説明

ヒト防御用組換えサブユニット西ナイルウイルスワクチン

好ましくは切断型西ナイルウイルスのエンベロープ糖タンパク質の組換えで作製した形態及びアルミニウムアジュバントを含有するヒト用の西ナイルウイルスワクチンについて記載する。本ワクチンは、免疫抑制者、免疫不全者、及び免疫老化者を含む一般個体群における使用に許容可能である。本ワクチンは、全ての健康な個体群及び危険な状態にある個体群における使用にとって安全であり効果的である。本ワクチンには、薬学的に許容可能なビヒクルが含まれてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
【0002】
本出願は、米国仮特許出願第61/182,754(出願日2009年5月31日)に基づく利益を主張するが、先出願の開示情報及び図面は、そっくりそのまま参照することにより、本明細書で援用する。
配列表
【0003】
本出願において配列表は特許請求しない。
米国政府援助研究に関する陳述
【0004】
本発明は、番号NS052139−04及びW81XWH−06−2−0035の下それぞれNIH(アメリカ国立衛生研究所)及びDoD(米国国防総省)による米国政府の援助を受けた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
発明の分野
【0005】
本発明は全体としてワクチンの分野に関する。本発明は、西ナイルウイルスによって引き起こされる疾病からヒトを防御するために設計されたワクチンに関する。特に、本ワクチンは、昆虫細胞生産系で生産された西ナイルウイルス由来の切断型組換えエンベロープ(E)糖タンパク質及びアルミニウムベースのアジュバントを含む。
発明の背景
【0006】
フラビウイルス科には、プロトタイプの黄熱病ウイルス(YFV)、4種の血清型のデング熱ウイルス(DENV−1、DENV−2、DENV−3、およびDENV−4)、日本脳炎ウイルス(JEV)、ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)、西ナイルウイルス(WNV)、セントルイス脳炎ウイルス(SLEV)、及び約70種の他の病原性ウイルスが含まれる。フラビウイルスは、一本鎖プラス鎖RNAゲノムを有する小さなエンベロープをもつウイルスである。10の遺伝子産物が、シングルオープンリーディングフレームによってコードされ、キャプシド(C)、「プレ膜」(又はprM(細胞からのビリオン放出直前に膜(M)にプロセシングされる))、「エンベロープ」(E)、続いて非構造(NS)タンパク質NS1、NS2a、NS2b、NS3、NS4a、NS4b及びNS5の順に構築されたポリタンパク質として翻訳される(Chambers,T.J.et al.,Annual Rev Microbiol(1990)44:649−688(非特許文献1);Henchal,E.A.および Putnak,J.R.,Clin Microbiol Rev.(1990)3:376−396(非特許文献2)参照)。個々のフラビウイルスタンパク質は、その後ウイルスのコードするプロテアーゼと共に宿主によって介在される正確なプロセシング現象によって生産される。
【0007】
フラビウイルスのエンベロープは宿主細胞膜由来であり、ウイルスのコードする膜結合型(membrane-anchored)膜(M)糖タンパク質及びエンベロープ(E)糖タンパク質を含有する。E糖タンパク質は、最大のウイルス性構造タンパク質であり、細胞表面接着及びエンドソーム内の融合活性の原因となる機能ドメインを有している。それはまた、防御免疫と関連するウイルス中和抗体の生産を含む宿主免疫系の主要な標的でもある。
【0008】
西ナイルウイルスは、合衆国において新興感染症となった。本ウイルスはウイルスの天然貯蔵器として利用されるトリに感染し、加えて偶生宿主であるヒト及びウマにも感染する。それは、イエカ属を含む種々の属の42種以上の蚊によって伝染される節足動物媒介ウイルスである。最初に確認されたWNVの症例は、1937年にウガンダの西ナイル地域で発見された(Smithburn et al.,Am J Trop Med Hyg(1940)20:471−492(非特許文献3))。その後、それは中東、オセアニア、ヨーロッパ及びアジアの一部に行き渡り、近年アメリカに出現した。1999年にニューヨーク市で合衆国初のヒト感染症例が確認されて以来、ウイルスは合衆国の東海岸の至る所に伝播し大陸を横切って西に広まった。それは、今ではもう合衆国本土48州の全てにおいてトリ個体群に見出されている。WN病のヒト症例は50州中47州で確認されており、ヒト症例が報告されていないのはアラスカ州、ハワイ州及びメイン州だけである(NMWR,2008,57(26):720−23(非特許文献4))。
【0009】
WNVに感染した個体の大多数はインフルエンザ様症状を呈する。しかし若干数の感染個体は、3−15%の致死率を有する重篤な症状を呈し、この致死率は高齢者で最も高くなる。さらに、死亡に至らなかったケースにおいても、高い割合で生涯型の神経障害となる。2003年、9,862人の症候性感染個体中、2,866人(29%)が神経浸潤性疾患(西ナイル髄膜炎、脳炎及び脊髄炎として定義された)神経浸潤性疾患を患い、264人が当該疾患により死亡した。神経浸潤性の合併症は、2004年には36%に増加した(MMWR,vol.53Nov.19,2004(非特許文献5))。最近の研究は、ウイルス感染からの回復には最初に考えられたよりもかなり長い時間が要求されることを明らかにした。ある研究は、回復時間の中央値が60日であると結論したが(Comment,Ann Inter. Med.(2004),141:153(非特許文献6))、一方他の研究は、患者の37%だけが1年後に完全に回復したと記載している(Klee et al.,Emerg.Inf.Dis.(2004)10:1405−1411(非特許文献7))。ウイルス性の神経損傷は治癒が遅く、いくつかの症例では終身的である。近年、かなりの個体がポリオ様の急性弛緩性麻痺の症状を患った。臨床所見は、高齢患者において顕著に悪化する。イスラエルでの最近のWNV感染の大発生の研究において、入院中の患者233人のグループに関する研究内で、致死率が全体として14%であった。しかし、70歳以上の患者の間で致死率は29%であった(Chowers et al.,Emerg.Inf.Dis.(2001)7:675−78(非特許文献8))。同様の所見が、ルーマニア(Tsai et al.,Lancet(1998)352:767−771(非特許文献9))及びロシア(Platonov et al.,Emerg.Inf.Dis.(2001)7:128−32(非特許文献10))における最近の流行からも報告された。このように、特に高齢/免疫老化、免疫不全及び免疫抑制の個体群の間で、WN病に関連して著しい罹患率及び死亡率が存在する。
【0010】
WNVエンベロープタンパク質は、他のフラビウイルス、特に日本脳炎(JE)血清型群、即ちJEV、セントルイス脳炎ウイルス(SLEV)、及びマレー渓谷脳炎ウイルス(MVEV)のエンベロープタンパク質と著しく高い相同性を有している。エンベロープタンパク質内に含まれる特定のエピトープに対する抗体は、インビトロでウイルスの中和、即ち感受性細胞のウイルス感染を阻害することができる。中和抗体のエピトープが、WNVを含むフラビウイルスのE糖タンパク質の全ての三つのドメインにマッピングされた(Diamond et al.,Immunol.Rev.(2008)225:212−25(非特許文献11))。ウイルス中和抗体の高い力価は、フラビウイルス感染及びそれに起因する疾病に対するインビボでの防御のインビトロでの最良の相関物として一般的に認められている(Markoff Vaccine(2000)18:26−32(非特許文献12);Ben−Nathan et al.,J.Inf.Disease(2003)188:5−12(非特許文献13);Kreil et al.,J.Virol.(1998)72:3076−3081(非特許文献14);Beasley et al.,Vaccine(2004)22:3722−26(非特許文献15))。従って、高い力価のWNV中和抗体応答を誘導するワクチンは、おそらくWNVによって誘発される疾病からワクチン接種患者を防御することができる。
【0011】
現在までフラビウイルスワクチンの開発は、雑多な成功を経験してきた。フラビウイルスによって引き起こされる疾病から防御するワクチン候補を生産する取り組みにおいて実施されてきた4つの基本的なアプローチがある。4つの方法とは、生弱毒ウイルス、不活化全ウイルス、組換えサブユニットタンパク質、及びDNAである。YFV用に開発された生弱毒ウイルスワクチンは、数十年間にわたり有用であり続け、本アプローチの有用性を証明している。不活化全ウイルスワクチンの使用は、本アプローチに基づくTBEV及びJEVの両方の疾病標的に対し有用な登録製品によりTBEV及びJEVに対し証明された。
【0012】
上記の通り、YFV、JEV、及びTBEV用のワクチン開発に成功してきた。しかし、他のフラビウイルス用ワクチンを開発するための生弱毒ウイルス及び不活化ウイルス法の利用は、重要な課題に立ち向かうこととなった。例えば、弱毒デングワクチン株の候補を開発するためにかなりの努力が費やされたが、しかし試験された多くの株は満足のいくものではないと証明された(参照、例えば、Eckels,K.H.et al.,Am.J.Trop. Med.Hyg.(1984)33:684−689(非特許文献16);Bancroft,W.H.et al.,Vaccine(1984)149:1005−1010(非特許文献17);McKee,K.T.,et al.,Am.J.Trop.Med.Hyg.(1987)36:435−442(非特許文献18))。これら初期の不十分な結果にもかかわらず、デング生弱毒候補ワクチン株を開発し試験する取り組みが続いた(Am.J.Trop.Med.Hyg.(2003)69:1−60(非特許文献19)の総説)。伝統的な生弱毒法を利用するWNVワクチンを開発するための取組は、さほどされてこなかった。
【0013】
フラビウイルスワクチンを開発するための伝統的な生弱毒法の代替法として、組換えキメラ法が利用されてきた。この方法は、ベースとして既知の生弱毒フラビウイルス株を利用し、対象となる関連ウイルス由来の適切な遺伝子(フラビウイルスに関してはprM及びE)がベースウイルスの相当する遺伝子に置換されている。WNV及びDENVワクチン開発のために利用された一つのアプローチは、弱毒DENV−4株に基づく内部型キメラの使用である(Bray,M.et al.,J.Virol.(1996)70:4162−4166(非特許文献20);Chen,W.,et al.,J.Virol.(1995)69:5186−5190(非特許文献21);Bray,M.and Lai,C.−J.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1991)88:10342−10346(非特許文献22);Lai,C.J.et al.,Clin.Diagn.Virol.(1988)10:173−179(非特許文献23))。もう一つのアプローチは、JEV、DENV、及びWNV用の組換えキメラワクチンを開発するためのベースとしてYFV17D弱毒株を使用することであった(Lai,C.J.and Monath T.P.,Adv Virus Res(2003)61:469−509(非特許文献24);Monath et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2006)103:6694(非特許文献25))。生弱毒キメラ法の使用が伝統的な生弱毒法に対し優位性を有しているとは言え、キメラ法は、適正に弱毒した株の開発をするうえで、及びDENVワクチンの場合には4つのデングウイルスに対するバランスのとれた四価の応答を達成するうえで直面する困難に未だに悩まされている。さらに生弱毒アプローチは、高められた危険因子のために脳炎性疾患を標的とするワクチンにとって適せつではなく、又は易感染性の免疫系を有する標的個体群にとって適切でないかもしれない。これらの因子の双方は、WNVワクチンの開発に当てはまる。
【0014】
現在、不活化全ウイルス法を利用してJE及びTBE用に生産されたワクチンが市販されている。生弱毒ウイルス法と同様に、一定のフラビウイルスへの不活化ウイルス法の利用は、他のフラビウイルスでの成功を保証しなかった。例えば、不活化DENV又はWNVワクチンを開発する取り組みは、限られた成功しか受けられなかった。この方法は、細胞培養系から十分なウイルス収量を獲得する能力によって制限されている。C6/36細胞等の昆虫細胞からのウイルス収量は、一般的に10から10pfu/mlの範囲であり、対費用効果の高い不活化ウイルスワクチンを生産するために必要なレベルよりかなり低い。LLC−MK2及びベロ細胞を含む哺乳動物細胞からの収量はかなり高いが、しかし最高の収量、ユニークなベロ細胞株では約10pfu/ml、でも対費用効果の高いワクチン製造を達成するために必要な収量よりもまだ低いのである。
【0015】
裸のDNA法の利用もまた、DENV、JEV、TBEV及びWNV用の非複製型フラビウイルスワクチンの開発の取り組みにおいて評価されてきた(Putnak,R.et al.(2003)Adv.Virus Res.61:445−68(非特許文献26)の総説)。DNA法は、生産の容易さ、決定された配列の使用、インビボでウイルス抗原が発現するために体液性免疫及び細胞性免疫の双方を誘導することが可能であるという点において優位性を提供する。これらの優位性にもかかわらず、一貫した頑強な免疫応答、特に抗体反応をヒト体内で誘導する能力がこのアプローチにとって大きな障害であり続けている。加えて、DNAワクチンは、プラスミド配列の宿主ゲノムへの組込み及び二本鎖DNAに対する自己抗体を生じる可能性についての懸念のために付加的な規制上の調査に直面している。現在、ヒト用のDNAワクチンは承認されていないが、このアプローチがヒト用の予防ワクチンとしていずれ適切と認められるかどうか明確でない。
【0016】
フラビウイルスワクチン開発のための組換えサブユニットタンパク質の使用は、非複製型ウイルスアプローチのもう一つの例である。このアプローチは明確に定義された産物の生産及び特異的免疫応答を誘導する潜在能力において有利である。関連する強い免疫応答を誘導する潜在能力が存在する一方で、組換えサブユニットタンパク質ワクチンの使用に関連した課題がある。これはタンパク質の品質(天然様構造)及び目的の免疫応答を誘導するうえでのアジュバントの必要性の双方のためである。組換えサブユニットタンパク質ワクチンは、組換えサブユニットB型肝炎ワクチン(例えば、Engerix B(エンジェリックスB)(登録商標)及びRecombivax HB(登録商標))によって、さらにより最近ではヒトパピローマウイルスワクチン(例えば、Gardasil(ガーダシル)(登録商標)及びCervarix(サーバリックス)(登録商標))によって最も効果的に説明される、安全性及び防御効果に関する長い歴史を有する。生産中のどの時期にも複製型ウイルスが存在しないという事実は、予防的な設定で健康な又は免疫不全の個体へのサブユニットワクチンの投与に関連して非常に限られた危険性しかないということを保証するのに役立つ。さらに、B型肝炎ワクチン及びヒトパピローマウイルスワクチンは、高度に免疫原性であり効果的であることが明らかにされてきた。
【0017】
組換えフラビウイルスタンパク質の発現は、構造タンパク質C、prM及びE並びに非構造タンパク質NS1に焦点が当てられてきた。Eタンパク質がウイルス表面に露出し、ウイルスのライフサイクルの重要な生物学的側面(例えば、受容体への結合及び融合の媒介)に関係しており、感染宿主における中和抗体の標的であるために、本タンパク質は最も取り組まれる研究対象であった(Chambers,前掲書;Mason,P.W.,J.Gen Virol(1989)70:2037−2048(非特許文献27))。さらに、精製フラビウイルスEタンパク質に対して作られたモノクローナル抗体がインビトロで中和し、いくつかはインビボで受動感染防御を与えることが明らかにされた(Henchal,E.A.et al.,Am.J.Trop.Med.Hyg.(1985)34:162−169(非特許文献28);Heinz,F.X.et al.,Virology(1983)130:485−501(非特許文献29);Kimura−Kiroda,J.and Yasui,K.,J.Immunol.(1988) 141:3606−3610(非特許文献30);Trirawatanapong,T.et al.,Gene(1922)116:139−150(非特許文献31);Morrey,J.D.et al.,J.Inf.Dis(2006)194:1300−8(非特許文献32))。
【0018】
大腸菌、酵母、及びバキュロウイルス等の種々の発現系が、ワクチンに使用するための組換えフラビウイルスタンパク質の生産のために利用されてきた。これらの試みは、低収量、フラビウイルスタンパク質の不適当なプロセシング、及び中程度ないし低い免疫原性によって悩まれてきた(Eckels,KH and Putnak,R,Adv.Virus Res.(2003)61:395−418(非特許文献33))。組換えEサブユニットタンパク質の発現に関するHawaii Biotech,Inc.(HBI)での研究は、組換えタンパク質が強力な免疫原として役立つためには、Eタンパク質の未変性様構造を維持する必要があることを立証した。未変性様構造を有する組換えEタンパク質を生産する能力は、利用する発現系に高度に依存する。米国特許第6,165,477号(特許文献1)は、酵母細胞でのDENV Eタンパク質サブユニットの発現プロセスを開示している。酵母細胞で発現されたEサブユニットは細菌系にまさる改良された構造であることを証明したが、しかし高グリコシル化(hyper−glycosylation)、収量、及び製品の均一性に関する課題になお直面した。
【0019】
かなり最近の研究で、安定して形質転換された昆虫細胞を使用して切断型のEタンパク質を発現することにより、X線結晶解析法によって決定された未変性様構造を維持する均一な製品が得られることが立証された(Modis,Y.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2003)100:6986−91(非特許文献34);Modis,Y.et al.,Nature(2004)427:313−19(非特許文献35);及びZhang,Y.et al.,Structure(2004)12:1607−18(非特許文献36))。安定して形質転換された昆虫細胞系を使用することが、DENV−1、−2、−3、−4、JEV、TBEV及びWNV由来の切断型組換えEサブユニットタンパク質の発現を成功裏にもたらした。米国特許第6,136,561号(特許文献2)は、安定して形質転換された昆虫細胞でのDENV、JEV、TBEV及びYFV組換えEサブユニットタンパク質の発現プロセスを開示している。米国特許6,432,411号(特許文献3)は、安定して形質転換された昆虫細胞で発現されたフラビウイルスE組換えサブユニットタンパク質の、ISCOM様構造を含むサポニンと併用されたときの候補ワクチンとしての有用性を開示している。安定して形質転換された昆虫細胞株によって生産された、切断型組換えWNVエンベロープサブユニットタンパク質(WN−80E)及び非構造1タンパク質(WN−NS1)の前臨床評価が最近報告された(Lieberman et al.,Vaccine(2008)25:414−423(非特許文献37);Watts et al,Vaccine(2007)25:2913−2918(非特許文献38);Siirin et al.,Am.J.Trop.Med.Hyg.(2008) 79:955−962(非特許文献39))。これらの報告において、サポニンを含むアジュバントとともに製剤化したE及びNS1の組合せが、防御効率を評価するためにマウス及びハムスターモデルで評価されている。これらの特許及び刊行物は、動物モデルにおいて、で適切な抗体応答を発生させるためにサポニンをふくむアジュバントと併用して適切な抗体応答を発生させる場合における、安定して形質転換された昆虫細胞から発現されたフラビウイルス組換えサブユニットタンパク質の有用性を証明している。Lieberman et al.2007(前掲書)及びWatts et al.2007(前掲書)に加えて米国特許6,432,411号(特許文献3)は、また動物モデルでワクチン製剤に組換えNS1を含める利益をも証明している。しかし、これらの特許及び刊行物は、ヒト使用への適用性が証明されたE単独に基づくワクチン製剤を提示も予想もしていない。
【0020】
一般的に不活化ウイルス、組換えサブユニットタンパク質、及びDNA等の非複製型ウイルスワクチンのアプローチ法の利用は、生弱毒ウイルスワクチンのアプローチ法にまさるいくつかの長所を有する。これらの長所は主に、生ウイルスが患者に送達されないことから安全性に関連し、さらに投与量の調整による免疫応答を調節し釣り合いをとる能力に関連する。
【0021】
ヒト用フラビウイルスワクチンの開発において、動物モデルでの前臨床データに基づいてヒト対象における候補ワクチンの安全性及び免疫原性を予想することは困難であった。ヒト臨床試験に進んだ多数の生弱毒ウイルスワクチン候補にとって、このことは骨の折れることであることが判明した。最も目立った大失敗の例は、非ヒトの霊長目では非常に魅力的な安全性プロファイルを示したが、香港のワクチンレシピエントにおいてデング熱を誘発した、クローン化デングウイルス3型の単離株によって示された安全性プロファイルであった(Sanchez et al.,FEMS Immunol.Med.Microbiol.(2006)24:4914−26(非特許文献40))。この課題は、ワクチンの有効性を達成するために複製型ウイルスワクチンと同じレベルのウイルス/宿主の相互作用を要求しない非複製型ウイルスワクチンの使用によって困難さが減少するかもしれない。けれども、前臨床モデルでは良好な安全性及び防御効率を示したが、ヒトで安全かつ効果的なワクチンとして機能し損なった、多数の非複製型ウイルスワクチン候補の例がある(例えば、不活化RSVワクチン;Murphy et al.,J.Clin.Microbiol.(1986)24:197−202(非特許文献41))。このようにフラビウイルス用の安全で効果的なワクチンを開発することに関連して多数の課題があり、開発にはしばしば何年もの試行錯誤が要求される。さらに、動物モデルに基づく前臨床研究は、ワクチンのヒト対象における成績の予測とはできず、それ故に候補ワクチンの有用性の証明においてはヒトでのデータが決定的である。
【0022】
前臨床研究及び開発の種々の段階にあるいくつかの治験のWNVワクチンがあるものの、ヒト臨床試験に進展したと以前に報告されたのは3つのワクチン候補だけである。臨床試験で試験された3つのワクチンは、(1)生弱毒デング血清型4−西ナイルキメラ(Pletnev et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2002)99:3036−41(非特許文献42));(2)生弱毒黄熱−西ナイルキメラ(Chimerivax;Monath et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2006)103:6694(非特許文献43));及び(3)prM及びE遺伝子をコードした「裸の」DNAワクチン(Martin et al.,J.Infect.Dis.(2007)196:1732−40(非特許文献44))である。各々の3つの候補ワクチンに関連する内因性の困難さと潜在的な弱点がある。
【0023】
臨床的に試験された最初の2つのワクチンは、双方とも生弱毒ワクチンである。健康な被験者に与えられる全ての生ウイルスワクチンに関しては、安全性への懸念が最重要事項である。ウイルスの不十分な弱毒化は結果としてウイルス関連の有害事象に帰するかもしれず、他方では過剰な弱毒化はワクチンの有効性を抑制するかもしれない。また、野生型への復帰変異又は高病原性への突然変異(又は有効性の減少)が起きるかもしれない。さらに、適切に弱毒化されたとしても、生ウイルスワクチンは、免疫不全又は免疫抑制患者等の特定の患者個体群及び妊婦又は高齢者等の標準個体群の特定のセグメントにとって禁忌である。Chimerivaxテクノロジーに関する特別な厄事は、高齢者及び免疫不全者における(キメラのバックボーンとして貢献する)YF17Dワクチンの安全性プロファイルである。1990年代末以来、特に高齢者及び免疫不全者の間で、致死性、びまん性、内臓指向性及び向神経性のワクチンウイルス感染のかなりの症例が確認されてきた。このことが、YFウイルス感染の危険性がそれほど高くない限り、これらの個体群におけるYF17Dワクチンの使用に対する勧告へと導いた(Barrett,ADT and Teuwen,DE(2009)Curr.Opin.Immunol.21:308−13(非特許文献45))。高齢対象者でのWNV感染の罹患率と死亡率との間の重要な関連を考慮すれば、この疾病標的への弱毒ワクチンアプローチの適用は、安全の観点からかなり疑問であり、従って最初の2つのワクチン候補は西ナイルワクチンの必要性への安全な解決策を提供していない。
【0024】
臨床試験で試験された三番目の西ナイルワクチンはDNAワクチンである。裸のDNAワクチンは、現時点ではいかなる感染症に対しても有効性が試されておらず、長期にわたるDNAに対する自己免疫反応の誘導による潜在的な免疫病理学の問題は解決されていない。WNV DNAワクチンの臨床試験の結果が最近報告された(Martin et al,J Infect Dis(2007)196;1732(非特許文献46))。低レベルの中和抗体が誘導されたが、しかしながら、おそらく安全性の課題に関連づけられて、このDNAワクチンの臨床開発は中止されたらしい。従って、DNAワクチンは、ヒト用のWNVワクチン開発に対する安全で効果的な解決策を提供しない。
【0025】
上記の通り、WNV感染により引き起こされる疾病からヒトを防御する、安全かつ十分に免疫原性を有するワクチンを生産するための取り組みがなされてきた。これらの取り組みにもかかわらず、これらの条件を完全に満たすヒト用のWNVワクチンはいまだ確立されていない。従って、本発明によって解決すべき技術的課題は、2つの重要な条件、即ち(1)ワクチン接種された個体(ヒト対象)において適切な防御免疫応答を誘導する能力、及び(2)高齢者及び免疫不全者を含む危険状態にある重要な個体群を考慮したヒト被験者における特別な安全性プロファイルを維持する能力、を満たすWNVワクチンを見出すことである。このことはWNVワクチン開発における重要な課題を表しており、現在までこの技術課題の全ての側面に十分に対処するためのワクチンアプローチは示されていない。西ナイルウイルス感染の流行が広まっているために、解決のための満たされていない要望が存在し増大している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】米国特許第6,165,477号
【特許文献2】米国特許第6,136,561号
【特許文献3】米国特許6,432,411号
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】Chambers,T.J.et al.,Annual Rev Microbiol(1990)44:649−688
【非特許文献2】Henchal,E.A.および Putnak,J.R.,Clin Microbiol Rev.(1990)3:376−396
【非特許文献3】Smithburn et al.,Am J Trop Med Hyg(1940)20:471−492
【非特許文献4】NMWR,2008,57(26):720−23
【非特許文献5】MMWR,vol.53Nov.19,2004
【非特許文献6】Comment,Ann Inter. Med.(2004),141:153
【非特許文献7】Klee et al.,Emerg.Inf.Dis.(2004)10:1405−1411
【非特許文献8】Chowers et al.,Emerg.Inf.Dis.(2001)7:675−78
【非特許文献9】Tsai et al.,Lancet(1998)352:767−771
【非特許文献10】Platonov et al.,Emerg.Inf.Dis.(2001)7:128−32
【非特許文献11】Diamond et al.,Immunol.Rev.(2008)225:212−25
【非特許文献12】Markoff Vaccine(2000)18:26−32
【非特許文献13】Ben−Nathan et al.,J.Inf.Disease(2003)188:5−12
【非特許文献14】Kreil et al.,J.Virol.(1998)72:3076−3081
【非特許文献15】Beasley et al.,Vaccine(2004)22:3722−26
【非特許文献16】Eckels,K.H.et al.,Am.J.Trop. Med.Hyg.(1984)33:684−689
【非特許文献17】Bancroft,W.H.et al.,Vaccine(1984)149:1005−1010
【非特許文献18】McKee,K.T.,et al.,Am.J.Trop.Med.Hyg.(1987)36:435−442
【非特許文献19】Am.J.Trop.Med.Hyg.(2003)69:1−60
【非特許文献20】Bray,M.et al.,J.Virol.(1996)70:4162−4166
【非特許文献21】Chen,W.,et al.,J.Virol.(1995)69:5186−5190
【非特許文献22】Bray,M.and Lai,C.−J.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1991)88:10342−10346
【非特許文献23】Lai,C.J.et al.,Clin.Diagn.Virol.(1988)10:173−179
【非特許文献24】Lai,C.J.and Monath T.P.,Adv Virus Res(2003)61:469−509
【非特許文献25】Monath et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2006)103:6694
【非特許文献26】Putnak,R.et al.(2003)Adv.Virus Res.61:445−68
【非特許文献27】Mason,P.W.,J.Gen Virol(1989)70:2037−2048
【非特許文献28】Henchal,E.A.et al.,Am.J.Trop.Med.Hyg.(1985)34:162−169
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【非特許文献37】Lieberman et al.,Vaccine(2008)25:414−423
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【発明の概要】
【0028】
本発明は、WNV感染に関連する疾病から防御するためのユニークなヒト用ワクチンを提供する。本ワクチンは、WNVエンベロープタンパク質由来の組換えサブユニットタンパク質及び水酸化アルミニウムアジュバントの組み合せによって形成される。本ワクチンは適切な防御免疫応答を誘導することができ、ワクチン接種されたヒトボランティアで許容可能な安全性プロファイルを明らかに示している。このユニークなワクチン製剤は、ワクチン製剤HBV−002を生産するためにアルミニウムベースアジュバントと組み合わせた適切に折りたたまれた新規な組換えエンベロープサブユニットタンパク質(「西ナイル80E」又は「WN−80E」)に依存している。本ワクチンは、(1)健康なヒトボランティアにおいてウイルス中和抗体等の適切な防御免疫応答を誘導し、(2)健康な個体及び免疫不全者への投与に関し許容可能な安全性プロファイルを維持している。
【0029】
本発明の他の側面には、WNV感染によって引き起こされる疾病に対する免疫予防としての使用のための許容可能な担体中のワクチンの治療的有効量、並びに許容可能な担体中の医薬組成物としてのワクチンの治療的有効量の使用が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1−1】WN−80E組換えサブユニットタンパク質のアミノ酸配列。アミノ酸番号はタンパク質のアミノ末端から始めて示した。
【図1−2】WN−80E組換えサブユニットタンパク質のアミノ酸配列。アミノ酸番号はタンパク質のアミノ末端から始めて示した。
【図1−3】WN−80E組換えサブユニットタンパク質のアミノ酸配列。アミノ酸番号はタンパク質のアミノ末端から始めて示した。
【図2】精製西ナイル80Eのクマシー染色SDS−PAGEゲル(A)及びウェスタンブロット(B)。全てのサンプルは非還元条件下10%ゲルで泳動した。ウェスタンブロットは、西ナイルウイルスに対し免疫したウサギポリクローナル抗血清を使用して展開した。分子量マーカー(KD)のサイズはゲル及びブロットの左に示す。試料の負荷量(μg)は各レーンの上に示す。
【図3】西ナイルHBV−002ワクチン製剤を接種されたヒトボランティアで誘導されたウイルス中和抗体応答。発明の詳細な説明
【0031】
本明細書に記載された発明は、西ナイルウイルス感染から生じる疾病から防御するヒト用のワクチンを提供する。本ワクチンは、WNV組換えサブユニットエンベロープ糖タンパク質(WN−80E)及びアルミニウムアジュバントを含んでいる。記載したヒト用のワクチン製剤はHBV−002と称する。HBV−002は、ヒトボランティアにおける強いウイルス中和抗体応答を誘導するうえで有効である。さらにHBV−002は、健常人及び危険な状態にあるヒト対象に対し許容可能な安全性プロファイルを有している。
西ナイルウイルスエンベロープタンパク質サブユニット(WN−80E)
【0032】
本発明のWNVワクチンは、ショウジョウバエシュナイダー2(S2)細胞に基づく細胞培養発現系を用いて生産するWN−80E組換えサブユニットタンパク質を利用する。この系を使用すると、結果として未変性様構造を維持する組換えエンベロープサブユニットタンパク質が得られる。WNV組換えエンベロープタンパク質は、未変性エンベロープタンパク質の80%を残し(「80E」)C末端で切断する。従ってWN−80Eは、N末端の最初のアミノ酸から初めてEの連続したアミノ酸の最初のほぼ80%として定義される。C末端の切断は、WNEタンパク質の膜アンカー部分(全長Eタンパク質のカルボキシ末端からほぼ50アミノ酸又は10%、換言すれば、そのN末端のアミノ酸1から始めてWNEタンパク質の連続したアミノ酸の最初の90%に至るまで)を除去するように設計され、従って細胞外の培地に分泌することが可能になり回収を促進する。Eタンパク質の90%超、しかし100%未満はクローン化し分泌することが可能である。すなわちタンパク質は、長さが90%+であり、カルボキシ切断が可能である。そして、切断型Eタンパク質が分泌可能である限り膜貫通ドメイン部分を含むことができる。「分泌可能」とは分泌される、典型的には発現系の形質転換された細胞から分泌される能力を意味する。80E切断により、Eの外部ドメインを膜アンカー部分と連接するWNEタンパク質の「基部」をさらに除去する。基部は注目すべき抗原のエピトープを含有しておらずそれ故に含められない。
【0033】
WNVワクチンの中への導入にとって好ましい抗原はWN−80Eである。ショウジョウバエS2発現系で発現したWN−80E組換えサブユニットタンパク質は、培養液に分泌され、適切にグルコシル化されており、立体構造的に感受性のモノクローナル抗体4G2との反応性によって決定された通り未変性様の立体構造を維持している。本発明で立証された通り、ヒト用の組換えWN−80Eサブユニットタンパク質の適切な製剤は、結果としてヒト対象において強力なウイルス中和抗体を誘導する能力を有する。従って、本発明のWNVワクチン製剤は、ヒト対象における高レベルの安全性及び免疫原性の双方を示す西ナイルワクチンの生産という、重要な技術的問題に対する新規な解決策を提供する。
【0034】
本発明の好ましいワクチン製剤には、ヒト用に適したアジュバントが含まれる。好ましいアジュバントは、アルミニウムベースアジュバントである(例えば、アルハイドロゲル(登録商標))。アルミニウムを含む製剤は添加剤を含んでおり、これにより抗原の75%以上が水酸化アルミニウムに結合しているようにWN−80E抗原がアルハイドロゲルに結合することができる。
【0035】
好ましい一実施態様においてWN−80Eタンパク質は、WNV株NY99のアミノ酸1−401を含んでいる。WN−80Eのアミノ酸配列を図1に示す。WN−80Eタンパク質は、好ましくは80Eタンパク質と共にWNVのprMタンパク質をコードする適切なDNA断片を含有するベクターから生産される。コードされたprMセグメントは、宿主細胞内の細胞酵素によってプロセシングされ、天然のWNVの成熟中に起きるのと類似の態様で成熟WN−80Eタンパク質(図1)を遊離する。S2細胞から発現した精製WN−80E産物を図2に示す。
【0036】
本発明のさらなる一実施態様においてWN−80Eは、Cys1−Cys2、Cys3−Cys8、Cys4−Cys6、Cys5−Cys7、Cys9−Cys10及びCys11−Cys12で6個のジスルフィド架橋を含む西ナイルウイルスエンベロープタンパク質サブユニットとしてより広く定義される。その実施態様においてポリペプチドは、ショウジョウバエ細胞から組換えタンパク質として分泌され、ポリペプチドはヒト対象に投与されたときに西ナイルウイルスに対する中和抗体反応を引き起こした。
【0037】
より好ましい一実施態様において、組換えWNVエンベロープタンパク質サブユニットは、既述のジスルフィドパターン及び天然型WNVエンベロープタンパク質のN末端の最初のアミノ酸から始まりエンベロープタンパク質の相同な80%の部分(80E)の親水性プロファイル特性をさらに含んでいる。換言すれば、組換えサブユニットタンパク質が天然様構造及び適切な免疫原性(ウイルス中和抗体を誘導する能力)を保持することを保証するために、ジスルフィド及び親水性プロファイルが維持される限り、アミノ酸はWN−80Eを含む配列の中で置換することができる。
【0038】
好ましくはWN−80E組換えサブユニットタンパク質はマスターセルバンクを使用して無血清培地中で発現され、既述の通り(Ivy et al.,米国特許第6,432,411号)モノクローナル抗体(例えば4G2)を使用して免疫アフィニティークロマトグラフィーによって精製される。これは結果としてヒト用に適したワクチン製剤に使用可能であるWN−80E製品をもたらす。
【0039】
驚くべきことに、しかも他のフラビウイルス製剤における非構造タンパク質1(NS1)等の非構造タンパク質の導入に関する既述の追加の利益(McDonell et al.,米国特許第6,416,763号)とは対照的に、WN−80Eタンパク質のみを含有する本発明のワクチン製剤は、非ヒト霊長目(Lieberman et al.,Clin.Vaccine Immunol.(2009)16:1332−37)及びヒト対象においてNS1の封入なしで強力な免疫原性のワクチンとして役立つ。アラムベースのアジュバントと共にWN−80Eタンパク質を含有するHBV−002ワクチン製剤を接種されたヒトボランティアにおいて誘導されたウイルス中和抗体応答を図3に示す。
アラム
【0040】
好ましい一実施態様において、本発明のWNVワクチンは、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、又はそれらの混合物等のアルミニウムベースアジュバント(集合的には「アラム」又は「アラムベースアジュバント」)と共に製剤化したWN−80E組換えサブユニットタンパク質を含む。水酸化アルミニウム(「アルハイドロゲル(登録商標)」として市販されている)は、臨床材料の調製に使用されたので、従ってアラムの好ましい形態である。アルミニウムベースアジュバントは、合衆国及び世界でヒト用として登録された最初のアジュバントであり、その効果は世界的に認められている。アルミニウムベースアジュバントは、少なくとも部分的に持効性製剤機序及び天然様構造を有する組換えWN−80E抗原の組合せにより機能すると信じられており、アラムのアジュバント効果は、免疫不全個体群の構成員を含むワクチンを接種された個体で強力な免疫応答を誘導するために十分である。アラムを有する製剤は、抗原の75%以上が水酸化アルミニウムに結合するようにWN−80E抗原がアルハイドロゲル(登録商標)に結合することが可能な混合物から成っている。
【0041】
好ましくは、WN−80E+アルハイドロゲルのWNVワクチン製剤化及び好ましいワクチン製剤(HBV002)によるバイアル充填はcGMP下で行われる。これは、結果としてヒト用に適したWN−80E及びアラムを含むWNVワクチン製剤をもたらす。
投与法及び使用法
【0042】
本発明は、WNV感染に起因する疾病を予防又は減弱するための方法を提供する。本明細書で用いるとき、ワクチンは、もしワクチンの個体への投与が結果として疾病に対する個体の完全免疫又は部分免疫となるか、又は疾病に関連する症状又は健康状態の完全減弱又は部分減弱(即ち、抑制)となるならば、疾病を予防又は減弱すると言われる。
【0043】
組成物は、もしその投与がレシピエント患者によって許容可能ならば「薬学的に許容可能」であると言われる。このような薬剤は、もし投与量が生理学的に意味あるならば「治療的有効量」で投与されたと言われる。もしその存在がレシピエント患者の生理機能に検出可能な変化を生じるならば、薬剤は生理学的に意味がある。本発明においてレシピエント患者での検出可能な変化は、WNVに対する中和抗体の誘導である。
【0044】
本発明の有効なワクチンは、単独で又は利用可能となる限り他の有効なサブユニットを含む有効なワクチン等の他の有効なワクチンと組み合わせて使用することができる。一又は数種類のウイルス又は血清型由来の対応する又は異なるサブユニットを特別な製剤に含有してもよい。本発明の有効なワクチンは、薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含んでもよい。
【0045】
記載の本発明の治療組成物は、非経口的に皮下、筋肉内、又は皮内注射によって投与することができるが、しかし他の全身モードの投与を採用してもよい。本発明の好ましい投与法は筋肉内経路である。
【0046】
多数の投与レジメンが利用される場合には、免疫感作のタイミングに関しては多数の異なる技術が存在する。接種対象によって発現される免疫グロブリンレパートリー発現のレベル及び多様性を増加するためには、本発明の組成物を何回も使用するのが好ましい。典型的には、複数回の免疫感作を施すならば、1ないし2月の間隔で施すことができる。本発明の好ましい免疫感作のスケジュールは、対象を0、1及び2月に免疫感作することである。他の免疫感作スケジュールを利用することもできる。例えば、0、1及び3月、又は0、1及び6月、又は0、1、12月等の代わりの免疫感作スケジュールを使用してもよい。追加のブースターワクチン接種を前述のインターバルで5ないし10年ごと等のように投与してもよい。
【0047】
例えば、WNV起因性疾病に対し対象を免疫するために、組換えサブユニットタンパク質及びアジュバントを含有するワクチン製剤は、通常複数のワクチン投与を含む従来の免疫感作プロトコルで患者に投与される。投与は典型的には注射、典型的には筋肉内注射又は皮下注射によるが、しかし他の全身モードの投与を採用してもよい。
【0048】
記載の本発明によれば治療組成物の「有効量」とは、所期の生物学的効果を達成するために十分な量をいう。一般的に、組成物の有効量を供するために必要な投与量は、患者の年齢、症状、性別、及び(もしあれば)病気の程度及び当業者によって調整することのできる他の変異要素等の要因に依存して変化するものである。本発明の抗原性の調製品は、単回か又は複数回の有効量の投与量によって投与することができる。本発明の組成物の有効量は、1回分の投与量当たり0.01〜100μg、より好ましくは5〜50μg、最も好ましくは15〜50μgで変化することがある。本発明の組成物は薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含んでもよい。
実施例
【0049】
以下の実施例は本発明の基盤を提供する。実施例は、ヒト対象への投与を支援するための組換えWN−80Eタンパク質及びHBV−002ワクチン製剤を大規模かつcGMP下で製造する能力を示している(実施例1−3)。実施例は、健康な成人ボランティアにおけるワクチンの安全性及び免疫原性(有効性)をさらに示している(実施例4)。HBI WNVワクチンの安全性及び有効性は、二つの異なる側面の新規な組合せに依存している。一つの側面において、アルミニウムベースアジュバントと組み合わせた組換えサブユニットタンパク質の固有の安全性は、重篤な疾病に関し特に脆弱で危険な状態にある個体群である、高齢者及び免疫不全者を標的とする疾病の予防のための最適のアプローチを提供する。第二の側面において、立体構造的に適切な(天然様構造)組換えWN−80E抗原のcGMP下での量的に実用に十分な生産は、結果が疾病に対する防御の機構を備えた、ヒト対象においてウイルス中和抗体を誘導するワクチンとなる。これらの側面のユニークな組合せは、結果がヒト対象において安全かつ有効なWNVワクチンという新規な発明となる。これらのワクチン製剤は、非構造タンパク質NS1の封入が有効な変異原性及び予防のために要求されないという予期せぬ発見によってさらに特徴づけられる。さらに開示する西ナイルワクチンは、特に重症となる最も危険な状態の被験者である高齢者及び免疫不全者にとって許容可能な安全性プロファイルを維持する一方で、接種された個体において適切な防御免疫応答を誘導するという技術的課題に対処するための比類ない所に位置している。
【0050】
以下の実施例は説明することを意図しており発明を限定するものではない。
実施例1
ショウジョウバエS2系における西ナイル80Eタンパク質の発現及び精製
発現プラスミドpMttbns(pMttPA由来)は、次のエレメント:キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogasteer)のメタロチオネインプロモーター、ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子分泌リーダー(tPAL)及びSV40初期ポリアデニル化信号を有している。Hawaii Biotechにおいて、現存するユニークなBglIIサイトに加えてユニークなXhoIサイトを含むpMttΔXhoを産生するために、pMttbnsベクターから14塩基対のBamHI断片を切除した。この発現ベクターは、発現タンパク質の培養液への分泌を促進する。これらのユニークなBglII及びXhoIサイトを使用して、西ナイル配列をpMttΔXhoベクターに導入した。カルボキシ切断西ナイルエンベロープタンパク質を発現するために、西ナイルウイルス由来のprMタンパク質全体及びEタンパク質のアミノ酸1−401をコードする合成遺伝子を合成した(Midland Certified Reagens Co.社製,ミッドランド、テキサス州)。合成遺伝子のヌクレオチド配列は、1999年にニューヨーク市で単離された西ナイルウイルスの公表された配列に従っている。Eタンパク質のアミノ酸401でのEタンパク質のC末端切断は、膜貫通ドメインを除去しており、それ故に培地に分泌することができる。最終のprM80Eプラスミド構築物はpMttWNprM80Eと命名した。S2細胞内で発現するとすぐprM配列は、宿主のプロテアーゼによって80E配列から切断される。401のアミノ酸からなるWN−80E組換えサブユニットタンパク質は培養液に分泌される。WN−80Eタンパク質のアミノ酸配列を図1に示す。
【0051】
S2細胞を、pMttWNprM80E発現プラスミド及びハイグロマイシン耐性をコードするpCoHygro選択プラスミドの双方により、(i)リン酸カルシウム共沈殿法、又は(ii)製造元の推奨に従ってセルフェクチン(Invitrogen社製製キット、カールスバド、カリフォルニア州)を利用して、同時形質転換した。発現プラスミド対選択プラスミドの比率20:1の全DNA20μgで細胞を同時形質転換した。形質転換細胞は、300μg/mlのハイグロマイシンB(Roche Molecular Biochemicals社製、インディアナポリス、インディアナ州)により選択した。選択の後に、細胞を無血清培地Excel420(JRH社製、レネックサ、カンサス州)で培養するために馴化した。発現研究のために、細胞をハイグロマイシンを420,300μg/ml含有するExcelで培養し、200μMのCuSOで誘導した。細胞を密度2X10細胞/mlで播種し、6〜7日間培養した。至適条件下で培養6〜7日後に2X10細胞/ml以上の細胞密度を達成した。SDS−PAGE及びウェスタンブロットによって培養液上清の発現タンパク質を調べた。
【0052】
ウェスタンブロットでのWN−80E検出のために、ウサギポリクローナル抗西ナイルウイルス抗体(BioReliance Corp社製.,ロックビル、メリーランド州)又は西ナイルウイルスEタンパク質と交差反応するウサギポリクローナル抗DEN精製不活化ウイルスを使用し、その後、抗ウサギIgG−アルカリホスファターゼ標識二次抗体によって検出した。ブロットは、NBT/BCIP(Sigma Chem.Co.社製)個相アルカリホスファターゼ基質により発色させた。
【0053】
WN−80Eタンパク質の精製は、モノクローナル抗体(MAb)4G2を使用して免疫アフィニティークロマトグラフィー(IAC)によって行った。手短に言えば、手順には発現後培養液の清澄化が含まれる。それから粗製物質をN−ヒドロキシスクシンイミドの化学作用によって共有結合している固定化MAbを含有するIACカラムに負荷する。試料を負荷した後、マトリクスを0.05%(v/v)のツイーン20を含有するpH7.2の10mMリン酸緩衝生理食塩水(PBST、140mM NaCl)により洗浄する。結合したタンパク質をpH2.5の20mMグリシン緩衝液によりIACカラムから溶離する。溶離液を中和しそれから緩衝液をPBSに交換する。精製産物は、それぞれ純度、同一性、含量、及び生物活性を測定するために、クマシー又は銀染色のドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)、ウェスタンブロット、紫外吸収、及びELISA(サンドイッチ法)によって規定通りに分析する。加えて、試料は、N末端アミノ酸配列決定及びアミノ酸分析によって分析した。これらの分析は精製産物の同一性及び含量の裏付けを与えた。
【0054】
精製WN−80Eタンパク質の代表的なSDS−PAGE及びウェスタンブロットプロファイルを図2に示す。試料の分析は非還元条件下で行った。WN−80E分子は、アミノ酸組成から決定したものと一致する相対分子量(即ち、43kD)を有する単一バンドで移動した。
実施例2
臨床試験を支援するためのcGMP下でのWN−80Eの生産
【0055】
pMttprMWN80Eプラスミドにより形質転換したS2細胞から、cGMP条件下でマスターセルバンクを調整した。cGMP製造プロセスには、撹拌タンク型バイオリアクターでのS2MCB細胞株の培養及びその後の分泌タンパク質を含有する培養液の採取が含まれる。デプスフィルターを利用する濾過によって細胞を培養液から分離する。それから、4G2モノクローナル抗体を使用する免疫アフィニティークロマトグラフィーによって、生じた澄明な上清からWN−80Eを精製する。引き続いて免疫アフィニティー精製産物を低pHのウイルス不活性化段階及び20nm粒子除去可能な孔径を有するPVDF膜を使用するウイルス濾過段階に運ぶ。WN−80Eタンパク質の最終加工には、緩衝液交換及び限外濾過による濃縮その後の0.2μmフィルテーによる濾過が含まれる。
【0056】
cGMP下でのWN−80Eの代表的なロットの製造は下記の通り行った。MCBのバイアルを解凍し、10mL容のEX−CELL培地中26℃で5日間培養した。各培養液を使い捨ての振盪フラスコへ拡大した。培養液は、1.5X10/mLの細胞密度に達するまで増殖した。フラスコをプールし、使い捨ての振盪フラスコ中のより大規模な培養液に接種するために使用し、当該培養液は2x10細胞/mLの密度に達するまで増殖した。当該培養液は、使い捨て振盪フラスコの多数の培養液に拡大した。これらの培養液は、平均1.6X10細胞/mLの細胞密度に達するまで増殖した。フラスコの細胞はプールし、20Lのステンレス製バイオリアクターを接種するために使用した。当該培養液は、1.2X10細胞/mLの細胞密度に達するまで増殖した。20Lバイオリアクターの適量の細胞を、2X10細胞/mLの初期細胞密度を達成するように、100Lのステンレス製バイオリアクターに移植した。4.0X10細胞/mLの細胞密度に達するまで当該培養液を増殖した。それから終濃度が0.2mMとなるように培養液へ硫酸銅を添加することによって培養液を誘導した。その後培養液を5日間増殖した。0.2μmのフィルターカートリッジを備えた0.45μmのフィルターカートリッジを使用するデプス(深層)濾過によって100Lの培養液を採取した。濾液を10L容の一回使用製品(シングルユースバッグ)に採取し−20℃で保管した。
【0057】
WN−80E採取物原体を解凍し、5μm孔径のフィルターを通す物質通過によって微粒子を除去した。濾過した採取物原体を直接4G2−セファロースカラムに負荷した。負荷後、カラムを0.05%ツイーン20を含有するpH7.1の11mM PBS(PBST)により洗浄し、それから保持されたWN−80Eをグリシン緩衝液によりpHを低下することによって溶離した。サブバッチはプールし、その後ウイルスの不活性化のためにpHを最終pH3.8に低下し、物質を雰囲気温度(15〜25℃)で16〜24時間インキュベートすることによって処理し、その後pHを7.0±0.5に調整した。物質はわずかな微粒子を除去するために0.2μmのプレフィルターを通し、それから20nm孔径の膜を使用して濾過した。物質はそれから濃縮し、限外濾過によって緩衝液を交換し、最終の濾過滅菌は0.2μmのフィルター通過によって直接殺菌済みバッグに行った。精製WN−80E生体物質は、HBV−002ワクチンへの製剤化用に開放するに先立って広範にわたる安全性、同一性、強度、及び純度の影響評価を受けた。
実施例3
臨床試験用HBV−002ワクチンの製剤化
【0058】
実施例2記載の精製WN−80E生体物質を解凍し、クラス100の層流域に移した。WN−80Eを殺菌容器に加え、標的タンパク質の終濃度が0.20mg/mLとなるようにダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)をその中に添加した。希釈したWN−80E溶液を濾過滅菌した。DPBSを含有する殺菌容器に、14.0mg/mLのアルハイドロゲルの最終濃度が14.0mg/mLとなるまで、アルハイドロゲル‘85を容量的に添加した。それからWN−80Eタンパク質溶液をアルハイドロゲル懸濁液に定量的に移し、2−8℃で一晩ゆっくりと撹拌した。
【0059】
一晩吸着後、吸着されなかったWN−80Eタンパク質含量を測定した。充分なHBV−002ワクチンを得るためには、最低限75%の吸着が必要であった。HBV−002ワクチンは準備した殺菌バイアルに分注した。充填されたバイアルは栓をし、密封し、圧着した。HBV−002を充填したバイアルは、2から8℃に保管した。臨床試験におけるHBV−002ワクチンの使用に先立って、広範な安全性、強度、同一性、有効性、及び純度の試験を実施した。
実施例4
HBV−002西ナイル組換えサブユニットワクチンの臨床試験
【0060】
実施例3に記載した通り、cGMP下で製造したHBV−002ワクチンを治験で試験した。健康な成人ボランティアにおけるHBV−002生体産物の比盲検の第I相の臨床試験により、同量のアルハイドロゲル‘85アジュバントを含むワクチンの活性原料(WN−80E)の異なる三段階の服用レベル、又はアルハイドロゲル‘85を含まないWN−80Eの最高服用レベルを評価した。被験者は、試験ワクチンの単回の筋肉内注射を0、4、及び8週目に受けた。試験計画を下記の表1に要約する。
【0061】

【0062】
安全性及び耐用性は、試験の間ずっと、特定の身体的検査、規定の実験室試験(血液学、臨床化学及び尿分析)及び治験ボランティアの生命徴候(バイタルサイン)及び有害事象の記録によって評価した。加えて被験者は、各接種後14+/−2日間、特別な有害事象と同様に反応原性及び耐用性データを記録するために日誌カードを使用した。本試験の有効性評価には、1:10以上のPRNT50(プラーク減少中和試験)分析によって定量される通り、ウイルス中和抗体価(即ち、免疫原性)の割合及び範囲の定量を含んでいた。
【0063】
臨床安全性評価は、投与期間の間を通して重篤な有害事象が現れずワクチンが耐容性を示すことを明らかにした。注意すべき主な副作用は、一般的に短期間(1〜3日)である軽い注射部位反応(例えば、疼痛、腫脹)であった。ワクチンに関連する全身性の有害事象は殆ど存在せず、ワクチンに関連する当該事象(例えば、頭痛)はあっても本質的に軽度であり極めて短期間(数時間)のものであった。このことはHBV−002ワクチンが極めて許容可能な安全性プロファイルを有し、高齢者及び免疫不全者等の脆弱で危険な状態にある個体群のために適切であろうことを証明している。
【0064】
有効性評価(ウイルス中和抗体測定)は、アルハイドロゲル‘85を含有するHBV−002ワクチン製剤を受けた全ての対象(100%)が、投与量に関わらず、ポスト投与3の2週間目の試験で10倍以上ウイルス中和抗体価を発達させることを明らかにした。投与量15又は50μgのワクチンを受けた多くの被験者は、ポスト投与2によってウイルス中和抗体価を発達させた。HBV−002ワクチンによって誘導されるウイルス中和抗体応答を図3で説明する。
【0065】
このことは、この特別安全なワクチンが特別効果的でもあり、しかも、高齢者及び免疫不全者にとって許容可能な安全性プロファイルを維持する一方で、ワクチンを接種された個体において適切な防御免疫応答を誘導するうえでの技術的問題を克服することを証明している。さらに、この適切な防御免疫応答は、強力な防御作用のためにNS1が要求されるとの予測(McDonell et al.,米国特許第6,416,763号)にも関わらず、製剤中へのNS1封入なしでワクチン接種された個体において誘導された。
参考文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
精製組換え西ナイルウイルスエンベロープ(「E」)タンパク質の有効量、ここで当該Eタンパク質はそのN末端のアミノ酸残基1から始まる野生型Eの長さの約80%を構成し(WN−80E)、その結果前記Eタンパク質は、宿主細胞において組換えで発現するとき増殖培地中に分泌可能となる;及びアルミニウムベースアジュバントの有効量を含むワクチンであって、ここでヒト対象において中和抗体の生産を誘導する当該ワクチン。
【請求項2】
Eタンパク質が昆虫宿主細胞において組換えで生産及び発現される請求項1記載のワクチン。
【請求項3】
Eタンパク質がキイロショウジョウバエシュナイダー2(S2)(Drosophila melanogaster Schneider2)宿主細胞において組換えで生産及び発現される請求項1記載のワクチン。
【請求項4】
薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含む請求項1、2又は3記載のワクチン。
【請求項5】
免疫不全個体群における使用のための請求項1、2又は3記載のワクチン。
【請求項6】
請求項1、2又は3記載のワクチンの治療的有効量を治療的に許容可能な方法で投与することを含む人間における防御免疫応答を高める方法。
【請求項7】
請求項1、2及び3記載のワクチンの有効量を投与しそれによって西ナイル病からの防御を提供することを含む西ナイルウイルス誘発疾病に対するヒト免疫防御を提供する方法。
【請求項8】
免疫不全の個体群における使用のための請求項4記載のワクチン。
【請求項9】
請求項4記載のワクチンの治療的有効量を治療的に許容可能な方法で投与することを含む人間における防御免疫応答を高める方法。
【請求項10】
請求項4記載のワクチンの有効量を投与しそれによって西ナイル病からの防御を提供することを含む西ナイルウイルス誘発疾病に対するヒト免疫防御を提供する方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−528791(P2012−528791A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513062(P2012−513062)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/001608
【国際公開番号】WO2010/141084
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(390023526)メルク・シャープ・エンド・ドーム・コーポレイション (924)
【Fターム(参考)】