に齧歯動物のものと最も近いヒト配列がヒト化抗体のヒトフレームワーク領域として受け入れられうる(Sims等, J. Immunol. 1993;151:2296 et seq.;Chothia等, Chothia and Lesk, J. Mol. Biol 1987;196:901-917)。他の方法では、軽鎖又は重鎖の特定のサブグループの全てのヒト抗体のコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークを幾つかの異なるヒト化抗体に使用することができる(Carter等, PNAS USA, 1992;89:4285 et seq.;Presta等, J Immunol 1993;151:2623 et seq.)。ヒト患者における抗体分子の免疫原性を低減するために設計される他の方法には、ベニヤ抗体(veneered抗体)(例として米国特許第6797492号及び米国特許出願公開第20020034765号及び同20040253645号を参照)及びT細胞エピトープ分析及び除去によって修飾されている抗体(例えば米国特許出願公開第20030153043号及び米国特許第5712120号を参照)が含まれる。
【0065】
抗体を、抗原に対する高親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが更に重要である。この目標を達成するべく、好ましい方法では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは入手可能である。これら表示を見ることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のありそうな役割の分析、すなわち候補免疫グログリンのその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性の増加のような、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、高頻度可変領域残基は、直接かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
【0066】
Z199が非競合的CD94/NKG2Aアンタゴニストである意外な知見は、実施例1及び図1、2及び3に示されている。HP−3D9(抗CD94)(図1A)、Z199(抗NKG2A)(図1B)及びZ270(抗NKG2A)は全てCD94/NKG2A制限リンパ球によるHLA−E発現標的細胞の死滅化を効果的に誘導した。しかしながら、HP−3D9及びZ270はCD94/NKG2AとHLA−Eの間の相互作用を防止する一方、Z199はこの相互作用を防止しなかった。更に、用量範囲100pg/mlから1μg/mlで試験したhumZ199は、飽和用量のHLA−E四量体と共にプレインキュベートしたCD94/NKG2A発現細胞に結合することができた。
【0067】
Z199及びhumZ199は従って非競合的CD94/NKG2Aアンタゴニストである。理論に拘束されるものではないが、Z199は、例えばCD94/NKG2Aレセプターにおける立体構造変化を防止又は誘導し、及び/又はCD94/NKG2Aレセプターの二量体化及び/又はクラスター形成に影響を及ぼすことによって、CD94/NKG2Aシグナル伝達を妨害することが可能である。
【0068】
一態様では、本発明に係る薬剤は非競合的アンタゴニストである。更なる態様では、本発明に係る薬剤は、CD94/NKG2Aレセプターのインターナリゼーションの速度又は量に異なった効果を有し、よって更なる治療用薬剤及び/又はHLA−Eによる結合に対してより多くの又は少ない抗原を利用できるようにする非競合的アンタゴニストである。CD94/NKG2Aレセプター及びHLA−E間の相互作用を防止する薬剤は、他のCD94/NKG2Aレセプター(例えばCD94/NKG2C)へのHLA−Eの結合の増加を生じ得、この活性化がこれらレセプターによって惹起される望まれない生物学的応答を生じうる(例えば望まれない炎症誘発性応答を生じる)。一態様では、本発明に係る薬剤は、他のCD94/NKG2Aレセプターに結合してトリガーするHLA−Eの潜在性を増加させないで、CD94/NKG2Aレセプターをブロックし、他のCD94/NKG2Aレセプターによって引き起こされる望まれない副作用があまり起こらないようにする。
【0069】
実施例2は例示的なヒト化抗NKG2A抗体の設計を記載し、実施例3はhumZ199及び逆突然変異変異体のBiacore分析を記載している。最初は、ヒト化Z199抗体は抗原に結合することができないことが見出された。従って、humZ199の軽鎖及び重鎖に逆突然変異が導入された。興味深いことに、軽鎖の逆突然変異L46Pは抗原を認識しこれに結合する抗体の能力を回復した(図5)。この変異体の親和性は72pMと決定され、これはキメラZ199(24pM)と同じ大きさのオーダーであった(表1)。軽鎖の他の逆突然変異は、L46Pと組合わされたときに抗体の親和性を有意には亢進させなかった(図6)。
【0070】
実施例4はアラニンスキャンによるZ199可変配列中の重要な残基の同定を示す。キメラZ199と比較した場合、試験した全てのala変異体はアッセイで使用された2つのmAb濃度で匹敵する結合プロファイルを示したが、キメラZ199軽鎖中のカバット残基Y32、L50又はP95がアラニンに置換され、又は重鎖中のカバット残基Y56、Y98又はP99がアラニンに置換されたZ199変異体は例外であった。Z199軽鎖アラニン変異体Y32A、L50A、及びP95Aは約40%の抗原結合能を示した。軽鎖変異体Y49Aの相対結合性は60−80%であった(図9)。従って、Z199軽鎖中のカバット残基Y32、L50、及びP95は抗原の認識に有意に寄与したが、軽鎖中のカバット残基Y49は抗原結合性への影響は中程度であった。従って、本発明は、VLドメイン中にカバット残基Y32、L50又はP95を保持しているhumZ199変異体を提供する。
【0071】
アミノ酸残基の番号付けに関して、マウスZ199軽鎖の可変ドメインは、humZ199のものより1残基短く、humZ199軽鎖配列中のカバット残基S31に対応する残基を欠くことに留意されなければならない(図4及び7)。従って、カバットに従って番号付けした残基、例えばhumZ199軽鎖配列中のY32、L46、L50及びP95はマウスZ199軽鎖配列中のカバット残基Y31、P45、L49及びP94に対応する。しかしながら、図4及び7に示されたカバット番号付けは、別の定義がなされない限り、ここで言及される全てのZ199(マウス又はヒト化で、天然又は変異された重鎖又は軽鎖)可変領域残基のカバット番号付けの標準として使用される。
【0072】
Z199重鎖アラニン変異体Y56A、Y98A、及びP99Aは約40%の抗原結合能を保持したが、重鎖変異体Y58A及びD97Aの相対結合性は60−80%である(図8)。従って、Z199重鎖中のカバット残基Y56、Y98、及びP99は抗原認識に有意に寄与する。一方、重鎖中のカバット残基Y58及びD97は抗原結合性に中程度に影響を及ぼす。
【0073】
humZ199のようなZ199に基づく治療用化合物は、よって好ましくは、Z199軽鎖に見出されるようにCDR1にY32を、CDR2にL50を、CDR3にP95を、Z199重鎖に見出される位置付けで、CDR2にカバット残基Y56を、CDR3にY98とP99の双方を含む。
【0074】
一態様では、本発明は、Z199ハイブリドーマによって生産される抗NKG2A抗体のヒト化型、並びにZ199と生物学的特徴及び/又は実質的な配列同一性を共有する非ヒト抗体のヒト化型を提供する。他の実施態様では、モノクローナル抗体又はその断片又は誘導体は非ヒト霊長類NKG2Aに結合可能である。
【0075】
ここでのヒト化抗体は、ヒトVH及びVLドメイン中に導入された非ヒト高頻度可変領域又はCDR残基を含む。
【0076】
一態様では、本発明は、ヒトアクセプターフレームワークにマウス抗体Z199のCDR由来の抗原結合残基を含み、CDR-H2の6のC末端アミノ酸残基がヒトアクセプター配列中のものと同じであるヒト化抗体を提供する。かかるヒト化抗体は、例えば、CD94/NKG2A発現細胞傷害性リンパ球、例えばNK細胞、NKT細胞、α/βT細胞、及び/又はγ/δT細胞、又はCD94/NKG2A発現細胞傷害性リンパ球の集団の細胞傷害活性を増強する等において、元のマウスZ199抗体又はそのキメラ型よりもより効果的でありうる。
【0077】
図4に示されるように、humZ199VL及びVH中の潜在的な逆突然変異はヒトとして太字及び下線で提供される。よって本発明の好ましい実施態様は、カバット番号付けを使用した、次の逆突然変異されたhumZ199の軽鎖及び重鎖変異体を必要とする:
humZ199のVL:E1Q、L46P、L47W、I58V、D70S及び(E1Q、L46P、L47W、I58V、D70S)の任意の組合せ
humZ199のVH:S49A、S77T、A93T、A60P、S62T、K64T及び(S49A、S77T、A93T、A60P、S62T、K64T)の任意の組合せ。
【0078】
また好ましいのは、上に示された逆突然変異されたヒト化重鎖及び軽鎖の任意の組合せを含む抗体である。
他の態様では、本発明は、Z199又はhumZ199(例えば図4の配列を参照)のVHドメインに対して少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約80%の配列同一性(例えば少なくとも約85%、90%、95%、97%、又はそれ以上の同一性)を有するVHドメインを含むヒト化抗体を提供する。他の特定の態様では、本発明は、ヒトVHドメインに導入された非ヒトCDR残基を含むVHドメインを含むNKG2Aに結合し、VHドメインがhumZ199VHと少なくとも約50%(例えば少なくとも90%)同一であるヒト化抗体を提供する。
【0079】
ヒト化抗体の様々な形態が考慮される。例えば、ヒト化抗体は、抗体断片、例えばここに記載のFab又は他のタイプの断片でありうる。あるいは、ヒト化抗体は、完全長又はインタクトな抗体、例えば完全長又はインタクトなIgG1又はIgG4抗体でありうる。一実施態様では、ヒト化抗体は完全長IgG4抗体又はその断片である。
【0080】
一態様では、本発明は、a)NKG2Aに特異的に結合する、b)Fcレセプターに特異的に結合しない;そしてc)ヒトNK細胞上のNKG2Aに結合した場合に、標的細胞が上記NK細胞と接触すると、該NK細胞に標的細胞表面上にHLA−Eを有する標的ヒト細胞を溶解させる、ことを特徴とするヒト化抗体を提供する。一実施態様では、ヒト化抗体は、Fcレセプターへの結合を妨げるように修飾されたヒトIgG1定常領域、又はヒトIgG4定常領域を含む。このような抗体、並びにFcレセプターに結合しない抗体断片は、抗体依存性細胞傷害性によって媒介されるかも知れないので、NK細胞自体を枯渇させることなく、NK細胞を活性化することが望ましい用途(例えば癌、感染性疾患)に特に有用であり、「非枯渇(non-depleting)」抗体と称されうる。
【0081】
他の態様では、ヒト化抗体は、Fcレセプターに結合するヒトIgG1定常領域(例えばIgG1、-2又は-3)、又はFcレセプターに結合するか又はFcレセプターへの結合を増加させるように修飾されているヒトIgG1、2、3又は4の定常領域、又はヒトIgG定常領域を含む。他の実施態様では、モノクローナル抗体又はその断片が、抗体が結合している細胞に対して毒性がある部分に連結される。このような抗体は、NK-LDGL(顆粒リンパ球のNK型リンパ球増殖性疾患;NK-LGLとも言う)のような所定の用途に有用な、NK細胞を枯渇させることが望ましい用途に特に有用であり、「枯渇(depleting)」抗体と称されうる。
【0082】
ヒト化抗体の組換え産生のためには、ヒト化VH及びVL領域、又はその変異体型を、標準的な組換え法に従って、ヒト抗体の完全長又は切断型定常領域をコードする発現ベクター中にクローニングすることができる(例えばSambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2版, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 1989を参照)。その結果、選択されたVH及びVL領域及び定常領域を含む対象のヒト化抗体分子を発現して、分泌する形質移入細胞株となる。ヒト抗体の定常領域をコードするcDNA配列は知られている。例えばGenBankによって利用可能であり、それぞれが出典明示によってその全体が援用される例示的なcDNA配列は、以下の通りである。
ヒトIgG1定常重鎖領域:GenBank寄託番号:J00228、
ヒトIgG2定常重鎖領域:GenBank寄託番号:J00230、
ヒトIgG3定常重鎖領域:GenBank寄託番号:X04646、
ヒトIgG4定常重鎖領域:GenBank寄託番号:K01316、及び
ヒトκ軽鎖定常領域:GenBank寄託番号:J00241。
【0083】
所望ならば、ヒト化抗体のクラスがまた既知の方法によって「切り換えられ(switched)」うる。例えば、IgM分子として元々は産生された抗体がIgG抗体にクラス切換えされうる。また、クラス切換え技術を用いて、IgGサブクラスから他へ、例えばIgG1からIgG2に変換しうる。よって、本発明の抗体のエフェクター機能は、例えば、様々な治療的用途のためにIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE又はIgM抗体へアイソタイプを切換えることによって変化させうる。
【0084】
定常領域は既知の方法に従って更に修飾されうる。例えば、IgG4定常領域では、残基S241をプロリン(P)残基に突然変異させて、ヒンジで完全なジスルフィド架橋を形成させてもよい(例えばAngal等, Mol Immunol. 1993;30:105-8を参照)。
【0085】
抗体断片
本発明のヒト化抗体は抗体断片として調製され得、又は抗体断片がヒト化完全長抗体から調製されうる。
ヒト化抗体の抗体断片を産生するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は、完全長抗体のタンパク質分解性消化によって誘導された(例えばMorimoto等, Journal of Biochemical and Biophysical Methods, 24:107-117 (1992);及びBrennan等, Science, 229:81 (1985)を参照)。しかし、これらの断片は、現在は組換え宿主細胞により直接産生することができる。別法として、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収することができ、化学的にカップリングさせてF(ab')2断片を形成することができる(Carter等, Bio/Technology, 10:163-167 (1992))。他のアプローチ法では、F(ab')2断片を組換え宿主細胞培養物から直接分離することができる。抗体断片を生産するのための他の方法は、当業者には明らかであろう。他の実施態様では、選択する抗体は単鎖Fv断片(scFv)である。国際公開1993/16185号;米国特許第5571894号;及び米国特許第5587458号を参照のこと。また、抗体断片は、例えば米国特許第5641870号に記載されているような「直鎖状抗体」でありうる。そのような直鎖状抗体断片は単一特異性又は二重特異性でありうる。
【0086】
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する抗体である。二重特異性抗体を作製する方法は当該分野において既知であり、完全長二重特異性抗体の伝統的な産生は通常2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づいており、ここで2つの鎖は異なる特異性を持つものである(Millstein等, Nature, 305: 537-539 (1983))。本発明に係る二重特異性抗体では、少なくとも一方の結合エピトープがNKG2Aタンパク質上にある。抗NKG2A結合「アーム」は、T細胞レセプター分子(例えばCD2又はCD3)、又はIgGのためのFcレセプター(Fcγ−R)、例えばFc−γ−RI(CD64)、Fc−γ−RII(CD32)及びFc−γ−RIII(CD16)などの白血球上のトリガー分子に結合する「アーム」と組み合わせて、NKG2A発現細胞に対して細胞防御機構を集中させてもよい。また、二重特異性抗体を用いて細胞傷害剤をNKG2Aを発現する細胞に局在化させてもよい。これら抗体は、NKG2A結合アームと、細胞傷害剤(例えばサポリン、抗インターフェロンα、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキセート、又は放射性同位体ハプテン)を結合するアームを有する。二重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片(例えばF(ab')2二重特異性抗体)として調製することができる。2以上の結合価を有する抗体が考慮される。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tutt等, J. Immunol, 147: 60 (1991)。
【0087】
抗体誘導体
本発明の範囲内の抗体誘導体には、第二薬剤にコンジュゲートさせ又は共有結合させたヒト化抗体が含まれる。
本発明の一態様では、薬剤は第二薬剤にコンジュゲートされ又は融合される。
更なる態様では、第二薬剤は、遅延化基、例えばPEG、細胞傷害剤、検出可能なマーカー、標的薬剤から選択される。
【0088】
例えば、一態様では、本発明は、細胞傷害性剤にコンジュゲートさせ又は共有結合させたヒト化抗体を含むイムノコンジュゲートを提供する。ここで用いられる「細胞傷害性剤」なる用語は、その細胞表面上にNKG2Aレセプターを有する細胞を死滅化することができる分子である。細胞傷害作用又は細胞抑制作用を有する任意のタイプの部分を、本抗体にコンジュゲートさせて、本発明の細胞傷害性コンジュゲートを形成させ、特定のNKレセプター発現細胞を阻害又は死滅化させることができ、治療用放射性同位体、毒性タンパク質、毒性小分子、例えば薬剤、毒素、免疫調節剤、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、酵素、オリゴヌクレオチド、酵素阻害剤、治療用放射性核種、血管形成阻害剤、化学療法剤、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、エピドフィロトキシン、タキサン、代謝拮抗物質、アルキル化剤、抗生物質、COX-2阻害剤、SN-38、抗有糸分裂剤、抗血管形成及びアポトーシス剤、特にドキソルビシン、メトトレキセート、タキソール、CPT-11、カンプトテカン、ナイトロジェンマスタード、ゲムシタビン、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素、トリアゼン、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体、白金配位錯体、緑膿菌外毒素、リシン、アブリン、5-フルオロウリジン、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)、DNアーゼI、ブドウ球菌エンテロトキシン-A、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン(gelonin)、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素、及び緑膿菌内毒素及び他のものが含まれる(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 19版 (Mack Publishing Co. 1995);Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics (McGraw Hill, 2001);Pastan等 (1986) Cell 47:641;Goldenberg (1994) Cancer Journal for Clinicians 44:43;米国特許第6077499号を参照;その全ての開示が出典明示によりここに援用される)。毒素は、動物、植物、真菌又は微生物由来のものであってよく、又は化学合成により新たに作製することもできることが理解される。
【0089】
他の実施態様では、抗体は、放射性同位体、例えば治療用放射性核種又は検出目的のために適切な放射性核種によって誘導体化される。多くの適切な放射性同位体の任意のものを使用することができ、限定されるものではないが、I-131、インジウム-111、ルテチウム-171、ビスマス-212、ビスマス-213、アスタチン-211、銅-62、銅-64、銅-67、イットリウム-90、ヨード-125、ヨード-131、リン-32、リン-33、スカンジウム-47、銀-111、ガリウム-67、プラセオジミウム-142、サマリウム-153、テルビウム-161、ジスプロシウム-166、ホルミウム-166、レニウム-186、レニウム-188、レニウム-189、鉛-212、ラジウム-223、アクチニウム-225、鉄-59、セレン-75、ヒ素-77、ストロンチウム-89、モリブデン-99、ロジウム-105、パラジウム-109、プラセオジミウム-143、プロメチウム-149、エルビウム-169、イリジウム-194、金-198、金-199、及び鉛-211が含まれる。一般に、放射性核種は、オージェエミッターで好ましくは20〜6000KeVの範囲、好ましくは60〜200KeVの範囲、ベータエミッターで100〜2500KeV、アルファエミッターで4000〜6000KeVの崩壊エネルギーを有する。また、アルファ粒子を発生して実質的に崩壊する放射性核種が好ましい。
【0090】
他の実施態様では、第二薬剤は検出可能な部分であり、それは定量的又は定性的に観察されるか又は測定されうる任意の分子でありうる。本発明のコンジュゲート抗体に有用な検出可能なマーカーの例は、放射性同位体、蛍光色素、又は相補的な結合対のメンバー、例えば抗原/抗体(NKG2Aに対する抗体以外)、レクチン/糖質;アビジン/ビオチン;レセプター/リガンド;又は、分子的にインプリントされたポリマー/プリント分子システムの何れか一のメンバーである。
【0091】
第二薬剤はまたもしくはあるいは、例えば、ヒト化抗体の循環半減期を増やすことを目的とするポリマーでありうる。例示的なポリマー及び該ポリマーをペプチドに接着させる方法は、例えば米国特許第4766106号;同第4179337号;同第4495285号;及び同第4609546号に例示される。更なる例示的なポリマーには、ポリオキシエチレート化ポリオール及びポリエチレングリコール(PEG)部分が含まれる(例えば、完全長抗体又は抗体断片は、約1000から約40000、例えば約2000から約20000、例えば約3000から12000の間の分子量を有する一又は複数のPEG分子にコンジュゲートさせうる)。
【0092】
細胞傷害性剤又は他の化合物は、多数の利用可能な方法の任意のものを使用し、直接的又は間接的に抗体に結合させることができる。例えば、薬剤は、N-スクシニル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)等の架橋剤を使用し、ジスルフィド結合形成を介して、又は抗体のFc領域内の糖質部分を介して、還元された抗体成分のヒンジ領域に接着させることができる(例えば、Yu等 (1994) Int. J. Cancer 56: 244;Wong, Chemistry of Protein Conjugation and Cross-linking (CRC Press 1991);Upeslacis等, "Modification of Antibodies by Chemical Methods," Monoclonal antibodies: principles and applications, Birch等編, pages 187-230 (Wiley-Liss, Inc. 1995);Price, "Production and Characterization of Synthetic Peptide-Derived Antibodies," Monoclonal antibodies: Production, engineering and clinical application, Ritter等編, pages 60-84 (Cambridge University Press 1995)、Cattel等 (1989) Chemistry today 7:51-58、Delprino等 (1993) J. Pharm. Sci 82:699-704;Arpicco等 (1997) Bioconjugate Chernistry 8:3;Reisfeld等 (1989) Antihody, Immunicon. Radiopharrn. 2:217を参照;それぞれの全ての開示は、出典明示によりここに援用される)。
【0093】
別法として、抗NKG2A抗体と第二(細胞傷害性又は他の)ポリペプチド薬剤を含む融合タンパク質は、例えば組換え技術又はペプチド合成によって作製されうる。
【0094】
結合アッセイ
本発明は、ヒトNKG2Aに結合する抗体、特にZ199ハイブリドーマによって産生される抗NKG2A抗体のヒト化型を提供する。
多種多様なアッセイの何れかを用いてヒトNKG2Aに対する抗体の結合を評価することができる。とりわけ、ELISA、ラジオイムノアッセイ、ウェスタンブロッティング、BIACORE及び他の競合アッセイに基づくプロトコールが使用に適しており、当該分野でよく知られている。
【0095】
例えば、試験抗体を標的タンパク質又はエピトープ(例えばCD94/NKG2A又はその一部)の存在下でインキュベートし、未結合抗体を洗い流し、例えば放射標識、質量分析などの物理学的方法、又は細胞蛍光測定分析法(例えばFACScan)などを用いて検出される直接的又は間接的蛍光標識を使用して結合抗体の存在を評価する単純な結合アッセイを用いることができる。このような方法は当業者によく知られている。コントロールである非特異的な抗体で見られる量を上回る任意の結合量は、抗体が標的に特異的に結合することを示す。
【0096】
このようなアッセイでは、試験抗体の標的細胞又はヒトNKG2Aに結合する能力を、(ネガティブ)コントロールタンパク質、例えば構造的に関係のない抗原に対する抗体又は非Igペプチド又はタンパク質の同じ標的に結合する能力と比較することができる。任意の適切なアッセイを用いたときの抗体又は断片の標的細胞又はNKG2Aへの結合親和性がコントロールタンパク質よりも25%、50%、100%、200%、1000%ないしそれ以上に増加している場合に、標的「に特異的に結合する」又は「と特異的に相互作用する」と言い、以下に記載の治療方法への使用に好ましい。また、NKG2A、例えばマウス又はヒト化Z199、あるいはその誘導体に対する(ポジティブ)コントロール抗体の結合に影響する試験抗体の能力を評価してもよい。
【0097】
ヒト化抗NKG2A抗体はヒトNKG2Cに結合してもしなくともよく、ヒトNKG2Eに結合してもしなくともよく、ヒトNKG2C及びEの何れかに結合してもしなくともよい。特定の実施態様では、モノクローナル抗体又は断片は、他のヒトNKG2レセプター、特に活性化レセプターCD94/NKG2C及び/又はCD94/NKG2Eに、CD94/NKG2Aに対してよりも有意に低い親和性で結合する。本発明の抗体のNKG2C及びNKG2E結合特性は、単にNKG2Aを対象の分子と交換する上記のものと類似のアッセイで評価することができる。
【0098】
一態様では、本発明は、生物学的特徴及び/又は実質的な配列同一性をZ199と共有している非ヒト抗体のヒト化型を提供する。ある例示的な生物学的特徴は、Z199エピトープ、すなわちZ199抗体が結合するNKG2Aの細胞外ドメイン内の領域への結合である。Z199エピトープに結合する抗体をスクリーニングするために、例えばAntibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed Harlow及びDavid Lane (1988)に記載のもののような常套的な交差ブロックアッセイを実施することができる。
【0099】
例示的な交差ブロック又は競合アッセイでは、Z199(コントロール)抗体と試験抗体が混合され(又は予め吸着され)、NKG2Aを含む試料に適用される。ある実施態様では、NKG2A含有試料に適用する前の一定時間、コントロール抗体を様々な量の試験抗体(例えば1:10又は1:100)とプレミックスしてもよい。他の実施態様では、コントロールと様々な量の試験抗体が、抗原/標的試料への曝露の間に単に混合されうる。遊離した抗体から結合した抗体を(例えば、分離法又は洗浄技術を用いて未結合抗体を取り除くことによって)、また試験抗体からコントロール抗体を(例えば、種-又はアイソタイプ-特異的な二次抗体を用いることによって、コントロール抗体を検出可能な標識で特異的に標識することによって、又は異なる化合物を区別するための質量分析のような物理的な方法を用いることによって)区別することができる限り、試験抗体が抗原へのコントロール抗体の結合を低減するかどうかを決定することができ、試験抗体がコントロールと実質的に同じエピトープを認識することが示される。このアッセイにおいて、完全に無関係な抗体の存在下で(標識した)コントロール抗体が結合すると、コントロール値は高い。低いコントロール値は、標識した(ポジティブ)コントロール抗体(Z199)を未標識コントロール抗体とインキュベートすることによって得られ、そこで競合が生じて標識した抗体の結合が低減される。
【0100】
試験アッセイでは、試験抗体の存在下で標識抗体の反応性が有意に低減した場合、試験が抗体が同じエピトープを認識する、すなわち標識したコントロール抗体と「交差反応する」ことを表す。約1:10から約1:100の間のコントロール:試験抗体又は化合物の何れかの比率で、抗原/標的への標識したコントロールの結合性を少なくとも50%又はより好ましくは70%低減する任意の試験抗体又は化合物は、コントロールと実質的に同じエピトープ又は決定基に結合する抗体又は化合物であると考えられる。好ましくは、このような試験抗体又は化合物は、抗原/標的へのコントロールの結合を少なくとも90%低減するであろう。しかしながら、コントロール抗体又は化合物の結合を測定可能な程度に低減する任意の化合物又は抗体を本発明で使用することができる。
【0101】
同様の交差ブロックアッセイをまた用いて、Z199をHLA-Eの好適な形態と交換することによって、試験(ヒト化)抗体が、ヒトCD94/NKG2Aの天然のリガンドであるHLA-EのCD94/NKG2Aへの結合に影響するか否かを評価することができる。例えば、ヒト化抗NKG2A抗体調製物がHLA-EとのCD94/NKG2A相互作用を低減又はブロックするか否かを決定するために、以下の試験を実施することができる:CD94/NKG2A、例えばBa/F3-CD94/NKG2A、NKL又はNK92を発現する細胞株を30分間氷上でインキュベートし、試験抗NKG2A抗体の濃度を上げる。ついで、細胞を、標準的な方法によって、PE標識したHLA-E四量体と氷上で30分間インキュベートし、再度洗浄して、フローサイトメーター(FACScalibur、Beckton Dickinson)にてHLA-E四量体の結合を分析する。試験抗体がない場合、HLA-E四量体は細胞に結合する。HLA-EへのCD94/NKG2A-結合をブロックする抗体調製物の存在下では、細胞へのHLA-E四量体の結合が低減し、このようなmAbは「遮断(ブロッキング)抗体」と称される。本発明は、HLA−EをブロックしないでヒトCD94/NKG2Aレセプターの阻害活性を低減する抗体を提供する。
【0102】
NKG2A発現細胞を死滅させることが望まれないなどの本発明のある態様では、本発明のヒト化抗体はFcレセプターに対して実質的に特異的な結合を示さないのが好ましい。このような抗体は、Fcレセプターに結合しないことが分かっている様々な重鎖の定常領域を含みうる。そのような一例はIgG4定常領域である。あるいは、定常領域を含まない抗体断片、例えばFab又はF(ab')2断片を、Fcレセプター結合を避けるために使用することができる。Fcレセプター結合は、例えばBIACOREアッセイでのFcレセプタータンパク質に対する抗体の結合を試験することを含む当該分野で知られている方法に従って評価することができる。また、Fc部分がFcレセプターへの結合を最小化するか又は避けるように修飾されている任意の他の抗体タイプを使用することもできる(例えばその開示内容が出典明示によってここに援用される国際公開03101485を参照)。例えばFcレセプター結合を評価するための細胞ベースのアッセイなどのアッセイは当該分野でよう知られており、例えば国際公開第03101485に記載されている。
【0103】
機能的アッセイ
抗NKG2A抗体がHLA-EとのCD94/NKG2A相互作用を低減又はブロックする場合、CD94/NKG2A制限リンパ球の細胞傷害能を亢進しうる。これは、典型的な細胞傷害性アッセイによって評価されるが、その例を以下に記載する。
【0104】
CD94/NKG2A媒介性シグナル伝達を低減させる抗体の能力は、例えばCD94/NKG2Aを発現するNKL細胞、及びHLA-Eを発現する標的細胞を使用する、標準的な4時間インビトロ細胞傷害性アッセイにおいて試験することができる。CD94/NKG2AがHLA-Eを認識して、リンパ球媒介性細胞溶解を防止する阻害シグナル伝達の開始及び伝播を引き起こすので、このようなNKL細胞は、HLA-Eを発現する標的を効果的には死滅させない。例えば、Coligan等編, Current Protocols in Immunology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience, N.Y.,(1992, 1993)に記載されているように、このようなインビトロ細胞傷害性アッセイは、当該分野でよく知られている標準的な方法で実施可能である。標的細胞は、NKL細胞の添加前に51Crで標識され、ついで、死滅の結果として、死滅度は、細胞から培地への51Crの放出度合いに対する比率として推定される。CD94/NKG2AのHLA-Eへの結合を阻害する抗体を添加すると、CD94/NKG2Aを介して阻害シグナル伝達の開始及び伝播が阻害される。よって、このような薬剤が添加されると、標的細胞のリンパ球媒介性死滅度が増加する。この工程により、例えばリガンド結合をブロックすることで、CD94/NKG2A誘発性陰性シグナル伝達を阻害する薬剤が同定される。特定の51Cr-放出細胞傷害性アッセイにおいて、CD94/NKG2A発現NKLエフェクター細胞は、HLA-E陰性LCL721.221標的細胞を死滅させることが可能であるが、HLA-E発現LCL721.221-Cw3コントロール細胞に対してはあまり効果的ではない。これに対し、CD94/NKG2Aを欠くYTSエフェクター細胞は、双方の細胞系を効果的に死滅させる。よって、NKLエフェクター細胞は、CD94/NKG2Aを介したHLA-E誘発性阻害シグナル伝達のため、HLA-ELCL721.221-Cw3細胞の死滅にはあまり効果的ではない。このような51Cr-放出細胞傷害性アッセイにおいて、NKL細胞が、本発明に係るブロッキング抗CD94/NKG2A抗体と共にプレインキュベートされる場合、HLA-E発現LCL721.221-Cw3細胞は、抗体濃度依存的な様式でより効果的に死滅される。
【0105】
本発明の抗体の阻害活性(つまり、細胞傷害性亢進潜在性)は、例えばその開示が出典明示によりここに援用されるSivori等, J. Exp. Med. 1997;186:1129-1136に記載されるような、細胞内の遊離カルシウムへのその効果により、多くの他の方法の何れかで評価することができる。NK、T又はNKT細胞活性もまた、例えばクロム放出又は他のパラメーターを測定し、P815細胞、K562細胞、又はその開示が出典明示によりここに援用されるSivori等, J. Exp. Med. 1997;186:1129-1136;Vitale等, J. Exp. Med. 1998; 187:2065-2072;Pessino等 J. Exp. Med. 1998;188:953-960;Neri等 Clin. Diag. Lab. Immun. 2001;8:1131-1135;Pende等 J. Exp. Med. 1999;190:1505-1516に開示される適切な腫瘍細胞を殺傷するようにNK細胞を刺激する抗体の能力を評価するために、細胞ベースの細胞傷害性アッセイを用いて評価することができる。
【0106】
一実施態様では、抗体調製物は、CD94/NKG2A制限リンパ球の細胞傷害性を少なくとも10%増強させ、好ましくはNK細胞傷害性を少なくとも40%又は50%増強させ、又はより好ましくはNK細胞傷害性を少なくとも70%増強させる。
【0107】
また、細胞傷害性リンパ球の活性は、NK細胞を抗体と共にインキュベートしてNK細胞のサイトカイン産生(例えばIFN-y及びTNF-α産生)を刺激するサイトカイン放出アッセイを使用して調べることができる。例示的なプロトコールでは、PBMCからのIFN-y産生が、培養の4日後にフローサイトメトリーによって細胞表面及び細胞質内を染色して分析することによって評価される。簡単に述べると、培養の最後4時間に、5μg/mlの最終濃度でブレフェルジンA(Sigma Aldrich)を添加する。ついで、細胞を、透過処理前に、抗CD3及び抗CD56mAb(IntraPrepTM; Beckman Coulter)と共にインキュベートし、PE-抗IFN-y又はPE-IgG1(Pharmingen)で染色する。ポリクローナル活性化NK細胞からのGM-CSF及びIFN-y生産を、ELISA(GM-CSF: DuoSet Elisa, R&D Systems, Minneapolis, MN, IFN-: OptElA set, Pharmingen)を使用し、上清において測定する。
【0108】
特定の態様では、本発明は、CD94/NKG2A制限リンパ球の細胞傷害能を亢進する、CD94/NKG2A制限リンパ球の細胞傷害活性を高める、又はCD94/NKG2A媒介性のシグナル伝達を低減又は阻害することがより可能か、又は元の非ヒト化抗体及び/又はそのキメラ型よりもより有効である抗体を提供する。このような抗体は、元の非ヒト化抗体及び/又はそのキメラ型よりも、例えば少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、又は少なくとも20%以上機能可能か又は有効である。
【0109】
抗体生産
本発明はまたここに記載の抗NKG2A抗体をコードする単離された核酸、並びにかかる核酸を含むベクター及び宿主細胞を提供する。
一態様では、本発明に係る薬剤をコードする核酸断片が提供される。
一態様では、DNA及びRNA断片から選択される本発明に係る薬剤をコードする核酸断片が提供される。
【0110】
また提供されるものは、例えば核酸又はベクターを含む好適な宿主細胞を培養して核酸を発現させ、ヒト化抗体を産生させるなどの、組換え技術を用いてかかる抗NKG2A抗体を生産する方法である。培養前に、宿主細胞に、可変重鎖ドメインをコードする核酸を含むベクターと可変軽鎖ドメインをコードする核酸を含むベクターとを同時形質移入してもよい。また、抗体は既知の技術を用いて宿主細胞から回収され、及び/又は精製されうる。有用なベクター、宿主細胞、及び技術を以下に更に記載する。
【0111】
一般に、抗体の組換え生産のために、それをコードする核酸が単離され、更なるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製可能なベクター中に挿入され、典型的には一又は複数の発現制御エレメントに作用可能に連結される。一般的な手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドを使用することによって)、モノクローナル抗体をコードするDNAは直ぐに単離され、配列決定される。多くのベクターが既知で入手可能である。ベクター成分には、一般に、これらに制限されるものではないが、次のものの一又は複数が含まれる:シグナル配列、複製起点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列。
【0112】
シグナル配列成分
本発明の抗NKG2A抗体は直接的に組換え手法によって生産されるだけではなく、シグナル配列あるいは成熟タンパク質又はポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドである異種性ポリペプチドとの融合ペプチドとしても生産される。好ましく選択された異種シグナル配列は宿主細胞によって認識され加工される(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。
【0113】
天然抗NKG2A抗体シグナル配列を認識せずプロセシングしない原核生物宿主細胞に対して、シグナル配列は、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppあるいは熱安定なエンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核生物シグナル配列により置換される。酵母での分泌に対して、天然シグナル配列は、例えば酵母インベルターゼリーダー、α因子リーダー(酵母菌属(Saccharomyces)及びクルイベロマイシス(Kluyveromyces)α因子リーダーを含む)、又は酸ホスフォターゼリーダー、白体(C.albicans)グルコアミラーゼリーダー、又は国際公開第1990/13646号に記載されているシグナルにより置換されうる。哺乳動物細胞での発現においては、哺乳動物のシグナル配列並びにウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルが利用できる。
このような前駆体領域のDNAは、抗NKG2A抗体をコードするDNAのリーディングフレームにライゲートされる。
【0114】
複製起点成分
発現及びクローニングベクターは共に一又は複数の選択された宿主細胞においてベクターの複製を可能にする核酸配列を含む。一般に、クローニングベクターにおいて、この配列は宿主染色体DNAとは独立にベクターが複製することを可能にするものであり、複製開始点又は自律的複製配列を含む。そのような配列は多くの細菌、酵母及びウイルスに対してよく知られている。プラスミドpBR322に由来する複製開始点は大部分のグラム陰性細菌に好適であり、2μプラスミド開始点は酵母に適しており、様々なウイルス開始点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV、EBV又はBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般には、哺乳動物の発現ベクターには複製開始点成分は不要である(SV40開始点は典型的にはただ初期プロモーターを有しているために用いられる)。
【0115】
選択遺伝子成分
発現及びクローニングベクターは、選択可能マーカーとも称される選択遺伝子を含みうる。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質あるいは他の毒素に耐性を与え、(b)栄養要求性欠陥を補い、又は(c)例えばバシリに対する遺伝子コードD-アラニンラセマーゼのような、複合培地から得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
【0116】
選択方法の一例では、宿主細胞の増殖を抑止する薬物が用いられる。異種性遺伝子で首尾よく形質転換される細胞は、薬物耐性を付与するタンパク質を生産し、よって選択工程を生存する。このような優性選択の例は、薬剤ネオマイシン、ミコフェノール酸及びハイグロマイシンを使用する。
【0117】
哺乳動物細胞に適切な選択マーカーの他の例は、抗NKG2A抗体をコードする核酸を捕捉するのにコンピテントな細胞を同定することを可能にするもの、例えばDHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネインI及びII、好ましくは、霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ等々である。
【0118】
例えば、DHFR選択遺伝子によって形質転換された細胞は、先ず、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトリキセート(Mtx)を含む培地において形質転換物の全てを培養することで同定される。野生型DHFRを用いる場合の好適な宿主細胞は、DHFR活性に欠陥のあるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)株化細胞である。
【0119】
あるいは、抗NKG2A抗体をコードするDNA配列、野生型DHFRタンパク質、及びアミノグリコシド3'-ホスホトランスフェラーゼ(APH)のような他の選択可能マーカーで形質転換あるいは同時形質転換した宿主細胞(特に、内在性DHFRを含む野生型宿主)は、カナマイシン、ネオマイシンあるいはG418のようなアミノグリコシド抗生物質のような選択可能マーカーの選択剤を含む培地中での細胞増殖により選択することができる。米国特許第4965199号を参照のこと。
【0120】
酵母中での使用に好適な選択遺伝子は酵母プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcomb等, Nature, 282:39(1979))。trp1遺伝子は、例えば、ATCC第44076号あるいはPEP4-1のようなトリプトファン内で増殖する能力に欠ける酵母の突然変異株に対する選択マーカーを提供する。Jones, Genetics, 85:12 (1977)。酵母宿主細胞ゲノムにtrp1破壊が存在することは、ついでトリプトファンの不存在下における増殖による形質転換を検出するための有効な環境を提供する。同様に、Leu2欠損酵母株(ATCC20622あるいは38626)は、Leu2遺伝子を有する既知のプラスミドが補完される。
【0121】
また、1.6μmの円形プラスミドpKD1由来のベクターは、クルイヴェロマイシス(Kluyveromyces)酵母の形質転換に用いることができる。あるいは、組換え仔ウシのキモシンの大規模生産のための発現系がK.ラクティス(lactis)に対して報告されている。Van den Berg, Bio/Technology, 8:135 (1990)。クルイヴェロマイシスの工業的な菌株による組換え成熟ヒト血清アルブミンの分泌のための安定した複数コピー発現ベクターもまた開示されている。Fleer 等, Bio/Technology,9:968-975 (1991)。
【0122】
プロモーター成分
発現及びクローニングベクターは通常は宿主生物によって認識され抗NKG2A抗体をコードする核酸に作用可能に結合しているプロモーターを含む。原核生物宿主での使用に好適なプロモーターは、phoAプロモーター、βラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系、及びハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーターを含む。しかし、他の既知の細菌プロモーターも好適である。細菌系で使用するプロモータもまた抗NKG2A抗体をコードするDNAと作用可能に結合したシャイン・ダルガーノ(S.D.)配列を含む。
【0123】
真核生物に対しても様々なプロモーター配列が知られている。実質的に全ての真核生物の遺伝子が、転写開始部位からおよそ25から30塩基上流に見出されるATリッチ領域を有している。多くの遺伝子の転写開始位置から70から80塩基上流に見出される他の配列は、Nが任意のヌクレオチドであるCNCAAT領域である。大部分の真核生物遺伝子の3'末端には、コード配列の3'末端へのポリA尾部の付加に対するシグナルであるAATAAA配列がある。これらの配列は全て真核生物の発現ベクターに適切に挿入される。酵母宿主と共に用いて好適なプロモーター配列の例としては、3-ホスホグリセラートキナーゼ又は他の糖分解酵素、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオセリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼが含まれる。
【0124】
他の酵母プロモーターは、成長条件によって転写が制御される付加的効果を有する誘導プロモーターであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝と関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトースの利用を支配する酵素のプロモーター領域である。酵母の発現に好適に用いられるベクターとプロモータは欧州特許出願公開第73657号に更に記載されている。また酵母エンハンサーも酵母プロモーターと共に好適に用いられる。
【0125】
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからの抗NKG2A抗体の転写は、例えば、ポリオーマウイルス、伝染性上皮腫ウイルス、アデノウイルス(例えばアデノウイルス2)、ウシ乳頭腫ウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス及び最も好ましくはサルウイルス40(SV40)のようなウイルスのゲノムから得られるプロモーター、異種性哺乳動物プロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、熱ショックプロモーターによって、このようなプロモーターが宿主細胞系に適合し得る限り、調節される。
【0126】
SV40ウイルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルスの複製起点を更に含むSV40制限断片として簡便に得られる。ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーターは、HindIIIE制限断片として簡便に得られる。ベクターとしてウシ乳頭腫ウイルスを用いて哺乳動物宿主中でDNAを発現させる系が、米国特許第4419446号に開示されている。この系の変形例は米国特許第4601978号に開示されている。また、単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの調節下でのマウス細胞中でのヒトβインターフェロンcDNAの発現について、Reyes等, Nature, 297:598-601(1982)を参照のこと。あるいは、ラウス肉腫ウイルス長末端反復をプロモーターとして使用することができる。
【0127】
エンハンサーエレメント成分
より高等の真核生物による本発明の抗NKG2A抗体をコードしているDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによってしばしば増強される。哺乳動物遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウイルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(100−270塩基対)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウイルスエンハンサーが含まれる。真核生物プロモーターの活性化のための増強要素については、Yaniv, Nature, 297:17-18 (1982)もまた参照のこと。エンハンサーは、抗NKG2A抗体コード配列の5'又は3'位でベクター中にスプライシングされうるが、好ましくはプロモーターから5'位に位置している。
【0128】
転写終結成分
真核生物宿主細胞(例えば酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)に用いられる発現ベクターは、また転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列を含む。このような配列は、真核生物又はウイルスのDNA又はcDNAの5'末端、時には3'末端の非翻訳領域から一般に取得できる。これらの領域は、抗NKG2A抗体をコードしているmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。一つの有用な転写終結成分はウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。国際公開第94/11026号とそこに開示された発現ベクターを参照のこと。
【0129】
宿主細胞の選択及び形質転換
ここに記載のベクター中のDNAをクローニングあるいは発現させるために適切な宿主細胞は、上述の原核生物、酵母、又は高等真核生物細胞である。この目的にとって適切な原核生物は、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えばエシェリチアのような腸内菌科、例えば大腸菌、エンテロバクター、エルウィニア(Erwinia)、クレブシエラ、プロテウス、サルモネラ、例えばネズミチフス菌、セラチア属、例えばセラチア・マルセスキャンス及び赤痢菌属、並びに桿菌、例えば枯草菌及びバシリ・リチェフォルミス(licheniformis)(例えば、1989年4月12日に公開されたDD266710に開示されたバシリ・リチェニフォルミス41P)、シュードモナス属、例えば緑膿菌及びストレプトマイセス属を含む。一つの好適な大腸菌クローニング宿主は大腸菌294(ATCC31446)であるが、他の大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC31537)及び大腸菌W3110(ATCC27325)のような株も好適である。これらの例は限定するものではなく例示的なものである。
【0130】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、抗NKG2A抗体をコードするベクターに適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシア、又は一般的なパン酵母は下等真核生物宿主微生物のなかで最も一般的に用いられる。しかしながら、多数の他の属、種及び菌株も、一般的に入手可能でここで使用できる、例えば、シゾサッカロマイセスポンベ;クルイベロマイセス宿主、例えばK.ラクティス、K.フラギリス(ATCC12424)、K.ブルガリカス(ATCC16045)、K.ウィッケラミイ(ATCC24178)、K.ワルチイ(ATCC56500)、K.ドロソフィラルム(ATCC36906)、K.サーモトレランス、及びK.マルキシアナス;ヤローウィア(EP402226);ピチアパストリス(EP183070);カンジダ;トリコデルマ・リーシア(EP244234);アカパンカビ;シュワニオマイセス、例えばシュワニオマイセスオクシデンタリス;及び糸状真菌、例えばパンカビ属、アオカビ属、トリポクラジウム、及びコウジカビ属宿主、例えば偽巣性コウジ菌及びクロカビが使用できる。
【0131】
グリコシル化抗NKG2A抗体の発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては植物及び昆虫細胞が含まれる。多数のバキュロウイルス株及び変異体及び対応する許容可能な昆虫宿主細胞、例えばスポドプテラ・フルギペルダ(毛虫)、アエデス・アエジプティ(蚊)、アエデス・アルボピクトゥス(蚊)、ドゥロソフィラ・メラノガスター(ショウジョウバエ)、及びボンビクス・モリが同定されている。トランスフェクションのための種々のウイルス株、例えば、オートグラファ・カリフォルニカNPVのL-1変異体とボンビクス・モリ NPVのBm-5株が公に利用でき、そのようなウイルスは本発明においてここに記載したウイルスとして使用でき、特にスポドプテラ・フルギペルダ細胞の形質転換に使用できる。
綿花、コーン、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、及びタバコのような植物細胞培養を宿主として利用することができる。
【0132】
しかしながら、脊椎動物細胞におけるものが最も興味深く、培養(組織培養)中での脊椎動物細胞の増殖は常套的な手順になっている。有用な哺乳動物宿主株化細胞の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株 (COS-7, ATCC CRL1651);ヒト胚腎臓(HEK)株(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Graham等, J. Gen Virol., 36:59 (1977));ハムスター乳児腎細胞(BHK, ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980))、例えばDG44(Urlaub等, Som. Cell and Mol. Gen., 12: 555-566 (1986))及びDP12細胞株;マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));サルの腎細胞 (CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザルの腎細胞(VERO-76, ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞 (HELA, ATCC CCL2);イヌ腎細胞 (MDCK, ATCC CCL34);バッファローラット肝細胞 (BRL3A, ATCC CRL1442);ヒト肺細胞 (W138, ATCC CCL75);ヒト肝細胞 (Hep G2, HB8065);マウス乳房腫瘍細胞 (MMT060562, ATCC CCL51);TRI細胞(Mather等, Annals N.Y. Acad. Sci., 383:44-68 (1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝癌株(HepG2)である。
宿主細胞は、抗NKG2A抗体生産のために上述の発現又はクローニングベクターで形質転換され、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードしている遺伝子を増幅するために適切に修飾された常套的栄養培地で培養される。
【0133】
宿主細胞の培養
本発明の抗NKG2A抗体を産生するために用いられる宿主細胞は種々の培地において培養することができる。市販培地の例としては、ハム(Ham)のF10(Sigma)、最小必須培地((MEM),(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、FreeStyleTM(Cibco)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM), Sigma)が宿主細胞の培養に好適である。また、例えばHam等, Meth. Enz. 58:44 (1979), Barnes等, Anal. Biochem. 102:255 (1980)、米国特許第4767704号;同4657866号;同4927762号;同4560655号;又は同5122469号;国際公開第90/03430号;国際公開第87/00195号;又は米国再発行特許第30985号に記載された何れの培地も宿主細胞に対する培地として使用できる。これらの培地には何れもホルモン及び/又は他の増殖因子(例えばインシュリン、トランスフェリン、又は表皮増殖因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、GENTAMYCINTM薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)及びグルコース又は等価なエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含むことができる。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について過去に用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
【0134】
抗体精製
組換え技術を用いる場合、抗体は細胞内、又は細胞膜周辺腔に生成され、又は培地内に直接分泌される。抗体が細胞内に生成される場合、第1の工程として、宿主細胞か溶解された断片の何れにしても、粒子状の細片が、例えば遠心分離又は限外濾過によって除去される。Carter等, Bio/Technology 10: 163-167 (1992)は、大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌された抗体の単離方法を記載している。簡単に述べると、細胞ペーストを、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で約30分間解凍する。細胞細片は遠心分離で除去できる。抗体が培地に分泌された場合は、そのような発現系からの上清を、一般的には先ず市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmiconTM又はPelliconTMの限外濾過装置を用いて濃縮する。フェニルメチルスルホニルフルオライド(PMSF)などのプロテアーゼ阻害剤を上記の任意の工程に含めて、タンパク質分解を阻害してもよく、また抗生物質を含めて外来性の汚染物の成長を防止してもよい。
【0135】
細胞から調製した抗体組成物は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製でき、アフィニティクロマトグラフィーが好ましい精製技術である。アフィニティーリガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体中に存在する免疫グロブリンFc領域の種及びアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ、又はγ4重鎖に基づく抗体の精製に用いることができる(Lindmark等, J. immunol. Meth. 62: 1-13 (1983))。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に推奨されている(Guss等, EMBO J. 5: 16571575 (1986))。アフィニティーリガンドが結合されるマトリクスはアガロースであることが最も多いが、他の材料も使用可能である。孔制御ガラスやポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリクスは、アガロースで達成できるものより早い流速及び短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABXTM樹脂(J.T. Baker, Phillipsburg, NJ)が精製に有用である。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンでのクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂上でのSEPHAROSETMクロマトグラフィー(ポリアスパラギン酸カラム)、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿法もまた、回収される多価抗体に応じて利用可能である。
【0136】
薬学的製剤
一実施態様では、医薬として使用するための本発明に係る薬剤が提供される。
一態様では、悪性腫瘍、ウイルス感染、炎症疾患、及び自己免疫疾患の治療に医薬として使用される本発明に係る薬剤が提供される。
一態様では、ヒト患者における細胞表面に発現されるCD94/NKG2Aレセプターの阻害活性を中和又は低減させるために医薬として使用するための本発明に係る薬剤が提供される。
一態様では、ヒト患者におけるCD94/NKG2A発現細胞の細胞死滅活性を増強するための医薬として使用するための本発明に係る薬剤が提供される。
【0137】
一態様では、ヒト患者においてCw3発現標的細胞の死滅を誘導するための医薬として使用するための本発明に係る薬剤が提供される。
更なる態様では、本発明に係る薬剤を薬学的に許容可能な担体、希釈剤又はビヒクルと共に含有する組成物が提供される。
一実施態様では、本発明はここに記載の抗体を一又は複数の担体と共に含有する薬学的組成物を提供する。
【0138】
従って、本発明の他の目的は、前記の抗体を、1mg/ml〜500mg/mlの濃度で存在しているものを含有する薬学的製剤を提供することであり、該製剤は2.0〜10.0のpHを有する。製剤は、緩衝系、保存料、等張化剤、キレート剤、安定剤及び界面活性剤を更に含有する。一実施態様では、薬学的製剤は水性製剤、すなわち水分を含有する製剤である。このような製剤は典型的には溶液又は懸濁液である。更なる実施態様では、薬学的製剤は水溶液である。「水性製剤」なる用語は、少なくとも50%w/wの水分を含有している製剤として定義される。同様に、「水溶液」なる用語は、少なくとも50%w/wの水分を含有している溶液として定義され、「水性懸濁液」なる用語は、少なくとも50%w/wの水分を含有している懸濁液として定義される。
【0139】
他の実施態様では、薬学的製剤は凍結乾燥製剤であり、これに医師又は患者が使用前に溶剤及び/又は希釈液を添加する。
他の実施態様では、薬学的製剤は、何ら事前溶解させることのない使用準備が整った乾燥製剤(例えば、凍結乾燥又は噴霧乾燥されたもの)である。
更なる態様では、薬学的製剤は前記抗体の水溶液とバッファーを含み、該抗体は1mg/ml又はそれ以上の濃度で存在し、該製剤は約2.0〜約10.0のpHを有する。
他の実施態様では、製剤のpHは、約2.0から約10.0、約3.0から約9.0、約4.0から約8.5、約5.0から約8.0、及び約5.5から約7.5からなるリストから選択される範囲である。
【0140】
更なる実施態様では、バッファーは、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、シトレート、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リジン、アルギニン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、及びトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、ビシン(bicine)、トリシン、リンゴ酸、スクシネート、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、アスパラギン酸又はそれらの混合物から選択されうる。これらの特定のバッファーの各一が本発明の別の実施態様を構成する。
【0141】
更なる実施態様では、製剤は、製薬的に許容可能な保存料を更に含有する。保存料は、例えばフェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、2-フェノキシエタノール、p-ヒドロキシ安息香酸ブチル、2-フェニルエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、及びチオメロサール、ブロノポール、安息香酸、イミド尿素、クロロヘキシジン、デヒドロ酢酸ナトリウム、クロロクレゾール、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、塩化ベンゼトニウム、クロルフェネシン(3p-クロルフェノキシプロパン-1,2-ジオール)又はそれらの混合物からなる群から選択されうる。保存料は、0.1mg/ml〜20mg/ml;0.1mg/ml〜5mg/ml;5mg/ml〜10mg/ml;又は10mg/ml〜20mg/mlの濃度で存在しうる。これらの特定の保存料の各一が、本発明の別の実施態様を構成する。製薬用組成物に保存料を使用することは、当業者によく知られている。簡便には、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 第19版, 1995が参照される。
【0142】
更なる実施態様では、製剤は等張化剤を更に含有しうる。等張化剤は、塩(例えば塩化ナトリウム)、糖又は糖アルコール、アミノ酸(例えば、L-グリシン、L-ヒスチジン、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、スレオニン)、アルジトール(例えばグリセロール(グリセリン)、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール)ポリエチレングリコール(例えばPEG400)、又はそれらの混合物からなる群から選択されうる。任意の糖、例えば単糖類、二糖類又は多糖類、又は水溶性グルカン類、例えばフルクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、及びカルボキシメチルセルロース-Naを使用することができる。一実施態様では、糖添加剤はスクロースである。糖アルコールは、少なくとも一の-OH基を有するC4-C8炭化水素と定義され、例えばマンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトール、ズルシトール、キシリトール、及びアラビトールを含む。一実施態様では、糖アルコール添加剤はマンニトールである。上述した糖又は糖アルコールは、個々に又は組合せて使用されうる。使用される量は、糖又は糖アルコールが液状調製物に溶解し、本発明の方法を使用して得られた安定化効果に悪影響を与えない限りは、固定された限界値があるものではない。糖又は糖アルコールの濃度は、例えば約1mg/ml〜約150mg/mlである。等張化剤は1mg/ml〜50mg/ml;1mg/ml〜7mg/ml;8mg/ml〜24mg/ml;又は25mg/ml〜50mg/mlの濃度で存在してよい。これらの特定の等張化剤の各一が本発明の別の実施態様を構成する。製薬用組成物に等張化剤を使用することは、当業者によく知られている。簡便には、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 第19版, 1995が参照される。
【0143】
更なる実施態様では、製剤はキレート剤も更に含有しうる。キレート剤は、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、及びアスパラギン酸の塩、及びそれらの混合物から選択されうる。キレート剤は例えば0.1mg/ml〜5mg/ml;0.1mg/ml〜2mg/ml;又は2mg/ml〜5mg/mlの濃度で存在する。これらの特定のキレート剤の各一が本発明の別の実施態様を構成する。製薬用組成物にキレート剤を使用することは当業者によく知られている。簡便には、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 第19版, 1995が参照される。
【0144】
本発明の更なる実施態様では、製剤は安定剤を更に含有しうる。製薬用組成物に安定剤を使用することは、当業者によく知られている。簡便には、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 第19版, 1995が参照される。より具体的には、本発明の組成物は安定した液状製薬用組成物であり、その治療的活性化合物は、液状薬学的製剤の保存中に、凝集体の形成を示す可能性のあるポリペプチドを含む。「凝集体形成」とは、オリゴマーを形成するポリペプチド分子間の物理的相互作用を意図しており、これは、可溶性か、又は溶液から沈殿する大きな可視できる凝集体として残る。「保存中」とは、調製されて直ぐの液状製薬用組成物又は製剤が、患者に直ぐ投与されるものではないことを意図している。むしろ、調製後に、液状の形態、凍結状態、液状形態に後で再構成される乾燥した形態、又は患者への投与に適した他の形態で、包装されて保存される。「乾燥した形態」とは、液状製薬用組成物又は製剤が、フリーズドライ(すなわち凍結乾燥;例えばWilliams及びPolli(1984)J. Parenteral Sci. Technol. 38:48-59を参照)、噴霧乾燥(Masters(1991) Spray-Drying Handbook(第5版;Longman Scientific and Technical, Essez, U.K.), pp.491-676;Broadhead等, (1992) Drug Devel. Ind. Pharm. 18:1169-1206;及びMumenthaler等, (1994) Pharm. Res. 11:12-20を参照)、又は空気乾燥(Carpenter及びCrowe (1988) Cryobiology 25:459-470;及びRoser (1991) Biopharm. 4:47-53)により乾燥されることを意図している。液状製薬用組成物の保存中におけるポリペプチドによる凝集体形成は、ポリペプチドの生物活性に悪影響を及ぼすおそれがあり、製薬用組成物の治療効果が損なわれる。更に、凝集体形成は、例えばチューブ、膜、又はポリペプチド含有製薬用組成物が注入システムを使用して投与される場合はポンプの閉塞のような、他の問題を生じさせうる。
【0145】
本発明の製薬用組成物は、組成物の保存中、ポリペプチドによる凝集体形成を低減させるのに十分な量のアミノ酸塩基を更に含有しうる。「アミノ酸塩基」とは、アミノ酸又はアミノ酸の組合せを意図しており、任意の与えられたアミノ酸が、その遊離塩基の形態又はその塩の形態の何れかで存在している。アミノ酸の組合せを使用する場合、全てのアミノ酸が遊離塩基の形態で存在していてもよく、全てが塩の形態で存在していてもよく、又は幾つかが遊離塩基の形態で存在していてもよく、残りが塩の形態で存在していてもよい。一実施態様では、本発明の組成物の調製に使用されるアミノ酸は、帯電側鎖を担持しているもの、例えばアルギニン、リジン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸である。特定のアミノ酸(例えば、メチオニン、ヒスチジン、イミダゾール、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、スレオニン及びそれらの混合物)の任意の立体異性体(すなわち、L、D、又はそれらの混合物)、又はこれらの立体異性体の組合せが、該特定のアミノ酸が遊離塩基の形態又は塩の形態の何れかで存在している限り、本発明の製薬用組成物中に存在していてもよい。一実施態様では、L-立体異性体が使用される。また本発明の組成物は、これらのアミノ酸の類似体と共に製剤化されうる。「アミノ酸類似体」とは、本発明の液状製薬用組成物の保存中に、ポリペプチドによる凝集体形成を低減させるという所望の効果をもたらす天然に生じるアミノ酸の誘導体を意図している。適切なアルギニン類似体は、例えばアミノグアニジン、オルニチン及びN-モノエチル-L-アルギニンを含み、適切なメチオニン類似体はエチオニン及びブチオニンを含み、適切なシステイン類似体はS-メチル-L-システインを含む。他のアミノ酸と同様、アミノ酸類似体は、遊離塩基の形態又は塩の形態の何れかで組成物中に導入される。本発明の更なる実施態様では、アミノ酸又はアミノ酸類似体は、タンパク質の凝集を防止し又は遅延化させるのに十分な濃度で使用される。
【0146】
本発明の更なる実施態様では、メチオニン(又は他の硫黄含有アミノ酸又はアミノ酸類似体)は、治療剤として作用するポリペプチドが酸化を受けやすい少なくとも一のメチオニン残基を有するポリペプチドである場合、メチオニン残基のメチオニンスルホキシドへの酸化を阻害するために添加されうる。「阻害」とは、経時的なメチオニン酸化種の蓄積を最小にすることを意図している。メチオニン酸化を阻害すると、適切な分子形態でのポリペプチドの保持が更に高まる。メチオニン(L又はD)の任意の立体異性体又はそれらの任意の組合せを使用することができる。添加される量は、メチオニンスルホキシドの量が規制機関にとって許容可能であるような、メチオニン残基の酸化を阻害するのに十分な量とするべきである。典型的には、これは、組成物が約10%〜約30%を越えるメチオニンスルホキシドを含まないことを意味する。一般的に、これは、メチオニン残基に添加されるメチオニンの比率が、約1:1〜約1000:1、例えば10:1〜約100:1の範囲になるようにメチオニンを添加することで、達成することができる。
【0147】
更なる実施態様では、本発明の製剤は高分子量ポリマー又は低分子量化合物の群から選択される安定剤を更に含有する。本発明の更なる実施態様では、安定剤は、ポリエチレングリコール(例えばPEG3350)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、カルボキシ-/ヒドロキシセルロース又はそれらの誘導体(例えばHPC、HPC-SL、HPC-L及びHPMC)、シクロデキストリン類、硫黄含有物質、例えばモノチオグリセロール、チオグリコール酸及び2-メチルチオエタノール、及び異なった塩(例えば塩化ナトリウム)から選択される。これらの特定の安定剤の各一が本発明の別の実施態様を構成する。
【0148】
製薬用組成物は、その中の治療的に活性なポリペプチドの安定性を更に高める付加的な安定剤をまた含有しうる。本発明にとって特に関心のある安定剤は、限定されるものではないが、メチオニンの酸化に対してポリペプチドを保護するEDTA及びメチオニン、及び凍結解凍又は機械的剪断に関連する凝集からポリペプチドを保護する非イオン性界面活性剤を含む。
【0149】
更なる実施態様では、製剤は更に界面活性剤を含有しうる。界面活性剤は、例えば、洗浄剤、エトキシル化ヒマシ油、ポリグリコール化グリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタンの脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンのブロックポリマー(例えばポロキサマー、例えばプルロニック(Pluronic)(登録商標)F68、ポロキサマー188及び407、トリトンX-100)、ポリオキシエチレンソルビタンの脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン及びポリエチレンの誘導体、例えばアルキル化されアルコキシル化された誘導体(トゥイーン類(tweens)、例えばトゥイーン-20、トゥイーン-40、トゥイーン80及びビリジ(Brij)-35)、モノグリセリド類又はそのエトキシル化誘導体、ジグリセリド類又はそのポリオキシエチレン誘導体、アルコール、グリセロール、レシチン及びリン脂質(例えば、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロール及びスフィンゴミエリン)、リン脂質の誘導体(例えばホスファチジン酸ジパルミトイル)及びリゾリン脂質(例えばパルミトイル-リゾホスファチジル-L-セリン、及びエタノールアミン、コリン、セリン又はスレオニンの1-アシル-sn-グリセロ-3-ホスファートエステル)、及びリゾホスファチジル及びホスファチジルコリンのアルキル、アルコキシル(アルキルエステル)、アルコキシ(アルキルエーテル)-誘導体、例えばリゾホスファチジルコリンのラウロイル及びミリストイル誘導体、ジパルミトイルホスファチジルコリン及び極性頭部基の修飾体、コリン類、エタノールアミン類、ホスファチジン酸、セリン類、スレオニン類、グリセロール、イノシトール、及び正に帯電したDODAC、DOTMA、DCP、BISHOP、リゾホスファチジルセリン、及びリゾホスファチジルスレオニン、及びグリセロリン脂質(例えばセファリン類)、グリセロ糖脂質(例えばガラクトピラノシド)、スフィンゴ糖脂質(例えばセラミド類、ガングリオシド類)、ドデシルホスホコリン、鶏卵リゾレシチン、フシジン酸誘導体-(例えばタウロ-ジヒドロフジシン酸ナトリウム等)、長鎖脂肪酸及びそれらのC-C12塩(例えばオレイン酸及びカプリル酸)、アシルカルニチン類及び誘導体、リジン、アルギニン又はヒスチジンのNα-アシル化誘導体、又はリジン又はアルギニンの側鎖アシル化誘導体、リジン、アルギニン又はヒスチジンと中性又は酸性アミノ酸の任意の組合せを含有するジペプチドのNα-アシル化誘導体、中性アミノ酸と2つの帯電したアミノ酸の任意の組合せを含有するトリペプチドのNα-アシル化誘導体、DSS(ドキュセートナトリウム、CAS登録番号[577-11-7])、ドキュセートカルシウム、CAS登録番号[128-49-4])、ドキュセートカリウム、CAS登録番号[7491-09-0])、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム又はラウリル硫酸ナトリウム)、カプリル酸ナトリウム、コール酸又はその誘導体、胆汁酸及びその塩、及びグリシン又はタウリンコンジュゲート、ウルソデオキシコール酸、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、N-ヘキサデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホナート、アニオン性(アルキル-アリール-スルホナート類)の一価の界面活性剤、双性イオン性界面活性剤(例えば、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホナート、3-コールアミド-1-プロピルジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホナート、カチオン性界面活性剤(第4級アンモニウム塩基)(例えばセチル-トリメチルアンモニウムブロミド、セチルピリジニウムクロリド)、非イオン性界面活性剤(例えば、ドデシル-β-D-グルコピラノシド)、ポロキサミン類(例えばテトロニックス(Tetronic's))で、エチレンジアミンにプロピレンオキシド及びエチレンオキシドを逐次付加することにより誘導された四官能性ブロックコポリマーから選択され、又は界面活性剤は、イミダゾリン誘導体又はそれらの混合物の群から選択されうる。これらの特定の界面活性剤の各一が本発明の別の実施態様を構成する。
製薬用組成物に界面活性剤を使用することは、当業者によく知られている。簡便には、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 第19版, 1995が参照される。
【0150】
更なる実施態様では、製剤は、プロテアーゼインヒビター、例えばEDTA(エチレンジアミン四酢酸)及びベンズアミジンHClを更に含有し、他の商業的に入手可能なプロテアーゼインヒビターを使用することもできる。プロテアーゼインヒビターを使用することは、自己触媒を阻害するため、プロテアーゼのチモーゲンを含有する製薬用組成物に特に有用である。
【0151】
他の成分が本発明のペプチド薬学的製剤中に存在していてもよい。このような付加的な成分は、湿潤剤、乳化剤、酸化防止剤、増量剤、張力修正剤、キレート剤、金属イオン、油性ビヒクル、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン、ゼラチン又はタンパク質)及び双性イオン(例えばアミノ酸、特にベタイン、タウリン、アルギニン、グリシン、リジン及びヒスチジン)を含みうる。もちろん、このような付加的な成分は、本発明の薬学的製剤の全体的な安定性に悪影響がないようにすべきである。
【0152】
本発明の一又は複数の抗体を含む製薬用組成物は、幾つかの部位、例えば局所的部位、特に皮膚及び粘膜部位、動脈、静脈、心臓への投与等、バイパス吸収がなされる部位、例えば皮膚、皮下、粘膜又は腹部への投与等、吸収に関連する部位において、このような治療が必要とされる患者に投与されうる。
【0153】
本発明の製薬用組成物は、幾つかの投与経路、例えば皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、舌、舌下、頬、口、経口、胃、及び腸、鼻、肺を介して、例えば細気管支及び肺胞又はそれらを組合せたもの、表皮、真皮、経皮、膣、直腸、眼球を介して、例えば結膜、尿管、及び非経口を介して、このような治療を必要としている患者に投与されうる。
【0154】
本発明の組成物は、幾つかの投与形態、例えば溶液、懸濁液、エマルション、マイクロエマルション、多相エマルション、フォーム、膏薬、ペースト、プラスター、軟膏、錠剤、被覆錠剤、リンス、カプセル、例えば硬質ゼラチンカプセル及び軟質ゼラチンカプセル、坐薬、直腸用カプセル、ドロップ、ゲル、スプレー、パウダー、エアゾール、吸入剤、点眼剤、眼球用軟膏、眼球用リンス、膣用ペッサリー、膣用リング、膣用軟膏、注入溶液、インサイツ形質転換溶液、例えばインサイツゲル化、インサイツ硬化用、インサイツ沈殿化、インサイツ結晶化のもの、注入液、及び移植片として投与されうる。
【0155】
本発明の組成物は、更に、抗体の安定性を更に高め、生物学的利用能を増加させ、溶解度を高め、副作用を低減させ、当業者によく知られている時間療法を達成し、患者のコンプライアンスを高め、又はそれらの任意の組合せのために、例えば共有的、疎水的及び静電気的相互作用を介して、薬剤担体、薬剤送達系、及び進化した薬剤送達系において配合し、又は付加されうる。担体、薬剤送達系及び進化した薬剤送達系の例は、限定されるものではないが、ポリマー、例えばセルロース及び誘導体、多糖類、例えばデキストラン及び誘導体、デンプン及び誘導体、ポリ(ビニルアルコール)、アクリラート及びメタクリラートポリマー、ポリ乳酸及びポリグリコール酸、及びそれらのブロックコ-ポリマー、ポリエチレングリコール、担体タンパク質、例えばアルブミン、ゲル、例えば熱ゲル化系、例えば当業者によく知られているブロックコポリマー系、ミセル、リポソーム、ミクロスフィア、ナノ粒子、液晶、及びそれらの分散液、L2相、及び脂質-水系における相挙動が当業者によく知られているそこでの分散液、ポリマー性ミセル、多相エマルション、自己乳化剤、自己-マイクロ乳化剤、シクロデキストリン及びそれらの誘導体、及びデンドリマーを含む。
【0156】
本発明の組成物は、全て当業者によく知られたデバイスである、定量吸入器、乾燥パウダー吸入器、及び噴霧器等を使用し、抗体を肺に投与するための、固形、半固形、パウダー及び溶液の製剤に有用である。
【0157】
本発明の組成物はまた、制御、徐放性、持続性、遅延性及び低速放出性の薬剤送達系の製剤に有用である。特に限定されるものではないが、組成物は、当業者によく知られている非経口用の制御放出性及び徐放性系(双方の系とも、投与の数が何倍も低下する)製剤に有用である。更に好ましいのは、皮下投与される制御放出性及び徐放性系のものである。本発明の範囲を限定するものではないが、有用な制御放出性及び組成物の例は、ヒドロゲル、油性ゲル、液晶、ポリマー性ミセル、ミクロスフィア、ナノ粒子である。
【0158】
本発明の組成物に有用な制御放出性系の作製方法は、限定されるものではないが、結晶化、凝縮、共結晶化、沈殿、共沈殿、乳化、分散、高圧ホモジナイズ、カプセル化、噴霧乾燥、マイクロカプセル化、コアセルベーション、相分離、ミクロスフィアを製造するための溶媒蒸発、押出及び超臨界流体プロセスを含む。一般的には、Handbook of Pharmaceutical Controlled Release(Wise, D.L.編. Marcel Dekker, New York, 2000)及びDrug and the Pharmaceutical Sciences vol.99:Protein Formulation and Delivery(MacNally, E.J.編. Marcel Dekker, New York, 2000)を参照。
【0159】
非経口投与は、シリンジ、場合によってはペン様シリンジにより、皮下、筋肉内、腹膜内又は静脈内注射によって実施されうる。あるいは、非経口投与は、注入ポンプにより実施することもできる。更なる選択肢は、鼻用又は肺用スプレーの形態で抗体化合物を投与するための溶液又は懸濁液であってよい組成物にある。更なる選択肢としては、本発明の抗体を含む製薬用組成物を、例えば針のない注射、又はイオン導入パッチであってよいパッチによる経皮投与用、又は頬等の経粘膜投与用に適合させることもできる。
【0160】
抗体は、肺薬剤送達系に適した任意の既知のタイプのデバイスを使用し、ビヒクル、例えば溶液、懸濁液又は乾燥パウダーとして、肺経路を介して投与することができる。これらの例には、限定されるものではないが、肺薬剤送達用の3種類のエアゾール発生の一般的タイプが含まれ、ジェット又は超音波噴霧器、定量吸入器、又は乾燥パウダー吸入器が含まれうる(Yu J, Chien YW. Pulmonary drug delivery:Physiologic and mechanistic aspects. Crit Rev Ther Drug Carr Sys 14(4)(1997)395-453を参照)。
【0161】
標準化された試験法に基づき、粒子の空気動力学的直径(d)を、単位密度(1g/cm)の参照基準球形粒子の幾何学的相当直径として定義する。最も単純な場合、球形粒子に対して、dは、

に記載されるような密度比の平方根の関数として、参照直径(d)に関係している。
【0162】
この関係は非球形粒子に対しては修正される(Edwards DA, Ben-Jebria A, Langer R. Recent advances in pulmonary drug delivery using large, porous inhaled particles. J Appl Physiol 84(2)(1998)379-385を参照)。「MMAD」及び「MMEAD」なる用語は、詳しく記載されており、当該分野で知られている(Edwards DA, Ben-Jebria A, Langer R、空気動力学的粒子径分布の中央値の測定値を表す。Recent advances in pulmonary drug delivery using large, porous inhaled particles. J Appl Physiol 84(2) (1998) 379-385を参照)。空気動力学的中央粒子径(MMAD)及び有効空気動力学的中央粒子径(MMEAD)(mass median effective aerodynamic diameter)は、交換可能に使用され、統計パラメータであり、実際の形状、サイズ又は密度に無関係に、肺中に沈着するそれらの可能性に関連して、エアゾール粒子のサイズが経験的に記載されている(Edwards DA, Ben-Jebria A, Langer R. Recent advances in pulmonary drug delivery using large, porous inhaled particles. J Appl Physiol 84(2)(1998)379-385を参照)。通常、MMADは、空気中における粒子の慣性挙動を測定する装置、衝突体を用いてなされる測定から算出される。
【0163】
更なる実施態様では、製剤は、10μm未満、より好ましくは1−5μm、最も好ましくは1−3μmのエアゾール粒子のMMADを達成するために、任意の既知のエアゾール化技術、例えばネブライゼーションによりエアゾール化することができる。好ましい粒子径は、肺の奥深くまで薬剤を送達せしめるのに最も効果的なサイズに基づいており、タンパク質が最適に吸収されるようになされる (例えば、Edwards DA, Ben-Jebria A, Langer A, Recent advances in pulmonary drug delivery using large, porous inhaled particles. J Appl Physiol 84(2)(1998)379-385を参照)。
抗体を含有する肺用製剤を肺の奥深くに付着させることは、吸入技術、例えば限定されるものではないが、低吸入速度(例えば30L/分)、呼吸停止及び作動のタイミングを修正して最適化されうる。
【0164】
「安定化された製剤」なる用語は、物理的安定性が増し、化学的安定性が増し、又は物理的及び化学的安定性が増した製剤を意味する。
【0165】
ここで使用されるタンパク質製剤の「物理的安定性」なる用語は、タンパク質が熱-機械的ストレスに暴露され、及び/又は不安定な表面及び界面、例えば疎水性表面及び界面と相互作用する結果として、タンパク質が生物学的に不活性になり及び/又は不溶性の凝集体が形成されるというタンパク質の傾向を意味する。水性タンパク質製剤の物理的安定性は、適切な容器(例えばカートリッジ又はバイアル)に充填された製剤を、様々な時間、異なる温度で機械的/物理的ストレス(例えば攪拌)に暴露した後に、視覚検査及び/又は濁度測定することで評価される。製剤の視覚検査は、暗色背景で、鋭く集光されたライト下において実施される。製剤の濁度は、例えば0〜3のスケールで、濁りの程度をランク付けする視覚スコア(濁りのない製剤は視覚スコア0に相当し、日光下で視覚的に濁りのある製剤は視覚スコア3に相当する)により特徴付ける。製剤は、日光下で視覚的濁りを示す場合に、タンパク質凝集に関して物理的に不安定であると分類される。あるいは、製剤の濁度は、当業者によく知られている簡単な濁度測定法により評価することもできる。また水性タンパク質製剤の物理的安定性は、タンパク質の立体構造状態のプローブ又は分光剤を使用して評価することもできる。プローブは、好ましくはタンパク質の非天然配座異性体に結合する小分子である。タンパク質構造の小分子分光プローブの一例はチオフラビンTである。チオフラビンTは、アミロイド原繊維の検出に広範囲に使用されている蛍光染料である。原繊維とまたおそらく他のタンパク質立体配置が存在すると、チオフラビンTが約450nmで新たな励起極大を引き起こし、原繊維タンパク質形態に結合した時に、約482nmで増強発光する。未結合のチオフラビンTは、本質的にはその波長で非蛍光性である。
【0166】
天然から非天然状態までのタンパク質構造における変化のプローブとして、他の小分子を使用することができる。例えば、タンパク質の暴露された疎水性パッチに優先的に結合する「疎水性パッチ」プローブである。疎水性パッチは、その天然状態にあるタンパク質の3次構造内に一般的に埋められているが、タンパク質の展開及び変性が始まると、暴露されるようになる。これらの小分子の例、分光プローブは、芳香族の疎水性染料、例えばアントラセン、アクリジン、フェナントロリン等である。他の分光プローブは金属-アミノ酸錯体、例えば疎水性アミノ酸、例えばフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、及びバリン等のコバルト金属錯体である。
【0167】
ここで使用される場合、タンパク質製剤の「化学的安定性」なる用語は、天然のタンパク質構造と比較して、免疫原性の潜在的増加及び/又は生物学的有効性の潜在的低下を伴う、化学的な分解産物の形成に至るタンパク質構造における化学的共有変化を意味する。様々な化学的な分解産物が、天然タンパク質の性質及び種類、及びタンパク質が暴露される環境に応じて形成されうる。化学的分解の排除は、多くの場合、完全に回避することはできず、当業者によく知られているように、タンパク質製剤の保存及び使用中に、化学的な分解産物の量の増加が見られる。殆どのタンパク質は、脱アミド化する傾向にあり、グルタミニル又はアスパラギニル残基の側鎖アミド基が加水分解されて、遊離カルボン酸を形成する。他の分解経路は高分子量の形質転換産物の形成に関与しており、2又はそれ以上のタンパク質分子が、アミド転移及び/又はジスルフィド相互作用を介して互いに共有結合し、共有結合した二量体、オリゴマー及びポリマーの分解産物の形成に至る(Stability of Protein Phramaceuticals, Ahern. T. J.及びManning M.C., Plenum Press, New York 1992)。(例えばメチオニン残基の)酸化も、化学的分解の他の変形例として挙げることができる。タンパク質製剤の化学的安定性は、異なる環境条件に暴露させた後、種々の時点での化学的な分解産物の量を測定することにより評価することができる(分解産物の形成は、多くの場合、例えば温度上昇により促進される)。個々の分解産物の各々の量は、多くの場合、様々なクロマトグラフィー技術(例えばSEC-HPLC及び/又はRP-HPLC)を使用し、分子サイズ及び/又は電荷に応じて、分解産物を分離することにより測定される。
【0168】
よって、上に概要を述べたように、「安定化された製剤」とは、物理的安定性が増加、化学的安定性が増加、又は物理的及び化学的安定性が増加した製剤を意味する。一般的に、製剤は、有効期限に到達するまで、使用及び保存中に(推奨される用途及び保存条件で)安定していなければならない。
【0169】
本発明の一実施態様では、抗体を含有する薬学的製剤は、6週間以上の使用と、3年以上の保存に対して安定している。
本発明の他の実施態様では、抗体を含有する薬学的製剤は、4週間以上の使用と、3年以上の保存に対して安定している。
本発明の更なる実施態様では、抗体を含有する薬学的製剤は、4週間以上の使用と、2年以上の保存に対して安定している。
本発明の更なる実施態様では、抗体を含有する薬学的製剤は、2週間以上の使用と、2年以上の保存に対して安定している。
【0170】
適した抗体製剤は、他の既に開発されている治療用モノクローナル抗体の場合の経験を調べることによってまた決定できる。例えばリツキサン(リツキシマブ)、ハーセプチン(トラスツズマブ)、ゾレア(オマリズマブ)、ベキサール(トシツモマブ)、キャンパス(アレムツズマブ)、ゼバリン、オンコリムのような数種のモノクローナル抗体が臨床現場で効果的なことが証明されており、同様の製剤を本発明の抗体について使用することができる。例えば、モノクローナル抗体は、塩化ナトリウム9.0mg/mL、クエン酸ナトリウム二水和物7.35mg/mL、ポリソルベート0.7mg/mL、注射用滅菌水に静脈内投与用に処方された100mg(10mL)又は500mg(50mL)の使い捨てバイアルの何れかで10mg/mLの濃度で提供されうる。pHは6.5に調整される。他の実施態様では、抗体は約20mMのクエン酸ナトリウム、約150mMのNaClを含みpHが約6.0の製剤で供給される。
【0171】
治療用途
ここに記載された抗NKG2A抗体を使用する患者の治療方法がまた提供される。一実施態様では、本発明は、ヒト患者に投与するための薬学的組成物の調製におけるここに記載された抗体の使用を提供する。典型的には、患者は癌、ウイルス疾患、炎症疾患、又は自己免疫疾患に罹患しているか又はそのリスクを有している。あるいは、本発明の抗体は患者における骨髄移植を改善するために使用される。
【0172】
例えば、一態様では、本発明は、それを必要とする患者においてCD94/NKG2A制限リンパ球の活性を増強する方法であって、ヒト又はヒト化抗NKG2A抗体を上記患者に投与する工程を含み、該抗体がCD94/NKG2A抗体レセプターのHLA−E媒介活性化を低減し又は防止する方法を提供する。一実施態様では、該方法は、増加したNK、T、及び/又はNKT細胞活性が有益であり、NK、T、又はNKT細胞による溶解を受けやすい細胞を含み、該細胞に影響を及ぼし、又は該細胞によって引き起こされる疾患、例えば癌、感染症又は免疫疾患を有する患者におけるリンパ球の活性を増加させるものである。
【0173】
より詳細には、本発明の方法と組成物は、限定するものではないが、癌、例えば膀胱、乳房、結腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、前立腺、膵臓、胃、子宮頚部、甲状腺及び皮膚の癌、例えば扁平上皮癌;リンパ系の造血器腫瘍、例えば白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞リンパ腫及びバーケットリンパ腫、及び多発性骨髄腫;骨髄系の造血器腫瘍、例えば急性及び慢性骨髄性白血病、前骨髄球性白血病、及び骨髄異形成症候群;間葉系由来の腫瘍、例えば線維肉腫及び横紋筋肉腫;他の腫瘍、例えばメラノーマ、セミノーマ、奇形癌腫、ニューロブラストーマ及びグリオーマ;中枢及び末梢神経系の腫瘍、例えばアストロサイトーマ、ニューロブラストーマ、グリオーマ、及びシュワン細胞腫;間葉系由来の腫瘍、例えば線維肉腫、横紋筋肉腫、及び骨肉腫;及び他の腫瘍、例えばメラノーマ、色素性乾皮症、ケラトアカントーマ、セミノーマ、甲状腺濾胞性癌及び奇形癌腫を含む様々な癌及び他の増殖性疾患の治療に対して利用される。
【0174】
本発明に従って治療することができる特定の疾患には、リンパ系の造血器腫瘍、例えばT細胞及びB細胞腫瘍、例えば限定するものではないがT細胞疾患、例えば小細胞及び脳状細胞型のものを含むT前リンパ球性白血病(T−PLL);好ましくはT細胞型の大顆粒性リンパ球白血病(LGL);セザリー症候群(SS);成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL);T−NHL肝脾リンパ腫;末梢/後胸腺(peripheral/post-thymic)T細胞リンパ腫(多形性及び免疫芽細胞サブタイプ);血管免疫芽細胞性T細胞リンパ腫;血管中心性(鼻)T細胞リンパ腫;未分化(Ki1+)大細胞リンパ腫;腸管T細胞性リンパ腫;Tリンパ芽球性;リンパ腫/白血病(T−Lbly/T−ALL)、多発性骨髄腫が含まれる。
【0175】
例えば過形成、線維症(特に肺、但し腎臓線維症のような他のタイプの線維症も)、血管新生、乾癬、アテローム性動脈硬化症及び血管中の平滑筋増殖、例えば血管形成術後の狭窄症又は再狭窄等の他の増殖性疾患もまた本発明によって治療することができる。
【0176】
特定の態様では、本発明の抗体は、NK細胞又はNK様細胞、つまり表面抗原発現の特徴的な組合せを示す大顆粒リンパ球(例えばCD3−、CD56+、CD16+等; 例えばLoughran (1993) Blood 82:1を参照)のクローン増殖によって引き起こされる増殖性疾患の一クラスを意味するNK−LGLとも呼ばれる顆粒リンパ球のNK型リンパ球増殖性疾患を治療するために使用される。これらの疾患の根底にある細胞増殖は、ある患者に見られる穏やかな症状からしばしばNK−LDGL白血病と呼ばれる疾患の侵襲性の致命的な形態までの範囲の様々な効果を持ちうる。このクラスの疾患の徴候は、発熱、穏やかな好中球減少、血小板減少、貧血、リンパ球増加、脾腫大、肝腫大、リンパ節腫大、骨髄浸潤等々を含みうる(例えばZambello等(2003) Blood 102:1797;Loughran (1993) Blood 82:1;Epling-Burnette等 (2004) Blood-2003-02-400を参照)。
【0177】
CD94/NKG2A抗体ベースの治療はまた感染症、例えば好ましくはウイルス、細菌、原虫、カビ又は真菌による感染によって引き起こされる任意の感染を治療し又は予防するために使用することもできる。かかるウイルス感染性生物には、限定されるものではないが、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザ、水痘、アデノウイルス、単純ヘルペス1型(HSV−1)、単純ヘルペス2型(HSV−2)、牛疫、ライノウイルス、エコーウイルス、ロタウイルス、呼吸器多核体ウイルス、パピローマウイルス、パピローマウイルス、サイトメガロウイルス、エチノウイルス(echinovirus)、アルボウイルス、ハンタウイルス、コクサッキーウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ポリオウイルス及びヒト免疫不全症ウイルス1型又は2型(HIV−1、HIV−2)が含まれる。細菌は感染性生物の他の好ましいクラスを構成し、限定されるものではないが、次のものを含む:ブドウ球菌;連鎖球菌、例えば化膿性連鎖球菌;腸球菌;バチルス、例えば炭疽菌、及びラクトバシラス;リステリア;ジフテリア菌;ガードネレラ菌、例えばガードネレラ・バギナリス;ノカルジア;ストレプトマイセス;サーモアクチノミセス・ブルガリス;トレポネーマ;カンピロバクター;シュードモナス、例えば緑膿菌;レジオネラ;ナイセリア、例えば淋菌及び髄膜炎菌;フラボバクテリウム、例えばフラボバクテリウム・メニンゴセプチカム及びフラボバクテリウム・オドラツム;ブルセラ;ボルデテラ、例えば百日咳菌及びボルデテラ・ブロンキセプチカ;大腸菌類、例えば大腸菌、クレブシエラ;エンテロバクター、セラチア、例えば 霊菌及びセラチア・リクファシエンス;エドワージエラ;プロテウス、例えばプロテウス・ミラビリス及びプロテウス・ブルガリス;ストレプトバチルス;リケッチア科、例えば リケッチア・フィッケツフィ(fickettsfi)、クラミジア、例えばオウム病クラミジア及びトラコーマクラミジア;マイコバクテリウム、例えば結核菌、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ、マイコバクテリウム・フォーチュイタム、ライ菌、マイコバクテリウム・アビウム、マイコバクテリウム・ボビス 、マイコバクテリウム・アフリカヌム、カンサシ菌、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ、及びマイコプラズマ・レプラムリウム;及びノカルジア。原虫(原生動物)には、限定されるものではないが、リーシュマニア、コクジジオア(kokzidioa)及びオリパノソーマが含まれる。寄生虫には、限定されるものではないが、クラミジア及びリケッチアが含まれる。感染症の完全なリストは、疾病管理センター(CDC) の感染症国立センター(National Center for Infectious Disease (NCID))のウェブサイト(World-Wide Web (www) address cdc.gov/ncidod/diseases/)に見出すことができ、このリストは出典明示にここに援用する。これらの疾患の全てが本発明の阻害抗CD94/NKG2A抗体を使用する治療の候補である。
【0178】
別の態様では、抗NKG2A抗体は、例えば癌性細胞上のCD94/NKG2A発現によって特徴付けられる癌、例えばNK又はT細胞リンパ腫に罹患している患者においてNKG2A発現細胞を標的としそれを死滅させるために使用される。一実施態様では、ヒト化抗体が、ヒト化抗体と細胞傷害剤を含む免疫複合体の形態で投与される。
【0179】
別の態様では、抗NKG2A抗体は自己免疫又は炎症疾患を治療し又は予防するために使用される。本方法を使用して治療することができる自己免疫疾患の例には、とりわけ、溶血性貧血、悪性貧血、結節性多発動脈炎、全身性エリテマトーデス、ウェゲナー肉芽腫症、自己免疫性肝炎、ベーチェット病、クローン病、原発性胆汁性肝硬変、強皮症、潰瘍性大腸炎、シェーグレン症候群、1型糖尿病、ブドウ膜炎、グレーブス病、アルツハイマー病、甲状腺炎、心筋炎、リウマチ熱、強皮症、強直性脊椎炎、関節リウマチ、糸球体腎炎、サルコイドーシス、皮膚筋炎、重症筋無力症、多発性筋炎、ギラン・バレー症候群、多発性硬化症、円形脱毛症、天疱瘡/類天疱瘡、水疱性類天疱瘡、橋本甲状腺炎、乾癬、及び白斑が含まれる。
【0180】
これらの方法によって治療することができる炎症疾患の例には、限定されるものではないが、副腎炎、肺胞炎、胆管胆嚢炎、虫垂炎、亀頭炎、眼瞼炎、気管支炎、滑液包炎、心臓炎、蜂巣炎、子宮頚管炎、胆嚢炎、声帯炎、蝸牛殻炎、大腸炎、結膜炎、膀胱炎、皮膚炎、憩室炎、脳炎、心内膜炎、食道炎、耳管炎、結合織炎、毛包炎、胃炎、胃腸炎、歯肉炎、舌炎、肝脾炎、角膜炎、内耳炎、喉頭炎、リンパ管炎、乳腺炎、中耳炎、髄膜炎、子宮炎、粘膜炎、心筋炎、鼓膜炎、腎炎、神経炎、精巣炎、骨軟骨炎、耳炎、心膜炎、腱鞘炎、腹膜炎、咽頭炎、静脈炎、灰白脊髄炎、前立腺炎、歯髄炎、網膜炎、鼻炎、卵管炎、強膜炎、セレロ脈絡膜炎(selerochoroiditis)、陰嚢炎、静脈洞炎、脊椎炎、脂肪組織炎、口内炎、滑膜炎、 耳管炎、腱炎、扁桃腺炎、尿道炎、及び膣炎が含まれる。
【0181】
樹状細胞のアロ反応性NK細胞死滅化は骨髄移植における造血細胞の生着を改善したことがまた示されている(L. Ruggeri等, Science, 2002, 295:2097-2 100)。よって、他の実施態様では、本発明は、患者における造血細胞の生着を改善する方法であって、活性化抗体を含む本発明の組成物を上記患者に投与する工程を含む方法を提供する。移植の改善は、移植片対宿主病の発症又は重篤度の低減、移植片の長い生存、又は移植によって治療される疾患の徴候(例えば造血器癌)の低減又は除去の何れかから明らかになる。この方法は好ましくは白血病の治療に使用される。
【0182】
併用治療
多くの治療剤を癌の治療に利用できる。よって、本発明の抗体組成物と方法は、特定の疾患、特に腫瘍、癌疾患、又は患者が示す他の疾病又は疾患の治療に一般的に用いられる任意の他の方法と組み合わせることもできる。特定の治療アプローチ法がその患者の症状自体に致命的であることが知られておらず、抗CD94/NKG2A抗体ベースの治療法と有意には反対の作用をしない限り、本発明とのその併用が考えられる。
【0183】
固形腫瘍の治療に関しては、本発明は、古典的なアプローチ法、例えば、外科治療、放射線療法、化学療法等と併用されうる。従って、本発明は、本発明に係る抗CD94/NKG2A抗体が外科又は放射線治療と同時に、その前に、又はその後に使用され;あるいは他の抗癌剤の投与と共に、その前に、又はその後に患者に投与される併用療法を提供する。本発明の組成物中の活性剤と併用される外科、放射線療法、又は抗癌剤は、癌に対して有利な併用効果を奏することが担保されるであろう。
【0184】
例示的な抗癌剤には、化学療法剤、ホルモン剤、抗血管新生剤、抗転移薬、抗癌抗体(例えばリツキシマブ)、抑制性KIR分子に対する抗体、増殖因子阻害剤、アポトーシス促進化合物、サイトカイン及び他の免疫調節剤、毒素又は放射性核種に結合した腫瘍標的化剤、DNA複製、有糸分裂及び染色体分離を妨害する化合物、及びポリヌクレオチド前駆体の合成とフィデリティーを乱す薬剤が含まれる。
【0185】
自己免疫又は炎症疾患では、とりわけ、免疫抑制剤、例えばアザチオプリン(例えばイムラン)、クロラムブシル(例えばロイケリン)、シクロホスファミド(例えばシトキサン)、シクロスポリン(例えばサンディミュン、ネオーラル)、メトトレキセート(例えばリウマトレックス)、コルチコステロイド、プレドニゾン(例えばデルタゾン、メチコルテン(Meticorten))、エタネルセプト(例えばエンブレル)、インフリキシマブ(例えばレミケード)、TNF阻害剤、FK-506、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、レフルノミド、抗リンパ球グロブリン、デオキシスパガリン又はOKTを含む、一又は複数のタイプの自己免疫又は炎症疾患あるいは自己免疫又は炎症疾患のあらゆる徴候又は特徴に対して、効果的であることが知られている任意の他の化合物である。
【0186】
免疫調節化合物の好ましい例にはサイトカインが含まれる。他の例には、効果、好ましくはNK細胞活性の活性化又は増強効果を有するか、又はNK細胞の増殖を誘導し又は支援する化合物が含まれる。本発明の薬剤を含む組成物の前、それと同時に、又はその後に投与される他の化合物は、補助化合物(例えば制吐薬及び鎮痛薬)及び抗ウイルス薬である。
【0187】
当業者によって理解されるように、抗癌剤の適切な用量は、抗癌剤が単独で又は他の薬剤と併用して投与される臨床治療に既に用いられているものに近似する。用量の変動は治療されている症状に応じて生じる可能性がある。治療薬を投与する医師は個々の被験者に対して適当な用量を決定することができる。
【0188】
製造品
本発明の他の実施態様では、上記の疾患の治療に有用な物質を含む製造品が提供される。例えば、該製造品は、ここに記載された抗体を含む容器を、哺乳動物における癌又はウイルス疾患のような疾患を有効量の抗体で治療する指示を使用者に与える指示書と共に含みうる。好ましい実施態様では、哺乳動物はヒトである。該製造品は典型的には容器と該容器上に又は該容器に付随せしめられたラベル又はパッケージ挿入物を含む。好適な容器には、例えば、ビン、バイアル、シリンジ等々が含まれる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成されうる。容器は、症状を治療するのに有効な組成物を収容し、無菌のアクセスポートを有しうる(例えば、容器は皮下注射針で貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルでありうる)。組成物中の少なくとも一種の活性剤はここでのヒト化抗NKG2A抗体又はかかるヒト化抗体を含む抗体誘導体(例えば免疫複合体)である。ラベル又はパッケージ挿入物は、組成物が、選択した症状、例えば癌又はウイルス疾患の治療に使用されることを示している。
【0189】
更に、製造品は、(a)組成物がそこに収容され、該組成物がここに記載された抗体を含む第一の容器と、(b)組成物がそこに収容され、該組成物が第一の抗体以外の治療剤を含む第二の容器を含みうる。本発明のこの実施態様における製造品は、第一及び第二の組成物が癌又はウイルス疾患の治療のために併用できることを示すパッケージ挿入物を更に含みうる。かかる治療剤は先のセクションに記載した補助療法剤の任意のものでありうる(例えば、化学療法剤、抗血管新生薬、抗ホルモン化合物、心臓保護薬、及び/又はサイトカインを含む哺乳動物における免疫機能調節剤)。あるいは、又は加えて、製造品は、薬学的に許容可能なバッファー、例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンガー液及びデキストロース溶液を含有する第二(又は第三)の容器を更に含みうる。他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む商業的及び使用者の見地から望ましい他の材料を更に含んでいてもよい。
【0190】
投与
上述のように、数種のモノクローナル抗体が臨床現場で効果的であることが証明されており(例えばリツキサン(リツキシマブ)と他のもの)、同様な投与計画(つまり、用量及び/又は投与プロトコル)を本発明の抗体について使用することができる。投与のスケジュール及び投薬量は、例えば製造者の指示書を使用し、これらの製品に対して知られた方法に従って決定することができる。例えば、抗体製剤は100mg(10mL)又は500mg(50mL)の使い捨てバイアルの何れかで10mg/mLの濃度で提供されうる。本発明の抗体の場合の例示的な好ましい投薬量範囲は約10mg/mと500mg/mの間である。例えば細胞を24時間、48時間、72時間、又は1週間又は1ヶ月飽和させる抗NKG2A抗体の量及びスケジュールは抗体の親和性とその薬物動態パラメータを考慮して決定することができる。しかしながら、これらのスケジュールは例示的なものであり、最適なスケジュール及び治療計画及び抗体の耐容性は臨床試験において決定されなければならない。
【0191】
非治療的な用途
また、本発明の抗体(例えばヒト化抗NKG2A抗体)は被治療的な用途を有する。
例えば抗体を親和性精製剤として用いることができる。このプロセスでは、当該分野でよく知られている方法を使用して、抗体をセファデックスTM樹脂又は濾紙などの固相に固定する。固定された抗体はNKG2Aタンパク質(又はその断片)を含む試料に接触させて精製し、その後、固定した抗体に結合するNKG2Aタンパク質以外の試料中の実質的に全ての材料を除去する適切な溶媒で支持体を洗浄する。最後に、支持体を、他の適切な溶媒、例えば、NKG2Aタンパク質を抗体から放出させるpH5.0のグリシン緩衝液によって洗浄する。
抗NKG2A抗体は、例えば、特異的な細胞、組織又は血清中の発現を検出するような、NKG2Aタンパク質についての診断アッセイにおいてまた有用でありうる。
【0192】
診断用途に対しては、抗体は典型的には検出可能な部分で標識される。一般に次のカテゴリーに分類することができる数多くの標識が利用可能である:
(a)放射性同位体、例えば35S、14C、125I、H及び131I。抗体は、例えばCurrent Protocols in Immunology, Volumes 1 and 2, Coligen等編 Wiley-Interscience, New York, New York, Pubs. (1991)に記載される技術を用いて放射性同位体で標識することができ、放射能はシンチレーション計測器を用いて測定することができる。
(b)希土類キレート(ユウロピウムキレート)又はフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、リサミン、フィコエリトリン及びテキサス・レッドのような蛍光標識が利用できる。蛍光標識は、例えば、上掲のCurrent Protocols in Immunologyに開示された技術を用いて抗体にコンジュゲートすることができる。蛍光は、蛍光計を用いて定量できる。
(c)様々な酵素基質標識が利用可能であり、米国特許第4275149号にはこれらの幾つかの概説がある。酵素は、様々な技術を用いて測定することができる色素生産性基質の化学変化を一般に触媒する。例えば、酵素は、分光測光法で測定することができる基質の変色を触媒しうる。あるいは、酵素は、基質の蛍光又は化学発光を変えうる。蛍光の変化を定量するための技術は上記の通りである。化学発光基質は、化学反応によって電子的に励起され、測定することができる(例えば化学発光計測計を用いて)か、又はエネルギーを蛍光アクセプターに与える光を発しうる。酵素標識の例には、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4737456号)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカライドオキシダーゼ(例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環オキシダーゼ(例えばウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどが含まれる。抗体に酵素をコンジュゲートさせる技術は、O'Sullivan等, Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay, in Methods in Enzym. (J. Langone及びH. Van Vunakis編), Academic press, New York, 73:147-166 (1981)に記載されている。
【0193】
酵素基質の組合せの例には、例えば以下のものが含まれる:
(i)基質として水素ペルオキシダーゼを伴う西洋わさびペルオキシダーゼ(HRPO)、ここで水素ペルオキシダーゼが染料前駆体(例えばオルトフェニレンジアミン(OPD)又は3,3’,5,5’テトラメチルベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する;
(ii)色素生産性基質としてリン酸パラ−ニトロフェニルを伴うアルカリホスファターゼ(AP);及び
(iii)色素生産性基質(例えばp−ニトロフェニル−β−D−ガラクトシダーゼ)又は蛍光発生基質4−メチルウンベリフェリル−p−β−ガラクトシダーゼを有するβ−D−ガラクトシダーゼ(β−D−Gal)。
【0194】
多数の他の酵素基質の組合せが当業者に利用可能である。これらの一般的な概説については、米国特許第4275149号及び4318980を参照。
【0195】
しばしば、標識は抗体と間接的にコンジュゲートされる。これを達成するための様々な技術は当業者には分かるであろう。例えば、抗体をビオチンとコンジュゲートさせることができ、前述した標識の3つの広い分類のうちの何れかをアビジンとコンジュゲートさせることができ、その逆もまた可能である。ビオチンは選択的にアビジンと結合し、よって、標識をこの間接的な方法で抗体にコンジュゲートさせることができる。あるいは、抗体と標識を間接的にコンジュゲートさせるために、抗体を小ハプテン(例えばジゴキシン)とコンジュゲートさせ、前述した標識の異なるタイプのうちの一つを抗ハプテン抗体(例えば抗ジゴキシン抗体)とコンジュゲートさせる。よって、抗体と標識の間接的なコンジュゲーションを達成することができる。
【0196】
本発明の他の実施態様では、抗NKG2A抗体は標識する必要がなく、その存在をNKG2A抗体と結合する標識二次抗体を用いて検出することができる。
【0197】
本発明の抗体は、任意の既知のアッセイ方法、例えば競合結合アッセイ、直接的及び間接的なサンドイッチアッセイ及び免疫沈降アッセイに用いることができる。Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, pp.147-158 (CRC Press, Inc. 1987)。
免疫組織化学では、腫瘍試料は新鮮なものでも凍結されたものでも、パラフィン包埋されていても、例えばホルマリンのような防腐剤で固定されていてもよい。
【0198】
また、抗体はインビボ診断用アッセイにも使用することもできる。一般に、抗体は、例えば核磁気共鳴法又は当該分野で知られている他の方法によって検出可能な放射性核種又は非放射性指示薬で標識される。好ましくは、標識は、例えば125I、131I、67Cu、99mTc又は111Inなどの放射性標識である。標識された抗体は、好ましくは血流を介して宿主に投与され、宿主中の標識した抗体の存在や位置がアッセイされる。腫瘍の検出、ステージ分類及び治療には画像技術が好適に用いられる。放射性同位体は、金属キレート化合物又はラクトペルオキシダーゼ、又はヨウ素化のためのヨードゲン技術を含む任意の手段によってタンパク質にコンジュゲートされる。
【0199】
便宜上、本発明の抗体は、キット、すなわち診断検査を実施するための指示書と共に予め定められた量でパッケージされた試薬組合せで提供することができる。抗体を酵素で標識する場合、キットには、基質と、酵素に必要な補因子(例えば検出可能な発色基又は蛍光体を提供する基質前駆体)が含まれるであろう。加えて、安定剤、緩衝液(例えばブロックバッファー又は溶解バッファー)などの他の添加物も含まれうる。様々な試薬の相対量は、アッセイの感度を実質的に最適化する試薬溶液の濃度が得られるように、広範囲に変化させられうる。特に、溶解して適切な濃度の試薬溶液が得られる賦形剤を含む乾燥粉末、通常は凍結乾燥として試薬は提供されうる。
【実施例】
【0200】
本発明の更なる詳細は、以下の非限定的な実施例により例示される。
【0201】
実施例1−Z199は非競合的CD94/NKG2Aアンタゴニストである
この実施例は、HP−3D9、Z270、及びZ199のアンタゴニスト及びHLA−Eブロック能の評価を記載する。
【0202】
材料及び方法
Z199は、CD94/NKG2A制限NK細胞によるHLA−E発現腫瘍細胞の死滅化を誘導する。HLA−Eは、図1に示されるように、NK阻害レセプターCD94/NKG2Aに対する機能的なリガンドである。この図は、51Cr標識LCL721.221(機能的にはHLA−E)又はLCL721.221−Cw3細胞(機能的にはHLA−E)を死滅させるCD94/NKG2ANKL細胞の能力が示される代表的な51Cr−放出細胞傷害性アッセイを含む。これらのアッセイでは、エフェクター細胞(E)を、37℃で4時間、5%のCOを含む加湿インキュベーターにおいて様々なE:T比で、51Cr標識標的細胞(T)と共にインキュベートする。標的細胞の死滅は、死滅時に標的細胞あら放出される組織培養培地中の51Crの量を測定することによって分析する。死滅は、同じ期間における細胞による51Crの自然の放出を修正した、最大の可能な死滅(つまり、全細胞が溶解)の割合として注釈付けされる。式では、特定の死滅(%)は
100*(試料中の51Cr放出 − 自然の51Cr放出)
(最大の51Cr放出 − 自然の51Cr放出)
として定義される。
【0203】
図1中、NKL細胞が、機能的HLA−Eを欠く腫瘍細胞(菱形)を比較して機能的HLA−Eを発現する腫瘍細胞(三角形)をそれほど効果的には死滅させないことが明らかである。NKL細胞を飽和濃度のマウスmAbのHP−3D9(抗CD94)又はZ199(抗NKG2A)と共にプレインキュベートしたとき、HLA−E標的細胞は、同アッセイにおいて、HLA−E腫瘍細胞のものに匹敵するレベルで更により効率的に死滅させられた(十字)。よって、HLA−EはCD94/NKG2A発現エフェクター細胞(例えば、NK、NKT、α/βT細胞及びγ/δT細胞)による標的細胞の死滅化を制限し、これは、CD94/NKG2Aを機能的に阻害するmAbによって防止することができる。
【0204】
Z199は非競合的CD94/NKG2Aアンタゴニストである。CD94/NKG2A阻害抗体がCD94/NKG2Aへのリガンド(つまりHLA−E)結合を防止するかどうかを支援するために、我々は、HP−3D9及びZ199が、CD94/NKG2A過剰発現Ba/F3細胞(Ba/F3−CD94/NKG2A)へのHLA−E四量体の結合を防止できるかどうかを解析した。このために、Ba/F3−CD94/NKG2Aを、1)mAb(HP−3D9(10μg/ml)又はZ199(10μg/ml))と共に、2)PE標識HLA−E四量体(4.7μg/ml)と共にインキュベートし、あるいは3)最初にmAbと共にインキュベートし、ついでPE標識HLA−E四量体と共にインキュベートした。全てのインキュベーションは氷上で2%のFCSを含む組織培養培地で実施した。ついで、洗浄後、細胞を、マウスAbに対して特異的なAPCコンジュゲート二次抗体と共にインキュベートし、BD Biosciences FACSアレイを使用してフローサイトメトリーによって分析した。図2に示されるように、HP−3D9(2A)及びZ199(2D)は、未染色細胞が存在するゲートからY軸に沿った細胞集団のシフトを引き起こす(左下方の1/4部分)。これに対して、HLA−E(2B,2E)は、未染色細胞が存在する左下方の1/4部分からX軸に沿った細胞集団のシフトを引き起こす。抗体とHLA−E四量体の双方がBa/F3−NKG2D細胞に結合できず、それらがこれらのアッセイにおいてBa/F3−CD94/NKG2A細胞上のCD94/NKG2Aに特異的に結合することを示している。Ba/F3−CD94/NKG2A細胞を最初にHP−3D9と共に、ついでHLA−E四量体と共にインキュベートした場合、HLA−E四量体の結合は検出できなかった(図2C)。HP−3D9はよってCD94/NKG2AへのHLA−Eの結合を防止し、NK細胞傷害性アッセイにおけるこのmAbのCD94/NKG2A阻害効果(図1)はよってHLA−EがCD94/NKG2Aを介して細胞傷害性リンパ球にネガティブなシグナルを誘導可能であることを防ぐ結果である。しかして、HP−3D9は競合的CD94/NKG2Aアンタゴニストと考えることができる。これに対して、Ba/F3−CD94/NKG2A細胞を最初にZ199と共に、続いてHLA−E四量体と共にインキュベートしたとき、細胞へのZ199及びHLA−E四量体双方の結合が、図2Fにおける右上部1/4部分の二重陽性細胞によって示されるように、検出することができた。Z199はCD94/NKG2AへのHLA−Eの結合を防止しないので、図1に示されるようなNK細胞傷害性アッセイにおけるZ199のCD94/NKG2A阻害効果は、CD94/NKG2Aを経由して細胞傷害性リンパ球へネガティブなシグナルを誘導し得ることを妨げる効果ではない可能性が高い。しかして、Z199は非競合的CD94/NKG2Aアンタゴニストと考えることができる。
【0205】
図2に示された観察は、BiaCore実験で確認された。これらの実験において、CD94及びNKG2Aの細胞外部分からなる単鎖コンストラクトとC末端で融合したマウスIgG1からなるFc融合タンパク質scCD94/NKG2A−mFcをチップに固定し、続いてHP−3D9又はZ199で飽和させた。続いて、タンパク質複合体に対するHLA−E四量体の結合を分析した。HP−3D9飽和scCD94/NKG2AはHLA−E四量体に結合できなかったが、HLA−E四量体は、Z199で飽和させたscCD94/NKG2Aに結合できた(図3)。これらの結果は、Z199はHLA−EがCD94/NKG2Aに結合するのを防止しないが、CD94/NKG2Aを機能的にブロックするその能力は非競合的拮抗作用に基づいていることを裏付けている。
【0206】
結果
HP−3D9(抗CD94)(図1A)、Z199(抗NKG2A)(図1B)及びZ270(抗NKG2A)の全てがCD94/NKG2A制限リンパ球によるHLA−E発現標的細胞の死滅化を効果的に誘導した。図2A及び2Bに示されているように、HP−3D9はCD94/NKG2AとそのリガンドHLA−Eの間の相互作用を防止したが、Z199はこの相互作用を防止しなかった。Z270はまたCD94/NKG2AとHLA−Eの間の相互作用を防止した。
【0207】
細胞を飽和用量のHLA−E四量体と共にプレインキュベートしたとき、試験された全ての用量のhumZ199(100pg/mlから1μg/mlまで)がBa/F3−CD94/NKG2A細胞に結合することができたが、結合のKDは些か影響を受けたが(〜1log)、これは使用されたHLA−E複合体の四量体の性質によって引き起こされたある種の立体障害による可能性が高い(データは示さず)。
【0208】
従って、Z199及びhumZ199は非競合的CD94/NKG2Aアンタゴニストである。理論に拘束されるものではないが、Z199は、例えばCD94/NKG2Aレセプターにおける立体構造変化を防止し又は誘導し、及び/又はCD94/NKG2Aレセプターの二量体化及び/又はクラスター形成に影響を及ぼすことによってCD94/NKG2Aシグナル伝達を妨害することが可能である。
【0209】
実施例2−Z199のヒト化
Z199の重鎖(Z199.H)及び軽鎖(Z199.L)中の可変ドメインをコードするcDNAを、Z199ハイブリドーマから抽出したmRNAから、5’RACE−及びRT−PCRクローニングによって得た。
Z199VH(1配列)及びVL(1配列)の配列を、Z199ハイブリドーマからのクローニング(5’RACE及びRT PCR,NN China)によって得た。
【0210】
Z199VL:
caaattgttctcacccagtctccagcactcatgtctgcgtctccaggggagaaggtcaccatgacctgcagtgccagctcaagtgtaagttacatttactggtaccagcagaagccaagatcctcccccaaaccctggatttatctcacatccaacctggcttctggagtccctgctcgcttcagtggcagtgggtctgggacctcttactctctcacaatcagcagcatggaggctgaagatgctgccacttattactgccagcagtggagtggtaacccgtacacgttcggaggggggaccaagctggaaataaaacgg(配列番号1)
翻訳された配列:
QIVLTQSPALMSASPGEKVTMTCSASSSVSYIYWYQQKPRSSPKPWIYLTSNLASGVPAR
FSGSGSGTSYSLTISSMEAEDAATYYCQQWSGNPYTFGGGTKLEIKR(配列番号2)
Z199VH:
gaagttcaactggtggagtctgggggaggcttagtgaagcctggagggtccctgaaactctcttgtgcagcctctggattcactttcagtagctatgccatgtcttgggttcgccagtctccagagaagaggctggagtgggtcgcagaaattagtagtggtggtagttacacctactatccagacactgtgaccggccgattcaccatctccagagacaatgccaagaacaccctgtacctggaaatcagcagtctgaggtctgaggacacggccatgtattactgtacaaggcatggtgactaccctaggttcttcgatgtctggggcgcagggaccacggtcaccgtctcctca(配列番号3)
翻訳された配列:
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGFTFSSYAMSWVRQSPEKRLEWVAEISSGGSYTYY
PDTVTGRFTISRDNAKNTLYLEISSLRSEDTAMYYCTRHGDYPRFFDVWGAGTTVTVSS(配列番号4)
【0211】
親和性は発現によって確認した。
Z199配列の解析から、カバット定義によるCDRsは次の通りである:

【0212】
3Dタンパク質構造モデルを、構造鋳型PDB:1MHPと共にMOEを使用して構築した。PDBデータベース中の201の抗体−抗原複合体の統計的解析に基づくと、パラトープ中の最も可能な残基は重鎖:23−35、49−58、93−102;軽鎖:24−34、49−56、89−97である。MOEを使用して、パラトープと相互作用する(疎水性、水素結合、荷電)残基を同定し、残基の組合せセット(パラトープ+相互作用残基)をZ199のマスクとした。
【0213】
Z199.L及びZ199.Hでの生殖系列Vデータベースの検索は次の潜在的なフレームワーク鋳型に戻る(E−値を括弧内に記す):
重鎖:VH3_21(1e−044)、VH3_23(1e−043)、VH3_11(3e−043)、VH3_07(6e−043)、VH3_48(8e−043)
軽鎖:VKVI_A14(3e−033)、VKIII_L6(1e−032)、VKI_L23(2e−031)、VKI_L8(3e−031)、VKI_L15(3e−031)
マスクでの生殖系列データベースの検索は次の潜在的なフレームワーク鋳型に戻る(E−値を括弧内に記す):
重鎖:VH3_23(1e−012)、VH3_21(1e−012)、VH3_30_3(4e−012)、VH3_64(7e−012)、VH3_30_5(1e−011)
軽鎖:VKIII_L6(3e−007)、VKI_L23(6e−007)、VKIII_A11(1e−006)、VKIII_A27(2e−006)、VKIII_L20(3e−006)
アラインメントとヒットのマニュアル検査後に、VH3_21及びVKIII_L6をヒトスキャフォールドとして選択したが、原理的には、例えばヒト化タンパク質の物理化学的性質を最適にするために選択することができた。JH3及びJK2が生殖系列J−セグメントとして選択される。
【0214】
さて、ヒト化は次の規則で実施することができる:
- マスク外の残基をヒトとする。
- マスク内及びカバットCDR内の残基をマウスとする。
- マウス/生殖系列コンセンサスを含むマスク内及びカバットCDR外の残基をコンセンサス配列とする。
- マウス/生殖系列の差を伴うマスク内及びカバットCDR外の残基に潜在的な逆突然変異を施す。
【0215】
Z199.L及びZ199.Hに対する分析を図4に示す(マスクは下線を付した配列番号で示され、カバットCDRs(基準としてヒト化配列を使用)は太字の配列番号で示され、マウス/生殖系列の差は灰色で、潜在的な体細胞高頻度変異残基は下線を付した残基文字で示され、潜在的な逆突然変異残基は太字の残基文字で示される)。
得られた配列humZ199VL及びhumZ199VHにはヒトとして潜在的な逆突然変異残基が与えられる。ヒト化Z199の変異体は次の通りである:
humZ199VL:野生型、E1Q、L46P、L47W、I58V、D70S及びE1Q、L46P、L47W、I58V、及びD70Sの任意の組合せ。
humZ199VH:野生型、S49A、S77T、A93T及びS49A、S77T、A93Tの任意の組合せ。
上述のVH及びVL変異の異なった組合せを有する重鎖及び軽鎖を持つヒト化Z199変異体をまた生産することができ、興味ある性質について試験することができる。
カバットの定義による新規なヒト化抗体のCDRsは次の通りである:

CDR_L1及びCDR_H2(太字で示す)にあるマウスCDRsと比較した差に留意のこと。
【0216】
実施例3−humZ199及び逆突然変異変異体のBiacore分析
マウス(recZ199)及びキメラ(Z199の可変ドメインに融合したヒトIgG4の定常ドメインからなるchimZ199)をHEK2936E細胞中での一過性過剰発現によって生産した。同様な形で、図6に示すものを含むヒト化Z199(humZ199)変異体を生産した。
製造した全ての抗体はプロテインAビーズを用いて収集した。最適なヒト化humZ199VL及びhumZ199VHの組合せを見出すために、CD94/NKG2Aに結合するZ199変異体の能力を、抗原として固定化単鎖(sc)CD94/NKG2A−マウスFc融合タンパク質を使用し、Biacore T−100を使用して決定した。
【0217】
humZ199変異体の抗原結合性をBiacore T100(Biacore AB, Uppsala, Sweden)で分析した。抗原sc−NKG2A−CD94−mFcを、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を使用してアミン基を介してセンサーCM5チップ(Biacore AB, Uppsala, Sweden)に共有的に固定した。固定化レベルは300RUで標的化した。結合分析では、精製した抗体変異体を、流れているバッファーHBS−EP(10mM HEPES pH7.4,150mM NaCl,3mM EDTA,0.005%(v/v)Tween−20)中で10nMに希釈した。動態研究では、Z199抗体変異体をHBS−EPバッファー中で一連の濃度(1.25,2.5,5,7.5,及び10nM)まで希釈した。ついで全ての試料を40ul/分の流量で2分間固定した抗原に注入した。ついで、流れているバッファーを、抗体解離分析のために40ul/分で4分間注入した。各実験後、再生バッファー(10mM NaOH,500mM NaCl)を注入して(30秒、10ul/分)、残りの抗体を抗原から完全に取り除いた。データはBiacore T100評価ソフトウェアを用いて評価した。
【0218】
結果
最初は、ヒト化Z199抗体が抗原に結合することができないことが見出された。従って、逆突然変異をhumZ199の軽鎖及び重鎖に導入した。興味深いことに、軽鎖中の一つの逆突然変異L46Pによって抗体が抗原を認識しそれに結合するようになった(図5)。この変異体の親和性は72pMと定量され、これはキメラZ199のKD(24pM)より2.7倍だけ少なかった(表1)。軽鎖中のL46Pと組み合わせた他の逆突然変異は抗体親和性を更に有意には亢進しなかった(図6)。従って、軽鎖中に単一の逆突然変異L46Pを含むhumZ199を更なる特徴付けのために選択した。

【0219】
実施例4−Z199可変配列中の重要な残基の同定
アラニンスキャンを実施してZ199可変配列中の重要な残基を同定した。
Z199抗体のインシリコ構造解析に基づいて、基礎としてchimZ199を使用して、15の軽鎖及び9の重鎖alaスキャン変異体をつくり、CD94/NKG2Aに結合し、それによってそのアンタゴニスト機能を奏するためのZ199中の重要な残基を決定した(Alaスキャン変異体の概要については図7を参照)。次は生産した変異体のリストである:
LC:S24A、S26A、S27A、S28A、S30A、Y32A、Y49A、L50A、S52A、N53A、L54A、S56A、S92A、N94A、P95A。
HC:T28A、S30A、S31A、Y56A、Y58A、D97A、Y98A、P99A、V102A。
【0220】
変異体をHEK293細胞中で個々に発現させ、発現した抗体を含む組織培養培地を、scCD94/NKG2Aへのその結合プロファイルについてBiacore T100(Biacore AB, Uppsala, Sweden)で試験した。
抗原sc−NKG2A−CD94−mFcを、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を使用してアミン基を介してセンサーCM5チップ(Biacore AB, Uppsala, Sweden)に共有的に固定した。固定化レベルは300RUで標的化した。精製したZ199アラニン変異体を、流れているバッファーHBS−EP中で5nM又は10nMに希釈した。ついで全ての試料を10μl/分の流量で4分間固定した抗原に注入した。ついで、流れているバッファーを、抗体結合安定性分析のために10μl/分で1分間注入した。各実験後、再生バッファー(10mM NaOH,500mM NaCl)を注入して(30秒、10μl/分)、残りの抗体を抗原から完全に取り除いた。データはBiacore T100評価ソフトウェアを用いて評価した。各変異体の相対結合性は、Biacoreから得たその結合レベル(RU)をchimZ199のレベルで割ることによって計算した。
【0221】
結果
chimZ199と比較して、全てのala−スキャン試料は、アッセイにおいて使用した2つのmAb濃度(2.5nM及び5nM)で匹敵する結合プロファイルを示したが、例外は、chimZ199VLにおいて残基Y32、L50又はP95Aがアラニンに置換され、又はchimZ199VHにおいて残基Y56、Y98又はP99がアラニンに置換されたZ199変異体であった。
Z199重鎖アラニン変異体Y56A、Y98A、及びP99Aは約40%の抗原結合能を保持する一方、重鎖変異体Y58A及びD97Aの相対結合性は60−80%であった(図8)。従って、Z199重鎖中のアミノ酸Y56、Y98、及びP99が抗原認識に有意に寄与する。更に、重鎖中のアミノ酸Y58及びD97が抗原結合性に中程度に影響を及ぼす。
同様に、Z199軽鎖アラニン変異体Y32A、L50A、及びP95Aは、約40%の抗原結合能を証明した。軽鎖変異体Y49Aの相対結合性は60−80%である(図9)。従って、Z199軽鎖中のアミノ酸Y32、L50、及びP95が抗原の認識に有意に寄与する一方、軽鎖中のアミノ酸Y49は抗原結合性に中程度に影響を及ぼす。
【0222】
humZ199のようなZ199に基づく治療用化合物は、よって好ましくは、Z199_Lに見出されるCDR1中にY32、CDR2中にL50、CDR3中にP95の位置付けを、Z199_Hに見出されるCDR2中にY56、CDR3中にY98とP99の双方の位置付けを含む。これらのカバット位置は、Z199VLドメイン(配列番号2)のアミノ酸残基Y31、L49、及びP94、とZ199VLドメイン(配列番号4)のアミノ酸残基Y57、Y102、及びP103にそれぞれ対応する。
【0223】
実施例5−Z199エピトープの同定
Z199のような非競合的抗NKG2Aアンタゴニスト抗体はHLA−Eと同時にCD94/NKG2Aに結合可能である。従って、該抗体は、HLA−EがCD94/NKG2A複合体に結合したとき露出したままである細胞外NKG2A残基に結合する。更に、抗体は、HLA−EがインタクトなCD94/NKG2Aレセプターにだけ結合するので、CD94相互作用を破壊しない。
NKG2A/CD94に複合体化したHLA−Eの3D構造(Petrie, E.J.等(2008), J.Exp.Med. 205: 725-735)を使用して、露出した側鎖原子を持つ細胞外NKG2A残基(使用したプローブ半径4.0Å)を同定した。残基P94−K112は3D構造では目に見えず、よって全てが露出していると仮定した。
【0224】
図10に示されるように、非競合的NKG2A抗体のエピトープは従って次のセグメントの一又は複数に残基を含まなければならない:P94−H115、H118、P120−E122、S127−N128、Y132、K135−T139、E141−E142、L144−L145、T148−N151、S153、D158−E161、K164、F178−N190、L192−A193、K195−E197、K199−N207、N214−R215、Q220−C221、S224、H231−K232、及びその任意の組合せ。
NKG2A及びNKG2Cのアミノ酸配列は非常に類似している(図11参照)。NKG2Aに特異的であり、(Z199のような)更に低い親和性でNKG2Cに結合する抗体のNKG2Aエピトープは、よってNKG2A配列にのみ存在する露出残基を含む。従って、非競合的アンタゴニスト抗NKG2A抗体は、完全長NKG2A配列の残基P94−N107及びM189−E197にそれぞれ対応するストーク又はループのエピトープに結合する。好ましくは、抗体のエピトープはこれらのセグメントに少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、又は少なくとも5の露出残基、より特定的には完全長NKG2A配列(配列番号11)の残基P94、S95、T96、L97、I98、Q99、R100、H101、L106、M189、E197を含む。
【0225】
結論として、HLA−Eと競合せず、CD94相互作用を破壊せず、NKG2Cに対してよりもNKG2Aに対してより高い親和性をもって結合する抗NKG2A抗体のNKG2Aエピトープは、従って次のセグメントの何れか又は双方に残基を含まなければならない:NKG2A配列(配列番号11)のPSTLIQRHNNSSLN(P94からN107)又はMNGLAFKHE(M189からE197)。
【0226】
例示的実施態様
次の段落は本発明の例示的な実施態様を記載するものである。
1. ヒトCD94/NKG2Aレセプターの細胞外部分に結合する薬剤であって、
(a)CD94/NKG2A陽性リンパ球の表面に発現するヒトCD94/NKG2Aレセプターの阻害活性を低減させ、及び
(b)HLA−Eと同時にCD94/NKG2Aに結合可能であり、
マウスZ199抗体ではない薬剤。
2. CD94/NKG2A陽性リンパ球がNK細胞である実施態様1に記載の薬剤。
3. CD94/NKG2A陽性リンパ球がNKT細胞である実施態様1に記載の薬剤。
4. CD94/NKG2A陽性リンパ球が細胞傷害性T細胞である実施態様1に記載の薬剤。
5. CD94/NKG2A発現リンパ球のCD94/NKG2A媒介阻害を、HLA−E誘導CD94/NKG2Aシグナル伝達の妨害によって減少させる、先の実施態様の何れか一に記載の薬剤。
6. 薬剤が、CD94/NKG2Cのような活性化CD94/NKG2分子に対してよりも少なくとも100倍低いKDでCD94/NKG2Aの細胞外部分に結合する先の実施態様の何れか一に記載の薬剤。
7. ヒトCD94/NKG2Aの細胞外部分への結合において抗体Z199と競合する先の実施態様の何れか一に記載の薬剤。
8. CD94/NKG2Aへの結合に対してZ199抗体と協業する抗体由来の少なくともCDRを含む、抗体、抗体断片及び合成又は半合成抗体誘導分子から選択される先の実施態様の何れか一に記載の薬剤。
9. 完全なヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体である実施態様8に記載の薬剤。
10. IgA、IgD、IgG、IgE又はIgMである実施態様9に記載の薬剤。
11. IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4である実施態様10に記載の薬剤。
12. 実施態様10又は11に記載の抗体の断片である実施態様8に記載の薬剤。
13. 抗体断片が、Fab断片、Fab’断片、Fab’−SH断片、F(ab)2断片、F(ab’)2断片、Fv断片、重鎖Ig(ラマ又はラクダIg)、VHH断片、単一ドメインFV、及び単鎖抗体断片から選択される実施態様8に記載の薬剤。
14. 合成又は半合成抗体誘導分子が、scFV、dsFV、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、カッパボディ、IgNAR;tandAb、BITE;及び多重特異性抗体から選択される実施態様8に記載の薬剤。
15. Z199のVH及びVLドメインからのCDR配列を含む先の実施態様の何れかに記載の薬剤。
16. Z199のCDR配列に1、2、3、4、5、又は6の逆突然変異を含む実施態様15に記載の薬剤。
17. Z199可変重鎖(VH)ドメイン(配列番号4)のアミノ酸残基31−35、50−60、62、64、66、及び99−108と、Z199可変軽鎖(VL)ドメイン(配列番号2)のアミノ酸残基24−33、49−55、及び88−96を含む実施態様16に記載の薬剤。
18. 軽鎖の46位にプロリンを含む完全なヒト又はヒト化抗体である実施態様17に記載の薬剤。
19. 組換え生殖系列配列及び関連した体細胞突然変異からなる群から選択されるヒトフレームワーク領域を含む実施態様10に記載の薬剤。
20. 抗体Z199に結合するCD94/NKG2Aエピトープに対して産生された、又はZ199のイディオタイプに特異的に結合する抗イディオタイプ抗体に対して産生された完全なヒト抗体である実施態様10−12の何れか一に記載の薬剤。
21. ヒトフレームワーク、46位のプロリン残基及び次の相補性決定領域(CDR):
(a)配列番号8を含むCDR−H1;
(b)配列番号9を含むCDR−H2;
(c)配列番号10を含むCDR−H3;
(d)配列番号5を含むCDR−L1;
(e)配列番号6を含むCDR−L2;及び
(f)配列番号7を含むCDR−L3
を含む先の実施態様の何れか一に記載の薬剤。
22. 少なくとも部分的に精製された形態である先の実施態様の何れか一に記載の薬剤。
23. 本質的に単離された形態である先の実施態様の何れか一に記載の薬剤。
24. 第二の薬剤にコンジュゲート又は融合されている実施態様の何れか一に記載の薬剤。
25. 第二の薬剤が遅延化基、例えばPEG、細胞傷害剤、検出可能なマーカー、標的薬剤から選択される実施態様24に記載の薬剤。
26. 医薬として使用される先の実施態様の何れか一に記載の薬剤。
27. 悪性腫瘍、ウイルス感染、炎症疾患、及び自己免疫疾患の治療に医薬として使用される先の実施態様の何れか一に記載の薬剤。
28. ヒト患者における細胞表面に発現されるCD94/NKG2Aレセプターの阻害活性を中和又は低減させるために医薬として使用するための先の実施態様の何れか一に記載の薬剤。
29. ヒト患者におけるCD94/NKG2A発現細胞の細胞死滅活性を増強するための医薬として使用するための先の実施態様の何れか一に記載の薬剤。
30. ヒト患者におけるCw3発現標的細胞の死滅を誘導するための医薬として使用するための先の実施態様の何れか一に記載の薬剤。
31. 先の実施態様の何れか一に記載の薬剤を薬学的に許容可能な担体、希釈剤又はビヒクルと共に含有する組成物。
32. 実施態様9及び実施態様9に従属する場合の実施態様10の何れか一に記載の薬剤をコードする核酸断片。
33. DNA及びRNA断片から選択される実施態様32に記載の核酸断片。
34. 実施態様32又は33に記載の核酸断片を含むベクター。
35. クローニングベクター及び発現ベクターから選択される実施態様34に記載のベクター。
36. 実施態様32又は33に記載の核酸断片、又は実施態様34又は35に記載のベクターを含む形質転換された宿主細胞。
37. (a)重鎖及び軽鎖アミノ酸配列双方のコード領域であって、同一又は異なった調節遺伝子エレメントの制御下にあるコード領域を含む実施態様32又は33に記載の一核酸断片、又は
(b)一方が軽鎖アミノ酸配列をコードし他方が重鎖アミノ酸配列をコードする実施態様32又は33に記載の2つの別個の核酸断片
を含む、実施態様36に記載の形質転換された細胞。
38. 実施態様32又は33に記載の核酸断片を発現する、実施態様36又は37に記載の形質転換された宿主細胞。
39. 実施態様36−38の何れか一に記載の形質転換細胞を製造する方法において、重鎖及び軽鎖アミノ酸配列をコードする実施態様34又は35に記載のベクター、又は一方が重鎖アミノ酸配列をコードし他方が軽鎖アミノ酸配列をコードする実施態様34又は35に記載の二つの異なったベクターで宿主細胞を形質転換し又は形質導入することを含む方法。
40. 実施態様36−38の何れか一に記載の形質転換された宿主細胞を、実施態様32又は33の核酸断片の発現を容易にする条件下で培養し、場合によってはこのようにして生産された発現産物を回収することを含む、実施態様9及び実施態様9に従属する限りにおいて実施態様10−23に記載の薬剤を製造する方法。
41. 治療又は寛解を必要とするヒト患者において悪性腫瘍、ウイルス感染、炎症疾患、及び自己免疫疾患を治療又は寛解する方法において、実施態様1−25の何れか一に記載の薬剤又は実施態様31に記載の組成物の有効量を上記ヒト患者に投与することを含む方法。
42. 実施態様41に記載の方法において、上記悪性腫瘍が、扁平上皮癌、白血病、急性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、線毛細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、急性又は慢性の骨髄性白血病、前骨髄球白血病、線維肉腫、横紋筋肉腫;メラノーマ、精上皮腫、奇形癌腫、神経芽細胞腫、膠腫、星状細胞腫、神経芽細胞腫、膠腫、シュワン細胞腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、メラノーマ、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞性癌、奇形癌腫、膀胱、胸部、結腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、前立腺、膵臓、胃、子宮頸管、甲状腺又は皮膚の他の癌腫、リンパ系統の他の造血性腫瘍、骨髄系統の他の造血性腫瘍、間充織起源の他の腫瘍、中枢又は末梢神経系の他の腫瘍、又は間葉系起源の他の腫瘍からなる群から選択される方法。
43. 悪性腫瘍が、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫及び急性骨髄性リンパ腫から選択される実施態様42に記載の方法。
44. 実施態様41に記載の方法において、上記自己免疫疾患が、溶血性貧血、悪性貧血、結節性多発動脈炎、全身性エリテマトーデス、ウェゲナー肉芽腫症、自己免疫性肝炎、ベーチェット病、クローン病、原発性胆汁性肝硬変、強皮症、潰瘍性大腸炎、シェーグレン症候群、1型糖尿病、ブドウ膜炎、グレーブス病、アルツハイマー病、甲状腺炎、心筋炎、リウマチ熱、強皮症、強直性脊椎炎、関節リウマチ、糸球体腎炎、サルコイドーシス、皮膚筋炎、重症筋無力症、多発性筋炎、ギラン・バレー症候群、多発性硬化症、円形脱毛症、天疱瘡/類天疱瘡、水疱性類天疱瘡、橋本甲状腺炎、乾癬、及び白斑からなる群から選択される方法。
45. 実施態様41に記載の方法において、上記炎症疾患が、副腎炎、肺胞炎、胆管胆嚢炎、虫垂炎、亀頭炎、眼瞼炎、気管支炎、滑液包炎、心臓炎、蜂巣炎、子宮頚管炎、胆嚢炎、声帯炎、蝸牛殻炎、大腸炎、結膜炎、膀胱炎、皮膚炎、憩室炎、脳炎、心内膜炎、食道炎、耳管炎、結合織炎、毛包炎、胃炎、胃腸炎、歯肉炎、舌炎、肝脾炎、角膜炎、内耳炎、喉頭炎、リンパ管炎、乳腺炎、中耳炎、髄膜炎、子宮炎、粘膜炎、心筋炎、鼓膜炎、腎炎、神経炎、精巣炎、骨軟骨炎、耳炎、心膜炎、腱鞘炎、腹膜炎、咽頭炎、静脈炎、灰白脊髄炎、前立腺炎、歯髄炎、網膜炎、鼻炎、卵管炎、強膜炎、セレロ脈絡膜炎(selerochoroiditis)、陰嚢炎、静脈洞炎、脊椎炎、脂肪組織炎、口内炎、滑膜炎、 耳管炎、腱炎、扁桃腺炎、尿道炎、及び膣炎からなる群から選択される方法。
46. 実施態様41に記載の方法において、上記ウイルス感染が、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザ、水痘、アデノウイルス、単純ヘルペス1型(HSV−1)、単純ヘルペス2型(HSV−2)、牛疫、ライノウイルス、エコーウイルス、ロタウイルス、呼吸器多核体ウイルス、パピローマウイルス、パピローマウイルス、サイトメガロウイルス、エチノウイルス(echinovirus)、アルボウイルス、ハンタウイルス、コクサッキーウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ポリオウイルス及びヒト免疫不全症ウイルス1型又は2型(HIV−1、HIV−2)からなる群から選択される方法。
47. (a)CD94/NKG2A発現リンパ球の表面上に発現されたヒトCD94/NKG2Aレセプターの細胞外部分に結合し;
(b)ヒトCD94/NKG2Aレセプターの阻害活性を減少させ;かつ
(c)ヒトCD94/NKG2Aレセプターへの結合においてHLA−Eと競合せず、及び/又はCD94/NKG2Aレセプターに同時に結合可能であり、及び/又はCD94/NKG2AレセプターへのHLA−Eの結合を防止しない
単離されたヒト又はヒト化抗体。
48. CD94/NKG2Cに対してよりも少なくとも100倍低いKDでCD94/NKG2Aに結合する抗NKG2抗体である実施態様47に記載の抗体。
49. ヒトCD94/NKG2Aへの結合においてZ199抗体と競合する実施態様47−48の何れか一に記載のヒト又はヒト化抗体。
50. Z199抗体と同じCD94/NKG2A上の同じエピトープに結合する実施態様47−49の何れか一に記載のヒト又はヒト化抗体。
51. 他の実施態様において、
(a)P94−N107及び/又はM189−E197;
(b)P94からN107;又は
(c)M189からE197
を含むNKG2A配列(配列番号11)中のセグメントに結合する、実施態様47−50の何れか一に記載のヒト又はヒト化抗体。
52. ヒト化Z199抗体である実施態様47−51の何れか一に記載のヒト化抗体。
53. Z199のVLドメイン(配列番号2)のアミノ酸残基Y31、L49、及びP94とZ199のVLドメイン(配列番号4)のアミノ酸残基Y57、Y102、及びP103を含む実施態様52の何れかに記載のヒト化抗体。
54. 可変重鎖(VH)又は可変軽鎖(VL)ドメインに少なくとも一の逆突然変異を含む実施態様52−53の何れか一に記載のヒト化抗体。
55. Z199のVLドメインのアミノ酸残基P45を含む実施態様52−54の何れか一に記載のヒト化抗体。
56. Z199のVLドメインのアミノ酸残基24−33、49−55、及び88−96と、Z199のVHドメインのアミノ酸残基31−35、50−60、62、64、66、及び 99−108を含む、実施態様52−55の何れか一に記載のヒト化抗体。
57. CDR_L1中に挿入されたアミノ酸を含む実施態様52−56の何れか一に記載のヒト化抗体。
58. 挿入されたアミノ酸が、Z199のVLドメインの残基30及び31間に挿入されたセリン(S)である実施態様57に記載のヒト化抗体。
59. Z199のVLドメインのアミノ酸残基Q1、W46、V57、及びS69の一又は複数及び/又はZ199のVHドメインのアミノ酸残基A49、T78、及びT97の一又は複数を含む、実施態様52−58の何れか一に記載のヒト化抗体。
60. ヒトCD94/NKG2Aレセプターに結合し、
(a)配列番号5を含むCDR−L1;
(b)配列番号6を含むCDR−L2;
(c)配列番号7を含むCDR−L3;
(d)配列番号8を含むCDR−H1;
(e)配列番号9を含むCDR−H2;
(f)配列番号10を含むCDR−H3;
(g)ヒトスキャフォールド配列;及び
(h)カバット位置46のプロリン(P)残基
を含む単離された抗体。
61. 場合によってはS241P変異を含むIgG4定常領域を含む実施態様47−60の何れか一に記載の抗体。
62. 抗原結合抗体断片である実施態様47−60の何れか一に記載の抗体。
63. 第二の薬剤にコンジュゲートされ又は融合された実施態様47−60の何れか一に記載の抗体。
64. 第二の薬剤が遅延化基、例えばPEG、細胞傷害剤、検出可能なマーカー、標的薬剤から選択される実施態様63に記載の抗体。
65. 医薬として使用される実施態様47−64の何れか一に記載の抗体又はその抗原結合断片。
66. 悪性腫瘍、ウイルス感染、炎症疾患、及び/又は自己免疫疾患を治療するのに使用される実施態様47−64の何れか一に記載の抗体。
67. ヒト患者における細胞表面に発現されるCD94/NKG2Aレセプターの阻害活性を低減させるために使用される実施態様47−64の何れか一に記載の抗体。
68. ヒト患者におけるCD94/NKG2A発現細胞の細胞死滅活性を増強するために使用される実施態様47−64の何れか一に記載の抗体。
69. ヒト患者におけるHLA−E発現標的細胞の死滅を誘導するために使用される実施態様47−64の何れか一に記載の抗体。
70. 実施態様47−64の何れか一に記載の抗体と薬学的に許容可能な担体、希釈剤又はビヒクルを含有する組成物。
71. 実施態様47−64の何れか一に記載の抗体をコードする核酸断片。
72. DNA及びRNA断片である実施態様70に記載の核酸断片。
73. 実施態様71又は72に記載の核酸断片を含むベクター。
74. クローニングベクター及び発現ベクターから選択される実施態様73に記載のベクター。
75. 実施態様71又は72に記載の核酸断片、又は実施態様73又は74に記載のベクターを含む形質転換された宿主細胞。
76. (a)重鎖及び軽鎖アミノ酸配列双方のコード領域であって、同一又は異なった調節遺伝子エレメントの制御下にあるコード領域を含む実施態様71又は72に記載の核酸断片、又は
(b)一方が軽鎖アミノ酸配列をコードし他方が重鎖アミノ酸配列をコードする実施態様71又は72に記載の2つの別個の核酸断片
を含む、実施態様75に記載の形質転換された細胞。
77. 核酸断片を発現する、実施態様75又は76に記載の形質転換された宿主細胞。
78. 実施態様76及び77の何れかに記載の形質転換細胞を製造する方法において、重鎖及び軽鎖アミノ酸配列をコードする実施態様73又は74に記載のベクター、又は一方が重鎖アミノ酸配列をコードし他方が軽鎖アミノ酸配列をコードする実施態様73又は74に記載の二つの異なったベクターで宿主細胞を形質転換し又は形質導入することを含む方法。
79. 実施態様75−77の何れか一に記載の形質転換された宿主細胞を、核酸断片の発現を容易にする条件下で培養し、場合によってはこのようにして生産された抗体を回収することを含む、実施態様47−64の何れか一に記載の抗体を製造する方法。
80. 治療又は寛解を必要とするヒト患者において悪性腫瘍、ウイルス感染、炎症疾患、及び自己免疫疾患を治療又は寛解する方法において、実施態様47−64の何れか一に記載の抗体又は実施態様70に記載の組成物の有効量を上記ヒト患者に投与することを含む方法。
81. 上記悪性腫瘍が、扁平上皮癌、白血病、急性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、線毛細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、急性又は慢性の骨髄性白血病、前骨髄球白血病、線維肉腫、横紋筋肉腫;メラノーマ、精上皮腫、奇形癌腫、神経芽細胞腫、膠腫、星状細胞腫、神経芽細胞腫、膠腫、シュワン細胞腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、メラノーマ、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞性癌、奇形癌腫、膀胱、胸部、結腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、前立腺、膵臓、胃、子宮頸管、甲状腺又は皮膚の他の癌腫、リンパ系統の他の造血性腫瘍、骨髄系統の他の造血性腫瘍、間充織起源の他の腫瘍、中枢又は末梢神経系の他の腫瘍、又は間葉系起源の他の腫瘍からなる群から選択される実施態様80に記載の方法。
82. 悪性腫瘍が、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫及び急性骨髄性リンパ腫から選択される実施態様81に記載の方法。
83. 上記自己免疫疾患が、溶血性貧血、悪性貧血、結節性多発動脈炎、全身性エリテマトーデス、ウェゲナー肉芽腫症、自己免疫性肝炎、ベーチェット病、クローン病、原発性胆汁性肝硬変、強皮症、潰瘍性大腸炎、シェーグレン症候群、1型糖尿病、ブドウ膜炎、グレーブス病、アルツハイマー病、甲状腺炎、心筋炎、リウマチ熱、強皮症、強直性脊椎炎、関節リウマチ、糸球体腎炎、サルコイドーシス、皮膚筋炎、重症筋無力症、多発性筋炎、ギラン・バレー症候群、多発性硬化症、円形脱毛症、天疱瘡/類天疱瘡、水疱性類天疱瘡、橋本甲状腺炎、乾癬、及び白斑からなる群から選択される実施態様80に記載の方法。
84. 上記炎症性疾患が、副腎炎、肺胞炎、胆管胆嚢炎、虫垂炎、亀頭炎、眼瞼炎、気管支炎、滑液包炎、心臓炎、蜂巣炎、子宮頚管炎、胆嚢炎、声帯炎、蝸牛殻炎、大腸炎、結膜炎、膀胱炎、皮膚炎、憩室炎、脳炎、心内膜炎、食道炎、耳管炎、結合織炎、毛包炎、胃炎、胃腸炎、歯肉炎、舌炎、肝脾炎、角膜炎、内耳炎、喉頭炎、リンパ管炎、乳腺炎、中耳炎、髄膜炎、子宮炎、粘膜炎、心筋炎、鼓膜炎、腎炎、精巣炎、骨軟骨炎、耳炎、心膜炎、腱鞘炎、腹膜炎、咽頭炎、静脈炎、灰白脊髄炎、前立腺炎、歯髄炎、網膜炎、鼻炎、卵管炎、強膜炎、セレロ脈絡膜炎(selerochoroiditis)、陰嚢炎、静脈洞炎、脊椎炎、脂肪組織炎、口内炎、滑膜炎、 耳管炎、腱炎、扁桃腺炎、尿道炎、及び膣炎からなる群から選択される実施態様80に記載の方法。
85. 上記ウイルス感染が、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザ、水痘、アデノウイルス、単純ヘルペス1型(HSV−1)、単純ヘルペス2型(HSV−2)、牛疫、ライノウイルス、エコーウイルス、ロタウイルス、呼吸器多核体ウイルス、パピローマウイルス、パピローマウイルス、サイトメガロウイルス、エチノウイルス(echinovirus)、アルボウイルス、ハンタウイルス、コクサッキーウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ポリオウイルス及びヒト免疫不全症ウイルス1型又は2型(HIV−1、HIV−2)からなる群から選択される実施態様80に記載の方法。
【0227】
ここに引用した刊行物、特許出願及び特許を含む全ての文献は、各文献が個々にかつ特に出典明示により援用され、その全体がここに記載されているのと同じ程度に、出典明示によりここに援用される。ここでの特許文献の引用及び援用は便宜上のものであって、このような特許文献の有効性、特許性及び/又は権利行使性についての見解を反映するものではない。
全ての表題及び副題は、ここでは便宜的にのみ使用されており、決して本発明を限定するものとは解してはならない。
本明細書中で特段明記又は明らかに矛盾しない限り、全ての考えられる変更において上記の要素の何れの組み合わせも本発明に包含される。
【0228】
発明を記述する際に使用される「a」及び「an」及び「the」なる用語及び同様の指示対象は、ここで別の記載がなされていないか、文脈上はっきりと矛盾していない限りは、単数形及び複数形の双方をカバーしていると解されるものである。
本明細書中の値の記載は単に、その範囲内にあるそれぞれ別々の値を個々に示す方法を短縮して示すことを意図しているだけであって、本明細書中で明記されない限り、それぞれ別々の値は、個別に挙げられているものとして本明細書中に組み込まれている。特に示さない限り、ここで提供される全ての正確な値は、対応する近似値の代表例である(例えば、特定の因子又は測定に対して提供される全ての正確な例示的値は、適切な場合は、「約」により修飾される、対応する近似測定値を提供するとみなすことができる)。
本明細書中で特段明記又は明らかに矛盾しない限り、本明細書中に記載のすべての方法は任意の好適な順序で行われうる。
【0229】
ここに提供される任意かつ全ての例、又は例示的言語(例えば「等」)の使用は、単に本発明をより明らかにすることを意図しており、特に別段の記載がない限り、本発明の範囲に限定をもたらすものではない。明細書中の如何なる語句も、明示的に記載していない限り、如何なる要素も本発明の実施に必須であることを示しているものと解してはならない。
他に言及しない又は前後関係ではっきりと矛盾していない限りは、要素又は要素群に関して、「含有する」、「有する」、「含む」又は「含んでいる」等の用語を使用する本発明の任意の態様又は実施態様のここでの記載は、その特定の要素又は要素群「からなる」、「本質的になる」、又は「実質的に含む」本発明の類似した態様又は実施態様をサポートすることを意図したものである(例えば、特定の要素を含むものとしてここに記載されている組成物は、他に言及しない限り又は前後関係ではっきりと矛盾していないならば、その要素からなる組成物をまた記載しているものと理解すべきである)。
本発明は、適用される法律によって許容される最大の範囲で、ここに提示された態様又は特許請求の範囲に記載された主題事項のあらゆる変形例及び均等物を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)CD94/NKG2A発現リンパ球の表面に発現するヒトCD94/NKG2Aレセプターの細胞外部分に結合し、
(b)ヒトCD94/NKG2Aレセプターの阻害活性を低減させ、及び
(c)ヒトCD94/NKG2Aレセプターへの結合においてHLA−Eと競合しない
単離されたヒト又はヒト化抗NKG2A抗体。
【請求項2】
ヒトCD94/NKG2Cに対してよりも少なくとも100倍低いKDでCD94/NKG2Aに結合する請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
ヒトCD94/NKG2Cレセプターへの結合においてZ199抗体と競合する請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項4】
Z199抗体と同じエピトープに結合する請求項1から3の何れか一項に記載の抗体。
【請求項5】
残基P94−N107、M189−E197、又は双方を含むNKG2A(配列番号11)のセグメントに結合する請求項1から4の何れか一項に記載の抗体。
【請求項6】
NKG2A(配列番号11)のP94、S95、T96、L97、I98、Q99、R100、H101、L106、M189、又はE197あるいはその任意の組合せから選択される残基を含むエピトープに結合する請求項1から5の何れか一項に記載の抗体。
【請求項7】
ヒト化Z199抗体である請求項1から6の何れか一項に記載の抗体。
【請求項8】
Z199可変軽鎖(VL)ドメイン(配列番号2)のアミノ酸残基Y31、L49、及びP94と、Z199可変重鎖(VH)ドメイン(配列番号4)のアミノ酸残基Y57、Y102、及びP103を含む請求項7に記載の抗体。
【請求項9】
VL又はVHドメインフレームワーク配列に少なくとも一つの逆突然変異を含む請求項7又は8に記載の抗体。
【請求項10】
Z199のVLドメインのアミノ酸残基P45を含む請求項7から9の何れか一項に記載の抗体。
【請求項11】
Z199のVLドメインのアミノ酸残基24−33、49−55、及び88−96と、Z199のVHドメインのアミノ酸残基31−35、50−60、62、64、66、及び99−108を含む請求項7から10の何れか一項に記載の抗体。
【請求項12】
Z199のVLドメインの残基30及び31の間に挿入されたセリン(S)を含む請求項7から11の何れか一項に記載の抗体。
【請求項13】
ヒトCD94/NKG2Aレセプターに結合し、
(a)配列番号5を含むCDR−L1;
(b)配列番号6を含むCDR−L2;
(c)配列番号7を含むCDR−L3;
(d)配列番号8を含むCDR−H1;
(e)配列番号9を含むCDR−H2;
(f)配列番号10を含むCDR−H3;
(g)ヒトVL及びVHフレームワーク領域;及び
(h)VLドメイン中のカバット位置46のプロリン(P)残基
を含む単離された抗体。
【請求項14】
場合によってはS241P変異を含む、ヒトIgG4定常ドメインを含む請求項13に記載の抗体。
【請求項15】
請求項1から14の何れかに記載の抗体と、薬学的に許容可能な担体、希釈剤又はビヒクルを含有する組成物。
【請求項16】
悪性腫瘍、ウイルス感染、炎症疾患、及び/又は自己免疫疾患の治療に使用される請求項1から14の何れか一項に記載の抗体。
【請求項17】
請求項1から14の何れか一項に記載の抗体を生産する方法であって、抗体をコードする核酸断片を含む一又は複数のベクターで形質転換された宿主細胞を、核酸断片の発現を容易にする条件下で培養し、場合によっては生産された抗体を回収することを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−510047(P2011−510047A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543510(P2010−543510)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/050795
【国際公開番号】WO2009/092805
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(596113096)ノボ・ノルデイスク・エー/エス (241)
【Fターム(参考)】