説明

ヒト樹状細胞に結合するモノクローナル抗体とβヒト絨毛性性腺刺激ホルモンを含むワクチン結合体

本発明は、新規な抗体ワクチン複合体と、同複合体を用いて細胞障害性T細胞(CTL)応答を誘導する方法を提供する。ある実施態様では、本ワクチン複合体は、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンベータ・サブユニット(βhCG)抗原を連結して含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2004年7月30日に提出された米国仮特許出願No. 10/903,191号に基づく優先権を主張するものである。前記の出願の内容全体を、引用をもってここに援用することとする。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
免疫応答は、身体全体の組織に常在する樹状細胞(DC)及びマクロファージ(Mg)を含む専門的な抗原提示細胞(APC)のレベルで惹起される。DCは高レベルの細胞表面分子や、Tリンパ球と相互作用する補完的な受容体を発現するため、効力ある免疫応答を誘導する。DCはまた、免疫応答を惹起すると共に、細胞免疫及び体液性免疫の両方の増幅で蓄積するサイトカイン、ケモカイン及びプロテアーゼを分泌する。
【0003】
DCはそれらの表面上に、抗原フラグメントと結合する主要組織適合性複合体(MHC)分子を発現する。このようなMHC複合体を認識してT細胞受容体(TCR)を発現するT細胞が活性化すると免疫カスケードが惹起される。大まかには、MHC クラス I 及びMHC クラス II 分子という2つの種類のMHC分子がある。MHC クラス I 分子は、抗原と特異的CD8+ T 細胞に提示し、そしてMHC クラス II 分子は抗原を特異的 CD4+ T 細胞に提示する。
【0004】
数多くの疾患、特に癌、の有効な治療のためには、ワクチンは、細胞障害性T細胞応答とも呼ばれる効力ある細胞障害性T リンパ球(CTL)応答を惹起せねばならない。細胞障害性T 細胞には、主に、MHCクラスIの流れで抗原を認識するCD8+ T 細胞がある。MHC クラス I 分子の流れでの抗原プロセッシングは、MHC クラス II 分子のものとは大きく異なる。APCに外因的に送達された抗原は、主にMHC
クラス II 分子との結合に向けてプロセッシングされる。対照的に、MHC クラス I分子の細胞内位置のために、内因的にAPCに送達された抗原は、主にwith
MHC クラス I 分子との結合に向けてプロセッシングされる。これはAPCにとってのみ真実ではない。なぜなら全ての有核細胞がMHCクラスI分子を発現し、それらの表面上に内因的に産生された抗原を、MHCクラスI分子と結合させて継続的に提示しているからである。
【0005】
これが理由で、ウィルス又は腫瘍抗原が、MHCクラスI分子に結合したペプチドとして提示されていれば、ウィルスに感染した細胞、又は、固有のたんぱく質を発現している腫瘍細胞をCTLに標的に決定することができる。しかしながら、DCは、特定の条件下では、外因性の抗原を内部の区画に到達させてMHCクラスI分子に結合させるという固有の能力を有するため、これらはT細胞にMHCクラスI及びクラスII経路の両方を通じて提示される。このプロセスは交差抗原刺激又は交差提示と呼ばれる。
【0006】
従って、抗体媒介性応答は、特定の分泌型又は細胞表面抗原を狙わせた場合には、特定の疾患とって印象的な防御上又は治療上の効験を示してきたが、数多くの疾患にとって、大半の有効な免疫療法は、T細胞媒介性免疫応答、特にCTL応答を要するようである。有効なCTL応答は細胞外抗原に限られないため、有効でない抗体ターゲットである抗原ベースの治療用ワクチンを開発してしまう可能性がある。従って、疾患関連抗原に応答してCTLを生じさせる新規な方法に大きな興味が持たれている。なぜならこれらの細胞は、一般の多くのワクチンの効験にとって重要であり、大半の治療用癌ワクチンにとって必須だと考えられるからである。
【0007】
今日まで用いられてきたワクチン法の一つは、抗原性ペプチドによる免疫処理を利用するものである。この免疫法は、抗原取り込み及びプロセッシングの必要性を迂回し、APCの表面上に既に発現しているMHCクラスI分子に直接結合する当該ペプチドの能力に依拠するものである。この方法は患者においてCTL誘導の証拠を明確に示してきたが、この方法にはいくつかの限界がある。この抗原性ペプチドは予め確立されておらねばならず、また、異なるMHCハプロタイプを持つ個体毎に異なるペプチドが必要であり、更にペプチドはin vivoで短命である。
【0008】
検査されたもう一つの方法は抗体−抗原複合体を利用するものである。Paul et al. (62) は、マウスにおいて、ある抗原に特異的な抗体が、おそらくは、APC上に発現した、IgGに対するFc受容体(FcγR)に免疫複合体を送達することにより、この抗原に対する免疫応答を亢進できたことを示した。Wernersson 及び共同研究者 (63) は、免疫応答の亢進における個々のFcγRの役割を、in vivoで免疫複合体を用いて研究した。それらの研究は、FcγRIは、免疫応答の亢進を媒介するのに充分であることを実証した。しかしながら、このような免疫複合体はAPCを特異的に標的とすることはない。なぜならこれらは、抗原提示に関与しない数多くの細胞上のFc受容体にも結合することで、抗原送達の効果を低下させるからである。
【0009】
その後の研究では、抗原をAPC上の多種の受容体に対して選択的に標的決定するために抗体を用いており、このような選択的送達は、体液性応答を誘導することができることを実証した (66,67)。加えて、DC上のFcRに結合した免疫複合体はMHCクラスIの流れでプロセッシング及び提示されることが示されている (64,65)。更に、FcRは血小板及び好中球などの多くの非APC上に発現するため、多くのこのようなFcR-ターゲティング法には限界がある。理想的には、APCを特異的に標的とし、有効なMHCクラス限定CTL応答や有効なMHCクラスII限定TH応答を誘導することのできるワクチンであれば、いくつかの疾患を治療する上で優れた効験をもたらすであろう。
【0010】
同様に、マンノシル化抗原が体液性免疫応答及びCTL応答などのT細胞媒介性免疫応答を誘導することが示されている。しかし、マンノシル化抗原は、他のマンノース結合たんぱく質が著しく豊富にあるために、APCを特異的に標的にすることはない。更に、マンノシル化たんぱく質は、未熟DCにマクロピノサイトーシス機序を通じて内部移行する。従って、抗原のマンノシル化によって生じる免疫応答の機序及び性質は、抗体を用いた、マンノース受容体への抗原の特異的ターゲティングにより生じるものとは大きく異なるのである。
【0011】
現行法はAPCを効率的かつ特異的に標的にするものではないため、多くの治療用ワクチンには、抗原への暴露後に再輸注される患者由来DCの精製が必要である。
【0012】
従って、数多くの疾患を有効に治療するために必要な、APCを効率的にターゲティングできると共に、抗原特異的CTL応答を含む抗原特異的T細胞媒介性免疫応答を生ずることのできる優れたワクチンが求められている。
【0013】
発明の概要
本発明は、数多くの疾患の有効な治療に必要な、抗体ベースのワクチンと、抗原特異的T細胞媒介性免疫応答を生ずる方法を、提供するものである。具体的には、効力ある抗原特異的細胞障害性Tリンパ球(CTL)応答が、APC上に発現する特定の受容体に結合する抗体を用いて一つ以上のたんぱく質抗原を抗原提示細胞(APC)に標的決定することにより、誘導される。好適な受容体には、樹状細胞(DC)及びマクロファージの両方の上に発現する、C-レクチン、特にヒトマンノース受容体、がある。本発明の例で実証するように、抗体−抗原複合体を用いてマンノース受容体を標的に決定すると、抗原プロセッシングがMHCクラスI及びクラスII経路の両方を通じて起きる。このように、抗原特異的CTL(例えばCD8+T細胞)や、ヘルパT細胞(例えばCD4+T細胞)を含む他の重要なエフェクタT細胞が誘導される。従って、ある局面では、本発明は、抗原と、例えばヒトAPC上に発現するヒトマンノース受容体に結合するモノクローナル抗体など、ヒトAPCに結合するモノクローナル抗体との複合体を形成することにより、この抗原に対するCTL応答を誘導又は亢進する方法を提供するものである。次にこの複合体を、in vivo又はex vivoでAPCに接触させて、この抗原に対するCTL応答(例えば、CD8+細胞障害性T細胞により媒介される応答など)を誘導又は亢進する態様で、この抗原を内部移行させ、プロセッシングさせ、そしてT細胞に提示させる。ある好適な実施態様では、これは、当該抗原に対するヘルパT細胞応答(例えばCD4+ヘルパT細胞により媒介される応答など)を誘導するためにも役立つ。従って、この免疫応答はMHCクラスI及びMHCクラスII経路の両方を通じて誘導される。更にAPCを、樹状細胞の増殖を刺激して免疫応答を更に亢進する、アジュバント又はサイトカインなどの免疫刺激性物質に接触させることもできる。このような物質を、当該分子複合体とは別に接触させることも、あるいは、当該分子複合体に連結することもできる。
【0014】
従って、ある実施態様では、本発明は、抗原又は免疫刺激性物質に連結させたヒトAPCに結合するモノクローナル抗体を含むワクチン複合体を提供するものである。該免疫刺激性物質は、共有結合又は非共有結合のいずれによっても、免疫複合体に連結させることができる。代替的には、該免疫刺激性物質を、当該複合体に遺伝子融合させることもできる(例えば一個の融合たんぱく質として当該複合体と一緒に発現させるなど)。限定はしないが、CD40 リガンド;IFN-α、IFN-β、IFN-γ及びIL-2などのサイトカイン;G-CSF (顆粒球コロニー刺激因子)及びGM-CSF
(顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子)などのコロニー刺激因子;抗CTLA4抗体;toll 受容体アゴニスト(例えばフラゲリン及びMALP-2(マクロファージ活性化リポペプチド-2);LPS(エンドトキシン);R837 (ミネソタ州セント・ポール、3M
ファーマシューティカルズ社);R848(ミネソタ州セント・ポール、3M
ファーマシューティカルズ社);polyI:C (イノシン−シトシンポリヌクレオチド);ssRNA;dsRNA;カルメット−ゲラン桿菌(BCG);レバミソールヒドロクロリド;及び静脈内免疫グロブリンを含め、多種の適した免疫刺激性物質を利用することができる。
【0015】
限定はしないが、いずれの種(例えばヒト、マウス、ウサギ等)を由来とするもの、及び/又は、組換えにより操作及び発現させたもの(例えばキメラ、ヒト化及びヒト抗体等)を含め、多種の適した抗体を本発明の複合体に利用することができる。好適な抗体にはヒトモノクローナル抗体がある。本発明の方法で用いられる抗体には、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgD、又はIgEなどのいずれの抗体アイソタイプも含めることができるが、好適な抗体はIgGアイソタイプのものである。当該抗体は全抗体でも、又は、例えばFab、F(ab')2、Fv 及び一本鎖Fvフラグメントを含むその抗原結合フラグメントでもよい。
【0016】
本発明での使用に好適な抗体には、ヒトマンノース受容体に結合するヒトモノクローナル抗体がある。ある実施態様では、本抗体は、それぞれSEQ ID NO:3 及び SEQ ID NO:7に記載された通りのヌクレオチド配列、又は、本抗体が樹状細胞への結合能を保持しているようにSEQ
ID NO:3 又は SEQ ID NO:7に充分相同なヌクレオチド配列、をそれらの可変領域に含むことで、ヒト重鎖及びヒトカッパ軽鎖核酸にコードされている。
【0017】
更に他の好適なヒト抗体には、ヒトマンノース受容体に結合すると共に、それぞれSEQ ID NO:4 及びSEQ ID
NO:8に記載された通りのアミノ酸配列、又は、本抗体が樹状細胞への結合能を保持しているようにSEQ ID NO:4 及びSEQ ID NO:8に対して充分相同なアミノ酸配列、を含むヒト重鎖及びヒトカッパ軽鎖可変領域を有するとして特徴付けられたものがある。
【0018】
更に他の本発明のヒト抗体には、ヒト重鎖及び軽鎖CDR1領域、ヒト重鎖及び軽鎖CDR2 領域、並びにヒト重鎖及び軽鎖CDR3領域を有する相補性決定領域(CDR)であって、但しこの場合、
(a)前記ヒト重鎖領域の前記CDR1、CDR2、及びCDR3が、図8(SEQ ID NO:13、14、又は15)に示されたCDR1、CDR2、及び CDR3 領域のアミノ酸配列並びにその保存的配列改変から成る群より選択されるアミノ酸配列を含み、そして
(b)前記ヒト軽鎖領域の前記CDR1、CDR2、及びCDR3 が、図9(SEQ ID NO:16、17、又は 18)に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3 領域のアミノ酸配列並びにその保存的配列改変から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む、
ような相補性決定領域を含むものがある。
【0019】
特定の生殖細胞系配列を由来とする抗体、例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子を持つトランスジェニックマウスを免疫する、又は、ヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリをスクリーニングする、などにより、ヒト免疫グロブリン配列を用いた系から得られる抗体など、も、本発明に含まれる。
【0020】
本発明での使用に向くヒト抗体は、例えば当該抗体の重鎖及び軽鎖をコードする核酸を含有するトランスフェクトーマ(例えば不死化CHO細胞又はリンパ球性細胞から成るトランスフェクトーマ)など、ホスト細胞で組換えにより産生させることも、あるいは、当該抗体を発現するハイブリドーマ(例えば当該抗体をコードするヒト重鎖導入遺伝子及びヒト軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する、トランスジェニックマウスなどの非ヒトトランスジェニック動物から得たB細胞を不死化細胞に融合させて含むものなど)から直接得ることもできる。ある具体的な実施態様では、本抗体は、それぞれヌクレオチド配列SEQ ID NO:3 及び 7並びにその保存的改変を含むヒト重鎖及びヒト軽鎖核酸を含有するハイブリドーマ又はホスト細胞(例えばCHO細胞)トランスフェクトーマに産生させることができる。
【0021】
本発明での使用に適した抗原には、多種の腫瘍及び感染性疾患抗原などを含む、対する防御的又は治療的免疫応答が好ましいような、あらゆる抗原又はその抗原性部分がある。具体的な抗原は、とりわけ、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンベータサブユニット(βhCG)、Gp100、前立腺関連抗原 (PSA)、Pmel-17、結腸、肺、膵臓、乳房、卵巣、及び生殖細胞由来腫瘍細胞抗原、ウィルス性たんぱく質、細菌性たんぱく質、糖質、及び真菌性たんぱく質から選択することができる。本発明では、有効性の高い抗体ワクチン複合体を形成するために、このような抗原を抗体に連結する。
【0022】
別の局面では、本発明は、ヒトマンノース受容体に結合する抗体に連結させたβhCGを含む抗体ワクチン複合体を提供する。ある実施態様では、本複合体は、SEQ ID NO:10に示されたアミノ酸配列を含む重鎖を有するここで解説されたB11-βhCG複合体など、βhCGに連結させたヒト重鎖を含む。SEQ ID NO:12に示されたアミノ酸配列を含む、前記B11-bhCG複合体の一本鎖型も提供される。
【0023】
更に本発明は、本発明の一種以上の抗体ワクチン複合体を含有する組成物(例えば医薬組成物)を提供するものである。
【0024】
本組成物には、更に、免疫応答を亢進する、及び/又は、APCの活性を増加させる、ことが公知の一種以上の他のアジュバント又は他の作用物質を含めることができる。
【0025】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び請求項から明白であろう。
【0026】
発明の詳細な説明
本発明は、特定の細胞受容体を狙った抗体を用いて抗原を抗原提示細胞(APC)の標的に決定することにより、重要なT細胞媒介性免疫応答を生じさせることができるという発見に基づく。具体的には、癌及び感染性疾患などの数多くの疾患の有効な治療のためには、ワクチンは、MHCクラスIの流れで抗原を認識するCD8+T細胞に主に媒介される、効力ある抗原特異的細胞障害性Tリンパ球(CTL)応答を惹起せねばならない。最適な免疫処理のためには、MHCクラスII経路の流れで抗原を認識するCD4+T細胞などの抗原特異的ヘルパT細胞の誘導を含め、他の重要なエフェクタT細胞機能がこれに伴っていることが好ましい。このように、有効なワクチンは、好ましくは他のT細胞媒介性免疫応答との組み合わせで、複数のMHC経路を通じて、抗原特異的CTLを誘導しなければならない。
【0027】
従って、本発明は、新規な抗体ベースのワクチン複合体と、抗原特異的細胞障害性T細胞(CTL)応答を誘導又は亢進する方法とを提供するものである。本発明の治療法では、樹状細胞(DC)及びマクロファージなどの抗原提示細胞(APC)に結合する抗体を、抗原に結合させて含む分子複合体を利用する。本分子複合体を単独で投与することも、あるいは、他の免疫刺激性物質、及び/又は、抗原に対する免疫応答を更に亢進するアジュバントと一緒に投与することもできる。ある実施態様では、該免疫刺激性物質を本分子複合体と同時投与する。別の実施態様では、該免疫刺激性物質は、本分子複合体の投与前又は投与後に投与する。更に別の実施態様では、該免疫刺激性物質を、(例えば共有結合、非共有結合、又は組換えにより)本分子複合体に連結する。例えば、該免疫刺激性物質を本分子複合体に、遺伝子融合させることも、あるいは、本複合体の抗体部分の重鎖及び/又は軽鎖などを介して化学的に連結することもできる。
【0028】
APCを標的とする抗体は当業で公知であり、その中には、例えば、APC上のクラス I 又はクラス II主要組織適合性 (MHC) 決定基 APCを標的とする抗体などがある(78, 79, 81, 83)。 他の抗体には、APC上のFc受容体を標的とするもの (77, 79, 80, 81, 82, 83)や、B細胞上の表面免疫グロブリンを標的とするものがある (84)。
【0029】
ここで例示するある具体的な実施態様では、本分子複合体は、ヒトDC上のマンノース受容体(MR)に結合する抗体をβhCG抗原に連結して含む。このような複合体は、所望のCTL応答を生じさせるために、in vivo 又はex vivo のいずれでも、APCに接触させることができる。
【0030】
本発明がより容易に理解されるように、いくつかの用語をまず定義しておく。更なる定義は、詳細な説明全体を通じて記載されている。
【0031】
ここで用いられる用語「抗原提示細胞(APC)」とは、抗原性決定基が細胞表面上に、MHC関連複合体として、当該免疫系(例えばMHC クラス I 限定細胞障害性T リンパ球及び/又はMHC クラス II 限定ヘルパTリンパ球)に認識され得る態様で提示されるように、抗原を内部移行及びプロセシングすることのできるクラスの免疫細胞を言う。細胞がAPCとして機能できるために必要な2つの特性は、飲食された抗原のプロセッシング能と、MHC遺伝子産物発現能である。APCの例には、樹状細胞(DC)、単核食細胞(例えばマクロファージ)、Bリンパ球、皮膚のランゲルハンス細胞、及び、ヒトの内皮細胞、がある。
【0032】
ここで用いられる場合の用語「樹状細胞(DC)」には、未熟及び成熟DC、DCに分化することのできる関連する骨髄系前駆細胞、又は、関連する抗原提示細胞(例えば単球及びマクロファージ)、がある。DCは、Tリンパ球と相互作用する高レベルの細胞表面分子及び相補性受容体(例えばマンノース受容体などのC型レクチン)を発現するため、効力ある免疫応答を誘導することができる。更にDCは、免疫応答を惹起すると共に細胞免疫及び体液性免疫の両方の増幅で蓄積するサイトカイン、ケモカイン及びプロテアーゼを分泌する。またDCは、それらの表面上に、抗原フラグメントに結合する主要組織適合性複合体(MHC) 分子を発現する。これらの抗原-MHC複合体を認識したT細胞は活性化して免疫カスケードを開始する。ある好適な実施態様では、本発明の分子複合体のうちの抗体部分が樹状細胞に結合すると、樹状細胞によるこの複合体の内部移行が起きる。
【0033】
用語「マクロファージマンノース受容体」又は「MR」とは、細胞外部分の反復する糖認識ドメイン(CRD)と、2つの推定上のクラスリン標的化配列を含有する短い細胞質側の尾とを特徴とするC型レクチン受容体ファミリーの一メンバーを言う (34,35,37)。加えて、MR はN末端にシステイン・リッチドメインとフィブロネクチン・ドメインを含有する。マンノース受容体のこの異なるドメインは、リソソーム酵素、微生物、脳下垂体ホルモン、グリコサミノグリカン、及び硫酸化血液型抗原を含む多様なリガンドへの特異的結合能を有する(38-40)。
【0034】
「MHC分子」には、MHCクラスI及びMHCクラスIIという二つの種類の分子がある。MHC クラス I 分子は抗原を特異的 CD8+ T 細胞に提示し、そしてMHC クラス II 分子は抗原を特異的CD4+ T 細胞に提示する。APCに外因的に送達された抗原は、主にMHCクラスIIとの結合に向けてプロセッシングされる。対照的に、APCに内因的に送達された抗原は、主にMHCクラスIとの結合に向けてプロセッシングされる。しかしながら、特定の条件下では、DCは、外因性の抗原を、MHCクラスII分子に加えてMHCクラスI分子との結合に向けて内部区画に移行させる固有の能力を有する。このプロセスは「交差刺激」又は「交差提示」と呼ばれる。
【0035】
ここで用いられる場合の用語「免疫刺激性物質」とは、DC及びマクロファージなどのAPCを刺激することのできる化合物を言う。例えば、本発明で用いるのに適した免疫刺激性物質は、APC成熟プロセスが加速する、APCの増殖が増加する、及び/又は、共刺激性分子(例えばCD80、CD86、ICAM-1、MHC 分子及びCCR7)及び炎症誘発性サイトカイン(例えば、IL-1β、IL-6、IL-12、IL-15、及びIFN-γ)の動員又は放出が上方調節されるように、APCを刺激することができるものである。適した免疫刺激性物質は、更に、T細胞増殖を増加させることができるものである。このような免疫刺激性物質には、限定はしないが、CD40リガンド;IFN-α、IFN-β、IFN-γ及びIL-2などのサイトカイン;
G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)及びGM-CSF(顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子)などのコロニー刺激因子;抗CTLA-4 抗体;toll 受容体アゴニスト(例えばフラゲリン及びMALP-2 (マクロファージ活性化リポペプチド-2);LPS(エンドトキシン);R837(ミネソタ州セント・ポール、3M
ファーマシューティカルズ社);R848 (ミネソタ州セント・ポール、3M
ファーマシューティカルズ社);polyI:C (イノシン−シトシンポリヌクレオチド);ssRNA;dsRNA;カルメット‐ゲラン杆菌 (BCG);レバミソールヒドロクロリド;及び静脈内免疫グロブリン、がある。
【0036】
ここで用いられる場合の用語「連結させた」は、2つ以上の分子の結合を言う。該連結は共有結合によるものでも、又は非共有結合によるものでもよい。更に連結は遺伝子的(即ち組換えによる融合)なものであってもよい。このような連結は、例えば化学的結合及び組換えたんぱく質生成など、当業で公知の多種の技術により達成することができる。
【0037】
ここで用いられる場合の、抗原の「交差提示」という用語は、APC上のMHCクラスI及びクラスII分子を介した、T細胞への外因性たんぱく質抗原の提示を言う。
【0038】
ここで用いられる場合の用語「T細胞媒介性応答」とは、エフェクタT細胞(例えばCD8+細胞)及びヘルパT細胞(例えばCD4+細胞)を含むT細胞により媒介されるいずれかの応答を言う。 T細胞媒介性応答には、例えばT細胞の細胞障害性及び増殖がある。
【0039】
ここで用いられる用語「細胞障害性Tリンパ球(CTL)応答」とは、細胞障害性T細胞により誘導される免疫応答を言う。CTL応答は、主にCD8+T細胞によって媒介される。
【0040】
ここで用いられる場合の用語「抗体」には、全抗体、あるいは、例えばFab、F(ab')2、Fv 及び一本鎖Fv フラグメントを含むその抗原結合フラグメントが含まれる。適した抗体には、いずれかの形の抗体、例えばマウス、ヒト、キメラ、又はヒト化及びいずれかのタイプの抗体アイソタイプ、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgD、又はIgEアイソタイプが含まれる。ここで用いられる場合の「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子にコードされた抗体クラスを言う。
【0041】
全抗体は、ジスルフィド結合により相互に接続された少なくとも2つの重鎖(H)及び2つの軽鎖(L)を含有する。各重鎖は、重鎖可変領域(ここではHCVR又はVHと省略)と重鎖定常領域とから成る。重鎖定常領域は三つのドメインCH1、CH2 及びCH3から成る。各軽鎖は、軽鎖可変領域(ここではLCVR又はVLと省略)と軽鎖定常領域とから成る。軽鎖定常領域は一つのドメインCLから成る。VH及びVL領域は、更に分割して、より保存されたフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域間に介在する、「相補性決定領域(CDR)」と呼ばれる超可変領域にすることができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端まで次の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で並んだ三つのCDR及び四つのFRから成る。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の多様な細胞(例えばエフェクタ細胞)を含むホスト組織又は因子や伝統的な補体系の第一コンポーネント(Clq)への免疫グロブリンの結合を媒介しているようである。
【0042】
本発明の好適な抗体には、ヒト抗体、例えばIgG1 (例えばIgG1k)重鎖及びカッパ軽鎖を有するヒト抗体など、がある。本発明の他の好適な抗体は、ヒトDC上のMRなど、ヒトDC上のC型レクチン受容体に結合する抗体など、ヒトDCに結合するものである。ある具体的な実施態様では、本抗体は、SDS-PAGEで測定したときにほぼ180kDの分子量を有する、ヒトマクロファージマンノース受容体(ここでは「ヒトB11抗原」とも呼ばれる)に結合するヒトモノクローナル抗体である。このような抗体を作製するためのプロトコルは、引用をもってその内容をここに援用することとするWO 01/085798に解説されている。具体的なヒト抗体には、それぞれSEQ ID NO: 2 及び6に示す通りの重鎖及び軽鎖可変領域アミノ酸配列、又は、本抗体が樹状細胞への結合能を保持しているようにSEQ ID NO:2 又は SEQ ID NO:6 に対して充分相同なアミノ酸配列、を含むものがある。
【0043】
ここで用いられる場合、ある抗体の「抗原結合部分」(又は単に「抗体部分」)という用語は、抗原(例えば樹状細胞上の抗原)への特異的結合能を保持した、抗体の一つ以上のフラグメントをいう。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体のうちの数フラグメントに行わせることができることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合フラグメントの例には、VL、VH、CL 及びCH1 ドメインから成る一価のフラグメントであるFabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋による連結された2つのFabフラグメントを含む二価のフラグメントであるF(ab')2フラグメント;(iii)VH及びCH1ドメインから成るFd フラグメント;(iv)抗体の一本のアームのVL及びVHドメインから成るFv フラグメント、(v)VHドメインから成るdAb フラグメント (Ward et al., (1989) Nature 341:544-546),;及び(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、がある。更に、Fvフラグメントの2つのドメインVL 及び VHは別々の遺伝子にコードされているが、このVL及びVH領域が対になって一価の分子を形成しているような単一たんぱく質鎖としてこれらを作製可能にする合成リンカにより、組換え法を用いてこれらを接合することができる(一本鎖 Fv (scFv)として公知である;例えばBird
et al. (1988) Science 242:423-426; 及び Huston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照されたい)。このような一本鎖抗体も、ある抗体の用語「抗原結合部分」に包含されるものと、意図されている。これらの抗体フラグメントは、当業者に公知の従来技術により得られ、そのフラグメントは、インタクト抗体と同じ態様で実用性についてスクリーニングされている。
【0044】
用語「ヒト抗体」は、ここで用いられる場合、ヒト生殖系免疫グロブリン配列を由来とする可変及び定常領域を有する抗体を包含するものと、意図されている。本発明のヒト抗体には、ヒト生殖系免疫グロブリン配列にコードされていないアミノ酸残基が含まれていてもよい(例えばランダム又は部位特異的変異誘発法によりin vitroで導入された変異、あるいは、in
vivoでの体細胞変異など)。しかしながら、ここで用いられる場合の用語「ヒト抗体」には、マウスなどの別の種を由来とするCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されているような抗体が含まれるとは、意図されていない。
【0045】
ここで用いられる場合の用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」とは、単一の分子組成の抗体分子の標品をいう。モノクローナル抗体組成物は、ある特定のエピトープに対して単一の結合特異性及び親和性を示す。従って、用語「ヒトモノクローナル抗体」とは、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列を由来とする可変及び定常領域を有する単一の結合特異性を示す抗体を言う。ある実施態様では、本ヒトモノクローナル抗体は、ヒト重鎖導入遺伝子及び軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する、トランスジェニックマウスなどの非ヒトトランスジェニック動物から得られたB細胞を不死化細胞に融合させて含むハイブリドーマにより、産生される。
【0046】
ここで用いられる場合の用語「組換えヒト抗体」には、組換え手段により調製された、発現させた、作製された又は単離されたあらゆるヒト抗体が含まれ、例えば(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニック又はトランスクロモゾーマルな動物(例えばマウス)から、あるいは、その動物から調製されたハイブリドーマから、単離された抗体、(b)トランスフェクトーマなど、当該抗体を発現するように形質転換させたホスト細胞から単離された抗体、(c)組換え、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリ
から単離された抗体、及び(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の、他のDNA配列へのスプライシングが関与するいずれか他の手段により調製された、発現させた、作製された又は単離された抗体、が含まれる。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列を由来とする可変及び定常領域を有する。しかしながら、いくつかの実施態様では、このような組換えヒト抗体にin vitro 変異誘発法(又は、ヒトIg配列についてトランスジェニックな動物を用いる場合はin vivo体細胞変異誘発法)を行って、組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列が、ヒト生殖細胞系VH及びVL配列を由来とし、関連しながらも、in vivoのヒト抗体生殖細胞系レパートリー内には天然では存在しないであろう配列にすることができる。
【0047】
ここで用いられる場合、「特異的結合」とは、抗体が所定の抗原に結合することを言う。典型的には、抗体は10-7以下の解離定数(KD)で結合し、そして所定の抗原に対しては、この所定の抗原又は関係の近い抗原以外の非特異的抗原(例えばBSA、カゼイン)への結合に関するそのKDよりも少なくとも2分の1のKDで結合する。文言「ある抗原を認識する抗体」及び「ある抗原に対して特異的な抗体」は、ここでは「ある抗原に特異的に結合する抗体」と交換可能に用いられている。
【0048】
ここで用いられる場合、あるIgG抗体に対する用語「高親和性」とは、ある抗体が、10-8 M以下、より好ましくは10-9 M以下、そして更により好ましくは10-10 M以下のKDを有することを言う。 しかしながら、「高親和性」結合は、他の抗体アイソタイプにとっては様々であろう。例えばIgMアイソタイプに結合する際の「高親和性」とは、抗体が10-7 M以下、より好ましくは10-8 M 以下のKDを有することを言う。
【0049】
ここで用いられる場合の用語「Kassoc」又は「Ka」とは、 特定の抗体−抗原相互作用の結合速度を言うものと意図されており、他方、ここで用いられる場合の用語「Kdis」又は「Kd」とは、特定の抗体−抗原相互作用の解離速度を言うものと意図されている。ここで用いられる場合の用語「KD」とは、 Kd対Kaの比(即ちKd/Ka)から得られ、モル濃度(M)で表される解離定数を言うものと意図されている。
【0050】
ここで用いられる場合の用語「βhCG」とは、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンのサブユニットを言い、その中には、βhCG配列(SEQ ID
NO:20)を由来とする全抗原、その抗原性フラグメント、その対立遺伝子バリアント、及びいずれかの多型、がある。βhCGは、成功裏の妊娠の確立に必要なホルモンである。妊娠の他には、この抗原の発現は、主に、生殖細胞主要や、数多くの腺癌に限られている。
【0051】
ここで用いられる場合の用語「核酸分子」には、DNA分子及びRNA分子が含まれるものと意図されている。核酸分子は一本鎖でも、又は二本鎖でもよいが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0052】
用語「単離された核酸分子」は、ここでは、抗原又は抗体部分など(即ちVH、VL、又はCDR)、SEQ ID NO:9 及び11 又はその部分など、本発明の分子複合体又はその部分をコードする核酸に言及して用いられる。単離された核酸分子とは、本分子複合体をコードするヌクレオチド配列が、例えば本分子複合体のいずれの部分もコードしていないヌクレオチド配列など、他の混入ヌクレオチド配列を含まないような核酸分子を言う。
【0053】
ここで開示及び請求項に挙げられるように、SEQ ID NO: 1-28に記載された配列には、 「保存的配列改変」、即ち、例えばコンストラクトの抗体部分の結合特性や、抗原部分の免疫源性特性など、当該ヌクレオチド配列にコードされた、又は当該アミノ酸配列を含有する、本分子複合体の機能的特長に著しく影響しない又は変えないヌクレオチド及びアミノ酸配列の改変、を含めることができる。このような保存的配列改変には、ヌクレオチド及びアミノ酸の置換、追加及び欠失がある。改変は、SEQ ID NO: 1-28 に、例えば部位指定変異誘発法及びPCR媒介性変異誘発法など、当業で公知の標準的な技術により、導入することができる。保存的アミノ酸置換には、アミノ酸残基を、類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換するものがある。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが当業で定義されている。これらのファミリーには、塩基性の側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性の側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷の極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ-分枝側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族の側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を持つアミノ酸がある。このように、ヒト抗CD抗体中で予測される非必須アミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸残基に置換することが好ましい。
【0054】
代替的には、別の実施態様では、例えば飽和変異誘発法などにより、分子複合体をコードする配列の全部又は一部にわたってランダムに変異を導入し、その結果できた改変された分子複合体を、適した機能的活性についてスクリーニングすることもできる。
【0055】
従って、ここで開示されたヌクレオチド配列にコードされた、及び/又は、ここで開示されたアミノ酸配列(即ちSEQ ID NO: 1-28)を含有する、分子複合体には、保存的に改変された類似の配列にコードされた又は類似の配列を含有する実質的に類似の複合体がある。具体的には、部分的(即ち重鎖及び軽鎖可変領域)配列(SEQ ID NO: 3、4、7、及び 8)に基づく本分子複合体で用いるために、実質的に類似の抗体をどのように作製することができるかについての議論を以下に提供する。
【0056】
核酸については、用語「実質的な相同性」は、最適にアライメントし、比較した場合の2つの核酸又はそのうちの指定された配列が、適したヌクレオチド挿入又は欠失がありながらも、当該ヌクレオチドの少なくとも約80%、通常は少なくとも約90%乃至95%、そしてより好ましくは当該ヌクレオチドの少なくとも約98%乃至99.5%で同一であることを指す。代替的には、数セグメントが、その鎖の相補鎖に選択的ハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするであろう場合に、実質的な相同性が存在することとする。
【0057】
2つの配列間の同一性率は、これら2つの配列の最適なアライメントのために導入する必要なあるギャップ数及び各ギャップの長さを考慮に入れたときの、これらの配列に共通同一位置の関数(即ち、%同一性=同一位置の数/位置の総数×100)である。2つの配列間の配列の比較及び同一性率の決定は、以下の非限定的な例に解説するように、数学的アルゴリズムを用いて行うことができる。
【0058】
2つのヌクレオチド配列間の同一性率は、GCGソフトウェア・パッケージ(http://www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムを用い、NWSgapdna.CMP マトリックスを用いて、ギャップ・ウェイトを40、50、60、70、 又は80にし、そしてレングス・ウェイトを1、2、3、4、5、又は6にして判定することができる。2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の同一性率は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に取り入れられたE. Meyers and W. Miller (Comput. Appl. Biosci., 4:11-17 (1988)) を用い、PAM120 ウェイト残基表を用いて、ギャップ・レングス・ペナルティを12にし、そしてギャップ・ペナルティを4にして、判定することもできる。加えて、2つのアミノ酸配列間の同一性率は、GCGソフトウェア・パッケージ(http://www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムに取り入れられたNeedleman
and Wunsch (J. Mol. Biol. 48:444-453
(1970)) アルゴリズムを用いて、Blossum 62 マトリックス又はPAM250 マトリックスのいずれかを用い、ギャップ・ウェイトを16、14、12、10、8、6、又は 4 にし、そしてレングス・ウェイトを1、2、3、4、5、又は6にして判定することもできる。
【0059】
本発明の核酸及びたんぱく質配列を、更に、関連する配列を同定するなどのために公共データベースの検索を行う際の「クエリー配列」としても用いることができる。このような検索は、Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10のNBLAST 及びXBLAST プログラム(バージョン2.0)を用いて行うことができる。BLASTヌクレオチド検索をNBLASTプログラムで、スコア= 100、ワード長 = 12にして行うと、本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLAST たんぱく質検索XBLAST プログラムで、スコア= 50、ワード長 = 3にして行うと、本発明のたんぱく質分子に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較を目的としてギャップのあるアライメントを得るには、ギャップドBLASTをAltschul et al., (1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402で解説された通りに利用することができる。BLAST 及びギャップドBLAST プログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルト・パラメータ(例えば XBLAST 及びNBLAST)を用いることができる。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。
【0060】
当該の核酸は全細胞中にあっても、細胞ライセート中にあっても、又は部分的に精製済み又は実質的に純粋な形で存在してもよい。核酸は、例えば他の細胞内核酸又はたんぱく質などの他の細胞成分又は他の混入物質を、アルカリ/SDS処置、CsClバンディング、カラム・クロマトグラフィ、アガロース・ゲル電気泳動法及び当業で公知の他のものを含む標準的な技術により取り除かれて精製されている場合に「単離されて」又は「実質的に純粋にされて」いることになる。F. Ausubel, et al., ed. Current Protocols in Molecular Biology, Greene
Publishing and Wiley Interscience, New York (1987)を参照されたい。
【0061】
核酸は、それが別の核酸配列と機能的な関係に置かれているときに「作動的に連鎖して」いることになる。例えば、プロモータ又はエンハンサであれば、それがあるコーディング配列の転写に影響を与える場合にその配列に作動的に連鎖していることになる。転写調節配列に関する限り、作動的に連鎖しているとは、連鎖しているDNA配列が連続しており、そして、2つのたんぱく質コーディング領域を接合する必要がある場合は、連続し、かつ読み取り枠内にあることを意味する。スイッチ配列の場合、作動的に連鎖しているとは、当該配列が、スイッチ組換えを起こすことができることを指す。
【0062】
ここで用いられる場合の用語「ベクタ」とは、それが連鎖した先の別の核酸を輸送することのできる核酸分子を言うものと、意図されている。ベクタの一種が、更なるDNAセグメントを途中にライゲートすることのできる環状の二本鎖DNAループを言う「プラスミド」である。もう一つの種類のベクタが、加えられるDNAセグメントをウィルスゲノム中にライゲートすることのできるウィルス・ベクタである。いくつかのベクタは、それが導入された先のホスト細胞(例えば、細菌性の複製開始点を有する細菌性ベクタ及びエピソーム性哺乳類ベクタなど)で自律的複製が可能である。他のベクタ(例えば非エピソーム性哺乳類ベクタなど)は、ホスト細胞に導入されるとすぐにホスト細胞のゲノムに組み込まれるため、ホストゲノムと一緒に複製させることができる。更に、いくつかのベクタは、それらを作動的に連鎖させた先の遺伝子の発現を命令することができる。このようなベクタをここでは「組換え発現ベクタ」(又は単に「発現ベクタ」)と呼ぶ。一般的には、組換えDNA技術で実用性のある発現ベクタはしばしばプラスミドの形である。本明細書においては、プラスミドが最も普通に用いられている形のベクタであるため、「プラスミド」及び「ベクタ」を交換可能に用いている場合がある。しかしながら、本発明は、ウィルス・ベクタ(例えば複製欠陥レトロウィルス、アデノウィルス及びアデノ随伴ウィルス)など、同等な機能を果たす他の形の発現ベクタも包含するものと、意図されている。
【0063】
用語「組換えホスト細胞」(又は単に「ホスト細胞」)は、ここで用いられる場合、組換え発現ベクタが導入されている細胞を言うものと、意図されている。このような用語は、特定の対象細胞だけでなく、このような細胞の後代も言うものと、意図されていることを理解されたい。突然変異又は環境による影響が原因で特定の改変が後の世代に起きる場合があり、このような後代は実際には親細胞と同一ではないかも知れないが、それでも尚、ここで用いられる「ホスト細胞」の用語の範囲に含まれる。組換えホスト細胞には、例えばCHO細胞及びリンパ球性細胞がある。
【0064】
ここで用いられる場合の用語「対象」には、ヒト又は非ヒト動物が含まれる。用語「非ヒト動物」には、あらゆる脊椎動物、例えば哺乳動物及び非哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類等が含まれる。
【0065】
本発明の多様な局面を以下の小項で更に詳述する。
【0066】
I. 抗原
本発明で用いるのに適した抗原には、例えば、対する防御的又は治療的免疫応答が好ましいような感染性疾患抗原及び腫瘍抗原、例えば腫瘍細胞又は病原性生物が発現する抗原、あるいは、感染性疾患抗原など、がある。例えば、適した抗原には、癌の防止又は治療のための腫瘍関連抗原がある。腫瘍関連抗原の例には、限定はしないが、βhCG、gp100 又は Pmel17、HER2/neu、CEA、gp100、MART1、TRP-2、melan-A、NY-ESO-1、MN (gp250)、イディオタイプ、MAGE-1、MAGE-3、チロシナーゼ、テロメラーゼ、MUC-1抗原、及び生殖細胞由来抗原がある。腫瘍関連抗原には、更に、血液型抗原、例えばLea、Leb、LeX、LeY、H-2、B-1、B-2抗原、がある。代替的には、二種以上の抗原を本発明の抗原−抗体コンストラクトに含めることができる。例えば、MAGE抗原は、メラニンA、チロシナーゼ、及びgp100などの他の抗原に、GM-CSF又はIL-12などのアジュバントと一緒に配合し、抗APC抗体に連結することができる。
【0067】
他の適した抗原には、ウィルス性疾患の防止又は治療のためのウィルス抗原がある。ウィルス抗原の例には、限定はしないが、HIV-1 gag、HIV-1 env、HIV-1 nef、HBV コア、FAS、HSV-1、HSV-2、p17、ORF2 及びORF3 抗原がある。細菌性抗原の例には、限定はしないが、トキソプラズマ-ゴンジ(原語:Toxoplasma gondii )又はトレポネマ-パリダム(原語:Treponema pallidum)がある。本発明の抗体−細菌複合体は、炭疽病、ボツリヌス中毒症、破傷風、クラミジア、コレラ、ジフテリア、ライム病、梅毒、及び結核などの多様な細菌性疾患の治療にあっても、又は防止にあってもよい。
【0068】
ここで例示したある具体的な実施態様では、本発明は、βhCGを含む抗原を利用するものである。これには、βhCG配列(SEQ ID NO:20) 全体、又は、該配列のいずれかの免疫源性 (例えばT細胞エピトープ含有)部分が含まれる。以下に解説するように、このような免疫源性部分は、アルゴリズムを含むT細胞エピトープをマッピングするための当業で公知の技術や、公知のT細胞エピトープ・マッピング技術を用いて、特定することができる。βhCGを由来とする具体的な免疫源性ペプチドの例には、SEQ ID
NOs:21、22、23、24、25、26、27、又は28、及びその保存的改変を含むものがある。βhCGを由来とする更なる免疫源性ペプチドや、このようなペプチドを同定する方法は、引用をもってその内容をここに援用することとする米国特許第6,096,318号及び第6,146,633号に解説されている。
【0069】
たんぱく質の抗原性ペプチド(即ち、T細胞エピトープを含有するもの)は、当業で公知の多種の態様で特定することができる。例えば、T細胞エピトープは、当該たんぱく質の配列を、ウェブ・ベースの予想アルゴリズム(BIMAS
& SYFPEITHI) を用いて解析して、CTLにより予め規定された、よく特徴付けられた10,000種のMHC結合ペプチドの内部データベースに適合する潜在的MHC クラス I 及びII- 結合ペプチドを作製することで、予想することができる。高得点のペプチドを序列化し、MHC分子に対する高親和性を基に、「興味深い」として選抜する。図10に示すように、そしてβhCG-B11複合体の配列(SEQ ID
NO:10)を用いて、両方のアルゴリズムを用いて、合成型を作製する基にすることのできる、βhCG部分(マスタード)由来の抗原性ペプチドを特定し、それらのT細胞応答惹起能についてin vitroで検査した。このように、T細胞エピトープのHLA-A2、HLA-B7 及びHLA-DR 分子への結合可能性が見出された。更にいくつかのエピトープが、このβhCG-B11複合体の抗体(B11)セグメントから予測された(結果は図示せず)。更に、37アミノ酸長のC末端ペプチド(CTP)には、何のT細胞エピトープも特定されなかった。
【0070】
T細胞エピトープを含有する抗原性ペプチドを特定するもう一つの方法は、当該たんぱく質を、所望の長さの非重複ペプチドか、又は、所望の長さの重複ペプチドに分割することによってであり、これらの非重複ペプチド又は重複ペプチドは、組換えによって作製することも、合成によって作製することも、あるいは場合によっては、当該たんぱく質の開裂によって作製することもでき、例えばT細胞応答(増殖又はリンホカインの産生)を惹起するなど、免疫原性について検査することができる。
【0071】
例えば精密マッピング技術などにより当該たんぱく質の精確なT細胞エピトープを決定するために、T細胞生物学技術で判断したときにT細胞刺激活性を有し、従って少なくとも一つのT細胞エピトープを含むペプチドを、当該ペプチドのアミノ末端又はカルボキシ末端のいずれかでアミノ酸残基を追加する又は欠失させることで改変し、この改変後のペプチドに対するT細胞反応性の変化を判定するために検査することができる。天然たんぱく質配列中で重複する区域を持つ2つ以上のペプチドが、T細胞生物学技術で判定したときにヒトT細胞刺激活性を有することが見出されれば、このようなペプチドの全部又は一部分を含む更なるペプチドを作製し、これらの更なるペプチドを同様の手法で検査することができる。この技術に従ってペプチドを選抜し、組換え又は合成により作製する。ペプチドは、このペプチドの対するT細胞応答の強さ(例えば刺激指数)を含む多様な因子に基づいて選抜する。その後、これらの選抜されたペプチドの物理的及び化学的特性を調べて、当該ペプチドが、当該治療用組成物で用いるのに適しているかどうか、あるいは、
当該ペプチドに改変が必要であるかどうか、を判定することができる。
【0072】
II. 抗体ワクチン複合体
本発明は、腫瘍又はウィルス抗原などの抗原を、マンノース受容体(MR)などを通じてAPCに結合する抗体に連結させて含む多種の治療用ワクチン複合体を提供するものである。こうして、当該抗原をAPC(例えば樹状細胞)に標的決定して、プロセッシング、提示を亢進し、そして最終的にはこの抗原に対するCTL応答などの免疫応答を亢進することができる。
【0073】
加えて、本ワクチン複合体には、やはり当該抗原に対する免疫応答を亢進する一種以上の免疫刺激性物質を含めることができる。本発明の抗体−抗原複合体は遺伝子的又は化学的に作製することができる。いずれの場合も、本複合体の抗体部分は、全抗体から成っていても、Fabフラグメント又は一本鎖Fvなど、又は抗体の一部分から成っていてもよい。加えて、二種以上の抗原及び/又は免疫刺激性物質を本複合体に含めることもできる。
【0074】
ある実施態様では、本ワクチン複合体は、ヒトAPCに結合するヒト抗体重鎖と、ヒトAPCに結合するヒト抗体軽鎖とを含み、但しこの場合、いずれか又は両方の鎖は、抗原と免疫刺激性物質とに連結されている。別の実施態様では、当該抗原及び免疫刺激性物質は、いずれかの鎖に別々に連結されている。ある実施態様では、当該抗原はβhCGである。
【0075】
遺伝子的に構築された抗樹状細胞抗体−抗原複合体(例えば単一の組換え融合たんぱく質として発現させたもの)は、選択された抗原及び/又は免疫刺激性物質(たんぱく質及びペプチド免疫刺激性物質の場合)を抗体に、多様な位置で連結することにより、作製することができる。本発明の遺伝子的に作製された具体的な複合体(融合コンストラクト)には、例えば図2に示すβhCG-B11コンストラクトがある。βhCG-B11コンストラクトは、ヒト抗樹状細胞抗体B11を、腫瘍関連抗原であるβhCGに融合させて含む。このコンストラクトをコードするヌクレオチド配列をSEQ ID NO:9に示す。
【0076】
例えば、ある実施態様では、βhCG抗原及び/又は免疫刺激性物質をヒト抗体重鎖のCH3ドメインに融合させることができる。また抗原及び/又は免疫刺激性物質を、Fab-融合コンストラクト中の抗体重鎖のヒンジ領域に、あるいは、一本鎖融合コンストラクト(ScFvコンストラクト)中の可変軽鎖及び重鎖(VH及びVL)の配列に連結することもできる。代替的には、抗原及び/又は免疫刺激性物質を、抗体重鎖の代わりに抗体軽鎖に融合させることができる。遺伝子融合コンストラクトがCTL応答を惹起できれば、免疫刺激性物質、抗原、抗体の中で他の融合点を用いることもできる。インタクトβhCG-B11コンストラクト及び一本鎖B11コンストラクト(pB11sfv-βhCG)の詳細なマップを、それぞれ表1及び2に示す。このような遺伝子融合複合体には、抗原及び免疫刺激性物質を抗体にいずれかの順序(例えば抗体−抗原−免疫刺激性複合体又は抗体−免疫刺激性物質−抗原複合体など)で連結させて含めることができる。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
化学的に構築された抗体−抗原複合体は、多種の公知かつ容易に入手可能な架橋試薬を用いて作製することができる。これらの架橋試薬は、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート (SPDP)、N-スクシンイミジル-S-アセチル-チオアセテート(SATA)、スルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル) シクロヘキサン-1-カルボキシレート (スルホ-SMCC), 5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸) (DTNB)など、抗樹状細胞抗体上及び選択された抗原上の様々な反応性アミノ酸又は糖側鎖と共有結合を形成することができる、ホモ官能性化合物でも、又はヘテロ官能性化合物でもよい。プロテインA、カルボジイミド、及びo-フェニレンジマレイミド
(oPDM)他の結合剤及び架橋剤を用いても、共有結合を生じさせることができる;(例えばKarpovsky et al. (1984) J. Exp. Med. 160:1686; Liu, MA et al. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA
82:8648を参照されたい)。他の方法には、Paulus (Behring Ins. Mitt. (1985) No. 78,
118-132); Brennan et al. (Science (1985) 229:81-83)、及びGlennie et al. (J.
Immunol. (1987) 139: 2367-2375)に解説されたものがある。好適な結合剤は、両者ともピアース・ケミカル社(イリノイ州ロックフォード)から入手可能なSATA 及びsulfo-SMCCである。免疫刺激性物質も、本発明の分子複合体に、上述したのと同じ連結法を用いて化学的に連結することができる。
【0080】
免疫刺激性物質及び分子複合体は、例えばストレプトアビジン及びビオチンなどの結合分子などを用いて、非共有結合法によって連結することもできる。本発明で用いるのに適した他の結合分子は当業で公知である。本発明のある局面では、ストレプトアビジン分子をコードするヌクレオチド配列を、本分子複合体をコードする配列に導入し、これを、ビオチン化した免疫刺激性物質に連結する。
【0081】
クローニングして発現させた又は精製したいずれかの抗原を、本発明での使用に選択することができる。このような抗原を得る技術は当業で公知である。例えば腫瘍関連抗原を癌細胞から直接、精製し、タンデム型質量分析法などの物理化学的技術により同定することができる。代替的には、腫瘍特異的T細胞クローンを、プラスミドDNAクローンをトランスフェクトしたことで抗原を獲得した抗原陰性細胞に対して検査して、この抗原を発現しているクローンを単離することもできる。こうして、合成ペプチドを構築して、抗原性部位又はエピトープを精確に特定することができる。
【0082】
上で論じたように、本発明の分子ワクチン複合体を、一種以上の免疫刺激性物質と一緒に投与することもでき、あるいは一種以上の免疫刺激性物質を含めることもできる。当該免疫刺激性物質を別に投与することも、あるいは、本複合体に、共有結合、非共有結合、遺伝子的、又はこれらの組み合わせのいずれかにより、上で論じた連結技術に従って連結することもできる。代替的には、当該免疫刺激性物質を別に同時投与することもでき、例えば当該物質を、本分子複合体と同時に投与することも、又は、本分子複合体の投与前に投与することも、又は、本分子複合体の投与後に投与することもできる。多種の適した免疫刺激性物質が当業で公知であり、その中には、例えば、CD40 リガンド;IFN-α、IFN-β、IFN-γ及びIL-2などのサイトカイン;G-CSF (顆粒球コロニー刺激因子)及びGM-CSF
(顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子)などのコロニー刺激因子;抗CTLA4抗体;toll 受容体アゴニスト(例えばフラゲリン及びMALP-2(マクロファージ活性化リポペプチド-2);LPS(エンドトキシン);R837 (ミネソタ州セント・ポール、3M
ファーマシューティカルズ社);R848(ミネソタ州セント・ポール、3M
ファーマシューティカルズ社);polyI:C (イノシン−シトシンポリヌクレオチド);ssRNA;dsRNA;カルメット−ゲラン桿菌(BCG);レバミソールヒドロクロリド;及び静脈内免疫グロブリンがある。
【0083】
本発明の別の局面では、当該ワクチンコンストラクト由来の部分的抗体配列を用いてインタクト抗体を発現させることができる。本発明のワクチン複合体に包含される抗APC抗体(例えばB11)などの抗体は、標的抗原(例えばMRなどのC型レクチン受容体)と、主に6番目の重鎖及び軽鎖相補性決定領域(CDR)に位置するアミノ酸残基を通じて相互作用する。これが理由で、CDR内のアミノ酸配列は、個々の抗体間で、CDRの外側の配列よりも多様である。CDR配列は大半の抗体−抗原相互作用を担うため、特異的天然生成性型抗体の特性を模倣する組換え抗体を、この特異的天然生成型抗体を由来とするCDR配列を、異なる特性を持つ異なる抗体を由来とするフレームワークに移植した形で含む発現ベクタを構築することにより発現させることができる。(例えばRiechmann, L. et al. (1998) Nature
332:323-327; Jones, P. et al. (1986) Nature 321:522-525; and Queen, C. et al. (1989) Proc. Natl. Acad. See. U.S.A.
86:10029-10033を参照されたい)。このようなフレームワーク配列は、生殖細胞系抗体遺伝子配列を含む公共DNAデータベースから得ることができる。これらの生殖細胞系配列は、B細胞成熟中にV(D)J接合により形成される完全に集合した可変遺伝子を含まないことになるため、成熟抗体遺伝子配列とは異なるであろう。生殖細胞系遺伝子配列はまた、高親和性二次レパートリー抗体の配列とも、可変領域全体にわたって均一に個々に異なるであろう。例えば、体細胞変異は、フレームワーク領域のアミノ末端部分では比較的に頻度が低い。例えば、体細胞変異は、フレームワーク領域1のアミノ末端部分、そしてフレームワーク領域4のカルボキシ末端部分では比較的に頻度が低い。更に、数多くの体細胞変異は、抗体の結合特性を大きく変えるものではない。これが理由で、元の抗体のものと同様な結合特性を有するインタクト組換え抗体を再生するために、ある特定の抗体のDNA配列全体を得る必要はない(あらゆる目的のために、引用をもってここに援用することとするWO 99/45962を参照されたい)。CDR領域全体に渡る部分的重鎖及び軽鎖配列があれば、典型的には、この目的のためには充分である。この部分的配列を用いて、どの生殖細胞系可変及びジョイニング遺伝子セグメントが、組換え後の抗体可変遺伝子に寄与したかを判断する。次に、この生殖細胞系配列を用いて、可変領域の喪失部分を充填する。重鎖及び軽鎖リーダ配列はたんぱく質成熟中に切断されるため、最終的な抗体の特性には寄与しない。これが理由で、対応する生殖細胞系リーダ配列を、発現コンストラクトのために用いる必要がある。喪失配列を加えるためには、クローニングされたcDNA配列を合成オリゴヌクレオチドにライゲーション又はPCR増幅法により組み合わせることができる。代替的には、可変領域全体を一組の短い、重複するオリゴヌクレオチドとして合成し、PCR増幅法で組み合わせて、完全に合成の可変領域クローンを作製することもできる。このプロセスは、例えば特定の制限部位の消失又は含有や、あるいは特定のコドンの至適化など、いくつかの利点を有する。
【0084】
ハイブリドーマからの重鎖及び軽鎖転写産物のヌクレオチド配列を用いて、重複する一組の合成オリゴヌクレオチドをデザインして、天然配列と同一のアミノ酸コーディング能を持つ合成V配列を作製する。この合成の重鎖及びカッパ鎖配列は、天然配列とは三つの態様で異ならせることができる:数箇所の反復ヌクレオチド塩基に中断を入れて、オリゴヌクレオチド合成及びPCR増幅を容易にする;最適な翻訳開始部位をコザックの規則に従って導入する (Kozak (1991) J. Biol. Chem. 266:19867-19870);そしてHindIII 部位を翻訳開始部位の上流で操作する。
【0085】
重鎖及び軽鎖可変領域の両方について、最適化したコーディング鎖及び対応する非コーディング鎖配列を、対応する非コーディング・オリゴヌクレオチドのほぼ中間点で分割して、30乃至50ヌクレオチドにする。このように、各鎖につき、当該オリゴヌクレオチドを集合させて、150乃至400ヌクレオチドから成るセグメントに渡る重複する二本鎖組にすることができる。次に、このプールをテンプレートとして用いて、150乃至400ヌクレオチドから成るPCR増幅産物を作製する。典型的には、一組の可変領域オリゴヌクレオチドは、別々に増幅したときに重複する2つのPCR産物になる2つのプールに分割されるであろう。次に、これらの重複する産物をPCR増幅で組み合わせて、完全な可変領域を形成する。更に、重鎖又は軽鎖定常領域(カッパ軽鎖のBbsI部位、又はガンマ重鎖のAgeI部位を含む)の重複するフラグメントをこのPCR増幅で含めて、発現ベクタ・コンストラクト中に容易にクローニングすることのできるフラグメントを作製するのも好ましいであろう。
【0086】
次に、再構築した重鎖及び軽鎖可変領域を、クローニングしたプロモータ、翻訳開始配列、定常配列、3'側非翻訳配列、ポリアデニレーション配列、及び転写終了配列と組み合わせて、発現ベクタ・コンストラクトを形成する。該重鎖及び軽鎖発現コンストラクトは、組み合わせて単一のベクタにしても、ホスト細胞に同時トランスフェクトしても、順番にトランスフェクトしても、別々にトランスフェクトしてもよく、その後このホスト細胞を融合させて、両方の鎖を発現するホスト細胞を形成する。
【0087】
ヒトIgGκ用の発現ベクタの構築に用いるプラスミドを以下に解説する。当該プラスミドは、PCR増幅後のV重鎖及びVカッパ軽鎖cDNA配列を用いて完全な重鎖及び軽鎖宰相遺伝子を再構築できるように構築された。これらのプラスミドを用いて、完全ヒト、又はキメラIgG1κ又はIgG4κ抗体を発現させることができる。同様なプラスミドは、他の重鎖アイソタイプの発現や、あるいは、ラムダ軽鎖を含む抗体の発現に向けても構築することができる。
【0088】
このように、本発明の別の局面では、ここで解説したワクチン複合体の抗体部分、例えばB11などの構造上の特徴を用いて、APCへの結合など、本発明のB11の少なくとも一つの機能上の特性を保持した、構造上関連する抗体を作製する。より具体的には、B11の一つ以上のCDR領域を組換えにより公知のヒトフレームワーク領域及びCDRに組み合わせて、本発明のワクチン複合体での使用に向けた、付加的な、組換えにより操作された抗APC抗体を作製することができる。
【0089】
従って、別の実施態様では、本発明は、抗CD抗体を含むワクチン複合体を調製する方法を提供する。本方法は、(1)ヒト重鎖フレームワーク領域及びヒト重鎖CDRであって、前記ヒト重鎖CDRのうちの少なくとも一つが、図8に示されたCDRのアミノ酸配列(SEQ ID
NO:13、14、又は15)から選択されるアミノ酸配列を含む、ヒト重鎖フレームワーク領域及びヒト重鎖CDRと;(2)ヒト軽鎖フレームワーク領域及びヒト軽鎖CDRであって、前記ヒト軽鎖CDRのうちの少なくとも一つが、図9に示されたCDRのアミノ酸配列(SEQ ID
NO:16、17、又は18)を含む、 ヒト軽鎖フレームワーク領域及びヒト軽鎖CDRとを含む、APCへの結合能を保持した抗体を調製するステップを含む。
【0090】
前記抗体のAPCへの結合能は、実施例に記載したものなど、標準的な結合検定(例えばELISA)を用いて判定することができる。抗体重鎖及び軽鎖CDR3ドメインは、ある抗原に対するその抗体の結合特異性/親和性において特に重要な役割を果たすことが当業で公知であるため、上述の通りの調製された本発明の組換え抗体は、好ましくはB11の重鎖及び軽鎖CDR3を含むとよい。本抗体には更にB11のCDR2を含めることができる。本抗体には更にB11のCDR1を含めることができる。従って、本発明は、更に、(1)ヒト重鎖フレームワーク領域、ヒト重鎖CDR1領域、ヒト重鎖CDR2領域、及びヒト重鎖CDR3領域であって、但し前記ヒト重鎖CDR3領域が図8に示した通りのB11のCDR3 (SEQ ID NO:15)である、ヒト重鎖フレームワーク領域、ヒト重鎖CDR1領域、ヒト重鎖CDR2領域、及びヒト重鎖CDR3領域と、(2)ヒト軽鎖フレームワーク領域、ヒト軽鎖CDR1領域、ヒト軽鎖CDR2領域、及びヒト軽鎖CDR3領域であって、但し前記ヒト軽鎖CDR3領域が図9に示した通りのB11のCDR3(SEQ ID NO: 18)である、ヒト軽鎖フレームワーク領域、ヒト軽鎖CDR1領域、ヒト軽鎖CDR2領域、及びヒト軽鎖CDR3領域とを含む、DCに結合する抗APC抗体を提供するものである。本抗体は、更に、B11の重鎖CDR2及び/又は軽鎖CDR2を含んでいてもよい。更に本抗体は、B11の重鎖CDR11及び/又は軽鎖CDR11を含んでいてもよい。
【0091】
好ましくは、上述した操作された抗体のCDR1、2、及び/又は3がここで開示したB11の全く同じアミノ酸配列を含むとよい。しかしながら、当業者であれば、B11の精確なCDR配列からの何らかの逸脱があっても、本抗体へのDCへの結合能が有効に保持される場合があることは理解されよう(例えば保存的置換など)。従って、別の実施態様では、操作された抗体は、例えばB11の一つ以上のCDRに対して少なくと90%、95%、98% 又は99.5% 同一であるなどの一つ以上のCDRから成っていてもよい。
【0092】
APCに単に結合することに加えて、又は代替的に、上述したものなどの操作された抗体を、本発明の抗体の他の機能的特性、例えば:
(1)APCへの高親和結合;
(2)APC上の固有エピトープへの結合(それにより、組み合わせて用いられた場合の補完的な活性を持つモノクローナル抗体が、同じエピトープへの結合をめぐって競合する可能性をなくす);
(3)抗原に対して生じるT細胞媒介性免疫応答を誘導する;及び/又は
(4)CD4+ 及びCD8+ T 細胞媒介性応答の両方を含むT細胞応答を誘導する、
などの保持について選抜してもよい。
【0093】
別の実施態様では、βhCGなどの目的の抗原を発現する全細胞を形質転換して、抗MR抗体などの抗APC抗体を発現させて、該抗原及び抗体がこの細胞により同時発現するようにする。これは、例えば、膜貫通ドメイン及び抗APC抗体を含有する融合たんぱく質をコードする核酸を標的細胞にトランスフェクトすることなどにより、行うことができる。こうして、本ワクチン複合体を発現する細胞を用いてDCなどのAPCを標的決定してCTL応答を誘導することができる。
【0094】
このような核酸、融合たんぱく質、及びこのような融合たんぱく質を発現する細胞、を作製する方法は、例えば、引用をもってその全文をここに援用することとする米国特許出願09/203,958に解説されている。
【0095】
代替的には、本抗体を、化学的リンカ、脂質タグ、又は他の関連する方法 (deKruif, J. et al. (2000) Nat. Med. 6:223-227; Nizard, P. et al. (1998) FEBS Lett. 433:83-88)の利用により、細胞又は病原体に結合させることができる。目的の抗原を発現し、表面に繋げられた抗体を持つ細胞を用いて、例えば腫瘍細胞などの細胞又は微生物病原体などに対する特異的免疫応答を誘導できよう。
【0096】
III. 医薬組成物
別の局面では、本発明は、一種又は組み合わせになった本発明のワクチン複合体を、免疫刺激性物質と一緒に調合して含有する、医薬組成物などの治療用組成物を提供するものである。ある実施態様では、該免疫刺激性物質は本ワクチン複合体に連結されている。本発明の組成物には、更に、一種以上のアジュバント及び/又は薬学的に許容可能な担体を含めてもよい。本発明のワクチン複合体は、対象のT細胞との相互作用に向けた、対象の血流内への送達のために投与される。T細胞のこのようなターゲティングは、本ワクチンを直接用いるか、予めワクチン複合体で標的決定してある細胞を用いることにより、in vivo でも、又はex vivo でも行うことができる。
【0097】
本発明の組成物は、更に、他の抗体、細胞毒又は薬物(例えば免疫抑制剤)などの他の治療用試薬を含むことができ、また、単独で投与することも、あるいは放射線など、他の治療法と組み合わせて投与することもできる。例えば、APCに急速に内部移行するワクチン複合体を、免疫刺激性サイトカインの放出など、樹状細胞の抗原提示細胞活性を促進するモノクローナル抗体と組み合わせることができる。
【0098】
ここで用いられる「薬学的に許容可能な担体」には、生理学的に適合性ある、あらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗カビ剤、等張剤及び吸収遅延剤等が含まれる。好ましくは、当該の担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄又は上皮投与(例えば注射又は輸注による)に適しているとよい。投与経路に応じて、本ワクチン複合体を、本化合物を失活させかねない酸又は他の天然条件の作用から本化合物を保護する物質で、被覆してもよい。
【0099】
「薬学的に許容可能な塩」とは、親化合物の所望の生物学的活性を保持しておろ、いずれの望ましくない毒性効果を与えないような塩を言う(例えばBerge, S.M., et al. (1977) J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照されたい)。このような塩の例には、酸添加塩及び塩基添加塩がある。酸添加塩には、非毒性の無機酸を由来とするもの、例えば塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン等や、非毒性の有機酸を由来とするもの、例えば脂肪族モノ-及びジ-カルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族の酸、脂肪族及び芳香族のスルホン酸等がある。塩基添加塩には、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属を由来とするものや、N’N'-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカイン等の非毒性の有機アミンを由来とするものがある。
【0100】
本発明の組成物は当業で公知の多種の方法により投与することができる。当業者であれば理解されるように、投与の経路及び/又は態様は、所望の結果に応じて様々であろう。活性化合物は、この化合物を急速な放出から保護するであろう担体、例えばインプラント及びマイクロ封入送達系を含む制御放出調合物など、と一緒に調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの生分解性で生体適合性あるポリマを用いることができる。このような調合物の数多くの調製法に特許が認められており、また広く当業者に公知である。例えばSustained and Controlled Release
Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel
Dekker, Inc., New York,
1978を参照されたい。
【0101】
特定の投与経路で本発明のワクチン複合体を投与するには、本化合物を、その失活を妨げる物質で被覆するか、あるいは同時投与する必要があるかも知れない。例えば、本化合物を、リポソーム又は希釈剤などの適した担体に入れて対象に投与してもよい。薬学的に許容可能な希釈剤には生理食塩水及び水性緩衝液がある。リポソームには、水中油中水CGFエマルジョンや、従来のリポソームがある(Strejan et al. (1984) J. Neuroimmunol. 7:27)。
【0102】
薬学的に許容可能な担体には、無菌の水溶液又は分散液や、無菌の注射用溶液又は分散液の即時調製用の無菌粉末がある。このような媒質及び薬剤の、薬学的に活性な物質のための使用は当業で公知である。従来の媒質又は薬剤が当該活性化合物にとって不適合でない限り、本発明の医薬組成物中へのその使用は考察されている。補助的な活性化合物も本組成物中に取り入れることができる。
【0103】
治療用組成物は典型的には、無菌、かつ製造及び保管条件下で安定でなければならない。本組成物を、高い薬物濃度に適した溶液、マイクロ乳液、リポソーム、又は他の秩序ある構造として調合することができる。当該担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)及びそれらの適した混合物などを含有する溶媒又は分散媒であってよい。適正な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングを用いたり、分散液の場合には必要な粒子サイズを維持したり、そして界面活性剤を用いるなどにより、維持することができる。多くの場合、糖類、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、又は塩化ナトリウムなどの等張剤を本組成物中に含めることが好ましいであろう。注射用組成物の吸収を長引かせるには、本組成物中に、モノステアリン酸塩及びゼラチンなど、吸収を遅らせる物質を含めることで、可能である。
【0104】
無菌の注射用溶液は、必要量の活性化合物を、適した溶媒に、必要に応じて上に列挙した成分の一つ又は組み合わせと一緒に取り入れた後、滅菌マイクロろ過することにより、調製することができる。一般に、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒及び上に列挙した中の必要な他の成分を含有する無菌の賦形剤に取り入れることにより、調製される。無菌の注射用溶液の調製用の無菌粉末の場合、好適な調製法は真空乾燥及び凍結乾燥(凍結乾燥)であり、その結果、活性成分と所望の付加的な成分との粉末が、予め滅菌ろ過されたその溶液から生じる。
【0105】
投薬計画は、最適な所望の応答(例えば治療的応答)が提供されるように調節される。例えば一回の巨丸剤を投与してもよく、複数回に分割された用量を、経時的に投与してもよく、あるいは用量を、治療状況の緊急度を指標として比例的に増減させてもよい。非経口用組成物を単位剤形で調合すると、投与の容易さ及び投薬量の均一性にとって特に有利である。ここで用いられる剤形とは、治療しようとする対象にとって単位投薬量として合わされた物理的に別個の単位を言う。各単位は、必要な医薬用担体と併せて所望の治療効果を生ずるように計算された所定量の活性化合物を含有する。本発明の剤形の詳細は、(a)活性化合物の固有の特徴や、達成しようとする特定の治療効果、及び(b)個体の感受性の治療用の活性化合物など、配合業における内在する限界、によって限定され、また直接依存するものである。
【0106】
薬学的に許容可能な抗酸化剤の例には:(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、異性亜重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等の水溶性の抗酸化剤;(2)アスコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロール等の油溶性抗酸化剤;及び(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸 (EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等の金属キレート剤、がある。
【0107】
治療用組成物の場合、本発明の調合物には、経口及び/又は非経口投与用のものがある。当該調合物を適宜、単位剤形で提供してもよく、そして医業で公知のいずれの方法で調製してもよい。担体物質と組み合わせて一回分の投薬量を作ることのできる活性成分量は、治療しようとする対象、及び特定の投与形態に応じて様々であろう。担体物質と組み合わせて一回分の投薬量を作ることのできる活性成分量は、一般的には、治療効果を生ずる組成物量であろう。概して、100パーセントのうちで、この量は約0.01パーセントから約99パーセントの活性成分、好ましくは約0.1パーセントから約70パーセント、最も好ましくは約1パーセントから約30パーセントの範囲であろう。
【0108】
文言「非経口投与」及び「非経口的に投与する」は、ここで用いられる場合、通常は注射による、腸内及び局所投与以外の投与形態を意味し、その中には、限定はしないが、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、硬膜外及び胸骨内注射及び輸注がある。
【0109】
本発明の医薬組成物中に用いてもよい適した水性及び非水性の担体の例には、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、及びこれらの適した混合物、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルがある。適した流動性は、レシチンなどのコーティング剤を用いたり、分散液の場合には必要な粒子サイズを維持したり、そして界面活性剤の使用などにより、維持することができる。
【0110】
これらの組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などのアジュバントを含んでいてもよい。微生物の存在を防ぐには、上述した滅菌法と、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等の多様な抗菌剤及び抗カビ剤の含有の両方により、確実にできよう。更に、糖類、塩化ナトリウム等の等張剤を組成物に含めることも好ましいであろう。加えて、注射用の薬剤形の吸収を長引かせるには、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅らせる薬剤の含有により、可能であろう。
【0111】
本発明の化合物を医薬としてヒト及び動物に投与する場合、これらを単独で投与することも、又は、0.01%乃至99.5%(より好ましくは0.1%乃至90%)の活性成分を薬学的に許容可能な担体と組み合わせて含有する医薬組成物として、投与することもできる。
【0112】
選択された投与経路に関係なく、適した水和化型で用いてもよい本発明の化合物、及び/又は、本発明の医薬組成物は、当業者に公知の常法により、薬学的に許容可能な剤形に調合される。
【0113】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投薬レベルは、ある特定の患者、組成物及び投与形態にとって所望の治療効果を、患者に毒性となることなく達成するために有効な活性成分量が得られるように、変更できよう。選択される投薬レベルは、用いた本発明の特定の組成物、又はそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、用いた特定の化合物の排出速度、治療期間、用いた特定の組成物と組み合わせて用いられる他の薬物、化合物及び/又は材料、治療しようとする患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康及び加療暦等、医業で公知の同様の因子を含め、多様な薬物動態学的因子に依拠するであろう。
【0114】
当業で通常の技術を有する医師又は獣医であれば、必要な医薬組成物の有効量を容易に決定及び処方することができる。例えば、この医師又は獣医は、本医薬組成物中に用いる本発明の化合物の用量を、所望の治療効果を挙げるのに必要なものより低いレベルで開始し、所望の効果が得られるまで投薬量を次第に増加させていくことができよう。一般的には、本発明の組成物の適した一日当りの用量は、治療効果を生ずるのに有効な最も低い用量である化合物量であろう。このような有効な用量は、一般的には上述した因子に依拠するであろう。投与は静脈内、筋肉内、腹腔内又は皮下であることが好ましく、好ましくは標的部位の近位に投与されることが好ましい。必要に応じ、治療用組成物の有効な一日当りの用量を、2回、3回、4回、5回、6回又はそれ以上に小分けした用量にして、全日かけて、選択的には単位剤形で適当な間隔を置きながら別々に投与してもよい。本発明の化合物を単独で投与することも可能であるが、本化合物を医薬調合物(組成物)として投与することが好ましい。
【0115】
治療用組成物を、当業で公知の医療器具により投与することができる。例えば、ある好適な実施態様では、本発明の治療用組成物を、例えば米国特許第5,399,163号;第5,383,851号;第5,312,335号;第5,064,413号;第4,941,880号;第4,790,824号;又は第4,596,556号に開示された器具などの無針皮下注射器具で投与することができる。本発明で有用な公知のインプラント及びモジュールの例には、制御された速度で医薬を分配するインプラント可能なマイクロ輸注ポンプを開示した米国特許第4,487,603号;皮膚を通じて医薬投与する治療用器具を開示した米国特許第4,486,194号;医薬を精確な速度で送達する投薬輸注ポンプを開示した米国特許第4,447,233号;継続的な薬物送達用の可変流量のインプラント可能な輸注装置を開示した米国特許第4,447,224号;多チャンバ区画を有する浸透圧薬物送達系を開示した米国特許第4,439,196号;及び浸透圧薬物送達系を開示した米国特許第4,475,196号、がある。これらの特許を、引用をもってここに援用することとする。数多くの他のこのようなインプラント、送達系、及びモジュールが当業者に公知である。
【0116】
本組成物は無菌、かつ、組成物を注射筒で送達できる程度に流動性でなくてはならない。水に加え、当該の担体は等張の緩衝生理食塩水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、及びこれらの適した混合物であってよい。適した流動性は、レシチンなどのコーティングを用いたり、分散液の場合には必要な粒子サイズを維持したり、そして界面活性剤の使用などにより、維持することができる。多くの場合、糖類、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、又は塩化ナトリウムなどの等張剤を本組成物中に含めることが好ましいであろう。注射用組成物の長期吸収には、本組成物中に、モノステアリン酸塩及びゼラチンなど、吸収を遅らせる物質を含めることで、可能である。
【0117】
活性化合物が上述したように適宜保護されていれば、本化合物を、例えば不活性の希釈剤又は同和可能な食用担体と一緒に経口投与してもよい。
【0118】
IV. 発明の用途及び方法
本発明のワクチン複合体を用いて、多種の疾患及び状態を治療及び/又は防止(例えば免疫化)することができる。
【0119】
一次性適応症の一つは癌である。これには、限定はしないが、結腸癌、黒色腫、リンパ腫、前立腺癌、膵臓癌、膀胱癌、線維肉腫、横紋筋肉腫、マスト細胞腫、乳腺癌、白血病、又はリウマチ様線維芽腫、がある。別の一次性適応症は、限定はしないが、HIV、肝炎(例えばA型、B型、及びC型)、インフルエンザ、疱疹、ジアルジア、マラリア、リーシュマニア、スタフィロコッカス-アウレウス、シュードモナス-アエルギノーサを含む感染性疾患である。別の一次性適応症は自己免疫疾患である。
【0120】
ある具体的な実施態様では、本ワクチン複合体を用いて、システイン-ループ成長因子スーパーファミリーの一メンバーであるβhCG又はβhCG発現細胞により媒介される疾患及び状態を治療又は防止する。証拠では、癌の確立又は進行時の成長因子として、あるいは、血管新生及び/又は転移促進物質として、あるいは免疫機能の抑制物質として、βhCGが役割を果たすことが示唆されている(73)。従って、本発明を用いて、癌や、血管新生が関与する他の疾患の進行を治療することができる。更に本発明を用いて、妊娠時にβhCG及び又はβhCG発現細胞の役割を阻害することにより、望まれない妊娠を防ぐ又は終わらせることができる。
【0121】
治療で用いる場合、本発明のワクチン複合体を、単独で、又は、免疫刺激性物質と一緒に、直接(即ちin vivoで)対象に投与することができる。ある局面では、該免疫刺激性物質を本複合体に連結する。代替的には、まず本複合体を樹状細胞などのAPCと接触(例えば培養又はインキュベートすることにより)させ、その後個の細胞を対象に投与する(即ちex vivo)ことにより、本複合体を対象に間接的に投与することができる。投与前に本複合体がAPCによりプロセッシングされて提示されるように、本複合体をAPCに接触させて送達することは、抗原又は細胞を「負荷する(原語:loading)」とも言及される。抗原をAPCに負荷する技術は当業で公知であり、その中には、例えばGunzer and Grabbe, Crit Rev Immunol 21 (1-3):133-45 (2001) 及びSteinman, Exp Hematol 24(8): 859-62 (1996)がある。
【0122】
いずれの場合でも、本ワクチン複合体及び免疫刺激性物質を、それらが所望の治療効果を発揮するのに有効量、投与する。用語「有効量」とは、所望の生物効果を実現するのに必要又は充分な量を言う。例えば、有効量は、腫瘍、癌、又は細菌、ウィルスもしくは真菌感染をなくすのに必要な量かも知れない。いずれか特定の用途にとっての有効量は、治療しようとする疾患又は状態、投与する特定の複合体、対象の体格、又は疾患もしくは状態の重篤度などの因子に応じて様々であろう。当業者であれば、ある特定の多重特異的分子の有効量を、不要な実験を要せずに経験的に判断することができる。
【0123】
ワクチン複合体の好適な投与経路には、例えば注射(例えば皮下、静脈内、非経口、腹腔内、鞘内)がある。注射は大量注射でも、又は継続的輸注でもよい。他の投与経路には経口投与がある。
【0124】
本発明のワクチン複合体を、アジュバントや免疫刺激性物質などの他の治療用物質と一緒に同時投与することもできる。本複合体は、典型的には、薬学的に許容可能な単独で、又は、このような物質と組み合わせて、調合することができる。このような担体の例には、溶液、溶媒、分散媒、遅延剤、乳液等がある。薬学的に活性な物質のためのこのような媒質の使用は当業で公知である。本分子と一緒に用いるのに適したいずれか他の従来の担体は、本発明の範囲内に入る。
【0125】
ワクチン複合体との同時投与に適した物質には、他の抗体、細胞毒及び/又は薬物がある。ある実施態様では、該物質は、免疫応答を支援する又は誘導することが公知の抗CTLA-4抗体である。別の実施態様では、該物質は化学療法薬である。更に本ワクチン複合体を放射線と組み合わせて投与することもできる。
【0126】
更に本発明を以下の実施例により描出することとするが、以下の実施例を更なる限定として捉えられてはならない。本出願全体を通じて引用された全図面及び全参考文献、特許及び公開済み特許出願の内容を、引用をもってここに援用することを明示しておく。
【0127】
実施例
方法及び材料
全血又はロイコパックからのDCの作製: ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、ヘパリン処理済全血又はアフェレーシス製剤のフィッコール-パックによる密度勾配遠心分離で得た。次に、プラスチック製培養皿への接着又は風ひにより単離し、サイトカイン(10 ng/ml GM-CSF 及び2 ng/ml IL-4) を培養基に加えることで未熟DCに分化させた。5日目と7日目との間にDCを採集し、フローサイトメトリで分析した。この方法で調製されたDCは、CD14-、HLA-DR+、CD11c+ マンノース受容体+ であり、高レベルのMHC クラス I 及びII、CD80 及びCD86を発現していた。
【0128】
腫瘍抗原βhCGの選抜: βhCGは、妊娠の成功の確立に必要なホルモンであるヒト絨毛性性腺刺激ホルモンのサブユニットである。この糖たんぱく質サブユニットは、これを癌の免疫治療にとって魅力的な抗原にしている数多くの特徴を有する(Triozzi P.L. and Stevens V. (1999) Oncology Reports 6:7-17にレビュー)。第一に、妊娠の他には、この抗原の発現は、主に生殖細胞腫瘍や数多くの腺癌に限られている(表3)。更に、hCGはシステイン-ループ成長因子スーパーファミリーの一メンバーであり、妊娠又は癌の確立又は進行において成長因子として、血管新生及び/又は転移促進物質として、あるいは免疫機能の抑制物質として、役割を果たしていると考えられる。従って機能的hCGの発現を制限する免疫治療法は、付加的な治療上の利益をもたらすであろう。
【0129】
【表3】

【0130】
増殖検定: エフェクタT細胞 (5x104) を、抗原(MDX-1307 又は他のもの)を負荷した自己由来DC (5x103)
と一緒に、96ウェル平底マイクロプレートで0.2ml最終容量にして同時培養した。この混合物は37℃で同時培養された。4日目に培養物に3H-チミジン (1μCi/ウェル)をパルス印加し、18時間後に細胞をフィルタ(Millipore社)上に直接、採取した。フィルタを水で3回、洗浄した後、エタノールで1回、洗浄して、5乃至10分間、フード下で乾燥させた。その後、シンチレーション液(パッカード社、20μl/ウェル)をこのフィルタに加えた。フィルタに結合した放射活性をWallacベータ・カウンタで計数して判定した。その結果を、抗原で刺激したCTL、対、抗原又はコントロール抗原なしで刺激を与えたもの、のcpmによる刺激指数(S.I.)で表す。MHC遮断分析については、標識済みのターゲットをすべてのクラスI HLA分子遮断するためにHLA特異mAb W6/32 と一緒に、そして全てのクラス II HLA 分子を遮断するためにL243(20μg/ml)と一緒に30分間、室温でプレインキュベートした。結合しなかったmAbは遠心分離で取り除いた。
【0131】
フローサイトメトリ: ヒトDCを単球からGM-CSF 及びIL-4中で5日間培養することで調製した。DCを氷上で10μg/mlのβhCG抗原/抗MR抗体ワクチン複合体又はアイソタイプコントロールと一緒にインキュベートした。ワクチン複合体を、直接FITC標識するか、又は、FITCで標識された抗βhCG二次モノクローナル抗体で検出した。当該細胞に伴う蛍光をLSRフローサイトメータを用いて判定した。
【0132】
細胞障害性検定: コントロール及び抗原を負荷した(βhCG-B11)標的細胞 (3x106)をRPMI培地で2回、洗浄した後、ペレットを200mlの培地中に再懸濁させ、100μCi51Na2CrO4
で60分間、37℃で標識した。標識後の標的をRPMI培地で3回、洗浄した後、ペレットを再懸濁させて、細胞濃度を3 x 104 細胞/mlにした。抗原特異的CTLを96ウェルV底プレートで力価測定して100:1 (エフェクタT細胞、E: 標的、T)乃至12:5:1又はそれ以下の比とした。一定数の標識済み標的を加え(100μl/ウェル又は3,000 標的細胞/ウェル)、プレートを低速(180 x g)で遠心し、37℃でインキュベートした。4時間後、100-120μlの上清を採取し、放出された放射活性をγカウンタ計数法(Wallac Instruments、Perkin-Elmer社)で判定した。 CTL活性を計算し、以下の等式を用いて%特異的溶解(致死)で表した:
特異的溶解 (%)
= 実験的放出 (cpm) - 自発的放出 (cpm) x 100 ;
最大放出 (cpm) - 自発的放出 (cpm)
但し式中、実験的 (cpm) とは、CTL (E) 及び標的 (T)を含有するウェルからの放射活性(放出されたクロム)を言い;自発 (cpm)とは、標的を0.1 ml の培地に単独で入れた(即ちCTLを添加していない)ウェルからの放射活性を言い、最大放出とは、0.1 ml 界面活性剤溶液(Igepal CA 630; syn. NP-40; RPMI 培養基に入れた5%溶液)を加えた、標的を入れたウェルからの放射活性を言う。よくコントロールされた実験条件下では、自発的な放出の数値は、最大訪中の10%以下のはずである。MHC 遮断分析のために、標識済みの標的を、全てのクラス Iを遮断するためにHLA特異的mAbであるW6/32と一緒に、そして全てのクラス II HLA 分子(20μg/ml)を遮断するためにL243と一緒に30分間、室温でプレインキュベートした。未結合のmAb を遠心分離で取り除き、mAbで被膜された標的をCTLに加えた。アイソタイプの一致するmAbをコントロールとして用いた。
【0133】
細胞媒介性免疫応答を観察する更に別の方法は、抗原で駆動されたT細胞の増殖能を調べることである。抗原に感作したT細胞は、以前に暴露した抗原がMHCクラスIIの流れで、そして程度は劣るがクラスI分子の流れで提示された場合に優先的に増殖する傾向がある。このように、放射性トレーサの取り込みにより分裂細胞を計数すれば、刺激の尺度となる。
【0134】
In vivo での抗原分布: マウスの二本の前足に5μgのB11-βhCGの5μl PBS 溶液をそれぞれの側に皮下(s.c.) 注射した。非標的決定コントロールとして、同量の無関係のヒトIgG1 (Sigma-Aldrich社) を同じ経路を通じて投与した。注射部位周囲と離れた箇所の皮膚、近位の(腋窩)及び遠位(鼠径部)リンパ節、脾臓、肝臓及び肺を、24時間後に採取した。これらの器官を瞬間冷凍し、hCG(抗原)及びヒトIgG(B11を検出するため)に対する抗体による免疫組織化学染色に向けて切片にした。
【0135】
免疫処理: 体液性応答のために、8乃至12週齢のマウスを、1匹当り、B11-βhCGを100μlのPBSに入れたものを2週間間隔で合計3回の用量、腹腔内により免疫した。等量の遊離βhCG(マサチューセッツ州スワンプスコット、United States Biological社)を、別の比較群として同じ調合及び時間経過で注射した。各研究は、5乃至6匹のトランスジェニック(tg)マウスと、同じ数の年齢、性別をマッチさせた野生型(Wt)マウスから成った。血液標本を眼窩から麻酔下で基線として0日目に、そして各注射から1週間後に採取し、血漿を分離し、ELISAに向けて−20℃で保存した。
【0136】
T細胞応答のために、8乃至12週齢のマウスに1又は2μgのB11-βhCGを100μlのアジュバント (CPG 及びPoly:IC)に入れて1回、腹腔内投与した。各研究はそれぞれ2乃至3匹の tg マウス及びWt マウスから成った。これらの研究のうちのいくつかは、結果を確認するために繰り返された。注射から14日後にこれらのマウスから血液及び脾臓を採集した。これらの血液から分離された血漿は、抗体サブクラス分析に向けて−20℃で保存された。
【0137】
ELISA: 抗-βhCG及び抗-B11抗体価を、捕獲には固定したβhCG又はB11、そして検出にはアルカリホスファターゼ(AP)-結合ヤギ抗マウスIgG Fcγ抗体(ペンシルヴァニア州ウェスト・グローブ、Jackson ImmunoResearch Lab社)を用いた標準的ELISAで測定した。血漿標本を1:100から開始して連続希釈し、OD405で非免疫マウス血清コントロールのものの2倍を超える吸光度を生ずる各標本の希釈度を計算することにより、抗体価を判定した。抗体サブクラス決定は、SBA Clonotyping System/AP (アラバマ州バーミンガム、SouthernBiotechnology Associates社)を用いたELISAにより行われた。
【0138】
ELISOPT: 検定をメーカのプロトコルに従ってELISPOT 装置(BD Biosciences社)で行った。脾臓を磨り潰して赤血球を溶解させることにより単個脾細胞懸濁液を調製した。抗IFNγ又はIL-4抗体で被膜した96ウェルろ過プレートのウェル一個当り0.5x106 又は1x106 個の細胞を、RPMI 1640 完全培地中で培養した。Synpep Corporation (カリフォルニア州ダブリン)で合成された、全βhCG配列を網羅する15量体βhCG重複ペプチド・プールを該培養物に最終濃度1.7μl/mlになるまで加え、37℃で40時間、インキュベートした。ペプチド・プールのないウェル(ブランク)を非特異的バックグラウンド・コントロールとして役立てた。10 ng/ml のPMAに1μg/mlのイオノマイシン(Sigma-Aldrich社) を含有するウェルを、スポット展開検定及びマウスの免疫適格性の陽性コントロールとして役立てた。各処理条件は、試料毎に三重になるように設定された。プレートはZellNet Consulting社(ニュージャージー州フォート・リー)で分析された。 各試料毎の抗原βhCG特異的スポット数は、ブランク・コントロールの数を減算した後のペプチド処理済ウェルの三重測定値の平均±SDだった。
【0139】
実施例1 βhCG-B11の作製
ワクチン複合体のデザイン: このコンストラクトは、樹状細胞上のヒトマクロファージマンノース受容体に結合する完全ヒト抗体であるB11にβhCG抗原を連結することにより、作製された。 連結は、図3に示すように遺伝子融合により抗原を抗体重鎖に共有結合させることにより、行われた。
【0140】
βhCG-B11ワクチン複合体の組換え発現: 図2に示すように、ネオマイシン及びジヒドロ葉酸レダクターゼを含有すると共に、βhCGコーディング配列も、抗体B11の重鎖のCH3ドメイン(SEQ ID NO:9 及び 10)で融合させて含有するプラスミドを作製した。できたプラスミド・コンストラクトをCHO細胞に標準的プロトコルを用いてトランスフェクトした(カリフォルニア州ヴァレンシア、Qiagen 社)。トランスフェクトした細胞を抗生物質G418を含有する培地で選抜した。更に、次第に濃度を高くしたメトトレキセート中で細胞を培養することにより、発現を増幅した。増幅後、限界希釈により細胞をクローニングし、安定なクローン株を用いて、更なる研究用に細胞バンクを作製した。βhCGコンストラクトの発現を確認するために、還元条件下でSDS-PAGEを泳動させたたんぱく質のウェスタン・ブロット分析を行った。この融合たんぱく質を観察して、予測通りの分子量及び正しくアセンブルされていること(即ち、重鎖の融合及び軽鎖の両方を含有していること)を確認した。具体的には、本ワクチン複合体と、単独の抗体とを変性条件下でSDS-PAGEにより分析し、ウェスタン・ブロット分析で検出した。次に、該ブロットを、ヤギ抗ヒトIgG 重鎖及び軽鎖と、βhCG-C末端ペプチドに特異的なmAb (Sigma社) とを用いて別々に分析した。その結果から、融合性生物のサイズ及び組成が適切であることを証左として、形質転換後のCHO細胞がB11-βhCGワクチン複合体を特異的に発現していたことが確認された。
【0141】
実施例2 B11scFv-βhCGの作製
ワクチン複合体のデザイン: βhCG抗原をB11一本鎖融合体(ScFv)に連結することにより、第二のコンストラクトを作製した。前記B11一本鎖融合体(ScFv)は、樹状細胞上のヒトマクロファージマンノース受容体に結合する一本鎖抗体であり、完全ヒトB11抗体のVL及びVHフラグメントを含有する。連結は、図1に示すように(B11sfv-βhCGコンストラクトと言及)遺伝子融合によりB11 ScFvにカルボキシ末端に抗原を共有結合させることにより、行われた。
【0142】
B11sfv-βhCGワクチン複合体の組換え発現: 図1に示すように、B11sfv-βhCGコンストラクト (SEQ ID NO: 11 及び12)を含有するプラスミドを作製した。できたプラスミド・コンストラクトを哺乳動物細胞に標準的なプロトコルを用いてトランスフェクトした(カリフォルニア州ヴァレンシア、Qiagen 社)。トランスフェクトした細胞を抗生物質G418を含有する培地で選抜した。ELISAを行って、B11sfv-βhCGコンストラクトの発現を確認した。
【0143】
実施例3 ワクチン複合体の機能特徴づけ
抗体で標識決定されたワクチンが、APC表面上でその認識受容体に認識されることは、この送達段階での最初のステップである。フローサイトメトリ研究が、βhCG-B11及びB11sfv-βhCGコンストラクトが、MRを発現している培養ヒトDCに特異的結合することを実証するために用いられてきた(図4)。
【0144】
抗MR抗体をプローブとして用い、ヒト真皮DC上と、多種のヒト組織切片中のマクロファージ上のMRのin situ染色を調べた。ヒト組織凍結切片を抗MRヒト抗体B11で染色した。皮膚の真皮層に存在するDCはB11抗体で明確に標識された(データは図示せず)。皮膚の真皮層でDCへの結合があったことが認められる。更に、抗MR B11 HuMAbを用いて行った免疫組織化学検査では、検査した全ての組織で樹状細胞が染色され、予期しなかった交差反応性は何ら示されなかった(結果は図示せず)。これらの研究をβhCG-B11で繰り返したが結果は同一だった。
【0145】
実施例4 βhCG抗原/抗MR抗体ワクチン複合体のT細胞への交差提示
DC上のMHC クラス I及びクラス II 分子を通じたT細胞へのβhCG提示(交差提示)に向けた、βhCG-B11コンストラクトのDCによる被プロセッシング能を評価した。具体的には、正常T細胞のプールを、ワクチンに暴露したDCと一緒に培養することにより、βhCG-B11コンストラクトを用いて抗原特異的T細胞を惹起した。次に、できた「感作した」T細胞をそれらの活性(増殖及び致死)及び特異性について分析した。T細胞の特異性は、βhCG抗原を有する標的細胞に応答したT細胞活性を、抗原陰性コントロールに比較することにより、実証することができる。存在する場合の細胞障害性T細胞(CTL)は、βhCG関連抗原を提示する標的のみを致死させ、抗原を欠いているか、あるいは無関係の抗原を提示しているようなコントロール標的には影響しないはずである。CTL媒介性抗原認識は通常、当該ペプチドを担持しているMHC分子の流れで起きるため、MHC特異的mAbでMHC:ペプチド-CTL 相互作用が遮断されると、クラス I又はクラス II 提示が裏付けられる。
【0146】
抗原特異的エフェクタT細胞の誘導: 樹状細胞を正常ドナー末梢血単核細胞(PBMC)から、接着性単球を25 ng/ml 組換えヒトGM-CSF (ミネソタ州、R&D systems社)及び100 ng/ml の組換えヒトIL-4と一緒に5日間、培養することにより、生じさせた。5日目にDCを採取(未熟)し、AIM-V (無血清)培地中に再懸濁させた。βhCG-B11 免疫複合体(20μg/ml)を1.2 x106 個のDC に加え、45分間、37℃でインキュベートした。抗原負荷したDCをCD40L(ニュージャージー州、Peprotech社;20 ng/ml)の存在下で少なくとも24時間、成熟させた。成熟DC (1 x 106)を一回、洗浄し、予め24ウェル・プレートに1 x 106 細胞/ml (DC: T 細胞の比、20)になるように播種されたT細胞(2 x 107;バルク)に加えた。以下の培養条件を用いた:0日目に10 ng/ml IL-7 、その後1日目(24時間目)に10 ng/ml の IL-10、そして2日目(48時間目)に20 U/ml IL-2、を添加。再刺激を7日目、14日目及び21日目に前に通りに行った。例外としてβhCG-B11 濃度は半分にした(それぞれ10、5 及び2.5μg/ml)。T細胞を(バルクか、又は、精製済みT細胞下位集団中で)、負荷なしの、又は、βhCG-B11、B11sfv-βhCG、もしくはB11を負荷した51Cr標識済みDCに対する反応性について検査した。MHC特性をHLA特異的mAbの存在下で確認した。
【0147】
図5に示すように、βhCG-B11コンストラクトはβhCG特異的細胞障害性T細胞を誘導した。T細胞を、βhCGを発現しない標的と培養した場合には何らの致死も確認されなかった。これらの実験で用いた標的細胞は、βhCG-B11コンストラクト又はコントロール抗原で処理した、HLAを適合させたDCだった。 抗MR抗体(B11)のみで処理した標的細胞は、細胞障害活性に対して感受性がなかったため、当該ワクチンの抗原部分のみがCTL活性を惹起できるということが実証された。これらの結果は、βhCG-B11コンストラクトが効率的なCTL活性を誘導すること、そして特に、このCTL活性がβhCG抗原に向けられたものであり、標的決定抗体(B11)に向けられたものでないことを示している。
【0148】
更に、βhCG抗原を提示している標的の効力ある致死は、精製済みCD8+T細胞で再現され、この致死は抗MHCクラスI抗体の存在下では遮断された(図6)。具体的には、βhCG-B11コンストラクトを用いて二人のドナーの末梢血単核細胞からβhCG特異的T細胞を作製した。CD8+及びCD4+T細胞を、バルク培養物から免疫磁気ビーズを用いて精製した。細胞障害性検定を上述した通りに、エフェクタ:標的比を40:1に設定して行った。標的細胞(未熟DC)は未処理(コントロール)のままか、あるいは、βhCG-B11コンストラクトを負荷した。MHC クラス I 特異性を実証するために、標的細胞の致死をHLA特異抗体(W6/32)と一緒にプレインキュベートすることにより遮断した。
【0149】
まとめると、これらのデータ(図6及び7)は、βhCG-B11コンストラクトの、効力あるβhCG特異的CTL誘導能を裏付けるものであり、更に、このCTL活性がCD8+T細胞によりHLA依存的培養で媒介されることも実証するものである。精製済みCD4+T細胞では何ら致死活性は観察されなかった。
【0150】
図7に示すように、βhCG-B11コンストラクトで惹起されたT細胞は、βhCG-B11コンストラクトで標的決定されたDCに応答して増殖する。具体的には、DCをβhCG-B11コンストラクトで処理して、βhCG特異的T細胞を、末梢血単核細胞から作製した。バルク培養物から採ったT細胞(CD4+ 及びCD8+ T 細胞)を、抗原刺激に応答した増殖について検査した。T細胞を、未処理DC(コントロール)か、又は、βhCG-B11コンストラクトを負荷したDCと一緒に、HLA遮断抗体を加えて、又は加えずに同時培養した。増殖を測定するために、DNA合成を培養から5日目に3H-チミジンを用いて分析した。データを、コントロールに比較したときの増殖の倍増(刺激指数)で表した。CTL活性で見られるように、T細胞をDCのみ(即ち抗原なし)で刺激した場合には何の応答も認められなかった。未結合の抗体(抗MR B11 mAb)のみで標的決定したDCは、βhCG-B11コンストラクトで惹起されたT細胞の増殖を誘導しなかった。T細胞の増殖能は、抗MHC クラス I やクラス II特異的mAbの両方の存在下で著しく遮断されたことから、CD4+ 及び CD8+ T 細胞の両方が応答性であることが実証された。これらのデータは、DCがβhCG-B11コンストラクトを取り込むことにより、本ワクチンがMHC クラス I 及びクラス II プロセッシング経路へのアクセスを獲得することができることを示しており、MRのMHC区画との同時局在と一致している。
【0151】
実施例5 DCによる抗MR抗体B11の内部移行、対、DCによるマンノシル化抗原の内部移行(クラスリン媒介性内部移行の疎外)
未熟DCは、ピノサイトーシス又は受容体媒介性エンドサイトーシス機序によって可溶性抗原を取り込むことができる (55)。この抗原内部移行機序はその細胞内での運命を決定し、それに対する免疫応答の質に影響を与えていると思われる (54, 55, 56)。MRを通じた内部移行は、急速なクラスリン媒介性内部移行事象として解説されてきた (57, 58)。MR自体はその細胞質側の尾に2つの推定クラスリン標的決定配列を有しており、マンノシル化した金粒子の内部移行が、EMによりクラスリンで被膜された膜穴に位置特定されている (58, 59)。クラスリン依存性エンドサイトーシスは、急速な高浸透圧ショック又はK+枯渇により特異的に破壊することができる (61)。マンノース受容体に結合したマンノシル化抗原又はマンノースがクラスリン被覆ピットを通じて内部移行するのかどうかを判定するために、未熟DCを氷上でAIM5培地と一緒に、400mM ショ糖を加えて、又は加えずに30分間、B11 mAb 又はマンノシル化BSAのいずれかの存在下でインキュベートした。その後細胞を37℃まで暖め、20分間、内部移行させた。洗浄及び固定後の細胞を共焦点顕微鏡法で分析した(データは図示せず)。B11をMRに結合させた場合には、その取り込みは、高浸透圧ショックで阻害されたことから、その内部移行機序がクラスリン被覆ピットを通じてであることが示された。対照的にマンノシル化BSAの取り込みは高浸透圧ショックでは阻害されなかったことから、その内部移行機序はクラスリン被覆ピットの形成に依存するものではないことが示された。B11よりも20倍高い濃度でも、マンノシル化BSA FITCによる表面染色は比較的に弱かった。その後の研究では、内部移行後のマンノシル化BSA FITCは、非特異的な流体相トレーサと同時局在したが、内部移行後のB11を含有するベシクルは、該非特異的トレーサを排除したことが明らかになった(データは図示せず)。B11-FITCとは対照的に、マンノシル化BSA-FITC及び流体相トレーサの両者の取り込みとも、PI3K 阻害剤ワートマニンによる前処理により、大きく遮断された(データは図示せず)。これらの結果は、マンノシル化BSAの大半が未熟樹状細胞により取り込まれ、それは非特異的なマクロピノサイトーシス機序を通じたものであることを示しており、マンノシル化抗原に対する免疫応答の質は、MRに特異的に標的決定された抗原とは大きく異なる可能性を示唆している。
【0152】
実施例6 B11sfv-βhCGのDCへの結合
単球由来DCを、B11sfv-βhCG 又はβhCG-B11 のPBS-BSA 緩衝液溶液に45分間、37℃で暴露して、CD40Lの存在下で一晩、成熟させた。次に、採取したDCを洗浄し、マウス抗βhCG で、続いてヤギ抗ヒトIgG(Fc)-PE 複合体で染色した。染色した細胞をフローサイトメータ (BD-LSR)で分析した。ほぼ10,000 回の事象を各試料で採集した。バックグラウンドの自己蛍光及びアイソタイプを適合させた抗体染色をコントロールとして役立てた。平均蛍光強度 (MFI) (データは図示せず)に基づくと、B11sfv-βhCG の、DC上に発現したMRへの結合は、βhCG-B11に対するそれと同様である。
【0153】
実施例7 βhCG-B11コンストラクトに特異的なCTLは、DCにより提示されたscFv型の抗原(B11sfv-βhCG)を認識する
DCにより提示されたβhCG-B11に対して生じたCTLを、βhCG-B11 及びB11sfv-βhCGに暴露した自己由来DC標的に対して検査し、他方、未処理のDCか、又はB11に暴露したDCをコントロールとして役立てた。抗原暴露後、上清中の放射活性放出を測定する4時間検定において標的に51クロムで標識し、CTLと混合した。この実験では、βhCG-B11特異的T細胞は、抗原をMHCクラスI分子上に提示する四つの標的のうちの二つを認識する。DCが抗原を欠く場合は、標的の致死は認められない(図11)。このように、DCによるβhCG-B11 の取り込みの結果、βhCG由来T細胞エピトープがCTLに認識されるのだと考えられる。
【0154】
実施例8 ヒトマンノース受容体を発現するトランスジェニックマウスの作製
ヒトマンノース受容体(MR)を狙う抗体は、サルを含め、研究室での実験に通常用いられている他の種を由来とするMRとは交差反応しない。従って、ヒトMRを発現するトランスジェニックマウスを開発した。ヒトMRを発現するトランスジェニックマウスは、標準的なマイクロ注射技術を用い、全30エキソン遺伝子や5'側及び3'側末端からの付加的な配列を用いて、作製された。ヒトMRトランスジェニックマウス(huMR-tg)のバックグランドに株C57Bl/6 が選択されたが、それはなぜなら、この株については免疫処理及び腫瘍刺激実験がよく確立されていたからである。多様な方法を用いて、該ヒトMR導入遺伝子の発現及び調節が、ヒト組織におけるヒトMRの発現及び調節と同様であることを実証した(データは図示せず)。
【0155】
実施例9 MR発現細胞のB11-βhCGによる効率的な負荷
B11-βhCGのin vivo ターゲティング能を、ヒトマンノース受容体(hMR)を発現するトランスジェニックマウス由来の組織をB11-βhCGの投与から24時間に分析することで調査した。注射部位近くのリンパ節及び周囲組織中のβhCG抗原の免疫組織化学染色では、リンパ節組織や周囲のマクロファージ及び間質性樹状細胞においてこの抗原の顕著な蓄積が実証された(図16)。hMRを発現しないコントロールマウスでは何らの染色も観察されなかったことから、hMRのターゲティングにより、抗原提示細胞及びリンパ節で抗原が効果的に負荷されたことが示された。
【0156】
具体的には、B11-βhCG (10μg)を、ヒトマンノース受容体を発現するトランスジェニックマウス(huMR-tg マウス)又はWT 同腹仔の四肢に注射した。24時間後に、近くのリンパ節及び周囲組織を摘出し、βhCGポリクローナル抗体について染色した。組織切片を抗βhCGで染色した後、ペルオキシダーゼ標識抗ウサギIgG ポリマ試薬で染色した。図16に示すように、WTマウス由来の切片では何の染色も観察されず、他方、while huMR-tg マウスは、リンパ節や周囲組織の間質性樹状細胞及びマクロファージで染色を示した。
【0157】
実施例10 MRをターゲティングした場合のhβCGに対する体液性及び細胞性応答の亢進
MRに特異的な抗体で標的決定されたワクチンの可能性を、huMR-tg マウス及びそれらのWt同腹仔をB11-βhCGで免疫することにより調査した。B11-βhCGに対する抗原特異的体液性免疫性が、非トランスジェニックの同腹仔に比べてトランスジェニックマウスでより急速かつおり大きく生じた(図17を参照されたい)。具体的には、図17に示すように、マウスに10μgのB11-βhCG、又は等量の遊離βhCGで3回、(矢印で示す通りに1日目、15日目及び29日目 )で免疫した。各免疫から1週間後にマウスを交配させた。
抗βhCG抗体価を標準的ELISAで判定した。
【0158】
同様に、B11-βhCGで免疫したhuMR-tg マウスは、非トランスジェニック同腹仔に比較して、より大きな細胞性免疫応答をB11-βhCGに対して示した(図18)。具体的には、図18に示すように、コントロール(Wt)及びhuMR-tg マウスをB11-βhCG (1μg腹腔内及びアジュバント)免疫した。14日後に脾細胞を採集し、βhCGペプチドに応答したIFN-γ産生について標準的ELISPOT 検定で分析した。これらの研究は、更に、in vivoで抗原をAPCに標的決定する可能性を実証するものである。更に、アジュバントの存在下では体液性応答が容易に観察され、βhCGに対する細胞性応答は、B11-βhCGをpoly-IC及びCPGなどのアジュバントと同時投与した場合ではより顕著だった。
【0159】
均等物
当業者であれば、ごく慣例的な実験を用いるのみで、ここに解説された本発明の具体的な実施例の均等物を数多く、認識され、あるいは確認できることであろう。このような均等物は以下の請求項の包含するところとして意図されている。
【0160】
引用による援用
ここで引用された全特許、係属中特許出願及び他の公開文献の全文を、引用をもってここに援用する。
【0161】
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【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】図1は、一本鎖B11抗体をβhCG抗原に連結して含有する融合たんぱく質(pB11sfv-βhCG)をコードする分子複合体 (SEQ ID NO:11 及び12)のマップを示す。
【図2】図2は、B11抗体全体をβhCG抗原に連結して含有する融合たんぱく質(βhCG-B11コンストラクト)をコードする分子複合体(SEQ ID NO:9 及び10)のマップを示す。
【図3】図3は、分子複合体の概略図を示す。当該抗原はインタクト抗体の重鎖に遺伝子融合されている。
【図4】図4は、βhCG-B11コンストラクトが、MRを発現している培養ヒトDCに特異的に結合することを示した、フローサイトメトリ研究に基づくグラフである。
【図5】図5は、βhCG-B11コンストラクトがβhCG特異的細胞障害性T細胞を誘導することを示すグラフである。
【図6】図6は、βhCG-B11コンストラクトがβhCG特異的細胞障害性T細胞を誘導することを示すグラフである。
【図7】図7は、βhCG-B11コンストラクトがTヘルパ応答を誘導することを示す棒グラフである。
【図8】図8は、ヒトモノクローナル抗体B11の重鎖V領域のヌクレオチド配列(SEQ ID NO:3)及び対応するアミノ酸配列(SEQ ID NO:4)を、指定したCDR領域(SEQ ID NO: 13、14、及び15)と一緒に示す。
【図9】図9は、ヒトモノクローナル抗体B11の軽(カッパ)鎖V領域のヌクレオチド配列(SEQ ID NO:7)及び対応するアミノ酸配列(SEQ ID NO:8)を、指定したCDR領域(SEQ ID NO: 16、17、及び18)と一緒に示す。
【図10】図10は、ウェブ・ベースの予想アルゴリズム(BIMAS & SYFPEITHI)を用いて分析した場合の、βhCG-B11コンストラクトの予想T細胞エピトープを示す図である。T細胞エピトープは、HLA-A2、HLA-B7 及びHLA-DR 分子への結合可能性が見出されている。いくつかのエピトープも、βhCG-B11のB11セグメントから予想された。37 aa 長のC末端ペプチドでは、T細胞エピトープは何ら特定されなかった。
【図11】図11は、βhCG-B11コンストラクトに特異的なCTLが、DCにより提示されるこの抗原のscFv型であるB11sfv-βhCGを認識することを示すグラフである。
【図12】図12は、生殖細胞系配列(SEQ ID NO:30)VH5-51 生殖細胞系に比較したときの、ヒトモノクローナル抗体B11の重鎖V領域のアミノ酸配列(SEQ ID NO:4) を示す。
【図13】図13は、生殖細胞系配列(SEQ ID NO:29)VH5-51 生殖細胞系に比較したときの、ヒトモノクローナル抗体B11の重鎖V領域のヌクレオチド配列(SEQ ID NO:3) を示す。
【図14】図14は、生殖細胞系配列(SEQ ID NO:32)Vk-L15 生殖細胞系に比較したときの、CDR領域を指定したヒトモノクローナル抗体B11の軽(カッパ)鎖V領域のアミノ酸配列(SEQID NO:8) を示す。
【図15】図15は、生殖細胞系配列(SEQ ID NO:31)Vk-L15生殖細胞系に比較したときの、CDR領域を指定したヒトモノクローナル抗体B11の軽(カッパ)鎖V領域のヌクレオチド配列(SEQID NO:7) を示す。
【図16】図16は、ヒトマンノース受容体を発現するトランスジェニックマウス(huMR-tgマウス)における、間質性樹状細胞及びリンパ節や、周囲組織中のマクロファージによるB11-βhCG抗原の標的決定された取り込みを示す。
【図17】図17は、コントロールマウスに比較したときの、そして標的決定されていないβhCGに比較したときの、huMR-tgマウスにおけるB11-βhCGに対する抗原特異的体液性応答の亢進を示すグラフである。
【図18】図18は、コントロールマウスに比較したときの、そして標的決定されていないβhCGに比較したときの、huMR-tgマウスにおけるB11-βhCGに対する抗原特異的細胞性応答の亢進を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト抗原提示細胞(APC)に結合するモノクローナル抗体を、βヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(βhCG)と免疫刺激性物質とに連結して含む分子複合体。
【請求項2】
前記βhCG及び免疫刺激性物質が、前記抗体に共有結合により、非共有結合により、組換えにより、又はこれらの組み合わせを用いて、連結されている、請求項1に記載の分子複合体。
【請求項3】
前記βhCG及び免疫刺激性物質が両者とも前記抗体の同じ鎖に連結されている、請求項1に記載の分子複合体。
【請求項4】
前記βhCG及び免疫刺激性物質が両者とも前記抗体の重鎖に連結されている、請求項3に記載の分子複合体。
【請求項5】
前記βhCG及び免疫刺激性物質が両者とも前記抗体の軽鎖に連結されている、請求項3に記載の分子複合体。
【請求項6】
前記βhCG及び免疫刺激性物質が前記抗体の重鎖及び軽鎖に別々に連結されている、請求項1に記載の分子複合体。
【請求項7】
前記抗体、βhCG及び免疫刺激性物質が、単一の組換え融合たんぱく質として一緒に発現する、請求項1に記載の分子複合体。
【請求項8】
前記免疫刺激性物質が、CD40 リガンド、サイトカイン、コロニー刺激因子、抗CTLA4抗体、toll 受容体アゴニスト、LPS(エンドトキシン)、R837 、R848、polyI:C (イノシン−シトシンポリヌクレオチド)、ssRNA、dsRNA、カルメット−ゲラン桿菌(BCG)、レバミソールヒドロクロリド、及び静脈内免疫グロブリンから成る群より選択される、請求項1に記載の分子複合体。
【請求項9】
前記サイトカインがIFN-α、IFN-β、IFN-γ及びIL-2から成る群より選択される、請求項8に記載の分子複合体。
【請求項10】
前記toll受容体アゴニストがフラゲリン又はMALP-2である、請求項8に記載の分子複合体。
【請求項11】
前記抗体が、ヒト樹状細胞上に発現したC型レクチンに結合する、請求項1に記載の分子複合体。
【請求項12】
前記抗体がヒトマンノース受容体に結合する、請求項1に記載の分子複合体。
【請求項13】
前記抗体がヒト、ヒト化及びキメラ抗体から成る群より選択される、請求項1に記載の分子複合体。
【請求項14】
前記抗体が全抗体、Fabフラグメント及び一本鎖抗体から成る群より選択される、請求項1に記載の分子複合体。
【請求項15】
前記複合体が組換え融合たんぱく質である、請求項1に記載の分子複合体。
【請求項16】
前記抗体が、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3 及びFR4配列を含むヒト重鎖可変領域と、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3 及びFR4 配列を含むヒト軽鎖可変領域とを含み、但し:
(a)前記ヒト重鎖可変領域CDR3 配列がSEQ ID NO: 15及びその保存的改変を含み、そして
(b)前記ヒト軽鎖可変領域CDR3配列がSEQ ID NO: 18及びその保存的改変を含む、請求項1に記載の分子複合体。
【請求項17】
前記ヒト重鎖可変領域CDR2 配列がSEQ ID NO: 14及びその保存的改変を含み、そして前記ヒト軽鎖可変領域CDR2配列がSEQ ID NO:17及びその保存的改変を含む、請求項16に記載の分子複合体。
【請求項18】
前記ヒト重鎖可変領域CDR1 配列がSEQ ID NO:13及びその保存的改変を含み、そして前記ヒト軽鎖可変領域CDR1配列がSEQ ID NO:16及びその保存的改変を含む、請求項16に記載の分子複合体。
【請求項19】
前記抗体が、
(a)ヒトVH5-51 生殖細胞系配列 (SEQ ID NO:30)を由来とする重鎖可変領域;及び
(b)ヒトVk-L15 (SEQ ID NO:32) 生殖細胞系配列を由来とする軽鎖可変領域、
を含む、請求項1に記載の分子複合体。
【請求項20】
前記抗体が、それぞれSEQ ID NO:4 及び SEQ ID NO:8に示されたアミノ酸配列、又は、前記抗体がヒト樹状細胞への結合能を保持するようにSEQ ID NO:4 及びSEQ ID NO:8に対して充分相同なアミノ酸配列、を含むヒト重鎖及びヒト軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の分子複合体。
【請求項21】
ヒトAPCに結合するヒト抗体重鎖と、ヒトAPCに結合するヒト抗体軽鎖とを含み、但し一方又は両方の鎖がβhCGと免疫刺激性物質とに連結されている、分子複合体。
【請求項22】
ヒトAPCに結合するヒト抗体重鎖と、ヒトAPCに結合するヒト抗体軽鎖とを含み、但し前記鎖の一方がβhCGに連結されており、そして他方の鎖が免疫刺激性物質に連結されている、分子複合体。
【請求項23】
前記重鎖がβhCGに連結されていると共に、SEQ ID
NO:2に示されたアミノ酸配列を含む、請求項21に記載の分子複合体。
【請求項24】
前記軽鎖がSEQ ID NO:6に示されたアミノ酸配列を含む、請求項21に記載の分子複合体。
【請求項25】
ヒト抗原提示細胞(APC)に結合するモノクローナル抗体と;
βヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(βhCG)と;
免疫刺激性物質と
を含み、前記抗体が:
(a)ヒトVH5-51 生殖系配列 (SEQ ID NO:30)を由来とする重鎖可変領域;及び
(b)ヒトVk-L15 (SEQ ID NO:32) 生殖系配列を由来とする軽鎖可変領域、
を含む、分子複合体。
【請求項26】
SEQ ID NO:12 に示されたアミノ酸配列を免疫刺激性物質に連結して含む分子複合体。
【請求項27】
T細胞媒介性免疫応答が抗原に対して生じるように、内部移行してAPCによりプロセッシングされる、請求項1に記載の分子複合体。
【請求項28】
前記T細胞応答が細胞障害性T細胞により媒介される、請求項27に記載の分子複合体。
【請求項29】
前記T細胞応答がCD4+ 及びCD8+ T細胞の両方により媒介される、請求項27に記載の分子複合体。
【請求項30】
前記T細胞応答がMHC クラス I 及びMHC クラス II 経路の両方を通じて誘導される、請求項27に記載の分子複合体。
【請求項31】
免疫刺激性物質と、βhCGに連結した、APCに結合する抗体の分子複合体とを含む組成物。
【請求項32】
前記免疫刺激性物質が前記分子複合体に連結されている、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記連結が共有結合、非共有結合、又は組換えによる、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記抗体がヒト抗体である、請求項31に記載の組成物。
【請求項35】
薬学的に許容可能な担体を更に含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項36】
アジュバントを更に含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項37】
前記免疫刺激性物質が、CD40 リガンド、サイトカイン、コロニー刺激因子、抗CTLA4抗体、toll 受容体アゴニスト、LPS(エンドトキシン)、R837 、R848、polyI:C (イノシン−シトシンポリヌクレオチド)、ssRNA、dsRNA、カルメット−ゲラン桿菌(BCG)、レバミソールヒドロクロリド、及び静脈内免疫グロブリンから成る群より選択される、請求項31に記載の組成物。
【請求項38】
前記サイトカインがIFN-α、IFN-β、IFN-γ及びIL-2から成る群より選択される、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
抗原に対するT細胞媒介性応答が誘導される又は亢進される態様で、前記抗原がプロセッシングされてT細胞に提示されるように、請求項31に記載の組成物をAPCに接触させるステップを含む、βhCGに対してT細胞媒介性免疫応答を誘導する又は亢進する方法。
【請求項40】
免疫刺激性物質が分子複合体に連結されている、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
T細胞媒介性免疫応答がβhCGに対して生じるように、請求項31に記載の組成物を投与するステップを含む、対象を免疫する方法。
【請求項42】
免疫刺激性物質が分子複合体に連結されている、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
アジュバントを投与するステップを更に含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記免疫刺激性物質が、CD40 リガンド、サイトカイン、コロニー刺激因子、抗CTLA4抗体、toll 受容体アゴニスト、LPS(エンドトキシン)、R837
、R848、polyI:C (イノシン−シトシンポリヌクレオチド)、ssRNA、dsRNA、カルメット−ゲラン桿菌(BCG)、レバミソールヒドロクロリド、及び静脈内免疫グロブリンから成る群より選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記サイトカインがIFN-α、IFN-β、IFN-γ及びIL-2から成る群より選択される、請求項44に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2008−508313(P2008−508313A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523858(P2007−523858)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/027044
【国際公開番号】WO2006/073493
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(505111890)セルデックス セラピューティックス, インク. (1)
【Fターム(参考)】