説明

ヒドロキシオレイン酸及び関連化合物の機能性食品添加物としての使用

ヒドロキシオレイン酸及びその類似化合物の機能性食品添加物としての使用。一般式I:COOH−CHR−(CH?2#191)?m#191−CH=CH−(CH?2#191)?n#191−CH?3#191(式中、m及びnは、独立に0〜15の値であり、Rは分子量が200Da未満のいずれの残基であってもよい)の、ヒドロキシオレイン酸及びその類似物の使用を、高血圧症や肥満症などの心血管疾患に関連したパラメータの改善に焦点を合せた食品添加物及び/又は成分、食物製品、許容できる食品形態及び食品一般の製造及び/又は調製において記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシオレイン酸(2−ヒドロキシオレイン酸)及び類似構造の分子を、心血管疾患や肥満症の発症に関して予防特性を有し、通常は機能性添加物として知られる、食品添加物として使用することに関する。
【0002】
本発明は、2−ヒドロキシオレイン酸及び類似化合物を、食品製品の製造のために使用することにも関する。
【背景技術】
【0003】
脂肪酸は、食料品及び産業上のいずれにおいても幅広く利用されている分子である。脂肪酸やその他の型の脂肪は、さまざまな食物製品に含まれる。特に、油(オリーブ、大豆、ひまわり、月見草、ゴマなど)、(動物性)脂肪/バター、及び(植物性)マーガリンについて言及することができ、その組成は95%超の脂肪からなる。植物及び/又は動物性の脂肪は、量の多寡はあるが他の多くの食品製品に含まれ、場合によっては種々の疾患の発症に関して予防特性を示し、これは例えばオメガ−3脂肪酸などである。脂肪酸は、通常2つの形態が、すなわち遊離形態(通常割合は低い)又はリン脂質、コレステロールエステル、トリグリセリドなど他の分子に結合した形態(脂肪酸の主要な存在形態)で食品製品及び食物製品に見られる。どのような存在形態であれ、大半の食品製品及び食物製品で、一般に自然と同様に、脂肪酸は通常は高度な修飾を受けていない。しかし、一部の植物種子油では大量の水酸化脂肪酸の存在(60%まで)が示されている(Moonら、2001、Plant Pysiol.127、1635)。それでもなお、天然の水酸化脂肪酸の存在量は、異なる有機体及び生物系の間で相当に多様である。
【0004】
これに関連して、その合成が既に報告されている(Adamら、1998、Eur.J.Org.Chem.9、2013〜2018)2−ヒドロキシオレイン酸は、化粧品製造のための乳化剤として産業上使用されている。水酸化脂肪酸は、その乳化能が知られており、食品及び他の用途でそのまま乳化剤として使用されている。
【0005】
次に、一方、例えば、特許JP10182338は、低刺激性と塩に対する高い相容性とを示す水中油型乳化剤組成物に関するものであり、この組成物は[A]モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビトール、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、及びモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビトールなどの非イオン性界面活性剤、[B]2−ヒドロキシステアリン酸などの2−ヒドロキシC10〜C22脂肪酸、[C]油及び[D]水を含み、ここでA/B比は1:0.01と1:2との間である。
【0006】
同様に乳化剤として、特許JP09110635は、医薬品、化粧品、及び食料品として使用できる組成物に関するものであり、この組成物は[A]ポリグリセリン脂肪酸エステル、[B]2−ヒドロキシC10〜C22脂肪酸、[C]油及び[D]水を含み、ここでA/C及びB/Cの重量比はそれぞれ2.0及び0.5であり、組成物は10と300nmの間の平均粒径を有する。これらの組成物は、酸性条件下又は低粘度又は大量の塩の存在下においても良好な安定性を示し、したがって皮膚との適合性がある。
【0007】
本願発明者らの以前の特許WO03/030891では、抗腫瘍剤、降圧作用を有する薬剤、及び体重減少を引き起こすことができる薬剤として使用可能な医薬品の製造における、ヒドロキシオレイン酸及び類似化合物の使用を開示した。ヒドロキシオレイン酸及び類似化合物を使用して製造したこれらの薬学的化合物の治療作用は、これらの化合物が膜構造を制御し、それによってGタンパク質の活性及び/又は局在が制御され、その結果Gタンパク質に結合した受容体が制御を受けることによるものと思われた。本発明の目的は、栄養食物補助剤としてのヒドロキシオレイン酸及び類似化合物の心血管疾患や肥満症に対する予防作用を、ここにクレームすることである。
【0008】
ヘキサゴナルな膜構造
膜脂質は、タンパク質や核酸より多数の2次構造へと自ら配置することが可能である。生体膜に一般的な脂質二重層は、これらの2次構造の1つに過ぎない。生細胞における他の2次構造の存在量と役割については、ほとんど知られていない。これらの構造の1つの機能については以前に記載されているが、Gタンパク質の膜に対する結合親和性を上昇させることである(Escriba PV、Ozaita A、Ribas C、Miralles A、Fodor E、Farkas and Garcia−Sevilla JA;1997 Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA 94、11375〜11380)。
【0009】
膜構造の概念は、先行技術である特許のいくつかでの記載(WO87/04926及びWO80/11286)をはるかに超えるが、これらの特許では膜の流動性のみについて言及されている。本発明では、この概念をより広範な分野、すなわち膜構造に敷衍する。本特許が包含する分子は、ラメラ構造からヘキサゴナル構造への移行又は推移に作用する(図1)。
【0010】
Gタンパク質に結合する受容体は至る所に存在し、神経伝達物質、ホルモン、神経調節物質、サイトカイン、成長因子等によって開始されるシグナルを伝達する膜受容体の80%を占める。これらの受容体は、血圧及び体重を含むいくつかの生理的な過程を制御する。したがって、本発明に記載した分子は、前記の生理的な過程を制御することができる。
【0011】
引用した先行技術を検証すると、心血管疾患や肥満症の発症を予防するための食料品の領域では殊に興味が持たれるであろう2―ヒドロキシオレイン酸又は類似化合物に関連したその他の用途は、現況技術ではない。
【0012】
食物製品(GB2140668、EP0611568及びWO02/0042)又はミクロコッカス・クリオフィルス(M.cryophilus)の培養抽出物(WO89/11286)の記載のみがあり、これらは、脂肪酸、特にオレイン酸及びパルミチン酸などの本発明で記載したものと類似のいくつかを含む多様な化合物の複雑な混合物からなるが、例えば、前記の心血管疾患を予防する治療作用における特定の役割を前記特許で想定される化合物の成分のいずれに対しても起因させるものではない。
【0013】
高血圧症の発症における細胞の脂質組成の作用が、研究されてきた(Escribaら、Hypertension 41、176〜182;2003)。これに関しては、膜を形成する脂質の異なる組成が高血圧症の進行に関与していること、及び食物による膜組成(及びその構造)のコントロールが高血圧症の正常化に関与していることが観察されている。前述したように、この作用は、膜構造が有する、Gタンパク質の局在と活性とをコントロールする能力によって制御されている。
【0014】
本発明者らは、ヒドロキシオレイン酸又は類似化合物の薬剤としての使用を、本明細書に提案する適応症に関連して記載した先行技術である他の特許の知見を有する。
【0015】
次に、WO02/43662は、リノレン酸、DHA、ビタミンE、G、B6及びB12及び葉酸をカルシウムと共に含んで主成分とした栄養補助剤を開示しており、この栄養補助剤は、高コレステロール値と高血圧とを軽減するために使用することができる。更に、CN1098920は、降圧剤、血中コレステロール低下薬として、並びに肝炎、腎炎、及び他の疾患の治療に使用できる経口用翼果オイル(samara oil)酒(リノレン酸及びビタミンEに富む)を開示している。リノレン酸は本発明の対象ではない。US5059622及びUS6140304は、エイコサペンタエン酸及びγ−リノレン酸を使用した、この同一の治療適用について言及している。脳卒中と関連した高血圧症も開示され(GB2140688)、この高血圧症はパルミトレイン酸で治療可能である。また、先行技術には、炭素原子が20個未満であるオメガ−3不飽和脂肪酸の場合は、脂肪燃焼の助けとなる化合物(WO02/11552)、又は炭素原子が4〜14である脂肪酸の場合は、体重減少に役立つ化合物(WO01/91587)として、脂肪酸ジグリセリド及び脂肪酸トリグリセリドを含む食物がある。トリグリセリドは本発明の対象ではない。WO02/00042は、C12〜24の脂肪酸、特にパルミトレイン酸及びオレイン酸を開示しており、これらの脂肪酸は満腹感を引き起こす。本発明の体重コントロール機序は、満腹感のコントロールによって仲介されるものではない。
【0016】
膜の状態の調節に関しては、既に開示(パルミチン酸についてはWO89/11286;C12〜28の一価不飽和脂肪酸についてはWO87/04926)されているが、構造的な移行ではなく、流動性の変化に関係した機序によるものである。同様に、ネルボン酸の使用は、新生児や未熟児及び妊婦用(WO96/05740)、また多発性側索硬化症などの疾患予防用の栄養補助剤として知られている。特に、オレイン酸、リノレン酸又はエイコサペンタエン酸を主成分とする腸溶剤は、癌の患者に対してさえ使用されてきた(EP0611568)。
【0017】
これらの適応のいずれも、本発明でクレームされるものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、2−ヒドロキシオレイン酸及び類似化合物の、先行技術に記載されておらず、且つ先行技術から自明ではない、新規の用途を見いだすことである。
【0019】
本発明の目的は、2−ヒドロキシオレイン酸及びその類似体が、血圧の低下及び体重減少の誘起によって心血管疾患を予防することが可能な機能性食品添加物としての活性を有することを示すことである。消費に関して食物とみなし得る量のヒドロキシオレイン酸(1日約0.5g/kg体重までの量)をヒト用食品製品に添加すると、心血管疾患に直接関連するパラメータである血圧及び体重に有意な利益がもたらされる。
【0020】
以下に記載する2−ヒドロキシオレイン酸及びその類似物のための出願は、誰によっても以前に引用されたことがなく、2−ヒドロキシオレイン酸及びその類似物の使用は、食物に含有させることによって、ある種の疾患の予防に有益であると判明することがある。特に、2−ヒドロキシオレイン酸及びその類似物は、心血管に対する活性を示し、これによって血圧低下及び体重減少をもたらすことが見いだされている。
【0021】
本発明において2−ヒドロキシオレイン酸及びその類似物の新規の用途は、細胞及び動物の実験モデルを使用して実現される。これらの分析モデルによって、2−ヒドロキシオレイン酸及びその類似物は、心血管疾患の予防を目的としたヒト用の薬剤製造のために使用可能な分子であることが明らかに示される。
【課題を解決するための手段】
【0022】
クレームした本発明の化合物の使用は、可能な限り広範な意味において、食料品分野に適用するものとして理解されるべきであり、とりわけ以下を含む。すなわち、食品の添加物及び/又は成分、食物製品、許容できる食品形態、及び食品一般である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明で、「2−ヒドロキシオレイン酸」とは、α−ヒドロキシオレイン酸、C18:1シスΔ9オクタデセン酸、又は2−ヒドロキシ−シス−9−オクタデセン酸を意味し、区別することはない。「その機能的類似物」とは、その二重結合の位置が中心部から1つ又は2つシフトした脂肪酸、又は二重結合の位置が中心部から1〜5つシフトし、且つ/又は二重結合の両側それぞれの炭素数(CH基)が1〜6であり、且つ/又はOHとは異なり、原子量は小さいがHではない(分子量は200Da以下)の残基(R)が2位にある脂肪酸を意味する。R基の立体位置に対応する立体異性体がRであるかSであるかは、問題ではない。試験した多種の分子に関しては、以下に示す一般式を有する化合物がヒドロキシオレイン酸と類似したいくつかの作用を示すことが観察され、したがって、その機能的な類似物として分類できる。
【0024】
一般式I:COOH−CHR−(CH−CH=CH−(CH−CHにおいて、m及びnは独立に0〜15の値であり、RはH、OH、NH、CH又は分子量200Da未満の他の残基であってもよい。
【0025】
本発明では、「Gタンパク質」とはグアニンヌクレオチド結合タンパク質であり、3つのサブユニット(α1つ、β1つ、γ1つ)からなり、Gタンパク質に結合した受容体からエフェクター類(アデニル酸シクラーゼ、グアニル酸シクラーゼ、ホスホリパーゼC、イオンチャンネルなど)へと、情報を伝達するタンパク質を意味する。
【0026】
本発明では、「膜構造」とは、天然又は合成の膜(リポソーム)の脂質の二次構造又は配列を意味する。
【0027】
本発明では、「食物として許容可能な形態」とは、通常、産業上で使用されるいずれの形態をも意味し、脂肪酸、エーテル、アミド、塩などに対する可溶化性から、エステル、特にエチルエステルを含むが、限定されるものではない。
【0028】
「機能性食品添加物」という用語は、摂取した際に、栄養取り込みそれ自体に特有の作用より強い、疾患の発症を予防する作用をもたらす添加物を意味するものと理解されるべきである。
【0029】
Gタンパク質の活性の制御は血圧をコントロールする。
ヒドロキシオレイン酸及び関連物質は、[35S]GTPγSの結合によって測定されるGタンパク質活性を調節することができる(図2)。
【0030】
本発明の化合物とGタンパク質の活性及び血圧との間には関係がある。以前の記載を支持する結果は、ヒトで実施された研究であり、その研究で、本発明者は、高血圧症の個人には膜脂質レベルの変化があることを示している(表1)。膜脂質は、ラメラ−ヘキサゴナル移行に影響を与え、次にGタンパク質の局在と機能とを決定する。事実、高血圧症の患者では、前述した膜脂質の変化及びヘキサゴナル相の形成が容易であることによる、膜に結合したGタンパク質レベルの変化が観察される。非ラメラ膜構造及びその結果生じるGタンパク質の再局在を調節することで高血圧症が生じるのであれば、膜脂質のラメラ−ヘキサゴナル移行を調節することによって膜タンパク質の局在を調節し、最終的には血圧を調節することが可能である(図3)。
【表1】

【0031】
2−ヒドロキシオレイン酸及びその類似物は、心拍数を変えずに血圧低下を引き起こしたので、顕著な降圧作用があることが示された(図4a、図4b及び図5)。2−ヒドロキシオレイン酸及びその類似物の摂取によってもたらされた降圧作用は、摂取後2時間以内に血圧を低下させる結果となり、この化合物の摂取が継続する間、数日間から数週間、血圧低下が維持される。例えば、アミノオレイン酸は、一週間継続する長期投与で血圧を15mmHg低下させる。
【0032】
血圧は、バソプレシン受容体、アドレナリン受容体などの多様なGタンパク質共役受容体システムによってコントロールされる。
【0033】
刺激性Gタンパク質に結合した受容体による血圧コントロールに関与するホルモン類の相互作用は、2−ヒドロキシオレイン酸型及び類似した機能性分子である脂肪酸の作用によって調節される。
【0034】
これらの脂肪酸は、受容体、Gタンパク質、及びエフェクター間の情報伝達を制御する。その結果、環状AMP、ホスホリパーゼC、及び酸化窒素などのシグナルが調節され、調節によって血圧が軽減される。この作用は、膜構造の制御にも関連する。更に、これらの化合物には、他の心臓血管危険因子をコントロールするという利点があり、すなわち危険因子は血清の脂質/リポタンパク質のプロフィール及び体重である。血圧コントロールは、高血圧症患者自身の寿命を延長するには十分ではないので、他の心臓血管危険因子のコントロールを必要とする。したがって、これらの脂肪酸は、心血管疾患の発症を予防するためには比類ない食物補助剤である。
【0035】
降圧試験
2−ヒドロキシオレイン酸は、ラットで有意な血圧低下を引き起こした(図4a)。これらの低下は、速やかで(治療2時間後、19±6mmHg、P<0.01、n=6)且つ長期(1週間、26±7mmHg、P<0.001、n=6)にわたって生じた。遺伝的に高血圧のラットであるSHR系統では、2−ヒドロキシオレイン酸を摂取(12時間毎に600mg/kg)した際に、顕著な血圧低下がもたらされた。これらの低下は、約70mmHgであり、高血圧SHRラットで収縮期圧の正常化を引き起こした。一方、使用した対照(食物を摂餌及び非摂餌のWKYラット、及び食物非摂餌のSHRラット)全てで、治療期間中に血圧は変化しなかった(図6)。
【0036】
2−ヒドロキシオレイン酸は、ヒトにおいても有意で大幅な血圧低下をもたらした(図4b)。
【0037】
更に、上記一般式に適合する2−ヒドロキシオレイン酸の類似物は、降圧作用を有した(図5)。血圧減少は、対照に比べ、全例で有意であった(*P<0.05、**P<0.01)。
【0038】
これらの結果から、2−ヒドロキシオレイン酸及びその機能的類似物を、高血圧を改善する食品添加物として使用できることが明白である。
【0039】
降圧作用に加え、2−ヒドロキシオレイン酸及びその機能的類似物は、体重低下を介した心血管パラメータに対する有益な作用を有する(図5)。
【0040】
なかでも体重は、個人の代謝能力及び食品摂取のコントロールなどの因子によって制御される。
【0041】
食品摂取のコントロールは満腹感に左右されるが、満腹感はホルモンレベルで、次に調節される。例えば、栄養素の欠損は、食欲を生じるホルモン分泌を刺激する。食後に一旦栄養素のレベルが回復してしまうと、満腹感を生じるホルモン分泌が刺激される。
【0042】
2−ヒドロキシオレイン酸型脂肪酸及びその機能的類似物が満腹作用をもたらし、これによって食品摂取の低下を引き起こすことが知られてきている。このコントロールも、Gタンパク質に共役した、サイトカイン、レプチン受容体、アドレナリン受容体、及び他の受容体によって媒介され、Gタンパク質の活性は、これらの脂肪酸によって調節される。これらの結果は、体重に対する地中海ダイエット(ヒドロキシオレイン酸や誘導体などの一価の脂肪酸に富む)の作用に一致する。この件に関しては、北方諸国に比べて地中海諸国には肥満症の蔓延が少ないことが知られている。
【0043】
ヒドロキシオレイン酸及び誘導体の摂取がおよぼすコントロールによって、ヒドロキシオレイン酸及び誘導体の栄養学的サプリメントを給餌されたラットは、自由摂食及び自由摂水であっても体重が減少する。この満腹作用は、対照ラットより15%〜30%少ない食物消費を意味する。
【0044】
体重コントロール試験
本発明の分子を含む栄養補助剤を給餌されたラットは、5〜17日の摂食期間に体重が減少した。これらの実験では、2−ヒドロキシオレイン酸又はその機能的類似物、特に詳細には、ラットにアミノオレイン酸を与え、対照群のラットと同様に自由摂食及び自由摂水とした。対照群のラットには、同一の餌で脂肪酸を添加しないものを給餌した(図7)。これらの条件では、補助剤を給餌されたラットの体重は初日から減少し始め、徐々に減少し、7日目には17グラムまでとなった(2〜3月齢のスプラギードーレーラットで正常体重の5%)。これらのラットに給餌した試料を計量し、治療中の消費の低下を見いだし、これによって、本発明に関する分子による治療はラットで満腹作用をもたらすことが確認された。同様の実験を、2−ヒドロキシオレイン酸で28日間、マウス成獣で実施したが、対照マウス(栄養学的サプリメント非給餌)に比べ15%〜25%の体重低下であった。
【0045】
もう一つの実験系列では、正常血圧ラット(WKY)及び高血圧ラット(SHR)の食物にヒドロキシオレイン酸を補充し(600mg/kgを12時間毎)、ラットの体重が、8日間の食物期間に30〜40グラム減少(体重の15〜20%)することを確認した(図8)。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】ラメラ構造に加え、膜がとり得る数多くの構造のうちのいくつかを示す図である。A)脂質分子に可能な形態;B)分子構成:(L)ホスファチジルコリン優位のラメラ;(H)(HII)それぞれリゾホスファチジルコリン、及びホスファチジルエタノールアミンが優位のヘキサゴナル。
【図2】ラットのアドレナリン受容体α2A/DをトランスフェクトしたNIH 3T3細胞系の膜への[35S]GTPγSの結合を示すグラフである。このパラメータでGタンパク質の活性を測定する。2−ヒドロキシオレイン酸(2OHOA)の存在は、ダウノマイシン(DMN)より更に大幅な、Gタンパク質の機能低下を引き起こす。 横軸:C=対照;2OHOA=2−ヒドロキシオレイン酸;DMN=ダウノマイシン。 縦軸:[35S]GTPγSの結合(対照に対する%)。
【図3】正常血圧ラット(白抜き)及び高血圧ラット(黒抜き)での赤血球膜のGタンパク質レベルを、対照に対する%として測定したグラフである。Gαi1/2(Gi)、GαO(GO)、Gαs(Gs)、及びG Gβ(Gb)タンパク質のレベルは、高血圧対象では有意に低下した。バーの値は、平均値±平均の標準誤差。*P<0.05、**P<0.01。
【図4】図4aはスプラギードーレーラット雌での収縮期動脈圧(mmHg)に対するヒドロキシオレイン酸(2OHOA)の急性作用(30mg/kgで2時間後、黒抜き)及び慢性作用(1日90mg/kgを7日間、白抜き)を対照(C)に対して示すグラフである。P<0.01。 図4bはヒトの血圧(mmHg)に対する2−ヒドロキシオレイン酸(1日90mg/kgを8日間)の作用を示すグラフである。このグラフは、収縮期動脈圧を治療1日あたりの機能として示す。治療前の日数は、マイナス値で示す。*P<0.05、**P<0.01。
【図5】2−ヒドロキシオレイン酸(2OHOA)及びその機能的類似物である2−メチルオレンイン酸(2MOA)、オレイン酸(OA)、パルミトレイン酸(POA)、シス−バクセン酸(VA)及びナルボン酸(NA)の短期投与(2〜4時間)での作用を示すグラフである。2−ヒドロキシオレイン酸及び記載した類似物で実施した治療全てで、スプラギードーレーラット雌での収縮期動脈圧(mmHg)は、対照(C)に対して有意な低下(*P<0.05、**P<0.001)を示した。
【図6】遺伝的に高血圧ラットであるSHR系統雄での2−ヒドロキシオレイン酸の収縮期動脈圧(mmHg)に対する作用を示す(SHR 2OHOA、黒抜き)グラフである。2−ヒドロキシオレイン酸(600mg/kgを12時間毎に7日間)の消費は、収縮期動脈圧の大幅な低下を有意に引き起こした。2−ヒドロキシオレイン酸を給餌しなかったSHR(SHR、白抜き)では、動脈圧の低下は観察されなかった。WKY系統雄(正常血圧)では、2−ヒドロキシオレイン酸(黒抜き)も、ビヒクル(白抜き)も、統計的に有意な動脈圧の変化を生じなかった。ヒドロキシオレイン酸によって引き起こされた動脈圧の低下は、食物期間の終了時に、高血圧ラット及び正常血圧ラットで記録された値の間に、有意差がないことを意味した。
【図7】2−ヒドロキシオレイン酸(2OHOA)及びその類似物であるオレイン酸(OA)及びパルミトレイン酸(POA)(毎日90mg/kg)の体重に対する作用を、治療日あたりの減少グラムで測定して示すグラフである。ラット(スプラギードーレーラット)は、常に自由摂餌且つ自由摂水であった。
【図8】高血圧ラット(SHR)及び正常血圧ラット(WKY)の体重に対する、ヒドロキシオレイン酸(600mg/kgを12時間毎に7日間)の作用(黒円及び黒四角)を示すグラフである。ヒドロキシオレイン酸摂取8日後には、いずれの系統も大幅な体重低下(15〜20%低下)を示したが、ビヒクル(2OHOA不含)で治療した対照ラット(白円及び白四角)では、有意な体重変化は経験しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その摂取が心血管疾患及び肥満症の予防及びコントロールに有益である食品添加物及び/又は成分、食物製品、許容できる食品形態及び食品一般の製造における、一般式I:COOH−CHR−(CH−CH=CH−(CH−CH(式中、Rは分子量200Da未満のいずれの基であってもよく、m及びnは独立に0と15の間の値である)の化合物の使用。
【請求項2】
Rが、好ましくはH、OH、NH、又はCHであることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記一般式Iの化合物が、好ましくは12個から28個の炭素原子を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記一般式Iの化合物が、好ましくは2−ヒドロキシオレイン酸、2−メチルオレイン酸、バクセン酸、ナルボン酸又はアミノオレイン酸、及びその混合物であることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
食品添加物及び/又は成分、食物製品、許容できる食品形態、及び食品一般の摂取が、血圧及び随伴疾患のコントロールの補助剤としてである前記請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
食品添加物及び/又は成分、食物製品、許容できる食品形態、及び食品一般の摂取が、体重のコントロールの補助剤としてである前記請求項のいずれか一項に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−524344(P2007−524344A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−510103(P2005−510103)
【出願日】平成15年11月28日(2003.11.28)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013828
【国際公開番号】WO2005/041691
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(506119291)ウニベルシタット デ レス イリュス バレアルス (2)
【Fターム(参考)】