説明

ヒトIgλ軽鎖遺伝子を保有するトランスジェニック動物

【課題】より完璧なIg V遺伝子生殖系列配列を安定的に含む(特に生殖系列Vλ配列
を有する)トランスジェニック動物を提供すること。
【解決手段】本発明は、1つ以上のヒトλ軽鎖遺伝子座を有するトランスジェニック動物
に関する。
本発明はまた、ヒトλ軽鎖遺伝子座を含んでいるトランスジェニック動物を作製する方法
および組成物に関する。本発明はさらに、使用する方法およびヒトλ軽鎖遺伝子座を含ん
でいるトランスジェニック動物に由来する組成物に関する。ヒトλ遺伝子座は、ヒトλ軽
鎖可変領域遺伝子を、60%以上、好ましくは70%または80%以上、より好ましくは
90%または95%以上、そしてさらにより好ましくは100%または約100%含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むように設計される、トランスジェニッ
ク非ヒト動物に関する。特に、本発明に従う動物は、複数の可変V遺伝子領域およびV
λ遺伝子領域を含み、かつVκ遺伝子領域を含み得る、ヒトIg遺伝子座を保有する。都
合のいいことに、複数の可変領域遺伝子の含有は、その動物によって産生されるヒト抗体
の多様性を増大させる。さらに、このような領域の含有は、動物のB細胞発達を高め、そ
して再構築する。これにより、この動物は、ヒトIgλ軽鎖を含む高親和性抗体を分泌す
る、豊富な成熟B細胞を保有する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
メガ塩基の大きさのヒト遺伝子座をYACにクローン化して再構築し、そしてこれをマ
ウス生殖系列に導入し得ることは、非常に大型かまたは大まかにマッピングされた遺伝子
座の機能的な構成部分を明らかにするため、およびヒト疾患の有用なモデルを産生するた
めの、強力なアプローチを提供する。さらに、このような技術(マウス遺伝視座とヒトの
対応するヒト遺伝子座との置換)の利用は、発生の間のヒト遺伝子産物の発現および制御
、他の系との連絡、ならびに疾患誘発および進行におけるその関係において、独特の洞察
を提供し得る。
【0003】
このような戦略の一適用は、マウス体液性免疫系の「ヒト化(humanizatio
n)」である。ヒト免疫グロブリン(Ig)遺伝子座の、内因性Ig遺伝子が不活性化さ
れているマウスへの導入は、抗体のプログラムされた発現および抗体のアセンブリの基礎
を成すメカニズム、およびB細胞発達におけるその役割を研究する機会を提供する。
【0004】
さらに、マウス体液性免疫系をヒト化する戦略は、完全なヒト抗体産生の理想的な供給
源を提供する。特にモノクローナル抗体(Mab)は、ヒト疾患における抗体治療の期待
の実現に向けた重要な指標(マイルストーン)である。完全なヒト抗体は、非ヒト(例え
ば、げっ歯類)または非ヒト由来Mabに特有の免疫原応答およびアレルギー応答を、最
小化することが期待され、そして従って、投与される抗体の効能および安全性を上昇させ
る。完全なヒト抗体の使用は、くり返しの抗体投与を必要とする慢性および再発のヒト疾
患(炎症、自己免疫、および癌など)の処置において大きな進歩を提供することが期待さ
れ得る。
【0005】
非ヒトトランスジェニック動物をヒト化し、完全ヒトモノクローナル抗体を産生する戦
略は、有害な免疫原効果を減少させるために改変された完全ヒト抗体(すなわち、ヒト抗
体)を得る他の方法で、遭遇する問題を避けるためにもまた、重要である。有用であるが
、ヒト化技術は、多くの不利な点(労力を必要とするプロトコルおよび特異性の変化の可
能性、および/または可変領域の起源エピトープへの親和性、および可変領域への残留非
ヒト配列の夾雑(宿主の拒絶を生じ得る)などが挙げられる)を有する。効能のあるヒト
モノクローナル抗体の、インビトロでの作製もまた、困難であることが証明されている。
さらに、インビトロで作製されるヒトモノクローナル抗体のほとんどは、時折免疫複合体
形成を伴い、炎症を増強するIgMである。
【0006】
非ヒトトランスジェニック動物において完全なヒト抗体を作製する目標に向かう1つの
適切なアプローチは、ヒトIg遺伝子座の挿入された大型のフラグメントからヒト抗体を
産生する、内因性抗体産生の欠損した系統を、設計することである。大型のフラグメント
は、大きな可変遺伝子多様性、ならびに抗体産生および抗体発現の適切な制御のために必
要な配列を保存するという利点を有する。抗体の多様化および選択の宿主機構、ならびに
ヒトタンパク質に対する免疫学的寛容の欠落を利用することにより、これらの操作された
細胞株において再産生されるヒト抗体のレパートリーは、任意の目的の抗原(ヒト抗原を
含む)に対する高親和性抗体を含む。従って、望ましい特異性を有する抗原特異的ヒトM
abは、容易に産生され、そして例えばハイブリドーマ技術を使用して、選択される。
【0007】
この遺伝的戦略の成功は、XenoMouse(登録商標)系統の産生と関連して、証
明された。例えば、Greenら Nature Genetics 7:13−21(
1994)を参照のこと。XenoMouse(登録商標)系統は、酵母人工染色体(Y
AC)(同上)においてコア可変領域および定常領域を含む、ヒト重鎖遺伝子座およびヒ
トκ軽鎖遺伝子座の、それぞれ245kbおよび190kbの大きさの生殖系列構造フラ
グメントを用いて、設計された。ヒトIg含有YACは、抗体の再編成および抗体の発現
の両方について、マウス系と両立し得ることが証明された。さらに、ヒト遺伝子座は、不
活性化されたマウスIg遺伝子と置換され、B細胞の発達を支える能力および完全なヒト
抗体の成体様ヒトレパートリーを産生させる能力により、証明された。
【0008】
このアプローチは、米国特許第5,939,598号、同第6,114,598号、同
第6,075,181号、同第6,162,963号および同第6,150,584号;
および国際特許出願WO96/22380号および同WO98/24893号において、
さらに議論され、かつ、描写される。欧州特許EP0463151B1、ならびに国際特
許出願WO94/02602号、WO96/34096号、およびWO96/33735
号もまた、参照のこと。上記の特許および特許出願のそれぞれの開示は、本明細書により
その全体が参考として援用される。
【0009】
完全なヒト抗体を作製するための代替のアプローチは、Ig「小遺伝子座(minil
ocus)」を、利用する。小遺伝子座アプローチにおいて、外因性Ig遺伝子座は、そ
の外因性遺伝子由来の部分(個々の遺伝子)の含有を通じて、模倣される。従って、1つ
以上のV遺伝子、1つ以上のD遺伝子、1つ以上のJ遺伝子、μ定常領域、および
第二の定常領域(好ましくはγ定常領域)が、動物に挿入するための、目的の構築物に形
成される。このアプローチは、以下において記載される:特許文献1(Suraniら)
、米国特許第5,545,806号および同第5,625,825号(両方ともLonb
ergおよびKay,ならびにGenPharm Internationalの米国特
許出願第07/574,748号(1990年8月29日出願);同第07/575,9
62号(1990年8月31日出願);同第07/810,279号(1991年12月
17日出願);同第07/853,408号(1992年3月18日出願);同第07/
904,068号(1992年6月23日出願);同第07/990,860号(199
2年12月16日出願);同第08/053,131号(1993年4月26日出願);
同第08/096,762号(1993年7月22日出願);同第08/155,301
号(1993年11月18日出願);同第08/161,739号(1993年12月3
日出願);同第08/165,699号(1993年12月10日出願);および同第0
8/209,741号(1994年3月9日出願);これらの開示は、本明細書により参
考として援用される。以下もまた、参照のこと:国際特許出願WO94/25585号、
同第WO93/12227号、同第WO92/22645号、および同第WO92/03
918号、これらの開示は、その全体が、本明細書により参考として援用される。さらに
以下もまた、参照のこと:Taylorら(1992)、Chenら(1993)、Tu
aillonら(1993)、Choiら(1993)、Lonbergら(1994)
、Taylorら(1994)、およびTuaillonら(1995)、これらの開示
は、その全体が、本明細書により参考として援用される。
【0010】
小遺伝子座アプローチの利点は、Ig遺伝子座の部分を含む構築物が産生され得、そし
て動物に導入され得る迅速さである。しかし、小遺伝子座アプローチの大きな欠点は、理
論的には、少数のV領域遺伝子、D領域遺伝子およびJ領域遺伝子だけの含有を通して、
不十分な多様性が導入されることである。確かに、公表された報告(米国特許第6,30
0,129号を含む)は、小遺伝子座アプローチによって産生された動物における、B細
胞の発達および抗体産生について記載する(小遺伝子座アプローチは阻止されたようであ
る)。
【0011】
従って、実質的に完全なヒト抗体レパートリーを有するトランスジェニック動物を得る
ために以前産生されたトランスジェニック動物より、完全なIg遺伝子座を含む、非ヒト
トランスジェニック動物の産生の必要が存在する。他のIg遺伝子座のトランスジェニッ
ク非ヒト動物への導入は、より広い抗体の多様性を許容し得、この動物のより完璧な免疫
レパートリーを再構築するのに適している。従って、より完璧なIg V遺伝子生殖系列
配列を安定的に含む(特に生殖系列Vλ配列を有する)トランスジェニック動物を提供す
ることが、望ましい。さらに、このような内因性Igのノックアウトバックグラウンドに
対する遺伝子座を提供することが、望ましい。このようなレパートリーを産生し得る動物
は、ハイブリドーマなどの不死化細胞を作製するために使用され得、この不死化細胞は、
診断および治療の両目的のための、完全なヒトモノクローナル抗体を作製する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,545,807号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、実質的に完全なヒト免疫グロブリン(Ig)λ遺伝子座を保有する、非ヒト
トランスジェニック動物を提供する。ヒトλ遺伝子座は、ヒトλ軽鎖可変領域遺伝子を、
60%以上、好ましくは70%または80%以上、より好ましくは90%または95%以
上、そしてさらにより好ましくは100%または約100%含む。このようなパーセンテ
ージは、好ましくは、機能的可変領域遺伝子のパーセンテージをいい、好ましい実施形態
において、動物は哺乳動物である。
【0014】
別の実施形態において、トランスジェニック動物は、さらにヒトIg重鎖遺伝子座また
はヒトκ軽鎖遺伝子座を含む。好ましくは、この重鎖遺伝子座は、ヒト重鎖可変領域を、
約20%以上、より好ましくは約40%以上、より好ましくは約50%以上、そしてさら
により好ましくは約60%以上、含む。より好ましくは、この重鎖遺伝子座は、ヒト重鎖
可変領域を、約70%、80%、90%、もしくは95%以上含むか、または、ヒト重鎖
可変領域を、100%もしくは実質的に100%含む。ヒトκ軽鎖に関しては、この遺伝
子座は、好ましくはヒトκ軽鎖可変領域遺伝子を、約20%以上、より好ましくは約40
%以上、より好ましくは約50%以上、そしてさらにより好ましくは約60%以上、含む
。より好ましくは、このヒトκ軽鎖遺伝子座は、ヒトκ軽鎖可変領域を、約70%、80
%、90%、もしくは95%以上含むか、または、ヒトヒトκ軽鎖可変領域を、100%
もしくは実質的に100%含む。
【0015】
さらに、このような動物は、好ましくは、D領域全体、J領域全体、およびヒトμ
定常領域、を含み、そしてさらに追加のアイソタイプの産生のための他のヒト定常領域を
コードする遺伝子を、備えられ得る。このようなアイソタイプは、γ、γ、γ、γ
、αをコードする遺伝子、およびεコード遺伝子を、含み得る。追加の定常領域は、同
じトランスジーン(すなわち、ヒトμ定常領域から下流)上に含まれ得るか、あるいは、
このような他の定常領域は、別の染色体上に含まれ得る。このような他の定常領域は、同
じ染色体上に(トランスジーンをコードするヒトμ定常領域を含む染色体として)含まれ
る場合、他のアイソタイプへのシス−交換が達成され得ることが、理解される。一方、こ
のような他の定常領域が、トランスジーンをコードするμ定常領域を含む染色体と異なっ
た染色体上に含まれる場合、他のアイソタイプへのトランス−交換が達成され得る。この
ような編成は、広範に列挙された抗原に対する抗体の産生のための、非ヒトトランスジェ
ニック動物の設計および構築において、非常な融通性を許容する。
【0016】
特定の実施形態において、非ヒトトランスジェニック動物は、機能的な内因性免疫グロ
ブリンを、付加的に産生しない。これは、当該分野に公知である方法または本明細書中に
記載される方法を使用して、内因性重鎖遺伝子座、ならびにλおよびκの内因性軽鎖遺伝
子座を不活性化(例えば、ノックアウト)することにより、達成され得る。例えば、内因
性遺伝子は、領域を置き換えるかまたは欠失する相同組換えベクターの利用を通して、不
活性化され得る。このような技術は、以下において詳細に記載される:米国特許第5,9
39,598号、同第6,114,598号、同第6,075,181号、同第6,16
2,963号、および同第6,150,584号、WO98/24893号、ならびにG
reenら Nature Genetics 7:13−21(1994)などの出版
物。好ましい実施形態において、トランスジェニック動物はマウスである(XenoMo
use(登録商標)系統のマウスを含む)。
【0017】
別の実施形態において、非ヒトトランスジェニック動物は、実質的に不活性な内因性重
鎖遺伝子座および内因性κ軽鎖遺伝子座を含むが、活性な内因性λ軽鎖遺伝子座を含む。
出願人は、トランスジェニックマウスにおけるλ軽鎖の内因性の発現は、充分に低く、ヒ
トλ軽鎖を含む抗体の産生を妨げないことを見出している。
【0018】
好ましい実施形態において、トランスジェニック非ヒト哺乳類は、改変されたゲノムを
有し、ここで、このゲノム改変は、少なくとも1つの不活性化内因性免疫グロブリン遺伝
子座を含み、これにより、この哺乳類は、正常なB細胞の発達を示さない。この活性化内
因性免疫グロブリン遺伝子座は、以下:実質的な生殖系列構造に挿入されたヒトλ軽鎖I
g遺伝子座であり、ヒトλ定常領域、複数のJλ遺伝子および複数のVλ遺伝子を含む、
ヒトλ軽鎖Ig遺伝子座;実質的な生殖系列構造に挿入されたヒト重鎖Ig遺伝子座であ
り、ヒトμ定常領域ならびにその制御配列および交換配列、複数のヒトJ遺伝子、複数
のヒトD遺伝子、ならびに複数のヒトV遺伝子を含む、ヒト重鎖Ig遺伝子座;なら
びに、実質的な生殖系列構造に挿入されたヒトκ軽鎖Ig遺伝子座であり、ヒトκ定常領
域、複数のJκ遺伝子および複数のVκ遺伝子を含む、ヒトκ軽鎖Ig遺伝子座、であり
、ここで、挿入されたVλ遺伝子、V遺伝子、Vκ遺伝子の数は、哺乳類における正常
なB細胞の発達を実質的に回復させるために、充分である。
【0019】
好ましい実施形態において、重鎖Ig遺伝子座は、ヒトの全てのサブタイプ(γ、α、
δ、およびε)からなる群から選択される、第二の定常領域を含む。存在する場合、V
遺伝子の数は、好ましくは約20より大きい。別の好ましい実施形態において、Vκ遺伝
子の数は、約15より大きい。好ましい実施形態において、D遺伝子の数は、約20よ
り大きく、J遺伝子の数は、約4より大きく、V遺伝子の数は、約20より大きく、
Jκ遺伝子の数は、約4より大きく、Vκ遺伝子の数は、約15より大きく、そしてVλ
遺伝子の数は、約15より大きく、より好ましくは約20または約25より大きく、そし
てさらにより好ましくは約30より大きい。別の実施形態において、機能的なJλ−Cλ
対の数は、4である。
【0020】
別の好ましい実施形態において、トランスジェニック動物の集団において、Ig遺伝子
座が、異なった機能的抗体配列の組み合わせを約1×10以上コードし得るように、D
遺伝子の数、J遺伝子の数、V遺伝子の数、Jκ遺伝子の数、Vκ遺伝子の数、J
λ遺伝子の数およびVλ遺伝子の数は、選択される。好ましい実施形態において、集団に
おけるB細胞の発達は、野生型と比較して平均で約50%以上、より好ましくは約60%
、70%、80%、90%、または95%が、再構築される。
【0021】
別の局面に従い、本発明は、トランスジェニック非ヒト哺乳類を提供し、ここで、この
哺乳類は、ヒト免疫グロブリン分子を産生し得るが、機能的な内因性免疫グロブリン分子
を実質的に産生し得ないように改変されたゲノムを有し、ここで、この哺乳類のゲノムは
、少なくとも約1×10の異なった機能的なヒト免疫グロブリン配列の組み合わせの抗
体のレパートリーをコードする、充分な、ヒトVλ遺伝子、Jλ−Cλ遺伝子対、V
伝子、D遺伝子、J遺伝子、Vκ遺伝子、およびJκ遺伝子を、含む。好ましい実施
形態において、ヒトVλ遺伝子、ヒトV遺伝子およびヒトVκ遺伝子の数は、哺乳類に
おける正常なB細胞の発達を、実質的に回復させるのに、充分である。好ましい実施形態
において、哺乳類の集団におけるB細胞の発達は、野生型と比較して平均で約50%以上
、より好ましくは約60%、70%、80%、90%、または95%が、再構築される。
【0022】
別の局面において、本発明は、不活性化された内因性重鎖免疫グロブリン遺伝子座(挿
入されたヒト重鎖Ig遺伝子座であって、実質的に全てのヒト重鎖遺伝子座を含むか、ま
たは実質的にヒト重鎖遺伝子座の核酸配列に対応する核酸配列を含む、遺伝子座;挿入さ
れたヒトκ軽鎖Ig遺伝子座であって、実質的に全てのκ軽鎖遺伝子座を含むか、または
実質的にκ軽鎖遺伝子座の核酸配列に対応する核酸配列を含む、遺伝子座;および挿入さ
れたヒトλ軽鎖Ig遺伝子座であって、実質的に全てのλ軽鎖遺伝子座を含むか、または
実質的にyLの核酸配列に対応する核酸配列を含む、遺伝子座)を含む改変されたゲノム
を有するトランスジェニック非ヒト哺乳類を提供する。さらなる局面において、トランス
ジェニック非ヒト哺乳類は、不活性化された内因性κ軽鎖Ig遺伝子座および/または不
活性化された内因性λ軽鎖Ig遺伝子座を、さらに含む。
【0023】
本発明は、さらに、不活性化された内因性重鎖免疫グロブリン遺伝子座(挿入されたヒ
ト重鎖Ig遺伝子座であって、実質的に全てのヒト重鎖遺伝子座に対応する核酸配列を含
むが、ヒトγ定常領域を欠いている、遺伝子座;挿入されたヒトκ軽鎖Ig遺伝子座で
あって、実質的にκ軽鎖遺伝子座の核酸配列に対応する核酸配列を含む、遺伝子座;およ
び挿入されたヒトλ軽鎖Ig遺伝子座であって、実質的に全てのヒトλ軽鎖遺伝子座を含
むか、または実質的にλ軽鎖遺伝子座の核酸配列に対応する核酸配列を含む、遺伝子座)
を含む改変されたゲノムを有するトランスジェニック非ヒト哺乳類を提供する。さらなる
局面において、トランスジェニック非ヒト哺乳類は、不活性化された内因性κ軽鎖Ig遺
伝子座および/または不活性化された内因性λ軽鎖Ig遺伝子座を、さらに含み得る。
【0024】
別の局面において、本発明は、改変されたゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動
物を産生する方法を、提供する。ここで、この方法は、ヒトλ軽鎖Ig遺伝子座またはそ
の一部分を細胞に導入する工程、必要に応じてヒト重鎖Ig遺伝子座および/またはヒト
κ軽鎖Ig遺伝子座を細胞に導入する工程、ならびにこの細胞を操作し、トランスジェニ
ック非ヒト動物を産生する工程を、包含する。好ましい実施形態において、免疫グロブリ
ン遺伝子座は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含む酵母人工染色体(YAC)を使用して
、導入される。本発明はまた、トランスジェニックマウスおよびこの方法を通じて生成さ
れる、そのマウス由来のトランスジェニック子孫も、提供する。
【0025】
別の局面に従い、本発明は、改変されたゲノムを有するトランスジェニック動物を提供
し、このゲノムは、挿入されたヒト重鎖Igトランスジーン、挿入されたヒトλ軽鎖Ig
トランスジーンおよび挿入されたヒトκ軽鎖Igトランスジーンを含み、ここで、このト
ランスジーンは、ヒト様連結の多様化を可能にするヒト可変遺伝子の選択された組を含み
、そしてヒト様相補性決定領域3(CDR3)の長さを有する。好ましい実施形態におい
て、ヒト様連結多様重鎖は、平均7.7塩基のN付加長を含む。別の好ましい実施形態に
おいて、ヒト様重鎖CDR3の長さは、約2残基から約25残基の間(平均約14残基)
を有する。
【0026】
本発明はまた、不死化細胞株およびそれにより産生されるヒト抗体を作製する方法を提
供し、この方法は、本発明の非ヒトトランスジェニック動物を抗原で免疫する工程;リン
パ球を回収しそして不死化し、不死化細胞集団を得る方法;10−1より高い親和性
で抗原に特異的に結合する、ヒト抗体を分泌する特定の細胞集団を同定しそして単離する
工程;およびこの細胞集団から抗体を単離する工程を、包含する。
【0027】
本発明はまた、本発明の非ヒトトランスジェニック動物由来のヒトλ軽鎖分子を含むポ
リクローナル抗体も、提供する。好ましい実施形態において、このポリクローナル抗体は
、ヒト重鎖を、さらに含む。
【0028】
本発明はまた、全長ヒトλ軽鎖Ig遺伝子座を含む核酸分子も、提供する。本発明はま
た、本発明のトランスジェニック動物またはトランスジェニック細胞により産生される抗
体由来のヒトλ軽鎖をコードする核酸分子も、提供する。
【0029】
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
V領域遺伝子、J領域遺伝子、および定常領域遺伝子を含む、実質的に完全なヒトλ軽鎖
遺伝子座を含むトランスジェニック動物。
(項目2)
ヒトλ軽鎖遺伝子座の一部分を含むトランスジェニック動物であって、該一部分が、該遺
伝子座の少なくとも500kbを含む、トランスジェニック動物。
(項目3)
前記動物が実質的に不活性化された内因性免疫グロブリン重鎖遺伝子座についてヘテロ接
合またはホモ接合である、項目1または2に記載のトランスジェニック動物。
(項目4)
前記動物が実質的に不活性化された内因性免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座についてヘテロ
接合またはホモ接合である、項目1または2に記載のトランスジェニック動物。
(項目5)
前記動物が実質的に不活性化された内因性免疫グロブリンλ軽鎖遺伝子座についてヘテロ
接合またはホモ接合である、項目1または2に記載のトランスジェニック動物。
(項目6)
前記動物がさらにヒト免疫グロブリン重鎖遺伝子座を含み、該遺伝子座がV領域遺伝子、
D領域遺伝子、J領域遺伝子、および定常領域遺伝子またはそれらの一部分を含む、請求
項1〜5のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物。
(項目7)
前記動物がさらにヒト免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座を含み、該遺伝子座がV領域遺伝子
、J領域遺伝子、および定常領域遺伝子またはそれらの一部分を含む、項目1〜6のいず
れか1項に記載のトランスジェニック動物。
(項目8)
前記ヒトλ軽鎖遺伝子座が前記トランスジェニック動物によって発現され得る、項目1〜
7のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物。
(項目9)
前記トランスジェニック動物が、マウス、ラット、イヌ、サル、ヤギ、ブタ、ウシ、ハム
スター、ウサギ、ウマ、ヒツジ、モルモット、または鳥である、項目1〜8のいずれか1
項に記載のトランスジェニック動物。
(項目10)
前記トランスジェニック動物がマウスである、項目1〜9のいずれか1項に記載のトラン
スジェニック動物。
(項目11)
前記トランスジェニック動物が、前記ヒトλ軽鎖遺伝子座をVJ組換えのために標的化す
る、項目1〜10のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物。
(項目12)
前記ヒト免疫グロブリン重鎖遺伝子座が前記トランスジェニック動物によって発現され得
る、項目6に記載のトランスジェニック動物。
(項目13)
前記ヒトκ遺伝子座が前記トランスジェニック動物によって発現され得る、項目7に記載
のトランスジェニック動物。
(項目14)
前記ヒトλ遺伝子座が発現に効果的である、項目1〜13のいずれか1項に記載のトラン
スジェニック動物。
(項目15)
前記実質的に不活性化された内因性遺伝子座が、遺伝子損傷導入の結果である、項目3〜
5のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物。
(項目16)
前記遺伝子損傷が前記内因性遺伝子座のJ領域内である、項目15に記載のトランスジェ
ニック動物。
(項目17)
前記内因性軽鎖遺伝子座の前記実質的不活性化が、遺伝子損傷を該内因性軽鎖遺伝子座の
定常領域内に含む、項目4〜5のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物。
(項目18)
前記ヒトλ軽鎖遺伝子座が600kbと0.9Mbとの間である、項目2に記載のトラン
スジェニック動物。
(項目19)
前記ヒトλ軽鎖遺伝子座が700kbと0.9Mbとの間またはそれ以上であり、かつ完
全なヒトIgλ遺伝子座を含む、項目2に記載のトランスジェニック動物。
(項目20)
前記ヒトλ軽鎖遺伝子座が800kbと0.9Mbとの間またはそれ以上であり、かつ完
全なヒトIgλ遺伝子座を含む、項目2に記載のトランスジェニック動物。
(項目21)
トランスジェニック動物であって、以下:
a. 実質的に不活性化された内因性重鎖遺伝子座;
b. 実質的に不活性化された内因性κ軽鎖遺伝子座;
c. V領域遺伝子、D領域遺伝子、J領域遺伝子、および定常領域遺伝子を含む、ヒ
ト重鎖遺伝子座;
d. V領域遺伝子、J領域遺伝子、および定常領域遺伝子を含む、ヒトκ軽鎖遺伝子
座;および
e. V領域遺伝子、J領域遺伝子、および定常領域遺伝子を含む、実質的に完全なヒ
トλ軽鎖遺伝子座;
を、含むトランスジェニック動物。
(項目22)
項目21に記載のトランスジェニック動物であって、再構築された一次Bリンパ球および
二次リンパ球の集団をさらに含み、ここで、該集団のレベルが、野生型動物のレベルの5
〜20%、野生型動物のレベルの20〜40%、野生型動物のレベルの40〜60%、野
生型動物のレベルの60〜80%、野生型動物のレベルの80〜100%、および野生型
動物のレベルの100〜200%からなる群から選択される、トランスジェニック動物。
(項目23)
トランスジェニック動物由来の抗原に対するヒト抗体を含む抗血清を産生する方法であっ
て、該方法は、以下:
a. 項目1〜22のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物を、該抗原を用い
て免疫する工程;
b. 該トランスジェニック動物において、該抗原に対する免疫応答を誘導する工程;
および
c. 該トランスジェニック動物から血清を回収する工程、
を、包含する、方法。
(項目24)
トランスジェニック動物由来の抗原に対するヒト抗体を単離する方法であって、該方法は
、以下:
a. 項目1〜22のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物を、該抗原を用い
て免疫する工程;
b. 該トランスジェニック動物において、該抗原に対する免疫応答を誘導する工程;
c. 該トランスジェニック動物から血清を回収する工程;および
d. 該トランスジェニック抗体を該血清から精製する工程、
を、包含する、方法。
(項目25)
項目24の方法により得られる抗体であって、該抗体が1×10−7M、1×10−8
、1×10−9M、1×10−10M、1×10−11M、1×10−12Mおよび1×
10−13M、からなる群から選択される値より低い、解離定数を有する、抗体。
(項目26)
抗原に対するヒトモノクローナル抗体またはそのフラグメントを産生する細胞株を産生す
る方法であって、該方法は、以下:
a. 項目1〜22のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物を、該抗原を用い
て免疫する工程;
b. 該トランスジェニック動物において、該抗原に対する免疫応答を誘導する工程;
c. 該トランスジェニック動物からBリンパ球を単離する工程;
d. 該Bリンパ球を不死化する工程;
e. 個々の該不死化Bリンパ球のモノクローナル集団を作製する工程;および
f. 該不死化Bリンパ球をスクリーニングし、該抗原に対する抗体を同定する工程、
を、包含する、方法。
(項目27)
前記不死化細胞が、マウス細胞、ラット細胞、イヌ細胞、サル細胞、ヤギ細胞、ブタ細胞
、ウシ細胞、ハムスター細胞、ウサギ細胞、ウマ細胞、ヒツジ細胞、モルモット細胞、ま
たは鳥細胞の由来である、項目26に記載の方法。
(項目28)
項目26または項目27に記載の方法により産生される、単離されたモノクローナル抗体

(項目29)
項目1〜27のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物に由来する、一次細胞また
はその子孫細胞。
(項目30)
項目1〜22のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物に由来する、不死化細胞ま
たはその子孫細胞。
(項目31)
項目29または項目30に記載の不死化細胞またはその子孫細胞であって、該不死化細胞
がBリンパ球起源の細胞である、不死化細胞またはその子孫細胞。
(項目32)
項目31に記載の不死化細胞またはその子孫細胞であって、該不死化細胞がハイブリドー
マである、不死化細胞またはその子孫細胞。
(項目33)
V領域遺伝子、J領域遺伝子、および定常領域遺伝子を含む実質的に完全なヒトλ軽鎖遺
伝子座を含む、トランスジェニックマウスであって、該トランスジェニックマウスが、該
ヒトλ軽鎖遺伝子座をVJ組換えのために標的化し、そして、ここで該トランスジェニッ
クマウスが、該ヒトλ軽鎖遺伝子座を発現し得る、トランスジェニックマウス。
(項目34)
ヒトλ軽鎖遺伝子座の一部分を含むトランスジェニックマウスであって、ここで、該一部
分が該遺伝子座の少なくとも500kbを含み、ここで、該トランスジェニックマウスが
、該ヒトλ軽鎖遺伝子座をVJ組換えのために標的化し、そして、ここで該トランスジェ
ニックマウスが、該ヒトλ軽鎖遺伝子座を発現し得る、トランスジェニックマウス。
(項目35)
トランスジェニック動物を産生する方法であって、該方法は、以下:
a. (1)YACが組み込まれた酵母スフェロプラストであって、該YACは、実質
的に完全なヒトλ軽鎖遺伝子座または該ヒトλ軽鎖遺伝子座の少なくとも500kbを含
むその一部分、および選択可能なマーカーを含む、酵母スフェロプラストを、(2)宿主
動物の胚幹細胞と融合条件下で合わせる工程であって、それによって該ヒトλ軽鎖遺伝子
座またはその部分および選択可能なマーカーが該胚幹細胞のゲノム中に組み込まれる、工
程;
b. 該選択可能マーカーが組み込まれた胚幹細胞を選択する工程であって、それによ
り、該ヒトλ軽鎖遺伝子座またはその一部分を含む細胞を選択する工程;
c. 該選択された胚幹細胞を宿主胚盤胞内に送達し、該胚盤胞を偽妊娠動物レシピエ
ントに移植する工程;
d. 該胚盤胞を発生させ、該ヒトλ軽鎖遺伝子座またはその部分を有するキメラ動物
を産生する工程;および
e. 該キメラ動物を、同種の動物と交配させ、該キメラ動物から該ヒトλ軽鎖遺伝子
座またはその部分が遺伝した該トランスジェニック動物を産生する工程、
を、包含する、方法。
(項目36)
前記選択可能マーカーが、HPRT遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン
耐性遺伝子、fl−gal、またはGPTである、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記胚幹細胞が、内因性重鎖、κ軽鎖および/またはλ軽鎖の発現を欠損する、項目35
に記載の方法。
(項目38)
前記交配させる工程が、ヒトλ軽鎖遺伝子座またはその部分についてヘテロ接合のトラン
スジェニック動物を産生し、そして該ヘテロ接合動物が、ヒトλ軽鎖遺伝子座についてヘ
テロ接合の別のトランスジェニック動物と交配され、ヒトλ軽鎖遺伝子座についてホモ接
合のトランスジェニック動物を産生する、項目35に記載の方法。
(項目39)
前記YACが、600kbと0.9Mbとの間のヒトλ軽鎖遺伝子座を含む、項目35に
記載の方法。
(項目40)
前記YACが、700kbと0.9Mbとの間のヒトλ軽鎖遺伝子座を含む、項目35に
記載の方法。
(項目41)
前記YACが、800kbと0.9Mbとの間のヒトλ軽鎖遺伝子座を含む、項目35に
記載の方法。
(項目42)
項目35〜41のいずれか1項に記載の方法によって産生されるトランスジェニック動物

(項目43)
前記トランスジェニック動物が、マウス、ラット、イヌ、サル、ヤギ、ブタ、ウシ、ハム
スター、ウサギ、ウマ、ヒツジ、モルモット、または鳥からなる群から選択される、請求
項42に記載のトランスジェニック動物。
(項目44)
実質的に完全なヒトλ軽鎖遺伝子座またはその部分を含む非ヒト胚幹細胞またはその子孫
細胞であって、該部分が、該ヒトλ軽鎖遺伝子座の少なくとも500kbを含む、非ヒト
胚幹細胞またはその子孫細胞。
(項目45)
項目44に記載の非ヒト胚幹細胞またはその子孫細胞であって、さらに、該非ヒト胚幹細
胞または該その子孫細胞の1つ以上の内因性免疫グロブリン遺伝子座のJ領域および/ま
たは定常領域において、遺伝的損傷を含む、非ヒト胚幹細胞またはその子孫細胞。
(項目46)
前記遺伝的損傷がヒト免疫グロブリン配列の挿入である、項目45に記載の非ヒト胚幹細
胞またはその子孫細胞。
(項目47)
前記遺伝的損傷が、選択可能マーカー遺伝子により、1つ以上の前記内因性免疫グロブリ
ン遺伝子座の標的化された破壊から生じる、項目45に記載の非ヒト胚幹細胞またはその
子孫細胞。
(項目48)
前記選択可能マーカー遺伝子が、HPRT遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマ
イシン耐性遺伝子、fl−gal、またはGPTである、項目47に記載の非ヒト胚幹細
胞またはその子孫細胞。
(項目49)
前記遺伝的損傷が1つ以上の前記内因性免疫グロブリン遺伝子座の欠失を含む、項目45
に記載の非ヒト胚幹細胞またはその子孫細胞。
(項目50)
前記幹細胞またはその子孫細胞が前記遺伝的損傷についてホモ接合である、項目46に記
載の非ヒト胚幹細胞またはその子孫細胞。
(項目51)
前記遺伝的損傷が免疫グロブリン重鎖J領域内である、項目46に記載の非ヒト胚幹細胞
またはその子孫細胞。
(項目52)
前記遺伝的損傷が、相同組換えによる、前記内因性免疫グロブリン軽鎖遺伝子座の少なく
とも一部分の、前記実質的に完全なヒト免疫グロブリンλ軽鎖遺伝子座との置換を含む、
項目46に記載の非ヒト胚幹細胞またはその子孫細胞。
(項目53)
前記非ヒト胚幹細胞または前記その子孫細胞の、免疫グロブリン遺伝子座の内因性の両コ
ピーにおける遺伝的損傷を含み、該遺伝的損傷が、該免疫グロブリン遺伝子座の両コピー
の再編成不能を生じる、項目46に記載の非ヒト胚幹細胞またはその子孫細胞。
(項目54)
一次親と二次親を交雑させる工程、およびその子孫を回収する工程を包含する、トランス
ジェニック動物を産生する方法であり、ここで、該一次親が、以下:
a. 実質的に不活性化された内因性重鎖遺伝子座;
b. 実質的に不活性化された内因性κ軽鎖遺伝子座;
c. V領域遺伝子、D領域遺伝子、J領域遺伝子、および定常領域遺伝子を含むヒト
重鎖遺伝子座;および
d. V領域遺伝子、J領域遺伝子、および定常領域遺伝子を含むヒトκ軽鎖遺伝子座

を、含み、ここで、該二次親が、V領域遺伝子、J領域遺伝子、および定常領域遺伝子を
含む実質的に完全なヒトλ軽鎖遺伝子座を含み、ここで、該子孫が、以下:
a. 実質的に不活性化された内因性重鎖遺伝子座;
b. 実質的に不活性化された内因性κ軽鎖遺伝子座;
c. V領域遺伝子、D領域遺伝子、J領域遺伝子、および定常領域遺伝子を含むヒト
重鎖遺伝子座;
e. V領域遺伝子、J領域遺伝子、および定常領域遺伝子を含むヒトκ軽鎖遺伝子座
;および
f. V領域遺伝子、J領域遺伝子、および定常領域遺伝子を含む、実質的に完全なヒ
トλ軽鎖遺伝子座、
を、含む、トランスジェニック動物を産生する方法。
(項目55)
項目54に記載の方法により産生される、トランスジェニック動物。
(項目56)
前記トランスジェニック動物が、マウス、ラット、イヌ、サル、ヤギ、ブタ、ウシ、ハム
スター、ウサギ、ウマ、ヒツジ、モルモット、または鳥である、項目54に記載の方法に
より産生されるトランスジェニック動物。
(項目57)
項目1〜22のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物から単離された核酸分子で
あって、該単離された核酸分子が、ヒトλ軽鎖またはその抗原結合部位をコードする、核
酸分子。
(項目58)
項目57に記載の単離された核酸分子であって、該核酸分子が、前記ヒトλ軽鎖を産生す
るBリンパ球またはその子孫細胞から単離された、核酸分子。
(項目59)
前記Bリンパ細胞の前記子孫細胞がハイブリドーマである、項目58に記載の単離された
核酸分子。
(項目60)
項目57に記載の単離された核酸分子であって、該単離された核酸分子が、前記ヒト抗体
の1〜3の間のCDR領域を、コードする配列を含む、核酸分子。
(項目61)
項目57〜60のいずれか一項に記載の核酸分子またはそのフラグメントを含む、ベクタ
ー。
(項目62)
項目61に記載のベクターであって、該ベクターが、前記核酸分子に作動可能に連結され
た発現制御配列をさらに含む、ベクター。
(項目63)
ヒトλ軽鎖またはその抗原結合部位をコードする項目1〜22のいずれか1項に記載のト
ランスジェニック動物から単離された核酸分子であって、ここで、該軽鎖が、目的の抗原
に特異的に結合する抗体の軽鎖である、核酸分子。
(項目64)
項目63に記載の単離された核酸分子であって、該核酸分子が、前記ヒトλ軽鎖または前
記その抗原結合部位を産生するBリンパ球またはその子孫細胞から単離された、核酸分子

(項目65)
項目64に記載の単離された核酸分子であって、前記Bリンパ球の前記子孫細胞がハイブ
リドーマである、核酸分子。
(項目66)
項目63に記載の単離された核酸分子であって、該単離された核酸分子が、前記ヒト抗体
の1〜3の間のCDR領域を、コードする配列を含む、核酸分子。
(項目67)
項目63〜66のいずれか1項に記載の核酸分子を含む、ベクター。
(項目68)
項目67に記載のベクターであって、該ベクターが、さらに前記核酸に作動可能に連結さ
れた発現制御配列を含む、ベクター。
(項目69)
単離された宿主細胞であって、該細胞は、以下:
a) ヒトλ軽鎖またはその抗原結合部位をコードする、項目1〜22のいずれか1
項に記載のトランスジェニック動物から単離された核酸分子であって、ここで、該軽鎖が
、目的の抗原に特異的に結合する抗体の軽鎖である、核酸分子;または
b) 該核酸分子を含むベクター、
を、含む、細胞。
(項目70)
単離された宿主細胞であって、該細胞は、以下:
a) ヒト重鎖またはその抗原結合部位およびヒトλ軽鎖またはその抗原結合部位をコ
ードする、項目1〜22のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物から単離された
核酸分子であって、ここで、該重鎖および該軽鎖が、目的の抗原に特異的に結合する抗体
を形成する、核酸分子;または
b) 該核酸分子を含むベクター、
を、含む、細胞。
(項目71)
項目69または項目70に記載の単離された細胞であって、該細胞が、ハイブリドーマ細
胞、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、両生類細胞、および哺乳類細胞からなる群から選択
される、細胞。
(項目72)
項目71に記載の細胞であって、該哺乳類細胞が、マウス細胞、ラット細胞、イヌ細胞、
サル細胞、ヤギ細胞、ブタ細胞、ウシ細胞、ハムスター細胞、ウサギ細胞、ウマ細胞、ヒ
ツジ細胞、モルモット細胞、または鳥細胞である、細胞。
(項目73)
項目71に記載の細胞であって、該哺乳類細胞が、HeLa細胞、NIH 3T3細胞、
CHO細胞、293細胞、BHK細胞、VERO細胞、CV−1細胞、NS/0細胞、ま
たはCOS細胞である、細胞。
(項目74)
トランスジェニックマウスから同定され、そして目的の抗原に特異的に結合する、ヒト免
疫グロブリンλ軽鎖もしくはその抗原結合部位、または該ヒト免疫グロブリンλ軽鎖もし
くはその該抗原結合部位およびヒト免疫グロブリン重鎖もしくはその抗原結合部位の両方
を、組換え的に産生する方法であって、項目69〜73のいずれか1項に記載の宿主細胞
を、前記核酸分子が発現する条件下で培養する工程を包含する、方法。
(項目75)
項目63に記載の核酸分子を含む、非ヒトトランスジェニック動物であって、該非ヒトト
ランスジェニック動物が該核酸分子を発現する、トランスジェニック動物。
(項目76)
目的の抗原に特異的に結合するヒト抗体の、免疫グロブリン重鎖またはその抗原結合部位
をコードする単離された核酸分子、および免疫グロブリンλ軽鎖またはその抗原結合部位
をコードする単離された核酸分子を含む、非ヒトトランスジェニック動物であって、該動
物が該核酸分子を発現する、トランスジェニック動物。
(項目77)
項目75〜76のいずれか1項に記載の非ヒトトランスジェニック動物であって、該動物
が、マウス、ラット、イヌ、サル、ヤギ、ブタ、ウシ、ハムスター、ウサギ、ウマ、ヒツ
ジ、モルモット、または鳥である、トランスジェニック動物。
(項目78)
項目75〜76のいずれか1項に記載の非ヒトトランスジェニック動物であって、前記単
離された核酸分子またはその部分の発現から生じるヒト抗体が、該動物のBリンパ球細胞
またはその子孫細胞由来の細胞の表面上で発現する、トランスジェニック動物。
(項目79)
項目75〜76のいずれか1項に記載の非ヒトトランスジェニック動物であって、前記単
離された核酸分子またはその部分の発現から生じるヒト抗体が、該動物のリンパ液、血液
、乳、唾液、または腹水に分泌される、トランスジェニック動物。
(項目80)
項目1〜5のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物であって、該トランスジェニ
ック動物の集団の少なくとも95%が、少なくとも3世代にわたってヒトλ軽鎖遺伝子座
を維持する、トランスジェニック動物。
(項目81)
項目21に記載のトランスジェニック動物であって、該トランスジェニック動物の集団の
少なくとも95%が、少なくとも3世代にわたって、前記ヒトλ軽鎖遺伝子座、該ヒトλ
軽鎖遺伝子座および前記ヒト重鎖遺伝子座を維持する、トランスジェニック動物。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、30の機能的Vλ遺伝子、および7つのJλ−Cλ対(その内、4つが機能的である)を含む、ヒト免疫グロブリンλ遺伝子座を示す。
【図2】図2は、ヒト免疫グロブリンλ遺伝子座のYAC(yLと呼ばれる)への再構築を示す。
【図3】図3は、XenoMouse(登録商標)−KL系統におけるヒトIgλおよびヒトIgκの発現を示す図である。
【図4】図4は、実施例8に記載される融合実験の概要を提示する。
【図5】図5は、ネイティブXenoMouse(登録商標)−KLマウスにおけるヒト抗体の血清レベルを示す図である。
【図6−1】図6A〜Gは、ヒト生殖系列免疫グロブリンλ遺伝子の、胚幹細胞(ES細胞)およびXenoMouse系統への組込みを証明する、サザンブロット分析である。
【図6−2】図6A〜Gは、ヒト生殖系列免疫グロブリンλ遺伝子の、胚幹細胞(ES細胞)およびXenoMouse系統への組込みを証明する、サザンブロット分析である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(発明の詳細な説明)
本発明者らは、ヒト生殖系列λIg軽鎖遺伝子座またはその一部分を含むマウスの幾つ
かの系統の産生および特徴づけを、本明細書中で、記載する。本発明者らはまた、ヒト生
殖系列κ軽鎖遺伝子座またはその部分およびヒト生殖系列重鎖遺伝子座またはその部分を
さらに含む、トランスジェニック動物の産生も、記載する。従って、本発明は、対応する
マウス遺伝子座と機能的に置き換えるための、大型の、複雑なヒトIg遺伝子座を含むト
ランスジェニック非ヒト動物を、提供する。本発明はまた、ヒトλ生殖系列遺伝子座を含
むYACの使用、およびメガ塩基の大きさのYACのトランスジェニック動物(特にトラ
ンスジェニックマウス)への、成功した導入により、トランスジェニック非ヒト動物を、
産生する方法も、提供する。本発明はまた、トランスジェニック動物を生じる胚幹細胞、
および胚幹細胞を作製する方法も、提供する。本発明は、さらに、トランスジェニック動
物により産生される、ポリクローナルおよびモノクローナルの両方の抗体を提供し、そし
てモノクローナル抗体を作製する不死化細胞(例えばハイブリドーマ)に関わる組成物お
よび方法を、提供する。
【0032】
(定義)
本明細書中の用語は、概して、当業者によって理解されるような、通常の意味を有して
いる。以下の用語は、本明細書中で使用される場合、以下のような一般的意味を有するこ
とを、意図する:
「抗体レパートリー」は、動物またはヒトにおける、それぞれ異なった抗体種の総合を
意味する。抗体レパートリーにおける多様性は、特に、免疫グロブリン遺伝子組換え、免
疫グロブリン遺伝子連結多様性、ターミナルデオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ活
性、エキソヌクレアーゼ活性、レセプター校正、および体細胞過剰突然変異から、生じる

【0033】
「Bリンパ球細胞またはその子孫細胞」は、Bリンパ球系統を継ぐかまたはBリンパ球
になることが決まっている、任意の細胞を意味する。例としては、最初期Bリンパ球幹細
胞にはじまり記憶B細胞までのB細胞発生経路における全てのBリンパ球、プラスマ細胞
、およびハイブリドーマのような任意の不死化細胞株が挙げられるが、これらに限定はさ
れない。
【0034】
「胚幹細胞(ES細胞)」は、多能または万能の細胞を意味し、この細胞は、胚盤胞に
注射される場合、出生前、出生後、または成体の、多くのまたは全ての組織に、寄与し得
る。胚盤胞注射から生じる動物は、その体細胞および/または生殖細胞が、しばしば胚盤
胞および注射されたES細胞の両方に由来するため、「キメラ」動物と呼ばれる。
【0035】
「不死化細胞」は、インビトロまたはインビボで無限に増殖および分裂するように改変
されている細胞をいう。細胞を不死化する方法としては、癌原遺伝子を用いる形式転換、
癌原ウイルスを用いた感染、不死化細胞を選択する条件下での培養、発癌性化合物または
変異化合物に対する暴露、別の不死化細胞株(例えば、骨髄腫細胞)との融合、および腫
瘍抑制遺伝子の不活性化が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0036】
「スフェロプラスト」は、インビトロで細胞壁を剥がれ、これにより、他の細胞(例え
ば、ES細胞)と融合しやすい、露出された原形質膜を有する、酵母細胞をいう。
【0037】
「生殖系列構造」は、任意の体細胞遺伝子再編成が起こる前の、免疫グロブリン遺伝子
セグメントの編成または配置をいう。
【0038】
「遺伝的損傷」は、遺伝子または遺伝子座における、任意の天然の断裂または不自然な
断裂をいう。遺伝的損傷は、遺伝子もしくは遺伝子座の発現の減少または非存在を生じ、
あるいはその生来の機能を失わせた遺伝子産物の発現を生じる。遺伝的損傷としては、遺
伝子または遺伝子座をコードする配列の標的化された断裂、遺伝子または遺伝子座の発現
に関連するシス制御因子の改変、遺伝子または遺伝子座の発現に関連するトランス制御因
子の改変、および遺伝子または遺伝子座を有する染色体全体またはその領域の大きな断裂
が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0039】
「シス制御エレメント」は、一般に、同じ染色体上の遺伝子配列の、誘導的発現または
構造的発現を、特異的条件下または特定の細胞において、制御する配列をいう。発現制御
配列が制御する細胞過程の例としては、遺伝子転写、体細胞遺伝子組換え、mRNAスプ
ライシング、タンパク質翻訳、免疫グロブリンアイソタイプ変換、タンパク質糖化、タン
パク質開裂、タンパク質分泌、細胞内タンパク質局在および細胞外タンパク質ホーミング
が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0040】
「実質的に完全なトランスジェニック免疫グロブリン遺伝子座」は、宿主動物以外の動
物由来の、免疫グロブリン遺伝子座の50%と100%との間をいう。好ましい実施形態
において、実質的に完全なトランスジェニック免疫グロブリン遺伝子座は、宿主動物以外
の動物由来の、免疫グロブリン重鎖遺伝子座または免疫グロブリン軽鎖遺伝子座の75%
と100%との間をいう。より好ましい実施形態において、実質的に完全なトランスジェ
ニック免疫グロブリン遺伝子座は、宿主動物以外の動物由来の、免疫グロブリン重鎖遺伝
子座または免疫グロブリン軽鎖遺伝子座の90%と100%との間または95%と100
%との間をいう。さらにより好ましい実施形態において、実質的に完全なトランスジェニ
ック免疫グロブリン遺伝子座は、宿主動物以外の動物由来の、免疫グロブリン重鎖遺伝子
座または免疫グロブリン軽鎖遺伝子座の98%と100%との間をいう。
【0041】
「実質的に不活性化された内因性免疫グロブリン遺伝子座」は、その免疫グロブリン重
鎖遺伝子座または免疫グロブリン軽鎖遺伝子座内に遺伝的損傷を有する動物であって、そ
の動物における遺伝子座の発現の欠失を生じる動物をいう。好ましい実施形態において、
不活性化された内因性免疫グロブリン遺伝子座による発現は、野生型の発現レベルの0%
と30%との間である。より好ましい実施形態において、不活性化された内因性免疫グロ
ブリン遺伝子座による発現は、野生型の発現レベルの0%と15%との間である。最も好
ましい実施形態において、不活性化された内因性免疫グロブリン遺伝子座による発現は、
野生型の発現レベルの、およそ0%から5%、より好ましくは0%から1%である。
【0042】
核酸配列は、(a)その核酸配列を含む核酸分子がヒトIg重鎖遺伝子座、ヒトIgλ
軽鎖遺伝子座またはヒトIgκ軽鎖遺伝子座を含む核酸分子と、高度にストリンジェント
な条件でハイブリダイズする場合および/または(b)その核酸配列を含む核酸分子がヒ
トIg重鎖遺伝子座、ヒトIgλ軽鎖遺伝子座またはヒトIgκ軽鎖遺伝子座を含む核酸
分子と実質的な配列類似性を示す場合に、ヒトIg重鎖遺伝子座、ヒトIgλ軽鎖遺伝子
座またはヒトIgκ軽鎖遺伝子座の核酸配列と、「実質的に対応する」、「実質的に対応
している」または「実質的に同様である」。「高いストリンジェンシー」または「高度に
ストリンジェント」な条件の例は、6×SSPEまたは6×SSC、50%ホルムアミド
、5×デンハルト試薬、0.5%SDS、100μg/ml変性剪断化サケ精子DNAの
緩衝液中、ハイブリダイゼーション温度42℃で12時間〜16時間、ポリヌクレオチド
を別のポリヌクレオチドをインキュベートし(ここで、1方のポリヌクレオチドがメンブ
レンなどの個体表面に接着され得る)、その後、1×SSC、0.5%SDSの洗浄緩衝
液を使用して、55℃で2回洗浄する、方法である。Sambrookら(既出)pp.
9.50−9.55も、参照のこと。実質的な配列類似性は、任意の周知の配列同一性ア
ルゴリズムによって測定される場合、適切なヌクレオチド挿入または欠失を用いて、別の
核酸(またはその相補鎖)と最適に並べられた場合、核酸配列同一性が、塩基対の少なく
とも約85%、好ましくは少なくとも約90%、そしてより好ましくは約95%、97%
、98%または99%であることを示す。このアルゴリズムは、FASTA、BLAST
またはGap(Wisconsin Package Version 10.0のプロ
グラム、Genetics Computer Group(GCG)、Madison
、Wisconsin)などである。FASTA(例えばFASTA2およびFASTA
3を含む)は、試験配列と探索配列と間で最も重複する領域の、アラインメントおよび配
列同一性百分率を、提供する(Pearson,Methods Enzymol.18
3:63−98(1990);Pearson,Methods Mol.Biol.1
32:185−219(2000);Pearson,Methods Mol.Bio
l.266:227−258(1996);Pearson,J.Mol.Biol.2
76:71−84(1998);本明細書中で参考として援用される)。
【0043】
酵母人工染色体(YAC)は、ベクターを複製させ、インビボで酵母細胞中で維持させ
る、酵母染色体のエレメントから構築されるクローニング媒体を、言及する。酵母のエレ
メントは、セントロメア、自律複製配列、一対のテロメア、酵母選択可能マーカー、かつ
通常は、細菌の複製起点、ならびに細菌におけるYACベクターアームの複製および選択
のための選択可能マーカーを、含む。少なくとも2000kbまでのDNA挿入部分は、
YACを使用して、クローン化され得、維持され得る。
【0044】
「トランスジェニック動物」は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の実質的部分を保有する
動物をいう。しばしば、トランスジェニック動物は、その内因性免疫グロブリンを発現を
させない、相同的に標的される内因性免疫グロブリン遺伝子座を保有する。一例としては
、XenoMouse(登録商標)系統のマウス(例えば、本明細書中で記載されるXe
noMouse−L系統およびXenoMouse−KL系統)が、挙げられる。これは
、トランスジェニックヒト免疫グロブリン遺伝子の体細胞再編成、ヒト可変遺伝子の過剰
変異、免疫グロブリン遺伝子発現、および免疫グロブリンアイソタイプ変換をし得る。従
って、XenoMouse系統のマウスは、ヒト免疫グロブリン遺伝子配列を利用して、
抗原負荷に対し、効果的な体液応答を示し得る。XenoMouse(登録商標)系統の
マウスにおいて産生される抗体は、完全にヒト抗体であり、この動物それ自体またはその
子孫から、この動物それ自体またはその子孫から抽出された培養細胞から、およびXen
oMouse−LおよびXenoMouse−KLのBリンパ球株またはその子孫細胞か
ら作製されるハイブリドーマから、単離され得る。その上、特定の抗原負荷に対して生じ
る免疫グロブリンをコードする、再編成されたヒト遺伝子配列は、当該分野に周知である
組換え手段によって、単離され得る。
【0045】
「抗体」は、インタクトな免疫グロブリンまたは特定の結合についてインタクトな抗体
と競合するその抗原結合部位をいう。抗原結合部位は、組換えDNA技術またはインタク
トな抗体の酵素的もしくは化学的切断により、産生され得る。抗原結合部位としては、特
に、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、dAb、および相補性決定領域(CDR
)フラグメント、単鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、ディアボディ(diabody)
および特異的な抗原結合を付与するするのに充分な免疫グロブリンの少なくとも一部を含
むポリペプチドが挙げられる。
【0046】
「トランスジェニック抗体」は、外来免疫グロブリン遺伝子座によりコードされる抗体
をいう。例えば、XenoMouse−LおよびXenoMouse−KL系統のマウス
において、ヒト抗体遺伝子座は、トランスジェニック抗体をコードする。
【0047】
「トランスジェニックモノクローナル抗体」は、トランスジェニック動物由来のクロー
ニングされた不死化細胞(例えば、ハイブリドーマ)において産生される均質な抗体集団
をいう。例えば、XenoMouse−LおよびXenoMouse−KL系統のマウス
から作製されるハイブリドーマは、トランスジェニックモノクローナル抗体を産生する。
【0048】
用語「単離されたタンパク質」、「単離されたポリペプチド」、「単離された抗体」ま
たは「単離された免疫グロブリン」は、その起源または誘導源の故に、(1)そのネイテ
ィブの状態に含まれる、天然に含まれる組成物を伴わない(2)同じ種由来の他のタンパ
ク質を含まない(3)異なった種の細胞によって発現される、または(4)天然に生じな
い、それぞれ、タンパク質、ポリペプチド、抗体または免疫グロブリンである。従って、
化学的に合成されたポリペプチドまたは抗体、または天然起源の細胞と異なる細胞系で合
成されたポリペプチドまたは抗体は、天然に混在していた成分から、「単離」されている
。タンパク質または抗体はまた、当該分野に周知である、タンパク質精製技術を使用する
単離により、天然に伴う成分を、実質的に非含有であり得る。単離される抗体は、そのネ
イティブな状態において混在する、他の天然に混在する抗体を非含有な抗体であり得る。
単離される抗体の例としては、抗原を用いてアフィニティー精製されたヒト抗体、プロテ
インAまたはプロテインL、ハイブリドーマまたは他の細胞株によりインビトロで合成さ
れたヒト抗体、およびトランスジェニックマウス由来のヒト抗体が、挙げられる。
【0049】
タンパク質、ポリペプチド、抗体または免疫グロブリンは、サンプルの少なくとも約6
0%から70%が1つの種類のタンパク質、タンパク質、ポリペプチド、抗体または免疫
グロブリンを示す場合、それぞれ、「実質的に純粋である」か、「実質的に均質である」
かまたは「実質的に精製されている」。実質的に純粋なタンパク質、ポリペプチド、抗体
または免疫グロブリンは、代表的には、サンプルの約50%、60%、70%、80%ま
たは90% W/Wであり、より普通には約95%、そして好ましくは99%以上純粋で
ある。純度または均質性は、当該分野で周知の多くの手段(タンパク質サンプルのポリア
クリルアミドゲル電気泳動、その後の当該分野で周知の色素によりゲル染色上の一本のポ
リペプチドバンドの可視化など)によって、示され得る。特定の目的のために、HPLC
または精製の分野で周知の他の手段によって、より高度な分析が、提供され得る。
【0050】
(抗体の構造)
基礎抗体構造単位は、テトラマーを構成することで知られる。それぞれのテトラマーは
、2つの同一のポリペプチド鎖の対からなり、それぞれの対は、1つの「軽鎖」(約25
kDa)および1つの「重鎖」(約50〜70kDa)を有する。従って、インタクトな
IgG抗体は、2つの結合部位を有する。二機能性抗体または二種特異性抗体を除き、2
つの結合部位は、同一である。分泌性IgMについては、基礎単位は、二価抗体のペンタ
マーである。従って、5量体IgMは、それぞれ、10の結合部位を有する。分泌性Ig
Aについては、基礎単位は、二価抗体のテトラマーである。従って、4量体IgAは、そ
れぞれ、4つの結合部位を有する。それぞれの鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識を担
う、約100から110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。それぞれの鎖のカ
ルボキシ末端部分は、エフェクター機能に最初に応答する、定常領域を定義する。ヒト軽
鎖は、カッパ(κ)軽鎖およびラムダ(λ)軽鎖に分類される。重鎖は、ミュー(μ)、
デルタ(δ)、ガンマ(γ)、アルファ(α)、またはイプシロン(ε)に分類され、そ
して抗体のアイソタイプを、IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEにそれぞれ
定義する。軽鎖および重鎖の内部において、可変領域および定常領域が、約12以上のア
ミノ酸の「J」領域によって連結され、重鎖もまた、約10以上のアミノ酸の「D」領域
を含む。一般に、Fundamental Immunology Ch.7(Paul
,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989))を、
参照のこと(全ての目的で、全体が参考として援用される)。それぞれの軽鎖/重鎖対の
可変領域は、抗体結合部位を形成する。
【0051】
全ての鎖は、同じ一般的構造の比較的保存的なフレームワーク領域(FR)を示す。F
Rは、3つの超可変領域(相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる)によって、連結さ
れる。それぞれの対の2つの鎖由来のCDRは、フレームワーク領域によって整列され、
特定のエピトープへの連結を可能にする。N末端からC末端に向かって、軽鎖および重鎖
の両鎖は、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびF
R4を含む。それぞれのドメインのアミノ酸の割り当ては、Kabat Sequenc
es of Protein of Immunological Interest(
National Institutes of Health,Bethesda,M
d.(1987および1991))またはChothia & Lesk J.Mol.
Biol.196:901−917(1987);Chothiaら Nature 3
42:878−883(1989)の定義に従う。
【0052】
(B細胞の発達)
B細胞の発達は、骨髄において、D遺伝子とJ遺伝子との間の欠失組換えを用いて、始
める。その後、V遺伝子が、DJを再結合してVDJを形成する。このVDJは、転写さ
れ、スプライシングされたVDJCμ転写物を、産生する。転写物が読み取り枠内である
場合、次いで、μ鎖が、翻訳によって合成される。同様に、そして一般に、VDJ
再結合およびμ鎖と軽鎖の代替物との対形成の後で、Ig軽鎖遺伝子座は、V遺伝子セグ
メントおよびJ遺伝子セグメントを再編成する。骨髄における成功したB細胞の発達は、
細胞表面上にIgMκまたはIgMλを発現するB細胞を生じる。マウスにおいて、B細
胞の95%がIgMκを発現し、5%がIgMλを発現する:ヒトにおいては、およそB
細胞の60%がIgMκを発現し、40%がIgMλを発現する。
【0053】
これらのIgM産生B細胞は、第一免疫レパートリーを形成し、そして外来抗原の認識
についての、免疫サーベイランスを行う。マウスにおいてまたはヒトにおいて、このIg
M産生B細胞は、その後、IgMアイソタイプからIgGアイソタイプもしくはIgAア
イソタイプ、またはIgEアイソタイプへ、アイソタイプクラス変換を行う。クラス変換
の頻度は、免疫応答の間、増加する。マウスおよびヒトは、4つの異なったIgGアイソ
タイプについての遺伝子を有する。これらは、マウスにおいてはIgG1、IgG2a、
IgG2b、IgG3であり、ヒトにおいてはIgG1、IgG2、IgG3、IgG4
である。ヒトは、2つのIgAアイソタイプ(IgA1およびIgA2)、そして1つの
IgEアイソタイプを有する。マウスにおいて、平均で、6500μg/mlのIgG1
、4200μg/mlのIgG2aおよび1200μg/mlのIgG2b、ならびに2
60μg/mlのIgAが、存在する。ヒトにおいては、IgG総量の、約70%がIg
G1、18%がIgG2、8%がIgG3および3%がIgG4である。ヒトにおけるI
gA総量の、約80%がIgA1および20%がIgA2である。
【0054】
(ヒトλ免疫グロブリン遺伝子座)
ヒトλIg遺伝子座は0.9Mbにおよぶ。ここには、約69のVλ遺伝子セグメント
が存在し、その36は読み取り枠を有する。これらのうち30は、ヒト末梢血リンパ球(
PBL)由来の転写物において検出されている。Vλ遺伝子は、3つのクラスターに別れ
る(5’から3’に向かって、Cクラスター、Bクラスター、およびAクラスターと名付
けられる)。クラスターAは、14の機能するVλ遺伝子セグメントを含み、発現するレ
パートリーの62%に相当する。クラスターBは、11の機能するVλ遺伝子セグメント
を含み、発現するレパートリーの33%に相当する。そして、クラスターCは、5の機能
するVλ遺伝子セグメントを含み、発現するレパートリーの5%に相当する。発現された
レパートリーは、ヒトPBLによって発現されるレパートリーにおけるVλ遺伝子の発現
の頻度に基づく。例えば、Ignatovichら,J.Mol.Biol.,268:
69−77(1997)(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。10のV
λ遺伝子ファミリーが、これらのクラスターに存在する。最も大きなファミリーであるV
λIIIは、23のメンバーを有し、そのうちの8が機能する。ヒトλ遺伝子座において
、7つのJλ−Cλ対が存在し、そのうち4つが機能する。
【0055】
(ヒト抗体およびそれを産生するトランスジェニック動物の使用)
マウス抗体またはラット抗体のヒト患者への投与は、通常、効果がない。何故なら、抗
体中のマウス由来の配列またはラット由来の配列の存在は、抗体の迅速なクリアランスか
、または抗体に対する免疫応答の産生が、患者によって導かれるからである。ヒト抗体は
、マウスまたはラットの可変領域および/または定常領域を保有する抗体に関わる問題の
中のいくつかを避ける。ヒト由来の細胞を使用するヒトモノクローナル抗体の作製は問題
があったため、ヒト抗体を産生し得るトランスジェニック動物を開発することが、望まし
かった。
【0056】
ヒトIg YACトランスジーンの宿主染色体への組込みは、際立った遺伝的安定性を
提供する。組込まれたヒトIg YACトランスジーンは、トランスジェニック動物の全
ての体組織および生殖系列組織において、安定的に発現され、メンデル遺伝の予測される
パターンにより世代から世代へと伝達され、そして培養細胞(例えば、ハイブリドーマ細
胞)において、安定的に維持される。対照的に、宿主細胞(例えば、マウスES細胞)の
核に挿入された、自在に分離するヒトトランス染色体は、遺伝的に不安定であることが公
知で、失われる。キメラマウスは、これらのES細胞に由来し得、そして時折、トランス
染色体を子孫に伝える。これらのキメラマウスに由来する「トランス染色体(trans
chromosomic)」マウスは、トランス染色体を保有する幾つかの細胞およびト
ランス染色体を失っている細胞の、体性モザイクである。欠失は、マウス有糸分裂紡錘体
およびマウス減数分裂紡錘体による、トランス染色体上におけるヒトセントロメアの非能
率的な捕捉、ならびにその後の、有糸分裂および減数分裂の間のトランス染色体の異常分
離により、起こりやすい。さらに、トランス染色体マウス由来のハイブリドーマもまた、
不安定であると予測される。
【0057】
ヒトの重鎖遺伝子座およびκ軽鎖遺伝子座の、メガ塩基の大きさの、生殖系列構造YA
Cフラグメントは、トランスジェニックマウスに導入されていて、XenoMouse
IIa マウスを産生する。Mendezら Nature Genetics 15:
146−156(1997)、GreenおよびJacobovits J.Exp.M
ed.188:483−495(1998)、およびWO98/24893号を、参照の
こと。これらの全ては、本明細書でその全体が参考として援用される。
【0058】
本明細書中で提供される本発明は、ヒトλ軽鎖遺伝子座を含むトランスジェニック動物
の提供による、XenoMouse(登録商標)技術の開発に基礎を置く。一実施形態に
おいて、本発明は、実質的に完全なヒトλ軽鎖遺伝子座またはその一部分を含む、マウス
を提供する。別の実施形態において、トランスジェニックマウスは、ヒト重鎖遺伝子座お
よびヒトκ軽鎖遺伝子座を、さらに含む。好ましい実施形態において、トランスジェニッ
クマウスは、実質的に不活性化された内因性の重鎖遺伝子座およびκ軽鎖遺伝子座を、さ
らに含む。また別の好ましい実施形態において、トランスジェニックマウスは、実質的に
不活性化された内因性の重鎖遺伝子座、κ軽鎖遺伝子座を、およびλ軽鎖遺伝子座を、さ
らに含む。ヒトにおいて、およそ40%の抗体がλ軽鎖を含み、残りの60%がκ軽鎖を
含む。従って、ヒトλ軽鎖遺伝子座を含むトランスジェニックマウスは、ヒトにおいて見
出されるのに近いか、または実施的に同じ規模の、ヒト抗体レパートリーを、産生し得る
はずである。
【0059】
(ヒトλ軽鎖遺伝子座を含むYACおよび宿主細胞)
本発明の一実施形態において、本発明は、ヒトλ軽鎖遺伝子座またはその部分を含むY
ACを、提供する。一般に、YACは、酵母セントロメア、複製起点、テロメア、および
目的のDNAを含む。種々のセントロメアまたはテロメア(特に、酵母第4染色体および
酵母第5染色体由来のセントロメア)が使用され得る。一般に、YACは、選択可能マー
カーを有し、このマーカーは、YACが組み込まれている細胞の選択またはスクリーニン
グを可能にする。一実施形態において、HPRT遺伝子(より具体的にはヒトHPRT遺
伝子)が、選択可能マーカーとして使用され得る。何故なら、HPRT遺伝子は、YAC
を有するHPRT欠失ES細胞を、効果的に選択させるからである。他の、使用され得る
公知の選択可能マーカーまたはスクリーニング可能マーカーとしては、ヒグロマイシン耐
性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、fl−gal、およびGPTが、挙げられる。
【0060】
ヒトλ軽鎖遺伝子座の全てまたは一部分を含むYACは、本明細書の以下の教示の当該
分野に公知の任意の方法により、得られ得る。一実施形態において、YACは、既存の(
Center d’Etude du Polymorphisme Humain(C
.E.P.H.),Paris,France;Washington Univers
ity,St.Louis,MO;または他の学術的供給源または市販の供給源から得ら
れるような)YACライブラリーをスクリーニングすることにより、単離される。あるい
は、YACは、当該分野に周知の技術または本明細書中に記載される技術により、容易に
調製され得る。ヒトλ軽鎖遺伝子座のゲノム配列は、公知であり、その部分は、PCR、
制限酵素切断およびその後の単離、機械的断片化およびその後の単離または当該分野で公
知の任意の他の方法を使用して、ヒトゲノムDNAから、単離され得る。目的の核酸挿入
部位を含むYACを調製する典型的な方法は、Birrenら,Genome Anal
ysis:A Laboratory Manual,Cold Spring Har
bor Laboratory Press(1999)において、見出され得る。Vo
l.3,Chapter5(本明細書中で、参考として援用される)を参照のこと。
【0061】
ヒトλ軽鎖遺伝子座またはその部分は、1つ以上のYACクローン内に、含まれ得る。
ヒトλ軽鎖遺伝子座が、多数のYACクローンにまたがる場合、インタクトなヒトλ軽鎖
遺伝子座は、相同性重複領域を有するYAC間の相同的組換えにより、再構築され得る。
後述の例を参照のこと。代替の実施形態において、ヒトλ軽鎖遺伝子座の一部分のみが、
使用され得る。
【0062】
好ましい実施形態において、YACは、500kbと0.9Mbとの間のヒトλ遺伝子
座を、含む。より好ましい実施形態において、YACは、600kbと0.9Mbとの間
のヒトλ遺伝子座を含み、さらにより好ましくは700kbと0.9Mbとの間、および
その上より好ましくは800kbと0.9Mbとの間である。さらにより好ましい実施形
態において、YACは、およそ0.9Mbのヒトλ遺伝子座を、含む。YACはまた、実
質的にヒトλ軽鎖遺伝子座と類似の、λ軽鎖遺伝子座を含み得る。
【0063】
多くの異なった種類の宿主細胞が、本発明の実施において、使用され得る。一実施形態
において、宿主細胞は、YAC DNAを染色体中に組み込み得る細胞である。好ましい
実施形態において、宿主細胞は、トランスジェニック動物の形成に関わり得る。より好ま
しい実施形態において、宿主細胞は、ES細胞または卵母細胞であり、好ましくはES細
胞である。このようなES細胞は、代表的には、培養にて拡張され、生存状態を維持され
、外来のDNAの組込み後の選択のための手段を提供し、宿主(生殖系列を含む)を再集
団化させる能力を有する。本発明により提供されるES細胞は、任意の非ヒト宿主の由来
であり得るが、好ましくは、哺乳類または鳥類由来である。一実施形態において、げっ歯
類(ラットおよびマウス)が、ヒトλ軽鎖遺伝子座の組込みのためのES細胞を、提供し
得る。他の実施形態は、通常の実験動物または家畜に由来するES細胞を含む。これらの
動物としては、ウサギ、ブタ、ハムスター、ウマ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、モルモッ
ト、または鳥(ニワトリ、七面鳥など)が、挙げられる。
【0064】
ES細胞は、1つ以上の変異を有する。例えば、特定の表現型を欠くか、または優性の
表現型を有し得る。本発明における特に重要なものは、HPRT遺伝子、ネオマイシン耐
性遺伝子、ヒグロマイシン耐性遺伝子、fl−gal、および/またはGPTを用いて選
択され得るES細胞である。
【0065】
ES細胞はまた、実質的に不活性化された内因性重鎖遺伝子座、κ軽鎖遺伝子座、およ
び/またはλ軽鎖遺伝子座も、有し得る。好ましい実施形態において、ES細胞は、実質
的に不活性化された内因性重鎖遺伝子座およびκ軽鎖遺伝子座の両方を含む。別の好まし
い実施形態において、ES細胞は、実質的に不活性化された内因性λ軽鎖遺伝子座を含む

【0066】
(細胞および動物を作製する方法)
本発明はまた、ヒトλ軽鎖遺伝子座を、非ヒト宿主細胞および非ヒト動物に導入する方
法も、提供する。ヒトλ軽鎖遺伝子座またはその部分を有するYACは、酵母スフェロプ
ラスト:ES細胞融合、微小注入実験およびリポフェクションなどの種々の方法により、
宿主細胞(例えば、ES細胞または卵細胞)に導入され得る。例えば、実施例3およびB
irrenら(既出)pp.546−550を、参照のこと。好ましい実施形態において
、本発明は、目的のYACを含む酵母細胞が、ES細胞と融合する方法を提供する。ES
細胞へのYACの導入の後、細胞は、本明細書の以下の教示に従い当該分野に公知の方法
を使用して、細胞のゲノムへのYACの組込みについて、選択されるか、またはスクリー
ニングされる。
【0067】
従って、本発明は、実質的に完全なヒトλ軽鎖遺伝子座またはその部分を含む非ヒトE
S細胞またはその子孫細胞を、提供する。好ましい実施形態において、ES細胞または子
孫細胞は、実質的に完全な生殖系列ヒトλ軽鎖遺伝子座を、含む。
【0068】
別の好ましい実施形態において、ES細胞はさらに、非ヒト胚幹細胞またはその子孫細
胞の1つ以上の内因性免疫グロブリン遺伝子座のJ領域および/または定常領域において
、遺伝的損傷を含む。より好ましい実施形態において、遺伝的損傷は、免疫グロブリン重
鎖J領域において、存在する。より好ましい実施形態において、遺伝的損傷は、免疫グロ
ブリン重鎖遺伝子座の両コピーのJ領域に存在する。別の好ましい実施形態において、遺
伝的損傷は、内因性軽鎖J領域に存在する。より好ましい実施形態において、遺伝的損傷
は、内因性κ軽鎖遺伝子座の1つまたは両コピーの、定常領域および/またはJ領域に存
在する。別の実施形態において、遺伝的損傷は、内因性λ軽鎖遺伝子座の1つまたは両コ
ピーの、定常領域および/またはJ領域に存在する。別の実施形態において、遺伝的損傷
は、1つ以上の内因性の重鎖遺伝子座、κ軽鎖遺伝子座、またはλ軽鎖遺伝子座の欠失を
含む。さらに、好ましい実施形態において、遺伝的損傷は、内因性の重鎖遺伝子座、κ軽
鎖遺伝子座、および/またはλ軽鎖遺伝子座の少なくとも一部分と、対応する実質的に完
全なヒト重鎖遺伝子座、κ軽鎖遺伝子座、および/またはλ軽鎖遺伝子座との、相同性組
換えによる置換を含む。
【0069】
より好ましい実施形態において、非ヒトES細胞またはその子孫細胞は、非ヒトES細
胞またはその子孫細胞の内因性の免疫グロブリン遺伝子座の両コピーにおいて、遺伝的損
傷をさらに含む。遺伝的損傷は、内因性免疫グロブリン遺伝子座の両コピーの再編成不能
を生じる。
【0070】
別の好ましい実施形態において、遺伝的損傷は、トランスジェニック遺伝子の挿入であ
る。より好ましい実施形態において、遺伝的損傷は、選択可能マーカー遺伝子により、1
つ以上の内在的免疫グロブリン遺伝子座の、標的化された断裂から生じる。別の好ましい
実施形態において、選択可能マーカーは、HPRT遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ハ
イグロマイシン耐性遺伝子、fl−gal、およびGPTである。別のより好ましい実施
形態において、幹細胞まやはその子孫細胞は、遺伝的損傷についてのホモ接合体である。
【0071】
(ヒトλ軽鎖を含むトランスジェニック動物を作製する方法)
選択およびスクリーニングの後、ES細胞は、本発明のトランスジェニック動物を作製
するために使用され得る。後述の実施例3を参照のこと。一実施形態において、宿主動物
は、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ハムスター、ウマ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシまた
はモルモットから選択されるトランスジェニック動物である。好ましい実施形態において
、宿主動物は、マウスである。別の実施形態において、宿主動物は、動物の内因性免疫グ
ロブリン遺伝子座において1つ以上の遺伝的損傷を含む、トランスジェニック動物である
。より好ましい実施形態において、宿主動物は、Xenomouse(登録商標)系統で
ある。
【0072】
本発明は、トランスジェニック動物を産生する方法を提供し、この方法は、以下を包含
する:
a.融合条件下において、(a)実質的に完全なヒトλ軽鎖遺伝子座またはその部分、
および選択可能マーカーを含むYACを組込んでいる酵母スフェロプラストと、(b)宿
主動物のES細胞を、合わせる工程;
b.選択可能マーカーを組込んでいるES細胞を選択し、それによりヒトλ軽鎖遺伝子
座またはその部分を選択する工程であって、ここで、ヒトλ軽鎖遺伝子座またはその部分
および選択可能マーカーは、胚幹細胞のゲノム内に組込まれる、工程:
c.選択されたES細胞を、宿主胚盤胞に送達し、この胚盤胞を偽妊娠動物レシピエン
トに移植する工程;
d.胚盤胞を発生させ、ヒトλ軽鎖遺伝子座またはその部分を有するキメラ動物を産生
する工程;および
e. キメラ動物を、同種の動物と交配させ、トランスジェニック動物を産生する工程
であって、このトランスジェニック動物が、ヒトλ軽鎖遺伝子座またはその部分をキメラ
動物から受け継いでいる、工程。
【0073】
好ましい実施形態において、ヒトλ軽鎖遺伝子座は、実質的に全長の生殖系列配列であ
る。別の好ましい実施形態において、選択的マーカーは、HPRT遺伝子、ネオマイシン
耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、fl−gal、またはGPTである。別の好
ましい実施形態において、ES細胞は、内因性の免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリ
ンλ軽鎖および/免疫グロブリンκ軽鎖の発現を、欠失している。より好ましい実施形態
において、ES細胞は、ヒト重鎖遺伝子座およびヒトκ軽鎖遺伝子座を、さらに含む。別
の好ましい実施形態において、この方法は、工程(e)のヘテロ接合体トランスジェニッ
ク動物を、別のヒトλ軽鎖遺伝子座についてのトランスジェニック動物ヘテロ接合体と交
配させ、ヒトλ軽鎖遺伝子座についてのトランスジェニック動物ホモ接合体を産生する工
程を、さらに含む。
【0074】
さらに好ましい実施形態において、ヒトλ軽鎖遺伝子座についてのトランスジェニック
動物ヘテロ接合体は、実質的に不活性化された内因性の免疫グロブリン重鎖遺伝子座およ
び免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座、ならびに、必要に応じて実質的に不活性化された内因
性免疫グロブリンλ軽鎖遺伝子座を有し、そしてヒト重鎖遺伝子座およびヒトκ軽鎖遺伝
子座を含むトランスジェニック動物と、交配される。好ましい実施形態において、ヒトκ
軽鎖遺伝子座およびヒトλ軽鎖遺伝子座は、それぞれV領域遺伝子、J領域遺伝子および
定常領域遺伝子を含み、そしてヒト重鎖は、V領域遺伝子、J領域遺伝子、D領域遺伝子
および定常領域遺伝子を含む。ヒトλ軽鎖遺伝子座、ヒト重鎖遺伝子座およびκ軽鎖遺伝
子座の存在についてのトランスジェニック動物ヘテロ接合体は、選択され、互いに交配さ
れる。ヒトλ軽鎖、ヒト重鎖およびκ軽鎖の発現の存在についてのトランスジェニック動
物ホモ接合体が、次いで、選択される。
【0075】
好ましい実施形態において、トランスジェニック動物の子孫は、F1、F、F、F
、F、F、F、F、FまたはF10の世代の、1匹以上の動物である。Xe
noMouseの特別な利点の1つは、一般に安定的であることであり、すなわち、ヒト
免疫グロブリン遺伝子は、マウスの中で欠失されることなく、世代にわたって維持される
。このマウスから作製される細胞株または他の産物もまた、安定的である。好ましい実施
形態において、本発明のトランスジェニック動物の集団の少なくとも95%は、少なくと
も3世代、より好ましくは5世代、さらにより好ましくは7世代または10世代にわたっ
て、遺伝的に安定である。別の好ましい実施形態においては、集団の少なくとも98%ま
たは100%が、遺伝的に安定である。
【0076】
別の好ましい実施形態において、上で記載される方法が、トランスジェニック動物を提
供するために使用され、ここで、このトランスジェニック動物は、ラット、イヌ、サル、
ヤギ、ブタ、ウシ、ハムスター、ウサギ、ウマ、ヒツジ、モルモット、または鳥である。
一般に、この方法は、YACを目的の種由来のES細胞に導入する(例えば、スフェロプ
ラスト融合によって)工程、ES細胞を胚盤胞に導入し、キメラ抗体を作製する工程、そ
して次に適切な交配を行い、ヒトλ軽鎖遺伝子座を含むトランスジェニック動物を得る工
程、を包含する。例えば、米国特許第5,994,619号を、参照のこと。
【0077】
(ヒトλ軽鎖遺伝子座を含むトランスジェニック動物)
組込まれたヒトλ軽鎖遺伝子座を有する宿主動物は、機能する抗体を産生することに関
する、必要な酵素および他の因子を提供する。従って、生殖系列再編成、スプライシング
、体細胞変異などと関わるこれらの酵素および他の因子は、宿主において働き、実質的に
内因性抗体が存在しない状態において、完全なトランスジェニック抗体を、作製する。
【0078】
従って、本発明は、ヒトλ軽鎖を発現し得る、ヒトλ軽鎖遺伝子座を含むキメラ動物お
よびトランスジェニック動物を、提供する。好ましい実施形態において、本発明は、ヒト
λ軽鎖遺伝子座を含むトランスジェニック非ヒト動物を、提供し、ここで、このヒトλ軽
鎖遺伝子座は、安定的にこの非ヒト動物において組込まれ、生殖系列伝達し得る。この動
物は、ヒト遺伝子座についてのヘテロ接合体またはホモ接合体になり得るが、好ましくは
ホモ接合体になる。これらの動物は、完全なヒト抗体およびそのフラグメントを産生する
こと、薬物のスクリーニング、遺伝子療法、ヒト疾患の動物モデル、および遺伝的制御の
動物モデルを含む、広範な種々の目的で使用され得る。
【0079】
一実施形態において、本発明は、V領域遺伝子、J領域遺伝子、および定常領域遺伝子
を含む、実質的に完全なヒトλ軽鎖遺伝子座を含むトランスジェニック動物を、提供する
。別の実施形態において、本発明は、500kbと0.9Mbとの間のヒトλ軽鎖遺伝子
座を含むトランスジェニック動物を、提供する。より好ましい実施形態において、このト
ランスジェニック動物は、600kbと0.9Mbとの間のヒトλ軽鎖遺伝子座を含み、
より好ましくは700kbと0.9Mbとの間、さらにより好ましくは、800kbと0
.9Mbとの間のヒトλ軽鎖遺伝子座を含む。より好ましい実施形態において、このトラ
ンスジェニック動物は、およそ0.9Mbのヒトλ軽鎖遺伝子座を含む。
【0080】
好ましい実施形態において、ヒトλ軽鎖遺伝子座を含む動物は、実質的に不活性化され
た内因性重鎖遺伝子座についてのヘテロ接合体またはホモ接合体である。別の好ましい実
施形態においては、この動物は、実質的に不活性化された内因性κ軽鎖遺伝子座について
のヘテロ接合体またはホモ接合体である。別の好ましい実施形態においては、この動物は
、実質的に不活性化された内因性λ軽鎖遺伝子座についてのヘテロ接合体またはホモ接合
体である。別の好ましい実施形態においては、この動物は、V領域遺伝子、D領域遺伝子
、J領域遺伝子および定常領域遺伝子を含むヒト免疫グロブリン重鎖遺伝子座を、さらに
含む。別の好ましい実施形態においては、この動物は、V領域遺伝子、J領域遺伝子およ
び定常領域遺伝子を含むトランスジェニック免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座を、さらに含
む。
【0081】
より好ましい実施形態において、本発明は、以下を含むトランスジェニック動物を、提
供する:実質的に不活性化された内因性の免疫グロブリン重鎖遺伝子座および免疫グロブ
リンκ軽鎖遺伝子座、ならびに、必要に応じて、実質的に不活性化された内因性免疫グロ
ブリンλ軽鎖遺伝子座;V領域遺伝子、D領域遺伝子、J領域遺伝子および定常領域遺伝
子を含むヒト免疫グロブリン重鎖遺伝子座;V領域遺伝子、J領域遺伝子および定常領域
遺伝子を含むヒト免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座;およびV領域遺伝子、J領域遺伝子お
よび定常領域遺伝子を含むヒト免疫グロブリンλ軽鎖遺伝子座。好ましい実施形態におい
て、この実施形態のトランスジェニック動物は、500kbと0.9Mbとの間のヒトλ
軽鎖遺伝子座を含む。より好ましい実施形態において、このトランスジェニック動物は、
600kbと0.9Mbとの間のヒトλ軽鎖遺伝子座を含み、より好ましくは700kb
と0.9Mbとの間、さらにより好ましくは、800kbと0.9Mbとの間のヒトλ軽
鎖遺伝子座を含む。さらにより好ましい実施形態において、このトランスジェニック動物
におけるヒトλ軽鎖遺伝子座は、実質的に全ての全長ヒトλ軽鎖遺伝子座を含む。
【0082】
別の好ましい実施形態において、トランスジェニック動物は、ヒトλ軽鎖遺伝子座をV
J組換えのために標的化し、そしてヒトλ軽鎖遺伝子座を発現させ得る。好ましい実施形
態において、ヒト重鎖遺伝子座は、トランスジェニック動物において、発現され得る。別
の好ましい実施形態において、ヒトκ軽鎖遺伝子座は、トランスジェニック動物において
、発現され得る。
【0083】
別の好ましい実施形態において、内因性免疫グロブリン重鎖遺伝子座および/またはκ
軽鎖遺伝子座の実質的な不活性化は、遺伝子座への遺伝的損傷の導入の結果である。より
好ましい実施形態において、内因性免疫グロブリン重鎖遺伝子座の実質的な不活性化は、
内因性の免疫グロブリン重鎖遺伝子座および免疫グロブリン軽鎖遺伝子座のJ領域に遺伝
的損傷を含む。別の好ましい実施形態において、内因性軽鎖遺伝子座の実質的な不活性化
は、内因性軽鎖遺伝子座の定常領域および/またはJ領域に遺伝的損傷を含む。
【0084】
好ましい実施形態において、このトランスジェニック動物は、マウス、ラット、イヌ、
サル、ヤギ、ブタ、ウシ、ハムスター、ウサギ、ウマ、ヒツジ、モルモット、または鳥で
ある。より好ましい実施形態において、このトランスジェニック動物は、マウスまたはラ
ットである。さらにより好ましい実施形態において、このトランスジェニック動物は、マ
ウスである。
【0085】
ヒトλ軽鎖遺伝子座が、トランスジェニック動物に導入されることが好ましいが、本明
細書の教示を理解する当業者はまた、ヒト以外の種由来のλ軽鎖も、トランスジェニック
動物に導入し得る。望ましい種の例としては、類人猿、サル、他の非ヒト霊長類、ペット
用動物(イヌおよびネコなど)、および農業的に有用な動物(ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ
、およびブタなど)が、挙げられる。
【0086】
実質的に不活性化された免疫グロブリン重鎖遺伝子座を含む動物は、Bリンパ球免疫グ
ロブリンレセプターを産生し得ず、Bリンパ球系細胞の発達における初期の遮断を生じる
。トランスジェニック免疫グロブリン遺伝子座は、この欠損を補い、Bリンパ球細胞また
はその子孫細胞を発達させる。従って、好ましい実施形態において、本明細書中に記載さ
れるトランスジェニック動物は、実質的に不活性化された免疫グロブリン遺伝子座を含み
、再構築された一次Bリンパ球または二次Bリンパ球の集団をさらに含む。ここで、集団
のレベルは、野生型動物のレベルの5%〜20%、野生型動物のレベルの20%〜40%
、野生型動物のレベルの40%〜60%、野生型動物のレベルの60%〜80%、野生型
動物のレベルの80%〜100%、または野生型動物のレベルの100%〜200%であ
る。
【0087】
(抗体の産生と抗体産生細胞)
本発明のトランスジェニック動物、またはこれに由来するBリンパ球は、ヒトλ軽鎖を
含む単離されたモノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体を産生するために
、使用され得る。さらに、本発明の動物に由来するBリンパ球は、モノクローナル抗体を
産生する細胞株を作製するために使用され得る。一実施形態において、Bリンパ球は、不
死化される。不死化は、当該分野で公知の任意の手段によって達成され得る。この手段と
しては、以下が挙げられるが、これらに限定はされない:骨髄腫細胞との融合によるハイ
ブリドーマの産生;癌原遺伝子を用いたトランスフェクション;腫瘍ウイルスによる感染
;および腫瘍抑制遺伝子の不活性化。不死化細胞は、抗体の産生のために連続的な培養に
より増殖させられ得るか、あるいは、目的の抗体を含む腹水の産生のために適した宿主動
物の腹膜に導入され得る。
【0088】
あるいは、目的の抗体の重鎖および軽鎖をコードする再編成された遺伝子は、本発明の
免疫化トランスジェニック動物由来の一次細胞、またはこのような一次細胞に由来する不
死化細胞から単離され得、組換え的に発現される。再編成された抗体遺伝子は、適切なm
RNAから逆転写され、cDNAを産生し得る。重鎖および軽鎖をコードする核酸分子は
、ベクター上に含まれる発現系に挿入され得、標準的な組換え宿主細胞にトランスフェク
ションされ得る。以下で記載されるように、種々のこのような宿主細胞が、使用され得、
その主な判定基準は、発現制御配列との適合性である。
【0089】
抗体の産生は、次いで、改変された組換え宿主細胞を、宿主細胞の増殖と、コード配列
の発現に適切な条件下で培養することにより行われる。抗体は、次いで培養物から回収さ
れる。好ましくは、発現系は、シグナルペプチドを含むように設計され、それにより、発
現された抗体は、培養液中に分泌される。しかし、細胞内産生もまた、可能である。
【0090】
好ましい一実施形態において、本発明のトランスジェニック動物は、目的の抗体で免疫
化され、一次細胞(例えば、脾臓細胞、または末梢血細胞)が、免疫化トランスジェニッ
ク動物から単離され、そして所望の抗原に特異的な抗体を産生する細胞それぞれが、同定
される。それぞれの細胞由来のポリアデニル化mRNAが、単離され、逆転写ポリメラー
ゼ連鎖反応(RT−PCR)が、可変領域配列にアニールするセンスプライマー(例えば
、ヒトV遺伝子またはVλ遺伝子のFR1領域の大部分または全てを認識する縮重プラ
イマー)、および定常領域配列または連結領域配列にアニールするアンチセンスプライマ
ーを使用して、行われる。VcDNAまたはVλcDNAは、次いで、クローン化され
、任意の適切な宿主細胞(例えば、骨髄腫細胞)において、それぞれの免疫グロブリン定
常領域(重鎖およびλ定常ドメインなど)を有するキメラ抗体として、発現される。Ba
bcook,J.ら,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 93:7843−
48(1996)(本明細書中で、参考として援用される)を、参照のこと。
【0091】
別の実施形態において、所望の抗原に対して様々な親和性を有する抗体のレパートリー
を含むライブラリーを産生するための、ファージディスプレイ技術が、有利である。この
ようなレパートリーの産生のために、免疫化動物由来のB細胞を不死化することは、不要
である。むしろ、一次B細胞が、DNAの供給源として、直接的に使用され得る。B細胞
(例えば、脾臓由来のB細胞)から得られたcDNAの混合物は、発現ライブラリー(例
えば、E.coliにトランスフェクトされたファージディスプレイライブラリー)を調
製するために、使用される。生じた細胞は、望ましい抗原に対する免疫反応性について、
試験される。このようなライブラリー由来の高親和性ヒト抗体を、同定するための技術は
、Griffithsら,EMBO J.,13:3245−3260(1994);N
issimら(同書)pp.692−698およびGriffithsら,同書,12:
725−734によって、記載される。最後に、ライブラリーから得られた、抗原に対す
る所望の大きさ(magniture)の結合親和性を生じるクローンが同定され、そし
て、このような結合の原因である産物をコードするDNAが、回収され、標準的組換え発
現により操作される。ファージディスプレイライブラリーはまた、事前に操作されたヌク
レオチド配列を使用して構築され得、そして同様の様式で、スクリーニングされ得る。一
般に、重鎖および軽鎖をコードするcDNAは、独立的に供給されるか、またはファージ
ライブラリーにおいて結合し、産生のためのFvアナログを形成する。
【0092】
ファージライブラリーは、次いで、抗原および適切なクローンから回収された遺伝物質
に対して最高の親和性を有する抗体について、スクリーニングされる。さらに回数を重ね
たスクリーニングは、単離された元の抗体の、親和性を増大させ得る。
【0093】
一実施形態において、本発明は、ポリクローナルヒト抗血清、およびヒトλ軽鎖を含む
単離されたポリクローナル抗体を、産生する方法を、提供する。この方法は、目的の抗原
を用いて本発明のトランスジェニック動物を免疫化する工程、トランスジェニック動物に
おいてこの抗原に対する免疫応答を誘導する工程、この動物から血清を単離し、ポリクロ
ーナルヒト抗血清を得る工程、および、必要に応じて、抗血清からポリクローナル抗体を
単離する工程を、包含する。当該分野に周知の技術を用いて、単離された抗血清および単
離されたポリクローナル抗体が得られ得る。例えば、Harlowら(既出)を、参照の
こと。一実施形態において、抗体は、例えば、Fc結合部分を有するアフィニティカラム
(プロテインAまたはプロテインGなど)を使用して、単離される。当該分野に公知の方
法を使用して、抗体フラグメント(Fab、Fab’およびF(ab’)フラグメント
など)を、さらに産生し得る。例えば、Harlowら(既出)を、参照のこと。
【0094】
本発明は、特定の抗原に対するヒトモノクローナル抗体またはそのフラグメントを産生
する細胞株を、産生する方法を提供する。この方法は、以下の工程を、包含する:
a. 本明細書中に記載されるトランスジェニック動物を、目的の抗原を用いて免疫す
る工程;
b. このトランスジェニック動物において、この抗原に対する免疫応答を誘導する工
程;
c. このトランスジェニック動物からBリンパ球を単離する工程;
d. このBリンパ球を不死化する工程;
e. 個々の不死化Bリンパ球のモノクローナル集団を作製する工程;および
f. この不死化Bリンパ球をスクリーニングし、抗原に対する抗体を同定する工程、
を、包含する、方法。
【0095】
好ましい実施形態において、不死化する工程は、Bリンパ球と、NSO−bcl2株(
S.Rayら,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,91:5548−555
1(1994))またはP3−X63−Ag8.653細胞(ATCCから入手可能)な
どの適切な骨髄腫細胞株とを融合させ、ハイブリドーマ細胞株を産生することによって、
達成される。別の実施形態において、不死化Bリンパ球は、細胞により産生された上清を
、望ましい抗体の存在についてアッセイすることにより、スクリーニングされる。アッセ
イ工程は、代表的に、ELISAまたは放射免疫測定法(RIA)であるが、任意のスク
リーニング方法が、使用され得る。好ましい実施形態において、本発明は、本明細書中に
記載される方法により産生される、単離されたモノクローナル抗体を、提供する。
【0096】
別の局面において、本発明は、本明細書中に記載されるトランスジェニック動物に由来
する、一次細胞またはその子孫細胞を、提供する。本発明はまた、本明細書中に記載され
るトランスジェニック動物に由来する、不死化細胞またはその子孫細胞も、提供する。好
ましい実施形態において、不死化細胞またはその子孫細胞は、Bリンパ球の起源の細胞で
ある。より好ましい実施形態においては、不死化細胞は、ハイブリドーマである。別の好
ましい実施形態において、不死化細胞は、マウス細胞、ラット細胞、イヌ細胞、サル細胞
、ヤギ細胞、ブタ細胞、ウシ細胞、ハムスター細胞、ウサギ細胞、ウマ細胞、ヒツジ細胞
、モルモット細胞、または鳥細胞に由来する。
【0097】
本発明は、上で記載されるトランスジェニック動物によって産生される抗体レパートリ
ーを提供し、この抗体は、7×10〜1×1011の、異なった抗体の種を含む。別の
より好ましい実施形態において、抗体レパートリーは、1×10〜1×10の、異な
った抗体の種を含む。別のより好ましい実施形態において、抗体レパートリーは、1×1
〜1×10の、異なった抗体の種を含む。別のより好ましい実施形態において、抗
体レパートリーは、1×10〜1×1011の、異なった抗体の種を含む。
【0098】
本発明は、本明細書中で記載されるトランスジェニック動物に由来する抗体を提供し、
ここで、この抗体は、1×10−7M未満の解離定数を有する。好ましい実施形態におい
て、この解離定数は1×10−8M未満、より好ましくは1×10−9M未満、より好ま
しくは1×10−10M未満、より好ましくは1×10−11M未満、そしてさらにより
好ましくは1×10−12M未満または1×10−13M未満である。一般に、抗体は、
1×10−7M〜1×10−12Mの解離定数を、有する。
【0099】
抗体の特異性(すなわち、抗原の広範なスペクトルおよびその独立したエピトープの広
範なスペクトルに対する抗体を産生する能力)は、ヒトの重鎖(V)遺伝子座、κ軽鎖
(Vκ)遺伝子座およびλ軽鎖(Vλ)遺伝子座における可変領域遺伝子に依存すること
が、予測される。ヒト重鎖ゲノムは、免疫グロブリン分子のヒト重鎖の可変領域をコード
する、およそ95のV遺伝子(そのうち41が機能的な遺伝子である)を、含む。ヒト
κ軽鎖遺伝子座は、およそ40のVκ遺伝子(そのうち25が機能的な遺伝子である)を
含み、そしてヒトλ軽鎖遺伝子座は、およそ69のVκ遺伝子(そのうち30が機能的な
遺伝子である)を含み、再編成されたヒトIgλ転写物において、使用されることが見出
されている。ヒト重鎖遺伝子座および軽鎖遺伝子座は、多くの異なった機能的J領域をさ
らに含み、およびヒト重鎖については、多くの異なった機能的D領域をさらに含む。表1
を参照のこと。
【0100】
本発明に従い、ヒトλ軽鎖遺伝子座の全てまたは一部分を含む、トランスジェニックマ
ウスもまた、提供される。ここで、この部分は、60%より大きく、より好ましくは70
%または80%より大きく、そしてさらにより好ましくは90%または95%より大きい
。好ましくは、ヒトλ遺伝子座は、少なくとも2つ以上の、好ましくは3つ全てのλ遺伝
子クラスターを含む。好ましい実施形態において、λ遺伝子座は、Vλ遺伝子ファミリー
I、IV−VII、IXおよびX由来の遺伝子を含む。より好ましい実施形態において、
λ遺伝子座は、全ての10のVλ遺伝子ファミリー由来の遺伝子を含む。
【0101】
本発明は、ヒト重鎖遺伝子座の実質的な部分を有するトランスジェニックマウスをさら
に含む。その上さらに、このトランスジェニック動物は、ヒトκ軽鎖遺伝子座を含む。従
って、好ましい実施形態においては、ヒトのV遺伝子およびVκ遺伝子の10%以上が
、存在する。より好ましくは、V遺伝子およびVκ遺伝子の約20%、30%、40%
、50%、60%またはさらに70%またはそれ以上が、存在する。好ましい実施形態に
おいて、Vκ軽鎖遺伝子座の近位の領域由来の32の遺伝子、V重鎖遺伝子座上の66
の遺伝子、およびVλ軽鎖遺伝子座上の69の遺伝子を含む構築物が、使用される。理解
されるように、遺伝子は、配列順に(すなわち、ヒトゲノムにおいて見出される順序で)
、もしくは非配列順で(すなわち、ヒトゲノムにおいて見出される以外の順序で)、また
はこれらの組み合わせで、含まれ得る。従って、一例として、V遺伝子座、Vκ遺伝子
座およびVλ遺伝子座のいずれかの配列部分全体が、使用され得るか、もしくは、V
伝子座、Vκ遺伝子座およびVλ遺伝子座における種々のV遺伝子は、全体の配列編成を
維持しつつ、省略され得るか、または、V遺伝子座、Vκ遺伝子座およびVλ遺伝子座
におけるV遺伝子は、再配列され得る。好ましい実施形態において、挿入された遺伝子座
全体が、実質的に、ヒトにおいて見出されるような生殖系列構造において、提供される。
遺伝子座、Vκ遺伝子座およびVλ遺伝子座由来の遺伝子の様々な群を含むことは、
増大された抗体特異性、および結局は増大された抗体親和性に導く。
【0102】
さらに、好ましくは、このようなマウスは、D領域全体、J領域全体、ヒトμ定常
領域を含み、かつ追加の抗体のアイソタイプをコードするため、またはこれらのアイソタ
イプを産生するための他のヒト定常領域を、付加的に備え得る。このようなアイソタイプ
は、γ、γ、γ、γ、α、ε、およびδをコードする遺伝子、ならびに適切な交
換配列または調節配列を有する他の定常領域コード遺伝子を、含み得る。理解されるよう
に、そして以下でより詳細に議論されるように、種々の交換配列または調節配列は、任意
の特異的な定常領域選択に関連して、適切に利用され得る。
【0103】
表1は、ランダムなV−D−J連結およびκ軽鎖との組み合わせに厳格に基づいた、ヒ
トにおいて起こり得る抗体の組み合わせの多様性を示す(N−付加、欠失または体細胞突
然変異を考慮しない)。これらの考察に基づき、任意の特異的なアイソタイプの、1×1
−6の抗体の組み合わせが、ヒトにおいて起こり得る。
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】



表1において提供された計算は、N−付加または体細胞突然変異を計算に入れていない
。従って、本発明に従うマウスは、実質的な抗体多様性を提供することが、理解される。
【0106】
ヒトλ軽鎖遺伝子座の可変領域を含むことによる可変領域の種類および数の増加は、抗
体の多様性および抗体の特異性を増大させる。本発明に従うトランスジェニック動物は、
従って、それぞれの抗原または免疫原において、広範な群のエピトープを含む広範な群の
抗原に対して、免疫応答を引き起こし得る。本発明に従って産生される抗体はまた、増大
された親和性を保有する。
【0107】
(核酸、ベクター、宿主細胞および抗体を作製する組換え方法)
本発明は、トランスジェニック動物から単離された核酸分子を提供し、ここで、この単
離された核酸分子は、ヒトλ軽鎖ポリペプチドまたはその抗原結合部位をコードする。好
ましい実施形態において、この核酸分子は、ヒトλ軽鎖を産生するBリンパ球またはその
子孫細胞から単離される。好ましい実施形態において、Bリンパ球の子孫細胞は、ハイブ
リドーマである。別の好ましい実施形態において、単離された核酸分子は、ヒト抗体の1
〜3の間のCDR領域をコードする配列を含む。好ましい実施形態において、単離された
核酸は、ヒトλ軽鎖ポリペプチドまたは目的の特定の抗原に結合するその抗原結合部分を
コードする。
【0108】
別の好ましい実施形態において、本発明は、本明細書中に記載される核酸分子またはそ
のフラグメントを含むベクターを、提供する。より好ましい実施形態において、このベク
ターは、核酸分子に作動可能に連結された発現制御配列を、さらに含む。本発明はまた、
トランスジェニック動物から単離された核酸分子またはこの核酸分子を含むベクターを含
む宿主細胞も、提供する。ここで、この核酸分子は、目的の抗原に特異的に結合するヒト
λ軽鎖またはその抗原結合部位を、コードする。
【0109】
本発明はさらに、トランスジェニック動物から単離された、ヒト重鎖もしくはその抗原
結合部分をコードする核酸分子ならびにヒトλ軽鎖もしくは目的の抗原に結合するその抗
原結合部分をコードする単離された核酸分子、またはこれらの核酸分子を含むベクターを
含む単離された宿主細胞を提供する。
【0110】
好ましい実施形態において、宿主細胞は、ハイブリドーマ細胞、細菌細胞、酵母細胞、
昆虫細胞、両生類細胞および哺乳類細胞である。より好ましい実施形態において、宿主細
胞は、マウス細胞、ラット細胞、イヌ細胞、サル細胞、ヤギ細胞、ブタ細胞、ウシ細胞、
ハムスター細胞、ウサギ細胞、ウマ細胞、ヒツジ細胞、モルモット細胞、または鳥細胞で
ある。より好ましい実施形態において、哺乳類細胞細胞は、HeLa細胞、NIH 3T
3細胞、CHO細胞、293細胞、BHK細胞、VERO細胞、CV−1細胞、NS/0
細胞、またはCOS細胞である。
【0111】
本発明は、トランスジェニック動物から同定され、そして目的の抗原に特異的に結合す
る、ヒトλ軽鎖もしくはその抗原結合部位、またはヒトλ軽鎖およびヒト重鎖もしくはこ
れらの抗原結合部位の両方を、組換え的に産生する方法を、提供する。この方法は、本明
細書中で記載される、宿主細胞を核酸分子が発現される条件下で培養する工程を、包含す
る。
【0112】
本発明は、本明細書中で記載される核酸分子を含む非ヒトトランスジェニック動物を提
供し、ここで、この非ヒトトランスジェニック動物は、この核酸分子を発現する。
【0113】
本発明は、目的の抗原に特異的に結合するヒト抗体の、免疫グロブリン重鎖またはその
抗原結合部位をコードする単離された核酸分子、および免疫グロブリンλ軽鎖またはその
抗原結合部位をコードする単離された核酸分子を含む非ヒトトランスジェニック動物を提
供し、ここで、この動物は、この核酸分子を発現する。好ましい実施形態において、本明
細書中で記載される非ヒトトランスジェニック動物は、マウス、ラット、イヌ、サル、ヤ
ギ、ブタ、ウシ、ハムスター、ウサギ、ウマ、ヒツジ、モルモット、または鳥である。別
の好ましい実施形態において、単離された核酸分子またはその一部分の発現によって生じ
るヒト抗体は、動物のBリンパ球またはその子孫細胞に由来する細胞の表面上において、
発現される。別の好ましい実施形態において、単離された核酸分子またはその一部分の発
現によって生じるヒト抗体は、動物のリンパ球、血液、乳、唾液、または腹水に分泌され
る。
【0114】
以下の実施例は、説明として提示されるのであって、限定としては提示されない。本明
細書中で使用される手段および一般的方法は、Birrenら,Genome Anal
ysis:A Laboratory Manual,Cold Spring Har
bor Laboratory Press(1999)(本明細書中で参考として援用
される)において記載される。YACのクローニング、単離、操作および分析についての
手段および一般的方法は、Birrenら(既出)Volume3,Chapter 5
およびAppendices 1−5(本明細書中で参考として援用される)において記
載される。
【実施例1】
【0115】
(ヒト免疫グロブリンλ軽鎖配列を含むYACの同定)
ヒト免疫グロブリンλ軽鎖遺伝子座の部分および全てのVλおよびCλについてのプロ
ーブを含むYACは、Medical Research Center(MRC,Ed
inburgh,UK)から得た。L1 YACおよびL2 YACを、最初に、以下の
目的で分析した:(1)正確なヒト免疫グロブリンλ遺伝子座の存在を確認するため;(
2)免疫グロブリンλ遺伝子配列の安定性を評価するため;(3)免疫グロブリンλ遺伝
子配列の方向付けの決定するため;(4)YACにおける酵母マーカーの存在を確認する
ため。
【0116】
YACを含む酵母を、SC−URA寒天培地上に、個別のコロニーを得るために線状に
培養し(Birrenら(既出)Vol.3,pp.586−87を参照)、そして3〜
4日、30℃で、コロニーが出現するまでインキュベートした。単一のコロニーを、5m
LのSC−URA液体培地中に接種し、飽和するまで増殖させた。凍結ストックおよびD
NA調製物を、作製した(酵母プラグ)。Birrenら(既出)Vol.3,pp.3
91−395を参照のこと。
【0117】
ヒト免疫グロブリンλ軽鎖DNAの存在および完全性を確認するため、CHEF−DR
II装置(Bio−Rad,Hercules,CA)を用いて、非切断のL1およびL
2のYAC DNAを、パルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)にかけた。DNA
を、0.8%アガロース/0.5×TBEゲルを通して200ボルトで電気泳動し、そし
てサイズマーカーとして使用した重合体化λDNAラダー(New England B
iolabs Cat.No.340)と比較した。ゲルを、交流の60秒パルスに15
時間晒し、次いで90秒パルスに10時間晒した。電気泳動の後、ゲルを、EtBrを用
いて染色し、撮影し、0.2N HCl中で脱プリン化させ、そしてNaOHを用いて変
性させた。
【0118】
ゲル中のYAC DNAを、ナイロンメンブレン(Genescreen,NEN,B
oston,Massachusetts)にトランスファーし、そしてメンブレンを、
標準的技術を使用してプローブ検出し(例えば、Maniatisら,Molecula
r Cloning:A Laboratory Manual,Cold Sprin
g Harbor Press(1989))、L1 YACおよびL2 YACのサイ
ズを決定した。このプローブは、pYAC4(GenBank Accession N
o.U01086)の5.4kb EcoRI/BamHIフラグメント(ヌクレオチド
6008〜11454)の32P−標識化TRP遺伝子であった。サザンブロット分析は
、L1 YACが、およそ1Mbであり、L2 YACが、およそ450kbであること
を、明らかにした。その上、L1 YACにおける免疫グロブリンλ軽鎖配列が、48時
間の間、安定であることを見出した(Birrenら(既出)Vol.3,pp.586
−87を参照)。
【0119】
YACの大規模構造の分析に続き、L1 YACおよびL2 YACのDNA分子を、
EcoRI切断およびサザンブロッティングにより分析し、生殖系列Vλ遺伝子の存在を
確認した。L1 YAC DNAをMedical Research Council
から得られたVλ配列を用いてプローブ検出した時、Frippiatら(Hum.Mo
l.Genet.4:987−991(1995))の開示により予想されたのと一致す
るバンドを観察し、L1 YACが、Vλ遺伝子の大半を有することを、確認した。プロ
ーブは、当業者によって容易に産生され得る。例えば、Frippiatら,pg.98
4(既出)、Kawasakiら,Genome Res.7:250−261(199
7);Williamsら,J.Mol.Biol.264:220−232(1996
),pp.226−229を、参照のこと。これらは、Vλ遺伝子に由来するプローブを
記載する。しかし、L1 YACは、Vλ/JC連結部の3’末端の再編成(AscI部
位の欠失により明らかになった)、および、Williamsら(J.Mol.Biol
.264:220−232(1996))の従来技術により、Vλ遺伝子(3a2、2a
1 4c、3qおよび3r)の欠失を含む。図1を参照のこと。
【0120】
L2 YACをVλ配列によりプローブ検出した時、ヒト免疫グロブリンλ軽鎖遺伝子
座の3’末端から、L1 YACの3’末端上で再編成された生殖系列Vλ領域を含む1
1Vλ遺伝子を、検出した。L2 YACはまた、生殖系列Jλ遺伝子およびCλ遺伝子
も含むことが、見出された。
【0121】
L1およびL2のYACアームの方向付けを、サザンブロット分析により、決定した。
L1 YAC DNAおよびL2 YAC DNAを、PmeI、NotI、AscI、
RsrII、およびMluIを用いて切断した。切断したDNAを、PFGEにより分離
し、そして次いでナイロンメンブレンにトランスファーした(本質的に上で記載されるよ
うに)。このブロットを、Cλ配列、免疫グロブリンλ軽鎖エンハンサー、アンピシリン
遺伝子配列、およびURA3遺伝子配列を用いて連続的にプローブ検出し、そして参考の
方向付けと比較した。Kawasakiら,Gennome Res.7:250−26
1(1997)を、参照のこと。Birrenら(既出)Vol.3,pp.417−4
20もまた、参照のこと。L1 YACアームおよびL2 YACアームの方向付けは、
互いに反対であり、従って、直接の組換えには適切でない。
【実施例2】
【0122】
(全長ヒト生殖系列免疫グロブリンλ遺伝子座を含むYAC構築物)
生殖系列ヒト免疫グロブリンλ軽鎖遺伝子座の全体を単一のYAC上で再構築するため
、L2 YAC配列を、L1 YAC配列と、適切な向きで再結合しなければならなかっ
た。λ遺伝子座におけるヌクレオチドに番号をつけるため、完全なヌクレオチド配列(K
awasaki(既出))を使用した。Kawasakiのコンティーグ地図に、Gen
bank(Awww.ncbi,nlm.nih.gov/Genbank/Genba
nkSearch.html)からアクセスし、近接の1Mbの核酸配列内に、ベクター
NTIソフトウェア(InforMax,North Bethesda,MD)を用い
て再集合させた。この配列は、第一Vλ遺伝子の5’およそ125kbを含み、そして3
’エンハンサーまでを含む。
【0123】
(pYAC−5’およびpYAC−3’の構築物)
第一工程は、L2 YACを、L1 YACとの組換えに適切な、短縮されたアームを
含むように、改変する工程であった。図2を参照のこと。本発明者らは、L2 YACの
5’末端および3’末端の両方についての標的ベクター(それぞれpYAC−5’および
pYAC−3’)を構築し、115kbのYACを形成した。
【0124】
pYAC−5’を構築し、L2 YACの5’末端を標的化するため、L2 YAC
DNAの1,330bpのフラグメント部分を、PCRによって増幅させ、次いで、pC
R2.1クローニングベクター(Invitrogen,Carlsbad,CA)内に
クローン化させた。PCRのために使用した5’プライマー配列は、5’−CGGACC
GCCTCATTTGTTGTCAGATCATG−3’および方向限定クローニングの
ための合成RsrII部位を、含んだ。使用した3’プライマー配列は、5’−GGCC
GGCCAGCAGAATACATGTTATCTT−3’および方向限定クローニング
のための合成FseI部位を、含んだ。
【0125】
標的ベクターをpYAC4において構築した。このpYAC4は、YACを構築するた
めに一般的に使用されるベクターであり、ARS配列、CEN配列、テロメア配列、UR
A配列およびTRP配列を含む(KuhnおよびLudwig,Gene 141:12
5−7(1994)を参照のこと)。pYAC−5’を構築するため、pYAC4をNo
tIで切断し、そしてアニールされたリンカー(制限酵素サイトNotI(不活性化)−
RsrII−NruI−ClaI−FseI−NotI、ならびに配列5’−GGCCA
TCGGACCGTCGCGAATCGATGGCCGGCCGC−3’、および5’−
GGCCGCGCCCGGCCATCGATTCGCGACGGTCCGAT−3’を有
する)と連結させた。これは、RsrII、NruI、ClaI、FseIおよびNot
I部位を含む、多数のクローニング部位を有する、pYAC4由来ベクターを産生した。
リンカーの方向を、NotI/SpeI切断により、確認した。次いで、L2 YAC
5’相同性フラグメントを、RsrII/FseIカセットとしてpCR2.1から単離
し、そしてpYAC由来ベクターのRsrII部位およびFseI部位に連結させた。p
YAC−5’の方向付けおよび挿入部分を、制限切断分析によって確認した。
【0126】
pYAC−3’を構築するため、3’エンハンサーのL2 YAC 3’の1,310
bpフラグメントを、PCRにより増幅させ、pCR2.1クローニングベクター内にク
ローン化させた。PCRのための5’プライマー配列は、5’−ACGCGTTGATG
AGCAACCACAGGCCT−3’および方向限定クローニングのための合成Mlu
I部位を含んだ。3’プライマー配列は、5’−GGCCGGCCAGTCCATCCT
GGCTTCCTTC−3’および方向限定クローニングのための合成FseI部位を含
んだ。pYAC4を、NotIおよびBamHIを用いて切断し、そしてCEN領域、A
RS領域、およびTRP領域ならびにテロメア領域を含む5.5kbベクターフラグメン
トを、アガロースゲル電気泳動法により単離し、アニールされたリンカー(制限酵素サイ
トNotI(不活性化)−BglII−FseI−NruI−ClaI−MluI−No
tI−BamHI(不活性化)、ならびに配列5’−GGCCATAGATCTGGCC
GGCCTCGCGAATCGATACGCGTGC−3’、および5’−GATCGC
GGCCGCACGCGTATCGATTCGCGAGGCCGGCCAGATCTAT
−3’を有する)と連結させた。次いで、L2 YAC 3’相同性フラグメントを、N
otI/BamHIカセットとして単離し、そして生じたベクターのNotI部位および
BamHI部位に連結させた。生じた中間産物プラスミドを、pYAC−3’int2と
名付け、制限切断分析によって確認した。リンカーは方向限定的にクローン化させたため
、リンカーの向きは確認しなかった。
【0127】
pYAC4と異なり、pYAC−3’int2は、URAアームを欠き、およそ5kb
短い。pYAC−3’int2を、AatIIを用いて切断し、AatII−EcoRI
−AatIIリンカーを、AatII部位にクローン化させた。最終的なpYAC−3’
標的ベクターを構築するため、生じたプラスミドをEcoRIおよびXbaIを用いて切
断し、(これによりTRP遺伝子の部分を除去し、)そしてpLUSプラスミド由来のL
YS2遺伝子(ATCC No.77407;Hermansonら,Nucleic
Acids.Res.19:4943−4948(1991))を含む4.5kb Ec
oRI/XbaIカセットと連結させた。
【0128】
(クローン6−23の構築)
L2 YACを含む酵母を、pYAC−5’標的ベクターおよびpYAC−3’標的ベ
クターを用いて、形質転換させた。酵母を、まずSC−URA液体培地中で24時間、3
0℃でインキュベートし、次いで、YPDA培地中で4〜5時間、30℃でインキュベー
トした。細胞を、BamHI直鎖化pYAC−3’およびpYAC−5’由来の5kb
BamHI/FseIフラグメント(URAアーム)と同時に、LiAc形質転換手順を
使用して、形質転換した。Scheistlら,Curr.Genet.16:339−
346(1989)を、参照のこと。形質転換株を、SC−LYS寒天培地上でプレート
培養(室温で4〜5日、クローンが出現するまでインキュベートする)した。
【0129】
クローンを選び取り、そしてSC−LYSプレートおよびSC−TRPプレート上で増
殖させ、YAC組換え体(URA+、LYS+、TRP−)を同定した。図2を参照のこ
と。クローンの回収後、YAC DNAを、単離し、PPGEにより試験して改変された
L2YACの大きさを見積もり、そしてVλプローブを使用したサザンブロット分析によ
り、Cλ遺伝子(HindIII切断およびBamHI切断)、Vλ遺伝子(EcoRI
切断)、およびλエンハンサー(StuI切断)の存在を確認した。短縮されたL2 Y
ACは、およそ115kbの大きさであり、クローン6−23と名付けられた。図2を参
照のこと。
【0130】
(クローン6−23の遺伝的分析)
YAC6−23を、YPH925株(MATa ura3−52 lys2−801
ade2−101 his3,ATCC #90834)内に送達した。YPH925お
よび6−23YAC(MATa)を、YPDAプレート上で、およそ1cmのパッチに
、30℃で一晩増殖させた。翌朝、これらをYPDAプレート上で合わせ、30℃で6時
間、増殖させた。生じた一倍体と二倍体との混合物を、SC−URA−LYS−HISプ
レートに移した。このプレートは、生じた二倍体ではなく、両一倍体に対する選択を提供
する(一倍体中の2つのHIS対立遺伝子の相補性による)。この細胞を、個々のコロニ
ーが現れるまで、2日間30℃でインキュベートした。6つの独立したコロニーを選び出
し、YPDAプレート上のおよそ1cmのパッチで増殖させ、一晩インキュベートし、
胞子形成プレート上にレプリカをプレート培養し、そして室温で4〜5日インキュベート
した。Birrenら(既出)Vol.3,pp.495−501を、参照のこと。
【0131】
細胞を、胞子形成について顕微鏡的に試験した(胞子形成は、5%以上であった)。胞
子形成された細胞を、SC−URA−LYSプレート上で4〜5日増殖させた。このプレ
ートは、カナバニンおよびシクロヘキシミドを用いて補強されたプレートであり、これに
より、二倍体の形成を防ぎ、そして6−23YACを保有する細胞を選択した。さらなる
分析のために、コロニーを選び出し、SC−LYS培地中で増殖させた。
【0132】
接合型を、接合クローン(mata clone)を同定するために設計されたPCR
アッセイにより、調べた。Birrenら(既出)Vol.3,pp.442を参照のこ
と。プライマー配列は、5’−AGTCACATCAAGATCGTTATGG−3’;
5’−GCACGGAATATGGGACTACTTCG−3’;および5’−ACTC
CACTTCAAGTAAGAGTTTG−3’であった。Huxleyら,Hum.M
ol.Genet.5:563−569(1990)を、参照のこと。クローンのおよそ
半分は、a接合型(a−mating type)であり、そして半分は、a接合型であ
った。
【0133】
MATaクローンがインタクトな6−23YACに保有されることを確認するため、こ
れらをPFGEおよびサザンブロット分析により(上の実施例1において記載されるよう
に)、さらに分析した。この結果は、6−23 YACがインタクトであり続け、そして
株がL1 YACクローンと接合する準備ができていたことを、示した。
【0134】
6−23クローンを、カナバニン(CAN)およびシクロヘキシミド(CYH)に対す
る耐性について、さらに分析した。カナバニンおよびシクロヘキシミドは、L1 YAC
保有クローンの接合の後の一倍体の選択、および胞子形成のために使用した。Birre
nら(既出)Vol.3,pp.495−501を参照のこと。
【0135】
(bcl−aのpYAC−5’への導入)
ES細胞への導入およびトランスジェニックマウスの生殖系列への導入の後に、免疫グ
ロブリンλYACのコピーの数を決定するため、短縮されたbcl−a遺伝子もまた、p
YAC−5’の中にクローン化させた。遺伝子を、配列5’−GGGGTATTTGTG
GAATTACTT−3’の第一プライマー、および配列5’−CCCATCTGGAT
TTCTAAGTGA−3’の第二プライマーを使用したマウスDNAのPCR増幅によ
り、得た。PCR増幅された産物を、次いで、pCR2.1クローニングベクターに、ク
ローン化させた。bcl−a遺伝子を含むプラスミドを、次いで、NsiIを用いて切断
し、NsiI−NsiIフラグメントを捨て、そしてこのプラスミドを連結させ、173
bp bcl−a配列を作製した。pCR2.1における分断されたbcl−a遺伝子の
向きを、制限切断分析により、決定した。
【0136】
生じたプラスミドを、BamHIを用いて切断し、末端をKlenowフラグメントを
用いて埋め、そしてApaIを用いて切断した。170bp bcl−aフラグメントを
、単離し、pYAC−5’ベクターのNruI部位およびApaI部位にクローン化させ
た(上の実施例2で記載したように)。
【0137】
(HPRTのL1 YACへの導入)
非ヒト動物ES細胞を、YACを保有する酵母スフェロプラストと融合させ、ヒト免疫
グロブリンλ軽鎖遺伝子座を有するES細胞を作製することは、内因性HPRT機能につ
いて陰性であるES細胞における選択のための哺乳類選択可能マーカー(例えば、HPR
T)を含むYACにより、容易にされる。従って、ヒト免疫グロブリンλ軽鎖遺伝子座の
マウスES細胞への導入の、効果的な検出を支持するYACを作製するため、HPRTを
L1 YACに導入するための標的ベクターを、構築した。選ばれた戦略はまた、最も5
’側のVλ遺伝子(Vλ1〜Vλ27)の直ぐ上流の、およそ22kbの領域の標的化に
より、L1 YACの短縮を生じる。ADE選択可能マーカーおよびHPRT選択可能マ
ーカーを含むpREPプラスミド(Mendezら,Genomics 26:294−
307(1995))を、BamHIを用いて部分的に切断し、突出末端をKlenow
を用いて埋めて平滑末端を作り、再連結させた。消失したBamHI部位を、BamHI
およびNotIを用いた切断により、決定した。ADE2遺伝子およびHPRT遺伝子を
、BamHI/NotIカセットとして、pYAC−5’のBamHI/NruI部位に
クローン化させた。
【0138】
次に、Vλ1〜Vλ27の5’領域由来の950bpのPCR産物を、L1 YACか
ら増幅させた。この配列は、配列5’−CGGACCGCAGAGTGCGCCAAGA
TTGTA−3’を有し、かつRsrII部位を有する5’プライマー、および配列5’
−GGCCGGCCTGTGCTGCTGGATGCTGTT−3’を有し、かつFse
I部位を有する3’プライマーを用いたPCRにより、増幅させた。このフラグメントを
、pYAC−5’プラスミドのRsrII部位およびFseI部位に、クローン化させた
。このベクターを、次いで、NotIを用いて直線化させ、L1 YACを有する酵母に
、LiAc形質転換法を用いて、形質転換させた。転換された酵母細胞を、SC−ADE
プレート上でプレート培養し、標的化YACを選択した。コロニーを選び出し、酵母クロ
ーンにおけるYACを、PFGEおよびサザンブロット分析により、(上の実施例1で記
載したように)分析した。Vλ遺伝子、Jλ遺伝子およびCλ遺伝子の内容は、元のL1
YAC(上述)と同一であることが、見出された。
【0139】
(完全なλ軽鎖遺伝子座を含むYACの産生)
完全なヒト生殖系列免疫グロブリンλ軽鎖遺伝子座を含むYACを、6−23株をHP
RTおよびbcl−aを含むL1 YACを含む酵母クローン(上述)と接合させること
により、産生した。酵母細胞を、SC−HIS−LYS−ADE上にプレート培養して一
倍体を除去し、そしてクローンを選び出し、PFGEおよびサザンブロット分析により、
(実施例1において上で記載したように)解析した。この分析は、両YACが存在するこ
とを明らかにし、そして全てのλ遺伝子エレメントが存在することを確認した。完全なヒ
ト免疫グロブリンλ軽鎖遺伝子座を含むYACの産生のための減数分裂を誘導するため、
胞子形成プレート上で増殖した二倍体を、次いで、SC−ADE−LYS+CYH+CA
Nプレートに移した。Birrenら(既出)Vol.3,pg.495を参照のこと。
【0140】
クローンを選び出し、そしてPFGEおよびサザンブロット分析により、上の実施例1
で記載したように、分析した。生殖系列構造において、ヒトλ軽鎖遺伝子座全体を含むY
ACを、同定し、yLと名付けた。20のクローンが富栄養培地(YPDA)および選択
培地(SC−ADE−LYS)において増殖した場合、不安定性は観察されなかった。
【実施例3】
【0141】
(遺伝し得るヒト免疫グロブリンλ軽鎖遺伝子座を保有するマウスの産生)
酵母クローンのスフェロプラストを、Zymolyase 20T(1.5mg ml
−1)を用いて産生し、次いで、3B1ES細胞と融合し、ES/酵母細胞融合体(ES
Y)を作製した(例えば、Jakovitsら,Nature 362:255−8(1
993)およびWO98/24893号において、記載される。これらは両方とも、本明
細書中において、参考として記載される)。細胞を、HAT培地を用いて、融合後48時
間から、選択を始めた。クローンを選び出し、広げた。ES細胞株を、次いで、サザンブ
ロットによって、ヒトIgλYACの存在および完全性について、上の実施例2において
作製されたYACにまたがるプローブを用いて、分析した。
【0142】
7つのES細胞株がヒトIgλYACインタクトを含むことが、見出された。ESY陽
性細胞クローンを広げ、当該分野で周知の技術を用いて、適切なマウス胚盤胞(例えば、
C57BL/6J)内に注射した。注射した胚盤胞を、偽妊娠C57BL/6代理母の子
宮内に置いた。キメラ動物は、被膜色によって同定した。キメラマウスを、C57B6メ
スと交配させた。ES細胞ゲノムの生殖系列の伝達を、生じた子孫の被膜色により、検出
した。アグーチの被膜色の仔は、ES細胞ゲノムの生殖系列伝達を示す(黒い被膜色の仔
は、ES細胞ゲノムを伝達されていない)。
【0143】
キメラマウスのアグーチ色の子孫を、そのゲノムにおけるヒトIgλYACの存在につ
いて、分析した。尾の生検を、アグーチの仔から採取し、DNAを、標準的技術を使用し
て回収し、得られたDNAをPCRにより、ヒトIgλDNAの存在について分析した。
トランスジェニックの仔を、インタクトなヒトIgλトランスジーンの保有と完全性につ
いて、実施例1に概ね示されたプローブを使用したサザンブロット分析により、分析した

【実施例4】
【0144】
(ヒト免疫グロブリンの重鎖遺伝子およびλ軽鎖遺伝子を含むトランスジェニックマウ
スの産生)
ヒト免疫グロブリンの重鎖遺伝子、κ軽鎖遺伝子、およびλ軽鎖遺伝子、ならびに実質
的に不活性化された内因性免疫グロブリンの重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子を含むトランス
ジェニックマウスを作製するために、実施例3において記載される方法により作製された
トランスジェニックマウスを、ヒト免疫グロブリンの重鎖遺伝子およびκ軽鎖遺伝子を含
み、かつ実質的に不活性化された内因性免疫グロブリンの重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子を
有するマウスと、交配させた。使用され得るマウスとしては、XenoMouse I系
統(例えば、Greenら,Nature Genetics 7:13−21(199
4)およびWO98/24893を参照)、L6系統(例えば、WO98/24893号
を参照)、XenoMouseIIa系統(例えば、WO98/24893号を参照)お
よび認識不能交換領域を含むマウス(例えば、WO00/76310号)が、挙げられる
(これらの文献はすべて、参考として援用される)。米国特許第5,939,598号お
よび同第6,162,963号も、参照のこと(両方とも、参考として援用される)。F
世代のマウスは、1リットルの混合された遺伝子型を含んだ。さらなる交配を行い、望
ましい遺伝子型を得た。ヒト免疫グロブリンの重鎖遺伝子、κ軽鎖遺伝子、およびλ軽鎖
遺伝子を含むトランスジェニックマウスを、XenoMouse−KLと名付けている。
ヒト免疫グロブリンの重鎖遺伝子およびλ軽鎖遺伝子を含むトランスジェニックマウスを
、XenoMouse−Lと名付けている。
【0145】
あるいは、上の実施例2において作製されたYACを保有するスフェロプラストは、ヒ
ト免疫グロブリンの重鎖遺伝子およびκ軽鎖遺伝子および/または実質的に不活性化され
た内因性免疫グロブリンの重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子を含むマウス由来のES細胞と、
融合される。これらのES細胞は、XenoMouse(登録商標)系統またはDI系統
(例えば、米国特許第5,939,598号および同第6,162,963号ならびにW
O98/24893(本明細書中で参考として援用される)を、参照のこと。)の由来で
あり得る。生じたESY細胞は、次いで、胚盤胞内に注射され、偽妊娠マウスに移植され
、そして時期まで育てられる(実施例3に記載のように)。
【実施例5】
【0146】
(ヒト免疫グロブリンの重鎖遺伝子およびλ軽鎖遺伝子を含むトランスジェニックマウ
スの産生)
別の実施形態において、ヒト免疫グロブリンの重鎖遺伝子およびλ軽鎖遺伝子、インタ
クトなマウスκ鎖遺伝子またはλ鎖遺伝子、ならびに実質的に不活性化された内因性免疫
グロブリンの重鎖遺伝子およびκ軽鎖遺伝子またはλ軽鎖遺伝子を含むトランスジェニッ
クマウスが、作製される。実施例3において記載された方法により作製されたトランスジ
ェニックマウスは、ヒト免疫グロブリン重鎖遺伝子および実質的に不活性化された内因性
免疫グロブリン重鎖遺伝子を含むマウスと、交配させられる。これらのマウスは、例えば
、米国特許第5,939,598号および同第6,162,963号に記載される。F
世代のマウスは、1リットルの混合された遺伝子型を含んだ。望ましい遺伝子型を得るた
めに、さらなる交配が行われ得る。
【0147】
あるいは、上の実施例2において作製されたYACを保有するスフェロプラストは、ヒ
ト免疫グロブリンの重鎖遺伝子およびκ軽鎖遺伝子またはλ軽鎖遺伝子を含むマウス由来
のES細胞と、融合させられる。生じたESY細胞は、次いで、胚盤胞内に注射され、偽
妊娠マウスに移植され、そして時期まで育てられる(実施例3に記載のように)。
【実施例6】
【0148】
(XenoMouse−KLマウスによる、B細胞の発達およびヒト抗体の産生)
さらにXenoMouse−KLトランスジェニックマウスを特徴付けるため、末梢血
液および脾臓リンパ球が、8〜10週齢のマウスおよびコントロールから、単離される。
この細胞は、Lympholyte M(Accurate)(San Diego,C
A)上で精製され、そして精製された抗マウスCD32/CD16 Fc レセプター(
Pharmingen,#553142)(San Diego,CA)で処理され、F
cレセプターへの非特異的結合を遮断される。次に、細胞は、種々の抗体を用いて染色さ
れ、FACS Vantage(Becton Dickinson,CELLQues
t software)にて分析される。XenoMouse−KL細胞を染色するため
に使用される抗体のパネルとしては、以下が挙げられる:Cy−5標識ラット抗マウスC
D19(Caltag,#RM7706);FITC標識抗ヒトIgM(Pharmin
gen,#555782);PE標識抗ヒトIgM(PharMingen,#3415
5X);FITC標識抗ヒトIgλ(PharMingen,#555796);PE標
識抗ヒトIgκ(PharMingen,#555792);FITC標識抗マウスIg
λ(Pharmingen,#553434)。
【0149】
コントロール野生型129xB6マウスの染色のために使用された抗体としては、Cy
−5標識ラット抗CD19(Caltag,#RM7706)、FITC標識抗マウスI
gM(PharMingen,#553408);FITC抗マウスκ(PharMin
gen,#550003);PE抗マウス(PharMingen,#559940)が
、挙げられた。
【0150】
XenoMouseG1系統およびXenoMouseG2系統の由来の1〜4匹の動
物の脾臓およびリンパ節に由来する、ヒトλ軽鎖およびヒトκ軽鎖の両方を作るリンパ球
を、フローサイトメトリを使用して、評価し、XenoMouse G2およびXeno
Mouse G1(κ軽鎖しか作らない)および野生型B6/129マウスと比較した。
ヒトλ軽鎖およびヒトκ軽鎖の両方を作るXenoMouse系統は、XMG2−KLお
よびXMG1−KLであり、これらは、それぞれヒトIgG2およびヒトIgG1を作る
。XMG2−KLマウスおよびXMG1−KLマウスは、B細胞の区画における効果的な
再構築、およびヒトIgλ鎖の実質的な発現を、示した。ヒトIgκおよびヒトIgλの
両方を発現するXenoMouse系統において、ヒトIgκ:ヒトIgλの比率は、ヒ
トにおいて見られるように、およそ60:40であった。従って、ヒト免疫グロブリンの
重鎖遺伝子、κ軽鎖遺伝子、およびλ軽鎖遺伝子を含むトランスジェニックマウスは、有
意にヒトの抗体および免疫系の発達を示す。
【実施例7】
【0151】
(非免疫化マウスにおける、ヒト抗体の血清レベル)
ヒト抗体の決定のためのELISAを、非免疫化マウス血清において、行った。免疫ア
ッセイにおけるより詳しい情報および手順については、E.Harlowら,Antib
odies:A Laboratory Manual,Capter14,“Immu
noassay”,Pages 553−614,Cold Spring Harbo
r Laboratory Press,Cold Spring Harbor,Ne
w York(1988)(本明細書中で参考として援用される)を、参照のこと。
【0152】
ヒト免疫グロブリンの濃度は、以下の捕捉抗体を使用して、決定される:ヒトのγIg
、κIg、μIg、およびλIgについて、それぞれ、ヤギ抗ヒトIgG(Caltag
,H10500)、ヤギ抗ヒトIgκ(Southern Biotechnology
、2060−01)、ヤギ抗ヒトIgM(Southern Biotechnolog
y、2020−01)、ヤギ抗ヒトIgλ(Caltag,H16500)、そしてマウ
スλIgを捕捉するために、ヤギ抗マウスλ(Southern Biotechnol
ogy、1060−01)。
【0153】
ELISA実験において使用された抗体の検出は、ヤギ抗マウスIgλ−西洋ワサビペ
ルオキシダーゼ(HRP)(Caltag,M−33607)、ヤギ抗ヒトIgG−HR
P(Caltag,H10507)、マウス抗ヒトIgM−HRP(Southern
Biotechnology、9020−05)、ヤギ抗ヒトκ−HRP(Southe
rn Biotechnology、2060−05)、ヤギ抗ヒトIgλ−HRP(S
outhern Biotechnology、2070−05)であった。ヒトおよび
マウスのIgの定量のための標準物質は、以下であった:ヒトIgG(Abgenix
,hIgG2)、ヒトIgGκ(Abgenix,hIgG2/κ)、ヒトIgGλ
(Sigma,1−4264)、ヒトIgMκ(Caltag,13000)、ヒトIg
Mλ(Caltag,13200)およびマウスIgG2Hλ(Sigma,M−603
4)。
【0154】
ヒトIgλ鎖の有意の発現を、XenoMouse G1およびXenoMouse
G2(ヒトIgκおよびヒトIgλの両方を作る)の血清において検出した。完全なヒト
IgG2λ抗体およびIgG1λ抗体を、検出した。図5を参照のこと。
【実施例8】
【0155】
(ヒトモノクローナル抗体の産生)
(免疫化およびハイブリドーマ産生)
6週齢のXenoMouse G2−κ/λの4匹の群を、組換えヒトMCP−1また
は10ヒトCEM細胞のどちらかを10μg用いて、足裏において皮下的に免疫化した
。6週齢のXenoMouse G1−κ/λの4匹の群を、組換えMN−Fcを10μ
g用いて、足裏において皮下的に免疫化した。抗原を、最初の免疫化のためにTiter
max Gold(Sigma;かt。#T2684)、および追加の免疫のためにal
um(リン酸アルミニウムゲルアジュバント;Superfos Biosector
a/s,E.M.Sargent Pulp and Chemical Co.,Cl
ifton,NJ,cat#1452−250により、配布される)において、従来技術
に従い、乳化した(Harlowら(既出)pages 53−138(本明細書中で参
考として援用される)などに記載される)。免疫化を、週に2回ずつ3週間、少なくとも
5ブースター免疫(boost)、行った。
【0156】
マウスは、最後の抗原または細胞(リン酸緩衝化塩水(PBS)中)の注射を、リンパ
節排出物由来のリンパ球と骨髄腫細胞との融合の4日前に受けた。脾臓リンパ球細胞の単
離およびその後の融合を、従来技術(Harlowら(既出)pages 53−138
(本明細書中で参考として援用される)など)に従って行った。
【0157】
あるいは、電気細胞融合もまた、行われ得る。リンパ節リンパ球を、電気細胞融合のた
めに、磁気カラムを使用したT細胞除去を通してB細胞を富化することにより、調製した
。DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium
,JRH Biosciences,cat.#51444−79Pに、グルコースを4
500mg/L、ピルビン酸ナトリウムを100mg/Lを加えたもので、L−グルタミ
ンは加えない)を、1億個のリンパ球につき0.9ml、細菌ペレットに加えた。細胞を
、穏やかに、しかし完全に、再懸濁した。CD90+磁気ビーズ(マウスCD90+磁気
ビーズ、Miltenyi Biotech,cat.#491−01)を、1億個の細
胞につき100μl加え、そして穏やかによく混合した。細胞を、磁気ビーズと共に、4
℃で15分間インキュベートした。インキュベーションの間、磁気カラムを、3mlのD
MEMで事前洗浄した。15分間のインキュベーションの後、10までの陽性細胞(ま
たは2×10までの総細胞)を含む磁気的標的化細胞懸濁液を、LS+カラム(Mil
tenyi Biotech,cat.#424−01)上にピペット滴下した。細胞懸
濁液を、流し通し、そして流出液をCD90陰性画分として、回収した。このカラムを3
mlのDMEMで3回洗浄し、その総溶出液をCD90陰性画分として回収した(これら
の細胞のほとんどは、B細胞である)。
【0158】
B細胞について強化されたリンパ球を、P3−X63−Ag8.653骨髄腫と電気融
合により融合させ、そしてヒポキサンチン/アザセリン(HA)(Sigma,cat.
#A9666)選択にかけた。電気細胞融合について、骨髄腫細胞を、滅菌遠心チューブ
(回収される細胞の数に基づき、50mlまたは250mlのどちらかのチューブ)中で
遠心分離により回収し、そしてDMEM中に再懸濁した。骨髄腫細胞およびB細胞を、1
:1の割合で合わせ、50mlコニカルチューブ中でよく混合した。細胞を、遠心分離を
通してペレット化させた。2〜4mlのプロナーゼ溶液(CalBiochem,cat
.#53702;0.5mg/ml PBS中)を、加え、細胞ペレットを穏やかに再懸
濁した。酵素処理は、2分以上進めさせず、3〜5mlのウシ胎児血清によって反応を止
めた。電気融合(ECF)溶液(0.3Mショ糖(Sigma,Cat.#S7903)
、0.1mM酢酸マグネシウム(Sigma,Cat.#S7903)、0.1mM酢酸
カルシウム(Sigma,Cat.#S4705)、0.22ミクロンフィルターにより
フィルター滅菌した)を、加え、総容量40mlとし、そして細胞を遠心分離によりペレ
ット化した。上清を除去し、そして細胞を、少量のECF溶液中に穏やかに再懸濁し、次
いで、より多いECF溶液を、総量40mlまで加えた。細胞を混合し、計数し、遠心に
よりペレット化した。細胞ペレットを少量のECF溶液で再懸濁し、2×10細胞/m
lに調整した。
【0159】
電気細胞ジェネレーターは、Model ECM2001,Genetronic,I
nc.(San Diego,CA)であった。2ml 電気細胞融合チャンバシステム
(2ml electrocell fusion chamber system)を
、融合に使用した。電気細胞融合条件は:
並列条件:電圧=50V、時間=50秒
膜破壊:電圧=3000V、時間=30マイクロ秒
融合後保持時間:3秒
電気細胞融合後、細胞懸濁液を、滅菌条件下で融合チャンバから注意深く取り除き、そ
して同量(またはそれ以上)のハイブリドーマ培地を含む滅菌チューブに移し、15〜3
0分間、37℃のインキュベーター内でインキュベートした。細胞を遠心分離によりペレ
ット化した。細胞を、少量の1/2強度HA培地中に、穏やかに完全に再懸濁し、96ウ
ェルプレートにつき5×10B細胞、そしてウェルにつき200μlの容量でプレート
培養するために、1/2HA培地を用いて、適切な容量に調整した。細胞を、96ウェル
内にピペット滴下した。7日目または10日目に、培地100μlをそれぞれのウェルか
ら除き、100μlの1/2HA培地と置換した。あるいは、リンパ球は、ポリエチレン
グリコール融合を通して、骨髄腫細胞と融合され、上述のように、HAT選択を受け得る
(G.Galfreら,Methods Enzymol.73:3−46(1981)
)。
【0160】
培養10〜14日後、ハイブリドーマ上清を、抗原特異的なIgG2κ、IgG2λの
モノクローナル抗体について、スクリーニングした。簡潔には、ELISAプレート(F
isher,Cat.No.12−565−136)を、CD147−Fc(2μg/m
l、CEM群について)、MCP−1(2μg/ml)およびMN−his(2μg/m
l)を50μl/ウェル用いて、コーティング緩衝液(0.1M カーボネート緩衝液、
pH9.6,NaHCO)中でコートし、4℃で一晩インキュベートした。インキュベ
ーション後、洗浄緩衝液(0.05% Tween 20 PBS中)を用いて、プレー
トを3回洗浄した。それぞれのウェルに、ブロッキング緩衝液(0.5% BSA、0.
1% Tween 20、0.01% チメロサール)を200μl/ウェル加え、そし
て室温で一時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを、洗浄緩衝液で
3回洗浄した。次いで、それぞれのプレートに、50μl/ウェルのハイブリドーマ培養
上清、ポジティブコントロール、ネガティブコントロールを加え、室温で2時間インキュ
ベートした。インキュベーション後、プレートを、洗浄緩衝液で3回洗浄した。次いで、
それぞれのプレートに、100μl/ウェルの検出抗体GT抗huIgGfc−HRP(
Caltag,Act.#H10507)を加え、室温で1時間インキュベートした。イ
ンキュベーション後、プレートを、洗浄緩衝液で3回洗浄した。次いで、それぞれのプレ
ートに、100μl/ウェルの現像液(10ml 基質緩衝液、1mg OPD(o−フ
ェニルエデジアミン、Sigma Cat No.P−7288)、10μl 30%
(Sigma))を加えた(この溶液は使用前に新しく作った)。反応を10分
間進め(コントロールウェルが辛うじて色を呈し始めるまで)、次いで、50μl/ウェ
ルの停止液(2M HSO)を、加えた。OD値を、ELISAプレートリーダー上
で、波長492nmで読んだ。
【0161】
Ig軽鎖の用法を決定するための二次スクリーニングについて、一次スクリーニングに
おけるポジティブなウェルに相当する3組のサンプルを、スクリーニングした。1組はh
IgHG検出のため、1組はhK検出のため、そしてもう1組はhΛ検出のためである。
二次スクリーニングにおける検出抗体は、GT抗hIgκ−HRP(Southern
Biotechnology,Cat.#2060−05)およびGT抗hIgλ(So
uthern Biotechnology,Cat.#2070−05)であった。
【0162】
XenoMouse−KL系統は、完全なヒトIgGλモノクローナル抗体を産生した
。免疫グロブリンについては、CEM細胞およびMCP−1タンパク質(両方とも、完全
なヒトIgG2κおよびヒトIgG2λの抗原特異的モノクローナル抗体である)が、X
enoMouse G2−KLマウスから、得られた。組換えMN−FC融合タンパク質
については、1つのmAb(完全なヒトIgG1λ)が、XenoMouse G1−K
Lマウスから、得られた。
【実施例9】
【0163】
(ヒト軽鎖λYAC組込みの特徴付け)
ゲノムDNAを、ES細胞株および3B1細胞株から、Gross−Bellardら
(Gross−Bellard,M.,Oudet,P.,およびChambom,P.
,Isolation of high molecular weight DNA
from mammalian cells Eur.J.Biochem.36:32
−38(1973))の方法に従ったフェノール/クロロホルム抽出によって、調製した
。XenoMouse系統由来のゲノムDNAを、QIAGEN DNeasy 96
tissue kit(QIAGEN Cat.No.69582)を使用して、尾の断
片から抽出した。それぞれのサンプルの10μgを、EcoRI(Vλプローブを用いた
ハイブリダイゼーション用)、PvuIIおよびPstI(Cλプローブ用)およびSa
cI(λ3’エンハンサープローブ用)を用いて切断した。切断されたDNAのサンプル
を、0.7%アガロースゲル(SEAKEM ME,FMC)上で、0.5×Tris/
ホウ酸塩/EDTA(TBE)緩衝液中で、16時間泳動した。DNAをGENESCR
EEN(NEN Life Science)ナイロンメンブレンに、標準的アルカリト
ランスファー法により、トランスファーした。DNAプローブ(以下で示される)を、H
igh Prime kit(Roche Cat.No.1585592)を使用して
放射性標識した。ハイブリダイゼーションを、65度で時間行った。低ストリンジェンシ
ー洗浄を、65℃で1×SSC、0.1%SDS溶液を使用して、1時間行った。2回の
高ストリンジェンシー洗浄を、0.1×SSC、0.1%SDS中で、65℃で行った。
洗浄したメンブレンを、−70℃で、裏に増感紙をあて、X線フィルム(Eastman
Kodak,Rochester,NY)に晒した。
【0164】
ヒトVλ遺伝子を検出するために使用したVλファミリー特異的プローブは、Vλ2a
2、Vλ3P、Vλ5c、Vλ7a、およびVλ8a、Cλならびにλ3’エンハンサー
であった。VλプローブおよびCλプローブは、既に記載されている(Prippiat
ら,Organization of the human immunoglobri
n λ light−chain locus on chromosome 22q1
1.2.Hum.Mol.Genet.4,983−991(1995);Udey,J
.A.およびBlomberg,B.,Human λ light chain lo
cus:Origination and DNA sequences of thr
ee genomic J regions.Immunogenetics 25:6
3)。450bp λ 3’エンハンサープローブを、ヒトゲノムDNAから、順プライ
マー5’−GATAAGAGTCCCTCCCCACA−3’および逆プライマー5’−
GGCCATGAGCTCAGTTTCTC−3’を使用して、増幅した。
【0165】
XenoMouseにおけるヒト免疫グロブリンλ軽鎖遺伝子座の起源を、サザンブロ
ットハイブリダイゼーションにより、決定した。XenoMouseにおけるVλおよび
Cλの完全性を、5つの富遺伝子クラスター内に存在する幾つかの異なったVλおよびC
λのファミリー特異的セグメントとハイブリダイズさせる、EcoRI切断DNAのサザ
ンブロットハイブリダイゼーションにより、決定した。図6A〜Gを参照のこと。λ3’
エンハンサー領域もまた、決定した(示さない)。全てのVλプローブおよびCλプロー
ブのハイブリダイゼーションパターンを、ヒトゲノムDNAのハイブリダイゼーションパ
ターンおよびλYACのハイブリダイゼーションパターンと比較した。サザンブロット分
析は、ヒトゲノムDNAにおうて同定されたVλ遺伝子それぞれが、ES細胞に組み込ま
れたλYAC、および3種のXenoMouse系統の尾から抽出されたゲノムDNAに
おいて、存在することを明らかにした。
【0166】
特に、ヒトゲノムDNA、XenoMouse系統G4 3CIL3、G2 XMG2
L3およびG1 3B3L3から抽出されたゲノムDNA、ならびにES細胞株V8.5
Aから抽出されたゲノムDNAを、抽出し、そしてEcoRI(図6A〜D)、PstI
(図6E)、またはPvuII(図6F)を用いて、上述のように切断した。ポジティブ
コントロールとして、1μgのYACを、3B1(ヒトλ遺伝子座を含まないマウス)の
ゲノムDNAの10μgに添加し、同じ酵素で切断した。ネガティブコントロールとして
、3B1のゲノムDNAの10μgを、同じ酵素で切断した。これらのサンプルを、上述
のように、サザンブロット分析した。使用したプローブは、以下である:Vλ2について
は、Vλ2a2プローブ(図6A);Vλ3については、Vλ3pプローブ(図6B);
Vλ5については、Vλ5Cプローブ(図6C);Vλ7については、Vλ7aプローブ
(図6D);Vλ8については、Vλ8aプローブ(図6E);Cλについては、上述の
Cλプローブ。EcoRI切断、PstI切断またはPvuII切断をしたDNAのサザ
ンブロット分析は、全ての分析したサンプルについて、一様なハイブリダイゼーションバ
ンドのパターンを示した。図6A〜Gを、参照のこと。Vλ、Cλおよびλ3’エンハン
サーの、同一のハイブリダイゼーションバンドの存在は、XenoMouse系統に組み
込まれたλYACが、全ての遺伝子座を含むことを、確認した。試験したXenoMou
se系統の3つ全てにおいて、λYACは、明らかな欠失または再編成がなく、伝達され
ていた。さらに、Vλ3プローブを使用するハイブリダイゼーションパターンは、10の
機能的Vセグメントおよび13の偽遺伝子からなる、最大のVλIIIファミリーを検出
した。従って、サザンブロット分析は、HuIgλ YACの遺伝子座全体の1Mbは、
Vλ遺伝子、7対のJλセグメント−Cλセグメント、および3’λエンハンサーを、正
しい生殖系列構造において、含むことを示す。
【実施例10】
【0167】
(抗体応答におけるIgλの利用法)
XenoMouse KLを、種々の抗原を用いて免疫化した。XenoMouseに
より産生された抗体を、特徴付け、どの抗体がκ軽鎖を有するか、およびどの抗体がλ軽
鎖を有するかを、決定した。産生された種々の抗体におけるκ軽鎖とλ軽鎖の比率は、X
enoMouseによって産生された抗体において、およそ60:40であると予想され
る。なぜなら、ヒトにおいて、およそ40%の抗体がλ軽鎖を含み、60%の抗体が、κ
軽鎖を含むためである。驚くべきことに、幾つかの抗原およびXenoMouse系統に
ついて、Igλが、いくつかの免疫応答を支配していた。表3(Igλ優性応答を太字で
示す)を、参照のこと。
【0168】
【表3】



本明細書において引用された全ての刊行物および特許出願は、それぞれ個々の刊行物ま
たはそれぞれ個々の特許出願が、詳細に、そして独立して参考として援用されるように、
本明細書中で参考として援用される。
【0169】
上述の発明は、理解を明瞭にする目的で、図面および実施例としてある程度詳細に記載
されているが、本発明は、添付の請求の精神または範囲から逸脱することなく、本発明の
特定の変化および改変が、なされ得ることが本発明の教示から見て当業者に容易に明らか
である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6−1】
image rotate

【図6−2】
image rotate


【公開番号】特開2010−136726(P2010−136726A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23628(P2010−23628)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【分割の表示】特願2009−18855(P2009−18855)の分割
【原出願日】平成14年11月27日(2002.11.27)
【出願人】(398005777)アムジェン フレモント インク. (40)
【Fターム(参考)】