説明

ヒドロキシカルボン酸の製造方法

【課題】ヒドロキシカルボン酸(乳酸を除く)含有溶液中に含まれる不純物を除去する工程を含む、ヒドロキシカルボン酸の製造方法の提供。
【解決手段】グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸等のヒドロキシカルボン酸(乳酸を除く)含有溶液をナノ濾過膜に通じて濾過して、透過側からヒドロキシカルボン酸を回収する工程Aを含む、ヒドロキシカルボン酸の製造方法。前記工程Aにおけるナノ濾過膜に通じるヒドロキシカルボン酸含有溶液のpHが2以上5以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシカルボン酸(乳酸を除く)含有溶液から不純物を除去する工程を含む、ヒドロキシカルボン酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシカルボン酸は、食品、医療用途の他、生分解性プラスチックのモノマー原料として工業的用途にまで広く適用され、需要が増加している。ヒドロキシカルボン酸の多くは水酸基の立体により(L)−体、(D)−体などの光学異性体に分類される。ヒドロキシカルボン酸を生分解性プラスチックの原料として使用する場合には、光学異性体の割合(光学純度)、含有不純物量などによって得られるプラスチックの物性が左右されることから、高光学純度かつ低不純物量のヒドロキシカルボン酸の生産が求められている。ヒドロキシカルボン酸は有機合成法または発酵法により生産され、微生物発酵によるヒドロキシカルボン酸の製造によれば、微生物を適宜選択することにより(L)−体または(D)−体のヒドロキシカルボン酸を選択的に、または(L)−体及び(D)−体の混合体(ラセミ体)のヒドロキシカルボン酸を生産することができる。
【0003】
一般に、ヒドロキシカルボン酸を微生物発酵により生産するためには、培養液を至適pHに維持するためにアルカリ性物質を添加しながら行われる。そのため、発酵により生産された酸性物質であるヒドロキシカルボン酸の多くは、培養液中ではヒドロキシカルボン酸塩として存在する。この場合、フリーのヒドロキシカルボン酸は、発酵終了後、培養液に酸性物質を添加することで得られる。具体例として、培養液中に添加するアルカリ性物質として水酸化カルシウムを用いて、発酵培養液中にヒドロキシカルボン酸カルシウムを蓄積し、発酵終了後に酸性物質として硫酸を添加し、産生した硫酸カルシウムを分離することでフリーのヒドロキシカルボン酸を得ることができる。
【0004】
前記フリーのヒドロキシカルボン酸を分離する方法として、硫酸カルシウムのように難溶性の塩の場合は、定性濾紙等により濾別する方法が用いられている。しかしながら、この方法の場合、固体として析出するカルシウム塩は除去できるが、溶液中に溶解している微量のカルシウム塩は除去されず、ヒドロキシカルボン酸溶液中に不純物として残存してしまう。また、微生物発酵によりヒドロキシカルボン酸を生産する場合、不純物としてカルシウム塩以外にも様々な無機塩や糖類が存在しており、それらについても培養液中に溶解しているものは定性濾紙等では濾別できない。そのために、このヒドロキシカルボン酸を含む濾液を、例えばその後の精製工程において濃縮操作を行うと、フリーのヒドロキシカルボン酸含有溶液中に再びカルシウム塩やそれ以外の無機塩が析出(沈殿)するという問題がある。そして、無機イオンが十分に除去されていない状態のまま、蒸留等の操作によりヒドロキシカルボン酸含有溶液を加熱濃縮すると、無機イオンの影響により、ヒドロキシカルボン酸のラセミ化およびオリゴマー化が進行することが知られている。そのために、ヒドロキシカルボン酸含有溶液中に残留する微量の無機イオン成分を効果的に除去する方法が求められている。
【0005】
ヒドロキシカルボン酸含有溶液から微量の無機イオン成分または糖類を除去する方法としては、イオン交換樹脂を利用する方法が開示されている(特許文献1、2参照)。しかしながら、イオン交換樹脂のイオン交換性能を保持するためには、定期的にイオン交換樹脂を再生する必要がある。また、イオン交換樹脂の再生は大量の塩化ナトリウム水溶液を用いて行われるが、再生に伴い、大量の廃液が排出され、廃液処理に多額のコストがかかるという問題点がある。さらに、繰り返しイオン交換樹脂の再生を行うとイオン交換樹脂の再生率が低下する上に、イオン交換性能が低下し、無機塩の除去率が低下するという問題点がある。
【0006】
また、電気透析装置を用いたバイポーラ膜によって、ヒドロキシカルボン酸含有溶液から微量のカルシウム成分等の無機イオン成分を除去する方法も知られている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、この方法で用いるバイポーラ膜は高価な上に、カルシウム塩等の無機塩の除去効率が決して高くないという問題点がある。
【0007】
その他、分離膜を用いた有機酸の分離・回収方法が知られており、逆浸透膜によるピルビン酸溶液からパラピルビン酸を分離する方法が開示されている(特許文献4参照)が、その際の無機塩の除去率については開示されず、ヒドロキシカルボン酸の分離・回収についても言及されていない。
【0008】
さらに、ルーズ逆浸透膜を用いて、ヒドロキシカルボン酸含有溶液から糖類を除去する方法が開示されている(例えば、特許文献5参照)が、特許文献5で使用されているルーズ逆浸透膜では、糖の阻止率が十分高いとはいえないことから、無機塩の除去率も不十分であることが推察され、ヒドロキシカルボン酸と無機塩を効率的に分離するという課題は解決されていない。
【特許文献1】特開平3−183487号公報
【特許文献2】特開平4−171001号公報
【特許文献3】特開平10−179183号公報
【特許文献4】特開平6−306011号公報
【特許文献5】特開平4−197424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述したような課題、すなわち、乳酸を除くヒドロキシカルボン酸を生産する場合において効率よく分離・回収する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、ヒドロキシカルボン酸(乳酸を除く)含有溶液をナノ濾過膜で濾過することで、効率よく不純物を除去することができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、次の(1)〜(9)から構成される。
【0011】
(1)ヒドロキシカルボン酸(乳酸を除く)含有溶液をナノ濾過膜に通じて濾過して、透過側からヒドロキシカルボン酸を回収する工程Aを含む、ヒドロキシカルボン酸の製造方法。
【0012】
(2)前記ヒドロキシカルボン酸が、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、グルコン酸およびクエン酸から選択される1種または2種以上の混合物である、(1)に記載のヒドロキシカルボン酸の製造方法。
【0013】
(3)前記工程Aにおけるナノ濾過膜に通じるヒドロキシカルボン酸含有溶液のpHが2以上5以下である、(1)または(2)に記載のヒドロキシカルボン酸の製造方法。
【0014】
(4)前記ナノ濾過膜の硫酸マグネシウム透過率が、操作圧力0.5MPa、原水温度25℃、原水濃度1000ppmにおいて、1.5%以下である、(1)から(3)のいずれかに記載のヒドロキシカルボン酸の製造方法。
【0015】
(5)クエン酸透過率に対する硫酸マグネシウム透過率の比が、操作圧力0.5MPa、原水温度25℃、原水濃度1000ppmにおいて、3以上である、(1)から(4)のいずれかに記載のヒドロキシカルボン酸の製造方法。
【0016】
(6)前記ナノ濾過膜の機能層がポリアミドを含む、(1)から(5)のいずれかに記載のヒドロキシカルボン酸の製造方法。
【0017】
(7)前記ポリアミドが架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつ、化学式1で示される構成成分を含有することを特徴とする(6)に記載のヒドロキシカルボン酸の製造方法。
【0018】
【化1】

(式中、Rは−Hまたは−CH、nは0から3までの整数を表す。)。
【0019】
(8)前記工程Aで得られるヒドロキシカルボン酸含有溶液を逆浸透膜で濾過してヒドロキシカルボン酸濃度を高める工程Bを含む、(1)から(7)のいずれかに記載のヒドロキシカルボン酸の製造方法。
【0020】
(9)前記工程Aから回収された透過液または工程Bから回収された濃縮液を、再結晶する工程Cに供する、(1)から(8)のいずれかに記載のヒドロキシカルボン酸の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によって、ヒドロキシカルボン酸含有溶液中に含まれる無機塩等の不純物を除去することができるので、ヒドロキシカルボン酸を高純度・高収率で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0023】
本発明のヒドロキシカルボン酸の製造方法は、ヒドロキシカルボン酸(乳酸を除く)含有溶液をナノ濾過膜に通じて濾過して、ヒドロキシカルボン酸(乳酸を除く)含有溶液中の無機塩等の不純物を除去してヒドロキシカルボン酸溶液を得る工程Aを含むことを特徴としている。
【0024】
本発明におけるヒドロキシカルボン酸(乳酸を除く)とは、分子中にヒドロキシル基(OH基)およびカルボキシル基(COOH基)をそれぞれ一つまたは複数持つ化合物から乳酸を除いたものの総称である(なお、以下「ヒドロキシカルボン酸」の用語は、本定義に従うものとする。)。また、ここでいうヒドロキシカルボン酸は(L)−体、(D)−体などの光学異性体を有する場合であってもよく、1種または2種以上の混合物であってもよい。ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸(2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸)、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、グルコン酸、クエン酸などの直鎖脂肪族ヒドロキシカルボン酸、メバロン酸、ロイシン酸などの分岐脂肪族ヒドロキシカルボン酸、サリチル酸、マンデル酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸、および不飽和結合を有する上記ヒドロキシカルボン酸が挙げられるが、本発明においては炭素数1以上6以下のヒドロキシカルボン酸が好ましく、炭素数1以上6以下である直鎖脂肪族ヒドロキシカルボン酸がより好ましく、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、グルコン酸およびクエン酸からなる群から選択される1種または2種以上の混合物がさらに好ましい。また、ヒドロキシカルボン酸は有機合成による製造品であっても、発酵法による製造品であってもよい。
【0025】
本発明におけるヒドロキシカルボン酸含有溶液とは、ヒドロキシカルボン酸を1種または2種以上含有する水溶液であり、ヒドロキシカルボン酸はヒドロキシカルボン酸塩として溶解していてもよい。ヒドロキシカルボン酸塩としては、ヒドロキシカルボン酸リチウム塩、ヒドロキシカルボン酸ナトリウム塩、ヒドロキシカルボン酸カリウム塩、ヒドロキシカルボン酸マグネシウム塩、ヒドロキシカルボン酸カルシウム塩、ヒドロキシカルボン酸アンモニウム塩などのヒドロキシカルボン酸無機塩が挙げられ、これらの混合物であってもよい。ヒドロキシカルボン酸が発酵法による製造品である場合、ヒドロキシカルボン酸含有溶液は発酵培養液であってもよい。
【0026】
工程Aで用いるナノ濾過膜とは、ナノフィルター(ナノフィルトレーション膜、NF膜)とも呼ばれるものであり、「一価のイオンは透過し、二価のイオンを阻止する膜」と一般に定義される膜である。数ナノメートル程度の微小空隙を有していると考えられる膜で、主として、水中の微小粒子や分子、イオン、塩類等を阻止するために用いられる。
【0027】
また、「ナノ濾過膜に通じて濾過する」とは、ヒドロキシカルボン酸含有溶液を、ナノ濾過膜に通じて濾過し、溶解または固体として析出している無機塩を除去または阻止または濾別し、ヒドロキシカルボン酸溶液を濾液として透過させることを意味する。ここで、無機塩には、ヒドロキシカルボン酸含有溶液中に含まれる無機塩のいずれの形態のものも含まれ、また該溶液中において溶解しているもの、該溶液中に析出し若しくは沈殿して含まれているもののいずれも含まれる。
【0028】
工程Aにおけるナノ濾過膜に供するヒドロキシカルボン酸含有溶液のpHは、2以上5以下であることが好ましい。ナノ濾過膜は、溶液中にイオン化している物質の方が、イオン化していない物質に比べて除去または阻止しやすいことが知られていることから、ヒドロキシカルボン酸含有溶液のpHを5以下とすることで、ヒドロキシカルボン酸が該溶液中で解離してヒドロキシカルボン酸イオンとして存在している割合を少なくし、ヒドロキシカルボン酸が透過しやすくなる。また、pHが2未満である場合、ナノ濾過膜の損傷に影響するおそれがある。さらに、pHをヒドロキシカルボン酸のpKa以下とする場合、ヒドロキシカルボン酸イオンと水素イオンに解離していないヒドロキシカルボン酸の方がヒドロキシカルボン酸含有溶液中に多く含まれるため、効率的にヒドロキシカルボン酸をナノ濾過膜に透過することができることから、より好ましい。なお、ヒドロキシカルボン酸含有溶液が発酵法による製造品である場合、培養液のpH調整は微生物発酵時であっても、微生物発酵後であってもよい。
【0029】
ヒドロキシカルボン酸がヒドロキシカルボン酸塩として溶解している場合、ナノ濾過膜を透過する前に酸性物質を添加してもよい。酸性物質を添加することで、ヒドロキシカルボン酸塩をフリーのヒドロキシカルボン酸とすることができる。添加する酸性物質としては、硫酸、塩酸、炭酸、リン酸、硝酸などが挙げられる。具体的には、例えばヒドロキシカルボン酸カルシウム塩を含有する溶液に硫酸を添加してヒドロキシカルボン酸をフリー体とし、該溶液中のカルシウム成分を、難溶性硫酸塩である硫酸カルシウムとして沈殿、濾別する工程を行い、その濾液(ヒドロキシカルボン酸を含む分離液)を工程Aのナノ濾過膜に通じることで、より効果的にカルシウム成分を除去または阻止することができる。ヒドロキシカルボン酸含有溶液中のカルシウム成分を難溶性硫酸塩として沈殿、濾別する場合、該溶液に添加する硫酸の当量がカルシウムの当量を超えると(硫酸当量>カルシウム当量)、過剰分の硫酸がナノ濾過膜を一部透過し、その後、透過液を濃縮などの加熱条件下に晒すと、透過した硫酸がヒドロキシカルボン酸のオリゴマー化を促進する触媒として働き、収率が低減されるおそれがある。このことから、ヒドロキシカルボン酸含有溶液中のカルシウム成分を難溶性硫酸塩として沈殿、濾別する場合、該溶液中のカルシウム成分の当量以下で硫酸を添加することが好ましく、pHで添加当量を調整する場合は、pH2以上であれば、カルシウム成分の当量以下となることから好ましい。
【0030】
本発明で使用されるナノ濾過膜の、無機塩の除去、阻止または濾別の程度を評価する方法としては、無機イオン除去率(阻止率)を算出することで評価できる。無機塩阻止率(除去率)は、イオンクロマトグラフィーに代表される分析により、原水(培養液)中に含まれる無機塩濃度(原水無機塩濃度)および透過液(ヒドロキシカルボン酸溶液)中に含まれる無機塩の濃度(透過液無機塩濃度)を測定することで、式1によって算出することができる。
【0031】
無機塩除去率(%)=(1−(透過液無機塩濃度/原水無機塩濃度))×100・・・(式1)。
【0032】
工程Aで用いるナノ濾過膜の膜分離性能としては特に限定はないが、ナノ濾過膜の硫酸マグネシウム透過率が、操作圧力0.5MPa、原水温度25℃、原水濃度1000ppmにおいて、1.5%以下であるものが好ましく用いられる。上記条件におけるナノ濾過膜の硫酸マグネシウム透過率が1.5%を上回る場合、ナノ濾過膜を透過したヒドロキシカルボン酸溶液を濃縮すると無機塩が析出するおそれがあり、さらに、加熱濃縮操作を行うと、透過した無機塩の影響でヒドロキシカルボン酸のラセミ化及びオリゴマー化が発生しやすく、また、収率が低下するおそれがある。より好ましくはナノ濾過膜の硫酸マグネシウム透過率が1.0%以下のものが用いられる。ここで、硫酸マグネシウム透過率は、イオンクロマトグラフィーに代表される分析により、原水中に含まれる硫酸マグネシウム濃度(原水硫酸マグネシウム濃度)および透過液中に含まれる硫酸マグネシウム濃度(透過液硫酸マグネシウム濃度)を測定し、式2によって算出することができる。
【0033】
硫酸マグネシウム透過率(%)=(透過液硫酸マグネシウム濃度)/(原水硫酸マグネシウム濃度)×100・・・(式2)。
【0034】
また、クエン酸透過率に対する硫酸マグネシウム透過率の比が、操作圧力0.5MPa、原水温度25℃、原水濃度1000ppmにおいて、3以上であるものが好ましく用いられる。上記条件におけるナノ濾過膜のクエン酸透過率に対する硫酸マグネシウム透過率の比が3以上であれば、ヒドロキシカルボン酸含有溶液中に含まれる無機塩を除去して、効率的にヒドロキシカルボン酸を透過させることができることから好ましい。ここで、クエン酸透過率は後述のヒドロキシカルボン酸透過率の算出方法によって算出される。
【0035】
その他、塩化ナトリウム(500mg/L)の除去率が45%以上のナノ濾過膜が好ましく用いられる。また、ナノ濾過膜の透過性能としては、0.3MPaの濾過圧において、膜単位面積当たりの塩化ナトリウム(500mg/L)の透過流量(m/m/day)が0.5以上0.8以下のナノ濾過膜が好ましく用いられる。膜単位面積当たりの透過流量(膜透過流束)の評価方法としては、透過液量および透過液量を採水した時間および膜面積を測定することで、式3によって算出することができる。
【0036】
膜透過流束(m/m/day)=透過液量/膜面積/採水時間・・・(式3)。
【0037】
本発明で使用されるナノ濾過膜の素材には、酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどの高分子素材を使用することができるが、前記1種類の素材で構成される膜に限定されず、複数の膜素材を含む膜であってもよい。またその膜構造は、膜の少なくとも片面に緻密層を持ち、緻密層から膜内部あるいはもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜や、非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い機能層を有する複合膜のどちらでもよい。複合膜としては、例えば、特開昭62−201606号公報に記載の、ポリスルホンを膜素材とする支持膜にポリアミドの機能層からなるナノフィルターを構成させた複合膜を用いることができる。
【0038】
これらの中でも高耐圧性と高透水性、高溶質除去性能を兼ね備え、優れたポテンシャルを有する、ポリアミドを機能層とした複合膜が好ましい。操作圧力に対する耐久性と、高い透水性、阻止性能を維持できるためには、ポリアミドを機能層とし、それを多孔質膜や不織布からなる支持体で保持する構造のものが適している。また、ポリアミド系ナノ濾過膜としては、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応により得られる架橋ポリアミドの機能層を支持体に有してなる複合ナノ濾過膜が適している。
【0039】
ポリアミドを機能層とするナノ濾過膜において、ポリアミドを構成する単量体の好ましいカルボン酸成分としては、例えば、トリメシン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメリット酸、ピロメット酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸、ピリジンカルボン酸などの芳香族カルボン酸が挙げられるが、製膜溶媒に対する溶解性を考慮すると、トリメシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびこれらの混合物がより好ましい。
【0040】
前記ポリアミドを構成する単量体の好ましいアミン成分としては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ベンジジン、メチレンビスジアニリン、4,4’−ジアミノビフェニルエーテル、ジアニシジン、3,3’,4−トリアミノビフェニルエーテル、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニルエーテル、3,3’−ジオキシベンジジン、1,8−ナフタレンジアミン、m(p)−モノメチルフェニレンジアミン、3,3’−モノメチルアミノ−4,4’−ジアミノビフェニルエーテル、4,N,N’−(4−アミノベンゾイル)−p(m)−フェニレンジアミン−2,2’−ビス(4−アミノフェニルベンゾイミダゾール)、2,2’−ビス(4−アミノフェニルベンゾオキサゾール)、2,2’−ビス(4−アミノフェニルベンゾチアゾール)等の芳香環を有する一級ジアミン、ピペラジン、ピペリジンまたはこれらの誘導体等の二級ジアミンが挙げられ、中でもピペラジンまたはピペリジンを単量体として含む架橋ポリアミドを機能層とするナノ濾過膜は耐圧性、耐久性の他に、耐熱性、耐薬品性を有していることから好ましく用いられる。より好ましくは前記架橋ピペラジンポリアミドまたは架橋ピペリジンポリアミドを主成分とし、かつ、前記化学式(1)で示される構成成分を含有するポリアミドであり、さらに好ましくは架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつ、前記化学式(1)で示される構成成分を含有するポリアミドである。また、前記化学式(1)中、n=3のものが好ましく用いられる。架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつ前記化学式(1)で示される構成成分を含有するポリアミドを機能層とするナノ濾過膜としては、例えば、特開昭62−201606号公報に記載のものが挙げられ、具体例として、架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつ、前記化学式(1)中、n=3のものを構成成分として含有するポリアミドを機能層とする、東レ株式会社製の架橋ピペラジンポリアミド系ナノ濾過膜のUTC60が挙げられる。
【0041】
ナノ濾過膜は一般にスパイラル型の膜エレメントとして使用されるが、本発明で用いるナノ濾過膜も、スパイラル型の膜エレメントとして好ましく使用される。好ましいナノ濾過膜エレメントの具体例としては、例えば、酢酸セルロース系のナノろ過膜であるGE Osmonics社製ナノ濾過膜のGEsepa、ポリアミドを機能層とするアルファラバル社製ナノ濾過膜のNF99またはNF99HF、架橋ピペラジンポリアミドを機能層とするフィルムテック社製ナノ濾過膜のNF−45、NF−90、NF−200またはNF−400、あるいは架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつ前記化学式(1)で示される構成成分を含有するポリアミドを機能層とする、東レ株式会社製のUTC60を含む同社製ナノ濾過膜モジュールSU−210、SU−220、SU−600またはSU−610が挙げられ、より好ましくはポリアミドを機能層とするアルファラバル社製ナノ濾過膜のNF99またはNF99HF、架橋ピペラジンポリアミドを機能層とするフィルムテック社製ナノ濾過膜のNF−45、NF−90、NF−200またはNF−400、あるいは架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつ前記化学式(1)で示される構成成分を含有するポリアミドを機能層とする、東レ株式会社製のUTC60を含む同社製ナノ濾過膜モジュールSU−210、SU−220、SU−600またはSU−610であり、さらに好ましくは架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつ前記化学式(1)で示される構成成分を含有するポリアミドを機能層とする、東レ株式会社製のUTC60を含む同社製ナノ濾過膜モジュールSU−210、SU−220、SU−600またはSU−610である。
【0042】
工程Aにおけるヒドロキシカルボン酸含有溶液のナノ濾過膜による濾過は、圧力をかけてもよく、その濾過圧は、0.1MPa以上8MPa以下の範囲で好ましく用いられる。濾過圧が0.1MPaより低ければ膜透過速度が低下し、8MPaより高ければ膜の損傷に影響を与えるおそれがある。また、濾過圧が0.5MPa以上7MPa以下で用いれば、膜透過流束が高いことから、ヒドロキシカルボン酸溶液を効率的に透過させることができ、膜の損傷に影響を与える可能性が少ないことからより好ましく、1MPa以上6MPa以下で用いることが特に好ましい。
【0043】
工程Aのナノ濾過膜に通じて濾過するヒドロキシカルボン酸含有溶液中のヒドロキシカルボン酸の濃度は、特に限定されないが、高濃度であれば、透過液中に含まれるヒドロキシカルボン酸の濃度も高いため、濃縮する時間を短縮することができることからコスト削減に好適である。
【0044】
工程Aにおけるヒドロキシカルボン酸含有溶液中に含まれる無機塩の濃度は特に限定はなく、飽和溶解度以上であってもよい。すなわち、無機塩が飽和溶解度以下であれば培養溶液中に溶解しており、飽和溶解度以上であれば、一部析出しているが、本発明のヒドロキシカルボン酸の製造方法は、ヒドロキシカルボン酸含有溶液中において溶解しているもの、該溶液中に析出し若しくは沈殿して含まれているもののいずれも除去または阻止することが可能であるので、無機塩の濃度に拘束されずにヒドロキシカルボン酸を濾過することができる。
【0045】
上記の方法によってヒドロキシカルボン酸含有溶液からヒドロキシカルボン酸を分離する際の、ヒドロキシカルボン酸のナノ濾過膜透過性の評価方法としては、ヒドロキシカルボン酸透過率を算出して評価することができる。ヒドロキシカルボン酸透過率は、高速液体クロマトグラフィーに代表される分析により、原水(培養液)中に含まれるヒドロキシカルボン酸濃度(原水ヒドロキシカルボン酸濃度)および透過液(ヒドロキシカルボン酸含有溶液)中に含まれるヒドロキシカルボン酸濃度(透過液ヒドロキシカルボン酸濃度)を測定することで、式4によって算出することができる。
【0046】
ヒドロキシカルボン酸透過率(%)=(透過液ヒドロキシカルボン酸濃度/原水ヒドロキシカルボン酸濃度)×100・・・(式4)。
【0047】
本発明のヒドロキシカルボン酸の製造方法は、工程Aのヒドロキシカルボン酸含有溶液をナノ濾過膜で濾過して得られる無機塩が除去されたヒドロキシカルボン酸含有溶液を、さらに再結晶する工程Cに供することで、高純度のヒドロキシカルボン酸を得ることを特徴としている。工程Cにおけるヒドロキシカルボン酸の再結晶の方法に特に制限はなく、冷却結晶化や蒸発結晶化など、既知の結晶化手法が適用可能である。本発明においてヒドロキシカルボン酸結晶を得る具体例としては、工程Aまたは工程Bで回収したヒドロキシカルボン酸含有溶液を冷却することで、該結晶を高純度で得ることができる。また、結晶化を促進することを目的として、ヒドロキシカルボン酸含有溶液の冷却過程でヒドロキシカルボン酸の種結晶を添加してもよい。得られた結晶は定性濾紙による濾過、または遠心分離によって回収することができる。また、回収した結晶にヒドロキシカルボン酸水溶液を添加して攪拌し、再度定性濾紙で濾過することにより、結晶を洗浄することができ、より高純度のヒドロキシカルボン酸結晶を得ることができる。
【0048】
また、前記工程Cに供する前に、ナノ濾過膜を透過したヒドロキシカルボン酸含有溶液を濃縮してもよい。濃縮の方法としては、エバポレーターに代表される濃縮装置を用いてヒドロキシカルボン酸含有溶液を濃縮してもよく、また、工程Aで得られるヒドロキシカルボン酸含有溶液を、さらに、逆浸透膜で濾過してヒドロキシカルボン酸濃度を高める工程Bに供してもよい。なお、濃縮のためのエネルギー削減という観点から、逆浸透膜で濾過してヒドロキシカルボン酸濃度を高める工程Bが好ましく採用される。
【0049】
ここでいう逆浸透膜とは、被処理水の浸透圧以上の圧力差を駆動力にイオンや低分子量分子を除去する濾過膜であり、例えば酢酸セルロースなどのセルロース系や、多官能アミン化合物と多官能酸ハロゲン化物とを重縮合させて微多孔性支持膜上にポリアミド分離機能層を設けた膜などが採用できる。逆浸透膜表面の汚れすなわちファウリングを抑制するために、酸ハライド基と反応する反応性基を少なくとも1個有する化合物の水溶液をポリアミド分離機能層の表面に被覆して、分離機能層表面に残存する酸ハロゲン基と該反応性基との間で共有結合を形成させた主に下水処理用の低ファウリング逆浸透膜なども好ましく採用できる。本発明の工程Aで2価のカルシウムイオンを大部分除去できているため、逆浸透膜面でのスケールの生成もなく安定した膜濃縮が行える。また、工程Bで濃縮したヒドロキシカルボン酸含有溶液は、ヒドロキシカルボン酸を再結晶する工程Cに好適に用いることができる。工程Aで無機塩などの不純物の大部分を除去でき、工程Bで加熱せずに濃縮できるため、ヒドロキシカルボン酸を高効率で回収することができる。
【0050】
本発明で好ましく使用される逆浸透膜としては、酢酸セルロール系のポリマーを機能層とした複合膜(以下、酢酸セルロース系の逆浸透膜ともいう)またはポリアミドを機能層とした複合膜(以下、ポリアミド系の逆浸透膜ともいう)が挙げられる。ここで、酢酸セルロース系のポリマーとしては、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロースの有機酸エステルの単独もしくはこれらの混合物並びに混合エステルを用いたものが挙げられる。ポリアミドとしては、脂肪族および/または芳香族のジアミンをモノマーとする線状ポリマーまたは架橋ポリマーが挙げられる。
【0051】
膜形態としては、平膜型、スパイラル型、中空糸型など適宜の形態のものが使用できる。
【0052】
本発明で使用される逆浸透膜の具体例としては、例えば、東レ(株)製ポリアミド系逆浸透膜モジュールである低圧タイプのSU−710、SU−720、SU−720F、SU−710L、SU−720L、SU−720LF、SU−720R、SU−710P、SU−720Pの他、逆浸透膜としてUTC70を含む高圧タイプのSU−810、SU−820、SU−820L、SU−820FA、同社酢酸セルロース系逆浸透膜SC−L100R、SC−L200R、SC−1100、SC−1200、SC−2100、SC−2200、SC−3100、SC−3200、SC−8100、SC−8200、日東電工(株)製NTR−759HR、NTR−729HF、NTR−70SWC、ES10−D、ES20−D、ES20−U、ES15−D、ES15−U、LF10−D、アルファラバル製RO98pHt、RO99、HR98PP、CE4040C−30D、GE製GE Sepa、Filmtec製BW30−4040、TW30−4040、XLE−4040、LP−4040、LE−4040、SW30−4040、SW30HRLE−4040などが挙げられる。
【0053】
次に、本発明のヒドロキシカルボン酸の製造方法に供されうる微生物の発酵培養によるヒドロキシカルボン酸生産について説明する。
【0054】
微生物はヒドロキシカルボン酸を生産しうるものであれば特に限定されない。ヒドロキシカルボン酸を生産しうる微生物の具体例としては、特開平10−174593号公報記載の酵母のほか、特開平10−174594号公報記載の放線菌や大腸菌、特開平9−234091号公報記載の緑膿菌、特開2005−27533号公報記載のコリネ型細菌、バチルス属細菌などの微生物が挙げられる。動物細胞、昆虫細胞等の培養細胞も、本発明で使用される微生物に含まれる。使用する微生物は、自然環境から単離されたものでもよく、また、突然変異や遺伝子組換えによって一部性質が改変されたものであってもよい。
【0055】
微生物の発酵培養によるヒドロキシカルボン酸生産に使用する発酵原料としては、培養する微生物の生育を促し、目的とする発酵生産物であるヒドロキシカルボン酸を良好に生産させうるものであればよく、炭素源、窒素源、無機塩類、及び必要に応じてアミノ酸、ビタミンなどの有機微量栄養素を適宜含有する通常の液体培地が良い。炭素源としては、グルコース、シュークロース、フラクトース、ガラクトース、ラクトース等の糖類、これら糖類を含有する澱粉糖化液、甘藷糖蜜、甜菜糖蜜、ハイテストモラセス、更には酢酸等の有機酸、エタノールなどのアルコール類、グリセリンなども使用される。窒素源としてはアンモニアガス、アンモニア水、アンモニウム塩類、尿素、硝酸塩類、その他補助的に使用される有機窒素源、例えば油粕類、大豆加水分解液、カゼイン分解物、その他のアミノ酸、ビタミン類、コーンスティープリカー、酵母または酵母エキス、肉エキス、ペプトン等のペプチド類、各種発酵菌体およびその加水分解物などが使用される。無機塩類としてはリン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、マンガン塩等を適宜添加することができる。本発明に使用する微生物が生育のために特定の栄養素(例えば、アミノ酸など)を必要とする場合には、その栄養物をそれ自体もしくはそれを含有する天然物として添加する。また、消泡剤も必要に応じて使用してもよい。本発明において、培養液とは、発酵原料に微生物または培養細胞が増殖した結果得られる液のことを言う。培養液に追加する発酵原料の組成は、目的とするヒドロキシカルボン酸の生産性が高くなるように、培養開始時の発酵原料組成から適宜変更しても良い。
【0056】
微生物の培養初期にBatch培養またはFed−Batch培養を行って微生物濃度を高くした後に、連続培養(引き抜き)を開始しても良いし、高濃度の菌体をシードし、培養開始とともに連続培養を行っても良い。適当な時期から原料培養液の供給及び培養物の引き抜きを行うことが可能である。原料培養液供給と培養物の引き抜きの開始時期は必ずしも同じである必要はない。また、原料培養液の供給と培養物の引き抜きは連続的であってもよいし、間欠的であってもよい。原料培養液には上記に示したような菌体増殖に必要な栄養素を添加し、菌体増殖が連続的に行われるようにすればよい。培養液中の微生物または培養細胞の濃度は、培養液の環境が微生物または培養細胞の増殖にとって不適切となって死滅する比率が高くならない範囲で、高い状態で維持することが効率よい生産性を得るのに好ましく、一例として、乾燥重量として5g/L以上に維持することで良好な生産効率が得られる。
【0057】
発酵生産能力のあるフレッシュな菌体を増殖させつつ行う連続培養操作は、通常、単一の発酵槽で行うのが、培養管理上好ましい。しかしながら、菌体を増殖しつつ生産物を生成する連続培養法であれば、発酵槽の数は問わない。発酵槽の容量が小さい等の理由から、複数の発酵槽を用いることもあり得る。この場合、複数の発酵槽を配管で並列または直列に接続して連続培養を行っても発酵生産物の高生産性は得られる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
(参考例1) ナノ濾過膜の硫酸マグネシウム阻止率評価
超純水10Lに硫酸マグネシウム(和光純薬工業株式会社製)10g添加して25℃1時間攪拌し、1000ppm硫酸マグネシウム水溶液を調整した。次いで、図1に示す、膜濾過装置の原水層1に上記で調整した硫酸マグネシウム水溶液10Lを注入した。図2の符号7に示される90φナノ濾過膜として、架橋ピペラジンポリアミド系ナノ濾過膜“UTC60”(ナノ濾過膜1;東レ製)、架橋ピペラジンポリアミド系ナノ濾過膜“NF−400”(ナノ濾過膜2;フィルムテック製)、ポリアミド系ナノ濾過膜“NF99”(ナノ濾過膜3;アルファラバル製)、酢酸セルロース系ナノ濾過膜“GEsepa”(ナノ濾過膜4;GE Osmonics製)をそれぞれステンレス(SUS316製)製のセルにセットし、原水温度を25℃、高圧ポンプ3の圧力を0.5MPaに調整し、透過液4を回収した。原水槽1、透過液4に含まれる、硫酸マグネシウムの濃度をイオンクロマトグラフィー(DIONEX製)により以下の条件で分析し、硫酸マグネシウムの阻止率を計算した。
【0060】
陰イオン;カラム(AS4A−SC(DIONEX製))、溶離液(1.8mM炭酸ナトリウム/1.7mM炭酸水素ナトリウム)、温度(35℃)。
【0061】
陽イオン;カラム(CS12A(DIONEX製))、溶離液(20mMメタンスルホン酸)、温度(35℃)。
【0062】
結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

表1の結果より、UTC60(ナノ濾過膜1:東レ株式会社製)が最も無機塩の阻止率が高いことが示された。
【0064】
(参考例2) ナノ濾過膜のクエン酸透過性評価
超純水10Lにクエン酸(和光純薬工業株式会社製)10g添加して25℃で1時間攪拌し、1000ppmクエン酸水溶液を調整した。次いで、参考例1と同じ条件でナノ濾過膜1〜4の透過液を回収した。原水槽1、透過液4に含まれる、クエン酸濃度を、高速液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製)により以下の条件で分析し、クエン酸の透過率およびクエン酸透過率/硫酸マグネシウム透過率を計算した。
【0065】
カラム:Shim-Pack SPR-H(株式会社島津製作所製)、移動相:5mM p−トルエンスルホン酸(流速0.8mL/min)、反応液:5mM p−トルエンスルホン酸、20mM ビストリス、0.1mM EDTA・2Na(流速0.8mL/min)、検出方法:電気伝導度、温度:45℃。
【0066】
結果を表2に示す。
【0067】
【表2】

(参考例3〜14)ナノ濾過膜のヒドロキシカルボン酸透過性評価
超純水20Lにグリコール酸(和光純薬工業株式会社製)10g、2−ヒドロキシカルボン酸(和光純薬工業株式会社製)10g、3−ヒドロキシカルボン酸(和光純薬工業株式会社製)10g、リンゴ酸(和光純薬工業株式会社製)10gを添加して25℃1時間攪拌して各ヒドロキシカルボン酸を500ppm含有する水溶液を調製した。次いで、図1に示す、膜濾過装置の原水槽1に上記ヒドロキシカルボン酸含有溶液20Lを注入した。図2の符号7の90φナノ濾過膜として前記ナノ濾過膜1〜4をステンレス(SUS316製)製のセルにそれぞれセットし、高圧ポンプ3の圧力をそれぞれ1MPa(参考例3〜6)、3MPa(参考例7〜10)、5MPa(参考例11〜14)に調整し、それぞれの圧力における透過液5を回収した。原水槽1、透過液5に含まれる各ヒドロキシカルボン酸濃度を高速液体クロマトグラフィー(BECKMAN COULTER社製)により分析し、ヒドロキシカルボン酸の透過率を算出した。
【0068】
カラム:Inertsil ODS-3(GL Science社製)、ZORBAX SB-CN(Agilent社製)、移動相:アセトニトリル/0.1%リン酸水溶液=5/95(流速1mL/min)、検出方法:UV210nm、温度:40℃
結果を表3に示す。
【0069】
【表3】

(参考例15)ナノ濾過膜で濾過する発酵培養液の準備
ヒドロキシカルボン酸の分離精製実験に供するヒドロキシカルボン酸含有溶液として、乳酸発酵培養液に各種ヒドロキシカルボン酸を添加したヒドロキシカルボン酸含有モデル培養液を調製した。以下に乳酸発酵培養液の作製方法を示す。
【0070】
(乳酸生産能力を持つ酵母株の作製)
乳酸生産能力を持つ酵母株は下記のように造成した。具体的には、ヒト由来L−LDH遺伝子を酵母ゲノム上のPDC1プロモーターの下流に連結することでL−乳酸生産能力を持つ酵母株を造成した。ポリメラーゼ・チェーン・リアクション(PCR)には、La−Taq(宝酒造株式会社製)、あるいはKOD-Plus-polymerase(東洋紡株式会社製)を用い、付属の取扱説明に従って行った。
【0071】
ヒト乳ガン株化細胞(MCF−7)を培養回収後、TRIZOL Reagent(Invitrogen社製)を用いてtotal RNAを抽出し、得られたtotal RNAを鋳型としてSuperScript Choice System(Invitrogen社製)を用いた逆転写反応によりcDNAの合成を行った。これらの操作の詳細は、それぞれ付属のプロトコールに従った。得られたcDNAを続くPCRの増幅鋳型とした。
【0072】
上記操作で得られたcDNAを増幅鋳型とし、配列番号1および配列番号2で表されるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしたKOD-Plus-polymeraseによるPCRによりL−LDH遺伝子のクローニングを行った。各PCR増幅断片を精製し末端をT4 Polynucleotide Kinase(宝酒造株式会社製)によりリン酸化後、pUC118ベクター(制限酵素HincIIで切断し、切断面を脱リン酸化処理したもの)にライゲーションした。ライゲーションは、DNA Ligation Kit Ver.2(宝酒造株式会社製)を用いて行った。ライゲーションプラスミド産物で大腸菌DH5αを形質転換し、プラスミドDNAを回収することによりヒト由来L−LDH遺伝子(アクセッションナンバー;AY009108、配列番号3)がサブクローニングされたプラスミドを得た。得られたL−LDH遺伝子が挿入されたpUC118プラスミドを制限酵素XhoIおよびNotIで消化し、得られた各DNA断片を酵母発現用ベクターpTRS11のXhoI/NotI切断部位に挿入した。このようにしてヒト由来L−LDH遺伝子発現プラスミドpL−LDH5を得た。
【0073】
ヒト由来L−LDH遺伝子を含むプラスミドpL−LDH5を増幅鋳型とし、配列番号4および配列番号5で表されるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしたPCRにより1.3kbのヒト由来L−LDH遺伝子、及びサッカロミセス・セレビセ由来のTDH3遺伝子のターミネーター配列含むDNA断片を増幅した。また、プラスミドpRS424を増幅鋳型として、配列番号6および配列番号7で表されるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしたPCRにより1.2kbのサッカロミセス・セレビセ由来のTRP1遺伝子を含むDNA断片を増幅した。それぞれのDNA断片を1.5%アガロースゲル電気泳動により分離、常法に従い精製した。ここで得られた1.3kb断片、1.2kb断片を混合したものを増幅鋳型とし、配列番号4および配列番号7で表されるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしたPCR法によって得られた産物を1.5%アガロースゲル電気泳動して、ヒト由来LDH遺伝子及びTRP1遺伝子が連結された2.5kbのDNA断片を常法に従い調製した。この2.5kbのDNA断片で出芽酵母NBRC10505株を常法に従いトリプトファン非要求性に形質転換した。
【0074】
得られた形質転換細胞がヒト由来L−LDH遺伝子を酵母ゲノム上のPDC1プロモーターの下流に連結されている細胞であることの確認は、下記のように行った。まず、形質転換細胞のゲノムDNAを常法に従って調製し、これを増幅鋳型とした配列番号8および配列番号9で表されるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしたPCRにより0.7kbの増幅DNA断片が得られることで確認した。また、形質転換細胞が乳酸生産能力を持つかどうかは、SC培地(METHODS IN YEAST GENETICS 2000 EDITION、CSHL PRESS)で形質転換細胞を培養した培養上澄に乳酸が含まれていることを下記に示す条件でHPLC法により乳酸量を測定することで確認した。
【0075】
カラム:Shim-Pack SPR-H(株式会社島津製作所製)、移動相:5mM p−トルエンスルホン酸(流速0.8mL/min)、反応液:5mM p−トルエンスルホン酸、20mM ビストリス、0.1mM EDTA・2Na(流速0.8mL/min)、検出方法:電気伝導度、温度:45℃。
【0076】
HPLC分析の結果、4g/LのL−乳酸が検出され、D−乳酸は検出限界以下であった。以上の検討により、この形質転換体がL−乳酸生産能力を持つことを確認した。得られた形質転換細胞を酵母SW−1株として、続くバッチ発酵に用いた。
【0077】
(バッチ発酵によるL−乳酸発酵培養液の製造)
微生物を用いた発酵形態として最も典型的なバッチ発酵を行い、その乳酸生産性を評価した。表4に示す乳酸発酵培地を用い、バッチ発酵試験を行った。該培地は高圧蒸気滅菌(121℃、15分)して用いた。微生物として参考例1で造成した酵母SW−1株を用い、生産物である乳酸の濃度の評価には、参考例1に示したHPLCを用いて評価し、グルコース濃度の測定にはグルコーステストワコーC(和光純薬工業株式会社製)を用いた。発酵培養の運転条件を以下に示す。
【0078】
反応槽容量(乳酸発酵培地量):2(L)、 温度調整:30(℃)、反応槽通気量:0.2(L/min)、反応槽攪拌速度:400(rpm)、pH調整:1N 水酸化カルシウムによりpH5に調整。
【0079】
まず、SW−1株を試験管で5mlの乳酸発酵培地で一晩振とう培養した(前々培養)。前々培養液を新鮮な乳酸発酵培地100mlに植菌し500ml容坂口フラスコで24時間振とう培養した(前培養)。温度調整、pH調整を行い、発酵培養を行った。この時の菌体増殖量は、600nmでの吸光度で15であった。
【0080】
【表4】

(実施例1〜17)ナノ濾過膜によるグリコール酸の分離実験
(ナノ濾過膜で濾過する培養液の準備)
参考例15で発酵した培養液2Lに、グリコール酸80gを添加し、グリコール酸を40g/L含有するモデル培養液を調製した。
【0081】
(硫酸による難溶性カルシウム塩の生成)
上記で調製したグリコール酸含有培養液2LをpHが1.9、2.0、2.2、2.6、4.0となるまで濃硫酸(和光純薬工業株式会社製)を滴下後、1時間25℃で攪拌し、培養液中のグリコール酸カルシウムからグリコール酸と硫酸カルシウムを生成した。次いで、沈殿した硫酸カルシウムを定性濾紙No.2(アドバンテック株式会社製)にて吸引濾過し、沈殿物を濾別し、濾液2Lを回収した。また、濃硫酸を添加しなかったpH5の培養液(2L)についても分離実験を行った(実施例17)。
【0082】
(ナノ濾過膜によるグリコール酸の分離)
次いで、図1に示す、膜濾過装置の原水槽1に上記で得られた濾液2Lを注入した。図2の符号7の90φナノ濾過膜として、前記ナノ濾過膜1〜4をステンレス(SUS316製)製のセルにそれぞれセットし、高圧ポンプ3の圧力をそれぞれ1MPa、3MPa、5MPaに調整し、それぞれの圧力における透過液4を回収した。原水槽1、透過液4に含まれる、硫酸イオン、カルシウムイオンの濃度を、参考例1と同様の条件でイオンクロマトグラフィー(DIONEX製)、グリコール酸濃度を、参考例3〜14と同様の条件で高速液体クロマトグラフィー(BECKMAN COULTER社製)により分析した。結果を表5に示す。
【0083】
【表5】

表5に示すように、すべてのpH、濾過圧力において、硫酸カルシウムが高効率で除去されたことがわかった。また、上記実施例1〜17において、ナノ濾過膜を新しい膜に取り換えることなく、上記の濾加圧において、硫酸カルシウムが高効率で除去された。
【0084】
(実施例18〜34)ナノ濾過膜による3−ヒドロキシ酪酸の分離実験
参考例15で発酵した培養液2Lに3−ヒドロキシ酪酸80gを添加して3−ヒドロキシ酪酸を40g/L含有するモデル培養液を調製し、実施例1〜17と同様の操作によりナノ濾過膜による3−ヒドロキシ酪酸の分離実験を行った。透過液中の3−ヒドロキシ酪酸濃度は参考例3〜14と同様の条件で高速液体クロマトグラフィー(BECKMAN COULTER社製)により分析した。結果を表6に示す。
【0085】
【表6】

(実施例35〜51)ナノ濾過膜によるリンゴ酸の分離実験
参考例15で発酵した培養液2Lにリンゴ酸80gを添加してリンゴ酸を40g/L含有するモデル培養液を調製し、実施例1〜17と同様の操作によりナノ濾過膜によるリンゴ酸の分離実験を行った。透過液中のリンゴ酸濃度は参考例3〜14と同様の条件で高速液体クロマトグラフィー(BECKMAN COULTER社製)により分析した。結果を表7に示す。
【0086】
【表7】

(比較例1〜3)定性濾紙を用いた培養液からの難溶性硫酸塩の除去実験
実施例9、26、43と同様の方法で調製したグリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸含有培養液(各2L)をpHが2.6になるまで濃硫酸を滴下後、1時間25℃で攪拌し、培養液中のグリコール酸カルシウム、3−ヒドロキシ酪酸カルシウム、リンゴ酸カルシウムをそれぞれグリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、硫酸カルシウムに変換した。次いで、沈殿した硫酸カルシウムを定性濾紙No.2を用いて吸引濾過により、沈殿物を濾別し、濾液(各2L)を回収した。得られた濾液中の硫酸イオン、カルシウムイオン、グリコール酸(比較例1)、3−ヒドロキシ酪酸(比較例2)、リンゴ酸(比較例3)の濃度を上記と同様に測定した。結果を表8に示す。
【0087】
【表8】

表8に示すように、定性濾紙を用いて濾過した濾液中のカルシウムイオンは、ナノ濾過膜を用いて濾過した濾液中のカルシウムイオンの約1000倍もの残存が検出された。このことから、ナノ濾過膜を用いることで難溶性塩の効率的な除去が可能であることが示され、さらにはヒドロキシカルボン酸結晶の純度向上につながることが示唆された。
【0088】
(実施例52〜54)逆浸透膜を用いたヒドロキシカルボン酸溶液からの再結晶精製
実施例9(グリコール酸含有溶液、ナノ濾過膜1、pH2.6)の透過液、実施例26(3−ヒドロキシ酪酸含有溶液、ナノ濾過膜1、pH2.6)の透過液、実施例43(リンゴ酸含有溶液、ナノ濾過膜1、pH2.6)の透過液、各2Lを、図1に示す膜濾過装置の原水槽1に注入した。図2の符号7の90φ逆浸透膜として、ポリアミド製逆浸透膜(UTC−70、東レ株式会社製)をステンレス(SUS316製)製のセルにそれぞれセットし、高圧ポンプ3の圧力をそれぞれ3MPaに調整し、逆浸透膜濃縮液5を回収した。逆浸透膜濃縮液に含まれるヒドロキシカルボン酸濃度は参考例3〜14と同様の条件で高速液体クロマトグラフィー(BECKMAN COULTER社製)により分析した。その結果、グリコール酸濃度は130.3g/L、3−ヒドロキシ酪酸濃度は124g/L、リンゴ酸濃度は102.2g/Lであった。この濃縮液を10℃に冷却し、グリコール酸結晶、2−ヒドロキシ酪酸結晶、リンゴ酸結晶をそれぞれ析出させた。定性濾紙No.2(アドバンテック株式会社製)にて吸引濾過し、各ヒドロキシカルボン酸結晶を濾別した。得られた各ヒドロキシカルボン酸結晶は、結晶を洗浄するために結晶重量の15倍量のヒドロキシカルボン酸水溶液に攪拌し、再度吸引濾過にて回収した。各ヒドロキシカルボン酸の再結晶前後の光学純度をHPLC法により以下の条件で測定した。
【0089】
カラム:TSK-gel Enantio L1(東ソー株式会社製)、移動相 :1mM 硫酸銅水溶液、流速:1.0ml/min、検出方法 :UV254nm、温度 :30℃。
【0090】
また、再結晶後の各ヒドロキシカルボン酸結晶の重量を測定し、式5により再結晶収率を算出した。
【0091】
再結晶収率(%)=100×逆浸透膜濃縮液中のヒドロキシカルボン酸重量/ヒドロキシカルボン酸結晶の重量・・・(式5)。
【0092】
結果を表9に示す。
【0093】
【表9】

表9に示すように、ナノ濾過膜による無機塩などの不純物の除去、逆浸透膜濃縮によるラセミ化やオリゴマー化の抑制により、高純度のヒドロキシカルボン酸結晶が得られた。
【0094】
(比較例4〜6)定性濾紙で無機塩を除去したヒドロキシカルボン酸溶液からの再結晶精製
比較例1(グリコール酸含有溶液、定性濾紙No.2、pH2.6)の透過液、比較例2(3−ヒドロキシ酪酸含有溶液、定性濾紙No.2、pH2.6)の透過液、比較例3(リンゴ酸含有溶液、定性濾紙No.2、pH2.6)の透過液、各2Lを、図1に示す膜濾過装置の原水槽1に注入し、実施例52〜54と同様の操作により逆浸透膜濃縮、再結晶精製を行った。逆浸透膜濃縮液に含まれるヒドロキシカルボン酸濃度は参考例3〜14と同様の条件で高速液体クロマトグラフィー(BECKMAN COULTER社製)により分析した。また、各ヒドロキシカルボン酸の再結晶前後の光学純度はHPLC法により分析し、再結晶収率は式5により算出した。結果を表10に示す。
【0095】
【表10】

表10に示したように、実施例52〜54と比較して、ヒドロキシカルボン酸結晶収率が20%程度低い結果が得られ、定性濾紙で除去しきれなかった不純物の影響により再結晶が阻害されたことが示唆された。
【0096】
以上の実施例及び比較例の結果から、ナノ濾過膜により、培養液中の硫酸カルシウムを高効率で除去できることが明らかとなった。すなわち、本発明によって、ヒドロキシカルボン酸含有培養液中のカルシウム成分をナノ濾過膜によって高効率で除去することができ、濃縮してもカルシウム成分が析出せず、さらに、再結晶することで高純度なヒドロキシカルボン酸を生産できることが明らかとなった。また、逆浸透膜で濃縮することで、ヒドロキシカルボン酸含有溶液の加熱を回避し、ヒドロキシカルボン酸のラセミ化やオリゴマー化を抑制して高収率かつ低コストにヒドロキシカルボン酸結晶を得ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明で用いたナノ濾過膜分離装置の一つの実施の形態を示す概要図である。
【図2】本発明で用いたナノ濾過膜分離装置のナノ濾過膜が装着されたセル断面図の一つの実施の形態を示す概要図である。
【符号の説明】
【0098】
1 原水槽
2 ナノ濾過膜または逆浸透膜が装着されたセル
3 高圧ポンプ
4 膜透過液の流れ
5 膜濃縮液の流れ
6 高圧ポンプにより送液された培養液の流れ
7 ナノ濾過膜
8 支持板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシカルボン酸(乳酸を除く)含有溶液をナノ濾過膜に通じて濾過して、透過側からヒドロキシカルボン酸を回収する工程Aを含む、ヒドロキシカルボン酸の製造方法。
【請求項2】
前記ヒドロキシカルボン酸が、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、グルコン酸およびクエン酸から選択される1種または2種以上の混合物である、請求項1に記載のヒドロキシカルボン酸の製造方法。
【請求項3】
前記工程Aにおけるナノ濾過膜に通じるヒドロキシカルボン酸含有溶液のpHが2以上5以下である、請求項1または2に記載のヒドロキシカルボン酸の製造方法。
【請求項4】
前記ナノ濾過膜の硫酸マグネシウム透過率が、操作圧力0.5MPa、原水温度25℃、原水濃度1000ppmにおいて、1.5%以下である、請求項1から3のいずれかに記載のヒドロキシカルボン酸の製造方法。
【請求項5】
クエン酸透過率に対する硫酸マグネシウム透過率の比が、操作圧力0.5MPa、原水温度25℃、原水濃度1000ppmにおいて、3以上である、請求項1から4のいずれかに記載のヒドロキシカルボン酸の製造方法。
【請求項6】
前記ナノ濾過膜の機能層がポリアミドを含む、請求項1から5のいずれかに記載のヒドロキシカルボン酸の製造方法。
【請求項7】
前記ポリアミドが架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつ、化学式1で示される構成成分を含有することを特徴とする請求項6に記載のヒドロキシカルボン酸の製造方法。
【化1】

(式中、Rは−Hまたは−CH、nは0から3までの整数を表す。)
【請求項8】
前記工程Aで得られるヒドロキシカルボン酸含有溶液を逆浸透膜で濾過してヒドロキシカルボン酸濃度を高める工程Bを含む、請求項1から7のいずれかに記載のヒドロキシカルボン酸の製造方法。
【請求項9】
前記工程Aから回収された透過液または工程Bから回収された濃縮液を、再結晶する工程Cに供する、請求項1から8のいずれかに記載のヒドロキシカルボン酸の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−126512(P2010−126512A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306030(P2008−306030)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】