説明

ヒドロキシアパタイト型のリン酸カルシウム顆粒の調製方法

本発明の目的は、ヒドロキシアパタイト型のリン酸カルシウム顆粒の新規な調製方法である。本発明による前記顆粒のためのビジネスの調製方法は、ブルシャイトリン酸二カルシウムの水性懸濁液を、有効量のカルボン酸の存在下、石灰で処理することを特徴とする塩基性環境下でのブルシャイトリン酸二カルシウムの加水分解法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年7月7日出願の仏国特許出願第0407555号の優先権を主張するものである。その内容全体を本願に引用して援用する。
【0002】
本発明の目的は、ヒドロキシアパタイト型のリン酸カルシウムの顆粒を調製するための新規な方法である。
【背景技術】
【0003】
リン酸カルシウムは、医薬産業において、炭酸カルシウムと同じような形で賦形剤として用いられる。カルシウム含量が高い場合、カルシウム補充物とすることもでき、これは特に女性の骨粗鬆症の治療に用いられる。これは、39重量%のカルシウムを含む式Ca(PO(OH)を有するヒドロキシアパタイトの場合である。
【0004】
リン酸カルシウムは、補強用充てん剤、断熱物質、研磨材、支持剤、建設材料、あるいは口腔歯科用処方剤、特に練り歯磨きまたは封止剤のための添加剤などの多くの用途にも用いられる。リン酸カルシウムの様々な最終用途において、顆粒形態がしばしば用いられる。仏国特許出願第03/08660号では、ヒドロキシアパタイトの新規の形態、特に、良好な流動性および圧縮特性を有する製品が得られる顆粒の形態が記載されている。
【0005】
ヒドロキシアパタイトは、商業的にしばしばリン酸三カルシウムという用語で称される。ヒドロキシアパタイトの理想的な化学式は、Ca(PO(OH)である。しかし、この理想的な化学式を有する結晶格子は、格子内におけるアニオンおよびカチオンの置換を非常に受けやすいことが文献では周知である。マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、ナトリウム、鉛および多くの他の原子などの元素によるカルシウムカチオンの置換が周知である。
【0006】
格子内でのアニオンの置換は、3つの異なる形をとることができる。第1は、三価のリン酸基(PO3−)の一部をHPO2−で置き換え、非化学量論的アパタイトをもたらすことができる。第2は、三価のリン酸基(PO3−)を炭酸塩またはバナジウム酸塩などの他の錯体アニオンで置き換えることができる。第3は、水酸基(OH)をフルオリドまたはクロリドなどの他のアニオンで部分的に置き換えるか完全に置き換えることができる。
【0007】
二重置換も周知であり、その場合、イオンが異なる電荷を有する別のイオンで置き換えられ、電荷の中立性は異なる電荷を有するイオン、または空格子点による格子内のいたるところでの置換によって保持される。これらの置換のすべてにおいて、共通性を保ち、かつ材料がヒドロキシアパタイトであることを識別する要素は、特徴的なX線回折パターンである。
【0008】
本発明の範囲内で、仏国特許出願第03/08660号の主題であるヒドロキシアパタイトという用語は実質的に、ヒドロキシアパタイトのX線回折パターンを示すリン酸カルシウムを指す。仏国特許出願第03/08660号に記載の顆粒形態のヒドロキシアパタイトの調製方法は、塩基性の環境、好ましくはナトリウムまたはカリウムでのブルシャイトリン酸二カルシウムの加水分解法である。この方法はいくつかの利点をもたらす。すなわち、簡単で経済的な集中度の高い方法であり、とりわけ、この方法は、原料の役割を果たすリン酸二カルシウムを注意深く選択することにより、最終ヒドロキシアパタイトのテクスチャ特性(粒度分布、多孔度)を制御する可能性を提供する。したがって、200ミクロンのブルシャイトリン酸二カルシウムの顆粒を、200ミクロンのリン酸カルシウムヒドロキシアパタイトの顆粒に転換させることができる。
【0009】
本発明は、ブルシャイトのヒドロキシアパタイトへのアルカリ加水分解についての以下の一般式を参照する。
【0010】
【化1】

【0011】
ただし、Mは塩基、好ましくはアルカリカチオン、例えば、Na+、K+、NH+によって供与されるカチオンである。pHは少なくとも7.0、好ましくは7〜10、より好ましくは8〜8.5の値に保持する。
【0012】
仏国特許出願第03/08660号の発明によれば、ヒドロキシアパタイトは以下の式で表される顆粒の形態で得られる。
【0013】
【化2】

【0014】
前記式において、xは0〜1、好ましくは0.1〜0.5で変化する。本発明は、少量(例えば5重量%未満、好ましくは0.01〜3重量%)のカルシウムが別のカチオン、特に塩基性カチオン(ナトリウム、カリウム)で置換されるケースを含む。本発明は、少量の三価のリン酸基(PO3−)が錯体アニオン(例えば、炭酸塩およびバナジウム酸塩)で置換され、ヒドロキシルイオンが別のアニオン、例えばハライド、特にクロリドまたはフルオリドで置き換えられるケースも含む。
【0015】
式[I]が示すように、ヒドロキシアパタイトに加え、再循環が困難であるか価値を高めることが困難である相当な量のリン酸水素塩MHPOが生成する。さらに、石灰を用いたリン酸二カルシウムの加水分解はすでに、文献[J.Appl.Chem.Biotechnol.1977,27.393−398とCeramics International,29,629−633(2003)]の2つの論文に記載されている。それでも、オートクレーブで加圧下、140℃の高温で、過剰の石灰を用いて行うので、加水分解は非常に制約のある条件で実施することになる。
【0016】
【特許文献1】仏国特許出願第03/08660号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本出願人は、特に賦形剤としての使用に非常によく機能し、上記の問題を避けることができる無機物、ヒドロキシアパタイトのX線回折パターン特性を示すリン酸カルシウムヒドロキシアパタイトの顆粒を調製することができることを見出した。ここに見出した方法は(これは本発明の目的を構成するものである)、有効量のカルボン酸の存在下、石灰の助けを得てブルシャイトリン酸二カルシウムの水性懸濁液を処理することを特徴とする塩基性環境でのブルシャイトリン酸二カルシウムの加水分解による、ヒドロキシアパタイトX線回折パターンを示す顆粒形態のリン酸カルシウムの調製方法である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の方法は多大な利点を提供する。すなわち、本発明の方法によれば、同時生成する第2の生成物は水である。さらに、得られるヒドロキシアパタイト中に混入することになる塩基によってもたらされる金属不純物が存在しない。
【0019】
カルボン酸、好ましくは酢酸の存在は、二重の有益な効果を有している。その存在は、混合物のpHを低下させて、ブルシャイトリン酸二カルシウムのリン酸カルシウムヒドロキシアパタイトへの転換を促進する。さらに、カルシウムを錯塩化させ、それによってカルシウムをより反応に利用されるようにする。
【0020】
他の利点は、プロセスパラメータに関する文章中で示される。
【0021】
本発明の改善によれば、石灰の助けを得て行われるブルシャイトリン酸二カルシウムのヒドロキシアパタイトへのアルカリ加水分解は、以下の式で表すことができる。
【0022】
【化3】

【0023】
この新規なリン酸カルシウムヒドロキシアパタイトは、本明細書で定義するブルシャイトリン酸カルシウムをもたらす任意の既知の手順で調製されるブルシャイトリン酸カルシウムから出発して調製することができる。前記リン酸塩の粒度特性は想定される用途に応じて選択される。実際、予想外なことに、最初のジダクティック(didactic)リン酸塩の粒度特性が最終のヒドロキシアパタイトにおいて保持されることを見出した。
【0024】
例えば食品分野では、10μmのオーダーの平均d50粒子径を有する微細な粉体の状態のものである。
【0025】
賦形剤として利用するために、良好な圧縮性および流動特性を有するリン酸カルシウムが、直接圧縮の用途に求められている。本発明によって良好な流動特性を有するリン酸カルシウムヒドロキシアパタイトを得るためには、この材料は、粒子の90重量%が約300ミクロン未満であり、粒子の少なくとも90重量%が約10ミクロン超である粒度分布を有していなければならない。これを達成するためには、ブルシャイトリン酸カルシウムの出発材料は、粒子の90重量%が約260ミクロン未満であり、粒子の少なくとも90重量%が約10ミクロン超である粒度分布を有することになる。この粒度分布は、この範囲外の粒子を除去することによって得ることができる。粒度分布選択の操作は篩別によって行う。好ましい作製方法では、中位径(d50)で表した粒子サイズは100μm〜250μm、好ましくは150μm〜190μmである。中位径は、粒子の50重量%が中位径超であるかそれ未満の直径を有していると定義される。
【0026】
さらに、最終ヒドロキシアパタイト生成物は、薬剤用成分の使用を管理する規制に適合していなければならないので、ブルシャイトリン酸カルシウムは、薬局方に詳細に記されているような薬剤用成分のための純度要件も満たさなければならない。すなわち、医薬分野での使用の場合のブルシャイトリン酸カルシウムの欧州医薬品規格(European pharmaceutical specifications)は、CaHPO・2HO含量が98.0〜105.5%であり、クロリドイオン含量が330ppm以下であり、フルオリドイオン含量が100ppm以下であり、ヒ素含量が10ppm以下であり、重金属と鉄の含量がそれぞれ40ppm以下と400ppm以下である。
【0027】
加水分解反応は、ブルシャイトの任意の濃度の水性懸濁液を用いて実施することができる。加水分解の際、ブルシャイトを懸濁液中に保持して、均一な顆粒が確実に得られるようにする。ブルシャイトを水性懸濁液の状態に保持するために、好ましくは十分攪拌しながら反応物質を反応させる。
【0028】
実際には、濃度が約50重量%を超えると、ブルシャイトを懸濁液の状態に保持することが困難になる。20%〜40重量%に濃度を保持することが好ましい。過度に攪拌しても反応速度は向上せず、粒子を破壊してしまい、それに応じて有用な収率の損失がもたらされる恐れがある。
【0029】
本発明の方法に合わせて、石灰という塩基を導入する。固体状の石灰を用いるか、5〜20g/l、好ましくは10g/lの濃度を有する水性懸濁液(石灰乳)の状態の石灰を用いる。用いる石灰の量はCa/Pモル当量のヒドロキシアパタイトが得られるようにする量に近くする。Ca/P当量は1.5〜1.7、好ましくは1.6の領域で選択するのが最もよい。
【0030】
本発明の方法ではカルボン酸を用いる。有利なことには、反応条件下で可溶性であるか部分的に可溶性であるカルシウムカルボキシレートが得られるカルボン酸を用いる。「部分的に可溶性である」ということは、室温で測定して、好ましくは少なくとも水1リットル当たり10gのカルシウムカルボキシレートの溶解度を意味する。
【0031】
優先的に用いるカルボン酸は、1〜7個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸である。カルボン酸の具体的な例としては、メタン酸、酢酸およびプロピオン酸を挙げることができる。カルボン酸は酢酸であることが好ましい。
【0032】
反応環境のpHを6〜10に低下させるためにカルボン酸を用いる。pHは好ましくはpH7.0の範囲である。
【0033】
本発明の方法は好ましくは大気圧下で実施する。
【0034】
反応は、室温より高い温度(最も多くは15℃〜25℃の範囲)、好ましくは約50℃超、より好ましくは50℃〜100℃の温度で実施することが好ましい。温度は90℃〜95℃であることが最も好ましい。
【0035】
50℃より低い温度では、反応時間がより長くなると判断された。
【0036】
本発明の方法によれば、石灰をブルシャイトリン酸二カルシウム懸濁液に加え、カルボン酸を加えてpHを上記の範囲に調節する。
【0037】
実際的な観点から、本発明の方法は、非連続方式でも連続方式でも行うことができる。第1の非連続方式によれば、石灰を、固体または乳液の石灰の形態で、ブルシャイトリン酸二カルシウムの水性懸濁液に加える。一般に添加は室温(通常15℃〜25℃)で行う。
【0038】
次いで、カルボン酸を室温で6〜10、好ましくは約7のpHになるような量で加える。そのpHになったら、反応混合物を54℃〜100℃、好ましくは90℃〜95℃の範囲の温度にする。
【0039】
引き続き反応環境を攪拌下におき、選択した温度で十分な時間を保持して、ブルシャイトリン酸カルシウムのリン酸カルシウムヒドロキシアパタイトへの転換がもたらされるようにする。必要とする時間は、一般に1時間〜24時間、好ましくは6時間〜8時間である。
【0040】
反応が完了したら、混合物を室温に冷却する。ヒドロキシアパタイトは、周知の固/液分離の技術、例えば、ろ過または遠心分離、好ましくはろ過を用いて得られる。
【0041】
微量のカルボン酸を除去するために、1回以上の水による洗浄(例えば2回または3回)を実施することができる。用いる水の量は一般に、最初のろ液の1倍または2倍の容積に等しい量である。
【0042】
乾燥は通常、空気を用いて、好ましくはリン酸カルシウムヒドロキシアパタイトを80〜120℃、好ましくは約110℃の温度に加熱することによって実施して、物理的な手段により吸収された水分を除去する。
【0043】
本発明の方法によって調製したリン酸カルシウムヒドロキシアパタイトは、ヒドロキシアパタイトのX線回折と同等のX線回折パターンを示す。また、ブルシャイトリン酸カルシウムのリン酸カルシウムヒドロキシアパタイトへの転換において、ヒドロキシアパタイトの組成と異なるアニオンまたはカチオンの転換は起こらない。
【0044】
本発明を適用する連続方式によれば、その方法は、ブルシャイトリン酸二カルシウムの水性懸濁液を用いて開始される。懸濁液を50℃〜100℃、好ましくは90℃〜95℃の範囲の反応温度まで上げる。次いで石灰とカルボン酸を並行して加える。用いる石灰の量は、1.5〜1.7、好ましくは約1.6のCa/Pモル当量が得られるようにする。
【0045】
カルボン酸の量は、pHが6〜10、好ましくは7の範囲に制御されるように調節する。石灰の添加速度は消費されるカルボン酸の量を決定する。したがって、石灰を徐々に、例えば、4時間〜12時間、好ましくは約8時間にわたって加えることが好ましい。石灰の添加速度が遅ければ遅いほど、用いるカルボン酸の量は少なくなる。
【0046】
次いで、反応混合物を、50℃〜100℃、好ましくは90℃〜95℃の反応温度で、好ましくは12〜20時間の範囲で保持する。反応が完了したら、(その材料)を冷却し、上述のようにして分離および乾燥操作を実施する。
【0047】
本発明により得られたヒドロキシアパタイトリン酸塩の顆粒は医薬品分野で使用することができる。
【0048】
本発明の顆粒のための適用はリン酸カルシウムおよび炭酸カルシウムの場合と同じである。
【0049】
さらに、これらは、栄養面においてカルシウムおよびリンの補充物を提供する利点をもたらす。前記元素は、神経、骨、筋肉および歯の構成や機能において重要な役割を果たす。
【0050】
本発明による顆粒はとりわけ、直接圧縮によって活性成分を製剤するのに直接使用できる利点を提供する。「活性成分」は、消費者に対して有益な効果を有するか消費者が望む効果を有する、経口投与のための任意の産物を意味する。したがって、活性成分は、薬学的特性、すなわち、生体に対して予防作用か治療作用を有する任意の産物であってよい。
【0051】
また、錠剤の形態で製剤することができる、例えばビタミンまたは微量のミネラル元素源などの健康や美容に関連する産物も含まれる。
【0052】
治療型の活性成分の例として、以下の非限定的な物質リストを挙げることができる。すなわち、非ステロイド系の抗リウマチ薬および抗炎症薬(例えば、ケトプロフェン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、フェニルブタゾン、アロプリノール、ナブメトン)、麻薬性鎮痛薬または非麻薬性鎮痛薬(例えば、パラセタモール、フェナセチン、アスピリン)、鎮咳薬(例えば、コデイン、コデチリン(codethyline)、アリメマジン)、向精神薬(例えば、トリミプラミン、アミネプチン、クロルプロマジンおよびフェノチアジンの誘導体、ジアゼパム、ロラゼパム、ニトラゼパム、メプロバメート、ゾピクロンおよびシクロピロロン系の誘導体)、ステロイド(例えば、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、プロゲステロン、テストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、デキサメタゾン、ベータメタゾン、パラメタゾン、フルオシノロン、ベクロメタゾン)、バルビツール酸塩(例えば、バルビタール、アロバルビタール、フェノバルビタール、ペントバルビタール、アモバルビタール)、抗菌剤(例えば、ペフロクサシン(pefloxacine)、スパーフロクサシン(sparfloxacine)、およびキノロン、テトラサイクリン、シナージスチン(synergistine)、メトロニダゾールの部類の誘導体)、アレルギーの治療のための医薬品、特に抗ぜんそく薬、鎮痙薬およびブロッキング防止剤(例えば、オメプラゾール)、脳血管拡張薬(例えば、キナカイノール、オクスプレノロール、プロプラノロール、ニセルゴリン)、脳保護剤、肝臓保護剤、胃腸を標的とした治療剤、避妊薬、経口ワクチン、血圧降下薬ならびにβ遮断薬および硝酸塩誘導体などの心血管作動薬または心保護薬である。
【0053】
本発明の方法によって調製された化合物における活性成分の量は広い範囲にわたることができる。より具体的にはそれは全組成物の0.001〜95重量%含まれ、残りはマトリックスによって確保される。
【0054】
このようにして、本発明によるリン酸カルシウムヒドロキシアパタイトの顆粒は、マトリックスの主要な構成要素の働きをする。リン酸カルシウムヒドロキシアパタイトは、一般にマトリックスの10%〜100重量%を形成する。それは、マトリックスの少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%を占めることが有利である。
【0055】
ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤を、一般に0.5重量%のオーダーで顆粒に加えることが有利である。その後の錠剤の崩壊に好都合なように、崩壊剤を顆粒に加えることもできる。この崩壊剤はデンプン、特にとうもろこしデンプンまたはクロスカルメロースナトリウムであってよく、5〜10重量%の範囲の量で混ぜ込むことができる。
【0056】
マトリックスは、また、1種以上の薬剤として許容される賦形剤、より具体的には、希釈剤、結合剤、潤滑剤および着色剤、ならびに糖類、特に乳糖およびスクロースなどの芳香剤、ステアリン酸などの脂肪酸、例えば、ポリエチレングリコール、リン酸二カルシウムなどの他のリン酸塩、シリカ、珪素アルミン酸塩、セルロース誘導体、特にHMPC、キサンタンガム、ゼラチン、ポリビニルピロリドンを含むことができる。
【0057】
本発明の顆粒は、既知の任意の固体/固体混合方法を用いて1種以上の活性成分や、場合により、組成物の他の賦形剤と混合し、水またはエタノールなどの有機溶媒を使用しない直接圧縮法によってドライ圧縮することができる。
【0058】
得られた混合物は、6〜30kN(圧縮ローラーのレベルで測定する)の範囲の力で連続的圧縮操作にかける。この圧縮操作に、0.5〜2.5kNの範囲の力での予備圧縮を先行させることが好ましい。
【0059】
したがって、本発明により得られた顆粒は錠剤の調製に十分適合されている。
【0060】
本発明の本質およびその適用方法をより完全に説明するために、本発明の実施例を提供する。これらは、例示的目的だけのためであり、本来限定しようとするものではない。
【0061】
これらの5つの実施例には様々なパラメータが示されている。すなわち、
12.5〜400g/lのブルシャイトリン酸二カルシウム懸濁液の濃度、
初期Ca/Pモル当量は1.5〜1.67の範囲である、
様々なカルボン酸、酢酸(CT)、プロピオン酸(C3)、
異なる適用方法:非連続的(実施例1〜3)および半連続的(実施例4および5)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
本発明は添付した複数の図面を参照する。
【実施例1】
【0063】
二重ジャケット型の2リットル反応器において、250回転/分(6枚傾斜ブレード)の攪拌速度で25℃で、10.324gのリン酸二カルシウム二水和物:CaHPO・2HO(Societe RhodiaよりDiTABの商品名で市販されている)、2.964gの水酸化カルシウム[Ca(OH)](PROLABOのRECTAPURグレード)および800gの脱イオン水を混合する。
【0064】
Ca/P比は1.67である。
【0065】
懸濁液の全容積は800mlであり、DiTab濃度は12.5g/lである。
【0066】
約5gのPROLABOからの酢酸[CHCOOH]、100%RECTAPURグレードを滴下してpH7.0にする。
【0067】
次いで混合物を、30分かけて温度を上昇させて95℃に加熱する。95℃で24時間後、加熱を停止し、混合物を室温に冷却する。
【0068】
次いで生成物をろ別し、3倍容積の水で洗浄し、乾燥オーブン中で100℃で終夜かけて乾燥する。
【0069】
この生成物はヒドロキシアパタイトに特有のX線回折パターンを示す。
【実施例2】
【0070】
二重ジャケット型の2リットル反応器において、250回転/分(6枚傾斜ブレード)の攪拌速度で25℃で、10.324gのリン酸二カルシウム二水和物:CaHPO・2HO(Societe RhodiaよりDiTABの商品名で市販されている)、2.964gの水酸化カルシウム(PROLABOのRECTAPURグレード)および800gの脱イオン水を混合する。
【0071】
Ca/P比は1.67である。
【0072】
懸濁液の全容積は800mlであり、DiTab濃度は12.5g/lである。
【0073】
約6gのPROLABOからのプロピオン酸[CHCHCOOH]、RECTAPURグレードを加えてpH7.0にする。
【0074】
次いで混合物を、30分かけて温度を上昇させて95℃に加熱する。95℃で24時間後、加熱を停止し、混合物を室温に冷却する。次いで生成物をろ別し、3倍容積の水で洗浄し、乾燥オーブン中で100℃で終夜かけて乾燥する。
【0075】
この生成物はヒドロキシアパタイトに特有のX線回折パターンを示す。
【実施例3】
【0076】
二重ジャケット型の2リットル反応器において、250回転/分(6枚傾斜ブレード)の攪拌速度で25℃で、258.1gのリン酸二カルシウム二水和物CaHPO・2HO(Societe RhodiaよりDiTABの商品名で市販されている)、74.1gの水酸化カルシウム(PROLABOのRECTAPURグレード)および400gの脱イオン水を混合する。
【0077】
Ca/P比は1.67である。
【0078】
懸濁液の全容積は650mlであり、DiTab濃度は400g/lである。
【0079】
約120gのPROLABOからの酢酸、100%RECTAPURグレードを加えてpH7.0にする。
【0080】
次いで混合物を、30分かけて温度を上昇させて95℃に加熱する。95℃で24時間後、加熱を停止し、混合物を室温に冷却する。次いで生成物をろ別し、3倍容積の水で洗浄し、乾燥オーブン中で100℃で終夜かけて乾燥する。
【0081】
この生成物はヒドロキシアパタイトに特有のX線回折パターンを示す。
【実施例4】
【0082】
二重ジャケット型の2リットル反応器において、250回転/分(6枚傾斜ブレード)の攪拌速度で25℃で、233gのリン酸二カルシウム二水和物:CaHPO・2HO(Societe RhodiaよりDiTABの商品名で市販されている)と450gの脱イオン水を混合する。
【0083】
Ca/P比は1.67である。
【0084】
懸濁液の全容積は540mlである。
【0085】
次いで反応器を、温度を30分かけて上昇させて95℃に加熱する。
【0086】
蠕動ポンプを用いて、67gのPROLABOからの水酸化カルシウム、RECTAPURグレードおよび200gの水の混合物からなる石灰乳を8時間かけて加える。240mlの容積のこの乳液を磁気攪拌下で保持する。
【0087】
反応器のpHを、約7gのPROLABOからの酢酸、100%RECTAPURグレードで調節して7.0未満のpHに保持する。石灰乳を加えた後、混合物を95℃で16時間保持し、加熱を停止して室温に冷却する。
【0088】
懸濁液の全容積は780mlであり、DiTab濃度は300g/lである。
【0089】
次いで生成物をろ別し、3倍容積の水で洗浄し、乾燥オーブン中で100℃で終夜かけて乾燥する。この生成物はヒドロキシアパタイトに特有のX線回折パターンを示す。
【0090】
粒子サイズは、レーザー回折により測定した中位径(d50)で表すと175μmである。
【0091】
図1に示した200μmの顆粒のSEMによる観察によれば、0.05x1μmの針状の粒子の凝集体からなる。
【0092】
比較として、図2に最初のジカリック(dicalic)リン酸塩のSEM写真を示す。
【実施例5】
【0093】
二重ジャケット型の2リットル反応器において、250回転/分(6枚傾斜ブレード)の攪拌速度で25℃で、233gのリン酸二カルシウム二水和物CaHPO・2HO(Societe RhodiaよりDiTABの商品名で市販されている)と400gの脱イオン水を混合する。
【0094】
Ca/P比は1.60である。
【0095】
懸濁液の全容積は490mlである。
【0096】
次いで反応器を、30分かけて温度を上昇させて95℃に加熱する。
【0097】
蠕動ポンプを用いて、60.16gのPROLABOからの水酸化カルシウム、RECTAPURグレードおよび250gの水の混合物からなる石灰乳を8時間かけて加える。290mlの容積のこの乳液を磁気攪拌下で保持する。
【0098】
反応器のpHを、約4gのPROLABOからの酢酸、100%RECTAPURグレードで調節して7.0未満のpHに保持する。
【0099】
乳液を加えた後、混合物を95℃で16時間保持し、加熱を停止して室温に冷却する。
【0100】
懸濁液の全容積は780mlであり、DiTab濃度は300g/lである。
【0101】
次いで生成物をろ別し、3倍容積の水で洗浄し、乾燥オーブン中で100℃で終夜かけて乾燥する。
【0102】
この生成物はヒドロキシアパタイトに特有のX線回折パターンを示す。
【0103】
粒子サイズは、レーザー回折により測定した中位径(d50)で表すと195μmである。
【0104】
図3に示すように、最初のリン酸二カルシウムと最後のヒドロキシアパタイトの粒子サイズ分布は同じである。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】走査型電子顕微鏡(SEM)で撮った、本発明の実施例4によるリン酸カルシウムヒドロキシアパタイトの顆粒の形状を示す写真である。
【図2】走査型電子顕微鏡(SEM)で撮った、最初のブルシャイトリン酸二カルシウムの顆粒の形状を示す写真である。
【図3】最初のブルシャイトリン酸二カルシウムと比較した実施例5の中位径(d50)を決定するための累積曲線に相当するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブルシャイトリン酸二カルシウムの水性懸濁液を、有効量のカルボン酸の存在下、石灰で処理することを特徴とする、塩基性環境でブルシャイトリン酸二カルシウムを加水分解することによるヒドロキシアパタイトのX線回折パターンを示す顆粒状のリン酸カルシウム調製方法。
【請求項2】
請求項1に記載のリン酸カルシウム調製方法であって、
前記ブルシャイトリン酸カルシウムは、粒子の90重量%が約300ミクロン未満であり、粒子の少なくとも90重量%が約10ミクロンより大きい粒度分布を有することを特徴とするリン酸カルシウム調製方法。
【請求項3】
請求項2に記載のリン酸カルシウム調製方法であって、
前記ブルシャイトリン酸二カルシウムの粒子サイズは、100μm〜250μm、好ましくは150μm〜190μmの中位径(d50)を有することを特徴とするリン酸カルシウム調製方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のリン酸カルシウム調製方法であって、
前記ブルシャイトの水性懸濁液は、20〜40重量%の濃度を有することを特徴とするリン酸カルシウム調製方法。
【請求項5】
請求項1に記載のリン酸カルシウム調製方法であって、
前記石灰は、固体形態であるか、5〜20g/l、好ましくは10g/lの濃度を有する石灰乳の形態であることを特徴とするリン酸カルシウム調製方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のリン酸カルシウム調製方法であって、
用いる石灰の量は、Ca/P比が1.5〜1.7、好ましくは約1.6となる量であることを特徴とするリン酸カルシウム調製方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のリン酸カルシウム調製方法であって、
用いるカルボン酸は、そのカルシウム塩が反応条件下で可溶性であるか部分的に可溶性であるカルボン酸であることを特徴とするリン酸カルシウム調製方法。
【請求項8】
請求項7に記載のリン酸カルシウム調製方法であって、
前記カルボン酸は、1〜7個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸であることを特徴とするリン酸カルシウム調製方法。
【請求項9】
請求項8に記載のリン酸カルシウム調製方法であって、
前記カルボン酸は、メタン酸、酢酸またはプロピオン酸、好ましくは酢酸であることを特徴とするリン酸カルシウム調製方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のリン酸カルシウム調製方法であって、
前記カルボン酸を、反応環境のpHを6〜10、好ましくは約pH7.0に低下させる形で使用することを特徴とするリン酸カルシウム調製方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載のリン酸カルシウム調製方法であって、
反応温度は、50℃〜100℃、好ましくは90℃〜95℃であることを特徴とするリン酸カルシウム調製方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のリン酸カルシウム調製方法であって、
反応を大気圧下で実施することを特徴とするリン酸カルシウム調製方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載のリン酸カルシウム調製方法であって、
石灰をブルシャイトリン酸二カルシウムの懸濁液に加え、カルボン酸を加えてpHを上記の範囲に調節することを特徴とするリン酸カルシウム調製方法。
【請求項14】
請求項13に記載のリン酸カルシウム調製方法であって、
非連続方式または連続方式で実施することを特徴とするリン酸カルシウム調製方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載のリン酸カルシウム調製方法であって、
前記環境を、反応温度でブルシャイトリン酸二カルシウムをリン酸カルシウムヒドロキシアパタイトに転換するのに十分な時間保持することを特徴とするリン酸カルシウム調製方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載のリン酸カルシウム調製方法であって、
得られるリン酸カルシウムヒドロキシアパタイトを、好ましくはろ過により分離し、1回以上の水洗浄を実施することを特徴とするリン酸カルシウム調製方法。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載のリン酸カルシウム調製方法であって、
前記リン酸カルシウムヒドロキシアパタイトを80〜120℃、好ましくは110℃の範囲の温度で乾燥することを特徴とするリン酸カルシウム調製方法。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1項に記載のリン酸カルシウム調製方法により得られたヒドロキシアパタイトのX線回折パターンを示すことを特徴とする顆粒形態のリン酸カルシウム。
【請求項19】
請求項18に記載のリン酸塩であって、ヒドロキシアパタイトの組成と異なるアニオンまたはカチオンを含まないことを特徴とするリン酸塩。
【請求項20】
請求項1から17のいずれか1項に記載のリン酸カルシウム調製方法により得られた顆粒形態のリン酸カルシウムヒドロキシアパタイトを、リンおよびカルシウムの供給源とし、かつ/または錠剤状の賦形剤とすることを特徴とするその利用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−510674(P2008−510674A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520492(P2007−520492)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/024067
【国際公開番号】WO2006/014531
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(505084756)イノフォス インコーポレーテッド (10)