説明

ヒトTWEAKに対する抗体とその使用

TWEAKに結合することを特徴とし、且つ、配列番号8、16又は24から成る群から選択される重鎖可変ドメインCDR3Hを含んでなることを特徴とするTWEAKに結合する抗体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトTWEAKに対する抗体(TWEAK抗体)、それらの製造方法、前述の抗体を含有する医薬組成物、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトTWEAK(UniProtKB O43508、TNF様アポトーシス弱誘導因子)は、細胞表面結合型のII型膜貫通タンパク質である。TWEAKは、Chicheportiche, Y.ら、J. Biol. Chem.、第272号(1997年)32401-32410頁;Marsters, S.A.ら、Curr. Biol.、第8号(1998年)525-528頁;Lynch, C.Nら、J. Biol. Chem.、第274号(1999年)8455-8459頁に記載されている。TWEAKの活性形態は、可溶性ホモトリマーである。ヒトとマウスのTWEAKは、受容体結合領域において93%の配列同一性を示す。TWEAK受容体であるFn14(線維芽細胞成長因子誘導性の14kDaのタンパク質)は、リガンド結合ドメイン内の1つの単一システインリッチ・ドメインから成る129個のaaのI型膜貫通タンパク質である。TWEAKのシグナル伝達は、NF‐κB経路の活性化を介して起こる。TWEAK mRNAは、さまざまな組織で発現されており、そして心臓、脳、骨格筋、及び膵臓のような主要組織、並びに脾臓、リンパ節、及び胸腺のような免疫系に関連する組織に見られる。Fn14 mRNAは、心臓、脳、肺、胎盤、血管のEC、及び平滑筋細胞で検出された。TWEAKヌルノックアウトマウスとFn14ヌルノックアウトマウスが生存能力があり、健康で且つ繁殖能力があり、そしてより多くのナチュラルキラー細胞を持つので高い先天性炎症反応を示す。TWEAKは、アポトーシス、増殖、血管新生、虚血ペナンブラ(ischemic penumbra)、脳浮腫、多発性硬化症に関与する。
【0003】
抗TWEAK抗体については、WO 1998/005783、WO 2000/042073、WO 2003/086311、WO 2006/130429、WO 2006/130374、WO 2006/122187、WO 2006/089095、WO 2006/088890、WO 2006/052926で触れられている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、ヒトTWEAKに結合する抗体を含んでなり、それは重鎖可変ドメインとして配列番号8、16又は24から成る群から選択されるCDR3領域(CDR3H)を含んでなることを特徴とする。
【0005】
本発明は、配列番号1の可変軽鎖と配列番号5の可変重鎖を含んでなる抗体、配列番号9の可変軽鎖と配列番号13の可変重鎖を含んでなる抗体、又は配列番号17の可変軽鎖と配列番号21の可変重鎖を含んでなる抗体のキメラ、ヒト化、あるいはT細胞エピトープ欠損変異体を含んでなる。
【0006】
好ましくは、前記抗体は、配列番号6のCDR1H、配列番号7のCDR2H、及び配列番号8のCDR3Hを含んでなることを特徴とする。
好ましくは、前記抗体は、配列番号14のCDR1H、配列番号15のCDR2H、及び配列番号16のCDR3Hを含んでなることを特徴とする。
好ましくは、前記抗体は、配列番号22のCDR1H、配列番号23のCDR2H、及び配列番号24のCDR3Hを含んでなることを特徴とする。
好ましくは、前記抗体は、配列番号22のCDR1H、配列番号74のCDR2H、及び配列番号24のCDR3Hを含んでなることを特徴とする。
【0007】
好ましくは、前記抗体は、配列番号22のCDR1H、配列番号75のCDR2H、及び配列番号24のCDR3Hを含んでなることを特徴とする。
好ましくは、前記抗体は、配列番号6のCDR1H、配列番号7のCDR2H、配列番号8のCDR3H及び配列番号2のCDR1L、配列番号3のCDR2L、配列番号4のCDR3Lを含んでなることを特徴とする。
好ましくは、前記抗体は、配列番号14のCDR1H、配列番号15のCDR2H、配列番号16のCDR3H及び配列番号10のCDR1L、配列番号11のCDR2L、配列番号12のCDR3Lを含んでなることを特徴とする。
好ましくは、前記抗体は、配列番号22のCDR1H、配列番号23のCDR2H、配列番号24のCDR3H及び配列番号18のCDR1L、配列番号19のCDR2L、配列番号20のCDR3Lを含んでなることを特徴とする。
【0008】
好ましくは、前記抗体は、配列番号22のCDR1H、配列番号74のCDR2H、配列番号24のCDR3H及び配列番号18のCDR1L、配列番号19のCDR2L、配列番号20のCDR3Lを含んでなることを特徴とする。
好ましくは、前記抗体は、配列番号22のCDR1H、配列番号75のCDR2H、配列番号24のCDR3H及び配列番号18のCDR1L、配列番号19のCDR2L、配列番号20のCDR3Lを含んでなることを特徴とする。
好ましくは、前記抗体は、軽鎖可変ドメイン配列として配列番号1、9、17、32、33、34、35、44、45、46、47、55、56、57、58、59、又は60から成る群から選択される配列を含んでなることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記抗体は、重鎖可変ドメイン配列として配列番号5、13、21、36、37、38、39、40、41、42、43、48、49、50、51、52、53、54、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、又は73から成る群から選択される配列を含んでなることを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記抗体は、軽鎖可変ドメイン配列として配列番号1、32、33、34、35から成る群から選択される配列を、そして重鎖可変ドメイン配列として配列番号5、36、37、38、39、40、41、42、43から成る群から選択される配列を含んでなることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記抗体は、軽鎖可変ドメイン配列として配列番号9、44、45、46、47から成る群から選択される配列を、そして重鎖可変ドメイン配列として配列番号13、48、49、50、51、52、53、54から成る群から選択される配列を含んでなることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記抗体は、軽鎖可変ドメイン配列として配列番号17、55、56、57、58、59、60から成る群から選択される配列を、そして重鎖可変ドメイン配列として配列番号21、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73から成る群から選択される配列を含んでなることを特徴とする。
【0013】
以下の:1/5、1/36、1/37、1/38、1/39、1/40、1/41、1/42、1/43、32/5、32/36、32/37、32/38、32/39、32/40、32/41、32/42、32/43、33/5、33/36、33/37、33/38、33/39、33/40、33/41、33/42、33/43、34/5、34/36、34/37、34/38、34/39、34/40、34/41、34/42、34/43、35/5、35/36、35/37、35/38、35/39、35/40、35/41、35/42、35/43;9/13、9/48、9/49;9/50、9/51、9/52、9/53、9/54、44/13、44/48、44/49;44/50、44/51、44/52、44/53、44/54、45/13、45/48、45/49;45/50、45/51、45/52、45/53、45/54、46/13、46/48、46/49;46/50、46/51、46/52、46/53、46/54、47/13、47/48、47/49;47/50、47/51、47/52、47/53、47/54;17/21、17/61、17/62、17/63、17/64、17/65、17/66、17/67、17/68、17/69、17/70、17/71、17/72、17/73、55/21、55/61、55/62、55/63、55/64、55/65、55/66、55/67、55/68、55/69、55/70、55/71、55/72、55/73、56/21、56/61、56/62、56/63、56/64、56/65、56/66、56/67、56/68、56/69、56/70、56/71、56/72、56/73、57/21、57/61、57/62、57/63、57/64、57/65、57/66、57/67、57/68、57/69、57/70、57/71、57/72、57/73、58/21、58/61、58/62、58/63、58/64、58/65、58/66、58/67、58/68、58/69、58/70、58/71、58/72、58/73、59/21、59/61、59/62、59/63、59/64、59/65、59/66、59/67、59/68、59/69、59/70、59/71、59/72、59/73、60/21、60/61、60/62、60/63、60/64、60/65、60/66、60/67、60/68、60/69、60/70、60/71、60/72、60/73から成る群から選択される可変軽鎖と可変重鎖の組み合わせが好ましい(例えば47/52は配列番号47の可変軽鎖と配列番号52の可変重鎖を含んでなる抗体を意味する)。
【0014】
配列番号57と配列番号68;配列番号57と配列番号69;配列番号57と配列番号70;配列番号57と配列番号71;配列番号57と配列番号72;配列番号57と配列番号73;配列番号58と配列番号68;配列番号58と配列番号69;配列番号58と配列番号70;配列番号58と配列番号71;配列番号58と配列番号72;配列番号58と配列番号73;の可変軽鎖と可変重鎖から成る群から選択される可変鎖の組み合わせを含んでなる本発明による抗体が特に好ましい。
【0015】
本発明の更なる実施形態は、配列番号32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73の重鎖又は軽鎖から成る群から選択される可変重鎖又は可変軽鎖である。こういった可変重鎖又は可変軽鎖が、本発明による抗体の作出のための中間体として有効である。
【0016】
TWEAKに結合し、且つ、先に触れたアミノ酸配列やアミノ酸配列断片を特徴とする抗体は、ヒトIgG1アイソタイプのものであることが好ましい。
本発明による抗体は、Biacoreによって計測される、25℃にて53分以下(好ましくは20分以下、そして10〜20分が特に好まれる)の可溶性ヒトTWEAK(第99〜249アミノ酸)と抗体との複合体の半減期を示す。そういった短い半減期を示す抗TWEAK抗体が、腫瘍疾患の処置における使用のために特に好まれる。
【0017】
本発明による抗体は、ヒトTWEAKに特異的に結合し、そしてヒトTWEAKとFn14との相互作用を15ng/mlのIC50値で阻害する。前記抗体は、ヒトIgG1アイソタイプのものであることが好ましい。前記抗体は、ヒト化抗体又はヒト抗体であることが好ましい。本明細書中に使用される場合、IC50は、ヒトTWEAKとFn14との相互作用の50%を妨げる抗体の量を意味する。
【0018】
本発明による抗体は、好ましくは、Biacoreによって計測される、25℃にて70分以下(好ましくは40〜70分)の可溶性マウスTWEAK(第81〜225アミノ酸)と抗体との複合体の半減期を示し、且つ、マウスTWEAKに結合し、そして40ng/ml以下のIC50値でマウスTWEAKとFn14との相互作用を阻害する。
【0019】
本発明の更なる実施形態は、本発明による抗体を含んでなる医薬組成物である。
本発明の更なる実施形態は、医薬組成物の生産のための本発明による抗体の使用である。
本発明の更なる実施形態は、癌、好ましくは結腸癌、肺癌又は膵臓癌の処置のための本発明による抗体の使用である。
本発明の更なる実施形態は、本発明による抗体を含んでなる医薬組成物の生産方法である。
本発明の更なる実施形態は、本発明による抗体の重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインをコードする核酸である。
【0020】
本発明は、本発明による核酸を含む発現ベクターであって、原核生物宿主細胞内若しくは真核生物宿主細胞内で前述の核酸を発現することができるもの、及びかかる抗体の遺伝子組み換え製造のためのそういったベクターを含む宿主細胞を更に提供する。
本発明は、本発明によるベクターを含んでいる原核生物宿主細胞又は真核生物宿主細胞を更に含んでなる。
【0021】
本発明は、原核生物宿主細胞又は真核生物宿主細胞内で本発明による核酸を発現させ、そして前述の細胞又は細胞培養上清から前述の抗体を回収することを特徴とする、本発明による組み換えヒト又はヒト化抗体の製造方法を更に含んでなる。本発明は、そのような遺伝子組み換え法によって入手可能な抗体を更に含んでなる。
【0022】
本発明による抗体は、TWEAKターゲッティング療法を必要としている患者のための利益を示す。本発明による抗体は、腫瘍疾患に罹患している、特に結腸癌、肺癌、又は膵臓癌に罹患している患者のための利益をもたらす、新規且つ独創性がある特性を有する。
【0023】
本発明は、癌、特に結腸癌、肺癌、又は膵臓癌に罹患している患者の処置方法であって、そういった疾患を患っていると診断された(そのため、そういった治療法を必要としている)患者に本発明によるTWEAKに結合する抗体の有効量を投与することを含んでなる方法を更に提供する。好ましくは、前記抗体を医薬組成物の状態で投与する。
【0024】
本発明の更なる実施形態は、癌、特に結腸癌、肺癌、又は膵臓癌に罹患している患者の処置方法であって、本発明による抗体をその患者に投与することを特徴とする方法である。
本発明は、癌、特に結腸癌、肺癌、又は膵臓癌に罹患している患者の処置のため、及び本発明による医薬組成物の生産のための本発明による抗体の使用を更に含んでなる。加えて、本発明は、本発明による医薬組成物の生産方法を含んでなる。
【0025】
本発明は、随意に医薬目的の抗体の製剤に有用な緩衝剤及び/又はアジュバントと一緒に、本発明による抗体を含んでなる医薬組成物を更に含んでなる。
本発明は、医薬的に許容し得る担体中に本発明による抗体を含んでなる医薬組成物を更に提供する。1つの実施形態では、前記医薬組成物は、生産品又はキット内に含まれていてもよい。
【0026】
発明の詳細な説明
用語「抗体」は、これだけに限定されるものではないが、抗体全体、二重特異性抗体及び抗体フラグメントを含めた抗体構造の様々な形態を包含する。本発明による抗体は、好ましくはヒト化抗体、キメラ抗体、又は本発明による特徴的特性が維持されている限りにおいて更に遺伝子操作された抗体である。
【0027】
「抗体フラグメント」は、抗体全長のうちの一部、好ましくはその可変ドメイン又は少なくともその抗原結合部位を含む。抗体フラグメントの例には、二重特異性抗体(diabody)、一本鎖抗体分子、及び抗体フラグメントから形成された多特異性抗体が挙げられる。scFv抗体は、例えばHuston, J.S.、Methods in Enzymol.、第203号(1991年)46-88頁に記載されている。加えて、抗体フラグメントは、VHドメインの特徴を有する、すなわちVLドメインと会合することができる一本鎖ポリペプチド、又はTWEAKに結合するVLドメインの特徴を有する、すなわち機能性抗原結合部位へとVHドメインと会合することができる一本鎖ポリペプチドを含む。
【0028】
本明細書に使用される用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」は、単一アミノ酸組成の抗体分子の調製物を表す。
【0029】
用語「ヒト化抗体」は、フレームワーク領域及び/又は「相補性決定領域」(CDR)が、親免疫グロブリンのCDRに比べて異なる種の免疫グロブリンのCDRを含むように改変された抗体を表す。好ましい実施形態では、ハムスターCDRをヒト抗体のフレームワーク領域に繋ぎ合わせて「ヒト化抗体」が調製される。例えば、Riechmann, Lら、Nature、第332号(1988年)323-327頁;及びNeuberger, M.S.ら、Nature、第314号(1985年)268-270頁を参照のこと。
【0030】
用語「キメラ抗体」は、マウス由来の可変ドメイン、すなわち結合領域、及び異なる起源又は種から得られた定常領域の少なくとも一部を含み、通常は遺伝子組み換えDNA技術によって調製されるモノクローナル抗体を表す。例えば、マウス可変ドメインとヒト定常領域を含むキメラ抗体。こういったマウス/ヒトキメラ抗体は、ラット免疫グロブリン可変ドメインをコードするDNAセグメント及びヒト免疫グロブリン定常領域をコードするDNAセグメントを含んでいる、発現された免疫グロブリン遺伝子の産物である。本発明により包含される他の形態の「キメラ抗体」は、本来の抗体からクラス又はサブクラスが改変又は変更された抗体である。こういった「キメラ」抗体は、「クラススイッチされた抗体」とも呼ばれる。キメラ抗体を産生させるための方法は、現在、当技術分野で周知の通常の遺伝子組み換えDNA技術及び遺伝子トランスフェクション技術を伴う。例えば、Morrison, S.L.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第81号(1984年)6851-6855頁;米国特許第5,202,238号及び同第5,204,244号を参照のこと。
【0031】
用語「T細胞エピトープ欠損抗体」は、ヒトT細胞エピトープ(MHCクラスII分子に結合する能力を有するタンパク質中のペプチド配列)を取り除くことによって免疫原性を取り除く又は低減するために改変された抗体を指す。この方法によって、ペプチドのアミノ酸側鎖と、MHCクラスII結合溝を有する特異的結合ポケットとの間の相互作用が特定される。特定された免疫原性領域を、免疫原性を取り除くために突然変異させる。このような方法は、例えばWO 98/52976に一般的に記載されている。
【0032】
本明細書に使用する「可変ドメイン」(軽鎖可変ドメイン(VL)、重鎖可変ドメイン(VH))は、抗原への抗体の結合に直接関与する軽鎖ドメイン及び重鎖ドメインの対のそれぞれを意味する。可変軽鎖及び可変重鎖ドメインは、同じ一般構造を有し、各ドメインは、3個の「超可変領域」(又は相補性決定領域、CDR)により繋がった4個のフレームワーク領域(FR)を含み、そのフレームワーク領域の配列は広く保存されている。フレームワーク領域は、βシートコンフォメーションを採り、CDRはβシート構造を繋ぐループを形成することがある。各鎖におけるCDRは、フレームワーク領域によりその三次元構造を保持し、もう一方の鎖由来のCDRと共に抗原結合部位を形成する。抗体の重鎖及び軽鎖CDR3領域は、本発明による抗体の結合特異性/親和性に特に重要な役割を果たすことから、本発明のさらなる目的を提供する。
【0033】
本明細書に使用する場合の用語「抗体の抗原結合部分」は、抗原の結合の原因となる抗体のアミノ酸残基を表す。抗体の抗原結合部分は、「相補性決定領域」又は「CDR」由来のアミノ酸残基を含む。「フレームワーク」又は「FR」領域は、本明細書に定義される超可変領域の残基以外の可変ドメイン領域である。したがって、抗体の軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインは、N末端からC末端方向にFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4というドメインを含む。特に、重鎖のCDR3は、抗原の結合に最も寄与する領域であり、抗体の性質を決める。CDR及びFR領域は、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD、出版番号91-3242(1991年)の標準的な定義及び/又は「超可変ループ」由来の残基にしたがって決定される。
【0034】
用語「CDR1H」は、Kabatに従って計算した重鎖可変領域のCDR1領域を意味する。CDR2L、CDR3Hなどは、重鎖(H)又は軽鎖(L)からのそれぞれの領域を意味する。一例を挙げれば、配列番号6のCDR1Hを含んでなることを特徴とする抗体は、その抗体がその可変重鎖内の可変重鎖CDR1領域としてこのアミノ酸配列を含んでなることを意味する。例えば、配列番号6のCDR1H、配列番号7のCDR2H、配列番号8のCDR3Hを含んでなることを特徴とする抗体は、その抗体がCDR1の配列として配列番号6を、CDR2の配列として配列番号7を、及びCDR3の配列として配列番号8をその重鎖内に含んでなることを意味する。
【0035】
本明細書に使用する用語「核酸」又は「核酸分子」は、DNA分子及びRNA分子を含むことを意図する。核酸分子は、一本鎖であっても二本鎖であってもよいが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0036】
本出願の中で使用する用語「アミノ酸」は、アラニン(三文字表記:ala、一文字表記:A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、イソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リジン(lys、K)、メチオニン(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、プロリン(pro、P)、セリン(ser、S)、トレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、Y)、及びバリン(val、V)を含む天然カルボキシα‐アミノ酸の群を意味する。
【0037】
核酸は、別の核酸との機能的関係に置かれている場合に「作動可能に連結」されている。例えば、プレ配列又は分泌リーダーについてのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合に、そのポリペプチドについてのDNAに作動可能に連結されており;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響する場合にコード配列に作動可能に連結されており;又はリボソーム結合部位は、翻訳を促進するように位置する場合に、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、「作動可能に連結される」は、連結されているDNA配列が同一鎖上にあり、分泌リーダーの場合には隣接してリーディングフレーム内にあることを意味する。しかし、エンハンサーは隣接している必要はない。連結は、好都合な制限部位でのライゲーションにより達成される。こういった部位が存在しない場合には、通常の慣例により合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが使用される。
【0038】
本明細書に使用する表現「細胞」、「細胞系」、及び「細胞培養物」は、相互交換可能に使用され、こういった全ての名称には子孫が含まれる。したがって、「形質転換体」及び「形質転換細胞」という語には、初代対象細胞、及びそれから得られた培養物が、継代回数を考慮せずに含まれる。全ての子孫は、計画的又は偶発的な突然変異が原因で、DNA含量が正確には同一ではない可能性があることもまた理解される。当初形質転換された細胞においてスクリーニングされたものと同じ機能又は生物学的活性を有する変異型子孫が含まれる。
【0039】
抗体の「Fc部」は、抗原への抗体の結合に直接関与するのではなく、様々なエフェクター機能を示す。「抗体のFc部」は、当業者に周知の用語であり、抗体のパパイン切断に基づき定義される。それらの重鎖定常領域のアミノ酸配列に応じて、抗体又は免疫グロブリンは:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMのクラスに分類され、これらのうちいくつかは、更にサブクラス(アイソタイプ)に、例えばIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4に、IgA1及びIgA2に分類されることがある。重鎖定常領域によると、異なるクラスの免疫グロブリンは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。抗体のFc部は、、補体活性化、C1q結合、そしてFc受容体結合に基づいてADCC(抗体依存性細胞性細胞傷害)及びCDC(補体依存性細胞傷害)に直接関与する。補体活性化(CDC)は、たいがいのIgG抗体サブクラスのFc部に補体C1q因子が結合することによって始まる。補体系に対する抗体の影響は特定の条件に依存するとはいえ、C1qへの結合は、Fc部分の規定された結合部位によって起こる。こういった結合部位は、最先端の技術において公知であり、例えばBoakle, R.J.ら、Nature、第282号(1979年)742-743頁;Lukas, T.J.ら、J. Immunol.、第127号(1981年)2555-2560頁;Brunhouse, R.とCebra, J.J.、Mol. Immunol.、第16号(1979年)907-917頁;Burton, D.R.ら、Nature、第288号(1980年)338-344頁;Thommesen, J.E.ら、Mol. Immunol.、第37号(2000年)995-1004頁;Idusogie, E.E.ら、J. Immunol.、第164号(2000年)4178-4184頁;Hezareh, M.ら、J. Virol.、第75号(2001年)12161-12168頁;Morgan, A.ら、Immunology、第86号(1995年)319-324頁;及びEP 0307434により記載されている。こういったFc部の結合部位は、例えばL234、L235、D270、N297、E318、K320、K322、P331、及びP329である(KabatのEUインデックスに準じて付番、以下を参照のこと)。サブクラスIgG1、IgG2、及びIgG3の抗体は、通常は補体活性化及びC1qやC3の結合を示すが、一方でIgG4は補体系を活性化せず、C1qやC3と結合しない。
【0040】
本発明による抗体は、サブクラスIgG1のヒト抗体のFc部分であるヒト起源のFc部分を好ましくは含んでなる。
本発明による抗体は、定常鎖がヒト起源のものであることを特徴とする。そういった定常鎖は、最先端の技術において周知であり、例えばKabatによって記載されている(例えばJohnson, G.とWu, T.T.、Nucleic Acids Res.、第28号(2000年)214-218頁を参照のこと)。例えば、有用なヒト重鎖定常領域は、配列番号27又は28のアミノ酸配列を含んでなる。例えば、有用なヒト軽鎖定常領域は、配列番号25のカッパ軽鎖定常領域のアミノ酸配列を含んでなる。前記抗体がハムスター起源であって、Kabat(例えばSequences of Proteins of Immunological Interest、Kabat, E.A.ら、第5版、DIANE Publishing(1992年))によるハムスター抗体の抗体可変配列フレームを含んでなることが更に好ましい。
【0041】
本発明は、治療法を必要としている患者の処置方法であって、本発明による抗体の治療的有効量をその患者に投与することを特徴とする方法を含んでなる。
本発明は、治療法のための、本発明による抗体の使用を含んでなる。
本発明は、癌の治療薬の調製のための、本発明による抗体の使用を含んでなる。
本発明は、炎症性疾患の処置、好ましくは癌、特に結腸癌、肺癌、又は膵臓癌の処置のための、本発明による抗体の使用を含んでなる。
【0042】
本発明の更なる実施形態は、TWEAKに対する抗体の製造方法であって、本発明による抗体の重鎖をコードする核酸の配列と、前述の抗体の軽鎖をコードする核酸が、1又は2つの発現ベクター内に挿入され、前述の1又は2つのベクターが真核生物宿主細胞内に挿入され、コードされている抗体が発現され、そして前記宿主細胞又は上清から回収されることを特徴とする方法である。
【0043】
本発明による抗体は、遺伝子組み換え手段により好ましくは製造される。こういった方法は、最先端の技術において広く公知であり、抗体ポリペプチドのその後の単離及び通常は医薬として許容し得る純度への精製を伴う、原核生物細胞及び真核生物細胞におけるタンパク質の発現を含む。タンパク質の発現のために、軽鎖及び重鎖又はそのフラグメントをコードする核酸は、標準的な方法により発現ベクターに挿入される。発現は、CHO細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、HEK293細胞、COS細胞、酵母、又はE.コリ(E. coli)細胞などの適切な原核生物宿主細胞又は真核生物宿主細胞において行われ、そして抗体は、その細胞から(上清から、又は細胞溶解後に)回収される。
【0044】
抗体の遺伝子組み換え製造は、最先端の技術において周知であり、例えばMakrides, S.C.、Protein Expr. Purif.、第17号(1999年)183-202頁;Geisse, S.ら、Protein Expr. Purif.、第8号(1996年)271-282頁;Kaufman, R.J.、Mol. Biotechnol.、第16号(2000年)151-160頁;Werner, R.G.、Drug Res.、第48号(1998年)870-880頁の総説に記載されている。
【0045】
抗体は、細胞全体の状態、細胞溶解物の状態、又は部分的に精製された状態若しくは実質的に純粋な状態で存在してもよい。精製は、他の細胞構成要素又は他の夾雑物、例えば他の細胞の核酸又はタンパク質を除去するために、アルカリ/SDS処理、CsClバンド形成、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動、及び当技術分野で周知の他の技術を含めた標準的な技術により行われる。Ausubel, F.ら(編)、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing and Wiley Interscience, New York(1987年)を参照のこと。
【0046】
NS0細胞における発現は、例えばBarnes, L.M.ら、Cytotechnology、第32号(2000年)109-123頁;Barnes, L.M.ら、Biotech. Bioeng.、第73号(2001年)261-270頁により記載されている。一過性発現は、例えばDurocher, Y.ら、Nucl. Acids. Res.、第30号(2002年)E9により記載されている。可変ドメインのクローニングは、Orlandi, R.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第86号(1989年)3833-3837頁;Carter, P.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第89号(1992年)4285-4289頁;Norderhaug, L.ら、J. Immunol. Methods、第204号(1997年)77-87頁により記載されている。好ましい一過性発現系(HEK293)は、Schlaeger, E.-J.とChristensen, K.によりCytotechnology、第30号(1999年)71-83頁の中で、及びSchlaeger, E.-J.によりJ. Immunol. Methods、第194号(1996年)191-199頁の中で記載されている。
【0047】
モノクローナル抗体は、例えばプロテインA‐セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、透析、又はアフィニティークロマトグラフィーなどの通常の免疫グロブリン精製手順により培養液から好適に分離される。モノクローナル抗体をコードするDNA及びRNAは、通常の手順を使用して容易に単離及び配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、こういったDNA及びRNAの起源として役立つことができる。いったん単離されれば、DNAを発現ベクターに挿入し、次いでそれをHEK293細胞、CHO細胞、又は骨髄腫細胞など別のやり方では免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞内にトランスフェクトして、その宿主細胞における遺伝子組み換えモノクローナル抗体の合成を達成する。
【0048】
抗TWEAK抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、当技術分野で公知の多様な方法により調製される。これらの方法には、(天然アミノ酸配列変異体の場合)天然起源からの単離、又はヒト化抗TWEAK抗体の初期調製された変異体若しくは非変異体バージョンのオリゴヌクレオチド介在性(又は部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、及びカセット突然変異誘発による調製が含まれるが、これだけに限定されるものではない。
【0049】
本発明による重鎖及び軽鎖可変ドメインは、プロモーター配列、翻訳開始配列、定常領域の配列、3’非翻訳領域の配列、ポリアデニル化配列、及び転写終結配列と組み合わされて、発現ベクター構築物を形成する。重鎖及び軽鎖発現構築物を単一のベクターに組み合わせ、宿主細胞内に同時トランスフェクト、連続トランスフェクト、又は別々にトランスフェクトして、次いでその宿主細胞を融合させて、両方の鎖を発現する単一の宿主細胞を形成させることができる。
【0050】
別の側面では、本発明は、医薬として許容し得る担体と共に製剤された、本発明のモノクローナル抗体の一つ若しくは組み合わせ、又はその抗原結合部分を含有する組成物、例えば医薬組成物を提供する。
【0051】
本明細書に使用する「医薬として許容し得る担体」には、生理学的に適合する、任意及び全ての溶媒、分散媒質、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収/再吸収遅延剤などが挙げられる。好ましくは、前記担体は注射又は点滴に好適である。
【0052】
本発明の組成物は、当技術分野で公知の多様な方法により投与することができる。当業者により認識されているように、投与経路及び/又は投与様式は、所望の結果に応じて変化するものである。
【0053】
医薬として許容し得る担体には、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射用溶液又は分散液を調製するための滅菌粉末が挙げられる。医薬として活性な物質のためにこういった媒質及び薬剤を使用することは、当技術分野において公知である。水に加えて、前記担体は、例えば等張緩衝食塩水でありうる。
【0054】
選択された投与経路に関係なく、適切な水和形態で使用することができる本発明の化合物及び/又は本発明の医薬組成物は、当業者に公知の通常の方法によって医薬として許容し得る剤形に製剤される。
【0055】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投薬レベルは、特定の患者に対して毒性を示さずに、その患者、組成物、及び投与様式について所望の治療応答を実現するために有効な活性成分の量(有効量)を得るように変動させることができる。選択された投薬レベルは、採用された本発明の特定の組成物、又はそのエステル、塩、若しくはアミドの活性、採用される特定の化合物の投与経路、投与時間、及び排泄速度、採用された特定の組成物と共に使用された他の薬剤、化合物、及び/又は物質、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康状態、及び病歴、並びに医学の分野で周知の類似の要因を含む多様な薬物動態学的要因に依存するものである。
【0056】
本発明は、癌、特に結腸癌、肺癌、又は膵臓癌に罹患している患者の処置のための、本発明による抗体の使用を含んでなる。
本発明は更に、そういった疾患に罹患している患者の処置方法を含んでなる。
【0057】
本発明は更に、医薬として許容し得る担体と共に、本発明による抗体の有効量を含む医薬組成物の生産方法、及びこういった方法のために本発明による抗体の使用を提供する。
【0058】
本発明は更に、好ましくは医薬的に許容し得る担体を併用する、癌、特に結腸癌、肺癌、又は膵臓癌に罹患している患者の処置用の医薬品の生産のための、有効量での本発明による抗体の使用を提供する。
本発明は更に、好ましくは医薬的に許容し得る担体を併用する、癌、特に結腸癌、肺癌、又は膵臓癌に罹患している罹患の処置用の医薬品の生産のための、有効量での本発明による抗体の使用を提供する。
【0059】
配列の説明
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
以下の実施例、配列表及び図面は、本発明の理解を助けるために提供されるが、本発明の真の範囲は、添付の特許請求の範囲に記載されている。本発明の要旨から逸脱することなしに、記載された手順に改変を加えることができることは理解されている。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】Panc1ヒト膵臓癌異種移植片の増殖に対する抗TWEAK抗体の効果
【図2】ACHNヒト腎臓癌異種移植片の増殖に対する抗TWEAK抗体の効果
【実施例】
【0065】
実施例1
免疫化の説明
ヒト/マウスTWEAKでのアルメニアハムスターの免疫化
アルメニアハムスターを、腹腔内注射によって、0日目に完全フロイントアジュバントを用いて、28日目及び56日目に(共に不完全フロイントアジュバントを用いて)50μgの組み換えヒト可溶性TWEAK(第99〜249アミノ酸)を用いて、そして84日目に不完全フロイントアジュバントを用いて50μgの組み換えマウス可溶性TWEAK(第81〜225アミノ酸)で免疫化した。108日目と91日目に採血し、そして血清を調製し、それをELISAによる力価測定に使用した(以下を参照のこと)。50μgの組み換えマウス可溶性TWEAKの静脈内注射による112日目の追加免疫のために、最も高い力価を有する動物を選択し、そして抗体を、ヒト及びマウスTWEAKに結合するそれらの能力(実施例2)、ヒト及びマウスTWEAK‐Fn14相互作用を中和するそれらの能力(実施例4及び5)、並びにIL8分泌を阻害するそれらの能力(実施例6)に基づいて選択した。加えて、抗体‐TWEAK複合体の半減期を調査した(実施例3)。抗体の抗腫瘍効果を、Panc1ヒト膵臓癌異種移植片とACHN腎癌異種移植片で試験した。
【0066】
実施例2
ヒト及びマウスTWEAKへの結合(ELISA)
ヒト及びマウスTWEAKへの抗TWEAK抗体の結合を、ELISAによって測定した。ヒト又はマウス遺伝子組み換え型TWEAKを、2〜8℃にて一晩のインキュベーションによって、0.5Mの炭酸コーティングバッファー、pH9.5中、1μg/ml、25μl/ウェルにて384ウェルNunc Maxisorpプレート上に固定した。室温にて1時間のPBS/1%のBSAを用いたプレートのブロッキングの後に、2回の洗浄ステップ(PBS中、0.1%のTween(登録商標)20)、そしてブロッキングバッファー中、異なった濃度の抗TWEAK抗体との、又は前述の抗体のハイブリドーマ上清との室温にて1時間のインキュベーションを続けた。更に4回の洗浄後に、抗体を、室温にて1時間、ブロッキングバッファー中、1:5000に希釈した抗ハムスター‐HRP抗体を検出した。更に4回の洗浄ステップ後に、ABTS(登録商標)(Roche Diagnostics GmbH)の添加によって10〜30分間、シグナルを発現させた。吸収度を405nmにて読み取った。
【0067】
実施例3
Biacoreを使用した抗体‐TWEAK複合体の半減期の測定
Biacore2000装置を、そのシステムに備え付けられたBiacoreストレプトアビジン・コートセンサーと共に使用した。システム・バッファーHBS‐ET(10mMのHEPES pH7.4、150mMのNaCl、1mMのEDTA、0.05%のTween(登録商標)20)を、100μl/分の流量にて使用した。サンプルバッファーはシステムバッファーであった。ビオチン化ヒト可溶性TWEAKとビオチン化マウス可溶性TWEAKを、それぞれ150RuにてSAセンサー上の別々のフローセルに固定した。フローセルFC1をブランクの比較セルとして使用した。各抗体を、2分間の結合時間の間、分析物として100nM、100μl/分にてシステム内に注入した。免疫複合体の解離を5分間観察した。センサー表面を、HBS‐ETで10秒間洗浄し、そして10mMのグリシンpH2.25の2×2分間の注入を使用して再生した。この手順を25℃にて行った。合間[240秒〜300秒]の複合体解離相の動力学的律速段階を、解離速度kd[1/秒]を計算するために必要とした(Biacore Evaluation Software 4.0)。方程式t1/2解離=ln(2)/(60×kd)に従って、分単位で免疫複合体の半減期を計算した。結果を表5及び6bに示す。
【0068】
【表5】

【0069】
実施例4
TWEAK‐Fn14相互作用の中和(ヒト)
ヒトTWEAK/ヒトFn14相互作用の阻害を、受容体相互作用ELISAによって示した。96ウェルMaxisorp(登録商標)プレート(Nunc)を、室温にて1.5時間、1ウェルあたりPBS中、100μlの1μg/ml ヒトFn14:Fc(ヒトIgG1のFc部分に融合したヒトFn14(第1〜75アミノ酸)の細胞外ドメイン)でコートし、そして振盪下、室温にて30分間、PBS中、5%のFBSの溶液でブロッキングした。その間に、ブロッキング溶液中、2.5ng/mlにてヒトFlagタグ付与可溶性TWEAK(第106〜249アミノ酸)を、振盪下、異なった濃度の抗TWEAK抗体又はハイブリドーマ上清と共に室温にてインキュベートした。Fn14コートプレートを洗浄バッファー(PBS中、0.1%のTween(登録商標)20)で1回洗浄した後、100μlのTWEAK‐抗体溶液を各ウェルに移し、そしてそのプレートを室温にて1時間インキュベートし、それに続いて洗浄バッファーで4回洗浄した。ウェルを、ブロッキングバッファー中、1:5000に希釈した100μlの抗FLAG‐HRP検出抗体で満たし、室温にて1時間インキュベートした。更に4回の洗浄ステップ後に、100μlの3,3,5,5‐テトラメチルベンジジン(TMB)溶液の添加によって約10分間、シグナルを発現させた。100μlの1N HClの添加によって反応を止め、そして吸収度を450nm(参照波長620nm)にて計測した。結果を表6に示す。
【0070】
実施例5
TWEAK‐Fn14相互作用の中和(マウス)
マウスTWEAK/マウスFn14相互作用ELISAは、ヒト・タンパク質について記載したのと同様の原理に従ったが、マウス可溶性TWEAKにタグ付与しなかったので、異なる検出システムを使用した。簡単に言えば、Maxisorpプレートを、ヒトFn14:Fcについて先に記載したようにマウスFn14:Fc(ヒトIgG1のFc部分に融合したマウスFn14(第1〜75アミノ酸)の細胞外ドメイン)でコートし、続いてブロッキングし、そして洗浄した。4ng/mlにてマウス可溶性TWEAKを、ブロッキングバッファー中、抗TWEAK抗体又はハイブリドーマ上清とプレインキュベートし、そして1ウェルあたり100μlのその混合物をFn14でコートしたプレートに加えた。室温にて1時間のインキュベーション、そして4回の洗浄後に、ブロッキングバッファー中、125ng/mlのビオチン化抗マウスTWEAK抗体を、加えて室温にて1時間置き、その後もう4回の洗浄ステップを続けた。TWEAK抗体を、室温にて30分間のブロッキングバッファー中、1:5000に希釈したストレプトアビジン‐HRPとのインキュベーションによって検出した。シグナルを発現させ、そして吸収度を先に記載したとおり計測した。結果を表6に示す。
【0071】
実施例6
IL‐8分泌のELISA
細胞系における抗TWEAK抗体によるTWEAK活性の遮断を、A375黒色腫細胞を使用したIL‐8分泌アッセイで示した。10,000個のA375細胞(ATCC番号CRL1619)を、96ウェル細胞培養プレートの1ウェルあたり100μlの培養培地(ピルバートとGlutaMAX(商標)/10%FBSを加えた、4.5g/Lグルコースを含むDMEM)中に播種し、そして37℃/5% CO2にて48時間インキュベートした。ヒト組換型可溶性TWEAKを、室温にて30分間、成長培地中、異なる濃度の抗TWEAK抗体と一緒に、300ng/mlにてプレインキュベートした。次に、50μlのその混合物を、細胞プレートの各ウェルに加え、続くあと48時間のインキュベーションによってIL‐8を分泌させた。200×gにて5分間のプレートの遠心分離後に、20μlの細胞上清を取り出し、そして「CXCL8 Quantikine ELISA」キット(R&D Systems)の980μlのRD5Pキャリブレーター希釈液と混合した。IL‐8を、製造業者の取扱説明書に従ってELISAによって検出した。結果を表6に示す。
【0072】
【表6】

【0073】
【表7】

【0074】
【表8】

【0075】
実施例7
Panc1ヒト膵臓癌異種移植片の増殖に対する抗TWEAK抗体の抗腫瘍効果
研究設計:Panc1細胞(1x107細胞/マウス)を、研究0日目にマトリゲル(1:1)と一緒にSCIDベージュマウスの皮下に移植した。移植後15日目に処置を開始した。56日目に研究を終了した。
群:
・ビヒクル、腹腔内、2×/週、n=10
・20mg/kgのTW202、腹腔内、2×/週、n=10
・20mg/kgのTW205、腹腔内、2×/週、n=10
・20mg/kgのTW212、腹腔内、2×/週、n=10
個々の腫瘍を、研究の終了時点で重さを量った。結果を表7に示す。
【0076】
【表9】

【0077】
腫瘍体積対腫瘍細胞移植後の日数を図1に示す。
実施例8
ACHN腎癌異種移植片の増殖に対する抗TWEAK抗体の効果
研究設計:ACHN細胞(1x107細胞/マウス)を、研究0日目にマトリゲル(1:1)と一緒に無胸腺ヌードマウスの皮下に移植した。移植後10日目に処置を開始した。40日目に研究を終了した。
群:
・ビヒクル、腹腔内、2×/週、n=10
・TW202(20mg/kg)、腹腔内、2×/週、n=10
・TW205(20mg/kg)、腹腔内、2×/週、n=10
・TW212(20mg/kg)、腹腔内、2×/週、n=10
腫瘍の平均体積を、研究の終了時点で計量した。結果を表8に示す。
【0078】
【表10】

【0079】
腫瘍体積対腫瘍細胞移植後の日数を図2に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号8、16又は24から成る群から選択される重鎖可変ドメインCDR3Hを含んでなることを特徴とするヒトTWEAKに結合する抗体。
【請求項2】
配列番号1の可変軽鎖と配列番号5の可変重鎖を含んでなる抗体の、配列番号9の可変軽鎖と配列番号13の可変重鎖を含んでなる抗体の、又は配列番号17の可変軽鎖と配列番号21の可変重鎖を含んでなる抗体のキメラ変異体、ヒト化変異体、あるいはT細胞エピトープ欠損変異体。
【請求項3】
配列番号6のCDR1H、配列番号7のCDR2H、配列番号8のCDR3H及び配列番号2のCDR1L、配列番号3のCDR2L、配列番号4のCDR3Lを含んでなること、又は配列番号14のCDR1H、配列番号15のCDR2H、配列番号16のCDR3H及び配列番号10のCDR1L、配列番号11のCDR2L、配列番号12のCDR3Lを含んでなること、又は配列番号22のCDR1H、配列番号23のCDR2H、配列番号24のCDR3H及び配列番号18のCDR1L、配列番号19のCDR2L、配列番号20のCDR3Lを含んでなること、又は配列番号22のCDR1H、配列番号74のCDR2H、配列番号24のCDR3H及び配列番号18のCDR1L、配列番号19のCDR2L、配列番号20のCDR3Lを含んでなること、又は配列番号22のCDR1H、配列番号75のCDR2H、配列番号24のCDR3H及び配列番号18のCDR1L、配列番号19のCDR2L、配列番号20のCDR3Lを含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
配列番号1/配列番号5、1/36、1/37、1/38、1/39、1/40、1/41、1/42、1/43、32/5、32/36、32/37、32/38、32/39、32/40、32/41、32/42、32/43、33/5、33/36、33/37、33/38、33/39、33/40、33/41、33/42、33/43、34/5、34/36、34/37、34/38、34/39、34/40、34/41、34/42、34/43、35/5、35/36、35/37、35/38、35/39、35/40、35/41、35/42、35/43;9/13、9/48、9/49;9/50、9/51、9/52、9/53、9/54、44/13、44/48、44/49;44/50、44/51、44/52、44/53、44/54、45/13、45/48、45/49;45/50、45/51、45/52、45/53、45/54、46/13、46/48、46/49;46/50、46/51、46/52、46/53、46/54、47/13、47/48、47/49;47/50、47/51、47/52、47/53、47/54;17/21、17/61、17/62、17/63、17/64、17/65、17/66、17/67、17/68、17/69、17/70、17/71、17/72、17/73、55/21、55/61、55/62、55/63、55/64、55/65、55/66、55/67、55/68、55/69、55/70、55/71、55/72、55/73、56/21、56/61、56/62、56/63、56/64、56/65、56/66、56/67、56/68、56/69、56/70、56/71、56/72、56/73、57/21、57/61、57/62、57/63、57/64、57/65、57/66、57/67、57/68、57/69、57/70、57/71、57/72、57/73、58/21、58/61、58/62、58/63、58/64、58/65、58/66、58/67、58/68、58/69、58/70、58/71、58/72、58/73、59/21、59/61、59/62、59/63、59/64、59/65、59/66、59/67、59/68、59/69、59/70、59/71、59/72、59/73、60/21、60/61、60/62、60/63、60/64、60/65、60/66、60/67、60/68、60/69、60/70、60/71、60/72、60/73から成る群から選択される可変軽鎖配列/可変重鎖配列の組み合わせを特徴とする、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
配列番号32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73の可変重鎖又は可変軽鎖の群から選択される可変重鎖又は可変軽鎖。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗体を含んでなることを特徴とする医薬組成物。
【請求項7】
医薬組成物の生産のための、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗体の使用。
【請求項8】
癌の処置のための、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗体の使用。
【請求項9】
結腸癌、肺癌、又は膵臓癌の処置のための、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗体の使用。
【請求項10】
TWEAKに結合する抗体の重鎖をコードする核酸であって、当該抗体が請求項1に記載の重鎖CDR3領域を含んでなることを特徴とする前記核酸。
【請求項11】
原核生物宿主細胞又は真核生物宿主細胞におけるTWEAKに結合する抗体の発現のための、請求項10に記載の核酸を含んでなることを特徴とする発現ベクター。
【請求項12】
請求項11に記載のベクターを含んでなる原核生物宿主細胞又は真核生物宿主細胞。
【請求項13】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組み換え抗体の製造方法であって、原核生物宿主細胞又は真核生物宿主細胞において請求項10に記載の核酸を発現させ、そして当該細胞又は細胞培養上清から当該抗体を回収することを特徴とする前記方法。
【請求項14】
癌に罹患している患者の処置方法であって、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗体を当該患者に投与することを特徴とする前記方法。
【請求項15】
配列番号22のアミノ酸配列を有するCDR1H、配列番号23のアミノ酸配列を有するCDR2H、配列番号24のアミノ酸配列を有するCDR3H、配列番号18のアミノ酸配列を有するCDR1L、配列番号19のアミノ酸配列を有するCDR2L、及び配列番号20のアミノ酸配列を有するCDR3Lを含んでなる、請求項3に記載の抗体。
【請求項16】
配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR1H、配列番号15のアミノ酸配列を有するCDR2H、配列番号16のアミノ酸配列を有するCDR3H、配列番号10のアミノ酸配列を有するCDR1L、配列番号11のアミノ酸配列を有するCDR2L、及び配列番号12のアミノ酸配列を有するCDR3Lを含んでなる、請求項3に記載の抗体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2012−521771(P2012−521771A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502506(P2012−502506)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002009
【国際公開番号】WO2010/115555
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】